(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】エネルギー伝送方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B64D 9/00 20060101AFI20241029BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20241029BHJP
B64D 37/02 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B64D9/00
B64D27/24
B64D37/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546362
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2022078848
(87)【国際公開番号】W WO2023062243
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524144143
【氏名又は名称】ハイフィエーテ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベッカース ヴォウター
(57)【要約】
エネルギーを伝送する方法は、水素を生成する生成ステップ、第1の場所で、水素をタンクに移送する第1の移送ステップ、航空機を用いてタンクを第2の場所に輸送する輸送ステップ、第2の場所で水素の被送出分量をタンクから移送する第2の移送ステップ、被送出分量を酸化して熱的、電気的又は機械的エネルギーを生成する酸化ステップを含む。タンクに移送される水素が液体水素であるよう、水素を液体水素に変換する液化ステップが第1の移送ステップの前に実施され、被送出分量を気化させる気化ステップが、被送出分量が第2の移送ステップでは液体であると共に酸化ステップでは気体であるよう、第2の移送ステップの後に実施され、及び、航空機は飛行機である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を生成する生成ステップ(S1);
第1の場所で、前記水素をタンク(10)に移送する第1の移送ステップ(S3);
航空機を用いて前記タンク(10)を第2の場所に輸送する輸送ステップ(S4);
前記第2の場所で前記水素の被送出分量を前記タンク(10)から移送する第2の移送ステップ(S5);
前記被送出分量を酸化して熱的、電気的又は機械的エネルギーを生成する酸化ステップ(S7)を含むエネルギーを伝送する方法であって、
前記タンク(10)に移送される前記水素が液体水素であるよう、前記第1の移送ステップ(S3)の前に前記水素を液体水素に変換する液化ステップ(S2);及び
前記被送出分量が前記第2の移送ステップ(S5)では液体であると共に前記酸化ステップ(S7)では気体であるよう、前記第2の移送ステップ(S5)の後に前記被送出分量を気化させる気化ステップ(S6)を特徴とし、
前記航空機が飛行機(2)である、方法。
【請求項2】
前記輸送ステップ(S4)において、水素は、前記タンク(10)から排出されると共に、酸化されて推力及び/又は補助電源を前記飛行機に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素は前記タンク(10)から液体水素として排出されると共に、酸化の前に気化され;並びに
前記タンク(10)から排出される前記水素の蒸発潜熱が、飛行機システム及び/又は前記被送出分量の冷却に用いられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記輸送ステップ(S4)において、気体水素が、前記タンク(10)から前記大気に排出される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記輸送ステップにおいて、前記タンク(10)中のゲージ圧が所定の圧力未満に低下することを防止するための制御を実施するステップをさらに含み、
前記制御は、前記タンク(10)に対する熱の供給を増加させるステップ、及び/又は、補助タンク、蒸発回路若しくは熱交換器から水素を前記タンク(10)に移送するステップから構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記タンク(10)は、モジュール構造を有し、前記第1の移送ステップ(S3)の後に前記飛行機(2)に取り付けられ、及び、前記第2の移送ステップ(S5)の前に前記飛行機(2)から取り外される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記タンク(10)は、前記飛行機(2)の胴体(20)に積み込まれ、取り付け位置まで前記飛行機(2)の長手方向軸に沿って前記胴体(20)中を移動され、及び、前記取り付け位置で前記飛行機(2)に取り付けられ;
前記タンク(10)が前記取り付け位置に移動するに伴って、移動方向に向いた前記タンク(10)の出口が、反対方向に向いた飛行機側入口と係合して連結を形成し;
前記連結は、オペレータからの指示に応じて、又は、前記取り付け位置に向かう前記タンク(10)の前記移動に応じて、自動的にロックされ;
水素は、前記連結を介して前記タンク(10)から排出され;並びに
前記連結はその後、前記タンク(10)の取り外し前に、前記オペレータからの指示に応じて自動的にアンロックされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タンク(10)は、前記方法を通して前記飛行機(2)に一体化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記タンク(10)は第1のタンクであり;
液体水素を含む第2のタンクは、前記輸送ステップにおいて前記第1のタンクと共に輸送される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の移送ステップ(S5)において、前記液体水素は、前記タンク(10)から他の飛行機における他のタンクに直接に圧送され、並びに
前記気化及び酸化ステップ(S6,S7)は前記他の飛行機で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記被送出分量の質量は前記飛行機(2)の空重量の20パーセント超、好ましくは前記飛行機(2)の前記空重量の30パーセント超である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
水素を生成及び液化する手段;
第1の場所で液体水素をタンクに移送するよう構成された第1の移送手段;
前記タンク(10);
前記タンク(10)を空輸可能である飛行機(2);
第2の場所で、前記液体水素の被送出分量を前記タンク(10)から移送するよう構成された第2の移送手段;並びに
前記被送出分量を気化するよう構成された気化手段;並びに
前記気化された部分を酸化して熱的、電気的又は機械的エネルギーを生成するよう構成された酸化手段を備えるエネルギー伝送用システムであって、
前記タンク(10)は前記飛行機(2)と一体化されているか、又は
前記タンク(10)は、液体水素を含んだまま、前記飛行機(2)に着脱可能に構成されている、エネルギー伝送用システム。
【請求項13】
前記飛行機(2)は、前記タンク(10)からの水素を酸化して推力及び/又は補助電源を前記飛行機に提供するよう構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記飛行機(2)はさらに、飛行機システムを冷却するために前記タンクから出された液体水素及び/又は前記タンクに残された若しくは戻された液体水素の一部の蒸発潜熱を使用するよう構成されている、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記飛行機(2)は
前記タンク(10)に対する熱の供給を増加し、及び/又は、補助タンク、蒸発回路若しくは熱交換器から水素を前記タンクに移送する手段;並びに
飛行中に、少なくとも1つのタンク中のゲージ圧が所定の圧力未満に低下することを防止する手段を作動させるよう構成された制御装置
をさらに備える、請求項12~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーを伝送するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特に太陽光、風力、水力及び地熱などの再生可能エネルギーといったエネルギーは、必要とされる場所から離れた場所で豊富に存在している可能性がある。非再生可能エネルギー源から電力を生成するインフラストラクチャもまた、排出物及び温室効果ガスの捕集及び制御を可能とするために、人口集中地域から離れて集約化されている場合がある。通例、これらの供給源からの電気は、ケーブルにより人口集中地域に送られて、電力網で配電される。ポータブルバッテリーをこの電力網で充電して、エネルギーをさらに配分可能とすることが可能である。
【0003】
また、炭化水素類が、パイプ及びコンテナを使用して流通可能であり、酸化されて必要とされる場所で電気的及び機械的エネルギーを生成するエネルギー源として用いられている。水素が、酸化されても汚染物質を発生しない、炭化水素類に対するクリーンな代替物として提案されている。
【0004】
国際公開第2010 051088 A1号パンフレットは請求項1のプリアンブルに係る方法を開示し、地熱、風力、太陽光、波力、潮力又は水力を利用して一次エネルギー源で、又は、そこからきわめて近い場所で電気を発電し、この電気を利用して水から水素を直接生成すること、並びに、この水素を、揚力の発生、推進エネルギーの供給、及び、補助的なニーズへの対応に水素ガスをも使用可能である飛行船を利用して、水素を生成した場所から水素が必要とされる場所まで輸送することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国際公開第2010 051088 A1号パンフレットに記載の飛行船では、タンク及びブラダーが組み合わされて、高圧、低圧及び略常圧で水素を搬送する。従って、低圧及び略常圧の水素をパイプ及びコンテナに圧送してさらに流通させるためにエネルギーの消費が必須となる。これにより利用可能なエネルギーが低減してしまう。
【0006】
本発明は、エネルギー源から離れた場所で利用可能な有用なエネルギー量が増加するようエネルギーを伝送することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエネルギーを伝送する方法は:水素を生成する生成ステップ;第1の場所で、水素をタンクに移送する第1の移送ステップ;航空機を用いてタンクを第2の場所に輸送する輸送ステップ;第2の場所で水素の被送出分量をタンクから移送する第2の移送ステップ;被送出分量を酸化して熱的、電気的又は機械的エネルギーを生成する酸化ステップ;タンクに移送される水素が液体水素であるよう、第1の移送ステップの前に水素を液体水素に変換する液化ステップ;及び、被送出分量が第2の移送ステップでは液体であると共に酸化ステップでは気体であるよう、第2の移送ステップの後に被送出分量を気化させる気化ステップを含み、ここで、航空機は飛行機である。
【0008】
被送出分量は第2の場所でタンクから液体形態で移送されるため、第2の場所で水素を消費又は流通させるための圧送作業を削減することが可能である。圧送作業を削減可能とする液化は輸送前に実施され、従って、被送出分量から第2の場所で利用可能とされるエネルギーの量が低減されない。換言すると、本発明では、第1の場所において豊富に存在するエネルギーを活用して、水素が、第2の場所で利用可能となるエネルギーが増加する形態とされる。さらに、タンクは飛行機を用いて輸送され、従って、輸送ステップは迅速に実施可能であって、タンク中の水素が熱を吸収する時間が短縮され、従って、液体水素の沸騰が低減可能であり、及び、送出される液体水素の量の減少を抑制することが可能である。
【0009】
好ましくは、輸送ステップにおいて、水素はタンクから排出され、及び、酸化されて、推力及び/又は補助電源を飛行機に提供する。
【0010】
タンクからの水素を推力及び/又は補助電源に利用することにより、飛行機におけるエネルギー及び電力システムを簡素なものとすることが可能である。さらに、排出により、ボイルオフによるタンク内における圧力上昇を低減可能である。
【0011】
好ましくは、水素は液体水素としてタンクから排出されると共に酸化の前に気化され、並びに、タンクから排出される水素の蒸発潜熱が飛行機システム及び/又は被送出分量の冷却に用いられる。
【0012】
輸送ステップの最中に、排出された水素の蒸発潜熱を飛行機システム及び/又は被送出分量の冷却に用いることにより、飛行機性能を高めることが可能であり、及び/又は、液体水素のボイルオフをさらに抑制することが可能であり、従って、送出される液体水素の量の低減をさらに回避することが可能である。
【0013】
好ましくは、輸送ステップにおいては、気体水素がタンクから大気に排出される。
【0014】
輸送ステップにおいて気体水素を大気に排出することにより、輸送ステップ、特に飛行機の上昇及び巡航中にタンクが受ける圧力範囲は、単純な構造を用いて抑制が可能であり、従って、飛行機及びタンクを軽量化し、輸送ステップの効率を高めることが可能である。
【0015】
好ましくは、本方法は、輸送ステップにおいて、タンク中のゲージ圧が所定の圧力未満に低下することを防止するための制御を実施するステップをさらに含み、ここで、この制御は、タンクに対する熱の供給を増加させるステップ、及び/又は、補助タンク、蒸発回路若しくは熱交換器から水素をタンクに移送するステップから構成される。
【0016】
このように、タンクに対する熱の供給を増加させること、及び/又は、補助タンクから水素をタンクに移送することにより、タンクが受ける圧力範囲が縮小され、従って、タンクは軽量となり、輸送ステップの効率を高めることが可能である。
【0017】
タンクは、モジュール構造を有すること、並びに、第1の移送ステップの後に飛行機に取り付けられ、及び、第2の移送ステップの前に飛行機から取り外されることが可能である。これにより、タンクを、飛行機を必要とすることなく第2の場所での貯蔵に用いることが可能となる。或いは、タンクは、本方法全体を通して飛行機に一体化されている。
【0018】
液体水素は、輸送ステップにおいて、飛行機における2つ以上のタンクで輸送可能である。これにより、タンク中の圧力及び飛行機のトリムをより容易に管理することが可能となる。
【0019】
好ましくは、第2の移送ステップにおいて、液体水素は、タンクから他の飛行機における他のタンクに直接圧送され、並びに、気化及び酸化ステップは他の飛行機で行われる。これにより、貯蔵及び移送ステップが最低限となり、従って、ボイルオフを低減可能であり、最大量のエネルギーを飛行機に利用可能とすることが可能となる。
【0020】
好ましくは、被送出分量の質量は飛行機の空重量の30パーセント超である。
【0021】
本発明に係るエネルギー伝送用システムは:水素を生成及び液化する手段;第1の場所で液体水素をタンクに移送するよう構成された第1の移送手段;タンク;タンクを空輸可能である飛行機;第2の場所で、液体水素の被送出分量をタンクから移送するよう構成された第2の移送手段;被送出分量を気化するよう構成された気化手段;並びに、気化された部分を酸化して熱的、電気的又は機械的エネルギーを生成するよう構成された酸化手段を備え、ここで、タンクは飛行機と一体化されているか、又は、タンクは、液体水素を含んだまま、飛行機に着脱可能に構成されている。
【0022】
好ましくは、飛行機は、タンクからの水素を酸化して推力及び/又は補助電源を飛行機に供給するよう構成されている。
【0023】
好ましくは、飛行機はさらに、飛行機システムを冷却するためにタンクから出された液体水素及び/又はタンクに残された若しくは戻された液体水素の一部の蒸発潜熱を使用するよう構成されている。
【0024】
好ましくは、飛行機は、タンクに対する熱の供給を増加し、及び/又は、補助タンク、蒸発回路若しくは熱交換器から水素をタンクに移送する手段、並びに、タンク中のゲージ圧が所定の圧力未満に低下することを防止する手段を作動させるよう構成された制御装置をさらに備える。
【0025】
これらのシステムにより、対応する方法の利点の達成が可能となる。
【0026】
好ましくは、タンクは、飛行機の外側に露出しており、及び、飛行機の外側に露出したタンクの外表面を加熱するよう構成された電気ヒータを有する。ヒータにより、タンクの表面における着氷を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の第1及び第2の実施形態におけるステップの順序を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態において用いられるンク及び飛行機の構成要素を示す概略図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態において用いられる飛行機の構成要素を示す概略図である。
【
図4a】
図4aは、本発明の第3の態様に係る積み込み中における飛行機及びタンクの構成要素を示す概略図である。
【
図4b】
図4bは、本発明の第3の態様に係る積み込み後における飛行機及びタンクの構成要素を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の実施形態は、以下のとおり実施される。
【0029】
生成ステップS1において、電気は、風力、太陽光、地熱又は水力などの再生可能資源から発電されることが好ましい。しかしながら、電気の供給源は特に限定されていない。そして、電気が電気分解による水からの水素の生成に用いられる。
【0030】
或いは、水素は、例えば水蒸気メタン改質、石炭ガス化又はバイオマスガス化によって化石燃料又はバイオマスから抽出することが可能である。
【0031】
次いで、液化ステップS2において、水素は従来のプロセスを利用して液化される。
【0032】
次いで、液化水素は、第1の場所においてタンク10に移送される。これは、第1の移送手段を用いる第1の移送ステップS3を構成する。液化水素は、凍結水素が混合した半溶け状態であってもよい。
【0033】
タンク10は、二重壁構造で半真空断熱とされており、ガス及び液体出口11,12を有し、真空逃し弁を有し、並びに、電気ヒータ15を有する。
【0034】
次いで、タンク10が積み込まれ、物理的に固定され、及び、接地される非加圧コンパートメントを有する飛行機2にタンク10が移される。飛行機は、タンク10からボイルオフ回路22そして大気中にガスを排出可能であるよう、タンク10のガス出口12が取り付けられたボイルオフ回路22を有する。飛行機2はまた、タンク10の電気ヒータ15に接続された補助電源21を有する。
【0035】
次いで、飛行機2はタンク10を他の場所に空輸し、この飛行は、離陸、上昇、巡航、降下及び着陸を含む。
【0036】
上昇の最中、沸騰と高度に伴う大気圧の低下とによりタンク10内におけるゲージ圧は上昇する。この時、ゲージ圧の上昇を抑制すると共にタンク10における過剰な構造負荷を回避するために、ガスは、ボイルオフ回路22を用いてタンク10から大気に排出される。
【0037】
高高度でのその後の巡航の最中では、ボイルオフレート及び巡航時間に応じてゲージ圧を継続的に抑制するために、さらなるガスがタンク10からボイルオフ回路22、そして大気中に排出可能とされている。
【0038】
降下の最中には、タンク10中のゲージ圧は大気圧の低下によって低下する。この時、タンク10中の正のゲージ圧を維持して座屈及び過剰な構造負荷を防止するように、ボイルオフレートを高めてタンク10中の絶対圧を高めるため、電気ヒータ15に電力を供給してタンク10中の液体水素に供給される熱を増加させる。
【0039】
着陸後、ボイルオフ回路及び補助電源がタンク10から取り外され、タンク10が飛行機2から搬出される。次いで、タンク10は、第2の移送ステップが実施される第2の場所に移される。
【0040】
第2の移送ステップでは、第2の移送手段が、従来の手段による流通及び消費のためにタンク10から液体水素を移送する。例えば、水素は、要求に応じて気体及び液体水素を断続的に供給し得る高断熱型の固定貯蔵タンクに移送し得る。気化及び酸化の前に液体水素をさらに輸送するために、液体水素はまた、道路又は鉄道輸送に適した断熱可搬型タンクに移送し得る。液体水素はまた、気化装置を介して工業プロセス又はパイプラインに直接移送し得る。液体水素はまた、その後水素を電力用に液化及び酸化する車両、特に飛行機2のタンクに直接移送し得る。
【0041】
第2の移送ステップの後、タンク10を、飛行機2を含む種々の手段を用いて、第1の場所又は異なるエネルギー源に近い他の場所に送り戻すことが可能である。この時、汚染を防止するために、タンク10中に一定量の水素を残して置いてもよい。液体水素が残される場合、液体水素の気化潜熱を用いて、再度充填されるまでタンク10中を低温に維持するための補助とすることが可能である。或いは、タンク10を不活性ガスでパージしてもよい。
【0042】
第1の実施形態の変形例において、タンク10が積み込まれる飛行機2のコンパートメントは、少なくともある程度加圧されている。コンパートメントを加圧することで飛行中におけるタンク10中のゲージ圧の変動が低減され、ボイルオフ回路22が不要であり得る。代わりに、タンク10は、飛行中におけるゲージ圧の予期される変動に耐えるように、及び/又は、加圧システムによる換気で分散されるよう、コンパートメント中の少量の気体水素を放出するように設計され得る。
【0043】
第1の実施形態の他の変形例において、タンク10は第1のタンク10であると共に、液体水素を含む1つ以上の追加のタンクがコンパートメントに積み込まれて、輸送ステップにおいて飛行機2で空輸されてもよい。この場合、ボイルオフ回路22及び補助電源は、タンクの各々に対する接続を有する。1つ以上の追加のタンクは第1のタンク10と共に荷下ろしされてもよく、又は、保持されて、その後、飛行機2で空輸されて他の場所で荷下ろしされてもよい。従って、1つ以上の追加のタンクは、液体水素を第3の場所に輸送し得る。
【0044】
第2の実施形態において、生成及び液化ステップは第1の実施形態におけるものと同じである。次いで、液化水素は、第1の場所でタンク10に移送される。これは、第1の移送手段を用いる第1の移送ステップを構成する。しかしながら、第1の実施形態とは異なり、タンク10は、本方法全体を通じて、飛行機2と一体化されている。
【0045】
タンク10は、外表面に発泡断熱材が取り付けられた一重の金属壁を有する。金属と発泡体との取り付けを強化するために、外表面は、発泡体と金属との間で物理的な相互の係止がもたらされるようレーザによりテクスチャ加工されている。タンク10は、ガス及び液体出口11,12、並びに、真空逃し弁を有する。タンク10は飛行機2の胴体20内部に固定されている。
【0046】
ガス出口12は飛行機2中の気体回路に接続されている。気体回路は、気体水素をタンク10から大気に排出可能であるボイルオフ回路22と、飛行機2の補助電力ユニット21に気体水素を供給する補助燃料供給回路23とを備える。
【0047】
補助電力ユニット21は、水素を酸化して飛行機2に対する補助電源のための電気を発電する燃料電池を備える。補助電力ユニットはまた、環境からの空気を加圧するコンプレッサと、空気及び気体水素が燃料電池に入る前に、気体水素を用いて加圧された空気を冷却する熱交換器とを備える。
【0048】
液体出口11は飛行機2中の液体回路に接続されている。液体回路は、飛行機2の外部とタンク10との間で両方向に液体水素を移送可能である、外部からアクセス可能な接続部25を備える。この液体回路はまた、飛行機2に推力を与えるターボファン50の燃焼器に水素を供給する推力燃料供給回路26を備える。
【0049】
推力燃料供給回路26は、液体水素を加圧する高圧ポンプと、気化された水素が燃焼器に流入する前に、ターボファンの排気からの熱を用いて加圧された液体水素を気化する蒸発器とを備える。
【0050】
飛行機2はまた、蒸発器30を介して液体回路を気体回路に接続する蒸発器回路を有する。
【0051】
第1の移送ステップの後、飛行機2は、輸送ステップにおいて、その少なくとも一部において飛行して、タンク10を第2の場所に輸送する。飛行は離陸、上昇、巡航、降下及び着陸を含む。
【0052】
飛行中、タンク10中の液体水素は沸騰して、水素の体積が増加する。同時に、気体水素がタンク10から排出されて補助電力ユニットにより消費されると共に、液体水素がタンク10から排出されてターボファン50により消費される。タンク10の外部圧力もまた高度に伴って変化する。タンク10における過剰な構造負荷を回避するために、低い正のゲージ圧が飛行中を通して維持される。これは、ゲージ圧が高いときに、例えばボイルオフ回路22を用いて気体水素を大気に排出することで、タンク10から排出される気体水素の量を増加させることにより、並びに、ゲージ圧が低い時にボイルオフレートを高めることにより、すなわち、液体水素を蒸発器30に循環させて気化された水素をタンク10に戻すことにより、達成される。
【0053】
着陸後、飛行機2は、第2の移送ステップが実施される第2の場所までタキシングする。液体水素の被送出分量が、タンク10及び飛行機2から、外部からアクセス可能な接続部25を介して移送される。飛行機2から移送された水素のその後の気化及び酸化は第1の実施形態と同様である。
【0054】
次いで、飛行機2は、補助電力ユニット及びターボファンのための燃料としてタンク10に残された水素を用いて、第1の場所、又は、異なるエネルギー源に近い他の場所に飛行して戻る。
【0055】
第2の実施形態の変形例において、気体回路は、気体水素を高圧で貯蔵可能である補助タンクを備える。補助タンクは、ボイルオフ回路22を介して大気中に気体水素を放出する代わりに気体水素を貯蔵するために、ボイルオフレートを増加する代わりに気体水素をタンク10に供給してゲージ圧の低下を抑制するために、及び、燃料消費が大きい期間の間に、補助電力ユニット21に気体水素を一時的に供給するために用いることが可能である。
【0056】
第2の実施形態の他の変形例において、タンク10は主タンクであり、液体回路は、1つ以上の小型の二次タンクを備える。液体水素は主タンクと小型の二次タンクとの間で圧送されて、主タンクが、輸送ステップ中は液体水素でほぼ満たされた状態、及び、その後の飛行中は気体水素でほぼ満たされた状態に維持され、これにより、主タンクにおけるスロッシングが抑制される。二次タンクは小型であることによってより大きい圧力変動に耐えることが可能となり、従って、補助タンクのようにより高圧で気体水素を一時的に貯蔵することが可能である。
【0057】
加圧された液体水素を気化するためにターボファンの排気からの熱を使用する代わりに、又は、これ追加して、ターボファンのコンプレッサからの加圧空気からの熱を用いることが可能である。冷却された加圧空気をコンプレッサのより高圧の段又は燃焼器に供給して、出力を高めることが可能である。冷却された加圧空気を軸受、タービンブレード、燃焼器ライニング等の冷却に用いて、このような構成要素の冷却に用いられる圧縮空気の量を低減し、それ故、コンプレッサの仕事量の合計を低減することが可能である。
【0058】
加圧された液体水素はまた、タンク10に循環して戻される液体水素からの熱を送り出すために補助電力ユニット50からの電気を使用する閉ループヘリウム回路からの熱を用いて気化可能である。それ故、過冷却液体水素をタンク10に循環させることにより、ボイルオフを抑制することが可能である。
【0059】
ガス出口12に接続された単一の気体回路と、液体回路に接続された単一の液体回路とを用いて実施形態を説明したが、複数の個別の気体及び液体回路が用いられてもよい。
【0060】
ターボファン50の代わりに、飛行機2の推力は、ターボプロップ、燃焼機関又は燃料電池及び電動機から生成することが可能である。これらの事例においても、液体水素により、推力の発生に必要とされる多量の水素の効率的な圧送が可能となる。
【0061】
タンク10は、胴体20の非加圧の区画内に固定されていてもよく、又は、加圧されているか若しくは少なくともある程度加圧されている区画の内部に固定されていてもよい。この区画が加圧されているか又は少なくともある程度加圧されている場合、加圧システムを用いてタンク10と胴体外板との間の空気の温度を制御して氷の形成等を抑制することが可能である。
【0062】
第2の実施形態は、本方法全体を通してタンク10を飛行機2と一体化したままとするのではなく、第1の移送ステップS3の後にタンク10を飛行機2に取り付け、及び、第2の移送ステップS5の前にタンク10を飛行機から取り外すよう変更してもよい。この場合、第1の移送ステップS3後に、ガス出口12を気体回路に接続すると共に液体出口11を液体回路に接続し、また、第2の移送ステップの前に、ガス出口12を気体回路から切り離すと共に液体出口11を液体回路から切り離す。
【0063】
タンク10が、第1の移送ステップS3の後に飛行機に取り付けられ、及び、第2の移送ステップS5の前に飛行機から取り外される実施形態において、タンク10は、飛行機の長手方向軸に沿って飛行機の胴体20に積み込まれることが好ましい。この場合、タンクの1つ以上の出口11,12は、積み込み方向に面するタンク10の長手方向端部に設けられる。胴体20内においてタンク10が飛行機に取り付けられる取り付け位置までタンク10が移動すると、1つ以上の出口11,12が、胴体20内に設けられていると共に反対方向に向いた、気体回路、液体回路又はボイルオフ回路22の対応する飛行機側入口と係合して連結が形成される。そして、これらの連結は、オペレータからの指示に応じてロック及びアンロックされ得る。連結はまた、取り付け位置に向かうタンク10の移動に応じて自動的にロックされ得、この移動は、タンクの位置、連結における力等を検出するセンサーによって検出される。積み込み方向に面するタンク10の長手方向端部に出口を設けることにより、タンクの横方向の寸法を最大とすることが可能であり、これにより、胴体の容積の利用率を高めることが可能である。さらに、タンク10が飛行機の長手方向に長い場合、横方向の寸法を大きくすることで水素の所与の容量に対するタンク10の表面積を低減可能であり、従って、水素の断熱をより効率的とすることが可能である。また、連結の自動係合及びロックにより、オペレータによるタンク及び飛行機間におけるアクセスの必要性が低減され、胴体容積の利用率をさらに高めることが可能となる。
【0064】
図4a及び
図4bは、第1の実施形態に基づき、長手方向に沿った上記の積み込み及び連結が追加された第3の態様を示す。
図4(a)は、タンク10が飛行機の長手方向軸に沿って飛行機の胴体20に積み込まれ、タンクのガス出口12が積み込み方向に面するタンク10の長手方向端部に設けられていることを示す。タンク10は胴体内を長手方向に沿って移動され、
図4(b)においては、タンク10が飛行機に取り付けられており、また、タンク10は、胴体20内に設けられていると共に反対方向に向いたボイルオフ回路22の対応する飛行機側入口とガス出口12が係合して連結を形成する胴体20内の取り付け位置に到達している。次いで、この連結は、オペレータからの指示に応じて自動的にロック及びアンロックされる。連結はまた、取り付け位置に向かうタンク10の移動に応じて自動的にロックされ得、この移動は、タンクの位置、連結における力等を検出するセンサーによって検出される。ボイルオフ回路22は、飛行機2の補助電力ユニット21に気体水素を供給する補助燃料供給回路23をも含む気体回路の一部である。
【0065】
第1及び第2の実施形態の両方に適用可能である変形例において、タンク10は、飛行機2の外側に取り付けることが可能である。この場合、ボイルオフ回路22は大気に開放される単純な圧力開放弁から構成されていることが可能であり、また、着氷を抑制するためにタンク10の外側に電気加熱が設けられていてもよい。
【0066】
上記に開示の方法及び装置は、水素をヘリウムで置き換えると共に、酸化に関連する方法ステップ及び装置の特徴を除くことにより適用可能である。得られる方法及び装置により、高速でのヘリウムの直接的な送出が可能となり、従って、ボイルオフ損失が低減され、生成及び液化に使用されるエネルギー源から離れている目的地に到達させるヘリウムの割合を大きくすることが可能となる。
【国際調査報告】