(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ポリプロピレン微小球及びその製造方法、3D印刷原料並びに用途
(51)【国際特許分類】
C08F 210/06 20060101AFI20241031BHJP
C08F 4/622 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08F210/06
C08F4/622
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525712
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2022127943
(87)【国際公開番号】W WO2023072194
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111258205.6
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】凌永泰
(72)【発明者】
【氏名】劉建葉
(72)【発明者】
【氏名】周俊領
(72)【発明者】
【氏名】徐耀輝
(72)【発明者】
【氏名】劉濤
(72)【発明者】
【氏名】張師軍
(72)【発明者】
【氏名】夏先知
(72)【発明者】
【氏名】呂明福
(72)【発明者】
【氏名】劉月祥
(72)【発明者】
【氏名】張恒源
(72)【発明者】
【氏名】李威莅
(72)【発明者】
【氏名】陳竜
(72)【発明者】
【氏名】趙瑾
(72)【発明者】
【氏名】高富堂
(72)【発明者】
【氏名】任春紅
(72)【発明者】
【氏名】謝吉嘉
(72)【発明者】
【氏名】譚揚
(72)【発明者】
【氏名】楊叡
(72)【発明者】
【氏名】馬長友
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA04
4J100CA11
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4J128AA01
4J128AA03
4J128AB01
4J128AB03
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4J128BA01B
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4J128GA06
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4J128GA26
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、ポリプロピレン微小球及びその製造方法、3D印刷原料並びに用途を提供し、ポリプロピレン材料の技術分野に関する。前記ポリプロピレン微小球は、0.2wt%~10wt%のエチレンに由来する構成単位と、90wt%~99.8wt%のプロピレンに由来する構成単位とを含み、示差走査熱量計(DSC)によりポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線を取得し、前記ポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線の半値幅(Wm)は4~10℃である。本発明のポリプロピレン微小球は、結晶配列分布が比較的均一であり、3D印刷に用いられる場合、3D印刷の溶融均一性製品性を良好にすることができ、産業応用の将来性が極めて高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン微小球であって、0.2wt%~10wt%のエチレンに由来する構成単位と、90wt%~99.8wt%のプロピレンに由来する構成単位とを含み、示差走査熱量計によりポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線を取得し、前記ポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線の半値幅は4~10℃であることを特徴とするポリプロピレン微小球。
【請求項2】
前記ポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線の半値幅は5~8℃であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項3】
前記ポリプロピレン微小球の分子量分布は4~9であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項4】
前記ポリプロピレン微小球の嵩密度は0.20g/cm
3~0.50g/cm
3であり、好ましくは0.32g/cm
3~0.48g/cm
3であり、
及び/又は、安息角は10°~23°であり、好ましくは13°~20°であり、
及び/又は、アイソタクティシティ指数は60%~94%であり、好ましくは64%~90%であり、
及び/又は、灰分は0.005%~0.04%であり、
及び/又は、メルトインデックスは3~160g/10minであり、好ましくは15~100g/10minであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項5】
DSC測定を行った場合、DSC結果は、λi=(dH/dt)
i+1-(dH/dt)
i、
【化1】
(iはT
m<T
i<T
fmを満たす)の特徴を満たし、ここで、縦座標はヒートフローdH/dtであり、横座標は温度Tであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項6】
前記ポリプロピレン微小球の平均粒子径は50μm~200μmであり、好ましくは、前記ポリプロピレン微小球の平均粒子径は60μm~160μmであり、より好ましくは、前記ポリプロピレン微小球の平均粒子径は80μm~120μmであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項7】
前記ポリプロピレン微小球のアスペクト比は0.9~1.1であり、好ましくは、前記ポリプロピレン微小球のアスペクト比は0.95~1.05であり、より好ましくは、前記ポリプロピレン微小球のアスペクト比は1であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項8】
当該製造方法は、オレフィン重合触媒系の存在下で、プロピレン含有オレフィンを共重合させてポリプロピレン微小球を得ることを含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小球の製造方法。
【請求項9】
前記オレフィン重合触媒系は、触媒成分、アルキルアルミニウム化合物成分及び任意選択的に添加されるか又は添加されない外部電子供与体化合物成分、又はそれらの成分の反応生成物を含み、
及び/又は、前記触媒は、マグネシウム含有化合物担体、チタン化合物及び内部電子供与体化合物を含み、
及び/又は、前記チタン化合物と、マグネシウム含有化合物担体と、内部電子供与体化合物とのモル比は(37~255):(2~15):1であり、好ましくは(67~235):(4~12):1であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記マグネシウム含有化合物担体の構造は式(I)で表され、
【化2】
式(I)中、R
1は、C
1-C
10のアルキル基であり、
R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立に、H、C
1-C
10のアルキル基又は1~10個のハロゲン原子で置換されたC
1-C
10のハロゲン化アルキル基であり、
R
4は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC
1-C
10のハロゲン化アルキル基又は少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC
6-C
20のハロゲン化アリール基であり、
R
5は、C
1-C
5ののアルキル基であり、
Xはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
mは0.1~1.9であり、nは0.1~1.9であり、且つm+n=2であり、好ましくは、mは0.8~1.2であり、nは0.8~1.2であり、
0<q<0.2、0<a<0.1、好ましくは、0.005≦q≦0.2、0.001<a<0.05であり、
及び/又は、前記内部電子供与体化合物は、カルボン酸エステル、アルコールエステル、エーテル、ケトン、ニトリル、アミン及びシランから選ばれる少なくとも1種であり、好ましくは、一価又は多価脂肪族カルボン酸エステル、一価又は多価芳香族カルボン酸エステル、二価アルコールエステル及び二価エーテルから選ばれる少なくとも1種であり、
及び/又は、前記チタン化合物の一般式はTi(OR
6)
4-bX’
bであり、
ただし、R
6はC
1-C
14の脂肪族炭化水素基であり、
X’はF、Cl又はBrであり、
bは1~4の整数であり、
好ましくは、前記チタン化合物は、四塩化チタン、四臭化チタン、四フッ化チタン、トリブトキシ塩化チタン、ジブトキシチタニウムジクロライド、ブトキシ塩化チタン、トリエトキシ塩化チタン、ジエトキシチタニウムジクロライド及びエトキシ塩化チタンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記マグネシウム含有化合物担体の製造方法は、
一般式がMgX”Yであるハロゲン化マグネシウムと一般式がR
7OHである第1のアルコール系化合物を第1回の接触及び乳化を行い、第1の生成物を得るステップS1と、
ただし、一般式MgX”Yにおいて、X”はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選ばれる任意の1種であり、Yはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C
1-6のアルキル基、C
1-6のアルコキシ基、C
6-14のアリール基、C
6-14のアリールオキシ基から選ばれる任意の1種であり、
式R
7OHにおいて、R
7はC
1-10のアルキル基であり、
式(II)で表される構造を有するエチレンオキサイド系化合物を第1の生成物と第2の接触を行い、第2の生成物を得るステップS2と、
ただし、S2において、前記エチレンオキサイド系化合物の構造式は式(II)で表され、
【化3】
ただし、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、H、C
1-10のアルキル基、1~10個のハロゲン原子で置換されたC
1-10のハロゲン化アルキル基から選ばれ、
一般式がR
10OHであるハロゲン化アルコール、一般式がR
11OHである第2のアルコール系化合物を第2の生成物と第3の接触を行い、第3の生成物を得るステップS3と、
式R
10OHにおいて、R
10は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC
1-10のハロゲン化アルキル基又は少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC
6-20のハロゲン化アリール基から選ばれ、
式R
11OHにおいて、R
11はC
1-5のアルキル基であり、
第3の生成物を噴霧乾燥し、マグネシウム含有化合物担体を得るステップS4と、を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化マグネシウム1molに対して、前記第1のアルコール系化合物の使用量は1~30molであり、前記エチレンオキサイド系化合物の使用量は1~10molであり、前記ハロゲン化アルコールの使用量は0.05~6.5molであり、前記第2のアルコール系化合物の使用量は5~100molであり、好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウム1molに対して、前記第1のアルコール系化合物の使用量は6~22molであり、前記エチレンオキサイド系化合物の使用量は2~6molであり、前記ハロゲン化アルコールの使用量は1~5molであり、前記第2のアルコール系化合物の使用量は8~80molであり、より好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウム1molに対して、前記第2のアルコール系化合物の使用量は31~50molであることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径は2~100ミクロンであり、粒径分布は2未満であり、好ましくは、前記マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径は2~19ミクロンであり、粒径分布は0.6~1.6であり、より好ましくは、前記マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径は2~10ミクロンであり、粒径分布は0.6~1であることを特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小球及び/又は請求項8~13のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたポリプロピレン微小球を含むことを特徴とする3D印刷原料。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小球又は請求項8~13のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたポリプロピレン微小球の、3D印刷用、特にレーザー焼結印刷用、最も好ましくは選択的レーザー焼結用の用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本発明は、2021年10月27日に提出された名称が「重合合成ポリプロピレン微小球」であり、出願番号がCN202111258205.6である中国特許出願の優先権を享受することを請求し、当該出願の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、ポリプロピレン材料の技術分野に関し、具体的にはポリプロピレン微小球及びその製造方法、3D印刷原料並びに用途に関する。
【0003】
〔背景技術〕
3D印刷は、「積層造形」とも呼ばれ、高速成形技術の一種であり、3Dプリンタを使用してデジタル設計図に従って金属粉末又はプラスチックなどの材料を使用し、一層ずつ印刷する方式で材料を一層ずつ積層し、最終的に物品の製造を完成する。当該技術は、いつでも、どこでも、オンデマンドで製品生産を行うことができ、靴類のような生活用品、建築業、自動車産業、航空宇宙、医療、教育などの分野に応用される。この新興技術は、人間の生活を徐々に変化させており、将来性が各業界によく見られている。週刊誌『タイム』は、3D印刷を「米国で成長が極めて速い工業」の首位とした。英国の雑誌『エコノミスト』は、3D印刷が3回目の工業革命を推進すると考えている。
【0004】
選択的レーザー焼結(Selective Laser Sintering、SLS)技術は、高速成形技術であり、現在、付加製造技術において最も広く応用され、市場の将来性が最も高い技術であり、近年、急速に発展する傾向にある。SLS技術は、コンピュータによってまず三次元実体を走査し、次に高強度レーザによって予め作業台又は部品に敷設された材料粉末を照射し、それを選択的に一層ずつ溶融焼結し、さらに一層ずつ成形する技術である。SLS技術は、高度な設計柔軟性を有し、正確なモデル及びプロトタイプを製造することができ、信頼性のある構造を有し、直接使用可能な部品を成形することができ、生産サイクルを短縮し、プロセスを簡略化することができるため、新製品の開発に特に適している。
【0005】
理論的には、SLS技術に用いることができる成形材料の種類は広く、例えば、ポリマー、パラフィン、金属、セラミック及びこれらの複合材料が挙げられる。しかし、成形材料の性能、性状はSLS技術の焼結成功の重要な要素であり、成形部材の成形速度、精度、物理的、化学的性能及びその総合性能に直接影響する。現在、SLS技術にそのまま適用することができ、寸法誤差が小さく、表面がきれいで、空隙率が低いモールド品を製造することに成功したポリマー粉末原料は市場であまり見かけない。したがって、SLS技術に適したポリマーの種類及びそれに対応する固体粉末原料の開発及び改善が急務である。
【0006】
従来技術では、通常、粉砕法、例えば深冷粉砕法を用いてSLSに適した粉末原料を製造する。例えば、CN104031319Aには、深冷粉砕法で得られたポリプロピレン粉末が開示されている。しかし、この方法は、特定の設備を必要とするだけでなく、製造された粉末原料粒子の表面が粗く、粒径が均一ではなく、形状が不規則であり、焼結成形体の形成に不利であり、成形体の性能に影響を与える。
【0007】
また、沈殿法によりポリマー粉末原料、例えばポリアミド粉末を製造することもある。この方法では、通常、ポリアミドを適当な溶媒に溶解し、攪拌により材料を溶媒中に均一に分布させ、冷却して粉末沈殿を析出させる。例えば、CN103374223Aには、ジアミンとジカルボン酸の重縮合作用により得られるポリアミドを再沈殿させて得られるAABB型ポリアミドをベースとする沈殿ポリマー粉末が開示されている。該特許に記載の方法において、再沈殿過程にアルコール系溶媒を用いる。しかし、このような方法は、大量の有機溶剤を使用する必要があり、且つ収率と効率がいずれも低く、環境保護と経済的なメリットがない。
【0008】
ポリマーがポリプロピレンである場合、ポリプロピレンの製造特性上、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、マイクロエマルション重合法、ミニエマルション重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、シード重合法等の一般的なポリマー微粒子の製造方法を用いることができない。材料の低温脆性を利用して、低温条件下でそれをミクロンオーダーの粉末に粉砕するしかできないが、ポリオレフィンの粉砕は、コストが比較的高い液体窒素による深冷処理方式を採用して粉砕する必要があることが多く、粉砕により得られた粉末の形態が悪く、不規則な形状となり、流動性が悪いことで最も好ましくない。SLS技術で焼結する際に、ポリマー微粒子は、一層ずつ粉末を敷設してから一層ずつ焼結する必要があるが、このような不規則な形状で流動性が悪い微粒子を使用する場合、粉末の敷設が非常に困難であり、印刷ができなくなる。ポリマーの結晶組成が均一であるほど、ポリマーのメルトフローレート指数が高くなり、印刷時に溶融均一に有利であり、印刷部材の構造安定性に有利である。そのため、実際のニーズを満たすために、流動性が良く、形態が良いポリプロピレン微小球が必要となる。
【0009】
ポリプロピレン発泡材料は、密度が低く、比強度が高く、熱安定性が良く、耐衝撃性能に優れ、生産原料及びプロセスが環境に優しく、回収してリサイクルしやすいなどの利点を有し、緩衝、制振、防音、断熱などの機能材料として使用できる。現在、一般的なポリプロピレン発泡材料は、加工プロセスによって、主にオートクレーブ発泡、プレス発泡、押出発泡及び射出発泡の4種類に分けられる。オートクレーブ発泡ポリプロピレン(Expanded polypropylene、EPP)ビーズ及び成形体は、ポリプロピレン発泡材料に共通の利点を有する以外、その最も顕著な利点は自由成形性にあり、EPPビーズをモールド成形することにより、複雑な幾何形状を有し、三次元寸法精度が高い発泡製品を得ることができる。ポリプロピレン発泡粒子モールド製品は、剛性が良く、耐衝撃性能がポリスチレンより優れており、且つポリスチレンフォームの難回収性に比べて、ポリプロピレンフォームは、環境にやさしい材料であり、高い熱変形温度を有し、いくつかの高温分野に応用することができ、良好な吸収エネルギー特性及び優れた耐圧エネルギー吸収性能を有し、寸法形状回復の安定性が良く、製品は、永久変形を生じることなく、複数回の連続的な衝突及びたわみに耐えることができ、発泡製品の密度が低く、回収して再利用しやすく、製品は無毒であり、燃焼して有毒物質を生じない。これらの優れた特性により、その応用が非常に広くなり、包装、自動車、建築などの分野での応用が拡大している。特に、自動車内外装、コールドチェーン物流及び電子製品包装などのハイエンド分野への応用に適する。
【0010】
EPPビーズは、型内二次成形性が非常に重要である。このため、発泡原料としては、規則的な形状(好ましくは略球状)で粒径の小さいポリプロピレン微粒子を選択する必要がある。比較的規則的な球状微粒子で製造された発泡ビーズも略球状となり、成形加工中に緊密に堆積しやすく、大きな空隙が形成されにくい。ポリプロピレン発泡粒子の製造も同様に、コストが比較的高い液体窒素による深冷処理方式で粉砕する必要があり、粉末の形態が悪く、不規則な形状となり、流動性が悪く、粒子の輸送時にブリッジが発生しやすく、生産が不安定になり、また、このような粉砕粒子は発泡が不均一になり、表面が比較的粗く、白化現象が発生する。同じ膨張倍率では、PP微粒子が小さいほど、発泡後のビーズが小さくなり、EPPビーズの成形装置のプロセス管路における輸送に有利であり、閉塞現象を低減し、キャビティ内に緊密に堆積することができる。これにより、成形時にビーズ同士の結合効果がより良好になり、使用される蒸気量がより低くなり、製品の力学性能及び保温性能がより良好になる。なお、小さい粒径は、薄肉で複雑な構造の製品の製造に有利であり、製品の表面もより滑らかで平坦である。
【0011】
常法のストランド切断及びアンダーウォーター切断は、通常、粒径0.5mm以下の粒子を製造することが難しく、且つアスペクト比が高い。平均粒子径が0.5mm以下の微粒子を得ようとすると、コストが比較的高い液体窒素による深冷処理方式で粉砕する必要がある場合が多く、粉末の形態が悪く、不規則な形状となり、流動性が悪く、粒子の輸送時にブリッジが発生しやすく、生産が不安定になり、また、このような粉砕粒子は発泡が不均一になり、表面が比較的粗く、白化現象が発生する場合が多い。
【0012】
ZN触媒を使用して製造されたポリプロピレンの結晶分布には、通常、大きな分散性が存在し、これは、DSC測定結果において、その半値幅が広いことに反映され、メタロセン触媒を使用して製造されたポリプロピレンの結晶分布は、比較的均一であるが、後者の分子量分布が狭いため、その製品の加工性能が悪くなることが多く、前者で得られた製品の分子量分布が広く、樹脂の剛性靭性バランスの向上に有利である。
【0013】
したがって、流動性がよく、形態がよく、3D印刷及び発泡材料に使用できるポリプロピレン微小球の製造方法を開発することは、重要な現実的意義を有する。
【0014】
〔発明の概要〕
従来技術におけるポリプロピレン微小球の結晶配列の分布均一性が悪く、3D印刷に用いられる場合に溶融均一性製品性が悪いという技術的問題を解決するために、本発明はポリプロピレン微小球及びその製造方法を提供する。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、ポリプロピレン微小球であって、0.2wt%~10wt%のエチレンに由来する構成単位と、90wt%~99.8wt%のプロピレンに由来する構成単位とを含み、示差走査熱量計(DSC)によりポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線を取得し、前記ポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線の半値幅(Wm)は4~10℃であるポリプロピレン微小球を提供する。
【0016】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線の半値幅は5~8℃である。
【0017】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球の分子量分布(Mw/Mn)は4~9である。
【0018】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球の分子量分布は5、6、7、8であり、又は上記任意の2点間の任意の値である。
【0019】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球の嵩密度は0.20g/cm3~0.50g/cm3であり、好ましくは0.32g/cm3~0.48g/cm3である。
【0020】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球の安息角は10°~23°であり、好ましくは13°~20°である。
【0021】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球のアイソタクティシティ指数は60%~94%であり、好ましくは64%~90%である。
【0022】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球の灰分は0.005%~0.04%である。
【0023】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球の灰分は、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、又は上記任意の2点間の任意の値である。
【0024】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球のメルトインデックスは3~160g/10minであり、好ましくは15~100g/10minである。
【0025】
選択可能に、DSC測定を行った場合、DSC結果は、λi=(dH/dt)i+1-(dH/dt)i、
【0026】
【0027】
(iはTm<Ti<Tfmを満たす)の特徴を満たし、ここで、縦座標はヒートフローdH/dtであり、横座標は温度Tである。
【0028】
DSC測定で得られた融解吸熱曲線において、吸熱効果は凸のピーク値によって表される(エンタルピーが増加する)。
【0029】
DSCはPerkin-Elmer DSC-7型示差走査熱量計を用い、10℃/minで試料を200℃まで加熱し、5min保持した後、10℃/minで50℃まで降温し、50℃で1min保持した後、10℃/minで200℃まで昇温する。DSC模式図は
図2に示すように、DSC結果の縦座標はヒートフローdH/dtであり、横座標は温度(T)であり、吸熱効果は凸のピーク値で表され(エンタルピーが増加する)、昇温曲線は2回目の昇温の曲線を結果とする(通常、いずれも2回目の昇温曲線が採用されており、試験サンプルの熱履歴を除去するためである)。一般的に示されるように、T
mは測定試料の融点を表し、T
fmは融解ピークがベースラインにつながる位置の温度を表す。
【0030】
本発明で得られたより狭い半値幅を有するポリマー微小球は、オートクレーブ発泡と成形を行う際に、EPPビーズの発泡倍率と均一性を顕著に向上させることができ、より低い温度で成形することができ、EPPビーズ成形時のエネルギー消費を低減し、EPPビーズ成形の生産サイクルを加速することにより、EPPビーズ及び成形体の生産コストを効果的に低減する。また、該ビーズで製造されたEPPビーズ成形体は、より優れた外観品質を有し、特に薄肉又は複雑な形状のEPP成形体製品の製造に有利である。
【0031】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球の平均粒子径は50μm~200μmであり、好ましくは、前記ポリプロピレン微小球の平均粒子径は60μm~160μmであり、最も好ましくは、ポリプロピレン微小球の平均粒子径は80μm~120μmである。
【0032】
選択可能に、前記ポリプロピレン微小球のアスペクト比は0.9~1.1であり、好ましくは、前記ポリプロピレン微小球のアスペクト比は0.95~1.05であり、最も好ましくは、ポリプロピレン微小球のアスペクト比は1である。
【0033】
本発明の具体的な実施形態として、前記ポリプロピレン微小球は、直接共重合により製造される。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、オレフィン重合触媒系の存在下で、プロピレン含有オレフィンを共重合させてポリプロピレン微小球を得ることを含む上記ポリプロピレン微小球の製造方法を提供する。
【0035】
選択可能に、前記オレフィン重合触媒系は、触媒成分、アルキルアルミニウム化合物成分及び任意選択的に添加されるか又は添加されない外部電子供与体化合物成分、又はそれらの成分の反応生成物を含む。
【0036】
前記アルキルアルミニウム化合物は、オレフィン重合分野で通常使用されるチーグラー・ナッタ型触媒の助触媒として使用できる各種のアルキルアルミニウム化合物であってもよい。
【0037】
選択可能に、前記アルキルアルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノハイドライド、ジイソブチルアルミニウムモノハイドライド、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド及びエチルアルミニウムジクロリドのうちの少なくとも1種であってもよいが、これらに限定されない。
【0038】
前記外部電子供与体化合物は、オレフィン重合分野で通常使用されるチーグラー・ナッタ型触媒の助触媒として使用できる各種の外部電子供与体化合物であってもよい。
【0039】
選択可能に、前記外部電子供与体化合物は、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルフェノキシトリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルイソプロピルジメトキシシラン、プロピルイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチルイソプロピルジメトキシシラン、t-ブチルブチルジメトキシシラン、t-ブチルイソブチルジメトキシシラン、t-ブチル(s-ブチル)ジメトキシシラン、t-ブチルペンチルジメトキシシラン、t-ブチルノニルジメトキシシラン、t-ブチルヘキシルジメトキシシラン、t-ブチルヘプチルジメトキシシラン、t-ブチルオクチルジメトキシシラン、t-ブチルデシルジメトキシシラン、メチルt-ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルt-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルエチルジメトキシシラン、シクロペンチルプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルt-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、s-ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、イソペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、2-エチルピペリジニル-2-t-ブチルジメトキシシラン、(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)-2-エチルピペリジニルジメトキシシラン及び(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)-メチルジメトキシシランのうちの少なくとも1種であってもよいが、これらに限定されない。より好ましくは、前記外部電子供与体化合物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、メチルt-ブチルジメトキシシラン及びテトラメトキシシランのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0040】
選択可能に、前記触媒は、マグネシウム含有化合物担体、チタン化合物及び内部電子供与体化合物を含む。
【0041】
選択可能に、前記チタン化合物と、マグネシウム含有化合物担体と、内部電子供与体化合物とのモル比は(37~255):(2~15):1であり、好ましくは(67~235):(4~12):1である。
【0042】
選択可能に、前記マグネシウム含有化合物担体の構造は式(I)で表され、
【0043】
【0044】
式(I)中、R1は、C1-C10のアルキル基であり、
R2及びR3は、同一又は異なって、それぞれ独立に、H、C1-C10のアルキル基又は1~10個のハロゲン原子で置換されたC1-C10のハロゲン化アルキル基であり、
R4は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC1-C10のハロゲン化アルキル基又は少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC6-C20のハロゲン化アリール基であり、
R5は、C1-C5ののアルキル基であり、
Xはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、好ましくは、Xは塩素又は臭素であり、
mは0.1~1.9であり、nは0.1~1.9であり、且つm+n=2であり、好ましくは、mは0.8~1.2であり、nは0.8~1.2であり、
0<q<0.2、0<a<0.1、好ましくは、0.005≦q≦0.2、0.001<a<0.05である。
【0045】
選択可能に、前記内部電子供与体化合物は、カルボン酸エステル、アルコールエステル、エーテル、ケトン、ニトリル、アミン及びシランから選ばれる少なくとも1種であり、好ましくは、一価又は多価脂肪族カルボン酸エステル、一価又は多価芳香族カルボン酸エステル、二価アルコールエステル及び二価エーテルから選ばれる少なくとも1種である。
【0046】
選択可能に、前記二価アルコールエステルは、カルボン酸グリコールエステルであってもよい。
【0047】
選択可能に、前記内部電子供与体化合物は二価エーテルのうちの少なくとも1種であり、前記二価エーテルの構造は式(III)で表され、
【0048】
【0049】
ただし、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素、C1-C20のアルキル基、C3-C20のシクロアルキル基、C6-C20のアリール基、C7-C20のアラルキル基又はC7-C20のアルキルアリール基から選ばれ、R21とR22との間は、任意に、結合して環を形成してもよく、R23及びR24は、それぞれ独立に、C1-C10のアルキル基である。
【0050】
具体的には、前記内部電子供与体化合物は、2-(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(2-フェニルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(p-クロロフェニル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-(ジフェニルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジエチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-プロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-ベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-エチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-フェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(2-シクロヘキシルエチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-(2-エチルヘキシル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジフェニル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジベンジル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソブチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-(1-メチルブチル)-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-フェニル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-フェニル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-ベンジル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロペンチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロペンチル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-シクロヘキシルメチル-1,3-ジメトキシプロパン及び9,9-ジメトキシメチルフルオレンから選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0051】
選択可能に、前記チタン化合物の一般式はTi(OR6)4-bX’bであり、ただし、R6はC1-C14の脂肪族炭化水素基であり、X’はF、Cl又はBrであり、bは1~4の整数である。
【0052】
前記チタン化合物は、好ましくは四塩化チタン、四臭化チタン、四フッ化チタン、トリブトキシ塩化チタン、ジブトキシチタニウムジクロライド、ブトキシ塩化チタン、トリエトキシ塩化チタン、ジエトキシチタニウムジクロライド及びエトキシ塩化チタンのうちの少なくとも1種である。
【0053】
選択可能に、前記マグネシウム含有化合物担体の製造方法は、
一般式がMgX”Yであるハロゲン化マグネシウムと一般式がR7OHである第1のアルコール系化合物を第1回の接触及び乳化を行い、第1の生成物を得るステップS1と、
式(II)で表される構造を有するエチレンオキサイド系化合物を第1の生成物と第2の接触を行い、第2の生成物を得るステップS2と、
一般式がR10OHであるハロゲン化アルコール、一般式がR11OHである第2のアルコール系化合物を第2の生成物と第3の接触を行い、第3の生成物を得るステップS3と、
第3の生成物を噴霧乾燥し、マグネシウム含有化合物担体を得るステップS4と、を含む。
【0054】
選択可能に、本発明の具体的な実施形態として、前記S1において、前記一般式MgX”Yにおいて、X”はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選ばれ、Yはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C1-6のアルキル基、C1-6のアルコキシ基、C6-14のアリール基又はC6-14のアリールオキシ基から選ばれる。
【0055】
好ましくは、X”は塩素又は臭素から選ばれ、Yは塩素、臭素、C1-5のアルキル基、C1-5のアルコキシ基、C6-10のアリール基又はC6-10のアリールオキシ基から選ばれる。YがC1-6のアルキル基、C1-6のアルコキシ基から選ばれた場合、前記アルキル基及び前記アルコキシ基は直鎖又は分岐鎖のアルキル基及びアルコキシ基であり、前記C1-6のアルキル基とは1~6個の炭素原子を有するアルキル基を指し、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基などを含むが、これらに限定されず、前記C1-6のアルコキシ基とは1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基を指し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基などを含むが、これらに限定されない。
【0056】
前記C6-14のアリール基とは、6~14個の炭素原子を有するアリール基を指し、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、o-エチルフェニル基、m-エチルフェニル基、p-エチルフェニル基、ナフチル基などを含むが、これらに限定されない。
【0057】
前記C6-14のアリールオキシ基とは、6~14個の炭素原子を有するアリールオキシ基を指し、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、o-メチルフェノキシ基、o-エチルフェノキシ基、m-メチルフェノキシ基などを含むが、これらに限定されない。
【0058】
選択可能に、前記ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化フェノキシマグネシウム、塩化イソプロポキシマグネシウム及び塩化n-ブトキシマグネシウムから選ばれる少なくとも1種であり、好ましくは塩化マグネシウムである。
【0059】
選択可能に、前記式R7OHにおいて、R7はC1-10のアルキル基である。
【0060】
選択可能に、前記S2において、前記エチレンオキサイド系化合物の構造式は式(II)で表され、
【0061】
【0062】
ただし、R8及びR9は、それぞれ独立に、H、C1-10のアルキル基、1~10個のハロゲン原子で置換されたC1-10のハロゲン化アルキル基から選ばれ、好ましくは、R8及びR9は、それぞれ独立に、H、C1-5のアルキル基、1~10個のハロゲン原子で置換されたC1-5のハロゲン化アルキル基から選ばれる。
【0063】
選択可能に、前記エチレンオキサイド系化合物は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エポキシクロロプロパン、エポキシクロロブタン、エポキシブロモプロパン及びエポキシブロモブタンから選ばれる少なくとも1種である。
【0064】
選択可能に、前記S3において、前記式R10OHにおいて、R10は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC1-10のハロゲン化アルキル基又は少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC6-20のハロゲン化アリール基から選ばれる。
【0065】
前記ハロゲン化アルコールは、モノハロゲン化アルコール又はポリハロゲン化アルコールであってもよく、好ましくは、塩素化アルコール、臭素化アルコール又はヨウ素化アルコールであり、例えば、2,2,2-トリクロロエタノール、2,2-ジクロロエタノール、2-クロロエタノール、3-クロロ-1-プロパノール、6-クロロ-1-ヘキサノール、3-ブロモ-1-プロパノール、5-クロロ-1-ペンタノール、4-クロロ-1-ブタノール、2-クロロシクロヘキサノール、1,2-ジクロロエタノール、1,3-ジクロロプロパノール、1,4-ジクロロブタノール又は2-ヨードエタノールなどである。
【0066】
しかし、より良好な性能の触媒担体を得るために、本発明のさらに別の好ましい具体的な実施形態によれば、式R10OHにおいて、R10は、少なくとも2つのハロゲン原子で置換されたC1-10のハロゲン化アルキル基又は少なくとも2つのハロゲン原子で置換されたC6-20のハロゲン化アリール基から選ばれ、且つ前記ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも1種である。
【0067】
好ましくは、前記ハロゲン化アルコールは、2,2,2-トリクロロエタノール、2,2-ジクロロエタノール、1,2-ジクロロエタノール、1,3-ジクロロプロパノール、1,4-ジクロロブタノールから選ばれる少なくとも1種である。
【0068】
選択可能に、前記式R11OHにおいて、R11はC1-5のアルキル基である。
【0069】
本発明において、前記第2のアルコール系化合物は、エタノール、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール又はイソブタノールである。しかし、より良好な性能の触媒担体を得るために、本発明のさらに別の好ましい具体的な実施形態によれば、式R11OHにおいて、R11はC1-2のアルキル基であり、即ち、前記第2のアルコール系化合物はメタノール及び/又はエタノールである。
【0070】
選択可能に、前記ハロゲン化マグネシウム1molに対して、前記ハロゲン化アルコールの使用量は0.05~6.5molであり、前記第2のアルコール系化合物の使用量は5~100molである。
【0071】
ハロゲン化アルコール化合物の使用量が多すぎると、得られる触媒担体がべたつきブロッキングし、その後の操作ができなくなる。
【0072】
選択可能に、前記ハロゲン化マグネシウム1molに対して、前記第1のアルコール系化合物の使用量は1~30molであり、前記エチレンオキサイド系化合物の使用量は1~10molである。
【0073】
好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウム1molに対して、前記第1のアルコール系化合物の使用量は6~22molであり、前記エチレンオキサイド系化合物の使用量は2~6molであり、前記ハロゲン化アルコールの使用量は1~5molであり、前記第2のアルコール系化合物の使用量は8~80molであり、より好ましくは31~50molである。
【0074】
なお、上記各反応物に含まれる微量の水は、前記球状担体を形成する反応にも関与するため、製造された前記球状担体には、反応原料及び反応媒体に由来する微量の水が含まれる可能性があり、当業者は、本発明を限定するものと理解すべきではない。
【0075】
選択可能に、前記S1において、前記第1の接触は撹拌の条件で行われ、前記第1の接触の条件は、温度が80~120℃であり、時間が0.5~5hであることを含み、好ましくは、S1において、前記第1の接触の条件は、温度が80~100℃であり、時間が0.5~3hであることを含む。
【0076】
S1において、本発明は前記乳化の具体的な操作方法について特に制限がなく、当業者に公知の方法で行うことができる。乳化は、例えば、低速せん断または高速せん断で行われる。好ましくは、低速せん断を採用する場合、前記低速せん断の撹拌速度は400~800rpmである。前記高速せん断の方法は、当業者に公知であり、例えば、CN1330086Aに開示された高速撹拌速度で行われる。また、下記特許出願に開示された方法を参照して前記乳化操作を行うこともでき、CN1580136Aに開示されたように液体ハロゲン化マグネシウム化合物を含有する溶液を超重力床で回転分散(回転の速度は100-3000rpm)する。さらにCN1463990Aに開示されたように液体ハロゲン化マグネシウム付加物を含有する溶液を乳化機で1500~8000rpmの速度で出力する。さらにUS6020279Aに開示されたようにスプレー法により液体ハロゲン化マグネシウム付加物を含有する溶液を乳化する。
【0077】
選択可能に、S2において、前記第2の接触の条件は、温度が50~120℃であり、時間が20~60minであることを含み、好ましくは、前記第2の接触の条件は、温度が80~100℃であり、時間が20~50minであることを含む。
【0078】
選択可能に、S3において、前記第2の生成物を不活性溶媒で洗浄した後、一般式がR10OHであるハロゲン化アルコール、一般式がR11OHである第2のアルコール系化合物と前記第3の接触を行うことをさらに含み、好ましくは、前記不活性溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル及びガソリンから選ばれる少なくとも1種である。
【0079】
本発明は、S3における前記第3の接触の具体的な条件は特に限定されず、前記一般式がR10OHであるハロゲン化アルコール、一般式がR11OHである第2のアルコール系化合物と前記第2の生成物とを十分に接触させて流体を形成できればよい。しかし、より良好な性能を有する触媒担体を得るために、好ましくは、S3において、前記第3の接触の条件は、撹拌の条件下で行われ、温度が0~120℃であり、時間が0.5~6hであることを含む。
【0080】
本発明は、S3における前記第3の接触の具体的な方式について特に制限がなく、前記ハロゲン化アルコールと前記第2のアルコール系化合物との両者を混合して前記第2の成分と同時に接触させてもよく、前記ハロゲン化アルコールと前記第2のアルコール系化合物とをそれぞれ順に前記第2の成分と接触させてもよい。
【0081】
本発明の具体的な実施形態として、前記S4において、前記噴霧乾燥の条件は、従来のオレフィン重合用の触媒担体を形成できる条件を採用することができるが、性能のより良い触媒担体を得るために、本発明の好ましい具体的な実施形態によれば、前記噴霧乾燥は、噴霧ノズルを有する噴霧機において実施され、前記噴霧ノズルは、材料導管とノズルヘッドとを含み、前記第3の生成物は、前記材料導管を介して前記ノズルヘッドに導入され、前記ノズルヘッドを介して噴霧機の不活性媒体を含む塔体内に噴射されて硬化する。好ましくは、前記第3の生成物の前記材料導管における温度は0℃から80℃であり、前記第3の生成物の前記ノズルヘッドにおける温度は80~180℃であり、より好ましくは、前記第3の生成物の前記ノズルヘッドにおける温度は120~180℃である。
【0082】
選択可能に、S4において、前記噴霧乾燥の条件は、温度が60~200℃、より好ましくは90~150℃であることを含む。本発明において、前記噴霧乾燥の温度とは、前記噴霧機における不活性媒体の温度を指す。
【0083】
本発明の具体的な実施形態として、前記不活性媒体は、保護ガス媒体及び/又は不活性液体媒体を含んでもよく、前記保護ガス媒体の種類は特に限定されず、例えば、窒素ガスであってもよく、不活性ガス媒体、例えば、ヘリウムガスであってもよく、その他の適当なガス、例えば、二酸化炭素などであってもよく、前記不活性液体媒体は、本分野で通常使用される反応物及び反応生成物と化学作用を生じない各種の液体媒体であり、好ましくは、前記不活性液体媒体は、シリコーンオイル及び/又は不活性液体炭化水素系溶媒であり、より好ましくは、前記不活性液体媒体は、灯油、パラフィンオイル、ワセリンオイル、ホワイトオイル、メチルシリコーンオイル、エチルシリコーンオイル、メチルエチルシリコーンオイル、フェニルシリコーンオイル及びメチルフェニルシリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはホワイトオイルである。
【0084】
本発明の具体的な実施形態として、前記噴霧機における不活性液体媒体の使用量は、一般式がMgX”Yであるハロゲン化マグネシウムの使用量に応じて選択することができ、好ましくは0.8~10Lであり、より好ましくは2~8Lである。
【0085】
本発明の具体的な実施形態として、本発明に記載の製造方法において、本分野の通常の例えば固液分離、洗浄、乾燥などの後処理手段をさらに含み、本発明はこれを特に制限しない。前記固液分離は、従来の固相と液相との分離を実現できる様々な方法、例えば吸引濾過、加圧濾過又は遠心分離などを採用することができ、好ましくは、前記固液分離の方法は加圧濾過法である。本発明において、加圧濾過の条件は特に限定されず、固相と液相の分離をできるだけ十分に実現することを基準とする。前記洗浄は、得られた固相生成物を当業者に公知の方法で洗浄することができ、例えば、不活性炭化水素系溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル及びガソリン)で、得られた固相生成物を洗浄することができる。本発明において、前記乾燥の具体的な条件は特に限定されず、例えば、前記乾燥の温度は20~70℃であってもよく、前記乾燥の時間は0.5~10hであってもよく、前記乾燥は常圧又は減圧条件下で行われてもよい。
【0086】
本発明の具体的な実施形態として、前記触媒の組成は特に制限されず、本分野の従来のオレフィン重合用触媒の組成であってもよいが、オレフィン重合、特にプロピレン重合用に好適な触媒を得ることができるように、前記触媒は、前記担体、ハロゲン化チタン化合物及び電子供与体化合物を含むことが好ましい。好ましくは、前記ハロゲン化チタン化合物は、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、モノクロロトリn-ブトキシチタン、ジクロロジn-ブトキシチタン、トリクロロモノn-ブトキシチタン、モノクロロトリエトキシチタン、ジクロロジエトキシチタン、トリクロロモノエトキシチタン及び三塩化チタンから選ばれる少なくとも1種である。好ましくは、前記電子供与体化合物は、フタル酸ジイソブチル、カルボン酸ジオールエステル、リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種である。また、本発明は、前記触媒における各成分の含有量について特に制限がなく、当業者は実際の必要に応じて適宜調節設計することができる。
【0087】
選択可能に、前記マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径は2~100ミクロンであり、粒径分布は2未満であり、好ましくは、前記マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径は2~19ミクロンであり、粒径分布は0.6~1.6である。
【0088】
マグネシウム含有化合物担体を含む触媒をオレフィン重合に使用する際、より高い嵩密度を有するオレフィン重合体を得るために、さらに好ましくは、前記マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径は2~10ミクロンであり、粒径分布は0.6~1である。
【0089】
本発明のポリプロピレン微小球の製造方法において、触媒はプロピレンの重合を触媒する過程において「形態複製」の特性を有し、球状触媒は必ずしも球状重合体が得られるわけではない、球状重合体は一般的に球状触媒からしか製造できない。粒子径が小さい触媒ほど、得られた重合体の粒子径も一般的に小さく、しかも触媒自体の構造や形態が重合体の形態に重要な役割を果たす。良好な触媒構造及び形態は、ポリマー間の摩擦力の低減等に寄与し、最終的なポリマーの安息角を減少させ、ポリマーの生産及び輸送に寄与する。
【0090】
本発明の第3の態様によれば、上記ポリプロピレン微小球及び/又は上記製造方法により製造されたポリプロピレン微小球を含む3D印刷原料を提供する。
【0091】
本発明の第4の態様によれば、上記ポリプロピレン微小球又は上記製造方法により製造されたポリプロピレン微小球の、3D印刷用、特にレーザー焼結印刷用、最も好ましくは選択的レーザー焼結(Selective Laser Sintering、SLS)用の用途を提供する。
【0092】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を含む。
【0093】
1、従来の一般的なポリプロピレン微小球の半値幅が広く、本発明のポリプロピレン微小球の半値幅は4~10℃だけであり、従来よりも狭く、これは、得られたポリプロピレン微小球の結晶配列分布が比較的均一であり、3D印刷に用いられる場合、ポリマー粒子の溶融と融合の均一性を改善することができ、3D印刷の溶融均一性製品性を良好にし、焼結試料の構造強度と表面性能を向上させることを示し、同時に、本発明は、メタロセン触媒により製造されたポリプロピレン微小球に比較してより広い分子量分布を有し、得られた焼結製品がより良好な剛性靭性バランスを有する。
【0094】
2、本発明のポリプロピレン微小球の平均粒子径は160ミクロン未満であり、そのまま3D印刷に用いることができ、二次加工を必要としない。本発明のポリプロピレン微小球の安息角は23°未満であり、より良好な流動性を有し、印刷時に粉末の敷設がより均一になる。本発明のポリプロピレン微小球のエチレン含有量は0.2wt%を超え、3D印刷中に反らない。本発明のポリプロピレン微小球は、良好な球状形態を呈し、粒子が規則的であり、流動性がよく、産業応用の将来性が極めて高い。
【0095】
3、本発明のポリプロピレン微小球の製造方法は、触媒の比表面が大きく、重合活性が良好であるとともに、触媒の特性により、アルキルアルミニウムの使用を減少させることができ、より少量のトリエチルアルミニウムを用いて、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、触媒、水素ガス及びプロピレンモノマーと混合して反応させてポリプロピレン微小球を得ることにより、得られたポリマー微小球の灰分をさらに低減させ、基本的に異形材の出現がない。
【0096】
4、本発明のポリプロピレン微小球の製造方法において、触媒の「形態複製」の特性により直接重合して球状ポリマーを得、触媒の構造及び形態の良好な特性により、得られたポリマー間の摩擦力が小さく、ポリマーの安息角が小さく、ポリマーの生産及び輸送に有利である。
【0097】
5、本発明が提供するポリプロピレン微小球は、反応器によって直接重合されたものであり、後期加工プロセスを回避し、コストを節約する。
【0098】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕
図1は実施例1で得られたポリプロピレン粉体の電子顕微鏡写真である。
【0099】
【0100】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
【0101】
本発明において、マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径及び粒度分布は、Masters Sizer 2000粒度計(Malvern Instruments Ltd社製)を用いて測定する。
【0102】
本発明において、ポリプロピレン粉体の外観形態は、米国FEI社製XL-30型電界放出形電子顕微鏡により観察される。
【0103】
本発明において、マグネシウム含有化合物担体の構造及び組成は、スイスBruker社のAVANCE 300核磁気共鳴分光計を用いて担体に対して1H-NMR測定を行い、Fronteerlab社のPY-2020iD型クラッカー、Thermo Fisher社のTraceGC Ultra型クロマトグラフ及びDSD II型質量分析計を用いて担体に対して測定を行って得られる。
【0104】
本発明において、DSC測定は、『GBT 19466 プラスチック 示差走査熱量測定(DSC)』に規定された方法で測定される。ここで、DSC測定における半値幅とは、ピーク高さの中点を通りベースラインに平行な直線を引き、この直線とピークの両側が交わる2点の間の温度差の絶対値である。
【0105】
本発明において、ポリプロピレン粉体の分子量分布指数Mw/Mnの測定方法は、GB/T36214-2018に規定される方法で測定される。
【0106】
本発明において、触媒共重合活性は、重合後に得られた生成物の重量と触媒の使用量の重量との比で評価される。
【0107】
本発明において、ポリプロピレン粉体の嵩密度は、GB/T 1636-2008に規定される方法で測定される。
【0108】
本発明において、ポリプロピレン粉体の灰分測定は、GB_T 9345.1-2008に規定される方法で測定される。
【0109】
本発明において、ポリプロピレン粉体の比表面積は、POREMASTER GT60型水銀ポロシメーターを用いて測定される。
【0110】
本発明において、ポリプロピレン粉体の安息角は、GB/T 11986-1989に規定される方法で測定される。
【0111】
本発明において、ポリプロピレン粉体のアスペクト比とは、粒子投影における長軸とその平均短軸との比を指す。
【0112】
本発明において、ポリプロピレン粉体のエチレン含有量は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いてエチレン含有量を測定し、フィルムホットプレス法により試料を作製する。
【0113】
本発明において、サンプルの引張強度は、GB/T 1040.2-2006に規定される方法で測定される。
【0114】
本発明において、表面平滑度は比較法を採用し、測定される表面と標準品とを比較し、視覚、触感又は他の方法で比較した後、測定される表面の粗さを評価する。5人の作業員によって採点され、標準品を10点とし、平均得点を取った。
【0115】
【0116】
本発明において、特に断らない限り、使用する原料は全て市販品である。
【0117】
1,3-ジクロロプロパノールは、J&K Scientific社から購入した。
【0118】
エポキシクロロプロパンは、J&K Scientific社から購入した。
【0119】
フタル酸ジイソブチルは、J&K Scientific社から購入した。
【0120】
四塩化チタンは、J&K Scientific社から購入した。
【0121】
トリエチルアルミニウムは、J&K Scientific社から購入した。
【0122】
シクロヘキシルメチルジメトキシシランは、J&K Scientific社から購入した。
【0123】
本発明の各実施例及び比較例において、特に断らない限り、触媒担体の製造過程において、乳化はいずれも600rpmの撹拌下で行われた。
【0124】
DSCは、Perkin-Elmer DSC-7型示差走査熱量計を用いて、10℃/minで試料を200℃まで加熱し、5min保持した後、10℃/minで50℃まで降温し、50℃で1min保持した後、10℃/minで200℃まで再度昇温し、二次昇温試験結果において、式λi=(dH/dt)i+1-(dH/dt)iを用いて
【0125】
【0126】
(iがTm<Ti<Tfmを満たす場合)を算出し、得られた結果が0より小さい場合、
【0127】
【0128】
はNoとなり、逆に、算出された値がいずれも0より小さくない場合、
【0129】
【0130】
はYesとなる。λiはTi+1温度時とTi温度時のヒートフローの差である。
【0131】
<実施例1-1>
1)マグネシウム含有化合物担体の製造
S1:0.6Lの反応釜に、塩化マグネシウム0.08mol、エタノール(第1のアルコール系化合物)1.7molを順に加え、撹拌しながら90℃に昇温し、恒温で1h反応させて第1の接触を行い、その後乳化することにより、第1の生成物を得た。
【0132】
S2:前記第1の生成物を0.48molのエポキシクロロプロパンと第2の接触を行い、第2の生成物を得、前記第2の接触の条件は、温度が90℃であり、時間が30minであることを含む。
【0133】
S3:前記第2の生成物を加圧濾過した後、2.5molのエタノール(第2のアルコール系化合物)及び0.35molの1,3-ジクロロプロパノール(ハロゲン化アルコール)と十分に混合攪拌して第3の接触を行って流体を形成し、第3の生成物を得た。
【0134】
S4:ノズルヘッド及び材料導管を含む噴霧機B-290を用いて、前記第3の生成物を噴霧機塔内の100℃の循環窒素ガスに噴霧して噴霧乾燥し、前記第3の生成物の前記材料導管における温度は15℃であり、前記ノズルヘッドにおける温度は120℃であり、触媒球状担体Z1を得た。
【0135】
測定により、前記触媒球状担体Z1の平均粒子径(D50)は4ミクロンであり、粒径分布((D90-D10)/D50)は0.9であった。
【0136】
観測により、前記触媒球状担体Z1の粒子形態は比較的規則的であり、表面が滑らかであり、ほぼ球状であり、粒子のサイズ分布が比較的集中し、且つほぼ異形粒子が存在しなかった。
【0137】
前記触媒球状担体Z1の製造過程において、前記噴霧機のノズルヘッドに目詰まり現象が発生せず、合計11.8gの触媒球状担体Z1を得た。
【0138】
2)オレフィン重合用触媒の製造
S1:300mLの反応フラスコに100mLの四塩化チタンを加え、マイナス20℃に冷却し、実施例1で得られた触媒球状担体Z1を8グラム加え、マイナス20℃で30min撹拌し、第1の生成物を得た。
【0139】
S2:S1で得られた第1の生成物を110℃まで徐々に昇温し、昇温過程において1.5mLの2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンを加え、110℃で30min維持した後、液体を濾過して第2の生成物を得た。
【0140】
S3:S2で得られた第2の生成物を四塩化チタンで2回、ヘキサンで3回洗浄し、乾燥してオレフィン重合用触媒C1を得た。
【0141】
3)ポリプロピレン共重合体微小球の製造
5Lのステンレスオートクレーブにおいて、窒素ガスの保護雰囲気下で、0.25mmolのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(トリエチルアルミニウムの濃度は0.5mmol/mLである)、10mLの無水ヘキサン、10mgの触媒C1、1.5L(標準体積)の水素ガス及び2Lの液体プロピレンモノマーを加え、エチレンを導入し、70℃に昇温し、この温度で40min反応させ、その後、降温、放圧、排出、乾燥し、共重合されたポリプロピレン粉体を得た。
【0142】
実施例1-1で得られた共重合されたポリプロピレン粉体は、電子顕微鏡から見て、良好な球状形態を呈し(
図1)、異形材はほとんど存在しなかった。
【0143】
<実施例1-2>
本実施例は、実施例1-1が提供する方法によりポリプロピレンを製造した。使用する水素ガスの体積が異なる点で異なり、それ以外は全て同じであった。
【0144】
具体的には、1.5L(標準体積)の水素ガスを6.5L(標準体積)の水素ガスに置き換え、ポリプロピレン粉体を得た。
【0145】
このポリプロピレン粉体は、電子顕微鏡から見て、良好な球状形態を呈し、異形材はほとんど存在しなかった。
【0146】
<実施例2-1>
(1)0.6Lの反応釜に、塩化マグネシウム0.08mol、エタノール(第1のアルコール系化合物)1.4molを加え、撹拌しながら90℃に昇温し、恒温で1.5h反応させて第1の接触を行い、その後乳化することにより、第1の生成物を得た。
【0147】
(2)前記第1の生成物を0.35molのエポキシクロロプロパンと第2の接触を行い、第2の生成物を得、前記第2の接触の条件は、温度が90℃であり、時間が30minであることを含む。
【0148】
(3)前記第2の生成物を加圧濾過した後、2.5molのエタノール(第2のアルコール系化合物)及び0.25molの1,3-ジクロロプロパノール(ハロゲン化アルコール)と十分に混合攪拌して第3の接触を行って流体を形成し、第3の生成物を得た。
【0149】
(4)ノズルヘッド及び材料導管を含む噴霧機B-290を用いて、前記第3の生成物を噴霧機塔内の100℃の循環窒素ガスに噴霧して噴霧乾燥し、前記第3の生成物の前記材料導管における温度は15℃であり、前記ノズルヘッドにおける温度は120℃であり、触媒球状担体Z2を得た。
【0150】
測定により、前記触媒球状担体Z2の平均粒子径(D50)は4ミクロンであり、粒径分布((D90-D10)/D50)は0.8であった。
【0151】
観測により、オレフィン重合用触媒球状担体Z2の粒子形態は比較的規則的であり、表面は滑らかであり、ほぼ球状であり、粒子のサイズ分布は比較的集中的であり、異形粒子はほとんど存在しなかった。
【0152】
前記触媒球状担体Z2の製造過程において、前記噴霧機のノズルヘッドに目詰まり現象が発生せず、合計11.9gの前記触媒球状担体Z2を得た。
【0153】
実施例1-1と類似する方法によりポリプロピレンを製造した。ステップS1において、使用する触媒担体の種類が異なる点で異なり、それ以外は実施例1-1と同じであった。
【0154】
具体的には、前記触媒球状担体Z1の代わりに、同じ重量の実施例2-1で製造された前記触媒球状担体Z2を用いて、オレフィン重合用触媒C2を得た。
【0155】
測定により、電子顕微鏡で観察したところ、触媒C2は球形であった。測定により、触媒C2の平均粒子径(D50)は4ミクロンであり、粒径分布((D90-D10)/D50)は0.8であった。
【0156】
得られたポリプロピレン粉体粒子の形態は良好であり、電子顕微鏡から見て、良好な球状形態を呈し、異形材はほとんど存在しなかった。
【0157】
<実施例2-2>
本実施例は、実施例2-1が提供する方法によりポリプロピレンを製造した。使用する水素ガスの体積が異なる点で異なり、それ以外は全て同じであった。
【0158】
具体的には、1.5L(標準体積)の水素ガスを6.5L(標準体積)の水素ガスに置き換え、ポリプロピレン粉体を得た。
【0159】
このポリプロピレン粉体は、電子顕微鏡から見て、良好な球状形態を呈し、異形材はほとんど存在しなかった。
【0160】
<実施例3-1>
(1)0.6Lの反応釜に、塩化マグネシウム0.08mol、エタノール(第1のアルコール系化合物)1.4molを加え、撹拌しながら90℃に昇温し、恒温で1.5h反応させて第1の接触を行い、その後乳化することにより、第1の生成物を得た。
【0161】
(2)前記第1の生成物を0.35molのエポキシクロロプロパンと第2の接触を行い、第2の生成物を得、前記第2の接触の条件は、温度が90℃であり、時間が30minであることを含む。
【0162】
(3)前記第2の生成物を加圧濾過した後、2.5molのエタノール(第2のアルコール系化合物)及び0.1molの1,3-ジクロロプロパノール(ハロゲン化アルコール)と混合し、第3の接触を行って流体を形成するまで撹拌し、第3の生成物を得た。
【0163】
(4)ノズルヘッド及び材料導管を含む噴霧機B-290を用いて、前記第3の生成物を噴霧機塔内の100℃の循環窒素ガスに噴霧し、前記第3の生成物の前記材料導管における温度は15℃であり、前記ノズルヘッドにおける温度は120℃であり、触媒球状担体Z3を得た。
【0164】
測定により、前記触媒球状担体Z3の平均粒子径(D50)は5ミクロンであり、粒径分布((D90-D10)/D50)は0.8であった。
【0165】
観測により、前記触媒球状担体Z3の粒子形態は比較的規則的であり、表面が滑らかであり、ほぼ球状であり、粒子のサイズ分布が比較的集中し、且つほぼ異形粒子が存在しなかった。
【0166】
前記触媒球状担体Z3の製造過程において、前記噴霧機のノズルヘッドに目詰まり現象が発生せず、合計12.0gの前記触媒球状担体Z3を得た。
【0167】
触媒重合は、Z2の代わりにZ3を使用した以外、実施例2-1と同様であった。
【0168】
このポリプロピレン粉体は、電子顕微鏡から見て、良好な球状形態を呈し、異形材はほとんど存在しなかった。
【0169】
<実施例3-2>
本実施例は、実施例3-1が提供する方法によりポリプロピレンを製造した。使用する水素ガスの体積が異なる点で異なり、それ以外は全て同じであった。
【0170】
具体的には、1.5L(標準体積)の水素ガスを6.5L(標準体積)の水素ガスに置き換え、ポリプロピレン粉体を得た。
【0171】
このポリプロピレン粉体は、電子顕微鏡から見て、良好な球状形態を呈し、異形材はほとんど存在しなかった。
【0172】
<実施例4>
本実施例は、実施例1-1が提供する方法によりポリプロピレンを製造した。0.25mmolのトリエチルアルミニウムを添加するとともに、0.01mmolのシクロヘキシルメチルジメトキシシランを添加する点で異なり、それ以外は全て実施例1-1と同様にして、ポリプロピレン粉体を得た。
【0173】
このポリプロピレン粉体は、電子顕微鏡から見て、良好な球状形態を呈し、異形材はほとんど存在しなかった。
【0174】
<比較製造例3>
(1)0.6Lの反応釜に、塩化マグネシウム0.08mol、エタノール1.7molを加え、撹拌しながら90℃まで昇温し、恒温で1h反応させた後、エポキシクロロプロパン0.48molを加えて90℃で30min反応させ、第1の生成物を得た。
【0175】
(2)前記第1の生成物を加圧ろ過した後、2.5molのエタノールを加えて流状体混合物を形成するまで撹拌した。
【0176】
(3)ノズルヘッド及び材料導管を含む噴霧機を用いて前記流状体混合物を100℃の循環窒素ガスに噴霧し、前記第3の生成物の前記材料導管における温度は15℃であり、前記ノズルヘッドにおける温度は120℃であり、オレフィン重合用触媒担体DZ3を得た。
【0177】
前記オレフィン重合用触媒担体DZ3の平均粒子径(D50)は3ミクロンであり、粒子径分布((D90-D10)/D50)は0.8であった。
【0178】
<比較例1>
実施例1-1と類似する方法によりポリプロピレンを製造した。オレフィン重合用触媒の製造において、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパンの代わりにフタル酸ジイソブチルを用いた点で異なり、それ以外は全て同じであった。
【0179】
<比較例2>
比較例1と類似する方法によりポリプロピレンを製造した。ポリプロピレン共重合体微小球の製造において、使用する水素ガスの体積が6.5NLで異なる点で異なり、それ以外は全て比較例1と同じであった。
【0180】
<比較例3>
実施例1-1と類似する方法によりポリプロピレンを製造した。Z1の代わりにDZ3を用いた点で異なり、それ以外は全て同じであった。
【0181】
<比較例4>
実施例1-1と類似する方法によりポリプロピレンを製造した。重合時にエチレンを添加しない点で異なった。
【0182】
<比較例5>
(1)ハロゲン化マグネシウム付加物MgXY・mR1OHは、CN1718595の実施例1に開示された方法に従って製造され、具体的には以下のとおりである。
【0183】
攪拌付き150Lの反応器に、無水塩化マグネシウム10kgとエタノール12.6kgを粘度30センチポアズ(20℃)のホワイトオイル60Lに加え、125℃で2時間反応させた。次に、得られた溶融付加物とホワイトオイルとの混合液を125℃に予熱したメチルシリコーンオイル媒体に移し、メチルシリコーンオイルの粘度は300センチポアズ(20℃)であり、メチルシリコーンオイルの使用量は120Lであり、200回転/分の回転速度で10-30分間撹拌し、混合液を得た。前記混合液を超重力回転床に導入して分散させ、撹拌条件下で、分散後の混合液を予め-35℃に降温したヘキサン媒体に導入し、ヘキサンの使用量が1200Lであり、小液滴に分散された塩化マグネシウム/アルコール付加物溶融体が冷却固化され、球状固体粒子となる。急冷後に得られた懸濁液から固体粒子を濾過し、ヘキサンで室温で該粒子を洗浄し、ヘキサンの使用量は100L/回であり、合計5回洗浄し、60℃で真空引きして固体を得た。
【0184】
前記ハロゲン化マグネシウム付加物の平均粒子径(D50)は52ミクロンであり、粒度分布((D90-D10)/D50)は1.1であった。電子顕微鏡で粒子の形態を観察したところ、ハロゲン化マグネシウム付加物の粒子形態が比較的規則的であり、表面が比較的滑らかであり、粒子のサイズ分布が比較的集中していた。
【0185】
ガスクロマトグラフィー質量分析、核磁気共鳴及び元素分析により、ハロゲン化マグネシウム付加物D5の構造式は、MgCl2・2.5C2H5OHであると確定した。
【0186】
Z1の代わりにD5を用いた以外は実施例1と同じであった。
【0187】
<比較例6>
ポリプロピレン共重合体微小球の製造に用いた水素ガスの体積は6.5NLで異なり、それ以外は全て比較例5と同じであった。
【0188】
<比較例7>
商業化DQC401触媒を用いて製造されたランダム共重合ポリプロピレンペレットは、液体窒素で深冷した後に粉砕した。
【0189】
【0190】
【0191】
上記表2から分かるように、本発明のポリプロピレン微小球は、より広い分子量分布を有し、且つその半値幅がより狭く、得られたポリプロピレン微小球の結晶配列分布が比較的均一であり、3D印刷に用いられる場合、粒子が均一に溶融し、得られた製品の性能が良好である。また、より広い分子量分布は、製品により良好な剛性靭性バランスを付与することもできる。
【0192】
<試験例1:レーザー焼結3D印刷>
5mgの酸化防止剤1010を100mlのヘキサンに溶解させて一定量の上記実施例又は比較例に記載のポリプロピレン粉体を加え、均一に混合した後、吸引乾燥させ、選択的レーザー焼結プリンタにおいて、一定量の上記ポリプロピレン粉体を加え、作動温度130~132℃、レーザーパワー40W、走査速度1500mm・s-1、走査間隔0.1mmとなるようにパラメータを調整し、サンプルを印刷した後、サンプルの力学性能を測定し、具体的な結果を表3に示す。
【0193】
【0194】
以上のように、本発明が提供する触媒によって製造された共重合ポリプロピレン粉体は、良好な球状形態を呈し、流動性が良く、安息角が小さく、3D印刷部品の引張性能が良く、物品の平滑性が良い。より小さい安息角を有するため、粉末の敷設効果が良く、印刷過程の空間欠陥の低減に有利であり、また、大きい比表面積を有し、酸化防止剤との融合効果が良く、ポリプロピレンのレーザー焼結過程における局所分解を大幅に減少させる。本発明のエチレンプロピレン共重合製品は、より狭いDSC測定半値幅を有し、より均一な共重合体結晶組成を有し、ポリマー粒子の溶融と融合の均一性を改善し、焼結試料の構造強度と表面性能を向上させる。
【0195】
<試験例2:オートクレーブ発泡ビーズ>
1、発泡成形体の圧縮強度は、硬質発泡プラスチックの圧縮性能の測定GB/T8813-2008の方法で測定し、発泡成形体の曲げ強度は、硬質発泡プラスチックの曲げ性能の測定GB/T8812-2007の方法で測定した。
【0196】
2、発泡ビーズの倍率測定方法:ドイツSatoriusCPA225D天秤の密度アクセサリーYDK01を使用し、排水法によりポリプロピレン組成物発泡ビーズの密度を得て、国家標準GB/T1033.1-2008、ISO1183-1:2012に紹介された方法に従って測定した。得られたポリプロピレン組成物発泡材料の発泡倍率は、式:b=ρ1/ρ2で算出され、ただし、bは発泡倍率、ρ1は二元ランダム共重合ポリプロピレンベース樹脂の密度、ρ2は発泡材料の見掛け密度である。
【0197】
200gの共重合ポリプロピレン微小球をオートクレーブ内に置き、0.2gの酸化防止剤1010、分散媒(脱イオン水)1000g、1gの界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、分散剤(カオリン)1g及び分散増強剤(硫酸アルミニウム)0.02gを加えて混合し、さらに低圧二酸化炭素を導入してオートクレーブ内の空気を完全に置換し、さらに高圧二酸化炭素を導入し、オートクレーブ温度を138℃まで上昇させ、圧力を6MPaに制御し、30分間膨潤浸透させた。その後、急速に圧力を除去してゲージ圧を0にし、圧力除去速度を10MPa/sに制御し、釜内の材料を5℃の冷水に入れ、乾燥させた。前記した発泡プロセスで得られた異なる発泡粒子を、モールド成形機を用いて一定の蒸気圧力で一定の時間でプレス成形し、その後、得られた成形体を、温度が100℃であり、圧力が標準大気圧である条件で24時間熟成させ、発泡ビーズ成形体を得た。
【0198】
発泡ビーズの発泡倍率、モールド成形の蒸気圧力と成形時間を表4に示す。
【0199】
【0200】
表4のデータから分かるように、本発明のポリマー共重合微小球が発泡に用いられる場合、発泡倍率がより高いだけでなく、必要な蒸気圧力がより低く、成形時間がより短い。より低い蒸気圧力は、エネルギーの節約、コストの低減に寄与するだけでなく、プロセスのリスクの低減にも寄与する。より短い成形時間は、より高い生産効率を意味し、利益の向上、生産収入の増加にとって有意義である。
【0201】
なお、本明細書において開示される範囲の端点及び任意の値は、当該精確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲について、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と単独の点値の間、及び単独の点値の間は、互いに組み合わせて1つ又は複数の新たな数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書に具体的に開示されるものと見なされるべきである。
【0202】
以上説明した実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。典型的な実施例を参照して本発明を説明したが、使用された用語は、限定的な用語ではなく、説明的及び解釈的な用語であると理解すべきである。本発明の特許請求の範囲に記載された範疇内において、本発明を修正することができる。本発明は特定の方法、材料及び実施例に関するが、本発明が開示された特定の例に限定されることを意味するものではなく、逆に、本発明は他の全ての同じ機能を有する方法及び応用に拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【
図1】
図1は実施例1で得られたポリプロピレン粉体の電子顕微鏡写真である。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン微小球であって、0.2wt%~10wt%のエチレンに由来する構成単位と、90wt%~99.8wt%のプロピレンに由来する構成単位とを含み、示差走査熱量計によりポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線を取得し、前記ポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線の半値幅は4~10℃であることを特徴とするポリプロピレン微小球。
【請求項2】
前記ポリプロピレン微小球の溶融吸熱曲線の半値幅は5~8℃であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項3】
前記ポリプロピレン微小球の分子量分布は4~9であることを特徴とする請求項
1に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項4】
前記ポリプロピレン微小球の嵩密度は0.20g/cm
3~0.50g/cm
3であり、好ましくは0.32g/cm
3~0.48g/cm
3であり、
及び/又は、安息角は10°~23°であり、好ましくは13°~20°であり、
及び/又は、アイソタクティシティ指数は60%~94%であり、好ましくは64%~90%であり、
及び/又は、灰分は0.005%~0.04%であり、
及び/又は、メルトインデックスは3~160g/10minであり、好ましくは15~100g/10minであることを特徴とする請求項
1に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項5】
DSC測定を行った場合、DSC結果は、λi=(dH/dt)
i+1-(dH/dt)
i、
【化1】
(iはT
m<T
i<T
fmを満たす)の特徴を満たし、ここで、縦座標はヒートフローdH/dtであり、横座標は温度Tであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項6】
前記ポリプロピレン微小球の平均粒子径は50μm~200μmであり、好ましくは、前記ポリプロピレン微小球の平均粒子径は60μm~160μmであり、より好ましくは、前記ポリプロピレン微小球の平均粒子径は80μm~120μmであることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項7】
前記ポリプロピレン微小球のアスペクト比は0.9~1.1であり、好ましくは、前記ポリプロピレン微小球のアスペクト比は0.95~1.05であり、より好ましくは、前記ポリプロピレン微小球のアスペクト比は1であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載のポリプロピレン微小球。
【請求項8】
当該製造方法は、オレフィン重合触媒系の存在下で、プロピレン含有オレフィンを共重合させてポリプロピレン微小球を得ることを含むことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小球の製造方法。
【請求項9】
前記オレフィン重合触媒系は、触媒成分、アルキルアルミニウム化合物成分及び任意選択的に添加されるか又は添加されない外部電子供与体化合物成分、又はそれらの成分の反応生成物を含み、
及び/又は、前記触媒は、マグネシウム含有化合物担体、チタン化合物及び内部電子供与体化合物を含み、
及び/又は、前記チタン化合物と、マグネシウム含有化合物担体と、内部電子供与体化合物とのモル比は(37~255):(2~15):1であり、好ましくは(67~235):(4~12):1であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記マグネシウム含有化合物担体の構造は式(I)で表され、
【化2】
式(I)中、R
1は、C
1-C
10のアルキル基であり、
R
2及びR
3は、同一又は異なって、それぞれ独立に、H、C
1-C
10のアルキル基又は1~10個のハロゲン原子で置換されたC
1-C
10のハロゲン化アルキル基であり、
R
4は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC
1-C
10のハロゲン化アルキル基又は少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC
6-C
20のハロゲン化アリール基であり、
R
5は、C
1-C
5
のアルキル基であり、
Xはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
mは0.1~1.9であり、nは0.1~1.9であり、且つm+n=2であり、好ましくは、mは0.8~1.2であり、nは0.8~1.2であり、
0<q<0.2、0<a<0.1、好ましくは、0.005≦q≦0.2、0.001<a<0.05であり、
及び/又は、前記内部電子供与体化合物は、カルボン酸エステル、アルコールエステル、エーテル、ケトン、ニトリル、アミン及びシランから選ばれる少なくとも1種であり、好ましくは、一価又は多価脂肪族カルボン酸エステル、一価又は多価芳香族カルボン酸エステル、二価アルコールエステル及び二価エーテルから選ばれる少なくとも1種であり、
及び/又は、前記チタン化合物の一般式はTi(OR
6)
4-bX’
bであり、
ただし、R
6はC
1-C
14の脂肪族炭化水素基であり、
X’はF、Cl又はBrであり、
bは1~4の整数であり、
好ましくは、前記チタン化合物は、四塩化チタン、四臭化チタン、四フッ化チタン、トリブトキシ塩化チタン、ジブトキシチタニウムジクロライド、ブトキシ塩化チタン、トリエトキシ塩化チタン、ジエトキシチタニウムジクロライド及びエトキシ塩化チタンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記マグネシウム含有化合物担体の製造方法は、
一般式がMgX”Yであるハロゲン化マグネシウムと一般式がR
7OHである第1のアルコール系化合物を第1回の接触及び乳化を行い、第1の生成物を得るステップS1と、
ただし、一般式MgX”Yにおいて、X”はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選ばれる任意の1種であり、Yはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、C
1-6のアルキル基、C
1-6のアルコキシ基、C
6-14のアリール基、C
6-14のアリールオキシ基から選ばれる任意の1種であり、
式R
7OHにおいて、R
7はC
1-10のアルキル基であり、
式(II)で表される構造を有するエチレンオキサイド系化合物を第1の生成物と第2の接触を行い、第2の生成物を得るステップS2と、
ただし、S2において、前記エチレンオキサイド系化合物の構造式は式(II)で表され、
【化3】
ただし、R
8及びR
9は、それぞれ独立に、H、C
1-10のアルキル基、1~10個のハロゲン原子で置換されたC
1-10のハロゲン化アルキル基から選ばれ、
一般式がR
10OHであるハロゲン化アルコール、一般式がR
11OHである第2のアルコール系化合物を第2の生成物と第3の接触を行い、第3の生成物を得るステップS3と、
式R
10OHにおいて、R
10は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC
1-10のハロゲン化アルキル基又は少なくとも1つのハロゲン原子で置換されたC
6-20のハロゲン化アリール基から選ばれ、
式R
11OHにおいて、R
11はC
1-5のアルキル基であり、
第3の生成物を噴霧乾燥し、マグネシウム含有化合物担体を得るステップS4と、を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化マグネシウム1molに対して、前記第1のアルコール系化合物の使用量は1~30molであり、前記エチレンオキサイド系化合物の使用量は1~10molであり、前記ハロゲン化アルコールの使用量は0.05~6.5molであり、前記第2のアルコール系化合物の使用量は5~100molであり、好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウム1molに対して、前記第1のアルコール系化合物の使用量は6~22molであり、前記エチレンオキサイド系化合物の使用量は2~6molであり、前記ハロゲン化アルコールの使用量は1~5molであり、前記第2のアルコール系化合物の使用量は8~80molであり、より好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウム1molに対して、前記第2のアルコール系化合物の使用量は31~50molであることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径は2~100ミクロンであり、粒径分布は2未満であり、好ましくは、前記マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径は2~19ミクロンであり、粒径分布は0.6~1.6であり、より好ましくは、前記マグネシウム含有化合物担体の平均粒子径は2~10ミクロンであり、粒径分布は0.6~1であることを特徴とする請求項
11に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小
球を含むことを特徴とする3D印刷原料。
【請求項15】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリプロピレン微小
球の、3D印刷用、特にレーザー焼結印刷用、最も好ましくは選択的レーザー焼結用の用途。
【請求項16】
請求項8に記載の製造方法により製造されたポリプロピレン微小球の、3D印刷用、特にレーザー焼結印刷用、最も好ましくは選択的レーザー焼結用の用途。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
本発明は、S3における前記第3の接触の具体的な方式について特に制限がなく、前記ハロゲン化アルコールと前記第2のアルコール系化合物との両者を混合して前記第2の生成物と同時に接触させてもよく、前記ハロゲン化アルコールと前記第2のアルコール系化合物とをそれぞれ順に前記第2の生成物と接触させてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0176
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0176】
(3)ノズルヘッド及び材料導管を含む噴霧機を用いて前記流状体混合物を100℃の循環窒素ガスに噴霧し、前記流状体混合物の前記材料導管における温度は15℃であり、前記ノズルヘッドにおける温度は120℃であり、オレフィン重合用触媒担体DZ3を得た。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0189
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0189】
【国際調査報告】