IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マクダーミッド インコーポレーテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】無電解抗病原性コーティング
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/36 20060101AFI20241031BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20241031BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20241031BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20241031BHJP
   A01N 59/16 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C23C18/36
A01N59/20 Z
A01P1/00
A01N25/34 Z
C23C18/40
A01N59/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524995
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022047706
(87)【国際公開番号】W WO2023101770
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,274
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591069732
【氏名又は名称】マクダーミッド インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MACDERMID,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャフナー、アンブローズ
(72)【発明者】
【氏名】ラプランテ、ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】ウォジク、マシュー
【テーマコード(参考)】
4H011
4K022
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BA04
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA23
4H011DC10
4H011DD07
4H011DF03
4K022AA02
4K022AA03
4K022AA04
4K022AA12
4K022AA13
4K022AA31
4K022AA33
4K022AA41
4K022BA08
4K022BA14
4K022BA16
4K022BA32
4K022DA01
4K022DB01
4K022DB02
4K022DB04
4K022DB07
4K022DB08
4K022DB24
4K022DB25
4K022DB26
4K022DB29
(57)【要約】
無電解ニッケル-銅-リンコーティングは、少なくとも約30重量%のCuと、約5重量%~約15重量%のPと、を含み、残りが、Niであり、不可避な不純物を伴う。無電解ニッケル-銅-リンコーティングは、基材上に堆積されると、抗病原性特性及び向上した耐久性を呈する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗病原性コーティングを基材上に形成するための水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴であって、前記めっき浴が、
約2.0g/L~約8.0g/LのNiと、
約150ppm~約1500ppmのCuと、
約10g/L~約50g/Lの次亜リン酸還元剤と、を含み、
前記無電解ニッケル-銅-リン浴が、抗病原性及び/又は微量作用性である均一な無電解ニッケル-銅-リン堆積物を前記基材上に提供する、浴。
【請求項2】
Cuの濃度に対する前記浴中のNiの濃度が、前記無電解ニッケル-銅-リン堆積物が約30重量%~約85重量%のCuを含むような濃度である、請求項1に記載の浴。
【請求項3】
前記めっき浴中のNi濃度が、約3g/L~約6g/Lである、請求項1又は請求項2に記載の浴。
【請求項4】
前記浴中に水溶性ニッケル塩を溶解させることによって、Niが前記浴中に提供される、請求項1~3のいずれか一項に記載の浴。
【請求項5】
前記水溶性ニッケル塩が、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、フルオロホウ酸ニッケル、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項4に記載の浴。
【請求項6】
Cu濃度が、約400ppm~約1000ppmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の浴。
【請求項7】
水溶液中に水溶性銅塩を溶解させることによって、Cuが前記浴中に提供される、請求項1~6のいずれか一項に記載の浴。
【請求項8】
前記銅塩が、硫酸銅、塩化銅、メタンスルホン酸銅、スルファミン酸銅、フルオロホウ酸銅、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の浴。
【請求項9】
中性~アルカリ性のpHを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の浴。
【請求項10】
約8~約9のpHを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の浴。
【請求項11】
約10g/L~約50g/Lの少なくとも1つの有機酸錯化剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の浴。
【請求項12】
前記有機酸錯化剤が、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、及び先述の組み合わせからなる群から選択されるカルボン酸を含む、請求項11に記載の浴。
【請求項13】
キレート剤、安定剤、又はpH緩衝剤のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1~2いずれか一項に記載の浴。
【請求項14】
水、約3g/L~約6g/LのNi、約10g/L~約50g/Lの次亜リン酸還元剤、約400ppm~約1000ppmのCu、リンゴ酸、乳酸、及びコハク酸からなる群から選択される約25g/L未満の有機酸錯化剤の組み合わせ、任意選択的な安定剤、並びに任意選択的なpH調整剤から本質的になり、前記浴が、約8~約9のpHを有する、請求項1に記載の浴。
【請求項15】
無電解抗病原性コーティングを基材の表面上に形成する方法であって、前記方法が、
基材を提供することと、
前記基材の表面を、請求項1~14のいずれか一項に記載の水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴と接触させることと、を含む、方法。
【請求項16】
前記基材の少なくとも一部分を前記浴中に浸漬させることによって、前記基材の表面を前記水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴と接触させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記浴が、前記基材の前記表面の無電解めっき中に約160°F~約195°Fの温度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記表面が、少なくとも1時間の間、前記浴と接触状態にある、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記抗病原性コーティングが、少なくとも約50マイクロインチの厚さを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
無電解ニッケル-銅-リンコーティングであって、
少なくとも約30重量%のCuと、
約5重量%~約15重量%のPと、を含み、
残りがNiであり、不可避な不純物を伴う、無電解ニッケル-銅-リンコーティング。
【請求項21】
少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、又は少なくとも約60重量%のCuを含む、請求項20に記載のコーティング。
【請求項22】
少なくとも約50マイクロインチの厚さの厚さを有する、請求項20に記載のコーティング。
【請求項23】
前記コーティングが、抗病原性、抗菌性であり、かつ/又はバイオフィルム形成を阻害する、請求項20に記載のコーティング。
【請求項24】
前記コーティングが、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のうちの少なくとも1つを含む細菌に対して抗病原性である、請求項23に記載のコーティング。
【請求項25】
請求項15に記載の方法によって形成される、請求項20に記載のコーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴、無電解抗病原性コーティング(electroless antipathogenic coating)を加工物上に形成するための方法、及びそのように形成された無電解抗病原性コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
SARS-CoV-2は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の原因である病原体である。COVID-19の蔓延は、病原体が生存し続ける間、病原体が表面上で生存し、表面と接触する人を感染させる能力に基づく、疾患の拡がりについての認識の増加をもたらした。病原体の生存能力を排除し、接触に対して表面を安全にするために、表面上を噴霧又は拭き取る消毒剤を製造することを前提としている一大産業が存在する。また、ある程度の長さの時間の間、消毒特性を維持する、表面に適用することができる物質が存在するが、効力を維持するためには材料に繰り返し適用する必要がある。
【0003】
消毒剤を表面に適用するのではなく、表面自体が消毒媒体であるように表面を修飾することも可能である。これは、例えば、抗病原性特性を有する金属の層で表面をコーティングすることによって達成することができる。金属のコーティングは、重い部品を鍛造することなく(例えば、プラスチック上にめっきする)抗病原性特性を提供することができるか、又は一次製造ではより安価な金属(鉄)を使用し、次いで、抗病原性特性を有する金属の層で接触表面をコーティングすることができるので、金属抗病原性コーティングの使用が望ましい。
【0004】
殺生物効果を呈する金属の能力は、微量作用効果として知られている。抗病原性の有効性は、金属ごとに変動するが、有効性は、場合によっては低濃度であっても明白であり、最大の有効性を有する2つの金属は、銅及び銀である。それらの両方は、良好な抗病原性傾向を有するが、それらは軟質金属であるので、劣った抗病原性特性を有するニッケル、クロム、又は鉄と比較すると、劣った摩耗特性を有する傾向がある。
【0005】
基材の表面全体が、基材が接触される場所に消毒特性を提供することができるように、基材又は加工物の全体を金属性抗病原性コーティングで封入することが望ましい。そのような封入を達成するための1つの方法は、基材又は加工物をめっきすることによる。しかしながら、全ての種類のめっきが、良好な結果をもたらすわけではない。電気めっきは、自己遮蔽、電流密度分布、及び潜在的に非被覆領域をもたらし得る見通し線の問題を有する。多くの場合置換めっき(substitution or displacement plating)と称される浸漬堆積法は、全体の被覆を提供することができるが、堆積物は非常に薄く、多くの場合、接着性の問題を伴う。更に、金属を堆積することが、基材よりも貴である場合にのみ、堆積を行うことができる。電気めっきは、導電性基材を必要とし、浸漬堆積は、金属性基材を必要とする。
【0006】
自己触媒的無電解めっきは、これらの問題のうちのいずれも発生しない。自己触媒的無電解めっきは、金属(鉄及び銅担持)並びにプラスチック(プラスチック上のめっき)の両方の多様な基材の被覆を可能にし、無電解堆積物は、繰り返される接触からのかなりの摩耗を許容するのに十分なだけ堅牢であり得る。耐久性及び用途の堅牢な組み合わせを提供する1つの金属は、典型的には、ニッケルリン合金として堆積される無電解ニッケルである。ニッケルは、ある程度の抗病原性特性を有するが、他の金属ほど有効ではない。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載の実施形態は、抗病原性特性及び向上した耐久性を有するニッケル-銅-リン(nickel-copper-phosphorous、NiCuP)の合金を堆積させる、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴に関する。有利なことに、無電解ニッケル-銅-リン浴は、金属性基材及び非金属性基材の両方を完全に封入することができる均一な無電解ニッケル-銅-リン堆積物を提供することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴は、約2.0g/L~約8.0g/LのNiと、約150ppm~約1500ppmのCuと、約10g/L~約50g/Lの次亜リン酸還元剤とを含み得る。無電解ニッケル-銅-リン浴は、抗病原性及び/又は微量作用性である均一な無電解ニッケル-銅-リン合金堆積物を基材上に提供することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、Cuの濃度に対する浴中のNiの濃度は、無電解ニッケル-銅-リン合金堆積物が、約30%~約85%のCuを含むような濃度である。
【0010】
いくつかの実施形態では、浴中のNi濃度は、約3g/L~約6g/Lである。水溶性ニッケル塩を浴に溶解させることによって、Niを浴中に提供することができる。水溶性ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、フルオロホウ酸ニッケル、又はそれらの組み合わせから選択することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、浴中のCu濃度は、約400ppm~約1000ppmである。水溶性銅塩を水溶液に溶解させることによって、Cuを浴中に提供することができる。銅塩は、硫酸銅、塩化銅、メタンスルホン酸銅、スルファミン酸銅、フルオロホウ酸銅、又はそれらの組み合わせから選択することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、浴は、中性~アルカリ性のpHを有し得る。例えば、浴は、約8~約9のpHを有し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、浴は、約10g/L~約50g/Lの少なくとも1つの有機酸錯化剤を含み得る。いくつかの実施形態では、有機酸錯化剤は、リンゴ酸、乳酸、又はコハク酸のうちの少なくとも1つなどのカルボン酸であり得る。
【0014】
他の実施形態では、浴は、キレート剤、安定剤、又はpH緩衝剤のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、浴は、水、約3g/L~約6g/LのNi、約10g/L~約50g/Lの次亜リン酸還元剤、約400ppm~約1000ppmのCu、リンゴ酸、乳酸、及びコハク酸からなる群から選択される約25g/L未満の有機酸錯化剤の組み合わせ、任意選択的な安定剤、並びに任意選択的なpH調整剤から本質的になり得る。浴は、約8~約9のpHを有し得る。
【0016】
本明細書に記載の他の実施形態は、無電解抗病原性コーティングを基材の表面上に形成する方法に関する。方法は、基材を提供することと、基材の表面を本明細書に記載の水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴と接触させることとを含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、基材の少なくとも一部分を浴中に沈めることによって、基材の表面を水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴と接触させる。浴は、基材の表面の無電解めっき中に、約160°F~約195°Fの温度を有し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、基材の表面は、少なくとも1時間の間、浴と接触状態にあり得る。浴を使用して形成されるコーティングは、少なくとも約50マイクロインチの厚さを有し得る。
【0019】
本明細書に記載のなお他の実施形態は、少なくとも約30重量%のCuと、約5重量%~約15重量%のPと、を含み、残りがNiであり、不可避な不純物を伴う、無電解ニッケル-銅-リン合金コーティングに関する。
【0020】
いくつかの実施形態では、コーティングは、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、又は少なくとも約60重量%のCuを含み、少なくとも約50マイクロインチの厚さを有する。コーティングは、本明細書に記載の浴及び/又は方法を使用して形成することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、コーティングは、殺菌性、抗菌性であり得、かつ/又は細菌、真菌、及びウイルスなどの微生物を破壊する若しくはそれらの増殖を阻害することができる。
【0022】
他の実施形態では、コーティングは、抗病原性であり得、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)など細菌を破壊する又はそれらの増殖を阻害することができる。
【0023】
なお他の実施形態では、コーティングは、バイオフィルム形成を阻害することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の明細書及び特許請求の範囲において、いくつかの用語が参照されるが、それらは、以下の意味を有すると定義されるものとする。
【0025】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0026】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」は、その後に記載される事象又は状況が生じても生じなくてもよいこと、並びにその記載がその事象が生じる場合及び生じない場合を含むことを意味する。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて本明細書で使用される近似する文言は、それが関連する基本的な機能に変化を生じることなく許容可能に変動し得る、任意の定量的表現を修飾するために適用され得る。いくつかの例では、近似する文言は、値を測定するための機器の精度に対応し得る。
【0028】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、パラメータ、量、持続時間などの測定可能な値を意味し、具体的に列挙された値の、及びその値からの、+/-15%以下の変動、好ましくは+/-10%以下の変動、より好ましくは+/-5%以下の変動、更により好ましくは+/-1%以下の変動、なおもより好ましくは+/-0.1%以下の変動を、このような変動が本明細書に記載される本発明で実施するために適切である限りは含むことを意味する。更に、修飾語「約」が指す値は、それ自体が本明細書に具体的に開示されていることも理解されたい。
【0029】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外しない。
【0030】
本明細書で使用する場合、特定の要素又は化合物に関する「実質的に含まない」又は「本質的に含まない」という用語は、本明細書において別途定義されない場合、所与の要素又は化合物が、浴分析について金属めっきの当業者に周知である通常の分析手段によって検出可能ではないことを意味する。このような方法としては、典型的には、原子吸光分光法、滴定、UV-Vis分析、二次イオン質量分析法、及び他の一般的に利用可能な分析技法が挙げられる。
【0031】
「めっきすること」及び「堆積する」又は「堆積」という用語は、本明細書全体を通じて交換可能に使用される。
【0032】
「組成物」及び「浴」及び「電解質」及び「溶液」という用語は、本明細書全体を通じて交換可能に使用される。
【0033】
本明細書に記載の実施形態は、抗菌、抗真菌、及び抗バイオフィルム特性などの抗病原性又は微量作用特性、並びに向上した耐久性を有するニッケル-銅-リン(NiCuP)の合金を堆積させる、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴に関する。有利なことに、無電解ニッケル-銅-リン浴は、金属性基材及び非金属性基材の両方を完全に封入することができる均一な無電解ニッケル-銅-リン堆積物を提供することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、無電解ニッケル-銅-リンコーティングを形成するために使用される無電解ニッケル-銅-リンめっき浴は、Niイオン、Cuイオン、次亜リン酸還元剤、並びに任意選択的に錯化剤、キレート剤、安定剤、及び/又はpH緩衝剤のうちの少なくとも1つを含む。例えば、水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴は、約2.0g/L~約8.0g/LのNiと、約150ppm~約1500ppmのCuと、約10g/L~約50g/Lの次亜リン酸還元剤と、を含み得る。無電解ニッケル-銅-リン浴は、抗菌性、抗病原性、及び/又は微量作用性である均一な無電解ニッケル-銅-リン合金堆積物を基材上に提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、Cuの濃度に対する浴中のNiの濃度は、無電解ニッケル-銅-リン合金堆積物が、約20%~約90%のCu、又は約30%~約85%のCu、又は約50%~70%のCuを含むような濃度である。
【0036】
いくつかの実施形態では、浴中のNi濃度は、約2g/L~約8g/L又は約3g/L~約6g/Lであり得る。水溶性ニッケル塩を浴に溶解させることによって、Niを浴中に提供することができる。水溶性ニッケル塩としては、めっき浴に可溶性であり、所定濃度の水溶液をもたらすことができるものを挙げることができる。一実施形態では、ニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、酢酸ニッケル、リンゴ酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、フルオロホウ酸ニッケル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、浴中のCu濃度は、150ppm~約1500ppm又は約400ppm~約1000ppmである。水溶性銅塩を水溶液に溶解させることによって、Cuを浴中に提供することができる。銅塩は、硫酸銅、塩化銅、メタンスルホン酸銅、スルファミン酸銅、フルオロホウ酸銅、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0038】
浴に使用される次亜リン酸還元剤としては、既知の種類の無電解ニッケルめっき浴に使用される多様な次亜リン酸還元剤のうちのいずれかを挙げることができる。いくつかの実施形態では、次亜リン酸還元剤は、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸アンモニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
無電解ニッケルめっき中の次亜リン酸還元剤の濃度は、次亜リン酸還元剤の種類に応じて変動し得、浴を使用して形成される無電解ニッケル-銅-リンコーティング中のリンの濃度を変動させるように調整することができる。いくつかの実施形態では、無電解ニッケル-リンめっき浴中の次亜リン酸還元剤の濃度は、約10g/L~約50g/L、又は約15g/L~約35g/L、又は約20g/L~約30g/Lであり得る。他の実施形態では、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴中の次亜リン酸還元剤の濃度は、約25g/Lであり得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴中に、錯化剤又は錯化剤の混合物が含まれてもよい。本明細書で使用される錯化剤は、キレート剤も含み得る。錯化剤及び/又はキレート剤は、一般に、ニッケルイオンとのより安定なニッケル錯体又は銅イオンとのより安定な銅錯体を形成することによって、亜リン酸塩などの不溶性の塩としてのニッケルイオン又は銅イオンのめっき溶液からの沈殿を遅らせ、ニッケル又は銅沈殿の適切な反応速度を提供する。
【0041】
錯化剤及び/又はキレート剤は、浴中に存在するニッケルイオン又は銅イオンを錯体化し、めっきプロセス中に形成される次亜リン酸塩分解生成物を更に可溶化するのに十分な量で、めっき浴中に含まれ得る。いくつかの実施形態では、錯化剤及び/又はキレート剤は、約30g/L未満若しくは約25g/L未満、又は約20g/L~約30g/Lの量で、無電解ニッケル-リンめっき浴中に提供される。
【0042】
既知の無電解ニッケルめっき溶液中に、多様な錯化剤が使用され得る。錯化剤の具体例としては、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、又はプロピオン酸などのモノカルボン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、又はアジピン酸などのジカルボン酸、グリシン又はアラニンなどのアミノカルボン酸、エチレンジアミンテトラアセテート、versenol(N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸)又はquadrol(N,N,N’,N’-テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン)などのエチレンジアミン誘導体、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸などのホスフィン酸、及びそれらの水溶性塩を挙げることができる。錯化剤は、単独又は組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0043】
例えば、酢酸又はコハク酸などのいくつかの錯化剤は、pH緩衝剤としても作用し得、そのような添加剤構成成分の適切な濃度は、それらの二重機能性を考慮した後、任意のめっき浴に対して最適化することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのpH緩衝剤、錯化剤、又はキレート剤は、酢酸、ギ酸、コハク酸、マロン酸、アンモニウム塩、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン、アラニン、グリコール酸、リジン、アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸(ethylene diamine tetraacetic acid、EDTA)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の無電解ニッケル-銅-リンめっき浴中に、上のpH緩衝剤、錯化剤、及び/又はキレート剤のうちの2つ以上の混合物が使用され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴は、約20g/L~約30g/Lの、リンゴ酸、乳酸、及びコハク酸からなる群から選択される有機酸錯化剤の組み合わせを含み得る。他の実施形態では、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴は、約25g/L未満の、リンゴ酸、乳酸、及びコハク酸からなる群から選択される有機酸錯化剤の組み合わせを含み得る。
【0046】
また、めっき浴は、めっき浴の特性が損なわれない限り、上の構成成分に加えて、様々な種類の目的を有する添加剤を含有し得る。例えば、浴は、約0.0004g/L~約0.0007g/Lの濃度で酢酸鉛などの安定剤を含み得る。Pb、Bi、Sn、In、それらの塩又は化合物及びそれらの組み合わせなどの触媒毒として作用する金属カチオンを含む他の安定剤も、酢酸鉛以外に又は酢酸鉛に加えて、使用され得る。
【0047】
他の実施形態では、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴は、無電解ニッケル-銅-リン堆積物の抗病原性特性、微量作用特性、耐久性、及び/又は表面形態に悪影響を有し得る、界面活性剤などの添加剤を含まなくてもよいか、又は実質的に含まなくてもよい。脂肪酸及びその水溶性塩の部類からの有機化合物、アミノ化合物、並びに脂肪酸及び脂肪アルコールの硫酸塩及びスルホン酸塩を含む界面活性剤は、典型的には、めっき浴自体の固有の特性又はニッケル堆積物の質を改変するために無電解ニッケルめっき浴中で用いられている。しかしながら、これらの添加剤は、めっき欠陥を生成し得る遊離Ni又はCuイオンなどの浴の他の構成成分と、潜在的にコロイドを形成する場合がある。有利には、本明細書に記載のめっき浴は、無電解ニッケル-銅-リン堆積物におけるマイクロピッチング及び粒子堆積などの欠陥を最小限に抑えるために、そのような添加剤を含まなくてもよいか、又は実質的に含まなくてもよい。
【0048】
水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴は、中性~アルカリ性のpHで動作又は維持することができる。例えば、浴は、基材の無電解ニッケル-銅-リンめっき中に、約7~約10、より好ましくは約8~約9のpHを有し得る。
【0049】
少なくとも1つのpH調整剤を使用して、pHを上の範囲に調整することができる。浴のpHが高すぎる場合には、例えば、酸を添加することによって調整することができる。浴のpHが低すぎる場合には、例えば、水酸化アンモニウムを添加することによって調整することができる。
【0050】
めっき浴の動作pHの安定性は、最大約30g/Lまでの量で酢酸、プロピオン酸、ホウ酸などの様々な緩衝化合物を添加することによって制御することができ、約2g/L~約30g/Lの量が典型的である。上記のように、酢酸及びコハク酸などの緩衝化合物のうちのいくつかは、錯化剤としても機能し得る。
【0051】
他の実施形態では、浴は、水、約3g/L~約6g/LのNi、約10g/L~約50g/Lの次亜リン酸還元剤、約400ppm~約1000ppmのCu、リンゴ酸、乳酸、及びコハク酸からなる群から選択される約25g/L未満の有機酸錯化剤の組み合わせ、任意選択的な安定剤、並びに任意選択的なpH調整剤から本質的になり得る。
【0052】
本明細書に記載の方法によれば、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴で基材又は加工物をめっきして、抗病原性特性又は微量作用特性、及び向上した耐久性を有する無電解ニッケル-銅-リン合金堆積物又はコーティングを基材上に提供することができる。
【0053】
基材としては、任意の物質又は材料を挙げることができる。いくつかの実施形態では、基材は、無電解ニッケル-銅-リン合金を堆積させることができる物質であり得る。また、基材は、無電解ニッケル-銅-リン合金を堆積させることができる少なくとも1つの表面を有する物質又は材料を挙げることができる。基材としては、例えば、金属、プラスチック、紙、ガラス、セラミック、織物、ゴム、ポリマー、複合材料、又は基材の任意の組み合わせを挙げることができる。また、基材は、電子製品、食品又は農作物、医療用デバイスなどのうちの少なくとも1つの一部分を挙げることができる。
【0054】
例として、基材は、カテーテル、気管内チューブ、気管切開チューブ、創傷ドレナージデバイス、創傷包帯、ステント、インプラント、静脈内カテーテル、縫合糸、シャント、胃瘻チューブ、医療用チューブ、心血管製品、心臓弁、ペースメーカーリード、ガイドワイヤ、又は集尿デバイスなどの医療用デバイスであり得る。
【0055】
所望の厚さで無電解ニッケル-銅-リンコーティング又は堆積物を基材の表面の少なくとも一部分上に形成するのに有効な持続時間の間、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴を使用して、基材をめっき浴と接触させるか、又は基材をめっき浴に浸漬させることによって、基材をめっきすることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、好適なプレクリーナを使用して、めっきの前に、基材を洗浄又は前処理してもよい。めっき中、浴は、約150°F~約200°F、例えば、又は約160°F~約195°Fの浴温度で維持され得る。無電解ニッケル-銅-リンめっき浴と、めっきされる基材との接触の持続時間は、無電解ニッケル-銅-リンコーティングの厚さを決定することになる。典型的には、接触時間は、わずか約1分~数時間、又は更には数日、例えば、約60~約120分の範囲であり得る。浴を使用して形成されるコーティングは、少なくとも約50マイクロインチ又は少なくとも約100マイクロインチ~最大約500マイクロインチ、又は1,000マイクロインチ、又は2000マイクロインチの厚さを有し得る。
【0057】
無電解ニッケル-銅-リン堆積物又はコーティングの堆積中に、軽度~重度の撹拌が用いられ得る。軽度の撹拌は、例えば、軽度の空気撹拌、機械的撹拌、ポンプによる浴循環、バレルめっきのためのバレルの回転、ディスクめっきのためのマンドレルの回転などであり得る。無電解ニッケル-銅-リンめっき浴はまた、浴中の汚染物質のレベルを低減するために、定期的又は連続的な濾過処理を施され得る。また、いくつかの実施形態では、成分の濃度、特にニッケルイオン、銅イオン、及び次亜リン酸イオンの濃度、並びにpHレベルを所望の限度内に維持するために、定期的又は連続的に、浴の成分の補充が実施され得る。
【0058】
そのようにして形成された無電解ニッケル-銅-リン合金でコーティングされた基材は、無電解ニッケル-銅-リンめっき浴から取り出され、例えば、脱イオン水ですすがれ得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、そのように形成された無電解ニッケル-銅-リン合金コーティングは、少なくとも約30重量%のCuと、約5重量%~約15重量%のPと、を含み、残りがNiであり、不可避な不純物を伴う。
【0060】
いくつかの実施形態では、コーティングは、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、又は少なくとも約60重量%のCuを含み、少なくとも約50マイクロインチの厚さを有し得る。コーティングは、本明細書に記載の浴及び/又は方法を使用して形成することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、コーティングは、殺菌性、抗菌性であり得、かつ/又は細菌、真菌、及びウイルスなどの微生物を破壊する若しくはそれらの増殖を阻害することができる。
【0062】
他の実施形態では、コーティングは、抗病原性であり得、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)など細菌を破壊する又はそれらの増殖を阻害することができる。
【0063】
なお他の実施形態では、コーティングは、バイオフィルム形成を阻害することができる。
【0064】
以下の実施例は、本発明の無電解ニッケル-銅-リンめっき溶液の例示である。以下の実施例において、本明細書、及び特許請求の範囲での記述において、別途示されない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量によるものであり、温度は、華氏であり、圧力は、大気圧又はほぼ大気圧である。
【実施例
【0065】
向上した抗病原性特性を呈するニッケル-銅-リン合金からなる均一なコーティングを基材上に提供することができる、自触媒無電解めっきシステムを開発した。他の実施形態では、無電解めっきシステムは、ニッケル-銅-リン合金から本質的になる均一なコーティングを基材上に提供する。「から本質的になる」によって意味されることは、合金が、合金堆積物の耐久性に悪影響を有する、及び/又は合金堆積物の抗病原性特性に悪影響を有するであろういかなる構成成分も含まないことである。他の実施形態では、合金は、ニッケル-銅-リン合金で構成されるか又はニッケル-銅-リン合金を含む。自触媒無電解めっきシステムは、基材の完全な封入、多くの接触に耐えることができるような高い耐久性、及び向上した抗病原性特性については銅を可能にする。
【0066】
以下の実施例は、合金の改善された抗病原性特性を示す。
3g/Lのニッケル(硫酸ニッケル六水和物によって提供される)
15~35g/Lの次亜リン酸還元剤(次亜リン酸ナトリウム一水和物によって提供される)
400~1,000ppmの銅(硫酸銅五水和物によって提供される)を含む、無電解ニッケル-銅-リン浴を調製した。
浴の温度を160~195Fに維持し、浴のpHを8~9の範囲内に調節し、維持した。基材のめっき時間は、1時間であり、めっき速度は、約0.4ミル/時間であった。
【0067】
Ni濃度を一定に維持し、生じる合金中で40%及び60%の両方の銅濃度を生じることを達成するために、銅濃度を変動させた。60%の銅は、最適な抗病原性特性が生じると認識されている最低濃度である。しかしながら、本発明の発明者らは、驚くべきことに、より低い銅パーセンテージでさえも、かなりの殺生物活性があることを発見した。
【0068】
試験中に2つの対照を使用した。第1は、細菌に影響を与えなかったはずのプラスチックのみに対して行われた対照であった。第2は、標準的な無電解ニッケル-リン堆積物であった。次の2つの別々の標準試験細菌を使用した:
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538P
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus、MRSA)ATTC33592。
【0069】
試験手順の概要
試験生物を調整し、希釈して、2.5~10×10CFU/mLの開始接種物濃度を得た。対照は、時間=0及び時間=2時間で3回試験した。試験試料は、時間=2時間で3回試験した。各試料片を滅菌ペトリ皿に入れ、接種し、次いで、試料表面上に接種物を均一に広げ、次いで、その場所を保持するために滅菌プラスチックで覆った。試料を35℃かつ少なくとも90%の相対湿度でインキュベートした。適切な時点で、中和ブロスを各試料に添加し、振盪機上に置き、十分に混合して、試料表面からの接種物の放出を促進させた。接種物を含有する中和ブロスの連続希釈物をプレーティングした。全てのプレートを35℃で24~48時間の間インキュベートした。インキュベーション後、細菌コロニーを計数し、記録した。結果は、以下の「試験結果」の項に見出される。これらの結果は、試験した試料のみに関する。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
結果は、ニッケル-リンのみの対照と比較して、銅を含有するコーティングの抗病原性応答が実際に改善されたことを示している。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538Pの場合、合金中40%の銅で効力が32%改善され、60%では95%改善された。実際、60%合金は、たった2時間の曝露で、ほぼ100%の消毒率を有していた。
【0073】
合金は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)(MRSA)ATTC33592に対して更により有効であった。40%銅合金は、対照に対して95%の改善を有し、60%合金は、96%の改善を達成した。両方とも、2時間の曝露後に、病原体の99.98%の排除を提供した。表面は、本質的に自己消毒された。
【0074】
両方の場合において、プラスチックのみの対照は、2時間のインキュベーション後に、より多くの細菌を含有していた。これは、試験が有効であったこと(細菌が、ただ自然に死滅したのではないこと)の証明である。
【0075】
当業者は、本発明の上の記載からの改善、変更、及び修正を察するであろう。そのような改善、変更、及び修正は、当業者の技能の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。本出願において引用される全ての特許公開及び参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗病原性コーティングを基材上に形成するための水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴であって、前記めっき浴が、
約2.0g/L~約8.0g/LのNiと、
約150ppm~約1500ppmのCuと、
約10g/L~約50g/Lの次亜リン酸還元剤と、を含み、
前記無電解ニッケル-銅-リン浴が、抗病原性及び/又は微量作用性である均一な無電解ニッケル-銅-リン堆積物を前記基材上に提供する、浴。
【請求項2】
Cuの濃度に対する前記浴中のNiの濃度が、前記無電解ニッケル-銅-リン堆積物が約30重量%~約85重量%のCuを含むような濃度である、請求項1に記載の浴。
【請求項3】
前記めっき浴中のNi濃度が、約3g/L~約6g/Lである、請求項1又は請求項2に記載の浴。
【請求項4】
前記浴中に水溶性ニッケル塩を溶解させることによって、Niが前記浴中に提供される、請求項1~3のいずれか一項に記載の浴。
【請求項5】
前記水溶性ニッケル塩が、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、フルオロホウ酸ニッケル、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項4に記載の浴。
【請求項6】
Cu濃度が、約400ppm~約1000ppmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の浴。
【請求項7】
水溶液中に水溶性銅塩を溶解させることによって、Cuが前記浴中に提供される、請求項1~6のいずれか一項に記載の浴。
【請求項8】
前記銅塩が、硫酸銅、塩化銅、メタンスルホン酸銅、スルファミン酸銅、フルオロホウ酸銅、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項7に記載の浴。
【請求項9】
中性~アルカリ性のpHを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の浴。
【請求項10】
約8~約9のpHを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の浴。
【請求項11】
約10g/L~約50g/Lの少なくとも1つの有機酸錯化剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の浴。
【請求項12】
前記有機酸錯化剤が、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、及び先述の組み合わせからなる群から選択されるカルボン酸を含む、請求項11に記載の浴。
【請求項13】
キレート剤、安定剤、又はpH緩衝剤のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1~2いずれか一項に記載の浴。
【請求項14】
水、約3g/L~約6g/LのNi、約10g/L~約50g/Lの次亜リン酸還元剤、約400ppm~約1000ppmのCu、リンゴ酸、乳酸、及びコハク酸からなる群から選択される約25g/L未満の有機酸錯化剤の組み合わせ、任意選択的な安定剤、並びに任意選択的なpH調整剤から本質的になり、前記浴が、約8~約9のpHを有する、請求項1に記載の浴。
【請求項15】
無電解抗病原性コーティングを基材の表面上に形成する方法であって、前記方法が、
基材を提供することと、
前記基材の表面を、請求項1~14のいずれか一項に記載の水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴と接触させることと、を含む、方法。
【請求項16】
前記基材の少なくとも一部分を前記浴中に浸漬させることによって、前記基材の表面を前記水性無電解ニッケル-銅-リンめっき浴と接触させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記浴が、前記基材の前記表面の無電解めっき中に約160°F~約195°Fの温度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記表面が、少なくとも1時間の間、前記浴と接触状態にある、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記抗病原性コーティングが、少なくとも約50マイクロインチの厚さを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
無電解ニッケル-銅-リンコーティングであって、
少なくとも約30重量%のCuと、
約5重量%~約15重量%のPと、を含み、
残りがNiであり、不可避な不純物を伴う、無電解ニッケル-銅-リンコーティング。
【請求項21】
少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、又は少なくとも約60重量%のCuを含む、請求項20に記載のコーティング。
【請求項22】
少なくとも約50マイクロインチの厚さの厚さを有する、請求項20に記載のコーティング。
【請求項23】
前記コーティングが、抗病原性、抗菌性であり、かつ/又はバイオフィルム形成を阻害する、請求項20に記載のコーティング。
【請求項24】
前記コーティングが、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)又はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のうちの少なくとも1つを含む細菌に対して抗病原性である、請求項23に記載のコーティング。
【請求項25】
請求項15に記載の方法によって形成される、請求項20に記載のコーティング。
【国際調査報告】