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特表2024-541257キノリノン誘導体の免疫性血小板減少症を治療するための使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】キノリノン誘導体の免疫性血小板減少症を治療するための使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20241031BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525577
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2022131278
(87)【国際公開番号】W WO2023083281
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】202111340688.4
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,チアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シュンチアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シーチュエン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ディン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA53
(57)【要約】
キノリノン誘導体の免疫性血小板減少症を治療するための使用であって、具体的には、式(I)化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物の免疫性血小板減少症を治療するための使用に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫性血小板減少症を治療又は予防するための式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【化1】
【請求項2】
前記免疫性血小板減少症は、原発性免疫性血小板減少症又は続発性免疫性血小板減少症であり、好ましくは、前記免疫性血小板減少症は、原発性免疫性血小板減少症である、請求項1に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
前記免疫性血小板減少症は、持続性又は慢性の免疫性血小板減少症であり、好ましくは、前記免疫性血小板減少症は、持続性又は慢性の原発性免疫性血小板減少症であり、より好ましくは、前記免疫性血小板減少症は、成人の持続性又は慢性の原発性免疫性血小板減少症である、請求項1に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
前記免疫性血小板減少症は、再発及び/又は難治性の原発性免疫性血小板減少症である、請求項1に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
前記持続性又は慢性の免疫性血小板減少症の患者は、確診後に血小板の持続的な減少が3か月を超えている患者であり、又は、前記持続性又は慢性の免疫性血小板減少症の患者は、確診後に血小板の持続的な減少が6か月を超えている患者である、請求項3に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
前記免疫性血小板減少症の患者は、これまでに1種又は複数種の先行治療を受けたことがある患者である、請求項1に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
前記先行治療は、薬物療法、又は手術療法を含み、任意に、前記薬物療法は、糖質コルチコイド療法、免疫グロブリン療法、分子標的療法、血小板産生促進剤療法、又は免疫抑制剤療法を含み、前記手術療法は、脾臓摘出術療法である、請求項6に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
前記薬物療法に用いる薬物は、プレドニゾン、メプレドニゾン、酢酸プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンコハク酸ナトリウム、メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、注射用免疫グロブリン、リツキシマブ、ベルツズマブ(veltuzumab)、ダクリズマブ、ベバシズマブ、オクレリズマブ(ocrelizumab)、アレムツズマブ(alemtuzumab)、アバトロンボパグ(avatrombopag)、エルトロンボパグ(eltrombpag)、ロミプロスチム(romiplostim)、ルストロンボパグ(lusutrombopag)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、ダナゾール、アザチオプリン、シクロスポリン(A)、ビンクリスチン、ミコフェノール酸モフェチル、オールトランスレチノイン酸、及びデシタビン、並びに前記1種若しくは複数種の薬物の組み合わせから選ばれる、請求項7に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
前記免疫性血小板減少症の患者は、これまでに1種又は複数種のファーストライン又はマルチライン標準治療を受けたことがあり失敗した患者であり、任意に、前記免疫性血小板減少症の患者は、これまでに1種又は複数種のファーストライン、セカンドライン又はサードライン標準治療を受けたことがあり失敗した患者であり、さらに、任意に、前記免疫性血小板減少症の患者は、これまでに1種、2種、3種、4種又は5種のファーストライン標準治療を受けたことがあり失敗した患者である、請求項1~8のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項10】
前記免疫性血小板減少症を治療又は予防する1つの治療期間は、2~6週である、請求項1~9のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項11】
前記免疫性血小板減少症を治療又は予防する投与計画は、1日1回~1日3回、又は2日ごとに1回の投与である、請求項1~10のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項12】
前記免疫性血小板減少症を治療又は予防する1日用量は、50~1000mgから選ばれる、請求項1~11のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項13】
前記免疫性血小板減少症を治療又は予防する各回の用量は、50~1000mgから選ばれる、請求項1~12のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項14】
必要とする被験者の免疫性血小板減少症を治療又は予防するための医薬組成物であって、請求項1~13のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、任意に、1回分量が10~200mgである請求項1~13のいずれか1項に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含有する前記医薬組成物。
【請求項15】
必要とする被験者の免疫性血小板減少症を治療又は予防する医薬の製造における式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2021年11月12日に中国国家知識産権局に提出された中国特許出願第202111340688.4号の利益及び優先権を主張し、それが全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願は、医薬品化学の分野に属し、キノリノン誘導体の免疫性血小板減少症を治療するための使用に関し、具体的には、式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の免疫性血小板減少症を治療するための使用に関する。
【背景技術】
【0003】
原発性免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia、ITP)は、明確な原因のない孤立性の末梢血血小板数減少を主な特徴とする後天性の自己免疫性出血疾患である。現在、国内では集団ベースの免疫性血小板減少症の疫学データがまだなく、国外から報告された成人の免疫性血小板減少症の年間発生率は約(2~10)/10万である。免疫性血小板減少症は全ての年齢層に発生するが、60歳以上の高齢者及び出産適齢期の女性に多発している。免疫性血小板減少症患者の臨床症状は様々で、症状がない場合もあれば、皮膚と粘膜の出血だけの場合もあり、免疫性血小板減少症患者の約5%には生命を脅かす重要な臓器の出血と頭蓋内出血が生じており、免疫性血小板減少症患者の約15%は診断からの5年以内に内因性出血事象のため入院する。出血事象に加え、殆どの免疫性血小板減少症患者は疲労と健康関連の生活の質(HRQoL)の低下を感じている。
【0004】
脾臓チロシンキナーゼ(spleen tyrosine kinase、Syk)は、細胞内チロシンプロテインキナーゼであり、ZAP70プロテインキナーゼファミリーのメンバーである。SykはFcRシグナル伝達経路に関与し、FcRがそのリガンドと結合した後、受容体のライゲーションによりSykの自己リン酸化が起きるため、Sykの動員と下流のシグナル伝達カスケードの活性化により、細胞骨格の再構築と食作用が起こる。Sykは様々な免疫認識受容体で役割を発揮し、その持続的な発現は様々な血液悪性腫瘍の発生、進行に高度に関係している。したがって、Syk阻害剤は、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患及び一部の血液悪性腫瘍を治療するために利用することができる。
【0005】
WO2018228475には、Syk阻害剤としての一連の化合物が開示され、具体的には、以下の構造の式I化合物が開示されている。
【化1】
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本願は、患者の免疫性血小板減少症を治療又は予防するための式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【化2】
【0007】
別の態様では、本願は、患者の免疫性血小板減少症を治療又は予防するための医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、また、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本願に記載の医薬組成物は、式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を単一の活性剤として含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、本願に記載の医薬組成物は、治療有効量又は予防有効量の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本願に記載の医薬組成物は、1回分量が10~200mgである(式I化合物の重量で計算する)式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、本願に記載の医薬組成物は、10~200mg(式I化合物の重量で計算する)の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を単一の活性剤として含む。
【0013】
別の態様では、本願は、患者の免疫性血小板減少症を治療又は予防する医薬の製造における式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の使用を提供する。
【0014】
別の態様では、本願は、患者の免疫性血小板減少症の治療又は予防における式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の使用を提供する。
【0015】
別の態様では、本願は、被験者の免疫性血小板減少症を治療又は予防する方法を提供し、前記方法は、必要とする被験者に治療有効量又は予防有効量の式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物を投与することを含む。
【0016】
本願のいくつかの実施形態では、本願に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩は、単一の活性剤として使用される。
【0017】
いくつかの実施形態では、本願に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩は、10~200mgの1回分量(式I化合物の重量で計算する)で使用される。
【0018】
本願のいくつかの実施形態では、本願の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩は、治療有効量又は予防有効量の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物の形態であってもよい。
【0019】
別の態様では、本願は、患者の免疫性血小板減少症を治療するためのキットを提供し、前記キットは、本願に記載の式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物と、患者の免疫性血小板減少症を治療又は予防するための使用説明書とを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本願に記載の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩は、10~200mgの1回分量(式I化合物の重量で計算する)の形態であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、10~200mg(式I化合物の重量で計算する)の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として含む1回分量の医薬組成物であってもよい。
【0022】
「式I化合物又は薬学的に許容されるその塩」
本願のいくつかの実施形態では、本願に記載の式I化合物は、WO2018228475又はWO2020119785に記載の製造方法を参照して得てもよい。
【0023】
本願にいう式I化合物の薬学的に許容される塩は、式I化合物の塩酸塩であってもよく、例えば、式I化合物の一塩酸塩である。本願に係る式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の用量は、特に説明がない限り、いずれも式I化合物の分子量に基づいて計算される。
【0024】
本願のいくつかの実施形態では、本願に記載の式I化合物の塩酸塩は、WO2020119785に記載の製造方法を参照して得てもよい。
【0025】
「式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物」
本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩は、治療有効量又は予防有効量の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物である。
【0026】
本願のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、1回分量が10~200mgである式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含有する。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、1回分量が10mg、20mg、40mg、50mg、60mg、80mg、100mg、120mg、150mg、若しくは200mg、又は前記値のいずれかを端点として構成された範囲若しくはその中のいずれかの値の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含有し、例えば、50mg、200mgなどである。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、1回分量が200mgである式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を含有する。
【0027】
本願のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、1回分量の医薬組成物である。本願のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、1回分量が10~200mgである式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物である。
【0028】
本願のいくつかの実施形態では、2~6週(例えば、28日)の治療期間で、式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を毎日投与し、各治療期間の総用量は、0.7~42gを含み、例えば、5.6~22.4gである。いくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の各治療期間の総用量は、5.6g、11.2g、16.8g、22.4g又は前記値のいずれかによって形成された範囲から選ばれる。いくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の各治療期間の総用量は、11.2~22.4gを含むことが好ましい。いくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の各治療期間の総用量は、11.2g又は16.8gを含むこと好ましい。いくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の各治療期間の総用量は、16.8gを含むことが好ましい。
【0029】
本願のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、経口、非経口、局所投与に適する製剤を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、経口に適する製剤である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、経口に適する固体製剤である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、錠剤、カプセルを含むが、それらに限定されない。
【0030】
本願のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、固体医薬組成物である。
【0031】
本願のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、錠剤である。
【0032】
本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物は、式I化合物の塩酸塩の固体医薬組成物であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本願に記載の医薬組成物は、式I化合物の一塩酸塩の医薬組成物であってもよい。いくつかの実施形態では、本願に記載の医薬組成物は、式I化合物の一塩酸塩の固体医薬組成物であってもよい。
【0034】
本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物は、式I化合物の塩酸塩、例えば、式I化合物の一塩酸塩の錠剤である。
【0035】
本願の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物は、また、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含有してもよい。薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤は、当業者に熟知されるものであり、例えば、充填剤、吸収剤、湿潤剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤などを含む。
【0036】
本願の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物は、当分野で周知される方法、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠法、粉砕、乳化、凍結乾燥など通常の方法で製造してもよい。
【0037】
混合、充填、打錠などの通常の方法で経口用固体組成物を製造してもよい。例えば、前記活性化合物と固体添加物を混合し、任意に、前記混合物を粉砕する方法で得てもよい。必要ならば、他の適切な添加物を加え、その後、当該混合物を顆粒として加工して、錠剤又はカプセル又は糖衣錠のコアを得る。適切な添加物は、結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味料、矯味剤などを含むが、それらに限定されない。
【0038】
「免疫性血小板減少症」
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、原発性免疫性血小板減少症又は続発性免疫性血小板減少症である。好ましくは、前記免疫性血小板減少症は、原発性免疫性血小板減少症である。
【0039】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、新たに診断された免疫性血小板減少症、持続性免疫性血小板減少症又は慢性免疫性血小板減少症を含む。好ましくは、前記免疫性血小板減少症は、持続性免疫性血小板減少症又は慢性免疫性血小板減少症である。より好ましくは、前記免疫性血小板減少症は、慢性免疫性血小板減少症である。
【0040】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、持続性又は慢性の原発性免疫性血小板減少症である。
【0041】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、成人の持続性又は慢性の原発性免疫性血小板減少症である。
【0042】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、再発及び/又は難治性の原発性免疫性血小板減少症である。
【0043】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、再発及び/又は難治性の持続性原発性免疫性血小板減少症である。
【0044】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、再発及び/又は難治性の慢性原発性免疫性血小板減少症である。
【0045】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、成人の再発及び/又は難治性の持続性原発性免疫性血小板減少症である。
【0046】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、成人の再発及び/又は難治性の慢性原発性免疫性血小板減少症である。
【0047】
本願のいくつかの実施形態では、前記持続性又は慢性の免疫性血小板減少症患者は、確診後に血小板の持続的な減少が3か月を超えている患者である。
【0048】
本願のいくつかの実施形態では、前記持続性又は慢性の免疫性血小板減少症患者は、確診後に血小板の持続的な減少が6か月を超えている患者である。
【0049】
本願のいくつかの実施形態では、前記持続性又は慢性の免疫性血小板減少症患者のWHO出血スコアは、0~1点である。
【0050】
本願のいくつかの実施形態では、前記持続性又は慢性の免疫性血小板減少症患者は、治療前に少なくとも2回の独立的な血小板数の平均が30×10/L未満であり、且つ各回の血小板数が35×10/L以下である。
【0051】
本願のいくつかの実施形態では、前記持続性又は慢性の免疫性血小板減少症患者は、治療前に少なくとも2回の独立的な血小板数の平均が30×10/L未満であり、且つ各回の血小板数が35×10/L以下であり、且つ治療前の4週間以内に深刻な出血はない。本願のいくつかの実施形態では、前記深刻な出血とは、WHO出血スコアが3点以上であることを指す。
【0052】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでに1種又は複数種の先行免疫性血小板減少症治療を受けたことがある患者である。いくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでに1種、2種、3種、4種又は5種の先行免疫性血小板減少症治療を受けたことがある患者である。
【0053】
本願のいくつかの実施形態では、前記先行免疫性血小板減少症治療は、薬物療法、又は手術療法、又はそれらの組み合わせを含む。
【0054】
本願のいくつかの実施形態では、前記薬物療法は、糖質コルチコイド療法、免疫グロブリン療法、分子標的療法、血小板産生促進剤療法、又は免疫性血小板減少症を治療するために用いることができる他の薬物療法を含むが、それらに限定されない。
【0055】
本願のいくつかの実施形態では、前記糖質コルチコイドは、プレドニゾン、メプレドニゾン、酢酸プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンコハク酸ナトリウム、メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン又はデキサメタゾンを含むが、それらに限定されない。好ましくは、前記糖質コルチコイドは、デキサメタゾン及びプレドニゾンを含む。いくつかの実施形態では、前記糖質コルチコイド療法は、高用量糖質コルチコイドパルス療法であってもよい。
【0056】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫グロブリンは、注射用免疫グロブリンを含む。本願のいくつかの実施形態では、前記免疫グロブリンは、ガンマグロブリンであってもよい。好ましくは、前記注射用免疫グロブリンは、注射用ガンマグロブリン、例えば、静脈内注射用ガンマグロブリンである。
【0057】
本願のいくつかの実施形態では、前記分子標的療法に用いる薬物は、リツキシマブ、ベルツズマブ(veltuzumab)、ダクリズマブ、ベバシズマブ、アレムツズマブ(alemtuzumab)又はオクレリズマブ(ocrelizumab)を含むが、それらに限定されない。好ましくは、前記分子標的療法に用いる薬物は、リツキシマブを含む。
【0058】
本願のいくつかの実施形態では、前記血小板産生促進剤は、アバトロンボパグ(avatrombopag)、エルトロンボパグ(eltrombpag)、ロミプロスチム(romiplostim)、ルストロンボパグ(lusutrombopag)、又は組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)を含むが、それらに限定されない。好ましくは、前記血小板産生促進剤は、アバトロンボパグ、エルトロンボパグ、ロミプロスチム、又は組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)を含む。より好ましくは、前記血小板産生促進剤は、エルトロンボパグ及び組換えヒトトロンボポエチンを含む。
【0059】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症を治療するために用いることができる他の薬物は、免疫抑制剤を含むが、それらに限定されない。本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症を治療するために用いることができる他の薬物は、免疫抑制剤を含むが、それらに限定されず、例えば、ガンシクロビルナトリウム、イマチニブ、シクロスポリン(A)、ミコフェノール酸ナトリウム、ミコフェノール酸モフェチル、ダナゾール、アザチオプリン、プソラレン、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、クロファジミン、シクロホスファミド、サリドマイド、アジスロマイシン、モンテルカスト、ソラフェニブ、ルキソリチニブ、デシタビン、ビンクリスチン、アレファセプト(alefacept)、オールトランスレチノイン酸である。好ましくは、前記免疫性血小板減少症を治療するために用いることができる他の薬物は、ダナゾール、アザチオプリン、シクロスポリン(A)、ビンクリスチン、オールトランスレチノイン酸又はミコフェノール酸モフェチルを含む。より好ましくは、前記免疫性血小板減少症を治療するために用いることができる他の薬物は、ダナゾール、アザチオプリン、シクロスポリン(A)、オールトランスレチノイン酸又はビンクリスチンを含む。前記免疫性血小板減少症を治療するために用いることができる他の薬物療法は、オールトランスレチノイン酸とダナゾールの併用療法、デシタビン療法、シクロスポリン(A)療法、アザチオプリン療法、ダナゾール療法、及び/又はビンクリスチン療法を含む。
【0060】
本願のいくつかの実施形態では、前記薬物療法に用いる薬物は、プレドニゾン、メプレドニゾン、酢酸プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンコハク酸ナトリウム、メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、注射用免疫グロブリン(例えば、注射用ガンマグロブリン)、リツキシマブ、ベルツズマブ(veltuzumab)、ダクリズマブ、ベバシズマブ、オクレリズマブ(ocrelizumab)、アレムツズマブ(alemtuzumab)、アバトロンボパグ(avatrombopag)、エルトロンボパグ(eltrombpag)、ロミプロスチム(romiplostim)、ルストロンボパグ(lusutrombopag)、組換えヒトトロンボポエチン(rhTPO)、ダナゾール、アザチオプリン、シクロスポリン(A)、ミコフェノール酸モフェチル、ビンクリスチン、オールトランスレチノイン酸、若しくはデシタビン、又は前記1種若しくは複数種の薬物の組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0061】
本願のいくつかの実施形態では、前記手術療法は、脾臓摘出術療法である。
【0062】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、脾臓摘出術の効果が不良であるか又は術後に再発した患者であってもよい。
【0063】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでに1種又は複数種のファーストライン又はマルチライン標準治療を受けたことがあり失敗した患者であってもよい。いくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでに1種又は複数種のファーストライン、セカンドライン、サードライン又はフォースライン標準治療を受けたことがあり失敗した患者であってもよい。いくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでに1種又は複数種のファーストライン、セカンドライン又はサードライン標準治療を受けたことがあり失敗した患者であってもよい。いくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでに1種、2種、3種、4種又は5種のファーストライン標準治療を受けたことがあり失敗した患者であってもよい。
【0064】
本願のいくつかの実施形態では、前記ファーストライン標準治療は、糖質コルチコイド療法及び/又は注射用免疫グロブリン療法を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記糖質コルチコイド療法は、デキサメタゾン又はプレドニゾン療法である。いくつかの実施形態では、前記注射用免疫グロブリン療法は、注射用ガンマグロブリン療法である。
【0065】
本願のいくつかの実施形態では、前記セカンドライン標準治療は、血小板産生促進剤療法及び/又は分子標的療法及び/又は手術療法を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、前記血小板産生促進剤療法は、エルトロンボパグ及び/又は組換えヒトトロンボポエチン療法である。いくつかの実施形態では、前記分子標的療法は、リツキシマブ療法である。いくつかの実施形態では、前記手術療法は、脾臓摘出術療法である。
【0066】
本願のいくつかの実施形態では、前記サードライン標準治療は、オールトランスレチノイン酸とダナゾールの併用療法及び/又はデシタビン療法を含むが、それらに限定されない。
【0067】
本願のいくつかの実施形態では、前記フォースライン標準治療は、アザチオプリン及び/又はシクロスポリン(A)及び/又はダナゾール及び/又はビンブラスチン系療法を含むが、それらに限定されない。
【0068】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでに少なくとも1種の免疫性血小板減少症ファーストライン標準治療(例えば、糖質コルチコイド療法及び/又は静脈内注射用ガンマグロブリン療法)を受けたことがあり失敗した、又は脾臓摘出術の効果が不良であるか若しくは術後に再発した患者であってもよい。
【0069】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、診断が3か月を超えている成人の持続性又は慢性の免疫性血小板減少症患者、及び/又はこれまでの少なくとも1種の免疫性血小板減少症ファーストライン標準治療(例えば、糖質コルチコイド療法及び/又は静脈内注射用ガンマグロブリン療法)が失敗した、又は脾臓摘出術の効果が不良であるか若しくは術後に再発した患者であってもよい。
【0070】
本願のいくつかの実施形態では、前記治療が失敗したとは、治療が無効であるか、又は効果が維持できないか、又は再発したことを指す。
【0071】
いくつかの実施形態では、様々な治療方法を併用して前記免疫性血小板減少症患者を治療してもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者には、ファーストライン標準治療、及び/又はセカンドライン標準治療、及び/又はサードライン標準治療、及び/又はフォースライン標準治療を併用してもよい。
【0072】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでに糖質コルチコイド療法を受けたことがあり、且つ少なくとも3週間休薬している患者であってもよい。
【0073】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでにダナゾール療法を受けたことがあり、且つ少なくとも4週間休薬している患者であってもよい。
【0074】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、これまでにアザチオプリン、シクロスポリン(A)及び/又はミコフェノール酸モフェチル療法を受けたことがあり、且つ少なくとも4週間休薬している患者であってもよい。
【0075】
本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、1種以上(例えば、1種、2種又は3種)の免疫性血小板減少症を持っていてもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症は、任意に、上記のタイプの免疫性血小板減少症の2種以上の組み合わせを含む。本願のいくつかの実施形態では、前記免疫性血小板減少症患者は、2種以上の免疫性血小板減少症を持っていてもよい。例えば、前記免疫性血小板減少症患者は、上記のタイプの免疫性血小板減少症から選ばれる2種以上の組み合わせを持っていてもよい。
【0076】
本願にいう「効果が不良である」とは、治療後に血小板数は30×10/L未満であるか、又は血小板数は基本値の2倍以下まで増加しているか、又は出血があったことを指す。
【0077】
「投与計画」
本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の投与期間は、2~6週であってもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の投与期間は、2週、3週、4週、5週、6週又は前記値のいずれかによって形成された範囲であってもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の投与期間は、4~5週であってもよい。いくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の投与期間は、1~6つの投与期間であってもよく、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの投与期間である。
【0078】
本願のいくつかの実施形態では、式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物を使用して行われる前記治療的処置のための投与期間は、2~6週であってもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記治療的処置のための投与期間は、2週、3週、4週、5週、6週又は前記値のいずれかによって形成された範囲であってもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記治療的処置のための投与期間は、4~5週であってもよい。
【0079】
本願のいくつかの実施形態では、治療又は予防のための前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の投与計画は、1日1回~1日3回、又は2日ごとに1回の投与であってもよく、好ましくは、1日1回である。
【0080】
本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の1日用量は、50~1000mgから選ばれてもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の1日用量は、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg又は前記値のいずれかによって形成された範囲から選ばれてもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の1日用量は、200~800mg、200~800mg、400~800mg、400~600mg又は600~800mgから選ばれる。
【0081】
本願のいくつかの実施形態では、前記治療又は予防のための式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の1日用量は、50~1000mgから選ばれてもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記治療又は予防のための式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の1日用量は、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg又は前記値のいずれかによって形成された範囲から選ばれてもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記治療又は予防のための式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の1日用量は、200~800mg、200~800mg、400~800mg、400~600mg又は600~800mgから選ばれてもよい。
【0082】
本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の各回の用量は、50~1000mgから選ばれてもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の各回の用量は、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg又は前記値のいずれかによって形成された範囲から選ばれてもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の各回の用量は、50~800mg、200~800mg、200~600mg、200~400mg、400~800mg、400~600mg、又は600~800mgから選ばれてもよい。
【0083】
本願のいくつかの実施形態では、前記治療又は予防のための式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の各回の用量は、50~1000mgから選ばれてもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記治療又は予防のための式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の各回の用量は、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg又は前記値のいずれかによって形成された範囲から選ばれてもよい。本願のいくつかの実施形態では、前記治療又は予防のための式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩、又はその医薬組成物の各回の用量は、50~800mg、200~800mg、200~600mg、200~400mg、400~800mg、400~600mg、又は600~800mgから選ばれてもよい。
【0084】
本願のいくつかの実施形態では、式I化合物又は薬学的に許容されるその塩は、医薬組成物の形態で提供される。
【0085】
本願のいくつかの実施形態では、患者の免疫性血小板減少症の治療で、前記医薬組成物は1回分量の形態で投与され、毎日1回、2回又は3回投与される。本願のいくつかの実施形態では、患者の免疫性血小板減少症の治療で、前記医薬組成物は1回分量の経口固体製剤の形態で投与され、毎日1回、2回又は3回投与される。
【0086】
本願のいくつかの実施形態では、患者の免疫性血小板減少症の治療で、前記医薬組成物は複数回量の形態で投与され、毎日1回又は2回投与される。本願のいくつかの実施形態では、患者の免疫性血小板減少症の治療で、前記医薬組成物は複数回量の経口固体製剤の形態で投与され、毎日1回又は2回投与される。具体的な一実施形態では、患者の免疫性血小板減少症の治療で、前記医薬組成物は複数回量の経口固体製剤の形態で毎日1回投与される。
【0087】
本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の医薬組成物は1日1回の用量であり、各回の用量は、1回分量又は複数回量であり、好ましくは、複数回量であり、前記複数回量は、1回分量が10~200mgである式I化合物又は薬学的に許容されるその塩からなる。いくつかの実施形態では、前記複数回量は、1回分量が10mg、20mg、40mg、50mg、60mg、80mg、100mg、120mg、150mg、又は200mgである式I化合物又は薬学的に許容されるその塩からなる。本願のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、1回分量が50mg又は200mgである式I化合物又は薬学的に許容されるその塩からなる。
【0088】
本願のいくつかの実施形態では、患者の免疫性血小板減少症の治療で、28日が1つの治療期間であり、毎日1回投与し、1回は式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を200mg、400mg、600mg、800mg又は前記値のいずれかによって形成された範囲を投与し、各治療期間に式I化合物又は薬学的に許容されるその塩を5.6g、11.2g、16.8g、22.4g又は前記値のいずれかによって形成された範囲を投与する。
【0089】
本願のいくつかの実施形態では、28日が1つの治療期間であり、各期間の1~28日目に式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物を連続投与する。
【0090】
本願のいくつかの実施形態では、28日が1つの治療期間であり、各期間の1~28日目に式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物を毎日連続投与する。
【0091】
本願のいくつかの実施形態では、28日が1つの治療期間であり、各期間の1~28日目に式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物を1日1回連続投与する。
【0092】
本願のいくつかの実施形態では、28日が1つの治療期間であり、各期間の1~28日目に式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物を空腹時に1日1回連続投与する。
【0093】
本願のいくつかの実施形態では、28日が1つの治療期間であり、各期間の1~28日目に式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物を1日1回連続投与し、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物の各回の用量は、1回分量であり、前記1回分量は、50mg又は200mgの式I化合物又は薬学的に許容されるその塩である。
【0094】
本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物はキットに包装されてもよく、前記キットは1つ若しくは複数の治療期間の用量、又は1つの治療期間以内の用量、又は前記値のいずれかを端点として構成された範囲の用量の上記の式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはその医薬組成物を含む。本願のいくつかの実施形態では、上記の式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物はキットに包装され、前記キットは、1~28日(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、14日、21日、若しくは28日)分の用量、又は1つの治療期間、2つの治療期間、若しくは3つの治療期間以上の用量、又は前記値のいずれかを端点として構成された範囲の用量の上記の式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはその医薬組成物を含む。
【0095】
本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物はキットに包装され、前記キットは、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日若しくは28日分の用量、又は前記値のいずれかを端点として構成された範囲の用量の上記の式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはその医薬組成物を含む。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物はキットに包装され、前記キットは、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、14日、21日、若しくは28日分の用量、又は前記値のいずれかを端点として構成された範囲の用量の上記の式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはその医薬組成物を含む。
【0096】
本願のいくつかの実施形態では、28日が1つの治療期間であり、各治療期間で投与する式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物の総用量は、5.6~22.5gである(有効成分である式I化合物自体で計算する)。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物の総用量は、5.6g、11.2g、16.8g、22.4g又は前記値のいずれかによって形成された範囲から選ばれる(有効成分である式I化合物自体で計算する)。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物の総用量は、11.2~16.8gであることが好ましい(有効成分である式I化合物自体で計算する)。本願のいくつかの実施形態では、前記式I化合物又は薬学的に許容されるその塩又はその医薬組成物の総用量は、11.2g又は16.8gであることが好ましい(有効成分である式I化合物自体で計算する)。
【0097】
本願のいくつかの実施形態では、疾患がまだ制御可能であるか、又は投与計画が臨床的に許容される限りは、上記の治療期間を繰り返してもよい。
【0098】
本願にいう上記の投与計画は、本願に記載の式I化合物若しくは薬学的に許容されるその塩若しくはその医薬組成物、薬物の組み合わせ、キット、又は本願に記載の免疫性血小板減少症を治療若しくは予防するための使用若しくは方法に適する。
【発明の効果】
【0099】
本願の式I化合物は、免疫性血小板減少症を治療する過程で良好な安全性があり、免疫性血小板減少症患者の血小板数を効果的に高めることができる。12週目の治療まで少なくとも1回は血小板数が30×10/L以上であり且つベースラインと比べて血小板数が2倍以上増加する(期間中に緊急な治療を受けたことはない)被験者のパーセンテージは高かった。12週目の治療まで少なくとも1回は血小板数が50×10/L以上である被験者のパーセンテージも高かった。
【0100】
「定義と説明」
特に説明がない限り、本願で使用する用語は次の意味を有する。特定の用語は、特に定義がなければ、確定しないもの又は不明瞭なものとしてではなく、当分野の通常の意味で理解する。本願で商品名が記載される場合に、対応する商品又はその有効成分を指す。
【0101】
本明細書では、特に説明がない限り、用語「含む、含有(comprise、comprises、comprising)」又は同等な用語は開放的な表現で、列挙されている要素、成分及びステップの他に、明記していない要素、成分及びステップを含んでもよいということを意味する。
【0102】
本明細書には、記述と開示のために、特許、特許出願又は他の確定している刊行物が参照により全体として明確に組み込まれる。本明細書でこれらの刊行物が参照されることは、当該刊行物が当分野で周知される常識の一部になると認めることではない。
【0103】
特に説明がない限り、用語の単数形は複数形をカバーし、また、用語の複数形は単数形をカバーしている。特に説明がない限り、用語「1つ」又は「1種」とは、「少なくとも1つ」又は「少なくとも1種」を意味する。特に説明がない限り、「又は」は「及び/又は」の意味で使用される。
【0104】
用語「投与」は、当業者に知られている様々な方法及び送達システムのいずれかを用いて、治療薬又は治療薬を含む組成物を主体に物理的に導入することを意味する。
【0105】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」とは、ヒト又は動物の組織に接触して使用するのに適し、毒性又は刺激性はなく、アレルギー反応、その他の問題や合併症を引き起こさないと医学的に判断され、利益対リスクが合理的である化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対して使用される。
【0106】
用語「薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤」とは、生体に明らかな刺激はなく、且つ、当該活性化合物の生物学的活性及び特性を損なわない担体及び/又は賦形剤を指す。
【0107】
用語「薬学的に許容される塩」には、塩基性基イオンと遊離酸によって形成された塩又は酸基イオンと遊離塩基によって形成された塩が含まれる。
【0108】
本願にいう「治療が無効である」とは、12週目の治療まで血小板数は30×10/L未満であるか又はベースラインと比べて増加は2倍未満であることを指す。
【0109】
本願にいう「効果が維持できない」とは、血小板数が30×10/L未満であること又はベースラインと比べて増加が2倍未満であることは12週間持続していることを指し、緊急な治療から起きた血小板の上昇は除く。
【0110】
本願では、式I化合物又は薬学的に許容されるその塩の含有量、例えば、投与量、用量、医薬組成物中の含有量は、その遊離塩基の形態で計算する。
【0111】
本願の薬物の組み合わせにおける化合物は、例えば、少なくとも1つの塩基性コアを有している場合に、酸付加塩を形成できる。所望により、別の塩基性コアを有する対応の酸付加塩を形成することもできる。少なくとも1つの酸性官能基(例えば、COOH)を有する化合物は塩基と塩を形成できる。化合物が、例えば、カルボキシ基とアミノ基の両方を含む場合に、分子内塩を形成できる。
【0112】
用語「患者」は、哺乳動物であり、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、非ヒト遺伝子改変動物である。いくつかの実施形態では、前記患者は、ヒトである。本明細書では、用語「被験者」と「患者」は入れ替えて使用されてもよい。
【0113】
用語「医薬組成物」とは、1種又は複数種の本願の化合物又はその塩と薬学的に許容される添加物とからなる混合物を指す。医薬組成物は、患者に本願の化合物又はその塩を投与しやすくするためのものである。
【0114】
用語「治療」とは、一般に所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指し、疾患及び/又は疾患が起こす副作用を部分的に又は完全に安定させ又は治癒することを含む。本明細書で使用される用語「治療」は、患者の疾患に対するいずれの治療として、(a)疾患の症状の抑制、即ちその進行の阻止、又は(b)疾患の症状の寛解、即ち疾患若しくは症状を軽減させることを含む。
【0115】
用語「予防」とは、疾患又は前記疾患に関連する1つ又は複数の症状を予防するために、本開示に記載の化合物又は製剤を投与することを意味し、且つ、哺乳動物における疾患又は疾患の状態の出現を予防することであって、特に当該疾患の状態になりやすい哺乳動物が、当該疾患の状態と診断されていない時の予防を含む。
【0116】
用語「有効量」とは、(i)特定の疾患、病状若しくは障害を治療し、(ii)特定の疾患、病状若しくは障害の1種若しくは複数種の症状を軽減、改善若しくは解消する本願の化合物の用量を指す。「治療有効量」の本願の化合物の量は、当該化合物、病状とその重症度、投与方式及び被治療哺乳動物の年齢によって変わるものであるが、当業者はその知識と本開示の内容に基づいて決定することができる。
【0117】
用語「1回分量」とは所定量の薬物を含む分割不能の包装単位を指し、例えば、薬箱に7つのカプセルがある場合は、各カプセルが1回分量であり、又は1瓶の注射液が1回分量である。用語「複数回量」は複数の1回分量からなる。
【0118】
用語「再発」とは、特定の療法の治療を受けて客観的寛解が認められた後に、疾患が再び発生することを指す。
【0119】
用語「難治性」とは、特定の治療薬を使用する療法に耐性があるか又は反応しない特定の疾患を指す。例えば、難治性免疫性血小板減少症とは、ファーストライン治療薬物、セカンドライン治療の血小板産生促進剤及びリツキシマブ療法にいずれも無効であるか、又は脾臓摘出術が無効であるか術後に再発し、診断及び評価を行ってまた免疫性血小板減少症と確診されている患者を指す。
【発明を実施するための形態】
【0120】
以下、具体的な実施例で本発明をより詳しく説明する。以下の実施例は説明の目的で提供され、いずれの方式で本発明を制限するためのものではない。
【0121】
式I化合物は、WO2018228475に開示されている方法に従って製造された。
【0122】
実施例1:免疫性血小板減少症に関する臨床試験
1.1 治験薬及び投与計画
治験薬:式I化合物の錠剤であり、仕様は50mg/錠又は200mg/錠である。
投与計画:1日1回で空腹時に経口投与し、28日の連続投与が1つの治療期間である。
【0123】
1.2 組み入れ基準
1)被験者は自分の意思で本研究に参加し、インフォームド・コンセントに署名し、想定生存期間は3か月より長い。
2)年齢は18~75歳であり(上下限値を含む)(インフォームド・コンセントに署名した時)、性別を問わず、ボディコンディションスコア(米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)スコア)は0~2点である。
3)スクリーニングを受ける前に少なくとも3か月持続性又は慢性の免疫性血小板減少症と診断されている(血小板の持続的な減少は6か月を超えている)。
4)これまでに少なくとも1種の免疫性血小板減少症ファーストライン標準治療(糖質コルチコイド及び/又はガンマグロブリンの静脈内注射)が失敗した(無効であるか若しくは効果が維持できないか若しくは再発した)、又は脾臓摘出術の効果が不良であるか若しくは術後に再発した。
5)WHO出血スコアは0~1点であり、且つ組み入れた後の2週間以内に緊急な治療が不要であると研究者は判断した。
6)スクリーニングを受ける前の2か月以内に少なくとも2回の独立的な血小板数(間隔が24時間を超えている)の平均は30×10/L未満であり且つ各回の血小板数は35×10/L以下であり、且つスクリーニングを受ける前の4週間以内に深刻な出血はない。
7)主要臓器の機能は良好であり、次の基準を満たしている。
a.好中球数(ANC)は1.5×10/Lより大きく、ヘモグロビン(Hb)は90g/Lより大きい。
b.総ビリルビン(TBIL)、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)及びアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)は基準値上限(ULN)の1.5倍以下であり、血清クレアチニンは1.5×ULN以下であり、且つクレアチニンクリアランスは50mL/分以上である。
c.血中アミラーゼ、リパーゼは基準値上限を超えていない。
d.プロトロンビン時間(PT)は基準値範囲±3秒を超えておらず、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は基準値範囲±10秒を超えていない。
e.免疫性血小板減少症の他に、他の凝固障害の病歴はない。
8)出産適齢期の女性の被験者の場合は、研究期間中及び研究終了後の90日以内に避妊手段(例えば、子宮内避妊用具、避妊薬又はコンドーム)を使用することに同意しなければならず、研究群に組み入れる前の7日以内に血清妊娠検査は陰性で、且つ非授乳期の被験者でなければならない。男性の被験者の場合は、研究期間中及び研究終了後の6か月以内に避妊手段を使用することに同意しなければならない。
【0124】
1.3 評価方法及び指標
被験者の血小板数、WHO出血スコア及び緊急な治療を受ける状況で効果を評価する。血小板上昇の有効率を主な効果指標とし、評価基準として「米国血液学会原発性免疫性血小板減少症ガイドライン(2019年版)」及び「成人の原発性免疫性血小板減少症の診断及び治療に関する中国ガイドライン(2020年版)」を参照する。
【0125】
1.4 試験結果
1.4.1 安全性
式I化合物の錠剤は、成人の持続性又は慢性の免疫性血小板減少症被験者に全体的には安全性が許容され、用量制限毒性(DLT)事象はなく、グレード3以上の治療関連有害事象はなかった。
【0126】
1.4.2 有効性
合計で6例の被験者を組み入れており、400mg群は3例であり(2例は用量を600mgに高めている)、600mg群は3例であった。
【0127】
被評価患者で12週の治療では血小板数が少なくとも1回30×10/L以上であり且つベースラインと比べて血小板数が2倍以上増加する(期間中に緊急な治療を受けたことはない)被験者のパーセンテージは50%であり、12週の治療では血小板数が少なくとも1回50×10/L以上である被験者のパーセンテージは33.3%であった。結果からは、本願の式I化合物の錠剤は、成人の持続性又は慢性の免疫性血小板減少症の治療に優れた臨床有益性を有することが分かった。
【0128】
表1は、代表的な症例における有効性である。
【表1】
【国際調査報告】