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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-06
(54)【発明の名称】測位システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/43 20100101AFI20241029BHJP
   G01S 19/22 20100101ALI20241029BHJP
【FI】
G01S19/43
G01S19/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024547945
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 GB2022052676
(87)【国際公開番号】W WO2023067344
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2115228.5
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524152492
【氏名又は名称】フォーカル ポイント ポジショニング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FOCAL POINT POSITIONING LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ファラガー, ラムジー
(72)【発明者】
【氏名】クロケット, ロバート マーク
(72)【発明者】
【氏名】ダフェット‐スミス, ピーター
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB01
5J062BB08
5J062CC07
5J062EE01
5J062FF04
(57)【要約】
測位システムで実行される方法が開示される。方法は、ローカル信号を提供すること、受信機において、遠隔ソースから前記受信機への直線方向である第1の方向で前記遠隔ソースから信号を受信すること、前記受信機の動きを第1の速度で測定または想定すること、前記第1の速度より低い第2の速度で動き補正相関信号を生成することであって、前記動き補正相関信号を提供することは、前記ローカル信号と前記受信された信号とを相関させ、前記第1の方向の前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きに基づいて、前記ローカル信号、前記受信された信号、及び前記相関の結果のうちの少なくとも1つの動き補正を提供することを含む、前記生成すること、前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きから、前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる前記受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す前記第1の速度での第1のデータセットを取得すること、前記動き補正相関信号から、前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記第1の方向の前記相対的な動きによって引き起こされる前記受信された信号の前記周波数シフトまたは前記明確な位相の前記変化を示す第2の速度で第2のデータセットを取得すること、及び前記第1のデータセット及び前記第2のデータセットに基づいて前記第2の速度より高い処理速度で処理出力を生成し、それによって前記処理出力は、前記受信機と前記リモートソースとの間の前記第1の方向の前記相対的な動きによって引き起こされる前記受信された信号の前記周波数シフトまたは前記明確な位相の前記変化を示すこと、を含む。対応する測位システムも開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位システムで実行される方法であって、
ローカル信号を提供すること、
受信機において、遠隔ソースから前記受信機への直線方向である第1の方向で前記遠隔ソースから信号を受信すること、
前記受信機の動きを第1の速度で測定または想定すること、
前記第1の速度より低い第2の速度で動き補正相関信号を生成することであって、前記動き補正相関信号を提供することは、前記ローカル信号と前記受信された信号とを相関させ、前記第1の方向の前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きに基づいて、前記ローカル信号、前記受信された信号、及び前記相関の結果のうちの少なくとも1つの動き補正を提供することを含む、前記生成すること、
前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きから、前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる前記受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す前記第1の速度での第1のデータセットを取得すること、
前記動き補正相関信号から、前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記第1の方向の前記相対的な動きによって引き起こされる前記受信された信号の前記周波数シフトまたは前記明確な位相の前記変化を示す第2の速度で第2のデータセットを取得すること、及び
前記第1のデータセット及び前記第2のデータセットに基づいて前記第2の速度より高い処理速度で処理出力を生成し、それによって前記処理出力は、前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記第1の方向の前記相対的な動きによって引き起こされる前記受信された信号の前記周波数シフトまたは前記明確な位相の前記変化を示すこと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記処理出力は処理信号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理速度は、前記受信機が前記受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える前記速度よりも高い、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の速度は、前記受信機が前記受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える前記速度よりも高い、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第2の速度は、前記受信機が前記受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える前記速度よりも低い、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記処理速度は1Hzより大きく、好ましくは少なくとも20Hz、より好ましくは少なくとも50Hz、最も好ましくは少なくとも100Hzである、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記受信機の動きを前記測定または想定することは、慣性センサなどの1つ以上のセンサから取得され、位置または動きを判定できる測定値に基づいて実行される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記処理出力は、前記第1のデータセットと前記第2のデータセットとを組み合わせることによって生成される、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1のデータセットは前記第2のデータセットによって制約される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1及び第2のデータセットは、前記第1の方向における前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記相対的な動きによって引き起こされる前記周波数シフトの前記変化率または前記受信された信号の前記明確な位相の前記変化の前記変化率をさらに示し、それによって、前記方法は、前記第2の速度よりも高い第2の処理速度で第2の処理出力を生成することをさらに含み、前記第2の処理出力は、前記第1の方向における前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記相対的な動きによって引き起こされる前記周波数シフトの前記変化率または前記明確な位相の前記変化の前記変化率を示す、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記処理出力を処理して、前記受信機の前記位置または前記動きに関連する関心対象のメトリックを判定することをさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
信頼できる基準ソースから補正データを受信することをさらに含み、前記受信された補正データに基づいて前記関心対象のメトリックが判定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記関心対象のメトリックは、リアルタイムキネマティック、RTK測位または精密ポイント測位、PPPなどの搬送波位相測位を使用して判定される、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記処理出力を前記処理することは、累積ドップラー処理を使用して前記処理出力を処理することを含む、請求項11から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
1つ以上の所定のイベントの検出時に再収束プロセスを実行することをさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の所定のイベントは、
前回の再収束プロセスからの所定の時間間隔、
受信された信号が失われる所定の期間、
前記受信機の検出された動き、の1つ以上を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記処理出力を分析して、前記第1のデータセットと前記第2のデータセットとの差に基づいて、前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きのエラーを推定することをさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記動き補正を提供することは、
前記第1の方向における前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きを示す複数のフェーザを含むフェーザシーケンスを生成することであって、各フェーザは振幅及び/または位相角を含む、前記生成すること、及び
前記フェーザシーケンスを、前記ローカル信号、前記受信された信号、及び前記相関の前記結果のうちの前記少なくとも1つと組み合わせる、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ローカル発振器を使用してローカル周波数または位相基準を提供すること、
前記ローカル周波数または位相基準と、発振器基準ソースから受信された基準信号の受信周波数または受信位相との間のオフセットを判定することであって、前記基準信号は、既知または予測可能な周波数または位相を有する、前記判定すること、をさらに含み、
前記フェーザシーケンスは、前記判定されたオフセットを示す、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ローカル発振器を使用してローカル周波数または位相基準を提供すること、
前記ローカル周波数または位相基準と、発振器基準ソースから受信された基準信号の受信周波数または受信位相との間のオフセットを判定することであって、前記基準信号は、既知または予測可能な周波数または位相を有する、前記判定すること、及び
前記オフセットを使用して前記ローカル信号を提供することをさらに含む、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
2つ以上の前記動き補正相関信号は、前記測位システムのパラメータの対応する2つ以上の仮説に基づいて生成され、
少なくとも前記第2のデータセットは、前記最高のゲインを有する前記動き補正相関信号を生成する前記仮説に基づいている、先行請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
測位システム内のプロセッサによって実行されると、前記プロセッサに先行請求項のいずれかのステップを実行させる実行可能命令を含む、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項23】
測位システムであって、
受信機であって、遠隔ソースから前記受信機への直線方向である第1の方向で前記遠隔ソースから信号を受信するよう構成される、前記受信機、
ローカル信号を提供するように構成されたローカル信号発生器、
前記受信機の動きを第1の速度で測定または想定するように構成されたモーションユニット、
第2の速度で動き補正相関信号を生成するよう構成される相関ユニットであって、前記動き補正相関信号を提供することは、前記ローカル信号と前記受信された信号とを相関させること、及び前記第1の方向の前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きに基づいて、前記ローカル信号、前記受信された信号、及び前記相関の前記結果のうちの少なくとも1つの動き補正を提供することを含む、前記相関ユニット、及び
信号生成ユニットであって、
前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きから、前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記第1の方向の前記相対的な動きによって引き起こされる前記受信された信号の前記周波数シフトまたは前記明確な位相の前記変化を示す第1のデータセットを取得すること、
前記動き補正相関信号から、前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記第1の方向の前記相対的な動きによって引き起こされる前記受信された信号の前記周波数シフトまたは前記明確な位相の前記変化を示す前記第2の速度で第2のデータセットを取得すること、及び
前記第1のデータセット及び前記第2のデータセットに基づいて前記第2の速度より高い処理速度で処理出力を生成し、それによって前記処理出力は、前記受信機と前記遠隔ソースとの間の前記第1の方向の前記相対的な動きによって引き起こされる前記受信された信号の前記周波数シフトまたは前記明確な位相の前記変化を示すこと、に対して構成される前記信号生成ユニット、を備える、前記測位システム。
【請求項24】
前記処理出力は処理信号を含む、請求項23に記載の測位システム。
【請求項25】
前記処理速度は、前記受信機が前記受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える前記速度よりも高い、請求項23または請求項24に記載の方測位システム。
【請求項26】
前記モーションユニットは、位置または動きを判定できる測定を行うように構成された少なくとも1つのセンサを備える、請求項23から25のいずれかに記載の測位システム。
【請求項27】
前記処理出力を処理するように構成された信号処理ユニットをさらに備える、請求項23から26のいずれかに記載の測位システム。
【請求項28】
前記信号処理ユニットは、前記処理出力を処理して、前記受信機の前記位置または動きに関連する関心対象のメトリックを判定するように構成されている、請求項27に記載の測位システム。
【請求項29】
前記信号処理ユニットは信頼できる基準ソースから補正データを受信するように構成され、関心対象のメトリックは前記受信した補正データに基づいて判定される、請求項28に記載の測位システム。
【請求項30】
前記関心対象のメトリックは、リアルタイムキネマティック、RTK、測位または精密ポイント測位、PPP、などの搬送波位相測位を使用して判定される、請求項28または請求項29に記載の測位システム。
【請求項31】
前記処理出力を前記処理することは、累積ドップラー処理を使用して前記処理出力を処理することを含む、請求項28から30のいずれかに記載の測位システム。
【請求項32】
前記信号処理ユニットは、前記処理出力を分析して、前記第1のデータセットと前記第2のデータセットとの差に基づいて前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きのエラーを推定するように構成されている、請求項27から31のいずれかに記載の測位システム。
【請求項33】
前記第1の方向における前記受信機の前記測定されたまたは想定された動きを示す複数のフェーザを含むフェーザシーケンスを生成するように構成され、各フェーザは振幅及び/または位相角を含む、フェーザ生成ユニットをさらに含む、請求項23から31のいずれかに記載の測位システム。
【請求項34】
ローカル周波数または位相基準を提供するように構成されたローカル発振器、及び
前記ローカル周波数または位相基準と、発振器基準ソースから受信された基準信号の受信周波数または受信位相との間のオフセットを判定するよう構成されたローカル発振器オフセット判定ユニットであって、前記基準信号は、既知または予測可能な周波数または位相を有する、前記ローカル発振器オフセット判定ユニット、をさらに含み、
前記フェーザシーケンスは、前記判定されたオフセットを示す、請求項33に記載の測位システム。
【請求項35】
ローカル周波数または位相基準を提供するように構成されたローカル発振器、及び
前記ローカル周波数または位相基準と、発振器基準ソースから受信された基準信号の受信周波数または受信位相との間のオフセットを判定するよう構成されたローカル発振器オフセット判定ユニットであって、前記基準信号は、既知または予測可能な周波数または位相を有する、前記ローカル発振器オフセット判定ユニット、をさらに含み、
前記ローカル信号発生器が前記ローカル信号を提供する前記オフセットを使用するように構成された、請求項23から33のいずれかに記載の測位システム。
【請求項36】
前記測位システムが単一の測位デバイスに設けられる、請求項23から35のいずれかに記載の測位システム。
【請求項37】
前記測位システムは分配システムとして構成されている、請求項23から35のいずれかに記載の測位システム。
【請求項38】
前記受信機はGNSS受信機であり、前記遠隔ソースはGNSS衛星である、先行請求項のいずれかに記載の方法または測位システム。
【請求項39】
前記受信機は、スマートフォンなどの電子ユーザデバイスに実装される、先行請求項のいずれかに記載の方法または測位システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム、特にGNSS測位システム、及びそのような測位システムで実行できる方法に関する。本発明は、例えばリアルタイムキネマティック(RTK)技術または精密ポイント測位(PPP)技術を使用したGNSS搬送波処理において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
GNSSベースの測位システム(GPS、GLONASS、Galileoなど)では、受信機は関連する衛星群の衛星から受信された信号を受信して分析することで、グローバルな位置を判定できる。
【0003】
衛星から送信される信号には、衛星を識別できる疑似ランダムノイズ(PRN)コードが含まれている。PRNコードは(他のナビゲーションデータと共に)搬送波に重ね合わされる。受信機は、PRNコードを含む送信された信号のローカルレプリカを生成し、ローカルレプリカ信号と受信された信号を相関させることによって相関信号を生成する。
【0004】
複数の相関測定が実行され、最も高い相関のピークを使用して、受信コードの位相をローカルレプリカコードの位相と比較し、受信機のローカルクロックと比較した受信された信号の遅延を判定できる。この時間遅延は、受信機から衛星までの距離(「疑似距離」)を計算するために使用される場合がある。4つの衛星までの疑似距離を計算することで、受信機のグローバルな位置を判定できる。ただし、PRNコードのサイクル幅は約1ミリ秒である、つまりこのようなコード位相測位では通常、メートルレベルの測位の精度となることを意味する。
【0005】
衛星信号の搬送波は受信機の位置を判定するためにも使用できる。このようないわゆる搬送波位相測位方法は、受信機が受信した搬送波の位相を測定し、衛星と受信機間の搬送波の全波長数を判定することに依存している。搬送波の周波数はPRNコードよりも高いため(GPS衛星から送信されるメインL1搬送信号の周波数は1575.42MHzで、チッピング速度が1.023MHzのC/A PRNコードによって変調される)、コード位相測位と比較して、搬送波位相測位では測位解像度を向上できる。搬送波位相測位では、コード位相処理を用いて得られるメートルレベルの解像度と比較して、センチメートルレベル、さらにはミリメートルレベルの測位の精度が得られる場合がある。しかし、衛星と受信機の間の搬送波の全波長数を判定すること-整数の曖昧さの問題として知られている-は単純なことではなく(瞬間位相Φの測定値は位相測定値Φ+2πNと同一であるように見え、Nは整数である)、解に収束するまでに数分単位の時間スケールがかかる場合がある。
【0006】
搬送波位相測位を利用する既知の技術には、リアルタイムキネマティック(RTK)処理が含まれる。RTK測位システムには、モバイル受信機(または「ローバー」)と、受信機に補正データを提供できる1つ以上の基準局が含まれる。基準局の絶対的なグローバルな位置がわかる場合がある。基準局は観測された搬送波位相をブロードキャストし、受信機はこれらの補正データを使用することで、基準局に対する位置をセンチメートルまたはミリメートルの精度で判定できる。RTK処理は通常、測量、自律技術(車両や航空機など)、及び精密農業などの高精度測位の用途で使用される。
【0007】
精密ポイント測位(PPP)は、搬送波位相処理を利用するもう1つの技術である。PPPシステムでは、受信機は補正データ-通常は正確なエフェメリスまたは軌道データの形式-を受信し、これを使用して受信機による生の搬送波位相観測を補正できる。
【0008】
これら両方の技術の問題点は、補正データがモバイル受信機と衛星間の直線(「見通し線」)信号に対してのみ有効であり、マルチパス効果によって生じる測位エラーの補正には使用できないことである。マルチパス効果は、衛星からの信号が受信機に到達するまでに複数の伝播経路を同時に経由するたびに発生する。見通し線経路はこれらの経路の1つである可能性があり、また、例えばいわゆる都市の谷間の高層ビルからの反射(複数可)の結果として、衛星から受信機への間接的な非直線(NSL)経路が1つ以上存在する可能性もある。マルチパス効果は主に2つの問題を引き起こす。まず、衛星からの反射信号の絶対電力が、望ましい直線(SL)信号よりも高い場合があり、その場合、受信機は望ましくない形でNSL信号にロックオンする可能性がある。望ましいSL軌道と比較してNSL軌道のパス長が長いため、受信機の位置が誤って計算される。第2に、NSL信号は受信機でSL信号に干渉(例えば、建設的または破壊的)する可能性があり、受信機が受信された信号を正確に処理する能力に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
したがって、受信機のローカル測位ソリューションが誤ったNSLまたはマルチパス信号に基づいている場合、RTKまたはPPP(またはその他の形式)の補正データを受信した後でも、その測位ソリューションは誤ったままになる。これは、特に自動運転車などの用途で使用する場合、重大な結果をもたらす可能性がある。
【0010】
WO2017/163042では、SL方向に沿って目的の信号を厳密に一致させるために、相関プロセスにいわゆる「動き補正」を提供する方法が記載されている。動き補正は、通常、受信された信号と相関関係にある可能性のある動き補正されたローカル信号を提供するために、受信機の動きを示す一連のフェーザをローカルレプリカ信号に適用することを含む。特に、動き補正がSL信号の方向に沿って実行される場合、SL信号の絶対電力が従来の受信機がロックする反射NSL信号(複数可)よりも大幅に低い場合でも、SL信号に対して最高の相関関係が達成される可能性がある(つまり、受信機は目的の見通し線衛星に「ロックオン」できる)。これにより、上記のマルチパスの問題を軽減できる。
【0011】
しかし、WO’042に記載されている技術では、通常、受信機が受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変更する速度よりも低い速度で動き補正相関更新が提供される(一般的な動き補正相関更新速度は約1Hzのオーダーである)。従来のコード位相GNSS測位の場合、明確な搬送波位相の測定は必要ないが、RTKやPPP処理などの搬送波位相測位の場合は必要である。動き補正相関の更新速度が比較的低いと、相関更新の間隔(たとえば、約1秒)中に受信機が搬送波の波長(たとえば、GPS L1搬送波の場合は約19cm)よりも長い距離を非線形に移動している可能性があるため、搬送波位相処理に問題が発生する。これにより、受信機と取得される信号源間の全波長数を明確に推定できなくなる。
【0012】
したがって、特にRTKやPPPなどのGNSS搬送波処理システムや方法に関して、測位技術を改善する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、測位システムで実行される方法であって、ローカル信号を提供すること、受信機において、遠隔ソースから受信機への直線方向である第1の方向で遠隔ソースから信号を受信すること、受信機の動きを第1の速度で測定または想定すること、第1の速度より低い第2の速度で動き補正相関信号を生成することであって、動き補正相関信号を提供することは、ローカル信号と受信された信号とを相関させ、第1の方向の受信機の測定されたまたは想定された動きに基づいて、ローカル信号、受信された信号、及び相関の結果のうちの少なくとも1つの動き補正を提供することを含む、生成すること、受信機の測定されたまたは想定された動きから、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す第1の速度での第1のデータセットを取得すること、動き補正相関信号から、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す第2の速度で第2のデータセットを取得すること、及び第1のデータセット及び第2のデータセットに基づいて第2の速度より高い処理速度で処理出力を生成し、それによって処理出力は、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示すこと、を含む、方法が提供される。
【0014】
このようにして、本発明は、搬送波位相処理機能(例えば、RTKまたはPPP処理)を提供するが、受信機の動きに比べて受信された信号(例えば、無線)からの測定更新速度が低いという前述の問題を克服する。
【0015】
生成された処理出力は、好ましくは搬送波位相処理によって、受信機の位置または動きに関連する関心対象のメトリックを判定するために処理されてもよい。処理出力は、搬送波位相測位技術を使用して処理され、波長以下の精度の測位ソリューションが提供される場合がある(たとえば、GNSSシステムの場合、受信機の位置はセンチメートルまたはミリメートルレベルの精度になり得る)。別の例では、処理出力は、測位システム内のエラーを判定または予測するために使用される場合がある。
【0016】
処理出力は、好ましくは、処理信号(例えば、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対移動によって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示すもの)を含むか、またはその形式である。したがって、この方法は、第1のデータセット及び第2のデータセットに基づいて処理速度で処理信号を生成することを含むことが好ましく、処理信号は、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す。このような処理信号、つまり「トレース」は、通常、時間の経過に伴う周波数のシフトまたは明確な位相の変化を示す、時間順に並べられた一連の測定値の形式をとる。ただし、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す他の処理出力、たとえば数値のシーケンス(たとえば、テキストファイルに保存される)が想定される。
【0017】
本発明の方法は、受信機の第1の方向の測定されたまたは想定された動きに基づいて動き補正を実行することにより、受信機と遠隔ソースとの間の直線方向に沿って受信された信号に対して、直線方向に沿って受信されない信号と比較して、優先的なゲインを有利に提供することができる。直線方向は、受信機と遠隔ソース間の最短(直線)パスに沿った方向として定義できる。実際の状況によっては、直線経路が建物またはその他の物体を通過する場合がある。屋内または都市の谷間環境では、直線経路が遠隔ソースと受信機の間で複数の対象物を通過する場合がある。直線方向は、一般的に受信機と遠隔ソース間の「見通し線」(LOS)方向と呼ばれ得る。LOS信号の絶対電力が非LOS信号よりも低い場合でも、LOS信号に対して最高の相関関係が達成される可能性がある。動き補正を使用すると、受信された信号のコヒーレント積分期間を有利に延長できるため、屋内で受信されたGNSS信号または建物を通過したLOS信号などの非常に弱い信号を検出するシステムの能力が向上する。弱い信号を効果的に検出するために、一部の構成では約1秒以上の積分時間が必要になる場合がある。
【0018】
第1の方向に沿って信号を受信する遠隔ソースは、通常、信頼できる遠隔ソース(GNSS測位衛星など)であり、そこから受信したデータは信頼できる、つまり正しいと想定される。受信された信号には、同じパターンのローカルコピーを使用した相互相関プロセスによって放送信号内で検出できる、デジタルまたはアナログの送信情報のいずれかの既知または未知のパターンが含まれる場合がある。受信された信号は、測距に使用できるチッピングコードでエンコードされる場合がある。このような受信された信号の例としては、無線送信内にエンコードされたゴールドコードを含むGPS信号が挙げられる。もう1つの例は、GSMセルラー送信で使用される拡張トレーニングシーケンスである。
【0019】
動き補正相関信号は、受信機の動きが測定または想定される第1の速度よりも低い(「遅い」、つまり1秒あたりの更新回数が少ない)第2の速度で生成される。動き補正相関信号が提供される典型的な速度は約1Hz(つまり1秒あたり1回の更新)であるが、これは、すでに説明したように、正確な搬送波位相測位には通常は低すぎる。第2の速度は、通常、受信機が受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える速度よりも低くなる。ただし、動き補正相関信号の速度よりも高い(「高速」、つまり1秒あたりの更新回数が多い)第1の速度で受信機の動きを測定または想定することにより、第2の速度よりも高い速度を持つ第1及び第2のデータセットに基づいて処理出力を生成できる。処理出力は、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対移動によって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す。したがって、処理出力は、通常、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相変化値のシーケンスを含み、搬送波位相の測位に使用できる。本明細書で、「明確な(例えば搬送波)位相」という用語は、当該技術分野で既知の技術を使用して整数の曖昧性の問題を解決した測定位相、すなわち、受信機と遠隔ソース間の受信された信号搬送波の全波長数を判定した測定位相を意味するために使用する。
【0020】
このように、本発明では、見通し線信号のゲインと感度が向上し、受信機でのマルチパス干渉の影響が軽減されるため、搬送波位相測位を使用(例えば、RTKまたはPPP技術を使用)して信頼性が高く堅牢な測位を実行することができ、それは別様には測位ソリューションを台無しにする可能性がある。言い換えれば、本発明は、受信機におけるローカルの観測値が遠隔ソース(複数可)と受信機との間の所望のLOS信号に基づいていることを保証するのに役立ち、それにより、補正データを使用して、波長未満の精度の測位ソリューションを確実に達成することができる。
【0021】
特に好ましくは、処理速度は、受信機が受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える速度よりも高い。好ましくは、第1の速度は、受信機が受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える速度よりも高い。このようにして、受信機と遠隔ソースとの間の波長の整数の計算は、困難な測位環境でも維持され得、本発明は、信号途絶及びサイクルスリップに対する堅牢性の向上を有利に示す。
【0022】
したがって、通常、処理速度(好ましくは第1の速度)は1Hzを超える。好ましい実施形態では、処理速度(好ましくは第1の速度)は少なくとも20Hzであり、より好ましくは少なくとも50Hzであり、最も好ましくは少なくとも100Hzである。処理速度は、受信機の動きに基づいて選択または調整できる。たとえば、受信機が都市の谷間の道路に沿って走行する車両内にある場合、車両は歩行者よりも速く受信された信号の単一波長の半分(たとえばGPS L1キャリアの場合は約19cm)だけ位置を変更するため、受信機が歩行者のポケット内にある場合よりも高い処理速度が望まれる。したがって、受信機の動きが測定または想定される第1の速度は、所望の処理速度に応じて選択または調整することができる。
【0023】
一部の使用シナリオでは、受信機の動きが第1の速度よりも低い速度で測定される可能性があることに留意されたい。ただし、測定更新間の受信機の想定される(言い換えれば、「予測される」)動きの結果として、受信機の動きに対応するデータは依然として第1の速度で提供される。たとえば、受信機が衛星群の見通しがよい直線道路に沿って走行する車両内に配置されている場合、測定更新間の受信機の動きは高い信頼度で想定できるため、受信機の動きの測定は第1の速度よりも低い間隔で行うことができる。ただし、受信機の動きの予測は、低い速度測定間の第1の速度で引き続き提供される。このようにして、受信機の動きが第1の速度で測定または想定される。
【0024】
実施形態では、処理出力は第1の速度で生成される(すなわち、処理速度は第1の速度に等しい)。ただし、一般的には第1の速度と処理速度は異なる場合がある。たとえば、受信機の動きが測定または想定される第1の速度は、処理速度よりも高い(「速い」)場合がある。いくつかの実施形態では、第1及び第2のデータセットから取得されたデータは補間され、第1の速度よりも高い処理速度が生成される。
【0025】
通常、受信機の動きを測定または想定することは、慣性センサなどの1つ以上のセンサから取得され、位置または動きを判定できる測定値に基づいて実行される。このような慣性センサの例には、加速度計(通常は直線加速度を測定するように構成)やジャイロスコープ(通常は回転速度を測定するように構成)などがある。慣性センサは慣性測定ユニット(IMU)の一部である場合がある。受信機の動きを測定または想定するために使用できるセンサの他の例としては、磁力計(通常は方位基準を測定するように構成)、気圧計などの圧力感知デバイス(通常は高度の変化を測定するように構成)、LIDAR、RADAR、またはカメラまたは視覚オドメトリベースの測位システムなどがある。
【0026】
受信機の動きが測定または想定される第1の速度は、通常、受信機の動きを判定できる「生の」測定値を1つ以上のセンサが提供した速度と同じである。たとえば、加速度計が100Hzの速度で直線加速度の測定値を提供する場合、第1の速度は通常100Hzになる。ただし、一部の実施形態では、第1の速度は生のセンサ測定値の速度と異なる場合がある。たとえば、センサからの測定値をサンプリングして、「生の」測定値の速度よりも低い第1の速度で受信機の測定されたまたは想定された動きを提供することができる。このようなサンプリングにより、処理負荷が軽減され得るという利点がある。
【0027】
第1のデータセットは通常、受信機の測定されたまたは想定される動きから得られた、受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化の推定値のセットで構成される。例えば、受信機速度の測定値は、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによる受信された信号の周波数(例えば、ドップラー周波数)シフトの値を推定するために使用されてもよい。
【0028】
動き補正相関信号は、コード位相、搬送位相、及び周波数シフト(ドップラーシフトなど)の測定値(及び通常は変化率などのそれらの高次項)を第2の速度(たとえば1Hz)で提供する。この第2の速度は、通常、受信機が受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変更する速度よりも低くなる。動き補正相関信号は、受信機と遠隔ソース間の見通し線方向に沿って受信された信号に優先ゲインが提供されることにより、第2の速度で正確な周波数シフトと位相測定を提供する。しかし、受信機が受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える速度よりも通常は低い速度で、ローカル信号、受信された信号、及び相関の結果の少なくとも1つに対して動き補正を行って動き補正相関信号を提供することにより、受信された信号の完全な位相情報が失われる。例えば、動き補正相関信号の測定エポック間に受信された信号の複数の波長が経過している可能性がある。
【0029】
したがって、動き補正相関信号から得られる第2のデータセット(たとえば、測定値のセット)は、受信された信号の周波数シフト(及び、任意選択でその変化率)を示すことが好ましい。言い換えれば、周波数領域は位相領域のように整数の曖昧さの影響を受けないため、好まれる。
【0030】
ただし、第2のデータセットは、周波数シフトではなく、明確な位相の変化を示している可能性がある。明確な位相の変化の推定値は、例えば、動き補正相関信号から得られた瞬間位相と、コード位相距離推定値とを使用して取得できる。
【0031】
第1のデータセットは、第1の速度で取得された受信機の動きの測定値または仮定から取得され、通常は動き補正相関信号から取得された第2のデータセットと同じドメインに変換される。したがって、通常、第1のデータセットと第2のデータセットは両方とも、受信機と遠隔ソースの第1の方向の相対的な動き(及び、任意選択でその変化率)による受信された信号の周波数シフトを示すか、または第1のデータセットと第2のデータセットは両方とも、受信機と遠隔ソースの第1の方向の相対的な動き(及び、任意選択でその変化率)による受信された信号の明確な位相の変化を示す。ただし、一部の実施形態では、第1のデータセットと第2のデータセットが受信された信号の異なるパラメータを示す場合があることが想定される(たとえば、第1のデータセットは周波数シフトを示し、第2のデータセットは明確な位相の変化を示す)。
【0032】
第1のデータセット、第2のデータセット、及び処理出力(処理信号など)の速度は、1秒間隔あたりのデータポイントの数(周波数シフトまたは明確な位相変化の測定値または推定値の数など)に対応する。
【0033】
好ましい実施形態では、処理出力は、第1のデータセットと第2のデータセットを組み合わせることによって生成される。これは、処理出力を生成するために2セットのデータポイントを「融合」することを示し得る。動き補正相関信号から取得される第2のデータセット(つまり、GNSS無線信号などの受信された信号から取得される)の精度は、第2のデータセットの値(たとえば、周波数シフトの値)が通常、受信された信号から直接測定されるため、通常、第1のデータセットよりも高い信頼レベルを有する。したがって、処理出力を生成するときに、第1のデータセットは、第2のデータセットによって制約されるのが好ましい。
【0034】
通常、第1のデータセットと第2のデータセットは、加重平均技術を使用して結合(「融合」)できるが、カルマンフィルタや補完フィルタを使用するなど、データポイントを融合する他の方法も想定される。ただし、代替的に、第1のデータセットのデータポイントを第2のデータセットのデータポイントの間に直接提供することもできる。
【0035】
したがって、本発明は、動き補正相関プロセスの見通し線及びマルチパス緩和の利点を、動き補正のみを使用した場合よりも高い速度(すなわち、1秒の時間間隔あたりのデータポイント数が多い)で有利に提供する処理出力(処理信号など)を生成する。これにより、処理出力を搬送波位相測位に使用して、波長以下の精度と高い信頼性を備えた測位ソリューションを生成できるようになる。
【0036】
いくつかの実施形態では、受信機と第1の方向との間の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化の高次項を示す処理出力が生成される場合がある。例えば、本発明は、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向に沿った相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトの変化率を示す処理速度で処理出力を提供することができる。受信機の質とその動作ダイナミクスに応じて、周波数シフトの高次項または明確な位相の変化の測定が使用される場合がある。たとえば、受信機が高速または複雑な動きをしている場合、及び/または受信機内の発振器の精度が低い場合は、周波数シフトの変化率または明確な位相変化を取得することが望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、第1及び第2のデータセットは、第1の方向における受信機と遠隔ソースとの間の相対的な動きによって引き起こされる周波数シフトの変化率または受信された信号の明確な位相の変化率をさらに示すことができ、それによって、方法は、第2の速度よりも高い第2の処理速度で第2の処理出力(例えば、第2の処理信号)を生成することをさらに含み、第2の処理出力は、第1の方向における受信機と遠隔ソースとの間の相対的な動きによって引き起こされる周波数シフトの変化率または明確な位相の変化の変化率を示す。第2の処理速度は通常、第1の処理速度と同じである。
【0037】
生成された処理出力(複数可)はさまざまな方法で利用される場合がある。1つの好ましい実施態様では、本発明の方法は、処理出力を処理して、受信機の位置または動きに関連する関心対象のメトリックを判定することをさらに含む。例えば、処理出力は、受信機の相対位置または絶対位置、及び/または受信機の速度を生成するために使用されてもよい。好ましくは、この方法は、信頼できる基準ソースから補正データ(例えば、遠隔ソースに対応するもの)を受信することをさらに含み、受信された補正データに基づいて関心対象のメトリックが判定される。補正データは通常、搬送波位相測定値などで構成される。通常、補正データは、信頼できるRTKまたはPPP基準ソース(基準基地局など)から受信されたRTKまたはPPP補正データである。補正データは、インターネット、携帯電話接続、UHF無線接続などのいずれかの適切な通信接続を介して受信できる。
【0038】
特に好ましくは、関心対象のメトリックは、RTKまたはPPP測位などの搬送波位相測位を使用して判定される。このような実施形態では、この方法は、測位システムで実行される、搬送波位相測位を実行する方法と呼ばれることがある。好ましくは(例えば、処理出力が、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトを示す場合)、処理出力の処理は、累積ドップラー処理を使用して処理出力を処理することを含む。このような処理により、処理出力(処理信号など)が搬送波処理に適した観測値(搬送波位相測定値など)に変換され、高速で累積されたドップラー測定を搬送波測位モジュールで処理して、困難な測位環境でセンチメートルレベルのグローバル測位を提供できるようになる。これは、動き補正相関信号から得られる高精度の測定値と、受信機の動きの高速測定値または仮定とを組み合わせることで実現される。
【0039】
第1のデータセットと第2のデータセットの両方が、受信機と遠隔ソース間の第1の方向の相対的な動きによる受信された信号の周波数シフト(及び、任意選択でその変化率)を示す場合、受信された信号の明確な位相及び/またはその変化を示す処理出力は、第1のデータセットと第2のデータセットに基づいて直接(つまり、単一のステップで)生成される場合があることに留意されたい。
【0040】
実施形態では、この方法は、1つ以上の所定のイベントの検出時に再収束プロセスを実行することをさらに含んでもよい。再収束プロセスまたはアルゴリズムを実行すると、搬送波位相が正しいことを確認し、いずれかの望ましくないサイクルスリップが発生したかどうかを判断するのに有利に使用できる。1つ以上の所定のイベントは、前回の再収束プロセスからの所定の時間間隔、受信された信号(例えば、第1の方向に沿った遠隔ソースから)の損失の所定の時間期間、及び受信機の検出された動きのうちの1つ以上を含むことができる。受信機のこのような検出された動きは、動きの急激な変化(例えば、衝撃による)である可能性がある。
【0041】
説明したように、処理出力は、受信機の位置または動きに関連する関心対象のメトリックを判定するために使用できる。代替的にまたは追加的に、この方法は、第1のデータセットと第2のデータセットとの差に基づいて、受信機の測定されたまたは想定された動きにおけるエラーを推定するために処理出力を分析することをさらに含んでもよい。たとえば、処理出力の分析により、第2のデータポイントと(たとえば隣接する)第1のデータポイントとの間の差(周波数または位相空間)が所定の閾値より大きいことが示される場合がある。このような分析に基づいて、第1のデータポイントに対応する受信機の測定されたまたは想定された動きが間違っていると推測される場合がある。このような技術により、受信機の測定されたまたは想定される動きを提供するセンサ(慣性センサなど)のエラーまたは偏りを検出し、修正または補償することが可能になるという利点がある。
【0042】
既に説明したように、本発明は、第2(「低い」)の速度で動き補正相関信号を生成し、動き補正相関信号を提供することは、ローカル信号と受信された信号とを相関させ、第1の方向の受信機の測定されたまたは想定された動きに基づいて、ローカル信号、受信された信号、及び相関の結果のうちの少なくとも1つの動き補正を提供することを含む。相関の前にローカル信号に動き補正を施すことで、受信された信号とより密接に一致させることができる。別の配置(「逆」など)では、受信された信号に動き補正を適用して、受信機の動きが受信された信号に与える影響を減らすことができる。ローカル信号と受信された信号の両方に部分的な動き補正を施すことで、同様の結果が得られる場合がある。これらの技術により、ローカル信号と受信された信号の間に相対的な動き補正を適用できる。一部の実施形態では、動き補正は相関と並行して実行できる。動き補正は相関結果(初期相関信号など)に直接適用することもできる。
【0043】
実際には、受信された信号は同相成分と直交成分を含む複雑な信号として処理される場合がある。ローカル信号も同様に複雑になる可能性がある。相関信号は複雑になることもあり、これらの複雑な信号間の相関の尺度として使用できる。
【0044】
第1の方向の測定されたまたは想定された動きに基づいて、ローカル信号及び受信された信号の少なくとも1つの動き補正を提供することによって、高い測位の精度を達成することができる可能性がある。実際には、GNSS信号に適用する場合、ローカル信号と受信された信号は、定期的に繰り返されるコードでエンコードされる場合がある。たとえば、GPS L1 C/Aコードの場合、ローカル信号と受信された信号には1023個の疑似乱数コードチップを含めることができる。ローカル信号と受信された信号はアナログ波形であり、無線サンプリング速度で値を提供するためにデジタル化される場合がある。つまり、1ミリ秒の時間間隔で数百万の値が存在する可能性がある。ローカル信号デジタル値と受信された信号デジタル値との間の相関は、まず関連する期間の動き補正フェーザを使用していずれかの値セットを補正した後に計算することができる。これらのデータポイントは、期間にわたって合計される可能性がある。実際には、計算負荷はかかるものの、無線サンプリング周波数で動作するため、正確な結果を得ることができる。
【0045】
動き補正相関信号は、相関結果に動き補正を施すことによって生成することができる。このような場合、相関結果は通常、1つ以上のコードワード(GPS L1 C/Aコードの場合は1ミリ秒の長さで、1023チップを含む)を使用して取得され、取得された相関結果に対して動き補正が提供される。
【0046】
さらなる例では、相関は、約1000個の疑似乱数コードチップのそれぞれに対して独立して実行され得、約1000個の複素相関器信号出力が生成される。その後、これらの約1000個の相関信号成分に動き補正を適用できる。最後に、これらの信号出力を合計して、第2の速度での相関の測定値を生成できる。このアプローチは、ローカル信号と受信された信号の動き補正によって達成できる結果の近似値を提供する可能性がある。ただし、一部の適用では、精度の低下は無視できるほど小さく、計算負荷を軽減できるため受け入れられる場合がある。
【0047】
通常、動き補正の提供は、第1の方向における受信機の測定されたまたは想定された動きを示す複数のフェーザを含むフェーザシーケンスを生成することであって、各フェーザは振幅及び/または位相角を含む、生成すること、及びフェーザシーケンスをローカル信号、受信された信号、及び相関の結果のうちの該少なくとも1つと組み合わせること、を含む。フェーザシーケンスは、受信機の測定されたまたは想定される動きの結果として受信された信号に導入された振幅及び/または位相の変化を示す1つ以上の位相を含む。各フェーザは、それぞれの方向における受信機の測定されたまたは想定された動きを記述する振幅及び位相角の少なくとも1つを含む。
【0048】
通常、フェーザシーケンスは、時間の関数として受信機の測定されたまたは想定される動きから導出される。たとえば、フェーザシーケンス内の各フェーザは、特定の時間間隔中に測定された、または想定される受信機の動きを示す場合がある。したがって、結果のフェーザシーケンスは、個々の時間間隔で構成される期間中に測定された、または想定される受信機の動きを示す(たとえば、それに対応する)。フェーザシーケンスは、時間における受信機の詳細な動きを反映する場合がある。たとえば、フェーザシーケンス内の複数のフェーザは、ジョギング、ウォーキング、ランニング、またはその他の反復運動中に受信機がユーザのポケットの中に置かれているときの受信機の動きを反映する場合がある。この例では、受信機は、ヒールを打ち付けるたびに加速度がピークに達する周期的な動作を実行する場合がある。
【0049】
受信機から衛星への直線方向である第1の方向は、通常、衛星群からブロードキャストされるエフェメリスまたは軌道データを使用して判定される。同様に、遠隔ソースの動き(例えば、受信機と遠隔ソース間の相対的な動きによる受信された信号の周波数シフトを測定または予測するために使用される)は、ブロードキャストエフェメリスまたは軌道データから取得される場合がある。
【0050】
好ましい実施形態では、方法はさらに、ローカル発振器を使用してローカル周波数または位相基準を提供すること、ローカル周波数または位相基準と、発振器基準ソースから受信された基準信号の受信周波数または受信位相との間のオフセットを判定することであって、前記基準信号は、既知または予測可能な周波数または位相を有する、判定すること、をさらに含むことができ、前記フェーザシーケンスは、判定されたオフセット(例えば、時間の関数として)を示す。フェーザシーケンスの振幅及び/または角度は、判定されたオフセット(またはオフセットの時系列)に基づいて調整される場合がある。このような実施形態は、ローカル発振器の不安定性によって相関信号に導入されるエラーの除去を容易にする利点がある。これは、水晶振動子などのローカル発振器が単純で低コストである実装(スマートフォンなど)では特に有利である。
【0051】
ローカル発振器のエラーは、受信機と、基準信号を受信する発振器基準ソースとの間の、両者のベクトルに沿った相対的な動きに基づいて、受信位相または受信周波数に導入される影響を除去することによって分離できる。したがって、この方法は、受信機と発振器基準ソースの両方の運動成分を、両者の間の直線方向(「見通し線」)に沿って判定することを含み得る。ローカル発振器によって提供されるローカル周波数または位相と基準信号との間のオフセットを補正することにより、移動する受信機は、他の場合よりも長いコヒーレントな信号統合を提供できる。1秒以上の期間にわたって受信された信号をコヒーレントに統合することが可能である。これは、受信機の感度が向上し、前述の動き補正の使用と組み合わせて、より弱い測位信号を検出し、測位計算に使用できるようになることを意味する。
【0052】
発振器の基準ソースは地上送信機である場合がある。たとえば、発振器の基準ソースは、携帯電話の送信機、またはDAB、DVB-T、またはアナログ放送などであり得る。発振器の基準ソースは、高い安定性を備えた原子ローカル発振器を備えたGNSS衛星などの衛星であってもよい。発振器の基準ソースは、第1の方向に沿った遠隔ソースである場合がある。重要なのは、発振器遠隔ソース内のローカル発振器は、少なくともローカル発振器よりも安定している必要があることである。
【0053】
説明したように、判定されたオフセットは、動き補正相関信号を生成するために使用されるフェーザシーケンスで示される場合がある。あるいは、この方法は、ローカル発振器を使用してローカル周波数または位相基準を提供すること、ローカル周波数または位相基準と、発振器基準ソースから受信された基準信号の受信周波数または受信位相との間のオフセットを判定することであって、該基準信号が既知のまたは予測可能な周波数または位相を有する、判定すること、及び該オフセットを使用してローカル信号を提供すること、をさらに含む場合がある。このような実施形態では、相関に使用されるローカル信号は、ローカル発振器からのローカル周波数または位相基準と、判定されたオフセットを使用して生成される。理論的には、補正は、ローカル信号、受信された信号、及び相関信号のうち少なくとも1つに適用できる。
【0054】
この方法は、時間の関数としてローカル周波数または位相基準と基準信号の受信周波数または受信位相との間のオフセットのシーケンスを判定すること、及び該オフセットのシーケンスを使用してローカル信号を提供することを含むことができる。したがって、オフセットのシーケンスは、時間の経過と共に判定されたオフセットを表す振幅及び/または位相角を有するフェーザシーケンスとして表されることができる。
【0055】
動き補正相関信号は、受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す第2のデータセットを取得するために使用される。動き補正相関信号は、受信された信号自体から直接コード位相と周波数シフトの測定値を提供(たとえば、GNSS測位信号の無線データから直接導出)し、その結果、関連する信頼レベルが高くなる。ただし、いくつかの実施形態では、2つ以上の該動き補正相関信号は、測位システムのパラメータの対応する2つ以上の仮説に基づいて生成され得、少なくとも第2のデータセットは、最も高いゲインで動き補正相関信号を生成する仮説に基づく。システムパラメータには、時間の経過に伴う真の値及び/または真の変化がある。システムパラメータは、受信機の測定されたまたは想定される動きを提供するために使用されるセンサの少なくとも1つにおけるバイアスまたはエラーである可能性がある。システムパラメータは、受信機の位置または動きに関連するパラメータ、たとえば、第1の方向に沿った受信機の速度などである可能性がある。システムパラメータは、ローカル発振器によって提供される周波数または位相基準のエラーである可能性がある。
【0056】
たとえば、受信機の速度に関する2つの異なる仮説に対して、動き補正相関信号が生成される場合がある。より高いゲインを持つ動き補正相関信号は、実際の受信機速度に近い見込みのある受信機速度を示す。動き補正相関信号を生成する際にこのような「仮説検定」を実行すると、処理出力を生成するために使用される測定の信頼レベルが有利にも向上する(したがって、測位ソリューションの信頼性が高まる)。さらに、受信機の測定されたまたは想定される動きを提供するために使用されるセンサのエラーまたはバイアスは、仮説及び結果として生じる相関信号に基づいて修正または補正される可能性がある。
【0057】
本発明の第2の態様によれば、測位システムのプロセッサによって実行されると、本発明の第1の態様に関連して上述したステップをプロセッサに実行させる実行可能命令を含むコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。コンピュータ読み取り可能な媒体は、ダウンロードサーバーで提供される場合がある。したがって、実行可能な命令は、ソフトウェアのアップグレードによって測位システムによって取得される可能性がある。
【0058】
本発明の第3の態様によれば、測位システムであって、受信機であって、遠隔ソースから受信機への直線方向である第1の方向で遠隔ソースから信号を受信する要約される、受信機、ローカル信号を提供するように構成されたローカル信号発生器、受信機の動きを第1の速度で測定または想定するように構成されたモーションユニット、第2の速度で動き補正相関信号を生成するよう構成される相関ユニットであって、動き補正相関信号を提供することは、ローカル信号と受信された信号とを相関させること、及び第1の方向の受信機の測定されたまたは想定された動きに基づいて、ローカル信号、受信された信号、及び相関の結果のうちの少なくとも1つの動き補正を提供することを含む、相関ユニット、及び信号生成ユニットであって、受信機の測定されたまたは想定された動きから、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す第1のデータセットを第1の速度で取得すること、動き補正相関信号から、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示す第2の速度で第2のデータセットを取得すること、及び第1のデータセット及び第2のデータセットに基づいて第2の速度より高い処理速度で処理信号を生成し、それによって処理出力は、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示すこと、に対して構成される信号生成ユニット、を備える、測位システムが提供される。
【0059】
本明細書で説明したように、好ましい実施形態では、処理出力は、処理信号(例えば、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対移動によって引き起こされる受信された信号の周波数シフトまたは明確な位相の変化を示すもの)を含むか、またはその形式である。
【0060】
したがって、本発明の第3の態様の測位システムは、第1の態様に関して上述した全利点を提供する。一般に、本発明の第3の態様の測位システムは、例えば適切にプログラムされたプロセッサを使用することにより、本発明の第1の態様のステップのいずれかを実行するように構成することができる。
【0061】
上述のように、処理速度(好ましくは第1の速度)は、受信機が受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える速度よりも高いことが好ましい。好ましい実施形態では、処理速度(通常は第1の速度)は1Hzより大きく、好ましくは少なくとも20Hz、より好ましくは少なくとも50Hz、最も好ましくは少なくとも100Hzである。
【0062】
モーションユニットは通常、位置または動きを判定できる測定を行うように構成された少なくとも1つのセンサを含む。モーションユニットは通常、加速度計やジャイロスコープなどの慣性センサを少なくとも1つ備えている。ただし、気圧センサ、地磁気センサ、または視覚オドメトリユニットなど、受信機の動きまたは位置を判定できる測定値を提供するために使用できる他のセンサも想定されている。モーションユニットは、通常、慣性測定ユニット(IMU)であるか、またはそれを含むことができる。モーションユニットは、以前のエポックの移動パターンに基づいて、受信機の移動を想定できる。
【0063】
受信機は、アンテナと、受信された信号を処理する電子機器とを備えていてもよい。好ましくは、モーションユニットは、アンテナの測定されたまたは想定される動きを提供するように構成されている。本発明は、受信機がスマートフォンなどの消費者向け電子デバイスに実装される実施形態において、特に、第1及び第2のデータセット、ならびに処理出力が受信された信号の周波数シフトを示す場合に特に有利である。これは、標準的な消費者向けスマートフォンが通常、位相パターンが比較的悪い低コストのアンテナを備えているためである。これは通常、搬送波位相測位では問題となるが、動き補正相関信号から取得した周波数シフト測定値と、受信機の測定または想定される動きを使用して位相測定値を再合成することで(たとえば、累積ドップラーを介して)、この問題を克服できる。
【0064】
測位システムは、好ましくは、処理出力を処理するように構成された信号処理ユニットをさらに備える。本発明の第1の態様に関して上記で概説したように、処理出力は少なくとも2つの好ましい方法で処理することができる。このような処理の第1の「モード」では、信号処理ユニットは、処理出力を処理して、受信機の位置または動きに関連する関心対象のメトリックを判定するように構成され得る。このようなメトリックには、たとえば、受信機の絶対位置または相対位置、または受信機の速度などが含まれ得る。好ましい実施形態では、信号処理ユニットは、信頼できる基準ソースから補正データ(例えば、遠隔ソースに対応するもの)を受信するように構成され、受信された補正データに基づいて関心対象のメトリックが判定される。好ましくは、関心対象のメトリックは、RTKやPPPなどの搬送波測位を使用して判定できる。したがって、このような補正データは、たとえば信頼できる基地局またはネットワークから測位システムに送信されるRTKまたはPPP補正データの形式である可能性がある。補正データは受信機に搭載されたアンテナを介して受信される場合がある。
【0065】
好ましくは(例えば、処理出力が、受信機と遠隔ソースとの間の第1の方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の周波数シフトを示す場合)、処理出力の処理は、累積ドップラー処理を使用して処理出力を処理することを含む。この処理により、搬送波測位に適した観測値(信号搬送波位相など)が生成される。
【0066】
代替的にまたは追加的に、信号処理ユニットは、処理出力を分析して、第1のデータセットと第2のデータセットとの差に基づいて、受信機の測定されたまたは想定された動きにおけるエラーを推定するように構成され得る。このようにして、モーションユニットのセンサのエラーを有利に判定し、修正または補償することができる。
【0067】
測位システムは、好ましくは、フェーザ生成ユニットを含み、フェーザ生成ユニットは、第1の方向における受信機の測定されたまたは想定された動きを示す複数のフェーザを含むフェーザシーケンスを生成するように構成され、各フェーザは振幅及び/または位相角を含む。生成されたフェーザシーケンスは、ローカル信号、受信された信号、及び相関の結果のうちの該少なくとも1つと結合され、動き補正相関信号を生成することができる。位相生成ユニットは、通常、モーションユニットと通信し、受信機の測定されたまたは想定される動きに基づいてフェーザシーケンス(複数可)を生成する。次に、フェーザシーケンスを使用して、ローカル信号、受信された信号、及び相関の結果のうちの少なくとも1つの動き補正を行い、前述のように、動き補正相関信号を生成する。
【0068】
好ましい実施形態では、測位システムは、フェーザ生成ユニットによって生成された少なくとも1つのフェーザシーケンスを格納するように構成されたアドレス指定可能なストレージをさらに備えていてもよい。これは、保存されたフェーザシーケンス(複数可)が、適切な場合(例えば、受信機の測定または想定された動きと、第1の方向と第2の方向が2つの別々の期間で実質的に同じであると見なされる場合)に、後続の期間に再利用できることを意味し、有利である。このようなフェーザシーケンスの再利用により、必要な計算能力とバッテリリソースが効果的に削減される。
【0069】
通常、測位システムは、ローカル周波数または位相基準(例えば、ローカル信号の生成用)を提供するように構成されたローカル発振器、及びローカル周波数または位相基準と、発振器基準ソースから受信された基準信号の受信周波数または受信位相との間のオフセットを判定するよう構成されたローカル発振器オフセット判定ユニットであって、前記基準信号は、既知または予測可能な周波数または位相を有する、ローカル発振器オフセット判定ユニット、をさらに含み、前記フェーザシーケンスは、判定されたオフセットを示す。このような実施形態は、本発明の第1の態様に関連して上で説明したように、1秒以上のより長いコヒーレント積分時間を可能にするという利点がある。
【0070】
測位システムは、測位システムのパラメータの2つ以上の仮説を提供するように構成された仮説ユニットをさらに備え、動き補正相関信号は、該2つ以上の仮説に基づいて生成され、少なくとも第2のデータセットは、最も高いゲインで動き補正相関信号を生成する仮説に基づく。
【0071】
実施形態では、ローカル発振器オフセット判定ユニットは、ローカル周波数または位相基準と、発振器基準ソースから受信された基準信号の受信周波数または受信位相との間のオフセットを判定するように構成され、該基準信号は、既知または予測可能な周波数または位相を有し、ローカル信号発生器は、該オフセットを使用してローカル信号を提供するように構成されてもよい。
【0072】
測位システムは通常、単一の(GNSSなど)測位デバイス上で提供される。このような単一の測位デバイスは、スマートフォンなどの電子ユーザデバイスに設けられてもよい。あるいは、測位システム内のさまざまなユニット(相関ユニット、信号生成ユニット、及び信号処理ユニットなど)を個別に提供して、測位システムを分散させる(つまり、分散システムとして構成する)こともできる。たとえば、相関ユニット及び/または信号生成ユニットによって実行される計算などの特定の計算は、ネットワーク内のプロセッサによって実行される場合がある。したがって、電子ユーザデバイスは、適切な場合には効率性の関心からネットワーク内の他のプロセッサに計算をオフロードすることができる。
【0073】
本発明のいずれの態様においても、受信機は典型的にはGNSS受信機である。少なくとも1つの遠隔ソースには通常、少なくとも1つのGNSS衛星が含まれる。しかしながら、本発明の方法及び測位システムは、セルラー、DAB、またはDVB信号などの他の測位用無線信号にも適用できる。
【0074】
本発明の方法及び測位システムは、通常、位置を判定するために使用することができる。しかしながら、本発明は、時間、速度、及び周波数などの他のメトリックを判定するために使用することもできる。本発明によって判定されたメトリックは、ナビゲーションまたは追跡アプリケーションで使用できる。
【0075】
本発明の好ましい実施形態をこれから添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明の方法及び測位システムが使用され得る例示的な環境を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態による測位システムの関連部分を示す概略図である。
図3】本発明の好ましい実施形態の主なステップを概説したフロー図である。
図4】相関プロセス中に動き補正がどのように適用され得るかを概略的に示している。
図5】本発明の実施形態に従った処理信号の生成を概略的に示す。
図6】処理信号を生成する方法を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0077】
上述のように、処理出力は、処理信号などの様々な形態をとることができる。以下の説明では、本発明に特に適している処理信号の生成及び処理に焦点を当てる。
【0078】
図1は、例として、本発明の方法及び測位システムを使用して、リアルタイムキネマティック(RTK)測位を使用した測位ソリューションを提供できる環境を例示する概略図である。測位デバイス1000は、遠隔ソースからのGNSS信号を含む無線信号が反射される可能性がある高層ビル50a、50bの間に位置する「都市の谷間」の環境の中に配置される。このような「都市の谷間」環境は、通常、測位システムが位置のソリューションを正確に判定するのが難しい環境である。
【0079】
図1の例では、測位デバイス1000は、測位衛星200bからの弱い直線(SL)信号D1と、建物50aから反射された比較的強い非直線(NSL)信号D2を受信する。SL信号D1は、衛星からデバイスまでの経路で建物50bを通過するため、測位デバイスで受信されると大幅に減衰する。信号D1の相対的に弱い信号強度は、破線で模式的に示されている。測位デバイス1000は、第2の測位衛星200aからの反射信号D4だけでなく、遮るもののない直線信号D3も受信する。この例では、衛星は全地球測位システム(GPS)衛星群の一部であり、受信機が受信する信号はL1 GPS帯域(1575.42MHz)内にある。しかしながら、本発明は、他のGPSバンド(例えば、L2バンド及びL5バンド)や、GLONASS、Galileo、BeiDouシステムなどの他のGNSSシステムでも使用できることは理解されるであろう。
【0080】
測位衛星200a、200bからの放送信号D6、D7も、遮るもののないSL方向に沿って基準基地局300で受信される。基準基地局300は既知の固定位置を持ち、通常は既知の絶対的なグローバルである位置である。基準基地局300は、その位置で受信された信号D6、D7の搬送波位相を測定する。これらの搬送波位相測定値は、基地局の位置情報及びその他の関連データと共に、基準基地局300によってブロードキャストされ、測位デバイス1000によって受信される。基準基地局によってブロードキャストされるデータ(概略的に310で示される)は、本明細書では「補正データ」と呼ばれ、RTCMまたはRinexなどの既存のRTK標準を使用してブロードキャストされる場合がある。
【0081】
測位デバイス1000は、測位衛星から受信された信号の明確な搬送波位相(つまり、衛星から受信機までの波長の整数倍を含む)を独自に測定し、基準基地局からの補正データを使用して、基準基地局300の既知の位置を基準として測位ソリューションを更新する。このようにして、受信機は絶対的なグローバルな位置(基地局の位置が絶対的なグローバルな位置である場合)を波長以下の精度で特定することができ、L1 GPS信号(波長約19cm)の場合はセンチメートルレベルの精度が得られる。
【0082】
しかし、従来のRTKシステムの重大な問題は、図1からわかる。デバイスの位置は都市の谷間の中にあるため、必要な直線信号(例えば、D1、D3)だけでなく、複数の反射信号(例えば、D2、D4)も受信する。図1では、SL信号D3とNSL反射信号D4は同じ遠隔ソース200aから発生したが、異なるパスを経由してデバイス100に到達した。したがって、これらの信号は異なる時間に受信され、減衰及び位相特性も異なる可能性がある。したがって、信号D3とD4は互いに対してノイズとして作用する可能性があり(たとえば、破壊的干渉及び/または建設的干渉を通じて)、測位の精度に重大な問題を引き起こす可能性がある。さらに、図1に概略的に示すように、信号D1は遠隔ソース200bとデバイス1000の間のパス上で減衰されるため、SL信号D1の絶対電力はNSL信号D2よりも低くなる。したがって、従来、測位デバイスは、絶対電力が高い反射信号D2に「ロックオン」して追跡し、余分なパス長の結果として不正確な測距計算につながる可能性がある。
【0083】
基準基地局からの補正データ310は、ローカルデバイス1000のこのようなエラーを補正するために使用することはできない、つまり、従来のシステムでは、RTK測位ソリューションは、センチメートルレベルの精度で報告されていても、不正確になる可能性がある。RTKによって提供されるセンチメートル単位の精度に依存する自律性などの一般的な使用例では、このような自信過剰だが不正確な測位ソリューションは重大な結果を招く可能性がある。本発明はこれらの問題を克服することを目的とする。
【0084】
図2は、本発明による測位システムの関連部分を示す概略図である。受信機100には、前述のようにGNSS信号などの無線信号を受信するためのアンテナ2が含まれている。アンテナ2は、補正データ310を受信するように構成することもできるが、一部の実施形態では、受信機は、補正データを受信するための別の(異なる)アンテナを備えることができる。この例では、受信機100はスマートフォンなどの携帯型電子デバイスの一部である。通常、アンテナ2で受信される放送信号はアナログ信号であり、増幅され、ベースバンドまたはより低い周波数にダウンコンバートされ、アナログ/デジタルコンバータによってデジタル形式に変換され、これらのプロセスは、受信機のフロントエンドブロック3で実行される。その後、デジタル化された信号は、以下で説明するように処理される。
【0085】
受信された信号は、相関ユニット12で、ローカル信号発生器8によって生成されたその信号のローカルレプリカと相関される。相関ユニットは相関器で構成される。ローカル信号発生器8は、ローカル発振器10の周波数または位相基準を使用して、既知の相関シーケンス(GNSS衛星の疑似乱数(PRN)コードなど)のローカルコピーを生成するように構成されている。ローカル発振器10は、特に測位デバイスがスマートフォンなどの携帯型電子デバイス上に実装される場合、一般的に単純かつ低コストである。例えば、ローカル発振器10は水晶振動子で構成されてもよい。
【0086】
モーションユニット4には、受信機100の動き、特にアンテナ2の動きを測定できるセンサが含まれている。モーションユニット4には、加速度計やジャイロスコープセンサなどの慣性センサが含まれ得て、そのデータを使用して受信機の動きを推測できる。モーションユニット4は、通常、慣性センサを使用する慣性測定ユニット(IMU)を含むが、気圧計、磁力計、及び視覚オドメトリシステム、例えばGoogle Tango(登録商標)システムなど、受信機の動きを判定する他の(GNSS以外の)手段を代わりにまたは追加で使用してもよい。
【0087】
フェーザ生成ユニット20は、モーションユニット4によって提供される受信機の動きを示す動き補正フェーザを導出する。動き補正フェーザは、ローカル信号発生器8からのローカル信号、受信された信号、及び相関の結果(たとえば、相関ユニット12内の相関器からの初期出力)の少なくとも1つに適用できる。フェーザ生成ユニット20によって生成されたフェーザは、後続の期間で使用するためにローカルストレージ17に格納され得る。
【0088】
ローカル発振器オフセット判定ユニット5は、ローカル発振器10によって提供される基準周波数または位相と、既知または予測可能な周波数または位相を有する遠隔基準ソースから受信された基準信号の周波数または位相との間のオフセット(「エラー」)を判定するように動作可能である。このようにして、ローカル発振器10の精度を基準ソースの精度に一致させることができる。このような技術は、以下により詳細に説明される。
【0089】
相関ユニット12による相関が行われると、信号生成ユニット14は処理信号を生成し、これは次いで、本明細書でさらに詳しく説明するように、信号処理ユニット16によって処理され得る。
【0090】
測位システムの上記の各ユニットは、プロセッサ1と論理的に通信しており、プロセッサ1は、実行されたソフトウェアまたはファームウェアに従ってさまざまなユニットの動作を制御するように動作可能である。現在示されている実施形態では、ユニット(または「モジュール」)は単一の測位デバイス内に設けられているが、これらは、代替実施形態で、ネットワーク全体に分散して設けられ得る。
【0091】
図3は、本発明の好ましい実施形態の主なステップを示すフロー図であり、図1及び図2に示した測位デバイス及び環境を参照して説明される。ステップS100では、受信機100は、測位衛星200a及び200bから信号を受信する。上で説明したように、受信機で受信される信号には、衛星と受信機の間の直線に沿って移動したものと、反射されたNSL方向のものが含まれる。
【0092】
ステップS102では、モーションユニット4は、たとえばIMUから取得したデータを使用して、受信機の動きを第1の速度で測定または想定する。この例では、IMUは100Hzの速度(1秒あたり100回の測定)でデータを提供しており、受信機の測定された動きは、慣性センサのデータ速度に対応する100Hzの第1の速度で提供されている。
【0093】
ステップS100及びS102は通常、受信機の位置が計算されている間に連続的に実行される。
【0094】
この方法は、発振器基準ソースから受信した基準信号の基準周波数または位相に対するローカル発振器10の周波数または位相基準のオフセットを判定するステップS103を任意選択で含むことができる。これは、ローカル発振器オフセット判定ユニット5によって実行される。まず、受信された信号に基づいて発振器基準ソースが選択される。発振器基準ソースは、少なくとも受信機のローカル発振器10よりも安定した、非常に安定したローカル発振器を備えているべきである。発振器基準ソースは衛星または地上の送信機であり得、基準信号は好ましくは直接の直線経路に沿って受信機によって受信される。発振器基準ソースは、信号強度が最小信号強度を超えており、直接の直線経路(反射なし)に沿って受信される可能性があり、発振器基準ソースと受信機間の相対的な動きが十分にわかっているか推定されている場合に選択される。発振器の基準ソースが衛星である場合、これらの基準は特定の仰角の特定のシナリオで満たされる可能性がより高く、1つの構成では、衛星の仰角が所定の閾値(たとえば80度)より大きい場合にのみ、衛星が基準ソースとして選択される。この例の目的では、発振器基準ソースは、受信機とのSL経路が遮られていないGPS衛星群内の衛星(図1には示されず)であると本発明者らは想定する。
【0095】
次に、ローカル発振器オフセット判定ユニット5は、選択された発振器基準ソースの方向に沿った受信機の測定または想定される動き(ステップS102で取得)の成分を判定する。ローカル発振器オフセット判定ユニットは、さらに、発振器基準ソースの動きを判定または推定する。特に、ローカル発振器オフセット判定ユニット5は、受信機と発振器基準ソースとの間の直線に沿った選択された発振器基準ソースの動きの成分を判定または推定する。したがって、ローカル発振器オフセット判定ユニットは、受信機と選択された発振器基準ソースとを接続するベクトルに沿った受信機とそれらの相対的な動きを判定することができる。
【0096】
したがって、ローカル発振器オフセット判定ユニット5は、発振器基準ソースと受信機100との相対的な動きにより受信基準信号に導入される周波数エラーまたは位相エラーを計算することができる。受信される基準信号は、既知の安定した周波数または位相で発振器基準ソースによって提供される。したがって、ドップラーエラーが除去されると、発振器基準ソースの既知の周波数または位相と、実際に受信される周波数または位相との間のいずれかの残りの差は、ローカル発振器10によって提供されるローカル周波数または位相基準のエラーに起因する可能性がある。これに基づいて、ローカル発振器オフセット判定ユニット5は、ローカル発振器10によって提供される周波数または位相基準に対するオフセットを計算するように構成される。ローカル発振器10によって提供される周波数または位相のエラーを判定するさらなる詳細については、本明細書に参照により組み込まれる公開公報WO2019/008327に見出される。
【0097】
ステップS104では、フェーザ生成ユニット20は、モーションユニット4から受信機の測定されたまたは想定された移動を受信し、受信機と衛星との間の見通し線(直線)方向の受信機の動きに応じてフェーザシーケンスを生成する。図1に戻って参照すると、フェーザ生成ユニット20は、D3(衛星200aの場合)及びD1(衛星200bの場合)の方向に沿った受信機の動きを示すフェーザシーケンスを構築するように構成されている。これらの直線方向は、既知であるか、または衛星群からのエフェメリスの放送軌道データから推定される場合がある。
【0098】
各フェーザシーケンスΦは複数のフェーザで構成され、各フェーザは通常、受信された信号のサンプルと同じ持続時間を有する。信号が受信され、受信機の動きが測定される期間に、受信された信号のサンプルとローカル信号のサンプルが存在しており、生成されたフェーザシーケンスΦには、通常、同じ数NのフェーザΦ(I=1..N)がある。各フェーザΦは、時刻tにおける受信機の動きに基づく位相及び/または振幅の補正を表し、複数のフェーザから構成されるフェーザシーケンスは、時間の関数として特定の方向に沿った受信機の動きを示す。例えば、モーションユニット4からの受信機の測定された速度または推定された速度が、見通し線方向に沿った受信機の動きによるドップラー周波数シフトを判定するために使用されてもよい。次に、ドップラー周波数シフトを経時的に積分し、位相の値を推定する。
【0099】
したがって、フェーザシーケンスは、「動き補正」フェーザシーケンスと呼ばれることがある。
【0100】
フェーザΦは位相空間における変換であり、複素数の値であり、その実数の値を介して動き補正フェーザシーケンスの同位相成分を生成し、その虚数の値を介して動き補正フェーザシーケンスの直交位相成分を生成する。フェーザΦは、通常、循環フェーザであり、実軸からの時計回りの回転や虚軸からの反時計回りの回転など、さまざまな方法で表現できる。上で説明したように、各方向のフェーザシーケンスは、その方向に沿った受信機の測定されたまたは想定される動きを示す。
【0101】
ステップS103でローカル発振器オフセットが判定される実施形態では、ステップS104で生成される各フェーザシーケンスΦは、ローカル発振器オフセット判定ユニット5によって判定されたオフセットに基づいて位相及び/または振幅の補正をさらに表すことができる。これは、図3のステップS103aによって表される。
【0102】
各フェーザシーケンスは、ローカルストレージ17(ステップS104a)に保存され得て、受信機の測定されたまたは想定される動きが期間全体にわたって実質的に一定のままである適切な後続の期間に再利用される。
【0103】
図3に戻って参照すると、ステップS106では、動き補正相関信号が生成される。相関ユニット12は、ローカル信号発生器8によって生成されたローカル信号と受信された信号とを相関させ、モーションユニット4によって判定された受信機の測定されたまたは想定された動きに基づいて、ローカル信号、受信された信号、及び相関結果の少なくとも1つに動き補正を適用する。これは、ステップS104でフェーザ生成ユニットによって導出されたフェーザシーケンスを、受信された信号、ローカル信号、及び相関結果の少なくとも1つと組み合わせることによって実行される。このように受信機と各衛星間のSL方向に沿った動き補正を実行すると、直線方向のゲインが向上し、図1にて見えるような、例えば都市の谷間、また屋内環境さえもの厳しい環境でも、直線測位信号を検出して使用する能力が劇的に向上する。図1の例では、建物50bによって大幅に減衰したSL信号D1と、マルチパス効果の影響を受けるSL方向D3が測位計算に利用できるようになることを意味する。これは、信号D1の方向と信号D3の方向に動き補正を実行することによって実現される。このようにして、補正データ310が受信機によって受信されると、正しいローカル測位データを使用して波長以下の精度の測位計算が生成される。
【0104】
上で説明したように、ステップS103でローカル発振器オフセットが判定される実施形態では、ステップS104で生成されるフェーザシーケンスは、ローカル発振器オフセット判定ユニット5(ステップS103a)によって判定された周波数または位相オフセットに基づく位相補正を表すことができる。あるいは、ローカル信号発生器8は、ローカル発振器10によって提供される周波数または位相基準と、ローカル発振器オフセット判定ユニット5によって判定されたオフセットとを使用して、ローカル信号を生成することができる。これは、図3のステップS103bで表されている。したがって、ローカル発振器の精度は、基準ソースのローカル発振器の精度と一致させることができ、したがって、ローカル信号はより安定したものとなる。
【0105】
相関プロセスにおいてローカル発振器オフセット判定ユニット5によって判定された位相または周波数オフセット(S103aまたはS103bを介して導入)を使用することは、有利にも、ローカル発振器10にいずれかの固有の不安定性によるエラーを発生させることなく、受信した測位信号を1秒以上の期間にわたってコヒーレントに統合できるようにし得る。これは、ローカル発振器が低コストの水晶振動子などの低コストのコンポーネントであるユースケースにおいて特に有利である。ローカル発振器のオフセット補正は、通常、安定した基準ソース(頭上の衛星など)を確実に特定できる場合にのみ実行されることに留意されたい。そうでない場合、必要な計算リソースを削減し、それによってバッテリ性能を向上させるために、ステップS103のローカル発振器オフセット判定は実行されない可能性がある。
【0106】
各フェーザシーケンスΦは、ローカル信号、受信された信号、または相関器からの初期出力の少なくとも1つに適用できる。図4は、フェーザ生成ユニット20からのフェーザシーケンスをローカル信号に適用して動き補正相関信号を生成し得る方法を示す概略図である。フェーザシーケンスを受信された信号または相関の結果に適用する場合に、同等のプロセスを実行できる。上で説明したように、モーションユニット4は、受信機の測定されたまたは想定された動きを提供し、これは、受信機と衛星間のSL方向の受信機の動きを示すフェーザシーケンスを生成するためにフェーザ生成ユニット20によって使用される。ローカル信号発生器8によって生成されたローカル信号は、フェーザ生成ユニット20によって生成されたフェーザシーケンスと結合され(30)、図4の8aで示される動き補正ローカル信号が生成される。この動き補正ローカル信号8aは、受信された信号R(フロントエンドブロック3による初期処理の後)と相関され、動き補正相関信号が生成される。動き補正相関信号は、次いで信号生成ユニット14に渡され、本明細書で説明する処理信号が生成される。実際には、フェーザシーケンスΦの同相及び直交位相成分の両方がローカル信号と結合され、相関用の同相及び直交位相の動き補正ローカル信号が生成される。
【0107】
本明細書で説明したように、概して、フェーザシーケンスΦは、動き補正を実行するために、ローカル信号、受信された信号、及び相関の結果の少なくとも1つに適用され得る。動き補正フェーザシーケンスの生成及び動き補正相関信号の生成におけるその使用に関するさらなる詳細は、本明細書に参照により組み込まれるWO2017/163042において見出すことができる。
【0108】
実際には、特定の遠隔ソースからの信号(たとえば、図1の衛星200bからの信号D1とD2)は単一のアンテナでは区別できず、上記の受信された信号をさらに処理することでSL信号方向D1とNSL信号方向D2が明示されることが理解されよう。このようにして、受信機は、SL信号D1と反射されたNSL信号D2(及びその他の信号)の両方を含む「信号データ」を受信すると考えられる。
【0109】
図3に戻って参照すると、ステップS108では、モーションユニット4によって判定された受信機の測定されたまたは想定された動きから、ドップラーシフト推定値の第1のデータセットが取得される。これは、信号生成ユニット14によって実行される。モーションユニット4からのドップラーシフトの推定値は、受信機と衛星との間の直線方向に沿った受信機の動きに起因する、受信された信号に導入されたドップラーシフトを示す。ドップラーシフトの変化率も、測定されたまたは想定された動きから取得することが好ましい。したがって、受信機の測定されたまたは想定される動きから予測されるドップラーシフト推定値の第1のデータセット(たとえば、ドップラー周波数の推定値は、慣性センサデータからの速度測定に基づく場合がある)には、受信機の動きが測定または想定される速度に対応する速度(たとえば、1秒の時間間隔内のデータポイントの数)がある。上で説明したように、この例では、受信機の動きが測定されるか、慣性センサのデータ速度、つまり100Hzであると想定される。したがって、この例では、ドップラーシフト推定値の第1のデータセットの速度は100Hz(つまり、1秒間隔内に100個のデータポイント)になる。
【0110】
他の実施形態では、受信機の動きは、慣性センサのデータ速度とは異なる速度で測定または想定される場合があると考えられる。たとえば、慣性センサが100Hzの速度で測定値を提供する本例では、受信機の測定されるまたは想定される動きは、これらのデータから20Hzの速度でサンプリングされ得る。このような場合、第1のドップラーシフト推定値のセットは20Hzの速度で提供される。
【0111】
ステップS110では、信号生成ユニット14は、相関ユニット12から出力された動き補正相関信号からドップラーシフト測定値(及び好ましくはその変化率)の第2のデータセットを取得する。動き補正相関信号の速度(例えば、1秒間隔内のデータポイントの数)は、モーションユニット4によって提供される速度よりも低い。動き補正相関信号の典型的な速度は1Hzである。ローカル信号と受信された信号の相関は、通常1Hzよりも速い速度で発生するが(従来の受信機の相関プロセスでは通常50~1000Hz、コヒーレント積分時間1ミリ秒から20ミリ秒に相当)、拡張コヒーレント積分後の動き補正相関信号の出力は通常1Hzのオーダーになる。
【0112】
その結果、ドップラーシフト測定値の第2のセットは、動き補正相関信号の速度(通常は1Hz)で取得される。
【0113】
ステップS112では、信号生成ユニット14は、ドップラーシフト値の第1及び第2のデータセットに基づいてドップラー処理信号を生成し、モーションユニット4からの高速の推定値が、動き補正相関信号から取得された低速ドップラーシフト測定値によって制約される。この信号生成プロセスは、図5に概略的に示されており、y軸はドップラーシフトを表し、x軸は時間を表する。信号500は、特定の衛星に対する更新速度が1Hz(つまり、更新間の時間間隔が1秒)である動き補正相関信号から生成される低速のドップラー信号である。信号500内の各データポイント(概略的に501で示される)は、それぞれの時点における相関データから導出された、受信機と衛星間の直線方向の相対的な動きにより受信された信号に導入された測定されたドップラーシフトに対応する。このようにして、ドップラーシフト値が直接測定される。ドップラー信号500の更新速度は、従来、最適なRTK処理には低すぎると見なされる場合があるが、重要なことに、上記の動き補正プロセスにより、衛星からの見通し線信号を利用し、マルチパス効果を軽減できるため、困難な測位環境でもドップラートレース500が正確に取得されることが保証される。
【0114】
信号600は、低速の第2セットの測定値(トレース500で示す)と、ステップS108でモーションユニット4から得られた高速の第1セットのドップラー推定値(トレース400で示す)に基づいて生成されたドップラー処理信号を示している。処理信号600を生成するために、トレース400の高速(100Hz)ドップラーシフト推定値が低速(1Hz)トレース500と融合される。ドップラートレース500の低速データポイント501は、衛星からの無線データから導出されるため、モーションユニット4から導出される高速推定値を制約し、そのため、無線測定の信号対雑音比が十分に高い(たとえば、20dB以上)場合、モーションユニットデータから導出されるドップラーシフトの推定値よりも通常は高い信頼レベルで処理される。低速データ500には、遠隔ソース(送信機)の動きがドップラー測定に与える影響(送信機と受信機間の全波長数の最適な推定値を得るために有利に使用できる)など、モーションユニット4が直接利用できない情報も含まれている。一実施形態では、予測される遠隔ソースの動きのモデルは、利用可能な場合、予測としてセンサ融合ステップ(処理信号600を生成する)に組み込むことができる。この情報により、ドップラー信号の精度が有利にも向上し得る。
【0115】
モーションユニットデータから得られたトレース400の高速ドップラーシフト推定値は、低速信号500と融合される。一例では、高速のドップラー推定値は、各低速(1Hz)データポイント501の間に直接挿入される場合がある。しかし、図6に概略的に示すように、異なるデータセットからのドップラーシフトデータを融合して処理信号600を生成することが好ましい。これは、信号生成ユニット14によって実行される。処理信号600を生成するために、加重平均、補完フィルタ、カルマンフィルタなど、さまざまなセンサ融合方法が使用される場合がある。このようにして、生成された処理信号600は、受信機の測定されたまたは想定された動きの速度、この場合は100Hzで、LOS方向に沿った受信機のドップラーシフトを有利に追跡する。ドップラーシフトの変化率を示す高速処理信号は、対応する方法で取得することができる。
【0116】
図5には、各トレース400、500、及び600のデータの主要な傾向を示す破線(400a、500a、600a)も表示されている。トレース500と600のそれぞれにおいて(少なくとも部分的には受信した無線データに基づく)、トレースは、天空を横切る衛星の動きと受信機の長期的なクロック動作によって生じた緩やかな曲線を表示す。この情報は、RTKエンジンでの後続のデータ処理に特に役立つ。これらのシステムコンポーネント(すなわち、衛星の動き、クロックの動作)はいずれもモーションユニット4からは観測できないため、これらの傾向はトレース400には表示されない。したがって、本発明は、モーションユニット4からの高速情報と、動き補正プロセスから得られる低速無線情報を最適に組み合わせる。
【0117】
高速ドップラーデータ400と低速ドップラーデータ500が融合されているため、ドップラー処理信号600の速度(1秒あたりのデータポイント数)は、無線データから取得される低速トレース500の速度よりも高くなる。ドップラー処理信号600の速度は、モーションユニット4から得られる高速トレース400の速度と同じであってもよい。他の実施形態では、ドップラー処理信号600の速度は、高速トレース400と低速トレース500の間であってもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、モーションユニット4は100Hzの速度でデータを提供するが、ドップラー処理信号は約20Hzまたは50Hz(一般的なRTK速度)で生成される場合がある。また、使用例によっては、処理信号のデータが高速トレース400よりも高い速度で補間される場合もあることが想定される。
【0118】
次に、高速処理信号600は、2つの主なモードで動作することができる信号処理ユニット16に渡される。1つの処理モードでは、ステップS114で、処理ユニット16は処理信号600を分析して、モーションユニット4によって提供される受信機の測定されたまたは想定された動きのいずれかのエラーを判定する。上で概説したように、動き相関プロセスから取得されるドップラーシフト測定値は、受信された信号の無線データから導出されるため、無線測定値の信号対雑音比が十分に高い場合、通常はモーションユニット4から取得されるドップラーシフト推定値よりも精度が高いと想定される。このような場合、モーションユニットデータから導出されたドップラーシフトと無線データから導出されたドップラーシフトとの間のいずれかの差が所定の閾値より大きい場合は、モーションユニットデータにエラーがあることを示す。たとえば、モーションユニットデータが、無線データによって提供されるものと系統的に異なるドップラーシフト測定値(たとえば、少なくとも所定の量だけ系統的に大きいか小さい)を提供する場合、これは、たとえばモーションユニット4の1つ以上のセンサの偏りにより、受信機の測定または想定された動きにエラーがあることを示す。モーションユニットデータからの高速ドップラーシフト推定値は、無線データからの低速の測定値とより確実に一致するように調整できる。
【0119】
さらなる(オプションの)プロセスでは、測位システムのパラメータの対応する2つ以上の仮説に基づいて、2つ以上の動き補正相関信号が生成される場合があり、そのパラメータは、真の値及び/または時間の経過に伴う真の変化を有する。言い換えれば、フェーザ生成ユニット20によって生成されるフェーザシーケンスは、システムパラメータのそれぞれの仮説をさらに示すと共に、LOS方向に沿った受信機の動きを示すように生成される。最も高いゲインを提供する動き補正相関信号(例えば、トレース500)は、2つ以上の仮説のうちどれがシステムパラメータの実際の値に近いか、またはシステムパラメータの時間の経過に伴う実際の変化に近いかを適切に示し、それに応じてシステム状態を更新できるようにする。このようにして、システム内のいずれかのエラーを特定し、修正または補正することができる。最適な推定値に達するまで、システムパラメータのテスト済み推定値を調整する反復アプローチを使用できる。このように「仮説検定」を実行することで、システム内のエラーやバイアスを更新または修正することができる。さらに、動き補正プロセスは適切に制約することができ、動き補正相関信号から得られる周波数シフト(または明確な位相の変化)の測定値は信頼できるものとして確認できる。
【0120】
システムパラメータは、モーションユニット4の少なくとも1つのセンサにおけるバイアスまたはエラーであってもよい。システムパラメータは、受信機の位置または動きに関連するパラメータ、例えば第1の方向に沿った受信機の速度であってもよい。システムパラメータは、ローカル発振器によって提供される周波数または位相基準のエラーである可能性がある。システムパラメータの仮説は、位相生成ユニットと通信する仮説ユニット19によって提供される。このような「仮説検定」の使用に関するさらなる情報は、本明細書に参照により組み込まれるWO2019/063983に記載されている。
【0121】
したがって、このようなエラー分析は、ステップS114aに示すように、モーションユニットセンサのバイアスを更新して、オフセットまたはエラーを補正または修正するために使用できる。したがって、有利にも、このフィードバックにより、プロセスの精度と結果として得られる測位ソリューションを反復的に改善することができる。エラー分析は、図3のステップS114bに示されているように、処理ドップラー信号600自体を更新するために使用できる。モーションユニット4が第1の速度で受信機の想定される動きを提供する期間中(たとえば、受信機が直線道路に沿って走行する車両内に配置されているなど、受信機の動きを確実に予測できる動きのコンテキスト)、エラー分析を使用して、センサのバイアス状態を一定に保ったまま、想定される受信機の動き(たとえば、さまざまな仮説に基づく)から位置状態とドップラーシフト測定値を更新できる。無線信号が途絶えている期間(建物が数秒間信号源を遮っている場合など)や無線信号が弱すぎる場合、無線信号が再び見えるようになるか十分な強度になるまで、モーションユニットデータ予測を使用して処理信号600を更新できる。
【0122】
複数の無線信号がある一般的なケースでは、強い信号源からの測定を使用して、モーションユニット4からのドップラー予測を修正及び制約することができる。同時に、ノイズの多い、またはエラーが発生しやすいいずれかの弱い無線信号から行われたドップラー測定は、他のより強い無線測定を使用して制約されたモーションユニット4からの予測を使用して修正または置き換えることができる。
【0123】
上述のエラー分析に加えて、または代替的に実行できるさらなる処理モードでは、信号処理ユニット16は、処理信号600を使用して、RTK測位技術を使用して受信機の位置を計算する。ステップS115では、高速ドップラートレース600が、累積ドップラー処理を使用して、RTK処理に適した観測値(受信された信号の累積搬送波位相など)に処理される。ステップS116では、受信機は基準基地局300から補正データ310を受信し、これらの補正データを処理信号600から導出された観測値と共に使用して、RTK処理を使用して受信機の位置を計算する(S118)。モーションユニット4からの高速データと動き補正相関信号からの低速データポイントを融合して処理信号600を生成すると、慣性補助によるサイクルスリップが自動的に考慮され、動き補正相関信号の各時点における観測可能値からの明確な位相測定のループが閉じられる。
【0124】
上述の高速ドップラー処理信号600に基づくRTK処理を使用して測位ソリューションを生成することにより、本発明の測位システムは、受信機で受信される低電力LOS信号(たとえば、20dBHz未満)を使用して、波長未満の精度のナビゲーションソリューションを提供することができる。これは、動き補正相関プロセスとモーションユニット4から取得されたより高速な測定値の組み合わせによって提供される。
【0125】
任意選択で、ステップS120では、測定された搬送波位相が正しいこと、及びシステムにいずれかの望ましくないサイクルスリップが累積されていないことを確認するために、再収束プロセスが実行される。このステップは、所定の時間間隔で実行されてもよいし、及び/または所定のイベント、例えば衝撃または急速な回転(例えば、モーションユニット4のセンサによって検出される)の検出、または所定の閾値を超える信号停止の期間の検出に応じて実行されてもよい。
【0126】
信号処理ユニット16は、通常、受信機の位置を判定するように構成される。ただし、処理信号600は、時間、速度、または周波数などの他のメトリックを判定するために使用できることは理解されるであろう。これらのメトリックは、ナビゲーションまたは追跡アプリケーションで使用される場合がある。
【0127】
上で説明した例では、処理信号600は、受信機と衛星との間のLOS方向に沿った相対的な動きにより受信された信号に導入されたドップラーシフトの値を提供する。ドップラーシフト測定は、搬送波位相の整数の不確定性の影響を受けないため、処理信号に適している。ドップラーシフト処理信号の使用は、本発明の測位システム及び方法が、一般的に比較的劣った位相測定を提供する低コストのアンテナを典型的に使用するスマートフォンなどの消費者向け通信デバイスに実装される場合にも特に好ましい。
【0128】
しかし、モーションユニット4からの推定値と動き補正相関信号からの測定値に基づく処理信号600は、LOS方向に沿った受信機と衛星間の信号の明確な位相の変化の値を提供する可能性があると想定される。例えば、ステップS108及びS110で取得された第1及び第2のデータセットは、受信機と遠隔ソースのLOS方向の相対的な動きによって引き起こされる受信された信号の明確な位相の変化を示す場合がある。したがって、受信された信号の明確な位相の変化の推定または測定は、モーションユニット4から取得したデータと動き補正相関信号から行うことができる。明確な位相変化を示すこれらのデータセットは、次に、受信された信号の明確な位相変化を示す処理信号を生成するために融合され、動き補正相関信号から取得したデータセットよりも高い速度になる。明確な位相変化(つまり、整数の曖昧さを解決したもの)が使用されるのは、動き補正相関信号の相対速度(たとえば1Hz)が、受信機が受信された信号の単一波長の半分だけ位置を変える速度よりも通常は低いためであり、これは、測定の更新の間に受信された信号の多くの波長がパスしている可能性があることを意味する。
【0129】
整数の曖昧さは、解に収束するために、幾何学的方法またはフィルタリング方法などの当技術分野で知られている技術を使用して解決することができる。疑似距離推定とコード位相測定は、整数の曖昧さの解決への収束を助けるために使用される場合がある。
【0130】
別の例では、このような「位相」処理信号は、受信された信号のドップラーシフトを示すステップS108及びS110で導出された第1及び第2のデータセットから単一のステップで生成されてもよい(例えば、ドップラーシフト測定値を積分することによって)。
【0131】
受信された信号の明確な位相シフトを示すこのような処理信号は、例えばRTKまたはPPP処理などの搬送波処理技術を使用して、受信機の位置または動きに関連する関心対象のメトリックを判定するために処理されることがある。代替的に、または追加的に、このような「位相」処理信号は、上述のように、システム内の1つ以上のエラーまたはバイアスを判定し、修正するために使用されてもよい。
【0132】
ただし、明確な位相データを提供するために整数の曖昧さを解決するには計算量が多いため、一般的にはドップラーシフト情報の使用と、受信された信号のドップラーシフトを示す処理信号の生成が推奨される。
【0133】
本例はリアルタイムの運動学的処理に関連して説明されているが、本発明によって生成される処理信号は、関心のあるメトリックを判定するために、他の形式の補正データ、例えば、精密ポイント測位(PPP)または他の形式の搬送波測位補正データと組み合わせて使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位システムで実行される方法であって、
受信機において、少なくとも1つの遠隔ソースから複数の信号を受信すること、
前記複数の信号において少なくとも1つの選択された信号を選択すること、
前記受信機の動きを判定すること、
判定された前記受信機の前記動きに基づいて、前記少なくとも1つの選択された信号から動き補正相関信号を生成すること
前記動き補正相関信号を使用して、前記受信機の位置を判定するために使用される前記少なくとも1つの選択された信号を選択すること、
前記受信機の前記位置を波長以下の精度まで改善するための補正データを受信すること、及び
前記少なくとも1つの選択された信号と前記補正データを使用して、前記受信機の位置を判定すること、を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの選択された信号が、前記受信機と前記少なくとも1つの遠隔ソースの間の直線方向に沿って受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の信号のうち、少なくとも1つの選択された信号ではない受信信号が、前記受信機と前記少なくとも1つの遠隔ソースの間の非直線経路に沿って受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動きは第1の速度で判定され、前記動き補正相関信号は第2の速度で生成され、前記第2の速度は前記第1の速度より低い、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記動き補正相関信号を使用して動きセンサエラーまたはクロックエラーのうち少なくとも1つを修正することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記補正データはリアルタイムキネマティック測位または精密ポイント測位の実行に使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記受信機の前記位置の判定は、前記少なくとも1つの選択された信号の搬送波位相を使用して実行される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
測位システムで実行される方法であって、
受信機において、少なくとも一つの遠隔ソースから複数の信号を受信すること、
前記複数の信号において少なくとも1つの選択された信号を選択すること、
前記受信機の動きを判定すること、
判定された前記受信機の前記動きに基づいて、前記少なくとも1つの選択された信号から動き補正相関信号を生成すること、及び
前記動き補正相関信号を使用して動きセンサエラーまたはクロックエラーのうち少なくとも1つを修正すること、を含む方法。
【請求項9】
前記動き補正相関信号を使用して、前記受信機の位置を判定するために使用される前記少なくとも1つの選択された信号を選択すること、
前記受信機の前記位置を波長以下の精度まで改善するための補正データを受信すること、
前記少なくとも1つの選択された信号と前記補正データを使用して、前記受信機の位置を判定すること、をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの選択された信号が、前記受信機と前記少なくとも1つの遠隔ソースの間の直線方向に沿って受信される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の信号のうち、少なくとも一つの選択された信号ではない受信信号が、前記受信機と前記少なくとも1つの遠隔ソースの間の非直線経路に沿って受信される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記動きは第1の速度で判定され、前記動き補正相関信号は第2の速度で生成され、前記第2の速度は前記第1の速度より低い、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記補正データは、リアルタイムキネマティック測位または精密ポイント測位の実行に使用される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記受信機の前記位置の判定は、前記少なくとも1つの選択された信号の搬送波位相を使用して実行される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
受信機の位置を判定するための測位システムであって、
少なくとも1つの遠隔ソースから複数の信号を受信し、前記受信機の前記位置を波長以下の精度まで改善するための補正データを受信するように構成されたフロントエンドブロックと、
前記受信機の動きを判定するように構成されたモーションユニットと、
判定された前記受信機の前記動きに基づいて、前記複数の信号から複数の動き補正相関信号を生成するように構成された相関ユニットと、
コンピュータ読み取り可能な媒体に格納される指示を実行するように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサに、
前記複数の信号において少なくとも1つの選択された信号を選択すること、
前記受信機の動きを判定すること、
判定された前記受信機の前記動きに基づいて、前記少なくとも1つの選択された信号から動き補正相関信号を生成すること、
前記動き補正相関信号を使用して、前記受信機の位置を判定するために使用される前記少なくとも1つの選択された信号を選択すること、
前記受信機の前記位置を波長以下の精度まで改善するための補正データを受信すること、及び
前記少なくとも1つの選択された信号と前記補正データを使用して、前記受信機の位置を判定すること、を実行させる、測位システム。
【国際調査報告】