(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】使用済みの飲料用紙パックから得られる繊維から高度にリファイニングされたパルプを含むバリア紙又はバリアフィルム
(51)【国際特許分類】
D21H 11/14 20060101AFI20241031BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20241031BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20241031BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
D21H11/14
D21H27/30 C
D21H19/10 Z
B32B27/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524752
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2022060238
(87)【国際公開番号】W WO2023073551
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リュングヴィスト, カール-ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク, カイ
【テーマコード(参考)】
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AJ04
4F100AJ04A
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK03
4F100AK03D
4F100AK04
4F100AK04D
4F100AK12
4F100AK12B
4F100AK12C
4F100AK21
4F100AK21B
4F100AK21C
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK69
4F100AK69B
4F100AK69C
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA06
4F100BA07
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EJ42
4F100EJ85
4F100EJ86
4F100GB16
4F100JD02
4F100JD02B
4F100JK02
4F100JK03
4F100JK04
4F100JK08
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC03
4L055AC04
4L055AC06
4L055AC09
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG44
4L055AG57
4L055AG58
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG71
4L055AG85
4L055AG89
4L055BB03
4L055BE08
4L055CH18
4L055EA05
4L055EA08
4L055EA16
4L055FA14
4L055FA19
4L055FA30
4L055GA05
4L055GA30
(57)【要約】
本発明は、食品又は液体包装用ラミネートのためのバリア紙又はバリアフィルムに関し、該バリア紙又はバリアフィルムは、
使用済みの飲料用紙パック(UBC)から得られる繊維を含む高度にリファイニングされたセルロース組成物を含む基材層と、
基材層の少なくとも片面上に配置されたポリマーガスバリアコーティングと
を含む、バリア紙又はバリアフィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品又は液体の包装用ラミネートのためのバリア紙又はバリアフィルムであって、前記バリア紙又はバリアフィルムは、
使用済みの飲料用紙パック(UBC)から得られる繊維を含む高度にリファイニングされたセルロース組成物を含む基材層と、
基材層の少なくとも片面上に配置されているポリマーガスバリアコーティングと
を含む、バリア紙又はバリアフィルム。
【請求項2】
前記基材層が、高度にリファイニングされたセルロース組成物を少なくとも50重量%含む、請求項1に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項3】
前記基材層が、化学パルプ、CMP、CTMP、HT-CTMP、TMP、又はブロークから得られる繊維をさらに含む、請求項1に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項4】
基材層の両面上に配置されているポリマーガスバリアコーティングを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項5】
ポリマーガスバリアコーティングが、多糖、ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、アクリルポリマー、アクリルコポリマー、ポリウレタン、及びスチレン/アクリル酸ラテックスなどのラテックスエマルジョンからなる群から選択される、1つ又は複数の水溶性又は水分散性フィルム形成ポリマーを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項6】
基材層の少なくとも片面上に配置されているポリマーシール層をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項7】
基材層の両側上に配置されているポリマーシール層をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項8】
ポリマーシール層が、ポリオレフィン層、好ましくはポリエチレン層を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項9】
基材層の坪量が15~120gsmの範囲、好ましくは20~70gsmの範囲にある、請求項1から8のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項10】
高度にリファイニングされたセルロース組成物が、規格ISO 5267-1によって決定される、50~100の範囲、好ましくは70~100の範囲、好ましくは85~98の範囲、より好ましくは90~98の範囲のショッパー・リーグラー(SR)数を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項11】
高度にリファイニングされたセルロース組成物が、乾燥重量に基づいて、長さ>0.2mmを有する、グラム当たり少なくとも1000万本の繊維の含有量、好ましくは、乾燥重量に基づいて、グラム当たり少なくとも1500万本の繊維の含有量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項12】
高度にリファイニングされたセルロース繊維組成物が、長さ>0.2mmの値を有する繊維の、少なくとも14%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも22%の平均フィブリル面積を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項13】
高度にリファイニングされたセルロース組成物がマイクロフィブリル化セルロース(MFC)組成物である、請求項1から12のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項14】
高度にリファイニングされたセルロース組成物が、
i)繊維画分の全乾燥繊維重量に基づいて、使用済み飲料用紙パック(UBC)から得られる繊維を20~100重量含む繊維画分を提供することと、
ii)任意選択的に、繊維画分を機械的、化学的、若しくは酵素的前処理、又はそれらの組み合わせに供することと、
iii)高度にリファイニングされたセルロース組成物を得るために、任意選択的に前処理された繊維画分を、規格ISO 5267-1によって決定される50~100の範囲のショッパー・リーグラー(SR)値まで、0.5~30重量%の範囲の濃度でリファイニングすることに供することと
によって得られる、請求項1から13のいずれか一項に記載のバリア紙又はバリアフィルム。
【請求項15】
食品又は液体の包装用ラミネートのためのバリア紙又はバリアフィルムを製造する方法であって、前記方法は、
a)50~100の範囲のショッパー・リーグラー(SR)数を有する使用済み飲料用紙パック(UBC)から得られる繊維を含む高度にリファイニングされたセルロース組成物、及び任意選択的に、規格ISO 5267-1によって決定される、20~40の範囲のショッパー・リーグラー(SR)数を有する、より低程度にリファイニングされたセルロース組成物を含むパルプ懸濁液を提供することと、
b)パルプ懸濁液から紙又はフィルムの基材層を形成することと、
c)紙又はフィルムの基材層の少なくとも片面をポリマーガスバリアコーティングでコーティングして、食品又は液体の包装用ラミネートのためのバリア紙又はバリアフィルムを得ることと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使用済みの飲料用紙パック(UBC)から繊維画分をリサイクルする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用紙パックの多層構造は、再生可能な資源から作ることができる、資源効率が高く、軽量でリサイクル可能な包装ソリューションを提供する。持続的に調達されたバージンセルロース繊維は強度と剛性を提供し、他の層は液体、水蒸気、オイル/グリース、酸素、光に対するバリアを提供し、梱包された内容物を保護する。材料を正しく組み合わせることで、食品の輸送と保管の安全性が確保され、内容物を劣化から保護することで食品の腐敗と廃棄を防ぐ。これらのバリア層は、梱包される製品の種類、製品が冷蔵保存されているかどうか、又は室温で流通及び保管されている場合に応じて、様々ポリマー、又はポリマーとアルミニウム箔又はコーティングの組み合わせからなる。
【0003】
最も単純な形状の飲料用紙パックは、少なくとも1つの板紙層と少なくとも1つの液体バリア層、通常はポリオレフィン層を含む。飲料用紙パックは、追加のバリア層、典型的にはアルミニウム箔又はコーティング層、又はポリアミド又はEVOHなどの高バリアポリマー層をさらに含んでもよい。このような飲料用紙パックは、無菌包装によく使用されるため、無菌飲料用紙パックと呼ばれることが多い。
【0004】
無菌紙パックの一般的な構造は、ポリオレフィン、通常はLDPE(低密度ポリエチレン)の外層を含み、これが湿気と液体のバリアを提供し、基材に適用された印刷インク層を保護し、パッケージのヒートシールを可能にする。使用される板紙の種類は、梱包される製品、販売される市場、製造条件によって異なるが、通常は2層又は3層、又は最大5層の材料で、外層が漂白されているか又はクレイでコーティングされており、多くの場合、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、褐色パルプ、又は高収率パルプを含み、板紙はパッケージに必要な機械的剛性を与え、通常、パッケージの全重量の約65~75%を占める。板紙の内側はLDPEでコーティングされ、臭気、光、ガスバリアを提供するアルミ箔層と結合する。最内プラスチック層へのアルミニウム箔の接着は、例えば、EMAA(ポリ(エチレン-コ-メタクリル酸))の結合層の使用によって達成される。最後に、LDPEの内層を適用して、紙パックのヒートシールを可能にする。
【0005】
使用済み飲料用紙パック(UBC)という用語は、本明細書では、使用後の飲料用紙パック、特に使用後に収集された消費後の無菌飲料用紙パックを示すために使用される。
【0006】
UBCの組成は、他の多くのリサイクル資源と比べて異なる。UBCは、典型的に、以下によって特徴付けられる。
・大量の漂白又は未漂白の化学繊維、半化学繊維、又は機械繊維
・高いプラスチック含有量
・箔及びコーティング由来の高いアルミニウム含有量
・食品又は液体の残留物
・高い細菌(microbe)(微生物(microorganism))含有量
・様々な油脂を含む高い量の有機材料
・単価及び多価のイオン又は塩の高い含有量
・重金属の存在の可能性
・非意図的添加物質(NIAS)
・使い捨て部品(キャップ、ストロー及び梱包ワイヤーなどの長い紐状物質)などの包装及び包装品を含む混合廃棄物
【0007】
収集されたUBCには、印刷インキ及びワニスを含み得る。通常、繊維の大部分は印刷インキに直接曝されないが、溶解したインキ又はインキの破片が分解工程中に繊維上に再付着する可能性がある。
【0008】
リサイクルは一次リサイクル、二次リサイクル、三次リサイクル、四次リサイクルに分類できる。一次リサイクルとは、材料を再処理して元の用途、又は同等以上の品質の同等の製品に戻すことを指すが、使用済みの紙パックは元の用途に直接戻すことができないため、これは現在選択肢ではない。二次リサイクルは、材料が処理され、未使用の材料特性を必要としない用途で使用される、UBCにとって最も普及しているリサイクル選択肢である。紙繊維は、ポリマー及びアルミニウム残留物(本明細書ではポリAl残留物とも呼ばれる)から分離され、繊維は紙製品に組み込まれる。もう1つの二次リサイクルプロセスは、細断されたUBCを建設資材に変換することを含む。三次リサイクルは、製品を化学構成要素に分解し、その後それらの化学物質を様々な製品にリサイクルすることを含む。UBCの四次リサイクルは、エネルギー回収を伴う焼却を含むが、このプロセスは多くの国ではリサイクルとはみなされていない。
【0009】
UBCはその多層構造と特徴的な組成により、効率的にリサイクルして再利用することが困難である。その結果、今日、UBCは多くの場合収集され、埋め立てとして処分されるか、焼却されるか、又は様々な低価値画分(ポリマーに富む画分、繊維に富む画分、及び廃水又は汚泥画分など)に加工される。繊維に富む画分は、典型的に、複合材料、食品以外の包装用途、及びティッシュ、タオル、ライナー、筆記用紙など、より高い不純物含有量が許容されるその他のグレードで使用される。
【0010】
板紙は、典型的に、紙パックの全重量の65~75%を構成するため、この画分の回収が紙パックのリサイクルアプローチの主な焦点となっている。リサイクルは、製紙工場で従来のハイドラパルパー又はドラムパルパーを使用して紙の繊維を回収することによって達成できる。ハイドラパルパーは、底部に羽根車を備えた大きな円筒形の容器で、紙の繊維を粉砕し、ミル内でさらに処理できる比較的希薄な繊維のスラリーを生成する。ハイドラパルパー内で水と紙層の接触が起こり、パルパー内部の水力によって層が分離する。化学薬品は必要ではないが、分離効率を向上させるために溶媒や酸又はアルカリ溶液が使用される場合がある。ハイドラパルパー内のパルプの濃度は、典型的に、15重量%未満である。ハイドラパルパーには、概して、PolyAl残留物、キャップ、ストロー、及び梱包ワイヤーなどの長い糸状物質をスラリーから除去するラガーが装備されている。パルパーから取り出した後、PolyAl残留物は穴のあいた回転シリンダー内で洗浄され、混入した繊維が回収される。ドラムパルパーは基本的に、バッフルを備えた回転する傾斜ドラムであり、パルプ化セクション及びスクリーニングセクションで繊維の損失を最小限に抑えて繊維から破片を分離する。
【0011】
多くの製紙工場はUBCをリサイクルできるハイドラパルパーを有しているが、理論上の最大収率が、他の紙パッケージの85%以上に比べて、75%にすぎないという事実は、PolyAl残留物を経済的に処理するという課題と同様に、意欲を阻害している。さらに、回収されたUBC繊維には、特に食品残渣や非意図的添加物質(NIAS)からの不純物が多量に含まれているため、バージンパルプ流又は汚染の少ないパルプ流への混合には不適切となる可能性がある。現在、板紙製造プロセスにおけるリサイクル材料の使用には厳しい規制と制限がある。UBCから得られた繊維には、板紙製造プロセスに戻すべきではない成分が含まれている可能性がある。例は、プラスチック粒子、金属、金属化合物、蛍光増白剤(OBA)又は蛍光増白剤(FWA)、インキ残留物又は鉱物油、特に微生物、有毒成分、及び食品残留物を含む。これらの不純物は、ウェットエンドの化学的性質(プロセス性能)を妨げる可能性があるが、最終製品の特性(機械的又は製品の性能、バリア特性、不純物、微生物の増殖など)にも影響を与える可能性がある。
【0012】
UBCから得られる繊維は、多くの場合、高い微生物活性又は高い微生物負荷を示すことがあり、再利用する前に繊維又はパルプの微生物の不活性化又は滅菌が典型的に必要とされる。
【0013】
リサイクルUBCのもう1つの課題は、UBCから得られる繊維がリサイクル及び再利用されるときに格下げされたとみなされたとみなされることである。この格下げは、過剰な機械的及び化学的処理によって引き起こされる機械的特性の低下が部分的に原因である。リサイクル繊維は、機械的に損傷を受けたり、強度及び機械的性能などに影響を与える方法で処理されたりする可能性がある。
【0014】
一般に、食品又は飲料の包装用途の板紙の製造には、未使用の紙繊維のみが使用される。食品包装用途の板紙に含まれる再生繊維の量を増やす必要がある。高度の汚染、微生物負荷、リサイクル材料の劣化のため、UBCの繊維は食品や飲料の包装用ラミネートや製品に効率的に再利用できないと一般に考えられている。
【0015】
したがって、基材及びラミネートの機械的特性に影響を与えたり、包装された内容物の汚染の危険を引き起こしたりすることなく、UBCからのパルプを食品又は飲料の包装基材及びラミネートに、特に高内容物で使用できるようにする方法を見つける必要がある。
【発明の概要】
【0016】
本開示の目的は、使用済みの飲料用紙パック(UBC)由来のパルプを、食品又は飲料の包装基材及びラミネートなど、通常バージン紙繊維のみが使用される用途及び製品で再利用できる方法を提供することである。
【0017】
本開示の目的は、使用済みの飲料紙パック(UBC)由来のパルプを、基材及びラミネートの機械的特性に悪影響を与えたり、包装された内容物を汚染するリスクを引き起こしたりすることなく、食品又は飲料の包装基材及びラミネートに再利用できる方法を提供することである。
【0018】
本開示の目的は、使用済み飲料用カートン(UBC)のパルプを、UBC以外のパルプ及びUBCパルプによる処理水の流れによる汚染なしに、食品や飲料の包装基材及びラミネートに再利用できるようにする方法を提供することである。
【0019】
上述の目的、並びに本開示を考慮して当業者によって実現されるであろう他の目的は、本開示の様々な態様によって達成される。
【0020】
本発明は、リサイクルUBC繊維を高度にリファイニングされた(highly refined)セルロース組成物又はマイクロフィブリル化セルロース(MFC)組成物の形態で調製することによって、マシングレーズ(MG)紙、グラシン紙、耐油紙、MFCバリアフィルムなどの、高度にリファイニングされたセルロース又はMFC紙又はフィルムを製造することによって、UBCから得られた繊維を板紙に再利用することに伴う問題の多くは軽減又は解決できる、という認識に基づいている。製造される紙又はフィルムの種類に応じて、高度にリファイニングされたセルロース組成物を単独で使用することも、他のあまり精製されていない繊維と組み合わせて使用することもできる。高度にリファイニングされたセルロース又はMFCの紙又はフィルムは、他のバリアコーティング又は層と有利に組み合わせて、包装用ラミネートのバリアフィルムとして使用することができる。
【0021】
UBCから得られた繊維を包装用ラミネートの別のバリアフィルムに組み込むことにより、本発明の方法により、UBC繊維を非UBC繊維と混合した場合に可能な量よりも多量のUBC繊維を板紙、例えば包装用ラミネートのための板紙に組み込むことが可能になる。本発明のUBCを含むバリアフィルムは、包装用ラミネートに使用されるUBCを含まない紙又は板紙層とは別に製造できるため、UBCパルプ及びプロセス水流による非UBCパルプ及びプロセス水流の汚染を防止するか、少なくとも最小限に抑えることができる。
【0022】
本明細書に示す第1の態様によれば、食品又は液体の包装用ラミネートのためのバリア紙又はバリアフィルムが提供され、前記バリア紙又はバリアフィルムは、
使用済みの飲料用紙パック(UBC)から得られる繊維を含む高度にリファイニングされたセルロース組成物を含む基材層と、
基材層の少なくとも片面上に配置されたポリマーガスバリアコーティングと
を含む、バリア紙又はバリアフィルム。
【0023】
高度にリファイニングされたセルロース組成物は、規格ISO 5267-1によって決定される50~100の範囲のショッパー・リーグラー(SR)値まで精製されることが好ましい。いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、規格ISO 5267-1によって決定される、70~100の範囲、好ましくは85~98の範囲、より好ましくは90~98の範囲のショッパー・リーグラー(SR)数を有する。セルロースパルプの精製又は叩解とは、セルロース繊維に所望の特性を与えるために、セルロース繊維を機械的に処理及び改質することを指す。
【0024】
UBCから得られる繊維は、高度精製セルロース組成物の全乾燥繊維重量に基づいて、20~100重量%の量で高度精製セルロース組成物中に好ましく存在する。いくつかの実施形態では、UBCから得られる繊維は、高度にリファイニングされたセルロース組成物における主要な繊維タイプである。いくつかの実施形態では、UBCから得られる繊維は、高度精製セルロース組成物の乾燥繊維全重量に基づいて、50~100重量%、60~100重量%、又は70~100重量%の量で高度精製セルロース組成物中に存在する。UBCから得られる繊維は、非UBCセルロース繊維と混合されてもよい。繊維画分の乾燥繊維重量の残りは、典型的には非UBCセルロース繊維で構成され得る。非UBCセルロース繊維は、例えば、化学パルプ、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、高温ケミサーモメカニカルパルプ(HT-CTMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、又はブロークから得ることができる。非UBCセルロース繊維は、好ましくはバージン繊維又は消費前再生繊維である。繊維は、針葉樹繊維、広葉樹繊維、又は非木材繊維であってもよく、漂白されていても、漂白されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、完全に又はほぼ完全にUBCから得られる繊維からなる。
【0025】
バリア紙又はバリアフィルムの目的に応じて、高度にリファイニングされたセルロース組成物を基材層内で単独で使用するか、又は別のあまり精製されていないセルロース組成物と組み合わせて使用することができる。基材層は、好ましくは、高度にリファイニングされたセルロース組成物を少なくとも10重量%含む。いくつかの実施形態では、基材層は、少なくとも20、30、40、50、60、70、80又は90重量%の高度にリファイニングされたセルロース組成物を含む。いくつかの実施形態では、基材層中の残りの繊維は、あまり精製されていないセルロース組成物である。精製度の低いセルロース組成物は、例えば、化学パルプ、CMP、CTMP、HT-CTMP、TMP、又はブロークから得られる繊維を含んでもよい。繊維は、針葉樹繊維、広葉樹繊維、又は非木材繊維であってもよく、漂白されていても、漂白されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、完全に又はほぼ完全にUBCから得られる繊維からなる。あまり精製されていないセルロース組成物は、規格ISO 5267-1によって測定されるように、例えば20~40の範囲のショッパー・リーグラー(SR)値を有し得る。
【0026】
高度にリファイニングされたセルロース組成物から形成された基材層は、通常、それ自体で優れたガスバリア特性を示すが、追加のバリアコーティング層でのコーティングに適した滑らかで緻密な基材も提供する。食品又は液体の包装用ラミネートのためのバリア紙又はバリアフィルムは、基材層の少なくとも片面に配置された少なくともポリマーガスバリアコーティングをさらに含む。バリア紙又はバリアフィルムが含まれる包装用ラミネートにバリア特性を与えることに加えて、ポリマーガスバリアコーティングは、基材層に存在する臭気又は汚染物質が隣接するラミネート層に移行することも防止することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、バリア紙又はバリアフィルムは、基材層の両面に配置されたポリマーガスバリアコーティングを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、ポリマーガスバリアコーティングは、1つ又は複数の水溶性フィルム形成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーガスバリアコーティングは、多糖類、タンパク質、ヘミセルロース、ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、アクリルポリマー、アクリルコポリマー、ポリウレタン、及びスチレン/アクリル酸ラテックスなどのラテックスエマルションからなる群から選択される1つ又は複数の水溶性又は水分散性フィルム形成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、多糖類は、デンプン、加工デンプン、アルギン酸塩、アルギン酸、及びセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースから選択される。いくつかの実施形態では、ポリビニルアルコールは少なくとも88%、好ましくは92%を超えるまで加水分解される。
【0029】
ポリマーガスバリアコーティングのコート重量は、好ましくは0.1~12gsmの範囲、好ましくは0.3~12gsmの範囲、より好ましくは1~8gsmの範囲にある。ポリマーガスバリアコーティングは、単一層として複数層として適用することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリマーガスバリアコーティングが塗布される前及び/又は適用された後に、基材層にカレンダー加工が適用される。カレンダー加工は、マシンカレンダー加工、ソフトカレンダー加工及び/又はスーパーカレンダー加工を含み得る。1つの好ましい方法は、コーティング前に基材層を機械加工又はソフトカレンダー加工し、コーティング後にコーティングされた基材層をソフトカレンダー加工又はスーパーカレンダー加工することである。
【0031】
いくつかの実施形態では、バリア紙又はバリアフィルムは、ポリマーガスバリアコーティング上に形成された金属化層をさらに含む。
【0032】
金属化とは、固体表面上に金属又は金属酸化物の層を原子ごと又は分子ごとに堆積させるために使用される一連のプロセスを指す。同じ又は異なる材料の複数の層を組み合わせることができる。プロセスは蒸気源に基づいてさらに指定できる。物理的気相堆積(PVD)は液体又は固体のソースを使用し、化学気相堆積(CVD)は化学蒸気を使用する。
【0033】
いくつかの実施形態では、金属化層は、ポリマーガスバリアコーティング上への金属又は金属酸化物の蒸着によって、好ましくは物理的気相堆積(PVD)又は化学気相堆積(CVD)によって形成される。
【0034】
いくつかの実施形態では、メタライゼーション層は、アルミニウム、マグネシウム、シリコン、銅、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される金属又は金属酸化物、好ましくは酸化アルミニウムを含む。AlOxコーティングとしても知られる酸化アルミニウム真空コーティングは、アルミニウム金属コーティングと同様のバリア特性を提供できるが、薄いAlOxコーティングは可視光に対して透明であるという追加の利点もある。
【0035】
金属化層は、1~500nmの範囲の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、金属化層は、1~100nmの範囲、好ましくは10~100nmの範囲、より好ましくは20~50nmの範囲の層厚を有する。いくつかの実施形態では、金属化層は、50~250mg/m2の範囲、好ましくは75~150mg/m2の範囲の坪量を有する。
【0036】
バリア特性、特に水蒸気バリア特性のためによく使用される金属化コーティングの1つの好ましいタイプは、アルミニウム金属物理的気相堆積(PVD)コーティングである。このようなコーティングは、実質的にアルミニウム金属からなり、典型的に、10~50nmの厚さを有し得る。金属化層の厚さは、パッケージング用の従来の厚さ、つまり6.3μmのアルミニウム箔に通常存在するアルミニウム金属材料の1%未満に相当する。
【0037】
いくつかの実施形態では、バリア紙又はバリアフィルムの酸素移動速度(OTR)は、規格TM F-1927に従って相対湿度50%、23℃で測定された際に、100cc/m2/24h/atm未満、好ましくは50cc/m2/24h/atm未満、好ましくは20cc/m2/24h/atm未満、好ましくは10cc/m2/24h/atm未満である。
【0038】
バリア紙又はバリアフィルムは、規格ISO 5636/5に従って測定して、典型的に、30000秒/100ml以上、好ましくは35000秒/100ml以上、より好ましくは40000秒/100ml以上のガーレーヒル気孔率を有する。
【0039】
バリア紙又はバリアフィルムは通常、500ml/分ベントセン以下、好ましくは350ml/分ベントセン以下、より好ましくは250ml/分ベントセン以下のベントセン表面粗さ値を有する。
【0040】
バリア紙又はバリアフィルムは通常、グリース及び油に対して優れた耐性を示す。バリア紙又はバリアフィルムの耐グリース性は、規格ISO 16532-2に準拠したKITテストによって評価される。この試験では、ヒマシ油、トルエン、ヘプタンの一連の混合物を使用するす。溶剤に対する油の比率が減少すると、粘度及び表面張力も減少し、連続混合に耐えることがより困難になる。性能は、15秒後にシートが暗くならない最も大きい番号の溶液によって評価される。失敗を引き起こすことなく紙の表面に残る最も大きい番号の溶液(最も攻撃的な溶液)が「キット評価」(最大12)として報告される。いくつかの実施形態では、バリア紙又はバリアフィルムのKIT値は、規格ISO 16532-2に従って測定して、少なくとも10、好ましくは12である。
【0041】
いくつかの実施形態では、バリア紙又はバリアフィルムは、規格ISO 3781に従って測定した、0.3~0.8kN/mの範囲の湿潤強度を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、バリア紙又はバリアフィルムは、基材層の少なくとも片面上に配置されたポリマーシール層をさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、バリア紙又はバリアフィルムは、基材層の両面上に配置されたポリマーシール層を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、ポリマーシール層は接着剤積層によって適用される。接着剤ラミネーションは、例えば、ポリオレフィン、スチレン-アクリレート(SA)ラテックス、又はポリビニルアルコール(PVOH)を含むポリマー分散液を使用して実施することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリマーシール層は、熱可塑性ポリマーフィルムの熱ラミネートの形態で、熱可塑性ポリマーの押出コーティングラミネートによって、又は熱可塑性ポリマーの溶液もしくは分散液の適用によって適用される。
【0046】
ポリマーシール層は、一般に紙又は板紙ベースの包装材料で一般的に使用されるポリマー、又は特に液体包装用板紙で使用される熱可塑性ポリマーのいずれかを含むことができる。例は、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、熱可塑性デンプン、熱可塑性セルロースを含む。ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)は、液体パッケージ用ボードに使用される最も一般的で多用途なポリマーである。いくつかの実施形態では、ポリマー封止層は、ポリオレフィン層、好ましくはポリエチレン層を含む。
【0047】
各ポリマーシール層の坪量は、好ましくは、50g/m2未満である。連続的で実質的に欠陥のないフィルムを達成するためには、少なくとも8g/m2、好ましくは少なくとも12g/m2のポリマー層の坪量が通常必要である。いくつかの実施形態では、ポリマーシール層の坪量は8~50g/m2の範囲、好ましくは12~50g/m2の範囲である。
【0048】
いくつかの実施形態では、基材層の坪量は、15~120gsmの範囲、好ましくは20~70gsmの範囲にある。
【0049】
いくつかの実施形態では、基材層の密度は800~1800kg/m3の範囲、好ましくは850~1350kg/m3の範囲である。
【0050】
いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、長さ>0.2mmの、グラム当たり少なくとも1000万本の繊維の含有量、好ましくは、乾燥重量に基づいて、グラム当たり少なくとも1500万本の繊維の含有量を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、長さ>0.2mmの値を有する繊維の、少なくとも14%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも22%の平均フィブリル面積を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物はマイクロフィブリル化セルロース(MFC)組成物である。
【0053】
いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、
i)繊維画分の全乾燥繊維重量に基づいて、使用済み飲料用紙パック(UBC)から得られる20~100重量%の繊維を含む繊維画分を提供することと、
ii)任意選択的に、繊維画分を機械的、化学的、又は酵素的前処理、又はそれらの組み合わせに供することと、
iii)高度にリファイニングされたセルロース組成物を得るために、任意選択的に前処理された繊維画分を、規格ISO 5267-1によって決定される50~100の範囲のショッパー・リーグラー(SR)値まで、0.5~30重量%の範囲の濃度でリファイニングすることに供することと
によって得られる、請求項1から13のいずれか一項に記載の食品又は液体の包装用ラミネート。
【0054】
UBCから得られる繊維は、好ましくは、繊維画分の全乾燥繊維重量に基づいて、20~100重量%の量で繊維画分中に存在する。いくつかの実施形態では、UBCから得られる繊維は、繊維画分の主要な繊維タイプである。いくつかの実施形態では、UBCから得られる繊維は、繊維画分の全乾燥繊維重量に基づいて、50~100重量%、60~100重量%、又は70~100重量%の量で繊維画分中に好ましく存在する。いくつかの実施形態では、繊維画分は完全に又はほぼ完全にUBCから得られた繊維からなる。
【0055】
実際的な理由から、UBCから得られた繊維は非UBCセルロース繊維と混合され得る。いくつかの実施形態では、工程(i)で提供される繊維画分の繊維は、化学パルプ、CMP、CTMP、HT-CTMP、TMP又はブロークから得られる繊維20~80重量%、及びUBCから得られる繊維20~80重量%からなる。繊維は、針葉樹繊維、広葉樹繊維、又は非木材繊維であってもよく、漂白されていても、漂白されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、完全に又はほぼ完全にUBCから得られる繊維からなる。繊維画分の乾燥繊維重量の残りは、典型的には非UBCセルロース繊維で構成され得る。非UBCセルロース繊維は、例えば化学パルプ、CMP、CTMP、HT-CTMP、TMP、又はブロークから得ることができる。非UBCセルロース繊維は、好ましくはバージン繊維又は消費前再生繊維である。繊維は、針葉樹繊維、広葉樹繊維、又は非木材繊維であってもよく、漂白されていても、漂白されていなくてもよい。
【0056】
繊維に加えて、繊維画分は、高度にリファイニングされたセルロース組成物の調製に通常存在する成分又は添加剤をさらに含んでもよい。
【0057】
UBCから得られる繊維には通常、多量の汚染物質が含まれているため、UBCからの繊維は食品又は飲料の包装用ラミネートに再利用できないと一般に考えられている。高度にリファイニングされたセルロース組成物中の汚染物質の量を減らすために、本発明の方法に使用される繊維画分は、好ましくは、前処理及び精製に供される前に精製に供される。精製は、セルロースファイン及び微小粒子汚染物質を除去するためのファインスクリーニング法を含むことが好ましい。ファインスクリーニング法は、任意選択的に電気浸透法と組み合わせて、さらなる汚染物質を除去することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、UBCから得られた繊維は、ファインスクリーニング法を使用した精製に供されたものである。本発明者らは、PolyAl残留物を除去した後に得られる未加工のUBC繊維画分をファインスクリーニング法に供してファイン及び微小粒子物質を除去することが有利であることを見出した。ファインスクリーニングにより、その後のUBC繊維画分の洗浄、漂白、不活性化が大幅に促進されることが判明している。リサイクルUBC繊維画分中の比較的少量のファインが、繊維画分の高レベルの不純物、高い保水性及び/又は高いドレイン抵抗の原因となっている。微粉及びファイン状物質を除去するファインスクリーニングにより、粒子状汚染物質のかなりの部分を除去でき、ドレイン抵抗が減少することで、繰り返しの洗浄工程をより短時間で実行できるようになり、その結果、より高い純度の繊維画分が得られる。
【0059】
いくつかの実施形態では、UBCから得られる繊維は、以下の工程を含む方法に従って製造された精製UBC繊維画分である:
a)UBCポリマーとアルミニウム画分及び未加工のUBC繊維画分を得るために、UBC出発材料を、ポリマーとアルミニウムフィルムの分離法に供する工程と、
b)任意選択的に、未処理のUBC繊維画分を粗大粒子を除去するための粗スクリーニング法に供する工程と、
c)セルロースファイン及びファイン汚染物質を除去するために、未加工のUBC繊維画分をファインスクリーニング法に供する工程であって、ファインスクリーニング法は、少なくとも1つのファインスクリーニング工程と少なくとも1つの希釈工程とを含む、ファインスクリーニング法に供する工程と、
d)任意選択的に、さらに汚染物質を除去するために、ファインスクリーニングされたUBC繊維画分を洗浄方法に供する工程と、
e)任意選択的に、ファインスクリーニングされたUBC繊維画分を漂白方法に供される工程と、
f)ファインスクリーニングされた、任意選択的に漂白されたUBC繊維画分を、少なくとも20重量%の濃度になるまで脱水方法に供する工程と、
g)脱水されたUBC繊維画分を不活性化方法に供して、リファイニングされたUBC繊維画分を得る工程。
【0060】
いくつかの実施形態では、UBCから得られた繊維は、電気浸透法を使用した精製に供されている。本発明者らは、UBC繊維画分、特にファインスクリーニングされたUBC繊維画分を電気浸透法に供してさらなる汚染物質を除去することが、金属イオン及び非金属イオン並びに塩を効率的に除去するだけでなく、繊維画分に含まれる鉱油飽和炭化水素(MOSH)、鉱油芳香族炭化水素(MOAH)、OBA、その他の有機汚染物質の含有量も低減することを見出した。この実現により、収集されたUBCの大部分をリサイクルして再利用できるようになる。あるいはまた、完成した再生繊維部分の残留汚染物質含有量を低減することができ、より多くのリサイクルされたUBC材料を新しい板紙製品に使用できるようになる。さらに、電気浸透法は、UBC繊維画分の微生物の活動を低下させることも判明している。
【0061】
いくつかの実施形態では、UBCから得られる繊維は、以下の工程を含む方法に従って製造された精製UBC繊維画分である:
a)UBCポリマーとアルミニウム画分及び未加工のUBC繊維画分を得るために、UBC出発材料を、ポリマーとアルミニウムフィルムの分離法に供する工程と、
b)任意選択的に、未加工のUBC繊維画分を粗大粒子を除去するための粗スクリーニング法に供する工程と、
c)セルロースファイン及びファイン汚染物質を除去するために、未加工のUBC繊維画分をファインスクリーニング法に供する工程であって、ファインスクリーニング法は、少なくとも1つのファインスクリーニング工程と少なくとも1つの希釈工程とを含む、ファインスクリーニング法に供する工程と、
d)任意選択的に、ファインスクリーニングされたUBC繊維画分を漂白方法に供される工程と、
e)さらなる汚染物質を除去するために、ファインスクリーニングされた、及び、任意選択的に漂白されたUBC繊維画分を電気浸透法に供する工程と、
f)任意選択的に、ファインスクリーニングされた、任意選択的に漂白されたUBC繊維画分を、少なくとも20重量%の濃度になるまで脱水方法に供する工程と、
g)精製されたUBC繊維画分を得るために、任意選択的に脱水されたUBC繊維画分を不活性化方法に供する工程と
を含む、方法を含む方法に従って製造された精製繊維画分が含まれる。
【0062】
さらなる洗浄及び不活性化に適した未加工繊維画分を得るために、プラスチック及び/又はアルミニウム含有量が最初に除去される。これは、a)UBC出発材料を、ポリマーとアルミニウムフィルムの分離法に供して、UBCポリマーとアルミニウム画分及び未加工のUBC繊維画分を得る工程によって行われる。UBC出発材料がアルミニウムを含まない場合、UBCポリマー及びアルミニウム画分はポリマーのみを含み、アルミニウムを含まない場合がある。得られた未加工のUBC繊維画分は、主にセルロース系材料で構成され、UBC出発材料よりも大幅に少ないプラスチックとアルミニウムを含む。ポリマーとアルミニウムフィルムの分離方法は、UBC出発材料を細断することと、細断されたUBC出発材料を水又は水溶液と混合することとを含み得る。混合物を撹拌すると、繊維が水分を吸収し、ラミネートのプラスチック層とアルミニウム層がばらばらになる。機械的ろ過及び/又は浮遊選別により、様々な画分が分離され、UBCポリマー及びアルミニウム画分と未加工のUBC繊維画分が得られる。
【0063】
工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、好ましくは、少なくとも80重量%のセルロース繊維を含む。いくつかの実施形態では、工程(a)で得られる未加工のUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、好ましくは少なくとも90重量%のセルロース繊維、好ましくは少なくとも95重量%のセルロース繊維を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、標準ISO 5267-1によって決定される、15~35の範囲、好ましくは18~30の範囲のショッパーリーグラー(SR)値を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、規格ISO 23714によって決定された、110~200%の範囲、好ましくは120~180%の範囲、より好ましくは125~175%の範囲の保水値(WRV)を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、FS5光ファイバーアナライザー(バルメット)を使用して測定したとき、22%を超える、好ましくは25%を超える「Fines A」含有量を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて1重量%を超えるプラスチック、好ましくは1.2重量%を超えるプラスチックを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて0.2重量%を超えるアルミニウム、好ましくは0.5重量%を超えるアルミニウムを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、20mg/kgを超える鉱油飽和炭化水素(MOSH)、好ましくは50mg/kgを超えるMOSHを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られる未加工UBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、20mg/kgを超える鉱油芳香族炭化水素(MOAH)、好ましくは50mg/kgを超えるMOAHを含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られる未加工UBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、5000mg/kgを超える抽出物、好ましくは10000mg/kgを超える抽出物を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、1000mg/kgを超える不飽和脂肪酸、好ましくは2000mg/kgを超える不飽和脂肪酸を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、400mg/kgを超える樹脂酸、好ましくは500mg/kgを超える樹脂酸を含む。
【0074】
抽出剤、不飽和脂肪酸、及び樹脂酸の量は、酢酸を使用してパルプをpH<3に酸性化するSCAN-CM49法を使用して測定された。抽出は、温度100℃、圧力2000psi、2サイクルでアセトンを使用するASE(加速溶媒抽出)によって行われた。抽出物はGC-FIDで分析され、内部標準に対して計算された。
【0075】
いくつかの実施形態では、工程(a)で得られた未加工のUBC繊維画分は、4%を超える灰分(525℃)及び/又は4%を超える灰分(925℃)を有する。いくつかの種類の供給源、例えば、鉱物又は顔料でコーティングされた紙パックを含む供給源から得られる生のUBC繊維画分もまた、著しく高い灰分を有し得る。
【0076】
本明細書で使用される粗粒子という用語は、一般に、1mmを超える直径又は幅を有する粒子を指す。
【0077】
本明細書で使用されるセルロースファインという用語は、一般に、セルロース繊維よりもサイズが著しく小さいセルロース粒子を指す。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるセルロースファインという用語は、セルロース系ファインを指し、これは、従来の実験室分別装置(SCAN-CM66:05)の200メッシュスクリーン(相当孔直径76μm)を通過することができる。2つの主要な繊維ファイン、すなわち、一次ファインと二次ファインがある。一次ファインは、パルプ化及び漂白中に生成され、化学的及び機械的処理によって細胞壁マトリックスから除去される。それらの起源(すなわち、複合中間ラメラ、線条細胞、実質細胞)の結果として、一次ファインは、線維状物質の割合がほんのわずかしかないフレーク状の構造を示す。対照的に、二次ファインはパルプの精製中に生成される。一次ファインと二次ファインの両方がパルプのドレイン抵抗を増加させ、抄紙機の成形セクションでの脱水速度を低下させる。パルプ繊維と比較してファインは比表面積が大きいため、プロセス化学薬品の保持力に影響を及ぼし、プロセスの安定性と最終製品の性能に大きな影響を与える。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される微小粒子汚染物質という用語は、セルロース系材料に由来しない微小粒子を指し、従来の実験室用分別装置(SCAN-CM66:05)の200メッシュスクリーン(相当孔直径76μm)を通過することができる。
【0080】
未加工UBC繊維画分からセルロースファイン及び微小粒子汚染物質を除去するために使用されるファインスクリーニング法は、少なくとも1つのファインスクリーニング工程を含む。ファインスクリーニングステップは、1つ又は複数の圧力スクリーン、1つ又は複数の液体サイクロン、1つ又は複数のベルトフィルタ、又はそれらの組み合わせを使用するスクリーニングを含むことができる。繊維混合物からファインを除去するための当業者に知られている他のスクリーニング法も使用することができる。
【0081】
未加工のUBC繊維画分からセルロースファイン及び微小粒子汚染物質を除去するために使用されるファインスクリーニング法は、少なくとも1つの希釈工程を含む。希釈工程は、UBC繊維画分の濃度を低下させるために、好ましくは、希釈液、好ましくは水又は水溶液を添加することを含む。希釈工程は、ファインスクリーニング工程の前及び/又は後に実行されてもよい。好ましくは、ファインスクリーニング工程の前にUBC繊維画分の濃度を低下させるために、少なくともファインスクリーニング工程の前に希釈が行われる。希釈後のUBC繊維画分の濃度は、使用するスクリーニング又は分画方法によって異なり得る。いくつかの実施形態では、希釈率(DF)は>2、好ましくは>2.5、>3.0、>3.5、>4、>4.5又は>5である。好ましくは、希釈工程は、UBC繊維画分を0.1~7重量%の範囲、好ましくは0.3~5重量%の範囲、より好ましくは0.5~2重量%の範囲の濃度に希釈することを含む。また、特に複数のスクリーニング工程を含むファインスクリーニング法の最後に、より高い一貫性でスクリーニングを実行することも可能である。
【0082】
いくつかの実施形態では、ファインスクリーニング法は、UBC繊維画分中のファイン及び微小粒子汚染物質の含有量を少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%低減する。より詳細には、いくつかの実施形態では、ファインスクリーニング法は、UBC繊維画分中のファイン含有量を少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%低減させ、ここでファイン含有量は、「Fines A」は、FS5光ファイバーアナライザー(バルメット)を使用して測定した。
【0083】
いくつかの実施形態では、工程(c)におけるファインスクリーニング法は、FS5光ファイバーアナライザー(バルメット)を使用して測定した「Fine A」を20%未満、好ましくは17%未満、より好ましくは15%未満に低減する。
【0084】
いくつかの実施形態では、ファインスクリーニング法は、未加工のUBC繊維画分の固形分の0.1~10重量%、又は0.1~7.5重量%、又は0.1~5重量%を除去する。
【0085】
細かく選別されたUBC繊維画分は、任意選択的に、さらなる汚染物質を除去するためのさらなる洗浄方法に供され、さらなる汚染物質、特に溶解、分散、可溶性又は抽出可能な汚染物質を除去するための洗浄方法に供される。パルプ混合物から汚染物質を除去するための任意の適切なパルプ洗浄方法を使用することができる。未加工のUBC繊維画分からさらなる汚染物質を除去するために使用される洗浄方法には、1つ又は複数の回転真空洗浄機、回転圧力洗浄機、加圧及び常圧拡散洗浄機、水平ベルト洗浄機及び希釈/抽出装置、又はそれらの組み合わせを使用する洗浄が含まれ得る。繊維混合物からファインを除去するために当業者に知られている他の洗浄方法も使用することができる。洗浄方法は、2以上の洗浄工程を含むことが好ましい。
【0086】
電気浸透法では、UBC繊維部分を電場にさらし、荷電粒子の周囲に水の動きを誘発する。電気浸透法は、電気泳動を含み得、これにより、電場内の荷電粒子が引き付けられ、反対の電荷を有する電極に向かって移動する。電場は、例えば、電気浸透装置のアノード電極及びカソード電極に電気を供給することによって生成され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、電気浸透法は以下の工程を含む。
UBC繊維画分と液体とを含むスラリーを提供する工程、
スラリーを電場に曝してスラリーの液体の流れを誘導する工程、
UBC繊維画分から液体を分離し、それにより液体の減少したスラリーを得る工程、
洗浄液、好ましくは水を液体のなくなったスラリーに添加する工程、
液体のなくなったスラリーを電場に曝して、スラリーの洗浄液の流れを誘導する工程、及び
洗浄液をUBC繊維画分から分離し、それによりリファイニングされたUBC繊維画分を得る工程。
【0088】
本発明に適用できる電気浸透法の例としては、米国特許第9447541B2号及び米国特許第10913759B2号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
電気浸透法により、UBC繊維画分から金属及び非金属のイオン及び塩が除去されるが、UBC繊維画分のOBA含有量も減少する。電気浸透法は、UBC繊維画分の微生物の活動を低下させることも判明している。
【0090】
電気浸透には、通常、UBC繊維画分の脱水も伴う。脱水の程度は、電気浸透法によって除去される汚染物質の量に関係するが、UBC繊維部分のドレイン抵抗、適用される追加の圧力又は真空、プレス生地の透過性、速度、フィルターケーキの厚さ、粘稠度などによっても影響を受ける可能性がある。脱水は、好ましくは、ベルト、ワイヤー、又はプレスファブリックなどの連続モードで行われる。
【0091】
いくつかの実施形態では、ファインスクリーニングされたUBC繊維画分は漂白法に供される。漂白法は電気浸透法の前でも後でもよい。漂白方法は、例えば、過酸化水素漂白、オゾン漂白、酸素漂白、塩化物漂白、次亜塩素酸漂白、及び抽出漂白からなる群から選択することができる。好ましい実施形態では、漂白方法は、ファインスクリーニングされたUBC繊維画分を50℃以上、例えば80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上の温度に加熱することと組み合わされる。漂白方法は、例えば、加熱と過酸化水素漂白、又は加熱と次亜塩素酸漂白の組み合わせを含んでもよい。このような漂白方法は、好ましくは、UBC繊維画分の少なくとも部分的な不活性化にもつながり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、UBCから得られる繊維は、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の濃度まで高温で乾燥に供される。
【0093】
高温は、好ましくは80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、例えば110~180℃の範囲である。
【0094】
いくつかの実施形態では、熱処理は、加熱分散機(熱分散機としても知られる)内で行われる。加熱分散機は、熱と繊維の機械的処理を高濃度で組み合わせて使用し、粘着性の目に見える汚染物質を液化、分解、分散させる装置である。加熱分散機内の温度は、好ましくは80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、例えば110~180℃の範囲である。加熱分散機における熱処理は、通常、5秒~120分間、好ましくは5秒~30分間行うことができる。加熱分散機での熱処理により、デンプン及び残留バリアポリマー及び添加剤などの溶解を改善することができる。加熱分散機での熱処理も、好ましくは、UBC繊維画分の少なくとも部分的な不活性化をもたらし得る。
【0095】
UBC繊維画分を不活性化法にかけて、リファイニングされたUBC繊維画分を得る。本明細書で使用される「不活性化」という用語は、微生物の不活性化、すなわち、UBC繊維画分の微生物活性又は微生物負荷を低減する方法又は処理を指す。不活化法は、UBC繊維画分に存在する微生物及びその他の潜在的な病原体を死滅させるか又は不活化する。不活性化方法は、繊維画分の完全な滅菌又は部分的な不活性化、すなわち消毒又は衛生化をもたらし得る。
【0096】
不活性化は、UBC繊維画分の微生物活性を少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも60%、例えば60~100%の範囲で低下させることが好ましい。好ましくは、不活性化方法は、UBC繊維画分中に存在する微生物及び他の潜在的病原体の活性を、食品又は飲料の包装基材及びラミネートに使用する繊維として通常許容されるレベルまで減少させる。不活性化リファイニングされたUBC繊維画分は、食品又は飲料の包装基材及びラミネートで再利用するのに適切な化学的純度、適切な生物学的純度、及び適切な機械的特性を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、不活性化方法は、熱不活性化、化学的不活性化、及び/又は放射線照射による不活性化を含む。熱失活は、例えば、蒸気失活及び乾熱失活からなる群から選択することができる。化学的不活性化は、例えば、エチレンオキシド、二酸化窒素、オゾン、グルタルアルデヒド及びホルムアルデヒド、過酸化水素、及び過酢酸の不活性化からなる群から選択され得る。照射不活性化は、例えば、非電離放射線不活性化及び電離放射線不活性化からなる群から選択され得る。不活性化方法は、2つ以上の不活性化技術の組み合わせを含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、不活性化方法は、紙及び板紙に使用される繊維の漂白に従来から使用されている化学薬品を使用して実行される。不活性化は、例えば、過酸化水素又はオゾンを使用して実行され得る。繊維の漂白に従来から使用されている化学薬品を使用したそのような不活性化は、UBC繊維部分の少なくとも部分的な漂白にもつながる可能性があるため、有利である可能性がある。
【0099】
いくつかの実施形態では、不活性化方法が高温を伴う場合、熱処理と不活性化方法を組み合わせることができる。例えば、121℃でのオートクレーブによる不活性化も、UBC繊維部分の熱処理となる。別の例として、繊維画分の不活性化をもたらす温度での分散機内での熱処理も、不活性化方法を構成し得る。
【0100】
リファイニングされたUBC繊維画分は、好ましくは、食品との直接的又は間接的な接触などの要求の厳しい最終用途に適している。リファイニングされたUBC繊維画分は、好ましくは、食品又は飲料の包装基材及び積層体で再利用するのに適している。
【0101】
リファイニングされたUBC繊維画分は、好ましくは、本発明の方法の工程(i)における繊維画分として使用され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、少なくとも96重量%のセルロース繊維、好ましくは少なくとも98重量%のセルロース繊維を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、規格ISO 5267-1によって決定される、15~35の範囲、好ましくは18~30の範囲のショッパー・リーグラー(SR)値を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、規格ISO 23714によって決定される、110~200%の範囲、好ましくは120~180%の範囲、より好ましくは125~175%の範囲の保水値(WRV)を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、FS5光ファイバーアナライザー(バルメット)を使用して測定したとき、20%未満、好ましくは17%未満、より好ましくは15%未満の「Fines A」含有量を有する。
【0106】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、規格ISO 302:2015に従って測定した場合、5を超える、好ましくは10を超える、より好ましくは20を超えるカッパ価を有する。一部の種類の供給源、例えば、機械パルプを含む供給源から得られる精製UBC繊維画分は、規格ISO 302:2015に従って測定されるカッパ価が30以上又は40以上など、著しく高い場合もある。
【0107】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、0.5重量%未満のプラスチック、好ましくは0.1重量%未満のプラスチックを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、0.5重量%未満のアルミニウム、好ましくは0.1重量%未満のアルミニウムを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、0.1重量%未満のOBA、好ましくは0.05重量%未満のOBAを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、精製されたUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、50mg/kg未満の鉱油飽和炭化水素(MOSH)、好ましくは20mg/kg未満のMOSHを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、精製されたUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、50mg/kg未満の鉱油芳香族炭化水素(MOAH)、好ましくは20mg/kg未満のMOAHを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、5000mg/kg未満の抽出物、好ましくは4000mg/kg未満の抽出物を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、800mg/kg未満の不飽和脂肪酸、好ましくは600mg/kg未満の不飽和脂肪酸を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、乾燥重量に基づいて、200mg/kg未満の樹脂酸、好ましくは100mg/kg未満の樹脂酸を含む。
【0115】
抽出剤、不飽和脂肪酸、及び樹脂酸の量は、酢酸を使用してパルプをpH<3に酸性化するSCAN-CM49法を使用して測定された。抽出は、温度100℃、圧力2000psi、2サイクルでアセトンを使用するASE(加速溶媒抽出)によって行われた。抽出物はGC-FIDで分析され、内部標準に対して計算された。
【0116】
いくつかの実施形態では、工程(g)のリファイニングされたUBC繊維画分は、2%未満の灰分(525℃)及び/又は1%未満の灰分(925℃)を有する。いくつかの種類の供給源、例えば鉱物又は顔料でコーティングされた紙パックを含む供給源から得られる精製UBC繊維画分も、著しく高い灰分含有量を有する場合がある。
【0117】
好ましくは、リファイニングされたUBC繊維画分の少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、最もより好ましくは少なくとも99.9重量%が、化学分析によって同定され得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、精製UBC繊維画分は、化学パルプ、CMP、CTMP、HT-CTMP、TMP、又はブロークから得られる繊維と混合される。繊維は、針葉樹繊維、広葉樹繊維、又は非木材繊維であってもよく、漂白されていても、漂白されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、完全に又はほぼ完全にUBCから得られる繊維からなる。
【0119】
いくつかの実施形態では、リファイニングされたUBC繊維画分は、化学パルプ、CMP、CTMP、HT-CTMP、TMP、又は破砕物から得られる繊維と共精製される。繊維は、針葉樹繊維、広葉樹繊維、又は非木材繊維であってもよく、漂白されていても、漂白されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、完全に又はほぼ完全にUBCから得られる繊維からなる。
【0120】
リファイニングされたUBC繊維画分は、好ましくは、本発明の方法の工程(i)における繊維画分として使用され得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、工程(i)で提供される繊維画分は、繊維画分の総乾燥重量に基づいて、10~30重量%の範囲のヘミセルロース含有量を有する。
【0122】
いくつかの実施形態では、UBCから得られた繊維は、前処理及び精製の前に乾燥されていない。
【0123】
いくつかの実施形態では、前処理は、酸化、酵素処理、及び共溶媒又はアルカリなどの膨潤化学薬品の使用、又はそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、前処理は、酵素処理及びNaOHによる膨潤、又はそれらの組み合わせから選択される。酵素処理に使用される酵素は、例えば、ラッカーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、又はそれらの混合物もしくは組み合わせであってもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、繊維画分は、1~10重量%の範囲の濃度の範囲の濃度で精製される。
【0125】
いくつかの実施形態では、繊維画分は、規格ISO 5267-1によって決定されるショッパー・リーグラー(SR)数が50~100の範囲、好ましくは70~100の範囲、好ましくは85~98の範囲、より好ましくは90~98の範囲になるまで精製される。
【0126】
いくつかの実施形態では、繊維画分は、20~1500kWh/tの範囲、好ましくは50~500kWh/tの範囲の総精製エネルギーで精製される。
【0127】
いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物は、長さ>0.2mmの、グラム当たり少なくとも1000万本の繊維の含有量、好ましくは、乾燥重量に基づいて、グラム当たり少なくとも1500万本の繊維の含有量を有する。長さが0.2mmを超える繊維の含有量は、Fiber Tester Plus機器を使用して測定できる。
【0128】
いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース繊維組成物は、長さ>0.2mmの値を有する繊維の、少なくとも14%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも22%の平均フィブリル面積を有する。平均フィブリル面積は、Fiber Tester Plus装置を使用して測定される。
【0129】
長さ>0.2mmを有する繊維の繊維平均長及び長さ>0.2mmを有する繊維のフィブリル面積は、L&W Fiber Tester Plus(L&W/ABB)機器(本明細書では「Fiber Tester Plus」又は「FT+」とも称する)を使用して測定した。)規格ISO 16065-2による繊維の定義は0.2mmを超える繊維状粒子である。
【0130】
既知の試料重量0.100gを各試料に使用し、長さ>0.2mmの繊維の含有量(1グラム当たりの繊維数100万本)を次の式を使用して計算した。
1グラムあたりの繊維数100万本=(試料内の繊維数)/(試料重量)/1000000=(プロパティID3141)/プロパティID3136)/1000000
【0131】
いくつかの実施形態では、高度にリファイニングされたセルロース組成物はマイクロフィブリル化セルロース(MFC)組成物である。
【0132】
マイクロフィブリル化セルロース(MFC)は、本特許出願の文脈において、20nm~1000nmの幅又は直径を有するセルロース粒子、繊維又はフィブリルを意味するものとする。
【0133】
MFCを製造するには、シングルパス又はマルチパス精製、予備加水分解とその後の精製、又は高せん断分解又はフィブリルの遊離など、様々な方法が存在する。MFCの製造をエネルギー効率と持続可能性の両方で実現するには、通常、1つ又は複数の前処理工程が必要である。したがって、MFCを製造するときに使用されるパルプのセルロース繊維は、天然のものであってもよいし、例えばヘミセルロース又はリグニンの量を減らすために酵素的又は化学的に前処理されていてもよい。セルロース繊維は、フィブリル化前に化学的に修飾されてもよく、セルロース分子は、元のセルロースに見られるものとは異なる(又はそれ以上の)官能基を含む。このような基には、とりわけ、カルボキシメチル(CM)、アルデヒド及び/又はカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、又は第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が含まれる。上記の方法のいずれかで変性又は酸化した後、繊維をMFCに分解するのが容易になる。
【0134】
本明細書に示す第2の態様によれば、食品又は液体の包装用ラミネートのためのバリア紙又はバリアフィルムを製造する方法が提供され、前記方法は、
a)50~100の範囲のショッパー・リーグラー(SR)数を有する使用済み飲料用紙パック(UBC)から得られる繊維を含む高度にリファイニングされたセルロース組成物、及び任意選択的に、規格ISO 5267-1によって決定される20~40の範囲のショッパー・リーグラー(SR)数を有する、より低程度にリファイニングされたセルロース組成物を含むパルプ懸濁液を提供することと、
b)パルプ懸濁液から紙又はフィルムの基材層を形成することと、
c)紙又はフィルムの基材層の少なくとも片面をポリマーガスバリアコーティングでコーティングして、食品又は液体の包装用ラミネートのためのバリア紙又はバリアフィルムを得ることと
を含む、方法。
【0135】
パルプ懸濁液は、水性媒体中に懸濁された、高度にリファイニングされたセルロース組成物、及び任意選択的に、より低程度にリファイニングされたセルロース組成物を含む。
【0136】
高度にリファイニングされたセルロース組成物は、第1の態様を参照して上述したようにさらに定義することができる。
【0137】
より低程度にリファイニングされたセルロース組成物は、第1の態様を参照して上述したようにさらに定義することができる。
【0138】
パルプ懸濁液からの紙又はフィルム基材層の形成は、長網抄紙機のワイヤー上で形成及び脱水するなど、当技術分野で周知の方法を使用して行うことができる。パルプ懸濁液の濃度は、例えば0.1~1.5重量%の範囲であってもよい。
【0139】
次いで、形成された紙又はフィルムの基材層の片面又は両面に、ポリマーガスバリアコーティングがコーティングされる。いくつかの実施形態では、ポリマーガスバリアコーティングは、1つ又は複数の水溶性フィルム形成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーガスバリアコーティングは、多糖類、タンパク質、ヘミセルロース、ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、アクリルポリマー、アクリルコポリマー、ポリウレタン、及びスチレン/アクリル酸ラテックスなどのラテックスエマルションからなる群から選択される1つ又は複数の水溶性又は水分散性フィルム形成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、多糖類は、デンプン、加工デンプン、アルギン酸塩、アルギン酸、及びセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースから選択される。いくつかの実施形態では、ポリビニルアルコールは少なくとも88%、好ましくは92%を超えるまで加水分解される。
【0140】
ポリマーガスバリアコーティングのコート重量は、好ましくは0.1~12gsmの範囲、好ましくは0.3~12gsmの範囲、より好ましくは1~8gsmの範囲にある。ポリマーガスバリアコーティングは、単一層として複数層として適用することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、ポリマーガスバリアコーティングが塗布される前及び/又は適用された後に、基材層にカレンダー加工が適用される。カレンダー加工は、マシンカレンダー加工、ソフトカレンダー加工及び/又はスーパーカレンダー加工を含み得る。1つの好ましい方法は、コーティング前に基材層を機械加工又はソフトカレンダー加工し、コーティング後にコーティングされた基材層をソフトカレンダー加工又はスーパーカレンダー加工することである。
【0142】
ポリマーガスバリアコーティングは、例えば、ロッドコーティング、ブレードコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング、フレキソ印刷、又は表面サイジングもしくはフィルムプレス技術によって適用され得る。
【0143】
バリア紙又はバリアフィルムには、片面又は両面上にポリマーシール層を設けることができる。ポリマーシール層は、バリア紙又はバリアフィルムに耐液体性及び耐湿性を与えることができ、また、バリア紙又はバリアフィルムを包装用ラミネートの他の層に熱ラミネートしたり、完成した包装用ラミネートをヒートシールしたりすることも可能にすることができる。ポリマーシール層は、例えば、押出コーティング、フィルムラミネート又は分散コーティングによって適用され得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、ポリマーシール層は接着剤ラミネーションによって適用される。接着剤ラミネーションは、例えば、ポリオレフィン、スチレン-アクリレート(SA)ラテックス、又はポリビニルアルコール(PVOH)を含むポリマー分散液を使用して実施することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、ポリマーシール層は、熱可塑性ポリマーフィルムの熱ラミネートの形態で、熱可塑性ポリマーの押出コーティングラミネートによって、又は熱可塑性ポリマーの溶液もしくは分散液の適用によって適用される。
【0146】
ポリマーシール層は、一般に紙又は板紙ベースの包装材料で一般的に使用されるポリマー、又は特に液体包装用板紙で使用される熱可塑性ポリマーのいずれかを含むことができる。例は、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、熱可塑性デンプン、熱可塑性セルロースを含む。ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)は、液体パッケージ用ボードに使用される最も一般的で多用途なポリマーである。
【0147】
熱可塑性ポリマーは、押出コーティング技術によって都合よく加工して、良好な液体バリア特性を備えた非常に薄く均質なフィルムを形成できるため、有用である。いくつかの実施形態では、ポリマー封止層はポリプロピレン又はポリエチレンを含む。好ましい実施形態では、ポリマー封止層はポリエチレン、より好ましくはLDPE又はHDPEを含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、ポリマー封止層は、押出コーティングによって形成される。押出コーティングは、溶融したプラスチック材料を基材に適用して、非常に薄く滑らかで均一な層を形成するプロセスである。コーティングは、押し出されたプラスチック自体によって形成することも、又は溶融プラスチックを接着剤として使用して固体プラスチックフィルムを基材上に積層することもできる。押出コーティングに使用される一般的なプラスチック樹脂には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などがある。
【0149】
各ポリマーシール層の坪量は、好ましくは、50g/m2未満である。連続的で実質的に欠陥のないフィルムを達成するためには、少なくとも8g/m2、好ましくは少なくとも12g/m2のポリマー層の坪量が通常必要である。いくつかの実施形態では、ポリマーシール層の坪量は8~50g/m2の範囲、好ましくは12~50g/m2の範囲である。
【0150】
本明細書に示される第3の態様によれば、食品又は液体の包装用ラミネートを製造する方法が提供され、前記方法は、第1の態様による、又は第2の態様に従って製造されたバリア紙又はバリアフィルムを、紙又は板紙基材に積層することを含む。
【0151】
この積層は、例えば、湿式接着積層を使用して、又は熱可塑性ポリマーを使用した熱ラミネーションによって行うことができる。使用される熱可塑性ポリマーは、ポリマーシール層に使用されるものと同じであってもよい。熱ラミネーションは、例えば、押出コーティングラミネーション、又は結合層として熱可塑性ポリマーフィルムを使用するラミネーションであってもよい。いくつかの実施形態では、バリア紙又はバリアフィルムのポリマーガスバリア層又はポリマーシール層は、バリア紙又はバリアフィルムと紙又は板紙基材との間の結合層としても機能する。したがって、ポリマーガスバリア層又はポリマーシーリングは、板紙層とバリア層との間の結合層として機能することができる。別の実施形態では、バリア紙又はバリアフィルムは、ウェットオンウェットラミネーションによって紙又は板紙基材に積層される。
【0152】
本発明を様々な例示的な実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を加え、その要素を等価物で置き換えることができることは当業者には理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【
図1】非リファイニング及びリファイニングされたリサイクルUBCパルプに適用された特定の精製エネルギーに対してプロットされたショッパー・リーグラー値を示す図です。
【
図2】非リファイニング及びリファイニングリサイクルUBCパルプの保水値、WRVに対してプロットされたショッパー・リーグラー値を示す図である。
【
図3】非リファイニング及びリファイニングリサイクルUBCパルプのシート密度に対する引張指数をプロットした図である。
【
図4】非リファイニング及びリファイニングリサイクルUBCパルプのシート密度に対してプロットした引裂指数を示す図である。
【実施例】
【0154】
実施例1-未加工のUBCパルプの調製
収集された使用済みUBC出発材料をポリマー及びアルミニウムフィルム分離法に供して、ポリマー及びアルミニウム画分及び繊維画分を得た。UBCを、ドラムパルパー(ドラム速度10.7U/分)中、約50℃で25分間、約18~20重量%の濃度で水で処理した。ポリマーアルミニウム画分はUBCから分離され、残りのパルプはここでは未加工のUBCパルプ(1)として示される。スクリーニングドラムには8mmの穴を備えていた。ポリマー及びアルミニウム画分は、UBC出発材料の乾燥重量の約30~35重量%を構成していた。未加工のUBCパルプの繊維組成は次のとおりである。
漂白針葉樹クラフト:12重量%
未漂白針葉樹クラフト:25重量%
未漂白広葉樹クラフト:20重量%
針葉樹材CTMP:33重量%
広葉樹材CTMP:10重量%
【0155】
試料(1)として示される未加工のUBCパルプの繊維及び水分分析の結果を表1、2及び3に示す。
【0156】
このパルプ試料中の抽出物の量は13900mg/kg(アセトン抽出物)であったが、不飽和脂肪酸(遊離及び結合)の量は2365mg/kgであった。樹脂酸の量は511mg/kgであり、そのうち遊離ステロールは49mg/kg、結合ステロールは37mg/kgであった。
【0157】
ろ液のpHは6.74であり、懸濁固体の量は33mg/リットルであり、5日後のBODは500mg/リットルであり、CODは820mg/リットルであった。ろ液のリン含量及び全窒素含量は、それぞれ2.1mg/l及び26mg/lであった。
【0158】
実施例2-未加工のUBCの粗スクリーニング
次いで、実施例1で調製した未加工のUBCパルプを希釈し、1.6重量%の濃度で粗いふるいにかけた。スクリーナーには輪郭穴スクリーンバスケットの横にステップローターが備えられており、大きな平坦な汚染物質が効率的に除去される(ローター速度730m/分)。スクリーンの穴の直径は1.6mmであった。次に、受け入れられたストリーム(出力、濃度1.4重量%)を収集し、分析した。不合格品(不合格率14重量%)を、2.4mmのスクリーニング穴を有する別のスクリーニング及び剥離ユニットに供した。次いでアクセプトを収集して出力ストリームとして使用し、一方、不合格物を、スクリーンに2.4mmの穴を有する不合格品選別機に供した(不合格品選別機、ローター速度1600m/分、濃度2.2重量%、希釈水50L/分))。得られたアクセプト流(濃度1.4重量%)の温度は約37℃であった。試料(2)として示される出力ストリームを分析し、結果を表1~3に示す。
【0159】
実施例3-ファインスクリーニングと洗浄
実施例2で得られた出力ストリームを熱水(68℃)で1重量%の濃度に希釈し、次いでベルト型洗浄機の滑らかなロールの周りにワイヤー張力によってパルプ懸濁液を供給することにより、高速洗浄/脱水及び分別が行われる。洗浄及び排水後のパルプの稠度は約12重量%であり、パルプの温度は約60℃であった。ベルト式洗濯機での洗浄/脱水により、繊維部分の灰分が49%減少した。脱水された繊維基材の坪量は約31gsmであった。
【0160】
処理されたUBCをさらに希釈工程に供し、次いで2台のフォワードスクリーニングクリーナー(ハイドロサイクロン)を1.4重量%の濃度(排除量4.7重量%、希釈水60リットル/分)で使用するファインスクリーニングに供し、その後1.2重量%の濃度での第2の前方洗浄工程(排除量5.7重量%、希釈水65l/分)に、及び1.3重量%の濃度でカスケードモードで操作される遠心スクリーニング原理に基づく2つのロータスクリーナー(マルチフォイルローター)に供し、その後、増粘工程(入口濃度1.2重量%、アクセプト濃度6.1重量%)に供した。アクセプトの灰分含有量は2.1重量%であった。パルプの温度は約60~70℃であった。スクリーンのスリットサイズは0.15mmであった。試料(3)として示される、得られたリファイニングされたUBCパルプを分析し、結果を表1~3に示す。
【0161】
実施例4-増粘、熱分散、脱水
実施例3で得られた、ファインスクリーニングし、洗浄し、増粘した材料をさらにスクリュープレス及び加熱スクリュー及びヒーターに供給し(入口濃度3.4重量%、アクセプト濃度40重量%、スクリュー速度50U/分)、続いて、約115℃で加熱分散機を運転した(ローター速度1500U/分、入口濃度35重量%、ギャップ4.4mm、アクセプト濃度10.5重量%)。分散機後のパルプの濃度は10.5重量%であった。低濃度での希釈及び洗浄を(高速洗浄/脱水ユニットを使用して)実行した後、スクリュープレスで約30重量%の濃度まで脱水した。
【0162】
試料(4)として示される洗浄及び選別された材料を分析し、結果を表1~3に示す。結果は、参照試料1(未加工のUBCパルプ)と比較して、かなりの量の抽出物を除去できることを示した。このパルプ試料中の抽出物の量は3200mg/kg(アセトン抽出物)であったが、不飽和脂肪酸(遊離及び結合)の量は591mg/kgであった。樹脂酸の量は62mg/kgであり、そのうち遊離及び結合ステロールの量はそれぞれ15及び8mg/kgであった。
【0163】
ろ液のpHは8.4であり、懸濁固体の量は16mg/lであり、5日後のBODは13mg/lであり、CODは44mg/lであった。ろ液のリン含量及び全窒素含量は、それぞれ0.7mg/l及び<1mg/lであった。
【0164】
実施例5-加熱と高濃度不活性化
実施例4で得られた材料をさらに、T>80℃で操作されるスクリーニングプレス及び加熱スクリーンに供し、さらに、これも高温で操作される高濃度分散機に供した。その目的は、パルプをさらに脱水し、より高い濃度で微生物の活動を不活性化することであった。高濃度分散機の後、パルプは、約85℃の温度で3.3%過酸化物、NaOH及びケイ酸塩を使用して高濃度で失活させた。この処理の目的は、残っている微生物の活動を不活化することであった。
【0165】
試料(5)として示される、得られた不活性化UBCパルプを分析し、結果を表1~3に示す。結果は、例えば抽出物の量をさらに低減することができるが、微生物の活動が大幅に減少されることも示している。このパルプ試料中の抽出物の量は2500mg/kg(アセトン抽出物)であったが、不飽和脂肪酸(遊離及び結合)の量は495mg/kgであった。樹脂酸の量は49mg/kgであり、遊離ステロール及び結合ステロールはそれぞれ11mg/kg及び8mg/kgに減少した。
【0166】
実施例6 比較-OCCプラントにおけるUBC処理
この場合、収集されたUBCパルプを、従来のOCCプラントの概念に基づいてドラムパルパーと分別に供した。得られたUBCパルプ(試料(6)として示す)を分析し、結果を表1~2に示す。結果は、プラスチック含有量が比較的高く、Al及びCa濃度も高レベルのままであることを示している。
【0167】
実施例7 比較-OCCプラントにおけるUBC処理
実施例6と同様であるが、パルプを、OCCの処理を目的として設計された加熱分散機でさらに処理した。得られたUBCパルプ(試料(7)として示す)を分析し、結果を表1~2に示す。繊維収量のわずかな改善と、プラスチック含有量のわずかな減少が見られた。(6)と比較すると、金属塩は依然として高いレベルにあるが、わずかな改善が見られた。
【0168】
この懸濁液の固形分濃度は7.6重量%、SR値は33、WRV値は163であり、高い排水抵抗を示した。
【0169】
実施例8-3層液体板紙の製造試験
板紙製造試験は、プレスセクション、乾燥及び表面サイジング及びカレンダー加工セクションに続き、最後に巻き取りステーションに続いて、3本のワイヤーと3つのヘッドボックスを備えた長網抄紙技術に基づくパイロットマシンで実行された。上層と中間層の間、及び中間層と裏面層の間に、層結合剤としてデンプンを1.8gsmの量で添加した。
【0170】
パルプ混合物及び層の組成を表4に示し、得られた3層ボードの試験結果を表5に示す。3層ボードの全坪量は250g/m2であった。目標含水率は7.5%であった。
【0171】
未加工のUBCパルプを使用した試験は、細菌の活動性が高く、不快な臭いがあり、不純物の含有量が多いため、実行されなかった。代わりに、参照として、高カッパ(褐色)パルプをブローク(内部完成紙料、つまり再利用パルプ)とともに中間層に使用した。
【0172】
実施例9-中間層のUBCからの大量のパルプ
実施例4で得られた精製されたUBCパルプを3層液状板紙の板紙製造試験に使用した。精製されたUBCパルプを固形分35重量%で調製した。試験中、異臭は観察されず、この特定のパルプの細菌活動は製紙条件では正常であった。
【0173】
板紙中のUBCパルプの全量は、板紙総坪量(繊維)の30%に相当したが、中間層の割合は53%であった。
【0174】
該板の一部の強度特性のわずかな低下が見られたが、例えば、Z強度は依然としてベンチマークを上回っていた。この例では、高収率パルプ又は高カッパパルプをUBCのパルプに置き換えることができることを確認している。
【0175】
実施例10-中間層のUBCからのパルプの量が少ない
この場合、UBCパルプを、前の実施例よりも低量で、且つより高い含有量のパルプと混合するように、中間層の組成を変更した。該板内のUBCからのパルプの全量は約15%であった。この例では、高収率パルプ又は高カッパパルプをUBCのパルプに置き換えることができることを確認している。
【0176】
実施例11-高度にリファイニングされたUBCからの大量のパルプ
この場合、UBC由来のより高度にリファイニングされたパルプが、ブロークパルプ及び高収率パルプとともに中間層(53%)に追加された。この量は、板構造全体におけるUBC由来のパルプの30%の使用に相当する。多量のUBCパルプにもかかわらず、光学的特性又は機械的特性への影響は見られなかった(表IIを参照)。実際、Z強度の大幅な向上が得られた。
【0177】
実施例12-高度にリファイニングされたUBC由来の少量のパルプ
この場合、UBC由来のより高度にリファイニングされたパルプが、前の実施例よりも少ない量で高収率パルプの含有量が多く混合されるよう、中間層の組成を変更した。該板内のUBCからのパルプの全量は約15%であった。この実施例は、UBCパルプが高収率パルプのより高い含有量で使用可能であり、スコットボンド及びZ強度などのいくつかの強度特性を実際に改善することを確認する。
【0178】
実施例13-処理されたUBCパルプの強度特性に対する洗浄と精製の影響
実施例1、4及び5から得られたUBCパルプを出発材料として使用した。各パルプの試料を3つ用意し、1つは未精製、2つはVoith LR40リファイナーで2つの異なるレベルの精製を行った(濃度4%、充填材3-1、0-60℃、比エッジロード2.5J/m)。各試料パルプの160gsmシートを標準手順に従って準備し、シートの強度と物理的特性を検査した。結果を
図1~4に示す。図中、「RAW UBC」は実施例1で得られたUBCパルプを示し、「UBC+WT」は実施例4で得られたUBCパルプを示し、「UBC WB」は実施例5で得られたUBCパルプを示す。
【0179】
不純物及び微粉は、実施例4及び5から得られたUBCパルプの大規模な精製及び熱処理中に除去されるが、この結果は、驚くべきことに、再生パルプ及び精製パルプの強度特性を維持又は改善できることを示している。
【0180】
他に指定がない限り、以下のパラメータは指定された標準方法に従って測定された。
乾燥物含有量:ISO 638
WRV100メッシュ:ISO 23714
繊維長Lc(l)FS5 ISO:ISO 16065
排水性(SR):ISO 5267-1
pH:DIN 38404-C5:2009-7
懸濁された固体:DIN EN872:2005-04
BOD:DIN EN1899-1:1998-05
COD:DIN 38409-H41/SFS 5504:1988
リンの合計:DIN EN ISO 11885:2009-09
窒素の合計:DIN EN 25663:1993-11
【国際調査報告】