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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】気道を開くためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61H 31/00 20060101AFI20241031BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61F 13/00 20240101ALI20241031BHJP
   A61F 5/56 20060101ALI20241031BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61H31/00
A61M16/00 305Z
A61F13/00 301Z
A61F5/56
A61M27/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525381
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022047857
(87)【国際公開番号】W WO2023076362
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/263,328
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523345105
【氏名又は名称】ソメトリクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ガンドラ,ケント
【テーマコード(参考)】
4C074
4C098
4C267
【Fターム(参考)】
4C074AA05
4C074BB02
4C074CC18
4C074DD10
4C074GG11
4C098BB15
4C267JJ05
4C267JJ09
(57)【要約】
本発明は、ポンプ要素と真空チャンバーとの間にシールを形成及び/または維持するためのデバイス及び方法を提供する。真空チャンバーデバイスは、例えば、首の前三角形と関連付けられた被験者の内部軟組織にほぼ対応する外部位置で、被験者の皮膚に適合するように構成される。シーリングデバイスは、デバイスコンポーネントの最適なシーリングを提供しながら、ユーザーの使いやすさを最適化するように設計された構造要素を含み、これは、組み立て及び分解中に過度の力を回避する機構によって達成され、同時に、デバイスの動作中、チャンバーデバイスの形状の完全性及び気密シールが維持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧治療デバイスであって、
チャンバー本体であって、
(iv)個体との皮膚接触面を提供するように構成された前記チャンバー本体の周囲にある皮膚インターフェースであって、前記皮膚インターフェースが前記個体と接触しているとき、前記チャンバー本体は、周囲環境に面する外面、皮膚組織に面する内部側面、及び前記チャンバー本体によって囲まれる前記皮膚組織の上に重なる囲まれた内部容積を画定する、前記皮膚インターフェースと、
(v)前記チャンバー本体を通るアパーチャと、
(vi)前記アパーチャの前記周囲にあるシールインターフェースであって、
前記チャンバー本体の内部に向かって突出する弾性シールリップを備えるリップシールと、
前記アパーチャに対して前記弾性シールリップの後方にある第1の凹部と、
前記アパーチャに対して前記第1の凹部の後方にある第1のバッキングサポートと、
前記アパーチャに対してバッキングサポートの後方にある第2の凹部と、
前記アパーチャに対して前記第2の凹部の後方にある第2のバッキングサポートと、を備え、
前記リップシールならびに前記第1及び第2のバッキングサポートは、前記チャンバー本体の一体型コンポーネントとして構成されている、前記シールインターフェースと、
を備える、前記チャンバー本体と、
前記チャンバー本体の前記外面から前記アパーチャに挿入するように構成され、第1のカラーインターフェース面を備えるエアポンプであって、前記アパーチャに挿入されると、前記エアポンプは前記チャンバー本体に動作可能に接続され、通電時に前記シール空間から空気を除去し、前記エアポンプは前記弾性シールリップを前記第1の凹部に偏向させることによって、前記チャンバー本体との気密シールを形成し、前記第1のカラーインターフェース面は前記チャンバー本体の前記内部からアクセス可能である、前記エアポンプと、
前記第2の凹部に挿入するように構成された連続周縁領域と、前記チャンバー本体の前記内面の中から前記第1のカラーインターフェース面と協働的に係合するように構成された第2のカラーインターフェース面とを備える、剛性または実質的に剛性のリテーナーカラーであって、前記第2の凹部への前記周縁領域の挿入、ならびに前記第1及び第2のカラーインターフェース面の係合により、前記エアポンプ及び前記リテーナーカラーが前記チャンバー本体に可逆的に保持される、前記剛性または実質的に剛性のリテーナーカラーと、
を備える、前記陰圧治療デバイス。
【請求項2】
前記デバイスは、睡眠時無呼吸、いびき、または気道閉塞を治療するために構成及び配置されている、請求項1に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項3】
前記デバイスは創傷を治療するために構成及び配置されている、請求項1に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項4】
前記リップシールは、前記チャンバー本体の前記外面に、または前記チャンバー本体の前記外面の非常に近くに位置付けられる、請求項1~3の1項に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項5】
前記弾性シールリップは、前記エアポンプが前記アパーチャ内に装着されたときに前記エアポンプに接触するが、前記リテーナーカラーに接触しない、請求項4に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項6】
前記第1及び第2のカラーインターフェース面が協働して、前記エアポンプを前記リテーナーカラーに対して方向付ける可逆的ロック機構を提供する、請求項1~5の1項に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項7】
前記第1及び第2のカラーインターフェース面が協働ツイストカップリングを提供する、請求項6に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項8】
前記第1及び第2のカラーインターフェース面が協働バヨネットマウントを提供する、請求項6に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項9】
前記第2の凹部は、前記第1のバッキングサポートと前記第2のバッキングサポートとの間で、少なくとも前記弾性シールリップの最大曲げモーメントの点まで延びている、請求項1~8の1項に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項10】
前記連続周縁領域は、前記第2の凹部が前記連続周縁領域によって完全に占有されるまで、前記第2の凹部に挿入するように構成されている、請求項1~9の1項に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項11】
前記エアポンプ及び/または前記リテーナーカラーは、前記チャンバー本体の受容ポイントと係合し、前記ポンプモジュールを特定の向きで前記チャンバー本体に固定するように構成されたマウントポイントを備える、請求項1~10の1項に記載の陰圧治療デバイス。
【請求項12】
個体の外部表面に陰圧治療を行う方法であって、
請求項1~11の1項に記載の陰圧治療デバイスを前記外部表面に嵌合して、チャンバー本体によって囲まれる皮膚組織を覆う内部容積を囲むことと、
エアポンプを通電することによって前記内部容積から空気を排出することと、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年10月29日に出願された米国特許仮出願第63/263,328号の優先権の利益を主張するものであり、この仮出願の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景に関する以下の説明は、単に、読者が本発明を理解するのを助けるためにだけ提供されており、本発明の先行技術を説明または構成することが認められるものではない。
【0003】
米国特許第5,343,878号、第7,182,082号、第7,762,263号、第9,655,766号、第10,780,017号、及び第10,874,577号では、患者の首の外側表面に外部から陰圧を加えることを利用する目的がある様々なデバイスが記載されている。治療器具は、通常、上気道の一部を覆う首の外部領域を囲むように構成される表面を有するように提供される。特定の実施形態では、これらの器具は、チャンバー本体の内面と喉部との間にあるチャンバー本体(例えば、空気分子で満たされた中空空間)を提供できる。治療器具は、このチャンバー本体内に部分真空を生成するように構成されるエアポンプに動作可能に接続される。チャンバー本体に治療レベルの陰圧を加えると、上気道の動きが誘発され、例えば、いびき、睡眠時無呼吸、及び気道の完全または部分的な虚脱等の気道閉塞等の症状が緩和され得る。
【0004】
これらの「陰圧」治療装置及び方法では、簡単な組み立て及び分解にも順応する気密シール用の装置の要素間の適切な適合を達成することが困難な可能性がある。例えば、治療器具のチャンバー本体とエアポンプ(例えば、患者の所望の位置で、大気圧に対する差圧の陰圧を作成及び維持するように設計されている)との適合が考えられる。これは、例えば、毎日長時間にわたって着用する意図があり、清掃のために部品の分解及び組み立てを頻繁に行う必要があるデバイスに特に当てはまる。したがって、これらの陰圧治療の成功により、様々な動作を通じて様々な解剖学的特徴(すなわち、デバイスのコンプライアンス)に順応する(曲げ、屈曲、流動等)デバイスの能力によって最適化され、それと同時に、また、デバイスの要素を支持する構造要素と、使用中にデバイス及びデバイスコンポーネントの漏れのないシールを損なうことなく、ユーザーが簡単に組み立て及び分解することを可能にする構造要素とがもたらされる。デバイスの要素の組み立て及び分解が容易であること、デバイスとユーザーとの間のインターフェースの快適性が良好であることによって、治療に対するユーザーコンプライアンスが最大化され、そして、デバイス、及びデバイスのコンポーネントの漏れのないシールは、デバイスの要素間のシールが失われることなく、またデバイスとユーザーとの間のシールが失われることなく、異なる睡眠姿勢への動きに順応する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、顔、首、傷の周辺のエリア等の、患者の外部組織に取り付けてシールすることを目的としたシールチャンバー本体を有する治療デバイスにエアポンプ要素を取り付けるためのシールシステムを提供することであり、シールチャンバー本体は、エアポンプ要素が付けられるシール可能アパーチャを有する。この治療デバイスは、特に、個体の外部組織に陰圧をかけて標的治療を行うように構成されるシールチャンバー本体を形成するのに適している。そうすることによって、皮膚にかかる外部陰圧は、舌、及び首の上部気道の周辺の他の組織等の下層組織に影響を与える。本発明の治療デバイスは、好ましくは、完全に身体に装着するシステムであるように構成される。
【0006】
第1の態様では、本発明は、個体の皮膚組織に陰圧を加えるように構成された治療デバイスを提供する。これらの治療デバイスは、
チャンバー本体であって、
(i)個体との皮膚接触面を提供するように構成されたチャンバー本体の周囲にある皮膚インターフェースであって、皮膚インターフェースが個体と接触しているとき、チャンバー本体は、周囲環境に面する外面、皮膚組織に面する内部側面、及びチャンバー本体によって囲まれる皮膚組織の上に重なる囲まれた内部容積を画定する、皮膚インターフェースと、
(ii)チャンバー本体を通るアパーチャと、
(iii)アパーチャの周囲にあるシールインターフェースであって、
チャンバー本体の内部に向かって突出する弾性シールリップを備えるリップシールと、
アパーチャに対して弾性シールリップの後方にある第1の凹部と、
アパーチャに対して第1の凹部の後方にある第1のバッキングサポートと、
アパーチャに対してバッキングサポートの後方にある第2の凹部と、
アパーチャに対して第2の凹部の後方にある第2のバッキングサポートと、を備え、
リップシールならびに第1及び第2のバッキングサポートは、チャンバー本体の一体型コンポーネントとして構成されている、シールインターフェースと、を備える、チャンバー本体と、
チャンバー本体の外面からアパーチャに挿入するように構成され、第1のカラーインターフェース面を備えるエアポンプであって、アパーチャに挿入されると、エアポンプはチャンバー本体に動作可能に接続され、通電時にシール空間から空気を除去し、エアポンプは弾性シールリップを第1の凹部に偏向させることによって、チャンバー本体との気密シールを形成し、第1のカラーインターフェース面はチャンバー本体の内部からアクセス可能である、エアポンプと、
第2の凹部に挿入するように構成された連続周縁領域と、チャンバー本体の内面の中から第1のカラーインターフェース面と協働的に係合するように構成された第2のカラーインターフェース面とを備える、剛性または実質的に剛性のリテーナーカラーであって、第2の凹部への周縁領域の挿入、ならびに第1及び第2のカラーインターフェース面の係合により、エアポンプ及びリテーナーカラーがチャンバー本体に可逆的に保持される、剛性または実質的に剛性のリテーナーカラーと、
を備える。
【0007】
特定の実施形態では、本発明の治療デバイスは、例えば、睡眠時無呼吸、いびき、または気道閉塞等の症状を治療する目的で、首の前三角の組織上に陰圧領域を生成するように構成及び配置される。そのようなデバイスは、気道陽圧(PAP)治療デバイスと区別するために、気道陰圧(NEP)治療デバイスと呼ばれ得る。これらの実施形態では、治療デバイスは、皮膚インターフェースが、個体の下顎体の片側にある第1のゴニオンにほぼ対応する第1の位置、個体のオトガイ隆起にほぼ対応する第2の位置、個体の下顎体の反対側にある第2のゴニオンにほぼ対応する第3の位置、及び個体の甲状軟骨にほぼ対応する第4の位置、によって画定された個体の連続接触領域にほぼ一致するように構成できる。代替として、そのような治療デバイスは、米国特許第10780017B2号に開示されているような連続カラーの形態であり得、この特許は参照により本明細書によって組み込まれる。
【0008】
他の実施形態では、本発明の治療デバイスは、創傷上に陰圧領域を生成するように構成及び配置される。そのようなデバイスは、陰圧創傷治療(NPWT)デバイスと呼ばれ得る。例えば、WO2013175306、WO2016174048、WO2017153357、WO2018060417、WO2019129581、及びWO2020187971を参照されたい。これらの文献のそれぞれは、参照により本明細書によって組み込まれる。
【0009】
特定の実施形態では、リップシールは、チャンバー本体の外面に、またはチャンバー本体の外面の非常に近くに位置付けられる。最も好ましい実施形態では、弾性シールリップは、エアポンプがアパーチャ内に装着されたときにエアポンプに接触するが、周縁領域が第2の凹部内に装着されたときにリテーナーカラーに接触しない。特定の実施形態では、弾性シールリップの末端部は、エアポンプとの接触点に丸みを帯びた縁を含む。
【0010】
特定の実施形態では、第1及び第2のカラーインターフェース面が協働して、リテーナーカラーに対してエアポンプを方向付ける可逆的ロック機構を提供する。例として、第1及び第2のカラーインターフェース面は、エアポンプに第1のバヨネットコネクタを提供し、リテーナーカラーに第2の対応する第2のバヨネットコネクタを提供することによって等、協働ツイストカップリングの形態であり得る。一方のバヨネットコネクタが他方のバヨネットコネクタに対して回転すると、一方のバヨネットコネクタのピンが他方のバヨネットコネクタの対応するスロットと係合し、ピンがスロットから押し出されるまで、ストッパー及びロックとして機能する。
【0011】
好ましい実施形態では、第2の凹部は、第1のバッキングサポートと第2のバッキングサポートとの間において、少なくとも弾性シールリップの曲げモーメントまで延び、より好ましくは弾性シールリップの曲げモーメントを超えて延びる。これらの実施形態では、リテーナーカラーの装着により、好ましくは、第2の凹部が連続周縁領域によって完全に占有されるまで、連続周縁領域を第2の凹部に挿入させる。
【0012】
特定の実施形態では、エアポンプ及び/またはリテーナーカラーは、チャンバー本体の受容ポイントと係合して、両方とも、ポンプモジュールをチャンバー本体に固定し、特定の向きに固定するマウントポイントを備える。ほんの一例として、チャンバー本体の内部側面の対応するスロットに挿入するように構成されるポスト、タブ、または他の同様の構造的特徴をリテーナーカラーに提供できる。リテーナーカラーは、構造的特徴と対応するスロットとの間の相互作用の摩擦成分によってカラーに保持され得る。次に、エアポンプをアパーチャに挿入し、エアポンプの回転により、エアポンプをリテーナーカラー上で特定の可逆的にロックされた向きに制限する機構(例えば、バヨネットマウント)を使用してリテーナーカラーに付けられ得る。熟練した技術者は、この配置は逆になる場合があり、リテーナーカラーの対応するスロットに係合するチャンバー本体に構造的特徴が提供されることを理解するであろう。代替として、構造的特徴はエアポンプに提供され得、対応するスロットはチャンバー本体の外面に提供される。この説明は例示に過ぎず、当業者は、特定の向きにポンプモジュールをチャンバー本体に固定するための同様の手段を容易に特定できる。
【0013】
一実施形態では、リテーナーカラーは、チャンバー本体の受容ポイントと係合してエアポンプをチャンバー本体に固定するマウントポイントを備える一方、エアポンプ及びリテーナーカラーは、ねじ及び溝要素を備え、エアポンプとリテーナーカラーとの間のツイストカップリングを可能にし、可逆的にチャンバー本体に対して停止及びロックし、エアポンプの特定の端部配向がなくても、これを行う。
【0014】
別の実施形態では、リテーナーカラーは、チャンバー本体の受容ポイントと係合してエアポンプをチャンバー本体に固定するマウントポイントを備える一方、エアポンプ及びリテーナーカラーは、エアポンプの挿入及び/または回転に抵抗または阻止し、リテーナーカラーに対して可逆的にロックされた向きにそれを行う機械的手段(例えば、デテントまたはカム)または磁気的手段を備える。
【0015】
本明細書で使用される「剛性」という用語は、ASTM D-2240に従って硬度試験を受けるゴム、プラスチック、及び他の非金属材料の場合、ASTM D-2240に従った少なくとも75のショアD硬度であり、他の材料の場合、この文で説明されるショアD硬度と同等の、ユーザーに対する保護を提供する標準的方法に従った硬度値を意味する。本明細書で使用される「実質的に剛性」という用語は、ASTM D-2240に従って硬度試験を受けるゴム、プラスチック、及び他の非金属材料の場合、ASTM D-2240に従った少なくとも60のショアD硬度であり、他の材料の場合、この文で説明されるショアD硬度と同等の、ユーザーに対する保護を提供する標準的方法に従った硬度値を意味する。したがって、「実質的に剛性」という用語は、例えば、ASTM D-2240に従って硬度試験を受けるゴム、プラスチック、及び他の非金属材料の場合、ASTM D-2240に従った少なくとも65のショアD硬度を含むであろう。
【0016】
そのような剛性または実質的に剛性の材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(「ABS」)、ポリカーボネート(「PC」)、及びABS/PCアロイ等のポリマー材料を含み得る。剛性または実質的に剛性の材料の望ましい特性は、例えば、硬度、靭性、低密度(すなわち、軽量)、及び不活性(皮膚の炎症、発疹等を最小限に抑えるため等)のうちの1つ以上を含む。結果として、剛性または実質的に剛性の1つ以上の材料は、例えば、金属、強化繊維(Kevlar(登録商標)パルプ等)を伴う天然ゴムコンパウンドもしくは合成ゴムコンパウンド、またはKevlar(登録商標)、のうちの少なくとも1つを含み得る。剛性または実質的に剛性の1つ以上の材料には、ナノテクノロジー分野の進歩が組み込まれ得る。一実施形態では、ケージ部材102は、実質的に剛性の1つの材料である熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)を含む。
【0017】
本明細書で使用される個体の「外部領域」及び「外部表面」という用語は、外部皮膚表面の一部を指す。陰圧治療の対象となる組織は、この外部表面の下にある組織であり得、上気道及び関連組織、外部表面の創傷等を含み得る。様々な実施形態では、治療デバイスは、標的身体部位に順応するように選択された全ての解剖学的点の全体にわたって、例えば、シール、快適性、及び局所的なデバイスコンプライアンス等の最適化されたフィッティングパラメーターを提供するように構成される。
【0018】
本発明では、ポンプによって治療レベルの真空を達成できる限り、あらゆるタイプのエアポンプを使用できる。好ましい治療用真空レベルは、約7.6cm HO~約61cm HOの範囲であり、好ましくは約20~約45cm HOの範囲である。特定の実施形態では、エアポンプは、振動ポンピング運動を提供するように構成された圧電材料を含む。振動ポンピング運動は、500Hzよりも大きい周波数で動作することが好ましく、最も好ましくは20,000Hzよりも大きい周波数、すなわち、ほとんどの人間の聴覚の周波数範囲を超える周波数で動作する。特定の実施形態では、真空源は、単一の値ではなく指定範囲内で治療レベルの真空を維持するために可変的に使用され得る。
【0019】
特定の実施形態では、治療デバイスは1つ以上の通気要素を含み、1つ以上の通気要素は、チャンバー本体が個体に嵌合され、治療レベルの陰圧がチャンバー本体内に加えられたとき、チャンバー本体内に制御された空気流を提供するように構成される。この空気流は、好ましくは約10mL/分~約200mL/分、最も好ましくは約20mL/分~約100mL/分、さらにより好ましくは約40mL/分~約80mL/分である。一実施形態では、通気要素は、アパーチャと、任意選択で、アパーチャ内のフィルターエレメントとを含み得、フィルターエレメントは、約0.1μmの孔サイズ等、約0.25μm以下の孔サイズを含む。アパーチャは、チャンバー本体自体の特徴として提供され得る、またはエアポンプの特徴であり得る。フィルターエレメントは交換可能なエレメントとして構成できる。空気流のレベルを一定値に維持できる。代替として、空気流のレベルが変動する可能性がある。
【0020】
様々な実施形態では、通気要素は、チャンバー内、あるいはエアポンプ内、またはその両方、のいずれかで臨界オリフィスを備え得、臨界オリフィスは、目標陰圧値30cm HOで約10~60mL/分、より好ましくは30~50mL/分の流量を可能にする。特定の実施形態では、空気流のレベルは治療レベルの真空に結び付けられ、つまり、通気要素の大気側とチャンバー本体の内部との間の圧力差により、より高い真空レベルは、より高い空気流レベルが伴う可能性がある。
【0021】
本願の目的上、「約」及び/または「ほぼ」という用語は、任意の与えられた値の+/-10%、より好ましくは+/-5%、最も好ましくは+/-1%を指す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】チャンバー本体100、チャンバー本体の内面103、周囲空気に面するチャンバー本体の外面105、ユーザーの治療部位の周囲と接触するように設計された皮膚インターフェース面107、リップシール要素109、シール可能アパーチャ110、保持要素固定凹部111、エアポンプ要素120、ポンプ要素のシール面123、ポンプ要素バヨネット機構125、剛性または実質的に剛性のリテーナーカラー130(チャンバー本体支持機構(複数可)133、ポストの形態の保持要素マウントポイント機構135、及びリップシール強化要素を提供する連続周縁領域137を備える)を含む、デバイスの例示的な実施形態の分解図である。
図2】チャンバー本体100の例示的な実施形態の背面図であり、チャンバー本体の内面103、周囲空気に面するチャンバー本体の外面105、ユーザーの治療部位の周囲と接触するように設計された皮膚インターフェース107、リップシール要素109、保持要素マウントポイントポスト135を受けるように構成された凹部111、リテーナーカラーを受けて係合するように構成されたチャネル113、及びシール可能アパーチャ要素110を示す。
図3】チャンバー本体100、周囲空気に面するチャンバー本体の外面105、リップシール要素109、シール可能アパーチャ110、及び保持要素マウントポイントポスト135を受けるように構成された凹部111を含む、デバイスの前面図及び例示的な実施形態である。
図4】チャンバー本体支持機構(複数可)133、マウントポイント135、及びバヨネットストップ140を含むバヨネット機構139を含む、リテーナーカラー130の例示的な実施形態の背面図である。リテーナーカラーの背面はアパーチャ及びエアポンプより遠位にあるリテーナーカラーの側面である。
図5】チャンバー本体支持機構(複数可)133、マウントポイント135、円筒形周縁領域137、及びバヨネットストップ140を含むバヨネット機構139を含む、リテーナーカラー130の例示的な実施形態の前面図である。リテーナーカラーの前面はアパーチャ及びエアポンプより近位にあるリテーナーカラーの側面である。
図6】ポンプハウジング、ハウジングのシール面123、及びバヨネットデテント127を含むバヨネット機構125を含む、エアポンプ120の例示的な実施形態の背面図である。
図7】チャンバー本体100、シール可能アパーチャ110の相対位置、チャンバー本体の内面103、周囲空気105に面するチャンバー本体の外面、リップシールの弾性シールリップを含むリップシール要素109、弾性シールリップの後方にある第1の凹部117、第1のバッキングサポート157、第2の凹部113(リテーナーカラーの連続周縁領域によって満たされたように示される)、第2のバッキングサポート159、リップシール接触面115、第1の凹部の頂点119、及び第2の凹部に挿入された連続周縁領域137を含むリテーナーカラー130を示す、例示的な実施形態の断面図である。
図8】エアポンプ120がチャンバー本体100のアパーチャ110に設置されている、図7と同様の例示的な実施形態の断面図である。
図9】本発明の例示的な実施形態であり、チャンバー本体100の水平断面、チャンバー本体の内面103、周囲空気に面するチャンバー本体の外面105、ユーザーの治療部位の周囲と接触するように設計された表面107、リップシール要素109、シール可能アパーチャ110、保持要素マウントポイントポスト135を受けるように構成された凹部111、及び第2の凹部113を示す。
図10】本発明の例示的な実施形態であり、チャンバー本体100の水平断面、チャンバー本体の内面103、周囲空気に面するチャンバー本体の外面105、リップシール要素109、シール可能アパーチャ110、保持要素マウントポイントポスト135を受けるように構成された凹部111、第1の凹部117、第2の凹部113を画定する第1のバッキングサポート157及び第2のバッキングサポート159を示す。
図11a】本発明の例示的な実施形態であり、チャンバー本体の内面103、周囲空気に面するチャンバー本体の外面105、シール可能アパーチャ110を含む、チャンバー本体100の水平断面(エアポンプ120なし)を示す。また、リップシールの弾性シールリップ109、保持要素137、リップシール接触面115、第1の凹部117、第1の凹部の頂点119、リテーナーカラー130、第2の凹部113を画定する第1のバッキングサポート157及び第2のバッキングサポート159をさらに示す、詳細215も示される。
図11b】リテーナーカラー130を含むチャンバー本体100(エアポンプ120が設置されていない状態)の水平断面を示す詳細215の拡大図の例示的な実施形態である。また、第2の凹部(後述される)の幅寸法140、リップシール接触面の半径点141、半径150で終わる第2の凹部113(したがって、リテーナーカラー130の連続周縁領域137)が、頂点半径153を有するリップシール109の頂点119を超えて延びる距離寸法143、リップシール半径の頂点からリップシール109上のポンプ接触点まで測定された第1の凹部の幅寸法145、リップシールの弾性シールリップ109の幅寸法149、非圧縮状態(すなわち、エアポンプ120の挿入前)でのリップシール109の角度151、第2の凹部113を画定する第1のバッキングサポート157及び第2のバッキングサポート159も示される。
図12図11bに示される本発明の例示的な実施形態であり、エアポンプ120がシール可能アパーチャを通して設置されたチャンバー本体100の水平断面を示し、ポンプハウジングが設置されたときのリップシールの圧縮寸法155を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明ならびにその様々な特徴及び有利な詳細は、添付の図面に示され、以下の説明で詳述される非限定的な実施形態を参照して、より完全に説明される。図面に示されている特徴は必ずしも実際の縮尺どおりに描かれているわけではないことに留意されたい。本発明を不必要に不明瞭にしないように、周知の構成要素及び処理技術の説明は省略する。本明細書で使用される例は、単に、本発明を実施し得る方法の理解を容易にすることと、さらに、当業者が本発明を実施することを可能にすることと、を目的としている。したがって、その例は、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。図面では、同様の参照番号は、いくつかの図の全体を通して対応する部分を示す。
【0024】
本発明では、エアポンプ接続シールシステムは、使いやすさ(すなわち、組み立て及び分解)及びシール効率を最大化し、最終的にデバイスの有効性及びユーザーのコンプライアンスを最適化する陰圧治療デバイス用に設計されている。被験者の上気道にほぼ対応する表面上の被験者の首に置いたときに上気道を開くために使用するものとして下記に説明されているが、この技術の例示的な適用は限定することを意味するものではない。
【0025】
本発明の典型的な治療デバイスは、チャンバー本体と、皮膚インターフェースの円周方向に沿ってチャンバー本体の縁と一体化して皮膚インターフェースとチャンバー本体との間に気密接合部を形成する皮膚インターフェースと、チャンバー本体のシール可能アパーチャを通してチャンバー本体に取り付けられたエアポンプ要素と、を備える。したがって、チャンバー本体は治療デバイスの空気充填ドーム/チャンバーを形成する。チャンバー本体は、好ましくは、様々な解剖学的位置の輪郭に適応するために柔軟である。チャンバー本体を構築するのに適切な材料の非限定的な例は、プラスチック、金属、及びシリコン、ゴム、またはウレタン等の弾性材料を含む。
【0026】
皮膚インターフェースの接触面には、接着剤、発泡体、または他の柔らかい材料が位置し得る。これらの要素は、患者の治療デバイスの全ての接触点を通じて、個体の皮膚に沿った圧力変動を最小限に抑え、ほぼ均一な接触圧力を維持するように構成される。「最小限の圧力変動」とは、皮膚インターフェースの接触面と患者の組織との間の任意の点における圧力が、接触面全体にわたる平均圧力から約20%以下、好ましくは約10%以下または約5%以下変動することを意味する。本明細書で使用される外側接触面とは、治療デバイスの接触面及びシール面を形成する、個体の皮膚と接触する治療デバイスの皮膚インターフェースの表面である。
【0027】
本明細書に説明される例示的な実施形態では、皮膚インターフェースは、治療デバイスの輪郭に沿うように構成されており、治療デバイス自体は、大体、個体の下顎体の片側にある第1のゴニオンにほぼ対応する第1の位置から、個体のオトガイ突起に対応する第2の位置、個体の下顎体の反対側にある第2のゴニオンに対応する第3の位置、及び個体の甲状軟骨に対応する第4の位置まで、個体にほぼ一致するように構成され、さらに、第1のゴニオンに対応する第1の位置に戻るように構成される。本明細書で使用される「ゴニオン」とは、個体の下顎の両側にある下顎角のおおよその解剖学的位置を表す。本明細書で使用される「オトガイ隆起」とは、顎の隆起のおおよその解剖学的位置を表し、その中央は陥没し得るが、両側が隆起して、オトガイ結節を形成する。本明細書で使用される「甲状軟骨」は、人間の喉頭の大きな軟骨のおおよその解剖学的位置を表す。
【0028】
この文脈で使用される「シール」という用語は、治療デバイスと個体の接触面との間に完全なシールが形成されることを必ずしも意味するものではない。むしろ、「シール」とは、装着者と嵌合し、治療レベルの真空を維持するデバイスの一部を指す。所望の陰圧が達成され、維持できる限り、シールにおけるある程度の漏れは許容され得る。好ましい動作真空レベルは、水柱の7.6cm~約61cmの範囲である。上気道を開くのを補助するためにユーザーの首の組織に加えられた好ましい力は、約0.5キログラム~約6.68キログラムの範囲である。本明細書で使用される「約」及び「ほぼ」という用語は、任意の値に関して、その値の+/-10%を指す。
【0029】
チャンバー本体によって囲まれたドーム/チャンバーは有限容積を提供し、エアポンプによって排気され、望ましい治療レベルの部分真空を実現する。いったん生成されると、部分真空は一定の速度で低下し、これにより、シールを通過してチャンバー本体に空気が漏れることから、及び/またはドームもしくはエアポンプに一体化された機構を通って空気が漏れることから、制御されたレベルの空気漏れを提供する。特定の実施形態では、チャンバー本体は0.5~12inの容積を囲む。好ましくは、漏れは0.005~0.5in/分(0.082~8.194mL/分)以下であり、最も好ましくは、約0.01~0.1in/分(0.164~1.639mL/分)である。
【0030】
治療デバイスは、1つ以上の通気要素を備え得る。本明細書で使用される通気要素は、治療デバイスを通るアパーチャであり、アパーチャは、チャンバー本体が個体に嵌合され、治療レベルの陰圧がチャンバー本体内に加えられたとき、チャンバー本体内に空気流を提供する。アパーチャ(複数可)はデバイス上の任意の適切な位置にあり得る。いくつかの実施形態では、アパーチャ(複数可)は、個体上の位置1及び3に近いチャンバー本体の上部に位置し得る。別の実施形態では、アパーチャは、エアポンプ内に位置し得る。通気要素(複数可)は、単に固定された臨界オリフィスであり得、その場合、チャンバー本体が個体に嵌合され、治療レベルの陰圧が加えられたとき、約10mL/分~約60mL/分の空気流が達成される。または、その通気要素は、フィルターエレメントを挿入して濾過された空気流を作成できるアパーチャであり得、その場合、チャンバー本体が個体に嵌合され、治療レベルの陰圧が加えられたとき、約10mL/分~約60mL/分の空気流が達成される。フィルターエレメントは交換可能な要素であり、約0.25μm~0.1μmの孔サイズを含み得、チャンバー本体が個体に嵌合され、治療レベルの陰圧が加えられたとき、約10mL/分~約60mL/分の空気流が達成される。特定の好ましい実施形態では、空気流は約30mL/分~約50mL/分である。
【0031】
特定の実施形態では、チャンバー本体は、治療デバイスの局部的な崩壊、底付き、及びある領域から別の領域への力の伝達をさらに防止するのに役立つ機構を含み得る。これらは、図1に示されるチャンバー本体支持機構133等、エアポンプをチャンバーに接続するためのシールシステムの構造要素によって補助され得る。局所的な柔軟性ポイントがない場合、剛性チャンバー本体は、例えば力が加わると、枕等に転がってデバイスで底付きイベントが生じる等、外部圧力によって高い接触圧力点が生じる状況が発生し得る。または、さらに、剛性チャンバー本体では、デバイスの片側にかかる外部圧力によってデバイスの反対側に力の伝達が生じる状況が発生し得る。このようなイベントでは、不快感、デバイスの外れ、またはその両方が生じ得る。
【0032】
チャンバー本体は、エアポンプに動作可能に接続され、チャンバー本体内に治療レベルの陰圧を生成する。エアポンプは、治療レベルの陰圧を生成するのに適切な任意のタイプ、例えば容積式ポンプ、インパルスポンプ、速度ポンプ等であり、これは、手動スクイーズバルブ、ロータリーポンプ、ローブポンプ、振動ポンプ等を含み得る。特定の実施形態では、エアポンプは、振動ポンピングアクションを提供するように構成された圧電材料を含み、振動ポンピング運動は500Hzよりも大きい周波数で動作する。
【0033】
エアポンプは、ホースもしくはチューブを介してチャンバー本体に接続された別個のコンポーネントであり得る、またはチャンバー本体と一体的に構成され得る。エアポンプは、任意の適切な方式でチャンバー本体に接続でき、例えば、エアポンプはチャンバー本体の外部にあり得、ホースまたはチューブを介して接続され、例えば、ベッドサイドに固定される、または電池駆動され、患者が装着可能である。特定のウェアラブルの態様では、エアポンプはチャンバー本体と一体化するように構成される。例えば、エアポンプは、チャンバー本体のシール可能アパーチャに挿入するように構成され得、エアポンプはシール可能アパーチャにぴったりと適合してシールを形成する。本明細書で使用されるシール可能アパーチャは、装置の要素を通る開口であり、装置の別の要素によって片側または反対側から閉鎖でき、またはシールでき、気密または防水シールを形成する。
【0034】
エアポンプとチャンバー本体のシール可能アパーチャとの間のシールはリップシールを備える。本明細書で使用されるリップシールは、ある角度でシール可能アパーチャ内に延びる弾性シールリップを備えるシール機構であり、それにより、エアポンプ要素がシール可能アパーチャ内に挿入されるとき、リップシールがエアポンプハウジングと接触する。挿入中のこのリップシールの圧縮により、エアポンプとチャンバー本体との間に気密シールが形成される。リップシール機構は、エアポンプ、チャンバー本体、またはその両方の一体型、単一型、または個別型の一部であり得る。特定の実施形態では、リップシールはエアポンプの構成要素として提供される。しかしながら、好ましい実施形態では、リップシールは、チャンバー本体のシール可能アパーチャの内周上の一体型機構である。
【0035】
リップシールのこの圧縮によって形成されるシールの特性は、いくつかの要因によって影響を受け、最適化できる。これらの特性は、材料の選択、及びデュロメーター、リップシール要素の長さ、厚さ、テーパー、接触半径、ならびに後述されるようにポンプとリップシールとの間の干渉量によって影響を受ける。例えば、各々、エアポンプハウジングとシール可能アパーチャとの間のクリアランスを減少もしくは増加させることによって、及び/またはリップシール要素のデュロメーターを増加もしくは減少させることによって、より緊密な適合またはより緩い適合を達成できる。デバイスの機構間のシールを最適化するのに役立ち得る他の要因は、また、弾性シールリップの長さ、及び/または実際にエアポンプに接触する弾性シールリップの部分の長さを増加または減少させることも含み得る。また、リップシール要素の厚さを増加または減少させることは、各々、リップシール要素の曲げモーメントを硬化または軟化するのにも役立ち得る。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、デバイスのシール機構は、複数の組み立て/分解イベントをしやすくすることを可能にするように最適化され、そのイベントは、シール可能アパーチャへのエアポンプの挿入及び/または除去と、さらに、いくつかの実施形態では、組み立てられて機能する向きにロックされるときにシール可能アパーチャにおけるエアポンプの回転を含み得る。デバイス機構の寸法及び柔軟なシール要素のデュロメーターは、デバイスの寿命全体にわたって組み立て/分解イベントに順応する必要があり、それによって、デバイスコンポーネントの十分なシールを提供する。これらの寸法により、デバイスコンポーネント間の漏れがなく、治療中に治療レベルの圧力をかけることが可能になると同時に、デバイスコンポーネントを組み立てる、または分解するユーザーの能力を妨げるほどきつくなく、または圧迫感もない。
【0037】
図に示されるリップシールの設計は、チャンバー本体の動き及び曲がりによって生じる漏れに抵抗する信頼性の高いシールを提供するように最適化され、組み立て/分解も簡単にできる。リップシールとエアポンプ要素との間の摩擦が最適化され、最小限に抑えられているため、組み立て/分解中にポンプの回転も簡単にできると同時に、組み立て中にチャンバー内でリテーナーカラーが外れることも防止する。内部リテーナーカラーへのバヨネットマウント等のロック機構は、好ましくはポンプを固定するために使用され、リップシール要素とポンプ接触面との間の適切な位置決めを保証するだけではなく、接続部の締め付けが強くなりすぎるのを防止する。
【0038】
チャンバー本体は、通常、柔軟な材料で作られているため、補強構造は保持型要素として提供され得、エアポンプをフレキシブルチャンバー本体に固定するとともに、チャンバー自体を支持するための構造支持も提供すること、及び/または使用中にフレキシブルチャンバー内で発生する動きからアパーチャを隔離すること、の両方が生じる。本明細書で使用される保持型要素は、チャンバー本体のアパーチャ内でエアポンプ要素と係合して固定するように設計された剛性要素として定義される。係合は、摩擦、スナップフィッティング、バヨネット型フィッティング等の回転可能なフィッティング等によって達成され得る。
【0039】
特定の実施形態では、圧力封じ込め構造のフレキシブルチャンバー本体は、圧力封じ込め構造の内部にほぼ適合するように成形された1つ以上の構造部材を含む個別の要素(複数可)として形成され得る構造(複数可)によって機械的に支持でき、それによって、フレキシブルチャンバー本体の崩壊を防止する。また、構造要素は、取り外し可能に固定可能な保持要素にも一体化され得る。
【0040】
図1図6に見られるように、デバイスの好ましい実施形態では、デバイスはチャンバー本体100を備え、チャンバー本体100は、内部容積を画定し、そして、皮膚表面に面する内面103と、周囲空気に面する外面105とを有する。チャンバー本体は、ユーザーの治療部位の周囲と接触するように設計された皮膚インターフェース面107、リップシール機構109、エアポンプを受けるように構成されたアパーチャ110、凹部111(後述される)、及び保持要素チャネル113を備える。
【0041】
デバイスは、さらに、第1のバヨネットコネクタ125を含むものとして図に示されている第1のカラーインターフェース面123を含むポンプ要素120と、リテーナーカラー130とを備え、リテーナーカラー130は、チャンバー本体支持機構(複数可)133と、マウントポイント135と、使用時にリップシール補強要素を形成する連続周縁領域137と、第2のバヨネットコネクタ139とを含む。
【0042】
デバイスは、ポンプ要素120をチャンバー本体100のアパーチャ110に挿入し、リテーナーカラー130との係合によってポンプ要素をチャンバー本体の内側からチャンバー本体に固定することによって組み立てられる。リテーナーカラーは、チャンバー本体の保持要素固定凹部111に収まるマウントポイント135を備える。保持要素固定凹部111とマウントポイント135との間の適合は、エアポンプ要素120をチャンバー本体100に挿入する力を克服できるほど十分にきついのが好ましく、これにより、組み立て時にリテーナーカラー130がフレキシブルチャンバー本体100に一体化されたままになる。しかしながら、保持要素固定凹部111とマウントポイント135との間の適合により、さらに、エアポンプ要素120が取り外されるときにフレキシブルチャンバー本体100を反転させると、リテーナーカラー130を迅速かつ容易に取り外すことが可能になる。
【0043】
ロック及び/または方向付け機構は、例えば、エアポンプ120がリテーナーカラーのバヨネット機構139(図4及び図5)と一列に並び、シール可能アパーチャ110及びリテーナーカラー130に挿入され、エアポンプのバヨネット機構125がリテーナーカラーのバヨネット停止機構(図4及び図5)140に到達するまで回転するように提供され得る。エアポンプのシール面123は、チャンバー本体100のリップシール109と嵌合して気密シールを形成する。
【0044】
特定の実施形態では、リップシール機構109は、さらに実質的に、1つ以上の構造部材によって、使用中にチャンバー本体によって生じる構造負荷からシール機構を隔離し得る。これらの構造部材は、統合型、個別型、または単一型であり得る。例えば、図8では、チャンバー本体100のシール可能アパーチャ110は、リップシールの弾性シールリップ109と、エアポンプ要素120の挿入によってリップシール要素を偏向できる第1の凹部117とを備え、凹部は頂点119を備える。リップシール要素109は、ポンプハウジング接触点115/123では薄くなり得、その後、リップシール要素が第1の凹部119の頂点に達すると徐々に厚さが増加する。第1の凹部117は、第1のバッキングサポート157、リテーナーカラー130の連続周縁領域137を支持構造要素として受けるように構成された第2の凹部113、及び第2のバッキングサポート159によって裏当てされる。したがって、第1のバッキングサポート157及び第2のバッキングサポート159は、第2の凹部113を画定する。
【0045】
リテーナーカラーは、取り外し可能に固定可能な剛性または半剛性の保持要素の形態であり得、フレキシブルチャンバー本体内に固定され、剛性特性をアパーチャに提供するように構成され、それによって、アパーチャの形状及びリップシール機構を維持する役割を果たす。例えば、図5図7図8図11、及び図12に見られるように、リテーナーカラー130は、チャンバー本体100の第2の凹部113に挿入する環状連続周縁領域137を含む。適切に動作させるために、リテーナーカラーの内径は第2のチャネル113の外径にぴったりと収まる必要がある。周縁領域137によって提供された突出部は、少なくともリップシールの弾性シールリップ109上の最大曲げモーメントの位置まで延びる挿入深さ寸法143を有し、より好ましくは、図11bに示されるように、リップシールの曲げモーメントを超えて延びる。
【0046】
取り外し可能に固定可能なリテーナーカラー130の内径と保持要素チャネル11,3の内径との間の係合及び適切なシールにより、アパーチャ110がフレキシブルチャンバー本体100の動きから隔離されることによって、デバイスの使用中にシールが破壊されることを妨げる。
【0047】
図11bに見られるような本発明の好ましい実施形態では、フレキシブルチャンバー本体100は、約20~60のショアAデュロメーター、より好ましくは約30~40の成形シリコーンゴムのショアAデュロメーターから形成され得、約1.03ミリメートルの幅である幅寸法140を伴う保持要素チャネルを有し得、保持要素チャネルは、その頂点に約0.52ミリメートルの半径150を伴い、リップシール機構109は、約1.77ミリメートルである長さ寸法147と、約0.60ミリメートルの厚さである幅寸法149とを伴い、第1の凹部頂点は、ポンプが設置されていないときに保持要素チャネルの外面からシール可能アパーチャへの角度寸法151が約60度である、約0.4ミリメートルの半径寸法153と、約0.12ミリメートルの半径を伴うポンプハウジング接触シール面寸法141とを伴い、そして、ポンプハウジングが図12のシール可能アパーチャに挿入されるとき、リップシール機構109がエアポンプ115のシール面と接触し、リテーナーカラー130に向かって内側に偏向し、約0.37ミリメートルの圧縮寸法155になり、それにより、治療レベルの陰圧がチャンバー内に加えられるとき、エアポンプ120とリップシール要素109との間に空気流が通過しないようにシールを形成する。
【0048】
本発明の特定の態様では、1つ以上の突起、タブ、及び/または凹部は、治療デバイスのチャンバー本体、皮膚インターフェース、及び/またはエアポンプ要素に存在し、これらは、1つ以上のデバイス要素の適切な向き、またはデバイス要素間の嵌合を保証する1つ以上のガイダンス機構(複数可)を提供する。タング、タブ、及び/または凹部は、治療デバイスの使用に関連する様々なパラメーターを決定するためのセンサーシステムの一部として利用できる。これらのパラメーターは、限定ではないが、特定のエアポンプ要素と治療デバイス要素(例えば、認識機構として機能する)との互換性と、チャンバー本体のアパーチャ内へのエアポンプ要素の正しい配置とを含み得る。例えば、これらの突起、タブ、または凹部の1つ以上は、エアポンプ要素のガイド機構としてチャンバー本体上に位置し得、それにより、エアポンプ要素が正しい向きでシール可能アパーチャに挿入されたときだけ、エアポンプ要素またはチャンバー本体上の凹部がチャンバー本体またはエアポンプ要素上の突起またはタブ要素を受け入れる。このリストは限定的であるという意味ではない。
【0049】
本明細書で使用される「ユーザーコンプライアンス」は、治療デバイスの規定の使用法、例えば睡眠サイクル全体にわたるデバイスの使用法に対する患者の順守を指す。
【0050】
本明細書で使用される「デバイスコンプライアンス」は、患者の解剖学的変異を含むデバイスの適用及び使用に応じて、デバイスの変動、例えば、曲げ、ねじり、圧縮、及び/または拡張等に順応する、デバイス、またはデバイスの要素の能力を指す。
【0051】
デバイスの態様は、剛性または実質的に剛性の材料で作られ得る。熟練した技術者は、熱可塑性プラスチック、いくつかの熱硬化性プラスチック、及びエラストマーを含む多数のポリマーが使用され得ることを理解するであろう。熱可塑性材料は、加熱すると流動液体になり、冷却すると固体になるため、その材料は、多くの場合、機械的特性を失うことなく複数回の加熱/冷却サイクルに耐えることができる。熱硬化性材料はプレポリマーから作られ、反応すると不可逆的に硬化して固体ポリマーネットワークになる。エラストマーは、弾性及び粘性の両方の特性を示す粘弾性材料であり、熱可塑性または熱硬化性のいずれかであり得る。一般的な熱可塑性プラスチックは、PMMA、環状オレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニール、ポリアクリレート、ポリアリールエーテルケトン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ナイロン、ポリエチレン、及びポリスチレンを含む。一般的な熱硬化性樹脂は、ポリエステル、ポリウレタン、デュロプラスト、エポキシ樹脂、及びポリイミドを含む。このリストは限定的であるという意味ではない。剛性、動作温度、部品の収縮を改善する目的で、タルク及び炭素繊維等の機能性充填材を含み得る。
【0052】
デバイスの態様は、当業者に知られているいくつかの方法を使用して形成され得、これは、限定ではないが、射出成形、機械加工、エッチング、3D印刷等を含む。好ましい実施形態では、試験デバイスのベースは射出成形であり、これは、熱可塑性材料及び熱硬化性材料を複雑な形状の成形製品に成形するプロセスであり、高い生産速度で、かつ良好な寸法精度で成形される。そのプロセスは、通常、高圧下で、加熱及び可塑化された材料の計量された量を比較的冷たい金型に注入することを含む。そして、その中でプラスチック材料が固まる。樹脂ペレットは高圧下で加熱されたスクリュー及びバレルを通して供給される。液化物質はランナーシステムを通って金型内に移動する。金型のキャビティによって製品の外部形状が決まる一方、コアによって内部形状が決まる。材料が冷却されたキャビティに入るとき、再可塑化が始まり、固体状態及び完成部品の構成に戻る。次に、機械は完成部品または完成品を排出する。
【0053】
当業者は、本開示の基礎となる概念について、本発明のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、及びシステムを設計するための基礎として容易に利用し得ることを認識するであろう。したがって、本発明の主旨及び範囲から逸脱しない限り、請求項にはそのような同等の構成を含むものと見なされることが重要である。
【0054】
当業者は、本発明について、目的を実施し、言及された結果及び利点、ならびに本発明で固有の結果及び利点を得るのに十分適応していることを容易に認識する。本明細書に提供された例は、好ましい実施形態の代表的なものであり、本発明の範囲を限定する目的はない。
【0055】
本発明の主旨または範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される発明に様々な置き換え及び修正がなされ得ることは当業者にはすぐに明らかであろう。
【0056】
本明細書で言及される全ての特許及び公表文献は、本発明が属する分野の当業者の水準を示す。全ての特許文献及び公表文献は、各個別の公報が、参照することにより具体的かつ個別に組み込まれることが示されているのと同程度に、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0057】
本明細書に例示として説明される発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の単数の要素または複数の要素、単数の制限または複数の制限がなくても、適切に実施され得る。したがって、例えば、本明細書の各例において、「備える(comprising)」、「本質的に成る(consisting essentially of)」、及び「成る(consisting of)」という用語のいずれかは、他の2つの用語のいずれかに置き換られ得る。採用されている用語及び表現は、限定するためではなく、説明の用語として使用され、そして、そのような用語及び表現の使用において、示され及び説明される特徴またはその一部のいずれかの等価物を排除する目的はないが、特許請求される発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示された概念の修正及び変形を行い得、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあると見なされることを理解されたい。
【0058】
他の実施形態は、以下の請求項の範囲内で記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
【国際調査報告】