(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20241029BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241029BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241029BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241029BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241029BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241029BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241029BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/13
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547805
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 CN2022082008
(87)【国際公開番号】W WO2023065594
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202111214360.8
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524152816
【氏名又は名称】宝船生物医▲薬▼科技(上▲海▼)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523195234
【氏名又は名称】三▲優▼生物医▲薬▼(上▲海▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲應▼峰
(72)【発明者】
【氏名】郎 国竣
(72)【発明者】
【氏名】▲譚▼ 永▲聰▼
(72)【発明者】
【氏名】邵 ▲ジ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 瑞霞
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤン▼ ▲閏▼
(72)【発明者】
【氏名】王 涛
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】胡 宇豪
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 文▲海▼
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、バイオ医薬品分野に属する。具体的には、本発明は、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体及びその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD47に結合する第1の抗原結合部分と、CLDN18.2に結合する第2の抗原結合部分とを含む二重特異性抗体であって、前記第1の抗原結合部分は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とを含み、
前記重鎖可変領域は、
1)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含むHCDR1と、
2)SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含むHCDR2と、
3)SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、且つ、
前記軽鎖可変領域は、
1)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含むLCDR1と、
2)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むLCDR2と、
3)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む、二重特異性抗体。
【請求項2】
前記重鎖可変領域は、1) SEQ ID NO:10のアミノ酸配列、又は2)SEQ ID NO:10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は
前記軽鎖可変領域は、1) SEQ ID NO:11のアミノ酸配列、又は2)SEQ ID NO:11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含み、且つ前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
前記第2の抗原結合部分は、CLDN18.2に結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン(VHH)を含み、
好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR1と、
SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR2と、
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDR3とを含み、
さらに好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、1) SEQ ID NO:12のアミノ酸配列、又は2)SEQ ID NO:12のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
前記第1の抗原結合部分及び前記第2の抗原結合部分は、リンカーを介して連結される、請求項1~3のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)及び軽鎖定常領域(CL)をさらに含み、
好ましくは、前記重鎖定常領域はヒトIgG1の重鎖定常領域であり、及び/又は前記軽鎖定常領域はヒトκ軽鎖定常領域であり、
さらに好ましくは、前記重鎖定常領域は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含み、及び/又は前記軽鎖定常領域は、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含み、
ここで、
前記第1のポリペプチドは、N末端からC末端へ、
VH-CH-Linker-VHHという構造を有し、
前記第2のポリペプチドは、N末端からC末端へ、
VL-CLという構造を有し、
ここで、
VH及びVLはそれぞれ、請求項1又は2に定義されたような重鎖可変領域及び軽鎖可変領域であり、
VHHは、請求項3に定義されたような免疫グロブリン単一可変ドメインであり、
CH及びCLはそれぞれ、請求項5に定義されたような重鎖定常領域及び軽鎖定常領域であり、
Linkerはリンカーであり、
好ましくは、前記第1のポリペプチドはSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチドはSEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項9】
請求項7に記載のポリヌクレオチド又は請求項8に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項10】
少なくとも一つの治療剤とコンジュゲートする請求項1~6のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、抗体コンジュゲート。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の二重特異性抗体又は請求項10に記載の抗体コンジュゲート、及び薬学的に許容されるキャリア剤を含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項10に記載の抗体コンジュゲート又は請求項11に記載の医薬組成物の、癌を治療するための医薬品の製造における使用であって、好ましくは、前記癌は胃癌である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月19日に提出された「抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体及びその使用」という名称の中国特許出願第202111214360.8号の優先権を主張し、該出願の内容の全ては引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、バイオ医薬品分野に属する。具体的には、本発明は、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
CD47は、細胞表面に広く発現する膜貫通糖タンパク質であり、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、シグナル調節タンパク質α (Signal regulatory proteinα、SIRPα)、トロンボスポンジン(Thrombospondin-1、TSP1)及びインテグリン(Integrin)と相互作用して、細胞のアポトーシス、増殖、免疫などの一連の反応を媒介することができる。抗CD47抗体でCD47-SIRPα経路を遮断することは、腫瘍細胞に対する貪食作用を有効に媒介することによって、生体内で様々な血液腫瘍及び固形腫瘍の増殖を阻害することができることが確認された。しかしながら、CD47は、腫瘍細胞に高発現するだけでなく、正常な細胞、例えば、赤血球にも大量のCD47が発現しており、CD47を標的とする療法が望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。従来技術に開示されるいくつかの抗CD47抗体(例えば、US20160304609を参照されたい)は、赤血球と結合し、重度の貧血反応を引き起こすだけでなく、投与には最大30 mg/kgの投与量が必要であり、これらの特性が抗CD47抗体の臨床応用に大きな課題をもたらす。
【0004】
CLDN18は、Claudinsタンパク質ファミリーのメンバーに属し、Shoichiro Tsukitaらにより1998年に発見され、上皮細胞の緊密な連結を構成する重要な分子であり、上皮細胞の透過性を決定し、細胞膜表面タンパク質及び脂質の拡散を阻止する役割も果たしている(Gunzel, D. and A. S. Yu (2013) Physiol Rev 932: 525-569)。ヒトのCLDN18遺伝子は、二つの異なるエクソン1を有し、転写後に可変スプライシングを経て、最終的に、N末端のみに異なる配列を有する二つのタンパク質サブタイプCLDN18.1及びCLDN18.2が生成される。CLDN18.2は、腫瘍細胞及び正常組織における発現特異性のため、現在、高度に潜在力のある抗腫瘍薬物の作用標的となっている。WO 2016165762A1は、抗CLDN18.2抗体IMAB362 (Zolbetuximab)を開示し、それは、胃癌の第2相臨床試験において、標準的な化学療法よりも有意な生存期間延長(13.2対8.4ヶ月)を示し、CLDN18.2高発現患者において優位性がより顕著である。
【0005】
WO 2021003082A1は、抗CLDN18.2及びCD47二重特異性抗体を開示し、それは、ヒト赤血球に実質的に結合しない。しかし、癌治療のさらなる可能性を提供するために、CLDN18.2及びCD47を標的とする新たな二重特異性抗体の開発は依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、二重特異性抗体を提供し、それは、CD47に結合する第1の抗原結合部分と、CLDN18.2に結合する第2の抗原結合部分とを含み、ここで、前記第1の抗原結合部分は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とを含み、前記重鎖可変領域は、1)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含むHCDR1と、2)SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含むHCDR2と、3)SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、且つ前記軽鎖可変領域は、1)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含むLCDR1と、2)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むLCDR2と、3)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記第2の抗原結合部分は、CLDN18.2に結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン(VHH)を含む。好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR1と、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR2と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、単離されたポリヌクレオチドを提供し、それは、本発明の二重特異性抗体をコードする。
【0009】
本発明は、発現ベクターをさらに提供し、それは、本発明のポリヌクレオチドを含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、宿主細胞を提供し、それは、本発明のポリヌクレオチド又は発現ベクターを含む。
【0011】
本発明は、抗体コンジュゲートにさらに関し、それは、少なくとも一つの治療剤とコンジュゲートする本発明の二重特異性抗体を含む。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、医薬組成物に関し、それは、本発明の二重特異性抗体又は抗体コンジュゲート、及び薬学的に許容されるキャリア剤を含む。
【0013】
本発明は、本発明の二重特異性抗体、抗体コンジュゲート又は医薬組成物の、癌を治療するための医薬品の製造における使用にさらに関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体の概略的構造を示した図である。
【
図2ab】抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体と赤血球におけるCD47との結合活性を示した図である。
【
図3ab】抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体の、単一標的及び二重標的を発現する腫瘍細胞での結合活性を示した図であり、ここで、
図3aは、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体のNUGC-4細胞での結合活性を示し、
図3bは、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体のhCLDN18.2-NUGC-4細胞での結合活性を示す。
【
図4abc】単一標的及び二重標的を発現する腫瘍細胞において、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体がヒトCD47と受容体SIRPαとの結合を遮断する能力を示した図であり、ここで、
図4aは、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体がNUGC-4細胞においてヒトCD47と受容体SIRPαとの結合を遮断する能力を示し、
図4b及び
図4cは、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体がhCLDN18.2-NUGC-4細胞においてヒトCD47と受容体SIRPαとの結合を遮断する能力を示す。
【
図5ab】マウスにおける、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体の腫瘍増殖に対する阻害作用を示した図である。
【
図6】生物発光レポーター遺伝子により測定された抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体のADCP活性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本発明では、特に断りのない限り、本明細書で使用される科学及び技術用語は、当業者に一般に理解される意味を有する。そして、本明細書で使用されるタンパク質及び核酸化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学、免疫学に関連する用語並びに実験室操作手順は、対応する分野で広く使用される用語及び通常の手順である。それとともに、本発明をより良く理解するために、以下では、関連する用語の定義及び解釈を提供する。
【0016】
本明細書で使用されるように、「含む」、「包含する」、「含有する」及び「有する」という表現は、非制限的であり、列挙されている要素、ステップ又は構成要素を含むが、列挙されていない他の要素、ステップ又は構成要素を除外しないことを表す。「…からなる」という表現は、特定されていないいかなる要素、ステップ又は構成要素も含まない。「実質的に……からなる」という表現は、範囲が、特定の要素、ステップ又は構成要素に加え、請求されたテーマの基本的及び新規な特徴に顕著な影響を与えない、任意選択的に存在する要素、ステップ又は構成要素に限定されることを指す。理解すべきこととして、「実質的に……からなる」及び「……からなる」という表現は、「含む」という表現の意味にカバーされている。
【0017】
本明細書で使用されるように、「抗体」は、免疫グロブリン又はその断片を指し、それは、少なくとも一つの抗原結合部位を介して抗原エピトープに特異的に結合する。本明細書では、抗体の定義は、抗原結合断片をカバーする。「抗体」という用語は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単一ドメイン抗体及び抗原結合断片を含む。抗体は、合成された(例えば、化学的コンジュゲーション又はバイオコンジュゲーションにより産生された)もの、酵素処理により得られたもの又は組換えにより産生されたものであってもよい。本明細書による抗体は、任意の免疫グロブリンタイプ(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgA及びIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)を含む。抗体は、「一価」、「二価」、「三価」又は「四価」以上の抗体であってもよく、それが1、2、3、4個又はそれ以上の抗原結合部位を含むことを指す。
【0018】
本明細書で使用されるように、「全長抗体」は、通常、二本の重鎖(HC)及び二本の軽鎖(LC)という四本のポリペプチドを含む。各本の軽鎖は、N末端(アミノ酸末端)からC末端(カルボキシル基末端)へ、「軽鎖可変領域(VL)」と「軽鎖定常領域(CL)」とを含む。各本の重鎖は、N末端からC末端へ、「重鎖可変領域(VH)」と「重鎖定常領域(CH)」とを含む。一般的には、全長抗体の重鎖定常領域は、N末端からC末端へ、CH1-ヒンジ領域(hinge)-CH2-CH3を含んでもよい。いくつかの免疫グロブリンタイプ(例えば、IgM及びIgE)において、重鎖定常領域は、N末端からC末端へ、CH1-ヒンジ領域-CH2-CH3-CH4を含んでもよい。
【0019】
軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、それぞれ三つの高度に可変な「相補性決定領域(CDR)」と四つの比較的保存的な「フレームワーク領域(FR)」とを含んでもよく、且つN末端からC末端へ、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順で連結される。本明細書では、軽鎖可変領域のCDR (CDRL又はLCDR)はLCDR1、LCDR2及びLCDR3と称されてもよく、重鎖可変領域のCDR (CDRH又はHCDR)はHCDR1、HCDR2及びHCDR3と称されてもよい。
【0020】
本発明では、CDRのアミノ酸配列は、いずれもAbM定義規則に従って示されるものである(本発明の請求項においてもAbM定義規則に従って示される配列である)。しかし、当業者に周知されるように、当分野では、様々な方法によって抗体のCDRを定義することができ、例えば、抗体の三次元構造及びCDRループのトポロジーに基づくChothia (例えば、Chothia, C. et al., Nature, 342, 877-883 (1989)、及びAl-Lazikani, B. et al., J. Mol. Biol., 273, 927-948 (1997)を参照されたい)、抗体配列可変性に基づくKabat (例えば、Kabat, E.A. et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)、AbM (Martin, A.C.R. and J. Allen (2007) “Bioinformatics tools for antibody engineering,” in S. Dubel (ed.), Handbook of Therapeutic Antibodies. Weinheim: Wiley-VCH Verlag, pp. 95‐118)、Contact (MacCallum, R. M. et al., (1996) J. Mol. Biol. 262:732-745)、IMGT (Lefranc, M.-P., 2011 (6), IMGT, the International ImMunoGeneTics Information System Cold Spring Harb Protoc.、及びLefranc, M.-P. et al., Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003)を参照されたい)、及び多数の結晶構造を利用する近接伝播クラスタリング(affinity propagation clustering)に基づくNorth CDR定義である。当業者であれば理解できるように、特に規定されていない限り、所定の抗体又はその領域(例えば、可変領域)の「CDR」及び「相補性決定領域」という用語は、本発明に記述されている上記既知のスキームのうちのいずれか一つにより定義される相補性決定領域をカバーすると理解されるべきである。本発明の請求項において請求される範囲が、AbM定義規則に基づいて示された配列であるが、他のCDRの定義規則に基づく対応するアミノ酸配列も本発明の保護範囲に入る。
【0021】
そのため、本発明で定義された具体的なCDR配列で抗体を限定する場合、前記抗体の範囲は、その可変領域配列が前記の具体的なCDR配列を含むが、異なるスキーム(例えば、異なる割り当てシステム規則又は組み合わせ)を適用したため、その記載されているCDR境界が本発明で定義された具体的なCDR境界と異なる抗体をさらにカバーしている。
【0022】
本明細書で使用されるように、「フレームワーク領域」及び「フレームワークリージョン」という用語は、互換使用可能である。本明細書で使用されるように、「フレームワーク領域」、「フレームワークリージョン」又は「FR」残基という用語は、抗体可変領域における、以上に定義したCDR配列以外のそれらのアミノ酸残基を指す。
【0023】
本明細書で使用されるように、「単一ドメイン抗体(sdAb)」又は「ナノ抗体」は、単一の免疫グロブリン可変ドメイン(単一可変ドメイン)を機能性抗原結合断片として含む抗体を指す。全長抗体の可変領域と類似しているように、単一可変ドメインは、通常、抗原結合部位を形成するCDR1、CDR2及びCDR3並びに支持作用を果たすフレームワーク領域を含む。単一可変ドメインは、例えば、重鎖抗体の可変ドメイン(variable domain of heavy-chain antibody、VHH)、サメのIgNAR可変ドメイン、ヒト軽鎖抗体可変ドメイン及び重鎖抗体可変ドメインであってもよい。
【0024】
本明細書で使用されるように、「抗体依存性細胞媒介性細胞貪食作用」又は「ADCP」は、細胞媒介のプロセスを指し、ここで、Fc γ受容体(FcγR)を発現する非特異的な細胞傷害性細胞(例えば、単球、マクロファージ、好中球及び樹状細胞)は、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)に結合する抗体を認識し、且つその後にエフェクター細胞として標的細胞(例えば、腫瘍細胞)を貪食する。いくつかの実施形態において、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体は、CLDN18.2を発現する(特にCD47及びCLDN18.2を発現する)癌細胞に対するADCPを媒介する。
【0025】
本明細書で使用されるように、アミノ酸配列の「パーセント(%)配列同一性」、「配列同一性」は、当分野で周知の定義を有し、それは、配列アラインメント(例えば、手動検査又は周知可能なアルゴリズム)により確定された二つのポリペプチド配列間の同一性のパーセントを指す。当業者に既知の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、Clustal Omega及びFASTAソフトウェアのような公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて確定することができる。
【0026】
本明細書では、参照アミノ酸配列「からの」又は「由来する」アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列の一部又は全てと同じ又は相同である。例えば、ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域に由来するアミノ酸配列は、それが由来するヒト免疫グロブリン重鎖定常領域の野生型配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有してもよい。
【0027】
ポリペプチドの機能を変えることなく、ポリペプチドにおける非必須領域(例えば、抗体のCDR領域、フレームワーク領域の非必須アミノ酸、定常領域のアミノ酸)を修飾し、例えば、一つ又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失を行うことができる。当業者であれば理解できるように、ポリペプチドにおける非必須区域のアミノ酸は、適切な保存的アミノ酸で置換されてもよく、且つ一般的には、その生物学的活性を変えない(例えば、Watson et al., Molecular Biology of the Gene, 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. co., p.224を参照されたい)。適切な保存的置換は、当業者によく知られている。いくつかの場合に、アミノ酸置換は非保存的置換である。当業者であれば理解できるように、抗体又は抗体断片に対してアミノ酸突然変異又は修飾を行うことによってその特性を変え、例えば、抗体グリコシル化修飾のタイプを変え、鎖間ジスルフィド結合を形成する能力を変えるか、又は抗体コンジュゲートの製造のために活性基を提供することができる。このようなアミノ酸突然変異又は修飾を含む抗体又はその抗原結合断片は、また本発明の二重特異性抗体の範囲に入る。
【0028】
本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体又はそれをコードするポリヌクレオチドは単離されたものであってもよい。本明細書で使用されるように、「単離された」という表現は、物質(例えば、ポリヌクレオチド又はポリペプチド)が、それが存在する供給源又は環境から単離され、即ちいかなる他の構成要素も実質的に含まないことを指す。
【0029】
本明細書では、「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、互換可能であり、少なくとも二つの連結されるヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体を含むオリゴマー又はポリマーを表すために用いられ、通常、デオキシリボース核酸(DNA)及びリーボス核酸(RNA)を含んでもよい。
【0030】
本明細書では、「ベクター」は、外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための媒介であり、ベクターが適切な宿主細胞に形質転換される場合、外因性ポリヌクレオチドは増幅又は発現され得る。ベクターは、通常、遊離のままであるが、遺伝子又はその一部をゲノムの染色体に組み込むように設計されてもよい。本明細書で使用されるように、ベクターの定義は、プラスミド、線状化プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、ファージベクター、ファージミド、人工染色体(例えば、酵母人工染色体及び哺乳動物人工染色体)などをカバーする。ウイルスベクターは、レトロウイルスウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクター及びバキュロウイルスベクターなどを含むが、それらに限らない。
【0031】
本明細書で使用されるように、「発現」という用語は、RNA及び/又はポリペプチドを産生することを指す。
【0032】
本明細書で使用されるように、「発現ベクター」は、関心のあるポリヌクレオチド(DNAとRNAとを含む)を発現できるベクターを指す。例えば、発現ベクターでは、関心のあるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列(DNAとRNAとを含む)を、ポリヌクレオチド配列の発現に影響を与えることができる調節配列(例えば、プロモーター及びリボソーム結合部位)と操作可能に連結することができる。調節配列は、プロモーター及びターミネーター配列を含んでもよく、且つ任意選択的に、複製始点、選択マーカー、エンハンサー、アデニル化シグナルなどを含んでもよい。発現ベクターは、プラスミド、ファージベクター、組換えウイルス又は他のベクターであってもよく、適切な宿主細胞に導入される場合、関心のあるポリヌクレオチドの発現を引き起こす。適切な発現ベクターは、当業者に周知のものである。当業者は、必要に応じて、発現ベクターを、宿主細胞内で複製可能であり、宿主細胞内で遊離のままであるか又は宿主細胞ゲノムに組み込まれるベクターとして製造することができる。
【0033】
本明細書で使用されるように、「宿主細胞」は、ベクターを受け取り、維持し、複製するか又は増幅するための細胞である。宿主細胞は、ポリヌクレオチド、又はベクターによりコードされるポリペプチドを発現するために用いられてもよい。宿主細胞は、真核細胞又は原核細胞であってもよい。原核細胞、例えば、大腸菌(E. coli)又は枯草菌(Bacillus subtilis)、真菌細胞、例えば、酵母細胞又はアスペルギルス属、昆虫細胞(例えば、S2ショウジョウバエ細胞又はSf9)及び動物細胞(例えば、線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、NSO細胞又はHEK293細胞)である。
【0034】
本明細書で使用されるように、「治療」という用語は、疾患/症状に対する改善を指し、例えば、疾患/症状を軽減又は消失させ、疾患/症状の発生、進行及び/又は悪化を防止又は減速させる。そのため、治療は、予防、治療及び/又は治癒を含む。
【0035】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容されるキャリア剤」という用語は、薬理学的及び/又は生理学的に被験者及び活性成分と適合するキャリア剤を指し、当分野で公知のものであり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照されたい)、且つpH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度強化剤、希釈剤、浸透圧を維持する試薬、吸収を遅らせる試薬、防腐剤を含むが、それらに限らない。例えば、pH調整剤は、リン酸緩衝液を含むが、それに限定されない。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性又は非イオン性の界面活性剤を含むが、それらに限らず、例えば、Tween-80である。イオン強度強化剤は、塩化ナトリウムを含むが、これに限定されない。防腐剤は、様々な抗細菌試薬と抗真菌試薬を含むが、それらに限らず、例えば、パラベン、トリクロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などである。浸透圧を維持する試薬は、糖、塩化ナトリウム及びその類似体を含むが、それらに限らない。吸収を遅らせる試薬は、モノステアレート及びゼラチンを含むが、それらに限らない。希釈剤は、水、水性緩衝液(例えば、緩衝食塩水)、オール及びポリオール(例えば、グリセロール)などを含むが、それらに限らない。防腐剤は、様々な抗細菌試薬と抗真菌試薬を含むが、それらに限らず、例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラベン、トリクロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などである。安定剤は、当業者に一般的に理解される意味を有し、医薬品中の活性成分の所望の活性を安定化することができ、グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、SPGA (Sucrose-Phosphate-Glutamate-Albumin)、糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、ショ糖、ラクトース、デキストラン、又はグルコース)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グリシン)、タンパク質(例えば、乾燥ホエイ、アルブミン又はカゼイン)又はその分解生成物(例えば、ラクトアルブミン加水分解物)などを含むが、それらに限らない。
【0036】
本明細書で使用されるように、哺乳動物の例は、ヒト、非ヒト霊長類動物、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、アルパカ、イヌ、ネコなどを含むが、それらに限らない。本明細書では、「被験体」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒトを指す。いくつかの実施形態において、被験体はヒトである。いくつかの実施形態において、被験体は、癌患者、癌に罹患する疑いがあるか又は癌に罹患するリスクにあるヒト又は動物である。
【0037】
抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体
【0038】
本発明は、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体を提供し、それは、CD47に結合する第1の抗原結合部分と、CLDN18.2に結合する第2の抗原結合部分とを含み、ここで、前記第1の抗原結合部分は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とを含み、
前記重鎖可変領域は、
1)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列又はその変異体を含むHCDR1と、
2)SEQ ID NO:5のアミノ酸配列又はその変異体を含むHCDR2と、
3)SEQ ID NO:6のアミノ酸配列又はその変異体を含むHCDR3とを含み、そして
前記軽鎖可変領域は、
1)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列又はその変異体を含むLCDR1と、
2)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列又はその変異体を含むLCDR2と、
3)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列又はその変異体を含むLCDR3と、
ここで、前記変異体は、それが由来する配列に比べて、1つ又は2つのアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失を有する。
【0039】
一具体的な実施形態において、第1の抗原結合部分は、CD47に特異的に結合する第1の抗原結合部分を含み、前記第1の抗原結合部分は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とを含み、
前記重鎖可変領域は、
1)SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含むHCDR1と、
2)SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含むHCDR2と、
3)SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、且つ、
前記軽鎖可変領域は、
1)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含むLCDR1と、
2)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むLCDR2と、
3)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記VHは、1) SEQ ID NO:10のアミノ酸配列、又は2)SEQ ID NO:10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は
前記VLは、1) SEQ ID NO:11のアミノ酸配列、又は2)SEQ ID NO:11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記VHは、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含み、且つ前記VLは、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む。
【0042】
第1の抗原結合部分は、任意の形態の抗原結合断片、例えば、scFv、dsFv、scdsFv、Fab、Fab’又はF(ab’)2を含んでもよい。本発明によれば、第1の抗原結合部分は、癌細胞表面のCD47に特異的に結合するが、赤血球におけるCD47に結合しないか又は実質的に結合せず、それにより本発明の二重特異性抗体は赤血球凝集を引き起こさない。
【0043】
第2の抗原結合部分は、任意の形態の抗原結合断片を含んでもよく、scFv、dsFv、scdsFv、Fab、Fab’、F(ab’)2及び単一可変ドメインを含むが、それらに限らない。いくつかの実施形態において、第2の抗原結合部分は、CLD18.2に特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む。CLD18.2に特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、例えば、CN112480248A及びWO 2020238730A1に記述されており、その内容の全てが援用により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列又はその変異体を含むCDR1と、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列又はその変異体を含むCDR2と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列又はその変異体を含むCDR3とを含み、ここで、前記変異体は、それが由来する配列に比べて、1つ又は2つのアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失を有する。一具体的な実施形態において、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDR1と、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDR2と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDR3とを含む。いくつかの実施形態において、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態において、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、SEQ ID NO:12的アミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合部分及び第2の抗原結合部分は、リンカーを介して連結される。リンカーは、ペプチドリンカー又は化学結合であってもよく、好ましくは、リンカーである。例示的なペプチドリンカーは、ポリグリシン(G)、ポリアラニン(A)、ポリセリン(S)又はそれらの組み合わせ、例えば、GGAS、GGGS、GGGSG又は(G4S)nを含んでもよいが、それらに限らず、ここで、nは1~20の整数である。好ましくは、nは1~5の整数である。一具体的な実施形態において、ペプチドリンカーは、SEQ ID NO:22又はSEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体は、免疫グロブリン定常領域をさらに含む。免疫グロブリン定常領域は、任意の種の免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)及び軽鎖定常領域(CL)であってもよい。重鎖定常領域は、任意のサブタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)の免疫グロブリンの重鎖定常領域又はその組み合わせから由来してもよい。好ましい実施形態において、重鎖定常領域は、少なくともFc領域を含んでもよく、例えば、IgG1の重鎖定常領域は、ヒンジ領域の全て又は一部の-CH2-CH3又はCH1-ヒンジ領域-CH2-CH3を含んでもよい。軽鎖定常領域は、λ (Lambda)軽鎖又はκ (Kappa)軽鎖定常領域から由来してもよい。一好ましい実施形態において、重鎖定常領域は、ヒトIgG1の重鎖定常領域である。いくつかの実施形態において、重鎖定常領域は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む。一好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、ヒトκ軽鎖定常領域である。いくつかの実施形態において、軽鎖定常領域は、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合部分のVH及びVLは、それぞれ重鎖定常領域及び軽鎖定常領域のN末端に融合し、且つ第2の抗原結合部分の単一可変ドメインは、任意選択的に、リンカーを介して前記VHのN末端、前記VLのN末端、前記重鎖定常領域のC末端又は前記軽鎖定常領域のC末端に融合する。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体は、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとを含み、前記第1のポリペプチドは、第1の抗原結合部分のVH及び重鎖定常領域を含み、第2のポリペプチドは、第1の抗原結合部分のVL及び軽鎖定常領域を含み、第2の抗原結合部分の単一可変ドメインは、任意選択的に、リンカーを介して前記VHもしくはVLのN末端又は前記重鎖定常領域もしくは軽鎖定常領域のC末端に融合する。いくつかの実施形態において、単一可変ドメインは、任意選択的に、リンカーを介して前記VHのN末端又は前記重鎖定常領域のC末端に融合し、前記第1のポリペプチドは、また融合重鎖と呼ばれてもよい。いくつかの実施形態において、融合重鎖は、以下に記載の式(I)又は式(III)の構造を有する。別の実施形態において、第2の抗原結合部分の単一可変ドメインは、任意選択的に、リンカーを介して前記VLのN末端又は軽鎖定常領域のC末端に融合し、前記第2のポリペプチドは、また融合軽鎖と呼ばれてもよい。いくつかの実施形態において、融合軽鎖は、以下に記載の式(IV)又は式(VI)の構造を有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、式(I)の構造を有し、
VH-CH-Linker-VHH 式(I)、
第2のポリペプチドは、(II)の構造を有し、
VL-CL 式(II)、
ここで、
VH及びVLは、それぞれ以上に記載の第1の抗原結合部分の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域であり、
VHHは、以上に記載の免疫グロブリン単一可変ドメインであり、
CH及びCLは、それぞれ以上に記載の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域であり、
Linkerはリンカーである。
【0049】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、式(I)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、式(II)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、式(III)の構造を有し、
VHH-Linker-VH-CH 式(III)、
第2のポリペプチドは、式(II)の構造を有し、
ここで、
VHHは、以上に記載の免疫グロブリン単一可変ドメインであり、
VHは、以上に記載の第1の抗原結合部分の重鎖可変領域であり、
CHは、以上に記載の重鎖定常領域であり、
式(II)は以上に記載したとおりであり、
Linkerはリンカーである。
【0051】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、式(III)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、式(II)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、式(III)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、式(II)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む。
【0053】
さらなる実施形態において、第1のポリペプチドは、式(III)の構造を有し、第2のポリペプチドは、式(IV)の構造を有し、
VHH-Linker-VL-CL 式(IV)、
ここで、
式(III)は以上に記載したとおりであり、
VHHは、以上に記載の免疫グロブリン単一可変ドメインであり、
VLは、以上に記載の第1の抗原結合部分の軽鎖可変領域であり、
CLは、以上に記載の軽鎖定常領域であり、
Linkerはリンカーである。
【0054】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、式(III)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、式(IV)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む。
【0055】
別の実施形態において、第1のポリペプチドは、式(V)の構造を有し、
VH-CH 式(V)、
第2のポリペプチドは、式(IV)の構造を有し、
ここで、
式(IV)は以上に記載したとおりであり、
VHは、以上に記載の第1の抗原結合部分の重鎖可変領域であり、
CHは、以上に記載の重鎖定常領域であり、
Linkerはリンカーである。
【0056】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、式(V)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチドは、式(IV)の構造を有し、それは、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む。
【0057】
別の実施形態において、第1のポリペプチドは、式(V)の構造を有し、第2のポリペプチドは、式(VI)の構造を有し、
VL-CL-Linker-VHH 式(VI)、
ここで、
式(V)は以上に記載したとおりであり、
VHHは、以上に記載の免疫グロブリン単一可変ドメインであり、
VLは、以上に記載の第1の抗原結合部分の軽鎖可変領域であり、
CLは、以上に記載の軽鎖定常領域であり、
Linkerはリンカーである。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体は、
1)癌細胞表面のCD47のSIRPαへの結合を遮断し、
2)CD47及びCLDN18.2を発現する癌細胞に対するマクロファージによる貪食を誘導し、及び/又は
3)CD47及びCLDN18.2を発現する癌細胞に結合するが、赤血球に結合しないか又は実質的に結合しないことができる。
【0059】
ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞
【0060】
別の態様では、本発明は、単離されたポリヌクレオチドを提供し、それは、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0061】
本発明のポリヌクレオチドは、当分野に既知の方法、例えば、ファージディスプレイライブラリー、酵母ディスプレイライブラリー、免疫動物、不死化された細胞(例えば、マウスB細胞ハイブリドーマ細胞、EBV媒介性不死化B細胞)からの単離又は化学合成を用いて入手され得る。本発明のポリヌクレオチドは、発現するための宿主細胞に対してコドン最適化を行うことができる。
【0062】
さらなる態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチを含むベクターをさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドを発現ベクターにクローニングする。発現ベクターは、追加のポリヌクレオチド配列、例えば、調節配列及び抗生物質耐性遺伝子をさらに含んでもよい。発現ベクターは、追加のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含んでもよい。追加のポリペプチドは、例えば、抗体又は抗原結合断片の検出及び/又は単離を促進するポリペプチドであってもよく、親和性タグ(例えば、ポリヒスチジンタグ(His6)又はグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグ)、プロテアーゼ切断部位を含むポリペプチド及びレポータータンパク質(例えば、蛍光タンパク質)を含むが、それらに限らない。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、組換え核酸として製造される。組換え核酸は、当分野に周知の技術、例えば、化学合成、DNA組換え技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術)などを用いて製造され得る(Sambrook, J., E. F. Fritsch, and T. Maniatis. (1989). Molecular cloning: a laboratory manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい)。
【0064】
本発明のポリヌクレオチドは、一つ又は複数の発現ベクターに存在し得る。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、DNAプラスミドであり、例えば、細菌、酵母又は哺乳動物細胞に発現するためのDNAプラスミドである。別のいくつかの実施形態において、発現ベクターはウイルスベクターである。他の実施形態において、発現ベクターは、ファージベクター又はファージミドベクターである。
【0065】
本発明は、宿主細胞をさらに含み、それは、以上に記載の少なくとも一つのポリヌクレオチド又はベクターを含む。本発明のポリヌクレオチド又は発現ベクターは、当分野に既知の様々な方法を用いて適切な宿主細胞に導入され得る。このような方法は、リポソームトランスフェクション、エレクトロポレーション、ウイルス形質導入及びリン酸カルシウムトランスフェクションなどを含むが、それらに限らない。
【0066】
好ましい実施形態において、宿主細胞は、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体を発現するためのものである。宿主細胞の例は、原核細胞(例えば、細菌、例えば、大腸菌)及び真核細胞(例えば、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞)を含むが、それらに限らない。
【0067】
抗体発現に適した哺乳動物宿主細胞は、骨髄腫細胞、HeLa細胞、HEK細胞(例えば、HEK 293細胞)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及び抗体の発現に適した他の哺乳動物細胞を含むが、それらに限らない。
【0068】
本発明は、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体を産生する方法をさらに提供し、それは、
(I)抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体を発現するために、適切な条件で本発明の宿主細胞を培養するステップと、
(II)宿主細胞又はその培養物から前記抗体を単離するステップとを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、単一のベクターを用い、それは、重鎖及び軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、二種類のベクターを用い、ここで、一方のベクターは抗体の軽鎖をコードし、他方は抗体の重鎖をコードする。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、パートナープラスミドをさらに含み、それは、抗体の溶解性、安定性及び/又はフォールディングの向上に役立つ。宿主細胞又はその培地から抗体を単離及び精製する技術は、当業者によく知られるものである。
【0070】
抗体コンジュゲート
【0071】
本発明は、抗体コンジュゲートをさらに提供し、それは、少なくとも一つの治療剤とコンジュゲートする本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体を含む。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、典型的な抗体コンジュゲートであり、ここで、前記治療剤は、例えば、細胞傷害性薬剤であってもよい。
【0072】
本明細書で使用されるように、「コンジュゲーション」は、二つ又は複数の部分が共有結合的又は非共有結合的作用により互いに連結されることを指す。好ましい実施形態において、前記コンジュゲーションは共有結合的コンジュゲーションである。
【0073】
治療剤は、細胞傷害性薬剤、治療性抗体(例えば、別の抗原と特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片)、放射性同位体、オリゴヌクレオチド及びそれらの類似体(例えば、干渉RNA)、生理活性ペプチド、タンパク質毒素(例えば、ジフテリア毒素、リシン)及び酵素(例えば、ウレアーゼ)から選択されてもよい。
【0074】
細胞傷害性薬剤は、細胞の活性、機能を阻害又は低下させ、及び/又は細胞を死滅させる物質を指す。細胞傷害性薬剤の例は、メイタンシノイド(maytansinoid)(例えば、メイタンシン(maytansine)、アウリスタチン類(例えば、MMAF、MMAE、MMAD)、デュオスタチン(duostatin)、クリプトファイシン(cryptophycin)、ビンカアルカロイド類(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、コルヒチン類、ドロスタチン類、タキサン、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、エンジイン系抗生物質、サイトカラシン類、カンプトテシン類、アントラサイクリン系抗生物質(例えば、ドノマイシン(daunorubicin)、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxyanthracindione)、ドキソルビシン(doxorubicin))、細胞傷害性抗生物質(例えば、マイトマイシン(mitomycin)、アクチノマイシン(actinomycin)、デュオカルマイシン(duocarmycin)(例えば、CC-1065)、アウロマイシン(auromycin)、デュオマイシン(duomycin)、カリケアミシン(calicheamicin)、エンドマイシン(endomycin)、フェノマイシン(phenomycin))、ドキソルビシン、ダウノルビシン、カリケアミシン、シスプラチン(cisplatin)、臭化エチジウム(ethidiumbromide)、ゼオシン、マイトマイシン、ミトラマイシン、プラジエノリド、ポドフィロトキシン、エトポシド(etoposide)、ミトキサントロン、5-フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、ネララビン、カルムスチン、ロムスチン、メトトレキサート、メルファラン、テニポシド(tenoposide)、グルココルチコイドなどを含むが、それらに限らない。
【0075】
放射性同位体は、例えば、212Bi、213Bi、131I、125I、111In、177Lu、186Re、188Re、153Sm、90Yから選択されてもよい。放射性同位体で標識された抗体は、また放射性免疫コンジュゲートと呼ばれてもよい。
【0076】
好ましい実施形態において、前記生理活性ポリペプチドは、治療活性、結合活性又は酵素活性を有するポリペプチド又はタンパク質である。生理活性ポリペプチドの非限定的例は、タンパク質毒素(例えば、ジフテリア毒素、リシン)、酵素(例えば、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、サイトカインを含むが、それらに限らない。
【0077】
いくつかの実施形態において、治療剤は、生物学的抗腫瘍活性を有する分子である。生物学的抗腫瘍活性を有する分子は、細胞傷害性薬剤、化学療法剤、放射性同位体、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍特異的抗原を標的とする抗体及び他の抗腫瘍薬物を含むが、それらに限らない。一好ましい実施形態において、治療剤は細胞傷害性薬剤である。さらなる好ましい実施形態において、治療剤は放射性同位体である。
【0078】
当分野に既知の任意の技術を用いて、リンカーを介して治療剤を本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体とコンジュゲートすることができる。前記リンカーは、共有結合的コンジュゲーションのための活性基、例えば、アミン、ヒドロキシルアミン、マレイミド基、カルボキシル基、フェニル基、チオール、スルフヒドリル基又はヒドロキシ基を含んでもよい。リンカーは、切断可能又は切断不可能なものであってもよい。切断可能なリンカーは、例えば、酵素切断可能なリンカー(例えば、プロテアーゼ切断部位を含むペプチド)、pH感受性リンカー(例えば、ヒドラゾンリンカー)又は還元可能なリンカー(例えば、ジスルフィド結合)である。
【0079】
いくつかの実施形態において、リンカーは、アミン、ヒドロキシルアミン、マレイミド基、カルボキシル基、フェニル基、チオール、スルフヒドリル基及びヒドロキシ基から選択される活性基を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは化学結合である。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ酸又は2~10個のアミノ酸からなるペプチドを含む。アミノ酸は、天然又は非天然アミノ酸であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体とコンジュゲートする前に、治療剤をリンカーとコンジュゲートして中間体を形成する。いくつかの実施形態において、中間体は、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体のスルフヒドリル基とチオエーテル結合を形成することによって連結される。このような中間体の構造及び製造方法、並びにそれを用いて抗体コンジュゲートを製造する方法は、例えば、国際特許出願公開第WO 2019114666号に記述されており、その関連内容の全てが援用により本明細書に組み込まれる。
【0081】
薬物組成物
【0082】
本発明は、医薬組成物をさらに提供し、それは、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体又は抗体コンジュゲート、及び薬学的に許容されるキャリア剤を含む。
【0083】
薬学的に許容されるキャリア剤は、希釈剤、粘着剤及び接着剤、潤滑剤、崩壊剤、防腐剤、ビヒクル、分散剤、流動化剤、甘味剤、コーティング、賦形剤、防腐剤、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸、硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)、溶解度促進剤、ゲル剤、軟化剤、溶媒(例えば、水、アルコール、酢酸及びシロップ)、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤及び酢酸塩緩衝剤)、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤、例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー又はポリエチレングリコール)、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤(例えば、トレハロース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース)、吸収遅延剤、キレート剤及び乳化剤を含んでもよいが、それらに限らない。抗体又は抗体コンジュゲートを含む組成物にとっては、適切なキャリア剤は、緩衝剤(例えば、クエン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、ヒスチジン緩衝液、ヒスチジン塩緩衝液)、等張剤(例えば、トレハロース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース)、非イオン界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー)又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0084】
本明細書による医薬組成物は、様々な剤形であってもよく、固体、半固体、液体、粉末又は凍結乾燥形態を含むが、それらに限らない。好ましくは、前記医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は上皮投与(例えば、注射又は注入による)に適する。抗体又は抗体コンジュゲートを含む組成物にとっては、好ましい剤形は、通常、例えば、注射液及び凍結乾燥粉末であってもよい。
【0085】
当分野に既知の任意の方法、例えば、全身又は局所投与によって、本明細書による医薬組成物を被験体に投与することができる。投与経路は、非経口(例えば、静脈内、腹膜内、皮内、筋肉内、皮内又は腔内)、局所(例えば、腫瘍内)、硬膜外又は粘膜(例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下又は局所)を含むが、それらに限らない。当業者であれば理解できるように、正確な投与量は、様々な要素に依存し、例えば、医薬組成物の代謝動態学的特性、治療の持続時間、特定の化合物の排泄速度、治療目的、投与経路及び被験体の状態、例えば、患者の年齢、健康状態、体重、性別、飲食、病歴、及び医学分野に公知の他の要素である。投与方法は、例えば、注射は注入であってもよい。
【0086】
一般的なガイドラインとして、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体の投与量範囲は、約0.0001~100 mg/kgであってもよく、より一般的には、0.01~20 mg/kg被験体体重である。例えば、投与量は、0.3 mg/kg体重、1 mg/kg体重、3 mg/kg体重、5 mg/kg体重、10 mg/kg体重又は20 mg/kg体重であってもよく、又は1~20 mg/kgの範囲内にある。例示的な治療スキームは、週に一回、二週間に一回、三週間に一回、四週間に一回、月に一回、3ヶ月に一回、3~6ヶ月に一回投与するか、又は最初の投与間隔が短く、後期の投与間隔が長くなる必要がある。投与方式は、静脈内点滴であってもよい。
【0087】
治療
【0088】
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体、抗体コンジュゲート又は医薬組成物の、被験体における疾患を治療するための医薬品の製造における使用に関する。
【0089】
本発明は、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体、抗体コンジュゲート又は医薬組成物にさらに関し、それは、疾患を治療するために用いられる。
【0090】
本発明は、被験体における疾患を治療する方法をさらに提供し、前記方法は、前記被験体に治療有効量の本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体、抗体コンジュゲート又は医薬組成物を投与することを含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、以上に記載の疾患は癌である。本明細書で使用されるように、「癌」は、血液癌及び固形腫瘍を含むが、それらに限らない。癌はさらに転移性癌であってもよい。「転移」は、癌細胞がその元の部位から体の他の部分に広がることを指す。例えば、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体は、CLDN18.2陽性の癌を治療するために用いられ得る。好ましい実施形態において、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体は、CD47及びCLDN18.2陽性の癌を治療するためのものである。いくつかの実施形態において、前記癌は胃癌である。
【0092】
キット
【0093】
本発明は、キットをさらに提供し、それは、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体、抗体コンジュゲート又は医薬組成物、及び取扱説明書を含む。キットは、適切な容器をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、キットは、投与装置をさらに含む。通常、キットは、ラベルをさらに含み、それは、キット内容物の意図される使用及び/又は使用方法を示すためのものである。「ラベル」という用語は、キットにあるか又はキットとともに提供されるか又は他の形でキットとともに提供される任意の書かれたか又は記録された資料を含む。
【0094】
発明の効果
本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体は、以下の有益な効果のうちの少なくとも一つを実現することができ、
1)癌細胞表面のCD47のSIRPαへの結合を遮断し、
2)CD47及びCLDN18.2を発現する癌細胞に対するマクロファージによる貪食を誘導し、
3)CLDN18.2を発現する癌細胞に対するADCPを媒介し、
4)CD47及びCLDN18.2を発現する癌細胞に結合するが、赤血球に結合しないか又は実質的に結合しない。
【0095】
なお、CD47のみを標的とするモノクローナル抗体に比べて、本発明の抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体は、CD47及びCLDN18.2陽性の腫瘍細胞に対する結合活性がより高く、且つCD47とSIRPαとの相互作用に対する遮断効果がより強い。
実施例
【0096】
以下の実施例は、本発明を単に例示的に説明することを意図するため、いかなる方式で本発明を限定するものと見なされるべきではない。
材料及び方法
1. 抗体発現プラスミドの構築
【0097】
抗体重鎖及び軽鎖をコードするDNA断片をDNA組換え技術により製造し、その後にそれぞれ発現ベクターpcDNA3.4-TOPO (Invitrogen)にクローニングして、抗体の重鎖及び軽鎖発現プラスミドを得た。大腸菌DH5αにおいて増幅し、続いて抗体重鎖及び軽鎖発現プラスミドを抽出し精製した。
2. 抗体の発現及び精製
【0098】
全ての抗体をExpiCHO一過性発現システム(Thermo Fisher、A29133)により発現(WO 2020238730A1を参照されたい)させ、MabSelect SuRe LX (GE、17547403)を用いてアフィニティー精製を行った。
3. SDS-PAGEによる抗体純度の同定
【0099】
還元溶液の調製:2 μgの検出対象抗体又はIPI (Ipilimlumab、参照)を5×SDSサンプリング緩衝液(最終濃度が5 mMであるDTTを含有する)に加え、100℃乾燥浴で10 min加熱し、室温に冷却させた後、12000 rpmで5 min遠心分離し、上清を取った。上清をBis-tris 4-15%勾配ゲル(金斯瑞)に加え、タンパク質ゲル電気泳動を行った。続いて、クマシーブリリアントブルー染色によりタンパク質バンドを発色させ、脱色後に、EPSON V550カラースキャナーでスキャンし、ImageJによりピーク面積正規化法でタンパク質バンドの純度を計算した。
4. SEC-HPLCによる抗体純度の同定
【0100】
Agilent HPLC 1100クロマトグラフィーカラム(XBridge BEH SEC 3.5μm、7.8 mm I.D.×30 cm、Waters)の流速を0.8 mL/minに設定し、試料注入体積が20 μLであり、VWD検出器の波長が280 nm及び214 nmである。移動相は150 mmol/Lのリン酸緩衝液を用い、pH が7.4であり、全ての試料を移動相で0.5 mg/mLに希釈し、そしてブランク溶液及び試料溶液を順次サンプリングした。面積正規化法に従った試料における高分子ポリマー、抗体モノマー及び低分子物質の割合を計算した。
5. 示差走査型蛍光法による抗体安定性の同定
【0101】
示差走査型蛍光法(differential scanning fluorimetry;DSF)は、タンパク質マップにおける蛍光変化プロセスに基づいてタンパク質の構造安定性に関する情報を提供し、タンパク質の配置変化を検出し、タンパク質の融解温度(Tm)を得ることができる。
【0102】
検出対象抗体試料溶液を0.2 mg/mL調製し、PBS及びIPI (Ipilimlumab;0.2 mg/mL)を参照とした。試験試料を三連にし、19 μL/ウェルで96ウェルプレート(Nunc)に加え、そして各ウェルに1 μLの100×SYPRO orange染料を加え、ピペットでピペッティングして均一に混合し、オンマシンの準備をした。試料の熱安定性試験は、ABI 7500 FAST RT-PCR機器を用い、試験タイプが融解曲線を選択し、連続モードを用い、スキャン温度の範囲が25~95℃であり、昇温速度が1%であり、25℃で5 min平衡化し、昇温中にデータを収集し、レポーター基が「ROX」を選択し、消光基が「None」を選択し、反応体積が20 μLであり、融解曲線の一次微分の1番目のピーク及びディップに対応する温度を抗体の融解温度Tmとして確定した。
実施例1 抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体の設計
【0103】
本実施例は、例示的抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体を記述し、ここで、CLDN18.2に結合するアームは、ヒトCLDN18.2を特異的に認識するがCLDN18.1を認識しない抗CLDN18.2単一ドメイン抗体NA3S-H1 (CDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:13、14及び15に示され、VHHのアミノ酸配列がSEQ ID NO:12に示され)を用い、CD47に結合するアームは、抗CD47ヒト化抗体A7H3L3の抗原結合ドメイン(HCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:4、5及び6に示され、LCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:7、8及び9に示され、重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:10に示され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:11に示される)を用いた。抗体A7H3L3の重鎖可変領域をヒトIgG1重鎖定常領域(SEQ ID NO: 2)に融合して抗体A7H3L3の重鎖を形成し、軽鎖可変領域をヒトκ軽鎖定常領域(SEQ ID NO: 3)に融合して抗体A7H3L3の軽鎖を形成した。抗CLDN18.2単一ドメイン抗体NA3S-H1はWO 2020238730A1に開示されており、そのインビトロADCC及びCDCの細胞殺傷効果並びにヒトCLDN18.2-HEK29T-SCID腫瘍移植モデルでの腫瘍阻害試験はいずれも優れた薬効を示した。ヒト化抗体A7H3L3は、赤血球におけるCD47との結合が弱く、二重特異性抗体のための理想的な候補抗体であり、それとともに二重特異性抗体の設計により、CLDN18.2に結合するため、抗CD47抗体A7H3L3結合アームを、二重標的を発現する腫瘍細胞とより良く結合させるとともに、SIRPα阻害シグナルをより良く遮断した。
【0104】
抗CLDN18.2単一ドメイン抗体(VHH) NA3S-H1の価数、位置及びリンカー(Linker)の長さに基づいて二重特異性抗体を設計し、5種類の二重特異性抗体(それぞれB8~B12である)を設計し、例示的二重特異性抗体の構造は表1及び
図1に示すとおりであり、対応するアミノ酸配列は表2に提供され、ここで、Linker1の配列はGGGGSGGGGS (SEQ ID NO:22)であり、Linker2の配列はGGGGS (SEQ ID NO:23)である。
【0105】
【0106】
【表2】
実施例2 抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体と赤血球におけるCD47との結合活性
【0107】
フローサイトメトリーにより二重特異性抗体が赤血球に結合したか否かを測定した。出願者が開発した別の抗CD47抗体F4AM4-IgG1 (図面ではF4AM4と略称され、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:24であり、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:25である)を陽性対照抗体として用いた。F4AM4-IgG1は、(本実施例の実験が開始する前に行われた)一連の機能検証実験において赤血球のCD47との強い結合を示したため、本実施例において陽性対照として選択された。
【0108】
具体的な方法は、以下の通りである。抗凝固処理された1 mLのヒト血液から赤血球を分離し、遠心した後に上清を吸い捨て、PBSで二回リンスした後、1 mLのPBSを加え再懸濁させた。PBSを用いて赤血球を1×107/mLに希釈し、ウェルあたり50 μLで赤血球を吸引して96ウェルの丸底細胞培養プレートに加え、そして勾配希釈された検出対象抗体を等体積で加え、十分で均一に混合し、4℃で1 hインキュベートした。次にFACS緩衝液で三回リンスし、PEで標識されたヤギ抗ヒトIgG Fc抗体(Abcam、ab98596)を0.5 μg加え、4℃で1 hインキュベートした。その後、FACS緩衝液で三回リンスし、細胞に200 μLのFACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁させ、最後にフローサイトメータ(Beckman、CytoFLEX AOO-1-1102)により、赤血球に結合した抗体の量(平均蛍光強度(MFI)として示される)を検出した。
【0109】
抗体の赤血球に対する結合活性は
図2a及び2bに示された。
図2a及び2bに示すように、非常に高い濃度(150 μg/mL)であっても、F4AM4-IgG1の赤血球での強い結合に比べて、全ての抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体は、赤血球にほとんど結合しないか又は結合活性が非常に低く、高濃度(15 μg/mL)において、B9、B10及びB11と陰性対照IgG1の赤血球に対する結合には有意差がなく、具体的な数は表3に示すとおりである。これにより、本発明の二重特異性抗体は、赤血球におけるCD47に対する結合活性が低く、赤血球凝集を実質的に引き起こさない。
【0110】
【表3】
実施例3 抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体の、単一標的及び二重標的を発現する腫瘍細胞での結合活性
【0111】
フローサイトメトリーにより、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体B10の、NUGC-4細胞(内因性CD47を発現し、BNCC菌種バンクから購入され、番号が BNCC341962である)及びhCLDN18.2-NUGC-4細胞(レンチウイルストランスフェクション方法を用いて、外因性ヒトCLDN18.2(アミノ酸配列SEQ ID NO:1)を過剰発現する胃癌細胞株NUGC-4を構築するとともに、内因性CD47を発現する)に対する結合活性を測定した。比較として、抗体1F8(WO 2018075857A1における1F8抗体)及びF4AM4-IgG1のこの二つの細胞株に対する結合活性をさらに測定した。ヒトIgG1をアイソタイプ陰性対照として用いた。
【0112】
具体的な方法は、以下の通りである。1×105個のNUGC-4細胞又はhCLDN18.2-NUGC-4細胞を取り、低速で遠心分離し(300 g)、上清を除去し、遠心分離管の底部の細胞を、配合されたFACS緩衝液(体積パーセントが2%であるFBSを含有する1×PBS緩衝液)で一回リンスし、そしてリンスされた細胞に勾配希釈された検出対象抗体を加え、4℃で1 hインキュベートし、次に上記FACS緩衝液で三回リンスし、PEで標識されたヤギ抗ヒIgG Fc抗体(Abcam、ab98596)を0.5 μg加え、4℃で1 hインキュベートし、そして、細胞をFACS緩衝液で三回リンスした後に200 μLのFACS緩衝液で再懸濁させ、最後にフローサイトメータ(Beckman、CytoFLEX AOO-1-1102)により、赤血球に結合した抗体の量(平均蛍光強度(MFI)として示される)を検出した。
【0113】
抗体のNUGC-4細胞及びhCLDN18.2-NUGC-4細胞に対する結合活性はそれぞれ
図3a及び3bに示された。
図3aに示すように、二重特異性抗体B10は、腫瘍細胞NUGC-4での結合活性が弱く、抗体1F8よりもわずかに弱かった。
図3bに示すように、二重特異性抗体B10は、CD47及びCLDN18.2の両方を発現するhCLDN18.2-NUGC-4細胞において、抗体1F8より明らかに優れた結合活性を有する。これに基づいて、二重特異性抗体B10は、CD47単一標的を発現する細胞での結合が1F8より弱いが、CD47及びCLDN18.2の二重標的を発現する細胞での結合が1F8より優れた。該結果により、二重特異性抗体B10は、腫瘍細胞におけるCLDN18.2及びCD47に同時に結合することができ、腫瘍細胞に結合する能力を高めたことが証明された。
実施例4 抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体の、単一標的及び二重標的を発現する腫瘍細胞においてCD47とSIRPαとの結合を遮断する能力
【0114】
フローサイトメトリーにより、抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体の、NUGC-4及びhCLDN18.2-NUGC-4細胞におけるCD47とSIRPαとの結合を遮断する能力を測定した。比較として、抗体1F8、F4AM4-IgG1及びA7H3L3の、NUGC-4及びhCLDN18.2-NUGC-4腫瘍細胞におけるCD47とSIRPαとの結合を遮断する能力をさらに測定した。
【0115】
具体的な方法は、以下の通りである。1×105個のNUGC-4細胞又はhCLDN18.2-NUGC-4細胞を取り、低速で遠心分離し(300 g)、上清を除去した。遠心分離管の底部の細胞を、配合されたFACS緩衝液(2% FBSを含有する1×PBS緩衝液)で一回リンスし、そして、リンスされた細胞に勾配希釈された検出対象抗体を加え、1 hインキュベートし、FACS緩衝液で細胞を二回リンスした後に100 μLの1 μg/mL SIRPα-mFc (ACRO、SIA-H52A8)を加え、4℃で1 hインキュベートし、FACS緩衝液で三回リンスし、1:200で希釈されたPEで標識されたヤギ抗マウスFc二次抗体(Abcam、ab98742)を100 μL加え、4℃で1 hインキュベートした後に遠心分離して上清を除去し、細胞に200 μLのFACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁させ、最後にフローサイトメータ(Beckman、CytoFLEX AOO-1-1102)により、細胞に結合したSIRPα-mFcの量(平均蛍光強度(MFI)として示される)を検出した。
【0116】
NUGC-4細胞での結果は
図4aに示すとおりであり、抗体F4AM4-IgG1は、CD47とSIRPαとの結合を有効に遮断することができ、IC
50が0.033 μg/mL (0.226 nM)であり、抗体1F8は、弱い遮断効果を有し、IC
50が15.36 μg/mL (105.6 nM)であり、二重特異性抗体B10は遮断能力をほとんど有しなかった。
【0117】
hCLDN18.2-NUGC-4細胞での結果は
図4bに示すとおりであり、抗体F4AM4-IgG1は、この腫瘍細胞において依然として強い遮断能力を有し、IC
50が0.056 μg/mL (0.383 nM)であり、NUGC-4細胞での遮断能力に比べて、二重特異性抗体B10のhCLDN18.2-NUGC-4細胞での遮断能力は明らかに向上し、且つ抗体1F8より優れており、B10及び1F8がhCLDN18.2-NUGC-4におけるCD47とSIRPαとの結合を遮断するIC
50は、それぞれ0.765 μg/mL (4.476 nM)及び11.98 μg/mL (82.34 nM)であり、また、抗CLDN18.2単一ドメイン抗体NA3S-H1は、CLDN18.2のみに結合するため、いかなる遮断効果も有しなかった。これに基づいて、二重特異性抗体B10は、CD47単一標的を発現する細胞での遮断活性が抗体1F8より弱いが、CD47及びCLDN18.2の二重標的を発現する細胞での遮断活性が抗体1F8より明らかに優れており、CD47と受容体SIRPαとの結を遮断するより強い能力を発揮する。
【0118】
他の二重特異性抗体のhCLDN18.2-NUGC-4細胞での遮断能力をさらに測定し、結果は
図4cに示すとおりである。二重特異性抗体B8-B12において、二重特異性抗体B10は最も強い遮断活性を有した。
実施例5 抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体のインビボ腫瘍阻害実験
5.1 インビボ腫瘍阻害実験1
【0119】
6~7週齢のメスヌードマウス(16-18 g)を恒温恒湿の独立した換気ボックスで飼育し、飼育室の温度が21~24℃であり、湿度が30~53%である。3×10
6個のhCLDN18.2-NUGC-4細胞をヌードマウスの左側腋窩に皮下注射し(0日目)、マウスの皮下腫瘍担持体積が300~400 mm
3程度に達した場合(20日目)、腫瘍体積の差が大きいマウスサンプルを除去し、そして腫瘍体積に従ってランダムにグループ分けし(1群あたり8匹のマウス)、それぞれPBS処理群、NA3S-H1モノクローナル抗体投与群、A7H3L3モノクローナル抗体投与群、NA3S-H1+ A7H3L3併用投与群及び二重特異性抗体B10投与群である。NA3S-H1モノクローナル抗体5 mg/kgを基準とし、他の全ての薬物を等モル用量、即ちそれぞれA7H3L3モノクローナル抗体9.4 mg/kg、NA3S-H1+ A7H3L3併用5 mg/kg+9.4 mg/kg、二重特異性抗体B10 10.6 mg/kgで投与した。週に二回投与し、それぞれ腹膜内注射(i.p.)及び静脈内注射(i.v.)の二つの方式で交互に投与した。腫瘍の長さ(mm)及び幅(mm)を随時観察し記録し、その腫瘍体積(V)を計算し、計算方式は、
【数1】
【数2】
である。
【0120】
抗体による腫瘍阻害の結果は
図5a及び表4に示すとおりであり、結果から分かるように、この等モル用量で、NA3S-H1モノクローナル抗体投与群は腫瘍阻害効果をほとんど示さず、他の群は、いずれも一定の腫瘍阻害効果を示し、ここで、二重特異性抗体B10は、最も良好な効果を示し、39日目前にほぼ54.54%の抗腫瘍率に達し、腫瘍サイズが20日目の腫瘍初期体積に近くなり、併用投与(A7H3L3+NA3S-H1 (9.4+5 mpk))の結果より優れ、これにより、二重特異性抗体B10のCLDN18.2への結合は、CD47とSIRPαとの結合に対するその遮断効果を増強できることが示された。
【0121】
【0122】
ランダムにグループ分けし(1群あたり8匹のマウス)、それぞれPBS処理群、モノクローナル抗体NA3S-H1投与群、二重特異性抗体B10投与群である。接種当日(0日目)に初回の投与を行い、週に二回投与し、NA3S-H1モノクローナル抗体2.5 mg/kgを基準とし、二重特異性抗体B10を等モル用量、即ち5.3 mg/kgで投与した。他は実施例5.1と一致した。
【0123】
結果は
図5bに示すとおりであり、この等モル用量で、NA3S-H1モノクローナル抗体投与群は、一定の腫瘍阻害効果を示し、抗腫瘍率がほぼ54.99% (34日目)であり、二重特異性抗体B10群の全てのマウスは腫瘍が完全に阻害され、抗腫瘍率がほぼ100%(34日目)である。該結果により、二重特異性抗体B10は、腫瘍阻害効果が抗CLDN18.2モノクローナル抗体NA3S-H1より明らかに優れていることが示された。
実施例6 抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体の物理化学的特性の測定
6.1 SDS-PAGEによる純度同定
【0124】
還元SDS-PAGEを用いて二重特異性抗体B10の純度を同定した。二重特異性抗体B10の重鎖及び軽鎖メインバンドの見かけの相対分子量は、それぞれ65 kD程度及び25 kD程度であり、意図されるサイズと一致し、純度が90%に達した。
6.2 SEC-HPLCによる純度同定
【0125】
SEC-HPLCを用いて二重特異性抗体B10のモノマー純度を検出した。SEC-HPLCにより測定された二重特異性抗体B10のモノマー純度は94%より大きかった。
6.3 二重特異性抗体B10のDSF熱安定性の検出
【0126】
DSF法を用いて二重特異性抗体B10のTm値を検出して、その熱安定性を評価した。結果により、二重特異性抗体B10が二つの融解ピークを有し、一番目のピークのTm値が69.85±0.06℃であり、二番目のピークのTm値が80.60±0.16℃であり、二重特異性抗体B10が良好な熱安定性を有することが示された。
実施例7 抗CD47-CLDN18.2二重特異性抗体のADCP活性
【0127】
抗体依存性細胞媒介性細胞貪食作用(ADCP)は、ウイルス感染又は腫瘍細胞に対する治療用抗体の重要な作用機序である。本実験は、生物発光レポーター遺伝子により本発明の二重特異性抗体のADCP活性を評価した。該方法は、遺伝子操作されたJurkat細胞(BPS Bioscience Inc.、71273)をエフェクター細胞とし、該細胞は、FcγRIIa受容体、及びNFAT応答エレメントにより発現を駆動するルシフェラーゼ(Int Immunopharmacol. 2021 Nov;100:108-112.)を安定的に発現した。抗体は、標的細胞を認識した後、エフェクター細胞表面のFcγRIIaと結合することにより、細胞内のNFAT応答エレメントを刺激し、NFAT応答エレメントはルシフェラーゼの発現を駆動した。ルシフェラーゼの活性は、生物発光法により定量され得る。
【0128】
検出対象試料(B10、A7H3L3、NA3S-H1)をそれぞれ初期反応濃度200 nMに希釈し、2倍で勾配希釈して10個の勾配になった。希釈された試料を96ウェルのホワイト底板に加え、1ウェルあたり50 μLであり、各濃度勾配に3つのトリプリケートウエルを設置した。96ウェルのホワイト底板のエッジウェルに150 μL/ウェルのPBS溶液を追加して加えた。続いて、前記96ウェルのホワイト底板に5×105個/mLのhCLDN18.2-NUGC-4細胞(標的細胞)を50 μL/ウェルで加え、室温で30 minインキュベートした。そして以上に記載した1.5×106個/mLのエフェクター細胞を50 μL/ウェルで加えた。96ウェルのホワイト底板を37℃ 5% CO2のインキュベーターで6 hインキュベートした。検出:96ウェルのホワイト底板を取り出し、室温で30 min静置した。検出試薬のルシフェラーゼ基質(Bio-Glo(商標) Luciferase Assay System Promega G7940)を50 μL/ウェルで加え、室温で遮光して5~10 min反応させ、マイクロプレートリーダーにより発光強度(相対光単位(RLU)として示される)を検出した。抗体濃度の対数を、対応する濃度でのRLUに対してプロットし、Graphpad Prismソフトウェアでデータを分析し、且つEC50値を計算した。
【0129】
実験結果:
図6及び表5から分かるように、標的細胞がhCLDN18.2-NUGC-4細胞である場合、抗CD47モノクローナル抗体A7H3L3及び抗CLDN18.2モノクローナル抗体NA3S-H1に比べて、本発明の二重特異性抗体B10はより高いADCP活性を示した。
【0130】
【0131】
本発明の発明を実施するための形態を詳細に記述したが、当業者であれば以下のことを理解するであろう:本明細書に開示された全ての教示に基づいて、詳細に対して様々な修正及び変更を行うことができ、且つこれらの変更はいずれも本発明の保護範囲内にある。本発明の保護範囲は、添付の請求項及びその任意の均等物によって与えられる。
配列表
SEQ ID NO:1 ヒトCLDN18.2
MAVTACQGLGFVVSLIGIAGIIAATCMDQWSTQDLYNNPVTAVFNYQGLWRSCVRESSGFTECRGYFTLLGLPAMLQAVRALMIVGIVLGAIGLLVSIFALKCIRIGSMEDSAKANMTLTSGIMFIVSGLCAIAGVSVFANMLVTNFWMSTANMYTGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV
SEQ ID NO:2 ヒトIgG1重鎖定常領域
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKAEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SEQ ID NO:3 ヒトKapp軽鎖定常領域
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
SEQ ID NO:4 A7H3L3-HCDR1
GFNIKDIYIY
SEQ ID NO:5 A7H3L3-HCDR2
KIDPANGNTK
SEQ ID NO:6 A7H3L3-HCDR3
GYGSGFAY
SEQ ID NO:7 A7H3L3-LCDR1
RASQDISNHLN
SEQ ID NO:8 A7H3L3-LCDR2
YTSRIHS
SEQ ID NO:9 A7H3L3-LCDR3
QQGYTLPFT
SEQ ID NO:10 A7H3L3-VH
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGFNIKDIYIYWVRQAPGQGLEWIGKIDPANGNTKYDQKFQGRATITADTSTNTAYLELSSLRSEDTAVYYCARGYGSGFAYWGQGTLVTVSS
SEQ ID NO:11 A7H3L3-VL
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNHLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRIHSGVPSSFRGSGSGTDYTLTISSLQPEDIATYFCQQGYTLPFTFGSGTKLEIK
SEQ ID NO:12 NA3S-H1
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGSIFNIPVMGWYRQAPGKQRELVAGISTGGTTNYGDSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNVLVVSGIGSTLEVWGQGTLVTVSS
SEQ ID NO:13 NA3S-H1 CDR1
GSIFNIPV
SEQ ID NO:14 NA3S-H1 CDR2
ISTGGTT
SEQ ID NO:15 NA3S-H1 CDR3
NVLVVSGIGSTLEV
SEQ ID NO:16 B8/B11重鎖
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGSIFNIPVMGWYRQAPGKQRELVAGISTGGTTNYGDSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNVLVVSGIGSTLEVWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGFNIKDIYIYWVRQAPGQGLEWIGKIDPANGNTKYDQKFQGRATITADTSTNTAYLELSSLRSEDTAVYYCARGYGSGFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKAEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SEQ ID NO:17 B8/B10/B12軽鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNHLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRIHSGVPSSFRGSGSGTDYTLTISSLQPEDIATYFCQQGYTLPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
SEQ ID NO:18 B9重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGFNIKDIYIYWVRQAPGQGLEWIGKIDPANGNTKYDQKFQGRATITADTSTNTAYLELSSLRSEDTAVYYCARGYGSGFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKAEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SEQ ID NO:19 B9/B11軽鎖
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGSIFNIPVMGWYRQAPGKQRELVAGISTGGTTNYGDSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNVLVVSGIGSTLEVWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNHLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRIHSGVPSSFRGSGSGTDYTLTISSLQPEDIATYFCQQGYTLPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
SEQ ID NO:20 B10重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGFNIKDIYIYWVRQAPGQGLEWIGKIDPANGNTKYDQKFQGRATITADTSTNTAYLELSSLRSEDTAVYYCARGYGSGFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKAEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSQVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGSIFNIPVMGWYRQAPGKQRELVAGISTGGTTNYGDSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNVLVVSGIGSTLEVWGQGTLVTVSS
SEQ ID NO:21 B12重鎖
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGSIFNIPVMGWYRQAPGKQRELVAGISTGGTTNYGDSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNVLVVSGIGSTLEVWGQGTLVTVSSGGGGSQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGFNIKDIYIYWVRQAPGQGLEWIGKIDPANGNTKYDQKFQGRATITADTSTNTAYLELSSLRSEDTAVYYCARGYGSGFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKAEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SEQ ID NO:22 Linker1
GGGGSGGGGS
SEQ ID NO:23 Linker2
GGGGS
SEQ ID NO:24 F4AM4-IgG1重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGASVKMSCKASGYTFTSSVMHWVRQAPGQGLEWIGYINPYTDGTKYAQKFQGRATLTSDKSTSTAYMEFSSLRSEDTAVYYCGRPYYGTRYGSWFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKAEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SEQ ID NO:25 F4AM4-IgG1軽鎖
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISNLQPEDIATYYCQQGKNYPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【配列表】
【国際調査報告】