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特表2024-541189熱可塑性繊維ウェブ構造体および自動車内装部品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】熱可塑性繊維ウェブ構造体および自動車内装部品
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/14 20120101AFI20241031BHJP
   D04H 1/02 20060101ALI20241031BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
D04H3/14
D04H1/02
A47C27/12 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521147
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2022100485
(87)【国際公開番号】W WO2023071240
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111268981.4
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522306860
【氏名又は名称】ヤンフェン インターナショナル オートモーティブ テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー,イエチェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ミンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,バオイン
(72)【発明者】
【氏名】スン,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】シー,ウェイ
【テーマコード(参考)】
3B096
4L047
【Fターム(参考)】
3B096AD04
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA23
4L047AB03
4L047AB07
4L047AB09
4L047AB10
4L047BC00
4L047CA14
4L047CB01
4L047CB10
4L047CC09
(57)【要約】
本開示は、互いに融接された複数の繊維フィラメント(21a、21h、21i、21k、21l、21m、21n、21q)によって支持構造を形成する熱可塑性繊維ウェブ構造体(2a、2b、2c、2d)に関する。これら繊維フィラメントは、熱可塑性エラストマー材料から形成されている。本開示は、更に、上記のような熱可塑性繊維ウェブ構造体とこの熱可塑性繊維ウェブ構造体に固着されたスリーブおよび/または布地(1a、1b、1c、1d)とを備えた自動車内装部品に関する。熱可塑性繊維ウェブ構造体は、三次元網状構造への熱可塑性エラストマー材料の溶融押出によって支持構造を形成し、高い復元力およびリサイクル性を有する。本自動車内装部品は、支持および快適さを保証すると同時に、環境保護、通気性、および軽量を実現する。特に、熱可塑性材料は、溶融押出工程中に、化学反応ではなく、物理反応に晒されるので、製造工程における安定性が向上され、製品がより円滑且つ制御可能に製作され得る。加えて、従来のスリーブ発泡体固着形態は熱可塑性繊維ウェブ構造体に適用不能であることを考慮して、熱可塑性繊維ウェブ構造体のラッピングに合わせるために、完全に新規な固着形態が自動車内装部品のために提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに融接された複数の繊維フィラメントによって支持構造を形成し、前記複数の繊維フィラメントは熱可塑性エラストマー材料から形成されていることを特徴とする熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーは、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、およびポリアミドエラストマーから選択された少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項3】
前記ポリオレフィンエラストマーは、ポリアルファオレフィンエラストマーであることを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項4】
前記ポリエステルエラストマーのハードセグメントは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントは、ポリエステルセグメントまたはポリエーテルセグメントであることを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項5】
前記ポリアミドエラストマーは、ナイロンエラストマーであることを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項6】
前記熱可塑性繊維ウェブ構造体は、密度がそれぞれ異なる少なくとも2つの局所領域を有し、前記少なくとも2つの局所領域の間の密度差は、5~70kg/m、好ましくは10~50kg/m、または15~30kg/mであることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項7】
前記熱可塑性繊維ウェブ構造体における前記少なくとも2つの局所領域は、繊維フィラメントの密度分布がそれぞれ異なることを特徴とする、請求項6に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項8】
前記複数の繊維フィラメントは、部分的または全体的に規則的な配置および積み重ねで前記熱可塑性繊維ウェブ構造体内に分布していることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項9】
少なくとも1つの局所領域内の前記複数の繊維フィラメントは、当該少なくとも1つの局所領域内に部分的または全体的に規則的な配置および積み重ねで分布していることを特徴とする、請求項6に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項10】
前記複数の繊維フィラメントは、中空の繊維フィラメントおよび/または中実の繊維フィラメントであることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項11】
前記中空の繊維フィラメントの壁厚は、0.1mmと1mmの間である、および/または前記中実の繊維フィラメントの直径は、0.5mmと2mmの間である、ことを特徴とする、請求項10に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項12】
前記熱可塑性繊維ウェブ構造体の全体密度が25kg/mと150kg/mの間、好ましくは35kg/mと120kg/mの間、であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体。
【請求項13】
自動車内装部品であって、請求項1~12の何れか一項に記載の熱可塑性繊維ウェブ構造体と、前記熱可塑性繊維ウェブ構造体に固着されたスリーブおよび/または、不織布、織布、またはフェルトなどの、布地とを備えていることを特徴とする自動車内装部品。
【請求項14】
前記自動車内装部品は、シートバックレスト、シートクッション、ヘッドレスト、アームレスト、またはレッグレスト、であることを特徴とする、請求項13に記載の自動車内装部品。
【請求項15】
前記スリーブは、開口部を有する固着具によって、前記熱可塑性繊維ウェブ構造体に掛着固定されて接続されるスリーブ条片を有することを特徴とする、請求項13に記載の自動車内装部品。
【請求項16】
前記固着具の材料は、前記熱可塑性繊維ウェブ構造体の材料と同じであることを特徴とする、請求項15に記載の自動車内装部品。
【請求項17】
前記固着具に対応する前記熱可塑性繊維ウェブ構造体の固着用窓は圧縮されていることを特徴とする、請求項15に記載の自動車内装部品。
【請求項18】
前記自動車内装部品は、成形された鋼線を有する布地を備え、前記スリーブ条片と前記成形された鋼線とは、固着具によって、前記熱可塑性繊維ウェブ構造体に掛着固定されて接続されることを特徴とする、請求項15に記載の自動車内装部品。
【請求項19】
前記スリーブは、前記熱可塑性繊維ウェブ構造体に融着されて接続される熱可塑性条片を有することを特徴とする、請求項13に記載の自動車内装部品。
【請求項20】
前記熱可塑性条片の材料は、前記熱可塑性繊維ウェブ構造体の材料と同じであることを特徴とする、請求項19に記載の自動車内装部品。
【請求項21】
前記スリーブは、前記スリーブを前記熱可塑性繊維ウェブ構造体に固定して接続するために、前記熱可塑性繊維ウェブ構造体への挿入後に回転するI字状またはY字状のプラスチック片を有することを特徴とする、請求項13に記載の自動車内装部品。
【請求項22】
前記布地は、接着剤によって、前記熱可塑性繊維ウェブ構造体に固定されることを特徴とする、請求項13に記載の自動車内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車に関し、特に熱可塑性繊維ウェブ構造体および自動車内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックレスト、シートクッション、ヘッドレスト、アームレスト、レッグレスト、およびこれらに類するものなど、従来の自動車内装部品の支持構造は、車両用のポリウレタン発泡体であり、これらは熱硬化性材料であり、製品の廃棄後、リサイクル不能である。さらに、製造工程中に二酸化炭素が発生し得るので、炭素排出量が増大し得る。その一方で、ポリウレタンの発泡は化学反応であり、VOC、悪臭、およびこれらに類するもの、および更なるもの、を発生させ得る。場合によっては、製品は、成形不良、製品内の不均一に大きな気泡構造、およびこれらに類するものなどの欠陥を有し得るので、製品の安定性は制御不能であり得る。
【0003】
加えて、従来の製造工程においては、一様な密度または硬さを有する支持構造が一般に原材料から形成されており、個々の繊維フィラメントが一般に曲げられてランダムループを形成し、これにより、ランダムな分布および積み重ねを支持構造内に形成している。判明しているのは、全体的に一様な密度および硬さ、または支持構造内の繊維フィラメントによって形成されたランダムループのランダムな分布および積み重ね、を有するこのような支持構造は、使用者の快適さを損ね得る。その理由は、支持ニーズは使用者の身体の部位ごとに異なるからである。しかし、一様な密度を有する、またはランダムに分布させて詰め込まれた繊維フィラメントを備えた、製品は、心地良い支持を使用者に提供できない(例えば、背もたれの両側部は、中央部より高い支持性能を必要とするので、より高い密度および硬さを有するべきである)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来技術におけるポリウレタン発泡体に起因する諸問題を解決するために、本開示は、熱可塑性繊維ウェブ構造体と、リサイクルおよび再使用可能な自動車内装部品とを提供する。
【0005】
第1の態様によると、本開示は、熱可塑性エラストマー材料から形成されて互いに融接された複数の繊維フィラメントによって支持構造を形成する熱可塑性繊維ウェブ構造体に関する。
【0006】
更なる好適な一実施形態において、本開示は、互いに融接された複数の繊維フィラメントによって支持構造を形成する熱可塑性繊維ウェブ構造体であって、繊維フィラメントが熱可塑性エラストマー材料から形成されている、熱可塑性繊維ウェブ構造体において、熱可塑性繊維ウェブ構造体は、密度がそれぞれ異なる局所領域を少なくとも2つ有し、この少なくとも2つの局所領域の密度差は、5~70kg/m、好ましくは10~50kg/m、または15~30kg/m、であることを特徴とする熱可塑性繊維ウェブ構造体に関する。この好適な実施形態において、5kg/m未満または70kg/m超の密度差は、局所的に軟らか過ぎるか、または硬過ぎて、快適さと支持とを損なう最終製品に至り得る。更に、発明者らが見出したことは、少なくとも2つの局所領域の密度がそれぞれ異なり、密度差が所要範囲内に制御されていると、使用中の快適さを向上させるために極めて有益であり得るばかりでなく、熱可塑性繊維ウェブの形成中に製品をさまざまな形状に成形するためにも有益であるため、成形工程が容易になることである。
【0007】
別の好適な実施形態において、本開示は、互いに融接された複数の繊維フィラメントによって支持構造を形成する熱可塑性繊維ウェブ構造体であって、繊維フィラメントが熱可塑性エラストマー材料から形成されている、熱可塑性繊維ウェブ構造体において、繊維フィラメントが熱可塑性繊維ウェブ構造体内に部分的または全体的に規則的な配置および積み重ねで分布していることを特徴とする熱可塑性繊維ウェブ構造体に関する。発明者らが見出したことは、支持構造内に繊維フィラメントが非ランダムな分布および積み重ね(すなわち、規則的な分布および積み重ね)で配設されていると、熱可塑性繊維ウェブ構造体の使用中の快適さの向上にも有益であることである。
【0008】
本開示のコンテキストにおいて、熱可塑性繊維ウェブ構造体は、互いに自己融接した複数の繊維フィラメントから形成されている。この熱可塑性繊維ウェブ構造体は、シートバックレスト、シートクッション、ヘッドレスト、アームレスト、レッグレスト、およびこれらに類するもの、のための支持構造として使用可能である。有利な一実施形態において、熱可塑性繊維ウェブ構造体は、密度がそれぞれ異なる複数の、好ましくは少なくとも2、3、または4つの、局所領域を備えている。本開示のコンテキストにおいて、局所領域とは、複数の繊維フィラメントの充填および分布によって形成された空間を指している。熱可塑性繊維ウェブ構造体内のこれら領域の配置は、限定されないが、例えば、鉛直または水平配置、コア・シェル配置、島状配置、またはこれらに類するもの、が挙げられ得る。これら異なる密度の局所領域の各々が熱可塑性繊維ウェブ構造体の少なくとも5%、10%、20%、または30%以上の体積に相当することが好ましい。少なくとも2つの隣接する局所領域の間の密度差は、5~70kg/mの所要範囲内であることが好ましい。更に、少なくとも2つの局所領域のうちの少なくとも1つの繊維フィラメントは、規則的またはランダムな分布および積み重ねでそこに含まれ得る。
【0009】
熱可塑性エラストマーは、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、およびポリアミドエラストマーから選択された少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
ポリオレフィンエラストマーは、ポリアルファオレフィンエラストマーであることが好ましい。
【0011】
ポリエステルエラストマーのハードセグメントは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートを含み、ソフトセグメントは、ポリエステルセグメントまたはポリエーテルセグメントを含むことが好ましい。
【0012】
ポリアミドエラストマーは、ナイロンエラストマーであることが好ましい。ナイロンエラストマーのハードセグメントは、無限長のポリアミドセグメントであり、ソフトセグメントは、ポリエーテルセグメントまたはポリエステルセグメントであることを理解されたい。例として、ナイロン6またはナイロン66が挙げられ得る。
【0013】
一般に、熱可塑性繊維ウェブ構造体は、繊維フィラメントの密度分布により、一様な、または局所的に異なる、密度および硬さを有し得る。本開示において、異なる局所領域の間の所要密度差の実現は、さまざまな手段で可能である。例えば、同じまたは異なる複数の繊維フィラメントの疎または密な分布を異なる局所領域に形成することによって、または(ハードおよびソフトセグメントの異なる比率、複数の中空繊維フィラメントのそれぞれ異なる壁厚、および複数の中実繊維フィラメントのそれぞれ異なる直径、の採用などによって実現される)それぞれ異なる硬さのエラストマー材料から成る繊維フィラメントを異なる局所領域に使用することによって、またはこれら異なる手段の何れかの組み合わせによって、実現可能である。
【0014】
有利な一実施形態において、熱可塑性繊維ウェブ構造体内の少なくとも2つの局所領域は、繊維フィラメントの密度分布がそれぞれ異なる。本開示において、繊維フィラメントの密度分布とは、所与の一領域または単位体積における繊維フィラメントの量を指している。同種の繊維フィラメントの場合は、領域ごとに量を違えることによって、それぞれ異なる密度を実現できる。
【0015】
上記のように、規定の密度差を有する少なくとも2つの局所領域を熱可塑性繊維ウェブ構造体に配設することに加え、繊維フィラメントを部分的または全体的に規則的な配置および積み重ねで熱可塑性繊維ウェブ構造体内に分布させることによっても、快適さを向上し得る。本開示において、表現「規則的な配置および積み重ね」とは、個々の連続ストランドが曲げられてランダムなループを形成し、このようなループを一構造内にランダムに分布させて積み重ねているのとは異なり、一構造体内または一局所領域内の一部または全ての繊維フィラメント(例えば、少なくとも30%以上の、例えば、少なくとも50%、少なくとも65%、80%、または90%の、または全ての、繊維フィラメント)をその構造体内または局所領域内に、パターン化など、規則的に分布させて詰め込んでいることを意味する。このような規則的な分布および積み重ねは、熱可塑性繊維ウェブ構造体の特定次元における横断面(好ましくは、繊維ストランドの直線配置に対してほぼ垂直な方向の断面)から見ることができる。これは、繊維フィラメントまたは繊維ストランドを成形することによって、例えば、繊維フィラメントまたは繊維ストランドを捻じってもつれさせることによって、実現可能である。これにより、規則的な幾何学的形状が形成され得る。規則的に分布させて積み重ねられている繊維ストランドは、横断面で見たときに、例えば、M字形状、C字形状、X字形状、ジグザグ形状、波状形状、またはこれらに類するもの、を有し得る。このような規則的な配置および積み重ねは、さまざまな方法で実現され得る。有利な一実施形態においては、繊維フィラメントの押出工程において、繊維フィラメントの加熱溶融押出用の複数のノズルが、規定された領域(すなわち、成形対象領域)に、残りの周囲領域よりも密に配置されるように、意図的に配置される。この規定された領域では、押し出された複数の繊維ストランドが捻られて互いにもつれるため、ノズルの配置設計により対応する形状を形成することができる。したがって、ノズルから押し出された繊維ストランドは、特定次元の横断面(好ましくは、繊維ストランドの直線配置に対してほぼ垂直な方向の横断面)から見たときに、例えば、M字形状、C字形状、X字形状、ジグザグ形状、波状形状、またはこれらに類するもの、を有し得る。
【0016】
有利な一実施形態において、快適さを向上させるための上記2つの解決策は、互いに組み合わせ可能である。言い換えると、熱可塑性繊維ウェブ構造体は、密度がそれぞれ異なり、密度差が5~70kg/mである少なくとも2つの局所領域を有し得る。少なくとも1つの局所領域内の繊維フィラメントを部分的または全体的に規則的な配置および積み重ねでそこに分布させ得る。一般に、熱可塑性繊維ウェブ構造体は、繊維フィラメントの成形および分布に応じて、一様な、または局所的に異なる、支持を有し得る。
【0017】
個々の繊維フィラメントは、さまざまな形状の横断面を有し得る。例えば、中実の横断面、中空の横断面、円形断面、多角形横断面、または他の複雑な横断面などを有し得る。繊維フィラメントは、中空フィラメントおよび/または中実フィラメントであることが好ましい。例えば、適切な量の中空および中実の繊維フィラメントを独立に、または組み合わせて、使用することによって、さまざまな領域にそれぞれ異なる密度を形成し得る。
【0018】
中空の繊維フィラメントの壁厚は0.1mmと1mmの間であることが好ましく、および/または中実の繊維フィラメントの直径は0.5mmと2mmの間、好ましくは0.5mmと1.0mmの間、であることが好ましい。
【0019】
密度がそれぞれ異なる少なくとも2つの局所領域を有する熱可塑性繊維ウェブ構造体を製造するために、溶融押出、3D印刷、および射出成形などの工程が使用され得る。例えば、溶融押出工程においては、密度がそれぞれ異なる複数の局所領域を実現するために、次の方法が可能である。すなわち、押出ダイの、孔構造、疎または密な配置、および孔径の調整によって、押出ヘッドを通して、密度がそれぞれ異なる材料から成る複数の局所領域を押出成形する。または、規定された異なる密度をそれぞれ有する複数のシートまたはブロックを直接押出成形する。これらシートまたはブロックは、その後、密度がそれぞれ異なる複数の局所領域から成る熱可塑性繊維ウェブ構造体を形成するために、ダイカストされる。
【0020】
熱可塑性繊維ウェブ構造体の全体密度は、25kg/mと150kg/mの間、好ましくは35kg/mと120kg/mの間、より好ましくは45kg/mと90kg/mの間、であることが好ましい。
【0021】
第2の態様によると、本開示は、上記のような熱可塑性繊維ウェブ構造体と、この熱可塑性繊維ウェブ構造体に固着されたスリーブおよび/または布地とを備えた自動車内装部品に関する。好適な一実施形態において、この内装部品は、摩擦音を防止できる、更にはカーカスとの摺擦による繊維ウェブの擦り切れまたは引き裂きを防止できる、布地を含む。この布地として、不織布、織布、またはフェルト、およびこれらに類するもの、が挙げられる。これらは、例えば、PET、PP、PES、PE、TPEE、およびこれらに類するもの、あるいはこれらの混合物、から製作され得る。
【0022】
自動車内装部品は、シートバックレスト、シートクッション、ヘッドレスト、アームレスト、またはレッグレスト、であることが好ましい。
【0023】
スリーブは、開口部を有する固着具によって熱可塑性繊維ウェブ構造体に掛着固定されて接続されるスリーブ条片を有することが好ましい。好適な一実施形態において、固着具は、C字形状のリングである。固着具の形態は、C字形状に限定されず、固定を容易にするための開口部を有するU字形状にもし得ることを理解されたい。
【0024】
固着具の材料は、熱可塑性繊維ウェブ構造体の材料と同じでも、違っていてもよい。固着具の材料は、熱可塑性繊維ウェブ構造体の材料と同じであることが好ましい。上記の熱可塑性材料などと同じ材料とすることで、リサイクルに有利であり得ることを理解されたい。ただし、金属、プラスチック、エラストマー、および他の固定可能な材料など、異種材料も使用され得る。
【0025】
固着具に対応する熱可塑性繊維ウェブ構造体の固着用窓は、圧縮されることが好ましい。
【0026】
内装部品は、成形された鋼線を有する布地を備えることが好ましい。スリーブ条片と成形された鋼線とは、固着具によって、熱可塑性繊維ウェブ構造体に掛着固定されて接続される。
【0027】
スリーブは、熱可塑性繊維ウェブ構造体に融着されて接続される熱可塑性条片を有することが好ましい。
【0028】
熱可塑性条片の材料は、熱可塑性繊維ウェブ構造体の材料と同じであることが好ましい。両材料が同じであると、有利にリサイクルされ得るが、金属、プラスチック、エラストマー、および他の固定可能な材料など、異種材料も使用され得ることを理解されたい。
【0029】
スリーブは、スリーブを熱可塑性繊維ウェブ構造体に固定して接続するために、熱可塑性繊維ウェブ構造体への挿入後に回転可能なI字形状またはY字形状のプラスチック片を有することが好ましい。
【0030】
布地は、接着剤によって、熱可塑性繊維ウェブ構造体に固定されることが好ましい。布地は粘着性でもよく、ひいては熱可塑性繊維ウェブ構造体に直接接着され得ることを理解されたい。
【0031】
本開示による熱可塑性繊維ウェブ構造体は、三次元網状構造への熱可塑性エラストマー材料の溶融押出によって支持構造を形成し、高い復元力およびリサイクル性を特徴とする。更に、複数の好適な実施形態においては、密度がそれぞれ異なる複数の領域を有する、および/またはそれら領域内の繊維フィラメントが、上記のように、部分的または全体的に規則的な分布および積み重ねで構造体に含まれている、という事実の故に、熱可塑性繊維ウェブ構造体ならびにそれから製作された自動車内装部品は、環境保護、通気性、および軽量を同時に実現しながら、著しく向上された支持および快適さをもたらし得る。特に、熱可塑性材料は、溶融押出工程において、化学反応ではなく、物理反応に晒されるので、製造工程における安定性が向上され、製品が容易且つ制御可能に製作され得る。加えて、スリーブ用の従来の発泡体固着形態は熱可塑性繊維ウェブ構造体に適用不能であることを考慮して、熱可塑性繊維ウェブ構造体のラッピングに適合させるために、本開示の自動車内装部品のための完全に新規な固着形態が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本開示の好適な一実施形態による自動車内装部品の部分概略図である。
図2図1の熱可塑性繊維ウェブ構造体の概略図である。
図3図1の一変形例を示す。
図4図2の繊維フィラメントの構造の概略図である。
図5図4の一変形例を示す。
図6図2の一変形例を示す。
図7図2の別の変形例を示す。
図8図2の更に別の変形例を示す。
図9図2の更に別の変形例を示す。
図10図2の更に別の変形例を示す。
図11】本開示の別の好適な実施形態による自動車内装部品の部分アセンブリの概略図である。
図12図11の熱可塑性繊維ウェブ構造体に加わる力の概略図である。
図13図12の一変形例を示す。
図14図12の別の変形例を示す。
図15図12の更に別の変形例を示す。
図16図12の更に別の変形例を示す。
図17図12の更に別の変形例を示す。
図18図12の更に別の変形例を示す。
図19図12の更に別の変形例を示す。
図20図12の更に別の変形例を示す。
図21】本開示の更に別の好適な実施形態による自動車内装部品の部分概略図である。
図22図21の熱可塑性繊維ウェブ構造体の概略図である。
図23】本開示の更に別の好適な実施形態による自動車内装部品の部分概略図である。
図24】本開示の更に別の好適な実施形態による自動車内装部品の部分概略図である。
図25】本開示による一変形例である。
図26】本開示による別の変形例である。
図27】本開示による更に別の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下においては、本開示の好適な複数の実施例を示し、図と組み合わせて詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
図1に示されているように、本開示の好適な一実施形態による自動車内装部品は、スリーブ1aと、支持構造を形成する熱可塑性繊維ウェブ構造体2aとを備えたシートバックレストである。図2に示されているように、熱可塑性繊維ウェブ構造体2aは、溶融押出によって互いに融接された複数のポリエステルエラストマー繊維フィラメント21a(ハードセグメントは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントは、ポリエステルセグメントまたはポリエーテルセグメントである)で形成されている。図1に戻ると、スリーブ1aは、スリーブ条片1a1を有する。スリーブ条片1a1は、ポリエステルエラストマー繊維製のC字状リング3aによって熱可塑性繊維ウェブ構造体2aに掛着固定されて接続される。これにより、スリーブ1aと熱可塑性繊維ウェブ構造体2aとを接続するC字状リング3aの材料は、熱可塑性繊維ウェブ構造体2aの材料と同じであり、どちらも熱可塑性のリサイクル可能材料である。安定性を向上させるために、熱可塑性繊維ウェブ構造体の固着用窓22は、掛着安定性を向上させて強い接続をもたらすために、図3に示されているように、圧縮される。
【0035】
この実施形態において、ポリエステルエラストマー繊維フィラメント21aは、図4に示されているように、中空フィラメントである。中空のポリエステルエラストマー繊維フィラメント21aの壁厚は、0.2mmである。別の実施形態において、ポリエステルエラストマー繊維フィラメント21bは、図5に示されているように、中実フィラメントであり得る。中実のポリエステルエラストマー繊維フィラメント21bは、直径が1mmである。自動車内装部品の柔らかさ/硬さの調整は、繊維フィラメントの壁厚または直径の調整によって行えることを理解されたい。繊維フィラメントの壁厚または直径は、0.1~2mmの範囲内で調整可能であることが好ましい。特に、中空フィラメントの壁厚は、0.1~1mmの範囲内で調整可能であり、中実フィラメントの直径は、0.5~2mmの範囲内で調整可能である。
【0036】
この実施形態においては、図2に示されているように、ポリエステルエラストマー繊維フィラメント21aをシートバックレストの各領域に一様に分布させているので、このシートバックレストは、単一の密度(例えば、80kg/m)および硬さ(例えば、10kpa)を有する。別の実施形態においては、図6に示されているように、上部の密度が低く、下部の密度が高くなるように、ポリエステルエラストマー繊維フィラメント21cを分布させているので、このシートバックレストは、上部と下部とで密度および硬さが異なる、すなわち、上部の密度が30kg/mおよび下部の密度が90kg/mであり、密度がそれぞれ異なる2つの局所領域を形成している。更に別の実施形態においては、図7に示されているように、中央部の密度が低く、2つの側部の密度が高くなるように、ポリエステルエラストマー繊維フィラメント21dを分布させているので、このシートバックレストは、両側部と中央部とで密度および硬さが異なる、すなわち、密度が異なる3つの局所領域を形成している。ここで、両側部の密度は80kg/mであり、中央部の密度は60kg/mである。更に別の実施形態においては、図8に示されているように、2つの側部および中央下部の支持部の密度が高く、中央上部の密度が低くなるように、ポリエステルエラストマー繊維フィラメント21eを分布させているので、このシートバックレストは、局所的に異なる密度および硬さを有する、すなわち、密度がそれぞれ異なる2つの局所領域を形成している。ここで、両側部および中央下部の密度は75kg/mであり、中央上部の密度は50kg/mである。更に別の実施形態においては、図9に示されているように、中央内部の密度が低く、中央外部および両側部の密度が高くなるように、ポリエステルエラストマー繊維フィラメント21fを分布させているので、このシートバックレストは局所的に異なる密度および硬さを有する、すなわち、密度がそれぞれ異なる2つの局所領域を形成している。更に別の実施形態においては、図10に示されているように、中央右側および左側部の密度が低く、中央左側および右側部の密度が高くなるように、ポリエステルエラストマー繊維フィラメント21gを分布させているので、このシートバックレストは、局所的に異なる密度および硬さを有する、すなわち、密度が異なる4つの局所領域を形成している。この実施例においては、熱可塑性繊維ウェブ構造体2aが一様な密度を有するか、複数の異なる密度を有する複数の局所領域を有するかに拘らず、熱可塑性繊維ウェブ構造体2aは、40~90kg/mの範囲内の全体密度と4~15kpaの範囲内の硬さとを有するように制御されている。
【実施例2】
【0037】
図11に示されているように、本開示の別の好適な実施形態による自動車内装部品は、スリーブ1bと、支持構造を形成する熱可塑性繊維ウェブ構造体2bと、フェルト4bとを備えたシートクッションである。図12に示されているように、熱可塑性繊維ウェブ構造体2bは、3D印刷によって互いに融接された複数のポリアルファオレフィンエラストマーフィラメント21hで形成されている。図11に戻ると、スリーブ1bはスリーブ条片1b1を有し、フェルト4bは成形された鋼線4b1を有する。どちらも、C字状リング3bによって、熱可塑性繊維ウェブ構造体2bに掛着固定されて接続される。C字状リングの材料は、熱可塑性繊維ウェブ構造体2bの材料と同じであり、どちらもポリオレフィン材料であるので、強い固定力をもたらす。
【0038】
この実施形態においては、図12に示されているように、ポリアルファオレフィンエラストマーフィラメント21hをシートクッションの各領域に一様に分布させているので、このシートクッションは一様な支持を有する。他の複数の実施形態においては、図13図18に示されているように、支持を必要とする領域におけるシートクッションの支持を強化するために、繊維フィラメント21i、21j、21k、21l、21m、21nは、局所領域内または繊維ウェブ構造体内に規則的な配置および積み重ねで分布させられるように成形されている。繊維フィラメント21iを一例として挙げると、成形対象領域に押し出される複数の繊維フィラメントの(横断面で見たときに)独特なS字形状の規則的な配置を形成するように、この領域にノズルをより密に配置可能である。他の可能な複数の変形例においては、密度がそれぞれ異なる少なくとも2つの局所領域を形成するために、形状および分布がそれぞれ異なる繊維フィラメント21i、21j、21k、21l、21m、21nから成る個々の局所領域が重ね合わされ得る、または組み合わされ得る。例えば、支持を必要とする領域におけるシートクッションの支持性と使用者の快適さとを向上させるように、繊維フィラメント21o、21pは、図19および図20に示されているように、成形されて重ね合わされる。
【実施例3】
【0039】
図21に示されているように、本開示の更に別の好適な実施形態による自動車内装部品は、ヘッドレストであり、スリーブ1cと、支持構造を形成する熱可塑性繊維ウェブ構造体2cとを備えている。図22に示されているように、熱可塑性繊維ウェブ構造体2cは、溶融押出成形によって互いに融接された複数のポリアミドエラストマー繊維フィラメント21qで形成されている。図21に戻ると、スリーブ1cは、熱可塑性条片1c1を有する。熱可塑性条片1c1は、熱可塑性繊維ウェブ構造体2cに融着されて接続される。熱可塑性条片1c1の材料は、熱可塑性繊維ウェブ構造体2cの材料と同じ、ポリアミドエラストマーであり、熱間プレス工程中に繊維フィラメント21qと親和性が有り、リサイクル工程において製品の二次使用に影響を及ぼさない。出発材料がポリアミドエラストマーである場合、熱可塑性条片はナイロン6またはナイロン66であり得ることを理解されたい。
【実施例4】
【0040】
図23に示されているように、本開示の更に別の好適な実施形態による自動車内装部品は、アームレストであり、スリーブ1dと、支持構造を形成する熱可塑性繊維ウェブ構造体2dとを備えている。熱可塑性繊維ウェブ構造体2dは、射出成形によってナイロンエラストマー繊維フィラメントで形成されている。スリーブ1dは、I字状プラスチック片1d1を有する。I字状プラスチック片1d1は、スリーブ1dを熱可塑性繊維ウェブ構造体2dに固定して接続するために、熱可塑性繊維ウェブ構造体2dへの挿入後に回転する。
【実施例5】
【0041】
図24に示されているように、本開示の更に別の好適な実施形態による自動車内装部品は、レッグレストであり、支持構造を形成する熱可塑性繊維ウェブ構造体2eと不織布4eとを備えている。不織布4eは、接着剤5eによって、熱可塑性繊維ウェブ構造体2eに固定される。この実施例において、不織布4eの材料はPETであり、接着剤5eの材料は熱可塑性接着剤である。
【0042】
上記の各実施例は、本開示の好適な実施例に過ぎず、本開示の範囲を制限するために使用されるものではない。本開示の上記の各実施例に対して種々の変更を行うことができる。例えば、図25に示されている自動車内装部品は、フロントクッションであり、それぞれ独立に設けられた複数の横に並んだ部材(例えば、4つの局所領域を形成するための4つの部材)を備えている。この場合、これら部材は、融接されている。別の実施例では、図26に示されている自動車内装部品は、フロントバックレストであり、それぞれ独立に設けられた複数の縦に並んだ部材を備えている。この場合、これら部材は融接されている。また、例えば、図27に示されているフロントバックレストは、4つの局所領域を備え得る。すなわち、左右側部の2つの局所領域と中央部の縦方向に重ね合わされた2つの局所領域である。図27のフロントバックレストを形成するために、これら局所領域を構成する各部材は融接される。図25または図27の実施例において、4つの局所領域は、例えば、互いに異なる密度を3つまたは4つ有し得る。例えば、図27において、中央上部の密度を60kg/mに、中央下部の密度を80kg/mに、2つの側部の密度を100kg/mにできる。
【0043】
本開示の特許請求の範囲および明細書に記載の内容により行われた簡素且つ相当するあらゆる変更および修正は、本開示の特許請求の範囲において求められている保護の範囲に入る。本開示に詳細に記載されていない内容は、全て従来技術の内容である。
図1
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【国際調査報告】