(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-07
(54)【発明の名称】発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム、およびその作動方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241030BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20241030BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20241030BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20241030BHJP
H01M 8/2484 20160101ALI20241030BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20241030BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20241030BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241030BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20241030BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20241030BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
H01M8/04007
H01M8/0606
H01M8/2484
H01M8/2475
H01M8/04701
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/04302
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530432
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2022015091
(87)【国際公開番号】W WO2023096145
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0163903
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524192247
【氏名又は名称】ウォンイク マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リ,キョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ソク ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン レ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ビョン オク
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA26
5H126AA28
5H126BB06
5H126EE13
5H126FF10
5H127AA07
5H127AB03
5H127AC04
5H127BA01
5H127BA02
5H127BA12
5H127BA13
5H127BA48
5H127BB02
5H127BB28
5H127CC17
5H127DA01
5H127DB47
5H127DC55
5H127EE29
5H127EE30
(57)【要約】
本発明は、アンモニアを適用したSOFCシステムに関し、より詳細には、移動性を備えながらも、COxフリーおよびNOxフリーの環境に優しいシステムとしての発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム、およびその作動方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱ボックスモジュール(a);およびBOPモジュール(b);を含む発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムであって、
前記断熱ボックスモジュール(a)は、発電に関連した部分として燃料電池スタック(9)、上部マニホールダー(10)、下部マニホールダー(8)、発熱体(11)、前記発熱体(11)の電気供給のための発熱体用導線(12)を含むことを特徴とする、発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項2】
前記BOP(Balnce of plant)モジュール(b)は、発電装置を除いてエネルギーを伝達するような発電に必要な支援的構成要素および補助システムに関する部分として不活性気体供給装置(1)、アンモニア供給装置(2)、冷却水供給装置(3)、スタック用空気供給装置(4)、排出温水処理装置(5)、熱交換器6-2~6-6(6)、集電装置(13)、発熱体コントローラー(14)、およびインバーター(15)を含むことを特徴とする請求項1に記載の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項3】
前記発熱体は、断熱ボックスモジュール(a)の内部に位置するスタックおよび下部マニホールダーに熱を供給するための装置であり、前記スタックの3側面および下部マニホールダーの下部に位置し、
前記スタックの3側面は、前記スタックを囲む4面のうちスタックがBOPモジュールに対向する面である正面を除いたスタックの残りの3面の両側面および後面であることを特徴とする請求項1に記載の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項4】
前記下部マニホールダーは、燃料供給ライン、および空気供給ラインを含み、前記燃料供給ラインの内部に充填されたアンモニア分解触媒により供給されるアンモニアが水素および窒素に分解されることを特徴とする請求項1に記載の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項5】
前記触媒は、卑金属および貴金属を含む触媒であることを特徴とする請求項4に記載の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項6】
前記断熱ボックスモジュール(a)とBOP(Balance of Plant)モジュール(b)が配管と電線で連結されていて、メンテナンス時にそれぞれのモジュールを分離して行うことができることを特徴とする請求項1に記載の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項7】
発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法であって、
前記作動方法は、アンモニア供給による電力発生を目的として、下記の
i)発熱体熱源の熱が燃料電池スタックの全体に循環するようにして、燃料電池スタックを作動開始温度まで昇温する第1段階;を含み、
前記第1段階は、燃料電池スタック内部と燃料供給ラインのパージ、および燃料電池スタック内部と燃料供給および空気供給ラインの昇温を含み、
前記燃料電池スタック内部と燃料供給ラインのパージは、下部マニホールダーの燃料供給ラインに不活性ガスを供給し、燃料電池スタック内部と燃料供給ラインに存在する残留酸素および/または不純物などを除去することであり、
前記燃料電池スタック内部と燃料供給および空気供給ラインの昇温は、下部マニホールダーの下部およびスタックの3側面に位置する発熱体の熱源が、
1)スタックに作用して、スタックをスタックの作動開始温度まで昇温させ、
2)下部マニホールダーに作用して、下部マニホールダーの空気供給ラインおよび燃料供給ラインにそれぞれ流れる空気および不活性ガスの温度を昇温させることであり、
前記パージおよび昇温によって前記発熱体熱源の熱が燃料電池スタックの全体に循環するようにして、燃料電池スタックを作動開始温度まで昇温することを特徴とする、発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法。
【請求項8】
前記スタックの作動開始温度は、600℃以上であり、
前記発熱体の熱源が位置するスタックの3側面は、スタックを囲む4面のうちスタックがBOPモジュールに対向する面である正面を除いたスタックの残りの3面の両側面および後面であることを特徴とする請求項7に記載の発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法。
【請求項9】
前記作動方法は、アンモニア供給による電力発生を目的として、下記の
ii)前記第1段階後、下部マニホールダーの燃料供給ラインにアンモニアを供給し、電力生産をする第2段階;をさらに含み、
前記第2段階では、前記スタックは、連続的な作動による電力生産時に発生する電気化学反応による発熱によって前記発熱体の熱源がなくともスタックの連続的正常作動温度700℃~750℃に到達すると、前記第1段階の発熱体に集電装置(13)から印加される電力(熱)を徐々に調節することで、スタックの温度が700℃~750℃に維持されるように制御することを特徴とする請求項7に記載の発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法。
【請求項10】
前記第2段階で、アンモニア供給で燃料供給ラインの内部ではアンモニア分解反応の改質を行うことを特徴とする請求項7に記載の発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを適用したSOFCシステムに関し、より詳細には、移動性を備えながらも、COxフリーの環境に優しいシステムとしての発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム、およびその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、地球温暖化を引き起こす温室ガスの排出を抑制するために、風力、太陽光などの再生エネルギーの活用に対する関心が高まっている。しかしながら、再生エネルギーは、活用地域が限定されていて、太陽光などのエネルギー効率の高い地域で電力を生産した後、これを用いて水素やアンモニアを生産し、これらの水素またはアンモニアを水素エネルギー源として輸送するシステムの形で開発が行われている傾向にある。
【0003】
特に、アンモニアは、水素と窒素で構成された化合物であり、炭化水素系の燃料を使用したときよりも、炭素系の公害ガスが発生しない長所がある。しかしながら、アンモニアは、さらに水素エネルギーに活用するためには、高温の環境で水素を分離する改質器に通過させなければならない。前記改質器は、多数のセルを積層したスタックの燃料電池とは別に設置され、アンモニアから水素を発生させる装置であり、このような反応器は、通常、外部に固定されており、発生した水素は、管を介して燃料電池に供給され、前記改質器の作動には、分解反応開始温度まで熱源を供給するために、炭素が含まれたLNGやLPG系の燃料が主に使用される(特許文献1)。
【0004】
また、アンモニアを燃料とする高温型燃料電池システム(SOFC)では、アンモニアガスのみの発火による初期昇温が難しい。したがって、約650℃以上の高温のSOFC初期作動のために、炭素が含まれたLNGやLPG系の燃料を用いて昇温している。
【0005】
このように前記アンモニアを燃料とする高温型燃料電池システム(SOFC)の作動のためには、通常、環境物質であるCOxおよびNOxの発生が必須である。しかしながら、現在気候問題と関連してエネルギー関連産業でCOxフリーおよびNOxフリーの環境への優しさが求められている。このような燃料電池の全システムをCOxフリーおよびNOxフリーの環境への優しさに適用するためには、改質器および燃料電池にCOxおよびNOx除去装置をさらに設置しなければならない。
【0006】
なお、アンモニアを燃料に適用するSOFCは、固定された位置だけでなく、その適用分野、例えば、分散発電などの小型発電が必要な場合には、移動性が重要な鍵でありうる。
【0007】
したがって、アンモニアを燃料とする高温型SOFCシステムの使用拡大のためには、COxフリーおよびNOxフリーの環境への優しさがあり、水素を適切に容易に供給することができ、システムの移動性をも具備したアンモニアを燃料とする高温型SOFCシステムの開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第10-2159237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高温型燃料電池であるアンモニア燃料を適用した分散発電などの小型発電用SOFCシステムの初期作動に必要な熱をCOxやNOxなどの公害物質の排出なしで環境に優しく前記SOFCシステムに供給することができ、また、前記SOFCシステムの燃料電池に一体型でアンモニア改質が可能で、移動性が容易な発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム、およびその作動方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために、本発明の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムは、断熱ボックスモジュール(a);およびBOPモジュール(b);を含む。
【0011】
前記断熱ボックスモジュール(a)は、発電に関連した部分として燃料電池スタック(9)、上部マニホールダー(10)、下部マニホールダー(8)、発熱体(11)、前記発熱体(12)の電気供給のための発熱体用導線(12-1)などを含み、前記構成(8)~(11)は、断熱ボックスモジュールの内部に位置し、発熱体用導線(12-1)は、断熱ボックスモジュールの外部に位置する。
【0012】
前記BOP(Balnce of plant)モジュール(b)は、発電装置を除いてエネルギーを伝達するなどの発電に必要な支援的構成要素および補助システムに関する部分として、不活性気体供給装置(1)、アンモニア供給装置(2)、冷却水供給装置(3)、スタック用空気供給装置(4)、排出温水処理装置(5)、熱交換器6-2~6-6(6)、集電装置(13)、発熱体コントローラー(14)、インバーター(15)などを含む。
【0013】
前記本発明の断熱ボックスモジュール(a);およびBOPモジュール(b);を含む発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法は、下記2段階の作動段階を含むことを特徴とする。
【0014】
i)発熱体熱源の熱が燃料電池スタックの全体に循環するようにして、燃料電池スタックを作動開始温度まで昇温する第1段階;および
ii)前記第1段階後、下部マニホールダーの燃料供給ラインにアンモニアを供給し、電力生産、すなわち電流を印加する第2段階。
【0015】
前記第1段階は、燃料電池スタック内部および燃料供給ラインのパージ、および燃料電池スタック内部および燃料供給と空気供給ラインの昇温段階である。
【0016】
前記第1段階は、具体的には、燃料電池スタック内部と燃料供給ラインのパージのためには、下部マニホールダーの燃料供給ラインに不活性ガスを供給し、燃料電池スタック内部と燃料供給ラインに存在する残留酸素および/または不純物などを除去する。前記残留酸素および不純物などは、燃料としてのアンモニアと反応できるものであり、アンモニアによる電力生産効率を減少させる原因となり得る。
【0017】
また、前記燃料電池スタック内部および燃料供給と空気供給ラインの昇温のためには、下部マニホールダーの下部およびスタックの3側面に位置する発熱体の熱源が、1)スタックに作用して、スタックが作動開始温度まで昇温するようにし、2)下部マニホールダーに作用して、下部マニホールダーの空気供給ラインおよび燃料供給ラインにそれぞれ流れる空気および不活性ガスの温度を昇温させ、そのため、発熱体熱源の熱が燃料電池スタックの全体に循環するようにして、燃料電池スタックを作動開始温度まで昇温する段階である。
【0018】
前記発熱体の熱源は、集電装置(13)から印加される電力であり、スタックおよび下部マニホールダーに作用する熱源の程度は、発熱体コントローラー(14)を用いて調節する。
【0019】
前記スタックの作動開始温度は、約600℃以上であり、好ましくは、650℃~700℃である。
【0020】
前記発熱体の熱源が位置するスタックの3側面は、スタックを囲む4面のうち、スタックがBOPモジュールに対向する面である正面を除いたスタックの残りの3面である両側面および後面を意味する。
【0021】
前記第2段階は、電力を生産する段階であり、前記第1段階で下部マニホールダーの燃料供給ラインに供給された不活性気体の供給が中断され、アンモニアが供給され、前記第1段階の昇温によってスタックの作動が始まって、電力が生産される。
【0022】
前記スタックが作動し始めた後、スタックは、連続的な作動による電力生産時に発生する電気化学反応による発熱によって前記発熱体の熱源がなくともスタックの連続的正常作動温度700℃~750℃に到達することができる。このようにスタックの連続的正常作動温度に到達すると、前記第1段階の発熱体に集電装置(13)から印加される電力を徐々に調節することで、スタックの温度が700℃~750℃に維持されるように制御する。
【0023】
なお、下部マニホールダーの燃料供給ラインの内部には、アンモニア改質用触媒を充填し、前記第1段階での燃料供給ラインの昇温後、前記第2段階でのアンモニア供給時に燃料供給ラインの内部でアンモニア改質を行う。
【発明の効果】
【0024】
本発明の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムは、下部マニホールダーの燃料供給ラインの内部にアンモニア改質のための触媒を充填させることによって、別途の改質器を必要としないスタック-改質器一体型で構成され、従来技術のような改質器を別に必要とするシステムに比べて、高価設備の改質器が不要で、経済的に大きな効果を有する。
【0025】
また、上記のようなスタック-改質器一体型の構成で分散発電用などの小規模電力生産時に、移動性に有利であるという長所がある。
【0026】
また、本発明のアンモニアSOFCシステムは、電力による発熱体の使用によりCOxフリーおよびNOxフリーシステムであり、環境に優しいという長所がある。
【0027】
特に、本発明のアンモニアSOFCシステムは、別途の改質器や、スタックの初期作動温度までの昇温のための別途のバーナーなどが不要で、システムモジュールを最大限コンパクトに構成することができ、これによって、エネルギー損失が少なくて、SOFCシステムの全エネルギー効率を上げる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第1段階である燃料供給および空気供給ラインそれぞれの発熱体昇温段階のアンモニアSOFCシステムのアンモニア燃料、および空気の流れを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2段階である作動段階のアンモニアSOFCシステムにおけるアンモニア燃料、および空気の流れを模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の発熱体で昇温する高温型燃料電池システムの構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の高温型燃料電池スタックの構造を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の高温型燃料電池スタックの下部マニホールダー構造および下部マニホールダーにおける燃料供給および空気供給を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の断熱ボックスモジュール(a)の内部に燃料電池を配置および離脱させることを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳細に説明する。ここで、本明細書および請求範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的意味に限定して解すべきものではなく、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味や概念と解すべきである。
【0030】
本発明は、高温型燃料電池であるアンモニア燃料を適用した分散発電用の小型SOFCシステムの初期作動に必要な熱を前記SOFCシステムに供給し、燃料電池のスタックと一体型でアンモニア改質が可能な改質器構成を具備することで、移動性を容易にした発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムを提供する。
【0031】
前記発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムは、断熱ボックスモジュール(a);およびBOPモジュール(b);を含む(
図3参照)。
【0032】
前記断熱ボックスモジュール(a)は、発電に関連した部分として燃料電池スタック(1)、上部マニホールダー(10)、下部マニホールダー(8)、発熱体(11)、発熱体の電気供給のための発熱体用導線(12)などを含み、前記構成(8)~(11)は、断熱ボックスモジュール(a)の内部に位置し、発熱体用導線(12)は、断熱ボックスモジュール(a)の外部に位置する。
【0033】
前記燃料電池スタック(1)は、アンモニア燃料の水素、および空気の酸素による電気化学反応で電力を生産する装置である。通常、前記スタックは、金属/セラミック素材の電極と電解質で構成されたセルが多層で積層された形態でセル面積および積層数によって小型(分散発電用)の電力を生産するスタックが使用できる。
【0034】
前記上部マニホールダー(10)は、燃料電池スタックの通常の構成であり、下部マニホールダーからセルに供給される燃料、および空気中でセルで依然として未反応の燃料をさらにセルに循環させる役割をする。
【0035】
前記下部マニホールダー(8)は、前記スタック(9)の電気化学反応のための燃料、および空気を供給する所である。前記燃料、および空気の供給は、それぞれ、燃料供給ライン、および空気供給ラインを介して行われる(
図5参照)。
【0036】
前記空気供給ラインおよび燃料供給ラインは、それぞれ、下部マニホールダーの上層部および下層部に位置していてもよい。
【0037】
前記燃料としてアンモニアが供給される燃料供給ラインの内部には、燃料としてのアンモニアを分解して水素を生成させる触媒が充填される。
【0038】
前記アンモニアが供給される燃料供給ラインは、下部マニホールダーの下層部に位置し、下部マニホールダーの下部に位置する発熱体の熱源によって約600℃以上で加熱され、このような燃料供給ラインの昇温で燃料供給ラインの内部に充填されたアンモニア分解触媒によって燃料供給ラインに供給される燃料としてのアンモニアが分解され、水素を生成させる(アンモニアの水素化改質反応)。前記生成された水素は、スタックに供給され、空気供給ラインから供給された空気の酸素と電気化学反応が行われ、スタックから電力が生成される。
【0039】
前記燃料供給ラインは、気化器と下部マニホールダーが配管で連結されている形態で構成されてもよい(
図3、
図4参照)
【0040】
また、高温でのスタック作動で発生した高温の排ガス(燃料および空気)は、スタックの下部マニホールダーを介して移動する(
図2参照)。したがって、前記高温の排ガスによる下部マニホールダーに含まれた熱は、BOPモジュールから下部マニホールダーに供給される燃料、および空気を昇温させることによって、それ自体が熱交換器(6-1)として作用する。
【0041】
すなわち、前記下部マニホールダー自体である熱交換器(6-1)は、BOPモジュールの熱交換器(6-2~6-6)と連結され、スタックで作動後に発生する高温の排ガスをBOP部に循環させて燃料および空気に伝達させることによって、全システムの効率性を最大化させることができる。
【0042】
前記高温の排ガスが循環するBOP部の空気ブロワー、燃料タンクおよび全長側と熱交換器6-2~6-6の間は、断熱材で熱を遮断し、必要に応じてクーリングファンをさらに設置することができる。
【0043】
また、スタックの作動後には、前記アンモニアの水素化改質反応のための熱源として前記のような下部マニホールダーに含まれた熱が外部発熱体の熱源に加えられたり、外部発熱体の熱源なしで使用できるので、全システムの効率性をさらに最大化させることができる。
【0044】
前記アンモニアの水素化改質反応の分解触媒は、通常の卑金属および貴金属を含む触媒であれば、いずれも使用が可能である。特に前記触媒は、触媒活性を有するAl、Mo、Ni、Ru、Ceなどを含む金属および金属酸化物のうちいずれか一つ以上の物質を含んでもよい。前記触媒は、常温~800℃の温度で作用する触媒であり、触媒の組成や種類のような触媒の特徴、および使用量などは、必要なアンモニア転換率に応じて決定することができる。
【0045】
前記発熱体(11)は、スタックおよび下部マニホールダーに熱を供給するための装置である。前記発熱体は、スタックの周り4面のうちBOPモジュールに対向する面(正面)を除いた両側面および裏面(正面の反対面)に位置し、スタックにスタックの初期作動温度まで昇温させるために熱を供給する。また、下部マニホールダーの下部、すなわち燃料供給ラインが位置する下部マニホールダー下部層の下部に位置し、燃料供給ラインに熱を供給し、この供給された熱によって燃料供給ラインの内部に充填されたアンモニア分解触媒でアンモニアを分解し、水素を生成する。
【0046】
上記のように燃料供給ラインは、触媒によるアンモニアの分解作用が行われるアンモニア改質器としての作用をする。
【0047】
前記のような燃料供給ラインの改質器作用の役割によって本発明の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムは、従来技術のような高価な複雑かつ巨大な別途の改質器が不要で、システム設備が経済的ながらも、また、移動性が容易であるという長所がある。
【0048】
前記発熱体の電気供給のための発熱体用導線(12)は、前記発熱体の熱の発生のための電気を供給する導線であり、前記導線は、下記のBOPモジュールの集電装置(13)と連結されて電気が供給され、供給される電気の量は、発熱体コントローラーの設定で調節することができる。前記発熱体コントローラー(14)は、必要な場所に設置することができる。
【0049】
具体的には、前記断熱ボックスモジュール(a)の断熱ボックスは、断熱材パネルの内部に直方体形態のスタック、上部マニホールダー、下部マニホールダー、および発熱体が含まれている構造であり、断熱ボックスの上部および全長側の前面部は、開閉可能に構成されており、この開閉を通じて断熱ボックスの内部にスタック、上部マニホールダー、および下部マニホールダーの燃料電池の出入りが可能である(
図6参照)。
【0050】
前記直方体断熱材パネル4面の壁面のうちでBOPモジュールとの連結配管がある面(全長側の面)を除いた3面に発熱体が位置し、底面にも発熱体が位置する、すなわち3個の壁面と底面で熱源が供給される方式を有する(
図3、
図6参照)。
【0051】
前記発熱体を作動させる電気配線は、断熱ボックスの外部である下部底面の空間に設置され、BOPモジュールのESS装置に連結され、電力を供給される。
【0052】
前記スタックで生産される電力は、空気極、燃料極集電板を介して下記BOPモジュールのインバーターで制御され、ESS装置に伝達されて保存される。
【0053】
前記スタックの構造は、
図4のように、上部マニホールダーと下部マニホールダーとの間にセルが積層されている形態であり、積層セルの上部、下部終端に各電極の集電板が突出していることを特徴とする。
【0054】
前記スタックの下部マニホールダーは、
図5のように、内部が4個の領域で分離していて、2番、3番領域は、空気の入口、および出口であり、2番チューブで空気を供給された後に、スタックの空気極領域に伝達され、使用済みの空気排ガスは、3番に伝達され、3番チューブを介して排出される。1番、4番チューブは、燃料(アンモニア)の入口、および出口であり、1番チューブに燃料が供給された後、充填された触媒を通過し、スタックに伝達され、スタックで使用された燃料の排ガスは、4番に伝達された後に4番チューブを介して排出される。
【0055】
前記下部マニホールダーの1番、4番チューブは、燃料(アンモニア)の入口、出口で1番は外部からチューブを介して燃料が入り、スタックに排出される構造であり、マニホールダー内部で最も広い空間を占め、内部に触媒素材が充填されていて、供給されるアンモニアがスタックに伝達される前に、充填された触媒素材がアンモニアを水素と窒素に分解させるようにして、燃料の水素分圧の増加によりスタックの効率を向上させる。
【0056】
すなわち、前記アンモニア分解に必要な改質熱源は、下部マニホールダー内の高温の排出ガスが通過する3番、4番チューブから熱源を供給されることができ、また、
図3のように断熱ボックスの底面の発熱体から熱源を供給されることもできる。
【0057】
前記BOP(Balnce of plant)モジュール(b)は、発電装置を除いたエネルギーを伝達するなどの発電に必要な支援的構成要素および補助システムに関する部分として不活性気体供給装置(1)、アンモニア供給装置(2)、冷却水供給装置(3)、スタック用空気供給装置(4)、排出温水処理装置(5)(不図示)、熱交換器6-2~6-6、集電装置(13)、発熱体コントローラー(14)、インバーター(生産電力制御装置)(15)、E-BOP(Electrical Balance of Plant)(16)などを含む(
図3参照)。
【0058】
前記不活性気体供給装置(1)は、Ar、N2、Heなどの高温で金属と反応しない不活性気体をスタックの作動が行われる前に前記スタック(9)の燃料供給ラインに供給する装置である。前記供給された不活性気体は、後に供給されるアンモニアおよび/または水素と反応できるスタックの燃料供給ラインに存在する残留酸素および不純物を除去するためのものである。
【0059】
前記不活性気体供給装置(1)から供給される気体は、前記断熱ボックス下部発熱体および下部マニホールダーである熱交換器6-1によって伝達昇温され、システムの作動開始温度に達するまで稼動する。
【0060】
前記不活性気体供給装置(1)は、流量を制御できる流量ポンプ、MFCなどが使用できる。
【0061】
前記アンモニア供給装置(2)は、アンモニアをシステムに供給させる装置であり、純度99%以上の液相または気相の形態が使用でき、流量ポンプ、MFCなどが使用できる。液相を使用する場合には、気化器(7)を介して気化して供給され、前記気化器(7)には、前記排ガスによる熱が前記熱交換器(6-1)および熱交換器(6-3)によって供給される。
【0062】
前記冷却水供給装置(3)は、燃料電池スタックから排出される高温の排ガスを冷却させるために水を供給させる装置であり、水弁、流量計などが使用できる。
【0063】
前記スタック用空気供給装置(4)は、スタックに酸素供給のために空気供給ラインに空気を供給する装置であり、前記空気は、酸素分圧0.2以上の酸素が含まれた状態で使用でき、エアーブロワー、流量ポンプ、MFCなどが使用できる。
【0064】
前記排出温水処理装置(5)は、燃料電池の作動から発生する高温の排ガスを外部に排出させる前に、冷却に用いられた水を処理する装置である。
【0065】
具体的には、冷却水供給装置(3)から供給される水は、熱交換器6-4、および6-5で前記高温の排ガスによる熱交換で温水化され、前記温水は、前記排出温水処理装置(5)に集まり、前記排出温水処理装置(5)には、スタックから発生する排ガス中の水蒸気が熱交換器6-5を介した冷却で生成される水が集まる所でもある。
【0066】
前記熱交換器6-2~6-6は、前記熱交換器6-1から伝達される熱をBOPモジュールの各構成に伝達させてBOPモジュールの効率的な熱管理をするための装置であり、それぞれの位置および使用温度範囲によって円筒多管式(Shell&Tube)、二重管式(Double Pipe Type)、平板型(Plate Type)などが使用できる(
図1、
図2参照)。
【0067】
気化器(7)は、下部マニホールダーの燃料供給ラインにアンモニア燃料を気体に供給するために、液相のアンモニア燃料を気相化させる装置である。前記気化器には、熱交換器6-6が位置している。前記気化器には、前記下部マニホールダーの排ガスおよび発熱体による昇温による熱が熱交換器6-1および熱交換器6-6を介して伝達され、この伝達された熱で気化器が作動する。
【0068】
前記集電装置(ESS装置)(13)は、燃料電池スタックから生産された電力を集めて保存するエネルギー保存装置であり、前記保存された電力は、外部に送出されて使用されたり、またはE-BOPの電源、および断熱ボックスモジュール(a)の発熱体熱源に使用されてもよい。
【0069】
E-BOP(16)は、システムのプログラム制御を行う装置であり、インバーター(15)は、電力発生を制御する装置である。
【0070】
上記のような本発明のアンモニアベースのSOFCシステムの構成は、
図3のように、断熱ボックスモジュール(a)とBOP(Balance of Plant)モジュール(b)が配管と電線で連結されている構成を有し、メンテナンス時にそれぞれのモジュールを分離して行うことができる。
【0071】
本発明は、また、発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法を提供する。
【0072】
前記作動方法は、アンモニア供給による電力発生を目的として下記の
i)発熱体熱源の熱が燃料電池スタックの全体に循環するようにして、燃料電池スタックを作動開始温度まで昇温する第1段階;および
ii)前記第1段階後、下部マニホールダーの燃料供給ラインにアンモニアを供給し、電力生産、すなわち電流を印加する第2段階;を含む。
【0073】
前記第1段階は、燃料電池スタック内部と燃料供給ラインのパージ、および昇温段階である。
【0074】
前記第1段階は、具体的には、燃料電池スタック内部と燃料供給ラインのパージのためには、下部マニホールダーの燃料供給ラインに不活性ガスを供給し、燃料電池スタック内部と燃料供給ラインに存在する残留酸素および/または不純物などを除去する。
【0075】
前記残留酸素および不純物などは、燃料としてのアンモニアと反応できるものであり、アンモニアによる電力生産効率を減少させる原因となり得る。
【0076】
前記燃料電池スタック内部と燃料供給ラインの昇温のためには、下部マニホールダーの下部およびスタックの3側面に位置する発熱体の熱源が、
1)スタックに作用して、スタックが作動開始温度まで昇温するようにし、
2)下部マニホールダーに作用して、下部マニホールダーの空気供給ラインおよび燃料供給ラインにそれぞれ流れる空気および不活性ガスの温度を昇温させ、そのため、発熱体熱源の熱が燃料電池スタックの全体に循環するようにして、燃料電池スタックを作動開始温度まで昇温する段階である。
【0077】
前記昇温の発熱体熱源は、集電装置(13)から印加される電力であり、スタックおよび下部マニホールダーに作用する熱源の程度は、発熱体コントローラー(14)(不図示)を用いて調節する。
【0078】
前記スタックの作動開始温度は、約600℃以上であり、好ましくは650℃~700℃である。
【0079】
前記発熱体(12)の熱源が位置するスタックの3側面は、スタックを囲む4面のうちスタックがBOPモジュールに対向する面である正面を除いたスタックの残りの3面である両側面および後面を意味する。
【0080】
図1を参照して前記の不活性気体および空気流体の流れによるパージおよび昇温で具体的な不活性気体、および空気流体の流れを見れば、
不活性気体が供給される燃料供給ラインで、常温の環境で不活性気体供給装置(1)から供給されるパージ用ガスは、気化器(7)、下部マニホールダー(8)、燃料電池スタックのアノード領域の順に経て、下部マニホールダー(8)がそれ自体として熱交換器の役割をする熱交換器6-1(下部マニホールダー(8)と統合形態)、熱交換器6-6、6-2、および6-5を通過して外部に排出される。
【0081】
空気供給ラインでは、常温の環境でスタック用空気供給装置(4)から空気が供給され、前記供給された空気は、熱交換器6-2、熱交換器6-3、燃料電池スタックのカソード領域の順に移動し、さらに熱交換器6-3を通過し、熱交換器6-4を通過して冷却され、外部に排出される。
【0082】
前記第2段階は、電力を生産する段階である。
【0083】
図2を参照すると、第2段階で下部マニホールダーの燃料供給ラインにアンモニアが供給され、かつ前記第1段階での昇温が行われたスタックの作動が始まって、電力が生産される。
【0084】
前記スタックが作動し始め後、スタックは、連続的な作動による電力生産時に発生する電気化学反応による発熱によって前記発熱体の熱源がなくともスタックの連続的正常作動温度700℃~750℃に到達できる。
【0085】
このようにスタックの連続的正常作動温度に到達すると、前記第1段階の発熱体に集電装置(13)から印加される電力を徐々に調節することで、スタックの温度が700℃~750℃に維持されるように制御する。
【0086】
なお、下部マニホールダーの燃料供給ラインの内部には、アンモニア改質用触媒を充填し、前記第1段階での燃料供給ラインの昇温後、前記第2段階でのアンモニア供給時に燃料供給ラインの内部でアンモニア改質を行う。
【0087】
前記第2段階でのアンモニアの流れ(実線)は、
図2のように、燃料供給ラインに供給されていた不活性ガスが中断され、アンモニア供給装置(2)を介してアンモニア供給に転換され、供給されるアンモニアが液相である場合、液相のアンモニアが気化器(7)に供給され、気化し、下部マニホールダーの燃料供給ライン内部で水素と窒素に分解される。
【0088】
前記分解した混合ガスは、燃料電池スタックの燃料極の領域に供給され、電力生産の燃料に使用される。また、アンモニア燃料供給時には、炭素沈積が発生しないので、下部マニホールダー(8)にスチームを供給しない。
【0089】
前記スタックから排出される高温の排出ガスは、効率的な熱管理のために、冷却水供給装置(3)から供給される水との熱交換のための熱交換器6-4、および6-5を通過させる。これによって、前記供給される水を温水に転換して活用することができる。
【0090】
前記第2段階は、より詳細には、燃料電池スタックが発熱体の熱源により600℃以上、好ましくは600℃~700℃に昇温すると、燃料供給ラインには、不活性気体供給装置(1)からの不活性気体供給が遮断され、アンモニア供給装置(3)からアンモニア燃料が供給される。
【0091】
前記供給されたアンモニアが液相である場合は、気化器を経て気化し、下部マニホールダーの燃料供給ラインに供給され、前記燃料供給ラインの内部に充填された触媒により水素と窒素に分解される。前記分解した水素は、燃料電池スタックのアノード領域で化学反応を通した電力生産の作動燃料に使用される。
【0092】
電力生産のための燃料電池の作動後、スタックから排出される水分(水蒸気)を含む未反応の水素、および窒素ガスは、下部マニホールダーである熱交換器6-1、および熱交換器6-6に移動する。
【0093】
この際、断熱ボックスモジュール内部は、燃料電池スタックのアノード領域で作動時に発生する化学反応熱によって昇温し、これによって、断熱ボックスモジュール内部の燃料、および空気の温度が昇温する。したがって、発熱体のための電力消費が大きく減少する。前記昇温した燃料、および空気は、熱交換器6-1および熱交換器6-6に移動し、燃料供給ラインおよび気化器に熱が伝達され、それぞれアンモニア分解反応およびアンモニア気化が起こる。
【0094】
前記熱交換器6-1、および熱交換器6-6を通過したスタックの燃料ラインの排出ガスは、熱交換器6-2を経て、スタック用空気供給装置(4)からスタックの空気ラインに供給される空気を熱交換器6-2で600℃以上に昇温させる。なお、熱交換器6-2を経たスタックの燃料ラインの排出ガスは、熱交換器6-5を通過して外部に排出される。
【0095】
前記第2段階の空気の流れのための空気供給ラインでは、スタック用空気供給装置から空気が供給され、熱交換器6-2の熱源を受けて650℃以上まで昇温し、熱交換器6-3を通過して燃料電池スタックのカソード領域の順に移動する。
【0096】
前記移動した空気は、スタックで作動時に、空気中の酸素が消耗され、酸素濃度の低い窒素ガスとして排出され、この際、アノード領域で発生する化学反応熱を一部吸収して排出される。前記排出された窒素ガスは、さらに熱交換器6-3を通過し、熱交換器6-4を通過し、外部に排出される。
【0097】
上記のように不活性気体の供給からアンモニア供給に転換されると、冷却水供給装置は、熱交換器6-4および熱交換器6-5を介して燃料供給ラインおよび空気供給ラインの排ガス温度を低減する機能をし、この際、熱を吸収した水は、排出温水処理装置(5)を介して保存され、温水として活用することができる。
【0098】
以上、本発明を好ましい例を挙げて説明したが,この例は、例示的なものであり、限定的なものでない。このように、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の思想と添付の特許請求範囲に提示された権利範囲を逸脱することなく、均等論により様々な変化と変形を加えることができることが理解できる。
【0099】
本発明は、韓国の忠清北道で支援し、(株)WONIK MATERIALS単独で行った「水素・二次電池素材部品技術開発(R&D)支援事業」の研究課題(課題名:アンモニアベース固体酸化物燃料電池電極素材およびセル製造技術開発、課題番号:CBTP-B-20-04-R001、研究期間:2021年11月01日~2022年10月31日)の結果である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
上記のように本発明の発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム、およびその作動方法は、分散発電などの小型発電用アンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムにおいてアンモニア燃料の使用に対する燃料電池の性能向上および移動性に寄与することができ、アンモニア燃料用固体酸化物燃料電池の産業上の利用可能性が高い。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱ボックスモジュール(a);およびBOPモジュール(b);を含む発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムであって、
前記断熱ボックスモジュール(a)は、発電に関連する部分として燃料電池スタック(9)、上部マニホールダー(10)、下部マニホールダー(8)、発熱体(11)、前記発熱体(11)の電気供給のための発熱体用導線(12)を含み、
前記下部マニホールダーは、燃料供給ライン、および空気供給ラインを含み、
前記燃料供給ラインの内部に充填されたアンモニア分解触媒により供給されるアンモニアが水素および窒素に分解されることを特徴とする発熱体による昇温が適用されるアンモニアベースの固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項2】
前記BOP(Balnce of plant)モジュール(b)は、発電装置を除いてエネルギーを伝達するような発電に必要な支援的構成要素および補助システムに関する部分として不活性気体供給装置(1)、アンモニア供給装置(2)、冷却水供給装置(3)、スタック用空気供給装置(4)、排出温水処理装置(5)、熱交換器6-2~6-6(6)、集電装置(13)、発熱体コントローラー(14)、およびインバーター(15)を含むことを特徴とする請求項1に記載の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項3】
前記発熱体は、断熱ボックスモジュール(a)の内部に位置するスタックおよび下部マニホールダーに熱を供給するための装置であり、前記スタックの3側面および下部マニホールダーの下部に位置し、
前記スタックの3側面は、前記スタックを囲む4面のうちスタックがBOPモジュールに対向する面である正面を除いたスタックの残りの3面の両側面および後面であることを特徴とする請求項1に記載の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項4】
前記触媒は、卑金属及び貴金属を含む触媒であることを特徴とする請求項1に記載の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項5】
前記断熱ボックスモジュール(a)とBOP(Balance of Plant)モジュール(b)が配管と電線で連結されていて、メンテナンス時にそれぞれのモジュールを分離して行うことができることを特徴とする請求項1に記載の発熱体による昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システム。
【請求項6】
発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法であって、
前記作動方法は、アンモニア供給による電力発生を目的として、下記の
i)発熱体熱源の熱が燃料電池スタックの全体に循環するようにして、燃料電池スタックを作動開始温度まで昇温する第1段階;を含み、
前記第1段階は、燃料電池スタック内部と燃料供給ラインのパージ、および燃料電池スタック内部と燃料供給および空気供給ラインの昇温を含み、
前記燃料電池スタック内部と燃料供給ラインのパージは、下部マニホールダーの燃料供給ラインに不活性ガスを供給し、燃料電池スタック内部と燃料供給ラインに存在する残留酸素および/または不純物などを除去することであり、
前記燃料電池スタック内部と燃料供給および空気供給ラインの昇温は、下部マニホールダーの下部およびスタックの3側面に位置する発熱体の熱源が、
1)スタックに作用して、スタックをスタックの作動開始温度まで昇温させ、
2)下部マニホールダーに作用して、下部マニホールダーの空気供給ラインおよび燃料供給ラインにそれぞれ流れる空気および不活性ガスの温度を昇温させることであり、
前記パージおよび昇温によって前記発熱体熱源の熱が燃料電池スタックの全体に循環するようにして、燃料電池スタックを作動開始温度まで昇温することを特徴とする、発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法。
【請求項7】
前記スタックの作動開始温度は、600℃以上であり、
前記発熱体の熱源が位置するスタックの3側面は、スタックを囲む4面のうちスタックがBOPモジュールに対向する面である正面を除いたスタックの残りの3面の両側面および後面であることを特徴とする請求項6に記載の発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法。
【請求項8】
前記作動方法は、アンモニア供給による電力発生を目的として、下記の
ii)前記第1段階後、下部マニホールダーの燃料供給ラインにアンモニアを供給し、電力生産をする第2段階;をさらに含み、
前記第2段階では、前記スタックは、連続的な作動による電力生産時に発生する電気化学反応による発熱によって前記発熱体の熱源がなくともスタックの連続的正常作動温度700℃~750℃に到達すると、前記第1段階の発熱体に集電装置(13)から印加される電力(熱)を徐々に調節することで、スタックの温度が700℃~750℃に維持されるように制御することを特徴とする請求項6に記載の発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの作動方法。
【請求項9】
前記第2段階で、アンモニア供給で燃料供給ラインの内部ではアンモニア分解反応の改質を行うことを特徴とする請求項8に記載の発熱体昇温が適用されるアンモニアベース固体酸化物燃料電池(SOFC)システムの動作方法。
【国際調査報告】