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特表2024-541255モノパイルを設置するための方法および設置船
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】モノパイルを設置するための方法および設置船
(51)【国際特許分類】
   E02B 17/00 20060101AFI20241031BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20241031BHJP
   F03D 13/40 20160101ALI20241031BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20241031BHJP
   E02D 27/52 20060101ALI20241031BHJP
   E02D 13/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E02B17/00
B63B35/00 T
F03D13/40
F03D13/25
E02D27/52 A
E02D13/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525470
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2022078698
(87)【国際公開番号】W WO2023072635
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】2029539
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2030204
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519091203
【氏名又は名称】イーテーエルエーセー・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】テレンス・ヴィレム・アウフスト・フェマイェル
(72)【発明者】
【氏名】イェルメル・ブラークスマ
【テーマコード(参考)】
2D046
2D050
3H178
【Fターム(参考)】
2D046CA01
2D046CA13
2D046DA05
2D046DA31
2D050AA02
2D050CA00
2D050CB23
2D050EE04
2D050EE15
2D050EE28
3H178AA20
3H178AA24
3H178BB77
3H178CC23
3H178DD61X
3H178DD67X
3H178DD70X
(57)【要約】
洋上風力タービンを支持するモノパイルを設置するための設置船。この船は、パイル保持デバイスを有し、このパイル保持デバイスは、パイルホルダと、水平面内において船体に対してパイルホルダを移動させるように構成された支持アセンブリとを有する。モニタリングシステムが、モノパイルがクレーンから懸下され、パイルホルダにより把持されることとなる把持フェーズにおいて、水平面内におけるパイルホルダに対して懸下されたモノパイルをモニタリングするように構成される。このシステムは、パイルホルダに対するモノパイルの位置および移動を表す信号を支持アセンブリのモーション制御ユニットに対して送信する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置船(VE)を使用して洋上風力タービンを支持するように構成されたモノパイル(PI)を設置するための方法であって、前記設置船(VE)は、
船体(HU)と、
前記船体(HU)上に取り付けられ、前記モノパイル(PI)を懸下するように構成されたクレーン(CR)と、
パイル保持デバイス(1)であって、
前記クレーン(CR)から懸下される場合に前記モノパイル(PI)を把持するように構成されたパイルホルダ(PH)、および
前記パイルホルダ(PH)を支持し前記船(VE)の前記船体(HU)に対して取り付けられた支持アセンブリ(2)であって、前記支持アセンブリ(2)は、水平面内において前記船体(HU)に対して前記パイルホルダ(PH)を移動するように構成され、前記支持アセンブリ(2)は、前記面内において前記船体(HU)に対して前記パイルホルダ(PH)を移動させるように構成されたモーションアクチュエータ(3)と、前記支持アセンブリの前記モーションアクチュエータ(3)を制御するためのモーション制御ユニット(4)とを備える、支持アセンブリ(2)
を備える、パイル保持デバイス(1)と、
前記モノパイル(PI)が前記クレーン(CR)から懸下され、前記パイルホルダ(PH)により把持されることとなる把持フェーズにおいて、前記水平面内における前記パイルホルダ(PH)に対する前記懸下されたモノパイル(PI)の位置および移動をモニタリングするように構成された、モニタリングシステム(5)と
を備え、
前記モニタリングシステム(5)は、前記パイルホルダ(PH)に対する前記モノパイル(PI)の前記位置および前記移動を表す信号を前記モーション制御ユニット(4)に対して送信するように構成される、方法において、場合によっては前記船(VE)の前記船体(HU)が浮遊状態にある状況において、
前記モニタリングシステム(5)を用いて、前記パイルホルダ(PH)に対する前記懸下されたモノパイル(PI)の前記位置および前記移動をモニタリングするステップと、
前記パイルホルダ(PH)に対する前記モノパイル(PI)の前記位置および前記移動を表す信号を前記モーション制御ユニット(4)に対して送信するステップと、
前記モーション制御ユニット(4)の制御下において、前記送信された信号に基づき前記支持アセンブリ(2)に対する前記パイルホルダ(PH)の移動を前記モノパイル(PI)の移動に同期させるように前記モーションアクチュエータ(3)を動作させるステップと、
前記モーション制御ユニット(4)の制御下において、前記モノパイル(PI)の中心軸に対して前記パイルホルダの中心を整列させるように前記モーションアクチュエータ(3)を動作させるステップと、
前記パイルホルダ(PH)により前記モノパイル(PI)を把持するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記パイルホルダ(PH)の前記移動を前記モノパイル(PI)の前記移動に同期させる前記ステップは、
最初に、x方向において前記パイルホルダ(PH)の移動を前記モノパイル(PI)の移動に同期させるステップと、
次いで、y方向において前記パイルホルダ(PH)の移動を前記モノパイル(PI)の移動に同期させるステップであって、前記y方向は前記x方向に対して垂直である、ステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モニタリングシステム(5)は、船の動き、船の位置、動的位置決めシステムの動作、船の安定性、前記船のバラストシステムの動作のうちの1つまたは複数に関する実データを供給するための1つまたは複数のセンサをさらに備え、前記方法は、
前記1つまたは複数の追加のセンサから前記モーション制御ユニット(4)へ信号を送信するステップ
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記クレーン(CR)により前記モノパイル(PI)を懸下するステップ
をさらに含み、前記把持フェーズは、
前記パイルホルダ(PH)に向かって前記モノパイル(PI)を、例えば方向転換させるなど、移動させるために前記クレーン(CR)を操作すること
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記モニタリングシステム(5)は1つまたは複数の距離センサ(6)を備え、前記1つまたは複数の距離センサ(6)は、前記パイルホルダ(PH)に対する前記モノパイル(PI)の距離および/または位置を計測することにより、例えば経時的な複数の距離計測値に基づき移動の判定を可能にするために、例えば前記パイルホルダ(PH)上に設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記モニタリングシステム(5)は、前記パイルホルダ(PH)上にそれぞれ設けられた2つ以上の距離センサ(6)を備え、前記距離センサ(6)同士は、前記パイルホルダ(PH)上において相互から離間されて設けられ、前記距離センサ(6)のうちの2つ以上が、重畳視野を有し、例えば前記距離センサ(6)のそれぞれの視野が、前記パイルホルダ(PH)の中心を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記支持アセンブリ(2)は、前記船(VE)の前記船体(HU)上に、例えば前記船(VE)のデッキ(DE)上に取り付けられた、例えば水平方向におよび前記船(VE)の前記船体(HU)の長手方向に延在するXレールなどの1つまたは複数の水平方向船体取付レール(7)を備え、サブフレーム(8)が、前記1つまたは複数の船体取付レール(7)の上で可動であり、例えば水平方向におよび前記船(VE)の前記船体(HU)の横方向に延在する1つまたは複数のYレールなどである1つまたは複数のサブフレーム取付レール(9)が、前記サブフレームの上におよび前記船体取付レール(7)に対して垂直に取り付けられ、支持フレーム(10)が、前記サブフレーム取付レール(9)の上で可動であり、前記パイルホルダ(PH)は、前記支持フレーム(10)上に取り付けられ、前記支持アセンブリ(2)の制御可能モーションアクチュエータ(3)が、前記船体取付レール(7)の上で前記サブフレーム(8)を移動させるように、および前記サブフレーム取付レール(9)の上で前記支持フレーム(10)を移動させるように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
洋上風力タービンを支持するように構成されたモノパイル(PI)を設置するための設置船であって、
船体(HU)と、
前記船体(HU)上に取り付けられ、前記モノパイル(PI)を懸下するように構成されたクレーン(CR)と、
パイル保持デバイス(1)であって、
前記クレーン(CR)から懸下される場合に前記モノパイル(PI)を把持するように構成されたパイルホルダ(PH)、および
前記パイルホルダ(PH)を支持し前記船(VE)の前記船体(HU)に対して取り付けられた支持アセンブリ(2)であって、前記支持アセンブリ(2)は、水平面内において前記船体(HU)に対して前記パイルホルダ(PH)を移動するように構成され、前記支持アセンブリ(2)は、前記面内において前記船体に対して前記パイルホルダ(PH)を移動させるように構成されたモーションアクチュエータ(3)と、前記支持アセンブリの前記モーションアクチュエータ(3)を制御するためのモーション制御ユニット(4)とを備える、支持アセンブリ(2)
を備える、パイル保持デバイス(1)と、
前記モノパイル(PI)が前記クレーン(CR)から懸下され、前記パイルホルダ(PH)により把持されることとなる把持フェーズにおいて、前記水平面内における前記パイルホルダ(PH)に対する前記懸下されたモノパイル(PI)の位置および移動をモニタリングするように構成された、モニタリングシステム(5)と
を備え、
前記モニタリングシステム(5)は、前記パイルホルダ(PH)に対する前記モノパイル(PI)の前記位置および前記移動を表す信号を前記モーション制御ユニット(4)に対して送信するように構成され、
前記モーション制御ユニット(4)は、前記モノパイル(PI)の前記位置および前記移動を表す前記信号に基づき前記船体(HU)に対する前記パイルホルダ(PH)の移動を前記モノパイル(PI)の移動に同期させるように、前記モーションアクチュエータ(3)を動作させるように構成され、前記モーション制御ユニット(4)は、前記モノパイル(PI)の中心軸に前記パイルホルダ(PH)の中心を整列させるように前記モーションアクチュエータ(3)を動作させるようにさらに構成される、設置船。
【請求項9】
前記モーション制御ユニット(4)は、最初に第1の方向すなわちx方向において前記パイルホルダ(PH)の移動を前記モノパイル(PI)の移動に同期させるように前記モーションアクチュエータ(3)を動作させ、その後に第2の方向すなわちy方向において前記パイルホルダ(PH)の移動を前記モノパイル(PI)の移動に同期させるように前記モーションアクチュエータ(3)を動作させるように構成され、例えば前記y方向は前記x方向に対して垂直である、請求項8に記載の船。
【請求項10】
前記モニタリングシステム(5)は、船の動き、船の位置、動的位置決めシステムの動作、船の安定性、前記船のバラストシステムの動作のうちの1つまたは複数に関する実データを供給するための1つまたは複数のセンサをさらに備え、前記モニタリングシステムは、前記1つまたは複数の追加のセンサから前記モーション制御ユニット(4)へ信号を送信するように構成される、請求項8または9に記載の船。
【請求項11】
前記クレーン(CR)は、前記パイルホルダ(PH)により前記モノパイル(PI)を把持するために前記パイルホルダ(PH)に向かって前記懸下されたモノパイル(PI)を方向転換させるように構成される、請求項8から10のいずれか一項に記載の船。
【請求項12】
前記モニタリングシステム(5)は1つまたは複数の距離センサ(6)を備え、前記1つまたは複数の距離センサ(6)は、前記パイルホルダ(PH)に対する前記モノパイル(PI)の距離および/または位置を計測することにより、例えば経時的な複数の距離計測値に基づき移動の判定を可能にするために、例えば前記パイルホルダ(PH)上に設けられる、請求項8から11のいずれか一項に記載の船。
【請求項13】
前記モニタリングシステム(5)は、例えば前記パイルホルダ(PH)上にそれぞれ設けられた2つ以上の距離センサ(6)を備え、前記距離センサ(6)同士は、例えば前記パイルホルダ(PH)上などにおいて相互から離間されて設けられ、前記距離センサ(6)のうちの2つ以上が、重畳視野を有し、例えば前記距離センサ(6)のそれぞれの視野が、前記パイルホルダ(PH)の中心を含む、請求項12に記載の船。
【請求項14】
前記支持アセンブリ(2)は、前記船(VE)の前記船体(HU)上に、例えば前記船(VE)のデッキ(DE)上に取り付けられた、例えば水平方向におよび前記船(VE)の前記船体(HU)の長手方向に延在するXレールなどの1つまたは複数の水平方向船体取付レール(7)を備え、サブフレーム(8)が、前記1つまたは複数の船体取付レール(7)の上で可動であり、例えば水平方向におよび前記船(VE)の前記船体(HU)の横方向に延在する1つまたは複数のYレールなどである1つまたは複数のサブフレーム取付レール(9)が、前記サブフレームの上におよび前記船体取付レール(7)に対して垂直に取り付けられ、支持フレーム(10)が、前記サブフレーム取付レール(9)の上で可動であり、前記パイルホルダ(PH)は、前記支持フレーム(10)上に取り付けられ、前記支持アセンブリ(2)の制御可能モーションアクチュエータ(3)が、前記船体取付レール(7)の上で前記サブフレーム(8)を移動させるように、および前記サブフレーム取付レール(9)の上で前記支持フレーム(10)を移動させるように構成される、請求項8から13のいずれか一項に記載の船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力タービンを支持するように構成されたモノパイルの設置の分野に関する。本発明は、モノパイルを設置するための方法と、モノパイルを設置するための設置船とに関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力タービンの分野においては、長さ100m以上、直径10メートル以上、および質量1000トン超、さらには2000トンを超えるモノパイルが珍しくない。これらのモノパイルは、洋上の設置場所へ輸送されなければならず、そこで設置されることになる。
【0003】
例えば特許文献1などの先行技術では、洋上設置現場まで船上においてモノパイルを水平配向で輸送することが知られている。設置現場において、モノパイルは、船上に設けられたパイルホルダによって水平配向のまま把持される。次いでモノパイルは垂直配向へと直立され、その後水中に降ろされる。モノパイルは、パイルの下方端部がパイルホルダにより支持された状態で、船上に設けられたクレーンによって直立される。
【0004】
特許文献2では、船は、専用直立デバイスおよび別個の専用パイルホルダデバイスを備える。モノパイルを直立することは、モノパイルの下方端部部分が直立デバイス上に載置され、モノパイルの上方端部がクレーンにより引き上げられることにより行われる。モノパイルが直立デバイスにより保持される一方で、モノパイルの最下端部は開状態のパイルホルダ内に移動される。次いで、パイルホルダがモノパイルの周囲において閉じられ、直立デバイスがモノパイルから外される。
【0005】
例えば特許文献3または特許文献4などにおける代替的な方法では、モノパイルは、最初にクレーンにより垂直配向へと直立され、その後パイルホルダにより把持される。例えば、モノパイルを直立することは、クレーンのみを使用してまたは直立プロセスにおいて協働する2つのクレーンを使用して行われる。例えば、船のいずれのパイル保持デバイスとも異なる専用直立ツールが利用される。例えば特許文献5において論じられるように、単一のクレーンが、直立プロセスのためのモノパイルの下方端部部分に係合する専用直立ツールと組み合わせて使用される。これらの方法では、モノパイルは、予め垂直配向にありクレーンから懸下された状態において、パイルホルダにより把持される。これらの方法の欠点は、モノパイルがパイルホルダにより把持される前に、またはパイルホルダがモノパイルを保持するプロセスにある場合に、パイルホルダがモノパイルにより損傷を被り得る点である。パイルホルダは、モノパイルのサイズおよび重量が高まるにつれてより損傷を被りやすくなり得る。
【0006】
この欠点を軽減するための既知の1つのアプローチは、例えばパイルホルダのやや脆弱なパイル係合デバイス(一般的にこのパイル係合デバイスの正確な動作/位置決めを行うための1つまたは複数の油圧アクチュエータを有する)をいかなる過剰な衝突からも保護するためなどに、パイルホルダにモノパイル用のフェンダ等を備えつけることである。さらなる既知のアプローチは、最初にパイルホルダのパイル係合デバイスのアレイを後退位置に設置することにより、把持フェーズの最中にモノパイルに対して過大サイズの開口を最初に形成することである。もう1つの既知のアプローチは、懸下されたモノパイルを安定させるためにタガーウィンチを使用することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2018/117846号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/123203号明細書
【特許文献3】国際公開第2018/052291号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2019/172752号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2020/128016号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、例えばパイルホルダと船のクレーンから懸下されたモノパイルとの係合プロセスの点などにおいて考慮した場合に、モノパイルを設置するために利用される既存の方法および船を改良することである。例えば、本発明の目的は、モノパイルによるパイルホルダに対する損傷のリスクを軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項1に記載の洋上風力タービンを支持するように構成されたモノパイルを設置するための方法に関する。
【0010】
モノパイルが垂直配向になされ、クレーンにより懸下されている場合に、モノパイルおよびクレーンは巨大振り子を形成し、モノパイルは振り子の錘を成す。この構成にある場合に、船に対するモノパイルの動作は、例えば、海の状態に誘発される船の動き(例えばロールおよび/またはピッチ)、船の動的位置決めシステムの動作(動的位置決めシステムが存在する場合)、船体上の荷重の変化(例えばモノパイルの質量の中心の移動に起因する)、船のバラストシステムの動作、大型のモノパイルおよび/またはクレーンに対して作用する風力、直立させる最中のクレーンの旋回動作、直立させる最中のクレーンブームのラフィング動作、例えばクレーンのブームなどにおけるクレーンの構造体における振動、クレーンが動作する結果として誘発されるモノパイルの動作等の、様々な要因により引き起こされ得る。さらに、船に対するモノパイルの動作は、例えばモノパイルが、例えば輸送場所などの第1の位置から例えば設置場所などの第2の位置へと、例えば方向転換されるなど移動される場合などに、クレーンの制御された移動により例えば意図的に引き起こされる場合もある。
【0011】
本発明は、モノパイルがクレーンにより懸下された場合におけるモノパイルのパイルホルダに対する例えば振り子動作または旋回動作などの動作によって、特にパイルホルダによりモノパイルを把持するプロセスにおいてパイルホルダがモノパイルにさらに近付けられた場合に、パイルホルダに対する損傷が生じる場合があるという洞察に基づく。モノパイルとパイルホルダとの間における比較的小さい動作であっても、モノパイルが高重量であることによりパイルホルダの1つまたは複数の構成要素に対する損傷を結果的に引き起こす場合がある。例えばパイルホルダに対する損傷は、パイルホルダとモノパイルとを一体にするときに、モノパイルがパイルホルダ内にまだ存在せず、例えばパイルホルダの1つまたは複数のパイル係合デバイスになどパイルホルダに衝突する場合に、引き起こされ得る。また、損傷は、モノパイルがパイルホルダ内にあるが、例えばまだ固定的に把持されていない場合におけるパイルホルダとモノパイルとの間の衝突によっても引き起こされる場合がある。
【0012】
本発明は、それを実施することよりモノパイルとパイルホルダとの間の相対動作を減少させる。モノパイルとパイルホルダとの間の相対動作を減少させることにより、これらの間で場合によって生じ得る衝突により引き起こされる損傷が軽減または回避され得る。さらに、本発明により、例えばモノパイルが望ましくない様式でパイルホルダに向かって移動を開始した場合にパイルホルダがモノパイルから離れるように移動を開始し得ることなどによって、モノパイルとパイルホルダとの間の衝突リスクが軽減または回避され得る。
【0013】
この方法において使用される船は、船体と船体上に取り付けられたクレーンとを備える。船は、浮体式船舶または昇降式船舶であってもよく、この方法は、船が浮遊状態に、または例えば船体がジャッキアップレッグにより支持されているなどの非浮遊状態にある場合に実施され得る。
【0014】
この船は、モノパイルを把持するためのパイルホルダと、パイルホルダを支持する支持アセンブリとを備えるパイル保持デバイスをさらに備える。支持アセンブリは、船の船体に対して取り付けられ、船体に対してパイルホルダを支持する。
【0015】
パイルホルダは、パイルホルダが船体に対して水平面内において移動し得るように、支持アセンブリによって可動に支持される。これにより、パイルホルダは、船体および船体に対して装着されたクレーンから独立して水平面内で移動することが可能となる。例えば、海底中にモノパイルを打ち込む最中に、支持アセンブリは、例えば垂直性を損なう船の動きを補償するなど、モノパイルの垂直性を確保するように動作され得る。
【0016】
支持アセンブリは、例えば油圧モーションアクチュエータまたは機械モーションアクチュエータなどのモーションアクチュエータを備え、これらのモーションアクチュエータは、船体に対してパイルホルダを移動させるように構成される。したがって、モーションアクチュエータを制御することにより、パイルホルダは船体に対して水平面内で移動され得る。本明細書において説明されるように、この制御により、クレーンから懸下されたモノパイルの把持フェーズにおいてパイルホルダの動きを同期させることも可能となる。モーションアクチュエータは、モーションアクチュエータに対して制御信号を送信する、例えばプロセッサなどを備えるモーション制御ユニットによって制御される。
【0017】
設置船は、さらにモニタリングシステムを備える。このモニタリングシステムは、モノパイルがクレーンから懸下され、パイルホルダにより把持されることとなる把持フェーズにおいて、水平面内におけるパイルホルダに対する懸下されたモノパイルの位置および移動をモニタリングするように構成される。例えば、モニタリングシステムは、位置および移動を判定するための複数のセンサを備える。これらの1つまたは複数のセンサは、位置/距離のみを検出し得るものであり、移動は、これらの1つまたは複数のセンサによる経時的な位置/距離の複数の判定に基づき判定される。これらの1つまたは複数のセンサは、好ましくはパイルホルダ上に設けられる。別の実施形態では、モニタリングシステムは、支持アセンブリまたは船体の上に設けられた1つまたは複数のセンサを備えてもよく、パイルホルダに対する位置および移動は、船の船体に対する認識済みの移動を考慮することによって判定される。さらに他の実施形態では、例えば慣性ベースセンサなどの1つまたは複数のセンサが、モノパイルの上に設けられ、および/または1つまたは複数のセンサが、クレーンから懸下されモノパイルの頂端部を固定的に保持するリフティングツールの上に設けられる。例えば、モノパイルの移動を判定するために、モニタリングシステムは、例えば一定の時間間隔など複数の時点においてモノパイルの位置を判定し、モノパイルの位置変化をモノパイルの移動に相関付ける。例えば、モニタリングシステムは、20Hz超、好ましくは40Hz超、例えば50Hzなどの周期でモノパイルの位置および移動を判定するように構成される。
【0018】
モニタリングシステムは、パイルホルダに対するモノパイルのモニタリングされた位置および移動を表す信号をモーション制御ユニットに対して送信するように構成される。これにより、モーション制御ユニットは、モノパイルのモニタリングされた位置および移動に基づきモーションアクチュエータを制御することが、したがってパイルホルダの移動を制御することが可能になる。
【0019】
設置船を利用する本発明による方法は、モーション制御ユニットにより、送信された信号に基づき船体に対するパイルホルダの移動をモノパイルの移動に同期させるようにモーションアクチュエータを動作させるステップを含む。パイルホルダの移動をモノパイルの移動に同期させることにより、パイルホルダによりモノパイルが実際に把持される前に、パイルホルダとモノパイルとの間の相対移動が制御され、場合によっては最小限に抑えられる、またはさらには解消される。例えば、パイルホルダの移動がモノパイルの移動に完全に同期されると、実際の把持段階においてパイルホルダとモノパイルとの間の相対移動が存在しなくなり得る。例えば、この同期が完全ではなく、モノパイルとパイルホルダとの間に小さい相対移動が依然として存在する場合がある。パイルホルダとモノパイルとの間の相対移動は、これらの移動が同期される場合には、パイルホルダと船の船体との間の相対移動よりも小さい。例えば、パイルホルダの移動が、例えばx方向などの単一の方向のみにおいてモノパイルの移動と同期され、例えばy方向などの他の方向においては同期されなくてもよい。
【0020】
モーションアクチュエータは、モーション制御ユニットによりモノパイルの中心軸にパイルホルダの中心を整列させるように動作される。例えば、モノパイルへ向かう一方向へのパイルホルダの移動はモノパイルの移動には同期され得ないが、モノパイルへ向かうパイルホルダの小さい相対移動が引き起こされ得ることにより整列を可能にし、その一方で同時に垂直方向へのパイルホルダの移動はモノパイルの移動に同期される。これにより、モノパイルの中心軸にパイルホルダの中心を制御下において整列させることが可能となり、それにより衝突リスクが軽減されたモノパイルの把持が可能となる。
【0021】
本発明のこのアプローチでは、パイルホルダは懸下されたモノパイルに対して能動的にそれ自体の位置を決定し、それにより係合の最中における過剰な接触力の変化が回避される、または少なくとも軽減される。例えば、本発明の適用により、先行技術のアプローチの場合に比べて比較的小さい(例えば直径の点において)および/またはより軽量の設計のパイル保持デバイスが可能となる。例えば、パイルホルダのサイズおよび/または重量を低下させることが可能となることは、モノパイルの着地およびパイル打ち込みの最中にパイルホルダを動作させるために必要となる出力がより低くなることにもなり得る。
【0022】
実際に、懸下されたモノパイルは、例えば船が昇降式船舶であることなどにより、例えば船体が浮遊状態にない場合などに、把持フェーズの前に(著しい)振り子動作を有するとは必ずしも限らない。しかし、昇降式船舶の場合であっても、懸下されたモノパイルの幾分かの振り子動作が生じる場合がある。例えば、風力および/またはクレーンの動き(例えば旋回)が、懸下されたモノパイルに幾分かの振り子動作を誘発する場合がある。懸下されたモノパイルにおいて振り子動作がまったくまたはわずかにしか見られない場合でも、本発明は有利となる。例えば、把持フェーズに至るおよび/または把持フェーズの最中におけるモノパイルおよびパイルホルダの相対経路の(若干の)不正確さについても、本発明を利用することにより対処可能となる。
【0023】
特に、例えば単胴船体船舶または半潜水型船舶などとして具現化された船が浮遊状態にある場合に、海の状態に誘発される船の動きは、把持フェーズの前および場合によってはその最中において懸下されたモノパイルに振り子動作をもたらし得る。これらのような状況では、本発明は、モノパイルを把持するプロセスの最中にパイルホルダを能動的に位置決めすることによって巨大なモノパイルの振り子動作に対処するために使用され得る。
【0024】
把持フェーズの最中および好ましくはさらには把持フェーズの前において、クレーンから懸下されたモノパイルの動きをモニタリングすることは、例えば1つまたは複数のカメラに基づいたおよび/または1つまたは複数の慣性ベースモーションセンサに基づいた、例えば非接触型の、モーション感知システムを用いて行われ得る。このモーション感知システムの1つまたは複数のセンサは、モーション補償パイル保持デバイスの上に、例えばモーション補償パイル保持デバイスのパイルホルダの上に取り付けられ得る。代替的にはまたは追加的には、モーション感知システムの1つまたは複数のセンサは、他の位置に、例えば船の船体の上、クレーンの上、または(一時的に)モノパイルの上などに取り付けられてもよい。また、1つまたは複数のセンサは、リフティングツール上に設けられてもよく、この場合にはパイルの位置は、パイルホルダに対するリフティングツールの位置を判定することにより判定される。これらのセンサは、例えばパイルホルダのリング上などパイルホルダの上に、または例えばパイルホルダリングに対して直接的に連結されパイルホルダリングと同調して移動する部分などである例えば支持アセンブリの一部の上などパイルホルダの下方に設けられてもよい。さらに、これらのセンサは、好ましくはないが船の、例えばデッキ上など船体の上に設けられてもよい。
【0025】
把持フェーズの最中に、パイルホルダの中心がモノパイルの中心軸に整列される場合に、モノパイルの下方端部はパイルホルダの下方に位置し、モノパイルの上方端部はパイルホルダの上方に位置し得る。
【0026】
実施形態において、パイルホルダの移動をモノパイルの移動に同期させるステップは、
最初に、第1の方向すなわちx方向においてパイルホルダの移動をモノパイルの移動に同期させるステップと、
次いで、第2の方向すなわちy方向においてパイルホルダの移動をモノパイルの移動に同期させるステップであって、例えばy方向はx方向に対して垂直である、ステップと
を含む。例えば、x方向は船の長手方向に沿っており、y方向はこの長手方向に対して垂直である。例えば、この実施形態により、パイルホルダの移動のモノパイルへの同期を、例えばステップまたはフェーズの幾分かの重畳を伴いながらなど2つのステップまたはフェーズで実施されるように分離させることが可能となる。さらに、これにより、モノパイルにパイルホルダを整列させる場合に、y方向における同期から若干逸脱した状態においてx方向における同期を維持することが可能となる。
【0027】
パイルホルダが懸下されたモノパイルと動きにおいて同期され、モノパイルおよびパイルホルダの中心同士が整列されると、パイル係合デバイスは、例えばモノパイルの周囲においてパイルホルダを閉じた後などに、モノパイルと係合され得る。
【0028】
実施形態において、モニタリングシステムは、船の動き、船の位置、動的位置決めシステムの動作、船の安定性、船のバラストシステムの動作のうちの1つまたは複数に関する実データを供給するための1つまたは複数のセンサをさらに備え、前出の方法は、
1つまたは複数の追加のセンサからモーション制御ユニットへ信号を送信するステップ
をさらに含む。これらのセンサにより供給されるデータによって、モーション制御ユニットは、追加的なパラメータに基づきモノパイルに対するパイルホルダの移動を制御することが可能となり得る。例えば、あるセンサが、船が転覆しかけた結果などにより船の不安定を検出する場合に、モーション制御ユニットは、モノパイルを解放し船からモノパイルを押し離すようにパイルホルダを制御し得る。別の例では、パイルホルダは、例えば波に起因するまたは船のモーションドライブに起因する移動などの、船の移動に関する情報に基づき追加的に動作されてもよい。例において、例えばセンサが洋上作業の実施に適した浅波ウィンドウを予測する波浪予測センサである場合などに、モニタリングシステムおよび/またはモーション制御システムは、これらのセンサのデータに基づきモノパイル、パイルホルダ、および/または船の移動を予測し得る。
【0029】
実施形態において、この方法は、
クレーンによりモノパイルを懸下するステップ
をさらに含み、把持フェーズは、
パイルホルダに向かってモノパイルを方向転換させるためにクレーンを操作すること
を含む。モノパイルは、垂直方向に輸送され次いでクレーンから懸下されてもよく、または水平方向に輸送され例えばクレーンまたは別個のデバイスなどにより直立され次いでクレーンにより懸下されてもよい。モノパイルがクレーンにより懸下され、好ましくはパイルホルダの移動がモノパイルの移動と同期されると、またはこのフェーズの最中において、クレーンは、例えばモノパイルの中心軸にパイルホルダの中心を整列させるためになど、パイルホルダに向かってモノパイルを移動させるように動作され得る。
【0030】
実施形態において、モニタリングシステムは、パイルホルダに対するモノパイルの位置および好ましくは移動を計測するために、例えばパイルホルダ上に設けられた1つまたは複数の距離センサを備える。これにより、パイルホルダに対するモノパイルの位置の効率的な計測が可能になる。さらに、ある時間間隔の間にモノパイルの位置の複数回の計測を行うことにより、距離センサの計測値に基づきパイルホルダに対するモノパイルの移動を判定することが可能となる。1つまたは複数の距離センサは、ライン上においてモノパイルまでの距離を計測するラインセンサとして具現化されてもよく、例えばこのラインは、パイルホルダが移動する水平面内に位置する。例えば、1つまたは複数のセンサは、レーザ計測に基づくものであり、例えばレーザがモノパイルに対して投影を行い、カメラがモノパイル上のこの投影を検出し、プロセッサが検出された投影に基づき適切な計算を行う。ラインセンサを設けるおよび/またはレーザベース計測値を取得することにより、モノパイルまでのパイルホルダの距離を正確に判定することが可能となる。
【0031】
さらなる実施形態では、モニタリングシステムは、例えばパイルホルダ上にそれぞれ設けられた2つ以上の距離センサを備える。これらの距離センサは、例えばパイルホルダの上などにおいて相互に空間的に離間されて設けられ、距離センサのうちの2つ以上が、重畳視野を有してもよく、例えば距離センサのそれぞれの視野が、パイルホルダの中心を含む。例えば、パイルホルダの中心の周囲などにおいて水平面内において離間された2つの距離センサを設けることにより、モノパイルの計測値がより正確になり得る。例えば、水平面に対して垂直方向において離間された2つの距離センサを設けることにより、モノパイルの計測値は、例えばシャドー効果などの二次スチール効果による影響をより被りにくくなる。例えば、4個のセンサが設けられ、2個のセンサがパイルホルダ上の第1の高さに設けられ、2個のセンサがパイルホルダ上の第1の高さとは異なる第2の高さに設けられ得る。さらに、各高さに位置する距離センサは、相互に異なる角度で設けられてもよく、それにより非平行視野を有することになる。4個のセンサを設けることにより、これらのセンサのうちの1つが、例えばシャドー効果、機能不全、または視野遮蔽などの理由によって不正確なデータを提供する場合でも、モノパイルの位置の確実な三角測量が可能になる。パイルホルダの中心が視野内に位置することを可能にすることにより、これらのセンサは、パイルホルダの中心軸がパイルホルダの中心に整列された場合に、パイルホルダまでの距離を判定することができる。
【0032】
好ましくは、1つまたは複数の距離センサは、1cm未満の、より好ましくは5mm未満の、例えば3mm未満の距離分解能を有する。好ましくは、距離センサは、暗い表面については、例えば10%の反射を伴ってなど、50メートル超の距離での、例えば80メートル超の距離での距離計測を行うことが可能である。好ましくは、距離センサは、明るい表面については、例えば80%の反射を伴ってなど、100メートル超の距離での、例えば200メートル超の距離での距離計測を行うことが可能である。
【0033】
一実施形態では、支持アセンブリは、船の船体上に、例えば船のデッキ上に取り付けられた、例えば水平方向におよび船の船体の長手方向に延在するXレールなどの1つまたは複数の水平方向船体取付レールを備える。サブフレームが、前記1つまたは複数の船体取付レールの上で可動である。例えば水平方向におよび船の船体の横方向に延在する1つまたは複数のYレールなどである1つまたは複数のサブフレーム取付レールが、前記サブフレームの上におよび船体取付レールに対して垂直に取り付けられる。支持フレームが、前記サブフレーム取付レールの上で可動であり、パイルホルダは、支持フレーム上に取り付けられる。支持アセンブリの制御可能モーションアクチュエータが、船体取付レールの上で前記サブフレームを移動させるように、およびサブフレーム取付レールの上で支持フレームを移動させるように構成される。例えば、これは、水平面内においてパイルホルダを移動させ得る、ならびに例えばx方向およびy方向における移動の同期を可能にする実際的な一実施形態である。
【0034】
さらに、本発明は、請求項8に記載の洋上風力タービンを支持するように構成されたモノパイルを設置するための設置船に関する。
【0035】
この船の実施形態において、モーション制御ユニットは、最初に第1の方向すなわちx方向においてパイルホルダの移動をモノパイルの移動に同期させるようにモーションアクチュエータを動作させ、その後に第2の方向すなわちy方向においてパイルホルダの移動をモノパイルの移動に同期させるようにモーションアクチュエータを動作させるように構成される。y方向はx方向に対して垂直である。例えば、x方向は船の長さ方向に沿っており、y方向は船に対して垂直である。
【0036】
この船の実施形態では、モニタリングシステムは、船の動き、船の位置、動的位置決めシステムの動作、船の安定性、船のバラストシステムの動作のうちの1つまたは複数に関する実データを供給するための1つまたは複数のセンサをさらに備え、モニタリングシステムは、1つまたは複数の追加のセンサからモーション制御ユニットへ信号を送信するように構成される。
【0037】
この船の実施形態では、クレーンは、パイルホルダによりモノパイルを把持するためにパイルホルダに向かって、懸下されたモノパイルを例えば方向転換させるなど移動させるように構成される。
【0038】
この船の実施形態では、モニタリングシステムは、1つまたは複数の距離センサを備え、1つまたは複数の距離センサは、パイルホルダに対するモノパイルの位置および好ましくは移動を計測するために例えばパイルホルダ上に設けられる。
【0039】
この船の実施形態では、モニタリングシステムは、例えばパイルホルダ上にそれぞれ設けられた2つ以上の距離センサを備え、距離センサ同士は、例えばパイルホルダ上などにおいて相互から離間されて設けられ、距離センサのうちの2つ以上が、重畳視野を有し、例えば距離センサのそれぞれの視野が、パイルホルダの中心を含む。
【0040】
この船の実施形態では、支持アセンブリは、船の船体上に、例えば船のデッキ上に取り付けられた、例えば水平方向におよび船の船体の長手方向に延在するXレールなどの1つまたは複数の水平方向船体取付レールを備える。サブフレームが、前記1つまたは複数の船体取付レールの上で可動であり、例えば水平方向におよび船の船体の横方向に延在する1つまたは複数のYレールなどである1つまたは複数のサブフレーム取付レールが、前記サブフレームの上におよび船体取付レールに対して垂直に取り付けられる。支持フレームが、前記サブフレーム取付レールの上で可動であり、パイルホルダは、支持フレーム上に取り付けられ、支持アセンブリの制御可能モーションアクチュエータが、船体取付レールの上で前記サブフレームを移動させるように、およびサブフレーム取付レールの上で支持フレームを移動させるように構成される。
【0041】
当技術において知られているように、実施形態において、パイル保持デバイスはティルト機能を備えなくてもよい。場合によっては、パイルホルダは、輸送モードまたはドッキングモードの実現の点において支持アセンブリに対して単に傾斜可能である。
【0042】
一実施形態では、船は、船の動き、船の位置、動的位置決めシステムの動作、船の安定性、バラストシステムの動作のうちの1つまたは複数に関する実データを供給するように構成された1つまたは複数のセンサを備える。係合フェーズの最中におけるパイルホルダの位置決めは、これらの1つまたは複数のセンサからの信号に基づきさらに制御/微調整される。
【0043】
当技術において知られているように、パイル保持デバイスは、リングを備えてもよく、または単一のリングのみを有する。このリングは、各リングの外周部に沿って分散された複数のパイル係合デバイスを備え、例えば各パイル係合デバイスは、リングに対して径方向に位置決め可能である1つまたは複数のパイルガイドローラを備える。リングは、リングベースと、例えば2つの半円形ジョーである1つまたは複数の可動ジョーとを備え、各ジョーは、閉位置と開位置との間で可動である。閉位置では、各リングは閉じた円環を形成し得る。好ましくは、パイルホルダは単一のリングを有する。
【0044】
また、本発明は、洋上風力タービンを支持するように構成されたモノパイルを設置するための方法に関する。この方法では、
船体と、
船体上に取り付けられたクレーンと、
モーション補償パイル保持デバイスであって、
船の船体に対して取り付けられたモーション補償支持アセンブリ、および
支持アセンブリにより支持されるパイルホルダ
を備える、モーション補償パイル保持デバイスと
を備える、設置船が使用され、
モーション補償支持アセンブリは、制御可能モーションアクチュエータおよび関連するモーション制御ユニットを備え、この関連するモーション制御ユニットは、海底上にパイルを着地させる最中におけるモノパイルの位置制御を、および/または海底中へのモノパイルの打ち込みの最中におけるモノパイルの垂直方向制御を行うことによって、船の動きを補償するように構成される。この方法は、場合によっては船の船体が浮遊状態にある状況において、
例えばクレーンのみを使用してまたはモーション補償パイル保持デバイスとは異なるモノパイル直立ツールを伴ってなど、モノパイルを懸下配向および直立配向にするようにクレーンを操作するステップと、
懸下されたモノパイルを、例えば懸下されたモノパイルの下方端部部分を、パイルホルダと係合状態にするステップと、
モノパイルが海底上に着地するように、パイルホルダにより案内されつつクレーンによってモノパイルを下降させるステップと、
例えばパイル駆動装置の使用を伴ってなど、海底中にモノパイルをさらに深く打ち込むステップと
を含み、
パイルホルダに懸下されたモノパイルを係合するフェーズの最中に、モノパイルの例えば振り子動作などの動作がモニタリングシステムによりモニタリングされて、モノパイルの実際の位置および/または動作を表す信号を送信し、これらの信号が、モーション補償パイル保持デバイスのモーション制御ユニットに供給され、係合フェーズの最中にこのモーション制御ユニットにより制御可能モーションアクチュエータが管理されて懸下されたモノパイルに対してパイルホルダを能動的に位置決めすること、を特徴とする。
【0045】
実施形態において、係合フェーズの最中および好ましくはさらには係合フェーズの前に、クレーンから懸下されたモノパイルの動作をモニタリングすることは、例えば1つまたは複数のカメラに基づいたおよび/または1つまたは複数の慣性ベースモーションセンサに基づいた、例えば非接触型の、モーション感知システムを用いて行われる。
【0046】
実施形態において、係合フェーズの最中におけるパイルホルダの位置決めは、船の動き、船の位置、動的位置決めシステムの動作、船の安定性、バラストシステムの動作のうちの1つまたは複数に関する実データを供給する1つまたは複数のセンサからの信号に基づき制御される。
【0047】
また、本発明は、洋上風力タービンを支持するように構成されたモノパイルを設置するように構成された設置船に関する。この設置船は、
船体と、
船体上に取り付けられたクレーンと、
モーション補償パイル保持デバイスであって、
船の船体に対して取り付けられたモーション補償支持アセンブリ、および
支持アセンブリにより支持されるパイルホルダ
を備える、モーション補償パイル保持デバイスと
を備え、
モーション補償支持アセンブリは、制御可能モーションアクチュエータおよび関連するモーション制御ユニットを備え、この関連するモーション制御ユニットは、海底上にパイルを着地させる最中におけるモノパイルの位置制御を、および/または海底中へのモノパイルの打ち込みの最中におけるモノパイルの垂直方向制御を行うことによって、船の動きを補償するように構成され、
この船は、場合によっては船の船体が浮遊状態にある状況において、
例えばクレーンのみを使用してまたはモーション補償パイル保持デバイスとは異なるモノパイル直立ツールを伴ってなど、モノパイルを懸下配向および直立配向にするようにクレーンを動作させるステップと、
懸下されたモノパイルをパイルホルダと係合状態にするステップと、
モノパイルが海底上に着地するように、パイルホルダにより案内されつつクレーンによってモノパイルを下降させるステップと、
例えばパイル駆動装置の使用を伴ってなど、海底中にモノパイルをさらに深く打ち込むステップと
を含む方法を実施するように構成され、
船が、モニタリングシステムを備え、このモニタリングシステムが、懸下されたモノパイルを、例えば懸下されたモノパイルの下方端部部分をパイルホルダと係合状態にするフェーズの最中に、モノパイルの例えば振り子動作などの動作をモニタリングするように構成され、このモニタリングシステムが、モノパイルの実際の位置および/または動作を表す信号を送信することと、モニタリングシステムが、前記信号がモーション制御ユニットに供給されるようにモーション制御ユニットに対してリンクされ、このモーション制御ユニットが、懸下されたモノパイルホルダに対してパイルホルダを能動的に位置決めするために前記フェーズの最中に制御可能モーションアクチュエータを管理するように構成されることと、を特徴とする。
【0048】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】設置船を示す図である。
図2図1に示すパイル保持デバイスのより詳細な図である。
図3】開構成にあるパイル保持デバイスを示す図である。
図4】本発明を説明するための単胴船体設置船を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、モノパイルPIをハンドリングしている最中にある船VE上のパイル保持デバイスを示す。この実施形態では、船VEは、少なくとも1つのデッキDEを有する船体HUを備える。デッキDEは、この場合においては5個のモノパイルPIを水平配向において保管するのに十分なスペースを提供する。モノパイルPIは、この例においてはモノパイルPIの長手方向軸が船VEの長手方向軸に対して平行になるように保管される。船の長手方向軸は、この船の船首と後部(すなわち船尾)との間にわたり延在する。横方向への保管もまた可能である。
【0051】
この実施形態では、船VEは単胴船体船舶であるが、代替的には半潜水型船舶であることも可能である。
【0052】
図示しない一実施形態において、船VEは、昇降式船舶である。この昇降式船舶では、レッグを水中に降ろすことにより船体が水上に少なくとも部分的に出ることによって、船に対する波の影響を限定または最小限にすることが可能である。したがって、本船は、例えば気象条件および波浪条件が良好である場合には浮遊状態で使用することが可能であり、気象条件および波浪条件が不良である場合には引上げ状態で使用することが可能である。
【0053】
この実施形態では、パイル保持デバイス1は、船の長手方向側部に、本実施形態においては船VEの右舷側に配置されて、上方から見て船VEの右舷側輪郭部の外側にパイルPIを保持することができる。代替的には、パイル保持デバイス1は、船の船尾に配置されて、上方から見て船の船尾側輪郭部の外側にモノパイルPIを保持することができる。
【0054】
この実施形態では、クレーンCRが保持デバイス1に隣接して配置される。クレーンCRは、モノパイルPIをハンドリングするように構成される。このハンドリングとしては、保管位置からのモノパイルPIの引上げ、モノパイルPIの直立、パイル保持デバイス1に対するパイルPIの位置決め、および海底へのモノパイルPIの沈降のいずれかが含まれ得る。モノパイルPIは、クレーンCRにより懸下される場合にパイル保持デバイス1によって把持され得る。
【0055】
パイル保持デバイス1およびクレーンCRが船の船尾に配置される場合には、クレーンは船VEの重心と一直線を成すように配置され、パイル保持デバイス1はクレーンに隣接して配置されることが好ましい。そのような場合には、パイル駆動機構の保管位置は、パイル保持デバイスが配置される側の反対側となるクレーンCRの側であることが好ましい。また、船VEは、例えばパイルPIの自由上方端部に対して連結されるように構成され、洋上風力タービンのマストを支持するように構成されたパイル延長部PX(移行ピースとも呼ばれる)などの他の装備を保管するためのデッキスペースをさらに備えてもよい。
【0056】
図2は、例えば本発明の方法ステップを正常に完了した後などにおいて、モノパイルPIを既に把持しているパイル保持デバイス1を示し、モノパイルPIの中心軸は、パイルホルダPIの中心と整列される。図2に示すパイル保持デバイス1は、図示しない船VE上に取り付けられる。
【0057】
図2において分かるように、図に示すパイル保持デバイス1は、ベース構造部BS、第1のヨーY1、および第2のヨーY2を有するパイルホルダPHを備える。このパイル保持デバイスは、船体HU上に取り付けられたおよびパイルホルダPHのベース構造部BSにおいてパイルホルダPHを支持する支持アセンブリ2をさらに備える。
【0058】
図示する実施形態では、支持アセンブリ2は、例えば船VEのデッキDE上など、船VEの船体HU上に取り付けられた2つの水平船体取付レール7を備える。船体取付レール7は、船VEの船体HUに沿って水平方向に延在するXレールである。サブフレーム8が、前記船体取付レール7の上で可動であり、1つのサブフレーム取付レール9が、前記サブフレーム8上におよび船体取付レール7に対して垂直方向に取り付けられる。さらに、支持フレーム10が、前記サブフレーム取付レール9の上で可動である。パイルホルダPHは、支持フレーム10上に取り付けられる。支持アセンブリ2のモーションアクチュエータ3は、船体取付レール7の上で前記サブフレーム8を移動させるように、およびサブフレーム取付レール9の上で支持フレーム10を移動させるように構成される。これにより、パイルホルダPHは、船体取付レール7に沿ってx方向への、およびそれとは別個にサブフレーム取付レール9に沿ってy方向への移動が可能になる。この構成により、パイルホルダPHは、パイルホルダPHの移動をモノパイルPIに同期させることが2ステップで実施されるように分離させることが可能となる。さらに、これにより、モノパイルPIにパイルホルダPHを整列させる場合に、y方向における同期から若干逸脱した状態においてx方向における同期を維持することが可能となる。
【0059】
図示する支持アセンブリ2の実施形態により、パイルホルダPHは、船体HU上に取り付けられた支持アセンブリ2に対しておよびこの支持アセンブリ2から独立して水平面内において移動することが可能となる。支持アセンブリ2の他の実施形態によれば、パイルホルダPHは、水平面内において移動することが可能となり、それらの実施形態もまた本発明の一部として含まれる。
【0060】
支持アセンブリはモーションアクチュエータ3を備え、この図では、モーションアクチュエータ3は、船体取付レール7およびサブフレーム取付レール9の付近に設けられて、レール上において支持アセンブリ2を駆動する。さらに、図2のパイルホルダPHは、モノパイルPIの衝撃からパイルホルダPHを保護するためのバンパー13を備える。
【0061】
モーションアクチュエータ3は、船体(HU)に対してパイルホルダPHを移動させるように構成される。モーションアクチュエータ3を制御することにより、パイルホルダPHは船体HUに対して水平面内において可動となる。本明細書において説明されるように、この可動性により、把持フェーズの最中に、クレーンから懸下されたモノパイルにパイルホルダPHの動きを同期させることが可能となり得る。
【0062】
モーションアクチュエータ3は、例えばモーションアクチュエータ3に対して制御信号を送信するプロセッサなどのモーション制御ユニット4によって制御される。この図のモーション制御ユニット4は、支持アセンブリ2上に取り付けられる。実施形態において、モーション制御ユニット4は、船VEの別の位置の上に設けられてもよく、例えば船VEのブリッジ上に設けられてもよい。さらに、パイル保持デバイス1は、この図では支持アセンブリ2上に設けられたモニタリングシステム5を備える。
【0063】
実施形態において、モニタリングシステムは、パイルホルダPH上、または任意の他の適切な位置の上に設けられ得る。例えば、モニタリングシステム5の第1のセンサが第1のヨーY1上に設けられ、第2のセンサが第2のヨーY2上に設けられ、第3のセンサがベース構造部BS上に設けられてもよい。
【0064】
別の例では、モニタリングシステム5の1つまたは複数のセンサが、パイルホルダPH上ではなく支持アセンブリ2上に設けられてもよく、例えばパイルホルダに対して直接的に装着されパイルホルダと一致して移動する支持アセンブリ2の一部の上などに設けられてもよい。
【0065】
モニタリングシステム5は、モノパイルPIがクレーンCRから懸下され、パイルホルダPHにより把持されることとなる把持フェーズにおいて、水平面内におけるパイルホルダPHに対するこの懸下されたモノパイルPIの位置および移動をモニタリングするように構成される。
【0066】
例えば、モニタリングシステム5は、図3に示すようにパイルホルダPH上に設けられた、位置および移動を判定するための複数のセンサ6を備える。
【0067】
図示する実施形態では、モニタリングシステム5は、支持アセンブリ2上に設けられたセンサを備える。例えば、モノパイルPIの移動を判定するために、モニタリングシステム5は、例えば一定の時間間隔など複数の時点においてモノパイルPIの位置を判定し、モノパイルPIの位置変化をモノパイルPIの移動に相関付けする。例えば、モニタリングシステム5は、20Hz超、好ましくは40Hz超、例えば50Hzなどの周期でモノパイルPIの位置および移動を判定するように構成される。
【0068】
モニタリングシステム5は、パイルホルダPHに対するモノパイルのモニタリングされた位置および移動を表す信号をモーション制御ユニット4へと送信するように構成される。これにより、モーション制御ユニット4は、モノパイルのモニタリングされた位置および移動に基づきモーションアクチュエータを制御することが、したがってパイルホルダPHの移動を制御することが可能になる。上述のように、モーション制御ユニット4は、船VE上の任意の適切な位置に設けられ得る。
【0069】
実施形態において、モーション制御ユニット4は、モニタリングシステム5に隣接し、例えばモニタリングシステム5の中央処理装置に隣接する。他の実施形態では、モーション制御ユニット4は、モーションアクチュエータ3に隣接して位置する。
【0070】
図3は、例えばモノパイルPIを把持する前などにおける、開構成にあるパイルホルダPHを示す。図3のパイルホルダPHは、図2のパイルホルダと比較した場合に異なる実施形態であり得る。パイル保持デバイス1の図3に示す実施形態では、第1のヨーY1は、第1のヨー枢動軸を中心として枢動するようにベース構造部BSに対して枢動可能に連結され、第2のヨーY2は、第2のヨー枢動軸を中心として枢動するようにベース構造部BSに対して枢動可能に連結される。第1のヨーY1および第2のヨーY2はいずれも、図1および図2に示すようなそれぞれの閉位置と図3に示すような開位置との間において枢動可能である。この実施形態では、モノパイルを囲むためのベース構造部BS、第1のヨーY1、および第2のヨーY2は、サイズにおいて同様であり、すなわちいずれも120度円弧形状軌道に沿って延在して円セグメントを形成する。これは、第1のヨーY1および第2のヨーY2が開位置にある図3において最もよく示される。パイルホルダの他の実施形態もまた可能であり、例えば第1のヨーY1、ベース構造部BS、および第2のヨーY2がサイズにおいて異なる。
【0071】
開位置では、モノパイルPIは、横方向においてパイルホルダPHからおよびパイルホルダPHまで移動することが可能であり、すなわちこの横方向は、パイルホルダが移動する水平面内のものである。
【0072】
モニタリングシステム5の4個の距離センサ6が、パイルホルダPHに対するモノパイルPIの位置および移動をモニタリングするためにパイルホルダPHのベース構造部BS上に設けられる。これにより、パイルホルダPHに対するモノパイルPIの位置の効率的な計測が可能になる。例えば、ある時間間隔の間にモノパイルPIの位置を複数回計測することにより、距離センサ6の計測値に基づきパイルホルダPHに対するモノパイルPIの移動を判定することが可能となる。距離センサ6は重畳視野を有する。
【0073】
この実施形態では、距離センサ6は、ラインセンサ6であり、これらのラインセンサ6は、例えばパイルホルダPHが移動する水平面内に位置するラインなどのライン上においてモノパイルPIまでの距離を計測する。これにより、モノパイルPIまでのパイルホルダPHの距離をより正確に判定することが可能となる。
【0074】
距離センサ6同士は、パイルホルダPH上において相互から離間されて設けられる。例えば、距離センサ同士は、パイルホルダの中心に向かって例えば垂直など非平行な視野を有する状態で取り付けられる。例えば、2つのセンサが、ベース構造部BSのそれぞれ異なる高さにおいてベース構造部BSのいずれかの端部に設けられる。
【0075】
4個の距離センサ6は、それらのセンサ6のうちの1つが例えばシャドー効果、機能不全、または視野遮蔽などの理由により不正確なデータを供給する場合でも、モノパイルPIの位置の確実な三角測量を可能にする。パイルホルダPHの中心を視野内に位置させ得ることにより、距離センサ6は、パイルホルダの中心軸がパイルホルダの中心に整列された場合に、パイルホルダPHまでの距離を判定することができる。ヨーY1、Y2上に距離センサ6を設けることと比較した場合におけるベース構造部BS上に距離センサ6を設けることの1つの利点は、パイルホルダPHが開構成または閉構成のいずれかにある場合に、距離センサ6の視野が変化しない点である。
【0076】
好ましくは、距離センサ6は、1cm未満の、より好ましくは5mm未満の、例えば3mm未満の距離分解能を実現する/有する。好ましくは、距離センサ6は、暗い表面については、例えば10%の反射を伴ってなど、50メートル超の距離での、例えば80メートル超の距離での距離計測を行うことが可能である。好ましくは、距離センサ6は、明るい表面については、例えば80%の反射を伴ってなど、100メートル超の距離での、例えば200メートル超の距離での距離計測を行うことが可能である。
【0077】
図4は、洋上風力タービンを支持するように構成されたモノパイル410の設置のために構成された単胴船体設置船400を示す。
【0078】
船400は、船体401と、船体上に取り付けられたクレーン450と、モーション補償パイル保持デバイス500とを備える。
【0079】
船400は、1つまたは複数の、好ましくは複数のモノパイル410を、水平配向において例えばデッキ上などにおいて例えば専用支持構造部により支持された状態で保管するように構成される。図示するように、モノパイル410は、船体の長手方向軸に対して横方向に保管されることが可能であるが、前記軸に対する平行方向への保管が好ましい。
【0080】
デバイス500は、
船の船体に対して取り付けられたモーション補償支持アセンブリ510と、
支持アセンブリ510により支持されるパイルホルダ520と
を備える。
【0081】
モーション補償支持アセンブリ510は、その様々な実施形態について当業者は熟知しているため、非常に概略的にのみ示される。一般的に、アセンブリ510は、制御可能モーションアクチュエータおよび関連するモーション制御ユニット530を備え、この関連するモーション制御ユニット530は、海底上にパイルを着地させる最中におけるモノパイル410の位置制御を、および/または海底中へのモノパイルの打ち込みの最中におけるモノパイル410の垂直方向制御を行うことによって、船の動きを補償するように構成される。
【0082】
図4は一実施形態を概略的に示す。パイル保持デバイス500の支持アセンブリ510は、例えば船のデッキ上など、船の船体上に取り付けられた1つまたは複数の水平船体取付レールを備え、例えば水平方向におよび船の船体の長手方向に延在するXレールを備える。サブフレームが、前記1つまたは複数の船体取付レールの上で可動であり、例えば水平方向におよび船の船体の横方向に延在する1つまたは複数のYレールなどの1つまたは複数のサブフレーム取付レールが、前記サブフレーム上におよび船体取付レールに対して垂直方向に取り付けられる。支持フレームが、前記サブフレーム取付レールの上で可動であり、パイルホルダは、この支持フレーム上に取り付けられる。支持アセンブリの制御可能モーションアクチュエータが、船体取付レールの上で前記サブフレームを移動させるように、およびサブフレーム取付レールの上で支持フレームを移動させるように構成される。例えば、モーションアクチュエータは、ラックアンドピニオン機構として具現化される。例えば、パイルホルダ520は、支持フレームに対して傾斜することができない。
【0083】
船400は、例えば水平状態のままのモノパイルの下方端部部分に係合するように具現化された、パイル保持デバイス500とは異なる直立ツール600を備える。ツール600は、モノパイル410の上方端部がクレーン450により引き上げられる、直立させる最中に下方端部を支持する。
【0084】
船400は、船の船体401が浮遊状態にある場合に、以下のステップを含む方法を実施するように構成される。
ここでは直立プロセスにおいてモノパイル直立ツール600によりモノパイルの下方端部部分が支持されることを伴いながら、モノパイル410を懸下および直立配向にするためにクレーン450を動作させるステップ。
クレーン450から懸下されたモノパイル410をパイルホルダ520と係合状態にするステップ。
パイルホルダ520により案内されつつクレーン450によりモノパイル410を下降させて、モノパイルを海底に着地させるステップ。
例えばパイル駆動装置の使用を伴いながら、海底中にモノパイル410をさらに深く打ち込むステップ。
船400は、モニタリングシステムを備える。このモニタリングシステムは、懸下されたモノパイル410を、例えばこのモノパイル410の下方端部部分をパイルホルダ520と係合状態にするフェーズの最中において、モノパイル410の動き、例えば振り子動作をモニタリングするように構成される。
【0085】
モニタリングシステムは、モノパイル410の実際の位置および/または動きを表す信号を送信する。モニタリングシステムは、これらの信号がモーション制御ユニット530に対して送信されるように、モーション制御ユニット530に対してリンクされる。モーション制御ユニット530は、係合フェーズの最中に、懸下されたモノパイル410に対してパイルホルダ520を能動的に位置決めするために、デバイス500の制御可能モーションアクチュエータを管理するように構成される。
【0086】
論じたように、モノパイル410は、係合フェーズの前および係合フェーズの最中に振り子動作を生じる場合がある。例えば、海の状態に誘発される動きおよび/または風力および/またはクレーンの動き(例えば旋回など)により、モノパイル410の振り子動作が引き起こされる。
【0087】
(動いている)モノパイルに対するパイルホルダ520のモニタリングおよび関連する能動的位置決めにより、係合の最中におけるいかなる接触も過度の荷重および潜在的損傷には至らない。モーション補償支持アセンブリは、ホルダ520の所望の能動的位置決めを実現するために使用される。
【0088】
モノパイル410は、例えばリングおよびパイル案内デバイスを有して具現化されるものなどのパイルホルダ内に上方から差し込まれ得る。別のアプローチでは、パイルホルダは、横方向に開かれ、それによりモノパイルは、例えばクレーン450の旋回などによってパイルホルダ内へと横方向に導入される。
【0089】
一実施形態では、モニタリングシステムは、例えば1つまたは複数のカメラ550に基づいたおよび/または1つまたは複数の慣性ベースモーションセンサに基づいた、例えば非接触型の、モーション感知システムを備える。
【0090】
一実施形態では、船400は1つまたは複数のセンサを備え、この1つまたは複数のセンサは、船の動き、船の位置、動的位置決めシステムの動作、船の安定性、バラストシステムの動作に関する実データを供給するように構成される。実施形態において、係合フェーズの最中におけるパイルホルダ520の位置決めもまた、これらの船関連センサからの信号に基づき制御される。
【0091】
一実施形態では、船400は、例えばレーダベース型などの波浪予測システムを備える。例えば、係合フェーズに適した時間ウィンドウが、波浪予測に基づき決定または確認される。
【符号の説明】
【0092】
1 パイル保持デバイス
2 支持アセンブリ
3 モーションアクチュエータ
4 モーション制御ユニット
5 モニタリングシステム
6 距離センサ、ラインセンサ
7 船体取付レール
8 サブフレーム
9 サブフレーム取付レール
10 支持フレーム
13 バンパー
400 単胴船体設置船
401 船体
410 モノパイル
450 クレーン
500 モーション補償パイル保持デバイス
510 モーション補償支持アセンブリ
520 パイルホルダ
530 モーション制御ユニット
550 カメラ
600 直立ツール、モノパイル直立ツール
CR クレーン
HU 船体
PI モノパイル
PH パイルホルダ
VE 船
Y1 第1のヨー
Y2 第2のヨー
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】