(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】壁および家具キャビネット用の壁を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
A47B 96/20 20060101AFI20241029BHJP
E05D 15/40 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
A47B96/20 C
E05D15/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532865
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 AT2022060411
(87)【国際公開番号】W WO2023097349
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーミン バルトライヒ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ナーゲル
(57)【要約】
家具キャビネット(8)用の壁、特に側壁であって、この壁(1)は、壁(1)の、好ましくは平坦な端面(1a)から延在する少なくとも1つの凹部(7)を有しており、少なくとも1つの凹部(7)は、家具部分を、特に家具フラップ(10)または家具扉を、壁(1)に対して相対的にガイド可能な金具(9)を収容するために形成されており、好ましくは、少なくとも1つの凹部(7)は、壁(1)の端面(1a)から壁(1)内へとフライス加工されており、少なくとも1つの凹部(7)内には、金具(9)の代わりに、少なくとも1つの、好ましくはちょうど1つのプレースホルダ(11)が装着されている、壁。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具キャビネット(8)用の壁、特に側壁であって、前記壁(1)は、前記壁(1)の、好ましくは平坦な端面(1a)から延在する少なくとも1つの凹部(7)を有しており、前記少なくとも1つの凹部(7)は、家具部分を、特に家具フラップ(10)または家具扉を、前記壁(1)に対して相対的にガイド可能な金具(9)を収容するために形成されており、好ましくは、前記少なくとも1つの凹部(7)は、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記壁(1)内へとフライス加工されている壁において、
前記少なくとも1つの凹部(7)内には、前記金具(9)の代わりに、少なくとも1つの、好ましくはちょうど1つのプレースホルダ(11)が装着されていることを特徴とする、壁。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、幾何学的な寸法により形状接続的に前記少なくとも1つの凹部(7)に取り付けられていて、好ましくは、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、少なくとも1つの突出部を有しており、前記少なくとも1つの突出部の領域で、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)と前記少なくとも1つの凹部(7)との間のプレス嵌めが行われている、請求項1記載の壁。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、材料接続的な結合によりかつ/または少なくとも1つの保持手段により、前記少なくとも1つの凹部(7)内に取り外し可能に取り付けられている、請求項1または2記載の壁。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、好ましくは熱可塑性の、プラスチック、木材、厚紙材料および/または複合材料から形成されている、請求項1から3までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、中実に形成された構成部品として、または補強構造を有する構成部品として形成されている、請求項1から4までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、前記少なくとも1つの凹部(7)に沿って、前記少なくとも1つの凹部(7)と実質的に同じ横断面を有している、請求項1から5までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項7】
前記少なくとも1つの凹部(7)は、2つの平行な側方の平坦な内壁(7a,7b)を有しており、前記内壁は、好ましくは前記壁(1)の外側の側面(1b)に対して平行に位置していて、好ましくは前記壁(1)の前記端面(1a)に対して垂直に延在している、請求項1から6までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、前記少なくとも1つの凹部(7)の奥行き(T)の少なくとも60%の、好ましくは75%の、特に好適には90%の長さに相当する長さを有している、請求項1から7までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項9】
前記少なくとも1つの凹部(7)は、2つの平行な上方および下方の平坦な上壁および/または底壁(7c,7d)を有しており、前記上壁および/または底壁は、好ましくは前記壁(1)の前記端面(1a)に対して垂直に延在している、請求項1から8までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、前記少なくとも1つの凹部(7)の少なくとも2つの内壁(7a,7b)に、好ましくは前記上壁および/または底壁(7c,7d)に接触するように配置されており、これにより前記少なくとも1つの凹部(7)の前記少なくとも2つの内壁(7a,7b)は、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)によって互いに支持されている、請求項1から9までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項11】
前記少なくとも1つの凹部(11)は、前記壁(1)の前記端面(1a)に対して垂直方向に見て、矩形に成形されており、好ましくは、このような矩形の横断面は、前記少なくとも1つの凹部(7)の前記奥行き(T)の少なくとも80%の大部分にわたって続いていることが想定されている、請求項1から10までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項12】
前記少なくとも1つの凹部(7)の後壁(7e)は、前記壁(1)の前記端面(1a)に対して好ましくは平行にまたはやや傾斜して延びる平坦な区分を有している、請求項1から11までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項13】
前記少なくとも1つの凹部(7)の前記後壁(7e)は、前記平坦な区分と、前記少なくとも1つの凹部(7)の前記上壁(7c)および/または前記底壁(7d)との間で、円弧状の区分(7f)において、前記上壁および/または前記底壁に移行している、請求項9から11までの少なくとも1項および請求項12記載の壁。
【請求項14】
前記少なくとも1つの凹部(7)は袋孔として形成されていて、前記壁(1)の前記端面(1a)における開口以外はすべての側で閉じられている、請求項1から13までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項15】
前記壁(1)は、家具キャビネット(8)の、組み付け状態で垂直な側壁または中間壁であって、前記金具(9)は、家具フラップ(10)が取り付け可能なフラップ金具(12)である、請求項1から14までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項16】
前記少なくとも1つの凹部(1)内には、前記金具(9)の代わりの少なくとも1つのプレースホルダ(11)が、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着されていて、かつ/または前記壁(1)の前記端面(1a)を介して取り外し可能である、請求項1から15までの少なくとも1項記載の壁。
【請求項17】
請求項1から16までの少なくとも1項記載の少なくとも1つの壁(1)と、家具部分、特に家具フラップ(10)または家具扉を、前記壁(1)に対して相対的にガイド可能な少なくとも1つの金具(9)とから成るアセンブリであって、前記少なくとも1つの金具(9)は、少なくとも1つの凹部(7)における少なくとも1つのプレースホルダ(11)の取り出し後に、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)の代わりに配置可能である、アセンブリ。
【請求項18】
家具キャビネット(8)用の壁(1)、好ましくは請求項1から16までの少なくとも1項記載の壁(1)を製造するための方法であって、以下のステップ、すなわち、
-前記壁(1)に少なくとも1つの凹部(7)を加工して設けるステップであって、前記少なくとも1つの凹部(7)は、前記壁(1)の好ましくは平坦な端面(1a)から前記壁(1)内に延在しており、好ましくは、前記少なくとも1つの凹部(7)を、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記壁(1)内へとフライス加工するステップ、
-家具部分、特に家具フラップ(10)または家具扉を、前記壁(1)に対して相対的にガイド可能な金具(9)の代わりに少なくとも1つの、好ましくはちょうど1つのプレースホルダ(11)を前記少なくとも1つの凹部内に装着するステップ、を有しており、
-好ましくは、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着する前記ステップの後に、前記壁(1)を、さらなる加工のために、空間的に離れた場所へと移動させる
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を、さらなるステップで前記少なくとも1つの凹部(7)から取り外し、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)の代わりに、前記家具部分をガイドするための前記少なくとも1つの金具(9)を前記少なくとも1つの凹部(7)に配置する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着された前記少なくとも1つの金具(9)に、または前記金具の突出した部分に、特にフラップ金具(12)の作動アームに、家具部分、特に扉または家具フラップ(10)を取り付ける、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着した後、前記壁(1)を少なくとも所定の領域で化粧張りする、かつ/または前記壁に被覆材(14)を被着する、請求項18から20までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項22】
化粧張り(13)および/または前記被覆材(14)を、前記壁(1)の前記端面(1a)における前記少なくとも1つの凹部(7)の開口の領域で除去し、これにより前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を解放する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記壁(1)の前記端面(1a)からチェーンソー(2)を前記壁内へと動かすことにより、前記少なくとも1つの凹部(7)を、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記壁(1)内にフライス加工する、請求項18から22までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着し、かつ/または前記壁(1)の前記端面(1a)を介して取り出す、請求項18から23までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項25】
請求項1から16までのいずれか1項記載の少なくとも1つの壁(1)を備えた、かつ/または請求項18から24までのいずれか1項記載の、壁(1)を製造するための方法により製造された少なくとも1つの壁(1)を備えた、家具または家具キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴を有する家具キャビネット用の壁、このような壁と少なくとも1つの金具とのアセンブリ、家具キャビネット用の壁を製造するための方法、ならびに少なくとも1つのこのような壁を備えた家具または家具キャビネットに関する。
【0002】
家具キャビネットの用の相応の壁、特に側壁は、壁の、好ましくは平坦な端面から延在する少なくとも1つの凹部を有しており、少なくとも1つの凹部は、家具部分を、特に家具フラップまたは家具扉を、壁に対して相対的にガイド可能な金具を収容するために形成されており、好ましくは、少なくとも1つの凹部は、壁の端面から壁内へとフライス加工されている。
【0003】
従来技術により、家具キャビネットに対する、フラップ、扉などの運動を可能にするために使用される金具を、壁の内面に、特に家具キャビネットの側壁に組み付けることが公知である。
【0004】
相応の金具は、主に、フラップ金具(作動アーム駆動装置)の形態で実現され、一般的に、作動アームを操作するように構成された、ばね負荷された蓄力器と変速機構とを有しており、フラップ金具の自由端部は、家具フラップに接続可能であり、開放時には家具フラップを重力に抗して上方に向かって押すことができ、ひいてはユーザにとって開放を容易にすることができる。
【0005】
このような作動アーム駆動装置またはフラップ金具は、相対的に大きな構成部品であり、したがって、家具キャビネットの内部の自由に使用可能なスペースを縮小し、またその視覚的印象も好ましいものではない。
【0006】
したがって、従来技術により、家具キャビネットの壁、特に側壁に凹部を設けることが公知であり、この凹部内に金具を配置することができ、これにより少なくとも部分的に金具を壁の凹部内に沈めることができる。
【0007】
相応の構成は、例えば、独国特許出願公開第102018100204号明細書、独国特許出願公開第102019112993号明細書、独国実用新案第7409707号明細書、独国特許出願公開第102019118152号明細書または独国特許出願公開第102018119539号明細書から明らかである。
【0008】
このように金具を凹部内に配置することにより、一方では省スペースに金具が壁の凹部内に収容され、これによって家具キャビネットの内部の使用可能なスペースを拡大させることができる。他方では、このような金具の沈み込み(または「差込み」)によって、視覚的な印象も改善することができる。
【0009】
しかしこの場合、欠点として、壁に、特に側壁に凹部を製造することは、製造の手間を増やすことがわかった。この場合、この凹部は、例えば、家具または家具キャビネットの家具職人および/または生産者により、相応の製造方法によって製作されている。
【0010】
したがって、金具を収容するためのこの凹部は、大抵、壁内にフライス加工され、この際に、家具または家具キャビネットの家具職人および/または製造業者は、コスト増加につながるフライス機械を凹部の製作のために必要とする。
【0011】
さらに、壁に被覆材および/または化粧張りを被着した後で壁に相応の凹部をフライス加工することは、壁へのフライス加工により、凹部の縁部で化粧張りおよび/または被覆材において破損が生じることが多く、これが、壁の視覚的な外観にマイナスの影響を与えるので望ましくないということがわかっている。
【0012】
そこで本発明の課題は、上述した従来技術の欠点を少なくとも部分的に改善し、かつ/または製造技術的な手間を比較的僅かにすることができ、かつ/または比較的安価または省資源である製造の可能性を提示し、かつ/または最終製品の視覚的な外観を改善することができる、壁および/または壁を製造するための方法を提供することである。
【0013】
この課題は、請求項1の特徴を有する家具キャビネット用の壁、特に側壁、請求項17の特徴を有する、このような壁と少なくとも1つの金具とのアセンブリ、請求項18の特徴を有する、家具キャビネット用の壁を製造するための方法、ならびにこのような壁を備えた家具および/または家具キャビネットにより解決される。
【0014】
本発明によれば、家具キャビネットの用の壁、特に側壁は、壁の、好ましくは平坦な端面から延在する少なくとも1つの凹部を有しており、少なくとも1つの凹部は、家具部分を、特に家具フラップまたは家具扉を、壁に対して相対的にガイド可能な金具を収容するために形成されており、好ましくは、少なくとも1つの凹部は、壁の端面から壁内へとフライス加工されており、少なくとも1つの凹部内には、金具の代わりに、少なくとも1つの、好ましくはちょうど1つのプレースホルダが装着されている。
【0015】
したがって、本発明によれば、少なくとも1つの凹部を、製造の事前のステップで既に壁内に、例えばフライス加工することが可能となる。
【0016】
このような少なくとも1つの凹部により、壁の安定性および強度が弱められるので、壁基体の製造後に既に、少なくとも1つの凹部を設けること不可能または極めて困難であった。
【0017】
少なくとも1つの凹部により減じられた抵抗力に基づき、壁の破壊または損傷のリスクは大幅に高まるので、少なくとも1つの凹部は、壁の搬送または引渡し前に困難に製作することしかできなかった。
【0018】
同じことは壁の被覆材および/または化粧張りについても当てはまり、少なくとも1つの凹部が事前に製造されている場合は、壁に加えられる力を、破壊なしに壁によって吸収することはできなかった。
【0019】
しかしながら、少なくとも1つの凹部にプレースホルダを設けることにより、壁は、少なくとも1つの凹部の領域でプレースホルダによって安定化され、これにより壁を損傷することなく、壁により高い負荷を加えることができる。
【0020】
したがって、今や、例えば、1個所の中心点で中央の製造業者により、場合によっては壁自体の製造業者によっても、少なくとも1つの凹部を製作することができ、これによりこの作業は、後続の家具および/または家具キャビネットの家具職人および/または製造業者にはもはや必要ない。
【0021】
したがって、家具および/または家具キャビネットの家具職人および/または製造業者は、今や、既に設けられた少なくとも1つの凹部を備えた壁を購入することができ、例えば、少なくとも1つの凹部を製造するために固有のフライス機械を準備する必要がなく、これにより家具および/または家具キャビネットの家具職人および/または製造業者にとって製造コストならびに製造の手間は大幅に低減される。
【0022】
さらに、壁の一生産者の加工によって今や集中的に、少なくとも1つの凹部を製造することができるので、大量生産により、壁の製造業者にとって製造コストおよび/または製造の手間も縮小され、少なくとも1つの凹部を備えた壁は、プレースホルダにより損傷することなく搬送することができる。
【0023】
さらなる利点は、少なくとも1つのプレースホルダを少なくとも1つの凹部内に配置できること、次いで被覆材および/または化粧張りを壁に被着することができることにある。
【0024】
さらに、次いで、少なくとも1つのプレースホルダを取り出すために、少なくとも1つの凹部の領域で化粧張りおよび/または被覆材を除去することができる。
【0025】
このような方法により、例えば、被覆および/または化粧張りに続く、少なくとも1つの凹部のフライス加工により行われる場合のように、被覆材および/または化粧張りが少なくとも1つの凹部の縁部で剥がれる、裂断する、または加工が汚くなるといったリスクが最小限にされる。これにより、製造された製品の視覚的な外観は著しく改善することができる。
【0026】
本発明による装置および/または本発明による方法は、例えば、明細書冒頭に記載したような、従来技術により既に公知の実施態様で用いることにより、使用することができ、後付けすることができる。
【0027】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に規定されている。
【0028】
少なくとも1つのプレースホルダは、幾何学的な寸法により形状接続的に少なくとも1つの凹部に取り付けられていて、好ましくは、少なくとも1つのプレースホルダは、少なくとも1つの突出部を有しており、少なくとも1つの突出部の領域で、少なくとも1つのプレースホルダと少なくとも1つの凹部との間のプレス嵌めが行われていることが想定されていてよい。
【0029】
これにより例えば、少なくとも1つのプレースホルダと少なくとも1つの凹部とが少なくとも所定の領域で同じ幾何学形状を有しており、好ましくは、プレースホルダは、少なくとも1つの凹部よりも僅かに過剰な寸法をも有しており、これにより少なくとも1つのプレースホルダは、幾何学的構成により少なくとも1つの凹部内に保持され、単に(たとえごく僅かでも)力を加えることにより少なくとも1つの凹部から取り外すまたは少なくとも1つの凹部に装着することができる。
【0030】
好ましくは、少なくとも1つのプレースホルダは、材料接続的な結合によりかつ/または少なくとも1つの保持手段により、少なくとも1つの凹部内に取り外し可能に取り付けられていることが想定されている。
【0031】
少なくとも1つの凹部内における位置固定のために接着剤-好ましくは接着滴-を用いて、少なくとも1つのプレースホルダを固定することが想定されていてよい。これにより、例えば、小さな力を加えることによって、材料接続的な結合および/または少なくとも1つの保持手段を解除することができるように、材料接続的な結合および/または少なくとも1つの保持エレメントが構成されていて、これにより少なくとも1つのプレースホルダを壁の損傷なく、少なくとも1つの凹部から取り外すことができることが想定されていてよい。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つのプレースホルダは、好ましくは熱可塑性の、プラスチック、木材、厚紙材料および/または複合材料から形成されていることが想定されている。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つのプレースホルダは、実質的に、木または木材から成っていて、好ましくは、被覆されたパーティクルボードまたはMDFボードであることが想定されていてよい。特に好適には、少なくとも1つのプレースホルダは、壁と実質的に同じ材料から製作されていることが想定されている。
【0034】
好ましくは、少なくとも1つのプレースホルダは、中実に形成された構成部品として、または補強構造を有する構成部品として形成されていることが想定されている。
【0035】
少なくとも1つのプレースホルダは、少なくとも1つの凹部に沿って、少なくとも1つの凹部と実質的に同じ横断面を有していることが想定されていてよい。
【0036】
この場合、実質的にとは、少なくとも1つの凹部に対する少なくとも1つのプレースホルダの偏差が最小限であるものとして理解されてよく、これにより、少なくとも1つのプレースホルダの少なくとも1つの凹部への装着および/または少なくとも1つの凹部からの取り出しは破壊なく可能である。
【0037】
したがって例えば、少なくとも1つのプレースホルダは、少なくとも1つの凹部に対して隙間嵌めを有していてよい。
【0038】
好ましくは、少なくとも1つの凹部は、2つの平行な側方の平坦な内壁を有しており、これらの内壁は、好ましくは壁の外側の側面に対して平行に位置していて、好ましくは壁の側壁に対して垂直に延在していることが想定されている。
【0039】
好ましくは、プレースホルダは、少なくとも1つの凹部の奥行きの少なくとも60%の、好ましくは75%の、特に好適には90%の長さに相当する長さを有していることが想定されていてよい。
【0040】
少なくとも1つの凹部の奥行きは、壁の端面から、長手方向の延在に沿って、好ましくは少なくとも1つの凹部の側方の内壁に対して平行に、少なくとも1つの凹部の終端部まで、特に好適には少なくとも1つの凹部の終端部を成す後壁までの少なくとも1つの凹部の寸法であるとみなされてよい。
【0041】
好ましくは、少なくとも1つの凹部は、2つの平行な上方および下方の平坦な上壁および/または底壁を有しており、上壁および/または底壁は、好ましくは壁の端面に対して垂直に延在していることが想定されていてよい。
【0042】
少なくとも1つのプレースホルダは、少なくとも1つの凹部の少なくとも2つの側壁に、好ましくは上壁および/または底壁に接触するように配置されており、これにより少なくとも1つの凹部の少なくとも2つの側壁は、少なくとも1つのプレースホルダによって互いに支持されていることが想定されていてよい。
【0043】
好ましくは、少なくとも1つの凹部は、壁の端面に対して垂直方向に見て、矩形に成形されていることが想定されていてよく、好ましくは、このような矩形の横断面は、少なくとも1つの凹部の奥行きの少なくとも80%の大部分にわたって続いていることが想定されている。
【0044】
少なくとも1つの凹部の後壁は、壁の端面に対して好ましくは平行にまたはやや傾斜して延びる平坦な区分を有していることが想定されていてよい。
【0045】
好ましくは、少なくとも1つの凹部の後壁は、その平坦な区分と、少なくとも1つの凹部の上壁および/または底壁との間で、円弧状の区分において、上壁および/または底壁に移行していることが想定されている。
【0046】
少なくとも1つの凹部は袋孔として形成されていて、壁の端面における開口以外はすべての側で閉じられていることが想定されていてよい。
【0047】
好ましくは、壁は、家具キャビネットの-組み付け状態で垂直な-側壁または中間壁であって、金具は、家具フラップが取り付け可能なフラップ金具であることが想定されていてよい。
【0048】
フラップ金具は、-好ましくは、ばね蓄力器を含む-作動アーム駆動装置を有しており、作動アーム駆動装置は、家具フラップに取り付け可能な、可動の、好ましくは旋回可能な少なくとも1つの作動アームを駆動しており、作動アームは、閉鎖状態で、好ましくは少なくとも大部分、少なくとも1つの凹部の内側に配置されていることが想定されていてよい。
【0049】
さらに、作動アーム駆動装置は、実質的に上側の少なくとも1つの支持プレートを有していて、この支持プレートは、少なくとも1つの凹部の平坦な内壁に面状に当接することが想定されていてよい。
【0050】
少なくとも1つの凹部の最大奥行きは、少なくとも150mm、好ましくは少なくとも200mm、特に好適には少なくとも250mmであることが想定されていてよい。
【0051】
好ましくは、少なくとも1つの凹部の幅が、10mm~16mmであり、好ましくは約12mmであることが想定されている。
【0052】
少なくとも1つの凹部の高さは、80mm~160mmであり、好ましくは約120mmであることが想定されていてよい。
【0053】
好ましくは、少なくとも1つの凹部の最大奥行きは、少なくとも1つの凹部の幅よりも少なくとも15倍、好ましくは少なくとも20倍大きいことが想定されている。
【0054】
少なくとも1つの凹部の最大奥行きは、少なくとも1つの凹部の高さよりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍大きいことが想定されていてよい。
【0055】
好ましくは、壁の標準的な壁厚が、15mm~20mmであり、好ましくは16mmまたは19mmであることが想定されている。
【0056】
少なくとも1つの凹部は、壁の壁厚に関して端面で中央に配置されていることが想定されていてよい。
【0057】
好ましくは、壁は、実質的に、木または木材から成っていて、好ましくは、被覆されたパーティクルボードまたはMDFボードであることが想定されている。
【0058】
少なくとも1つの凹部の両側の残留壁の壁厚はそれぞれ、1.5mm~3mmであり、好ましくは2mmであることが想定されていてよい。
【0059】
好ましくは、壁は、1つの部材から成っていることが想定されていてよい。
【0060】
少なくとも1つの凹部内には、金具の代わりの少なくとも1つのプレースホルダが、壁の端面から少なくとも1つの凹部内に装着されていて、かつ/または壁の端面を介して取り出し可能であることが想定されていてよい。
【0061】
さらに、本発明による壁と、家具部分、特に家具フラップまたは家具扉を、壁に対して相対的にガイド可能な少なくとも1つの金具とのアセンブリであって、少なくとも1つの金具は、少なくとも1つの凹部における少なくとも1つのプレースホルダの取り出し後に、少なくとも1つのプレースホルダの代わりに配置可能である、アセンブリが特許請求される。
【0062】
同様に、家具キャビネット用の壁を製造するための方法であって、以下のステップ、すなわち、
-壁に少なくとも1つの凹部を加工して設けるステップであって、少なくとも1つの凹部は、壁の好ましくは平坦な端面から壁内に延在しており、好ましくは、少なくとも1つの凹部を、壁の端面から壁内へとフライス加工するステップ、
-家具部分、特に家具フラップまたは家具扉を、壁に対して相対的にガイド可能な金具の代わりに少なくとも1つの、好ましくはちょうど1つのプレースホルダを装着するステップであって、この際に、少なくとも1つのプレースホルダを少なくとも1つの凹部内に装着するステップを有しており、
-好ましくは、少なくとも1つのプレースホルダを少なくとも1つの凹部内に装着するステップの後に、壁を、さらなる加工のために、空間的に離れた場所へと移動させる
方法が特許請求される。
【0063】
少なくとも1つのプレースホルダを、さらなるステップで少なくとも1つの凹部から取り外し、少なくとも1つのプレースホルダの代わりに、家具部分をガイドするための少なくとも1つの金具を少なくとも1つの凹部に配置することが想定されていてよい。
【0064】
好ましくは、少なくとも1つの凹部内に装着された少なくとも1つの金具に、または金具の突出した部分に、特にフラップ金具の作動アームに、家具部分、特に扉または家具フラップを取り付けることが想定されていてよい。
【0065】
少なくとも1つのプレースホルダを少なくとも1つの凹部内に装着した後、壁を少なくとも所定の領域で化粧張りする、かつ/または壁に被覆材を被着することが想定されていてよい。
【0066】
化粧張りおよび/または被覆材を、端面における少なくとも1つの凹部の開口の領域で除去し、これにより少なくとも1つのプレースホルダを解放することが想定されていてよい。
【0067】
好ましくは、壁の端面からチェーンソーを壁内へと動かすことにより、少なくとも1つの凹部を、壁の端面から壁内にフライス加工することが想定されている。
【0068】
単一のブレードを有するチェーンソーであって、このブレードの周囲に、モータ駆動されるフライスチェーンが巻き付けられていて、このフライスチェーンは突出する刃を備えているチェーンソーを使用することが想定されていてよい。
【0069】
好ましくは、少なくとも2つのブレードを有するチェーンソーを使用することが想定されている。
【0070】
フライス幅が凹部の幅に相当するチェーンソーを使用することも想定されていてよく、この場合、チェーンソーは、壁内に進入するときに、その側方位置を壁に対して相対的に変化させないように線形にガイドされる。
【0071】
好ましくは、フライス高さが凹部の高さに相当するチェーンソーを使用することも想定され、この場合、チェーンソーは、壁内に進入するときに、その高さ位置を壁に対して相対的に変化させないように線形にガイドされる。
【0072】
チェーンソーは、壁内に進入するときまたは進入した後、高さ方向で上下移動させられることが想定されていてよい。
【0073】
好ましくは、支持体を含むチェーンソーであって、この支持体には、壁を、-好ましくは調節可能な-ストッパおよび/またはホルダによって正確に固定することができることが想定されている。
【0074】
好ましくは線形の少なくとも1つのガイドに沿って、手動でかつ/またはモータによって動かすことができるチェーンソーを使用することが想定されていてよい。
【0075】
さらに、本発明による少なくとも1つの壁および/または本発明による壁を製造するための方法によって製造された壁を備えた家具または家具キャビネットが特許請求される。
【0076】
好ましくは、少なくとも1つのプレースホルダを、壁の端面から少なくとも1つの凹部内に装着し、かつ/または壁の端面を介して取り出すことが想定されている。
【0077】
本発明のその他の詳細および利点は、以下の図面の説明により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】本発明の1つの実施例による壁を製造するための方法を示す図である。
【
図2】本発明の1つの実施例による壁を製造するための方法を示す図である。
【
図3】本発明の1つの実施例による壁を製造するための方法を示す図である。
【
図4】本発明の1つの実施例による壁を製造するための方法を示す図である。
【
図5】本発明の1つの実施例による壁を製造するための方法を示す図である。
【
図6】本発明の1つの実施例による壁を製造するための方法を示す図である。
【
図7】本発明の1つの実施例による壁を製造するための方法を示す図である。
【
図8】本発明の1つの実施例による壁を製造するための方法を示す図である。
【
図9】壁の被覆および/または化粧張りを示す図である。
【
図10】壁の被覆および/または化粧張りを示す図である。
【
図11】壁の被覆および/または化粧張りを示す図である。
【
図12】壁の被覆および/または化粧張りを示す図である。
【
図13】壁の被覆および/または化粧張りを示す図である。
【
図16】壁を備えた家具キャビネットを示す図である。
【
図17】壁を備えた家具キャビネットを示す図である。
【
図21】壁内の凹部の代替的な製造を示す図である。
【
図22】壁内の凹部の代替的な製造を示す図である。
【
図23】壁内の凹部の代替的な製造を示す図である。
【
図24】壁内の凹部の代替的な製造を示す図である。
【0079】
図1~
図6は、本発明による壁1の1つの実施例を製造するための方法を示している。
【0080】
この場合、
図1には、壁1のための出発材料が、より詳しく言うならば出発プレートが示されている。
【0081】
この壁1には、第1の方法ステップで、
図2および
図3により明らかであるような凹部7が加工されて設けられる。
【0082】
この場合、
図2は、凹部7を備えた
図1の壁1を示しており、
図3では、壁1の凹部7の内側の輪郭が見て取れる
図2の図が選択されている。
【0083】
相応の凹部7をどのようにして壁1に製作もしくはフライス加工することができるかについては、後続の
図18~
図20によってより詳しく説明する。
【0084】
図4は、その幾何学的形状が凹部7に適合されているプレースホルダ11を示しており、このプレースホルダは、
図5および6によって明らかであるように、次いで壁1内に、より正確に言えば、凹部7内に導入される。
【0085】
この場合、プレースホルダ11は、壁1の端面1aを介して、凹部7の長手方向延在に沿って、プレースホルダ11が、凹部7の後壁7eに接触するまで挿入される。
【0086】
凹部7内にプレースホルダ11が完全に挿入されたこの状態は、
図7および
図8によっても示されており、
図7は、より良好な見え方を保証するために、壁1、および隠されている縁部を含めてプレースホルダ11を示している。
【0087】
したがって、プレースホルダ11の幾何学的構成およびサイズが凹部7に適合された様子が良好に見て取れ、この場合、プレースホルダ11は、凹部7と実質的に同じ横断面を有している。
【0088】
プレースホルダは、この実施例では、凹部7の2つの内壁7a,7b、上壁7c、底壁7d、ならびに後壁7eに接触している(凹部の個々の壁のより詳しい説明については、
図21~
図24を参照されたい)。
【0089】
プレースホルダ11のこのような幾何学的構成は、これにより凹部7をほぼ完全に覆うことができ、壁1を良好に安定化し、壁1が、例えば搬送、もしくは被覆プロセスまたは化粧張りプロセスにおける加工により負荷をかけられた場合でも、損傷することなく比較的高い力に耐えることができる。
【0090】
プレースホルダ11は、この場合、凹部7の所定の区分で、凹部7に対して過剰寸法を備えて構成することができるので、プレースホルダ11と凹部7との間にプレス嵌めが実現され、これによってプレースホルダ11は凹部7内に固定される。
【0091】
しかしながら、プレースホルダ11を凹部7内に固定するために、プレースホルダを、例えば接着滴によって凹部7内に接着させることも十分に考えられるが、この場合、接着滴によるこのような接着結合は、プレースホルダ11を凹部7から取り出すために、最小の力作用によって再び解消することが可能である。
【0092】
図9~
図13は、壁1の被覆プロセスおよび/または化粧張りプロセスを示しており、この場合、プレースホルダ11は凹部7内に装着されている。
【0093】
したがって、壁1は、凹部7内に挿入されたプレースホルダ11と共に(例えば
図8に示されているように)被覆材14または化粧張り13で覆われ、これにより、挿入されたプレースホルダ11を含む凹部7の開口の領域も(例えば
図9から明らかなように)被覆される。
【0094】
この場合、凹部7内のプレースホルダ11は、被覆材14または化粧張り13によって凹部7内に閉じ込められる。このことは、例えば
図10によって示されており、この図では、見やすくするために、隠されている線および縁が示されている。
【0095】
このような化粧張りプロセスおよび/または被覆プロセス後は、(
図11に示されているように)凹部7の壁1の端面1aにおける開口が露出されていて、この場合、被覆材14および/または化粧張り13は、プレースホルダ11を解放するために、
図12に示されているように凹部7の開口に沿って切断される。
【0096】
凹部7内のプレースホルダ11の解放後は、プレースホルダ11は、例えばドライバまたはその他の工具によって凹部7から引き出されるもしくは取り除かれる。
【0097】
【0098】
壁1からプレースホルダ11を取り出した後、次いで、
図14および
図15に示されているように、金具9を凹部7内に導入することができる。
【0099】
この場合、金具9は-詳しく言うならば、フラップ金具12は-、壁1の端面1aから凹部7内に挿入され、そこで固定される。
【0100】
このフラップ金具は、
図16および
図17でさらに示すように、壁1に対して相対的に家具フラップ10をガイドするために形成されている。
【0101】
図16は、先行する図面の実施例による2つの側壁1を備えた家具キャビネット8を示している。
【0102】
この場合、これらの側壁1内に、フラップ金具12が装着されている。
【0103】
図17は、側壁1内における両フラップ金具12と、フラップ金具12の作動アームに組み付けられた家具フラップ10とを備えた家具キャビネット8を示しており、家具フラップは、フラップ金具12を介して家具キャビネット8に対して相対的に開放位置と閉鎖位置との間で可動である。
【0104】
図18、
図19および
図20は、チェーンソー2によって側壁1内に少なくとも1つの凹部7を加工して設ける方法の実施例の方法ステップを概略的に示している。
【0105】
図18~
図20には、家具キャビネット用の壁1を製造するための実施例の主要なステップが示されている。
【0106】
図18には、実質的に直方体状の壁1が示されていて、この壁は例えば、木または木材から成っていて、好ましくは、家具構造において典型的に使用されるような被覆されたパーティクルボードまたはMDFボードである。
【0107】
壁1は、好ましくは、1つの部材から成っている。この一体性は、以下に説明する、チェーンソー2による凹部7の加工成形中にも維持され続ける。
【0108】
しかしながら、壁1が1つの部材から成っているという概念は、壁1が、加工前は、例えば、パネル工場から供給される多層パネルであるということを排除するものではない。
【0109】
重要であることは、凹部7を加工成形するために複数の部分は必要ないということである。
【0110】
むしろ、
図18~
図20の一連の図に示したように、端面1aのためのチェーンソー2の使用により、チェーンソー2が加工方向6で端面1aから壁1内に押し込まれることにより、1つの凹部7が壁1内にフライス加工される。
【0111】
チェーンソー2は、電動モータを備えた駆動装置ケーシング3と、突出したブレード4とを有しており、このブレードの周囲に環状のフライスチェーン5が巻き付けられている。
【0112】
このフライスチェーン5は公知のように、好ましくは硬質金属から成る複数の刃を支持する(ここには図示せず)個々の部材を有している。
【0113】
これらの刃は、自体公知のものであり、実際に切削加工を行うフライス工具を成す。
【0114】
壁1からチェーンソー2を引き戻した後、-
図20に示したように-循環するフライスチェーン5を含むブレード4の形状に実質的に相当する凹部7が残される。
【0115】
図18~
図20に示した実施例では、すなわち、チェーンソー2は、唯1つの方向で(一軸的に)線形に、すなわち、上側縁または下側縁に対して平行、かつ両平坦な側面1bに対しても平行に、壁1内に入り、壁1から出る。
【0116】
【0117】
図21~
図24により示された製造では、まず、壁1内にフライス加工法によりフライス加工部または凹部7が製作される。フライス加工により壁1内に製作されたこのような凹部7は、
図21に示されている。
【0118】
凹部7は、
図21の実施例では、壁の側面1bから壁1内にフライス加工されて、壁1の端面1aを貫通している。
【0119】
凹部7は、少なくとも1つの部分辺において(この実施例では3つの部分辺において)、カバーエレメント16(
図22参照)を収容するために形成されている収容溝15により取り囲まれている。
【0120】
例えば、
図22に単独で示されているこのようなカバーエレメント16は、収容溝15に相当する外寸を有しているので、カバーエレメント16を収容溝15に装着して、収容溝を埋めることができる。
【0121】
好ましくは、カバーエレメント16は、収容溝15の深さに相当する厚さも有しているので、カバーエレメント16は、収容溝15内に装着後、側面1bと1つの平坦な面を形成する。
【0122】
しかしながら、カバーエレメント16の厚さが、収容溝15の深さよりも大きく形成されていて、カバーエレメント16は収容溝15内への装着後、切削加工法(例えば、研削)によって、壁の側壁1bと共に1つの平坦な面を形成するように製作されることも想定することができる。
【0123】
図23に示されているように、カバーエレメント16を収容溝15内に装着して、例えば、材料接続的な結合(例えば、接着または塗装)により壁1に結合することもできる。
【0124】
壁1とカバーエレメント16との結合、これによる1つの平坦な側面1bの製造は、
図24により示されている。
【0125】
カバーエレメント16と壁1とによって、
図2および
図3の実施例に相当する凹部7が製造されることが明らかである。
【0126】
壁1とカバーエレメント16との結合に続いて、
図4~
図13に示されたような方法ステップを再び実施することができ、この場合、プレースホルダ11が凹部7内に導入される。
【0127】
図25は、フラップ金具を収容する前の壁1の斜視図を示している。
図26は、同じ斜視図を内部の図と共に示しており、この図からは、凹部7の形状が明らかである。
図27は、
図18、
図19および
図20による壁1の端面1aを示す図である。
図28は、上述した図の壁の側面図をしている。
【0128】
図25および
図26は、やや異なる壁の実施例を示しており、この壁は、特にフラップ金具を収容するために適しているような、
図18~
図20よりもやや大きな凹部7を示している。
【0129】
図26には、(まだ金具が装着されていない)本発明による壁1の好適な実施形態の幾何学形状的な特性が示されている。
【0130】
凹部7は、2つの平行な側方の平坦な内壁7a,7bを有しており、これらの内壁は、好ましくは、壁1の外側の側面1bに対して平行に位置していて、好ましくは壁1の端面1aに対して垂直に延在している。
【0131】
これにより、凹部7の左右には、もはや極めて薄い残留壁1cしか残されていないが、この残留壁は、壁1の内面および外面の外観を、凹部7が存在していないかのように見せるのに十分である(
図25参照)。
【0132】
逆に、この薄い残留壁1cにより、凹部7の比較的幅の広い内室が可能となるので、より大きなフラップ金具も収容することができる。
【0133】
凹部7は、有利には、2つの平行な上方および下方の平坦な上壁7cおよび底壁7dを有しており、これらの壁も、好ましくは壁1の端面1aに対して垂直に延在している。
【0134】
これにより全体として、典型的にはその外寸において同様に直方体形の金具、特にフラップ金具を収容するために良好に適している、実質的に直方体状の凹部7が得られる。
【0135】
凹部7は、
図25および
図26に示された実施例では、すなわち、壁1の端面1aに対して垂直方向に見た図では、矩形に成形されており、好ましくは、この矩形の横断面は、凹部7の奥行きTの少なくとも80%の大部分にわたって続いていることが想定されている。
【0136】
後壁7eも、
図28によりさらに明らかとなるように、壁1の端面1aに対して好ましくは平行にまたはやや傾斜して延びる平坦な区分を有している。
【0137】
後壁7eの平坦な区分と、凹部7の上壁7cおよび/または底壁7dとの間にのみ、壁面7c,7dと7eとを互いに接続するもしくはこれらの壁面が互いに移行している、平坦ではない円弧状の区分7fが設けられている。
【0138】
このような丸み部は、典型的なチェーンソー2の丸み付けされた前側領域に由来するもので、使用される金具、特にフラップ金具のためのスペース縮小が可能な限り僅かであるように維持するために、できるだけ小さく保持されるべきである。
【0139】
すなわち、全体として有利には、例えば
図26に示されているように、凹部7は袋孔として形成されていて、壁1の端面1aにおける開口以外は両側で閉じられていることが想定されている。
【0140】
これにより壁1の外観は、金具の技術的な構成要素により損なわれることはない。
【0141】
壁1は、実質的に、家具キャビネットもしくは家具の通常の壁と同様に見える。
【0142】
図25および
図26には、例えば、フラップ金具の形態の金具を後に凹部7内に装着した際に好適であるような、壁1の例示的な寸法設定と、凹部7の好適な寸法設定とが記載されている。
【0143】
壁1は、最初は、今日の家具構造において典型的な16mmの板厚(厚さ)Dを有する(被覆された)パーティクルボード、MDFプレート、またはその他の木材から成る板である。
【0144】
さらに、他の壁厚を有する板、例えば19mmの厚さを有する板も使用することができる。しかしながらこの方法は、極めて薄い板でも、すなわち16mmの板厚Dを有するような板でも実現することができる。
【0145】
このために、上述したように、そして以下でさらに説明するように、チェーンソー2によって凹部7がフライス加工され、この凹部によってもはや、1.5mm~3mm、好ましくは2mmの壁厚WSを有する極めて僅かな残留壁1cしか残されない。
【0146】
このような残留壁の厚さによって、一方では、凹部7の内法幅を大きくすることができ、かつ例えば、僅かな厚さの残留壁1cの湾曲のような不都合な影響も回避することができる。
【0147】
以下でさらに詳しく説明するように、家具フラップを持ち上げるためのフラップ金具の形態の金具を凹部7内に装着するためには特に、
図23および
図24に示した以下の寸法が好適である。
【0148】
有利には、凹部7の最大奥行きTは、少なくとも150mm、好ましくは少なくとも200mm、特に好適には少なくとも250mmであることが想定されている。
【0149】
有利にはさらに、凹部7の幅Bが、10mm~16mmであり、好ましくは約12mmであることが想定されている。
【0150】
さらに有利には、凹部7の高さHが、80mm~160mmであり、好ましくは約120mmであることが想定されている。
【0151】
好適な実施形態によれば、凹部7が可能な限り細く、かつ奥行きがあることが想定されている。
【0152】
相対的数値で表現すると、このことは、凹部7の最大奥行きTが、凹部7の幅Bよりも少なくとも15倍、好ましくは少なくとも20倍大きいことを意味する。
【0153】
有利にはさらに、凹部7の最大奥行きTが、凹部7の高さHよりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍大きいことが想定されている。
【0154】
円弧状の区分7fの半径は、例えば、26.5mmである。半径は、-既に説明したように-主として、チェーンソー2のブレード4の前方形状により起因するものである。
【符号の説明】
【0155】
1 壁
1a 端面
1b 側面
1c 残留壁
2 チェーンソー
3 駆動装置ケーシング
4 ブレード
5 フライスチェーン
6 加工方向
7 凹部
7a 内壁
7b 内壁
7c 上壁
7d 底壁
7e 後壁
7f 円弧状の区分
8 家具キャビネット
9 金具
10 家具フラップ
11 プレースホルダ
12 フラップ金具
13 化粧張り
14 被覆材
15 収容溝
16 カバーエレメント
D 厚さ
WS 壁厚
T 奥行き
B 幅
H 高さ
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具キャビネット(8)用の壁、特に側壁であって、前記壁(1)は、前記壁(1)の、好ましくは平坦な端面(1a)から延在する少なくとも1つの凹部(7)を有しており、前記少なくとも1つの凹部(7)は、家具部分を、特に家具フラップ(10)または家具扉を、前記壁(1)に対して相対的にガイド可能な金具(9)を収容するために形成されており、好ましくは、前記少なくとも1つの凹部(7)は、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記壁(1)内へとフライス加工されている壁において、
前記少なくとも1つの凹部(7)内には、前記金具(9)の代わりに、少なくとも1つの、好ましくはちょうど1つのプレースホルダ(11)が装着されていることを特徴とする、壁。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、幾何学的な寸法により形状接続的に前記少なくとも1つの凹部(7)に取り付けられていて、好ましくは、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、少なくとも1つの突出部を有しており、前記少なくとも1つの突出部の領域で、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)と前記少なくとも1つの凹部(7)との間のプレス嵌めが行われている、請求項1記載の壁。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、材料接続的な結合によりかつ/または少なくとも1つの保持手段により、前記少なくとも1つの凹部(7)内に取り外し可能に取り付けられている、請求項
1記載の壁。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、好ましくは熱可塑性の、プラスチック、木材、厚紙材料および/または複合材料から形成されている、請求項
1記載の壁。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、中実に形成された構成部品として、または補強構造を有する構成部品として形成されている、請求項
1記載の壁。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、前記少なくとも1つの凹部(7)に沿って、前記少なくとも1つの凹部(7)と実質的に同じ横断面を有している、請求項
1記載の壁。
【請求項7】
前記少なくとも1つの凹部(7)は、2つの平行な側方の平坦な内壁(7a,7b)を有しており、前記内壁は、好ましくは前記壁(1)の外側の側面(1b)に対して平行に位置していて、好ましくは前記壁(1)の前記端面(1a)に対して垂直に延在している、請求項
1記載の壁。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、前記少なくとも1つの凹部(7)の奥行き(T)の少なくとも60%の、好ましくは75%の、特に好適には90%の長さに相当する長さを有している、請求項
1記載の壁。
【請求項9】
前記少なくとも1つの凹部(7)は、2つの平行な上方および下方の平坦な上壁および/または底壁(7c,7d)を有しており、前記上壁および/または底壁は、好ましくは前記壁(1)の前記端面(1a)に対して垂直に延在している、請求項
1記載の壁。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)は、前記少なくとも1つの凹部(7)の少なくとも2つの内壁(7a,7b)に、好ましくは前記上壁および/または底壁(7c,7d)に接触するように配置されており、これにより前記少なくとも1つの凹部(7)の前記少なくとも2つの内壁(7a,7b)は、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)によって互いに支持されている、請求項
1記載の壁。
【請求項11】
前記少なくとも1つの凹部(
7)は、前記壁(1)の前記端面(1a)に対して垂直方向に見て、矩形に成形されており、好ましくは、このような矩形の横断面は、前記少なくとも1つの凹部(7)の前記奥行き(T)の少なくとも80%の大部分にわたって続いていることが想定されている、請求項
1記記載の壁。
【請求項12】
前記少なくとも1つの凹部(7)の後壁(7e)は、前記壁(1)の前記端面(1a)に対して好ましくは平行にまたはやや傾斜して延びる平坦な区分を有している、請求項
1記載の壁。
【請求項13】
前記少なくとも1つの凹部(7)の前記後壁(7e)は、前記平坦な区分と、前記少なくとも1つの凹部(7)の前記上壁(7c)および/または前記底壁(7d)との間で、円弧状の区分(7f)において、前記上壁および/または前記底壁に移行している、請求項
9および請求項12記載の壁。
【請求項14】
前記少なくとも1つの凹部(7)は袋孔として形成されていて、前記壁(1)の前記端面(1a)における開口以外はすべての側で閉じられている、請求項
1記載の壁。
【請求項15】
前記壁(1)は、家具キャビネット(8)の、組み付け状態で垂直な側壁または中間壁であって、前記金具(9)は、家具フラップ(10)が取り付け可能なフラップ金具(12)である、請求項
1記載の壁。
【請求項16】
前記少なくとも1つの凹部(
7)内には、前記金具(9)の代わりの少なくとも1つのプレースホルダ(11)が、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着されていて、かつ/または前記壁(1)の前記端面(1a)を介して取り外し可能である、請求項
1記載の壁。
【請求項17】
請求項
1記載の少なくとも1つの壁(1)と、家具部分、特に家具フラップ(10)または家具扉を、前記壁(1)に対して相対的にガイド可能な少なくとも1つの金具(9)とから成るアセンブリであって、前記少なくとも1つの金具(9)は、少なくとも1つの凹部(7)における少なくとも1つのプレースホルダ(11)の取り出し後に、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)の代わりに配置可能である、アセンブリ。
【請求項18】
家具キャビネット(8)用の壁(1)、好ましくは請求項
1記載の壁(1)を製造するための方法であって、以下のステップ、すなわち、
-前記壁(1)に少なくとも1つの凹部(7)を加工して設けるステップであって、前記少なくとも1つの凹部(7)は、前記壁(1)の好ましくは平坦な端面(1a)から前記壁(1)内に延在しており、好ましくは、前記少なくとも1つの凹部(7)を、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記壁(1)内へとフライス加工するステップ、
-家具部分、特に家具フラップ(10)または家具扉を、前記壁(1)に対して相対的にガイド可能な金具(9)の代わりに少なくとも1つの、好ましくはちょうど1つのプレースホルダ(11)を前記少なくとも1つの凹部内に装着するステップ、を有しており、
-好ましくは、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着する前記ステップの後に、前記壁(1)を、さらなる加工のために、空間的に離れた場所へと移動させる
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を、さらなるステップで前記少なくとも1つの凹部(7)から取り外し、前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)の代わりに、前記家具部分をガイドするための前記少なくとも1つの金具(9)を前記少なくとも1つの凹部(7)に配置する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着された前記少なくとも1つの金具(9)に、または前記金具の突出した部分に、特にフラップ金具(12)の作動アームに、家具部分、特に扉または家具フラップ(10)を取り付ける、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着した後、前記壁(1)を少なくとも所定の領域で化粧張りする、かつ/または前記壁に被覆材(14)を被着する、請求項1
8記載の方法。
【請求項22】
化粧張り(13)および/または前記被覆材(14)を、前記壁(1)の前記端面(1a)における前記少なくとも1つの凹部(7)の開口の領域で除去し、これにより前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を解放する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記壁(1)の前記端面(1a)からチェーンソー(2)を前記壁内へと動かすことにより、前記少なくとも1つの凹部(7)を、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記壁(1)内にフライス加工する、請求項1
8記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つのプレースホルダ(11)を、前記壁(1)の前記端面(1a)から前記少なくとも1つの凹部(7)内に装着し、かつ/または前記壁(1)の前記端面(1a)を介して取り出す、請求項1
8記載の方法。
【請求項25】
請求項1から16までのいずれか1項記載の少なくとも1つの壁(1)を備えた、かつ/または請求項18から24までのいずれか1項記載の、壁(1)を製造するための方法により製造された少なくとも1つの壁(1)を備えた、家具または家具キャビネット。
【国際調査報告】