(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】埋込型強磁性マーカーにおけるまたはそれに関する改良
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20241031BHJP
A61B 90/00 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B90/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524601
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 GB2022052775
(87)【国際公開番号】W WO2023079288
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517421390
【氏名又は名称】エンドマグネティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ウデイル,ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラル,ガブリエル
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA18
4C096AD19
4C096FC20
(57)【要約】
外科用ガイドに使用するための埋込型マーカーが提供される。埋込型マーカーは、少なくとも1つの強磁性材料から形成された1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性材料から形成された少なくとも1つの反磁性要素を含む。少なくとも1つの反磁性材料は、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含み、1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素と並置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの強磁性材料から形成される1つまたは複数の強磁性要素と、少なくとも1つの反磁性材料から形成される少なくとも1つの反磁性要素とを備える、外科用ガイドにおいて使用するための埋込型マーカーであって、
前記少なくとも1つの反磁性材料は、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含み、前記1つまたは複数の強磁性要素は、前記少なくとも1つの反磁性要素に並置される
ことを特徴とする、埋込型マーカー。
【請求項2】
前記グラファイトは、-0.16×10
-4の体積磁化率を有することを特徴とする、請求項1に記載の埋込型マーカー。
【請求項3】
前記グラファイトは、前記マーカーにおいて-0.9×10
-4超の見かけの体積磁化率を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の埋込型マーカー。
【請求項4】
前記グラファイトは、アイソスタティックプレスグラファイトであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項5】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、前記マーカーにおいて少なくとも約-1.2×10
-4の見かけの体積磁化率を有することを特徴とする、請求項3に記載の埋込型マーカー。
【請求項6】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、300ppm未満の不純物を含有することを特徴とする、請求項5に記載の埋込型マーカー。
【請求項7】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、99.9%超の炭素を含有することを特徴とする、請求項5または6に記載の埋込型マーカー。
【請求項8】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、少なくとも約1.75g/cm
3の密度を有することを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項9】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、約1.85g/cm
3の密度を有することを特徴とする、請求項8に記載の埋込型マーカー。
【請求項10】
前記グラファイトは熱処理グラファイトであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項11】
前記少なくとも1つの反磁性要素は、前記1つまたは複数の強磁性要素の体積よりも約100~10,000倍大きい総体積を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項12】
前記1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも50の長さ対直径(または長さ対断面積の平方根)比を有する1つまたは複数のワイヤまたはストリップの強磁性材料を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項13】
強磁性材料から形成された複数のワイヤまたはストリップを備える埋込型マーカーであって、前記ワイヤは、少なくとも1つの反磁性コアの周囲に配置されるか、または少なくとも1つの反磁性コアを通って軸方向に延在し、
前記反磁性コアは、少なくとも約-0.16×10
-4の体積磁化率を有する、少なくとも1つのアイソスタティックプレスグラファイトの本体を含む
ことを特徴とする、埋込型マーカー。
【請求項14】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、少なくとも約-1.2×10
-4の見かけの体積磁化率を有することを特徴とする、請求項13に記載の埋込型マーカー。
【請求項15】
前記アイソスタティックプレスグラファイトの本体は、実質的に円筒形であることを特徴とする、請求項14に記載の埋込型マーカー。
【請求項16】
前記反磁性コアの周囲に配置された強磁性材料から形成されたワイヤの1つまたは複数の螺旋コイルを含むことを特徴とする、請求項14または15に記載の埋込型マーカー。
【請求項17】
前記反磁性コアの周囲に配置された強磁性材料から形成されたワイヤの単一の螺旋コイルを含むことを特徴とする、請求項16に記載の埋込型マーカー。
【請求項18】
前記反磁性コアの周囲に三重螺旋として配置される、前記強磁性材料から形成されたワイヤの3つのコイルを含むことを特徴とする、請求項16に記載の埋込型マーカー。
【請求項19】
前記反磁性コアは、約1mmの直径および約8mmの長さを有することを特徴とする、請求項14~18のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項20】
前記ワイヤはそれぞれ、約15μm以下の直径を有することを特徴とする、請求項14~19のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項21】
外科処置において使用するための埋込型磁気マーカーを製造する方法であって、
少なくとも1つの強磁性材料から1つまたは複数の強磁性要素を形成する工程;
実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含む、少なくとも1つの反磁性要素を形成する工程;および
前記1つまたは複数の強磁性要素が前記少なくとも1つの反磁性要素に並置されるように、その後、前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素を組み立てる工程
を含み、
前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素は、印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように構成および配置される
ことを特徴とする、方法。
【請求項22】
前記グラファイトは、アイソスタティックプレスグラファイトであり、前記方法は、アイソスタティックプレスプロセスを実行して前記アイソスタティックプレスグラファイトを提供する工程を含むことを特徴とする、請求項21に記載の埋込型磁気マーカーの製造方法。
【請求項23】
前記グラファイトを約2,200℃超の温度で熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項21または22に記載の埋込型磁気マーカーの製造方法。
【請求項24】
MRI磁場におけるマーカーの磁気モーメントを低減し、それによってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小限に抑えるための、1つまたは複数の強磁性要素を含む埋込型マーカーにおける実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトの使用。
【請求項25】
埋込型マーカーの位置を特定するための検出システムであって、
請求項1~20のいずれか一項に記載の埋込型マーカー;
交番磁場を用いて前記埋込型マーカーを励起するように配置された少なくとも1つの駆動コイル、および、前記励起された埋込型マーカーから受信された信号を検出するように配置された少なくとも1つの感知コイル;
前記少なくとも1つの駆動コイルを介して交番磁場を駆動するように配置された磁場発生器;および
前記感知コイルから信号を受信し、受信された信号内の駆動周波数の1つまたは複数の高調波を検出するように配置された少なくとも1つの検出器
を含むことを特徴とする、検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科用ガイドにおいて使用するための埋込型マーカーに関する;特に、磁場を放出するプローブを用いたサセプトメトリーによって検出可能な1つまたは複数の強磁性要素を有する埋込型マーカーに関する。本開示はまた、そのようなマーカーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関心部位が物理的に視認または触知できない可能性がある外科手術中の関心領域、例えば切除が必要な小型の腫瘍へと、外科医をガイドするために、マーカーが使用される。好適には、そのようなマーカーは、患者への外傷を低減するために、例えば18G~12Gの細いゲージの針を通して展開可能である。典型的には、そのようなマーカーは、目立たないように、かつ外傷を最小限にするように、長さが10mm未満である。マーカーは、体内の関心部位、例えば癌病変の生検またはその他の外科手術中に配置できる。マーカーは、超音波またはX線/マンモグラフィー等の撮像によるガイドの下で配置される。その後の手術中、マーカーは、聴覚、視覚、またはその他のフィードバックを外科医に提供するハンドヘルドプローブを用いて、検出および位置決定され、手術をガイドする。典型的には、マーカーは周囲の組織と共に切除される。
【0003】
既知のアプローチは、ハンドヘルドガンマ線検出プローブを用いて検出できる、ヨウ素125等の放射性同位体を含有するマーカーを使用することである。しかしながら、放射性物質の使用は厳密に規制されているため、最大規模の大学病院センターを除いて、放射性種プログラムを構成することは困難である。
【0004】
特許文献1、特許文献2および特許文献3によって例示される異なるアプローチは、磁場および高い初磁化率を有する強磁性マーカーを使用する。ハンドヘルドプローブは、応答磁場を生成する磁気応答性マーカーを励起する交番駆動磁場(「センシングフィールド」)を生成し、これは、応答磁場を生成する磁気応答マーカーを励起し、これは、サセプトメトリーを使用するプローブによって検出され得る。好適には、プローブは、約0.2mT~約1.2mTの発生源における強度を有するセンシングフィールドを生成するように構成され、プローブの約5mm以内に約40μT~約400μTの磁場強度を生じさせる。このアプローチは、典型的には約20mm未満の直径を有する腫瘍を局在化するためのより深いセンシングに非常に効果的であることが見出されており、RFアプローチの欠点を回避する。しかしながら、例えば、1.5Tまたは3Tのはるかに強い磁場を使用するMRI設定では、このアプローチは、マーカー自体と比較して大きく、MRI画像を難読化し得る強磁性材料の結果として、望ましくないアーチファクトが生成されることにつながり得る。
【0005】
MRIは、浸潤性乳癌の超音波またはマンモグラフィーでは見えない病変を画像化するために使用され、MRIモニタリングは、外科的切除前のネオアジュバント療法の評価のためにますます使用されており、ネオアジュバント療法後および手術前に腫瘍のサイズを追跡することを可能にする。そのようなマーカーのMRIアーチファクトは、腫瘍のサイズの減少が癌患者の管理において肯定的な選択肢を提供するので、医療従事者による腫瘍のサイズの評価を損なうものであってはならない。この点において、乳癌ステージは、典型的には、腫瘍サイズ、腫瘍がリンパ節に広がっているかどうか、および癌が身体の他の部分に広がって(転移して)いるかどうかなどのいくつかの基準を使用して評価される。腫瘍摘出術を使用する乳房温存手術が想定され得る初期ステージの癌では、好ましくは、腫瘍サイズは2cm以下である。非特許文献1は、より小さい腫瘍サイズが良好な予後因子を表すことを示し、>2cmの残存腫瘍は、ネオアジュバント化学療法後の高い局所腫瘍再発率と関連する。非特許文献2は、サイズが2cm以下である腫瘍がT1として分類され、典型的には乳房温存手術が想定され得る場合である癌ステージ1または2に対応することを示す。より大きな腫瘍は、乳房切除術などのより根本的な手術が必要になる可能性が高い。したがって、腫瘍の直径が2cmを超える場合にMRI下で腫瘍をサイズ決定することができ、腫瘍が乳房保存手術を可能にするサイズに縮小したかどうかの評価を可能にすることが非常に望ましい。
【0006】
強磁性材料は、MRI歪みを生成することでよく知られており、これらは科学文献に広く記載されている。例えば、非特許文献3は、一部の強磁性材料がMRIに対して安全であり得るが、依然として重大なアーチファクトを生じるであろうことを説明している。アーチファクトは、以下により詳細に説明されるように、MRI装置によって生成される主y軸磁場と同じ方向にある強磁性物体によって生成される磁場の成分(By)によって主に生成される。Byの効果は、物体の近くのプロトンの局所的なラーモア周波数をシフトさせることであり、そのシフトが十分に大きい場合、それらのプロトンは、MRI装置によって再構成されたx-z平面内の正しいスライスに現れない。
【0007】
円筒形股関節および動脈瘤クリップなどの常磁性材料で作られた金属インプラントによって引き起こされるMRIアーチファクトのサイズを、金属インプラントを反磁性材料でコーティングすることによって低減するためのオプションが、非特許文献4によって研究されている。これらのオプションは、常磁性材料および反磁性材料が同程度の磁化率を有し、その結果、所与の体積の常磁性材料の効果が同程度の体積の反磁性材料によって相殺され得るという事実に依存する。しかしながら、それらは、典型的には反磁性材料よりも1000万~1億倍大きい磁化率を有する強磁性材料を含む埋込型磁気マーカーと共に使用するのに有望ではない。
【0008】
よく知られた反磁性材料であるビスマスは、約-1.66×10-4の体積磁化率を有するが、毒性の懸念および機械加工の困難性(比較的柔らかく、可撓性でないので)のために、埋込型マーカーにおける使用に適さない。一方、グラファイトは、体積磁化率が約-0.16×10-4であると報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2011/067576号
【特許文献2】国際公開第2014/013235号
【特許文献3】国際公開第2013/140567号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Shashla (Neoadjuvant chemotherapy in breast cancers, September 2016, DOI: 10.1177/1745505716677139)
【非特許文献2】Koh et al. (Introduction of a New Staging System of Breast Cancer for Radiologists: An Emphasis on the Prognostic Stage, January 2019, DOI: 10.3348/kjr.2018.0231)
【非特許文献3】Hargreaves et al. (Metal Induced Artifacts in MRI, August 2017, DOI: 10.2214/AJR.11.7364)
【非特許文献4】Gao et al. (Reduction of artefact of metallic implant in magnetic resonance imaging by combining paramagnetic and diamagnetic materials, May 2010, DOI: 10.1063/1.3352582)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、当技術分野では、小さいMRIアーチファクトを示しながら、感知応答の良好な等方性、長い感知範囲を有する埋込型強磁性マーカーが必要とされている。本開示は、上述の欠点の少なくともいくつかを克服するか、または少なくとも軽減する、MRIアーチファクトが低減された、改良された磁気マーカーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によれば、少なくとも1つの強磁性材料から形成される1つまたは複数の強磁性要素と、少なくとも1つの反磁性材料から形成される少なくとも1つの反磁性要素とを含む、外科用ガイドにおいて使用するための埋込型マーカーが提供される;少なくとも1つの反磁性材料は、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイト(すなわち、等方性グラファイト)を含む。
【0013】
1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素と並置して配置することができ、これは、反磁性要素および強磁性要素がマーカー内で互いに隣接して配置されることを意味する。驚くべきことに、少なくとも1つの反磁性要素に近接した1つまたは複数の強磁性要素の存在は、グラファイトの見かけの体積磁化率を増加させることが見出された。例えば、グラファイトは約-0.16×10-4の体積磁化率を有することが文献で報告されているが、その見かけの体積磁化率は、1つまたは複数の強磁性要素の存在下で約-1.2×10-4まで増加(より負になる)ことが分かっている。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、磁場、例えば1.5T以上のMRI磁場の存在下では、1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素内の磁場を増大させ、より強い見かけの体積磁化率を生じさせると考えられる。この驚くべき効果は、等方性グラファイトにおいて実証されているが、ビスマスなどの他の反磁性材料、および実際には熱分解グラファイトなどの非等方性グラファイトでは、同じ増強効果は実証されていない。
【0014】
さらに、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトは、実質的に等方性の磁気応答を有し、これによって、体内のマーカーの配向が処置ごとに必然的に変化する埋込型マーカーにおける使用に適するようになる。等方性グラファイトは、観察の全ての方向において高い(負の)体積磁化率を示す。その結果、等方性グラファイトを使用することによって、マーカーのアーチファクトサイズ(マーカーの向きにかかわらず)のより予測可能な低減が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、マーカーの反磁性材料の全てまたは大部分は、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含んでもよい。典型的には、1つのみの反磁性材料が存在し得る。言い換えれば、反磁性要素は、等方性の結晶粒構造(結晶粒が実質的にランダムに配向している)を有するグラファイトのみから構成されていてもよい。
【0016】
本発明者らは、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトが、マーカーの反磁性要素における反磁性材料として使用するのに適した磁気特性を有することを見出した。反磁性材料としてのグラファイトの使用によって、少なくとも1つの反磁性要素が、MRI磁場において十分な振幅の磁気モーメントを生成するのに十分な大きさの負の磁化率を有し、初期透磁率を有しており手術に有用な検出範囲を有するサセプトメトリー下で検出可能な十分な体積で存在する1つまたは複数の強磁性要素の磁化によって引き起こされるMRIアーチファクトのサイズを実質的に(例えば、約30mm未満に)低減する、マーカーの製造が可能になることが見出された。さらに、その様々な形態のグラファイトは、生体適合性であり、機械加工が容易である傾向がある。
【0017】
好適な強磁性材料は、高い比初透磁率を有し、閾値印加磁場以上で誘導の飽和に達する。例えば、少なくとも1つの強磁性材料は、少なくとも約1,000の比初透磁率を有することができる。いくつかの実施形態では、強磁性材料は、少なくとも約10,000、少なくとも約50,000、または少なくとも約70,000の比初透磁率を有し得る。いくつかの実施形態では、強磁性材料は、最大約100,000またはさらにそれ以上の比初透磁率を有し得る。
【0018】
一方、グラファイトは、強磁性材料の初期比透磁率より少なくとも7桁低い初期比透磁率を有し、飽和しない。本開示によれば、材料の上記の特性を有利に利用して、センシングフィールドにおいて、1つまたは複数の強磁性要素が少なくとも1つの反磁性要素よりも実質的に強く磁化された、実用的に有用な範囲を有するハンドヘルドプローブを使用して組織内のサセプトメトリーによってマーカーが検出されることを可能にするのに十分な大きさの応答磁場を生成するための、埋込型マーカーを提供することができることが見出された;また、MRI磁場では、1つまたは複数の強磁性要素は飽和し、それによって磁化が飽和誘導Bsに制限されるが、磁化が飽和によって制限されない少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の誘導磁化のすべてまたは少なくともかなりの割合を相殺するのに十分な強さの磁化を有し、これにより、マーカーによって生成されるアーチファクト、特に、MRIスキャナのx-z平面上のMRI画像に生じるMRIアーチファクトのサイズを最小限に抑える。
【0019】
したがって、センシングフィールドにおいて、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの振幅は、少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントの1,000~100万倍であり得る。
【0020】
反磁性材料としてグラファイトを含む埋込型マーカーは、マーカーMRIアーチファクトサイズ(例えば、MRIスキャナのx-z平面上のMRI画像における)の良好な低減を示し、さらに、適切に小さく製造され得ることが見出されている。
【0021】
グラファイトは、有利には、約1.2~約1.9g/cm3以上の範囲の密度を有し得る。
【0022】
グラファイトは、一般的な反磁性材料と比較して比較的高い体積磁化率を有し得る。したがって、グラファイトは、少なくとも約-0.16×10-4の体積(負)磁化率を有し得る。本開示のマーカーにおいて、1つまたは複数の強磁性要素の存在下で、グラファイトは、約0.9×10-4超、例えば約1×10-4超、例えば約1,2×10-4の大きさの見かけの体積(負)磁化率を有し得る。いくつかの実施形態では、グラファイトは、約1×10-4~約3×10-4の大きさの体積(負)磁化率を有し得る。グラファイトは、有利には、上記範囲の体積(負)磁化率を有するように製造され得る。
【0023】
したがって、少なくとも1つの反磁性要素は、MRI磁場において十分な振幅の磁気モーメントを生成するのに十分な大きさの体積磁化率を有し、1つまたは複数の強磁性要素の磁化によって引き起こされるMRIアーチファクト(例えば、MRIスキャナのx-z平面上のMRI画像において)のサイズを、好ましくは30mm未満、さらに好ましくは20mm未満に、実質的に低減し得る。
【0024】
好適には、グラファイトは、アイソスタティックプレスグラファイトであってもよい。アイソスタティックプレスグラファイトは、アイソスタティックプレスによって形成されたグラファイトであり、その結果、等方性粒子構造(実質的にランダムに配向した粒子を有する)を有する。これは、異方性粒子構造を引き起こし得る押出成形および圧縮成形などの他の製造技術と比較される。プロセス中、原材料混合物は、いわゆる冷間静水圧プレス(Cold-Isostatic-Press)でブロックに圧縮される。この技術は、最も等方性の形態の人工グラファイトを生成することができる。アイソスタティックプレスグラファイトは、他の形態のグラファイトと比較して、比較的等方性の粒子構造、高密度、高強度、および微細粒子構造を有する。
【0025】
アイソスタティックプレスグラファイト自体は一般に知られているが、外科用ガイドのための磁気マーカーの分野では知られていない。アイソスタティックプレスグラファイトの望ましい特性は、高い熱および化学耐性、良好な熱衝撃耐性、高い電気伝導性、高い熱伝導性、温度の上昇に伴う強度の増加、良好な耐食性、高い寸法精度および高い表面品質、ならびに放電加工用電極、半導体および太陽電池の製造に使用される電極、ガラス鋳造およびアルミニウム製造のための型および部品、ならびに様々な金属および合金の連続鋳造に使用されるダイなどの用途のための加工の容易さであることが長い間に確認されている。これまで、アイソスタティックプレスグラファイトは、主にその機械的および熱的特性のために使用されてきた。本発明者らは、アイソスタティックプレスグラファイトが、これまで実現されていなかった有用な磁気特性を有し、これは、外科用磁気マーカーの本分野における用途に特に適していることを発見した。特に、アイソスタティックプレスグラファイトは強力な反磁性材料を提供することが発見された。
【0026】
アイソスタティックプレスグラファイトは、驚くべきことに、反磁性要素における反磁性材料としての使用に特に好適な特性を有することが見出された。特に、好適に高い等方性磁化率を有する(全ての軸に沿って同等の磁化率を有する)ことが見出されている。これは、他の形態のグラファイト、例えば押出成形または圧縮成形によって形成されたグラファイトより著しく優れた利点を提供し、異方性粒子構造は、粒子方向に平行な軸と比較して、粒子配向に垂直な軸に沿ってより強い磁化率をもたらす。臨床環境において埋め込まれたマーカーの配向を制御することができず、したがって患者内のマーカーチファクトを制御することができないので、等方性磁化率は、強磁性マーカーの効果を相殺するために使用される場合、例えばMRIスキャナのx-z平面またはy平面(磁場の方向)においてMRI画像におけるマーカーチファクトサイズの減少をもたらすので望ましい。この効果は、埋め込まれたマーカーの向きにかかわらず存在する。したがって、アイソスタティックプレスグラファイトは、反磁性要素において反磁性材料として使用される場合、他の異方性形態のグラファイトおよび他の反磁性材料全般と比較して利点を提供する。さらに、アイソスタティックプレスグラファイトは、製造および機械加工が容易であり、無毒性または生体適合性であり得る。
【0027】
アイソスタティックプレスグラファイトは、少なくとも約-1.2×10-4の体積磁化率を有し得る。驚くべきことに、アイソスタティックプレスグラファイトは、約1.2×10-4の大きさの体積(負)磁化率を有し、良好な等方性磁化率を提供する一方で、安価で容易に形状に機械加工可能であり、良好な生体適合性特性を有することが見出された。アイソスタティックプレスグラファイトの特に良好な等方性磁化率は、その等方性粒子構造(グラファイトは、複数のランダムに配向された粒子から製造される)に起因し得ると考えられる。
【0028】
好適には、グラファイトは、例えば500ppm未満、例えば300ppm未満、例えば50ppm未満の不純物を含む高純度を有するべきである。アイソスタティックプレスグラファイトは、好都合には、5ppm未満の不純物を含む適切なグレードで製造可能である。アイソスタティックプレスグラファイトは、99.9%超の炭素を含有し得る。純度が高いほど、所与の体積に対してより多量の反磁性材料が可能になり、したがって反磁性応答を増加させるので、磁化率が有利に増加することが見出されている。さらに、不純物が常磁性磁化率を有する場合、不純物を除去することによって、反磁性応答の減少が回避される。さらなる可能な効果において、純度が高いほど、より良好な、より適切な結晶構造の形成が可能になり得ると考えられる。
【0029】
本発明者らは、高密度グラファイトが、存在する反磁性材料の量の増加に起因して、所与の体積においてより強い反磁性効果を有利に提供し得ることをさらに理解した。言い換えれば、高密度グラファイトを含有する反磁性要素は、低密度グラファイトと比較して増加した反磁性アーチファクトサイズを提供し得、全体的なマーカーチファクトサイズのさらなる減少につながる。同様に、低空隙率のグラファイトは、所与の体積中に存在する反磁性材料の量を最大化するという同様の理由で有利であることが見出された。
【0030】
したがって、いくつかの実施形態では、グラファイトは、少なくとも約1.75g/cm-3、例えば約1.85g/cm-3の密度を有し得る。いくつかの実施形態では、グラファイトは、最大約1.95g/cm3の密度を有し得る。約1.75g/cm-3~約1.95g/cm-3の範囲の密度は、低い気孔率(7~17%の範囲)を意味する。反磁性効果は、約1.8g/cm-3超の密度に対して有利に増加することができ、それに対応して反磁性アーチファクトサイズが増加する(強磁性アーチファクトサイズをより良好に相殺し、結果として生じるマーカーチファクトサイズを低減する)。
【0031】
グラファイトは、20%未満、より好ましくは15%未満の気孔率を有し得る。
【0032】
有利には、グラファイトの組成は、反磁性要素に含まれるグラファイトの反磁性効果を増加させることによって磁気マーカーのMRIアーチファクトを最適に低減する材料グレードを生成するように最適化することができる。例えば、グラファイトグレードは、高密度(例えば1.8g/cm-3超)および対応する低気孔率(例えば、15%未満)を有する超高純度グラファイト(5ppm未満の不純物を含有する)であってもよい。
【0033】
アイソスタティックプレスグラファイトは熱処理グラファイトであってもよい。アイソスタティックプレスグラファイトは、高温、例えば約2,000℃超、より好ましくは約2,200℃超の温度で処理することができる。特に、グラファイトの温度は、プレス中またはプレス後に上昇させることができる。高温での熱処理は、有利には、グラファイトの磁化率を増加させ、それによってMRI磁場におけるマーカーチファクトのサイズを低減することが見出されている。熱処理は、グラファイト粒子構造を改善し(例えば、粒度を増加させることによって)、純度を向上し得ると考えられる。
【0034】
アイソスタティックプレスグラファイトは、微細粒子構造を有することができる。言い換えれば、アイソスタティックプレスグラファイトは、押出成形または圧縮成形などの他の方法によって製造されたグラファイトよりも微細な粒子構造を有することができる。
【0035】
したがって、アイソスタティックプレスグラファイトは、20ミクロン未満、例えば15ミクロン未満、例えば10ミクロン未満の粒径を有し得る。本発明者らは、より微細な粒子構造が、MRI磁場においてより小さいサイズのマーカーチファクトをもたらし得ることを理解している;例えば、主磁場がy軸に沿って配向されるMRI装置によって画定され、x-z平面においてとられる場合。アイソスタティックプレスグラファイトの等方性粒子構造と共により小さい粒子サイズは、良好な等方性磁化率(例えば、少なくとも部分的には、グラファイト材料内の電子の移動の自由度が低いことに起因する)を可能にし得ると考えられる。例えば、アイソスタティックプレスグラファイトは、約7以下の磁気異方性の比を有し得る。
【0036】
少なくとも1つの反磁性要素は、例えば上記で開示したように、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトのアーチファクトサイズおよび形状に十分な程度まで合致するサイズおよび形状を有するアーチファクトを生成するように構成および配置され得る;例えば、主磁場がy軸に沿って配向されるMRI装置によって画定され、x-z平面内でとられる場合、マーカーによって生成されるアーチファクトの最大寸法を約30mm未満に低減させる。
【0037】
好適には、マーカー内の反磁性材料の総体積は、強磁性材料の総体積よりも約100~約10,000倍大きく、例えば約900倍大きくてもよい。好適には、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の体積よりも約100~10,000倍;好ましくは約500~3,000倍、例えば約900倍大きい総体積を有し得る。
【0038】
反磁性材料の量は、強磁性材料を「過剰補償」することにより反磁性材料に起因する許容できない大きなアーチファクトを生成することなく、MRI磁場におけるマーカーの正味磁化を最小化するように選択することができる。MRI装置は、異なる磁場強度で利用可能である;典型的には、約0.5T~約3Tの範囲(最大約7Tの磁場が臨床適用のために知られているが)。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、マーカーは、2つ以上の異なるMRI磁場強度;特に、約0.5~10T、好ましくは約1~5Tの範囲内;例えば、約1.5Tおよび約3Tにおいて、許容可能な小さいアーチファクトを共に生成する相対量の強磁性および反磁性材料を含んでもよい。例えば、マーカーは、1つのMRI磁場強度では正味の磁化がほぼゼロである一方で、別のMRI磁場強度では正味の磁化を有し許容可能な小さいアーチファクトを引き起こす量の強磁性および反磁性材料を含むことができる。あるいは、マーカーは、2つ以上の異なるMRI磁場強度で許容可能な小さいアーチファクトを生じさせるように最適化された相対量の強磁性および反磁性材料を含んでもよい。本明細書において「許容可能な小さい」とは、特に、MRI装置のx-z平面上のMRI画像において、約30mm未満、好ましくは約20mm未満を意味する。
【0039】
好適には、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素または少なくとも1つの反磁性要素によってそれぞれ生成される対向する磁気モーメントは、少なくとも1つの反磁性要素または1つまたは複数の強磁性要素によってそれぞれ生成される磁気モーメントの振幅の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%の振幅を有し得る;MRI磁場内のマーカーによって生成されるアーチファクトは、その最長寸法において約30mm未満、好ましくは約20mm未満であり得る。
【0040】
1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、同じ場所に配置され得る。本明細書において「同じ場所に配置される」とは、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素が、マーカー内の実質的に同じ空間(または体積)を占有し、それにわたって延在するように構成および配置されることを意味する。
【0041】
さらに、少なくとも1つの反磁性材料は、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素が対向する磁気モーメントを生成し、その小さい方の振幅が大きい方の振幅の少なくとも約25%であるような見かけの体積磁化率を有し得る。本明細書に開示されるように、十分な体積の反磁性材料を使用して、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントの振幅の少なくとも75%以内である振幅を有する磁気モーメントを生成することができる、すなわち、反磁性材料によって生成される磁気モーメントは、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントの振幅の約25%~約175%の範囲内である振幅を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、マーカーは、相対量の強磁性および反磁性材料を含み、少なくとも2つの異なるMRI磁場の下でそれらのうちの少なくとも1つによって生成される磁気モーメントが、他方によって生成される対応する磁気モーメントの約75%以内、好ましくは約50%以内にそれぞれ別個になる。したがって、いくつかの実施形態では、反磁性材料によって生成される磁気モーメントは、少なくとも2つの異なるMRI磁場の下で、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントの対応する振幅の約25%~約175%の範囲内、好ましくは約50%~約150%の範囲内にそれぞれ別個になる振幅を有し得る。したがって、好適には、少なくとも2つの異なるMRI磁場の下で少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントは、それぞれ別個に、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される対応する磁気モーメントの少なくとも25%以上であり得る。このようにして、マーカー中の強磁性および反磁性材料の量は、2つ以上の異なるMRI磁場の下で許容可能な小さいアーチファクトを標的とするように最適化され得る;特に約0.5~10T、好ましくは1~5Tの範囲、例えば1.5Tおよび3Tである。
【0043】
上述のように、センシングフィールドは、好適には、発生源において約0.1mT~約2.0mTの強度を有し得る;好ましくは、約0.2mT~約1.2mTであり、プローブの約5mm以内に約40μT~約400μTの磁場強度を生じさせる。好都合には、これは、プローブから最大約50mm、約60mm、約70mm、またはさらには最大約80mmの範囲でマーカーが検出されることを可能にし得る。
【0044】
MRI磁場は、典型的には、1.5Tの強度を有する。好適には、1つまたは複数の強磁性要素は、本明細書に開示されるように、MRI磁場よりも少なくとも20万倍弱い、好ましくは少なくとも40万倍弱い、いくつかの実施形態では最大80万以上倍弱いセンシングフィールドにおいて、ハンドヘルドプローブを用いて組織中でマーカーが検出されることを可能にするのに十分な大きさの応答磁場を生成するように構成および配置される。
【0045】
1つまたは複数の強磁性要素は、約1.5T未満、好ましくは約1T未満の飽和誘導Bsを有してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、本明細書に開示されるように、1つまたは複数の強磁性要素のBsよりも少なくとも1,000倍弱いセンシングフィールドにおいて、ハンドヘルドプローブを用いてマーカーが組織内で検出されることを可能にするのに十分な大きさの応答磁場を生成するように構成および配置され得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、約1×10-10m3未満、好ましくは約5×10-11m3未満、3×10-11m3未満、または1×10-11m3未満、例えば6×10-12m3の総体積を有することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、約1×10-12m3未満という低い総体積を有することができる。典型的には、少なくとも1つの反磁性要素の総体積は、約1×10-9m3~1.5×10-7m3であり得る。有利には、これらの範囲内の強磁性および反磁性材料の体積を含むマーカーは、典型的には注入による移植に適した寸法を有する形態で提示され得ることが見出されている。例えば、マーカーは、約0.8mm~約3mm、好ましくは約1~1.5mmの範囲の幅を有してもよい。マーカーは、約2~10mm、例えば5mmの長さを有することができる。
【0047】
埋込型マーカーは、強磁性材料の1つまたは複数の断片を含んでもよい。前記1つまたは複数の断片は、1つまたは複数のワイヤまたはストリップを含むことができる。したがって、好適には、ワイヤまたはストリップは、少なくとも約50の全長対直径比、または断面積の平方根に対する長さの比を有し得る。好適には、ワイヤまたはストリップは、30~40mmの範囲、例えば約36mmの長さを有し得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、100超、500超、1000超、または2000超、例えば約2400の全長対直径(または断面積の平方根)比を有し得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、3000超の全長対直径(または断面積の平方根)比を有することができる。
【0049】
少なくとも1つの強磁性材料片の長さ対直径(または断面積の根)比を増大させることによって、マーカーの感知応答が改善され、それによって、所与の応答磁場に対してより小さい体積の強磁性材料が使用されることが可能になり、これは、より小さいMRIアーチファクトを生じさせることが分かっている。
【0050】
いくつかの実施形態では、強磁性材料の1つまたは複数の断片は、1×10-10m3未満、好ましくは5×10-11m3未満、例えば1×10-11m3未満、例えば約5×10-12m3の総体積を有することができる。
【0051】
好適には、1つまたは複数の強磁性材料の断片は、マーカーによって生成される応答磁場の等方性を最適化するように構成され得る。マーカーの1つまたは複数の強磁性要素は、7未満、好ましくは5未満の磁束異方性の比を達成するように構成され得る。好適には、本開示のマーカーの1つまたは複数の強磁性要素は、本明細書に開示されるように、例えば、螺旋または多重螺旋として構成され得る。
【0052】
当業者は、1つまたは複数の強磁性要素の磁化に匹敵するMRI磁場における磁化を有する十分な体積の反磁性材料の使用から最大の利益を得るために、少なくとも1つの反磁性要素は、有利には、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトと同様の形状を有するが反対の極性を有するアーチファクトをMRI磁場において生成するように構成および配置され得ることを理解するであろう。強磁性および反磁性要素の適切な構成および配置は、例えば、COMSOL Multiphysics(登録商標)の商標でCOMSOL AB(スウェーデン)から、またはANSYS(登録商標)の商標でANSYS,Inc.(ペンシルバニア州キャノンスバーグ)から入手可能なものなどの適切な数学的モデリングまたはコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)ソフトウェアを使用することによって経験的に決定することができ、MRI磁場において1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素によって生成されるそれぞれのアーチファクトのシミュレートされた等高線図を生成し、等高線図が実質的に一致するまで要素の構成および配置を反復的に調整する。好適には、少なくとも1つの反磁性要素は、本明細書に開示されるように、例えば円筒として構成され得る。1つまたは複数の強磁性要素は、本開示のいくつかの実装形態では、螺旋または多重螺旋として円筒の外面の周りに巻き付けられ得る。
【0053】
1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、センシングフィールドにおいて、1つまたは複数の強磁性要素が少なくとも1つの反磁性要素よりも実質的に強く磁化されるように選択される強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの体積を含むことができ、ハンドヘルドサセプトメトリープローブを使用してマーカーが組織内で検出されることを可能にするのに十分な大きさの応答磁場を生成する。MRI磁場において、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の磁化の少なくとも実質的な割合を相殺するのに十分な強さの磁化を有し、それによって、本明細書に開示されるように、マーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小化する。
【0054】
好適には、1つまたは複数の強磁性要素は、センシングフィールドに応答して生成される応答磁場の強度および等方性を最大にするように構成および配置され得る。
【0055】
第2の態様によれば、強磁性材料から形成された1つまたは複数のワイヤまたはストリップを含む埋込型マーカーが提供され、ワイヤまたはストリップは、反磁性コアの周囲に配置されるか、または反磁性コアを通って軸方向に延在する;反磁性コアは、少なくとも約-1.2×10-4の見かけの体積磁化率を有する、アイソスタティックプレスグラファイトの少なくとも1つの本体を含む。したがって、1つまたは複数の強磁性ワイヤまたはストリップは、反磁性コアに並置されるように配置される。1つまたは複数の強磁性ワイヤまたはストリップは、例えば反磁性コアの全長に沿って延在するように、反磁性コアと同じ場所に配置されるように配置され得る。
【0056】
好適には、アイソスタティックプレスグラファイトの本体は、実質的に円筒形であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、強磁性材料から形成されるワイヤまたはストリップは、概して直線状であり得る。ワイヤまたはストリップは、反磁性コアの外側の周囲に配置され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、埋込型マーカーは、反磁性コアの周囲に配置される強磁性材料から形成されるワイヤの1つまたは複数の螺旋コイルを備えてもよい。
【0059】
好適には、埋込型マーカーは、反磁性コアの外側の周りに配置されたワイヤの単一の螺旋コイルを含み得る。あるいは、埋込型マーカーは、反磁性コアの外側の周囲に多重(例えば、三重)螺旋として配置される、ワイヤの2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のコイルを備えてもよい。
【0060】
反磁性コアは、約1mm、例えば約1.2mmの直径と、4~9mmの範囲、例えば約5mmの長さとを有することができる。マーカーの全長は、相応して、4~9mmの範囲、例えば約5mmの長さを有することができる。
【0061】
ワイヤまたはストリップはそれぞれ、約15μm以下の直径を有し得る。
【0062】
本開示の第3の態様によれば、外科手術において使用するための埋込型磁気マーカーを製造する方法が提供され、この方法は以下の工程を含む:少なくとも1つの強磁性材料から1つまたは複数の強磁性要素を形成する工程;少なくとも1つの反磁性要素を形成する工程であって、少なくとも1つの反磁性要素は、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含む、工程;および、その後、1つまたは複数の強磁性要素が少なくとも1つの反磁性要素に並置されるように、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を組み立てる工程;1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように構成および配置される。埋込型マーカーは、本開示の第1または第2の態様による埋込型マーカーであってもよい。
【0063】
1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素が1つまたは複数の強磁性要素と同じ場所に配置され、例えばマーカーの同じ長さまたは体積にわたって延在するように組み立てられ得る。
【0064】
グラファイトは、アイソスタティックプレスグラファイトであってもよく、本方法は、アイソスタティックプレスグラファイトを製造するためにアイソスタティックプレスプロセスを実行する工程を含んでもよい。有利には、このような方法は、グラファイト中に等方性粒子構造をもたらす、すなわち、本方法は、等方性である得られた材料の物理的特性をもたらす。このように製造されたアイソスタティックプレスグラファイトは、有利には、比較的高い密度、高い強度、および微細粒構造を有する。
【0065】
本方法は、グラファイトを熱処理する工程をさらに含むことができる。熱処理は、アイソスタティックプレスグラファイトの磁化率を増加させ得る(炭素-炭素構造の形成を助けるため)。熱処理は、アイソスタティックプレスグラファイトの密度を増加させ得る。
【0066】
熱処理は、アイソスタティックプレスグラファイト中の不純物のレベルを低減し得る。熱処理工程は、グラファイトのプレス加工または押出加工と同時に行ってもよいし、その後に行ってもよい。熱処理工程は、2,200℃を超える温度で実施することができる。
【0067】
第4の態様によれば、本開示は、MRI磁場におけるマーカーの磁気モーメントを低減し、それによってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小限に抑えるための、1つまたは複数の強磁性要素を含む埋込型マーカーにおける実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトの使用を包含する。好適には、本開示は、埋込型マーカーにおいて1つまたは複数の強磁性要素と並置された少なくとも1つの反磁性要素における実質的に等方性の結晶粒構造を有するグラファイトの使用を包含し得る。例えば、少なくとも1つの反磁性要素は、埋込型マーカー内の1つまたは複数の強磁性要素と同じ場所に配置されてもよく、これは、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素が、マーカー内の実質的に同じ空間(または体積)を占有し、それにわたって延在するように構成および配置されることを意味する。
【0068】
反磁性要素における反磁性材料(典型的には唯一のまたは優勢な反磁性材料)としてのグラファイトの使用は、強力な強磁性感受性マーカーの効果を打ち消すのに特に効果的であり、マーカーチファクトサイズの有意な低減をもたらすことが見出されている。グラファイトは、所望の比較的高い磁化率をもたらす特性、例えば密度を有するように製造することができる。グラファイトがアイソスタティックプレスグラファイトである場合、有利には等方性磁化率を有し、任意の所与の平面におけるマーカーチファクトサイズのより良好な低減をもたらす。
【0069】
第5の態様によれば、埋込型マーカーの位置を特定するための検出システムが提供され、このシステムは以下を含む:第1または第2の態様による埋込型マーカー;交番磁場を用いて埋込型マーカーを励起するように配置された少なくとも1つの駆動コイル、および、励起された埋込型マーカーから受信された信号を検出するように配置された少なくとも1つの感知コイル;少なくとも1つの駆動コイルを介して交番磁場を駆動するように配置された磁場発生器;および、感知コイルから信号を受信し、受信された信号内の駆動周波数の1つまたは複数の高調波を検出するように配置される少なくとも1つの検出器。
【0070】
本開示の一態様に関して本明細書で説明する特徴は、本開示の他の態様に組み込まれ得ることが理解されよう。例えば、本開示の方法は、本開示のマーカーを参照して記載される特徴を組み込むことができ、逆もまた同様である。
【0071】
以下では、本開示の実施形態の添付の図面を参照して例示としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1(a)】主磁場のy軸上の磁場B勾配を示す、MRIスキャナに横たわる人の概略側面図
【
図1(b)】画像スライスがy軸に沿ってどのように切断されるかを示し、x軸、y軸、およびz軸の向きを示す、MRIスキャナの別の概略側面図
【
図2(a)】典型的な強磁性材料についての磁場Hの関数としての磁化を示すヒステリシス曲線1
【
図2(b)】非典型的な強磁性材料の磁場Hの関数としての磁束Bを示す、
図2(a)と同様のヒステリシス曲線
【
図2(c)】印加磁場Hを受けたときに強磁性材料に発生する磁気モーメントの方向を示す概略図
【
図3(a)】典型的な反磁性材料(示される反磁性磁化は負である)についての磁場Hの関数としての磁束Bを示すグラフ
【
図3(b)】印加磁場を受けたときに反磁性材料に発生する磁気モーメントの方向を示す概略図
【
図4】本開示の一実施形態による、少なくとも1つの強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を備えるマーカーの印加磁場による磁気モーメントの変化を概略的に示す図
【
図5】本開示の第1の実施形態による、円筒形の反磁性コアと、各々がコアの長手方向軸に実質的に平行に、コアの外面に並置して延在する、3つの離間した強磁性ワイヤとを備える、埋込型マーカーの概略斜視図
【
図6(a)】
図5の埋込型マーカーが磁場内に存在する結果として、Bがy軸に沿って印加されるMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、
図1(a)および/または
図1(b)に示される種類のMRIスキャナのx-z平面内の磁束密度Bの等高線図
【
図6(b)】
図5に示されるものと同じ構成の強磁性ワイヤが磁場内に存在するが反磁性コアが存在しない結果として、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、MRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの比較等高線図
【
図7】本開示の第2の実施形態による、円筒形の反磁性コアと、各々が反磁性コアを通ってコアの長手方向軸に実質的に平行に延在する、3つの離間した強磁性ワイヤとを備える、埋込型マーカーの概略斜視図
【
図8】
図7の埋込型マーカーが磁場内に存在する結果として、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、
図1(a)および/または
図1(b)に示される種類のMRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの等高線図
【
図9】本開示の第3の実施形態による、円筒形反磁性コアと、反磁性コアの外面の周囲に延在する強磁性ワイヤ螺旋とを備える埋込型マーカーの概略斜視図
【
図10(a)】
図9の埋込型マーカーが磁場内に存在する結果として、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、
図1(a)および/または
図1(b)に示される種類のMRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの等高線図
【
図10(b)】
図9に示されるものと同じ構成の強磁性ワイヤが磁場内に存在するが反磁性コアが存在しない結果として、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、MRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの比較等高線図
【
図11】本開示の第4の実施形態による、円筒形の反磁性コアと、反磁性コアの外面の周囲に延在する強磁性ワイヤから形成される三重螺旋とを備える、埋込型マーカーの概略斜視図
【
図12(a)】
図10の埋込型マーカーが磁場内に存在する結果として、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、
図1(a)および/または
図1(b)に示される種類のMRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの等高線図
【
図12(b)】
図10に示されるものと同じ構成の強磁性ワイヤが磁場内に存在するが反磁性コアが存在しない結果として、BがMRI磁場B
0からどのように逸脱するかを示す、MRIスキャナのx-z平面における磁束密度Bの比較等高線図
【
図15】本開示の第5の実施形態による、埋込型マーカーの製造方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0073】
定義
等方性グラファイトとは、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトである。
【0074】
アイソスタティックプレスグラファイトとは、等方圧プレスによって形成された等方性グラファイトである。
【0075】
磁束密度Bとは、磁石または電流の周囲の磁場の強度および方向を測定するベクトル場である。
【0076】
磁場強度、または着磁場Hとは、移動する電荷、電流、および磁性材料に対する磁気的影響を記述するベクトル場である。
【0077】
磁化、または磁気分極Mとは、磁性材料における永久または誘導磁気双極子モーメントの密度を表すベクトル場である。
【0078】
誘導の飽和とは、印加された外部磁場Hの増加が材料の磁化Mをさらに増加させることができないときに到達する状態である。この状態では、結果として生じる全磁束密度は飽和誘導Bsと呼ばれ、磁化は飽和磁化Msである。
【0079】
磁化率χは、印加磁場において材料がどの程度磁化されるかの指標であり、χ=M/Hとして定義される。
【0080】
体積磁化率は、磁場中に置かれたときのバルク形状における材料の磁化率の指標である。
【0081】
見かけの体積(反磁性)磁化率は、1つまたは複数の成形された強磁性材料の存在下で磁場中に置かれたときのバルク形状における反磁性材料の磁化率の指標である。
【0082】
透磁率μは、磁場の形成に対する材料の抵抗の指標であり、μ=B/Hとして定義される。
【0083】
比透磁率(μr)は、自由空間の透磁率(μ0)に対する透磁率の比であり、μr=μ/μ0である。これは式μr=1+χによってχと関連する。
【0084】
初磁化率(χ
i)は、無限大の材料が、小さい印加磁場においてどの程度磁化されるかの指標である。Hが小さい(例えば0.01mT未満)場合、χ
i=M/Hと定義され、または同等に以下である。
【数1】
【0085】
見かけの磁化率は、磁場中に置かれたときの特定の形状を有する材料の磁化率の指標である。
【0086】
見かけの初磁化率(χapp)は、実効磁化率としても知られ、小さい印加磁場における特定の幾何学的形状の材料の初磁化率である。すなわち、消磁係数を考慮した後のχiである。
【0087】
比初透磁率(μr、i)は、小さいHに対するμrの値であり、μr、i=1+χによって初磁化率と関係付けられる。
【0088】
見かけの比透磁率(μapp)は、特定の形状の材料の比透磁率である。すなわち、消磁係数を考慮した後のμrである。
【0089】
強磁性材料は、磁場に対して最大まで増加する可変透磁率μを有する。多くの強磁性材料は、100,000を超え得る最大透磁率を有する。
【0090】
常磁性材料は、1よりわずかに大きい一定の透磁率μを有する。
【0091】
反磁性材料は、1よりわずかに小さい一定の透磁率μを有する。反磁性は、外部から印加される磁界に対抗して小さな磁界を生成することによって反発効果を引き起こす。
【0092】
保磁力は、磁性材料を完全に消磁するために必要な磁場Hである。
【0093】
硬磁性材料または永久磁石は、高い保磁力を有する。
【0094】
軟磁性材料は、保磁力が低く、したがって容易に磁化および消磁される。
【0095】
減磁場または漂遊磁場は、磁化Mによって生成される磁石内の磁場Hである。これは、単一の磁区を有する強磁性体において形状異方性を生じさせ、より大きい強磁性体において磁区を生じさせる。
【0096】
減磁係数は、減磁場を決定するために使用されなければならない量である。任意の形状の磁性物体は、物体内の位置によって変化する全磁場を有し、計算が複雑であり得る。これにより、例えば、材料の磁化がその形状および磁場によってどのように変化するかなどの材料の磁気特性を決定することが困難になる。
【0097】
異方性材料は、観察方向によって性質が異なる材料である。例えば、グラフェンの熱伝導率および電気伝導率などの材料特性は、グラフェン平面の表面に平行な方向で測定されるか、または平面の表面に垂直な方向で測定されるかによって大きく異なり得る。
【0098】
等方性材料は、観察方向がどの方向であっても同じ特性を有する材料である。例えば、等方性グラファイト(アイソスタティックプレスグラファイトなど)の材料特性は、測定方向がどの方向であってもほぼ同じである。構造的には、等方性グラファイト(すなわち、等方性粒子構造を有するグラファイト)は実質的に均質である。
【0099】
磁気異方性は、材料配向に応じた磁気特性の変化を表す。
【0100】
磁気異方性比は、プローブに対するマーカーの異なる配向において一定の距離でマーカーによって生成される最も強い磁気シグナルと最も弱い磁気シグナルとの比である。
【0101】
磁気モーメントは、磁場を生成する磁石または他の物体の磁気強度および配向である。
【0102】
磁気双極子モーメントは、電流ループの磁気特性に関連するベクトル量である。
【0103】
磁気共鳴イメージング(MRI)は、三次元の詳細な解剖学的画像を生成する非侵襲的イメージング技術である。典型的なMRIスキャナ10は、
図1(a)および1(b)に概略的に示されている。均一な主磁場11、B
0は、スキャナの長手方向y軸12と位置合わせされる。
図1(a)に示すように、RFパルス13 B
1が印加され、スキャナ内にある患者14の組織内の原子核の正味磁化Mを瞬間的に摂動させる。このRF励起は、磁化をy軸(すなわち、信号を検出することができないB
0と平行)から横方向x-z平面(すなわちy軸に直交)に一時的に傾け、そこで適切な受信コイルによって検出することができる。RFパルスがオフにされた後、原子の磁化は緩和し、熱平衡状態に戻るにつれて歳差運動を示す。処理磁化の横方向成分が受信コイルに起電力を誘起するので、磁化を検出することが可能である。これをNMR信号として検出する。受信された信号は、
図1(b)に示されるように主磁場に重畳される磁場勾配15の印加によって空間的に符号化される。
【0104】
MRI金属アーチファクトは、組織と異なる磁化率を有する金属との界面で生じ、局所磁場が外部磁場を歪ませる原因となる。この歪みは、組織内の歳差運動周波数を変化させ、情報の空間ミスマッピングにつながる。B
critは、MRI装置によって生成される主磁場の方向における磁束Bの臨界変化として定義され、ここで金属によって引き起こされるアーチファクトが生じ、ボクセルがMRI装置により撮像される誤ったスライスにマッピングされる。
図1(a)および
図1(b)に示す種類の典型的なMRI装置では、主磁場は、y軸12と位置合わせされ、スライス16
1、16
2、16
3、...、16
nは、主y軸12に直交するそれぞれのx-z平面である。したがって、MRI画像におけるアーチファクトは、概してx-z平面におけるアーチファクトである。
【0105】
詳細な説明
本開示の目的は、ハンドヘルドプローブによって放出される駆動磁場にさらされたときにプローブにおいて検出可能な応答磁場を生成し、MRIスキャナにおいてはるかに強い磁場にさらされたときに最小サイズのアーチファクトを生成する、1つまたは複数の強磁性要素を含む埋込型マーカーを提供することである;特にスキャナのx-z平面において。好適には、マーカーは、サセプトメトリーを用いて検出可能であるべきである。
【0106】
したがって、一実施形態では、本開示は、外科用ガイドで使用するための埋込型サセプトメトリーマーカーを提供する。埋込型マーカーは、1つまたは複数の強磁性要素と、少なくとも1つの反磁性要素とを備える。1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、約0.5mT未満のセンシングフィールドにおいて(発生源における)、1つまたは複数の強磁性要素が、少なくとも1つの反磁性要素よりも実質的に強く磁化され、ハンドヘルドプローブを用いてマーカーを組織内で検出するのに十分な大きさの応答磁場を生成し、また、0.5T以上、典型的には1.5T以上のMRI磁場において、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の誘導磁化の少なくともかなりの割合に対抗するのに十分に強い磁化度を有するように、それぞれの量の強磁性および反磁性材料を含む。このようにして、本発明のマーカーは、同量の強磁性材料を含むが反磁性材料を含まないマーカーよりも小さいMRIアーチファクトを生じ得る。したがって、所与の体積の強磁性材料について、MRIアーチファクトのサイズは、許容可能なサイズに低減され得る。以下でより詳細に説明するように、1つまたは複数の強磁性要素は、有利には、約1×10-10m3未満の強磁性材料の総体積を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の断片の強磁性材料の総体積は、5×10-11m3未満であり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の断片の強磁性材料の総体積は、約3×l0-11m3未満、または約1×l0-11m3未満であり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、約1×l0-12×m3程度の低い総体積を有することができる。したがって、いくつかの実施形態では、埋込型マーカーは、約1×10-12m3~1×10-10m3の強磁性材料を含んでもよい。
【0107】
センシングフィールドにおける磁化を最大化するために、1つまたは複数の強磁性要素は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる英国特許出願公開第2115827.4号明細書に開示されるように、少なくとも約50の全長対直径(またはその断面積の平方根)比を有し得る。したがって、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の断片の強磁性材料の長さ対直径(またはそれらの断面積の平方根)比は、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、または少なくとも約500であり得る。いくつかの実施形態では、強磁性材料の1つまたは複数の断片の長さ対直径(またはそれらの断面積の平方根)比は、1000超、2000超、または3000超であり得る。
【0108】
例として、1つまたは複数の断片の強磁性材料は、約36mmの全長および約15μmの直径を有することができる。そのような例では、1つまたは複数の断片の強磁性材料の全長対直径の比は、約2400であり得る。体積は、約6×10-12m3であってもよい
【0109】
いくつかの実施形態では、マーカーは、少なくとも約3mm、約6mm、約10mm、約30mm、50mm、または約100mmの長さを有する強磁性材料のワイヤまたはストリップを備え得る。ワイヤは、約100μm未満、または約50μm、約30μm、約15μmまたは約10μm以下の直径を有し得る。マーカーは、約3mm、約6mm、約10mm、約30mm、約50mm、または約100mm以下の長さを有する強磁性材料のワイヤまたはストリップを含んでもよい。好適には、ワイヤまたはストリップは、本明細書に記載されるように、1つまたは複数の断片に形成され得る。
【0110】
好適には、強磁性材料は、少なくとも約1,000の比初透磁率を有し得る。いくつかの実施形態では、強磁性材料は、少なくとも約10,000、少なくとも約50,000、または少なくとも約70,000の比初透磁率を有し得る。いくつかの実施形態では、強磁性材料は、約100,000以上の比初透磁率を有し得る。
【0111】
さらに、後述するように、強磁性材料は、典型的なMRI磁場よりも弱い飽和誘導を有し得る。したがって、好適には、強磁性材料は、約1.5T未満;好ましくは約1.0T未満;より好ましくは約0.7T未満の飽和誘導Bsを有し得る。
【0112】
少なくとも1つの反磁性要素は、好適には、1つまたは複数の強磁性要素の強磁性材料の総体積よりも約100~10,000倍大きい;好ましくは約500~3,000倍大きい;例えば、約950倍~1050倍大きい反磁性材料の総体積を含み得る。したがって、少なくとも1つの反磁性要素は、約1×10-9m3~約1.5×10-7m3の総体積を有し得る。これらの比率および/または体積内で強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの量を選択することによって、およびMRI磁場における強磁性材料の誘導の飽和によって、MRI磁場において1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントの振幅は、同じオーダーであり得る。好ましくは、1つまたは複数の強磁性要素または少なくとも1つの反磁性要素によってMRI磁場において生成される磁気モーメントのうちの小さい方の磁気モーメントの振幅は、少なくとも1つの反磁性要素またはそれぞれ1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントのうちの大きい方の磁気モーメントの振幅の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%であってもよい。このようにして、MRI磁場におけるマーカーのアーチファクトサイズは許容可能であり得る、すなわち、その最長寸法が約30mm未満;好ましくは約20mm未満であり得る;特に、本明細書で定義されるMRIスキャナのx-z平面において。さらに、強磁性および反磁性材料の総体積は、狭いゲージ針、例えば、18G~12Gを通して展開可能であるように十分に小さいマーカーが製造されることを可能にする。
【0113】
1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、好適には、印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように構成および配置され得る。特に、マーカーは、印加磁界H中に置かれると、1つまたは複数の強磁性体の磁気モーメントmferromagnetを生成し、少なくとも1つの反磁性要素は対向する磁気モーメントmdiamagnetを生成する。したがって、マーカーの正味のモーメントは、以下により与えられる:mtotal=mferromagnet-mdiamagnet。約0.5mT未満のセンシングフィールドにおいて(発生源における)、マーカーによって生成される正味磁束は、マーカーによって生成される信号の強度を決定する。MRI磁場において、マーカーによって生成される磁束は、MRI画像において生成されるアーチファクトのサイズに影響を与える。
【0114】
当業者が認識するように、MRI磁場は、典型的には0.5T~10T以上;特に約1.5T~7Tの強度を有し得る。
【0115】
本開示の分野において、ハンドヘルド感受性プローブは、移植後にマーカーを検出および位置特定するために外科医によって使用され得る。好適には、プローブは、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/140566号に記載されるプローブ;例えば、英国Endomagnetics Ltdから市販されているSentimag(商標)プローブであり得る。
【0116】
プローブは、約0.1mT~約2.0mT、好ましくは約0.2mT~約1.2mT、例えば約0.3mTの発生源における強度を有するセンシングフィールドを生成し得る。これは、プローブの約5mm以内に約25μT~約500μT、好ましくは約40μT~約400μTの磁場強度を生じさせることができ、これは、1つまたは複数の強磁性要素のBsよりも少なくとも1,000倍弱くなり得る。典型的には、センシングフィールドは振動磁場であり得る。したがって、センシングフィールドは、0.1mT~2.0mT、好ましくは約0.2mT~約1.2mTの発生源における振幅で振動し得る。
【0117】
使用中、感知プローブがマーカーに近接すると、センシングフィールドは強磁性材料内に磁気モーメントを生成し、マーカーは検出可能な応答磁気信号を生成する。説明される種類のセンシングフィールドの下では、マーカーが容易に検出可能であることが望ましい。マーカーは、比較的強い正味磁気モーメントを有し、センシングフィールドの範囲内で比較的高い磁束密度(B)を生じることが望ましい。磁束は好適には等方性である(実際には、磁気異方性比が7未満、好ましくは5未満であれば十分である)ことが望ましく、マーカーは、適度に離れた距離から、いかなる方向からも一貫して検出できる。以下により詳細に説明されるように、センシングフィールドの下では、マーカーによって生成される磁気信号は、少なくとも1つの強磁性要素によって支配される。前の段落に記載された大きさの場によって、典型的には、本開示のマーカーが、プローブから最大約50mm、約60mm、約70mm、または約80mmの範囲で検出されることが可能になり得る。
【0118】
図2(a)は、典型的な強磁性材料の印加磁場Hの関数としての磁化Mを示すヒステリシス曲線1である。強磁性材料は、典型的には、小さい印加磁場Hを受けると、強い磁化Mを生成し、点線3によって示されるように、高い比初磁化率を有する。
図2(b)は、典型的な強磁性材料について、磁場Hの関数として磁束密度Bを示す、同様のヒステリシス曲線101である。強磁性材料は、典型的には、比較的低い印加磁場(H)の下で磁気飽和(飽和誘導B
sにおいて)105に達する。強磁性材料7の磁気モーメントは、
図2(c)に示すように、印加磁界9と同じ方向である。
【0119】
センシングフィールドにおける1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントm
ferromagnetは、m
ferromagnet=χ
app,ferromagnetH・V
ferromagnetとして定義される。マーカー内の全強磁性材料によって生成される磁束密度(B)または磁場は、近似的に以下の式によって与えられる:
【数2】
式中、χ
app,ferromagnetは、1つまたは複数の強磁性要素の見かけの磁化率であり、これは、前記または各強磁性要素のサイズおよび形状、特にアスペクト比に依存し、V
ferromagnetは、強磁性材料の総体積であり、μ
0は、古典的な真空における透磁率であり、yは、マーカーからの距離である。1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気信号は、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁束密度に比例し、したがって、磁性材料の総体積(V
ferromagnet)、印加磁場(H)の強度、および磁性材料の見かけの磁化率(χ
app,ferromagnet)に依存する。磁性材料の見かけの磁化率は、長く薄い磁性要素について著しく大きくなり、少なくとも1つの強磁性要素により生成される磁気信号の強度は、要素から距離yだけ離れるにつれて減少する(距離の3乗に反比例)。
【0120】
図3(a)は、典型的な反磁性材料について、磁束Bを磁場Hの関数として示すグラフ201である。
図3(a)に示すように、反磁性材料は、典型的には、低い初磁化率を有し、飽和に達することなく、比較的高い磁場まで磁化211の直線的な増加を示す。反磁性材料として、磁束Bは、参照のために示されている破線203によって示されているように、誘導磁化が磁場Hに対向するので、自由空間の磁束よりも小さい。
図3(b)に示すように、反磁性材料が印加磁場を受けると、印加磁場209の方向に対向する磁化または磁気モーメント207が誘導される。本明細書に記載されるように、本開示の少なくとも1つの反磁性要素は、0.01mT未満の磁場を受けると、1×10
-3未満、典型的には約3×10
-4未満の大きさの初(負)磁化率を有し得る。センシングフィールドにおける少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントm
diamagnetは、m
diamagnet=χ
app,diamagnetH・V
diamagnetとして定義される。反磁性要素によって生成される磁束密度(B)は、以下の式によって与えられる:
【数3】
式中、χ
app,diamagnetは、少なくとも1つの反磁性要素の見かけの磁化率であり、これは、少なくとも1つの反磁性要素のサイズおよび形状、特にアスペクト比に依存し、V
diamagnetは、反磁性材料の総体積であり、yは要素からの距離である。本開示の少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素よりも著しく小さい見かけの磁化率を有する。
【0121】
センシングフィールドにおいて、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、少なくとも1つの反磁性要素の対向する磁気モーメントに対して高い。1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、少なくとも1つの反磁性要素の対向する磁気モーメントよりも少なくとも1,000~100万倍の大きさであり得る
【0122】
MRI装置で一般に使用される磁場は、上述のセンシングフィールドよりも数桁強く、最も一般的な臨床MRI装置は、本稿執筆時点で1.5Tまたは3Tである。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、MRI磁場は、典型的には1~5Tであり得るが、いくつかの実施形態では、7T以上の高さであり得る。
【0123】
上述のように、1つまたは複数の強磁性要素は、典型的なMRI磁場強度をはるかに下回る磁場強度で誘導の飽和に達することができる。本開示の1つまたは複数の強磁性要素は、1.5T以下の飽和誘導B
sを有し得、したがって、MRI磁場にさらされたときに飽和され得る。この場合、双極子近似を使用すると、比較的強いMRI磁場を受けたときの1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントm
ferromagnetは、以下である:
【数4】
式中、μ
0は自由空間の透磁率であり、M
sは飽和における1つまたは複数の強磁性要素の磁化であり、V
ferromagnetは強磁性材料の総体積である。したがって、有利には、本開示によれば、MRI磁場における1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、強磁性要素のB
sにおける誘導の飽和によって制限される。1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、英国特許出願第2115827.4号の開示に従って、使用される強磁性材料の体積を最小化することによってさらに最小化され得る。例として、1つまたは複数の強磁性要素の総磁気モーメントは、1.5TのMRI磁場下で約2×10
-6A.m
2のオーダーであり得る。
【0124】
MRI磁場にさらされる場合、飽和による1つまたは複数の強磁性要素の磁化に対する上限および少なくとも1つの反磁性要素に使用される反磁性材料の体積がかなり大きいことを考慮すると、少なくとも1つの反磁性要素の誘導磁気モーメントもまた、重要であり得る。少なくとも1つの反磁性要素の単位体積当たりの磁気モーメントは、典型的には、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントよりもはるかに弱いが、強磁性材料の体積に対して有意な体積の反磁性材料は、強磁性材料の磁気モーメントを有意に打ち消す磁気モーメントを生成し得る。典型的なMRI磁場にさらされると、少なくとも1つの反磁性要素からの磁気モーメントm
diamagnetは、以下である:
【数5】
式中、χ
app,diamagnetは、少なくとも1つの反磁性要素の見かけの磁化率である。
【0125】
例として、1.5TのMRI磁場の下での少なくとも1つの反磁性要素の総磁気モーメントは、約-1×10-6A.m2のオーダーであり得、ここで負の符号は、磁気モーメントがMRI磁場と反対方向にあることを示す。
【0126】
少なくとも1つの反磁性要素からの磁気モーメントが1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントに対抗するので、少なくとも1つの反磁性要素からの磁気モーメントは、MRI磁場を受けると、マーカー全体の正味磁気モーメントを低減する。したがって、好適には、マーカーは、MRI磁場を受けたときに約1×10-6Am2未満の正味磁気モーメントを有することができる。特に、マーカーは、0.5T~7T、好ましくは約1T~5T;より好ましくは約1.5T~3Tの磁場を受けたとき、約1×10-6Am2未満の正味磁気モーメントを有し得る。
【0127】
図4は、本開示の一実施形態による、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を備えるマーカーについて、印加磁場Hによる磁気モーメントの変化を概略的に示す。印加磁場の関数としての磁気モーメントが、1つまたは複数の強磁性要素301、少なくとも1つの反磁性要素303、およびマーカー305の全磁気モーメントについて示されている。典型的なMRI磁場の強度を下回るが、センシングフィールドの強度を上回る中間磁場強度では、1つまたは複数の強磁性要素は飽和307に達しており、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントm
ferromagnetは、比較的高い。一方、少なくとも1つの反磁性要素は、センシングフィールド下では1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントよりも実質的に非常に小さいが、印加磁場とともに直線的に増加する、対向する磁気モーメントを有する。そのような中間磁場では、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントは、依然として総磁気モーメントm
marker305を支配するが、MRIスキャナで使用される種類のより大きい磁場強度では、少なくとも1つの反磁性要素の対向する(より小さい)磁気モーメントは、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントのかなりの割合、例えば少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%を表し得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、点Aによって示される、ある印加磁場強度において、少なくとも1つの反磁性要素の(負の)磁気モーメントの振幅は、1つまたは複数の強磁性要素の(正の)磁気モーメントに実質的に等しくてもよく、したがって、マーカーの合計または正味磁気モーメントは、ゼロまたはゼロに近くてもよい。さらに高い印加磁場では、少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントの振幅は、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントの振幅よりさらに大きくてもよく、マーカーの合計または正味磁気モーメントは負であってもよい。
【0129】
本開示のマーカーに対するサイズおよび形状ならびに利用可能な材料の磁気特性に関する制約を考慮すると、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素内で誘起される磁気双極子を、それらが少なくともある程度互いに、およびMRI磁場の強度を打ち消し合うよう一致させるように同位置に配置する必要性は、実際には、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントは、互いに完全に打ち消し合わない場合があることが理解されよう。しかしながら、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントが、MRI下でマーカーによって引き起こされるアーチファクトを許容可能なサイズ、好ましくはその最長寸法が約30mm未満、より好ましくは25mm未満、さらにより好ましくは約20mm未満に低減するのに十分に互いに相殺する限り、本開示の目的を満たすことができる。
【0130】
したがって、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素またはそれぞれ少なくとも1つの反磁性要素のうちの小さい方によって生成される対向する磁気モーメントは、少なくとも1つの反磁性要素またはそれぞれ1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントのうちの大きい方の振幅の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%の振幅を有することができる。いくつかの実施形態では、MRI磁場において少なくとも1つの反磁性要素によって生成されるより小さい磁気モーメントは、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの振幅の少なくとも27%、好ましくは、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの振幅の少なくとも50%の振幅を有し得る。
【0131】
MRI磁場を受けると、1つまたは複数の強磁性要素は、MRI画像上にアーチファクトを生成し、要素は、MRI装置内の磁場の局所的変化を引き起こす。アーチファクトは、MRI装置によって生成される主磁場と同じ方向(本明細書ではy軸と呼ぶ)にある、強磁性要素Byによって生成される磁束の成分によって主に引き起こされる。Byの効果は、マーカー付近の組織におけるプロトンの局所的なラーモア周波数をシフトさせることであり、そのシフトが十分に大きい場合、それらのプロトンは、MRI装置によって再構成された正しいスライスに現れない。すなわち、|By|≧Bcritにおける点は、予想されるスライスに現れず、Bcritは、ボクセルが異なるスライスにマッピングされる磁束密度Bのy成分の大きさであり、その値はMRI走査パラメータに依存する。
【0132】
強磁性材料の量、飽和誘導B
s、ならびに1つまたは複数の強磁性要素のサイズおよび形状は、アーチファクトのサイズに影響を及ぼす。1つまたは複数の強磁性要素のサイズと比較して大きい距離において、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁束密度は、双極子モデルによって近似され得る。磁化の軸に沿って、そのモデルの下で、強磁性要素によって生成される磁束密度は、次式によって与えられる:
【数6】
式中、m
ferromagnetは1つまたは複数の強磁性要素の磁気双極子モーメントであり、yは物体から関心点までの距離である。上記で説明したように、MRI磁場における1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントm
ferromagnetは、次式によって与えられる:
【数7】
【0133】
これらの2つの式を組み合わせると、
【数8】
であり、式中、B
ferromagnet,MRIは、MRI磁場において1つまたは複数の強磁性要素によって生成される場である。この式から、マーカーがMRI装置内に配置され、したがって強い磁場を受ける場合、1つまたは複数の強磁性要素からの磁場の強度は、強磁性材料の総体積、その飽和誘導、およびそこからの距離に依存することが分かる。
【0134】
MRIアーチファクトのエッジを考慮する場合、その時点で、
【数9】
となり、yはアーチファクトの中心からそのエッジまでの距離を表す。その時点で、上記の式を使用して、以下が得られる:
【数10】
したがって、
【数11】
であり、式中、B
critは、アーチファクトが生成される臨界磁場を定義するMRI走査パラメータである。y軸に沿ったアーチファクトの「直径」を(円形でない場合もあるが)、 D
artefact,y=2yとしてその広がりの指標として定義する場合、以下に従う:
【数12】
【0135】
本開示によれば、マーカーの正味磁気モーメントが少なくとも1つの反磁性要素の存在によって少なくとも低減されるので、マーカーによって生成されるアーチファクトのサイズは、少なくとも1つの反磁性要素の存在によって低減され得る。マーカー全体について、MRI磁場を受けると、生成されるアーチファクトのサイズは、以下のように計算することができる:
【数13】
マーカーによって生成されるアーチファクトの総直径は、次式によって与えられる:
【数14】
【0136】
この式から、マーカーによって生成されるアーチファクトの直径を低減または最小化するために、BMRI・χ・Vdiamagnetは、Bs・Vferromagnetに匹敵する必要があることが分かる。典型的な例示的な値を考慮すると、BMRI=1.5T、Bs=0.6T、およびχ=5×10-4の場合、少なくとも1つの反磁性材料の体積は、アーチファクトの直径を最小にするために、1つまたは複数の強磁性要素の体積よりも少なくとも約1000倍大きい必要がある。しかしながら、以下でより詳細に論じるように、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントのバランスをとるために必要な反磁性材料の体積は、より強いMRI磁場、例えば3Tの下ではより小さくなる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素の体積よりも約10,000倍未満、例えば5,000倍未満または2,500倍未満、例えば約1,000倍大きい反磁性材料の体積が好適であり得る。
【0137】
MRI撮像中に生成される大きなアーチファクトは問題であり、空間情報のミスマッピングにつながり得る。したがって、MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小限に抑えると同時に、依然としてマーカーがセンシングフィールドにおいて感知できるようにすることが重要である。
【0138】
マーカーがセンシングフィールドにおいて感知されるためには、マーカーがセンシングフィールドにさらされるときに1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントが正味の磁気モーメントを支配する必要がある。
【0139】
典型的なMRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトが比較的小さくなるように、少なくとも1つの反磁性要素の磁気モーメントは、マーカーの正味磁気モーメントが可能な限り小さくなるように、1つまたは複数の強磁性要素の磁気モーメントを少なくとも部分的に相殺すべきである。さらに、1つまたは複数の強磁性要素のみによって生成されるアーチファクトのサイズおよび形状は、少なくとも1つの反磁性要素のみによって生成されるアーチファクトのサイズおよび形状に少なくとも近似する必要があり、本明細書で説明するように、マーカー内で近接して互いに組み合わされると、それらは重なり合い、したがって、少なくともある程度互いに相殺する。
【0140】
MRI磁場を受けたときに本開示のマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズは、1つまたは複数の強磁性要素の体積および形状ならびに少なくとも1つの反磁性要素の体積および形状に依存する。大量の強磁性材料を使用することは、望ましくない大きいアーチファクトをもたらし得る。反磁性材料の体積を増加させることは、より小さいアーチファクトにつながり得る。
【0141】
しかしながら、強磁性材料の体積を相殺するために必要とされるよりもはるかに大きい反磁性材料の体積が使用される場合、少なくとも1つの反磁性要素によって生成される「負の」アーチファクトは、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトよりも支配的であり得、これは、マーカーチファクトサイズの望ましくない増加につながり得る。したがって、所与のMRI磁場強度に対するマーカーアーチファクトのサイズを低減するために、1つまたは複数の強磁性要素と少なくとも1つの反磁性要素との間の体積比を最適化することが望ましい場合がある。
【0142】
MRI磁場において生成されるアーチファクトのサイズもまた、1つまたは複数の強磁性要素のBsに依存するので、より低いBsを有する強磁性材料が使用される場合、より大きな体積の強磁性材料が使用され得る。いくつかの実施形態では、強磁性材料は、0.25T~1.5Tの範囲のBsを有し得る。
【0143】
MRI磁場における1つまたは複数の強磁性要素の磁化を相殺するために必要な反磁性材料の体積は、MRI磁場の強度に依存し得る。特に、より強力な磁場における1つまたは複数の強磁性要素の飽和磁化を相殺するために、より少量の反磁性材料が必要とされ得る。MRIスキャナは、異なるMRI磁場強度で利用可能であり、これは、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を備えるマーカーの対向する磁気モーメントが、1つの強度のMRI磁場の下で実質的に等しい大きさであり得るが、異なるMRI磁場では等しくないことを意味する。好適には、本開示のマーカーにおける強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの体積は、MRI磁場の範囲にわたって許容可能なサイズのMRIアーチファクトを生じ得る;例えば、0.5~10T、好ましくは1~7T、より好ましくは1.5~3Tである。
【0144】
いくつかの実施形態では、マーカー内の強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの体積は、1つのMRI磁場、例えば1.5Tの下で実質的に等しい振幅の磁気モーメントを生成し、それによって、アーチファクトサイズを最小限に抑える一方で、異なるMRI磁場、例えば3Tの下で許容可能な小さいアーチファクトを依然として生じさせるようなものであり得る。好ましくは、マーカーに使用される材料の体積を最小限にするために、存在する反磁性材料の量は、少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントの振幅が、第1のMRI磁場、例えば3Tの下で1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの振幅と実質的に等しくなるようにする一方で、第1のMRI磁場よりも弱い第2のMRI磁場、例えば1.5Tの下で許容可能なサイズのアーチファクトを依然として生成するものであり得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、マーカー内の強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの体積は、2つ以上の異なるMRI磁場において異なる振幅の磁気モーメントを生成するが、各異なるMRI磁場の下でのアーチファクトサイズは許容可能なサイズであるようなものであり得る。本明細書に開示されるように、マーカーは、少なくとも2つの異なるMRI磁場の下でそれらの少なくとも1つによって生成される磁気モーメントが、それぞれ別個に、他方によって生成される対応する磁気モーメントの約75%以内、好ましくは約50%以内であるように、強磁性および反磁性材料の相対量を含んでもよ。したがって、いくつかの実施形態では、反磁性材料によって生成される磁気モーメントは、少なくとも2つの異なるMRI磁場の下で、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される対向する磁気モーメントの対応する振幅の約25%~約175%の範囲内、好ましくは約50%~約150%の範囲内にそれぞれ別個にある、振幅を有し得る。この意味で、マーカー中の強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの量は、2つ以上の異なるMRI磁場の下で許容可能な小さいアーチファクトを標的とするように最適化され得る;特に約0.5~10T、好ましくは1~5Tの範囲、例えば1.5Tおよび3Tである。前記または各強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の形状および寸法はまた、アーチファクトのサイズおよび形状ならびにマーカーを感知することができる容易さに影響を及ぼし得る。
【0146】
英国特許出願第2115827.4号明細書に開示されるように、所与の体積の強磁性材料に対して、大きいアスペクト比を有する強磁性要素は、センシングフィールドにおいてより容易に検出可能であり得る。磁気要素のアスペクト比(例えば、L/D、式中、Lは要素の長さであり、Dは直径または非円形断面を有する要素の場合は幅である)を増加させることによって、その長軸の方向における感知性能が増加し得る。比L/Dが増加すると、要素の見かけの透磁率μappも増大し、その結果、感知され得る距離が増大し得る。この現象は減磁効果によるものである。
【0147】
好適には、前記または各1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つのワイヤまたはストリップを備えることができる。ワイヤは、略円形断面を有する円筒形ワイヤを備えてもよい。あるいは、ワイヤは、フラットワイヤまたはストリップであってもよい。1つまたは複数の強磁性要素は、複数のワイヤおよび/またはストリップを備えることができる。
【0148】
いくつかの実装形態では、複数のワイヤまたはストリップの形態の1つまたは複数の強磁性要素は、本明細書および英国特許出願第2115827.4号明細書で説明するように、マーカーの磁気応答の等方性を最適化するために、個々にまたは組み合わせて、いくつかの異なる方向に延在し、および/またはねじれ、屈曲、または曲がりを含む、1つまたは複数の蛇行経路を画定するように構成され得る。
【0149】
本開示のマーカーの1つまたは複数の強磁性要素は、好適には、少なくとも50の長さ対直径(またはその断面積の平方根)比(L/D)を有し得る。
【0150】
1つまたは複数の強磁性要素は、好適には、上述のように、1×10-10m3未満、好ましくは約1×10-11m3未満の総体積を有することができる。
【0151】
特に明記しない限り、個々の磁気要素の文脈において本明細書で用いられる「長さ」という用語は、要素が直線的に延在しているかのような要素の長さを意味する。例えば、螺旋状の強磁性要素の場合、要素の長さは、螺旋を形成するワイヤの長さである。対照的に、本明細書では、特に明記しない限り、「全長」という語句は、1つまたは複数の磁気要素がマーカー内に形成される構成における1つまたは複数の磁気要素の長さを意味するために使用される。後者の文脈では、「長さ」は、概して、マーカーの最長寸法の方向における1つまたは複数の要素のサイズを指す。一方、「全直径」または「全幅」は、それぞれ、最長寸法を横断する方向における1つまたは複数の磁気要素のアセンブリの直径または幅を意味する。
【0152】
高アスペクト比および低体積を有する強磁性要素は、有用な感知応答と許容可能な小さいMRIアーチファクトとのバランスをとろうとする:強磁性材料の体積を低減することにより、強磁性要素によって生成されるMRIアーチファクトを低減することができる。一方、所与の体積の強磁性材料に対する少なくとも1つの強磁性要素のアスペクト比を増加させることによって、マーカーの感知応答を改善することができる。
【0153】
いくつかの実施形態では、強磁性要素または各強磁性要素のアスペクト比は、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2000または少なくとも3000であり得る。これによって、強磁性材料の体積、したがってMRIアーチファクトサイズが低減される一方、感知応答が維持されることが可能になる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、1×10-11m3未満の総体積を有することができる。
【0154】
強磁性要素の材料のアスペクト比を増加させることは、その最長寸法の方向におけるその感知性能を劇的に増加させ得る。アスペクト比が増加するにつれて、マーカーの見かけの透磁率μappも増加し、これによって、消磁効果の結果としてマーカーを感知することができる距離が増加する。
【0155】
直線状強磁性ワイヤは、高いアスペクト比を有し、その長手方向軸の方向に強い磁束密度を生成する。これによって、この軸に平行な方向のセンシングフィールドにおいて実用的な感知性能に得られる可能性がある。しかしながら、そのような要素は、長手方向軸に垂直な方向で検出するのがより容易でない場合がある、すなわち、異方性感知応答を有する場合があり、センシングフィールドに対するその配向に応じて要素の磁気応答に幅広い変動が存在し得るため、プローブによって検出される磁気応答をマーカーへのその近接度に較正することが困難になり得る。大きなアスペクト比を有する1つまたは複数の強磁性要素を使用することにより、比較的小さい体積の強磁性材料を使用する良好な感知性能をもたらすことができ、これはMRI画像において小さいアーチファクトを生成するという利点を有する。
【0156】
センシングフィールドの下での感知応答および強磁性要素のMRIアーチファクトサイズは、異なる変数に依存し得る。Sentimag(商標)プローブによって生成されるようなセンシングフィールドの下では、感知性能は、強磁性材料のアスペクト比および体積にのみほぼ依存し、比初透磁率μr,j(B-μ0H曲線の初期勾配)nnいはあまり依存しないことが認識されている。対照的に、MRI磁場を受けたときに強磁性要素によって生成される磁場の大きさ、したがってMRIアーチファクトサイズは、飽和誘導Bsおよび強磁性材料の体積に依存し得る。これは、満足できる距離で依然として感知され得る非常に薄い低飽和誘導強磁性材料の断片を使用することによって、MRIアーチファクトのサイズを制限することが可能であることを意味する。
【0157】
コイル状の強磁性ワイヤは、低い体積および高いアスペクト比を依然として有しながら、直線状ワイヤよりもセンシングフィールドにおいてより等方性の応答を有し得ることが見出されている。したがって、コイル状の強磁性ワイヤは、MRI磁場において許容可能な小さいアーチファクトをもたらし得る一方で、センシングフィールドに対する配向による磁気応答の変化が少ない、改善された方向の範囲からセンシングフィールドにおいて検出可能である。
【0158】
したがって、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、コイル状の強磁性ワイヤまたはストリップ、または相互に実質的に同軸であり得る複数の離間されたリングを備え得る。任意選択的に、1つまたは複数の強磁性要素は、コイルまたはリングを通って延在する1つまたは複数の直線ロッドをさらに含むことができる。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの強磁性要素は螺旋状ワイヤコイルを備え得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つの単一の螺旋を含んでもよい;任意選択的に、螺旋の長手方向軸に実質的に平行に配置された1つまたは複数の直線状ワイヤと組み合わされる。
【0160】
いくつかの実施形態では、2つ以上強の磁性要素は、多重螺旋、例えば、二重螺旋、三重螺旋、または四重螺旋として構成され得る。
【0161】
単一の螺旋の形態を有する強磁性要素と、螺旋の長手方向軸に実質的に平行に位置合わせされた直線状ワイヤまたはストリップの形態を有する1つまたは複数の強磁性要素との組み合わせの場合、マーカーの横方向磁気応答は主に螺旋から生じ、長手方向応答は主に1つまたは複数の直線状ワイヤまたはストリップから生じ得る。
【0162】
マーカーが複数の強磁性要素を含む場合、個々の強磁性要素は、要素間の破壊的相互作用を回避するために互いに接触しないように配置することができる。いくつかの実施形態では、強磁性要素は、1つまたは複数のスペーサによって、または少なくとも1つの反磁性要素またはマーカーの別の構成要素、例えば、ハウジングまたは他の非磁性支持体に固定されることによって、離間して保持され得る。したがって、多重螺旋配置では、例えば、各個々の螺旋状強磁性要素は、1つまたは複数の他の螺旋状強磁性要素の巻きによって画定される螺旋状ギャップ内に配置され得る。
【0163】
コイル状磁気ワイヤによって生成されるMRIアーチファクトの形状およびサイズは、ワイヤのコイルピッチおよび/またはコイル直径に依存し得ることが分かっている。ピッチがより大きいと、典型的には、より長く、より薄いアーチファクトが生成される一方で、より短く、コイルがより広いと、典型的には、より厚く、より短いアーチファクトが生成され得る。
【0164】
好適には、ワイヤは、約100μm、50μm、30μm、15μm、または10μm未満の直径を有し得る;好ましくは、ワイヤは約15μmの直径を有することができる。
【0165】
強磁性ワイヤから形成される螺旋状強磁性要素は、約0.8mm~3mm、好ましくは1.0mm~1.5mm、より好ましくは約1.15mm~1.30mm、例えば1.2mmの螺旋直径(すなわち、螺旋の直径)を有し得る。コイル直径がより大きいと、センシングフィールドにおいてより強い横方向感知応答が生成され得ることが分かっている。
【0166】
好適には、螺旋状強磁性要素は、約0.5mm~3mm、好ましくは約1.4~1.8mm、例えば約1.6mmのピッチを有し得る。ピッチがより大きいと、軸方向における螺旋の感知応答が改善され得る。これは、螺旋状コイルの軸方向に突出する長さがより大きいためであると考えられる。
【0167】
好適には、螺旋のピッチは、螺旋の直径にほぼ等しくてもよい。いくつかの実施形態では、螺旋のピッチは、螺旋の直径の1.0~1.5倍であってもよい。これは、センシングフィールドにおける螺旋の横方向応答を最大にするのに役立ち得る。
【0168】
螺旋状強磁性要素のピッチを減少させ、巻き数を増やすと、マーカーの横方向の感知性能を増加し得るが、軸方向の感知性能は減少し得る。これらによってまた、使用されるワイヤの全長が増加し得、所与のゲージのワイヤに対するMRIアーチファクトサイズが増加し得る。一方、螺旋状強磁性要素のピッチを増加させ、巻き数を減少させると、マーカーの横方向感知性能が低下し得るが、軸方向感知性能は増加する可能性がある。それによってまた、所与のワイヤゲージに使用されるワイヤの総体積が減少し得、これは、有利には、マーカーのMRIアーチファクトサイズを減少させる働きをし得る。各タイプの多重螺旋マーカーに対して等方性感知性能を生み出すための最適なピッチが存在し得ることが見出されている。三重螺旋の場合、直径約15μmの金属ワイヤを使用する約1.6mmの直径のマーカーに、各個々の螺旋について約1.6mmのピッチが最適であり得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、約2mm~10mm、好ましくは約4mm~8mm、例えば約5mmの螺旋長(すなわち、螺旋の端から端までの長さ)を有する少なくとも1つの螺旋状強磁性要素を含んでもよい。螺旋がより長いと、マーカーのアスペクト比が増加し、改善された感知応答をもたらし得ることが見出されている。好適には、螺旋状強磁性要素は、少なくとも約3mm、6mm、10mm、30mm、50mm、または100mmの全長を有するワイヤから形成され得る。
【0170】
上述のように、少なくとも1つの反磁性要素は、MRI磁場におけるマーカーの正味の磁気モーメントを最小化するように構成および配置され得る。少なくとも1つの反磁性要素は、MRI磁場において「負の」アーチファクトを生成し得る。少なくとも1つの反磁性要素によって生成されるアーチファクトは、上述のように、好ましくは2つ以上のMRI磁場強度において、マーカー全体によって生成されるアーチファクトのサイズを低減するように計算され得る。好適には、少なくとも1つの反磁性要素は、MRI磁場において、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトと同様の形状およびサイズを有する「逆」アーチファクトを生成するように構成および配置され得る。
【0171】
少なくとも1つの反磁性要素が、1つまたは複数の強磁性要素からの磁場を最も効果的に打ち消し、したがって、結果として生じるMRIアーチファクトのサイズを低減するために、強磁性および反磁性要素は、(i)MRI磁場において同様の強度の(しかし、反対方向の)磁場を生成し;(ii)できるだけ近くに同位置に配置されるべきである。
【0172】
上記の目的(i)は、MRI磁場における2つの誘導磁場強度が同様であるように、本明細書に開示されるような強磁性および反磁性材料のそれぞれの体積を使用することによって、本開示に従って達成され得る。本明細書に開示されるように、少なくとも1つの反磁性要素は、典型的には、1つまたは複数の強磁性要素よりも著しく大きい体積の材料を含み得る。強磁性材料の総体積と比較して有意に大きい体積の反磁性材料を使用することは、マーカーの総磁気モーメント、したがってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズが低減され得ることを意味する。
【0173】
少なくとも1つの反磁性要素の体積は、1つまたは複数の強磁性要素の総体積の約100~10,000倍、好ましくは1つまたは複数の強磁性要素の総体積の約500~3,000倍、例えば約900倍大きくてもよい。1つまたは複数の強磁性要素を形成する強磁性材料の総体積は、5×10-11m3未満、3×10-11m3未満、または1×10-11m3未満、例えば6×10-12m3であってもよい。典型的には、少なくとも1つの反磁性要素の体積は、約1×10-9m3~1.5×10-7m3、例えば6×10-9m3であり得る。
【0174】
目的(ii)は、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を同様の方法で空間内に分散させることによって達成することができる。概して、所与の体積の反磁性材料によって生成される磁場は、同じ体積の強磁性材料によって生成される磁場よりも弱く、したがって、より大きい体積の反磁性材料が必要である。このため、また、2つの材料を完全に同じ場所に配置することが不可能であり得るため、2つの材料によって生成される磁場は、典型的には、MRI磁場において互いに完全に相殺されない場合がある。2つの磁場の双極子成分を整合させることが最も有益であり、より高次の成分(四極子、八極子など)を整合させることによって収穫逓減がもたらされ得る。強磁性および反磁性要素の適切な構成および配置は、適切なコンピュータ数学モデリングプログラムを使用して1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素によってMRI磁場において個々に生成される磁束変化の等高線図を生成し、等高線図が実質的に一致するまで要素の構成および配置を反復的に調整することによって、経験的に決定され得る。MRI磁場において強磁性または反磁性材料の1つまたは複数の断片によって生成されるアーチファクトの形状およびサイズは、Bcrjtの等高線によって表されてもよく、これは、上述のように、所与のMRI磁場について、磁場内の1つまたは複数の断片の存在によりボクセルが異なるスライスにマッピングされる磁束密度Bの変化のy成分の大きさである。
【0175】
1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、好適には、1つまたは複数の強磁性要素および/または少なくとも1つの反磁性要素によって画定され得る共通の空間内で互いに並置され得る。1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、有利には、同じ場所に配置され得る。1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される理論的アーチファクトの中心、例えばボックス中心(すなわち、物体の周囲にできるだけ密接に適合する概念的な矩形ボックスの中心)または幾何学的中心が、少なくとも1つの反磁性要素によって生成される理論的アーチファクトの中心、例えばボックス中心または幾何学的中心と一致するように構成および配置され得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素の質量中心は、少なくとも1つの反磁性要素の質量中心と実質的に一致してもよい。
【0176】
いくつかの実装形態では、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素の外面に沿ってまたはその周囲に延在し得る。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素の周りに巻き付けられ得る。
【0177】
便宜には、少なくとも1つの反磁性要素は、マーカーのコアを形成し得る。少なくとも1つの反磁性要素は、外面を有する細長い本体を備えることができる。好適には、細長い本体は実質的に円筒形であってもよい。細長い本体は、1つまたは複数の強磁性要素のうちの少なくとも1つのための支持体またはマンドレルを形成することができる。いくつかの実装形態では、1つまたは複数の強磁性ワイヤのうちの少なくとも1つは、上述のように、反磁性要素の細長い本体の周りに巻き付けられて、単一または複数の螺旋を形成することができる。あるいは、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性ワイヤのうちの少なくとも1つによって形成される単一または複数の螺旋に並置され得る;例えば、螺旋の長手方向軸に実質的に平行に延在する細長いロッドの形態で、または中空円筒の形態で螺旋の周りに隣接して。
【0178】
マーカーによって生成されるアーチファクトのサイズは、1つまたは複数の強磁性要素の全長が少なくとも1つの反磁性要素の全長と同じまたは同様である場合、および/または、1つまたは複数の強磁性要素の全ての直径または幅が少なくとも1つの反磁性要素の全ての直径または幅と同じまたは類似している場合、有利に最小化され得ることが見出されている。
【0179】
したがって、好適には、1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素の全長の少なくとも80%に沿って個別にまたは集合的に延在することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、約2mm~10mm、好ましくは約6mm~8mmの全長を有し得る。いくつかの実装形態では、少なくとも1つの反磁性要素の全長は、1つまたは複数の強磁性要素の全長とほぼ同じであり得る;例えば、1つまたは複数の強磁性要素が螺旋を形成する場合の螺旋の長さである。少なくとも1つの反磁性要素の全長は、1つまたは複数の強磁性要素の全長の25%以内、例えば10%以内、例えば5%以内であってもよい。少なくとも1つの反磁性要素の全長は、1つまたは複数の強磁性要素の全長の約2%以内であってもよい。
【0180】
好適には、マーカーは、特定の針ゲージ内、例えば12G~18G、好ましくは16G~18Gに適合するようにサイズ決定されてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、マーカーは、約0.514mm~約1.803mmの範囲、好ましくは約0.838mm~約1.194mmの直径を有し得る。強磁性材料および反磁性材料に必要な総体積が決定されると、マーカー内の各材料の割合を計算することができる。次いで、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の直径、長さ、および空間配置は、いくつかの実施形態において、強磁性要素および反磁性要素のためのハウジングまたは外側コーティングを収容する必要性を考慮に入れて、特定の針ゲージ内の利用可能な直径に基づいて決定され得る。
【0181】
概して、少なくとも1つの反磁性要素は、約0.03~3mmの全体直径または幅を有し得る。前の段落で論じたように、特定の針ゲージの内径を考慮し、ハウジングまたは外側コーティングのための十分な空間を残すと、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、約0.45mm~1.8mm、より好ましくは約0.80mm~1.4mm、例えば1.2mmの全体直径または幅を有し得る。多くの場合、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素の全体直径を可能な限り互いに類似させると、最良のアーチファクトサイズの低減につながり得ることが分かっている。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素の全体直径は、1つまたは複数の強磁性要素の全体直径とほぼ同じであり得る;例えば、1つまたは複数の強磁性要素が螺旋を形成する螺旋直径である。少なくとも1つの反磁性要素の全体直径は、1つまたは複数の強磁性要素の全体直径の約5%以内であってもよい。少なくとも1つの反磁性要素の全体直径は、1つまたは複数の強磁性要素の全体直径の約2%以内であってもよい。しかしながら、非常に強い反磁性材料が使用される場合、またはワイヤ直径が非常に細い場合、強磁性磁気モーメントのバランスを取るために少量の反磁性材料のみが必要とされ得る。そのような場合、少なくとも1つの反磁性要素の全体直径は、1つまたは複数の強磁性要素の全体直径より小さくてもよい。好ましくは、反磁性材料のアスペクト比と1つまたは複数の強磁性要素との類似性は、反磁性要素の直径が小さい場合に保存される。
【0182】
したがって、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトが最大長さで約30mm未満、好ましくは最大長さで約20mm未満であるように、本明細書に開示されるように構成および配置され得る。MRIアーチファクトのサイズは、MRI磁場の強度に応じて変化し得る。MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトは、3T未満の磁場において長さが20mm未満であり得る。MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトは、5T未満の磁場において長さが20mm未満であり得る。MRI磁場においてマーカーによって生成されるアーチファクトは、7T未満の磁場において長さが20mm未満であり得る。
【0183】
本発明の一実施形態によるマーカーについて、上述のように、1つまたは複数の強磁性元素は、低い飽和誘導(Bs)、例えば1.5T未満を有することが有利であり得る。さらに、1つまたは複数の強磁性元素は、比初透磁率が高い;例えば、0.1mT~0.5mTの磁場に対して1,000超。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、10,000超の比初透磁率を有し得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素は、50,000超またはさらには100,000の比初透磁率を有し得る。
【0184】
前記または各強磁性要素は、好適には、強磁性金属を含み得る。少なくとも1つの強磁性要素は、非晶質金属を含んでもよい。少なくとも1つの強磁性要素は、セラミックフェライトを含むことができる。好適な強磁性材料は、例えば、商品名Yshield MCE61(商標)、Metglas 2705M(商標)およびMetglas 2714A(商標)で販売されている、コバルト系非晶質金属を含む。好適な強磁性材料はまた、例えば、商標名Fair-Rites 31(商標)、76(商標)および78(商標)で販売されている、マンガン-亜鉛セラミックフェライトを含む。好適な強磁性材料は、例えば、商品名Mu-metal、Permalloy 80、Permalloy C、PermalloyおよびSupermalloyで販売されている、ニッケル-鉄系軟質強磁性合金をさらに含む。他の好適な強磁性材料は、例えば、商品名Fair-Rites 15(商標)、20(商標)、および43(商標)で販売されている、ニッケル-亜鉛セラミックフェライト;好ましくは、コバルト系非晶質金属、例えばYshield(商標)およびMetglas 2714A(商標)を含む。しかしながら、セラミックは、低い飽和誘導を有するが、ワイヤまたはフラットワイヤへの形成があまり容易ではなく、したがって、本開示によるマーカーにはあまり適していない。いくつかの実施形態では、金属強磁性材料は、高いアスペクト比を有するワイヤに延伸するためのそれらの延性、およびリング、螺旋などに成形するための柔軟性の観点から好ましい場合がある。
【0185】
有利には、少なくとも1つの反磁性要素は、強反磁性、すなわち約1×10-4を超える大きさの強い負の磁化率を有し得る。これは、約-0.91×10-5である水の磁化率と比較される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性素子は、約-1×10-4~-3×10-4のバルクまたは見かけの体積磁化率を有し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの反磁性要素は、最大約-7×10-4のバルクまたは見かけの体積磁化率を有し得る。高い(負の)磁化率を有する反磁性要素は、MRI磁場において1つまたは複数の強磁性要素の(正の)磁化を相殺するために必要とされる反磁性材料が少ないことを意味するので、有利であり得る。
【0186】
本開示によれば、少なくとも1つの反磁性要素は、実質的に等方性の粒子構造、有利には微細粒子構造を有するグラファイトを含む。例えば、アイソスタティックプレスグラファイトは、好適に小さい粒径を有し、押出成形または圧縮成形から形成されたグラファイトよりもより高い密度およびより高い強度を有し得る。さらに、アイソスタティックプレスグラファイトは、有利には、例えば押出成形または圧縮成形によって形成された非等方性グラファイトよりも多くの等方性特性を有し得る。アイソスタティックプレスグラファイトはまた、安価であり、容易に機械加工可能であり、良好な生体適合性特性を有し、5ppm未満の不純物を有するグレードで製造可能であり得る。したがって、好適には、グラファイトは、99.9%超の炭素を含有する高純度であり得る。グラファイトは、少なくとも約1.75g/cm3、例えば約1.85g/cm3の密度を有することができ、これは低い気孔率(例えば15%未満)に相当する。いくつかの実施形態では、グラファイトは、最大約1.95g/cm3またはそれ以上の密度を有し得る。高純度、高密度のアイソスタティックプレスグラファイトは、本開示による埋込型マーカーにおいて、約-1.2×10-4の見かけの体積磁化率を有することが見出されている。
【0187】
したがって、本開示は、MRI磁場におけるマーカーの正味の磁気モーメントを低減し、それによってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小限に抑えるための、1つまたは複数の強磁性要素を含む埋込型マーカーにおける実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトの使用を包含する。この実施形態によれば、本開示の埋込型マーカーは、1つまたは複数の強磁性要素と、高純度のグラファイトから形成され、例えば静水圧プレスによって実質的に等方性の粒子構造を有する少なくとも1つの反磁性要素とを含んでもよい。本明細書に記載されるように、1つまたは複数の強磁性要素は、有利には、少なくとも1つの反磁性要素と並置して配置される。
【0188】
グラファイトの純度は、好適には、例えば少なくとも約2,200℃の温度における熱処理によって、さらに高めることができる。熱処理は、グラファイトのプレスまたは押出と同時に、またはその後に行うことができる。
【0189】
実施形態によれば、本開示は、磁気マーカーを製造する方法を提供する。本方法は、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を形成する工程であって、反磁性要素が実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含む工程、および、その後、1つまたは複数の強磁性要素を少なくとも1つの反磁性要素と組み立ててマーカーを形成する工程を含み得る。1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素は、本明細書に開示されるように選択される強磁性材料および反磁性材料のそれぞれの体積を含むことができ、センシングフィールドにおいて、1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも1つの反磁性要素よりも実質的に強く磁化され、ハンドヘルドプローブを使用してマーカーが組織内で検出されることを可能にするのに十分な大きさの応答磁場を生成する一方で、MRI磁場において、少なくとも1つの反磁性要素は、1つまたは複数の強磁性要素の磁化の少なくとも実質的な割合を相殺するのに十分に強い程度の磁化を有し、それによってマーカーにより生成されるアーチファクトのサイズを最小化する。1つまたは複数の強磁性要素は、センシングフィールドに応答して生成される応答磁場の強度および等方性を最大にするように構成および配置され得る。少なくとも1つの反磁性要素は、少なくとも、マーカーによって生成されるアーチファクトの最大寸法を約30mm未満、好ましくは約20mm未満に減少させるのに十分な程度まで、1つまたは複数の強磁性要素によって生成されるアーチファクトのアーチファクトサイズおよび形状に合致するサイズおよび形状を有するアーチファクトをMRI磁場内に生成するように構成および配置されてもよい。グラファイトは、高純度、高密度のグラファイトであってもよい。
【0190】
本開示の実施形態では、本方法は、印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を構成および配置する工程を含んでもよい。少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度は、1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度に対して、少なくとも1つの強磁性要素によって生成される磁気モーメントがプローブによって検出されることを可能にするために、センシングフィールドにおいて無視することができ、また、MRI磁場において1つまたは複数の強磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度と同程度の大きさであってもよく、それによって、少なくとも1つの強磁性要素の磁気モーメントを相殺または実質的に均衡させることにより、MRI画像上でマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小にする。
【0191】
いくつかの実施形態では、方法は、静水圧プレスプロセスを実施して、アイソスタティックプレスグラファイトを提供する工程をさらに含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、方法は、2,200℃を超える温度でグラファイトを熱処理する工程をさらに含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を構成および配置する工程は、少なくとも1つの反磁性要素から形成されるコアまたはマンドレルの周りに1つまたは複数の強磁性要素を巻き付ける工程を含むことができる。したがって、本開示の一実施形態では、1つまたは複数の強磁性ワイヤまたはストリップのコイル内に受容される反磁性コアを備えるマーカーを製造するための方法が提供される。コアは、単一のマーカーの長さの数倍の初期長さを有し得る。1つまたは複数の強磁性ワイヤまたはストリップは、反磁性コアの周りに巻かれ得る。ワイヤまたはストリップの端部は、巻き付けの開始時および終了時に、例えば接着剤を使用して、コアに便宜に固定することができる。結果として生じるアセンブリは、次いで、2つ以上のセグメントに分割されてもよく、各セグメントは、マーカーの長さに対応する長さを有する。セグメントは、例えば、ブレード、ウォータージェットまたはレーザーを用いて、例えば、機械的手段、圧力的手段、または熱的手段による切断によって互いに分割されてもよい。あるいは、反磁性コアは、コイル巻線の前に別個のセグメントに切断されてもよい。
【0194】
図5は、本開示の一実施形態による埋込型マーカー401の概略図である。マーカー401は、反磁性コア405の外側に沿って延びる鉄-コバルト系合金403a、403b、403cから形成された3つの概ね直線状の強磁性ワイヤを含む。この実施形態の変形例では、より少ないまたはより多い強磁性ワイヤが使用され得ることが理解されよう。反磁性コア405は、χ=-1.66×10
-4の値の体積磁化率を有する円筒である。円筒は、アイソスタティックプレスグラファイトを含み、約1mmの直径および約8mmの長さを有する。強磁性ワイヤ403a、403b、403cは、約72,000の値の初期体積磁化率を有する。各ワイヤ403a、403b、403cは、約16μmの直径および約8mmの長さを有し、ワイヤ403a、403b、403cは、ワイヤの長さが反磁性コア405の長さに実質的に一致するように、コア405の長手方向軸に実質的に平行な方向に延在する。
【0195】
約0.5mT未満のセンシングフィールドでは、ワイヤ403a、403b、403cのそれぞれによって生成される磁場は、ワイヤの見かけの磁化率χapp,wireにワイヤの体積Vwireを乗じたものに比例し、反磁性コア405によって生成される磁気モーメントは、コア405の見かけの磁化率χapp,coreにその体積Vcoreを乗じたものに比例する。ワイヤ403a、403b、403cの組み合わせについての量χapp,wire。3.Vwireは、約4.6×10-8m3であると計算されてもよく、反磁性コア405の量χapp,coreVcoreは、約-1.0×10-12m3であると計算されてもよい。したがって、センシングフィールドにおいて強磁性ワイヤ403a、403b、403cによって生成される複合磁場は、反磁性コア405によって生成される磁気モーメントよりも約45,000倍大きく、これは比較すると無視できる。
【0196】
1.5TのMRI磁場を受けると、強磁性ワイヤ403a、403b、403cの各々は、誘導の飽和に達する。したがって、3つのワイヤ403a、403b、403cの複合磁気モーメントは、次式で与えられる:
【数15】
式中、B
sはワイヤの飽和誘導であり、μ
0は自由空間の透磁率であり、V
wireは強磁性ワイヤの1つの体積である。この例では、各ワイヤは0.55TのB
s値を有し、3m
ferromagnet=2.1×10
-6Am
2である。反磁性コア405は飽和せず、その磁気モーメントは、次式で与えられる:
【数16】
式中、B
0はMRI磁場であり、χ
appは反磁性コア405の見かけの磁化率であり、V
coreは反磁性コアの体積である。このマーカー405について、m
diamagnet=-1.2×10
-6Am
2である。
【0197】
1.5TのMRI磁場下での反磁性コア405および強磁性ワイヤ403a、403b、403cの磁気モーメントを比較すると、反磁性コア405の磁気モーメントは、強磁性ワイヤ403a、403b、403cの磁気モーメントの約57%である。
【0198】
図6(a)は、MRIスキャナのx-z平面にわたる3TのMRI磁場B
0からの磁束B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示す等高線
図507であり、これは、MRI磁場における
図5のマーカー401の存在に起因する。等高線は、マーカー401の近傍における一定の磁束密度偏差の線を表す。上述のように、B
crjtは、それより上ではボクセルがMRI画像の誤ったスライスにマッピングされる、|B-B
0|
yの大きさである。したがって、B
crjtにおける等高線は、MRI磁場における
図5のマーカー401についてx-z平面において生成され得るアーチファクトの等高線を表し、マーカー401の軸方向長さはy軸に沿って配向される。等高線509によって示される0.6μTのB
crjtの値は、理論的予測と実験データとの間の合理的に良好な一致を与えることが見出されているが、当業者は、B
crjtが特定のMRI装置の構成(例えば、スライス厚)に依存することを理解するであろう。したがって、
図6(a)は、アーチファクトサイズがB
crjtの異なる値に対してどのように変化するかを示すために、|B-B
0|
yの異なる値における他の等高線を示す。
【0199】
比較のために、
図6(b)は、反磁性コア405がない場合の強磁性ワイヤ403a、403b、403cの同じ構成に対して同じMRI磁場B
0において生成される磁束密度B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示す等高線
図511である。等高線513は、B
crjt=0.6μTを表す。
図6(a)のx-z平面におけるアーチファクトのサイズの低減における反磁性コアの効果は自明である。
【0200】
図7は、本開示の一実施形態による異なる埋込型マーカー601の概略図である。上述の
図5のマーカー401と同様に、マーカー601は、3つの強磁性ワイヤ603a、603b、603cを含むが、変形例では、より少ないまたはより多いワイヤが使用され得る。しかしながら、この実施形態では、強磁性ワイヤ603a、603b、603cは、反磁性コア605を通って軸方向に延在する。反磁性コア605は、
図5の反磁性コア405と実質的に同じサイズおよび形状であり、実質的に同じ特性を有する。したがって、コア605は、χ=-1.66×10
-4の値の体積磁化率を有するアイソスタティックプレスグラファイトの円筒である。円筒は、約1mmの直径および約8mmの長さを有する。強磁性ワイヤ603a、603b、603cは、
図5に示すワイヤ403a、403b、403cと実質的に同じ長さおよびゲージである。したがって、強磁性ワイヤ603a、603b、603cは、約72,000の値の初期体積磁化率を有する。各ワイヤ403a、403b、403cは、ワイヤの長さが反磁性コア405の長さに実質的に一致するように、約16μmの直径および約8mmの長さを有する。
【0201】
図8は、
図6(a)と同様の等高線
図707であり、MRIスキャナのx-z平面にわたる3TのMRI磁場B
0からの磁束B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示し、これは、MRI磁場中に
図7のマーカー601が存在することに起因し、マーカー601の軸方向長さはy軸に配向される。
図6(a)および6(b)におけるように、B
crjtに対応し得る0.6μTにおける等高線709は、したがって、MRI磁場におけるマーカー601のx-z平面において生成され得るアーチファクトの等高線を表す。
図6(a)のアーチファクトと
図8のアーチファクトを比較することによって、x-z平面におけるアーチファクトの全体的なサイズおよび形状は、強磁性ワイヤ403a、403b、403c;603a、603b、603cが反磁性コア405の外側に配置されるか内側に配置されるかに応じて大きく変化しないことが分かる。
【0202】
図9は、本開示の一実施形態による別の埋込型マーカー801の概略図である。マーカー801は、アイソスタティックプレスグラファイトまたは本明細書に開示される別の好適な反磁性材料の実質的に円筒形の反磁性コア805を備え、約1.15mmの直径および約8mmの長さを有する。反磁性コア805は、約-1.2×10
-4の磁化率を有する。マーカー801は、鉄-コバルト系合金のワイヤの単一の螺旋コイル803からなる強磁性要素をさらに備える。本明細書に開示されるように、他の強磁性材料が使用されてもよいことが理解されるであろう。ワイヤ803は約15μmの直径を有し、螺旋は約8mmの長さを有する(すなわち、コア805とほぼ同じ長さである)。螺旋は約1.2mmのピッチを有する。この実施形態の変形形態では、複数の強磁性ワイヤが、多重螺旋、例えば二重螺旋または三重螺旋の形態で反磁性コア805の周りに巻き付けられ得る。これにより、本明細書に開示されるように、同量のワイヤを使用することができるが、マーカーの感度を増加させるためにピッチはより長くなる。
【0203】
図10(a)は、
図6(a)および
図8のものと同様の等高線
図907であり、MRIスキャナのx-z平面にわたる3TのMRI磁場B
0からの磁束B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示し、これは、MRI磁場中に
図9のマーカー801が存在することに起因し、マーカー801の軸方向長さはy軸に配向される。
図6(a)、
図6(b)および
図8におけるように、B
crjtに対応し得る0.6μTにおける等高線909は、したがって、MRI磁場におけるマーカー801のx-z平面において生成され得るアーチファクトの等高線を表す。比較のために、
図10(b)は等高線
図911であり、反磁性コア805が存在しない場合に、同じ強磁性螺旋803について同じMRI磁場B
0において生成される磁束密度B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示す。等高線913は、B
crjt=0.6μTを表す。
図10(a)のx-z平面におけるアーチファクトのサイズの低減における反磁性コアの効果は自明である。
【0204】
図11は、本開示の一実施形態によるさらに別の埋込型マーカー1001の概略図である。マーカー1001は、アイソスタティックプレスグラファイトの実質的に円筒形の反磁性コア905を有し、約1.15mmの直径および約8mmの長さを有する。反磁性コア1005は、約-1.2×10
-4の磁化率を有する。反磁性コア1005は、3つの強磁性要素1004a、1004b、1004cを支持する円筒形の外面1006を有する。各強磁性要素1004a、1004b、1004cは、強磁性鉄-コバルト系材料のワイヤのコイルを含み、ワイヤは約15μmの直径を有する。
図11に示すように、コイルは、それぞれのワイヤ1004a、1004b、1004cが互いに接触しない三重螺旋1003を形成するように配置される。好適には、ワイヤは、外面1005上の所定の位置に接合されるか、または別様に保持されてもよい。三重螺旋の各コイルは、約1.80mmのピッチを有する。三重螺旋1003の各コイルは、約4.4ターンのワイヤを含み、三重螺旋1003の総ターン数は約14.2である。三重螺旋に使用される強磁性ワイヤの全長は約52mmである(別の例示的な実施形態では、52mm未満、例えば40mm未満であり得る)。
【0205】
約1.5TのMRI磁場では、3つの強磁性ワイヤ1004a、1004b、1004cの総磁気モーメントは、約2.1×10
-6A.m
2であると計算される。一方、反磁性コア1005の磁気モーメントは、約-1.2×10
-6A.m
2である。したがって、1.5TのMRI磁場における本実施形態のマーカー1001の正味磁気モーメントは、約8.7×10
-7A.m
2である。
図12(a)は、MRIスキャナのx-z平面にわたる3TのMRI磁場B
0からの磁束密度B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示す等高線
図1107であり、これは、MRI磁場中に
図11のマーカー1001が存在することに起因する。等高線は、マーカー1001の近傍における一定の磁束偏差の線を示す。上述のように、B
crjtは、|B-B
0|
yの大きさであり、それより上では、ボクセルがMRI画像の誤ったスライスにマッピングされる。したがって、B
crjtにおける等高線は、MRI磁場において
図11のマーカー1001のx-z平面において生成され得るアーチファクトの等高線を表し、マーカー1001の軸方向長さは、y軸に沿って配向される。等高線1109によって示される0.6μTのB
crjtの値は、理論的予測と実験データとの間の合理的に良好な一致を与えることが見出されているが、当業者は、B
crjtが特定のMRI装置の構成(例えば、スライス厚)に依存することを理解するであろう。したがって、
図12(a)は、B
crjtの異なる値についてアーチファクトサイズがどのように変化するかを示すために、|B-B
0|
yの異なる値における他の等高線を示す。
【0206】
比較のために、
図12(b)は、反磁性コア1005がない場合の強磁性ワイヤ1004a、1004b、1004cの同じ構成に対して同じMRI磁場B
0において生成される磁束密度B
yにおける偏差|B-B
0|
yを示す等高線
図1111である。等高線1113は、B
crjt=0.6μTを表す。
図12(a)のx-z平面におけるアーチファクトのサイズの低減における反磁性コアの効果は自明である。
【0207】
三重螺旋1003を使用することによって、所与の軸方向長さ内で単一の螺旋と同じ量のワイヤを使用することができるが、螺旋のコイルはマーカーの軸方向長さに沿った方向の成分がより大きいので、マーカーの軸方向感度を増加させるためにピッチはより長くなる。約1.80mmのピッチは、十分な横方向感知性能を提供する一方で、より長いピッチに起因する良好な軸方向感知性能を有することが見出されている。この実施形態では、マーカーの軸方向の感知距離は約34mmであり、横方向の感知距離は約34mmである。
【0208】
添付図面の
図13は、異方性粒子構造(例えば押出グラファイトから形成される)を有するグラファイトロッド1600の典型的な粒子構造1500を示し、粒子は長手方向に整列している。グラファイトの磁化率は、対粒度方向において高く、粒度方向(すなわち長手方向)において低い。
【0209】
図面の
図14は、等方性粒子構造(例えば、アイソスタティックプレスグラファイトから形成される)を有するグラファイトロッド1800の典型的な粒子構造1700を示し、粒子はランダムに配向されている(整列していない)。グラファイトの磁化率は、あらゆる方向において中程度から高くなり得る。
【0210】
図15は、本開示の一実施形態による、マーカーを製造する方法1100を示すフローチャートである。第1の工程1101において、方法は、少なくとも1つの強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を提供する工程を含み、反磁性要素は、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含む。第2の工程1103において、方法は、1つまたは複数の強磁性要素および少なくとも1つの反磁性要素を互いに並置し、それらが同じ場所に配置されて印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように構成および配置する工程を含む。少なくとも1つの反磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度は、少なくとも1つの強磁性要素によって生成される磁気モーメントの強度に対して、約0.5mT未満のセンシングフィールドにおいて比較的非常に低く、それによって、少なくとも1つの強磁性要素によって生成される磁気モーメントがプローブによって検出されることが可能になり、また、1.5T以上のMRI磁場では比較的高く、それによって、少なくとも1つの強磁性要素の磁気モーメントを相殺することによってMRI画像上でマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズが最小限に抑えられる。
【0211】
次いで、必要とされる形状に構成された強磁性材料は、円筒形ハウジング内に封入され得る。円筒形ハウジングは、マーカーの配置を可能にするために注入可能であることが好ましい。したがって、好適には、ハウジングは、上記で開示したように、細いゲージの針、例えば18G~12Gを通して展開可能であるような最大直径を有することができる。マーカーは、他の材料内に包装されてもよく、またはコーティングをマーカーに適用し、マーカーの生体適合性および堅牢性を確保してもよい。マーカーは、例えば、ニチノール、チタン、ステンレス鋼、または他の生体適合性合金から作製された管内に封入されてもよく、材料は、好ましくは非磁性であり、比較的低い導電率を有する。低い導電率は、106シーメンス未満の導電率を含んでもよい。適切なコーティング材料としては、ポリマーコーティング、例えばInvar(登録商標)、FEP、Parylene(登録商標)、PTFE、ETFE、PE、PET、PVCまたはシリコーン、あるいはエポキシ系封入剤が挙げられる。
【0212】
当業者は、上述の実施形態の特徴が、本開示の範囲内にある他の実施形態において組み合わされ得ることを理解するであろう。
【0213】
前述の説明において、既知の、明らかな、または予測可能な等価物を有する整数または要素が言及されている場合、そのような等価物は、個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本開示の真の範囲を決定するために請求項が参照されるべきであり、請求項は、任意のそのような均等物を包含するように解釈されるべきである。また、有利、便宜などとして説明される本開示の整数または特徴は、任意選択であり、独立請求項の範囲を限定しないことも、読者によって理解されるであろう。さらに、そのような任意選択の整数または特徴は、本開示のいくつかの実施形態で有利であり得るが、他の実施形態では望ましくなく、したがって存在しない可能性があることを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの強磁性材料から形成される1つまたは複数の強磁性要素と、少なくとも1つの反磁性材料から形成される少なくとも1つの反磁性要素とを備える、外科用ガイドにおいて使用するための埋込型マーカーであって、
前記少なくとも1つの反磁性材料は、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含み、前記1つまたは複数の強磁性要素は、前記少なくとも1つの反磁性要素に並置される
ことを特徴とする、埋込型マーカー。
【請求項2】
前記グラファイトは、-0.16×10
-4の体積磁化率を有することを特徴とする、請求項1に記載の埋込型マーカー。
【請求項3】
前記グラファイトは、前記マーカーにおいて-0.9×10
-4超の見かけの体積磁化率を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の埋込型マーカー。
【請求項4】
前記グラファイトは、アイソスタティックプレスグラファイトであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項5】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、前記マーカーにおいて少なくとも約-1.2×10
-4の見かけの体積磁化率を有することを特徴とする、請求項
4に記載の埋込型マーカー。
【請求項6】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、300ppm未満の不純物を含有することを特徴とする、請求項5に記載の埋込型マーカー。
【請求項7】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、99.9%超の炭素を含有することを特徴とする、請求項5または6に記載の埋込型マーカー。
【請求項8】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、少なくとも約1.75g/cm
3の密度を有することを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項9】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、約1.85g/cm
3の密度を有することを特徴とする、請求項8に記載の埋込型マーカー。
【請求項10】
前記グラファイトは熱処理グラファイトであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項11】
前記少なくとも1つの反磁性要素は、前記1つまたは複数の強磁性要素の体積よりも約100~10,000倍大きい総体積を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項12】
前記1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも50の長さ対直
径比を有する1つまたは複数のワイヤまたはストリップの強磁性材料を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項13】
強磁性材料から形成された複数のワイヤまたはストリップを備える埋込型マーカーであって、前記ワイヤは、少なくとも1つの反磁性コアの周囲に配置されるか、または少なくとも1つの反磁性コアを通って軸方向に延在し、
前記反磁性コアは、少なくとも約-0.16×10
-4の体積磁化率を有する、少なくとも1つのアイソスタティックプレスグラファイトの本体を含む
ことを特徴とする、埋込型マーカー。
【請求項14】
前記アイソスタティックプレスグラファイトは、少なくとも約-1.2×10
-4の見かけの体積磁化率を有することを特徴とする、請求項13に記載の埋込型マーカー。
【請求項15】
前記アイソスタティックプレスグラファイトの本体は、実質的に円筒形であることを特徴とする、請求項14に記載の埋込型マーカー。
【請求項16】
前記反磁性コアの周囲に配置された強磁性材料から形成されたワイヤの1つまたは複数の螺旋コイルを含むことを特徴とする、請求項14または15に記載の埋込型マーカー。
【請求項17】
前記反磁性コアの周囲に配置された強磁性材料から形成されたワイヤの単一の螺旋コイルを含むことを特徴とする、請求項16に記載の埋込型マーカー。
【請求項18】
前記反磁性コアの周囲に三重螺旋として配置される、前記強磁性材料から形成されたワイヤの3つのコイルを含むことを特徴とする、請求項16に記載の埋込型マーカー。
【請求項19】
前記反磁性コアは、約1mmの直径および約8mmの長さを有することを特徴とする、請求項14~18のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項20】
前記ワイヤはそれぞれ、約15μm以下の直径を有することを特徴とする、請求項14~19のいずれか一項に記載の埋込型マーカー。
【請求項21】
外科処置において使用するための埋込型磁気マーカーを製造する方法であって、
少なくとも1つの強磁性材料から1つまたは複数の強磁性要素を形成する工程;
実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含む、少なくとも1つの反磁性要素を形成する工程;および
前記1つまたは複数の強磁性要素が前記少なくとも1つの反磁性要素に並置されるように、その後、前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素を組み立てる工程
を含み、
前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素は、印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように構成および配置される
ことを特徴とする、方法。
【請求項22】
前記グラファイトは、アイソスタティックプレスグラファイトであり、前記方法は、アイソスタティックプレスプロセスを実行して前記アイソスタティックプレスグラファイトを提供する工程を含むことを特徴とする、請求項21に記載の埋込型磁気マーカーの製造方法。
【請求項23】
前記グラファイトを約2,200℃超の温度で熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項21または22に記載の埋込型磁気マーカーの製造方法。
【請求項24】
MRI磁場におけるマーカーの磁気モーメントを低減し、それによってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小限に抑えるための、1つまたは複数の強磁性要素を含む埋込型マーカーにおける実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトの使用。
【請求項25】
埋込型マーカーの位置を特定するための検出システムであって、
請求項1~20のいずれか一項に記載の埋込型マーカー;
交番磁場を用いて前記埋込型マーカーを励起するように配置された少なくとも1つの駆動コイル、および、前記励起された埋込型マーカーから受信された信号を検出するように配置された少なくとも1つの感知コイル;
前記少なくとも1つの駆動コイルを介して交番磁場を駆動するように配置された磁場発生器;および
前記感知コイルから信号を受信し、受信された信号内の駆動周波数の1つまたは複数の高調波を検出するように配置された少なくとも1つの検出器
を含むことを特徴とする、検出システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0213
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0213】
前述の説明において、既知の、明らかな、または予測可能な等価物を有する整数または要素が言及されている場合、そのような等価物は、個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本開示の真の範囲を決定するために請求項が参照されるべきであり、請求項は、任意のそのような均等物を包含するように解釈されるべきである。また、有利、便宜などとして説明される本開示の整数または特徴は、任意選択であり、独立請求項の範囲を限定しないことも、読者によって理解されるであろう。さらに、そのような任意選択の整数または特徴は、本開示のいくつかの実施形態で有利であり得るが、他の実施形態では望ましくなく、したがって存在しない可能性があることを理解されたい。
他の実施形態
1. 少なくとも1つの強磁性材料から形成される1つまたは複数の強磁性要素と、少なくとも1つの反磁性材料から形成される少なくとも1つの反磁性要素とを備える、外科用ガイドにおいて使用するための埋込型マーカーであって、
前記少なくとも1つの反磁性材料は、実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含み、前記1つまたは複数の強磁性要素は、前記少なくとも1つの反磁性要素に並置される
ことを特徴とする、埋込型マーカー。
2. 前記グラファイトは、-0.16×10
-4
の体積磁化率を有することを特徴とする、実施形態1に記載の埋込型マーカー。
3. 前記グラファイトは、前記マーカーにおいて-0.9×10
-4
超の見かけの体積磁化率を有することを特徴とする、実施形態1または2に記載の埋込型マーカー。
4. 前記グラファイトは、アイソスタティックプレスグラファイトであることを特徴とする、実施形態1~3のいずれかに記載の埋込型マーカー。
5. 前記アイソスタティックプレスグラファイトは、前記マーカーにおいて少なくとも約-1.2×10
-4
の見かけの体積磁化率を有することを特徴とする、実施形態3に記載の埋込型マーカー。
6. 前記アイソスタティックプレスグラファイトは、300ppm未満の不純物を含有することを特徴とする、実施形態5に記載の埋込型マーカー。
7. 前記アイソスタティックプレスグラファイトは、99.9%超の炭素を含有することを特徴とする、実施形態5または6に記載の埋込型マーカー。
8. 前記アイソスタティックプレスグラファイトは、少なくとも約1.75g/cm
3
の密度を有することを特徴とする、実施形態4~7のいずれかに記載の埋込型マーカー。
9. 前記アイソスタティックプレスグラファイトは、約1.85g/cm
3
の密度を有することを特徴とする、実施形態8に記載の埋込型マーカー。
10. 前記グラファイトは熱処理グラファイトであることを特徴とする、実施形態1~9のいずれかに記載の埋込型マーカー。
11. 前記少なくとも1つの反磁性要素は、前記1つまたは複数の強磁性要素の体積よりも約100~10,000倍大きい総体積を有することを特徴とする、実施形態1~10のいずれかに記載の埋込型マーカー。
12. 前記1つまたは複数の強磁性要素は、少なくとも50の長さ対直径(または長さ対断面積の平方根)比を有する1つまたは複数のワイヤまたはストリップの強磁性材料を含むことを特徴とする、実施形態1~11のいずれかに記載の埋込型マーカー。
13. 強磁性材料から形成された複数のワイヤまたはストリップを備える埋込型マーカーであって、前記ワイヤは、少なくとも1つの反磁性コアの周囲に配置されるか、または少なくとも1つの反磁性コアを通って軸方向に延在し、
前記反磁性コアは、少なくとも約-0.16×10
-4
の体積磁化率を有する、少なくとも1つのアイソスタティックプレスグラファイトの本体を含む
ことを特徴とする、埋込型マーカー。
14. 前記アイソスタティックプレスグラファイトは、少なくとも約-1.2×10
-4
の見かけの体積磁化率を有することを特徴とする、実施形態13に記載の埋込型マーカー。
15. 前記アイソスタティックプレスグラファイトの本体は、実質的に円筒形であることを特徴とする、実施形態14に記載の埋込型マーカー。
16. 前記反磁性コアの周囲に配置された強磁性材料から形成されたワイヤの1つまたは複数の螺旋コイルを含むことを特徴とする、実施形態14または15に記載の埋込型マーカー。
17. 前記反磁性コアの周囲に配置された強磁性材料から形成されたワイヤの単一の螺旋コイルを含むことを特徴とする、実施形態16に記載の埋込型マーカー。
18. 前記反磁性コアの周囲に三重螺旋として配置される、前記強磁性材料から形成されたワイヤの3つのコイルを含むことを特徴とする、実施形態16に記載の埋込型マーカー。
19. 前記反磁性コアは、約1mmの直径および約8mmの長さを有することを特徴とする、実施形態14~18のいずれかに記載の埋込型マーカー。
20. 前記ワイヤはそれぞれ、約15μm以下の直径を有することを特徴とする、実施形態14~19のいずれかに記載の埋込型マーカー。
21. 外科処置において使用するための埋込型磁気マーカーを製造する方法であって、
少なくとも1つの強磁性材料から1つまたは複数の強磁性要素を形成する工程;
実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトを含む、少なくとも1つの反磁性要素を形成する工程;および
前記1つまたは複数の強磁性要素が前記少なくとも1つの反磁性要素に並置されるように、その後、前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素を組み立てる工程
を含み、
前記1つまたは複数の強磁性要素および前記少なくとも1つの反磁性要素は、印加磁場の存在下で相互に対向する磁気モーメントを生成するように構成および配置される
ことを特徴とする、方法。
22. 前記グラファイトは、アイソスタティックプレスグラファイトであり、前記方法は、アイソスタティックプレスプロセスを実行して前記アイソスタティックプレスグラファイトを提供する工程を含むことを特徴とする、実施形態21に記載の埋込型磁気マーカーの製造方法。
23. 前記グラファイトを約2,200℃超の温度で熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする、実施形態21または22に記載の埋込型磁気マーカーの製造方法。
24. MRI磁場におけるマーカーの磁気モーメントを低減し、それによってマーカーによって生成されるアーチファクトのサイズを最小限に抑えるための、1つまたは複数の強磁性要素を含む埋込型マーカーにおける実質的に等方性の粒子構造を有するグラファイトの使用。
25. 埋込型マーカーの位置を特定するための検出システムであって、
実施形態1~20のいずれかに記載の埋込型マーカー;
交番磁場を用いて前記埋込型マーカーを励起するように配置された少なくとも1つの駆動コイル、および、前記励起された埋込型マーカーから受信された信号を検出するように配置された少なくとも1つの感知コイル;
前記少なくとも1つの駆動コイルを介して交番磁場を駆動するように配置された磁場発生器;および
前記感知コイルから信号を受信し、受信された信号内の駆動周波数の1つまたは複数の高調波を検出するように配置された少なくとも1つの検出器
を含むことを特徴とする、検出システム。
【国際調査報告】