IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ギーゼッケ・ウント・デブリエント・カレンシー・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特表2024-541173シート材料を保持するためのシート材料ホルダ
<>
  • 特表-シート材料を保持するためのシート材料ホルダ 図1
  • 特表-シート材料を保持するためのシート材料ホルダ 図2
  • 特表-シート材料を保持するためのシート材料ホルダ 図3
  • 特表-シート材料を保持するためのシート材料ホルダ 図4
  • 特表-シート材料を保持するためのシート材料ホルダ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シート材料を保持するためのシート材料ホルダ
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/30 20060101AFI20241031BHJP
   G07D 11/12 20190101ALI20241031BHJP
   B65H 5/14 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B65H31/30
G07D11/12
B65H5/14 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515589
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022025468
(87)【国際公開番号】W WO2023066516
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】102021005218.8
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518041917
【氏名又は名称】ギーゼッケ・ウント・デブリエント・カレンシー・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Giesecke+Devrient Currency Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Prinzregentenstrasse 161, 81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ケーニガー,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ニックレム,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3E141
3F054
3F101
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA07
3E141FC05
3E141FL06
3F054AA03
3F054AB01
3F054AC06
3F054BA02
3F054BB16
3F054BC01
3F054BG07
3F054BJ03
3F101CA12
3F101CC01
3F101CC19
3F101CF07
3F101LA08
3F101LB04
(57)【要約】
把持システム用の、シート材料(2)を保持するためのシート材料ホルダ(300)が記載され、これは、シート材料ホルダ(300)がシート材料(2)を保持しているときに第一の表面(28)においてシート材料(2)と関わるように設計され、第一の表面(28)は少なくとも1つの第一の開口(30)を含み、シート材料ホルダ(300)は、シート材料ホルダ(300)がシート材料(2)を保持しているときに、流体を第一の開口(30)を通じて第一の所定の排出方向(32)に沿ってシート材料(2)の方向に排出できるように設計される。シート材料ホルダ(300)を有する把持システム(200)及び載置システム(100)も記載されている。シート材料(2)の載置方法も提供され、これは、シート材料(2)がシート材料ホルダ(300)によって保持されているときに載置シート材料(2)を載置位置へと移動させること(502)と、流体を第一の開口(30)からシート材料(2)の方向に排出させること(504)と、流体の排出中に、シート材料ホルダ(300)をシート材料(2)に関して移動させて、シート材料(2)がシート材料ホルダ(300)から載置されるようにすること(506)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持システム(200)用の、シート材料(2)を保持するためのシート材料ホルダ(300)において、
前記シート材料ホルダ(300)は第一の表面(28)を有し、
前記シート材料ホルダ(300)は、前記シート材料ホルダ(300)が前記シート材料(2)を保持しているときに前記第一の表面(28)で前記材料(2)と関わるように設計され、
前記第一の表面(28)は少なくとも1つの第一の開口(30)を有し、
前記シート材料ホルダ(300)は、前記シート材料ホルダ(300)が前記シート材料(2)を保持しているときに流体を前記第一の開口(30)から第一の所定の排出方向(32)沿って前記シート材料(2)の方向に排出できるように設計されるシート材料ホルダ(300)。
【請求項2】
前記シート材料ホルダ(300)は、前記シート材料ホルダ(300)が前記シート材料(2)を保持しているときに、前記第一の所定の排出方向(32)が前記シート材料(2)の法線(34)の方向であるか、前記シート材料(2)の法線(34)に対して鋭角で、特に最大45°で延びるように設計される、
請求項1に記載のシート材料ホルダ(300)。
【請求項3】
前記シート材料ホルダ(300)は1つ又は複数の指状部材(36)を有し、これは前記第一の表面(28)を形成する、
請求項1及び2の何れか1項に記載のシート材料ホルダ(300)。
【請求項4】
前記指状部材(36)の1つ又は複数又は全部はそれぞれ、前記第一の開口(30)のうちの少なくとも1つを有し、好ましくは前記第一の開口のうちの少なくとも2つは前記それぞれの指状部材の長さ方向に沿って配置される、
請求項3に記載のシート材料ホルダ(300)。
【請求項5】
前記シート材料ホルダ(300)は第二の表面(56)を有し、
前記第二の表面(56)は少なくとも1つの第二の開口(58)を有し、
前記シート材料ホルダ(300)は、前記シート材料ホルダ(300)が前記シート材料(2)を保持しているときに、流体を前記少なくとも1つの第二の開口(58)通じて前記シート材料(2)の前記方向から第二の所定の排出方向(60)に排出できるように設計される、
請求項1~4の何れか1項に記載のシート材料ホルダ(300)。
【請求項6】
前記シート材料ホルダ(300)は、前記シート材料ホルダ(300)が前記シート材料(2)を保持しているときに、前記第二の所定の排出方向(60)が前記シート材料(2)の法線(34)であるか、前記シート材料(2)の法線(34)に対して鋭角、特に45°で延びるように設計される、
請求項5に記載のシート材料ホルダ(300)。
【請求項7】
前記第二の表面は、前記第一の表面から前記シート材料ホルダの反対側にある、
請求項5又は6に記載のシート材料ホルダ(300)。
【請求項8】
前記シート材料ホルダ(300)はアディティブマニュファクチャリング方式により製造される、請求項1~7に記載のシート材料ホルダ(300)。
【請求項9】
シート材料(2)を保持するための把持システム(200)において、
請求項1~8の何れか1項に記載の第一のシート材料ホルダ(300)と、
請求項1~8の何れか1項に記載の第二のシート材料ホルダ(300)と、
を含み、
前記シート材料ホルダ(300)は前記把持システム上に、前記第一のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)が前記第二のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)と対向しするように配置され、前記把持システムは、前記第一のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)と前記第二のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)との間にシート材料(2)を保持するように設計される把持システム(200)。
【請求項10】
前記シート材料ホルダ(300)は、前記第一のシート材料ホルダ(300)を前記第二のシート材料ホルダ(300)に関して移動させて、前記第一のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)と前記第二のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)との間の距離を変化させることができるように配置される、請求項9に記載の把持システム(200)。
【請求項11】
前記把持システムは並進ドライブ(5)を有し、これは、前記第一のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)と前記第二のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)との間の前記距離を変化させて、特に前記シート材料(2)を前記シート材料ホルダ(300)からリリースさせるように設計される、
請求項9又は10に記載の把持システム(200)。
【請求項12】
前記シート材料ホルダ(300)は、前記第一のシート材料ホルダ(300)と前記第二のシート材料ホルダ(300)が何れのシート材料(2)も保持していないときに、前記第一のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)が前記第二のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)に関して斜めであるように配置され、
前記把持システム(20)は特に、前記第一のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)が、復元力に対抗して、前記第二のシート材料ホルダ(300)の前記第一の表面(28)に平行に整列できるように設計される、
請求項9、10、又は11に記載の把持システム(200)。
【請求項13】
シート材料(2)を載置するための載置システム(100)において、
- 請求項1~8の何れか1項に記載の1つ又は2つのシート材料ホルダ(300)又は請求項9~12の何れか1項に記載の前記把持システム(200)と、
- 任意選択により、前記シート材料ホルダ(300)に流体的に接続され、流体を前記少なくとも1つの第一の開口(30)から前記シート材料(2)の方向に排出するように設計される流体供給ユニット(8)と、
- 前記シート材料ホルダ(300)(複数の場合もある)を移動させるように設計される移動システム(4)と、
- 前記移動システム(4)に対し、前記シート材料(2)が前記シート材料ホルダ(300)(複数の場合もある)により保持されているときに載置位置へと移動させるように命令し、
前記シート材料ホルダ(300)の並進ドライブ(5)に対し、前記シート材料ホルダ(300)(複数の場合もある)間の距離を増大させて、前記シート材料ホルダ(300)(複数の場合もある)から前記シート材料(2)をリリースさせるように命令し、
前記流体供給ユニット又は、前記載置システムに接続可能な流体供給ユニット(8)に対し、前記流体を前記少なくとも1つの第一の開口(30)から排出するように命令し、
前記移動システム(4)に対し、前記流体の前記排出中に前記シート材料ホルダ(300)を前記シート材料(2)に関して、前記シート材料(2)が前記シート材料ホルダ(300)から載置されるように移動させるように命令する
ように設計される制御装置(16)と、
を含む載置システム(100)。
【請求項14】
シート材料(2)の載置方法において、
- シート材料(2)を載置位置へと移動させるステップ(502)であって、前記シート材料(2)は少なくとも1つのシート材料ホルダにより保持され、前記少なくとも1つのシート材料ホルダのある表面は前記シート材料(2)と関わるステップ(502)と、
- 前記少なくとも1つのシート材料ホルダの第一のものと第二のものとの間の距離を増大させて、前記第一のシート材料ホルダと前記第二のシート材料ホルダとの間に保持された前記シート材料(2)を前記シート材料ホルダ(300)(複数の場合もある)からリリースさせるステップ(504)と、
- 流体を前記少なくとも1つのシート材料ホルダの前記表面の少なくとも1つの開口から排出するステップ(508)であって、前記流体は前記シート材料(2)の方向に排出されるステップ(508)と、
- 前記流体の前記排出ステップ中に前記少なくとも1つのシート材料ホルダを前記シート材料(2)に関して移動させて、前記シート材料(2)が前記少なくとも1つのシート材料ホルダから載置されるようにするステップ(506)と、
を含む方法。
【請求項15】
前記流体の前記排出ステップ(508)は、前記シート材料の前記載置ステップ(506)のためにのみ、特に、載置の目的のために実行される前記少なくとも1つのシート材料ホルダを前記シート材料に関して移動させる前記ステップの前でも、又はそれと同時にも開始される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持システム用の、シート材料を保持するためのシート材料ホルダに関する。本発明はさらに、シート材料を保持するための把持システムに関する。本発明によれば、シート材料を載置するための方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
多くの利用分野において、シート材料、例えば有価書類、紙、又はフィルムは、例えばシート材料のスタック上等、正確な位置に載置しなければならない。それゆえ、有価書類の分野では、有価書類がスタックの形態で貯蔵される有価書類カセットが利用される。この種の有価書類カセットは、自給式装置の中で有価書類が自動的に取り出されるように設計できる。有価書類カセットは紙幣用カセットとすることができるが、紙幣の代わりに、例えば商品券、チケット、小切手等の他の有価書類もそのようなカセットに貯蔵され得る。既知の紙幣カセットは、カセットから紙幣が自動的に取り出されるように設計される自給式装置で使用できる。この種の自給式装置は例えば現金自動預け払い機(ATM)であり得、これは特定の金額をユーザに払い出し、払い出された金額をユーザの勘定に付ける。この金額はすると、ATM内に収容されているカセットから取り出される紙幣で構成されて、ユーザに対して払い出される。ここで、各金種について少なくとも1つの専用のカセットを使用することが通例である。
【0003】
ATMはユーザが挿入した紙幣を受け入れて、これらを1つ又は複数のカセットに貯蔵し、このプロセス中に確認された金額をユーザの口座に入金するように設計できる。さらに、カセットは、時間が経ち、払い出しによって空になるとそれぞれの金種の紙幣が満杯に入った他のカセットと交換しなければならない。この目的のために、空になった、又は途中まで空になったカセットをATMから取り外して、紙幣を補充し、それらをATMで再使用できるようにしなければならない。何れの場合も、有価書類はカセットの中にスタックの形態で置かれる。
【0004】
有価書類の処理において、それを分類器に入れる前、又は分類器から取り出した後に、有価書類容器の中に搬送することが通例であり、この容器は、有価書類カセットとは異なり、ATM内での有価書類の自動取り出し用には設計されていない。例えば、キャッシュセンターでは、紙幣は有価書類をその中に容易に手動又は自動で出し入れできるようにその上側が開放している有価書類容器内に貯蔵され、搬送される。このような有価書類容器の中に収容された有価書類は、有価書類カセットを補充するために使用できる。この場合も、有価書類は有価書類容器の中にスタックの形態で挿入しなければならない。
【0005】
通常、有価紙類を載置するためにグリッパが使用される。この種のグリッパは、シート材料(例えば、1枚以上の紙幣)の周囲でピンセットのよう閉じてそれを把持する。グリッパは、把持したシート材料を所望の載置位置へと移動させた後、開いてシート材料をその載置位置に載置することができる。その後、グリッパは載置位置から移動させることができる。
【0006】
シート材料の載置中、シート材料と開いたグリッパとの間の摩擦力によって、シート材料がグリッパと共に載置位置から(部分的に)移動するか、グリッパがその場から移動させられ、又は引き戻される際に、グリッパに付いて行ってしまうことが起こり得る。これらの摩擦力は例えば、載置されたシート材料が空気で持ち上げられると増大し得る。この場合、すでに載置されたシート材料又は、さらにはすでに載置位置にある他のシート材料でさえ、載置位置から移動し得る。特に、グリッパが載置位置から移動している間に、載置位置にあるシート材料のスタック形状は、シート材料の個々のシートの横縁が正確に相互に重ならなくなるように損なわれる可能性がある。シート材料の位置決めの正確さが低いほど、その後の個々のシート材料の取り出しやさらなる処理中にエラーがより発生しやすい。この問題は、有価書類の分野だけでなく、シート材料の扱いにおいてより一般的に存在し得ると理解されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明のもとになる目的は、シート材料を正確な位置に載置できるようにするシート材料ホルダ及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、特許請求項1の主題により達成される。対応する方法は、独立方法請求項の主題である。本発明の有利な発展形は従属項に記載されている。
【0009】
第一の態様によれば、シート材料を保持するためのシート材料ホルダが提供される。これは、シート材料ホルダがシート材料をシート材料ホルダに関して固定された位置に保持できることを意味すると解釈されたい。特に、シート材料ホルダはシート材料を担持できる。
【0010】
シート材料は、有価書類(例えば、紙幣、小切手、クーポン等)、紙からなるページ(例えば、本のページ)、1枚1枚の紙、又は1枚1枚のフィルムとすることができる。「シート材料」という用語は、1枚のシート材料、すなわち例えば1枚の紙幣及び、複数枚のシート材料、すなわち例えば紙幣のスタック又は複数枚のフィルムも意味すると理解すべきである。シート材料はまた、例えば自動車用バッテリを製造するためのシート状電極素子、例えば電極板、隔離フィルム、既製の電極板と隔離板との組合せ(モノセル)、膜、膜電極接合体(MEA: membrane-electrode assemblies)も指すことができる。
【0011】
シート材料ホルダは第一の表面を有する。シート材料ホルダは、シート材料ホルダがシート材料を保持しているときに、第一の表面においてシート材料と関わるように設計される。この表面はしたがって、接触表面、支持表面、又は保持表面とも呼ぶことができる。シート材料ホルダがシート材料を担持する場合、シート材料は特に、第一の表面上に載ることができる。
【0012】
第一の表面は少なくとも1つの第一の開口、好ましくは複数の第一の開口を有する。第一の開口は、例えば切抜き又はドリル穴とすることができる。シート材料ホルダは、シート材料ホルダがシート材料を保持しているときに、第一の開口を通じて、流体をシート材料の方向への第一の所定の排出方向に沿って排出できるように、例えば吹き出す、又は流出させることができるように設計される。これは、シート材料ホルダがシート材料を保持しているときに、流体をシート材料に向かって排出できる、例えば吹き出す、又は流出させることができることを意味すると解釈すべきである。この設計により、流体を保持されているシート材料の表面上に排出させ、例えば吹き出し、又は流出させることが可能となる。それにより、シート材料ホルダとそれによって保持されるシート材料との間の摩擦をエアクッションのように軽減させることができる。また、流体とその排出速度を適切に選択することのほか、第一の開口を適切な寸法とすることによって、摩擦を希望に合わせて、特にそれが時間に関して変化するように制御することも可能となる。このように軽減された摩擦により、シート材料ホルダを載置位置から、シート材料の位置に大きな影響を与えずに、移動させることが可能となる。したがって、最終的に、摩擦の軽減によって、正確に位置決めされた載置とシート材料の解放が可能となる。さらに、シート材料ホルダがそれが移動する際にシート材料に与える損傷も回避される。
【0013】
流体は液体(例えば、水、特に脱イオン水)又は気体、例えばイオン化気体とすることができる。例えば、気体は気体混合物、例えばイオン化気体混合物、特にイオン化空気である。イオン化気体の使用により、シート材料とシート材料ホルダとの間の静電荷効果による吸引を軽減させることが可能となる。シート材料が、レドックスフロー電池を製造するためのシート状電極素子を含む場合、流出させられる流体は、レドックスフロー電池を製造するために使用される電解質溶液、特にレドックスフロー電池の初期充填に使用される電解質溶液であり得る。これによって、生産プロセスが単純化される。
【0014】
シート材料ホルダは、シート材料ホルダがシート材料を保持しているときに、第一の所定の排出方向がシート材料の法線の方向であるか、シート材料の法線に対して鋭角に延びるように設計できる。ここで、法線とは、シート材料の、第一の開口と反対にあり、又はそれと関わる領域を指すことができる。特に、鋭角とは0°~45°、好ましくは0°~30°とすることができる。これらの角度は摩擦軽減において特に有効であることがわかっている。特に、0°~45°の角度の場合、シート材料のシート材料ホルダに関する流体流による移動を最小化できる。
【0015】
シート材料ホルダは、シート材料が(例えば、全体として、又はその表面全体を通じて)平坦であり、又は/及び、シート材料ホルダがシート材料を保持しているときに第一の表面に平行に延びるように設計できる。第一の表面は、(例えば、全体的に、又はその表面全体を通じて)平坦とすることができる。それによって、流体が排出される際に均一な流体クッションがシート材料ホルダとシート材料との間に形成されるのを確実にすることができる。換言すれば、この構成により、さらに摩擦を軽減できる。
【0016】
シート材料ホルダは少なくとも1つの指状部材を有することができる。指状部材は、ホルダがシート材料を保持しているときに材料に沿って延びるように設計できる。指状部材は、第一の表面又は第一の表面の一部を有するか、それを形成できる。ここで、「形成する」という用語は、第一の表面が指状部材の1つ又は複数の表面セグメントのみからなることを意味すると解釈すべきである。それぞれの指状部材はさらに、第一の開口のうちの少なくとも1つを有することができる。好ましい選択肢として、複数の第一の開口はそれぞれの指状部材の長さ方向に沿って配置される。この場合、第一の開口は相互に関して線状に、又はオフセットされて配置できる。指状部材の長さ対幅の比は≧2:1、好ましくは≧4:1、特に≧6:1、例えば8:1とすることができる。非整数の比も可能である。この種の指状部材により、シート材料を確実に保持することが可能となる。シート材料が指状部材により保持されると、シート材料とシート材料ホルダとの間の指示表面をなるべく小さくすることが可能となる。
【0017】
特に、シート材料ホルダは複数のこのような指状部材を含むことができ、その各々は第一の表面の(例えば一部)を有する。指状部材は離間させることができる。複数の指状部材は第一の表面を形成できる。ここで、「形成する」という用語は、第一の表面が指状部材の1つ又は複数の表面セグメントのみからなることを意味すると解釈すべきである。それゆえ、第一の表面は必ずしも一体又は連続的でなければならないわけではない。指状部材は相互に平行に延びることができる。指状部材は同一平面内、特に第一の表面に平行な平面内に延びることができる。指状部材の各々は、ホルダがシート材料を保持しているときにシート材料に沿って延びるように設計できる。指状部材の複数又は全部は少なくとも1つの第一の開口の1つ又は複数を含むことができる。その結果、シート材料ははるかにより確実に保持でき、それと同時に摩擦の軽減は引き続き確保される。複数の指状部材の使用によって、保持されるシート材料の平坦さも改善できる。
【0018】
シート材料ホルダは第二の表面を有することができる。第二の表面は、例えば少なくとも1つの第二の開口を有する。シート材料ホルダは、シート材料ホルダがシート材料を保持しているときに流体を少なくとも1つの第二の開口を通じてシート材料の方向から第二の所定の排出方向に沿って排出でき、特に吹き出し、又は流出させることができるように設計できる。換言すれば、シート材料ホルダがシート材料を保持しているときに、流体は第二の開口を通じて、それがシート材料から外に流れるように排出できる。これは、載置位置において、シート材料ホルダが第二の表面によって、シート材料ホルダが載置位置から移動する際にその位置が変化しないものとされる物体と接触するときに特に有利である。ここでも、前述のように、排出された流体はシート材料ホルダと物体との間の摩擦をエアクッションのように軽減させることができる。この物体は例えば、すでに載置されて、保管され、スタック状にされているシート材料、例えば装填されるべき有価紙カセット内にあるシート材料であり得る。それゆえ、例えば、シート材料ホルダが、それが載置位置から移動するときに、第二の表面によってスタックの一番上のシートを変位させることを防止できる。
【0019】
第一の所定の排出方向は第二の所定の排出方向とは異なるようにすることができ、特に、これらの方向を反対で平行に延びるようにすること、又は反対で、ある角度(例えば鋭角)で延びるようにすることができる。例えば、シート材料ホルダは、シート材料ホルダがシート材料を保持しているときに、第二の所定の排出方向がシート材料の法線の方向であるか、シート材料の法線に対して鋭角で、特に最大45°で延びるように設計される。流体は、第一の開口を通じて排出できる、又は排出されることになるものと同じ流体とすることができる。第二の表面は、第一の表面からシート材料ホルダ又は指状部材の反対側に位置付けることができる。この構成は、特に、シート材料をすでにあるシート材料のスタックの上に載置するときに有利である。第一の表面は第二の表面に平行とすることができる。少なくとも1つの第一の開口は、少なくとも1つの第二の開口とは反対側に設けることができる。
【0020】
指状部材は、第二の表面(例えば、その一部)を有するか、形成できる。指状部材は、少なくとも1つの第二の開口を有することができる。複数の指状部材の各々は、第二の表面(例えば、その一部)を有することができる。複数の指状部材は第二の表面を形成できる。例えば、指状部材の複数又は全部が少なくとも1つの第二の開口の1つ又は複数を含むことができる。これによって、前述のような1つ又は複数の指状部材を有利に使用できる。
【0021】
シート材料ホルダは流体チャネルを含むことができ、これは一部が指状部材の中に配置され、少なくとも1つの第一の開口又は/及び少なくとも1つの第二の開口と流体的に(すなわち、流体ラインを介して)接続される。同じことが、少なくとも1つの第一の開口の1つ以上又は/及び少なくとも1つの第二の開口の1つ以上を含む指状部材の各々にも当てはめることができる。シート材料ホルダが複数の指状部材を含む場合、これは共通の供給チャネルを含むことができ、これは流体チャネルの各々に流体的に接続される。供給チャネルは、シート材料ホルダの指状部材接続要素の内部に配置でき、指状部材の各々は指状部材接続要素に接続され、特にそこに固定されるか、それと一体に製作される。それにより、特に小型軽量の構成を提供することが可能となる。
【0022】
シート材料ホルダは、少なくとも部分的に、特に完全に、アディティブマニュファクチャリング方式によって製造できる。アディティブマニュファクチャリング方式は、指向性エネルギ入力による材料の堆積、材料の押出し、自由噴流による材料の堆積、粉体層に基づく溶融、積層、又は/及び液槽光重合を含むことができる。流体チャネル又は/及び供給チャネルは、アディティブマニュファクチャリング方式による製造中に何れの支持構造も必要としない断面を有することができる。その結果、シート材料ホルダを簡単に低コストで製造することができる、特に、第一又は第二の開口、流体チャネル、又は/及び供給チャネルの導入のための追加的な機械加工ステップを排除することができる。
【0023】
第二の態様によれば、シート材料を保持するための把持システムが提供され、前記システムは、特に、シート材料を把持、輸送、及び解放するように設計される。把持システムは、第一の態様による第一のシート材料ホルダと、第一の態様による第二のシート材料ホルダを含む。第一及び第二のシート材料ホルダは同じでなくてもよく、換言すれば、これらのシート材料ホルダは第一の態様に関して述べたものとは異なる特徴を含むことができる。特に、2つのシート材料ホルダのうちの一方だけが少なくとも1つの第二開口を有していれば十分であり得る。この、少なくとも1つの第二の開口を有するシート材料ホルダは好ましくは、シート材料を載置するときに他の物体と接触する、又は接触することになるシート材料ホルダである。
【0024】
把持システムのシート材料ホルダは、第一のシート材料ホルダの第一の表面が第二のシート材料ホルダの第一の表面と対向するように配置される。把持システムは、第一のシート材料ホルダの第一の表面と第二のシート材料ホルダの第一の表面との間にシート材料を保持するように設計される。これは、シート材料が把持システムによって正確な位置へと搬送され、載置されることになるときに特に有利である。2つのシート材料ホルダのこの配置により、保持されるシート材料の両面において、シート材料に関する摩擦を軽減させることが可能である。
【0025】
シート材料ホルダはさらに、第一のシート材料ホルダを第二のシート材料ホルダに関して移動させて、第一のシート材料ホルダの第一の表面と第二のシート材料ホルダの第一の表面との間の距離を変化させることができるように配置できる。シート材料ホルダは、(例えば、1つのみの)所定の軸に沿ってこれらを相互に関して移動させることができるように配置できる。特に、把持システムは並進ドライブを有することができ、これは第一のシート材料ホルダの第一の表面と第二のシート材料ホルダの第一の表面との間の距離を変化させ、特にそれを短縮してシート材料ホルダによってシート材料を把持し、それを増大させてシート材料をシート材料ホルダからリリースさせ、それによってシート材料を載置するように設計される。第一の表面間の距離を増大させることにより、把持システムは開、すなわちリリース状態に移行でき、距離を短縮することにより、把持システムは閉、すなわち把持又はクランプ状態に移行できる。換言すれば、第一の表面間の距離を変化させることにより、2つのシート材料ホルダを用いた確実な把持機能と信頼できる載置プロセスを提供できる。
【0026】
シート材料ホルダは、第一のシート材料ホルダと第二のシート材料ホルダがシート材料をまったく保持していないときに、第一のシート材料ホルダの第一の表面が第二のシート材料ホルダの第一の表面に関して斜めに(例えば、≦10°、特に≦7.5°、例えば≦5°、好ましくは4°の角度で)なるように配置できる。この場合、シート材料ホルダの、又は指状部材の遠位端は、それらの近位端より相互に近付けることができる。システムは、復元力に対抗して、第一のシート材料ホルダの第一の表面を第二のシート材料ホルダの第一の表面に平行に整列できるように設計することができる。復元力は、力保持要素、例えば渦巻きばね、板ばね、ゴム緩衝材、又はその他の何れかのばね要素により提供できる。ばね力は、例えばシート材料ホルダの少なくとも1つの1つ又は複数の指状部材によって、それを曲げることで提供される。それによってシート材料がしっかりと保持され、把持システムから偶発的に落下しないことを確実にすることができる。すると、シート材料が第一のシート材料ホルダと第二のシート材料ホルダとの間に保持されているときに、第一のシート材料ホルダの第一の表面は第二のシート材料ホルダの第一の表面に実質的に平行に延びる。
【0027】
第三の態様によれば、載置システムが提供される。載置システムは、シート材料を載置するように設計され、第一の態様によるシート材料ホルダ又は第二の態様による把持システムを含む。載置システムはまた、流体供給ユニットも含み得て、これはシート材料ホルダに流体的に接続され、流体を少なくとも1つの第一の開口からシート材料の方向に排出するように設計される。第三の態様によるシステムは移動システムをさらに含み、これはシート材料ホルダを、特にシート材料表面に平行な方向に沿って移動させるように設計される。載置システムは制御装置をさらに含む。制御装置は、移動システムに対し、シート材料がシート材料ホルダにより保持されているときに、シート材料を載置位置に移動させるように命令するように設計される。この目的のために、シート材料ホルダは、移動システムによって、シート材料が載置位置へと移動させられるように移動させることができる。制御装置は、シート材料ホルダの並進ドライブに対し、シート材料ホルダ間の距離を増大させて、シート材料をシート材料ホルダからリリースさせるように命令するように設計される。そして、制御装置は、流体供給ユニットに対し、流体を少なくとも1つの第一の開口から排出させ、例えば吹き出し、又は流出させるように命令するように設計される。制御装置はさらに、移動システムに対し、流体の排出中にシート材料ホルダをシート材料に関して移動させて、シート材料がシート材料ホルダから載置されるように指示するように設計される。制御装置は好ましくは、流体供給ユニットによる流体の排出がシート材料の載置のためにのみ、特に、載置の目的で実行される、少なくとも1つのシート材料ホルダをシート材料に関して移動させるステップの前又はそれと同時に開始されることになるように設計される。
【0028】
流体供給ユニットはさらに、流体又は追加の流体を少なくとも1つの第二の開口から排出する、例えば吹き出す、又は流すように設計できる。したがって、制御装置は、流体供給ユニットに対し、流体又は追加の流体を少なくとも1つの第二の開口から排出するように命令するように設計できる。流体供給ユニットは、少なくとも1つの気体弁と、圧縮気体接続部のための少なくとも1つの接続点を含むことができる。流体供給ユニットは、圧縮気体接続部に連結される圧縮気体源、例えばコンプレッサ又は圧縮気体シリンダをさらに含むことができる。移動システムは、ロボットアーム(例えば、多軸移動可能なロボットアーム)、ボギー、又はケーブルコントロール式吊り下げキャリッジを含むことができる。移動システムは、並進ドライブ、特にスピンドルドライブを有することができ、これはシート材料ホルダ間、特にシート材料ホルダの2つの第一の表面間の距離を変化させるように設計される。
【0029】
第四の態様によれば、シート材料の載置方法が提供される。この方法は、シート材料を載置位置へと移動させるステップを含み、シート材料は少なくとも1つのシート材料ホルダによって、特に前述のシート材料ホルダの2つによって保持され、少なくとも1つのシート材料ホルダの表面(例えば、第一の表面)はシート材料と関わる。シート材料ホルダは、例えば第一の態様によるシート材料ホルダ、第二の態様による把持システムのシート材料ホルダのうちの1つ、又は第三の態様による載置システムのシート材料ホルダとすることができる。方法はまた、少なくとも1つのシート材料ホルダの第一のものと第二のものとの間の距離を、特に第二の態様による把持システムによって増大させて、シート材料ホルダのうちの第一のシート材料ホルダと第二のシート材料ホルダとの間に保持されたシート材料をシート材料ホルダからリリースさせることも含む。方法は、少なくとも1つのシート材料ホルダの表面(例えば、第一の表面)における少なくとも1つの開口(例えば、第一の開口)から流体を排出するステップをさらに含み、流体は、シート材料の方向に排出され、例えば吹き出され、又は流出ざせられる。方法はまた、流体の排出中、少なくとも1つのシート材料ホルダをシート材料に関して、特にシート材料表面に平行な方向に沿って移動させて、シート材料が少なくとも1つのシート材料ホルダから載置されるようにするステップも含む。流体の排出は好ましくは、シート材料の載置のためにのみ、特にシート材料を載置位置に移動させた後、例えば距離を増大させるステップの前、その最中、又はその後に開始される。
【0030】
流体を排出するステップは好ましくは、載置を目的として実行される、少なくとも1つのシート材料ホルダをシート材料に関して(特に、シート材料表面に平行な方向に沿って)移動させるステップの前、又はそれと同時に開始され、相対移動中(の全体又は少なくともその開始時)に継続される。流体を排出するステップは好ましくは、シート材料ホルダがシート材料を載置した後、シート材料と接触しなくなるまで(シート材料ホルダがシート材料に沿って引き戻されている間に)実行される。このことによって、シート材料が、載置後にシート材料ホルダによって、特に前記ホルダがシート材料表面に平行な方向に沿って移動されているときに滑らないようにすることが確実となる。
【0031】
方法はまた、第三の態様による載置システムによって実行できる。第三の態様による載置システムの制御ユニットは、流体供給ユニット及び移動システムを、第四の態様による方法が実行されるように制御するように設計できる。
【0032】
以下に例として添付の図面を参照しながら本発明を説明するが、同じ参照符号は同じ構造的又は/及び機能的特徴を指す。図中:
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】載置システムの好ましい実施形態を示す。
図2】シート材料ホルダの好ましい実施形態を示す。
図3図2のシート材料ホルダの指状部材の断面図を示す。
図4】把持システムの好ましい実施形態を示す。
図5】方法の好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本開示による載置システム100の好ましい実施形態を示す。載置システムは、シート材料2を載置するために設計され、図の例では、把持システム200を含み、これ自体は2つのシート材料ホルダ300を含む。図1からわかるように、把持システム200はシート材料2のスタック3を把持できる。図の例において、シート材料2は有価書類、例えば紙幣である。
【0035】
把持システム200は移動システム4により移動させることができ、これは、図の例では、ロボットアーム6を含み、それが把持システム200を空間内で移動させることができる。この場合、移動システム4は並進ドライブ5をさらに含み、これは2つのシート材料ホルダ300を相互に関してグリッパのように移動させるように設計され、2つのシート材料ホルダ300のうちの一方を移動させれば十分である。並進ドライブ5はスピンドルドライブを含むことができる。
【0036】
載置システム100は流体供給ユニット8をさらに含み、これはシート材料ホルダ300の各々に流体的に接続される。図1による例では、流体供給ユニット8は圧縮気体シリンダ10を含み、これは2つのシート材料ホルダ300に制御可能な弁12及び接続ホース14を介して接続される。圧縮気体シリンダ10及び弁12の代わりに、又はそれに加えて、コンプレッサを提供できる。流体供給ユニット8は、イオン化気体を供給するように設計できる。この目的のために、それはイオン化装置13を含むことができる。
【0037】
載置システム100は制御装置16をさらに含み、これは移動システム4及び流体供給ユニット8、特に弁12を制御するように設計される。
【0038】
図1はさらに、シート材料2のスタック19、この場合は有価書類のスタック19を取り出し可能な状態ですでに保持している有価書類カセット18を示している。このスタック19は可動式上昇台座20の上に設置され、それがばね22によって所定の方向へと押し動かされる。図の状態では、上昇台座はばね力に対抗して下方に移動し(例えば、シート材料のスタックの重さによる)、それによってスタック上方の空間が空く。すると、スタック3をこの空間に挿入できることになる。載置システム100はしたがって、シート材料2をスタック3の形態で有価書類カセット18内のスタック19上に載置することができる。有価書類カセット18は垂直方向に配置でき、又は後方に(図1の左に)斜めに傾くようにも配置できる。
【0039】
載置システム100は、シート材料2を有価書類容器24から取り出すように設計でき、容器自体はシート材料2のスタック26を取り出し可能な状態で保持する。シート材料2を反対方向、すなわち有価書類カセット18から有価書類容器24に搬送することも可能である。
【0040】
把持システム200が移動システム4によって移動させられ、スタック3が有価書類カセット18内のスタック19の上方に来たら、把持システム200を開いて、シート材料ホルダ300間に挟まれたスタック3を離し、すなわちリリースすることができる。把持システム200はすると、有価書類カセット18から引き出されて、スタック3をスタック19上の正確な位置に載置することができる。この把持システム200の引き戻し中、シート材料ホルダ300とスタック3の、好ましくはそれと共にスタック19のシート材料2との間の摩擦が計画的に最小化される。これは、摩擦が小さいほど、把持システム200によって、その引き戻し中にシート材料2の個々のシートが少なくとも部分的にスタック3又は19から引き出されるリスクが小さくなるからである。この摩擦を軽減するために、図2によるシート材料ホルダを使用できる。
【0041】
図2は、シート材料ホルダの好ましい実施形態を示す。このシート材料ホルダ300は、特に把持システム200の載置システム100の一部とすることができる。図2によるシート材料ホルダ300は第一の表面28を有する。この表面は、シート材料ホルダ300がシート材料2を保持しているときにシート材料2と関わる。図2中、シート材料2は、シート材料ホルダ300がシート材料2を担持していれば第一の表面28上に載ることになる。この場合、シート材料ホルダ300は、シート材料2が、それが第一の表面28と関わるときに、平らに、第一の表面28に平行に延びるように設計できる。
【0042】
図の例において、第一の表面28は複数の指状部材36によって形成される。指状部材は各々、長尺状の設計であり、近位端38から遠位端40へと延びる。遠位端40において、指状部材36は傾斜している。換言すれば、指状部材36は遠位端40において尖った、又は楔形状とすることができる。これによって、指状部材36をシート材料2のスタックに差し込みやすくすることができる。近位端38において、指状部材36は幅広部分42を有し、これは指状部材接続要素44に固定されるか、指状部材接続要素44と融合させられる。複数の補強要素46の各々が指状部材接続要素44に、及び指状部材36の片面に固定される。図2の例において、補強要素46は第一の表面28に実質的に垂直に延びる。これは、指状部材36を補強して、シート材料2を把持する際の不要な曲がりや破損を防止することができる。この目的のために、補強要素は例えば金属からなるようにすることができる。
【0043】
スタック26は、有価書類容器24の側壁66、68間に配置される。スタック26を容易に把持できるようにするために、図1の有価書類容器24の側壁66、68はスタックと面するその内面に切欠き64を含むことができ、前記切欠きは、シート材料ホルダ300の指状部材36をこれらの切欠き内に挿入できるような寸法である。図1に示されるように、シート材料はすると、有価書類容器24の中に、それが側壁66、68に平行に延びるように配置できる。
【0044】
再び図2を参照すると、第一の表面28は複数の第一の開口30を含む。シート材料ホルダ300は、流体がこれらの第一の開口30を通じて所定の排出方向32に沿ってシート材料ホルダ300により保持されるシート材料2の方向に(図2の上方に)排出させることができるように設計される。この排出方向32は図2では矢印によって概略的に示されている。排出方向32は、それがシート材料2の方向である限り、開口30によって異なり得る。排出方向32は好ましくは、全ての開口30について同じである。図2からわかるように、排出方向32は、シート材料2(図示せず)の法線34に対して鋭角、特に最大45°の角度で、例えば指状部材36に沿うか、又は指状部材36と交差することができる。排出方向32はまた、法線34の方向とすることもできる。図2による例では、指状部材36の各々が複数の第一の開口30を有する。
【0045】
図2に示されるように、第一の開口30に接続される流体チャネル48はシート材料ホルダ300内に延びることができる。図2によれば、各流体チャネル48に接続される共通の供給チャネル52が指状部材接続要素44の中に配置される。流体チャネル48は供給チャネル52の過渡領域50に入る。供給チャネル52は供給インタフェース54を含み、これは流体供給ユニット8に、特にホース14に接続できる。流体は、気体シリンダ10から、開いた弁12及びホース14を介して供給チャネル52を通って流出でき、そこからこれは個々の流体チャネル48に到達し、最終的に第一の開口30を通じて排出方向32に沿って排出される。流体排出をオンに切り換えることにより、それゆえ、必要なときにシート材料ホルダ300により保持されるシート材料2と指状部材36との間の摩擦を軽減させることが可能となる。
【0046】
図の例では、シート材料ホルダ300は第二の表面56も有し、これは指状部材36により形成され、第一の表面28の反対にある(すなわち、図2において指状部材36の下面に対する)。この第二の表面56もまた開口を有し、これは第二の開口58と呼ばれる。流体チャネル48から第二の開口58に流れる流体は、第二の開口58を通じて第二の所定の排出方向60に沿って排出できる。第二の排出方向60は第一の排出方向32の反対とすることができ、図2の下方、すなわちシート材料ホルダ300がシート材料2を保持しているときにシート材料2から離れる。
【0047】
図3は、図2のシート材料ホルダ300の指状部材36の断面図を示す。指状部材36が実質的に直線状に、すなわち同一平面内に延びることがわかる。第一の表面28は第二の表面56に平行である。遠位端40において、指状部材36は角度αの傾斜が付けられ、これは例えば10°~35°の範囲とすることができる。第一の開口30は指状部材36の上面にあり、第二の開口58はその下面にある。第一の開口30の数は第二の開口58の数に対応するが、これらは異なっていてもよい。例えば、第一の所定の排出方向30は、第二の所定の排出方向58も同様に、法線34に平行に延びる。図2及び図3によれば、2つの排出方向30、58は相互に反対である。
【0048】
流体チャネル48は第一の開口30及び第二の開口58に接続される。流体チャネル48の第一の部分は同一平面内で直線状に延びることができる。流体チャネル48は、第一の表面28及び第二の表面56から同じ距離とすることができ、換言すれば、指状部材36の流体チャネル48から上の材料厚さは、指状部材36の流体チャネル48から下の材料厚さと同じとすることができる。流体チャネル48の第一の部分は、指状部材36の中央に配置できる。このようにして、例えば指状部材36が確実に高い強度を有し、同時に小型の構成であるようにすることができる。
【0049】
図の例において、供給チャネル52は支持構造を用いずにアディティブマニュファクチャリングが可能となるような断面を有することができる。図3によれば、これは最大の張り出し角度β=45°とすることによって確実にされる。供給チャネルの断面は、逆さにしたハート型を有することができる。供給チャネル52は、流体チャネル48の第一の部分が延びる平面の外側(図3においてはその上方)に延びる。流体チャネル48の第二の部分は流体チャネル48の第一の部分の平面から外向きの曲線に沿って(図3においては上方に)延びて、供給チャネル52に接続される。特にこの種の構成では、指状部材36、指状部材接続要素44、その両方、又はさらにはシート材料ホルダ全体を(例えば同時に)アディティブマニュファクチャリング方式、例えば3Dプリンティングで製造することが有利であり得る。
【0050】
図4は、把持システムの好ましい実施形態を示す。図の把持システム200は図1による載置システム100で使用できる。並進ドライブ5も示されている。並進ドライブ5はハンド要素63内又はその表面上に配置される。2つのシート材料ホルダ、特に図2及び3によるシート材料ホルダ300がハンド要素63に、2つの第一の表面28が相互に対向するように配置される。2つのシート材料ホルダ300は、ハンド要素63を介して相互に接続される。ハンド要素63は、流体接続カプリング67及びそれに接続されたチャネル又はホース69、70をさらに含み、この各々はシート材料ホルダ300のそれぞれの供給インタフェース54に接続される。流体接続カプリング67はホース14に接続できる。
【0051】
図4の上方に示されるシート材料ホルダ300の表面28は、把持システム200によってシート材料2がまったく保持されていないとき、すなわち、したがって把持システム200がいかなる保持力も発していないときには、もう一方のシート材料ホルダ300の表面28に関してわずかに傾斜していてよい。この例では、2つの表面28間の角度ε=ε1+ε2が4°である。この角度は一方又は両方のシート材料ホルダ300を参照直線65に関して傾けることによって提供できると理解されたい。それゆえ、例えば、両方の表面28は、法線34に対して88°の角度とすることができ、又は表面28の一方は90°の角度、他方は86°の角度とすることができる。把持システム200は、角度εを復元力に対応して0°に縮小できるように設計できる。復元力は、シート材料ホルダ300の弾性変形に対応でき、又は別のばね要素により提供できる。それゆえ、2つのシート材料ホルダ300の指状部材36はクランプのように機能し、シート材料ホルダ300間に保持されるシート材料2の遠位端40の領域の接触圧力を増大させる。このようにして、保持されているシート材料2の不要な滑り落ちを防止できる。参照直線65は、シート材料2の、それが把持システム200によって保持又は把持されているときの法線34に平行に延びることができる。
【0052】
シート材料ホルダ300の少なくとも1つは、並進ドライブ5により移動させることができるように配置される。このようにして、表面28間の距離は変化させることができる。換言すれば、シート材料ホルダ300はグリッパのように相互に近付け、相互に遠ざけるように移動できる。
【0053】
図5は、本開示による方法を概略的に示す。ステップ502で、シート材料(例えば、シート材料2)が載置位置まで移動させられ、シート材料は少なくとも1つのシート材料ホルダによって(例えば、一方又は両方のシート材料ホルダ300によって)保持され、少なくとも1つのシート材料ホルダの1つの表面(例えば、第一の表面28)はシート材料と関わる。ステップ504で、その間にシート材料が保持されている少なくとも1つのシート材料ホルダの第一のものと第二のものとの間の距離が増大させられる(例えば、把持システム200の2つのシート材料ホルダ300間)。ステップ508で、流体が少なくとも1つのシート材料ホルダの表面の少なくとも1つの開口(例えば、第一の開口30)から排出され、流体はシート材料の方向に(例えば、所定の排出方向32に沿って)排出される。ここで、ステップ508による流体の排出は、ステップ504中に始まる。ステップ506で、少なくとも1つのシート材料ホルダはシート材料に関して移動させられるか、シート材料から引き離され、その間に流体が排出され、その結果、シート材料が少なくとも1つのシート材料ホルダから載置される。ステップ506による載置と共に、又はその後に、流体の排出が終わる。
【0054】
方法は、載置システム100によって実行できる。それゆえ、制御装置16は、移動システム4、特にロボットアーム6に対して、スタック3のシート材料2を載置位置へと、例えば有価書類カセット18内のスタック19の上方の位置へと移動させるように命令するように設計できる。制御装置16はまた、把持システム200の2つのシート材料ホルダ300(例えば、その第一の表面28)間の距離を増大させるためにスピンドルドライブ5を制御するようにも設計できる。制御装置16はさらに、流体供給ユニット8に対して、流体を開口30又は/及び58から排出するように命令するように設計できる。制御装置16はさらに、移動システム6、特にロボットアーム6に対して、シート流体の排出中にシート材料ホルダ300をスタック3のシート材料2に関して移動させて、シート材料2がシート材料ホルダ300から載置されるように命令するように設計できる。
【0055】
制御ユニット16は、流体供給ユニット8に対し、特定の流体を排出するように命令すべく設計できる。制御ユニット16は、流体供給ユニット8に対して、流体を既定の圧力又は既定の体積流量で排出するように命令すべく設計できる。これによって、時間と共に変化する摩擦軽減が可能となる。流体供給ユニット8のための制御パラメータは、シート材料(例えば、紙、プラスチック等)、シート材料の大きさ(例えば、5ユーロ紙幣の大きさ、100ユーロ紙幣の大きさ等)、シート材料の重さ(例えば、シート材料1枚当たりの重さ)、又はシート材料の状態(例えば、硬い、又はペラペラしている)とマッチするように選択して、シート材料が正確な位置に載置されるのを確実にすることができる。
【0056】
図面に関して説明した特徴は、必ずしも存在しなければならないわけではないと理解されたい。それゆえ、個々の特徴の代替又は省略も想定可能である。換言すれば、図面に関して記載された特徴は、全てが不可欠であると考えるべきではない。例示的実施形態の改良も可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】