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特表2024-541187ゲッター組成物及び前記ゲッター組成物を含む分配可能ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ゲッター組成物及び前記ゲッター組成物を含む分配可能ペースト
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20241031BHJP
   H01L 23/26 20060101ALI20241031BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09K3/10 L
H01L23/26
H01L23/02 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521001
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022083095
(87)【国際公開番号】W WO2023099326
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021000030299
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・ジリオ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・ヌッツォ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・ザファラナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジオ・マッキ
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・ヴァッカ
【テーマコード(参考)】
4H017
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AA27
4H017AB08
4H017AC06
4H017AD01
(57)【要約】
密封された電子又は光電子デバイスにおいて水分及び有機気体の量を制御するのに使用されるゲッター組成物であって、第1のゲッター及び第2のゲッター粉末のブレンドを、0.1から5.0の間を構成する質量比で含み、第1のゲッターがポリフェニレンオキシド(PPO)又はポリ(2,6-ジフェニル-p-フェニレンオキシド)(PPPO)であり、第2のゲッターが、フォージャサイト(FAU)ゼオライト、又は比が0.1から5.0の間を構成するフォージャサイト(FAU)ゼオライト及びリンデ型A(LTA)ゼオライトの混合物である、組成物。本発明は、樹脂及びゲッター組成物を含む分配可能なペーストにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のゲッター及び第2のゲッターの粉末のブレンドを含む、分散性ゲッター組成物であって、
前記第1のゲッターが、ポリフェニレンオキシド(PPO)又はポリ(2,6-ジフェニル-p-フェニレンオキシド)(PPPO)であり、
前記第2のゲッターが、フォージャサイト(FAU)ゼオライト、又は重量比が0.1から5.0の間を構成するフォージャサイト(FAU)ゼオライト及びリンデ型A(LTA)ゼオライトの混合物であり、
前記第1のゲッターと前記第2のゲッターとの間の質量比が0.1から5.0の間、好ましくは0.1から2.5の間を構成し、及び
前記ゲッター粉末が、1.0から50.0μmの間を構成するX90値を有する粒度分布を特徴とする、ゲッター組成物。
【請求項2】
前記ゲッター粉末が、X90値が1.0から20.0μmの間を構成する粒度分布によって特徴付けられる、請求項1に記載のゲッター組成物。
【請求項3】
エポキシ又はフェノール樹脂又はこれらの混合物、及び請求項1又は2に記載のゲッター組成物を含む、分配可能なペーストであって、前記樹脂が、前記ペーストの全量に対して、硬化剤を含めて50質量%から90質量%の間を構成する量であり、前記ゲッター組成物が、前記ペーストの全量に対して10質量%から50質量%の間を構成する量である、分配可能なペースト。
【請求項4】
追加の着色剤化合物が、前記ペーストの全量に対して0.1質量%から10質量%の間を構成する量で添加される、請求項3に記載の分配可能なペースト。
【請求項5】
前記着色剤化合物が、希土類顔料又は有機複素環化合物である、請求項4に記載の分配可能なペースト。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールF又はビスフェノールA樹脂の中から選択され、前記フェノール樹脂が、ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]樹脂である、請求項3から5のいずれか一項に記載の分配可能なペースト。
【請求項7】
前記第1のゲッターと前記第2のゲッターとの間の質量比が、0.1から2.5の間を構成する、請求項3から6のいずれか一項に記載の分配可能なペースト。
【請求項8】
請求項3から7のいずれか一項に記載のペーストが分配された少なくとも1つの表面を含む、電子デバイス用の構成要素。
【請求項9】
前記電子デバイスの気密パッケージ用のカバー蓋である、請求項8に記載の構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封された電子又は光電子デバイスにおいて水分及び有機気体の量を制御するのに使用されることになる分散性ゲッター組成物と、前記ゲッター組成物を含む分配可能ペーストとに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス、特にその構成要素の一部は、水分並びに酸素、水素、及び揮発性有機化合物(VOC)等のその他の汚染物質気体を含む望ましくない汚染物質に曝露されたときに、感受性があり且つ低下した性能を示すことが、一般に公知である。
【0003】
現況技術では、有機電子デバイス(即ち、有機成分を持つ電子デバイス)を劣化から保護するための主な技法は、その内部に汚染物質を進入させないようにするために、その有機電子デバイスの境界に沿って障壁コート又はシーラントを施用することを含み、これはその内部密封容積内への汚染物質を除去するために、密封されたデバイス内に吸収剤又は吸着剤ゲッター材料を配置することと組み合わされる。
【0004】
水の除去に用いられる主な乾燥剤は、通常、金属酸化物(CaO、BaO、MgO等);金属水素化物;金属塩;粉末化ゼオライト(4A及び3Aモレキュラーシーブ等);金属過塩素酸塩;超吸収性ポリマー、及びカルシウム等の水と反応する金属を含む。
【0005】
例えばEP1874885は、電子及び光電子デバイスの周縁に配置された、放射線硬化性乾燥剤が充填された接着剤又はシーラントを開示し、この乾燥充填剤は水分を一掃する又は障壁のフィーチャーとして使用される。同様にWO2013165637は、基材を密封し接着するのに適した放射線又は熱硬化性包封剤、並びに上記報告された乾燥充填剤の1種を使用してデバイスの活性有機成分を水分及び酸素から保護する有機電子デバイスのカバーを、提供する。
【0006】
US20060283546は、ポリイミド樹脂と組み合わせたゼオライトゲッター粉末で調製された混成ゲッター材料を含む、電子デバイスを包封し、その結果として電子デバイスを密封するための方法に関する。
【0007】
水分障壁の目的に加え、いくつかの適用例は、アルカン、シクロアルカン、芳香族化合物、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、ハロカーボン、アミン、有機酸、シアネート、ナイトレート、及びニトリルを含む置換又は非置換炭素化合物の中から選択されるVOCに対して透過性のない電気絶縁材料を持つ光電子デバイスを開示するWO2008033647及びWO2010093237等、揮発性有機化学化合物(VOC)の吸収を確実にすることを目標とした解決策を報告する。両方の場合に、乾燥効果は、活性炭、アルミナ、及びその他の金属酸化物、ゼオライト、ハイパー架橋系を含む有機収着剤等の様々な収着剤媒体を使用することによって、達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP1874885
【特許文献2】WO2013165637
【特許文献3】US20060283546
【特許文献4】WO2008033647
【特許文献5】WO2010093237
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Monolithic Aerogels Based on Poly(2,6-diphenyl-1,4-phenylene oxide) and Syndiotactic Polystyrene」、ACS Appl. Mater. Interfaces 2013、5、12、5493~5499
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この分野における主な目的の1つは、水及び有機気体の量を同時に効果的に低減させ制御することであるが、欠点として、用いられる典型的なゲッター及び充填剤のほとんどは、その他と競合状態にあるときに一部の化学種に関してそれらの効果を低減させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、フォージャサイト(FAU)ゼオライト、又はFAU及びリンデ型A(LTA)ゼオライトの混合物をポリフェニレンオキシド(PPO)又はポリ(2,6-ジフェニル-p-フェニレンオキシド)(PPPO)種と特定の比で組み合わせたときに、ゼオライト水吸収に対するVOCの負の影響を著しく低下させ、VOC種の存在にも関わらず、水吸収能は実質的に変化しないままである(即ち、測定の誤差の範囲内にある)ことを、意外にも見出した。更に同時に、VOC吸着能に対する水の負の影響は、報告されておらず、開示される本明細書の組成物は、水の存在にも関わらずVOC吸着の低下を示さない。
【0012】
したがって本発明の目的は、第1のゲッター及び第2のゲッターのブレンドを含む分散性ゲッター組成物であり、第1のゲッターがPPO又はPPPOであり、第2のゲッターがフォージャサイト(FAU)ゼオライト、又はFAU及びリンデ型A(LTA)ゼオライトの混合物である。特に前記組成物は、第1のゲッターと第2のゲッターとの間の比が、0.1から5.0の間、好ましくは0.1から2.5の間を構成することを特徴とする。より高い比によって特徴付けられる組成物は、従来の測定技法では検出できなくなる有意な水吸着をもたらさない。
【0013】
更にゲッター組成物は、1.0から50.0μmの間(体積分布から計算される)を構成するX90値を特徴とする、制御された粒度分布を持つ粉末の形をとる。更に好ましい実施形態では、前記粒度分布は、1.0から20.0μmの間を構成するX90値によって特徴付けられる。
【0014】
本発明に関する更なる利点は、前記組成物をデバイスに導入し、その結果としてデバイスの内部から、製造プロセスの残留物として存在し得る又はデバイスの動作中に生成され得る水分及び有機化合物の両方を除去する可能性に関連付けられる。それに関連して、デバイス内にゲッターを導入する可能性を改善するために、前記組成物は、母材中に分散されるべきであり、即ち分配可能なペーストを調製するために樹脂と組み合わされてもよい。
【0015】
特に開示される本発明のゲッターブレンドは、エポキシ若しくはフェノール樹脂又はこれらの混合物に分散することができ、樹脂用の硬化剤を含むペーストの全量に対して10質量%から50質量%の間を構成する量で、分配可能なペーストで使用することができる。分配可能なペーストを有するために、組成物は、0.1から5.0の間、好ましくは0.1から2.5の間を構成する第1及び第2のゲッター間の比によって特徴付けられる。
【0016】
VOC吸着における目標の1つは、無溶媒配合物を有することであるので、前記樹脂は本質的には、ビスフェノールF若しくはビスフェノールA、又はポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]のようなフェノール樹脂、又はこれらの混合物中から選択される、樹脂の全量(硬化剤を含む)の50質量%から90質量%の間を構成する量のエポキシ樹脂をベースにする。
【0017】
ペーストの粘度、及びその結果として分配可能性を改善するために、FAUゼオライトをリンデ型A(LTA)ゼオライトと、0.1mから5.0の間を構成するFAUゼオライトとLTAゼオライトとの間の比で混合することができる。
【0018】
更に追加の化合物、例えば希土類顔料及び有機複素環化合物の中から選択される着色剤分子を、表面に付着されたときにペーストの可視性を改善するために、ペーストの全量の0.1質量%から10質量%の間を構成する量でペーストに添加してもよい。
【0019】
本発明による分配可能なペーストは、空気圧式シリンジ分配システム等、製造及び実験室プロセスで一般に使用される方法を通して分配することが適切である。
【0020】
本発明の更なる目的は、ペーストが分配された少なくとも1つの表面を含む、電子デバイス用の構成要素でもある。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明によるペーストで少なくとも部分的に覆われる表面を有する、電子デバイスの前記構成要素は、電子デバイスの気密パッケージ用のカバー蓋である。
【0022】
以下、下記の非限定的な実施例を参照しながら、より詳細に本発明について説明する。当技術分野の専門化に明らかな、具体化される本明細書の実施形態の修正例又は変形例は、添付される請求項により包含される。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0023】
表1で報告される試料S1~S3及び比較例C1~C4のゲッター粉末ブレンドを、純粋なゲッター粉末を手作業で混合することにより調製する。吸着能は、現況技術のシステム、質量分光計を使用して測定される(H2O及びVOCの枯渇)。
【0024】
表2に示される試料S4~S10及び比較例C5~C8の分配可能なペーストを生成するため、樹脂に加えて硬化剤(45~65質量%)とゲッター粉末ブレンド(35~55質量%)を、表で指定された量で手作業で、10gバッチ内で混合し、次いで適切なデバイスで、例えば実験室用3ロールミルを5分間使用して精製する。
【0025】
ポリ(2,6-ジフェニル-p-フェニレンオキシド)(PPPO)に対して同等の挙動であることが一般に公知であること(例えば、「Monolithic Aerogels Based on Poly(2,6-diphenyl-1,4-phenylene oxide) and Syndiotactic Polystyrene」、ACS Appl. Mater. Interfaces 2013、5、12、5493~5499参照)から、試料及び比較例の両方を、第1のゲッターとしてポリフェニレンオキシド(PPO)を使用することによって、調製した。
【0026】
乾燥粉末の粒度分布は、レーザー回折機器で測定される。分配可能性試験は、300から800μmの直径の円筒状の針を備えた標準の空気圧ラインに接続された空気圧分配システムを使用して行われる。
【0027】
分配可能性は、視覚的に確認され、下記の通り標識され/マークされる:
・ 「BEST」 シリンジからの流れが連続的であり、ペースト堆積が均一である場合。
・ 「OK」 標準空気圧ラインからの最大圧力(5~6bar)が必要である場合。
・ 「BAD」 ペーストに粘性があり過ぎ、したがって精製後に均一ではない場合:分配することができない。
【0028】
【表1】
10
【0029】
【表2】
【0030】
報告された結果は、本発明の技術的効果を明らかに示し;事実、比較例C3で報告されたように、FAUゼオライト水吸着能に対するVOCの負の影響を確認することが可能であり、ゲッター組成物がトルエン及び水の両方に曝露されたときに10%低下する。対照的に、本発明により調製された試料S1~S3が試験されたとき、VOCの存在にも関わらず、相対的な水吸着は、種々の化学種(PPO、FAU、及びLTA)の量に基づき計算された予測容量、及びそれらの相対的な固有容量に対して著しく変化せず、最大変化はS3に関して約2.8%であった。
【0031】
表1で報告された結果により確認されたように、良好な吸着能は、単純なFAUゼオライトがゲッターとして試験されたときに得られる可能性があり、しかしながら単純なゼオライトは、問題となっている適用例で有効になるよう十分な量で分散させるのに適切ではないことが周知である。試料S2及びS3で示されるように、水吸着に対して良い効果を維持しながら第2のゼオライト(LTA)を添加することが可能であり;対照的に、比較例C4で報告されたように、LTAゼオライトのみがPPOと組み合わせて用いられるとき、トルエン吸着能は、FAUゼオライトが第2のゲッターとして用いられるときに得ることができる値に対して低下する。
【0032】
表2では、本発明により調製されたゲッター組成物を含むペーストS4~S10、特に組成物S3を含むペーストであるS4の品質評価を見ることが可能である。報告された結果は、種々の樹脂、実際にはビスフェノールF樹脂を使用することにより調製されたS4~S8試料と、それぞれビスフェノールA及びポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]樹脂で調製されたS9~S10との両方を用いる可能性も実証し、良好な分配可能性を実証する。同時に比較例を考慮すると、充填剤の量が50%よりも高いとき(C5)又はFAUとLTAゼオライトの間の比が高過ぎるとき、示唆的には5.0よりも高いとき(C6)、又は第2のゼオライトLTAが組成物中に存在しないとき(C7)、又は第1及び第2のゲッター間の比が5.0よりも高いとき(C8)、分配可能なペーストを得ることが可能ではないことが明らかである。
【国際調査報告】