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特表2024-541146誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法
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  • 特表-誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/029 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
C01B33/029
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570526
(86)(22)【出願日】2022-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 CN2022087241
(87)【国際公開番号】W WO2023115762
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111579320.3
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522450521
【氏名又は名称】中国有色桂林礦産地質研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】秦海青
(72)【発明者】
【氏名】張振軍
(72)【発明者】
【氏名】唐慧杰
(72)【発明者】
【氏名】劉文平
(72)【発明者】
【氏名】雷暁旭
(72)【発明者】
【氏名】盧安軍
(72)【発明者】
【氏名】肖楽銀
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072BB07
4G072DD06
4G072GG01
4G072GG03
4G072GG05
4G072HH04
4G072LL03
4G072MM01
4G072RR01
4G072RR11
4G072RR25
4G072UU30
(57)【要約】
本発明は、誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法を開示し、そのステップは、作動ガスを誘導プラズマ反応器において励起して安定な高温プラズマを形成し、シランガスと希釈ガスを混合して高温プラズマ熱場に注入し、高温プラズマ熱場の熱気流と高温循環冷却気流の協同作用下でシランガスを分解し、熱分解により生成したシリコン原子が冷却された後に、ナノスケールの球状シリコン粉末に凝結するステップと、シリコン粉末を包み込んだ気流をフィルターで濾過し、ナノシリコン粉末をフィルターの表面に堆積させ、そして周期的な吹き返し気流で吹き落としてナノシリコン粉末を収集するステップとを含む。本発明は、シランガスを原料とし、主な熱源として誘導プラズマを採用し、補助熱源として一般的な加熱管を採用し、熱分解率が高く、電極汚染がなく、長期間連続生産が可能であるという利点を有する。製造されたナノシリコン粉末の純度が高く、球形度が高く、粒度分布が狭く、流動性に優れ、極めて高い品質を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法であって、作動ガスを誘導プラズマ反応器において励起して安定な高温プラズマを形成し、シランガスと希釈ガスを混合して高温プラズマ熱場に注入し、高温プラズマ熱場の熱気流と高温循環冷却気流の協同作用下でシランガスを分解し、熱分解により生成したシリコン原子又はシリコンイオンが冷却された後に、ナノスケールの球状シリコン粉末に凝結するステップと、シリコン粉末を包み込んだ気流を、フィルターを含む収集室に入らせ、フィルターによって濾過した後に、ナノシリコン粉末をフィルターの表面に堆積させ、そして周期的な吹き返し気流で吹き落としてナノシリコン粉末を収集するステップとを含む、ことを特徴とする誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法。
【請求項2】
アルゴンガス又は窒素ガスを利用して熱分解システム全体を洗浄し、漏れ検査を行うステップ(1)と、
作動ガスをプラズマ反応器に流し、励起により所定パワーの安定な高温プラズマを形成し、圧縮機を採用して一次高温冷却領域に高温循環冷却気流を流し、二次低温冷却領域に低温循環冷却気流と窒素ガス冷却気流を流すステップ(2)と、
送りプローブを採用して、シランガスを希釈気流で包んで高温プラズマ熱場に注入し、シランを高温プラズマ熱場において分解し、そして一次高温冷却領域で、熱分解により生成されたシリコン原子又はシリコンイオンを冷却して、微細なシリコン粉末を形成するとともに、分解されていないシランガスをさらに熱分解して、シリコン粉末と水素ガスを生成し、シリコン粉末を混合気流により二次低温冷却領域に運び、さらに冷却するステップ(3)と、
二次低温冷却領域で冷却されたシリコン粉末を混合気流により収集室に運び、ガスが収集室のフィルターを通過した後に、ナノシリコン粉末をフィルターにより阻止してフィルターの表面に粘着させ、周期的な吹き返し気流で吹き落とし、ナノシリコン粉末を収集するステップ(4)とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法。
【請求項3】
前記作動ガスは、センターガスとシースガスとを含む、ことを特徴とする請求項2に記載の誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法。
【請求項4】
前記センターガスは、アルゴンガスであり、流量が5~100slpmであり、前記シースガスは、アルゴンガスと水素ガスの混合ガスであり、シースガスにおけるアルゴンガスの流量は、20~250slpmであり、シースガスにおける水素ガスの流量は、0~30slpmである、ことを特徴とする請求項3に記載の誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法。
【請求項5】
ステップ(2)において、前記プラズマ反応器のパワーは、15~80kwであり、システムの作動圧力は、14~17Psigである、ことを特徴とする請求項2に記載の誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法。
【請求項6】
前記高温循環冷却気流は、窒素ガス、アルゴンガス及び水素ガスの混合ガスであり、高温循環冷却気流の温度は、420~650℃であり、流量は、1000~3000slpmである、ことを特徴とする請求項2に記載の誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法。
【請求項7】
前記低温循環冷却気流は、窒素ガス、アルゴンガス及び水素ガスの混合ガスであり、低温循環冷却気流の温度は、18~35℃であり、流量は、5000~15000slpmであり、前記窒素ガス冷却気流の流量は、150~450slpmである、ことを特徴とする請求項2に記載の誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法。
【請求項8】
前記シランガス気流の流量は、15~120slpmであり、前記希釈気流は、アルゴンガスであり、流量が50~200slpmである、ことを特徴とする請求項2に記載の誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法。
【請求項9】
前記吹き返しガスは、アルゴンガス又は窒素ガスである、ことを特徴とする請求項2に記載の誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料化学技術分野に関し、具体的には、誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー関連産業の発達と3C電子製品の普及に伴い、人々はリチウムイオン電池に対して、より大きい体積/質量エネルギー密度、より速い充放電速度、より高い安全性というより高い要件を求めている。シリコン材料は、黒鉛の約10倍のエネルギー密度を有するため、リチウムイオン電池の負極材料の有力な競争者となっている。しかしながら、シリコンを負極材料として用いる場合、リチウム吸蔵後に元の体積の約3倍まで膨張し、この分野におけるその用途を制約したというかなり深刻な欠点を有する。ナノシリコン粉末は、それが有するナノ効果により、このマイナス効果を効果的に低減することができる。表面がカーボンで被覆されたナノシリコン粉末と黒鉛を混合して使用することで、リチウムイオン電池の容量と有効耐用年数を効果的に向上させ、負極材料の膨張率を許容可能な範囲内に制御することができる。なお、ナノシリコン粉末は、他の分野においても広い応用の見通しを有する。例えば、ナノシリコン粉末とダイヤモンドを高圧下で混合して炭化ケイ素を形成し、砥粒、砥石、切削工具として多く使用する。ナノシリコン粉末は、有機物と反応し、有機シリコーン高分子材料の原料とすることができる。
【0003】
現在では、ナノシリコン粉末を製造する方法には、機械式ボールミル法、化学気相成長法、溶融塩電解法、プラズマ蒸発凝縮法などが含まれる。機械式ボールミル法は、一般的には、ジルコニアをミル媒体として、粒径が比較的に大きいシリコン粒子をサイズが比較的に小さいシリコン粉末に研磨し、利点は、ステップが簡単であり、コストが相対的に比較的低いことである。しかしながら、得られたシリコン粉末における不純物の含有量が高く、粒子の形状と粒径範囲の制御が困難であり、そしてナノスケール製品を得ることが非常に困難である。化学気相成長法は、シランを高純度水素希釈雰囲気で分解するまで加熱し、そして冷却してナノシリコン粉末を得る。しかしながら、製造プロセスにおいて、高圧力高濃度の水素ガスとシランに係わり、大きい安全上の潜在的なリスクがある。溶融塩電解法において、無水CaCl2を電解質としてSiO2を電解することで製造されたシリコン粒子の大きさが不均一であり、且つシリコン粒子がさらに大きくなることを制御しにくい。プラズマ蒸発凝縮法は、一般的にはミクロンスケールのシリコン粉末を原料として採用し、直流アークプラズマを熱源として利用し、シリコン原料を瞬間的に気化し、そしてシリコン蒸気を冷却してナノシリコン粉末を製造し、製造プロセスにおいて、電極材料の気化による汚染が誘発されやすく、且つミクロンスケールの原料粉末とプラズマとの熱結合効率が低く、製品の純度と収率を確保しにくい。
【0004】
そのため、シランの分解率が高く、安全性が強く、連続生産が可能である、誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法を提供することは、当業者が早急に解決すべき技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑み、本発明は、誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明は、以下の技術案を採用する。
【0007】
誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する方法であって、作動ガスを誘導プラズマ反応器において励起して安定な高温プラズマを形成し、シランガスと希釈ガスを混合して高温プラズマ熱場に注入し、高温プラズマ熱場の熱気流と高温循環冷却気流の協同作用下でシランガスを分解し、熱分解により生成したシリコン原子又はシリコンイオンが冷却された後に、ナノスケールの球状シリコン粉末に凝結するステップと、シリコン粉末を包み込んだ気流を、フィルターを含む収集室に入らせ、フィルターを通過した後に、ナノシリコン粉末をフィルターの表面に堆積させ、そして周期的な吹き返し気流で吹き落としてナノシリコン粉末を収集するステップとを含む。
【0008】
さらに、上記方法は、具体的には、
アルゴンガス又は窒素ガスを利用して熱分解システム全体を洗浄し、漏れ検査を行うステップ(1)と、
作動ガスをプラズマ反応器に流し、励起により所定パワーの安定な高温プラズマを形成し、圧縮機を採用して一次高温冷却領域に高温循環冷却気流を流し、二次低温冷却領域に低温循環冷却気流と窒素ガス冷却気流を流すステップ(2)と、
送りプローブを採用して、シランガスを希釈気流で包んで高温プラズマ熱場に注入し、シランを高温プラズマ熱場において分解し、そして一次高温冷却領域で、熱分解により生成されたシリコン原子又はシリコンイオンを冷却して、微細なシリコン粉末を形成するとともに、分解されていないシランガスをさらに熱分解して、シリコン粉末と水素ガスを生成し、シリコン粉末を混合気流により二次低温冷却領域に運び、さらに冷却するステップ(3)と、
二次低温冷却領域で冷却されたシリコン粉末を混合気流により収集室に運び、ガスが収集室のフィルターを通過した後に、一部が処理された後に全部排出され、残りのガスが循環冷却ガスとして繰り返して利用され、ナノシリコン粉末をフィルターにより阻止してフィルターの表面に堆積させ、周期的な吹き返し気流で吹き落とし、ナノシリコン粉末を収集するステップ(4)とを含む。
【0009】
さらに、前記作動ガスは、センターガスとシースガスとを含む。
【0010】
さらに、前記センターガスは、アルゴンガスであり、流量が5~100slpmであり、前記シースガスは、アルゴンガスと水素ガスの混合ガスであり、シースガスにおけるアルゴンガスの流量は、20~250slpmであり、シースガスにおける水素ガスの流量は、0~30slpmである。
【0011】
上記さらなる方案の採用による有益な効果は以下のとおりである。シースガスに適量な水素ガスを導入することで、プラズマ熱気流の熱伝導率を効果的に向上させ、さらにプラズマ熱場の加熱効率を向上させることができる。
【0012】
さらに、ステップ(2)において、前記プラズマ反応器のパワーは、15~80kwであり、システムの作動圧力は、14~17Psigである。
【0013】
上記さらなる方案の採用による有益な効果は以下のとおりである。システムの作動圧力を約1大気圧に設定することで、システムの気密性要件を低減させることができるとともに、システムに比較的に大きい漏れが発生する場合に火事、爆発の危険を引き起こす可能性を低減させることができる。
【0014】
さらに、前記高温循環冷却気流は、窒素ガス、アルゴンガス及び水素ガスの混合ガスであり、高温循環冷却気流の温度は、420~650℃であり、流量は、1000~3000slpmである。
【0015】
さらに、高温循環冷却気流の混合ガスにおいて、窒素ガス、アルゴンガス及び水素ガスの体積比は、窒素ガス50%、アルゴンガス40%、窒素ガス10%である。
【0016】
さらに、前記低温循環冷却気流は、窒素ガス、アルゴンガス及び水素ガスの混合ガスであり、低温循環冷却気流の温度は、18~35℃であり、流量は、5000~15000slpmであり、前記窒素ガス冷却気流の流量は、150~450slpmである。
【0017】
さらに、低温循環冷却気流の混合ガスにおいて、窒素ガス、アルゴンガス及び水素ガスの体積比は、窒素ガス50%、アルゴンガス40%、窒素ガス10%である。
【0018】
上記さらなる方案の採用による有益な効果は以下のとおりである。価格が相対的に低い窒素ガスを主な冷却ガスとして採用することで、製造コストを効果的に低減させることができ、それと同時に、窒素ガスが比較的に高い比熱容量を有し、冷却効率を効果的に向上させることができる。温度が比較的に高い(シランガスの熱分解温度よりも高い)循環冷却気流を一次冷却として採用することで、シリコン原子又はシリコンイオンを冷却してシリコン粒子を生成するとともに、補足熱源として、少量の未反応のシランガスにエネルギーと反応雰囲気を提供し、シランガスの熱分解率(99%よりも大きい)を大幅に向上させることができる。超大流量の低温循環ガスを二次冷却として採用することで、反応により生成されたシリコン粒子がさらに大きくなることを効果的に制御し、そして主な冷却手段としてシステム内のガスの温度を比較的に低い範囲内に制御することができ、粉体による冷却プロセスへの干渉を効果的に回避し、長期間の安定な運行の目的を達成することができる。
【0019】
さらに、前記シランガス気流の流量は、15~120slpmであり、前記希釈気流は、アルゴンガスであり、流量が50~200slpmである。
【0020】
上記さらなる方案の採用による有益な効果は以下のとおりである。シランを原料ガスとすることで、原料とプラズマ熱場との分子レベルの接触を実現させ、熱結合効率を向上させることができ、それと同時に、粗シリコン粉末を原料として生産を行う時、粗シリコン粉末が完全に気化されないことで形成されるミクロンスケールの大粒子の生成を回避することができる。希釈気流を導入することでシランガスの流動方向を制約し、高温熱場に注入される前に逸散が生じることを回避することができ、それと同時に、希釈気流は、シランガスを注入前に初歩的に希釈することができ、粒径がより小さいナノシリコン粉末製品の生成に寄与する。
【0021】
さらに、前記吹き返しガスは、アルゴンガス又は窒素ガスである。
【0022】
上記さらなる方案の採用による有益な効果は以下のとおりである。アルゴンガス又は窒素ガスを吹き返しガスとすることで、より多くの種類のガスを導入することなく、吹き返しステップを完了することができ、プロセス条件の複雑性を低下させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。本発明は、シランガスを原料とし、誘導プラズマを主な熱源とし、一般的な電気加熱管を補助熱源とし、多段反応と多段冷却の方式でナノシリコン粉末を製造する。この方法は、シラン分解率が高く、安全性が強く、連続生産が可能であるという利点を有する。
【0024】
本発明は、誘導プラズマを主な熱源として採用することで、原料と設備とが全く接触しないという条件下で、原料ガスに対して集中加熱を行うことができ、電極の汚染を招くことがなく、製品の純度向上に寄与し、加熱プロセスにおいて反応により生成された粉末が加熱デバイスの表面に粘着することを回避し、加熱効率を向上させ、設備のメンテナンスコストを低減させることができ、工業的連続生産に有利である。
【0025】
本発明は、シランガスを原料とすることで、原料とプラズマ熱気流との分子レベルの接触を実現させ、熱結合効率を大幅に向上させ、エネルギーの利用率を向上させることができる。それと同時に、シランガスを原料とすることで、粗シリコン粉末を原料として生産を行う時、粗シリコン粉末が完全に気化されないことで形成されるミクロンスケールの大粒子の生成を回避することができ、粒度の方面でのナノシリコン粉末製品の品質の向上に有利である。
【0026】
本発明において、一般的な電気加熱管を補助熱源として、誘導プラズマ熱源と結合させ、多段反応と多段冷却モードを新規に導入し、二種の加熱モードの優位性を十分に発揮し、シランガスの熱分解率を大幅に向上させる。本発明に記載の方法を採用すると、シランの熱分解率が99%以上に達することができ、シランガスの利用率を効果的に向上させ、排気ガスを処理するための環境保全コストを低減させ、生産コストの低減の目的をさらに達成することができる。
【0027】
本発明の製造プロセスにおいて、約90%の作動ガスが繰り返して利用され、超大流量の冷却気流として用いられ、ナノ粒子の粒径の大きさを効果的に制御することができるだけでなく、作動ガスの使用量を減少させ、コストを節約することもできる。それと同時に、流量が比較的に大きい作動ガスは、システム内の水素ガスとシランの総濃度を10%以下に希釈することができ、極端の場合にシステムに漏れが生じて危険が発生する可能性を大幅に低減させることができる。
【0028】
本発明は、二層同軸管構造の送りプローブを用いて原料送りを行い、シランガスがアルゴンガスカーテンで包まれて高温プラズマ熱場に直接注入されることで、シランガスがプラズマ熱場に入る前に逸散が生じることを防止できるだけでなく、アルゴンガスを利用してシランガスを初歩的に希釈することもでき、加熱効率の向上とナノシリコン粉末の粒度の低減に寄与する。
【0029】
本発明は、材質が多孔質サーメットである長筒状のフィルターバンクを用いて気固分離を行い、周期的な吹き返し気流でフィルターを一つずつ吹き返すことで、従来のバグキャッチャよりも高い濾過効率と長い使用周期を達成し、長時間連続生産を実現することができる。
【0030】
本発明で製造されるナノシリコン粉末の平均粒度が30~120nmにあり、調整可能であり、且つ純度が高く、分布が狭く、球状となり、分散しやすく、流動性に優れ、比表面積が大きく、表面活性が高いという特徴を有する。
【0031】
本発明は、上記誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する装置をさらに提供し、この装置は、プラズマ発生器と、送りプローブと、一次高温冷却領域と、二次低温冷却領域と、収集室と、フィルターと、圧縮機と、電気加熱管と、水冷熱交換器と、排気ガス処理装置とを含む。
【0032】
ここで、前記プラズマ発生器 と前記送りプローブはいずれも前記一次高温冷却領域に固定され、前記二次低温冷却領域は、前記一次高温冷却領域の底端に固定され、前記二次低温冷却領域の底端は、収集室の一側に連通し 、前記収集室の他方側は、水冷熱交換器に連通し、前記収集室と水冷熱交換器との間に圧縮機が設置され、前記圧縮機と水冷熱交換器との間に電気加熱管が設置され、前記圧縮機と収集室との間に排気ガス処理装置が設置され、
前記一次高温冷却領域の表面に高温循環冷却気流給気口が設けられ、前記二次低温冷却領域に低温循環冷却気流給気口が設けられ、且つ前記低温循環冷却気流給気口に窒素ガス冷却気流給気口がさらに設けられ、
前記収集室の底端に粉末収集タンクが設置され、前記収集室の内部にフィルターが設けられる。
【0033】
さらに、前記送りプローブの構造は、二層同軸管であり、内管は、シランガスチャンネルであり、内外管の間の中間層は、希釈気流チャンネルである。前記送りプローブは、3~4本設けられる。
【0034】
さらに、収集室内のフィルターは10~30本設けられ、前記フィルターの材質は、多孔質サーメットであり、前記フィルターの形状は、長筒状である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の誘導プラズマ熱分解シランからナノシリコン粉末を製造する装置の構造と方法のフローチャート概略図である。
図2】本発明に記載の実施実例1で製造されるナノシリコン粉末サンプルの電子顕微鏡写真である。
図3】本発明に記載の実施実例2で製造されるナノシリコン粉末サンプルの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施例における図面を結び付けて、本発明の実施例における技術案を明瞭かつ完全に記述し、無論、記述された実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本出願における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を払わない前提で得られたすべての他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0037】
本発明の実施例で用いられるシランの純度は、99.9999%であり、水素ガスの純度は、99.999%であり、アルゴンガスの純度は、99.999%であり、窒素ガスの純度は、>99.99%である。
【実施例1】
【0038】
1)準備プロセス:流量が300slpmであるアルゴンガスを利用してシステムを10min洗浄し、漏れ検査を行った。漏れ検査のプロセスは、高圧漏れ検査と低圧漏れ検査に分けられる 。合格標準はそれぞれ以下のとおりである。システムが18psiの高圧にある場合、漏れ率が5slpm以下であり、システムが2psiの低圧にある場合、漏れ率が2slpm以下である。誘導プラズマ発生器に30slpmのセンターガス(アルゴンガス)とシースガス(90slpmアルゴンガスと10slpm水素ガスの混合ガス)を流した。誘導プラズマを励起し、システムの圧力を14.5psiに調整し、誘導プラズマ発生器のパワーを40kwに調整した。そして、圧縮機を起動し、一次高温冷却領域に1500slpm、430℃の高温循環冷却気流を流し、二次低温冷却領域に6500slpm、28℃の低温循環冷却気流と250slpmの窒素ガス冷却気流を流した。
【0039】
2)反応プロセス:3つの送りプローブの内管に計30slpmのシラン気流を流し、内外管の間の中間層に計90slpmのアルゴンガスを希釈気流として流した。シランガスがアルゴンガスで包まれて希釈されてコア温度が10000℃に達したプラズマ熱気流に直接注入され、原子状態又はイオン状態のシリコンと水素に急速に分解された。一次高温冷却領域を通過する時、シリコン原子又はイオンは迅速に冷却して微細なシリコン粒子を形成した。それと同時に、分解されていない少量のシランガスは、この領域でさらに熱分解して微細なシリコン粒子と水素ガスを生成した。そして、混合ガスは、シリコン粉末を運んで二次低温冷却領域に入り、冷却後に、ガスとシリコン粉末の温度は、200℃以下に急激に低下した。
【0040】
3)収集プロセス:反応領域で生成されたシリコン粉末は、気流によって収集室に運ばれた。ここで、ガスは、収集室内にぶら下げられた複数のフィルターを通過した後に、一部は、排気ガス処理によって燃やされて洗浄された後に全て排出され、残りのガスは、圧縮機によって加圧された後に繰り返して利用され、一部は、電気加熱管によって加熱された後に一次高温冷却領域に流され、別の一部は、水冷熱交換器によって冷却された後に二次低温冷却領域に流された。ナノシリコン粉末は、フィルターによって阻止されてフィルターの表面に堆積した。アルゴンガスを吹き返し気流として採用し、複数のフィルターを一つずつ周期的に吹き返し、堆積したナノシリコン粉末を収集室の底部の粉末収集タンクに吹き落とした。反応プロセスを8時間続け、オンラインで粉末収集タンクを交換し、停止した後に収集することで、計15.8kgのナノシリコン粉末を得た。
【0041】
本実施実例で得られたナノシリコン粉末は、淡黄色の粉末であり、BET平均粒度は、61nmであり、粒子の形状は、図2に示すように、球状又は近似球状である。
【実施例2】
【0042】
実施実例1を繰り返し、相違点は以下のとおりである。
【0043】
ステップ1)において、誘導プラズマ発生器に40slpmのセンターガス(アルゴンガス)とシースガス(120slpmアルゴンガスと15slpm水素ガスの混合ガス)を流した。誘導プラズマを励起し、システムの圧力を14.7psiに調整し、誘導プラズマ発生器1のパワーを60kwに調整した。そして、圧縮機を起動し、一次高温冷却領域に1700slpm、450℃の高温循環冷却気流を流し、二次低温冷却領域に7500slpm、30℃の低温循環冷却気流と300slpmの窒素ガス冷却気流を流した。
【0044】
ステップ2)において、3つの送りプローブの内管に計60lpmのシラン気流を流し、内外管の間の中間層に計150slpmのアルゴンガスを希釈気流として流した。
【0045】
ステップ3)において、反応プロセスを24時間続け、オンラインで粉末収集タンク14を交換し、停止した後に収集することで、計86.2kgのナノシリコン粉末を得た。
【0046】
本実施実例で得られたナノシリコン粉末は、暗黄色の粉末であり、BET平均粒度は、98nmであり、粒子の形状は、図3に示すように、球状又は近似球状である。
【0047】
以上に本発明の実施例を示して記述したが、理解できるように、上記実施例は、例示的なものであり、本発明を限定するものと理解すべきではなく、当業者は、本発明の範囲内に上記実施例に対して変更、修正、置き換え及び変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
1-誘導プラズマ発生器、2-センターガ、3-シースガス、4-送りプローブ、5-シラン気流、6-希釈気流、7-一段高温冷却領域、8-二段低温冷却領域、9-高温循環冷却気流給気口、10-低温循環冷却気流給気口、11-窒素ガス冷却気流給気口、12-収集室、13-フィルター、14-粉末収集タンク、15-圧縮機、16-電気加熱管、17-水冷熱交換器、18-排気ガス処理装置
図1
図2
図3
【国際調査報告】