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特表2024-5411302つの管状要素の接続品質を評価するための最適化された方法
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  • 特表-2つの管状要素の接続品質を評価するための最適化された方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-07
(54)【発明の名称】2つの管状要素の接続品質を評価するための最適化された方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/24 20060101AFI20241030BHJP
   F16L 15/00 20060101ALI20241030BHJP
   G01M 13/00 20190101ALI20241030BHJP
   E21B 17/042 20060101ALN20241030BHJP
【FI】
G01L5/24
F16L15/00
G01M13/00
E21B17/042
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519032
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 FR2022051739
(87)【国際公開番号】W WO2023052705
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】2110213
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504255249
【氏名又は名称】ヴァルレック オイル アンド ガス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルタン,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ボーデ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ガルディン,フローリアン
【テーマコード(参考)】
2D129
2F051
2G024
3H013
【Fターム(参考)】
2D129AB01
2D129BA11
2D129BA21
2D129CB07
2D129CB15
2D129EA21
2D129EC06
2F051AA06
2F051AC07
2F051BA03
2G024AA21
2G024BA08
2G024BA24
2G024CA12
3H013GA08
(57)【要約】
第1の管状要素(1)および第2の管状要素(2)のねじ部分(3,4)を接続するための方法を提供する。該方法は、締め付けグラフを得るステップを含む。さらに、該方法は、第1のモデルおよび第2のモデルに基づいて、得られた締め付けグラフの合否、ならびに第1の管状要素(1)および第2の管状要素(2)の接続の適合状態または不適合状態をそれぞれ表す接続ステータスの割り当てによって、第1の管状要素(1)および第2の管状要素(2)の接続品質を評価するステップを含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の管状要素(1)の第1のねじ部分(3)と第2の管状要素(2)の第2のねじ部分(4)とを接続するための方法であって、前記第1のねじ部分(3)および前記第2のねじ部分(4)は、接続の最終位置で到達されるトルクに対応する所定の最適なトルク(T)をもち、前記方法は、
前記第1のねじ部分(3)を前記第2のねじ部分(4)に係合させるステップと、
前記第1のねじ部分(3)および前記第2のねじ部分(4)を締め付けるために、前記第2の管状要素(2)に対して前記第1の管状要素(1)を回転させるステップと、
前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転量の関数として、前記最終位置まで前記第1のねじ部分(3)を前記第2のねじ部分(4)に対して締め付けている間に加えられたトルクを示す締め付けグラフを得るステップと、
を含み、
第1のモデルおよび第2のモデルに基づいて、得られた前記締め付けグラフに対する合否によって、ならびに前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続の適合状態または不適合状態を表す接続ステータスの割り当てによって、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価するステップを含み、
前記第1のモデルは、得られた前記締め付けグラフの少なくとも1つの1次数値変数(A)が、少なくとも1つの前記1次数値変数(A)に関連付けられる基準値の範囲外であるときに、前記締め付けグラフを不合格にするように構成され、前記基準値の範囲は、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続の適合状態を表し、
前記第2のモデルは、基準締め付けグラフの基準変数に基づいて機械学習によって駆動されるアルゴリズムに基づいており、前記第2のモデルは、得られた前記締め付けグラフが先に前記第1のモデルによって合格にされたときに、前記基準変数の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価するように構成されることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記1次数値変数(A)は、前記最終位置でのトルク(Tf)、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)のそれぞれのショルダ(9,10)が接触するショルダ位置でのトルク(Ts)、前記ショルダ位置と前記最終位置との間の、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転量(ΔRs-f)、前記ショルダ位置と前記最終位置との間の前記締め付けグラフの傾き、前記第1の管状要素および前記第2の管状要素のそれぞれのシーリング座部(7,8)が接触するシーリング位置でのトルク(Tl)、および/または前記シーリング位置と前記ショルダ位置との間の前記第1の管状要素と前記第2の管状要素との間の相対的な回転量(ΔRl-s)のうちの1つまたは複数の変数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準変数は、前記ショルダ位置と前記最終位置との間の勾配を含み、前記第2のモデルは、得られた前記締め付けグラフの前記ショルダ位置と前記最終位置との間の勾配の変動の関数として、前記第1の管状要素および前記第2の管状要素の接続品質を評価する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準変数は、前記締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値を含み、前記連続する2点は、前記シーリング位置と前記ショルダ位置との間、および/または前記ショルダ位置と前記最終位置との間に位置し、前記第2のモデルは、得られた前記締め付けグラフの前記連続する2点間の最大トルク損失値の標準化された値の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価し、前記標準化された値は、前記最適なトルク(T)に対する前記最大トルク損失値の比に等しい、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記1次数値変数(A)は、前記ショルダ位置と前記最終位置との間の前記締め付けグラフの直線性の損失を含み、前記第1のモデルは、得られた前記締め付けグラフに対して、前記ショルダ位置と前記最終位置との間で得られた前記直線性の損失の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1次数値変数(A)は、前記ショルダ位置と前記最終位置との間に生じるトルク損失中の、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転量を含み、前記第1のモデルは、前記ショルダ位置と前記最終位置との間に生じるトルク損失中の、前記第1の管状要素と前記第2の管状要素との間の相対的な回転量の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記1次数値変数(A)は、係合位置と前記最終位置との間の、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転量を含み、前記係合位置は、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転前の位置であり、前記第1のモデルは、前記係合位置と前記最終位置との間の、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の前記相対的な回転量の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記1次数値変数(A)は、前記シーリング位置の前の最大トルク値を含み、前記第1のモデルは、前記シーリング位置の前に得られた前記締め付けグラフの最大トルク値の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価し、得られた前記締め付けグラフは、前記最大トルク値が前記最適なトルク(T)の10%を上回るときに、前記第1のモデルによって不合格にされる、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1次数値変数(A)は、前記締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値を含み、前記連続する2点は、前記ショルダ位置と前記最終位置との間に位置し、前記第1のモデルは、得られた前記締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記基準締め付けグラフの一部は、専門家の技術的判断による前記接続の適合状態または不適合状態に関連付けられる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基準変数は、1つまたは複数の2次数値変数(B)を含み、前記第2のモデルは、前記1つまたは複数の2次数値変数(B)の関数として、前記第1の管状要素および前記第2の管状要素の接続品質を評価し、前記1つまたは複数の2次数値変数(B)は、それぞれの前記1次数値変数(A)ならびに最小基準値(Amin)および最大基準値(Amax)に基づいて計算され、前記最小基準値(Amin)および最大基準値(Amax)は、前記1次数値変数(A)に関連付けられる基準値の範囲を画定し、前記1つまたは複数の2次数値変数(B)は、次式に従って計算され、
【数7】
ここで、Bは前記2次数値変数、Aは前記1次数値変数、Aminは前記1次数値変数に関連付けられる前記基準値の範囲の下限に等しい前記最小基準値、Amaxは前記1次数値変数に関連付けられる前記基準値の範囲の上限に等しい前記最大基準値を表す、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記基準変数は、1つまたは複数の標準化された変数(C)を含み、前記第2のモデルは、それぞれの前記1次数値変数(A)の関数として計算された前記1つまたは複数の標準化された変数(C)に基づいて、前記第1の管状要素および前記第2の管状要素の接続品質を評価し、前記1次数値変数(A)は、トルクを表し、前記1つまたは複数の標準化された変数(C)は、前記最適なトルク(T)に対する対応する前記1次数値変数(A)の比に等しい、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記基準変数は、前記締め付けグラフの連続する2点間のトルク損失の合計を含み、前記第2のモデルは、得られた前記締め付けグラフの連続する2点間のトルク損失の合計の標準化された値の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価し、前記標準化された値は、前記最適なトルク(T)に対する計算された前記トルク損失の前記合計の比に等しい、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記1次数値変数(A)は、締め付け速度を含み、前記第1のモデルは、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続中の前記締め付け速度の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のモデルは、前記第1のモデルの不合格基準を1つまたは複数含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、管状ねじ要素に関し、より具体的には、第1の管状要素のねじ部分と第2の管状要素のねじ部分とを接続するための方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、第1の管状要素のねじ部分と第2の管状要素のねじ部分との接続の適合性を評価するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石油やガス生産の分野において、坑井の掘削および生産作業を行う洋上施設であれ陸上施設であれ、実施される作業には、掘削用ストリング、あるいは石油またはガス生産用ストリングを形成するために、管状要素を互いに接続し、それらを坑井に降下させることが含まれる。
【0004】
第1の管状要素の一端に配置された雄ねじ部分または雌ねじ部分は、第2の管状要素の相補的なねじ部分に直接接続され得る。
【0005】
別のシナリオにおいて、第1および第2の管状要素は、接合部などの中間管状要素によって間接的に接続され得る。
【0006】
管状要素は、作業条件によって課せられる締め付けおよびシーリングの要件を満たすため、および耐用年数を通じて使用中の組立体の完全性を保証するために、定められた制約のもとで組み立てられる。
【0007】
しかしながら、接続が正しく行われない場合もあり、その結果、ラインにおけるシーリング不良が生じたり、管状要素が損傷したり、早期の分離につながったりすることもある。
【0008】
そのため、締め付けの品質は、管状要素の組立体のシール性と寿命に直接影響する。したがって、締め付けの適合性の合否によって、接続の品質を評価する必要がある。
【0009】
従来、管状要素を接続するためのツールは、締め付け中に加えられるトルクと、第2の管状要素に対する第1の管状要素の回転数とを決定するように構成されたセンサを備える。これらのツールにより、トルクの値の変化を、組み立て中の回転数の関数として示すグラフ(「締め付けグラフ」と呼ぶ)をプロットすることができる。
【0010】
2つの管状要素の接続品質を評価するための解決策として、専門家による締め付けグラフの作製が挙げられる。
【0011】
しかしながら、この人物は、接続が行われるプラットフォーム上に居ることに関連するリスクにさらされる可能性がある。また、その作業者にとって一部の基準が明確でない場合がある。さらに、上記のタイプの評価は、作業者のスキルに依存するので、満足のいく信頼性を得ることができない。
【0012】
2つの管状要素の接続品質を評価する他の既知の方法として、機械学習に基づく自動化されたものが挙げられる。それらは、得られた締め付けグラフの多数のパラメータに依存している。
【0013】
これらのパラメータの値に基づいて、適合状態または不適合状態を表す管状要素の接続ステータスが締め付けグラフに関連付けられる。これにより、要求されている仕様に接続が適合するか適合しないかを定義することができる。
【0014】
しかしながら、満足のいかない評価となる確率は依然として大きい。この確率を低減させる必要がある。不適合状態での接続のなかには、正常に接続されたと誤って判断されるものがあるかもしれず、その逆もまたあり得る。不適切な接続は、安全性や環境に劇的な結果をもたらす可能性がある。形成されたストリングの完全性を向上させるために、管状要素の接続を評価する技術を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そのため、本発明は、上記の欠点を克服することを目的とし、接続の品質を正確且つ確実に評価することができる、管状ねじ要素を接続するための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、第1の管状要素の第1のねじ部分と第2の管状要素の第2のねじ部分とを接続するための方法を提案する。ここで、第1のねじ部分および第2のねじ部分は、接続の最終位置で到達されるトルクに対応する所定の最適なトルクをもつ。この接続方法は、
・ 第1のねじ部分を第2のねじ部分に係合させるステップと、
・ ねじ部分を締め付けるために、第2の管状要素に対して第1の管状要素を回転させるステップと、
・ 第1の管状要素と第2の管状要素との間の相対的な回転量の関数として、例えば、第2の管状要素に対する第1の管状要素の回転数の関数として、最終位置まで第1のねじ部分を第2のねじ部分に対して締め付けている間に加えられたトルクを示す締め付けグラフを得るステップと、
を含む。
【0017】
さらに、該方法は、第1のモデルおよび第2のモデルに基づいて、得られた締め付けグラフに対する合否、ならびに第1の管状要素および第2の管状要素の接続の適合状態または不適合状態をそれぞれ表す接続ステータスの割り当てによって、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価するステップを含む。ここで、第1のモデルは、得られた締め付けグラフの少なくとも1つの1次数値変数が、少なくとも1つの1次数値変数に関連付けられる基準値の範囲外であるときに、締め付けグラフを不合格にするように構成される。この基準値の範囲は、第1の管状要素および第2の管状要素の接続の適合状態を表す。また、第2のモデルは、基準締め付けグラフの基準変数に基づいて機械学習によって駆動されたアルゴリズムに基づいている。この基準締め付けグラフは、例えばデータベースに格納されている。第2のモデルは、得られた締め付けグラフが先に第1のモデルによって合格にされたときに、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を基準変数として評価するように構成される。
【0018】
1次数値変数に基づく第1のモデルにより、グラフの不合格を完全に解釈することができ、不合格の原因を正確に特定することができるようになる。機械学習されたアルゴリズムに基づく第2のモデルは、専門家の技術的判断によって適合または不適合とみなされた締め付け曲線の履歴の要約を提供する。典型的には、第2のモデルは、学習によって定義された数値モデルに基づく決定アルゴリズムであり得る。
【0019】
モデルを駆動することを可能にするために、締め付けグラフと締め付けパラメータを、接続の合否に相関する、基準変数と呼ばれる数値変数のリストに還元する必要がある。したがって、第2のモデルは、厳密に言えば、明示的な基準を使用するのではなく、それぞれがグラフの特性(例えば、曲線下の面積、2点間のトルク差、傾きなど)を表す基準変数を使用する。
【0020】
このように、第1のモデルと第2のモデルとを組み合わせることで、得られた接続の適合性を評価するのに十分な性能を提供することができる。
【0021】
好ましくは、学習は、初期基準グラフの母集団のセグメント化によって実行される。その適合性は、例えば専門家の技術的判断によって決定される。この母集団の最初の部分は、例えばランダムフォレストアルゴリズムなどのアルゴリズムによる学習そのものに使用される。この母集団の別の部分は、このようにして訓練されたアルゴリズムの予測の妥当性を測定するために使用される。このセグメント化は、モデルの性能を統計的に確認するために繰り返し実施され得る。このように、第2のモデルによって、第1のモデルを補完するように、専門家の技術的判断によって過去に不合格にされたグラフのほとんどすべてを、良好な精度で検出することができるようになる。第2のモデルは、第1のモデルによって適用されるようなルールを適用するだけでなく、過去のラベリングを明示的に再現しようとするため、より多くの過去の不合格を検出する。
【0022】
しかしながら、第1のモデルと異なり、第2のモデルの決定は解釈が困難であるため、グラフが不合格となった原因を知ることは困難である。そのため、好ましくは、最初に第1のモデルによって締め付けグラフを評価し、第1のモデルによって得られた締め付けグラフが適合すると分類された場合、次に第2のモデルによって得られた締め付けグラフを評価する。この戦略により、経験的に、検出性能、決定の解釈可能性、およびモデルの堅牢性の間の最適なバランスを提供することができる。
【0023】
有利には、1次数値変数は、最終位置でのトルク、第1の管状要素および第2の管状要素のそれぞれのショルダが接触するショルダ位置でのトルク、ショルダ位置と最終位置との間の、第1の管状要素と第2の管状要素との間の相対的な回転量(例えばショルダ位置と最終位置との間の回転数)、ショルダ位置と最終位置との間のグラフの傾き、第1の管状要素および第2の管状要素のそれぞれのシーリング座部が接触するシーリング位置でのトルク、および/またはシーリング位置とショルダ位置との間の第1の管状要素と第2の管状要素との間の相対的な回転量(例えばシーリング位置とショルダ位置との間の回転数)のうちの1つまたは複数の変数を含む。
【0024】
好ましくは、一部の基準締め付けグラフ(例えば第2のモデルによる学習前のデータベースの基準グラフ)は、専門家の技術的判断による接続の適合状態または不適合状態に関連付けられる。さらに、一部の基準締め付けグラフ(例えば第2のモデルによる学習から得られたデータベースの基準グラフ)は、専門家の技術的判断を用いない学習による接続の適合状態または不適合状態に関連付けられる。
【0025】
一実施形態によれば、基準変数は、1つまたは複数の2次数値変数を含む。第2のモデルは、1つまたは複数の2次数値変数の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価する。1つまたは複数の2次数値変数は、それぞれの1次数値変数ならびに最小基準値および最大基準値に基づいて計算される。最小基準値および最大基準値は、1次数値変数に関連付けられる基準値の範囲を画定する。1つまたは複数の2次数値変数は、次式に従って計算される。
【0026】
【数1】
ここで、Bは2次数値変数、Aは1次数値変数、Aminは1次数値変数に関連付けられる基準値の範囲の下限に等しい最小基準値、Amaxは1次数値変数に関連付けられる基準値の範囲の上限に等しい最大基準値を表す。
【0027】
好ましくは、基準変数は、1つまたは複数の標準化された変数を含む。好ましくは、第2のモデルは、それぞれの1次数値変数の関数として計算された1つまたは複数の標準化された変数に基づいて、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価する。1次数値変数はトルクを表す。1つまたは複数の標準化された変数は、最適なトルクに対する対応する1次数値変数の比に等しい。
【0028】
有利には、基準変数は、グラフの連続する2点間のトルク損失の合計を含む。好ましくは、第2のモデルは、得られた締め付けグラフの連続する2点間のトルク損失の合計の標準化された値の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価することができる。標準化された値は、最適なトルクに対するトルク損失の合計の比に等しい。
【0029】
有利には、基準変数は、ショルダ位置と最終位置との間の勾配を含む。好ましくは、第2のモデルは、得られた締め付けグラフのショルダ位置と最終位置との間の勾配の変動の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価することができる。
【0030】
有利には、基準変数は、グラフの連続する2点間の最大トルク損失値を含む。連続する2点は、シーリング位置とショルダ位置との間、および/またはショルダ位置と最終位置との間に位置する。好ましくは、第2のモデルは、得られた締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値の標準化された値の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価することができる。標準化された値は、最適なトルクに対する最大トルク損失値の比に等しい。
【0031】
有利には、1次数値変数は、締め付け速度を含む。好ましくは、第1のモデルは、第1の管状要素および第2の管状要素の接続中の締め付け速度の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価することができる。
【0032】
一態様によれば、1次数値変数は、ショルダ位置と最終位置との間のグラフの直線性の損失を含む。好ましくは、第1のモデルは、得られた締め付けグラフについて、ショルダ位置と最終位置との間で得られた直線性の損失の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価することができる。
【0033】
有利には、1次数値変数は、グラフの連続する2点間の最大トルク損失値を含む。連続する2点は、ショルダ位置と最終位置との間に位置する。好ましくは、第1のモデルは、得られた締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価することができる。連続する2点は、ショルダ位置と最終位置との間に位置する。
【0034】
有利には、1次数値変数は、ショルダ位置と最終位置との間に生じるトルク損失中の、第1の管状要素と第2の管状要素との間の相対的な回転量を例えば回転数として含む。好ましくは、第1のモデルは、ショルダ位置と最終位置との間に生じるトルク損失中の、第1の管状要素と第2の管状要素との間の相対的な回転量の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価することができる。
【0035】
有利には、1次数値変数は、係合位置と最終位置との間の、第1の管状要素と第2の管状要素との間の相対的な回転量を例えば回転数として含む。係合位置は、第1の管状要素と第2の管状要素との間の相対的な回転前の位置である。好ましくは、第1のモデルは、係合位置と最終位置との間の、第1の管状要素と第2の管状要素との間の相対的な回転量の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価する。
【0036】
有利には、1次数値変数は、シーリング位置の前の最大トルクを含む。好ましくは、第1のモデルは、シーリング位置の前に得られた締め付けグラフの最大トルク値の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価することができる。得られた締め付けグラフは、最大トルク値が最適なトルクの10%を上回るときに、第1のモデルによって不合格にされる。
【0037】
好ましくは、第2のモデルは、第1のモデルの不合格基準を1つまたは複数含む。つまり、基準変数は、1つまたは複数の1次数値変数を含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下、添付の図面を参照した説明により、本発明のさらなる他の目的、利点、および特徴が明確になるであろう。
図1A】締め付け位置にある、接続される第1の管状要素および第2の管状要素の断面図である。
図1B】シーリング位置にある、接続される第1の管状要素および第2の管状要素の断面図である。
図1C】ショルダ位置にある、接続される第1の管状要素および第2の管状要素の断面図である。
図2】第2の管状要素に対する第1の管状要素による回転数の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続中に加えられるトルクを示す締め付けグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1A図1B、および図1Cは、第1の管状要素1と第2の管状要素2との接続における異なるステップを示している。
【0040】
図に示す実施例において、管状要素1は、第2の管状要素2と第3の管状要素(図示せず)を接続するように構成されたスリーブ型接合部である。
【0041】
第1の管状要素1および第2の管状要素2は、有利にはそれらの端部の一方に配置されたねじ部分3および4をそれぞれ備える。ねじ部分3のねじ山5とねじ部分4のねじ山6は、相互作用するように構成される。
【0042】
また、第1の管状要素1は、第1のシーリング座部7を備え、第2の管状要素2は、第2のシーリング座部8を備える。シーリング座部は、管状要素1および2が接続されたときにその組立体をシールするように意図された表面から形成される。
【0043】
さらに、第1の管状要素1は、第1のショルダ9を備え、第2の管状要素2は、第2のショルダ10を備える。ショルダ9および10は、締め付けを止めるための止め部を形成する。
【0044】
シーリング座部7および8、ならびにショルダ9および10は、それぞれ相互作用するように構成される。
【0045】
止め部のない管状要素も存在する。また、シーリング座部のない管状要素も存在する。また、止め部やシーリング座部のない管状要素も存在する。本発明は、これらのタイプの管状要素の接続に部分的に適用するのに適しており、接続開始からシーリング座部間の接触までのグラフ部分、シーリング座部間の接触から接続終了までのグラフ部分、または接続中にシーリング座部との間の接触や止めがないままの接続開始から接続終了までのグラフ部分に適用され得る。
【0046】
2つの管状要素1および2を接続するために、該接続方法は、第1の管状要素1を第2の管状要素2に係合させるステップを含む。より詳細には、該接続方法は、第1のねじ部分3を第2のねじ部分4に係合させるステップを含む。
【0047】
ねじ部分3および4を締め付けるために、第1の管状要素1は、第2の管状要素2に対して回転される。
【0048】
接続に使用されるツールは、締め付けレンチである。この締め付けレンチには、第1の管状要素1および第2の管状要素2を相対的に回転させるためのグリッパおよびモータが設けられる。また、締め付けレンチには、回転数および締め付けトルクを測定するセンサが設けられる。これらのセンサは、電子ユニットに接続される。これにより、トルクおよび回転に関するデータ、ならびに作業中の組み立てに関するデータを格納することができる。この電子ユニットは、処理アルゴリズムを含む処理ユニットに接続される。また、処理ユニットには、接続中に得られた評価結果および/または締め付けグラフを表示するユーザインタフェースが設けられる。
【0049】
したがって、該方法は、第2の管状要素2に対する第1の管状要素1の回転数の関数として、第1の管状要素1の最終位置への締め付け中に加えられたトルクを表す締め付けグラフを構成する点のセットを得るステップを含む。
【0050】
トルク/回転グラフと呼ばれる、締め付け中に加えられたトルクを回転数の関数として表したグラフの一般的なプロファイルを図2に示す。得られたグラフは、傾きが異なる3つの部分を含むことがわかる。
【0051】
第1の部分11は、図1Aに示すように、第1の管状要素1および第2の管状要素2の係合、ならびにねじ部分3および4の締め付けに対応する。ねじ山5および6は徐々に接触して、さらに高いトルクが加えられる。
【0052】
接触点Rlにおいて、第1の管状要素1の第1のシーリング座部7は、第2の管状要素2の第2のシーリング座部8と接触する。その後、図1Bに示すように、管状要素1および2は、シーリング位置と呼ばれる位置にある。
【0053】
シーリング座部7および8が接触することによって生じる大きな摩擦により、傾きが変化し、特に1回転当たりに加わるトルクが増加し、グラフの第2の部分12が得られる。
【0054】
ねじ部分3および4を引き続き締め付けると、第2の管状要素2に対する第1の管状要素1の回転は、ショルダ点Rsに到達する。ここで、管状要素1および2は、図1Cに示すように、ショルダ位置と呼ばれる位置にあり、第1の管状要素1の第1のショルダ9と第2の管状要素2の第2のショルダ10とが接触する。ショルダ9および10のそれぞれの表面間の増大した摩擦は、ねじ山5および6の間の接触、ならびにシーリング座部7および8の間の摩擦から生じる摩擦に加えられ、その結果、傾きが再び変化し、加えられるトルクが著しく増大し、管状要素が最終位置に到達する最終点Rfまで延びるグラフの第3部分13が得られる。
【0055】
本発明において、最終位置とは、最大締め付けトルクが加えられ、接続が完了した際の第1の管状要素1および第2の管状要素2の位置を意味する。
【0056】
締め付けグラフの接触点Rl、ショルダ点Rs、最終点Rf、およびショルダ点Rsと最終点Rfとの間の傾き係数Sは、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続の適合性を決定するために考慮され得る締め付けグラフのパラメータである。これらのパラメータのそれぞれの値は、接続される管状要素のタイプに依存する。
【0057】
傾き係数Sは、ショルダ点でのトルクTs、最終店でのトルクTf、および最適なトルクTに基づいて計算され得る。傾き係数は、ショルダ位置と最終位置との間の傾きを、最適なトルクTで割ったものとして定義される。これは、次式によって表される。
【0058】
【数2】
【0059】
最適なトルクTとは、最終位置で到達される所定のトルクを意味する。これは、管状要素のモデルと、接続される接合部のモデルに固有のものである。
【0060】
該接続方法は、第1および第2の締め付けグラフの不合格モデルに基づいて、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質を評価するステップを含む。
【0061】
第1および第2のモデルは、不合格基準の関数として、得られた締め付けグラフを合格または不合格にする。得られた締め付けグラフが合格にされると、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続の適合状態を表す接続ステータスが、締め付けグラフに割り当てられる。得られた締め付けグラフが不合格にされると、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続の不適合状態を表す接続ステータスが、締め付けグラフに割り当てられる。
【0062】
第1および第2のモデルによる管状要素の接続品質の評価から生じる自動化により、接続の適合性評価中に人的要因を排除することができ、評価の精度を向上させることができる。
【0063】
第1のモデルは、得られた締め付けグラフの少なくとも1つの1次数値変数Aの値が、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続の適合状態を表す基準値の範囲から逸脱しているときに、締め付けグラフを不合格にするように構成される。
【0064】
第1のモデルは、アルゴリズムに頼ることができる。
【0065】
第2のモデルは、機械学習または人工知能によって駆動されるアルゴリズムに基づいている。特に、アルゴリズムは、データベースに格納された基準締め付けグラフの基準変数に基づいて駆動される。
【0066】
第2のモデルのアルゴリズムで考慮される基準変数の各々は、締め付けグラフの特徴を表している。
【0067】
得られた締め付けグラフが先に第1のモデルによって合格にされたときに、第2のモデルは、第1のモデルによる締め付けグラフの合格を確認または否定するために、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質を評価する。
【0068】
つまり、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質の評価は、第1のステップにおいて第1の不合格モデルによって行われ、締め付けグラフが第1のモデルによって先に合格にされたときに、第2のステップにおいて第2のモデルによって行われる。
【0069】
1次数値変数Aは、締め付けグラフの接触点Rl、ショルダ点Rs、最終点Rf、および/またはショルダ点Rsと最終点Rfとの間の傾き係数Sを含むパラメータに基づいて、締め付けグラフで決定され得る。
【0070】
図に示す実施例において、第1のモデルによって考慮される1次数値変数Aは、最終位置でのトルクTf、ショルダ位置でのトルクTs、ショルダ位置と最終位置との間の回転数ΔRs-f、および傾き係数Sを含む。
【0071】
一実施形態によれば、シーリング位置でのトルクTlやシーリング位置とショルダ位置との間の回転数ΔRl-sなど、他の1次数値変数Aを考慮することができる。
【0072】
考慮される1次数値変数Aの各々について、最小基準値Aminおよび最大基準値Amaxによって画定される基準値の範囲が決定される。基準値の範囲は、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続の適合状態を表す。
【0073】
一実施例によれば、最小基準値Aminおよび最大基準値Amaxは、管状要素のタイプと、接続される接合部のモデルごとに、データベースに格納されて基準の第1の管状要素および第2の管状要素の接続の適合状態または不適合状態を表す接続ステータスに関連付けられる基準グラフに基づいて決定され得る。
【0074】
接続に成功した基準グラフは適合状態に関連付けられ、逆に、接続に失敗した基準グラフは不適合状態に関連付けられる。
【0075】
好ましくは、基準締め付けグラフは、データベースに格納される。データベースのこれらの基準グラフは、好ましくは専門家の技術的判断により、接続の適合状態または不適合状態に関連付けられる。接続に成功したと判明すれば、専門家は得られた基準グラフに「適合」ステータスを関連付けて、基準管状要素の接続を合格にすることができる。逆に、接続に失敗したと判明すれば、専門家は得られた基準グラフに「不適合」ステータスを関連付けて、基準管状要素の接続を不合格にすることができる。このようにして、信頼性の高い広範なデータベースを得ることができる。
【0076】
図に示す実施例において、第1のモデルは、最終位置でのトルクTf、ショルダ位置でのトルクTs、ショルダ位置と最終位置との間の回転数ΔRs-f、および傾き係数Sが、それぞれ関連付けられる最小基準値Aminを下回る場合、あるいはそれぞれ関連付けられる最大基準値Amaxを上回る場合に、締め付けグラフを不合格にするように構成される。
【0077】
接続の評価精度を上げるために、第1のモデルに追加の不合格基準を組み込むことができる。
【0078】
有利には、第1のモデルは、締め付け速度の関数として、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質を評価することができる。特にショルダ位置での速度が高すぎると、接続不良を示す可能性がある。
【0079】
好ましくは、締め付けグラフは、締め付け速度が所定のしきい値(例えば毎分5回転)を上回るときに、不合格にされる。
【0080】
一態様によれば、第1のモデルの不合格基準は、ショルダ位置と最終位置との間の直線性の損失の決定に基づくことができる。特に、直線性の損失は、塑性変形および滑りを示す可能性がある。
【0081】
ショルダ点Rsと最終点Rfとの間に、25%指数と75%指数を通る直線をプロットすることにより、直線補間を行うことができる。その後、接続方法の間に得られた締め付けグラフと直線との間の最大距離が計算される。
【0082】
直線性の損失は、直線補間に対するグラフの平均偏差を最適なトルクTで割ることで計算され得る。好ましくは、平均偏差の絶対値は、機械学習によって駆動されるアルゴリズムによって計算される。これにより、直線補間による振動が高い係数をもたらし、決定が容易になる。
【0083】
この直線性の損失によって得られた距離が所定のしきい値を上回るときに、締め付けグラフは不合格にされる。
【0084】
有利には、第1のモデルは、ショルダ位置と最終位置との間で得られた締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値の関数として、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質を評価することができる。
【0085】
特に、最大トルク損失値の決定は、滑りに関連する接続不良の検出に有利であり、一般に、電力ケーブルのノイズの出現を示すことができる。
【0086】
最大トルク損失値とは、締め付けグラフ上で決定された最大のトルク損失を意味する。
【0087】
有利には、第1のモデルの不合格基準は、ショルダ位置と最終位置との間で生じるトルク損失の間に行われた回転数に基づくことができる。
【0088】
短時間のトルク損失は、単にアーチファクトに対応することもある。しかしながら、トルク損失の間に行われた回転数が所定のしきい値を上回る場合、トルク損失は、接続の不適合状態をもたらす不良の発生と解釈することができる。
【0089】
有利には、第1のモデルは、接続の不適合状態を示す短すぎるグラフを不合格にするために、最終位置での回転数Rfの関数として、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質を評価することができる。
【0090】
例えば、締め付けグラフは、最終位置での回転数Rfが所定のしきい値を下回る(例えば1回転に等しい)ときに、不合格にされる。
【0091】
有利には、第1のモデルは、シーリング位置の前の最大トルクの値の関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価する。得られた締め付けグラフは、最大トルク値が最適なトルクTの10%を上回るときに、第1のモデルによって不合格にされる。
【0092】
第1のモデルは、締め付けグラフを不合格にする明確な原因を表す数値基準の組み合わせである。これらの不合格基準の各々は、数値基準およびこの数値基準における最小しきい値または最大しきい値に基づいて計算される。この第1のモデルは、適応性があり、2つの管状要素1、2の接続中に発生する最も頻繁な問題に対応する不合格シナリオを特定することができる。また、不合格の原因やしきい値を超えるレベルも特定することができ、完全に解釈可能である。
【0093】
好ましくは、第1のモデルが締め付けグラフを不合格にするときに、不適合状態を表すステータスの割り当てが基づいている不合格基準を表示して、作業者に明確な原因を通知する。
【0094】
また、好ましくは、第2のモデルは、1つまたは複数の2次数値変数Bの関数として、第1の管状要素および第2の管状要素の接続品質を評価することができる。2次数値変数Bの各々は、1次数値変数A、ならびに次式に従って基準値の範囲を画定する最小基準値Aminおよび最大基準値Amaxに基づいて計算される。
【0095】
【数3】
ここで、Bは2次数値変数、Aは1次数値変数、Aminは1次数値変数の最小基準値、Amaxは1次数値変数の最大基準値を表す。
【0096】
計算された2次数値変数Bにより、最小基準値Aminおよび最大基準値Amaxによって画定された基準値の範囲に対する1次数値変数Aの偏差を、より容易に且つより高い感度で測定することができる。計算された2次数値変数Bが0を下回るか1を上回る場合、これは、1次数値変数Aが基準値の範囲内に含まれていないことを意味する。アルゴリズムは、締め付けグラフを不合格にし、これは、接続の不適合状態に関連付けられる。
【0097】
その結果、様々な接合部モデルにおいて、よりきめ細かく、より信頼性の高い締め付け品質に関する識別が可能になる。
【0098】
図に示す実施例において、2次数値変数Bは、最終位置でのトルクTf、ショルダ位置でのトルクTs、ショルダ位置と最終位置との間の回転数ΔRs-f、および傾き係数Sに基づいて計算される。
【0099】
例えば、最終的なトルクに関連する2次数値変数Bfは、次式に従って計算される。
【0100】
【数4】
ここで、Bfは最終的なトルクに関連する2次数値変数、Tfは最終的なトルク、Tfminは最終的なトルクの最小基準値、Tfmaxは最終的なトルクの最大基準値を表す。
【0101】
好ましくは、第2のモデルは、1つまたは複数の標準化された変数Cに基づいて、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質を評価することができる。標準化された変数Cは、トルクを表す1次数値変数Aの関数として計算される。標準化された変数は、最適なトルクTに対する1次数値変数Aの比に等しい。これは、次式によって定義される。
【0102】
【数5】
ここで、Cは標準化された変数、Aは1次数値変数、Tは最適なトルクを表す。
【0103】
例えば、最終的なトルクに関連する標準化された変数は、次式に従って計算される。
【0104】
【数6】
ここで、Cfは最終的なトルクに関連する標準化された変数、Tfは最終的なトルク、Tは最適なトルクを表す。
【0105】
図に示す実施例において、標準化された変数Cは、最終位置でのトルクTf、ショルダ位置でのトルクTs、シーリング位置でのトルクTl、シーリング位置とショルダ位置との間のデルタトルクΔTl-sおよびショルダ位置と最終位置との間のデルタトルクΔTs-fに基づいて計算される。
【0106】
シーリング位置とショルダ位置との間のデルタトルクΔTl-sは、シーリング位置とショルダ位置との間で測定されたトルク値の差に対応している。
【0107】
好ましくは、第2のモデルは、得られた締め付けグラフの連続する2点間のトルク損失の合計の関数として、締め付けグラフを不合格にすることができる。これにより、特にねじ山の干渉を検出することができる。これに関連して、標準化された値は、計算されたトルク損失の合計を所定の最適なトルクTで割ることで計算および定義される。
【0108】
有利には、第2のモデルは、得られた締め付けグラフのショルダ位置の後の勾配の変動の関数として、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質を評価することができる。
【0109】
勾配の変動は、得られた締め付けグラフのショルダ位置と最終位置との間の傾きによって定義されたリストからの偏差を最適なトルクTで割ったものに等しい。
【0110】
有利には、第2のモデルは、シーリング位置とショルダ位置との間、および/またはショルダ位置と最終位置との間で得られた締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値として、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質を評価することができる。
【0111】
さらに有利には、最大トルク損失に基づく不合格基準は、最適なトルクTに対する最大トルク損失値の比に等しい標準化された値に基づいて評価され得る。
【0112】
また、最大トルク損失に基づく不合格基準は、ショルダトルクTsに対する最大トルク損失値の比に等しい標準化された値に基づいて評価され得る。
【0113】
さらに、第2のモデルは、シーリング位置の前、および/またはシーリング位置とショルダ位置との間の最大トルク値の関数として、第1の管状要素1および第2の管状要素2の接続品質を評価することができる。締め付けグラフは、最大トルク値が最適なトルクTの10%を上回るときに、第2のモデルによって不合格にされる。
【0114】
好ましくは、標準化された値は、最大トルクをショルダトルクTsで割った値で定義される。高い値は接合部の問題を示すことができる。
【0115】
さらに、第2のモデルの不合格基準は、グラフとX軸との間に定義される面積の値、すなわち直近の2回転分の回転数を最適なトルクTで割った値に基づくことができる。これにより、特に、接触点Rlまたはショルダ点Rsをもたない締め付けグラフを不合格にすることができる。
【0116】
第2のモデルは、機械学習の駆動によるアルゴリズムに基づいている。モデルを駆動するために、締め付けグラフと締め付けパラメータは、締め付けの合否に相関する基準変数のリストに還元される。基準変数の各々は、締め付けグラフの特徴を表している。
【0117】
好ましくは、性能の観点から、第2のモデルは、第1のモデルの不合格基準を1つまたは複数含む。グラフを記述する変数の数を増大させることで、アルゴリズムによるグラフの分類が容易になる。その後、学習が基準締め付けグラフのデータベース上で実施される。
【0118】
第1の管状要素1および第2の管状要素2を接続する方法は、それに特有の不合格基準の関数として接続品質を評価した後、第2のモデルによってスコアを確立するステップを含むことができる。
【0119】
例えば、第2のモデルのスコアが所定のしきい値を上回るときに、締め付けグラフは不合格にされる。逆に、スコアがしきい値を下回るときに、締め付けグラフは合格にされる。
【0120】
この第2の機械学習モデルによって、第1のモデルによって不合格にされた締め付けグラフのほとんどすべてを、非常に高い精度で検出することができるようになる。
【0121】
第1のモデルと第2のモデルは相補的であり、それぞれ約70%と99%の不合格シナリオを検出することができる。2つの管状要素の接続品質を評価するこの戦略により、経験的に、検出性能、決定の解釈可能性、およびモデル全体の堅牢性の間で最適なバランスを提供することができる。
【0122】
これらの組み合わせにより、人手を介さずに、不適合接続のほとんどすべてを自動化された方法で検出することができる。
図1A
図1B
図1C
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の管状要素(1)の第1のねじ部分(3)と第2の管状要素(2)の第2のねじ部分(4)とを接続するための方法であって、前記第1のねじ部分(3)および前記第2のねじ部分(4)は、接続の最終位置で到達されるトルクに対応する所定の最適なトルク(T)をもち、前記方法は、
前記第1のねじ部分(3)を前記第2のねじ部分(4)に係合させるステップと、
前記第1のねじ部分(3)および前記第2のねじ部分(4)を締め付けるために、前記第2の管状要素(2)に対して前記第1の管状要素(1)を回転させるステップと、
前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転量の関数として、前記最終位置まで前記第1のねじ部分(3)を前記第2のねじ部分(4)に対して締め付けている間に加えられたトルクを示す締め付けグラフを得るステップと、
を含み、
第1のモデルおよび第2のモデルに基づいて、得られた前記締め付けグラフに対する合否によって、ならびに前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続の適合状態または不適合状態を表す接続ステータスの割り当てによって、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価するステップを含み、
前記第1のモデルは、得られた前記締め付けグラフの少なくとも1つの1次数値変数(A)が、少なくとも1つの前記1次数値変数(A)に関連付けられる基準値の範囲外であるときに、前記締め付けグラフを不合格にするように構成され、前記基準値の範囲は、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続の適合状態を表し、
前記第2のモデルは、基準締め付けグラフの基準変数に基づいて機械学習によって駆動されるアルゴリズムに基づいており、前記第2のモデルは、得られた前記締め付けグラフが先に前記第1のモデルによって合格にされたときに、前記基準変数の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価するように構成されることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記1次数値変数(A)は、前記最終位置でのトルク(Tf)、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)のそれぞれのショルダ(9,10)が接触するショルダ位置でのトルク(Ts)、前記ショルダ位置と前記最終位置との間の、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転量(ΔRs-f)、前記ショルダ位置と前記最終位置との間の前記締め付けグラフの傾き、前記第1の管状要素および前記第2の管状要素のそれぞれのシーリング座部(7,8)が接触するシーリング位置でのトルク(Tl)、および/または前記シーリング位置と前記ショルダ位置との間の前記第1の管状要素と前記第2の管状要素との間の相対的な回転量(ΔRl-s)のうちの1つまたは複数の変数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準変数は、前記ショルダ位置と前記最終位置との間の勾配を含み、前記第2のモデルは、得られた前記締め付けグラフの前記ショルダ位置と前記最終位置との間の勾配の変動の関数として、前記第1の管状要素および前記第2の管状要素の接続品質を評価する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準変数は、前記締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値を含み、前記連続する2点は、前記シーリング位置と前記ショルダ位置との間、および/または前記ショルダ位置と前記最終位置との間に位置し、前記第2のモデルは、得られた前記締め付けグラフの前記連続する2点間の最大トルク損失値の標準化された値の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価し、前記標準化された値は、前記最適なトルク(T)に対する前記最大トルク損失値の比に等しい、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記1次数値変数(A)は、前記ショルダ位置と前記最終位置との間の前記締め付けグラフの直線性の損失を含み、前記第1のモデルは、得られた前記締め付けグラフに対して、前記ショルダ位置と前記最終位置との間で得られた前記直線性の損失の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記1次数値変数(A)は、前記ショルダ位置と前記最終位置との間に生じるトルク損失中の、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転量を含み、前記第1のモデルは、前記ショルダ位置と前記最終位置との間に生じるトルク損失中の、前記第1の管状要素と前記第2の管状要素との間の相対的な回転量の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記1次数値変数(A)は、係合位置と前記最終位置との間の、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転量を含み、前記係合位置は、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の相対的な回転前の位置であり、前記第1のモデルは、前記係合位置と前記最終位置との間の、前記第1の管状要素(1)と前記第2の管状要素(2)との間の前記相対的な回転量の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記1次数値変数(A)は、前記シーリング位置の前の最大トルク値を含み、前記第1のモデルは、前記シーリング位置の前に得られた前記締め付けグラフの最大トルク値の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価し、得られた前記締め付けグラフは、前記最大トルク値が前記最適なトルク(T)の10%を上回るときに、前記第1のモデルによって不合格にされる、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記1次数値変数(A)は、前記締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値を含み、前記連続する2点は、前記ショルダ位置と前記最終位置との間に位置し、前記第1のモデルは、得られた前記締め付けグラフの連続する2点間の最大トルク損失値の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基準締め付けグラフの一部は、専門家の技術的判断による前記接続の適合状態または不適合状態に関連付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基準変数は、1つまたは複数の2次数値変数(B)を含み、前記第2のモデルは、前記1つまたは複数の2次数値変数(B)の関数として、前記第1の管状要素および前記第2の管状要素の接続品質を評価し、前記1つまたは複数の2次数値変数(B)は、それぞれの前記1次数値変数(A)ならびに最小基準値(Amin)および最大基準値(Amax)に基づいて計算され、前記最小基準値(Amin)および最大基準値(Amax)は、前記1次数値変数(A)に関連付けられる基準値の範囲を画定し、前記1つまたは複数の2次数値変数(B)は、次式に従って計算され、
【数7】
ここで、Bは前記2次数値変数、Aは前記1次数値変数、Aminは前記1次数値変数に関連付けられる前記基準値の範囲の下限に等しい前記最小基準値、Amaxは前記1次数値変数に関連付けられる前記基準値の範囲の上限に等しい前記最大基準値を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記基準変数は、1つまたは複数の標準化された変数(C)を含み、前記第2のモデルは、それぞれの前記1次数値変数(A)の関数として計算された前記1つまたは複数の標準化された変数(C)に基づいて、前記第1の管状要素および前記第2の管状要素の接続品質を評価し、前記1次数値変数(A)は、トルクを表し、前記1つまたは複数の標準化された変数(C)は、前記最適なトルク(T)に対する対応する前記1次数値変数(A)の比に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基準変数は、前記締め付けグラフの連続する2点間のトルク損失の合計を含み、前記第2のモデルは、得られた前記締め付けグラフの連続する2点間のトルク損失の合計の標準化された値の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価し、前記標準化された値は、前記最適なトルク(T)に対する計算された前記トルク損失の前記合計の比に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1次数値変数(A)は、締め付け速度を含み、前記第1のモデルは、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続中の前記締め付け速度の関数として、前記第1の管状要素(1)および前記第2の管状要素(2)の接続品質を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のモデルは、前記第1のモデルの不合格基準を1つまたは複数含む、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】