(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】眼科用途の生物活性ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 251/00 20060101AFI20241031BHJP
A61K 47/58 20170101ALI20241031BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20241031BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20241031BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20241031BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20241031BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20241031BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20241031BHJP
A61F 2/16 20060101ALI20241031BHJP
A61P 27/02 20060101ALN20241031BHJP
G02C 7/04 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C08F251/00
A61K47/58
A61K38/02
A61K38/39
A61P43/00 111
A61L27/16
A61L27/24
A61L27/22
A61L27/54
A61F2/16
A61P27/02
G02C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523942
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022078375
(87)【国際公開番号】W WO2023069996
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507188902
【氏名又は名称】キー メディカル テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】メンタック カリッド
【テーマコード(参考)】
2H006
4C076
4C081
4C084
4C097
4J026
【Fターム(参考)】
2H006BB07
4C076AA94
4C076BB24
4C076CC10
4C076CC29
4C076EE59
4C081AB22
4C081AB23
4C081BB01
4C081BB03
4C081BB06
4C081CA081
4C081CC01
4C081CD01
4C081CD11
4C081CD12
4C081CD15
4C081CD16
4C081CD17
4C081CE01
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4C081DA16
4C081EA02
4C081EA12
4C084AA02
4C084BA42
4C084BA44
4C084DA40
4C084NA12
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZC021
4C084ZC022
4C097AA25
4C097BB01
4C097EE03
4C097EE13
4C097EE18
4C097SA10
4J026AA01
4J026AA07
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA30
4J026BA32
4J026BA43
4J026DB06
4J026DB12
4J026DB33
4J026FA05
4J026GA06
(57)【要約】
眼科用途の方法、組成物、及び機器を含む生物活性ポリマー。方法は、生物活性剤を選択すること、生物活性剤を部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、次いで、反応物として生物活性モノマーと、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを用いて共重合反応を行うことを含み得る。生物活性モノマーの部位は、共重合反応において、他のモノマーの少なくとも1つと直接反応し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性ポリマーの製造方法であって、
生物活性剤を部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、及び
反応物として前記生物活性モノマーと、それぞれ前記生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを用いて共重合反応を行うことであって、前記生物活性モノマーの前記部位が、共重合反応において、他のモノマーの少なくとも1つと直接反応すること
を含む方法。
【請求項2】
アクリルポリマー又はシリコーンポリマーを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物活性剤が、タンパク質、タンパク質断片、少なくとも50アミノ酸のポリペプチド、2~49アミノ酸のペプチド、プロテオグリカン、多糖、抗菌薬、及び/又は治療薬を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物活性剤が、細胞外マトリックスタンパク質、又は少なくとも前記細胞外マトリックスタンパク質の5、10、25、50、若しくは100アミノ酸の配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞外マトリックスタンパク質が、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、ビメンチン、フィブロネクチン、又はラミニンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1種以上の他のモノマーの少なくとも1つのモノマーが、メタクリレート化合物、メタクリル酸メチル化合物、アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、又はメタクリル酸ヒドロキシエチル化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1種以上の他のモノマーが、親水性モノマー及び疎水性モノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記親水性モノマーが、エステル官能基の酸素原子に直接結合したヒドロキシアルキル基を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性モノマーが、エステル官能基の酸素原子に直接結合したアルキル基を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
生物活性ポリマーの製造方法であって、
生物活性剤を第1のアルケニル部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、及び
反応物として少なくとも前記生物活性モノマーと、それぞれアルケニル部位を含み、且つ前記生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを用いて、アルケニルに基づく共重合反応を行って前記生物活性ポリマーを生成すること
含む方法。
【請求項11】
前記生物活性剤が、タンパク質、タンパク質断片、ペプチド、多糖、少なくとも50アミノ酸のポリペプチド、プロテオグリカン、細胞外マトリックスタンパク質、抗菌薬、及び治療薬のうちの少なくとも1つからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1種以上の他のモノマーの少なくとも1つがアクリル化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記アクリル化合物が、独立して、アクリル酸若しくはα/β置換アクリル酸、アクリル酸エステル若しくはα/β置換アクリル酸エステル、又はアクリルアミド若しくはα/β置換アクリルアミドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1種以上の他のモノマーの少なくとも1つのモノマーが、メタクリレート化合物、メタクリル酸メチル化合物、アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、又はメタクリル酸ヒドロキシエチル化合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記1種以上の他のモノマーが、親水性モノマー及び疎水性モノマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記親水性モノマーが、エステル官能基の酸素原子に直接結合したヒドロキシアルキル基を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記疎水性モノマーが、エステル官能基の酸素原子に直接結合したアルキル基を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記生物活性ポリマーが、1.4~1.6又は1.45~1.55の屈折率を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記生物活性ポリマーを水和させることを更に含み、水和した生物活性ポリマーの平衡含水率が10~50%又は15~40%である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
請求項10に記載の方法で生成した生物活性ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月22日に出願された米国仮特許出願第63/271,062号の非仮特許出願であり、その優先権を主張するものであって、その全体が参照により本明細書に援用される。
本明細書に開示するのは、眼科用途に特に有用な新規の材料と、その製造及び使用方法である。より具体的には、眼科用途の方法、組成物、及び機器を含む生物活性ポリマーを開示する。本明細書で開示する生物活性ポリマーは、眼内レンズ、コンタクトレンズ、及び他の眼インプラントの製造に使用するのに適した、比較的柔らかく、光学的に透明で、折り畳み可能な高屈折率材料を製造するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
1940年代以降、眼内レンズ(IOL)という形態の光学機器が、病変又は損傷した本来の水晶体の代替品として利用されてきた。殆どの場合、眼内レンズは、例えば白内障の例のように、病変又は損傷した本来の水晶体を外科的に除去する際に眼内に挿入される。何十年もの間、このような眼内レンズを製造するための好ましい材料は、硬質のガラス状ポリマーであるポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)であった。
柔らかく柔軟性の高いIOLは、圧縮する、折り畳む、巻くなどの変形が可能なため、近年人気が高まっている。このような柔らかいIOLは、眼の角膜の切開部から挿入する前に変形させることができる。IOLは眼内に挿入した後、軟質材料の記憶特性により、折り畳む前の元の形状に戻る。前述の柔らかく柔軟性の高いIOLは、4.0mm未満の、即ちPMMA製などの剛性の高いIOLを挿入するのに必要な5.5~8.0mmよりもはるかに小さい切開部から眼内に挿入できる。剛性の高いIOLは、柔軟性に欠けるIOLの光学部の直径よりもわずかに大きい切開部から角膜に挿入しなければならないため、より大きな切開が必要となる。結果的に、切開部が大きいと、乱視発生など術後合併症の発生率が増加することが時折認められているため、剛性の高いIOLは市場ではあまり普及していない。
【0003】
この10年の間に、IOLの製造に疎水性ポリマーが使用され、一定の成功を収めてきた。この種のポリマーは、眼内環境において良好な物理的特性と許容可能な生体適合性を有するとして、眼科業界で受け入れられてきた。
ポリマーとは、多くのモノマー単位の繰り返しで構成された非常に大きな分子である。天然(例えば、絹やセルロース)又は合成(例えば、ナイロンやポリエステル)のものがある。生物活性ポリマーは、生物、組織、又は細胞に対する生物学的作用を有するポリマーである。合成生物活性ポリマーは、ポリマーマトリックスに付随する生物活性剤の活性に関連する医療用途向けに設計し得る。このような用途には眼科も含まれる。
生物活性剤が付随した眼科用ポリマーは臨床的にはうまく機能していない。こうした眼科用ポリマーを合成するのに使用される方法は非常に複雑であり、生物活性剤をポリマーマトリックス中に物理的に配置しても、ポリマー骨格に共有結合せず、そのため生物活性剤の生物学的利用率が大幅に低下してしまう。従って、生物活性特性を示す折り畳み可能な眼科用ポリマーが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、眼科用途の方法、組成物、及び機器を含む生物活性ポリマーを提供する。一実施形態では、方法は、生物活性剤を選択すること、生物活性剤を部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、次いで、反応物として生物活性モノマーと、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを用いて共重合反応を行うことを含み得る。生物活性モノマーの部位は、共重合反応において、他のモノマーの少なくとも1つと直接反応し得る。
一実施形態では、本開示は、生物活性剤を部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、及び反応物として生物活性モノマーと、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを用いて共重合反応を行うことを含む生物活性ポリマーの製造方法に関し、生物活性モノマーの部位は、共重合反応において、他のモノマーの少なくとも1つと直接反応する。
一実施形態では、本開示は、生物活性剤を第1のアルケニル部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、及び反応物として少なくとも生物活性モノマーと、それぞれアルケニル部位を含み、且つ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを用いて、アルケニルに基づく共重合反応を行って生物活性ポリマーを生成することを含む生物活性ポリマーの製造方法に関する。
一実施形態では、生物活性剤は、タンパク質、タンパク質断片、ペプチド、多糖、少なくとも50アミノ酸のポリペプチド、プロテオグリカン、細胞外マトリックスタンパク質、抗菌薬、及び治療薬の少なくとも1つからなる群から選択される。
【0005】
一実施形態では、1種以上の他のモノマーの少なくとも1つはアクリル化合物である。一実施形態では、アクリル化合物は、独立して、アクリル酸若しくはα/β置換アクリル酸、アクリル酸エステル若しくはα/β置換アクリル酸エステル、又はアクリルアミド若しくはα/β置換アクリルアミドである。
一実施形態では、1種以上の他のモノマーの少なくとも1つのモノマーは、メタクリレート化合物、メタクリル酸メチル化合物、アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、又はメタクリル酸ヒドロキシエチル化合物を含む。一実施形態では、1種以上の他のモノマーは、親水性モノマー及び疎水性モノマーを含む。一実施形態では、親水性モノマーは、エステル官能基の酸素原子に直接結合したヒドロキシアルキル基を有する。一実施形態では、疎水性モノマーは、エステル官能基の酸素原子に直接結合したアルキル基を有する。
一実施形態では、生物活性ポリマーは、1.4~1.6又は1.45~1.55の屈折率を有する。
一実施形態では、方法は生物活性ポリマーを水和させることを更に含み、水和した生物活性ポリマーの平衡含水率は10~50%又は15~40%である。
一実施形態では、本開示は、本明細書に開示する方法によって生成された生物活性ポリマーに関する。
【0006】
一実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマー成分とを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性ポリマーは、生物活性モノマー成分を、1種以上の他のモノマー成分のそれぞれと共有結合させる骨格を含む。一実施形態では、生物活性モノマー成分の各単位は、少なくとも2つの炭素原子を骨格に供与し、且つ1種以上の他のモノマー成分の各モノマー成分の各単位は、ちょうど2つの炭素原子を骨格に供与する。
一実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の親水性モノマーとを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性ポリマーは、生物活性モノマー成分を、1種以上の親水性モノマー成分のそれぞれと共有結合させる骨格を含む。一実施形態では、生物活性モノマー成分の各単位は、少なくとも2つの炭素原子を骨格に供与し、且つ1種以上の他の親水性モノマー成分の各親水性モノマー成分の各単位は、ちょうど2つの炭素原子を骨格に供与する。
一実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、それぞれ生物活性剤を含まない少なくとも2つの親水性モノマーを含むコポリマーとを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性ポリマーは、生物活性モノマー成分を、2つ以上の親水性モノマーの少なくとも1つと共有結合させる骨格を含む。一実施形態では、生物活性モノマー成分の各単位は、少なくとも2つの炭素原子を骨格に供与し、且つ2つの親水性モノマーの少なくとも1つは、ちょうど2つの炭素原子を骨格に供与する。
一実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、それぞれ生物活性剤を含まない少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つの疎水性モノマーを含むコポリマーとを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性ポリマーは、生物活性モノマー成分を、疎水性モノマー及び親水性モノマーの少なくとも1つと共有結合させる骨格を含む。一実施形態では、生物活性モノマー成分の各単位は、少なくとも2つの炭素原子を骨格に供与し、且つ親水性モノマー及び疎水性モノマーの少なくとも1つは、ちょうど2つの炭素原子を骨格に供与する。
一実施形態では、生物活性モノマー成分の単位の間に、骨格に沿って1種以上の他のモノマー成分の単位が点在している。
一実施形態では、1種以上の他のモノマー成分は、生物活性コポリマーの大部分を形成する。一実施形態では、1種以上の他のモノマー成分は、質量又は単位数で、生物活性ポリマーの少なくとも80、90、95、又は98%を形成する。
一実施形態では、生物活性ポリマーはアクリルポリマーを含む。一実施形態では、1種以上の他のモノマーは親水性モノマーを含む。別の実施形態では、1種以上の他のモノマーは疎水性モノマーを含む。更に別の実施形態では、1種以上の他のモノマーは、親水性モノマー及び疎水性モノマーを含むコポリマーを形成する。別の実施形態では、1種以上の他のモノマーは、紫外線遮断モノマー、及び/又は架橋モノマー、及び/又は青色光遮断モノマーを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】生物活性剤を有する生物活性モノマーと、生物活性剤を含まないモノマーとの反応を示す非限定的な代表図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
元素周期表への言及は全て、1990年にCRC Press,Inc.が出版し、著作権を有する元素周期表を指す。また、1つ又は複数の基への言及はいずれも、基に番号を付けるためのIUPAC命名法を使用し、この元素周期表に反映されている1つ又は複数の基を指すものとする。反対の記載がない、文脈から暗示されない、又は当該技術分野における慣例でない限り、全ての部及びパーセントは質量に基づいており、全ての試験方法は本開示の出願日時点のものである。米国特許実務上、特に合成技術、製品及び加工設計、ポリマー、触媒、定義(本開示で具体的に示した定義と矛盾しない範囲で)、並びに当技術分野における一般的知識の開示に関して、参照した特許、特許出願、又は刊行物の内容は、参照によりその全体が援用される(又はその同等の米国版が参照によりそのように援用される)。
【0009】
本開示における数値範囲は概算であるため、別段の指示がない限り、範囲外の値を含み得る。数値範囲は、任意の下限値と任意の上限値との間に少なくとも2単位の隔たりがある場合は、1単位ずつ、下限値及び上限値を含む全ての値を含む。一例として、例えば、分子量、粘度、メルトインデックスなどの組成的、物理的、又はその他の特性が100~1,000である場合、100、101、102などの個々の値全て、及び100~144、155~170、197~200などの部分範囲が明示的に列挙されることを意図している。1未満の値を含む範囲、又は1よりも大きな端数(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲については、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01、又は0.1とみなされる。10未満の1桁の数字を含む範囲(例えば1~5)については、1単位は通常0.1とみなされる。これらは具体的に意図するものの例に過ぎず、列挙された最低値と最高値の間の数値の可能な組み合わせ全てが、本開示に明示されているとみなされる。本開示内では、特に本明細書に開示する組成物中の成分の質量パーセントについて数値範囲を提供する。
本明細書において数値範囲と共に使用する用語「約」は、記載する数値の上限及び下限を拡張することによってその範囲を修正する。一実施形態では、用語「約」は、本明細書において、記載した値の上下に10%の差異で数値を修正するために使用する。従って、約50%は45~55%の範囲を含む。
【0010】
本明細書で使用する「生物活性剤」は、in vitro及び/又はin vivoで生物学的効果を発揮することができる物質を指す。生物活性剤は、中性であっても、正又は負に荷電していてもよい。好適な生物活性剤の例には、診断薬、医薬品、薬剤、合成有機分子、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ステロイド、ステロイド類似体、並びにヌクレオシド、ヌクレオチド、及びポリヌクレオチドを含む遺伝物質がある。一実施形態では、生物活性剤は医薬品及び/又は薬剤を含む。
化合物に関して使用する場合、特に断りのない限り、単数形の語は全ての異性体を含み、逆もまた同様である(例えば、「hexane(ヘキサン)」は、ヘキサンの全ての異性体を個々に又は集合的に含む)。用語「化合物」及び「錯体」は区別せずに使用し、有機化合物、無機化合物、及び有機金属化合物を指す。用語「原子」は、イオン状態、つまり電荷若しくは部分電荷を持つか、又は別の原子に結合しているかに関係なく、元素の最小構成要素を指す。
【0011】
本明細書で使用する用語「構成する」、「含む」、「有する」、及び同様の用語は、それが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の構成要素、ステップ、又は手順の存在を除外することを意図するものではない。誤解を避けるため、用語「構成する」の使用により請求される全ての工程は、反対の記載がない限り、1種以上の追加のステップ、装置の一部若しくは構成部分、及び/又は材料を含み得る。対照的に、用語「本質的に~からなる」は、実施可能性に必須でないものを除き、任意の他の構成要素、ステップ、又は手順を任意の後続の記述の範囲から除外する。用語「~からなる」は、具体的に描写又は列挙していない任意の構成要素、ステップ、又は手順を除外する。用語「又は」は、別段の記載がない限り、列挙した部材を個々に、並びに任意の組み合わせで指す。
本明細書で使用する用語「組成物」及び同様の用語は、2つ以上の成分の混合物又は配合物を指す。
本明細書で使用する用語「コポリマー」は、2つの異なるモノマーから調製されるポリマー、及び3つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを指す。
本明細書で使用する用語、ジオプター(D)は、レンズの焦点距離の逆数をメートルで表したものを指す。例えば10Dのレンズは、平行光線を(1/10)メートルの焦点に合わせる。患者本来の水晶体を手術で除去した後、外科医は通常、自らの個人的な好みに基づき、計算式に従って、患者の術前の屈折異常を矯正するために、望ましいジオプター度数(D)を計算して患者のIOLを選択する。例えば、-10Dの近視患者が白内障手術とIOL挿入術を受けると、患者は眼鏡なしでも十分に遠くを見ることができる。これは、IOLを選択する際に外科医が患者の-10Dの近視を考慮したからである。
【0012】
本明細書で使用する「眼内レンズ」は、患者の眼内に挿入し得る高分子有水晶体又は無水晶体(当技術分野では偽水晶体とも呼ばれる)の視力矯正器具を指す。有水晶体レンズは、近視(近くが見える)、遠視(遠くが見える)、及び乱視(角膜の歪み又は場合によっては水晶体の歪みのために網膜上で焦点が合わず、視界がぼやける)などの屈折異常を矯正するために使用される。本来の水晶体は、有水晶体レンズを挿入する場合はそのまま残るが、偽水晶体レンズを挿入する場合は除去される。無水晶体又は偽水晶体レンズは、病気(多くの場合、本来の水晶体が濁る白内障)により本来の水晶体が除去された後に眼内に挿入される。いずれの種類のレンズも、虹彩の前方にある前房、又は虹彩の後方且つ本来の水晶体の前方にある後房、又は本来の水晶体が除去される前にあった領域に挿入される。眼内レンズは「ハード」、即ち比較的柔軟性のないもの、又は「ソフト」、即ち比較的柔軟性があるが折り畳み可能でないものであり得るが、本発明の目的のために現在好ましいレンズは、折り畳み可能なアクリルポリマーレンズである。折り畳み可能なレンズとは、ハードレンズ又はソフトレンズに必要とされるよりもはるかに小さな切開で眼内に挿入できるほど小さな構成に折り畳むことができる十分な柔軟性を有するレンズである。つまり、ハードレンズ及びソフトレンズでは6mm以上の切開が必要となることがあるが、折り畳み可能なレンズでは通常3mmかそれ以下の切開しか必要ない。Mentakに対する米国特許第7,789,509号明細書、Mentakに対する米国特許第6,281,319号明細書、Mentakに対する米国特許第6,635,731号明細書、Mentakに対する米国特許第6,635,732号明細書、及びMentakに対する米国特許第7,083,645号明細書、Mentakらに対する米国特許第7,789,509号明細書、及び同じくMentakらに対する7,399,811号明細書は全て、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0013】
本明細書で使用する「光学部品」、「光学アセンブリ」、又は「光学サブアセンブリ」は、眼科用機器、アセンブリ、又はサブアセンブリの一部、又は完成品を意味するものとする。光学部品の非限定的な例に、レンズ体、光学体、ハプティック、IOL部品がある。
本明細書で使用する「光学ポリマー」は、患者の眼内に挿入するのに好適であり、限定はしないが、近視、遠視、乱視、及び白内障などの眼の水晶体の眼科的状態に対処することができるポリマーを指す。一般に、このようなポリマーは生体適合性であり、即ち、挿入時に炎症、免疫原性、又は中毒性状態を引き起こさず、無色透明(特定の用途のために意図的に着色した場合を除く)のフィルム状の膜を形成し、屈折率が約1.4よりも大きく、好ましくは約1.5よりも大きく、現在最も好ましくは約1.55よりも大きい。
本明細書で使用する「医薬品」又は「薬剤」は、患者の疾病、苦痛、疾患、又は傷害の治療(予防、診断、緩和、又は治癒を含む)に使用し得る任意の治療薬又は予防薬を指す。治療上有用なペプチド、ポリペプチド、及びポリヌクレオチドは、医薬品又は薬剤という用語の意味に含まれ得る。
本明細書で使用する用語「ポリマー」(及び同様の用語)は、同じ種類(ホモポリマー)又は異なる種類(コポリマー)のモノマーを反応させる(即ち、重合させる)ことによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマーを含む。
本明細書で使用する、物質の屈折率(refractive index)又は屈折率(index of refraction)は、媒質中の光の伝播について記述する無次元数であり、cは真空中の光の速度、vは媒質中の光の位相速度と定義される。例えば、水の屈折率は1.333であり、光は真空中では水中より1.333倍速く進むことを意味する。
【0014】
以下に、本明細書に開示する器具及び方法を、本開示の実施形態を示した添付図面を参照しながら、より詳しく説明する。しかしながら、本明細書に開示する器具及び方法は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載する実施形態に限定されるものと解釈されるべきでない。むしろ、これらの実施形態を提供することにより、本開示が詳細且つ完全なものとなり、当業者に本発明の範囲が十分に伝わるであろう。
一連の特徴及び/又は機能は、独立照準器、前方搭載又は後方搭載クリップオン式照準器、及び実環境に配備される光学照準器の他の配列の状況において容易に変化させ得ることが、当業者には理解されよう。更に、特徴及び機能の様々な組み合わせが、あらゆる種類の既存の固定又は可変照準器を改造するための追加モジュールに組み込み得ることが、当業者には理解されよう。
ある要素又は層が別の要素又は層「の上」にある、「に接続され」ている、又は「に結合され」ていると言及する場合、それは直接的に別の要素又は層の上にあり、これらに接続され、又はこれらに結合され得ることが理解されよう。代替的に、介在する要素や層が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素又は層「の直接上に」ある、「に直接接続され」ている、又は「に直接結合され」ていると言及する場合、介在する要素又は層は存在しない。
【0015】
同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。本明細書で使用する用語「及び/又は」は、関連する列挙した項目の1種以上のあらゆる組み合わせを含む。
本明細書では、様々な要素、成分、領域、及び/又は部分を説明するために第1、第2などの用語を使用することがあるが、これらの要素、成分、領域、及び/又は部分は、これらの用語によって限定されるべきでないことが理解されよう。これらの用語は、1つの要素、成分、領域、又は部分を、別の要素、成分、領域、又は部分と区別するために使用しているに過ぎない。従って、後述する第1の要素、成分、領域、又は部分は、本開示から逸脱することなく、第2の要素、成分、領域、又は部分と称することができる。
本明細書では説明を容易にするために、「の下」、「の下方」、「よりも下」、「の上方」、「よりも上」などの空間的に相対的な用語を使用して、図に示す1つの要素又は特徴の、別の要素(複数可)又は特徴(複数可)に対する関係を説明する場合がある。空間的に相対的な用語は、図示した向きに加えて、使用時又は動作時の機器の異なる向きを包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図中の機器をひっくり返した場合、他の要素又は特徴「の下方」又は「の下」と説明された要素は、他の要素又は特徴「の上方」に向くことになる。従って、例示的な用語「の下方」は、上方と下方の両方の向きを包含できる。機器は、他の向き(90度回転した向き又は他の向き)であってもよく、本明細書で使用する空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈される。
【0016】
生物活性ポリマー
一実施形態では、本開示は、眼科用途の方法、組成物、及び機器を含む生物活性ポリマーを提供する。生物活性ポリマー中で、生物活性剤はポリマー骨格に共有結合され、その結果、長期安定性及び生物学的利用率が向上する。これらの生物活性ポリマーは、眼科用インプラント(例えば、眼内レンズ)、コンタクトレンズ、及びその他の機器の製造に使用できる。
一実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマー成分とを含む生物活性ポリマーに関する。一実施形態では、モノマー成分は親水性モノマーである。また別の実施形態では、モノマー成分は疎水性モノマーである。一実施形態では、コポリマーのための1種以上の他の成分。一実施形態では、コポリマーは少なくとも2つの親水性モノマーを含む。別の実施形態では、コポリマーは少なくとも2つの疎水性モノマーを含む。更に別の実施形態では、コポリマーは、少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つの疎水性モノマーを含む。
【0017】
別の実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマー成分とを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性ポリマーは、生物活性モノマー成分を、1種以上の他のモノマー成分のそれぞれと共有結合させる骨格を含み、生物活性モノマー成分の各単位は、少なくとも2つの炭素原子を骨格に供与し、且つ1種以上の他のモノマー成分の各モノマー成分の各単位は、ちょうど2つの炭素原子を骨格に供与する。
別の実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマー成分とを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性ポリマーは、生物活性モノマー成分を、1種以上の他のモノマー成分の少なくとも1つと共有結合させる骨格を含み、生物活性モノマー成分の各単位は、少なくとも2つの炭素原子を骨格に供与し、且つ1種以上の他のモノマー成分の少なくとも1つは、ちょうど2つの炭素原子を骨格に供与する。
別の実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、それぞれ生物活性剤を含まない少なくとも2つの他のモノマー成分を含むコポリマーとを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性ポリマーは、生物活性モノマー成分を、コポリマーのモノマー成分の少なくとも1つと共有結合させる骨格を含み、生物活性モノマー成分の各単位は、少なくとも2つの炭素原子を骨格に供与し、且つコポリマーの少なくとも1つのモノマー成分は、ちょうど2つの炭素原子を骨格に供与する。
別の実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、1種以上の親水性モノマーとを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性剤は、1種以上の親水性モノマーと共有結合している。
別の実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分、1種以上の親水性モノマー、及び1種以上の疎水性モノマーを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性剤は、親水性モノマー及び疎水性モノマーの少なくとも1つと共有結合している。
別の実施形態では、本開示は、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分、1種以上の親水性モノマー、及び1種以上の疎水性モノマーを含む生物活性ポリマーに関し、生物活性剤は、1種以上の親水性モノマー及び1種以上の疎水性モノマーと共有結合している。
【0018】
別の実施形態では、本開示は、ポリマーの約0.001~約0.1質量%の生物活性剤を含む生物活性モノマー成分、ポリマーの約45~55質量%の1種以上の親水性モノマー、及びポリマーの約40~50質量%の1種以上の疎水性モノマーを含む生物活性ポリマーに関する。
別の実施形態では、本開示は、ポリマーの約0.001~約0.1質量%の生物活性剤を含む生物活性モノマー成分、ポリマーの約30~45質量%の1種以上の親水性モノマー、及びポリマーの約50~65質量%の1種以上の疎水性モノマーを含む生物活性ポリマーに関する。
別の実施形態では、生物活性ポリマーは架橋剤を含み得る。また別の実施形態では、生物活性ポリマーは紫外線吸収剤を含み得る。
【0019】
生物活性剤
我々は驚くべきことに、生物活性剤が、材料の大部分との同時重合を可能にする基で官能基化されていることが重要であると発見した。本明細書に開示する方法は、ポリマーマトリックスに対する生物活性剤の親和性を向上させ、それにより相分離が減少若しくは解消し、コモノマー溶液への溶解性が向上し、及び/又は共有結合による共重合が促進し得ることがわかった。この新規の手法は、生物活性剤の特異的な生物活性を保護し、長期安定性と光学的透明性をもたらす。
本開示の重要な一態様は、官能基化された生物活性剤を既存のポリマー配合物に添加すると、物理的特性に影響を与えることなく、生物活性を付与できるという点である。この結果、生体適合性が向上する。
特定の理論に縛られることなく、生物活性ポリマーの製造方法の代表的で非限定的な描写を
図1に示す。メタクリル化コラーゲンは、生物活性剤としてコラーゲンを含む生物活性モノマーとして示している。メタクリル酸ヒドロキシエチル(HMEA)はモノマーとして示しており、この場合は親水性モノマーである。HEMA及びメタクリル化(methyacrylated)コラーゲンは架橋剤(EDGMA)と混合する。重合を開始するには、フリーラジカル開始剤(例えば、AIBN)を使用する。
一実施形態では、生物活性剤は、ポリペプチド(例えば、タンパク質又はタンパク質断片)、ペプチド、多糖、プロテオグリカン、抗菌薬、治療薬などであり得る。いくつかの例では、生物活性剤は、細胞外マトリックスタンパク質、又は細胞外マトリックスタンパク質の少なくとも5、10、25、50、又は100アミノ酸の配列を含み得る。いくつかの例では、細胞外マトリックスタンパク質は、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、ビメンチン、フィブロネクチン、又はラミニンであり得る。別の実施形態では、生物活性剤は、ゼラチン(gelation)、ヘパリン、又はヒアルロン酸であってよい。
【0020】
一実施形態では、本明細書に開示する方法及び組成物において有用な生物活性剤は、望ましい治療特性を有する治療用物質である。これらの薬剤には以下があるがこれらに限定されない:トロンビン阻害剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、線維素溶解剤、血管痙攣阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張剤、降圧剤、抗菌薬、抗生物質、表面糖タンパク質受容体の阻害剤、抗血小板薬、抗有糸分裂薬、微小管阻害剤、抗分泌剤、アクチン阻害剤、リモデリング阻害剤、アンチセンスヌクレオチド、代謝拮抗薬、抗増殖剤(血管新生阻害剤を含む)、抗がん化学療法剤、抗炎症ステロイド剤又は非ステロイド性抗炎症剤、免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗剤、増殖因子、ドパミン作動薬、放射線治療薬、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外マトリックス成分、ACE阻害剤、フリーラジカルスカベンジャー、キレート剤、抗酸化剤、抗ポリメラーゼ、抗ウイルス薬、光線力学的治療薬、及び遺伝子治療薬。
別の実施形態では、本明細書に開示する組成物及び方法における使用に好適であり得る多種多様な生物活性剤が利用可能である。使用する特定の生物活性剤は様々であってよく、例えば、疾患状態、求められている治療効果、関与する特定の患者などに依存する。本明細書に開示する組成物及び方法において使用し得る生物活性剤に含まれるものに、診断薬、遺伝物質、ペプチド、β作動薬、抗喘息薬、ステロイド、コリン作動薬、抗コリン作動薬、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエン阻害剤、抗悪性腫瘍薬、抗生物質、抗腫瘍薬、放射線増感剤、血栓溶解剤、抗ヒスタミン薬、抗凝血剤、抗炎症剤、ホルモン、増殖因子、血管新生因子、及び有糸分裂阻害剤がある。例示的な遺伝物質には、例えば、核酸、RNA、DNA、組換えRNA、組換えDNA、アンチセンスRNA、アンチセンスDNA、ハンマーヘッドRNA、ハンマーヘッドリボザイム、アンチジーン核酸、リボオリゴヌクレオチド、デオキシリボオリゴヌクレオチド、アンチセンスリボオリゴヌクレオチド、及びアンチセンスデオキシリボオリゴヌクレオチドがある。
【0021】
一実施形態では、生物活性剤は、がんを治療するための抗悪性腫瘍薬である。特に好適な抗悪性腫瘍薬はタキソール(Westwood Squibb)である。別の実施形態では、生物活性剤は、心臓組織の血栓症を含む血栓症を治療するための血栓溶解剤である。例示的な血栓溶解剤には、例えば、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、及びサルプラーゼがあり、ストレプトキナーゼが好ましい。
別の実施形態では、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分は、組成物の約0.001~約0.1質量%である。別の実施形態では、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分は、組成物の約0.002質量%である。また別の実施形態では、生物活性剤を含む生物活性モノマー成分は、組成物の約0.001~約0.005質量%である。
【0022】
親水性モノマー
好適な親水性モノマー(即ち、そのホモポリマーが本発明に従って親水性であるモノマー)には、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリルアミド、N-オルニチン(omithine)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、アクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、N-ビニルピロリドン、N-フェニルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アクリル酸、ベンジルメタクリルアミド、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、グリセロールモノメタクリレート、グリセロールモノアクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、アクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェノキシエチル、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、アクリル酸フルフリル、メタクリル酸フルフリル、及びメチルチオエチルアクリルアミドがあるがこれらに限定されない。
別の実施形態では、1種以上の親水性モノマーは、コポリマーの約30~約65質量%、又はコポリマーの約35~約65質量%、又はコポリマーの約40~約65質量%、又はコポリマーの約45~約65質量%、又はコポリマーの約50~約65質量%、又はコポリマーの約55~約65質量%、又は約60~約65質量%を構成する。
また別の実施形態では、1種以上の親水性モノマーは、コポリマーの約35~約55質量%、又はコポリマーの約40~約55質量%、又はコポリマーの約45~約55質量%、又はコポリマーの約50~約55質量%を構成する。
また別の実施形態では、1種以上の親水性モノマーは、コポリマーの約90~約97質量%、又はコポリマーの約92~約97質量%、又はコポリマーの約94~約97質量%、又はコポリマーの約95~約97質量%を構成する。
【0023】
疎水性モノマー
好適な疎水性モノマー(即ち、そのホモポリマーが本発明に従って疎水性であるモノマー)には、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-デシル、メタクリル酸n-デシル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル(hexyl metacrylate)、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、1-ヘキサデシルアクリレート、1-ヘキサデシルメタクリレート、n-ミリスチルアクリレート、n-ミリスチルメタクリレート、n-ドデシルメタクリルアミド、アクリル酸ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソトリデシル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソトリデシルがあるがこれらに限定されない。
別の実施形態では、1種以上の疎水性モノマーは、コポリマーの約40~約70質量%、又はコポリマーの約45~約70質量%、又はコポリマーの約45~約70質量%、又はコポリマーの約50~約70質量%、又はコポリマーの約55~約70質量%、又はコポリマーの約60~約70質量%、又はコポリマーの約65~約70質量%を構成する。
また別の実施形態では、1種以上の疎水性モノマーは、コポリマーの約45~約65質量%、又はコポリマーの約50~約65質量%、又はコポリマーの約55~約65質量%、又はコポリマーの約60~約65質量%を構成する。
【0024】
架橋剤
好適な架橋剤には、例えば、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMDA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びポリ(エチレングリコール)ジメタクリレートがあるがこれらに限定されず、エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。好適な開始剤には、例えば、アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル(dimethylvaleronitdle))、2,2’-アゾビス(メチルブチロニトリル)、1、1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(peroxyneodecanote)、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2、4-ペンタンジオンパーオキサイド、ジ(n-プロピル)パーオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、及びt-ブチルパーオキシアセテートがあるがこれらに限定されず、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)が好ましい。
一実施形態では、架橋剤は、組成物の約0.1~約10質量%、又は組成物の約0.3~約10質量%、又は組成物の約0.5~約10質量%、又は組成物の約1~約10質量%、又は組成物の約2~約10質量%、又は組成物の約3~約10質量%、又は組成物の約4~約10質量%、又は組成物の約5~約10質量%、又は組成物の約6~約10質量%で存在し得る。
一実施形態では、架橋剤は、組成物の約1~約5質量%、又は組成物の約2~約5質量%、又は組成物の約3~約5質量%、又は組成物の約4~約5質量%で存在し得る。
【0025】
紫外線吸収剤
好適な紫外線吸収剤には、例えば、β-(4-ベンゾトリアゾール(benzotriazoyl)-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート、4-(2-アクリルオキシエトキシ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-(2’-メタクリルオキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリルオキシエチルフェニル(methacryoxyethylphenyl))-2H-ベンゾトリアゾール、2-[3’-tert-ブチル-T-ヒドロキシ-5’-(3’’-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-(3’-tert-ブチル-5’[3’’’-ジメチルビニルシリルプロポキシ(dimethylvinyisilylpropoxy))-2’-ヒドロ-キシフェニル]-5-メトキシベンゾトリアゾール、2-(3’-アリル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾ-トリアゾール、2-[3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(3’’-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]-5-メトキシベンゾトリアゾール、及び2-[3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-(3’’-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]-5-クロロベンゾトリアゾールがあるがこれらに限定されず、β-(4-ベンゾトリアゾール-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレートが好ましい紫外線吸収剤である。
紫外線吸収剤は、任意にコポリマー組成物に添加し得る。新規の好ましい紫外線/青色光吸収剤、即ちビニルアントラセンをコポリマー組成物に添加し得る。ビニルベンゾフェノン又はビニルベンゾトリアゾールなどの従来の紫外線吸収剤も使用し得る。
別の実施形態では、紫外線吸収剤は、組成物の約0.1~約5質量%、又は組成物の約0.2~約5質量%、又は組成物の約0.4~約5質量%、又は組成物の約0.6~約5質量%、又は組成物の約0.8~約5質量%、又は組成物の約1~約5質量%、又は組成物の約1.5~約5質量%、又は組成物の約2~約5質量%、又は組成物の約3~約5質量%、又は組成物の約4~約5質量%で存在し得る。
【0026】
モノマー染料
疎水性及び親水性モノマーと共重合可能なモノマー染料を任意にコポリマーに添加し、特定の波長の光を減衰させてよい。このような染料は、ビニル基を含有するものを含むがこれらに限定されず、400~700nmの範囲の紫、青、赤、及び緑の光を吸収できる。このようなモノマー染料の例には以下があるがこれらに限定されない。
ディスパーズレッド13アクリレート
ディスパーズオレンジ3アクリルアミド
ディスパーズオレンジ3メタクリルアミド
ディスパーズレッド1メタクリレート
ディスパーズレッド1アクリレート
ディスパーズレッド13メタクリレート
ディスパーズイエロー7アクリレート
ディスパーズイエロー7メタクリレート
エチルトランス-α-シアノ-3-インドールアクリレート
[(S)-(-)-1-(4-ニトロフェニル)-2-ピロリジンメチル]アクリレート
【0027】
製造方法
本開示は、生物活性ポリマーの製造方法を提供する。これらの方法は、(1)生物活性剤を選択すること、(2)生物活性剤を部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、及び(3)反応物として生物活性モノマーと、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを用いて共重合反応を行うことを含み得る。生物活性モノマーの部位は、共重合反応において、他のモノマーの少なくとも1つと直接反応し得る。
方法は、(1)生物活性剤を選択すること、(2)生物活性剤を第1のアルケニル部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、及び(3)アルケニルに基づく共重合反応を行って生物活性ポリマーを生成することも含み得る。反応物は、少なくとも生物活性モノマーと、それぞれアルケニル部位を含み、且つ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを含み得る。
生物活性ポリマーは、(1)生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、(2)それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマー成分とを含み得る。生物活性ポリマーは、生物活性モノマー成分を、1種以上の他のモノマー成分のそれぞれと共有結合させる骨格を含み得る。生物活性モノマー成分の各単位は、少なくとも2つの炭素原子を骨格に供与してよく、且つ1種以上の他のモノマー成分の各モノマー成分の各単位は少なくとも2つの炭素原子(例えば、ちょうど2つの炭素原子)を骨格に供与してよい。
【0028】
本明細書に開示する組成物及び方法は、以下の段落によって更に説明できる。
A1.生物活性ポリマーの製造方法であって、
生物活性剤を選択すること、
生物活性剤を部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、及び
反応物として生物活性モノマーと、それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを用いて共重合反応を行うことであって、生物活性モノマーの部位は、共重合反応において、他のモノマーの少なくとも1つと直接反応すること
を含む方法。
A2.アクリルポリマー又はシリコーンポリマーを生成する、A1項に記載の方法。
A3.眼科用レンズのマトリックスを生成する、A1又はA2項に記載の方法。
A4.マトリックスが、破壊、断裂、又は切断することなく折り畳み可能である、A3項のいずれか一項に記載の方法。
A5.生物活性剤が、タンパク質、タンパク質断片、少なくとも50アミノ酸のポリペプチド、2~49アミノ酸のペプチド、プロテオグリカン、多糖、抗菌薬、及び/又は治療薬を含む、A1~A4項のいずれか一項に記載の方法。
A6.生物活性剤が、細胞外マトリックスタンパク質、又は少なくとも細胞外マトリックスタンパク質の5、10、25、50、若しくは100アミノ酸の配列を含む、A5項に記載の方法。
A7.細胞外マトリックスタンパク質が、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、ビメンチン、フィブロネクチン、又はラミニンである、A6項に記載の方法。
【0029】
B1.生物活性ポリマーの製造方法であって、
生物活性剤を選択すること、
生物活性剤を第1のアルケニル部位にコンジュゲートして生物活性モノマーを生成すること、及び
反応物として少なくとも生物活性モノマーと、それぞれアルケニル部位を含み、且つ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマーとを用いて、アルケニルに基づく共重合反応を行って生物活性ポリマーを生成すること
を含む方法。
B2.生物活性剤が、タンパク質、ペプチド、多糖、抗菌薬、及び治療薬の少なくとも1つを含む、B1項に記載の方法。
B3.1種以上の他のモノマーの少なくとも1つがアクリル化合物である、B1又はB2項に記載の方法。
B4.アクリル化合物が、独立して、アクリル酸若しくはα/β置換アクリル酸、アクリル酸エステル若しくはα/β置換アクリル酸エステル、又はアクリルアミド若しくはα/β置換アクリルアミドである、B3項に記載の方法。
B5.1種以上の他のモノマーの少なくとも1つのモノマーが、メタクリレート化合物、メタクリル酸メチル化合物、アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、又はメタクリル酸ヒドロキシエチル化合物を含む、B1~B4項のいずれか一項に記載の方法。
B6.1種以上の他のモノマーが、親水性モノマー及び疎水性モノマーを含む、B1~B5項のいずれか一項に記載の方法。
B7.親水性モノマーが、エステル官能基の酸素原子に直接結合したヒドロキシアルキル基を有する、B6項に記載の方法。
B8.疎水性モノマーが、エステル官能基の酸素原子に直接結合したアルキル基を有する、B6又はB7項に記載の方法。
B9.生物活性ポリマーがアクリルポリマーを含む、B1~B8項のいずれか一項に記載の方法。
B10.コンジュゲートすることが、アミド、アミノ、エステル、エーテル、カルボニル、有機酸無水物、及び有機硫黄結合から選択される少なくとも1つの結合を介して、生物活性剤を第1のアルケニル部位にコンジュゲートすることを含む、B1~B9項のいずれか一項に記載の方法。
B11.第1のアルケニル部位が、アクリル化合物によってもたらされる、B1~B10項のいずれか一項に記載の方法。
B12.アクリル化合物がアクリル酸若しくはα/β置換アクリル酸である、B11項に記載の方法。
B13.アクリル化合物がメタクリル酸である、B12項に記載の方法。
B14.コンジュゲートすることが、生物活性剤のアミンを第1のアルケニル部位のカルボキシル基と反応させることを含む、B1~B13項のいずれか一項に記載の方法。
B15.コンジュゲートすることが、1-エチル-3-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド(EDC)及び/又はN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いてカルボキシル基を活性化させることを含む、B14項に記載の方法。
B16.アミンが、生物活性剤の1種以上のリジン残基によってもたらされる、B14項に記載の方法。
B17.1種以上の他のモノマーが、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有する架橋モノマーを含む、B1~B16項のいずれか一項に記載の方法。
B18.架橋モノマーがエチレングリコールジメタクリレートである、B17項に記載の方法。
B19.1種以上の他のモノマーが紫外線遮断モノマーを含む、B1~B18項のいずれか一項に記載の方法。
B20.紫外線遮断モノマーがビニルベンゾトリアゾール又はビニルベンゾフェノンである、B19項に記載の方法。
B21.1種以上の他のモノマーが、青色光遮断発色団を含む、B1~B20項のいずれか一項に記載の方法。
B22.青色光遮断発色団が、ビニルアントラセン及び/又はディスパーズオレンジ3メタクリルアミド(2-メチル-N-[4-[(4-ニトロフェニル)ジアゼニル]フェニル]プロパ-2-エンアミド)を含む、B1~B21項のいずれか一項に記載の方法。
B23.フリーラジカル開始剤を含む反応混合物中で実施する、B1~B22項のいずれか一項に記載の方法。
B24.生物活性ポリマーが、1.4~1.6又は1.45~1.55の屈折率を有する、B1項に記載の方法。
B25.生物活性ポリマーを水和させることを更に含む、B1~B24項のいずれか一項に記載の方法。
B26.水和した生物活性ポリマーの平衡含水率が10~50%又は15~40%である、B25項に記載の方法。
B27.型の内部で実施する、B1~B26項のいずれか一項に記載の方法。
B28.型を少なくとも50、60、70、80、又は100℃に加熱することを含む、B27項に記載の方法。
B29.眼科用レンズを作製するように型が成形されている、B27又はB28項に記載の方法。
B30.眼科用レンズが眼内レンズ又はコンタクトレンズである、B29項に記載の方法。
B31.生物活性剤が、タンパク質、タンパク質断片、少なくとも50アミノ酸のポリペプチド、2~49アミノ酸のペプチド、プロテオグリカン、多糖、抗菌薬、及び/又は治療薬を含む、B1~B30項のいずれか一項に記載の方法。
B32.生物活性剤が、細胞外マトリックスタンパク質、又は少なくとも細胞外マトリックスタンパク質の5、10、25、50、若しくは100アミノ酸の配列を含む、B31項に記載の方法。
B33.細胞外マトリックスタンパク質が、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、ビメンチン、フィブロネクチン、又はラミニンである、B32項に記載の方法。
B34.生物活性ポリマーが、生物活性ポリマーのマトリックスを実質的に破壊、断裂、又は切断することなく折り畳み可能である、B1~B33項のいずれか一項に記載の方法。
B35.生物活性モノマーが共重合反応において架橋モノマーとして機能するように、コンジュゲートすることが、第1のアルケニル部位の2つ以上のコピーを生物活性剤にコンジュゲートすることを含む、B1~B34項のいずれか一項に記載の方法。
B36.生物活性モノマーが、1種以上の他のモノマーの少なくとも1つの少なくとも10、50、100、500、又は1000倍である分子量を有する、B1~B35項のいずれか一項に記載の方法。
B37.B1~B36項のいずれか一項に記載の方法によって生成した生物活性ポリマー。
B38.B37項の生物活性ポリマーを含む眼科用レンズ。
【0030】
C1.生物活性剤を含む生物活性モノマー成分と、
それぞれ生物活性剤を含まない1種以上の他のモノマー成分と
を含む生物活性ポリマーであって、
生物活性ポリマーが、生物活性モノマー成分を、1種以上の他のモノマー成分のそれぞれと共有結合させる骨格を含み、生物活性モノマー成分の各単位が、少なくとも2つの炭素原子を骨格に供与し、且つ1種以上の他のモノマー成分の各モノマー成分の各単位が、ちょうど2つの炭素原子を骨格に供与する
生物活性ポリマー。
C2.生物活性モノマー成分の単位が、骨格に沿って1種以上の他のモノマー成分の単位と共に点在している、C1項に記載の生物活性ポリマー。
C3.1種以上の他のモノマー成分が、生物活性コポリマーの大部分を形成する、C1又はC2に記載の生物活性ポリマー。
C4.生物活性ポリマーの大部分とは、質量又は単位数で、生物活性ポリマーの少なくとも80%、90%、95%、又は98%である、C3項に記載の生物活性ポリマー。
C5.生物活性ポリマーがアクリルポリマーを含む、C1~C4項のいずれか一項に記載の生物活性ポリマー。
C6.1種以上の他のモノマーが、紫外線遮断モノマー、架橋モノマー、及び/又は青色光遮断モノマーを含む、C1項に記載の生物活性ポリマー。
【実施例】
【0031】
以下の実施例に、本開示の選択された態様を説明する。これらは、本発明の全範囲を限定又は定義することを意図するものではない。
【0032】
実施例1 タンパク質のビニル官能基化
本実施例では、タンパク質のビニル官能基化の例示的な方法を説明する。リジン残基の遊離アミンをビニル基と反応させてビニル-タンパク質(VP)(即ち、表1のビニルコラーゲン、並びに表2のビニルゼラチン、ビニルフィブロネクチン、ビニルラミニン、ビニルヘパリン、及びビニルヒアルロン酸)を作製する。メタクリル酸のカルボキシル基は、MES緩衝液中で1-エチル-3-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド(EDC)とN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化させる。この混合物を0.02N酢酸中3.75mg/mLのタンパク質に添加し、最終生成物を形成させる。生成物は透析し、凍結乾燥する。コラーゲンタイプIは、表1で試験したポリマーの代表的な生物活性タンパク質として使用した。
【0033】
実施例2 ポリマーの調製方法
本実施例では、実施例1のビニル-タンパク質を用いて生物活性ポリマーを調製する例示的な方法を説明する。様々なポリマー配合物とそれらを用いて得た結果を表1に示す。
様々なコポリマーは、減圧下で以下の成分を混合して調製する:(1)コモノマー(例えば、VP、HEA、及びMMA、又はVP、HEMA、及びLM)、(2)架橋剤(例えば、EGDM)、及び(3)重合可能な紫外線遮断剤。ビニルベンゾトリアゾール又はビニルベンゾフェノンは、0.1~5.0質量%の総濃度で紫外線遮断剤として利用する。青色光遮断発色団も0.01質量%の濃度で添加し得る。重合を開始するために、フリーラジカル開始剤(例えば、AIBN)を0.05~1.0質量%の濃度で使用する。モノマー溶液をガラスフラスコ中でマグネチックスターラーバーを用いて30分間混合する。溶液に濁りが生じた場合は、少量のギ酸を加えてよい。次いで、0.2ミクロンのフィルターで溶液をろ過し、2枚のガラス板をプラスチックガスケットで隔ててスプリングクリップで固定した板状の型にこれを注入する。続いて型を水浴に入れ、60℃で4時間、その後70℃で6時間置く。
表1は、様々な生物活性ポリマー及びビニルコラーゲンの組成と、それぞれの屈折率及び平衡含水率を示す。
表2は、生物活性剤がゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、ヘパリン、及びヒアルロン酸のいずれかである種々な生物活性ポリマーの組成を示す。表2のポリマー1及び2は優れた結果を示した。
【0034】
【表1】
RI:屈折率
EWC:平衡含水率
0.3質量%のMEBを全てのコポリマー組成物に使用した。
MEB:2-(2’-メタクリルオキシ-5’メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
【0035】
【表2】
RI:屈折率
EWC:平衡含水率
MEB:4-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン
【0036】
ポストキュアの手順は以下のように実施する。100℃の重力式オーブンで24時間、次いで120℃の真空オーブンでさらに24時間。透明なポリマーシートが得られる。直径1cm、厚さ2mmの円盤をシートから切り出し、水和させる。水和質量と乾燥質量から平衡含水率(EWC)を算出する。
【0037】
実施例3 成形方法
本実施例では成形方法を説明する。モノマー混合物を80℃にして約30分間、又は粘度が1000cpsになるまで加熱する。次いで、モノマー混合物を氷浴で急冷する。冷却したモノマー溶液を眼内レンズ(IOL)型に注入し、型を以下のサイクルを有するプログラム可能なオーブンに入れる。
1.60℃で4時間
2.80℃で8時間
3.100℃で4時間
4.真空で、120℃で4時間
IOLを型から取り外し、今後の試験のためにガラスバイアルに保管する。
【0038】
本発明を上記の実施例及び特徴を通じて説明してきたが、当業者であれば、本明細書に開示する発明概念から逸脱することなく、実施例及び特徴の多種多様な修正、組み合わせ、及び変形を行い得ることが理解できよう。更に、本発明は、本明細書に記載する特定の目的又は実施形態に限定されるものとみなされるべきではなく、むしろ、本明細書に記載する目的を超える多種多様な目的を達成するために適用可能であるとみなされるべきである。本開示では、本技術のいくつかの実施例を説明しており、その中で可能な実施例の一部のみ示している。しかしながら、他の態様は、多くの異なる形態で具体化することができ、組み合わせが明示的に例示されていなくても、本明細書に記載する実施例に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施例を提供することにより、本開示が詳細且つ完全なものとなり、当業者に可能な実施例の範囲が十分に伝わるであろう。
【国際調査報告】