(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】青色光遮断コンタクトレンズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/10 20060101AFI20241031BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20241031BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G02C7/10
G02C7/04
G02B5/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521104
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2022124788
(87)【国際公開番号】W WO2024077508
(87)【国際公開日】2024-04-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512020327
【氏名又は名称】ペガヴィジョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PEGAVISION CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2F-1,No.5,SHING YEH ST.,GUISHAN DIST.,TAOYUAN CITY 333,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ハン-イ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュン-ハン
(72)【発明者】
【氏名】スー,ツン-カオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェイ-チュ
(72)【発明者】
【氏名】リン,ユ-フェン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ワン-イュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,リ-ハオ
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
【Fターム(参考)】
2H006BC06
2H006BE00
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA20
(57)【要約】
本発明は、異なる組成物を硬化させることで形成される2種類の青色光遮断コンタクトレンズを提供する。第1種の組成物は、第1の親水性モノマーと黄色染料とが混合されてなるか又は反応してなる青色光遮断成分と、第2の親水性モノマーと、緑色染料、シアン染料、青色染料、オレンジ色染料、赤色染料、黒色染料又はそれらの組み合わせを含む第1の有色染料とが混合されてなるか又は反応してなる第1の有色染料成分と、少なくとも1つの第3の親水性モノマーと、架橋剤と、開始剤と、を含む。第2種の組成物は、グリセリンモノメタクリレートと黄色染料とが混合されてなるか又は反応してなる青色光遮断成分と、少なくとも1つの親水性モノマーと、架橋剤と、開始剤と、を含む。また、上記コンタクトレンズの製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を硬化させることで形成される青色光遮断コンタクトレンズであって、前記組成物は、
第1の親水性モノマーと黄色染料とが混合されてなるか又は反応してなる青色光遮断成分と、
第2の親水性モノマーと、緑色染料、シアン染料、青色染料、オレンジ色染料、赤色染料、黒色染料又はそれらの組み合わせを含む第1の有色染料とが混合されてなるか又は反応してなる第1の有色染料成分と、
少なくとも1つの第3の親水性モノマーと、
架橋剤と、
開始剤と、
を含む青色光遮断コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記第1の親水性モノマー、前記第2の親水性モノマー及び前記第3の親水性モノマーは、独立してN-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及び2-ヒドロキシブチルメタクリレートからなる群から選択される請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
組成物は、第4の親水性モノマーと、緑色染料、シアン染料、青色染料、オレンジ色染料、赤色染料、黒色染料又はそれらの組み合わせを含む第2の有色染料とが混合されてなるか又は反応してなる第2の有色染料成分を更に含む請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記第4の親水性モノマーは、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及び2-ヒドロキシブチルメタクリレートからなる群から選択される請求項3に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記組成物100wt%で、前記黄色染料は、0.01wt%~2wt%であり、前記第1の有色染料は、0.01wt%~2wt%である請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記黄色染料は、0.01重量部~2重量部であり、前記第1の有色染料は、0重量部より大きく2重量部以下である請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記黄色染料と前記第1の親水性モノマーとの重量比は、1:0.1~1:10である請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記第1の有色染料と前記第2の親水性モノマーとの重量比は、1:0.1~1:10である請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記黄色染料は、リアクティブイエロー15、リアクティブイエロー86及びリアクティブイエロー83からなる群から選択される請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記第1の有色染料は、エチレン系重合性基、スルホン酸基、スルホニル基、スルホン酸塩基、アミド基又はそれらの組み合わせを有する請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記第1の有色染料は、リアクティブブルー4、リアクティブブルー19、リアクティブブルー21、リアクティブブルー69、リアクティブブルー163、リアクティブブルー246、リアクティブブルー247、リアクティブレッド11、リアクティブレッド180、リアクティブブラック、リアクティブオレンジ78及びピグメントグリーンからなる群から選択される請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
請求項1に記載の青色光遮断コンタクトレンズの製造方法であって、
前記第1の親水性モノマーと前記黄色染料を混合して、第1の混合液を形成することと、
前記第1の混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、前記青色光遮断成分を形成することと、
前記第2の親水性モノマーと前記第1の有色染料を混合して、第2の混合液を形成することと、
前記第2の混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、前記第1の有色染料成分を形成することと、
前記青色光遮断成分、前記第1の有色染料成分、少なくとも1つの第3の親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を硬化させることと、
を含む請求項1に記載の青色光遮断コンタクトレンズの製造方法。
【請求項13】
前記第1の混合液を25℃~80℃まで加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を前記第1の混合液に加えることを更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の混合液を25℃~80℃まで加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を前記第2の混合液に加えることを更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
組成物を硬化させることで形成される青色光遮断コンタクトレンズであって、前記組成物は、
グリセリンモノメタクリレートと黄色染料とが混合されてなるか又は反応してなる青色光遮断成分と、
少なくとも1つの親水性モノマーと、
架橋剤と、
開始剤と、
を含む青色光遮断コンタクトレンズ。
【請求項16】
前記組成物100wt%で、前記黄色染料は、0.01wt%~2wt%である請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記黄色染料は、リアクティブイエロー15、リアクティブイエロー86及びリアクティブイエロー83からなる群から選択される請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記黄色染料と前記グリセリンモノメタクリレートの重量比は、1:0.1~1:10である請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
請求項15に記載の青色光遮断コンタクトレンズの製造方法であって、
前記グリセリンモノメタクリレートと前記黄色染料を混合して、混合液を形成することと、
前記混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、前記青色光遮断成分を形成することと、
前記青色光遮断成分、少なくとも1つの親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を硬化させることと、
を含む請求項15に記載の青色光遮断コンタクトレンズの製造方法。
【請求項20】
前記混合液を25℃~80℃まで加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を前記混合液に加えることを更に含む請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、眼科用製品及びその製造方法に関し、特に、青色光遮断コンタクトレンズ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3C製品の盛んな発展に伴い、携帯電話のスクリーン、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのスクリーン、発光ダイオードランプ(light-emitting diode lamp;LED lamp)ランプ等の多くのスマートデバイスは、人々の生活に広く適用されている。しかしながら、これらのスマートデバイスのバックライトの光源に青色光が含まれ、人の目で青色光を長時間直視すると、網膜に傷害を与えることがなる。
【0003】
波長380ナノメートル~500ナノメートルの青色光は、波長が短く、大きいエネルギーを有し、他の波長を有する光線よりも目に傷害を与えやすく、特に網膜を損傷しやすい。網膜は、視覚を生成するために常に光化学反応を行う必要があり、反応過程で酸素ガスを消費する必要があり、青色光の刺激により、多くのラジカルが生成して細胞に傷害を与えやすくなる。また、網膜の光受容細胞の細胞膜内に多くの脂肪酸が含有され、青色光の刺激により、またラジカルが生成して網膜細胞の損傷又は死亡を招きやすくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、市販の抗青色光レンズの多くは、黄色となり、抗青色光機能を有するものの、美観性が好ましくない。消費者が抗青色光レンズを着用する時、眼輪部(角膜強膜接触部、角強膜輪部)に黄疸病態感となるため、消費者の着用意欲が低下する。これに鑑み、現在、青色光を遮断できるとともに美観性を有する抗青色光レンズを開発してその商業的価値を高めることは、急務となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示内容では、組成物を硬化させることで形成される青色光遮断コンタクトレンズであって、組成物は、第1の親水性モノマーと黄色染料とが混合されてなるか又は反応してなる青色光遮断成分と、第2の親水性モノマーと、緑色染料、シアン染料、青色染料、オレンジ色染料、赤色染料、黒色染料又はそれらの組み合わせを含む第1の有色染料とが混合されてなるか又は反応してなる第1の有色染料成分と、少なくとも1つの第3の親水性モノマーと、架橋剤と、開始剤と、を含む青色光遮断コンタクトレンズを提供する。
【0006】
幾つかの実施形態において、第1の親水性モノマー、第2の親水性モノマー及び第3の親水性モノマーは、独立してN-ビニルピロリドン(N-vinylpyrrolidone;NVP)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethyl methacrylate;HEMA)、グリセロールメタクリレート(glycidyl methacrylate;GMA)、グリセリンモノメタクリレート(glycerol monomethacrylate;GMMA)、メタクリル酸(methacrylic acid)、アクリル酸(acrylic acid)、N,N-ジメチルアクリルアミド(N,N-dimethyl acrylamide;DMA)、N,N-ジエチルアクリルアミド(N,N-diethyl acrylamide)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(N-vinyl-N-methyl acetamide)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)及び2-ヒドロキシブチルメタクリレート(2-hydroxybutyl methacrylate)からなる群から選択される。
【0007】
幾つかの実施形態において、組成物は、第4の親水性モノマーと、緑色染料、シアン染料、青色染料、オレンジ色染料、赤色染料、黒色染料又はそれらの組み合わせを含む第2の有色染料とが混合されてなるか又は反応してなる第2の有色染料成分を更に含む。
【0008】
幾つかの実施形態において、第4の親水性モノマーは、N-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及び2-ヒドロキシブチルメタクリレートからなる群から選択される。
【0009】
幾つかの実施形態において、組成物100wt%で、黄色染料は、0.01wt%~2wt%であり、第1の有色染料は、0.01wt%~2wt%である。
【0010】
幾つかの実施形態において、黄色染料は、0.01重量部~2重量部であり、第1の有色染料は、0重量部より大きく2重量部以下である。
【0011】
幾つかの実施形態において、黄色染料と第1の親水性モノマーとの重量比は、1:0.1~1:10である。
【0012】
幾つかの実施形態において、第1の有色染料と第2の親水性モノマーとの重量比は、1:0.1~1:10である。
【0013】
幾つかの実施形態において、黄色染料は、リアクティブイエロー15(Reactive Yellow 15)、リアクティブイエロー86(Reactive Yellow 86)及びリアクティブイエロー83(Reactive Yellow 83)からなる群から選択される。
【0014】
幾つかの実施形態において、第1の有色染料は、エチレン系重合性基(ethylenically-base polymerizable group)、スルホン酸基(sulfonic group)、スルホニル基(sulfonyl group)、スルホン酸塩基(sulfonate group)、アミド基(amide group)又はそれらの組み合わせを有する。
【0015】
幾つかの実施形態において、第1の有色染料は、リアクティブブルー4(Reactive Blue 4)、リアクティブブルー19(Reactive Blue 19)、リアクティブブルー21(Reactive Blue 21)、リアクティブブルー69(Reactive Blue 69)、リアクティブブルー163(Reactive Blue 163)、リアクティブブルー246(Reactive Blue 246)、リアクティブブルー247(Reactive Blue 247)、リアクティブレッド11(Reactive Red 11)、リアクティブレッド180(Reactive Red 180)、リアクティブブラック(Reactive Black 5)、リアクティブオレンジ78(Reactive Orange 78)及びピグメントグリーン(Pigment Green 7)からなる群から選択される。
【0016】
本開示内容は、第1の親水性モノマーと黄色染料を混合して、第1の混合液を形成する操作と、第1の混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、青色光遮断成分を形成する操作と、第2の親水性モノマーと第1の有色染料を混合して、第2の混合液を形成する操作と、第2の混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、第1の有色染料成分を形成する操作と、青色光遮断成分、第1の有色染料成分、少なくとも1つの第3の親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を硬化させる操作と、を含む前述した何れか1つの実施形態による青色光遮断コンタクトレンズの製造方法を提供する。
【0017】
幾つかの実施形態において、方法は、第1の混合液を25℃~80℃まで加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を第1の混合液に加えることを更に含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、方法は、第2の混合液を25℃~80℃まで加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を第2の混合液に加えることを更に含む。
【0019】
本開示内容では、組成物を硬化させることで形成される青色光遮断コンタクトレンズであって、組成物は、グリセリンモノメタクリレート(glycerol monomethacrylate;GMMA)と黄色染料とが混合されてなるか又は反応してなる青色光遮断成分と、少なくとも1つの親水性モノマーと、架橋剤と、開始剤と、を含む青色光遮断コンタクトレンズを提供する。
【0020】
幾つかの実施形態において、組成物100wt%で、黄色染料は、0.01wt%~2wt%である。
【0021】
幾つかの実施形態において、黄色染料は、リアクティブイエロー15(Reactive Yellow 15)、リアクティブイエロー86(Reactive Yellow 86)及びリアクティブイエロー83(Reactive Yellow 83)からなる群から選択される。
【0022】
幾つかの実施形態において、黄色染料とグリセリンモノメタクリレートの重量比は、1:0.1~1:10である。
【0023】
本開示内容は、グリセリンモノメタクリレートと黄色染料を混合して、混合液を形成する操作と、混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、青色光遮断成分を形成する操作と、青色光遮断成分、少なくとも1つの親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を硬化させる操作と、を含む前述した何れか1つの実施形態による青色光遮断コンタクトレンズの製造方法を提供する。
【0024】
幾つかの実施形態において、方法は、混合液を25℃~80℃まで加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を混合液に加えることを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
添付図面を参照し、以下の実施形態の詳細な説明を読むことで、本開示内容をより十分に理解できるであろう。
【
図1】本開示内容の各種の実施形態による製造方法で得られたコンタクトレンズである。
【
図2】本開示内容の各種の実施形態によるコンタクトレンズの透過率スペクトログラムである。
【
図3】本開示内容の各種の実施形態によるコンタクトレンズの透過率スペクトログラムである。
【
図4】本開示内容の各種の実施形態によるコンタクトレンズの透過率スペクトログラムである。
【
図5】本開示内容の各種の実施形態によるコンタクトレンズの透過率スペクトログラムである。
【
図6】本開示内容の各種の実施形態によるコンタクトレンズの透過率スペクトログラムである。
【
図7】本開示内容の各種の実施形態によるコンタクトレンズの透過率スペクトログラムである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、特定の具体的な実施例により本開示内容の「青色光遮断コンタクトレンズ」に関する実施形態を説明するが、当業者であれば、本開示内容により開示された内容から本開示内容の利点と効果を把握することができる。本開示内容は、他の異なる具体的な実施例により実施又は適用されてもよく、本開示内容における各細部も、異なる観点と適用に基づき、本開示内容の構想から乖離することなく様々な修正と変更が行われてもよい。以下の実施形態は、更に本開示内容の関連する技術内容を詳細に説明するが、開示された内容は本開示内容の保護範囲を制限するためのものではない。
【0027】
別途定義されていない限り、本明細書において使用される技術用語と科学用語は、全て当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。用語が単数形で現れる場合、この用語の複数形が含まれる。
【0028】
別途指示されていない限り、本明細書において言及された百分率は、全て重量百分率である。一連の上限、下限範囲が提供された場合、言及された範囲の全ての組み合わせが含まれ、各組み合わせが明確に列挙されていることと同様である。本明細書では、「ある数値~別の数値」に表される範囲は、明細書において前記範囲内の全ての数値を一々列挙することを回避するための概要的な表現形式である。従って、ある特定の数値範囲の記載は、前記数値範囲内の任意の数値及び前記数値範囲内の任意の数値によって定義されたより小さい数値範囲を網羅し、明細書において前記任意の数値と前記より小さい数値の範囲を明確に記載することと同様である。
【0029】
下記で一連の操作又はステップを用いてここで開示される方法を説明するが、これらの操作又はステップに示す順序は、本開示内容を制限するものとして解釈すべきではない。例えば、一部の操作又はステップは、異なる順序で行われるか、及び/又は他のステップと同時に行われてよい。また、必ず図示される全ての操作、ステップ及び/又は特徴を実行してこそ本開示内容の実施形態を実現できるとは限らない。また、ここに記載の各操作又はステップは、複数のサブステップ又は動作を含んでよい。
【0030】
青色光に関する研究結果によると、460ナノメートル~500ナノメートルの高エネルギーの青色光は、記憶と認知機能に寄与し、心地よくすることが示されているため、青色光は有益な青色光である。しかしながら、380ナノメートル~460ナノメートルの青色光は、人の目に傷害を与えやすいため、有害な青色光である。本開示内容は、優れた抗青色光特性を有する青色光遮断コンタクトレンズを提供し、幾つかの実施形態において、本開示内容のコンタクトレンズは、波長380ナノメートル~460ナノメートルの有害な青色光に対する遮断率が5%~30%である。また、本開示内容のコンタクトレンズは、赤色、オレンジ色、黄色、緑色、青色又は灰色等の色付きコンタクトレンズであり、この色付きコンタクトレンズは、抗青色光特性を有するとともに、優れた美観性を有する。本開示内容は、コンタクトレンズ製造用の組成物を硬化させる前に、まず親水性モノマーで染料を前処理し、即ち、両者を混合するか又は両者を反応させることで、染料のコンタクトレンズ形成用の組成物における溶解度を向上させ、コンタクトレンズの演色性と青色光遮断率を向上させる青色光遮断コンタクトレンズの製造方法をも提供する。換言すれば、前処理された染料を組成物に加えることで、レシピの相溶性を効果的に向上させ、レンズの色の鮮やかさとレンズの色の均一性を向上させ、且つレンズの青色光に対する遮断率を向上させ、多彩なコンタクトレンズを得ることができる。また、本開示内容のコンタクトレンズは、ハイドロゲルコンタクトレンズ又はシリコンハイドロゲルコンタクトレンズであってよい。以下、本開示内容の各種の実施形態をそれぞれ説明する。
【0031】
本開示内容は、組成物を硬化させることで形成される青色光遮断コンタクトレンズを提供する。この組成物は、第1の親水性モノマーと黄色染料とが混合されてなるか又は反応してなる青色光遮断成分と、第2の親水性モノマーと第1の有色染料とが混合されてなるか又は反応してなる第1の有色染料成分と、少なくとも1つの第3の親水性モノマーと、架橋剤と、開始剤と、を含む。この青色光遮断成分は、第1の親水性モノマーで黄色染料を前処理することにより形成される。一方、第1の有色染料成分は、第2の親水性モノマーで緑色染料、シアン染料、青色染料、オレンジ色染料、赤色染料、黒色染料又はそれらの組み合わせを含む第1の有色染料を前処理することにより形成される。黄色染料及び第1の有色染料がいずれも前処理されたため、両者の組成物における溶解度及び両者と他の成分の相溶性を大幅に向上させ、コンタクトレンズが優れた演色性と青色光遮断率を有するようにすることができる。幾つかの実施形態において、組成物は、1つ又は複数の青色光遮断成分を含み、この複数の青色光遮断成分は、前処理された異なる黄色染料を含む。
【0032】
コンタクトレンズ製造用の組成物は、1種又は2種、3種若しくは4種等の複数の異なる有色染料成分を含んでよい。幾つかの実施形態において、組成物は、第1の有色染料成分及び第2の有色染料成分を含み、第2の有色染料成分は、第4の親水性モノマーと、緑色染料、シアン染料、青色染料、オレンジ色染料、赤色染料、黒色染料又はそれらの組み合わせを含む第2の有色染料とが混合されてなるか又は反応してなる。第1の有色染料成分と第2の有色染料成分の色は、同じであってもよく、又は異なってもよい。複数の有色染料成分を混合することにより、異なる色のコンタクトレンズを作り出すことができる。例えば、組成物は、青色光遮断成分(前処理された黄色染料を含有する)及び紫色コンタクトレンズを形成するために使用可能な2種の有色染料成分(前処理された青色染料及び赤色染料を含有する)を含む。別の幾つかの実施形態において、組成物は、色が第1の有色染料成分及び/又は第2の有色染料成分と同じであってもよく又は異なってもよい第3の有色染料成分を更に含み、第3の有色染料成分の実施形態は、第2の有色染料成分の実施形態を参照してよく、繰り返して説明しない。
【0033】
幾つかの実施形態において、第1の親水性モノマー、第2の親水性モノマー、第3の親水性モノマー及び第4の親水性モノマーは、独立してN-ビニルピロリドン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン及び2-ヒドロキシブチルメタクリレートからなる群から選択される。
【0034】
幾つかの実施形態において、組成物100wt%で、黄色染料は、0.01wt%~2wt%であり、第1の有色染料は、0.01wt%~2wt%である。黄色染料は、例えば0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5又は2wt%である。第1の有色染料は、例えば0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5又は2wt%である。幾つかの実施形態において、組成物100wt%で、黄色染料は、0.01wt%~2wt%であり、第1の有色染料と第2の有色染料の合計は0.01wt%~2wt%である。合計は、例えば0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5又は2wt%である。重量百分率が上記範囲内にある場合、コンタクトレンズが優れた演色性と優れた青色光遮断率を有するようにすることができ、且つ着用者に依然として良好な視覚体験を与えることができる。
【0035】
幾つかの実施形態において、黄色染料は、0.01重量部~2重量部であり、第1の有色染料は、0重量部より大きく2重量部以下である。黄色染料は、例えば0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5又は2重量部である。第1の有色染料は、例えば0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5又は2重量部である。重量部が上記範囲内にある場合、コンタクトレンズが優れた演色性と青色光遮断率を有するようにすることができ、且つ着用者に依然として良好な視覚体験を与えることができる。幾つかの実施形態において、第1の親水性モノマー、第2の親水性モノマー及び第3の親水性モノマーは30~99重量部である。別の幾つかの実施形態において、第1の親水性モノマー、第2の親水性モノマー、第3の親水性モノマー及び第4の親水性モノマーは30~99重量部である。
【0036】
幾つかの実施形態において、黄色染料と第1の親水性モノマーとの重量比は、1:0.1~1:10であり、この範囲は、両者が最適な相溶性を有することを可能にする。重量比は、例えば1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:5又は1:10である。幾つかの実施形態において、第1の有色染料と第2の親水性モノマーとの重量比は、1:0.1~1:10であり、この範囲は、両者が最適な相溶性を有することを可能にする。重量比は、例えば1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:5又は1:10である。幾つかの実施形態において、第2の有色染料と第4の親水性モノマーとの重量比は、1:0.1~1:10であり、この範囲は、両者が最適な相溶性を有することを可能にする。重量比は、例えば1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:5又は1:10である。重量部が上記範囲内にある場合、黄色染料、第1の有色染料及び第2の有色染料が組成物において優れた溶解度と優れた相溶性を有し、コンタクトレンズが優れた演色性を有するようにすることができる。
【0037】
幾つかの実施形態において、黄色染料は、リアクティブイエロー15、リアクティブイエロー86及びリアクティブイエロー83からなる群から選択される。
【0038】
幾つかの実施形態において、第1の有色染料及び第2の有色染料は、独立してエチレン系重合性基、スルホン酸基、スルホニル基、スルホン酸塩基、アミド基又はそれらの組み合わせを有する。例えば、第1の有色染料及び第2の有色染料は、独立してリアクティブブルー4、リアクティブブルー19、リアクティブブルー21、リアクティブブルー69、リアクティブブルー163、リアクティブブルー246、リアクティブブルー247、リアクティブレッド11、リアクティブレッド180、リアクティブブラック、リアクティブオレンジ78及びピグメントグリーンからなる群から選択される。
【0039】
幾つかの実施形態において、架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate)、ジエチレングリコールジメタクリレート(diethylene glycol dimethacrylate)、トリエチレングリコールジメタクリレート(triethylene glycol dimethacrylate)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(tetraethylene glycol dimethacrylate)、アリルメタクリレート(allyl methacrylate)、エチレングリコールジアリルエーテル(ethylene glycol diallyl ether)、トリエチレングリコールジアリルエーテル(triethylene glycol diallyl ether)、テトラエチレングリコールジアリルエーテル(tetraethylene glycol diallyl tetravinylethylene glycol diene)、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリヒドラジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン(1,3,5-triallyl-1,3,5-triazine-2,4,6(1H,3H,5H)-trione)及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(1,1,1-trimethylolpropane trimethacrylate)からなる群から選択される。
【0040】
幾つかの実施形態において、開始剤は、ホスフィンオキシド系開始剤(phosphine-oxide-based initiator)及びメタロセン型チタン化合物系開始剤(titanium metallocene-based initiator))からなる群から選択される。例えば、ホスフィンオキシド系開始剤は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(diphenyl(2,4,6-triphenyl)phosphine oxide)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(bis(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenyl phosphine oxide)及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(bis(2,6-dimethoxylbenzoyl)(2,4,4-trimethylpentyl)phosphine oxide)からなる群から選択される。例えば、メタロセン型チタン化合物系開始剤は、ジシクロペンタジエニルビス[2,4-ジフルオロ-3-(1-ピロリル)フェニル]チタン(dicyclopentadienyl bis[2,4-difluoro-3-(1-pyrrolyl)phenyl]titanium)を含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、青色光遮断コンタクトレンズを製造するための組成物は、紫外光遮断モノマーを更に含む。例えば、紫外光遮断モノマーは、ベンゾフェノン(benzophenone)を有するモノマー及びベンゾトリアゾール(benzotriazole)を有するモノマーからなる群から選択される。ベンゾフェノンのモノマーは、例えば4-メタクリロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン(4-methacryloxy-2-hydroxy benzophenone)、4-(2-アクリロキシエトキシ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン(4-(2-acryloxyethoxy-2-hydroxy benzophenone)又はそれらの組み合わせを含む。
【0042】
本開示内容は、第1の親水性モノマーと黄色染料を混合して、第1の混合液を形成する操作と、第1の混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、青色光遮断成分を形成する操作と、第2の親水性モノマーと第1の有色染料を混合して、第2の混合液を形成する操作と、第2の混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、第1の有色染料成分を形成する操作と、青色光遮断成分、第1の有色染料成分、少なくとも1つの第3の親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を含有する組成物を硬化させ、コンタクトレンズを形成する操作と、を含む前述した何れか1つの実施形態による青色光遮断コンタクトレンズの製造方法を提供する。上記加熱温度が80℃より高いと、多過ぎた副生成物が生成され、染料の結合率が低下し、レンズの青色光遮断率が低くなるおそれがある。幾つかの実施形態において、第1の混合液又は第2の混合液の加熱温度は25、35、45、55、65、75又は80℃である。幾つかの実施形態において、第1の混合液又は第2の混合液の加熱時間は0.5、1、5、10、15、20又は24時間である。幾つかの実施形態において、コンタクトレンズは、ハイドロゲルコンタクトレンズ又はシリコンハイドロゲルコンタクトレンズである。幾つかの実施形態において、組成物は、ケイ素含有モノマーを更に含む。幾つかの実施形態において、上記硬化操作は、組成物をプラスチック製の雄型と雌型の中間層内に注入し、紫外光により組成物を重合させ、硬化させ、固体レンズを形成することである。その後、固体レンズを水和膨張させ、コンタクトレンズ包装液に置いてから密封と高温滅菌処理を行い、青色光遮断コンタクトレンズを製造する。
【0043】
幾つかの実施形態において、方法は、第1の混合液を加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を第1の混合液に加えることを更に含むため、加熱操作は、第1の親水性モノマー、黄色染料、アルカリ性物質及び阻害剤を含有する第1の混合液を加熱することである。従って、加熱後、第1の親水性モノマーと黄色染料は結合して、青色光遮断成分を形成する。上記操作により、黄色染料は「合成法」で前処理され、青色光遮断成分の組成物における溶解度が向上し、コンタクトレンズの演色性と青色光遮断率が向上する。幾つかの実施形態において、第1の混合液のpH値は10~14である。pH値は、例えば10、11、12、13又は14である。幾つかの実施形態において、阻害剤は、ヒドロキノンモノメチルエーテル(Mequinol;MeHQ)を含む。幾つかの実施形態において、アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム(NaOH)を含む。幾つかの実施形態において、第1の混合液は、水を含有しない。染料の添加量が同じである実験条件で、無水環境で反応させる場合、レンズの青色光遮断率を高くすることができる。一方、含水環境で反応させる場合、レンズの青色光遮断率が低くなる。
【0044】
以下は、親水性モノマーであるグリセリンモノメタクリレート(GMMA)でリアクティブイエロー15(Reactive Yellow 15)を前処理し、アルカリ性環境で青色光遮断成分を形成する反応フローである。まず、リアクティブイエロー15は、水酸化ナトリウム(NaOH)及び阻害剤(MeHQ)の存在下で、ビニル基を有するリアクティブイエロー15を形成し、更にGMMAと反応して青色光遮断成分を形成する。前処理されていないリアクティブイエロー15に比べて、GMMAで前処理されたリアクティブイエロー15は、コンタクトレンズを形成する組成物においてより優れた溶解度と相溶性を有し、その演色性と青色光遮断率を向上させることができる。以下の反応フローは、エチレン系重合性基(ethylenically-base polymerizable group)、スルホン酸基(sulfonic group)、スルホニル基(sulfonyl group)、スルホン酸塩基(sulfonate group)、アミド基(amide group)又はそれらの組み合わせを有する染料に適用可能である。
【化1】
【0045】
幾つかの実施形態において、第1の混合液には、アルカリ性物質及び阻害剤が添加されておらず、例えば水酸化ナトリウム及びMeHQが添加されていないため、加熱後の混合物では、第1の親水性モノマーと黄色染料は結合を形成せず、この混合物は青色光遮断成分である。上記操作により、黄色染料は「混合法」で前処理され、後続の青色光遮断成分の組成物における溶解度が向上し、コンタクトレンズの演色性が向上する。コンタクトレンズの組成物を配合する時、処理されていない黄色染料、親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を直接混合すれば、黄色染料は、相溶性が足りない問題を抱えており、コンタクトレンズの演色性が足りず、且つ抗青色光効果が好ましくないことに留意されたい。幾つかの実施形態において、第1の混合液は、水を含有しない。
【0046】
幾つかの実施形態において、方法は、第2の混合液を25℃~80℃まで加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を第2の混合液に加えることを更に含むため、加熱操作は、第2の親水性モノマー、第1の有色染料、アルカリ性物質及び阻害剤を含有する第2の混合液を加熱することである。従って、加熱後、第2の親水性モノマーと第1の有色染料は結合して、第1の有色染料成分を形成する。上記操作により、第1の有色染料は「合成法」で前処理され、第1の有色染料成分の組成物における溶解度が向上し、コンタクトレンズの演色性が向上する。幾つかの実施形態において、第2の混合液のpH値は10~14である。pH値は、例えば10、11、12、13又は14である。幾つかの実施形態において、阻害剤は、ヒドロキノンモノメチルエーテルを含む。幾つかの実施形態において、アルカリ性物質は、水酸化ナトリウムを含む。幾つかの実施形態において、第2の混合液は、水を含有しない。染料の添加量が同じである実験条件で、無水環境で反応させる場合、レンズの青色光遮断率を高くすることができる。一方、含水環境で反応させる場合、レンズの青色光遮断率が低くなる。
【0047】
幾つかの実施形態において、第2の混合液には、アルカリ性物質及び阻害剤が添加されておらず、例えば水酸化ナトリウム及びMeHQが添加されていないため、加熱後の混合物では、第2の親水性モノマーと第1の有色染料成分は結合を形成せず、この混合物は第1の有色染料成分である。上記操作により、第1の有色染料は「混合法」で前処理され、後続の第1の有色染料成分の組成物における溶解度が向上し、コンタクトレンズの演色性が向上する。コンタクトレンズの組成物を配合する時、処理されていない第1の有色染料、親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を直接混合すれば、第1の有色染料は、相溶性が足りない問題を抱えており、コンタクトレンズの演色性が足りなくなることに留意されたい。幾つかの実施形態において、第2の混合液は、水を含有しない。
【0048】
幾つかの実施形態において、方法は、第4の親水性モノマーと第2の有色染料を混合して、第3の混合液を形成し、第3の混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、第2の有色染料成分を形成することを更に含む。第2の有色染料成分を組成物に加えてから、硬化操作を実行する。上記加熱温度が80℃より高いと、多過ぎた副生成物が生成され、染料の結合率が低下し、レンズの青色光遮断率が低くなるおそれがある。幾つかの実施形態において、方法は、第3の混合液を25℃~80℃まで加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を第3の混合液に加えることを更に含む。幾つかの実施形態において、第3の混合液にはアルカリ性物質及び阻害剤が添加されていない。第3の混合液の実施形態は、第2の混合液の実施形態を参照してよく、繰り返して説明しない。
【0049】
幾つかの実施形態において、ケイ素含有モノマーは、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート(TRIS;3-[Tris(trimethylsiloxy)silyl]propyl methacrylate)、(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(SiGMA;(3-Methacryloxy-2-hydroxypropoxy)propylbis(trimethylsiloxy)methylsilane)、3-メタクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(3-Methacryloxy propyltris(trimethylsiloxy)silane)、3-アクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(3-acryloxy propyltris(trimethylsiloxy)silane)、3-アクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(3-acrylamide propyltris(trimethylsiloxy)silane)、3-メタクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(3-Methacrylamide propyltris(trimethylsiloxy)silane)、3-ビニルアクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(3-Vinylacrylamide propyltris(trimethylsiloxy)silane)、α-アクリルアミドプロピル-ω-ブチルポリジメチルシロキサン(α-acrylamidopropyl-ω-butylpolydimethylsiloxane)又はそれらの組み合わせを含む。
【0050】
本開示内容は、組成物を硬化させることで形成される青色光遮断コンタクトレンズを提供する。組成物は、青色光遮断成分と、少なくとも1つの親水性モノマーと、架橋剤と、開始剤と、を含む。青色光遮断成分は、グリセリンモノメタクリレート(GMMA)と黄色染料とが混合されてなるか又は反応してなる。幾つかの実施形態において、コンタクトレンズは、ハイドロゲルコンタクトレンズ又はシリコンハイドロゲルコンタクトレンズである。幾つかの実施形態において、組成物は、ケイ素含有モノマーを更に含む。
【0051】
幾つかの実施形態において、黄色染料は、リアクティブイエロー15、リアクティブイエロー86及びリアクティブイエロー83からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、組成物100wt%で、黄色染料は、0.01wt%~2wt%である。黄色染料は、例えば0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5又は2wt%である。重量百分率が上記範囲内にある場合、コンタクトレンズが優れた演色性と優れた青色光遮断率を有するようにすることができ、且つ着用者に依然として良好な視覚体験を与えることができる。
【0052】
幾つかの実施形態において、黄色染料とグリセリンモノメタクリレートの重量比は、1:0.1~1:10である。重量比は、例えば1:0.1、1:0.5、1:1、1:2、1:5又は1:10である。重量部が上記範囲内にある場合、黄色染料が組成物において優れた溶解度と優れた相溶性を有し、コンタクトレンズが優れた演色性と青色光遮断率を有するようにすることができる。
【0053】
本開示内容は、グリセリンモノメタクリレートと黄色染料を混合して、混合液を形成する操作と、混合液を25℃~80℃まで加熱し、加熱時間を0.5時間~24時間とし、青色光遮断成分を形成する操作と、青色光遮断成分、少なくとも1つの親水性モノマー、架橋剤及び開始剤を含有する組成物を硬化させ、コンタクトレンズを形成する操作と、を含む前述した何れか1つの実施形態による青色光遮断コンタクトレンズの製造方法を提供する。幾つかの実施形態において、混合液の加熱温度は25、35、45、55、65、75又は80℃である。幾つかの実施形態において、混合液の加熱時間は0.5、1、5、10、15、20又は24時間である。硬化操作は、前述した実施形態を参照されたく、繰り返して説明しない。
【0054】
幾つかの実施形態において、方法は、混合液を25℃~80℃まで加熱する前に、アルカリ性物質及び阻害剤を混合液に加えることを更に含む。幾つかの実施形態において、混合液のpH値は10~14である。pH値は、例えば10、11、12、13又は14である。幾つかの実施形態において、阻害剤は、ヒドロキノンモノメチルエーテルを含む。幾つかの実施形態において、アルカリ性物質は、水酸化ナトリウムを含む。幾つかの実施形態において、混合液には、アルカリ性物質及び阻害剤が添加されていない。幾つかの実施形態において、混合液は、水を含有しない。染料の添加量が同じである実験条件で、無水環境で反応させる場合、レンズの青色光遮断率を高くすることができる。一方、含水環境で反応させる場合、レンズの青色光遮断率が低くなる。幾つかの実施形態において、コンタクトレンズは、ハイドロゲルコンタクトレンズ又はシリコンハイドロゲルコンタクトレンズである。上記したGMMAで黄色染料を処理する実施形態の利点は、前述した第1の混合液に関する実施形態を参照されたく、繰り返して説明しない。
【0055】
以下、実験例を参照しながら、本開示内容の特徴をより具体的に説明する。以下の実験例を説明するが、本開示内容の範疇を超えていない限り、使用される材料、その量及び割合、処理の細部及び処理フロー等は適切に変えられてよい。従って、以下に記載の実験例によって本開示内容を限定的に解釈すべきではない。
【0056】
実験例:コンタクトレンズの製造
【0057】
コンタクトレンズの製造は、以下の操作を含む。青色光遮断コンタクトレンズのハイドロゲル又はシリコンハイドロゲル組成物を、プラスチック製の雄型と雌型の中間層内に注入し、紫外光により組成物を重合させ、硬化させ、固体レンズを形成する。固体レンズを取り出した後に水和膨張させ、その後、コンタクトレンズ包装液に置いてから密封と高温滅菌処理(125℃、30分)を行い、多彩な青色光遮断コンタクトレンズの製造が完了した。
【0058】
青色光遮断コンタクトレンズのハイドロゲル組成物は、1種以上の親水性モノマーと、青色光遮断成分と、架橋剤と、開始剤と、を含む。青色光遮断コンタクトレンズのシリコンハイドロゲル組成物は、1種以上の親水性モノマーと、青色光遮断モノマーと、架橋剤と、開始剤と、ケイ素含有モノマーと、を含む。親水性モノマーは、GMMA、HEMA又はそれらの組み合わせを含む。架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレートを含む。開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドを含む。ハイドロゲル又はシリコンハイドロゲル組成物は、1種の有色成分又は2種の有色成分を更に含んでよい。青色光遮断成分は、「合成法」又は「混合法」で前処理された黄色染料を含む。有色成分は、「合成法」又は「混合法」で前処理された緑色染料、青色染料、オレンジ色染料、赤色染料又は黒色染料を含む。「合成法」は、25℃~80℃で親水性モノマーグリセリンモノメタクリレート(GMMA)、染料、アルカリ性物質である水酸化ナトリウム(NaOH)及び阻害剤MeHQを含有する混合液を加熱するものであり、加熱時間は少なくとも12時間である。「混合法」は、25℃~80℃で親水性モノマーグリセリンモノメタクリレート(GMMA)及び染料を含有する混合液を加熱するものであり、加熱時間は少なくとも12時間である。「合成法」では、染料とGMMAの重量比は、1:10であり、MeHQは約0.07wt%であり、水酸化ナトリウムは約1wt%である。
【0059】
以下の表1及び表2を参照されたく、それぞれ実施例1~実施例25における各組成物の成分及び配合割合、並びに製造されたレンズ及びその色と青色光遮断率が列挙されている。染料が「混合法」で前処理された場合、M1とマークし、染料が「合成法」で前処理された場合、M2とマークした。
図1を参照されたく、
図1は、本開示内容の各種の実施形態による製造方法で得られたコンタクトレンズである。
図1における各レンズに対応する透過率スペクトログラムは、
図2~
図7を参照されたい。
図1には、暗赤色レンズR1、赤褐色レンズR2、橙赤色レンズO1、オレンジ色レンズO2、橙黄色レンズO3、琥珀色レンズY1、暗黄色レンズY2、黄色レンズY3、黄緑色レンズG1、緑色レンズG2、明緑色レンズG3、青色レンズB1、灰青色レンズB2、インジゴレンズP1、紫色レンズP2及び灰色レンズGが含まれる。
図1のレンズは、それぞれ表1及び表2における実施例8~実施例23のレンズに対応する。
図2~
図7には、それぞれ上記レンズに対応する光吸収率の曲線r1、r2、o1、o2、o3、y1、y2、y3、g1、g2、g3、b1、b2、p1、p2及びg、並びに染料が含有されていないブランクレンズの光吸収率の曲線BLANKが示されている。
図1から分かるように、本開示内容は、多様な色を有する多彩なコンタクトレンズを形成することができ、且ついずれも鮮やかな色を有し、抗青色光効果と着用時の美観性を兼ね備えることができる。紫外光/可視光分光光度計を利用してコンタクトレンズレンズの光透過率を計測し、マシンプログラムにより計算することで、380ナノメートル~460ナノメートルの平均青色光透過率(T%)、即ち、平均有害青色光透過率を取り出し、続いて100%から平均青色光透過率(T%)を差し引き、表1及び表2の青色光遮断率、即ち、有害青色光遮断率を得ることができる。換言すれば、青色光遮断率%=100%-青色光透過率(T%)である。
【表1】
【表2】
【0060】
表1及び表2に示すように、実施例1~実施例25の青色光遮断コンタクトレンズの有害青色光遮断率は、5.57%~26.27%の間にある。従って、本開示内容の青色光遮断コンタクトレンズは、実質的に5%~30%の有害青色光遮断率を達成することができる。実施例1~実施例24によれば、ハイドロゲルコンタクトレンズを製造することができるが、実施例25によれば、シリコンハイドロゲルコンタクトレンズを製造することができる。実施例25では、染料のリアクティブイエロー15を約0.100wt%添加し、且つ合成法を採用して前処理することで、レンズが26.27%の青色光遮断率を有することができる。以上から分かるように、本開示内容の前処理方法は、シリコンハイドロゲル組成物系においてより好適な青色光遮断率効果を達成することができる。
【0061】
有害な青色光に対する遮断率は、主に黄色染料の濃度と前処理によって影響され、他の非黄色染料による影響が小さい。以下の表3には、リアクティブイエロー15のみを使用して製造する実施例が列挙されている。
【表3】
【0062】
実施例2と実施例7を比較し、両者のレンズの外観色がいずれも黄色であり、リアクティブイエロー15の含有量がいずれも約0.150wt%であった。実施例2では、混合法M1でリアクティブイエロー15を前処理し、レンズの青色光遮断率が13.05%であったが、実施例7では、合成法M2でリアクティブイエロー15を前処理し、レンズの青色光遮断率を25.29%まで大幅に向上させることができ、実施例2よりも12.24%高い。換言すれば、実施例7のレンズの青色光遮断率は、実施例2のレンズの青色光遮断率の約2倍である。以上から分かるように、黄色染料の割合が同じである場合、合成法で染料を前処理することで、レンズの有害な青色光に対する遮断効果を大幅に向上させることができる。
【0063】
実施例2と実施例8を比較し、実施例8では、僅か0.085wt%のリアクティブイエロー15を添加し、且つ合成法M2で前処理し、レンズの青色光遮断率が14.66%に達することができるが、実施例2では、0.150wt%のリアクティブイエロー15を添加し、且つ混合法M1で前処理し、レンズの青色光遮断率が13.05%であった。以上から分かるように、合成法で染料を前処理すれば、少量の染料を添加する場合でも、レンズが依然として優れた青色光遮断率を有することができる。実施例8と実施例2を比較し、実施例8の添加量は、0.065wt%減少可能であり、且つ、水和過程で、実施例8において作り出された製品は、水洗による染料の溶出量を低減し、工程廃水を減らすこともできる。実施例6と実施例7を比較し、レンズが25%の青色光遮断率を達成する必要がある場合、実施例6では、0.301wt%のリアクティブイエロー15を使用する必要があるが、実施例7では、僅か0.150wt%のリアクティブイエロー15を使用し、添加量が0.151wt%減少可能である。以上から分かるように、合成法で染料を前処理することで、レンズの有害な青色光に対する遮断効果を大幅に向上させることができる。
【0064】
以上を纏めると、本開示内容は、青色光遮断コンタクトレンズ及びその製造方法を提供し、「合成法」又は「混合法」で親水性モノマーにより各種の色の染料を前処理してから、他のコンタクトレンズ製造用の材料(例えば他の親水性モノマー、架橋剤、開始剤又はケイ素含有モノマー)と混合し、続いて硬化させてレンズを形成することで、演色性に優れるとともに鮮やかな色彩を有するコンタクトレンズを製造することができ、同時にコンタクトレンズが優れた抗青色光効果を有する。「混合法」に比べれば、「合成法」は、染料の組成物における溶解度と相溶性をより効果的に向上させることができ、且つ更にプロセス廃水を減らすことができる。また、本開示内容の方法は、複数種の染料の組み合わせを使用することで多彩なレンズの製造の実現可能性を向上させることができる。
【0065】
幾つかの実施形態を参照しながら本開示内容をかなり詳しく説明したが、他の実施形態もあり得る。従って、添付される特許請求の範囲の精神と範囲は、ここに含まれる実施形態の説明に限定されるものではない。
【0066】
当業者にとって、本開示内容の範囲又は精神から逸脱しない限り、本開示内容の構造に様々な修正と変更を行えることが明らかである。前述した内容に鑑み、本開示内容は、添付される特許請求の範囲内にある本開示内容に対する修正と変更を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0067】
B1 青色レンズ
B2 灰青色レンズ
G 灰色レンズ
G1 黄緑色レンズ
G2 緑色レンズ
G3 明緑色レンズ
O1 橙赤色レンズ
O2 オレンジ色レンズ
O3 橙黄色レンズ
P1 インジゴレンズ
P2 紫色レンズ
R1 暗赤色レンズ
R2 赤褐色レンズ
Y1 琥珀色レンズ
Y2 暗黄色レンズ
Y3 黄色レンズ
BLANK、b1、b2、g、g1、g2、g3、o1、o2、o3、p1、 p2、r1、r2、y1、y2、y3 曲線
【国際調査報告】