(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】シーケンシングライブラリ構築方法と使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6806 20180101AFI20241029BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20241029BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20241029BHJP
C40B 40/06 20060101ALI20241029BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20241029BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20241029BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C40B40/06
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6888 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533124
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2022132866
(87)【国際公開番号】W WO2023098492
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111447642.2
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524208803
【氏名又は名称】江蘇為真生物医薬技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU MICRODIAG BIOMEDICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 101 And 201, Building 16, Northwest District, Suzhou Nano City, No. 99, Jinji Lake Avenue, Suzhou Industrial Park, Pilot Free Trade Zone Suzhou Area, Jiangsu, 215000, China
(71)【出願人】
【識別番号】524208814
【氏名又は名称】蘇州普瑞邁徳医学検験所有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU PREMED MEDICAL LABORATORY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】(NW-16) Building 16, Northwest Area, Suzhou Nano City, 99 Jinjihu Avenue, Suzhou Industrial Park, Suzhou, Jiangsu 215000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】巴 兆粉
(72)【発明者】
【氏名】宋 如晦
(72)【発明者】
【氏名】張 嘉欣
(72)【発明者】
【氏名】孫 浩
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲タオ▼
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】
シーケンシングライブラリの構築方法であって、デオキシリボ核酸の増幅及びライブラリ構築を行うために使用されるプライマー配列断片を提供し、前記プライマー配列断片に対して処理を行って、5’末端がGである増幅プライマーを得ることを含み、ここで、前記処理は、前記プライマー配列断片の5’末端の塩基がGでない場合は、5’末端にGを連結すること、前記プライマー配列断片の5’末端の塩基がGの場合は、5’末端にGを連結するか又は連結しないこと、5’末端がGである前記増幅プライマーを用いてサイクリック増幅を行って、3’末端がCである増幅断片を得ること、デオキシリボ核酸の3’末端にAを付加すること、及び3’末端にAを付加した前記増幅断片に、T粘着末端を含むリンカーを連結して連結産物を生成することを含む。さらに、シーケンシングライブラリ構築用の増幅プライマー、シーケンシングライブラリ、シーケンシングライブラリ構築用のキット、変異部位検出キット、染色体倍数性検出キット、遺伝子融合検出キット、及びシーケンシング方法が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーケンシングライブラリ構築用の増幅プライマーであって、標的断片に相補的なプライマー配列断片と、前記プライマー配列断片の5’末端に連結された塩基Gとを含み、前記増幅プライマーと前記標的断片は前記塩基Gにおいて相補的ではない、増幅プライマー。
【請求項2】
前記塩基Gは前記プライマー配列断片の5’末端に直接連結される、請求項1に記載の増幅プライマー。
【請求項3】
前記塩基Gはリン酸化によって修飾された塩基である、請求項1又は請求項2に記載の増幅プライマー。
【請求項4】
シーケンシングライブラリ構築用のキットの作製における請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の増幅プライマーの使用。
【請求項5】
シーケンシングライブラリの構築方法であって、
デオキシリボ核酸の増幅及びライブラリ構築を実行するために使用されるプライマー配列断片を提供し、前記プライマー配列断片は標的断片と相補的であり、
前記プライマー配列断片に対して処理を行って、5’末端に塩基Gを有する増幅プライマーを得ることを含み、
ここで、前記処理は、
前記プライマー配列断片の5’末端の塩基がGでない場合は、前記プライマー配列断片の5’末端に塩基Gを連結すること、又は前記プライマー配列断片の5’末端の塩基がGである場合は、前記プライマー配列断片の5’末端に塩基Gを連結するか又は連結しないこと、
前記増幅プライマーを使用して前記デオキシリボ核酸に対してサイクリック増幅を行い、3’末端に塩基Cを有する増幅断片を得ること、
前記増幅断片の3’末端に塩基Aを付加すること、及び、
3’末端に塩基Aが付加された増幅断片にT粘着末端を含むアダプターを連結し、前記アダプターはシーケンシングプラットフォームに必要な配列を含むこと、
を含む方法。
【請求項6】
前記デオキシリボ核酸の増幅を行う前に、前記増幅プライマーの5’末端の塩基Gをリン酸化することをさらに含む、請求項5に記載のシーケンシングライブラリの構築方法。
【請求項7】
前記デオキシリボ核酸は、サンプルDNA、サンプルプラスミド、及びサンプルRNAの逆転写によって得られたデオキシリボ核酸からなる群から選択される、請求項5又は請求項6に記載のシーケンシングライブラリの構築方法。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載のシーケンシングライブラリの構築方法によって構築されたシーケンシングライブラリ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の増幅プライマーを含む、シーケンシングライブラリ構築用のキット。
【請求項10】
塩基Aを添加するための試薬、アダプターを添加するための試薬、PCR増幅用試薬、及び精製用試薬のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載のシーケンシングライブラリの構築方法を
使用してサンプルのシーケンシングライブラリを構築し、シーケンシングを行うことを含む、シーケンシング方法。
【請求項12】
前記サンプルに対して変異部位検出、染色体倍数性検出、遺伝子融合検出、及び病原性微生物検出のうちのいずれか1つを行うために使用される、請求項11に記載のシーケンシング方法。
【請求項13】
前記変異部位検出は、腸がん変異部位、子宮頸がん変異部位、及び尿路上皮がん変異部位のうち少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシーケンシング方法。
【請求項14】
前記染色体倍数性は、腸がんの染色体倍数性、子宮頸がんの染色体倍数性、及び尿路上皮がんの染色体倍数性のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシーケンシング方法。
【請求項15】
前記遺伝子融合は、EML4-ALK遺伝子融合、CD74-ROSI遺伝子融合、CCDC6-RET遺伝子融合、NCOA4-RET遺伝子融合、及びTPM3-NTRK1遺伝子融合のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシーケンシング方法。
【請求項16】
前記病原性微生物は、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、及びSARS-CoV-2のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシーケンシング方法。
【請求項17】
前記シーケンシングはハイスループットシーケンシングである、請求項11乃至請求項16のいずれか一項に記載のシーケンシング方法。
【請求項18】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の増幅プライマーを含む、変異部位検出キット。
【請求項19】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の増幅プライマーを含む、染色体倍数性検出キット。
【請求項20】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の増幅プライマーを含む、遺伝子融合検出キット。
【請求項21】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の増幅プライマーを含む、病原性微生物検出キット。
【請求項22】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の増幅プライマーを用いてPCR増幅を行い、増幅産物の末端にAを付加する工程を含む、TAクローニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本開示は、2021年12月01日に出願された「シーケンシングライブラリ構築方法及び使用」と題する中国特許出願番号2021114476422の優先権を主張するものであり、その内容は参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
本開示は、シーケンシング技術の分野、特にシーケンシングライブラリ構築方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイスループットシーケンシングは、超並列シーケンシングまたは次世代シーケンシングとも呼ばれます。ハイスループットシーケンシングでは、1 つのサンプルの複数のターゲット領域または複数のサンプルを一度にシーケンシングすることができ、薬理ゲノミクス、遺伝性疾患の研究とスクリーニング、腫瘍変異遺伝子の検出、臨床微生物学的検出などの臨床での使用も徐々に注目を集めている。
【0003】
全ゲノムシーケンシングは大きな進歩を遂げているが、この技術に関連する解釈データベースが不完全で不正確であることや、シーケンシングコストが高いことなどの問題がまだある。この技術の高コストと技術的な複雑さにより、全ゲノムシーケンシングの使用が制限されている。そのため、特定のゲノム領域に対するターゲット領域エンリッチメントのハイスループットシーケンシングライブラリ構築のさまざまな方法が広く開発され、使用されており、それによってカバレッジが向上し、プロセスの簡素化とコスト削減の目的が達成されている。
【0004】
特定領域に対するターゲットエンリッチメントのライブラリ構築には、プローブハイブリダイゼーションキャプチャとマルチプレックスPCR増幅の2つの主な方法がある。このうち、マルチプレックスPCR産物を用いたライブラリ構築には、現在、ライゲーション反応により産物にアダプターを付加する方法と、2回のPCR(1回目は5’末端にユニバーサル配列を持つプライマーを使用し、2回目はプライマーをアニーリングさせてアダプターを付加)によりアダプターを付加する方法の2つの主な方法がある。マルチプレックスPCR産物にアダプターを付加するライブラリ構築方法は、主流のライブラリ構築方法である。
【0005】
TA粘着末端のライゲーション効果は平滑末端よりも優れているため、現在ではTAライゲーションによるアダプターの付加が主に使用されている。一部のDNA ポリメラーゼは、テンプレートに依存せずにDNA断片の3’末端にA塩基を付加することを触媒できる。この発見は、TAクローニングや次世代シーケンシングライブラリ構築などの一連の技術の基礎を築いた。ただし、現在のDNA断片の3’末端へのA塩基の直接触媒付加は効率的ではなく、不安定である。
【発明の概要】
【0006】
これに基づいて、本開示の様々な実施形態によれば、標的断片に相補的なプライマー配列断片と、プライマー配列断片の5’末端に連結された塩基Gとを含む、シーケンシングライブラリ構築用の増幅プライマーが提供され、増幅プライマーと標的断片は塩基Gにおいて相補的ではない。
【0007】
一実施形態では、塩基Gはプライマー配列断片の5’末端に直接連結される。
【0008】
一実施形態では、塩基Gはリン酸化によって修飾された塩基である。
【0009】
本開示の様々な実施形態によれば、シーケンシングライブラリを構築用のキットの作製における上記の増幅プライマーの使用が提供される。
【0010】
本開示の様々な実施形態によれば、シーケンシングライブラリの構築方法が提供される。この方法は、以下を含む:
デオキシリボ核酸の増幅及びライブラリ構築を実行するために使用されるプライマー配列断片を提供し、プライマー配列断片は標的断片と相補的であり、
プライマー配列断片に対して処理を行って、5’末端に塩基Gを有する増幅プライマーを得ることを含み、処理は以下を含む:
プライマー配列断片の5’末端の塩基がGでない場合は、プライマー配列断片の5’末端に塩基Gを連結すること、又はプライマー配列断片の5’末端の塩基がGである場合は、プライマー配列断片の5’末端に塩基Gを連結するか又は連結しないこと;
5’末端に塩基Gを有する増幅プライマーを使用してデオキシリボ核酸に対してサイクリック増幅を行って、3’末端に塩基Cを有する増幅断片を得ること;
増幅断片の3’末端に塩基Aを付加すること;及び
3’末端に塩基Aが付加された増幅断片にT粘着末端を含むアダプターを連結し、アダプターはシーケンシングプラットフォームに必要な配列を含むこと。
【0011】
一実施形態では、この方法は、デオキシリボ核酸の増幅を行う前に、増幅プライマーの5’末端の塩基Gをリン酸化することをさらに含む。
【0012】
一実施形態では、デオキシリボ核酸は、サンプルDNA、サンプルプラスミド、及びサンプルRNAの逆転写によって得られたデオキシリボ核酸からなる群から選択される。
【0013】
本開示の様々な実施形態によれば、上記のシーケンシングライブラリの構築方法によって構築されたシーケンシングライブラリが提供される。
【0014】
本開示の様々な実施形態によれば、上記増幅プライマーを含む、シーケンシングライブラリを構築するためのキットが提供される。
【0015】
一実施形態では、キットには、塩基Aを添加するための試薬、アダプターを添加するための試薬、PCR増幅用試薬、及び精製用試薬のうち少なくとも1つをさらに含む。
【0016】
本開示の様々な実施形態によれば、上記シーケンシングライブラリの構築方法を使用してサンプルのシーケンシングライブラリを構築し、シーケンシングを行うことを含むシーケンシング方法が提供される。
【0017】
一実施形態では、シーケンシング方法は、サンプルに対して、変異部位検出、変異部位検出、遺伝子融合検出、及び病原性微生物検出のうちのいずれか1つを行うために使用される。
【0018】
一実施形態では、変異部位は、腸がん変異部位、子宮頸がん変異部位、及び尿路上皮がん変異部位のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
一実施形態では、染色体倍数性は、腸がんの染色体倍数性、子宮頸がんの染色体倍数性、及び尿路上皮がんの染色体倍数性のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
一実施形態では、遺伝子融合は、EML4-ALK遺伝子融合、CD74-ROSI遺
伝子融合、CCDC6-RET遺伝子融合、NCOA4-RET遺伝子融合、及びTPM3-NTRK1遺伝子融合のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
一実施形態では、病原性微生物は、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、及びSARS-CoV-2のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
一実施形態では、シーケンシングはハイスループットシーケンシングである。
【0023】
本開示の様々な実施形態によれば、上記の増幅プライマーを含む変異部位検出キットが提供される。
【0024】
本開示の様々な実施形態によれば、上記増幅プライマーを含む染色体倍数性検出キットが提供される。
【0025】
本開示の様々な実施形態によれば、上記増幅プライマーを含む遺伝子融合検出キットが提供される。
【0026】
本開示の様々な実施形態によれば、上記増幅プライマーを含む病原微生物検出キットが提供される。
【0027】
本開示の様々な実施形態によれば、上記増幅プライマーを使用してPCR増幅を行い、増幅産物の末端にAを付加する工程を含むTAクローニング方法が提供される。
【0028】
本開示の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本開示のその他の特徴、目的及び利点は、明細書、添付の図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本明細書に開示された開示の実施形態及び/又は実施例をより良く説明及び例示するために、1つまたは複数の添付図面を参照することができる。添付図面を説明するために使用される追加の詳細又は実施例は、開示された発明、現在記載されている実施形態及び/又は実施例、及び現在理解されている開示の好ましい態様のいずれかの範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による、高忠実度複数酵素を用いた従来のプライマーと本開示のプライマーを使用したDNAのアンプリコンライブラリ構築プロセスの概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態による、非高忠実度複数酵素を用いた従来のプライマーと本開示のプライマーを使用したDNAのアンプリコンライブラリ構築プロセスの概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態による、高忠実度複数酵素を用いた従来のプライマーと本開示のプライマーを使用したRNAのアンプリコンライブラリ構築プロセスの概略図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態による、非高忠実度複数酵素を用いた従来のプライマーと本開示のプライマーを使用したRNAのアンプリコンライブラリ構築プロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示の理解を容易にするために、本開示は、関連する添付図面を参照して、以下でより詳細に説明される。本開示の様々な実施形態が添付図面に示されている。しかし、本開示は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書で説明される実施形態に限定さ
れない。むしろ、これらの実施形態は、本開示の内容の理解がより徹底的になるように提供される。
【0031】
本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、特に定義されない限り、本開示が適用される技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で本開示の明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本開示を制限することを意図するものではない。
【0032】
3’末端dAの付加効率はテンプレートによって異なる。例えば、3’末端dAの付加効率はDNAの3’末端のヌクレオチド塩基組成に依存し、4%から75%の間で変動する。DNAの3’末端ヌクレオチドが塩基C、T、G、又はAである場合にその対応するA付加効率は、それぞれ80~85%、75~80%、45~50%、又は20~30%である。
【0033】
そのため、異なる末端を持つDNA断片へのAの付加効率は異なる。
【0034】
本開示では、フォワードプライマー及びリバースプライマーの5’末端にGを追加して(プライマーの5’末端に元々Gがある場合は、追加する必要はない)、アンプリコンの上部及び下部相補鎖の3’末端が両方ともCになるようにすることで、テンプレートに依存しない3’末端へのAの付加を触媒するプロセスにおいて、各鎖へのAの付加が均等な確率で保証され、3’末端がCであるため80~85%の最大効率が保証され、TAライゲーション効率は改善される。
【0035】
本開示により、より高いA付加効率が確保され、TAライゲーションによりより多くのテンプレートにアダプターを付加することができ、ライブラリ変換率が向上する。また、末端修復などのプロセスが削減され、複雑な操作によるDNA回収率の低下が軽減される。この方法は、低頻度変異の検出にさらに役立つ。
【0036】
また、PCR産物のTAクローニングの適用において、本方法のクローニング効率も従来の方法よりも優れている。
【0037】
第1の態様において、本開示の実施例は、標的断片に相補的なプライマー配列断片と、プライマー配列断片の5’末端に連結された塩基Gとを含む、シーケンシングライブラリ構築用の増幅プライマーを提供し、増幅プライマーと標的断片は塩基Gにおいて相補的ではない。
【0038】
本明細書において使用される「相補的」という用語は、2つの核酸配列が塩基対形成原理(ワトソン・クリック原理)に従って互いに水素結合を形成し、それによって二重鎖を形成できることを意味する。本開示において、「相補的」という用語は、「実質的に相補的」及び「完全に相補的」を含む。本明細書において使用される「完全に相補的」という用語は、1つの核酸配列のすべての塩基が、ミスマッチやギャップが存在せずに、他の核酸鎖の塩基と対形成できることを意味する。本明細書で使用される「実質的に相補的」という用語は、一方の核酸配列の塩基の大部分が、ミスマッチ又はギャップ(例えば、1つ以上のヌクレオチドのミスマッチ又はギャップ)の存在を許容しながら、他方の核酸鎖の塩基と対形成できることを意味する。一般に、核酸のハイブリダイゼーション、アニーリング、又は増幅を可能にする条件下では、「相補的」(例えば、実質的に相補的又は完全に相補的)な2つの核酸配列は、選択的/特異的にハイブリダイズ又はアニーリングして二重鎖を形成する。
【0039】
本明細書において使用される「標的断片」、「標的増幅断片」及び「標的配列」という
用語は、増幅される標的核酸配列を指す。本開示において、「標的断片」、「標的増幅断片」及び「標的配列」という用語は同じ意味を有し、互換的に使用することができる。標的断片がサンプル配列に特異的であることは容易に理解される。言い換えれば、核酸のハイブリダイゼーション、アニーリング又は増幅が可能な条件下では、増幅プライマーは特定の標的断片にのみハイブリダイズ又はアニーリングして特定の断片を増幅し、他の核酸配列にはハイブリダイズ又はアニーリングしない。
【0040】
増幅プライマーが標的断片に相補的であり、プライマー配列断片が標的断片に相補的である場合、増幅プライマーと標的断片の末端は塩基Gで相補的ではない。
【0041】
いくつかの実施形態では、塩基Gは、他の塩基を間に挟むことなく、相補配列の5’末端に直接連結される。
【0042】
いくつかの実施形態では、塩基Gは、リン酸化によって修飾された塩基である。プライマーの5’末端は、二本鎖生成物の5’末端のリン酸化状態を確保するために、リン酸化によって修飾される。プライマーの5’末端のリン酸化は、ライブラリ構築におけるリン酸化反応及び精製ステップを減らすことができ、したがって時間を節約し、複数の操作工程によって引き起こされる分子損失を減らすことができる。プライマーの5’末端にGの追加及び5’末端のリン酸化の2点が組み合わせることによって、ライブラリ変換率が改善され、損失率を減らすことができる。
【0043】
第2の態様において、本開示の実施例は、上記増幅プライマーのシーケンシングライブラリを構築するためのキットの作製における使用を提供し、これにより、キットがより高いA付加効率を達成することを保証し、TAライゲーションによってより多くのテンプレートにアダプターを付加することができ、ライブラリ変換率が向上する。また、キットは末端修復などのプロセスを削減し、複雑な操作によって引き起こされるDNA回収率の低下を軽減する。
【0044】
第3の態様において、本開示の実施例は、以下を含むシーケンシングライブラリの構築方法を提供する:
デオキシリボ核酸の増幅及びライブラリ構築を行うために使用されるプライマー配列断片を提供し、プライマー配列断片は標的断片と相補的であり、プライマー配列断片に対して処理を行って、5’末端に塩基Gを有する増幅プライマーを得ることを含み、処理には以下が含まれる:
プライマー配列断片の5’末端の塩基がGでない場合、プライマー配列断片の5’末端に塩基Gを連結すること、又は
プライマー配列断片の5’末端の塩基がGである場合、プライマー配列断片の5’末端に塩基Gを連結するか又は連結しないこと;
増幅プライマーを使用してデオキシリボ核酸に対してサイクリック増幅を行い、3’末端に塩基Cを有する増幅断片を得ること;
デオキシリボ核酸の3’末端に塩基Aを付加すること;そして、
3’末端に塩基Aが付加された増幅断片にT粘着末端を含むアダプターを連結し、該アダプターにはシーケンシングプラットフォームに必要な配列を含むこと。
【0045】
3’末端dAの付加効率はテンプレートによって異なることから、3’末端のヌクレオチド塩基が塩基Cである場合に、対応するA付加効率が最も高くなる。本開示の上記シーケンシングライブラリ構築方法では、PCRプライマーの5’末端に塩基G(元々Gが存在する場合には追加する必要はない)を付加することにより、PCR産物の3’末端がCとなるようにし、各産物分子のA付加効率を同等又はより高くしていると保証される。産物の末端へのA付加効率が向上されたため、TAライゲーションにおけるアダプター付加
反応においてライゲーション効率が向上する。プライマー末端に修飾を導入してA付加に寄与する増幅産物を得る方法は、従来のライブラリ構築方法と比較して、増幅後の末端修復等のプロセスを削減し、煩雑な操作によるDNA回収率の低下を軽減し、プロセスが簡単で、試薬を節約でき、アダプターへのライゲーション効率も高い。この方法は、PCR産物のTAクローニング、変異部位検出、染色体倍数性検出、遺伝子融合検出、病原微生物検出等のシーケンシングを使用した検出方法にも使用できます。
【0046】
上記デオキシリボ核酸は、サンプルDNA、サンプルプラスミド、及びサンプルRNAの逆転写によって得られたデオキシリボ核酸からなる群から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、シーケンシングライブラリの構築方法は、アダプターの増幅プライマーを使用してライゲーション産物を増幅し、ライブラリの事前増幅を達成する工程をさらに含む。
【0048】
第4の態様において、本開示の実施例は、シーケンシングライブラリの構築方法によって構築されたシーケンシングライブラリを提供する。
【0049】
第5の態様において、本開示の実施例は、シーケンシングライブラリを構築するためのキットを提供する。
【0050】
シーケンシングライブラリを構築するためのキットは、上記の実施例のいずれかの増幅プライマーを含む。
【0051】
「キット」という用語は、少なくとも1つのデバイスを含む任意の物品(パッケージまたは容器など)を指す。該キットは、本明細書に記載の方法またはその工程で使用するための取扱説明書、補助試薬、コンポーネント、またはアセンブリのいずれか1つをさらに含んでもよい。
【0052】
必要に応じて、該キットは、Aを付加するための試薬、アダプターを付加するための試薬、PCR増幅用試薬、及び精製用試薬のいずれか1つ以上も含む。
【0053】
Aを付加するための試薬は、酵素及びdATPを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、3’末端にAを付加するために使用される酵素は、クレノウェックス(klenowex)酵素、Taq酵素、及びTaq酵素を有するクレノウェックス酵素からなる群から選択されるいずれか1つ以上である。あるいは、3’末端へのAの付加とアダプターのライゲーションを1つの反応系で行うことや、3’末端へのAの付加を行った後に精製してからアダプターにライゲーションを行う。1つの反応系で行うということは、3’末端にAを付加した後、精製せずにシーケンシングアダプターを直接ライゲーションすることを意味する。3’末端へのAの付加にはTaq酵素を使用することを好ましい。
【0055】
アダプターを付加するための試薬としては、リガーゼ及びアダプターが挙げられる。
【0056】
リガーゼは、HiFi Taq DNAリガーゼ、T4 RNAリガーゼ2、SplintR(登録商標)リガーゼ、9°NTM DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、T7 DNAリガーゼ、T3 DNAリガーゼ、エレクトロリガーゼ、ブラントエンド/TAリガーゼプレミックス、インスタントスティッキーリガーゼプレミックス、T4DNAリガーゼ、Circligase ssDNAリガーゼ、5′AppDNA/RNA耐熱性リガーゼからなる群から選択される1つ以上である。
【0057】
アダプターは、3’末端に突出したT塩基を有し、Aを付加した後のサンプルDNA断片との相補的対合に使用される。
【0058】
PCR増幅に使用される試薬は、DNAポリメラーゼ、dNTP及びDNAポリメラーゼバッファーからなる群から選択される1種または複数種であってもよい。
【0059】
さらに、DNAポリメラーゼは、vent DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Bsu DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、クレノウ(Klenow)フラグメント、DNAポリメラーゼI(E.coli)、TherminatorTMDNAポリメラーゼ、SulfolobusDNAポリメラーゼIV、phi29 DNAポリメラーゼ、Bst 2.0 DNAポリメラーゼ、BstDNAポリメラーゼ、Deep VentR(登録商標)DNAポリメラーゼ、Deep VentRTMDNAポリメラーゼ、VentR(登録商標)DNAポリメラーゼ、EpiMark(登録商標)Hot Start Taq DNA ポリメラーゼ、LongAmp(登録商標)Hot Start Taq DNA ポリメラーゼ、LongAmp(登録商標)Taq DNA ポリメラーゼ、Taq DNA ポリメラーゼラージフラグメント、OneTaq(登録商標)Hot Start DNA ポリメラーゼ、Phusion(登録商標)Hot Start Flex DNA ポリメラーゼ、Phusion(登録商標)Ultra-Fidelity DNA ポリメラーゼ、及びQ5(登録商標)Hot Start Q5(登録商標)ultra-fidelity DNA ポリメラーゼ等からなる群から選択される1つまたは2つ以上の酵素の組み合わせである。
【0060】
さらに、dNTPの濃度は2.5 mM、10 mMなどであってもよい。DNAポリメラーゼバッファーは、選択されたポリメラーゼに最もよく適合するバッファーとして選択される。
【0061】
DNA断片を精製する工程は、当該技術分野における従来の方法、例えば、精製用磁気ビーズを用いて行うことができる。あるいは、精製に用いられる試薬としては、1.8×磁気ビーズ、0.9×磁気ビーズ、及びEB溶液が挙げられる。
【0062】
本開示のキットにおいて、試薬は個別に包装されることが好ましいが、本開示の実施に影響を与えないという前提で、混合包装することもできる。
【0063】
第6の態様では、本開示の実施例は、上記実施例のシーケンシングライブラリの構築方法を使用してサンプルのシーケンシングライブラリを構築し、シーケンシングを行うことを含むシーケンシング方法が提供される。
【0064】
本開示の方法において、サンプルは、シーケンシングされる任意のサンプルであり得る。例えば、特定の実施形態では、サンプルはDNA(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)を含むか、またはDNAである。特定の実施形態では、サンプルはRNA(例えばmRNA)を含むか、RNAである。特定の実施形態では、サンプルは核酸の混合物(例えばDNAの混合物、RNAの混合物、又はDNAとRNAの混合物)を含むか、または核酸の混合物である。
【0065】
本開示の方法では、シーケンシングされる配列は、その配列組成または長さによって制限されない。例えば、シーケンシングされる配列は、DNA(例えばゲノムDNAまたはcDNA)またはRNA分子(例えばmRNA)であってもよい。さらに、検出される標的核酸配列は、一本鎖または二本鎖であってもよい。
【0066】
検出されるサンプルまたはシーケンシングされる配列がRNAである場合、本発明の方法を実行する前に、逆転写反応を実行して、mRNAに相補的なcDNAを取得することが好ましい。逆転写反応の詳細については、例えば、Joseph Sam-brookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N. Y. (2001)を参照のこと。
【0067】
シーケンシングされるサンプルまたシーケンシングされる配列は、原核生物(細菌など)、真核生物(原生動物、寄生虫、真菌、酵母、植物、哺乳類及びヒトを含む動物など)、又はウイルス(ヘルペスウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、エプスタイン・バーウイルス、肝炎ウイルス、ポリオウイルスなど)、又はウイロイドを含むがこれらに限定されない任意の供給源から取得することができる。シーケンシングされるサンプルまたシーケンシングされる配列は、ゲノム配列、人工的に単離または断片化された配列、合成配列など、任意の形態の核酸配列であってもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、シーケンシングされるサンプルは、血液、血清、血漿、細胞培養上清、唾液、精液、組織または組織溶解物である。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態におけるシーケンシング方法は、次世代シーケンシング(「NGS」)としても知られるハイスループットシーケンシングである。次世代シーケンシングは、並列シーケンシングプロセスで同時に数千から数百万の配列を生成する。NGSは、「サンガー(Sanger)シーケンシング」(第1世代シーケンシング)とは区別され、後者は単一のシーケンシング反応における連鎖終結産物の電気泳動分離に基づいている。本開示で使用されえるNGS用のシーケンスプラットフォームは、Illumina MiniSeq、NextSeq 550、lifeプラットフォームなどを含むがこれらに限定されない、市販されている場合がある。
【0070】
この方法は、遺伝学研究、人種分布、人類の進化その他の分野(典型的にはSNPアプリケーションなど)の研究など、非診断目的に使用することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本開示の上記実施例のシーケンシング方法は、突然変異部位検出、染色体倍数性検出、遺伝子融合検出、病原性微生物検出、及びその他の目的のためのサンプルに使用することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、突然変異部位は、腸がんの突然変異部位、子宮頸がんの突然変異部位、及び尿路上皮がんの突然変異部位のうちの少なくとも1つを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、染色体倍数性は、腸がんの染色体倍数性、子宮頸がんの染色体倍数性、及び尿路上皮がんの染色体倍数性のうちの少なくとも1つを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、遺伝子融合は、EML4-ALK遺伝子融合、CD74-ROSI遺伝子融合、CCDC6-RET遺伝子融合、NCOA4-RET遺伝子融合、及びTPM3-NTRK1遺伝子融合の少なくとも1つを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、病原性微生物は、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、及びSARS-CoV-2の少なくとも1つを含む。
【0076】
第7の態様において、本開示の実施例は、上記の実施例のいずれかの増幅プライマーを含む突然変異部位検出キットを提供する。
【0077】
第8の態様において、本開示の実施例は、上記の実施例のいずれかの増幅プライマーを含む染色体倍数性検出キットを提供する。
【0078】
第9の態様において、本開示の実施例は、上記の実施例のいずれかの増幅プライマーを含む遺伝子融合検出キットを提供する。
【0079】
第10の態様において、本開示の実施例は、上記の実施例のいずれかの増幅プライマーを含む病原性微生物検出キットを提供する。
【0080】
第11の態様において、上記実施例のいずれかの増幅プライマーを使用してPCR増幅を行い、それによって増幅産物の末端にAを付加し、PCR産物の末端へのAの付加効率を向上させる工程を含むTAクローニング方法を提供する。
【実施例】
【0081】
実施例1: 実験手順と方法
(1) NGS 関連実験
1. 従来の方法と本開示の方法を使用したマルチプレックスPCR 産物によるライブラリ構築。
【0082】
DNAのライブラリ構築プロセスは、
図1及び
図2に示す。
図1:A.従来の方法を用いて高忠実度酵素でライブラリを構築する場合、PCR反応後にPCR産物の5’末端リン酸化及びA付加が行われ、両端のA付加効率はわずか30%~37%であり、その後アダプターが連結される。B.本開示の方法を用いて高忠実度酵素でライブラリを構築する場合、PCR反応後にPCR産物にAが直接付加され、両端のA付加効率は64%~72%であり、その後アダプターが連結される。
【0083】
図2:A.従来の方法を用いて非高忠実度酵素でライブラリを構築する場合、PCR反応後にPCR産物はA付加が行われ、両端のA付加効率はわずか30%~37%であり、その後5’末端がリン酸化され、アダプターが連結される。B.本開示の方法を用いて非高忠実度酵素でライブラリを構築する場合、PCR反応後に、PCR産物の3’末端にAが既に付加され、5’末端でリン酸化が行われ、両端のA付加効率は64%~72%であり、アダプターを直接連結することができる。
【0084】
RNAのライブラリ構築プロセスは、
図3及び
図4に示す。
図3:A.従来の方法を使用して高忠実度酵素でライブラリを構築する場合、PCR反応を実行する前にmRNAをcDNAに逆転写し、次にPCR産物を5’末端リン酸化及びA付加が行われ、両端のA付加効率はわずか30%~37%であり、その後アダプターを連結する。B.本開示の方法を使用して高忠実度酵素でライブラリを構築する場合、PCR反応を実行する前にmRNAをcDNAに逆転写し、次にPCR産物にAを直接付加し、両端のA付加効率は64%~72%であり、その後アダプターを連結する。
【0085】
図4:A.従来の方法を用いて非高忠実度酵素でライブラリを構築する場合、PCR反応を行う前にmRNAをcDNAに逆転写し、PCR反応後にPCR産物はA付加が行われ、両端のA付加効率はわずか30%~37%であり、その後5’末端をリン酸化してアダプターを連結する。B.本開示の方法を用いて非高忠実度酵素でライブラリを構築する場合、PCR反応を行う前にmRNAをcDNAに逆転写し、PCR反応後にPCR産物の3’末端にAが既に付加され、5’末端でリン酸化が行われ、両端のA付加効率は64%~72%であり、アダプターを直接連結することができる。
【0086】
2.詳細な実験
1)サンプル採取:
血漿サンプル:全血をEDTA採血管に採取し、室温で1時間以内に遠心分離して血漿を得た。遠心分離条件:1,500gで10分間遠心分離し、上清を吸引して収集し、次に15,000gで10分間再度遠心分離した。上清を吸引して収集し、これが分離された血漿であった。
【0087】
子宮頸部剥離細胞サンプル:子宮頸部剥離細胞サンプルをThinPrep子宮頸部剥離細胞保存液に採取し、4°Cで保存し、12,000rpmで10分間遠心分離した。上清を捨て、子宮頸部剥離細胞ペレットを得た。
【0088】
尿サンプル:朝の尿約15~25mLを清潔で乾燥した使い捨て尿カップに採取し、500gで10分間遠心分離した。上清を捨て、尿路上皮細胞ペレットを得た。
【0089】
大腸がん組織サンプル:RNAlaterで保存した新鮮な大腸がん組織。
【0090】
2)サンプルDNAの抽出及び濃度測定:
血漿DNAの抽出:血漿サンプルは、QIAAMP循環核酸キット (QIAGEN-55114)を使用して抽出した。
【0091】
子宮頸部剥離細胞からのgDNAの抽出:CWBio Blood Genomic DNA Mini Kit(CW2087M)を使用し、各サンプルの開始容量は2mLであった。
【0092】
尿サンプルのDNAの抽出:CWBio Blood Genomic DNA Mini Kit(CW2087M)を使用して、尿サンプルからDNAを抽出した。
【0093】
大腸がん FFPE サンプルの抽出:PureLinkTM Genomic DNA Mini Kit(Invitrogen)を使用して、大腸がん組織からDNAを抽出した。
【0094】
DNAの濃度はQubitで測定した。
【0095】
3)PCR標的濃縮:
PCRには、高忠実度及び非高忠実度のマルチプレックスPCR酵素をそれぞれ使用した。反応系及び条件は、マルチプレックス酵素の説明書に従った。
【0096】
4)その後の反応:A付加、リン酸化、ライゲーションなどの反応の詳細については、各実施例を参照のこと。
【0097】
5)ライブラリの濃度測定及び品質評価:
ライブラリ濃度はQubitで測定し、使用した試薬はQubit dsDNA HSアッセイキット、500アッセイ(invitrogen/Q32854)であった。
【0098】
ライブラリ品質管理:KAPA Library Quantification Kit Illumina(登録商標) Platforms(KK4824)を使用してライブラリの有効率を評価した。
【0099】
6)ライブラリの品質検査:
高感度DNAキット(Agilent/5067-4626)を使用して得られたライブラリを2100品質検査した。
【0100】
7)混合サンプルのマシンでのシーケンシング:
Illuminaプラットフォームのnext500またはnovaseqを使用してシーケンシングした。
【0101】
8)オフマシンシーケンシングライブラリ分析:
試験データは、江蘇為真検出ソフトウェアと染色体異常分析ソフトウェアをそれぞれ使用して変異と倍数性について分析され、病原性染色体は為真の社内方法を使用して分析した。
【0102】
(2)TAクローニング関連実験
ゼブラフィッシュのpurg遺伝子をPCR増幅し、産物をTAクローニングした。従来のプライマーとさまざまに修飾されたプライマーのPCR産物のTAクローニング効率を調べた。
【0103】
ゼブラフィッシュは蘇州木レイ生物科技有限公司から購入した。DNA抽出はまず、切り分けた尾びれを組織ホモジェナイザーでホモジェナイズし、次にDNeasy Blood & Tissue Kit(QIAGEN、カタログ番号:69582)を使用してDNAを抽出し、DNA濃度をQubitで測定した。
【0104】
PCR反応に使用したキットはTakara LA Taq DNA Polymerase(タカラバイオテック)であった。PCR反応におけるDNAテンプレートの量は500ngであり、取扱説明書に推奨されているPCR反応系および条件に従って増幅を行った。PCR産物の精製および回収にはQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を使用した。2100を使用して、PCR断片のサイズが正しいかどうか、および二量体があるかどうかを確認した。二量体および非特異的増幅があった場合は、GenEluteTMゲル回収キット(Sigma-Aldrich)を使用してゲル切断回収を行う必要がある。精製産物の濃度はQubitを使用して決定した。
【0105】
TAクローニングに使用したキットはMighty TA-cloning Kit(タカラバイオテック)であった。Tベクターと挿入するPCR産物を1:3のモル比で混合し、合計容量が5μLになるようにした。次に、Ligation Mighty Mix 5 μL を加え、穏やかによく混ぜた。反応は16°Cで30分間行い、すべてを100μLのコンピテントセル(E. coli, DH5α)に加えて形質転換した。次に、細胞をX-Gal、IPTG、Ampを含むL寒天プレートに塗布し、37°Cで一晩培養した。コロニーを直接PCRにかけ、組み換え体を確認した。
【0106】
実施例2:ライブラリ有効率
表1の4種類のプライマーを用いてMRC-5細胞DNAを増幅し、異なるプライマーを用いたアンプリコンライブラリ構築のライブラリ有効率を検証した。
【0107】
プライマー配列および修飾は表17に示されており、4種類のプライマー、通常のプライマー(1)、5’末端がリン酸化されている通常のプライマーであるプライマー(2)、5’末端にGが付加されている通常のプライマーであるプライマー(3)、および5’末端にGが付加されリン酸化されている通常のプライマーであるプライマー(4)を含み、各種類のプライマープールの各プライマーの濃度は400nMであった。マルチプレックスPCRQIAGENマルチ酵素を使用して、以下のシステムでPCR反応を行った。プライマー混合物10μLを加え、テンプレート30ngを加え、取扱説明書に従って他の成分を加え、最終的に水で50μLにした。反応条件は取扱説明書に従って設定した。
生成物はPCR生成物精製キット(QIAGEN)を使用して精製し、20μLで溶出した。塩基A付加、アダプターライゲーション、ライブラリ前増幅などの反応については、特許CN103298955Bを参照する。
【0108】
Qubit dsDNA HS Assay kit、500アッセイ(invitrogen/Q32854)およびKAPAライブラリ定量キットIllumina(登録商標)プラットフォーム(KK4824)を使用して、異なるプライマーで構築されたライブラリの有効率を評価した。実際の有効濃度は、KAPAライブラリ定量キットを使用して測定されたライブラリ濃度であった。ライブラリ有効率=実際の有効濃度/ライブラリ濃度(Qubit)。詳細は表1を参照。
【0109】
【0110】
結果分析:4種類のプライマーで構築したライブラリのライブラリ濃度と有効率は正常であった。5’末端にGが付加されリン酸化されているプライマーのライブラリ有効率は、5’末端にGが付加されているプライマーのライブラリ有効率よりも優れていた。5’末端にGが付加されているプライマーのライブラリ有効率は、5’末端がリン酸化されているプライマーのライブラリ有効率よりも優れていた。5’末端がリン酸化されているプライマーのライブラリ有効率は、通常のプライマーのライブラリ有効率よりも優れていた。
【0111】
実施例3:市販のgDNAリファレンスの部位の検出
Horizonの陽性リファレンスHD734と陰性リファレンスHD752(100%野生型)を使用して、異なるプライマーを用いたライブラリ構築の検出効果を検証した。
【0112】
プライマー配列および修飾は表17に示されており、4種類のプライマー、通常のプライマー(1)、5’末端がリン酸化されている通常のプライマーであるプライマー(2)、5’末端にGが付加されている通常のプライマーであるプライマー(3)、および5’末端にGが付加されリン酸化されている通常のプライマーであるプライマー(4)を含み、各種類のプライマープールの各プライマーの濃度は400nMであった。キット(Phusion UマルチプレックスPCRマスターミックス、Thermo Scientific)を使用して、次のようにPCR反応系でマルチプレックスPCR反応を行った。プライマー混合物10μLを加え、テンプレート30ngを加え、取扱説明書に従って他の成分を加え、最終的に水で50μLにした。反応条件は取扱説明書に従って設定した。生成物はPCR生成物精製キット(QIAGEN)を使用して精製し、20μLで溶出した。最初のプライマーを使用して得られた生成物はリン酸化される必要があった。NEBのT4 PNK酵素を使用し、反応系と条件は酵素の取扱説明書に従って設定した。生成物はQIAGENキットで精製した。特許CN103298955Bを参照する。実験は10回繰り返した。検出結果を表2に示す。
【0113】
【0114】
結果分析:野生型リファレンスを検出したところ、4種類のプライマーを使用してもどの部位も検出されなかった。変異頻度が高い部位(AF≧8%)では、10回の検出で4種類のプライマーすべてを検出することができた。低頻度部位(1%≦MAF≦1.5%
)では、4つの低頻度部位で、通常のプライマーの検出率は52.5%、5’末端がリン酸化されているプライマーの検出率は65%、5’末端にGが付加されているプライマーの検出率は82.5%、5’末端にGが付加されリン酸化されているプライマーの検出率は97.5%であった。結果から、リン酸化修飾と比較して、5’末端にGを付加することが低頻度検出により効果的であることがわかった。Gの付加に加えてリン酸化修飾を行った場合、効果はさらに良くなる。
【0115】
実施例4:市販のcfDNAリファレンスの部位の検出
Horizonの陽性リファレンスHD813と陰性リファレンスHD815(100%野生型)を使用して、異なるプライマーを用いたライブラリ構築の検出効果を検証した。
【0116】
プライマー配列及び修飾は表17に示されており、4種類のプライマー、通常のプライマー(1)、5’末端がリン酸化されている通常のプライマーであるプライマー(2)、5’末端にGが付加されている通常のプライマーであるプライマー(3)、および5’末端にGが付加されリン酸化されている通常のプライマーであるプライマー(4)を含み、各種類のプライマープールの各プライマーの濃度は400nMであった。キット(Phusion UマルチプレックスPCRマスターミックス、Thermo Scientific)を使用して、次のようにPCR反応系マルチプレックスPCR反応を行った。プライマー混合物10μLを加え、テンプレート30ngを加え、取扱説明書に従って他の成分を加え、最終的に水で50μLにした。反応条件は取扱説明書に従って設定した。生成物はPCR生成物精製キット(QIAGEN)を使用して精製し、20μLで溶出した。最初のプライマーを使用して得られた生成物はリン酸化される必要があった。NEBのT4 PNK酵素を使用し、反応系と条件は酵素の取扱説明書に従って設定した。生成物はQIAGENキットで精製した。特許CN103298955Bを参照する。実験は10回繰り返した。検出結果を表3に示す。
【0117】
【0118】
結果分析:野生型リファレンスを検出したところ、4種類のプライマーを使用しても、どの部位も検出されなかった。1%≦MAF≦1.5%の部位では、通常のプライマーの検出率は53.8%、5’末端がリン酸化されているプライマーの検出率は63.8%、5’末端にGが付加されているプライマーの検出率は81.3%、5’末端にGが付加されリン酸化されているプライマーの検出率は97.5%であった。プライマー1と2を比較すると、5’末端のリン酸化は低頻度部位の検出に有益であることがわかる。プライマー2とプライマー3を比較すると、5’末端にGを付加することが低頻度部位の検出に有益であることがわかる。総合的に比較すると、5’末端にGを付加することとリン酸化とを組み合わせることで、低頻度変異の検出に効果的であった。
【0119】
実施例5:自作リファレンスgDNAの部位検出
複数の細胞株をブレンドして、複数の変異部位を含むリファレンスAを調製した。各部位の変異頻度を表2に示す。実施例2の4種類のプライマーを検出に使用した。マルチプレックスPCR法は実施例2と同じであった。第1プライマーを使用して得られた産物を、InvitrogenのT4 PNKキットを使用してリン酸化した後、QIAGENキットを使用して精製した。塩基A付加、アダプターライゲーション、ライブラリ前増幅
などの反応については、特許CN108251515Aを参照する。実験は10回繰り返した。検出結果を表4に示す。
【0120】
結果分析:野生型リファレンスを検出したところ、4種類のプライマーを使用しても、どの部位も検出されなかった。2%≦MAF≦5%の部位では、通常のプライマーの検出率は85%、5’末端リン酸化されているプライマーの検出率は88.3%、5’末端にGが付加されたプライマーの検出率は90%、5’末端にGが付加されリン酸化されているプライマーの検出率は100%であった。0.5%≦MAF≦1%の部位では、通常のプライマーの検出率は58.6%、5’末端リン酸化されているプライマーの検出率は71.4%、5’末端にGが付加されているプライマーの検出率は82.1%、プライマー4の検出率は93.6%であった。総合的に比較すると、5’末端にGを付加することとリン酸化とを組み合わせることで、低頻度変異の検出に効果的であった。
【0121】
【0122】
実施例6:自作リファレンスcfDNAの部位検出
抽出した細胞株DNAを超音波で約170bpに断片化した。2100品質検査に合格した後、複数の細胞株をブレンドして複数の変異部位を含むリファレンスBを調製した。各部位の変異頻度を表2に示す。検出には実施例2の4種類のプライマーを使用した。マルチプレックスPCR法は実施例2と同じであった。第1プライマーを使用して得られた産物をInvitrogenのT4 PNKキットを使用してリン酸化した後、QIAGENキットを使用して精製した。塩基A付加、アダプターライゲーション、ライブラリ前増幅などの反応については、特許CN108251515Aを参照する。実験は10回繰り返した。検出結果を表5に示す。
【0123】
結果分析:野生型リファレンスを検出したところ、4種類のプライマーを使用しても、いずれの部位も検出されなかった。2%≦MAF≦5%の部位では、プライマー1の検出率は52/60=86.7%、プライマー2の検出率は56/60=93.3%、プライマー3の検出率は95%、プライマー4の検出率は98.33%であった。0.5%≦MAF≦1%の部位では、プライマー1の検出率は49.3%、プライマー2の検出率は57.1%、プライマー3の検出率は70%、プライマー4の検出率は84.3%であった。総合的に比較すると、プライマー4(5’末端にGを付加することとリン酸化とを組み合わせたもの)の方が、低頻度変異の検出により有利である。
【0124】
【0125】
実施例7:ヌクレオソームにおける部位の検出
EpiScope(登録商標) Nucleosome Preparation Kit(Takara Code No. 5333)を使用してヌクレオソームを調製した。複数の細胞株から調製したヌクレオソームをブレンドして、複数の変異部位を含む参照Cを調製した。各部位の変異頻度を表2に示す。検出には実施例2の4種類のプライマーを使用した。マルチプレックスPCR法は実施例2と同じであった。第1のプライマーを使用して得られた産物をInvitrogenのT4 PNKキットを使用してリン酸化した後、QIAGENキットを使用して精製した。塩基A付加、アダプターライゲーション、ライブラリ前増幅などの反応については、特許CN108251515Aを参照する。実験は10回繰り返した。検出結果を表6に示す。
【0126】
結果分析:野生型リファレンスを検出したところ、4種類のプライマーを使用しても、いずれの部位も検出されなかった。2%≦MAF≦5%の部位では、プライマー1の検出率は86.7%、プライマー2の検出率は93.3%、プライマー3の検出率は95%、
プライマー4の検出率は98.3%でした。0.5%≦MAF≦1%の部位では、プライマー1の検出率は50.7%、プライマー2の検出率は62.1%、プライマー3の検出率は75%、プライマー4の検出率は86.4%であった。総合的に比較すると、プライマー4(5’末端にGを付加することとリン酸化とを組み合わせたもの)の方が、低頻度変異の検出により有利である。
【0127】
【0128】
実施例8:腸がん血漿サンプルにおける部位検出
腸がん患者21例の血漿サンプルと健常者10例の血漿サンプルを採取した。DNAを抽出し、表17の4種類のプライマーを用いてマルチプレックスPCRを行った。マルチプレックスPCR増幅は、Vazymeマルチプレックス酵素を用いて行い、PCR産物はKAPAライブラリ構築キットを用い、塩基A付加、アダプターライゲーション、ライブラリ前増幅などの実験を行った。検出結果を表7に示す。
【0129】
【0130】
4種類のプライマーを用いた検出では、健常者全員が陰性であった。CRC検出では、通常のプライマーを用いてアンプリコンライブラリを構築した場合、8検体で検出され(すべて単一部位検出)、検出率は38.1%であった。5’末端をリン酸化させたプライ
マーを用いた場合、9検体で検出され(すべて単一部位検出)、検出率は42.9%であった。5’末端にGを付加したプライマーを用いた場合、15検体で検出され(2検体で二重部位検出)、検出率は71.4%であった。5’末端にGを付加しリン酸化させたプライマーを用いた場合、16検体で検出され(6検体で二重部位検出)、検出率は76.2%であった。プライマーの5’末端にGを付加することで、検出率が大幅に向上することがわかった。Gをリン酸化と組み合わせて付加すると、検出はより安定するである
【0131】
実施例9:子宮頸部剥離細胞サンプルにおける部位の検出
病理学的情報が明らかな子宮頸がん15例、CIN3 5例、CIN2 5例、CIN1 5例を含む子宮頸部剥離細胞サンプルを採取し、表17の4種類のプライマーを使用して、これら30サンプルに対してマルチプレックスPCRを実施した。マルチプレックスPCR増幅は、Vazymeマルチプレックス酵素を使用して実施し、PCR産物は、NEBライブラリ構築キットを使用して、塩基A付加、アダプターライゲーション、ライブラリ前増幅などの実験を行った。検出結果を表8に示す。
【0132】
【0133】
子宮頸がんサンプルのライブラリにおいて、プライマー1の検出率は9/15=60%であり、プライマー2でライブラリを構築した場合の子宮頸がんの検出率は10/15=66.7%であった。プライマー3の検出率は13/15=86.7%であり、プライマー4でライブラリを構築した場合の子宮頸がんの検出率は15/15=100%であった。CIN3では、プライマー1の検出率は0/5=0%、プライマー2の検出率は2/5=40%であり、プライマー3の検出率は3/5=60%であり、プライマー4の検出率は4/5=80%であった。CIN2では、プライマー1の検出率は0/5=0%、プライマー2の検出率は1/5=20%であった。プライマー3で構築したライブラリの検出率は2/5=40%、プライマー4の検出率は3/5=60%であった。4種類のプライマーで構築したライブラリを用いたCIN1サンプルでは部位が検出されなかった。プライマー4(5’末端にGを付加することとリン酸化とを組み合わせたもの)は、より多くの染色体異常を検出することができた。
【0134】
実施例10:尿サンプルにおける部位の検出
尿路上皮がん患者の尿サンプル20個と健常者の尿サンプル10個を採取した。DNAを抽出し、4種類のプライマーを用いてマルチプレックスPCRを行った。マルチプレックスPCRにはサーモフィッシャー試薬を使用し、PCR産物は、Vazymeライブラリ構築キットを用いて、塩基A付加、アダプターライゲーション、ライブラリ増幅などの実験を行った。検出結果を表9に示す。
【0135】
【0136】
健常者では全例陰性であった。尿路上皮がんサンプルでの検出では、通常のプライマーを用いてアンプリコンライブラリを構築した場合の検出率は7/20=35%、5’末端をリン酸化させたプライマーを用いてアンプリコンライブラリを構築した場合の検出率は10/20=50%、5’末端にGを付加したプライマーを用いてアンプリコンライブラリを構築した場合の検出率は13/20=65%、5’末端にGを付加しリン酸化させたプライマーを用いてアンプリコンライブラリを構築した場合の検出率は16/20=80%となり、最も良好な検出効果を示した。
【0137】
実施例11:倍数性検出限界
FISHで確認された5番染色体の6コピーを持つ陽性細胞株リファレンスHela細胞を、2コピーを持つ陰性細胞株とを異なる割合で混合し、異なるコピー数のリファレンスを得た。詳細については、表10を参照してください。増幅には、表18の4種類のプライマーをそれぞれ使用し、増幅にはThermo Fisherのマルチプレックス高忠実度酵素を使用した。アンプリコンの塩基A付加、アダプターライゲーション、およびライブラリ前増幅の実験については、特許CN103298955Bを参照する。検出結果を表10に示す。
【0138】
【0139】
二重試験の結果、通常のプライマーによる増幅では、最低検出限界が2.8コピーで倍数性が安定して検出できた。5’末端がリン酸化されているプライマーの最低検出限界は2.4コピーであった。5’末端にGが付加されているプライマーによる増幅では、最低検出限界は2.2コピーであった。5’末端にGが付加されリン酸化されているプライマーによる増幅では、最低検出限界は2.04コピーであり、最高の検出効果を示した(
は5番染色体が陽性として検出されたことを示し、×は5番染色体が検出されなかったことを示す)。
【0140】
実施例12:腸がんFFPEサンプルにおける倍数性の検出
病理学的情報が明らかな腸がんのFFPEサンプル20個を採取した。表18の4種類のプライマーを用いて増幅を行った。PCRにはKAPA高忠実度酵素を使用し、産物はKAPAライブラリ構築キットを使用して塩基A付加、アダプターライゲーション、およびライブラリ前増幅実験を行った。染色体異常を調べた。結果を表11に示す。
【0141】
【0142】
腸がんFFPEサンプルの検出において、プライマー1を用いてアンプリコンライブラリ構築を行った場合の染色体倍数性変化の検出率は11/25=44%、プライマー2を用いてアンプリコンライブラリ構築を行った場合の染色体倍数性変化の検出率は14/25=56%、プライマー3を用いてアンプリコンライブラリ構築を行った場合の染色体倍数性変化の検出率は17/25=68%、プライマー4を用いてアンプリコンライブラリ構築を行った場合の染色体倍数性変化の検出率は22/25=88%であり、プライマー4を用いてアンプリコンライブラリ構築を行った場合の方がより多くの染色体異常を検出できた。
【0143】
実施例13 子宮頸部剥離細胞サンプルにおける倍数性の検出
病理学的情報が明らかな子宮頸部剥離細胞サンプルを収集した。子宮頸癌15例、CIN3 5例、CIN2 5例、CIN1 5例である。これらの30サンプルを異なる方法に供して倍数性ライブラリを構築した。配列表2の4種類のプライマーを使用した。増幅はQIAGENマルチプレックス酵素(産物にAを添加する必要はない)によって行い、アダプターライゲーションおよびライブラリ前増幅にはKAPAライブラリ構築キットを使用した。検出結果は表12を参照のこと。
【0144】
【0145】
結果分析:子宮頸がんサンプルのライブラリにおいて、プライマー1の検出率は8/15=53.5%であり、プライマー2を用いてアンプリコンライブラリを構築した場合の子宮頸がんの検出率は10/15=66.7%であった。プライマー3の検出率は13/15=86.7%であり、プライマー4を用いてアンプリコンライブラリを構築した場合の子宮頸がんの検出率は15/15=100%であった。CIN3では、プライマー1の検出率は0/5=0%、プライマー2の検出率は2/5=40%、プライマー3の検出率は3/5=60%、プライマー4の検出率は4/5=80%であった。
【0146】
CIN2ではプライマー1の検出率は0/5=0%、プライマー2の検出率は1/5=20%、プライマー3で構築したライブラリの検出率は2/5=40%、プライマー4の検出率は3/5=60%であった。4種類のプライマーで構築したライブラリを使用したCIN1サンプルでは、部位が検出されなかった。プライマー4(5’末端にGを付加することとリン酸化とを組み合わせたもの)は、より多くの染色体異常を検出できた。
【0147】
実施例14 尿路上皮がんサンプルにおける倍数性の検出
病理情報が明らかな尿路上皮がんサンプル20例を収集し、異なる方法に供して倍数性ライブラリを構築した。表18の4種類のプライマーを使用した。PCR酵素はKAPAのマルチプレックス酵素(産物にAを添加する必要はない)を使用し、アダプターライゲーションとライブラリ前増幅にはNEBライブラリ構築キットを使用した。検出結果を表13に示す。
【0148】
【0149】
結果分析:尿路上皮がんサンプルのライブラリにおいて、プライマー1を用いてアンプリコンライブラリ構築を行った場合の染色体倍数性変化の検出率は14/25=56%であった。プライマー2を用いてアンプリコンライブラリ構築を行った場合の染色体倍数性変化の検出率は18/25=72%であった。プライマー3を用いてアンプリコンライブラリ構築を行った場合の染色体倍数性変化の検出率は21/25=84%であった。プライマー4を用いてアンプリコンライブラリ構築を行った場合の染色体倍数性変化の検出率は23/25=92%であった。プライマー4を用いたアンプリコンライブラリ構築により、より多くの染色体異常が検出される可能性がある。
【0150】
実施例15:RNA融合検出
RNA融合リファレンス:Seraseq(登録商標) Fusion RNA Mix v4を、遺伝的背景が確認された野生型(融合陰性)細胞株GM12878 RNAと25 ng/μLの濃度で異なる容量で混合し、表19の4つの異なる修飾プライマーを使用したライブラリ構築方法の検出下限を調査した。RNAはSuperScriptTM VILOTM cDNA合成キットを使用して逆転写し、cDNA精製にはQIAGENキットを使用した。QIAGENマルチプレックス酵素をマルチプレックスPCRに使用し(産物にAを添加する必要はない)、Vazymeライブラリ構築キットをアダプターライゲーションおよびライブラリ前増幅に使用した。各融合タイプを異なる混合比で10回検出した。検出結果を表14に示す。
【0151】
【0152】
結果分析:5種類の融合タイプの検出を行った。混合濃度が0%の場合、両方の方法で実質的に検出されなかった。混合濃度が10%の場合、プライマー1の累積検出率は94%であった。プライマー2の累積検出率は97.3%、プライマー3の累積検出率は98.7%、プライマー4の累積検出率は100%であった。混合濃度5%の場合、プライマー1の累積検出率は87.3%、プライマー2の累積検出率は91.3%、プライマー3の累積検出率は95.3%、プライマー4の累積検出率は100%であった。2.5%の混合濃度の場合、プライマー1の累積検出率は61.3%、プライマー2の累積検出率は67.3%、プライマー3の累積検出率は78.7%、プライマー4の累積検出率は92%であった。1.25%の混合濃度の場合、プライマー1の累積検出率は42.7%、プライマー2の検出率は52.6%、プライマー3の累積検出率は67.3%、プライマー4の累積検出率は81.3%であった。以上の結果から、低頻度融合を検出する場合、プライマー4の効果がプライマー1よりも優れていることがわかった。
【0153】
実施例16 病原微生物の検出
検出対象のアンプリコン領域を、T7プロモーターを含む同じプラスミドに組み込み、in vitro転写を行った後、RNAリファレンスを得た。標的断片のサイズと濃度は2100で検出され、その後コピー数の濃度に変換した。異なるコピー数のリファレンスを使用して、異なる修飾プライマーのアンプリコンの検出能力を評価した。逆転写はSuperScript IV逆転写酵素を使用して実行され、cDNA精製にはQIAGENキットを使用した。マルチプレックスPCRは、表20の4種類のプライマーでそれぞれ実行され、マルチプレックスPCRにはKAPAマルチプレックス酵素が使用され(産物にAを添加する必要はなく)、アダプターライゲーションとライブラリ前増幅にはNEBライブラリ構築キットを使用した。異なるコピー数で10回検出した。検出結果を表15に示します。
【0154】
【0155】
結果分析:異なるコピー数の3種の病原微生物の検出能力(逆転写反応)を調べたところ、コピー数10の場合、10回の試験すべてで検出可能であった。コピー数5の場合、プライマー1の検出率は93.3%、プライマー2の検出率は96.7%、プライマー3の検出率は96.7%、プライマー4の検出率は100%であった。コピー数2.5の場合、プライマー1の検出率は66.7%、プライマー2の検出率は76.7%、プライマ
ー3の検出率は86.7%、プライマー4の検出率は96.7%であった。コピー数0の場合、2つのプライマーが陰性であった。プライマー4による低濃度病原微生物の検出はプライマー1よりも優れた効果を示した。
【0156】
実施例17:異なるプライマーによるPCR産物のTAクローニング効率の比較
表21に示すように異なる方法で合成したプライマーを使用して、ゼブラフィッシュのpurg遺伝子のプロモーター領域を増幅した。プライマーの種類ごとに3つのTAクローンを並行して試験した。実施例1の方法に従ってPCR産物をTAクローニングした。白斑数(挿入の確認)およびクローニング効率(白斑率)を以下の表16に詳述する。
【0157】
【0158】
結果分析:通常のプライマーは、白斑の数とクローニング効率に最も悪い影響を与え、5’末端にGを付加し、リン酸化したプライマーは最も良い影響を与えた。実験中の他のすべての制御条件(トランスフェクション、プレーティング、培養条件など)は同じであり、唯一の変数は異なるプライマーであったため、5’末端にGを付加し、リン酸化したプライマーを使用した産物は、TAライゲーション効率が高いことが示された。
【0159】
各実施例で使用したプライマーは、具体的には以下のとおりである。
【表17】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
上述の実施例の技術的特徴の各々は、任意に組み合わせることができる。説明を簡略化するために、上述の実施例の技術的特徴の各々の可能な組み合わせの全てを記載したわけではない。しかし、これらの技術的特徴の全ての組み合わせは、そのような組み合わせが互いに矛盾しない限り、本開示の範囲内であるとみなされるべきである。
【0165】
上述の実施例は、本開示の技術的解決策の具体的かつ詳細な理解を容易にする本開示のいくつかの実施形態を例示しているに過ぎず、本開示の保護範囲を制限するものではない。本開示の概念から逸脱することなく、当業者によって複数の変形および修正が行われる可能性があり、それらはすべて本開示の保護範囲内にあることに留意すべきである。したがって、本開示の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に基づくものとし、明細書は特許請求の範囲の内容を解釈するために説明を使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーケンシングライブラリ構築用の増幅プライマーであって、標的断片に相補的なプライマー配列断片と、前記プライマー配列断片の5’末端に連結された塩基Gとを含み、前記増幅プライマーと前記標的断片は前記塩基Gにおいて相補的ではない、増幅プライマー。
【請求項2】
前記塩基Gは前記プライマー配列断片の5’末端に直接連結される、請求項1に記載の増幅プライマー。
【請求項3】
前記塩基Gはリン酸化によって修飾された塩基である、請求項1又は請求項2に記載の増幅プライマー。
【請求項4】
シーケンシングライブラリ構築用のキットの作製における
請求項1に記載の増幅プライマーの使用。
【請求項5】
シーケンシングライブラリの構築方法であって、
デオキシリボ核酸の増幅及びライブラリ構築を実行するために使用されるプライマー配列断片を提供し、前記プライマー配列断片は標的断片と相補的であり、
前記プライマー配列断片に対して処理を行って、5’末端に塩基Gを有する増幅プライマーを得ることを含み、
ここで、前記処理は、
前記プライマー配列断片の5’末端の塩基がGでない場合は、前記プライマー配列断片の5’末端に塩基Gを連結すること、又は前記プライマー配列断片の5’末端の塩基がGである場合は、前記プライマー配列断片の5’末端に塩基Gを連結するか又は連結しないこと、
前記増幅プライマーを使用して前記デオキシリボ核酸に対してサイクリック増幅を行い、
3’末端に塩基Cを有する増幅断片を得ること、
前記増幅断片の3’末端に塩基Aを付加すること、及び、
3’末端に塩基Aが付加された増幅断片にT粘着末端を含むアダプターを連結し、前記アダプターはシーケンシングプラットフォームに必要な配列を含むこと、
を含む方法。
【請求項6】
前記デオキシリボ核酸の増幅を行う前に、前記増幅プライマーの5’末端の塩基Gをリン酸化することをさらに含む、請求項5に記載のシーケンシングライブラリの構築方法。
【請求項7】
前記デオキシリボ核酸は、サンプルDNA、サンプルプラスミド、及びサンプルRNAの逆転写によって得られたデオキシリボ核酸からなる群から選択される、請求項5又は請求項6に記載のシーケンシングライブラリの構築方法。
【請求項8】
請求項5に記載のシーケンシングライブラリの構築方法によって構築されたシーケンシングライブラリ。
【請求項9】
請求項1に記載の増幅プライマーを含む、シーケンシングライブラリ構築用のキット。
【請求項10】
塩基Aを添加するための試薬、アダプターを添加するための試薬、PCR増幅用試薬、及び精製用試薬のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
請求項5に記載のシーケンシングライブラリの構築方法を使用してサンプルのシーケンシングライブラリを構築し、シーケンシングを行うことを含む、シーケンシング方法。
【請求項12】
前記サンプルに対して変異部位検出、染色体倍数性検出、遺伝子融合検出、及び病原性微生物検出のうちのいずれか1つを行うために使用される、請求項11に記載のシーケンシング方法。
【請求項13】
前記変異部位検出は、腸がん変異部位、子宮頸がん変異部位、及び尿路上皮がん変異部位のうち少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシーケンシング方法。
【請求項14】
前記染色体倍数性は、腸がんの染色体倍数性、子宮頸がんの染色体倍数性、及び尿路上皮がんの染色体倍数性のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシーケンシング方法。
【請求項15】
前記遺伝子融合は、EML4-ALK遺伝子融合、CD74-ROSI遺伝子融合、CCDC6-RET遺伝子融合、NCOA4-RET遺伝子融合、及びTPM3-NTRK1遺伝子融合のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシーケンシング方法。
【請求項16】
前記病原性微生物は、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、及びSARS-CoV-2のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシーケンシング方法。
【請求項17】
前記シーケンシングはハイスループットシーケンシングである、請求項11乃至請求項16のいずれか一項に記載のシーケンシング方法。
【請求項18】
請求項1に記載の増幅プライマーを含む、変異部位検出キット。
【請求項19】
請求項1に記載の増幅プライマーを含む、染色体倍数性検出キット。
【請求項20】
請求項1に記載の増幅プライマーを含む、遺伝子融合検出キット。
【請求項21】
請求項1に記載の増幅プライマーを含む、病原性微生物検出キット。
【請求項22】
請求項1に記載の増幅プライマーを用いてPCR増幅を行い、増幅産物の末端に
塩基Aを付加する工程を含む、TAクローニング方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
一実施形態では、シーケンシング方法は、サンプルに対して、変異部位検出、染色体倍数性検出、遺伝子融合検出、及び病原性微生物検出のうちのいずれか1つを行うために使用される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
本開示の様々な実施形態によれば、上記増幅プライマーを使用してPCR増幅を行い、増幅産物の末端に塩基Aを付加する工程を含むTAクローニング方法が提供される。
【国際調査報告】