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特表2024-541104トリアゾロピリミジノン誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】トリアゾロピリミジノン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20241029BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241029BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C07D487/04 146
A61K31/519
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531076
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 KR2021018043
(87)【国際公開番号】W WO2023101048
(87)【国際公開日】2023-06-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513180473
【氏名又は名称】エスティ ファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】金慶鎭
(72)【発明者】
【氏名】金旭鎰
(72)【発明者】
【氏名】パン,ヒョンテ
(72)【発明者】
【氏名】イ,スルギ
(72)【発明者】
【氏名】韓始延
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086CB08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、タンキラーゼ阻害活性を示すトリアゾロピリミジノン誘導体および中間体を製造する方法に関するものである。本発明の製造方法は、効率的な工程の開発を通じて反応効率を高め、高純度および高収率でトリアゾロピリミジノン誘導体化合物を製造することができるため、経済的であり、大量生産に適する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)下記化学式1で表される化合物またはその塩から保護反応により下記化学式2で表される化合物を製造する第1段階;
(A-2)前記化学式2で表される化合物から酸化反応により下記化学式3で表される化合物を製造する第2段階;
(A-3)下記化学式4で表される化合物からアミネーション反応により下記化学式5で表される化合物を製造する第3段階;
(A-4)前記化学式5で表される化合物からデーキン(Dakin)反応により下記化学式6で表される化合物を製造する第4段階;
(A-5)前記化学式6で表される化合物からアルキル化反応により下記化学式7で表される化合物を製造する第5段階;
(A-6)前記化学式7で表される化合物から脱保護反応により下記化学式8で表される化合物またはその塩を製造する第6段階;
(A-7)前記化学式3で表される化合物と前記化学式8で表される化合物またはその塩からアミネーション反応により下記化学式Iaで表される化合物を製造する第7段階;および
(A-8)前記化学式Iaで表される化合物から脱保護反応により下記化学式Iで表される化合物を製造する第8段階;
を含む、トリアゾロピリミジノン誘導体の製造方法:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

前記化学式中、
Rは、O-保護基であり;
Aは、N-保護基である。
【請求項2】
Rは、C-Cアルキル、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、p-メトキシベンジル、MOM(メトキシメチルアセタール)、THP(テトラヒドロピラン)またはシリルエーテルである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
Aは、-Boc、-Cbz、-Fmoc、-ベンジル、p-メトキシベンジル、トリチルまたはDMT(ジメトキシトリチル)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
Aは、-Bocである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記(A-2)段階は、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、メタクロロ過安息香酸およびオキソンからなる群より選択された1種以上の酸化剤と反応させるものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酸化剤は、オキソンである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記(A-4)段階は、過酸化水素、過硫酸アンモニウムおよびメタクロロ過安息香酸(mCPBA)からなる群より選択された1種以上の酸化剤と反応させるものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記酸化剤は、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
(B-1)下記化学式1で表される化合物またはその塩から保護反応により下記化学式2で表される化合物を製造する第1段階;
(B-2)前記化学式2で表される化合物から酸化反応により下記化学式3で表される化合物を製造する第2段階;
(B-3)下記化学式4で表される化合物からアミネーション反応により下記化学式9で表される化合物を製造する第3段階;
(B-4)下記化学式9で表される化合物からアミネーション反応により下記化学式10で表される化合物を製造する第4段階;
(B-5)下記化学式10で表される化合物からデーキン反応により下記化学式11で表される化合物を製造する第5段階;
(B-6)下記化学式11で表される化合物からアルキル化反応により前記化学式Iaで表される化合物を製造する第6段階;および
(B-7)前記化学式Iaで表される化合物から脱保護反応により下記化学式Iで表される化合物を製造する第6段階;
を含む、トリアゾロピリミジノン誘導体の製造方法:
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

前記化学式中、
Rは、O-保護基である。
【請求項10】
Rは、C-Cアルキル、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、p-メトキシベンジル、MOM(メトキシメチルアセタール)、THP(テトラヒドロピラン)またはシリルエーテルである、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンキラーゼ阻害活性を示すトリアゾロピリミジノン誘導体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンキラーゼ(tankyrase)は、触媒的PARPドメイン(catalytic PARP domain)を共有する17個のメンバーで構成されるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(poly(ADP-ribose)polymerase;PARP)のタンパク質ファミリーに属する。近来、細胞内アキシンのレベルがPARP酵素ファミリーメンバーであるタンキラーゼ-1およびタンキラーゼ-2(それぞれPARP5aおよびPARP5bとしても知られている)により影響を受けることが報告された(Huang et al.,2009,Nature,461(7264):614-620)。
【0003】
タンキラーゼ-1およびタンキラーゼ-2の阻害剤は、多様な癌疾患、例えば、大腸癌(colorectal carcinoma)、結腸癌(colon cancer)、胃癌(gastric cancer)、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)、乳癌(breast cancer)、髄芽腫(medulloblastoma)、メラノーマ(melanoma)、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer)、膵臓腺癌(pancreas adenocarcinoma)および前立腺癌(prostate cancer)などの固形癌に治療可能性があることが知られている。また、タンキラーゼ-1およびタンキラーゼ-2の阻害剤は、骨粗しょう症、骨関節炎、多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease)、肺線維症、糖尿病、統合失調症(schizophrenia)、血管疾患(vascular disease)、心臓病(cardiac disease)、非腫瘍性増殖性疾患(non-oncogenic proliferative disease)およびアルツハイマー病(Alzheimer’s disease)のような神経変性疾患(neurodegenerative disease)などを含む、前記癌疾患に加えて、他の疾患にも治療可能性が存在する。
【0004】
前記のように癌および過剰増殖性の条件に用いることができる新規な治療剤のニーズが持続しており、タンキラーゼ酵素を選択的に阻害することができる新規な薬学的化合物の開発が試みられている。特に、下記化学式Iのトリアゾロピリミジノン誘導体が選択的なタンキラーゼ阻害剤として知られており、大腸癌誘発遺伝子(KRAS)突然変異遺伝子型の患者またはアービタックス(Erbitux)に反応しない患者の大腸癌治療剤として開発されている。
【化1】
【0005】
国際公開公報WO2016/006974には、前記化学式Iの化合物を始めとするトリアゾロピリミジノン誘導体の製造方法が開示されている。しかし、前記製造方法は、マイクロ波を用いる反応の工程とカラム精製などを含んでいることから、大量生産に適していないため、工程の改善が必要である。
【0006】
したがって、前記のような非効率的な製造方法を改善し、化学式Iのトリアゾロピリミジノン誘導体化合物を高純度で製造することができる新たな製造方法を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開公第2016/006974号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Huang et al.,2009, Nature, 461(7264):614-620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高純度および高収率でトリアゾロピリミジノン誘導体を製造することができるため、生産単価を下げ、効率的な工程段階を通じて大量生産に適した製造方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、前記の製造方法に用いられる新規な中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記化学式Iで表されるトリアゾロピリミジノン誘導体を製造する方法を提供する。
【化2】
【0012】
本発明の具体例によれば、前記化学式Iで表されるトリアゾロピリミジノン誘導体は、下記の合成経路AまたはBを通じて製造することができる。
【0013】
<合成経路A>
本発明の製造方法のうち、合成経路Aは、下記の(A-1)段階~(A-8)段階を含む。
(A-1)下記化学式1で表される化合物またはその塩から保護反応により下記化学式2で表される化合物を製造する第1段階;
(A-2)前記化学式2で表される化合物から酸化反応により下記化学式3で表される化合物を製造する第2段階;
(A-3)下記化学式4で表される化合物からアミネーション反応により下記化学式5で表される化合物を製造する第3段階;
(A-4)前記化学式5で表される化合物からデーキン(Dakin)反応により下記化学式6で表される化合物を製造する第4段階;
(A-5)前記化学式6で表される化合物からアルキル化反応により下記化学式7で表される化合物を製造する第5段階;
(A-6)前記化学式7で表される化合物から脱保護反応により下記化学式8で表される化合物またはその塩を製造する第6段階;
(A-7)前記化学式3で表される化合物と前記化学式8で表される化合物またはその塩からアミネーション反応により下記化学式Iaで表される化合物を製造する第7段階;および
(A-8)前記化学式Iaで表される化合物から脱保護反応により下記化学式
Iで表される化合物を製造する第8段階;
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

前記化学式中、
Rは、O-保護基であり;
Aは、N-保護基である。
【0014】
以下では、前記(A-1)段階 ~(A-8)段階をそれぞれ分けて説明する。
【0015】
<(A-1)段階>
本発明において、前記(A-1)段階は、化学式1で表されるトリアゾロピリミジノン誘導体化合物またはその塩を出発物質とし、保護反応により化学式2で表される化合物を製造する段階である(反応式1)。
【化13】

前記化学式中、Rは、O-保護基である。
【0016】
本発明の具体例によれば、前記反応は、トリアゾロピリミジノン誘導体の保護を行う。例えば、前記Rは、C-Cアルキル、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、p-メトキシベンジル、MOM(メトキシメチルアセタール)、THP(テトラヒドロピラン)またはシリルエーテルであってもよい。本発明の具体例によれば、前記反応は、化学式1の化合物をアルキルハライドと反応させて化学式2で表される化合物を製造することができる。例えば、Rは、イソプロピルであってもよく、2-ヨードプロパンと共に反応させるアルキル化反応により行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
前記反応には、保護反応に通常使用される塩基を用いることができる。例えば、前記塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウムまたはフッ化セシウムを用いることができる。具体的には、フッ化セシウム(CsF)を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
前記反応には、保護反応に通常使用される有機溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、ジメチルホルムアミドを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0019】
また、前記反応は30~110℃で行われることができ、より具体的には、60~90℃で行われることができ、これに限定されるものではない。
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。本発明の実施例では、前記反応の生成物を有機溶媒であるイソプロパノールに攪拌し、高純度の生成物を得た。
【0020】
<(A-2)段階>
本発明において、前記(A-2)段階は、化学式2で表されるトリアゾロピリミジン誘導体化合物を出発物質とし、酸化反応により化学式3で表される化合物を製造する段階である(反応式2)。
【化14】

前記化学式中、Rは、前記にて定義したとおりである。
【0021】
本発明の具体例によれば、前記反応は、化学式2で表される化合物を酸化剤と共に反応させる酸化反応により行うことができる。
【0022】
前記反応には、酸化反応に通常使用される酸化剤を用いることができる。例えば、前記酸化剤としては、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、メタクロロ過安息香酸またはオキソンを用いることができる。具体的には、オキソンを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0023】
前記反応には、酸化反応に通常使用される有機溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水またはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、テトラヒドロフランとメタノールとの混合物を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0024】
また、前記反応は、0~70℃で行われることができ、より具体的には、30~50℃で行われることができ、これに限定されるものではない。
【0025】
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。本発明の実施例では、前記反応の生成物を有機溶媒であるイソプロパノールに攪拌し、高純度の生成物を得た。
【0026】
<(A-3)段階>
本発明において、前記(A-3)段階は、化学式4で表されるトリフルオロベンズアルデヒド誘導体化合物を出発物質とし、アミネーション反応により化学式5で表される化合物を製造する段階である(反応式3)。
【化15】

前記化学式中、Aは、N-保護基である。
【0027】
本発明の具体例によれば、前記反応は、トリフルオロベンズアルデヒド誘導体と保護されたピペラジン誘導体を用いることができる。例えば、前記Aは、-Boc、-Cbz、-Fmoc、-ベンジル、p-メトキシベンジル、トリチルまたはDMT(ジメトキシトリチル)であってもよい。本発明の具体例によれば、前記反応は、3,4,5-トリフルオロベンズアルデヒドをN-Boc-ピペラジンと共に反応させるアミネーション反応により行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
前記反応には、アミネーション反応に通常使用される塩基を用いることができる。例えば、前記塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸セシウムを用いることができる。具体的には、炭酸リチウムを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0029】
前記反応には、アミネーション反応に通常使用される有機溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、ジメチルスルホキシドを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0030】
また、前記反応は80~150℃で行われることができ、より具体的には、110~130℃で行われることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0032】
<(A-4)段階>
本発明において、前記(A-4)段階は、化学式5で表されるフェニルピペラジン誘導体化合物を出発物質とし、デーキン反応により化学式6で表される化合物を製造する段階である(反応式4)。
【化16】

前記化学式中、Aは前記にて定義したとおりである。
【0033】
本発明の具体例によれば、前記反応は、化学式5で表される化合物に酸化剤を加えて行うことができる。
【0034】
前記デーキン反応には、通常使用される酸化剤を用いることができる。例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、またはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、メタクロロ過安息香酸を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0035】
前記反応を進めた後、得られる中間体(フェニルホルマート)にて加水分解を進める際、通常使用される塩基を用いることができる。例えば、前記塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カルシウムを用いることができる。具体的には、水酸化ナトリウムを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記反応には、通常使用される溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水またはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、ジクロロメタンを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
また、前記反応は-20~30℃で行われることができ、より具体的には、-15~15℃で行われることができ、これに限定されるものではない。
【0038】
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。例えば、本発明の実施例では、前記反応の生成物を有機溶媒であるイソプロパノールに攪拌し、高純度の生成物を得た。
【0039】
<(A-5)段階>
本発明において、前記(A-5)段階は、化学式6で表されるフェニルピペラジン誘導体化合物を出発物質とし、アルキル化反応により化学式7で表される化合物を製造する段階である(反応式5)。
【化17】

前記化学式中、Aは前記にて定義したとおりである。
【0040】
本発明の具体例によれば、前記反応は化学式6の化合物を1-ハロ-2-メトキシエタン(例、1-ブロモ-2-メトキシエタン)と共に反応させるアルキル化反応により行うことができる。
【0041】
前記反応には、アルキル化反応に通常使用される有機溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、アセトニトリルを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、前記反応は50~100℃で行われることができ、より具体的には、75~85℃で行われることができ、これに限定されるものではない。
【0043】
<(A-6)段階>
本発明において、前記(A-6)段階は、化学式7で表されるフェニルピペラジン誘導体化合物を出発物質とし、脱保護反応により化学式8で表される化合物またはその塩を製造する段階である(反応式6)。
【化18】

前記化学式中、Aは前記にて定義したとおりである。
【0044】
本発明の具体例によれば、前記反応は、化学式7の化合物を酸条件下で脱保護反応により行うことができる。
【0045】
前記反応には、脱保護反応に通常使用される溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、水またはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、メタノールを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
また、前記反応は0~60℃で行われることができ、より具体的には、30~50℃で行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。本発明の実施例では、前記反応の生成物を有機溶媒であるジクロロメタン、tert-ブチルメチルエーテルまたはこれらの混合物に攪拌し、高純度の生成物を得た。
【0048】
<(A-7)段階>
本発明において、前記(A-7)段階は、化学式3で表される化合物と化学式8で表される化合物またはその塩からアミネーション反応により下記化学式9で表される化合物を製造する段階である(反応式7)。
【化19】

前記化学式中、Rは前記にて定義したとおりである。
【0049】
本発明の具体例によれば、前記反応は、例えば、7-イソプロポキシ-3-メチル-5-(メチルスルホニル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジンと1-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン塩酸塩を用いてアミネーション反応により行うことができる。
【0050】
前記反応には、アミネーション反応に通常使用される塩基を用いることができる。例えば、前記塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたは1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)を用いることができる。具体的には、ジイソプロピルエチルアミンを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0051】
前記反応には、アミネーション反応に通常使用される有機溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、エタノールを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
また、前記反応は50~100℃で行われることができ、より具体的には、60~80℃で行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。本発明の実施例では、前記反応の生成物を有機溶媒であるジクロロメタン、ジイソプロピルエーテルまたはこれらの混合物に攪拌し、高純度の生成物を得た。
【0054】
<(A-8)段階>
本発明において、前記(A-8)段階は、化学式9で表される化合物から脱保護反応により化学式Iで表される化合物を製造する段階である(反応式8)。
【化20】

前記化学式中、Rは前記にて定義したとおりである。
【0055】
本発明の具体例によれば、前記反応は、例えば、5-(4-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)-7-イソプロポキシ-3-メチル-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジンから脱保護反応により行うことができる。
【0056】
前記反応には、脱保護反応に通常使用される酸を溶媒として用いることができる。このとき、前記酸は、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸またはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、酢酸、硫酸またはこれらの混合物を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
また、前記反応は30~80℃で行われることができ、より具体的には、40~60℃で行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。本発明の実施例では、前記反応の生成物をアセトン、水またはこれらの混合物に攪拌し、高純度の生成物を得た。
【0059】
<合成経路B>
本発明の製造方法のうち、合成経路Bは、下記の(B-1)段階~(B-7)段階を含む。
(B-1)下記化学式1で表される化合物またはその塩から保護反応により下記化学式2で表される化合物を製造する第1段階;
(B-2)前記化学式2で表される化合物から酸化反応により下記化学式3で表される化合物を製造する第2段階;
(B-3)下記化学式4で表される化合物からアミネーション反応により下記化学式9で表される化合物を製造する第3段階;
(B-4)前記化学式3で表される化合物と前記化学式9で表される化合物またはその塩からアミネーション反応により下記化学式10で表される化合物を製造する第4段階;
(B-5)下記化学式10で表される化合物からデーキン反応により下記化学式11で表される化合物を製造する第5段階;
(B-6)下記化学式11で表される化合物からアルキル化反応により前記化学式Iaで表される化合物を製造する第6段階;および
(B-7)前記化学式Iaで表される化合物から脱保護反応により下記化学式Iで表される化合物を製造する第7段階;
【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

前記化学式中、
Rは、O-保護基である。
【0060】
以下では、前記(B-1)段階~(B-7)段階をそれぞれ分けて説明する。このうち、(B-1)段階、(B-2)段階および(B-7)段階は、それぞれ前述の(A-1)段階、(A-2)段階および(A-8)段階と同じであり、(B-3)段階~(B-6)段階についてのみ具体的に検討する。
【0061】
<(B-3)段階>
本発明において、前記(B-3)段階は、化学式4で表されるトリフルオロベンズアルデヒド誘導体化合物を出発物質とし、アミネーション反応により化学式8で表される化合物またはその塩を製造する段階である(反応式9)。
【化30】
【0062】
本発明の具体例によれば、前記反応は、トリフルオロベンズアルデヒド誘導体とピペラジンを用いることができる。
【0063】
前記反応には、アミネーション反応に通常使用される塩基を用いることができる。例えば、前記塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸セシウムを用いることができる。具体的には、炭酸カリウムを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記反応には、アミネーション反応に通常使用される有機溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、ジメトキシエタンまたはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、ジメトキシエタンを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
また、前記反応は60~150℃で行われることができ、より具体的には、70~90℃で行われることができるが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
<(B-4)段階>
本発明において、前記(B-3)段階は、化学式3で表される化合物と化学式9で表される化合物またはその塩からアミネーション反応により下記化学式10で表される化合物を製造する段階である(反応式10)。
【化31】

前記化学式中、Rは前記にて定義したとおりである。
【0068】
本発明の具体例によれば、前記反応は、例えば、7-イソプロポキシ-3-メチル-5-(メチルスルホニル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジンと3,5-ジフルオロ-4-(ピペラジン-1-イル)ベンズアルデヒドを用いてアミネーション反応により行うことができる。
【0069】
前記反応には、アミネーション反応に通常使用される塩基を用いることができる。例えば、前記塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたは1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)を用いることができ、これに限定されるものではない。
【0070】
前記反応には、アミネーション反応に通常使用される有機溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノールまたはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、ジメチルアセトアミドを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0071】
また、前記反応は50~150℃で行われることができ、より具体的には、80~120℃で行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0072】
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。本発明の実施例では、前記反応の生成物を有機溶媒であるジエチルエーテル、イソプロパノールまたはこれらの混合物に攪拌し、高純度の生成物を得た。
【0073】
<(B-5)段階>
本発明において、前記(B-5)段階は、化学式10で表される化合物を出発物質とし、デーキン反応により化学式11で表される化合物を製造する段階である(反応式11)。
【化32】

前記化学式中、Rは前記にて定義したとおりである。
【0074】
本発明の具体例によれば、前記反応は、化学式10で表される化合物に酸化剤を加えて行うことができる。
【0075】
前記デーキン反応には、通常使用される酸化剤を用いることができる。例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、またはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、メタクロロ過安息香酸を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0076】
前記反応を進めた後、得られる中間体(フェニルホルマート)にて加水分解を進める際、通常使用される塩基を用いることができる。例えば、前記塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カルシウムを用いることができる。具体的には、水酸化ナトリウムを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0077】
前記反応には、通常使用される溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水またはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、ジクロロメタンを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0078】
また、前記反応は-20~30℃で行われることができ、より具体的には、-15~15℃で行われることができるが、これに限定されるものではない。
【0079】
前記反応以後、生成物を分離または精製する段階のうちの一つ以上をさらに行うことができるが、これに限定されるものではない。例えば、本発明の実施例では、前記反応の生成物を有機溶媒であるイソプロパノールとtert-ブチルメチルエーテルまたはこれらの混合物に攪拌し、高純度の生成物を得た。
【0080】
<(B-6)段階>
本発明において、前記(B-6)段階は、化学式11で表される化合物を出発物質とし、アルキル化反応により化学式Iaで表される化合物を製造する段階である(反応式12)。
【化33】
【0081】
本発明の具体例によれば、前記反応は、化学式11の化合物を1-ハロ-2-メトキシエタン(例、1-ブロモ-2-メトキシエタン)と共に反応させるアルキル化反応により行うことができる。
【0082】
前記反応には、アルキル化反応に通常使用される有機溶媒を用いることができる。例えば、前記溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合物を用いることができる。具体的には、ジメチルホルムアミドを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0083】
また、前記反応は50~100℃で行われることができ、より具体的には、60~80℃で行われることができ、これに限定されるものではない。
【0084】
国際公開公報WO2016/006974に開示された製造方法によれば、前記化学式Iで表される化合物を11段階の工程を経て製造している。また、マイクロ波を用いたり、カラム精製の工程を何回か経るため、大量生産に適していなかった。しかし、本発明の製造方法によれば、合成経路AまたはBはいずれも工程数が8段階または7段階であり、多数の工程を経る必要がない。また、合成経路Aの前記(A-1)段階~(A-8)段階、合成経路Bの前記(B-1)段階~(B-7)段階全部、マイクロ波およびカラム精製の工程を経ず、効率的に高収率、高純度の化合物を製造することができるため、大量生産に適する。
【0085】
また、前記(A-1)段階~(A-8)段階、(B-1)段階~(B-7)段階にて製造され使用された化学式1~11および化学式Iaで表される化合物は、いずれも化学式Iで表されるトリアゾロピリミジノン誘導体化合物を製造するのに有用な中間体である。
【発明の効果】
【0086】
本発明の製造方法は、従来の製造方法に比べて工程数が少なく、効率的な工程の開発によりマイクロ波反応を用いずに、高純度および高収率でトリアゾロピリミジノン誘導体化合物をカラム精製なしに結晶化を通じて製造することができるため、生産単価を大幅に下げることができるため、経済的であり、大量生産に適している。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、以下の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例1】
【0088】
本発明の実施例1では、下記の反応式Iに従って化学式Iで表されるトリアゾロピリミジノン誘導体化合物を製造した。
【化34】
【0089】
<段階1:7-イソプロポキシ-3-メチル-5-(メチルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジンの製造>
【0090】
3-メチル-5-(メチルチオ)-3,6-ジヒドロ-7H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-オン(15g、76.1mmol)をジメチルホルムアミド76mLに希釈した。フッ化セシウム(46.2g、304.2mmol)、イソプロピルヨージド(38.1g、228.2mmol)を投入した後、内部温度を75~80℃に昇温し、2時間攪拌した。反応が完了すると、常温に冷却し、エチルアセテート300mLを投入した後、10分間攪拌した。形成された結晶をセライトろ過を通じてろ過し、濾液に5%の塩水120mLを投入し、10分間攪拌した。有機層を5%の塩水120mLでさらに2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後、ろ過し、減圧濃縮した。濃縮残渣にイソプロパノール50mLを投入し、40℃に昇温し、30分間攪拌した。析出された結晶は、5~10℃で30分間攪拌した後、ろ過し、減圧乾燥し、薄黄色固体の標題化合物(11.3g、62%)を得た。
【0091】
H-NMR 400 Hz(DMSO-d):5.62(m、1H)、4.15(s、3H)、2.61(s、3H)、1.44(d、J = 8 Hz、6H)。
LCMS(ESI、m/z):240.1[M+H]。
【0092】
<段階2:7-イソプロポキシ-3-メチル-5-(メチルスルホニル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジンの製造>
【0093】
段階1にて製造された7-イソプロポキシ-3-メチル-5-(メチルチオ)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン(10g、41.8mmol)をテトラヒドロフラン70mLに希釈し、内部温度を5~10℃に冷却し、攪拌した。オキソン(38.5g、125.3mmol)を精製水200mLに溶解した後、反応液に30分間滴下した。滴下が完了した後、内部温度を35~40℃に昇温し、2時間攪拌した。反応が完了すると、反応液を減圧濃縮し、ジクロロメタン100mLを投入し、有機層を抽出した。水層にジクロロメタン100mLを投入して抽出し、有機層を合わせた後、無水硫酸ナトリウムで脱水しろ過し、減圧濃縮した。濃縮残渣にイソプロパノール50mLを投入し、75℃に昇温し、30分間攪拌した。析出された結晶は、5~10℃で30分間攪拌した後、ろ過し、減圧乾燥し、微白色固体の標題化合物(9.9g、87%)を得た。
【0094】
H-NMR 400 Hz(DMSO-d):5.74(m、1H)、4.30(s、3H)、3.47(s、3H)、1.50(d、J = 6.4 Hz、6H)。
LCMS(ESI、m/z):272.0[M+H]。
【0095】
<段階3:tert-ブチル4-(2,6-ジフルオロ-4-ホミルフェニル)ピペラジン-1-カルボキシレートの製造>
【0096】
3,4,5-トリフルオロベンズアルデヒド(5g、31.2mmol)とBoc-ピペラジン(5.8g、31.2mmol)、炭酸リチウム(7.3g、94mmol)をジメチルスルホキシド(25mL)に希釈させた後、内部温度115~120℃で3時間攪拌した。反応が完了すると、反応液を常温に冷却し、冷水125mLとエチルアセテート50mLとの混合液に希釈し、10分間攪拌した。溶けない不溶物をセライトろ過を通じて除去した。濾液の有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を精製せずに、次の反応を進めた。
【0097】
<段階4:tert-ブチル4-(2,6-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)ピペラジン-1-カルボキシレートの製造>
【0098】
段階3にて製造されたtert-ブチル4-(2,6-ジフルオロ-4-ホミルフェニル)ピペラジン-1-カルボキシレートをジクロロメタン102mLに溶解した後、内部温度-15~-10℃に冷却し、攪拌した。メタクロロ過安息香酸(8.08g、46.8mmol)をゆっくりと分けて滴下した後、内部温度-10~10℃を維持し、2時間攪拌した。反応液に2N水酸化ナトリウム水溶液(78mL、156mmol)を滴下した後、徐々に常温まで上げて2時間攪拌した。反応が完了すると、水層を分離し、0~5℃で1N塩酸水溶液を用いてpH6に調節した後、tert-ブチルメチルエーテル90mLを投入し、10分間攪拌した。有機層を抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液30mLで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。残留物にイソプロパノール35mLを加えた後、3時間常温で攪拌した。ろ過し、減圧乾燥し、薄黄色固体の標題化合物(3.9g、40%)を得た。
【0099】
H-NMR 400 Hz(MeOD):6.33(d、J = 8.2 Hz、2H)、4.63(S、1H)、3.52(S、4H)、3.00(S、4H)、1.49(S、9H)。
LCMS(ESI、m/z):315.1[M+H]。
【0100】
<段階5:tert-ブチル4-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン-1-カルボキシレートの製造>
【0101】
段階4にて製造されたtert-ブチル4-(2,6-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)ピペラジン-1-カルボキシレート(20g、63.6mmol)をアセトニトリルに希釈した。炭酸カルシウム(26.4g、190.9mmol)、1-ブロモ-2-メトキシエタン(13.3g、95.5mmol)を投入した後、75~85℃に昇温し、8時間還流攪拌した。反応が完了した後、反応液を減圧濃縮し、残留物に精製水140mL、エチルアセテート280mLを投入し、15分間常温で攪拌した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、ろ過し、減圧濃縮した。残渣を精製せずに、次の反応を進めた。
【0102】
<段階6:1-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン塩酸塩の製造>
【0103】
反応器にメタノール240mLを投入し、内部温度5℃以下に冷却した後、アセチルクロリド(31.3mL、439mmol)をゆっくりと投入し、15分間攪拌した。前記段階5にて製造されたtert-ブチル4-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン-1-カルボキシレートをジクロロメタン64mLに溶解した後、反応器に徐々に投入し、内部温度を40~45℃に昇温し、2時間攪拌した。反応が完了した後、反応液を減圧濃縮し、残留物にメタノール60mLを投入し、常温で攪拌し、溶解した。内部温度を15~20℃に冷却し、tert-ブチルメチルエーテル180mLを滴下し、30分間攪拌した。析出された結晶をろ過し、減圧乾燥し、微白色固体の標題化合物(14.2g、72%)を得た。
【0104】
H-NMR 400 Hz(DMSO-d):9.25(brs、2H)、6.85-6.64(m、2H)、4.12-4.02(m、2H)、3.65-3.58(m、2H)、3.28(s、3H)、3.25-3.18(m、4 H)、3.17-3.09(m、4H)。
LCMS(ESI、m/z):273.0[M+H]。(Free form)
【0105】
<段階7:5-(4-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)-7-イソプロポキシ-3-メチル-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジンの製造>
【0106】
段階2にて製造された7-イソプロポキシ-3-メチル-5-(メチルスルホニル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン(10g、36.9mmol)をエタノール146mLに希釈し、ジイソプロピルエチルアミン(19.3mL、110.5mmol)と段階6にて製造された1-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン塩酸塩(13.1g、42.4mmol)を投入し、60~80℃に昇温し、3時間還流攪拌した。反応が完了した後、反応液を減圧濃縮し、残留物にジクロロメタン150mLと水53mLを投入し、層分離した。水層をジクロロメタン50mLで2回抽出した。有機層を合わせた後、1N塩酸水溶液50mLと5%塩水50mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、ろ過した。濾液に活性炭2gを投入し、30分間攪拌した。セライトろ過を進め、濾液を減圧濃縮した。濃縮残渣にジクロロメタン30mLを投入し、溶解した後、ジイソプロピルエーテル200mLを滴下し、5~10℃で1時間攪拌した。析出された結晶をろ過し、減圧乾燥し、微白色固体の標題化合物(15.1g、89%)を得た。
【0107】
H-NMR 400 Hz(DMSO-d):6.77-6.69(m、2H)、5.55(m、1H)、4.09-4.06(m、2H)、3.99(s、3H)、3.93(t、J = 4.8 Hz、4H)、3.64-3.62(m、2H)、3.28(s、3H)、3.09(t、J = 4.8 Hz、4H)、1.42(d、J = 6.4 Hz、6H)。
LCMS(ESI、m/z):464.1[M+H]。
【0108】
<段階8:5-(4-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)-3-メチル-3,6-ジヒドロ-7H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-オンの製造>
【0109】
段階7にて製造された5-(4-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)-7-イソプロポキシ-3-メチル-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン(15g、32.4mmol)に酢酸92mLと硫酸16.1mLを投入し、内部温度45~50℃に昇温し、3時間攪拌した。反応が完了した後、反応液を常温に冷却し、精製水230mLを30分間滴下し、攪拌した。滴下が完了した後、内部温度を5~10℃に冷却し、1時間攪拌した。析出された結晶をろ過し、アセトン150mLに希釈した後、内部温度を40~45℃に昇温し、1時間攪拌した。反応液を徐々に5~10℃に冷却し、精製水150mLを投入した。析出された結晶を30分間攪拌した後、ろ過し、減圧乾燥し、微白色固体の標題化合物(11.5g、84%)を得た。
【0110】
H-NMR 400 Hz(DMSO-d):11.29(brs、1H)、6.74(d、J = 11.2 Hz、2H)、4.08(t、J = 4.4 Hz、2H)、3.92(s、3H)、3.82-3.76(m、4H)、3.62(t、J = 4.4 Hz、2H)、3.29(s、3H)、3.12-3.06(m、4H)。
LCMS(ESI、m/z):422.1[M+H]。
【実施例2】
【0111】
本発明の実施例2では、下記の反応式IIに従って化学式Iで表されるトリアゾロピリミジノン誘導体化合物を製造した。
【化35】
【0112】
<段階1:3,5-ジフルオロ-4-(ピペラジン-1-イル)ベンズアルデヒドの製造>
【0113】
3,4,5-トリフルオロベンズアルデヒド(4g、24.99mmol)とピペラジン(6.46g、75mmol)、炭酸カリウム(6.91g、50mmol)をジメトキシエタン(50mL)に希釈させた後、内部温度75~80℃で20時間攪拌した。反応が完了すると、反応液を0~5℃に冷却し、2N塩酸水溶液を加えて、pH2に調節した。水層をジクロロメタン50mLで2回洗浄した後、1N苛性ソーダ水溶液を用いて中性に調節した。水層にジクロロメタン100mLを投入した後、有機層を抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、ろ過し、減圧濃縮し、黄色固体の標題化合物(4.65g、82%)を得た。
【0114】
H-NMR 400 Hz(DMSO-d):9.80(s、1H)、7.56-7.54(d、J = 8.2 Hz、2H)、3.19(s、4H)、2.79(s、4H)。
LCMS(ESI、m/z):227.1[M+H]。
【0115】
<段階2:3,5-ジフルオロ-4-(4-(7-イソプロポキシ-3-メチル-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)ピペラジン-1-イル)ベンズアルデヒドの製造>
【0116】
実施例1の段階2にて製造された7-イソプロポキシ-3-メチル-5-(メチルスルホニル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン(1g、3.69mmol)と実施例2の段階1にて製造された3,5-ジフルオロ-4-(ピペラジン-1-イル)ベンズアルデヒド(0.959g、4.24mmol)をジメチルアセトアミド15mLに希釈し、110~120℃に昇温し、2時間攪拌した。反応が完了した後、反応液を常温に冷却し、エチルアセテート75mL、水30mLを投入し、希釈した後、有機層を分離し、塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水しろ過し、減圧濃縮した。濃縮残渣にイソプロパノール5mLを投入し、常温で30分間攪拌した。析出された結晶をろ過し、イソプロパノールで洗浄した後、減圧乾燥し、薄黄色固体の標題化合物(1.25g、81%)を得た。
【0117】
H-NMR 400 Hz(CDCl):9.81(s、1H)、7.44-7.36(m、2H)、5.65-5.55(m、1H)、4.07(s、3H)、4.05-4.03(t、J = 5.0 Hz、4H)、3.43(s、4H)、1.50-1.48(d、J = 6.2 Hz、6H)。
LCMS(ESI、m/z):418.0[M+H]。
【0118】
<段階3:3,5-ジフルオロ-4-(4-(7-イソプロポキシ-3-メチル-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)ピペラジン-1-イル)フェノールの製造>
【0119】
段階2にて製造された3,5-ジフルオロ-4-(4-(7-イソプロポキシ-3-メチル-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)ピペラジン-1-イル)ベンズアルデヒド(1g、2.4mmol)をジクロロメタン8mLに希釈した後、-10~0℃でメタクロロ過安息香酸(1076mg、4.8mmol)をゆっくりと分けて滴下した後、内部温度-10~10℃を維持し、2時間攪拌した。反応液に2N水酸化ナトリウム水溶液(9.6mL、19.2mmol)を滴下した後、徐々に常温に上げて2時間攪拌した。反応が完了すると、水層を分離し、0~5℃で1N塩酸水溶液を用いてpH6に調節した後、tert-ブチルメチルエーテル50mLを投入し、10分間攪拌した。有機層を抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液10mLで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過し、減圧濃縮した。残留物にイソプロパノール3mLを加えた後、1時間常温で攪拌した。ろ過し、減圧乾燥し、薄黄色固体の標題化合物(388mg、40%)を得た。
【0120】
H-NMR 400 Hz(DMSO-d):6.44-6.42(d、J = 11.0 Hz、2H)、5.57-5.51(m、1H)、3.99(s、3H)、3.92(s、3H)、1.42-1.41(d、J = 6.2 Hz、6H)。
LCMS(ESI、m/z):406.0[M+H]。
【0121】
<段階4:5-(4-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)-7-イソプロポキシ-3-メチル-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジンの製造>
【0122】
段階3にて製造された3,5-ジフルオロ-4-(4-(7-イソプロポキシ-3-メチル-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-イル)ピペラジン-1-イル)フェノール(1g、2.5mmol)をジメチルホルムアミド10mLに希釈した後、炭酸カリウム(1.02g、7.4mmol)を加えて、65~70℃で7時間攪拌した。反応が完了した後、精製水200mL、エチルアセテート550mLを投入し、15分間常温で攪拌した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、ろ過し、減圧濃縮した。濃縮残渣にジクロロメタンとジイソプロピルエーテルを滴下して、結晶を析出した。析出された結晶をろ過し、減圧乾燥し、微白色固体の標題化合物(780mg、68%)を得た。
【0123】
H-NMR 400 Hz(DMSO-d):6.77-6.69(m、2H)、5.55(m、1H)、4.09-4.06(m、2H)、3.99(s、3H)、3.93(t、J = 4.8 Hz、4H)、3.64-3.62(m、2H)、3.28(s、3H)、3.09(t、J = 4.8 Hz、4H)、1.42(d、J = 6.4 Hz、6H)。
LCMS(ESI、m/z):464.1[M+H]。
【0124】
<段階5:5-(4-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)-3-メチル-3,6-ジヒドロ-7H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-7-オンの製造>
【0125】
段階4にて製造された5-(4-(2,6-ジフルオロ-4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)-7-イソプロポキシ-3-メチル-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン(750mg、1.62mmol)に酢酸4.6mLと硫酸0.81mLを投入し、内部温度45~50℃に昇温し、3時間攪拌した。反応が完了した後、反応液を常温に冷却し、精製水11mLを30分間滴下し、攪拌した。滴下が完了した後、内部温度を5~10℃に冷却し、1時間攪拌した。析出された結晶をろ過し、アセトン7.5mLに希釈した後、内部温度を40~45℃に昇温し、1時間攪拌した。反応液を徐々に5~10℃に冷却し、精製水7.5mLを投入した。析出された結晶を30分間攪拌した後、ろ過し、減圧乾燥し、微白色固体の標題化合物(575mg、84%)を得た。
【0126】
H-NMR 400 Hz(DMSO-d):11.29(brs、1H)、6.74(d、J = 11.2 Hz、2H)、4.08(t、J = 4.4 Hz、2H)、3.92(s、3H)、3.82-3.76(m、4H)、3.62(t、J = 4.4 Hz、2H)、3.29(s、3H)、3.12-3.06(m、4H)。
LCMS(ESI、m/z):422.1[M+H]。
【0127】
以上、本発明の特定の部分を詳細に述べたが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好ましい実施例に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付された特許請求の範囲とその等価物によって定義されるといえる。
【国際調査報告】