(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ワイドバンドギャップ基板を加熱する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20241031BHJP
H05B 3/14 20060101ALI20241031BHJP
H05B 1/02 20060101ALI20241031BHJP
G01J 5/0802 20220101ALI20241031BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20241031BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20241031BHJP
【FI】
C23C14/24 K
H05B3/14
H05B1/02
C23C14/24 U
G01J5/0802
G01J5/00 101C
G01J5/48 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524667
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 IB2021059945
(87)【国際公開番号】W WO2023073404
(87)【国際公開日】2023-05-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518236616
【氏名又は名称】シランナ・ユー・ブイ・テクノロジーズ・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SILANNA UV TECHNOLOGIES PTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アタナコビク,ペタル
【テーマコード(参考)】
2G066
3K058
3K092
4K029
【Fターム(参考)】
2G066AC01
2G066AC20
2G066CA02
3K058BA14
3K092PP20
3K092QB03
3K092QB09
4K029AA04
4K029AA07
4K029AA24
4K029BA43
4K029BB09
4K029CA01
4K029CA02
4K029DA03
4K029DA08
4K029EA03
4K029EA08
4K029JA02
(57)【要約】
真空蒸着プロセスにおいて基板を加熱する方法及びシステムは、抵抗加熱素子を有する抵抗ヒータを含む。抵抗加熱素子から放出される放射熱は、基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する。基板はワイドバンドギャップ半導体材料を含み、コーティングされていない表面と、コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有する。抵抗ヒータと基板は真空蒸着チャンバに配置される。基板のコーティングされていない表面は、抵抗ヒータと間隔をおいて対向している。基板のコーティングされていない表面は、放射熱を吸収して直接加熱される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空蒸着プロセスにおいて基板を加熱する方法であって、
抵抗加熱素子を有する抵抗ヒータを提供することであって、前記抵抗加熱素子から放出された放射熱は、基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有し、前記基板は、ワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含み、コーティングされていない表面と、前記コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有する、前記抵抗ヒータを提供することと、
真空蒸着チャンバに前記抵抗ヒータ及び前記基板を配置することであって、前記基板の前記コーティングされていない表面は、前記抵抗ヒータと間隔を置いて対向している、前記抵抗ヒータ及び前記基板を配置することと、
前記真空蒸着チャンバを5×10
-4トール以下の圧力で運転することと、
前記抵抗加熱素子から前記放射熱を生成することと
を含み、前記基板の前記コーティングされていない表面は、前記放射熱を吸収することによって直接加熱される、
前記方法。
【請求項2】
前記抵抗加熱素子が耐酸化性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抵抗加熱素子がSiCを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記SiCがn型ドープされている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抵抗加熱素子がGa
2O
3を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記Ga
2O
3がSiCでコーティングされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Ga
2O
3がn型ドープされる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記基板の前記WBG半導体材料が酸化物であり、3eV~9eVのバンドギャップを有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板の前記WBG半導体材料が、Al
2O
3、Ga
2O
3、SiC、MgO、LaAlO
3、Gd
3Ga
5O
12、MgF
2、LiF、MgGa
2O
4、またはCaF
2を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記抵抗ヒータが2つ以上の抵抗加熱素子を備え、前記2つ以上の抵抗加熱素子は個別に制御され、2つ以上のゾーンに配置され、
前記方法は、加熱制御システムを用いて前記抵抗ヒータにフィードバックを提供することをさらに含み、前記加熱制御システムは、前記中赤外線バンドの光放射を選択的に通過させる光学フィルタを有する高温計を備え、かつ、
前記加熱制御システムは、前記光学フィルタからの前記光放射に基づいて、前記基板の前記蒸着面にわたる複数の温度を測定し、前記フィードバックは、前記2つ以上の抵抗加熱素子を制御するために、前記複数の温度を含む信号を前記抵抗ヒータに提供することを含む、
先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記真空蒸着チャンバに前記基板を配置する前に、前記加熱制御システムを校正することをさらに含み、前記校正することは、
前記基板が配置される所に校正プラテンを配置することと、
前記抵抗ヒータで前記校正プラテンを加熱することと、
前記加熱された校正プラテンの校正温度プロファイルを測定することと、
前記校正温度プロファイルに基づいて前記抵抗ヒータの設定を決定することと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記校正の後、
前記校正プラテンを前記基板で置き換えることと、
前記複数の温度を測定することと、
前記抵抗ヒータの補償設定を計算することと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
真空蒸着プロセスで基板に酸化物を蒸着する方法であって、
真空蒸着チャンバに抵抗ヒータ及び基板を配置することであって、前記抵抗ヒータは抵抗加熱素子を有し、前記基板はワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含み、コーティングされていない表面と、前記コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有し、前記配置は、前記コーティングされていない表面を前記抵抗加熱素子と間隔を置いて対向させることを含む、前記抵抗ヒータ及び前記基板を配置することと、
前記真空蒸着チャンバを5×10
-4トール以下の圧力で運転することと、
前記抵抗加熱素子から放射熱を生成することであって、前記放射熱は、前記基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する、前記放射熱を生成することと、
エピタキシャル酸化物層を前記基板の前記蒸着面に蒸着することと
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記基板の前記コーティングされていない表面が、前記放射熱を吸収することによって直接加熱される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抵抗加熱素子が耐酸化性である、請求項13~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記抵抗加熱素子がSiCを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記SiCがn型ドープされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抵抗加熱素子がGa
2O
3を含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記Ga
2O
3がSiCでコーティングされる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Ga
2O
3がn型ドープされる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記基板の前記WBG半導体材料が酸化物であり、3eV~9eVのバンドギャップを有する、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記基板の前記WBG半導体材料が、Al
2O
3、Ga
2O
3、SiC、MgO、LaAlO
3、Gd
3Ga
5O
12、MgF
2、LiF、MgGa
2O
4、またはCaF
2を含む、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記抵抗ヒータが2つ以上の抵抗加熱素子を備え、前記2つ以上の抵抗加熱素子は個別に制御され、2つ以上のゾーンに配置され、
前記方法が、前記加熱制御システムを用いて前記抵抗ヒータにフィードバックを提供することをさらに含み、前記加熱制御システムは、中赤外線バンドの光放射を選択的に通過させる光学フィルタを有する高温計を備え、かつ、
前記加熱制御システムは、前記光学フィルタからの光放射に基づいて、前記基板の前記蒸着面にわたる複数の温度を測定し、前記フィードバックは、前記2つ以上の抵抗加熱素子を制御するために、前記複数の温度を含む信号を前記抵抗ヒータに提供することを含む、
請求項13~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記真空蒸着チャンバに前記基板を配置する前に、前記加熱制御システムを校正することをさらに含み、前記校正することは、
前記基板が配置される所に校正プラテンを配置することと、
前記抵抗ヒータで前記校正プラテンを加熱することと、
前記加熱された校正プラテンの校正温度プロファイルを測定することと、
前記校正温度プロファイルに基づいて前記抵抗ヒータの設定を決定することと
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記校正後、
前記校正プラテンを前記基板で置き換えることと、
前記複数の温度を測定することと、
前記抵抗ヒータの補償設定を計算することと
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
真空蒸着プロセスで基板上に酸化物を蒸着する方法であって、
請求項13~25のいずれか1項に記載の方法に従って前記基板を加熱することと、
エピタキシャル酸化物層を前記基板の蒸着面に蒸着することと
を含む、前記方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法に従って形成された半導体構造であって、
ワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含む基板と、
前記基板上のエピタキシャル酸化物層と
を含む、前記半導体構造。
【請求項28】
真空蒸着プロセスにおいて基板を放射加熱するためのシステムであって、
5×10
-4トール以下の圧力で運転する真空蒸着チャンバと、
前記真空蒸着チャンバ内の抵抗ヒータであって、前記抵抗ヒータは、基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する放射熱を生成し、前記抵抗ヒータは、2つ以上のゾーンに配置された2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子を備える、前記抵抗ヒータと、
前記真空蒸着チャンバ内で前記基板を保持するための基板ホルダであって、前記基板はワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含み、コーティングされていない表面と、前記コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有し、前記基板ホルダは、前記放射熱を受け取るために、前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子と間隔を置いて対向するように前記コーティングされていない表面を位置付けるように構成される、前記基板ホルダと、
高温計を備える加熱制御システムとを備え、前記加熱制御システムは、
前記中赤外線バンドの光放射を選択的に通過させる光学フィルタを備え、
前記光学フィルタを通過する前記光放射に基づいて、前記基板の前記蒸着面全体にわたる複数の温度を測定し、かつ、
前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子を制御するために、フィードバックであって、前記複数の温度を含む信号を含む前記フィードバックを前記抵抗ヒータに提供する、
前記システム。
【請求項29】
前記基板の前記コーティングされていない表面が、前記放射熱を吸収することによって直接加熱される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子が耐酸化性である、請求項28または29に記載のシステム。
【請求項31】
前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子がSiCを含む、請求項28~30のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項32】
前記SiCはn型ドープされる、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子がGa
2O
3を含む、請求項28~30のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項34】
前記Ga
2O
3がSiCでコーティングされている、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記Ga
2O
3は、n型ドープされる、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記基板の前記WBG半導体材料が酸化物であり、3eV~9eVのバンドギャップを有する、請求項28~35のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項37】
前記基板の前記WBG半導体材料が、Al
2O
3、Ga
2O
3、SiC、MgO、LaAlO
3、Gd
3Ga
5O
12、MgF
2、LiF、MgGa
2O
4、またはCaF
2を含む、請求項28~35のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年8月11日に出願された「Metal Oxide Semiconductor-Based Light Emitting Device」という名称の米国特許出願第16/990,349号に関連し、この出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、薄膜材料は、例えば反応チャンバ内のソース材料を使用して、平坦な蒸着面に蒸着される。蒸着面は半導体材料基板であり、その上に他の材料の層が成長する。これらの層は、層スタックから形成されるデバイスの品質と挙動に影響を与える結晶構造を有する。分子線エピタキシ(MBE)は、反応チャンバ内で単結晶薄膜を蒸着するいくつかの方法のうちの1つである。
【0003】
MBEは高真空(HV)または超高真空(UHV)で行われる。MBEでは通常、反応チャンバに基板を配置し、ソース材料からの原子ビームが蒸着面に向けられる際に基板を加熱して結晶層の形成を促進する。蒸着面全体の均一性を促進するために、プロセス中に基板を回転させる。ソース材料からの分子が基板の表面に層ごとに蒸着され、非常に薄い膜の形成が可能になる。MBEの重要な側面には、蒸着される膜の精度と均一な厚さ、蒸着速度、蒸着される異なる膜間の界面の急峻性、及び蒸着される膜の不純物レベルが含まれる。これらの側面は、加熱された基板全体の温度プロファイルや実際に到達する温度など、基板の加熱によって影響を受ける可能性がある。したがって、MBE中に一貫した効率的な方法で基板を加熱できることは、MBEプロセスの重要な側面である。
【発明の概要】
【0004】
一部の実施形態では、真空蒸着プロセスにおいて基板を加熱する方法は、抵抗加熱素子を有する抵抗ヒータを備えることを含む。抵抗加熱素子から放出される放射熱は、基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する。基板はワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含む。基板は、コーティングされていない表面と、コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有する。抵抗ヒータ及び基板は真空蒸着チャンバに配置される。基板のコーティングされていない表面は、抵抗ヒータと間隔を置いて対向している。真空蒸着チャンバは5x10-4トール以下の圧力で運転される。抵抗加熱素子から放射熱が生成される。基板のコーティングされていない表面は、放射熱を吸収することによって直接加熱される。
【0005】
一部の実施形態では、真空蒸着プロセスにおいて基板上に酸化物を蒸着する方法は、真空蒸着チャンバに抵抗ヒータ及び基板を配置することを含む。抵抗ヒータは、抵抗加熱素子を有する。基板はワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含む。基板は、コーティングされていない表面と、コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有する。基板は、コーティングされていない表面が抵抗加熱素子と間隔を置いて対向するように配置される。真空蒸着チャンバは5x10-4トール以下の圧力で運転される。抵抗加熱素子から放射熱が生成される。放射熱は、基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する。エピタキシャル酸化物層が基板の蒸着面に蒸着される。
【0006】
一部の実施形態では、真空蒸着プロセスにおいて基板を放射加熱するためのシステムは、5×10-4トール以下の圧力で運転する真空蒸着チャンバを備える。真空蒸着チャンバ内には抵抗ヒータがあり、抵抗ヒータは基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する放射熱を生成する。抵抗ヒータは、2つ以上のゾーンに配置された、個別に制御される2つ以上の抵抗加熱素子を備える。真空蒸着チャンバには基板を保持するための基板ホルダがある。基板はワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含み、コーティングされていない表面と、コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有する。放射熱を受け取るために、基板ホルダは、2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子と間隔を置いて対向するように、コーティングされていない表面を位置付けるように構成される。基板を放射加熱するシステムは、高温計を含む加熱制御システムも備える。加熱制御システムは、中赤外線バンドの光放射を選択的に通過させる光学フィルタを備え、光学フィルタを通過する光放射に基づいて、基板の蒸着面全体にわたる複数の温度を測定し、かつ、抵抗ヒータにフィードバックを提供する。フィードバックは、2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子を制御するために、複数の温度を含む信号を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】当技術分野で知られている、高融点金属フィラメントを用いて標準的な基板を加熱するための従来の加熱装置の概略図である。
【
図2】当技術分野で知られている、真空蒸着システムにおいてワイドバンドギャップ(WBG)基板の加熱表面に金属膜を適用することを含む従来の放射加熱装置の概略図である。
【
図3A】様々な温度における、高融点金属ヒータから放出される放射線のスペクトルエネルギ密度を波長の関数としてプロットしたものである。
【
図3B】
図3Aに示される黒体スペクトルの低波長カットオフ領域の拡大図である。
【
図4】一部の実施形態による、例示的なWBG基板の赤外線透過率を示すプロットである。
【
図5】当技術分野で知られている、WBG基板のバンドギャップ吸収波長λ
gを増加させるためにWBG基板をドーピングする効果を示すプロットである。
【
図6】一部の実施形態による、真空蒸着プロセスにおいてWBG基板を放射加熱するための加熱システムのダイアグラムである。
【
図7】A及びBは、それぞれ、単結晶SiCのバンド構造及び関連する状態密度のプロットである。
【
図8】A及びBは、それぞれ、単結晶SiCのフォノンバンド構造及び関連する状態密度のプロットである。
【
図9】一部の実施形態による、フォノン吸収波長領域を示す、波長の関数としてのSiCの吸収係数のプロットである。
【
図10】一部の実施形態による、従来の白金の放射率と比較したSiCの放射率のプロットである。
【
図11】一部の実施形態による、波長または周波数の関数としての状態密度のプロットであり、Ga
2O
3(C2m)の形態でWBG基板とSiCとの重なりを示す。
【
図12】一部の実施形態による、波長/周波数の関数としての状態密度のプロットであり、Al
2O
3(R3c)の形態でWBG基板とSiCとの重なりを示す。
【
図13】一部の実施形態による、
図6に示す基板加熱システムと併せて使用される加熱制御システムの概略図である。
【
図14】当技術分野で知られている、基板ホルダ構成の概略側面図である。
【
図15】A、B及びCは、一部の実施形態による、
図13のA-A´断面図、B-B´断面図、C-C´断面図である。
【
図16】一部の実施形態による、マルチゾーン加熱制御システムからのフィードバックによる一連の基板温度プロファイルを示す。
【
図17】一部の実施形態による、所望の温度プロファイルを実現するために基板の加熱を制御する方法のフローチャートである。
【
図18】一部の実施形態による、真空蒸着プロセスにおいてWBG基板を放射加熱する方法のフローチャートである。
【
図19】一部の実施形態による、WBG基板を加熱するための抵抗ヒータを製造する方法のフローチャートである。
【
図20】一部の実施形態による、運転温度の関数としてのヒータ抵抗のグラフである。
【
図21】A~Gは、一部の実施形態による、抵抗加熱素子構成の平面図である。
【
図22】A及びBは、一部の実施形態による、基板ホルダアセンブリを備えた抵抗ヒータの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
真空蒸着プロセスにおいてワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を有利に加熱できるようにする、基板を加熱するための方法及びシステムを開示する。この方法とシステムは、純粋な放射加熱を実現するために、基板のフォノン吸収バンドに一致する放射熱を放出する加熱素子材料を選択するという洞察を利用する。実施形態は、WBG材料を加熱するための簡略化されたプロセスを可能にする。このプロセスは、従来では、放射熱を吸収し、次に伝導によってWBG基板を加熱するコーティングまたはバッキングプレートを必要とする。実施形態はまた、真空環境により対流加熱効果がほとんど存在しない高真空プロセスにおいてWBG材料を効率的に加熱することを可能にする。加熱素子の材料として、耐酸化性で、WBG基板上にエピタキシャル酸化物層を成長させるのに適しているものを選択することもできる。
【0009】
本開示を通じて高真空蒸着システム及びプロセスは、5×10-4トール以下(5e-4トールより高い真空)、例えば10-6トール以下、または5x10-4トール~10-11トール、または10-5トール~10-11トールの圧力で運転するとして定義される。実施形態は、超高真空(UHV)(例えば、約10-6~10-9Pa、または10-8~10-11トール)の使用も含む。
【0010】
図1は、高融点金属熱フィラメント120の使用に基づいて基板を加熱するための従来の加熱ランプ100の概略側面図である。MBEプロセスなどの基板加熱は通常、高温で、高真空または超高真空で行われる。この例では、金属フィラメント120は、電極110を介して金属フィラメント120に電流を供給する電流/電圧源105によって電力を供給されるワイヤである。金属フィラメント120に電気が流れると、金属フィラメント120は放射線130を放出する。真空環境では、放出された放射線130は、加熱ランプ100から離れた観察者140が見ると、黒体スペクトル150に一致する。スペクトル150は、スペクトルのピーク波長を表す波長λ
1と、黒体スペクトル150によって放出されるより長い波長を表す波長λ
2とを有する。
【0011】
表1は、加熱ランプ100の加熱素子フィラメントとして従来から採用されている高融点金属の例と、それらの溶融温度、耐酸化性、及び導電率の関連する物理的特性とを示している。耐酸化性は、高温及び高真空下での組成破壊に耐える材料の能力である。酸化により、材料が分解したり、剥離したり、亀裂が入ったりするため、表面の失透が生じる可能性がある。
【0012】
【0013】
図2は、ワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含む基板250を放射加熱するための、蒸着チャンバ201を備える真空蒸着システム用の従来の加熱装置200の概略図である。基板250は通常、円形(すなわち、円形ディスク)であり、蒸着プロセス中に回転される。放射加熱装置200は、
図1の金属フィラメント120などの高融点金属加熱素子を有する抵抗ヒータ220を備える。基板250は、抵抗ヒータ220の方を向く裏面252と、真空蒸着プロセスで層を成長させることができる前面255とを有する。放射加熱装置200は、電極210を介して抵抗ヒータ220に電流を流し、抵抗ヒータ220に放射線230を生成させる。
図2のようなWBG材料の場合、WBG基板250の吸収スペクトルと抵抗ヒータ220の黒体スペクトルとの間に重なりがほとんどまたは全く無いため、WBG基板250は、発生した放射線230に対して透過的である。
【0014】
この問題に対処する従来のアプローチは、WBG基板250の裏面252に金属膜260を適用することである。金属膜260は、裏面252上に形成されたコーティングであってよい。金属膜260は、モリブデン(Mo)やタングステン(W)などの材料で形成されており、加熱素子(抵抗ヒータ220)からの放射熱を吸収し、その熱が伝導によりWBG基板250に伝達される。このアプローチは、WBG基板250をうまく加熱するが、基板のコーティングには金属膜260を適用するための追加の膜堆積ステップが含まれる。さらに、基板がコーティングされる場合、プロセスは、基板及び蒸着層を含む構造を電子デバイスに加工するために、金属膜260を除去するステップを含み得る。WBG基板250の蒸着面255の汚染が、コーティングの塗布及び除去の両方のステップ中に発生する可能性がある。基板を加熱するための別の従来のアプローチは、基板材料をドープして、基板材料の自然な(ドープされていない)範囲より下のバンドギャップ範囲で放射熱吸収を実現しようと試みることを含む。しかし、ドーピングは従来の抵抗ヒータ(例えば、高融点金属)によって生成される生成放射線230の波長バンドまで吸収を拡張しないため、このアプローチはWBG材料には適用できない。
【0015】
表2は、真空蒸着プロセス用の基板材料の例を示す。基板のワイドバンドギャップ材料は、従来の抵抗ヒータからの放射熱に関連して「透明」として示され、標準基板は「不透明」として示されている。標準基板は、従来の放射ヒータによって加熱できる従来の半導体基板であるが、従来の抵抗ヒータからの放射熱に対して不透明であるため、加熱装置200のような金属膜260を使用しない。表2には、基板の物理的形状因子の例、各基板のバンドギャップエネルギ(電子ボルト、eV)、関連するバンドギャップ波長λg(ナノメートル、nm)及び周波数(cm-1)も示されている。見て分かるように、表2のWBG基板(「透明」基板)はすべて、3eVを超えるバンドギャップエネルギを有する。本開示では、WBG基板は、2eV以上、例えば3eVを超えるバンドギャップエネルギを有するワイドバンドギャップ半導体材料を含む基板であるとする。
【0016】
【0017】
WBG基板のバンドギャップエネルギと、従来の放射加熱素子に対する透明性との間の関係を
図3Aから
図5で説明する。
【0018】
図3Aを参照すると、プロット300は、従来の高融点金属ヒータ(例えば、加熱ランプ100)から発せられる放射線のスペクトルエネルギ密度を波長の関数として表す。発光スペクトルは4つの温度に対して示されており、曲線310(x軸付近)は500Kの場合、曲線320は1000Kの場合、曲線330は1500Kの場合、曲線340は2000Kの場合である。プロット300は、これらのタイプの加熱素子の従来の黒体スペクトルを示し、発光スペクトルの温度依存性を示している。見て分かるように、発光スペクトルはプランクの法則に従い、温度が高くなると予想どおり総放出エネルギが増加する。例えば、2000Kの曲線340の下の面積は、1500Kの曲線330の下の面積よりも大きい。また、ピークスペクトルエネルギ密度は、温度の上昇とともにより低い波長に移動する。例えば、曲線340のピーク波長は、曲線330のピーク波長よりも低い。各スペクトルは、ピーク波長を超えるとスペクトルエネルギ密度が急速に減少し、約10μmを超える波長領域360で放出されるエネルギは無視できるほど小さい。
【0019】
図3Aは、従来の高融点金属ヒータの発光スペクトルが、約1μm未満の波長を有する領域350において低波長カットオフを有することも示している。
図3Aの黒体スペクトルのこの低波長カットオフ領域350の詳細なプロットは、
図3Bに示されている。低波長カットオフ(λ
CUTOFF)は、
図3Bの一点鎖線の垂直線(特定の曲線に関連付けられていない)で示されるように、それより小さければ、無視できるほど小さいエネルギが放出される波長である。曲線320は低波長カットオフ325を有し、曲線330は低波長カットオフ335を有し、曲線340は低波長カットオフ345を有する。見て分かるように、波長カットオフは温度が高くなると減少するが、発光カットオフは約2000Kの高温でも依然として0.3μmを超える(または約4.1eV未満)である(曲線340)。
【0020】
図4は、2μmから16μmの波長領域におけるいくつかのWBG基板の赤外線透過率をモデル化したプロット400を示す。プロット400では、CaF
2、LiF、MgO、Al
2O
3及びMgF
2についての曲線が示されている。見て分かるように、WBG基板は5μmまでの波長で非常に高い透過率(つまり80%を超える)を有し、CaF
2などの一部の材料は10μmまでの波長で透過率を示す。WBG基板の高透過率(すなわち透明度)の波長は、
図3Aの従来の高融点金属ヒータによって放出される一次エネルギ密度と一致する。したがって、
図3Aの従来の高融点金属ヒータによって放出されるエネルギは、主に10μm未満の波長にあり、10μmを超える波長ではエネルギ密度が無視できるほど小さいため、
図2に関して説明したように
図4のWBG基板を加熱することができない。
図4はまた、本明細書でさらに説明するように、これらのWBG基板が光学フォノンバンドの存在により、長波長でIRを吸収する(透過率が低い)ことを示している。
【0021】
図5は、WBG基板のバンドギャップ吸収波長λ
gを増加させ、その結果、加熱素子からの黒体放射線の吸収を促進するために、ドーピングによるWBG基板の処理の従来の効果をモデル化するプロット500を示す。プロット500は、吸収対波長を示しており、領域510は基板によって吸収される波長である。λ
gは基板にドーピングを行わない場合のバンドギャップ吸収波長であり、λ′
gはある程度の量の不純物ドーピングを行った場合の波長、λ″
gはより多量の不純物をドーピングした場合の波長である。
図5は、増加した不純物ドーピングがλ
gをより大きな波長に赤方偏移させるように働き得ること(すなわち、λ″
g>λ′
g>λ
g)を示しているが、これらの波長は、矢印515で示すように、
図3Bに示す黒体スペクトルの低波長カットオフ(λ
CUTOFF)を依然として下回っている。一般に、半導体は高温でさらに自由キャリアを生成し、これにより吸収端も赤方偏移する。しかしながら、本開示で対象とする基板の場合、これは従来の放射加熱方法と組み合わせるには十分ではない。
【0022】
図3A~5から分かるように、表1で参照されるような従来の高融点金属に基づく加熱装置はWBG基板のバンドギャップ吸収波長λ
gを超える低波長カットオフ(
図3Bを参照)を有し、そのピークエネルギ密度(
図3Aに見られるように)がWBG基板のピーク透過率に対応する(
図4)スペクトルエネルギ密度を有する放射線を生成する。この要因の組み合わせにより、WBG基板は従来の高融点金属加熱素子から放出される放射線の吸収が低くなり、WBG基板の放射加熱がほとんど無いことを意味する。
【0023】
ワイドバンドギャップ基板は、真空蒸着プロセスでより広範囲の材料を成長させる可能性を提供するため、業界ではWBG基板の加熱の改善が望まれている。例えば、WBG基板は、天然材料上にエピタキシャル酸化物層を成長させる能力(つまり、酸化物基板上の酸化物層)を提供し、結果として得られるデバイスの品質と特性を向上させることができる。酸化物層を成長させる際に、酸化物を成長させるために真空蒸着チャンバに酸素ガスを供給するという業界の試みは、従来の加熱素子(タングステン、タンタルなど)が燃焼し、表面やバルクが酸化され、脆くなり、構造的に弱くなることがある。加熱素子(例えば、高融点金属線ヒータ)は、加熱素子を酸素から保護するために、ランプなどのガラス本体内に封入することができる。しかし、ガラスはMBEでの使用に望ましい高温に耐えることができず、さらにガラスはWBG基板の加熱に必要なIR波長を吸収する可能性が高いため、有効性が低下する。高真空レベル(例えば、10-4トール以下)で動作するMBEなどの真空蒸着プロセスでは、ガス対流加熱効果は不可能であり、伝導加熱は困難であるため、ワイドバンドギャップ基板の放射加熱の改善を可能にすることが特に重要である。したがって、効率的な方法で純粋な放射加熱を実現できる能力は、真空蒸着プロセスにとって非常に望ましいものである。
【0024】
本開示の実施形態は、WBG基板のフォノン吸収バンドと重なる中赤外線(中IR)帯においてフォノン依存放射を示すSiCやGa
2O
3などの特定のWBGヒータ材料を利用することにより、真空蒸着プロセスにおけるWBG基板の加熱を放射加熱のみで独自に実現する。すなわち、実施形態は、WBG基板を加熱するために業界では認識されていなかったフォノンベースの加熱機構を利用する。フォノンは、結晶内の格子振動に関連する準粒子である。フォノンは材料のバンドギャップエネルギよりもはるかに低いエネルギを有するが、本開示では、加熱素子から放射される光子エネルギと加熱される基板のフォノン吸収を結合することにより、効果的な加熱源として認識される。例としてSiCを使用すると、SiCはフォノンに依存する吸収及びエミッタンス特性を有しており、SiCで形成された抵抗加熱素子は、SiCの光学フォノンバンドに対応する中赤外波長領域で有利に放射する。さらに、この波長領域の中赤外線の放出は、一部のWBG基板のフォノン吸収バンドに対応するか、少なくとも一部が重なり、したがって、WBG基板は、抵抗加熱素子によって加熱することができる。ヒータ材料のSiCは、3C-SiC、2H-SiC、4H-SiC、6H-SiC、15R-SiCなどの様々なポリタイプであってよく、ここで、Hは六方格子タイプを指し、Cは立方格子タイプを指し、Rは菱面体格子タイプを指す。ポリタイプは、P63mc空間群(六方晶)の2H-SiC、4H-SiC、及び6H-SiC、F43m空間群(立方晶)の3C-SiC、または三角空間群(例えば、P3m1、R3m)を有する他のポリタイプなどの空間群として表現することもできる。一部の実施形態では、単結晶ウェハを機械加工して、所望の形状のヒータ素子にすることができる。他の実施形態では、多結晶ウェハを使用することができ、多結晶は種結晶を必要とせずに成長させることができるため、単結晶よりも低コストを可能にし得る。さらなる実施形態では、多結晶粉末(例えば、SiC)が焼結され、抵抗ヒータとして使用される形状にプレスされる。多結晶材料は、1つまたは複数のポリタイプの材料を含み得る。加熱素子の製造についてのさらなる説明は
図19に記載されている。
【0025】
実施形態は、WBG基板を放射加熱する際の抵抗加熱素子としてワイドバンドギャップ材料を使用することを伴う。上述のSiC及びGa2O3に加えて、ヒータ材料として使用可能な他の材料には、Ga2O3コーティングを施したSiC素子、またはn型SiC、またはn型Ga2O3が含まれる。抵抗加熱を可能にする電流の流れに適したワイドバンドギャップと導電率を有する追加の材料を抵抗加熱素子に使用することが可能である。一部の実施形態では、基板のWBG半導体材料は酸化物であり、3eVから9eVのバンドギャップを有する。実施形態はまた、耐酸化性の、またはO雰囲気の影響を受けない抵抗加熱素子を提供する。したがって、本発明の抵抗加熱素子は、エピタキシャルプロセスで酸化物層を堆積するのに有益である。例えば、SiCとGa2O3は、高温及び1e-4トールに近い圧力での組成破壊に耐える。実際、Ga2O3の分解は高酸素レベルで抑制されるため、Ga2O3はエピタキシャル酸化物層を形成する堆積プロセスの抵抗加熱素子として適切である。単結晶及び多結晶Ga2O3の大きなシートは、例えばエッジフィード溶融形成プロセスを使用して製造できるため、より大きなヒータサイズに拡張するのに有利である。
【0026】
一部の実施形態では、本発明の抵抗ヒータに使用されるSiCやGa2O3などの半導体材料は、材料が自然に導電性となるような方法で製造されてよい。他の実施形態では、半導体材料は、抵抗加熱素子として機能する材料に十分な導電性を提供するために、既知の方法によって適切にドープされてよい。例えば、半導体材料は、約1e17cm-3から約1e20cm-3のドーピング濃度などの不純物でドープされてn型ドープとなってよい。一例としてSiCを使用する場合、SiC加熱素子の形成中に窒素をドーパントとして使用して、SiCをn型にすることができる。別の例では、加熱素子の形成中にGa2O3にSi、Ge、またはSnをドープして、Ga2O3をn型にしてよい。一部の実施形態では、半導体材料はp型ドープされてよい。抵抗ヒータ用の半導体材料は、多結晶材料または単結晶材料であってよい。抵抗ヒータ用の半導体材料は、大きなドメインまたは小さなドメインの多結晶材料を示す材料から選択されてもよい。他の半導体複合材料は、高温焼結されて適切なヒータ物品となるマイクロ及びナノ微結晶を含み得る。
【0027】
図6は、一部の実施形態による、真空蒸着プロセスにおいてWBG基板を放射加熱するための加熱システム600を示す。システム600は、ポンプ装置670によって、10
-4トール以下などの高真空圧または超高真空圧に維持される蒸着チャンバ601を備える。加熱装置621は、電極610を介して抵抗加熱素子620への電気を生成する電流源または電圧源605を備える。抵抗加熱素子620は、抵抗加熱素子620が通電されたときに、WBG基板650のフォノン吸収バンドに対応する波長バンドで、中赤外線を含む赤外線630を放射する材料からなるように選択される。実施形態では、抵抗加熱素子620から放出される放射熱は、基板650のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する。基板650は、ワイドバンドギャップ半導体材料を含み、回転可能なプラテンを備え得る基板ホルダ658によって保持される。基板650は、抵抗加熱素子620に面する非コーティング表面652(裏面)と、非コーティング表面652の反対側の蒸着面655(前面)とを有する。コーティングされていない表面652には堆積コーティングが無く(すなわち、その表面にコーティングが無い)、基板ホルダ658は、放射熱を吸収して、伝導によって基板を加熱するプレート(従来の実践で使用されているような)を備えていない。コーティングされていない表面652は、抵抗加熱素子620から距離657だけ離間している。基板ホルダ658は、蒸着中に使用される高温において十分な構造的完全性を有するように、基板650よりも直径が大きい。例えば、基板ホルダ658は、基板650よりも約20%大きい直径を有してよく、基板650用のサファイアウェハは、直径が最大約200mm(約8インチ)であってよく、MgOウェハは、直径が最大約150mm(約6インチ)であってよい。
【0028】
放射線630は、WBG基板650のフォノン吸収バンドに対応する波長バンドを有するため、WBG基板650は放射線630を高度に吸収する。したがって、WBG基板650は、対流無しで(真空蒸着チャンバ601内にガスが存在しないため)、伝導も無しで(基板650の裏面652を覆うコーティングもバッキングプレートも存在しないため)、放射加熱のみによって直接加熱される。対照的に、
図2に関連して説明したような従来のヒータは、従来のヒータによって放射される波長に対するWBG基板650の吸収が低いため、WBG基板650によって吸収できない放射熱を放出する。
【0029】
蒸着プロセス中、加熱された基板650は、基板ホルダ658の回転可能なプラテンによって中心軸662を中心に回転され、蒸着源660からの材料が蒸着面655に蒸着されて、エピタキシャル酸化物層などのエピタキシャル層656が形成される。蒸着源660は、中心軸662を中心としたWBG基板650の回転時に、蒸着または成長表面(蒸着面655)全体に所望の層(例えば、均一な蒸着)を形成する蒸着種のフラックスプロファイルを提供する。様々な実施形態において、蒸着源660は、原子の純粋な成分のビームとして、原子または分子種を生成することができる元素源(例えば、Al、Ga、Ge、Zn、Mg、O及びN)などの複数の源を含み得る。蒸着源660は、液体の形態の流出型の元素源を含み得る。蒸着源660は、1つまたは複数のプラズマ源または前駆体ベースのガス源(例えば、酸素、窒素)も含み得る。一部の実施形態では、活性酸素源は、プラズマ励起分子酸素(原子O及びO2
*などを形成する)、オゾン(O3)、亜酸化窒素(N2O)、二酸化窒素(NO2)などを介して提供されてよい。一部の実施形態では、プラズマ活性化酸素が原子状酸素の制御可能な供給源として使用される。複数のガスを蒸着源660を介して注入して、成長のために異なる種の混合物を提供することができる。例えば、原子窒素と励起分子窒素により、n型、p型、及び半絶縁性の導電型膜を酸化物ベースの材料で形成することが可能になる。
【0030】
この実施形態における加熱システム600は、加熱素子620の温度を測定するように構成された熱電対616をさらに備える。熱電対616は、基板650に面する加熱素子620の表面近くにあるが、加熱素子620とは接触していない。熱電対を加熱素子620の表面から離すことは、使用される高温による熱電対616の損傷を防止するのに役立ち、また、機械的に接触すると発生し得るヒータ及び/または基板温度の感知精度の変動などの他の影響による結果を低減する。熱電対616は、電流源または電圧源605から電極610によって供給される電流の量を変化させて、加熱素子620の温度を制御するためのセンサとして使用することができる。加熱システム600はまた、ビューポート680を備え、ビューポート680は、蒸着面655の温度に従って加熱された基板650から生成される放射線635を透過するように構成される。ビューポート680を通して見る放射線635は、従来の実践では通常である抵抗加熱素子の温度ではなく、基板650の温度に対応するように選択的にフィルタリングすることができる。ビューポート680は、理想的には、所望の感知波長において非吸収性である。ただし、吸収がかなりある場合でも、増幅されたフォトダイオード及び/またはセンサによって送信信号を監視することができる。
【0031】
例示的な実施形態では、基板650は金属酸化物ワイドバンドギャップ半導体材料であり、基板650のコーティングされていない表面652は、炭化ケイ素(3C-SiC、2H-SiC、4H-SiC、及び6H-SiC、または1つまたは複数のポリタイプを含む多結晶形)からなる抵抗加熱素子620を使用して放射加熱される。SiCヒータは、近赤外線から遠赤外線の放射率が高いという従来の高融点金属フィラメントヒータにはない独自の利点があり、そのため金属酸化物基板のバンドギャップ未満の吸収に見合った黒体放射率が得られる。基板材料としてGa2O3を用いるさらなる例では、SiCヒータの放射率は、固有のGa2O3のフォノン吸収特性とほぼ一致するため、SiCヒータによって示される放射黒体の発光スペクトルとうまく結合する。これらの例示的な実施形態は、蒸着面655に酸化物層を成長させるために使用されてよい。
【0032】
一部の実施形態では、非平衡成長技術を利用して、ターゲット金属酸化物の融点から十分に離れた成長パラメータで動作することができ、結晶の単位格子の単一の原子層に存在する原子種を、予め選択した成長方向に沿って変調することさえできる。酸化物層を成長させるための例示的な方法では、蒸着面655(エピタキシャル成長表面)を酸化して、活性化されたエピタキシャル成長表面を形成する。活性化されたエピタキシャル成長表面は、2つ以上のエピタキシャル金属酸化物膜または層を蒸着する条件下で、高純度金属原子をそれぞれ含む1つまたは複数の原子ビームと酸素原子を含む1つまたは複数の原子ビームとに暴露される。基板650は軸662を中心に回転し、金属酸化物基板650のフォノン吸収バンドに一致するように設計された放射率を有する加熱素子620によって放射加熱される。高真空蒸着チャンバ601は、原子または分子種を純粋な原子成分のビームとして生成することができる複数の元素源などの様々な蒸着源660を有する。真空蒸着チャンバ601はまた、ガス供給源(例えば、酸素を供給するため)に接続された1つまたは複数のプラズマ源またはガス源(図示せず)を含み得る。活性酸素源は、プラズマ励起分子酸素(原子O及びO2
*を形成する)、オゾン(O3)、亜酸化窒素(N2O)などを介して提供されてよい。一部の実施形態では、プラズマ活性化酸素が原子状酸素の制御可能な供給源として使用される。複数のガスを注入して、成長のための異なる種の混合物を提供することができる。例えば、原子窒素と励起分子窒素により、n型、p型、及び半絶縁性の導電型膜をGa酸化物ベースの材料で形成することが可能になる。米国特許出願第16/990,349号「Metal Oxide Semiconductor-Based Light Emitting Device」に記載されているように、エピタキシャル酸化物層を成長させる他の方法を利用することもできる。
【0033】
特定の材料をWBG基板の加熱に独自に適したものにするとして本開示で認識される特性を、
図7A~12に関連して説明する。例として主にSiCを使用するが、実施形態は、Ga
2O
3、Ga
2O
3でコーティングされたSiC、n型SiC、またはn型Ga
2O
3などの抵抗加熱素子に使用される他の半導体材料にも適用される。
【0034】
図7Aは、エネルギ(eV)対ブリルアンゾーン(BZ)パスのプロット700において、単結晶SiC(この例では4H-SiC)のバンド構造のモデルを示す。
図7Bは、
図7AのSiCバンド構造に関連する状態密度ダイアグラム701を示し、ここで、ダイアグラム701は、エネルギ(eV)対状態密度をモデル化している。プロット700とダイアグラム701の両方が、SiCが3.36eVのバンドギャップE
gを有し、赤外線(IR)波長領域を吸収しないと予想される紫外線(UV)材料であることを示している。つまり、3.36eVのバンドギャップエネルギは、約5μm~40μmである中IR波長と比較して、UV範囲にある約364nmのバンドギャップ波長に対応する。赤外線波長はUVよりも長く、したがってSiCのバンドギャップエネルギよりもエネルギが低いため、SiCは赤外線を吸収するとは考えられない。しかし、本開示は、特定の半導体材料がフォノンベースの励起と、その結果生じる、WBG基板によって有利に吸収できるフォノン-光子放出エネルギへの結合が可能であるという洞察を利用することにより、SiCなどのWBG材料を抵抗ヒータとして使用して、WBG基板の純粋な放射加熱を提供する。一部の実施形態では、半導体材料は、既知の方法によって適切にドープされて、導電性となり、抵抗加熱素子として機能することができる。例示的な実施形態では、SiCは、SiCに導電性を与えるためにn型ドープされており、抵抗加熱材料として機能することができる。別の例では、Ga
2O
3は、抵抗加熱素子として使用されてよく、ここでは、Ga
2O
3をn型ドープして導電性を与えることができる。
【0035】
図8A及び8Bは、プロット800の単結晶SiC(この例では4H-SiC)のフォノンバンド構造と、ダイアグラム801の関連する状態密度をモデル化している。単結晶モデルは、大規模な単結晶材料、結晶粒の配向がずれている多結晶材料、または焼結粉末の光電子的挙動への洞察を提供する。ダイアグラム801は、単結晶SiCが音響フォノン分岐810と光学フォノン分岐820を有することを示している。音響モード(音響フォノン)では、格子内の原子が伝播方向に移動するとき、音波と同様に一緒に移動する。光学モード(光学フォノン)では、原子は互いに位相をずらして移動し、これは本開示における放射加熱に有利に使用される。
図8Bは、光学フォノン分岐820が中赤外線領域に位置し、12.4μmに対応する約0.1eV付近に中心があることを示している。光学フォノン分岐820は、SiCが中赤外線バンドで光子を放出することを示しており、これは、SiCヒータの発光波長と重なる光学フォノン吸収バンドを有するWBG基板の放射加熱のために本開示で有益に利用される。フォノンは結晶構造に固有の熱量子であり、本明細書では、適切な電子励起により赤外線エミッタとしての用途に有利な中赤外線特性を有することが示されている。
【0036】
ここで
図9を参照すると、単結晶SiCの吸収係数(cm
-1)が波長(μm)の関数としてモデル化されたプロット900が示されている。吸収係数は、放射線が材料のスラブを通過するときの放射線の減衰を表す。プロット900は
図8A及び8Bに示される光学フォノン状態に対応するフォノン吸収を示す。特に、約10~15μmの波長範囲におけるフォノン吸収920は、
図8Bに示す光学フォノン状態820に対応する。
図9は、約0.5μm未満の波長に対するバンドギャップ未満の吸収領域930も示している。
【0037】
本開示のヒータ用WBG半導体材料の一例としてのSiCの特性を、従来の加熱材料と比較して、
図10に示す。
図10のプロット1000は、900℃における白金1020(Pt、従来の高融点金属)の放射率と比較した、850℃における波長(μm)の関数としてのSiC1010の放射率を示す。見て分かるように、Pt1020の放射率はSiC1010の放射率よりも低い。SiC1010の放射率はまた、
図8Bの光学フォノン分岐820における0.1eV付近の谷に起因する約12μmを中心とする谷1011を示す。
図10から分かるように、抵抗加熱材料は、中IR範囲にあるフォノンベースの放射率を有する。Ga
2O
3の放射率はSiCの放射率と類似しているが、フォノン吸収バンドがより長い赤外線波長にわずかにシフトする。
【0038】
抵抗加熱素子としてのSiCと例示的なWBG基板材料との間の特性の比較が、
図11及び12に提供されている。
図11のプロット1100及び
図12のプロット1200は、逆cm(inverse cm)(cm
-1)単位の周波数またはミクロン(μm)単位の波長の関数としてモデル化されたフォノン状態密度を示す。プロット1100は、Ga
2O
3(空間群C2m)の形態のWBG基板の状態密度を示すダイアグラムであり、プロット1200は、Al
2O
3(空間群R3c)に関する同様のダイアグラムである。プロット1100及び1200は両方とも、基板材料とSiCの状態密度との重なりを示している。プロット1100では、SiCとGa
2O
3との間の重なりは約12.5μmで始まり、中赤外線範囲(中赤外線は約12~40μm)のより長い波長でさらに重なりが生じる。同様に、プロット1200では、SiCとAl
2O
3との間の重なりは約12.0μmで始まり、中赤外線範囲まで続く。これらの図から、SiCからのフォノン依存光学発光が放射加熱をもたらし、この加熱はGa
2O
3及びAl
2O
3のWBG基板によって吸収できることが分かる。
【0039】
この開示から分かるように、WBG基板を放射加熱するための方法及びシステムは、従来の高融点金属フィラメント加熱装置からの放射線と基板を結合するために通常使用されるような裏面コーティングもバッキングプレートも必要とせずに基板を加熱することを可能にする。別の重要な利点は、本開示による抵抗加熱素子材料(例えば、SiC)が、高温での耐酸化性が向上するように選択されてよいことである。耐酸化性は、金属酸化物などのエピタキシャル酸化物の堆積においてなど、酸素または酸素プラズマの使用が堆積プロセスの構成要素またはステップを形成する堆積環境用の加熱素子の重要な特性である。
【0040】
本加熱システムの実施形態はまた、WBG基板の均一かつ一貫した加熱を保証するための加熱装置及び制御システムを含む。基板の蒸着面全体にわたる均一な加熱は、成長する層の適切な形成と均一な厚さを実現するために重要である。一部の実施形態における本開示の加熱システムは、WBG基板を放射加熱するように構成されたマルチゾーン加熱素子を有する抵抗ヒータと、従来のシステムのようなヒータ自体の温度ではなく、基板の蒸着面から感知される温度に基づいて、ヒータにフィードバックを有益に提供する制御システムとを備える。
【0041】
図13は、一部の実施形態による、
図6の加熱システム600と併せて使用され得る加熱制御システム1300の概略図を示す。
図6の参照番号及び関連する説明は、
図13にも当てはまる。加熱制御システム1300は、2つ以上のゾーンに配置された2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子を備えるマルチゾーン抵抗ヒータ1310を備える。この実施形態では、抵抗ヒータ1310は、中央の円形抵抗加熱ゾーン1311に第1の抵抗加熱素子を備え、2つの外側環状抵抗加熱ゾーン1312及び1313に、それぞれ、第2及び第3の抵抗加熱素子を備える。各抵抗加熱ゾーン1311、1312、及び1313に供給される電流量は、個別に制御されてよい。各抵抗加熱素子は、金属酸化物基板などのWBG基板のフォノン吸収に一致するように設計された波長バンドの放射率を有する材料で構成されるように選択される。
【0042】
この実施形態では、マルチゾーン抵抗ヒータ1310は、加熱ゾーン1311、1312、1313のそれぞれに対して個別の熱電対1314を備える。熱電対1314は、各ヒータゾーンの真正面の温度を測定するように構成され、閉ループ制御フィードバックをヒータ電源に提供して、各ヒータゾーンの所望の温度を実現するために使用される。
【0043】
加熱制御システム1300は、基板650の蒸着面655全体にわたって所望の温度プロファイルを実現するために、加熱ゾーン1311、1312、1313を個別に制御するように機能する測定システムである高温計1320をさらに備える。高温計1320は、抵抗ヒータの温度ではなく、加熱プロセス中の蒸着面655の温度プロファイルを監視する。従来の実践では、抵抗ヒータの表面全体で空間的に均一な温度が実現されたとしても、その後の影響により基板全体の温度分布が劇的に変化する可能性があることが通常、見落とされている。本開示に関連して実行された高温測定により、たとえ抵抗ヒータによって与えられる温度プロファイルが均一であっても、基板ホルダに起因するエッジ効果及び入射放射線の光学的影が基板全体にわたって不均一な加熱を引き起こすことが判明した。例えば、
図14に示すように、基板ホルダ658の支持リップ659は、たとえ入射放射線630が均一であっても、基板650の不均一な加熱をもたらすエッジ効果及び光学的影を引き起こす可能性がある。バッキングプレート691はエッジ効果を取り除くことができるが、基板を加熱するときに実現できる全体の温度に影響を与える可能性がある。基板全体の温度を下げると、層の蒸着に必要な高温を実現する能力が妨げられる可能性がある。バッキングプレート691はまた、たとえエッジ効果が存在しないとしても、基板650の中心からエッジまでに温度差を生じさせることがある。
【0044】
図13に戻ると、高温計1320は、蒸着面655の温度分布を決定するように有利に構成される。温度は、蒸着面655から放出され、ビューポート680を透過する放射線を受けることによってリモートで測定される。高温計1320は、この実施形態ではピクセル1321の長方形アレイを備える2次元カメラまたは検出器アレイ1325を使用して、蒸着面全体の様々な位置から放出される放射線を測定する。高温計1320は、検出器アレイまたはカメラ1325、ならびにレンズ1322、アパーチャ1323及び光学フィルタ1324のうちの少なくとも1つを含む光学部品(例えば、集束光学系)を備える。基板650の蒸着面655から発せられる放射線635は、集束光学系によって検出器アレイまたはカメラ1325上に結像される。アパーチャ1323は、光学系の視野の設定を支援するためにオプションで使用することができる。光学フィルタ1324は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタを使用することなどにより、特定の波長範囲を通過させるように構成される。例えば、光学フィルタ1324は、特定の波長範囲1340を選択するように構成されて、広帯域検出器アレイ1325が波長範囲1340のみに対して波長感度を有することを可能にし得る。本開示の実施形態に従ってWBG基板の温度を測定するために、光学フィルタ1324は、所望の検出範囲(例えば、中赤外線バンド)の光放射を選択的に通過させる。例えば、波長範囲1340は、5~20μm、または6~15μm、または6~9μmとなるように選択されてよい。一部の実施形態では、光学フィルタ1324は、特定の波長範囲に動的に調整されてよい。次に、画像化された基板を波長の関数として空間的に分析し、黒体スペクトルと照合して基板の空間温度プロファイルを決定することができる。場合によっては、この温度プロファイルは、複数の波長固有のフィルタから構築することができる。一部の実施形態では、レンズを備えた単一の検出器を使用して、ウェハ表面の小さな部分に焦点を合わせることができる。検出器とレンズはウェハ表面を走査して、基板全体の温度プロファイルを決定することができる。例えば、レンズと検出器は、最初はウェハの中心を撮像するように向けられてよい。次に、基板が回転している間に検出器とレンズを傾けてウェハの中心からウェハのエッジまで放射状にウェハを走査して、高温計信号のラジアルマップを構築することができる。
【0045】
図15A、15B、及び15Cは、それぞれ、
図13の断面A-A′、断面B-B′、及び断面C-C′を通る断面図を示す。断面A-A′はマルチゾーン抵抗ヒータ1310の断面であり、断面B-B′は基板650及び基板ホルダ658の断面であり、断面C‐C′は検出器アレイ1325の断面である。断面C-C′(
図15C)で分かるように、検出器アレイ1325のピクセルアレイ1321は、基板ホルダ658及び蒸着面655全体の画像を受信する。ピクセルアレイ1321の個々のピクセルは、蒸着面655上の対応する位置に相関されてよい。波長範囲1340の個々のピクセルにおける強度の測定値は、基板ホルダ658及び蒸着面655全体にわたるリモートで決定された温度分布を得るために、ステファン-ボルツマン関係に従って対応する位置の温度に相関させることができる。回転する基板650の場合、温度分布は回転軸からの距離rの関数となり、形式T(r)を有する。このようにして、加熱制御システム1300は、光学フィルタ1824を通して受け取った光放射に基づいて、基板650の蒸着面655の複数の温度を測定する。
【0046】
高温計によって測定された温度は、抵抗ヒータ1310にフィードバックとして提供される。フィードバックは、加熱ゾーン1311、1312、及び1313内の2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子を制御するために、複数の温度を含む。例えば、蒸着面655の中央部分に対応する温度を使用して、中央加熱ゾーン1311の抵抗加熱素子を調整することができる。同様に、蒸着面655の中心からさらに離れた位置に対応する温度を使用して、対応する環状加熱ゾーン1312または1313の抵抗加熱素子を調整することができる。一部の実施形態では、高温計1320からの温度フィードバックは、マルチゾーン抵抗ヒータ1310を制御するために、熱電対1314からのフィードバックと併せて使用されてよい。例えば、マルチゾーン抵抗ヒータ1310の電力設定は、熱電対1314からのフィードバックを使用して、加熱素子の所望の温度設定値に従って制御することができ、ここで、各加熱ゾーン(1311、1312、1313)の温度設定値は、高温計1320ごとの基板表面温度からのフィードバックに基づいてよい。言い換えれば、基板650の高温計に基づく測定値は、熱電対1314とマルチゾーン抵抗ヒータ1310の間のフィードバックループに加えて、アクティブフィードバックループとして機能することができる。蒸着面655の温度を測定することによって、加熱制御システム1300は、基板温度を適切に捕捉できない可能性がある抵抗ヒータ1310の温度に基づくのではなく、材料成長が生じる表面上で所望の温度プロファイルを正確に実現する。さらに、抵抗ヒータ1310のマルチゾーン構成により、特定の位置での温度調整が可能となり、所望の温度プロファイル(例えば、表面全体にわたる均一なプロファイル)を確実に維持するのに有利に役立つ。
【0047】
図13、
図15A~15C、及び本開示を通じて記載した真空蒸着プロセスにおいて基板を放射加熱するシステムの実施形態は、5x10
-4トール以下の圧力など、高真空または超真空で運転する真空蒸着チャンバを含む。抵抗ヒータは、真空蒸着チャンバ内にあり、抵抗ヒータは基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する放射熱を生成する。抵抗ヒータは、2つ以上のゾーンに配置された、個別に制御される2つ以上の抵抗加熱素子を備える。システムは、真空蒸着チャンバ内に、基板を保持するための基板ホルダを備える。基板はワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含み、基板は、コーティングされていない表面と、コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有する。基板ホルダは、放射熱を受け取るために、2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子と間隔を置いて対向するように、コーティングされていない表面を位置付けるように構成される。基板のコーティングされていない表面は、放射熱を吸収することによって直接加熱される。システムは、高温計を備える加熱制御システムも含み得る。加熱制御システムは、中赤外線バンドの光放射を選択的に通過させる光学フィルタを備える。加熱制御システムは、光学フィルタを通過する光放射に基づいて、基板の蒸着面全体にわたる複数の温度を測定する。加熱制御システムは、複数の温度を含む信号を含むフィードバックを抵抗ヒータに提供して、2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子を制御する。
【0048】
基板を放射加熱するためのシステムの実施形態では、2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子は、本明細書に記載されるように耐酸化性である。例えば、抵抗加熱素子はSiCを含んでよく、一部の実施形態では、SiCはn型ドープされてよい。抵抗加熱素子用のSiCは、単結晶または多結晶であってよく、3C-SiC、2H-SiC、4H-SiCまたは6H-SiCなどの様々なポリタイプであってよいが、これらに限定されない。別の例では、2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子はGa2O3を含んでよく、Ga2O3はSiCでコーティングされてよく、及び/または一部の実施形態ではn型であってよい。抵抗加熱素子用のSiGa2O3は単結晶または多結晶であってよい。
【0049】
一部の実施形態では、本開示のシステムによって放射加熱される基板のWBG半導体材料は酸化物であり、3eVから9eVのバンドギャップを有する。一部の実施形態では、基板のWBG半導体材料は、Al2O3、Ga2O3、SiC(例えば、3C-SiC、2H-SiC、4H-SiCもしくは6H-SiC、または他の多形体)、MgO、LaAlO3、Gd3Ga5O12、MgF2、LiF、MgGa2O4、またはCaF2を含む。
【0050】
図16は、マルチゾーン加熱制御システム1300を用いて基板の所望の温度プロファイルを実現することを示している。
図16では、プロット1610a、1610b、1610c及び1610dは、高温計1320からの温度フィードバックを使用して実現され得る様々な基板温度プロファイル1620a、1620b、1620c及び1620dを示す。各プロットは、温度を半径の関数として示し、各温度プロファイル(任意のy軸単位)は、抵抗ヒータ1310の個別に制御される3つの抵抗加熱ゾーンの合成である。例えば、温度プロファイル1620aは、中央加熱ゾーン1630a、中間環状ゾーン1640a、及び外側環状ゾーン1650aを集めたものである。同様に、温度プロファイル1620b~dは、それぞれ、中央加熱ゾーン1630b~d、中間環状ゾーン1640b~d、及び外側環状ゾーン1650b~dの結果である。見て分かるように、個別に制御される抵抗加熱ゾーン(例えば、プロット1610bの1630b、1640b、及び1650b)のそれぞれの寄与は、所望の全体的な温度プロファイルを実現するために個別に制御または補償されてよい。一実施形態では、温度フィードバックは、プロット1610aから1610dまでの時間経過において、高温計1320によって個別に制御される加熱ゾーンに提供される。そのような実施形態では、最終温度プロファイル1620dは平坦であることが望ましい、つまり基板表面全体にわたって均一であることが望ましい。他の実施形態では、所望の温度プロファイルは、プロット1610a~1610dのいずれかであってよい。例えば、ターゲット温度プロファイルは、必ずしも平坦である必要はなく、中央ゾーン及び外側環状ゾーンと比較して、中央環状ゾーンの温度が高い(例えば、プロット1610a)、もしくは中央環状ゾーンの温度が低い(例えば、プロット1610b)、または、中央ゾーン及び中央環状ゾーンは相対的に均一な温度(例えば、プロット1610c)など、任意の所望のラジアルプロファイルであってよい。
【0051】
図17は、蒸着面の所望の温度プロファイルを実現するために基板の加熱を制御し、基板上に酸化物を蒸着するための方法1700のフローチャートである。方法1700は、
図13で説明した加熱制御システム1300を用いて実施されてよい。この方法は、一部の実施形態では、ヒータの初期設定を決定するために校正プラテンを利用し、その後、実際の蒸着プロセス中にWBG基板を加熱するときの補償パラメータを計算する。
【0052】
ブロック1710で、個別に制御される抵抗加熱ゾーンは、作業基板650の代わりに校正プラテンを使用して校正される。校正プラテンはバルク材料で作られ、基板と同様の形状及びサイズである。一般に、校正プラテンの温度プロファイルT
cはT
c(P
i=1,・・・N, R,ε
p)で表され、ここで、P
iは各加熱ゾーンの補償設定、Nは加熱ゾーンの数、Rは半径、ε
pはプラテンの放射率である。
図13に示すマルチゾーン抵抗加熱素子1310では、ゾーンの数Nは3になる。バルク材料プラテンを使用することによって、温度プロファイルT
cはプラテンの放射率ε
pのみの関数となり、測定温度プロファイルはT
c(P
i=1,・・・N, R,ε
p)=T
c(ε
p)によって決まる。ブロック1710は、ブロック1712において、基板が配置される位置に、つまり、抵抗ヒータから間隔を置いて、校正プラテンを配置することを含む。ブロック1710はまた、抵抗ヒータを用いて校正プラテンを加熱すること(ブロック1714)と、加熱された校正プラテンの校正温度プロファイルT
cを測定すること(ブロック1716)と、校正温度プロファイルに基づいて抵抗ヒータの設定を決定すること(ブロック1718)とを含む。一実施形態では、初期設定は、すべての加熱ゾーンの抵抗ヒータが同じ電力または電流であることから開始されてよい。一部の実施形態では、設定の校正は、校正プラテン上で特定の温度プロファイルを実現する、抵抗ヒータ1310の異なるゾーンの抵抗加熱素子の電力レベル及び抵抗加熱素子間の電力比を確立することを含み得る。ブロック1710は、作業基板650を加熱するための放射熱を生成する前に実行される。
【0053】
ブロック1710の他の実施形態では、校正プラテンを省略することができ、ヒータを既知の駆動パラメータ(例えば、電流または電圧)で動作させながら、校正済み高温計を使用して基板表面の温度を測定することができる。その後、ヒータのパラメータを修正して、ウェハ全体で均一な温度プロファイルを実現することができる。
【0054】
ブロック1720で、バルク材料校正プラテンは、蒸着プロセスのための所望の成長基板で置き換えられる。ブロック1730では、ブロック1710の校正によって決定された個別に制御される抵抗加熱ゾーンの設定を使用して基板が加熱され、基板の温度プロファイルTs(Pi=1,・・・N, R,εp)が測定される。
【0055】
ブロック1740、1750及び1760はフィードバック制御ループであり、最初にブロック1740で、ターゲット(すなわち、所望の)基板温度プロファイルT′S(R)を実現するための個別に制御される抵抗加熱ゾーンの補償設定P′i=1,・・・Nが計算される。補償設定の計算は、個々の加熱ゾーンの電流または電力の調整を含み得る。一例として、蒸着プロセス中、回転する基板のエッジに近付くほど温度は、中心に向かうよりも自然に低くなる可能性があり、それに応じて、補償設定により、マルチゾーン抵抗加熱システムの外側環状ヒータの熱出力を増加させてよい。補償設定は、基板の材料と比較した校正プラテンの材料の異なる挙動の調整も含み得る。補償設定が実施され、次に、ブロック1750で基板の温度プロファイルが再度測定される。ブロック1760では、温度プロファイルが所望の設定値の閾値範囲内にあるかどうかなど、測定された温度プロファイルがターゲット基板温度プロファイルT′S(R)に適切に近いかどうかの判定が行われる。ブロック1760における判定は、高温計1320からのフィードバックに基づいており、さらに、抵抗ヒータの熱電対1314からのフィードバックを利用することもできる。この閾値条件が満たされる場合、基板上に層を蒸着する蒸着プロセスはブロック1770に進み得る。温度プロファイルが所望の範囲内にない場合、制御ループはブロック1740に戻り、個別に制御される抵抗加熱ゾーンの新しい補償設定を計算する。
【0056】
図18は、真空蒸着プロセスにおいて基板を加熱する方法1800を表すフローチャートである。ブロック1810は、抵抗加熱素子を有する抵抗ヒータを提供することを含み、抵抗加熱素子から放出される放射熱は、基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する。基板はワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含み、コーティングされていない表面と、コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有する。ブロック1820は、抵抗加熱素子及び基板を真空蒸着チャンバに配置することを含み、基板のコーティングされていない表面は、抵抗加熱素子と間隔を置いて対向している。ブロック1830において、真空蒸着チャンバは、5×10
-4トール以下の圧力(すなわち、5×10
-4トールより高い真空)で運転される。ブロック1840では、抵抗加熱素子から放射熱が生成され、その放射熱で基板が加熱される。基板のコーティングされていない表面は、放射熱を吸収することによって直接加熱される。直接加熱は、裏面にコーティングを施さず、基板と抵抗ヒータの間にバッキングプレートも使用せずに、基板の裏面をヒータからの放射熱に直接、曝露することを含む。例えば、ブロック1820における基板の位置決めは、基板を基板ホルダに取り付けることを含み得るが、基板ホルダには、伝導によって基板を加熱するために放射熱を吸収するプレートが存在しない。ブロック1850では、エピタキシャル酸化物層を蒸着するなど、1つまたは複数のエピタキシャル層が基板の蒸着面に蒸着される。
【0057】
ブロック1810の一部の実施形態では、抵抗加熱素子はマルチゾーン抵抗ヒータの形態である。このような実施形態では、ブロック1810は、2つ以上の抵抗加熱素子を備える抵抗ヒータを提供することを含み、2つ以上の抵抗加熱素子は個別に制御され、2つ以上のゾーンに配置される。この方法はまた、加熱制御システムを用いて抵抗ヒータにフィードバックを提供するブロック1845を含み得る。マルチゾーン抵抗ヒータ及び加熱制御システムは、
図13に記載されるように構成されてよい。例えば、加熱制御システムは、高温計と、中赤外線バンドの光放射を選択的に通過させる光学フィルタとを含み得る。加熱制御システムは、光学フィルタからの光放射に基づいて、基板の蒸着面全体にわたる複数の温度を測定する。フィードバックは、2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子を制御するために、複数の温度を含む信号を抵抗ヒータに提供することを含む。
【0058】
一部の実施形態は、WBG基板を加熱するための放射熱を生成する前に、加熱制御システムを校正するブロック1825を含み得る。ブロック1825の校正は、
図17で説明したように行われてよい。例えば、校正には、基板が配置される所に校正プラテンを配置することと、抵抗ヒータで校正プラテンを加熱することと、加熱された校正プラテンの校正温度プロファイルを測定することと、校正温度プロファイルに基づいて抵抗ヒータの設定を決定することとを含み得る。校正後、方法1800は、
図17及び本開示全体を通じて説明したように、校正プラテンを基板で置き換えることと、複数の温度を測定することと、抵抗ヒータの補償設定を計算することとを含み得る。
【0059】
方法1800の実施形態では、抵抗加熱素子は、本明細書に記載されるように耐酸化性である。例えば、抵抗加熱素子はSiCを含んでよく、一部の実施形態では、SiCはn型ドープされてよい。抵抗加熱素子用のSiCは、単結晶または多結晶であってよく、3C-SiC、2H-SiC、4H-SiCまたは6H-SiCなどの様々なポリタイプであってよいが、これらに限定されない。別の例では、抵抗加熱素子はGa2O3を含んでよく、Ga2O3はSiCでコーティングされてよく、及び/または一部の実施形態ではn型であってよい。抵抗加熱素子用のSiGa2O3は単結晶または多結晶であってよい。
【0060】
方法1800の一部の実施形態では、基板のWBG半導体材料は酸化物であり、3eVから9eVのバンドギャップを有する。一部の実施形態では、基板のWBG半導体材料は、Al2O3、Ga2O3、SiC、MgO、LaAlO3、Gd3Ga5O12、MgF2、LiF、MgGa2O4、またはCaF2を含む。
【0061】
実施形態は、
図18の方法1800に従って、本明細書に開示された方法を使用して形成された半導体構造を含み、ここで、半導体構造は、ワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含む基板と、基板上のエピタキシャル酸化物層とを含む。
【0062】
図19は、本開示の実施形態による抵抗ヒータを製造する方法1900のフローチャートである。ブロック1910では、抵抗ヒータの抵抗加熱素子を製造するために、ウェハが選択され、準備される。ウェハは、単結晶または多結晶であってよく、SiC(本開示に記載の任意の多形体)、Ga
2O
3、または本明細書に記載の任意のWBG半導体材料で作製されてよい。本開示で説明するように、抵抗ヒータとして機能するように材料を導電性にするために、ブロック1910において、必要に応じてウェハ材料をドープすることもできる(例えば、n型SiC、またはn型Ga
2O
3)。単結晶材料の場合、ウェハは既知のプロセスに従って単結晶スタータ結晶から成長させることができる。多結晶材料の場合、ウェハは、既知のプロセスに従って、単結晶スタータ結晶によってシードされることなく成長させることができる。ブロック1920において、ウェハは、所望の形状の抵抗加熱素子に機械加工される(例えば、レーザー切断)。
【0063】
ブロック1915によって表される他の実施形態では、加熱素子はウェハの代わりに粉末から形成されてよい。例えば、単結晶または多結晶粉末を高温(例えば、1000℃~1700℃)で焼結して、硬い固体物体(例えば、SiCからセラミック)を形成することができる。ブロック1915において、粉末は所望の形状の抵抗加熱素子に直接形成されてもよいし、所望の形状に近い形状に形成されてから機械加工されて最終形状を形成されてもよい。
【0064】
ブロック1930では、耐熱性電極給電接点が形成され、抵抗加熱素子に結合される。例えば、前面及び背面の接点(電極)をウェハ上にパターン形成したり、焼結部品上に堆積したりすることができる。ブロック1940において、抵抗加熱素子及び電極を備える抵抗ヒータは、電気的及び機械的支持体に取り付けられ、ブロック1950においてヒータアセンブリを形成する。
【0065】
図20は、ヒータ材料の例としてSiCを使用した、運転温度の関数としてのヒータ抵抗のグラフ2000を示す。y軸は、300℃での公称値に対するバルク抵抗をパーセンテージで表したものである。グラフ2000は、ヒータ材料の電気抵抗が温度とともに変化することを示しており、曲線のくぼみは負性微分抵抗と呼ばれる。実施形態によれば、異なる抵抗ヒータ材料の温度による抵抗の変化に適応するために、異なる設計の加熱素子を利用することができる。
図13の加熱制御システムは、温度による抵抗変化を補償するように構成することもできる。
【0066】
図21A~
図21Gは、一部の実施形態による、WBG基板を放射加熱するためのWBG半導体材料ヒータの抵抗加熱素子設計の構成の平面図である。
図21A~
図21Gの平面図は、XY平面で示されている。抵抗加熱素子の形状は、
図19のブロック1915または1920で形成することができる。見て分かるように、加熱素子は全体の形状が円形で、加熱される基板の円形の形状に対応する。これらのダイアグラムにおいて、A、B、及びCとマークされた位置は、
図19のブロック1930で形成された電極給電接点などの給電点である。給電点は電極(例えば、
図6の電極610)に接続される。抵抗加熱素子は、この開示を通じて説明されるように、加熱されるWBG基板のフォノン吸収バンドに対応する中赤外線バンド(例えば、5μmから40μm)の波長を有する放射熱を放出するWBG半導体材料で作られている。
【0067】
図21A~21Cは、一部の実施形態による、螺旋状加熱素子設計を示す。
図21Aは、螺旋の外端の位置Aと螺旋の中心の位置Cに端点を有し、螺旋線の幅W1を有する螺旋抵抗加熱素子2110を示す。
図21Bでは、抵抗加熱素子2120も螺旋状であるが、幅W2は抵抗加熱素子2110の幅W1よりも広い。幅W2がW1より大きいため、抵抗加熱素子2120の電気抵抗は、抵抗加熱素子2110の電気抵抗よりも小さい(両方の抵抗加熱素子2110及び2120の材料とZ方向の厚さが同じであると仮定すると)。
【0068】
図21Cは、同心のアルキメデス螺旋構成を有するさらに別の螺旋設計を備えた抵抗ヒータ2130を示す。
図21Cにおいて、抵抗ヒータ2130は、
図21A及び
図21Bのように螺旋を形成する1つの抵抗の代わりに、螺旋パターンで互いに平行に走る2つの抵抗加熱素子2132及び2134(すなわち、個々の抵抗)を有する。第1の抵抗加熱素子2132は、螺旋の外縁の位置Aと中心の位置Cに端点を有し、第2の抵抗加熱素子2134は、外縁の位置Bと中心の位置Cに端点を有する。平行の抵抗加熱素子2132及び2134は、同心状に互いに噛み合う。端点の位置A及びBは、この実施形態では正反対である(180°離れている)ように示されているが、他の実施形態では互いに対して他の位置に(例えば、0°離れて、または45°、または90°離れて)配置されてもよい。一部の実施形態では、3つの支持体を使用して、位置A、B、及びC(電極接触点)に接続された電極を介して構造を機械的に保持してよい。抵抗ヒータ2130の2つの抵抗の設計は、有利な電流の流れとヒータの均一性を提供することができる。
図21A~21Cから分かるように、ヒータ設計の抵抗の幾何学的形状及び数を使用して、抵抗ヒータの抵抗特性、電力要件、及び加熱特性をカスタマイズすることができる。
【0069】
図21D及び21Eは、それぞれ、抵抗ヒータ2140及び抵抗ヒータ2150を示しており、両方とも2つの抵抗を有する蛇行パターンを示している。抵抗ヒータ2140の第1の抵抗加熱素子2142は、加熱素子の円形領域の半分上の端点AからCまで延在する。抵抗ヒータ2140の第2の抵抗加熱素子2144は、円形領域の反対側の半分の端点BからCまで延在する。同様に、抵抗ヒータ2150は、端点AからCまでの第1の抵抗加熱素子2152と、端点BからCまでの第2の抵抗加熱素子2154とを有する。この実施形態では、端点A及びBは円形領域の外縁の位置にあり、位置Cは中心にある。抵抗ヒータ2140及び2150のそれぞれの両方の抵抗の蛇行パターンは、円形領域の外周から始まり、次に内側に曲がって反対方向に同心円状の経路を横切り、中心位置Cまで行ったり来たりしながらこれを繰り返す円周経路をたどる。
図21Cのように相互に噛み合うのではなく、対向する半分側ずつに抵抗を有することによって、個別に制御できる個別の加熱ゾーンが形成される。抵抗ヒータ2150の抵抗パターンは、抵抗ヒータ2140の抵抗パターンよりも高密度であり、円形領域のより多くの表面積を覆っている。つまり、抵抗ヒータ2150は、抵抗ヒータ2140よりも多くの同心の蛇行経路を有する。他の実施形態では、パターンの密度の変更に従って、
図21A及び
図21Bの比較で説明したように、抵抗線の幅も変更することができる。ヒータ設計の幾何学的特性を使用して、抵抗ヒータの加熱特性(例えば、電流の流れ、電気抵抗、均一性、ゾーン加熱)を調整することができる。
【0070】
図21Fは、内部加熱素子2162(すなわち、抵抗加熱素子)を有する抵抗ヒータ2160の実施形態の平面図を示し、これは、例えば、
図21A~
図21Eの設計のいずれかであってよい。抵抗ヒータ2160は、内側加熱素子2162を取り囲む外側加熱素子2164(すなわち、抵抗加熱素子)も備える。外側加熱素子2164は、正端子(「+」)及び負端子(「-」)で示される電極接続点を有する。
図21Fの設計は、加熱される基板の表面全体の温度を制御するための追加パラメータを提供することができる。一部の実施形態では、抵抗ヒータ2160は、
図13に関連して記載したように、マルチゾーンヒータとして機能することができる。例えば、
図21Gに示すように、外側加熱素子2164は、基板の外側環状ゾーン2166(2つの同心破線円の間のゾーン)を加熱することができる。
【0071】
図21A~21Gのヒータ設計では、加熱素子ラインの幅、パターンの密度(例えば、抵抗ライン間の間隔)、及び抵抗の数などの側面を変更して、ヒータ全体の加熱特性をカスタマイズすることができる。抵抗ヒータ内に2つの抵抗加熱素子が示されているが、2つ以上の抵抗加熱素子など、他の数の抵抗が含まれてもよい。例えば、
図21Cの設計を使用して、3つの抵抗加熱素子を平行に螺旋状にすることができる。別の例では、21D及び21Eの設計を使用して、4つの蛇行抵抗加熱素子を別個の象限に配置することができる。さらなる例では、2つの同心の外側抵抗加熱素子を
図21Fの設計で利用して、
図13に示すような3ゾーンヒータが得られる。ここでは、2つの外側加熱素子が環状加熱ゾーンであり、内側加熱素子が中央加熱ゾーンである。様々な実施形態において、個々の抵抗加熱素子は個別に制御されてよい。
【0072】
図22A及び22Bは、一部の実施形態による、抵抗ヒータ2200の側断面図を示す。
図22Aは、配線接続を備えた抵抗ヒータ2200の概略図であり、
図22Bは、回転可能なプラテンアセンブリに取り付けられた抵抗ヒータ2200を示す。これらの側面図は、
図21A~21GのXY平面に対してXZ平面によって示される。抵抗ヒータ2200は、
図21A~21Gに関して及び本開示全体を通じて説明された実施形態のいずれであってもよい。
図22Aにおいて、抵抗加熱素子2220は、
図21A~21Eに示すように、電極給電点A、B及びCを有する。電極2210は、
図22Aに示すように、正端子及び負端子を備えて抵抗加熱素子2220に結合される。電極は、
図6の電流/電圧源605などの電流または電圧源2205に接続される。電流または電圧源2205によって電極2210を介して供給される電流または電圧により、抵抗加熱素子2220に電流が流れるとき、抵抗加熱素子2220は放射熱2230を放出する。
【0073】
図22Bは、加熱アセンブリ2300に取り付けられた抵抗ヒータ2200を示す。基板ホルダ2360(プラテンとも呼ばれ得る)は、抵抗ヒータ2200によって加熱される基板2365を保持する。この実施形態では、基板ホルダ2360は、基板2365を所定の位置に保持するのに役立つバッキングリング2362を備え、バッキングリング2362は、基板2365が抵抗ヒータ2200によって直接加熱されることを可能にする開口中心2363を有する。基板ホルダ2360は、矢印2315で示すように回転するプラテンホルダアセンブリ2310上に載っている。抵抗ヒータ2200は固定されており、抵抗ヒータ2200に電力を供給し、支持するための電気的及び機械的接続は、プラテンホルダアセンブリ2310の中央セクション2314を介して供給される。アセンブリ全体は、プラテンホルダアセンブリ2310、ひいては基板2365の回転のために磁気的に結合されたベアリングに接続されている。
【0074】
この開示から理解できるように、ワイドバンドギャップ基板のフォノン吸収バンドによって吸収され得る放射熱を放出する抵抗ヒータが開示される。開示されたヒータを使用すると、基板上に導電性材料をコーティングする必要がなく、高真空環境での放射加熱のみによってWBG基板を加熱することができる。抵抗ヒータの材料、設計、及び製造方法が、抵抗ヒータとともに使用するための加熱制御システム及び方法とともに開示される。
【0075】
開示された発明の実施形態を詳細に参照し、その1つまたは複数の例を添付の図面に示した。各例は、本技術を限定するものではなく、本技術を説明するものとして提供されたものである。実際、本明細書は、本発明の特定の実施形態に関して詳細に記載したが、当業者であれば、前述の理解を得ると、これらの実施形態に対する代替形態、変形形態、及び均等物を容易に着想し得ることが理解されよう。例えば、一実施形態の一部として図示または説明されている特徴を別の実施形態に使用して、さらに別の実施形態を生み出してもよい。したがって、本主題が、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内に入るそのような修正形態及び変形形態を含むことが意図される。本発明に対するこれらの及び他の修正形態及び変形形態は、添付の特許請求の範囲により具体的に記載される本発明の範囲を逸脱することなく当業者によって実施され得る。さらに、当業者は、前述の記載が例示のみを目的とし、本発明を制限することを意図しないことを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空蒸着プロセスにおいて基板を放射加熱するためのシステムであって、
5×10
-4トール
(6.7×10
-2
Pa)以下の圧力で運転する真空蒸着チャンバと、
前記真空蒸着チャンバ内の抵抗ヒータであって、前記抵抗ヒータは、
前記基板のフォノン吸収バンドに
結合してその結果前記基板を加熱するフォノンべースの励起となる5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する放射熱を生成し、前記抵抗ヒータは、2つ以上のゾーンに配置された2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子を備える、前記抵抗ヒータと、
前記真空蒸着チャンバ内で前記基板を保持するための基板ホルダであって、前記基板はワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含み、コーティングされていない表面と、前記コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有し、前記基板ホルダは、前記放射熱を受け取るために、前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子と間隔を置いて対向するように前記コーティングされていない表面を位置付けるように構成される、前記基板ホルダと、
高温計を備える加熱制御システムとを備え、前記
高温計は、
光学フィルタと検出器を備え、前記光学フィルタは、6μmから15μmの範囲の中赤外線
波長の光放射を選択的に
前記検出器へ通過させ、
前記高温計は、前記光学フィルタを通過する前記光放射に基づいて、前記基板の前記蒸着面全体にわたる複数の温度を測定
するように構成され、かつ、
前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子を制御するために、フィードバックであって、前記複数の温度を含む信号を含む前記フィードバックを提供する
ように前記抵抗ヒータと通信する、
前記システム。
【請求項2】
前記基板の前記コーティングされていない表面が、前記放射熱を吸収することによって直接加熱される、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子が耐酸化性である、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子がSiCを含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項5】
前記SiCはn型ドープされる、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記2つ以上の個別に制御される抵抗加熱素子がGa
2O
3を含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項7】
前記Ga
2O
3がSiCでコーティングされている、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記Ga
2O
3は、n型ドープされる、請求項
6に記載のシステム。
【請求項9】
前記基板の前記WBG半導体材料が酸化物であり、3eV~9eVのバンドギャップを有する、請求項
1に記載のシステム。
【請求項10】
前記基板の前記WBG半導体材料が、Al
2O
3、Ga
2O
3、SiC、MgO、LaAlO
3、Gd
3Ga
5O
12、MgF
2、LiF、MgGa
2O
4、またはCaF
2を含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項11】
前記検出器は2次元検出器アレイである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記検出器は6μmから15μmの範囲の中赤外線波長のみに波長感度を有する広帯域検出器アレイである、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記高温計はレンズを有し、前記レンズと前記検出器は前記基板の前記蒸着面を走査して前記基板の前記蒸着面にわたる複数の温度を測定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記基板の前記蒸着面と前記高温計との間のビューポートをさらに備え、前記ビューポートは6μmから15μmの範囲の中赤外波長の光放射を透過させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムを用いて真空蒸着プロセスで基板に酸化物を蒸着する方法であって、
真空蒸着チャンバに抵抗ヒータ及び基板を配置することであって、前記抵抗ヒータは抵抗加熱素子を有し、前記基板はワイドバンドギャップ(WBG)半導体材料を含み、コーティングされていない表面と、前記コーティングされていない表面の反対側の蒸着面とを有し、前記配置は、前記コーティングされていない表面を前記抵抗加熱素子と間隔を置いて対向させることを含む、前記抵抗ヒータ及び前記基板を配置することと、
前記真空蒸着チャンバを5×10
-4トール
(6.7×10
-2
Pa)以下の圧力で運転することと、
前記抵抗加熱素子から放射熱を生成することであって、前記放射熱は、前記基板のフォノン吸収バンドに対応する5μm~40μmの中赤外線バンドの波長を有する、前記放射熱を生成することと、
エピタキシャル酸化物層を前記基板の前記蒸着面に蒸着することと
を含む、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
図15A、15B、及び15Cは、それぞれ、
図13の断面A-A′、断面B-B′、及び断面C-C′を通る断面図を示す。断面A-A′はマルチゾーン抵抗ヒータ1310の断面であり、断面B-B′は基板650及び基板ホルダ658の断面であり、断面C‐C′は検出器アレイ1325の断面である。断面C-C′(
図15C)で分かるように、検出器アレイ1325のピクセルアレイ1321は、基板ホルダ658及び蒸着面655全体の画像を受信する。ピクセルアレイ1321の個々のピクセルは、蒸着面655上の対応する位置に相関されてよい。波長範囲1340の個々のピクセルにおける強度の測定値は、基板ホルダ658及び蒸着面655全体にわたるリモートで決定された温度分布を得るために、ステファン-ボルツマン関係に従って対応する位置の温度に相関させることができる。回転する基板650の場合、温度分布は回転軸からの距離rの関数となり、形式T(r)を有する。このようにして、加熱制御システム1300は、光学フィルタ1
324を通して受け取った光放射に基づいて、基板650の蒸着面655の複数の温度を測定する。
【国際調査報告】