(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】アニリンから2-メチルピリジン及びジフェニルアミンを選択的かつ連続的に生産する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/60 20060101AFI20241031BHJP
C07C 211/55 20060101ALI20241031BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20241031BHJP
C07D 213/16 20060101ALI20241031BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C07C209/60
C07C211/55
B01J29/76 Z
C07D213/16
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524605
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 CN2022126220
(87)【国際公開番号】W WO2023071891
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111278790.6
(32)【優先日】2021-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522173712
【氏名又は名称】中石化(大連)石油化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李浩萌
(72)【発明者】
【氏名】趙響宇
(72)【発明者】
【氏名】王麗博
(72)【発明者】
【氏名】祁文博
(72)【発明者】
【氏名】王振宇
(72)【発明者】
【氏名】李瀾鵬
(72)【発明者】
【氏名】艾撫賓
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA07B
4G169BB02B
4G169BC02B
4G169BC03B
4G169BC09B
4G169BC10B
4G169BC59B
4G169BC67B
4G169BC68B
4G169CB23
4G169CB66
4G169FB45
4G169ZA19B
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC52
4H006BA14
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA71
4H006BC10
4H006BC11
4H039CA42
4H039CA71
4H039CH40
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、ファインケミカル分野に属し、具体的には、アニリンからの2-メチルピリジンの合成方法、及びアニリンから2-メチルピリジン及びジフェニルアミンを選択的かつ連続的に生産する方法に関する。水素含有雰囲気下、温度100~400℃の条件でアニリンと触媒とを接触反応させるステップを含む方法において、前記触媒は、金属成分を担持したβゼオライトであり、前記金属成分は、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を含み、2-メチルピリジンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は100~240℃に制御され、ジフェニルアミンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は260~400℃に制御されることを特徴とする。本発明の方法は、温度を制御することによってアニリンと2-メチルピリジンの製品を簡単かつ効率的に切り替えることができ、反応条件が温和で、2-メチルピリジンの収率が高く、反応選択性が良好であり、工業化が期待できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有雰囲気下、温度100~400℃の条件でアニリンと触媒とを接触反応させるステップを含むアニリンから2-メチルピリジン及びジフェニルアミンを選択的かつ連続的に生産する方法であって、
前記触媒は、金属成分を担持したβゼオライトであり、前記金属成分は、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を含み、2-メチルピリジンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は100~240℃に制御され、ジフェニルアミンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は260~400℃に制御される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記触媒の全量を基準にして、金属元素換算で、前記活性金属成分の含有量が、0.5~5wt%、好ましくは0.5~3wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属成分は、Li、Na、K、Mg、Caから選択される少なくとも1種の助剤金属成分をさらに含み、前記触媒の全量を基準にして、酸化状態換算で、前記助剤金属成分の含有量が、0~6.5wt%、好ましくは0.5~5.5wt%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該触媒は、アルミナバインダをさらに含有し、前記触媒の全量を基準にして、前記触媒は、βゼオライト50~85wt%と、金属元素換算で、活性金属成分0.5~5wt%と、酸化状態換算で、助剤金属成分0~6.5wt%と、アルミナバインダ10~45wt%とを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒の全量を基準にして、前記触媒は、βゼオライト60~85wt%と、金属元素換算で、活性金属成分0.5~3wt%と、酸化状態換算で、助剤金属成分0.5~5.5wt%と、アルミナバインダ15~34.5wt%と、を含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記接触反応の圧力は1.5~4MPaであり、前記接触反応は、水素雰囲気下で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記接触反応は、アンモニアガスを導入せずに行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
2-メチルピリジンを主とする生成物を得る場合、前記接触反応は、温度160~240℃、圧力1.5~3MPaであり、好ましくは前記アニリンの液重量空間速度が0.5~3h
-1であり、又は、
ジフェニルアミンを主とする生成物を得る場合、前記接触反応は、温度280~360℃、圧力1.5~3MPaであり、好ましくは前記アニリンの液重量空間速度が0.3~1.5h
-1である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記原料アニリンは、前記触媒を含有する固定床反応器によって反応を行い、
好ましくは、前記原料アニリンは、下方供給方式で前記固定床反応器に送られて、触媒層を通過する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アニリンからの2-メチルピリジンの合成方法であって、
水素含有雰囲気下、異性化転位反応の条件下で、アニリンと触媒とを接触反応させるステップを含み、前記触媒は、金属成分を担持したβゼオライトであり、前記金属成分は、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を含み、前記接触反応の温度は、100℃~240℃である、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記触媒の全量を基準にして、金属元素換算で、前記活性金属の含有量は、0.5~5wt%好ましくは0.5~3wt%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属成分は、Li、Na、K、Mg、Caから選択される少なくとも1種の助剤金属成分をさらに含み、前記触媒の全量を基準にして、酸化状態換算で、前記助剤金属成分含有量は0~6.5wt%である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
該触媒は、アルミナバインダをさらに含有し、前記触媒の全量を基準にして、前記触媒は、βゼオライト50~85wt%と、金属元素換算で、活性金属成分0.5~5wt%と、酸化状態換算で、助剤金属0~6.5wt%と、アルミナバインダ10~45wt%と、を含有する、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒の全量を基準にして、前記触媒は、βゼオライト60~85wt%と、還元状態換算で、活性金属成分0.5~3wt%と、酸化状態換算で、助剤金属成分0.5~5.5wt%と、アルミナバインダ15~34.5wt%と、を含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記接触反応は、アンモニアガスを導入せずに行われる、請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記接触反応は、間欠的に行われ、前記接触反応は、温度130~180℃、圧力2~4MPa、反応時間4h~8hであり、好ましくは前記触媒の使用量が原料アニリンの使用量の1~4wt%を占め、又は、
前記接触反応は、連続的に行われ、接触反応は、温度160~240℃、圧力1.5~3MPaであり、好ましくは前記アニリンの液重量空間速度が0.5~3h
-1であり、
好ましくは、前記原料アニリンは、前記触媒を含有する固定床反応器によって反応を行い、好ましくは前記原料アニリンは、下方供給方式で前記固定床反応器に入って、触媒層を通過する、請求項10~15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2021年10月31日に提出された中国特許出願第202111278790.6号の利益を主張しており、当該出願の内容は、引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、ファインケミカル分野に属し、具体的には、アニリンからの2-メチルピリジンの合成方法、及びアニリンから2-メチルピリジン及びジフェニルアミンを選択的かつ連続的に生産する方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
2-メチルピリジンは、分子式がC6H7Nであり、α-メチルピリジン及びα-ピコリンとしても知られ、ピリジン塩基の1種であり、室温で強い不快臭を有する無色の油状の液体で、凝固点が-38.9℃、沸点が129.5℃であり、毒性が高く、アセトン、エタノール、エーテルや水などに可溶である。2-メチルピリジンは、重要な化学中間体及びファインケミカルの重要な原料であり、長時間作用型スルホンアミド、農薬中間体、飼料中間体の生産に使用できるほか、特殊樹脂ビニルピリジン及び2-ビニルピリジン中間体の合成にも使用できる。2-メチルピリジンの中国国内の消費量は、毎年約25%増加しているため、2-メチルピリジンの中国国内市場の潜在力は非常に巨大である。
【0004】
工業分野におけるピリジン塩基の生産には、主にコールタール分離法と化学合成法が含まれる。コールタール分離法は、汚染が深刻で、製品の種類が少なく、高コストで、品質が低く、エネルギー消費が高いなどの欠点があるだけでなく、製品の生産量が低く、改善が困難である。化学合成法は、通常、アルデヒド、ケトン、アンモニアを原料として反応させてピリジン塩基を合成する、アンモニウム・アルデヒド縮合法が用いられる。しかしながら、アンモニウム・アルデヒド縮合法の生成物には、3-メチルピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジンなどが含まれ、その後の生成物の分離が困難であるなどの問題がある。
【0005】
CN105384683Aは、アニリンからのジフェニルアミンの合成の副生成物である2-メチルピリジン及び4-メチルピリジンを分離する方法を開示している。そのステップは以下の通りである。アニリンを原料として、分子篩触媒を充填した固定床反応器に流し、反応器の温度と圧力を制御し、縮合反応によりジフェニルアミン、アンモニア、及び2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、水、アクリジン、4-アミノビフェニルなどの副生成物に変換し、これらの混合物反応液を多段で精留して、低沸点混合留分を得、この低沸点混合留分を脱水し、脱水後の混合物を乾燥し、乾燥後の混合液を精留し、沸点の違いによって、2-メチルピリジンと4-メチルピリジンを得る。この方法は、実質的には、アニリンからのジフェニルアミンの従来の合成における副生成物の2-メチルピリジンと4-メチルピリジンの分離方法である。したがって、この方法では、反応過程で2-メチルピリジンが副生するため、収率が低く、量産が不可能である。
【0006】
CA1190928Aには、アニリン出発原料を、窒素やヘリウムなどの不活性ガスの存在下、200~650℃で酸性ゼオライト触媒に通して、α-ピコリン含有生成物を製造する、アニリンからα-ピコリンの生産方法が開示されている。反応圧力は常圧から25000kPa、通常は200kPaであり、アニリンの空間速度は0.2~5WHSVが好ましい。前記酸性ゼオライトは、好ましくは水素型であり、βゼオライトを含み、シリカ/アルミナ比が10~100であり、150に達することもある。このうち、実施例1では、純粋なHZSM-5を用いて、510℃、圧力2860kPa、アンモニアがアニリンの1.5モル%、窒素空間速度が100GHSVの条件で、アニリン転化率は13.1%、α-ピコリンの選択性は51.6であった。
【0007】
「The zeolite-catalysed isomerization of aniline to a-picoline[J]. Applied catalysis A: General 172(1998)285-294」は、アニリン転位反応によるα-ピコリンの製造方法が開示される。この方法は、触媒として分子篩、好ましくはGa-MFI分子篩(ZSM-5よりも優れている)を使用し、673K、全圧75bar、アンモニア分圧5~60bar、好ましくは20~25barの条件下で実施される。その中で、α-ピコリンの選択性は85%以上に達するが、転化率はわずか3.7%である。
【0008】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明が解決しようとする技術的課題は、アニリン転位反応によって2-メチルピリジンを製造する方法では、アニリンの転化率が低かったり、2-メチルピリジンの選択性が低かったりするという従来技術の欠点を解決し、アニリンからジフェニルアミンを生産する従来の装置を基にして、アニリン及び2-メチルピリジンを選択的に生産する方法を提供することである。本発明の方法は、温度を制御することによってアニリンと2-メチルピリジンの製品を簡単かつ効率的に切り替えることができ、反応条件が温和で、2-メチルピリジンの収率が高く、反応選択性が良好であり、工業化が期待できる。
【0009】
本発明の発明者らは、2-メチルピリジンを生成するアニリンの異性化転位反応と、ジフェニルアミンを製造するアニリンの縮合反応が、触媒と反応温度という2つの要因によって二重に影響されることを発見した。W、Mo、Ni、及びCoのうちの少なくとも1種の活性金属成分を担持した本発明のβゼオライト触媒を用いると、触媒活性中心の変化により、アニリンの反応経路を2-メチルピリジンとジフェニルアミンの間で切り替えることができる。また、反応温度が低いため、2-メチルピリジンの合成により有利である。この知見に基づいて、本発明は、2-メチルピリジンの生産方法、及びアニリン及び2-メチルピリジンを選択的かつ連続的に生産する方法を提案する。
【0010】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の第1態様では、水素含有雰囲気下、温度100~400℃の条件でアニリンと触媒とを接触反応させるステップを含むアニリンから2-メチルピリジン及びジフェニルアミンを選択的かつ連続的に生産する方法であって、前記触媒は、金属成分を担持したβゼオライトであり、前記金属成分は、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を含み、2-メチルピリジンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は100℃~240℃に制御され、ジフェニルアミンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は260℃~400℃に制御される、ことを特徴とする方法が提供される。
【0011】
本発明の第2態様では、水素含有雰囲気下、異性化転位反応の条件下で、アニリンと触媒とを接触反応させるステップを含み、前記触媒は、金属成分を担持したβゼオライトであり、前記金属成分は、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を含み、前記接触反応の温度は、100℃~240℃である、ことを特徴とするアニリンからの2-メチルピリジンの合成方法が提供される。
【0012】
〔発明の効果〕
本発明の方法によって2-メチルピリジンを生産すると、アニリンの転化率が高く、しかも、目的生成物の2-メチルピリジンの選択性が高い。その理由としては、水素含有雰囲気下、W、Mo、Ni、及びCoのうちの少なくとも1種の活性金属を含有するβゼオライト触媒を選択したことにより、反応機構が大きく変化し、熱力学的な要因が2-メチルピリジンの選択性に影響する要因の1つとなり、高温では主な反応は2つのアニリン分子が縮合して1つのジフェニルアミン分子を形成することであるが、温度を下げると、アニリン分子の異性化転位により2-メチルピリジンを生成することが主な反応になることが考えられる。したがって、本発明の方法は、アニリンを原料として2-メチルピリジンを生産するという目的を達成でき、既存のジフェニルアミンプロセス設備でジフェニルアミンと2-メチルピリジンを選択的に生産することができる。
【0013】
従来技術では、通常、ピリジン塩基化合物の合成に大量のアンモニアガスが導入される。アンモニアガスが存在すると触媒の酸性部位が占有され、触媒活性が低下してしまう。また、高温と高圧により、この方法の産業上の応用も制限される。一方、本発明による方法は、大量のアンモニアガスの導入を必要とせず、少量の水素ガスの導入のみでよく、反応条件が温和であり、反応原料はアニリンのみであり、その後の蒸留操作により高純度の2-メチルピリジンと高純度のジフェニルアミンが得られる。
【0014】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕本発明によるアニリンから2-メチルピリジン及びジフェニルアミンを選択的かつ連続的に生産する方法の製品分布の温度に伴う変化の関係図である。
【0015】
〔発明を実施するための形態〕
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、この正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々のポイント値の間、及び個々のポイント値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0016】
本発明によるアニリンからの2-メチルピリジンの合成方法は、水素含有雰囲気下、異性化転位反応の条件下で、アニリンと触媒とを接触反応させるステップを含み、前記触媒は、金属成分を担持したβゼオライトであり、前記金属成分は、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を含み、前記接触反応の温度は、100℃~240℃である。
【0017】
本発明では、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を担持したβゼオライトを用い、水素含有雰囲気下で反応温度をアニリンからジフェニルアミンの通常の合成反応に必要な温度よりも低く制御することによって、より高いアニリン転化率が得られ、2-メチルピリジンの選択性が予想外に向上した。また、同一の装置、同一の触媒下で反応温度を調整することにより、ジフェニルアミンと2-メチルピリジンを選択的に生産することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、触媒の全量を基準にして、金属元素換算で、前記活性金属成分の含有量は、0.5~5wt%、好ましくは0.5~3wt%である。
【0019】
好ましくは、前記金属成分は、Li、Na、K、Mg、Caから選択される少なくとも1種の助剤金属成分をさらに含み、触媒の全量を基準にして、酸化状態換算で、前記助剤金属成分の含有量は、0~6.5wt%好ましくは0.5~5.5wt%である。
【0020】
助剤金属成分を添加することにより、触媒表面の酸分布と触媒の細孔構造が改善され、アニリン転化率と目的生成物の選択性がさらに向上する。
【0021】
本発明者らは、そのメカニズムはまだ明らかではないが、水素含有雰囲気下、βゼオライトを用いて上記金属成分を担持することによってのみ、温度を調整することによりアニリン又は2-メチルピリジンを主生成物とするような上記効果が得られ、ZSM-5など他の分子篩では上記の効果は得られないことを見出した。
【0022】
好ましくは、前記βゼオライトのシリカ/アルミナモル比は、25~300、好ましくは60~220である。
【0023】
好ましくは、前記触媒は、比表面積が400~700m2/g、好ましくは450~650m2/gであり、細孔容積が0.25~0.6mL/g、好ましくは0.4~0.55mL/gであり、平均孔径が1.5~5nm、好ましくは2~4nmであり、粒子径が、好ましくは9nm未満である。
【0024】
該触媒は、触媒の成形体を得るために、アルミナバインダを含有してもよい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、触媒の全量を基準にして、前記触媒は、ゼオライト50~85wt%と、金属元素換算で、活性金属成分0.5~5wt%と、酸化状態換算で、助剤金属成分0~6.5wt%と、アルミナバインダ10~45wt%と、を含有してもよい。好ましくは、ゼオライト60~85wt%と、金属元素換算で、活性金属成分0.5~3wt%と、酸化状態換算で、助剤金属成分0.5~5.5wt%と、アルミナバインダ15~34.5wt%と、を含有する。
【0026】
前記触媒は、短冊状又は球状の粒子であることが好ましく、短冊状の場合、その断面形状は円柱状、クローバー状、四葉のクローバー状などであってもよく、短冊状粒子の断面幅は0.5~3.0mm、好ましくは1.0~2.0mmであり、球状の場合は、粒径は、0.5~5.0mm、好ましくは1.0~3.0mmである。
【0027】
上記の触媒は、当業者に知られている方法を使用して製造することができ、又は商業的に購入することができる。例えば、本発明の触媒は以下の方法により製造することができる。(1)Hβゼオライトを助剤金属成分の硝酸塩水溶液と等体積含浸により接触させる。(2)ステップ(1)で得られた混合物を濾過し洗浄し、乾燥させる。(3)ステップ(2)で得られた改質Hβゼオライト、アルミナバインダ、及び加工助剤(例えば、押出助剤、ペプタイザ)を十分に混練した後、成形し、乾燥、焙焼する。(4)ステップ(3)で得られた担体と活性金属成分の硝酸水溶液にNaBH4を加えて還流還元し、ろ過、真空乾燥して触媒を製造する。
【0028】
ステップ(1)における接触温度は80~100℃であり、時間は、3~6hであり、ステップ(2)は、60~120℃で6~12h乾燥する。ステップ(3)は、60~120℃で6~12h乾燥し、450~550℃で4~16h焙焼する。ステップ(4)は、80~100℃で、6~8h還流還元し、その後、80~100℃で、6~12h真空乾燥する。
【0029】
本発明では、上記の触媒を使用することによって、従来のアンモニアガス雰囲気ではなく、水素含有雰囲気下、低温で高い2-メチルピリジン収率が得られる。したがって、好ましくは、前記接触反応は、アンモニアガスを導入せずに行われる。前記水素含有雰囲気とは、水素濃度が10~100体積%であることを指す。
【0030】
さらに、前記接触反応の温度は、100~240℃、具体的には、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、199℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、及びこれらの点値ののうちのいずれか2つからなる範囲内の任意の値であってもよい。好ましい反応温度は、130~180℃であり、具体的には、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、及びこれらの点値ののうちのいずれか2つからなる範囲内の任意の値であってもよい。
【0031】
本発明の方法は、連続式又は間欠式で実施することができるが、連続的に実施することが好ましい。間欠操作とは、通常の釜式操作を指し、反応釜に原料アニリンと触媒を加え、適切な条件下で反応を進めて目的生成物を得る操作である。連続操作とは、通常、触媒を含む固定床反応器を通して原料アニリンを反応させる操作である。
【0032】
本発明の発明者らは、連続式及び間欠式の最適な反応温度及び圧力が僅か異なる。間欠式を採用する場合、接触反応の温度は、好ましくは130~180℃であり、圧力は、好ましくは2~4MPaであり、反応時間は、好ましくは4~8hである。好ましくは、触媒の使用量は、好ましくは、原料のアニリンの使用量の1~4wt%を占める。連続式を採用する場合、接触反応の温度は、好ましくは、160~240℃であり、圧力は、好ましくは1.5~3MPaであり、アニリンの液重量空間速度は、好ましくは0.5~3h-1、さらに好ましくは1~1.5h-1である。
【0033】
連続式操作は、好ましくは、下方供給方式で原料アニリンを、触媒を含有する固定床反応器の触媒層に通して反応させる。
【0034】
本発明の発明者らは、また、2-メチルピリジンを生成するアニリンの異性化転位反応と、ジフェニルアミンを製造するアニリンの縮合反応が、触媒と反応温度という2つの因子によって二重に影響されることも発見した。本発明において金属担持βゼオライト触媒を使用することにより、触媒活性中心の変化により、アニリンの反応経路を2-メチルピリジンとジフェニルアミンとの間で切り替えることができる。また、反応温度が低いと、2-メチルピリジンの合成により有利であり、温度が高いと、ジフェニルアミンの生成に有利である。
【0035】
よって、本発明はまた、アニリンから2-メチルピリジン及びジフェニルアミンを選択的かつ連続的に生産する方法を提供し、該方法は、水素含有雰囲気下、アニリンと触媒とを温度100~400℃の条件で接触反応させるステップを含み、前記触媒は、金属成分を担持したゼオライトであり、前記金属成分は、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を含み、2-メチルピリジンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は100~240℃に制御され、ジフェニルアミンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は260~400℃に制御される、ことを特徴とする。
【0036】
好ましくは、2-メチルピリジンを主とする生成物を得る場合、前記接触反応は、温度160~240℃、圧力1.5~3MPaであり、好ましくは前記アニリンの液重量空間速度が0.5~3h-1であり、ジフェニルアミンを主とする生成物を得る場合、前記接触反応は、温度280~360℃、圧力1.5~3MPaであり、好ましくは、前記アニリンの液重量空間速度が0.3~1.5h-1である。
【0037】
本発明では、2-メチルピリジンを主とする生成物とは、2-メチルピリジンの選択性が40%以上であることを意味し、ジフェニルアミンを主とする生成物とは、ジフェニルアミンの選択性が40%以上であることを意味する。
【0038】
触媒は、上記で説明されているが、ここでは詳しく説明しない。
【0039】
本発明のアニリンからジフェニルアミンを合成する条件は、接触反応の温度が、好ましくは280~360℃、好ましくは圧力が1.5~3MPaであり、アニリンの液重量空間速度が、0.3~1.5h-1、好ましくは0.5~1h-1であることを含む。
【0040】
実施例及び比較例では、アニリンの転化率、2-メチルピリジンの選択性と収率、ジフェニルアミンの選択性と収率の計算方法は、以下の通りである。
【0041】
アニリンの転化率=(反応前の原料中のアニリンのモル数-製品中のアニリンのモル数)/反応前の原料中のアニリンのモル数×100%
2-メチルピリジンの収率=製品中の2-メチルピリジンのモル数/反応前原料中のアニリンがすべて転化される2-メチルピリジンの理論モル数
2-メチルピリジンの選択性=(製品中の2-メチルピリジンのモル数)/(反応前の原料中のアニリンのモル数-製品中のアニリンのモル数)×100%
ジフェニルアミンの収率=製品中のジフェニルアミンのモル数/反応前原料中のアニリンがすべて転化されるジフェニルアミンの理論モル数
ジフェニルアミンの選択性=2×(製品中のジフェニルアミンのモル数)/(反応前の原料中のアニリンのモル数-製品中のアニリンのモル数)×100%
アニリン、ジフェニルアミン、2-メチルピリジンの含有量はガスクロマトグラフィーによって測定される。
【0042】
使用されるアルミナバインダは、市販γ-アルミナであり、使用されるゼオライトは、市販Hβゼオライトであり、Hβゼオライトは、比表面積が620m2/g、粒子径が9nm未満である。
【0043】
実施例及び比較例で使用した触媒は、助剤金属成分及び活性金属成分を飽和含浸法により担持することによって製造される。具体的な方法は、以下の通りである。(1)Hβゼオライトを助剤金属成分の硝酸塩水溶液と等体積含浸により接触させる。(2)ステップ(1)で得られた混合物を濾過し洗浄し、乾燥させる。(3)ステップ(2)で得られた改質Hβゼオライト、アルミナバインダ(例えば、擬ベーマイト)、及び加工助剤(例えば、押出助剤、ペプタイザ)を十分に混練した後、成形し、乾燥、焙焼する。(4)ステップ(3)で得られた担体と活性金属成分の硝酸水溶液にNaBH4を加えて還流還元し、ろ過、真空乾燥して、粒径が3mmの球状触媒を製造する。ステップ(1)における接触温度は90℃であり、時間は4hであり、ステップ(2)は、80℃で10h乾燥し、ステップ(3)は、80℃で10h乾燥し、550℃で10h焙焼し、ステップ(4)は、100℃で8h還流還元し、その後、100℃で10h真空乾燥する。
【0044】
触媒の特性を表1に示す。
【0045】
【0046】
実施例1~8
釜式反応器を利用して、反応を水素雰囲気下で行った。触媒の使用量は1gであり、アニリンの添加量は50gである、反応条件は以下の表2に示される。
【0047】
比較例1~2
反応条件を以下の表2に変更した以外、実施例1の方法によってアニリンの転化反応を行った。
【0048】
比較例3
βゼオライト(金属成分担持無し)を触媒として使用し、残りの反応条件を以下の表2に変更した以外、実施例1の方法によってアニリンの転化反応を行った。
【0049】
比較例4
CA1190928Aの実施例1に記載の方法によってアニリンから2-メチルピリジンを生産し、すなわち、純粋なHZSM-5を用いて、510℃、圧力2.9MPa、原料アニリンとアンモニアとのモル比が1:8である場合、重量空間速度が1.0h-1の条件で、アニリンを2-メチルピリジンに転化した。
【0050】
【0051】
実施例9~16
固定床反応器を選択し、原料アニリンを下方供給方式で触媒層に通し、水素雰囲気下、まず、2-メチルピリジンの生成に適した条件で48時間反応させ、次に、30℃/時間の昇温速度でジフェニルアミンの生成に適した条件に切り替えて反応を48時間持続し、製品分布を測定して、以下の表3に示す。
【0052】
【0053】
実施例17
実施例9の方法によって、原料アニリンからジフェニルアミンと2-メチルピリジンを生産し、温度が製品分布に及ぼす影響を調べた。各サンプリング後、30℃/時間の昇温速度で次の温度まで昇温した。生成物の分布は温度によって変化し、その変化関係図を
図1に示す。
【0054】
表2及び
図1の結果から、本発明による2-メチルピリジンの製造方法は、より低い反応温度でより高いアニリン転化率及び2-メチルピリジン選択率を得ることができることが分かった。
【0055】
表3及び
図1の結果から、本発明によるジフェニルアミン及び2-メチルピリジンを選択的かつ連続的に生産する方法は、反応温度や圧力などのプロセスパラメータを調整することによって、同一の装置上で異なる目的生成物であるジフェニルアミンと2-メチルピリジンを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】本発明によるアニリンから2-メチルピリジン及びジフェニルアミンを選択的かつ連続的に生産する方法の製品分布の温度に伴う変化の関係図である。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有雰囲気下、温度100~400℃の条件でアニリンと触媒とを接触反応させるステップを含むアニリンから2-メチルピリジン及びジフェニルアミンを選択的かつ連続的に生産する方法であって、
前記触媒は、金属成分を担持したβゼオライトであり、前記金属成分は、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を含み、2-メチルピリジンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は100~240℃に制御され、ジフェニルアミンを主とする生成物を得るために、前記接触反応の温度は260~400℃に制御される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記触媒の全量を基準にして、金属元素換算で、前記活性金属成分の含有量が、0.5~5wt%、好ましくは0.5~3wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属成分は、Li、Na、K、Mg、Caから選択される少なくとも1種の助剤金属成分をさらに含み、前記触媒の全量を基準にして、酸化状態換算で、前記助剤金属成分の含有量が、0~6.5wt%、好ましくは0.5~5.5wt%である、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
該触媒は、アルミナバインダをさらに含有し、前記触媒の全量を基準にして、前記触媒は、βゼオライト50~85wt%と、金属元素換算で、活性金属成分0.5~5wt%と、酸化状態換算で、助剤金属成分0~6.5wt%と、アルミナバインダ10~45wt%とを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒の全量を基準にして、前記触媒は、βゼオライト60~85wt%と、金属元素換算で、活性金属成分0.5~3wt%と、酸化状態換算で、助剤金属成分0.5~5.5wt%と、アルミナバインダ15~34.5wt%と、を含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記接触反応の圧力は1.5~4MPaであり、前記接触反応は、水素雰囲気下で行われる、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記接触反応は、アンモニアガスを導入せずに行われる、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
2-メチルピリジンを主とする生成物を得る場合、前記接触反応は、温度160~240℃、圧力1.5~3MPaであり、好ましくは前記アニリンの液重量空間速度が0.5~3h
-1であり、又は、
ジフェニルアミンを主とする生成物を得る場合、前記接触反応は、温度280~360℃、圧力1.5~3MPaであり、好ましくは前記アニリンの液重量空間速度が0.3~1.5h
-1である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記原料アニリンは、前記触媒を含有する固定床反応器によって反応を行い、
好ましくは、前記原料アニリンは、下方供給方式で前記固定床反応器に送られて、触媒層を通過する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アニリンからの2-メチルピリジンの合成方法であって、
水素含有雰囲気下、異性化転位反応の条件下で、アニリンと触媒とを接触反応させるステップを含み、前記触媒は、金属成分を担持したβゼオライトであり、前記金属成分は、W、Mo、Ni、及びCoから選択される少なくとも1種の活性金属成分を含み、前記接触反応の温度は、100℃~240℃である、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記触媒の全量を基準にして、金属元素換算で、前記活性金属の含有量は、0.5~5wt%好ましくは0.5~3wt%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属成分は、Li、Na、K、Mg、Caから選択される少なくとも1種の助剤金属成分をさらに含み、前記触媒の全量を基準にして、酸化状態換算で、前記助剤金属成分含有量は0~6.5wt%である、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
該触媒は、アルミナバインダをさらに含有し、前記触媒の全量を基準にして、前記触媒は、βゼオライト50~85wt%と、金属元素換算で、活性金属成分0.5~5wt%と、酸化状態換算で、助剤金属0~6.5wt%と、アルミナバインダ10~45wt%と、を含有する、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒の全量を基準にして、前記触媒は、βゼオライト60~85wt%と、還元状態換算で、活性金属成分0.5~3wt%と、酸化状態換算で、助剤金属成分0.5~5.5wt%と、アルミナバインダ15~34.5wt%と、を含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記接触反応は、アンモニアガスを導入せずに行われる、請求項10~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記接触反応は、間欠的に行われ、前記接触反応は、温度130~180℃、圧力2~4MPa、反応時間4h~8hであり、好ましくは前記触媒の使用量が原料アニリンの使用量の1~4wt%を占め、又は、
前記接触反応は、連続的に行われ、接触反応は、温度160~240℃、圧力1.5~3MPaであり、好ましくは前記アニリンの液重量空間速度が0.5~3h
-1であり、
好ましくは、前記原料アニリンは、前記触媒を含有する固定床反応器によって反応を行い、好ましくは前記原料アニリンは、下方供給方式で前記固定床反応器に入って、触媒層を通過する、請求項10~
12のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】