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特表2024-541269放射性標識化合物及びその前駆体化合物、その調製方法並びにその用途
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  • 特表-放射性標識化合物及びその前駆体化合物、その調製方法並びにその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】放射性標識化合物及びその前駆体化合物、その調製方法並びにその用途
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/38 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C07F9/38 C CSP
A61K31/675
A61P35/00
A61P35/04
A61P19/00
A61K51/04 200
A61K51/04 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525938
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2022070444
(87)【国際公開番号】W WO2023092830
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111419244.X
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524161759
【氏名又は名称】ザ アフィリエイテッド ホスピタル オブ サウスウェスト メディカル ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】THE AFFILIATED HOSPITAL OF SOUTHWEST MEDICAL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ユェ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, インウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, チーシン
(72)【発明者】
【氏名】チウ, リン
(72)【発明者】
【氏名】フェン, ユェ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, リー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ザン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ペン, デンサイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, グァンフー
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】シン, ナイグオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ハンシャン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084NA13
4C084NA14
4C084NA20
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC781
4C084ZC782
4C084ZC801
4C084ZC802
4C085KA09
4C085KA26
4C085KA29
4C085KB02
4C085KB07
4C085KB12
4C085KB59
4C085LL18
4C085LL20
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA38
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZB26
4C086ZC78
4C086ZC80
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
4H050AC90
(57)【要約】
式(I)に示す、放射性標識化合物の前駆体化合物、前記前駆体化合物の放射性標識化合物又は前記放射性標識化合物の薬学的に許容される塩。放射性標識化合物は、水溶性が高く、室温でのインビトロ安定性が良好であり、血漿タンパク質結合率が高く、マウスにおけるインビボ分布とニュージーランドウサギの造影の両方で高い長時間の骨取込性を示し、動物実験によって、開発効果が99mTc-MDPよりも良好であることが示される。

【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

で表される構造を有する、放射性標識化合物又は前記放射性標識化合物の薬学的に許容される塩の、前駆体化合物。
【請求項2】
式II:
【化2】

式中、Aは放射性核種、好ましくは68Ga、177Lu、225Ac、64Cu、又は221Atを表す、
で表される構造を有することにより特徴付けられている、式Iで表される化合物の放射性標識化合物又は前記放射性標識化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項3】
95%以上の放射化学的純度を有することにより特徴付けられている、請求項2に記載の放射性標識化合物又は前記放射性標識化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項4】
ステップ1、化合物1をtert-ブチルアクリレートと反応させて化合物2を形成するステップと、
ステップ2、化合物2のEtOAc溶液にHCl/EtOAcを滴下し、反応させて化合物3を生成するステップと、
ステップ3、化合物3をPhClに添加し、窒素保護下でPOCl及びHPOを添加し、加熱し、反応させ、冷却し、次いでクロロベンゼン溶液を注ぎ出し、HOを添加し、加熱し、撹拌して、化合物4を生成するステップと、
ステップ4、化合物4の水溶液にDOTA-NHS-エステル溶液を添加し、次いでトリエチルアミンを添加し、反応させて、前記式Iで表される化合物を生成するステップと、
を含み、
反応手順が、
【化3】

であることにより特徴付けられている、請求項1に記載の放射性標識化合物の前駆体化合物の調製方法。
【請求項5】
前記式Iで表される化合物と放射性核種塩溶液とを反応させて、前記式IIで表される放射性標識化合物を得るステップを含むことにより特徴付けられている、請求項2又は3に記載の放射性標識化合物の調製方法。
【請求項6】
前記放射性核種が68Ga、177Lu又は64Cuである場合、前記式Iで表される化合物の溶液と、酢酸ナトリウム溶液と、放射性核種塩溶液とを均一に混合し、混合溶液のpH値を調整し、反応させ、再度pH値を調整し、滅菌し、濾過することによって、前記放射性標識化合物を得ることと、
前記放射性核種が225Acである場合、前記式Iで表される化合物の溶液と、クエン酸ナトリウム溶液と、アスコルビン酸ナトリウム溶液と、放射性核種塩溶液とを均一に混合し、混合溶液のpH値を調整し、反応させ、再度pH値を調整し、滅菌し、濾過することによって、前記放射性標識化合物を得ることと、
前記放射性核種が211Atである場合、前記式Iで表される化合物の溶液と、ホウ酸ナトリウム溶液と、放射性核種塩溶液とを均一に混合し、混合溶液のpH値を調整し、反応させ、再度pH値を調整し、滅菌し、濾過することによって、前記放射性標識化合物を得ることと、
を特徴とする、請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記放射性核種が68Gaである場合、前記式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.25Mの酢酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、20mCiの活性を有する68Ga塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、前記pH値を5に調整し、ここで、前記式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、前記68Ga塩溶液の濃度は5mCi/ml~10mCi/mlであり、
前記放射性核種が177Luである場合、前記式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.25Mの酢酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、2mCiの活性を有する177Lu塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、前記pH値を4.5に調整し、ここで、前記式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、前記177Lu塩溶液の濃度は10mCi/ml~20mCi/mlであり、
前記放射性核種が225Acである場合、前記式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.1Mのアスコルビン酸ナトリウム溶液0.8~1.4ml及び濃度0.1Mのクエン酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、0.01mCiの活性を有する225Ac塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、前記pH値を4.5に調整し、ここで、前記式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、前記225Ac塩溶液の濃度は0.01mCi/ml~0.02mCi/mlであり、
前記放射性核種が64Cuである場合、前記式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.25Mの酢酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、5mCiの活性を有する64Cu塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、前記pH値を4に調整し、ここで、前記式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、前記64Cu塩溶液の濃度は5mCi/ml~10mCi/mlであり、
前記放射性核種が211Atである場合、前記式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.25Mのホウ酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、1mCiの活性を有する211At塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、前記pH値を7に調整し、ここで、前記式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、前記211At塩溶液の濃度は1.0mCi/ml~2.0mCi/mlである、
ことを特徴とする、請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
転移性骨腫瘍の造影及び治療の両方のための薬剤の製造における、請求項1に記載の式Iで表される化合物の使用。
【請求項9】
転移性骨腫瘍の造影及び治療の両方のための薬剤の製造における、請求項2又は3に記載の式IIで表される化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本開示は、核医学の技術分野に属し、具体的には、放射性標識化合物、その前駆体化合物、その調製方法及びその用途に関する。
【0002】
[背景技術]
骨は、悪性腫瘍が遠隔転移する一般的な部位であり、遠隔転移の発生率は肺及び肝臓に次いで多い。転移性骨腫瘍の早期診断及び治療は、患者の予後及び生活の質を効果的に改善することができる。
【0003】
転移性骨腫瘍の現在の治療には、主に放射線療法、化学療法、放射性核種療法、ビスホスホネート療法、鎮痛療法及び緩和手術が含まれる。転移性骨腫瘍のための標的化放射性核種療法は、骨痛を有意に軽減し、腫瘍細胞を死滅させることができ、毒性副作用がほとんどなく、したがって安全かつ効果的な治療方法である。現在、転移性骨腫瘍を治療するために中国で一般的に使用されている放射性医薬品には、89SrCl及び153Sm-EDTMPが含まれる。それらは、骨痛を有意に軽減し、骨格関連事象の発生率を低下させることができる。しかし、いずれも原子炉で製造する必要があり、比較的高価であり、89SrClを造影に用いることは困難であるため、89SrClには一定の使用上の制約がある。より効果的で安価で容易に入手可能な治療用放射性医薬品に対する、喫緊の臨床的必要性がある。
【0004】
68Ga、177Lu、225Ac、64Cu、及び221Atは全て、優れた核特性を有する医療用同位体である。68Gaは、68Ge/68Ga発生器によって得られ、これは入手が簡便で低費用である。β線を放出することができ、PET造影に使用される。177Lu、225Ac、64Cu、及び221Atは、いずれも海外から購入され、供給経路は円滑で安定している。177Luは、半減期(T1/2)が6.7日であり、治療に用いることができる497keV(78.6%)、384keV(9.1%)、176keV(12.2%)のエネルギーをそれぞれ有する3種類のβ粒子を放出し、また、インビボでの局在化及び造影に適した113keV(6.4%)及び208keV(11%)のγ線を放出する。225Acは、αイオンがより高い線エネルギー移動、高い光線エネルギー、短い飛程を有するα線を放出するため、相対的に高い生物学的効果と、腫瘍細胞に対する最も強い殺傷効果とを有する。225Acは半減期(T1/2)が9.9日であり、225Acの娘核種である213Biは半減期(T1/2)が46分である。64Cu核種は、好適な半減期(12.7時間)、固有の崩壊特性(β減衰、β減衰、電子捕獲)などの特性、及び様々なリガンドと配位して錯体を形成する能力のために、PET分子プローブ及びセラノスティクス医療の分野において集中的に研究されている。211Atの減衰によって放出されるα線は、平均エネルギー6.8MeVであり、組織内で55~88μmの飛程を有する。211Atは、半減期が7.2時間であり、強い臨床応用的価値を有する。現在、99mTc-MDPは最も一般的に使用されている臨床骨造影剤であるが、単一光子造影剤としての、病変の局在化及び表示能力は、陽電子造影剤の能力よりもはるかに低い。ホスホネート(HEDP)は、転移性骨腫瘍の造影及び標的療法のための臨床研究において一般的に使用される薬物である。しかしながら、第1世代の無窒素ビスホスホネートとして、HEDPは、アレンドロン酸及びイバンドロン酸などの第2及び第3世代の窒素含有ビスホスホネートよりも効果が著しく低い。したがって、より良好な造影効果、より良好な治療効果、並びに転移性骨腫瘍の造影及び治療の両方の能力を有する薬物を提供することは、当業者にとって喫緊の問題となっている。
【0005】
[本開示の内容]
本開示の第1の目的は、核種標識された後に、転移性骨腫瘍の造影及び治療の両方に適した薬物を生成することができる、式Iで表される前駆体化合物を提供することである。
【0006】
本開示の第2の目的は、式Iで表される化合物を核種で標識して得られる、式IIで表される放射性標識化合物を提供することである。
【0007】
本開示の第3の目的は、式Iで表される前駆体化合物を調製する方法を提供することである。
【0008】
本開示の第4の目的は、式IIで表される放射性標識化合物を調製する方法を提供することである。
【0009】
本開示の第5の目的は、式Iで表される前駆体化合物の用途を提供することである。
【0010】
本開示の第6の目的は、式IIで表される放射性標識化合物の用途を提供することである。
【0011】
上記の目的を達成するために、本開示によって採用される技術的解決策は以下の通りである。
【0012】
本開示は、式Iで表される構造を有する、放射性標識化合物又は前記放射性標識化合物の薬学的に許容される塩の、前駆体化合物を提供する。
【化1】
【0013】
本開示は、式IIで表される構造を有する、式Iで表される化合物の放射性標識化合物又は前記放射性標識化合物の薬学的に許容される塩を提供する。
【化2】

式中、Aは核種、好ましくは68Ga、177Lu、225Ac、64Cu、又は221Atを表す。
【0014】
本開示は、発明的な方法でキレート剤DOTAをイバンドロン酸と結合させて、新たな化合物であるDOTA-イバンドロン酸を形成する。放射性核種68Ga、177Lu、225Ac、64Cu、又は211Atで標識する場合、前駆体の使用量は、イバンドロン酸単独の使用量よりもはるかに少ない。本発明者らは、転移性骨腫瘍の造影及び治療の両方のための新しい薬物である様々な放射性核種標識DOTA-イバンドロン酸を提供する。この種の薬物は、転移性骨腫瘍に対して放射性核種68Ga、177Lu、225Ac、64Cu、又は211At及びDOTA-イバンドロン酸の造影及び治療効果をより良好に発揮できることによって、1+1が2より大きくなる相乗効果を生み出す。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態において、放射性核種標識されたDOTA-イバンドロン酸は、95%以上の放射化学的純度を有する。
【0016】
本開示は、以下の
ステップ1、化合物1をtert-ブチルアクリレートと反応させて化合物2を形成することと、
ステップ2、化合物2のEtOAc溶液にHCl/EtOAcを滴下し、反応させて化合物3を生成することと、
ステップ3、化合物3をPhClに添加し、窒素保護下でPOCl及びHPOを添加し、加熱し、反応させ、冷却し、次いでクロロベンゼン溶液を注ぎ出し、HOを添加し、加熱し、撹拌して、化合物4を生成することと、
ステップ4、化合物4の水溶液にDOTA-NHS-エステル溶液を添加し、次いでトリエチルアミンを添加し、反応させて、式Iで表される化合物を生成することと、
を含み、反応手順が以下の通りである、式Iで表される放射性標識化合物の前駆体化合物の調製方法を提供する。
【化3】
【0017】
本開示は、式Iで表される化合物を反応させることを含む、式IIで表される放射性標識化合物の調製方法を提供する。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態では、放射性核種が68Ga、177Lu又は64Cuである場合、式Iで表される化合物の溶液と、酢酸ナトリウム溶液と、放射性核種塩溶液とを均一に混合し、混合溶液のpH値を調整し、反応させ、再度pH値を調整し、滅菌し、濾過することによって、放射性標識化合物が得られ、
放射性核種が225Acである場合、式Iで表される化合物の溶液と、クエン酸ナトリウム溶液と、アスコルビン酸ナトリウム溶液と、放射性核種塩溶液とを均一に混合し、混合溶液のpH値を調整し、反応させ、再度pH値を調整し、滅菌し、濾過することによって、放射性標識化合物が得られ、
放射性核種が211Atである場合、式Iで表される化合物の溶液と、ホウ酸ナトリウム溶液と、放射性核種塩溶液とを均一に混合し、混合溶液のpH値を調整し、反応させ、再度pH値を調整し、滅菌し、濾過することによって、放射性標識化合物が得られる。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態では、放射性核種が68Gaである場合、式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.25Mの酢酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、20mCiの活性を有する68Ga塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、pH値を5に調整することによって放射性標識化合物が得られ、ここで、式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、68Ga塩溶液の濃度は5mCi/ml~10mCi/mlであり、
放射性核種が177Luである場合、式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.25Mの酢酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、2mCiの活性を有する177Lu塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、pH値を4.5に調整することによって放射性標識化合物が得られ、ここで、式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、177Lu塩溶液の濃度は10mCi/ml~20mCi/mlであり、
放射性核種が225Acである場合、式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.1Mのアスコルビン酸ナトリウム溶液0.8~1.4ml及び濃度0.1Mのクエン酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、0.01mCiの活性を有する225Ac塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、pH値を4.5に調整することによって放射性標識化合物が得られ、ここで、式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、225Ac塩溶液の濃度は0.01mCi/ml~0.02mCi/mlであり、
放射性核種が64Cuである場合、式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.25Mの酢酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、5mCiの活性を有する64Cu塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、pH値を4に調整することによって放射性標識化合物が得られ、ここで、式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、64Cu塩溶液の濃度は5mCi/ml~10mCi/mlであり、
放射性核種が211Atである場合、式Iで表される化合物20~30μgを、濃度0.25Mのホウ酸ナトリウム溶液0.8~1.4mlに添加し、次いで、1mCiの活性を有する211At塩溶液を添加し、均一に混合し、混合溶液のpH値を4~7、好ましくは5に調整し、80~100℃、好ましくは95℃で、反応時間10~30分、好ましくは15分で反応させ、反応後、pH値を7に調整することによって放射性標識化合物が得られ、ここで、式Iで表される化合物の溶液の濃度は1mg/mlであり、211At塩溶液の濃度は1.0mCi/ml~2.0mCi/mlである。
【0020】
本開示は、転移性骨腫瘍の造影及び治療の両方のための薬剤の製造における、式Iで表される化合物の使用を提供する。
【0021】
本開示は、転移性骨腫瘍の造影及び治療の両方のための薬剤の製造における、式IIで表される化合物の使用を提供する。
【0022】
従来技術と比較して、本開示は以下の有利な効果を有する。
【0023】
本開示は、科学的な設計及び簡易な方法を提供する。本開示は、発明的な方法でイバンドロン酸をキレート剤と結合させてDOTA-イバンドロン酸を得、次いでDOTA-イバンドロン酸を放射性核種68Ga、177Lu、225Ac、64Cu、又は211Atで標識して68Ga-、177Lu-、225Ac-、64Cu-、又は211At-DOTA-イバンドロン酸を得る。本開示の68Ga-、177Lu-、225Ac-、64Cu-、又は211At-DOTA-イバンドロン酸は、マウスにおけるインビボ分布及びニュージーランドウサギの造影によって示されるように、高い水溶性、室温での良好なインビトロ安定性、高い血漿タンパク質結合速度、及び高い長期の骨取込性を有するため、優れた性能を有した転移性骨腫瘍のための骨造影剤及び放射性治療剤である。薬力学的実験は、68Ga-、177Lu-、225Ac-、64Cu-、又は211At-DOTA-イバンドロン酸が、対応する68GaCl177LuCl225AcCl64CuCl、Na211At、又はDOTA-イバンドロン酸の群よりも診断又は治療のいずれかに良好な効果を有することを示し、悪性腫瘍骨転移の診断及び治療における68Ga-、177Lu-、225Ac-、64Cu-、又は211At-イバンドロン酸の実現可能性及び有効性を示している。
【0024】
68Ga-、177Lu-、225Ac-、64Cu-、又は211At-DOTA-イバンドロン酸を調製するための本開示の標識方法は簡易であり、反応時間が短く、標識収率が高く、前駆体の使用量が非常に少ない(マイクログラムレベル)。標識化合物についての標的病変と非標的組織との比(T/N値)は非常に高く、最大10倍以上である。文献報告によれば、T/N値が4~5より大きい場合に高い治療能力値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実験例5における、1時間後及び3時間後の、ニュージーランドウサギの68Ga-DOTA-IBAのPET造影を示す図である。
図2】実験例6における、1日後、3日後、5日後及び7日後の、ニュージーランドウサギの177Lu-DOTA-IBAのSPECT全身静的造影を示す図である。
図3】実験例7における、1日後、3日後及び5日後の、ニュージーランドウサギの225Ac-DOTA-IBAのSPECT全身静的造影を示す図である。
図4】式Iで表される前駆体化合物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)図を示す。
図5】式Iで表される前駆体化合物の液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)図を示す。
【0026】
[本開示を実施するための具体的な様式]
本開示の実施例の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、本開示の実施例における技術的解決策を以下に明確かつ完全に説明する。具体的な条件が実施例に明記されていない場合、条件は、従来の条件又は製造業者によって推奨される条件に従って実施されるものとする。使用される試薬又は機器の製造業者が示されない場合、試薬又は機器は全て、商業的に購入することができる従来の製品である。
【0027】
実施例1
この実施例では、本開示の式Iで表される前駆体化合物の調製方法が開示され、前駆体化合物の合成経路は以下の通りであった。
【化4】
【0028】
ステップ1 化合物2の調製
【化5】

tert-ブチルアクリレート(6.34g、49.4mmol)を化合物1(5.00g、24.7mmol)に添加した。25℃で3時間、撹拌しながら反応させた。薄層紙クロマトグラフィー(TLC)を用いて、反応が完了したこと、及び新たなスポットが生成されたことを監視した。反応溶液を濃縮し、無色油状の化合物2(7.90g、収率96.7%)を得た。粗生成物を精製せずに次の反応に直接使用した。
【0029】
ステップ2 化合物3の調製
【化6】

HCl/EtOAc(4M、20.0mL)を、氷浴条件下で化合物2(1.90g、5.75mmol)のEtOAc(2.00mL)溶液に滴下した。反応溶液を25℃で2時間撹拌した。液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により、原料の反応が完了したことを検出した。反応溶液を真空下で濃縮して、無色油状の粗化合物3(800mg、収率79.9%)を得、これを更に精製することなく次の反応に直接使用した。
【0030】
ステップ3 化合物4の調製
【化7】

化合物3(800mg、3.24mmol、HCl塩)をPhCl(100mL)に添加し、POCl(9.93g、64.7mmol)及びHPO(5.31g、64.7mmol)を窒素保護下で添加した。反応混合物を80℃に加熱し、16時間撹拌した。冷却後、クロロベンゼン溶液を注ぎ出し、HO(20.0mL)を加え、80℃で5時間撹拌した。LC-MSにより、生成物の集塊の存在を監視した。反応溶液を濾過し、真空下で濃縮し、残渣を分取HPLC(YMC-Actus Triart Diol-HILIC、150*30mm、5μm、120Å 移動相:0.2% CHCOOH、CHCN)により精製して、化合物4を白色固体(90.0mg、収率8.68%)として得た。
【0031】
ステップ4 式Iで表される化合物Carbsの調製
【化8】

化合物4(60.0mg、187μmol)のHO(200μL)溶液に、DOTA-NHS-エステル(141mg、281μmol)のDMF(200μL)溶液を加え、トリエチルアミン(114mg、1.12mmol)を添加した。反応溶液を25℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、生成物の集塊の存在を監視した。反応溶液を濾過、濃縮し、残渣を分取HPLC(Hilic、0.2% CHCOOH)により精製し、式Iで表される化合物Carbsを白色固体(4.00mg、収率3.02%、純度86.8%)として得た。
【0032】
図4に、式Iで表される化合物のHPLC図を示し、図5に、LC-MS図を示した。
【0033】
実施例2
この実施例では、68Ga-DOTA-イバンドロン酸を調製するためのDOTA-イバンドロン酸の量を調査し、以下のように特定した。
【0034】
8本のEPチューブを用意し、それぞれに5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μgのDOTA-イバンドロン酸(1mg/ml)を加えた。各チューブに、酢酸ナトリウム溶液(0.25M)1mLを加え、次いで、新たにすすいだ68GaCl溶出液(5mci/ml)4mlを加えた。酢酸ナトリウム溶液0.25Mと塩酸0.01MとでpH値を約5に調整し、混合溶液を十分に振盪及び混合し、95℃の金属浴中で15分間反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、各チューブのpH値を4-6に調整し、反応液を滅菌し、0.22μmの濾過膜で濾過した。続いて、68Ga-DOTA-イバンドロン酸の放射化学的純度を、薄層紙クロマトグラフィー(TLC)を用いて測定した。結果を表1に示した。
【表1】
【0035】
表1から分かるように、他の条件を固定した場合、68Ga-DOTA-イバンドロン酸の放射化学的純度は、DOTA-イバンドロン酸の量が20~30μgである場合に最適であり、この範囲より低い又は高い場合、放射化学的純度は徐々に低下する。
【0036】
実施例3
この実施例では、本開示におけるpH値を調査し、以下のように特定した。
【0037】
7本のEPチューブを用意し、DOTA-イバンドロン酸(1mg/ml)25μgと、酢酸ナトリウム溶液(0.25M)1mlと、新たにすすいだ68GaCl溶出液(5mci/ml)4mlとを各チューブに順次加えた。酢酸ナトリウム溶液0.25Mと塩酸0.1Mとを用いて、これらのチューブ内のpH値をそれぞれ2、3、4、5、6、7及び8に調整した。混合液を十分に振盪及び混合し、95℃の金属浴中で15分間反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、滅菌し、0.22μmの濾過膜で濾過した。続いて、68Ga-DOTA-イバンドロン酸の放射化学的純度を、薄層紙クロマトグラフィー(TLC)を用いて測定した。結果を表2に示した。
【表2】
【0038】
表2から、DOTA-イバンドロン酸の放射化学的純度は、pH値が5の場合に最適であることが分かる。pH値が5より高い又は低い場合、放射化学的純度は徐々に低下する。pH値が6を超える場合、放射化学的純度は急速に低下する。
【0039】
実施例4
この実施例では、本開示における酢酸ナトリウムの量を調査し、以下のように特定した。
【0040】
8本のEPチューブを用意し、それぞれ0.2ml、0.4ml、0.6ml、0.8ml、1.0ml、1.2ml、1.4ml、及び1.6mlの酢酸ナトリウム溶液(0.25M)を加えた。各チューブに、DOTA-イバンドロン酸(1mg/ml)25μgと、新たにすすいだ68GaCl溶出液(5mci/ml)4mlとを添加し、酢酸ナトリウム溶液0.25Mと塩酸0.1MとでpH値をそれぞれ5に調整した。混合液を十分に振盪及び混合し、95℃の金属浴中で15分間反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、各チューブのpH値を5に調整し、反応液を滅菌し、0.22μmの濾過膜で濾過した。続いて、68Ga-DOTA-イバンドロン酸の放射化学的純度を、薄層紙クロマトグラフィー(TLC)を用いて測定した。結果を以下の表3に示した。
【表3】
【0041】
表3から分かるように、他の条件が不変である場合、68Ga-DOTA-イバンドロン酸の放射化学的純度は、酢酸ナトリウム溶液の量が0.8~1.4mlである場合に最適であり、この範囲より低い又は高い場合、放射化学的純度は徐々に低下する。
【0042】
実施例5
この実施例では、本開示における反応温度及び持続時間を調査し、以下のように特定した。
【0043】
18本のEPチューブを用意し、A群(室温25±2℃)、B群(60℃)、及びC群(95℃)の3つの群に分けた。各群6本のチューブを取り、番号A/B/C1~6と記した。各チューブに、DOTA-イバンドロン酸(1mg/ml)25μgと、酢酸ナトリウム溶液(0.25M)1mlと、新たにすすいだ68GaCl溶出液(5mci/ml)4mlとを事前に順次加え、酢酸ナトリウム溶液0.25Mと塩酸0.1MとでpH値をそれぞれ約5に調整した。混合溶液を十分に振盪及び混合し、次いで、各群の6本のチューブを各群の温度でそれぞれ5分、10分、15分、20分、25分及び30分反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、各チューブのpH値を5に調整し、反応液を滅菌し、0.22μmの濾過膜で濾過した。続いて、68Ga-DOTA-イバンドロン酸の放射化学的純度を、薄層紙クロマトグラフィー(TLC)を用いて測定した。結果を以下の表4に示した。
【表4】
【0044】
表4から、他の条件が不変である場合、68Ga-DOTA-イバンドロン酸の放射化学的純度は、反応を95℃で15分間実施した場合に最適であることが分かる。反応時間が長すぎる、短すぎる、又は温度が低すぎると、放射化学的純度は低下する。
【0045】
実施例6
この実施例では、本開示の177Lu-DOTA-イバンドロン酸の調製方法を開示し、以下のように特定した。
【0046】
DOTA-イバンドロン酸(25μg)に、酢酸ナトリウム溶液(0.25M)1ml、次いで新たにすすいだ177LuCl溶出液(約2.0mci)0.2mlを加えた。酢酸ナトリウム溶液0.25Mと塩酸0.01Mとで混合溶液のpH値を約5に調整し、95℃の金属浴中で15分間反応させた。反応溶液を取り出し、塩酸0.04MでpH約4.5に調整した。次いで、反応溶液をCMカラムに通し(遊離177Luを除去するため)、次いで生成物を滅菌フィルタ膜に通し、最終的に177Lu-DOTA-イバンドロン酸を得た。
【0047】
実施例7
この実施例では、本開示の225Ac-DOTA-イバンドロン酸の新たな調製方法を開示し、以下のように特定した。
【0048】
DOTA-イバンドロン酸(25μg)に、アスコルビン酸溶液(0.1M)1mlと、クエン酸ナトリウム溶液(0.1M)1ml、次いで新たにすすいだ225AcCl溶出液(約0.01mci)100μlとを加えた。混合溶液を塩酸0.04MでpH約4.5に調整し、95℃の金属浴中で15分間反応させた。反応溶液を取り出し、塩酸0.04MでpH約4.5に調整し、次いで生成物を滅菌濾過膜で濾過し、225Ac-DOTA-イバンドロン酸を得た。
【0049】
実施例8
この実施例では、本開示の64Cu-DOTA-イバンドロン酸の新たな調製方法が開示され、以下のように特定された。
【0050】
DOTA-イバンドロン酸(25μg)に、酢酸ナトリウム溶液(0.25M)1ml、次いで新たにすすいだ64CuCl溶出液(約5mci)1mlを添加した。混合溶液を塩酸0.04MでpH約4に調整し、95℃の金属浴中で15分間反応させた。反応溶液を取り出し、塩酸0.04MでpH約4に調整し、次いで生成物を滅菌濾過膜に通して、64Cu-DOTA-イバンドロン酸を得た。
【0051】
実施例9
この実施例では、本開示の211At-DOTA-イバンドロン酸の新たな調製方法を開示し、以下のように特定した。
【0052】
DOTA-イバンドロン酸(25μg)に、ホウ酸ナトリウム溶液(0.25M)1ml、次いで新たにすすいだNa211At溶出液(約1.0mci)1mlを加えた。混合溶液をpH約7に調整し、95℃の金属浴中で15分間反応させた。反応溶液をpH約7に調整し、次いで生成物を滅菌濾過膜に通して、最終的に211At-DOTA-イバンドロン酸を得た。
【0053】
実験例1~5では、用いられた68Ga-DOTA-イバンドロン酸は、実施例2の表1の5番の方法に従って調製した。
【0054】
実験例1
この実験例では、本開示の68Ga-DOTA-イバンドロン酸のインビトロ安定性試験を開示し、以下のように特定した。
【0055】
4本のEPチューブを用意し、順に番号1~4と記し、番号1及び2に生理食塩水0.1mlをそれぞれ加え、番号3及び4に10倍希釈した新鮮なヒト血清0.1mlをそれぞれ加え、次いで、これらの4本のチューブに、新たに調製した68Ga-DOTA-イバンドロン酸1.0mciをそれぞれ加えた。番号1及び3を室温(25±2℃)に置き、番号2及び4をインキュベートのために37℃の金属浴に置いた。番号1から4の放射化学的純度値を、薄層紙クロマトグラフィー(TLC)を用いて、それぞれ10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間で測定した。結果を以下の表5に示した。
【表5】
【0056】
表5から、68Ga-DOTA-イバンドロン酸は、室温で良好なインビトロ安定性を有し、その放射化学的純度は、通常の生理食塩水及び血清中に室温で4時間置いた後も依然として>90%であることが分かる。
【0057】
実験例2
この実験例では、本開示の68Ga-DOTA-イバンドロン酸の脂質-水分配係数を調査し、以下のように特定した。
【0058】
3本の5ml遠心管を用意し、それぞれ番号A-1、A-2及びA-3と記した。n-オクタノール0.5mlと、脱イオン水0.485mlと、新たに調製した約0.5mciの68Ga-DOTA-イバンドロン酸0.25mlとを各チューブに加え、遠心管をボルテックスミキサーによって20分間振盪し、次いで、2000r/分で5分間遠心分離し、そこから上側液体(有機相)0.1mlを3本の対応する試験管(それぞれ番号B-1、B-2、B-3と記した)にそれぞれ収集し、下側液体(水相)0.1mlを3本の対応する試験管(それぞれ番号C-1、C-2、C-3と記した)にそれぞれ収集した。有機相と水相の全放射能計数をそれぞれγカウンタで測定し、脂質-水分配係数を式より算出した。
【0059】
結果は、本開示の68Ga-DOTA-イバンドロン酸の脂質-水分配係数lgPが-2.33であることを示し、標識化合物が高い水溶性と低い脂溶性を有することを示している。
【0060】
実験例3
この実験例では、本開示の68Ga-DOTA-イバンドロン酸の血漿タンパク質結合率を調査し、以下のように特定した。
【0061】
ヘパリンで抗凝固処理した新鮮なヒト血漿1mLを後に使用するために用意した。3本のEPチューブを用意し、番号A-1、A-2及びA-3と記し、それぞれに、新鮮なヒト血漿0.1mlと、新たに調製した約0.5mciの68Ga-DOTA-イバンドロン酸0.25mlとを加えた。次いで、それらを37℃の金属浴中で30分間インキュベートした。3本の5ml遠心管を用意し、それぞれ番号B-1、B-2及びB-3と記した。インキュベートした溶液をそれぞれ対応する遠心管に移した。次いで、25%トリクロロ酢酸溶液1mlを各遠心管に加え、十分に混合し、次いで、2000r/分で5分間遠心分離した。上清をそれぞれ3つの対応する試験管(それぞれ番号C-1、C-2、C-3と記した)に回収した。遠心分離及び上清回収を3回繰り返した。遠心管内の沈殿物及び試験管内の上清の総放射能計数をそれぞれγカウンタで測定し、血漿タンパク質結合率(PPB)を算出した。
【0062】
結果は、本開示の68Ga-DOTA-イバンドロン酸が、血漿中での30分間のインキュベート後に81%のPPBを有することを示す。血漿タンパク質結合率が高いことは、標識化合物が体内に長時間保持され、除去されにくく、良好な造影効果を達成できることを示す。
【0063】
実験例4
この実験例では、本開示の68Ga-DOTA-イバンドロン酸のインビボ分布を調査し、以下のように特定した。
【0064】
健康なKunming(昆明)マウス(体重18~22g)を20匹用意し、各群5匹の4つの群に無作為に分けた。マウスの半分は雄性であり、半分は雌性であった。新たに調製した68Ga-DOTA-イバンドロン酸0.5mci/0.1mlを、尾静脈より注入した。動物を、それぞれ15分、30分、1時間及び2時間後に断頭した。頸動脈血液、脳、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、胃、小腸、筋肉及び大腿骨組織を秤量し、γカウンタでそれらの放射能計数を測定し、時間減衰補正後、組織1グラム当たりの注入用量百分率(%ID/g)を算出した。マウスにおける68Ga-DOTA-イバンドロン酸のインビボ分布結果を以下の表6に示した。
【表6】
【0065】
表6から、骨は68Ga-DOTA-イバンドロン酸の高い取込率を有し、2時間で最大値(8.365%ID/g)に達することが分かる。その後、骨への取り込みは経時的に減少するが、骨の組織1グラム当たりの注入用量百分率は、4時間まで依然として4.268%ID/gに達することができ、これは他の器官及び組織のものよりも有意に高く、68Ga-DOTA-イバンドロン酸が骨に対して強い効果及び長期滞留性を有し、したがって理想的な造影効果を達成することができることを示している。
【0066】
実験例5
この実験例では、ニュージーランドウサギにおける本開示の68Ga-DOTA-イバンドロン酸の様々な時点での造影を調査し、以下のように特定した。
【0067】
約2Kgのニュージーランドウサギを1匹用意し、新たに調製した68Ga-DOTA-イバンドロン酸約1.0mci/0.2mlを耳静脈より注入し、注入の1時間後及び3時間後にそれぞれPET全身造影を行った(図1)。
【0068】
図1から、注入の1時間後、腎臓及び膀胱は明瞭な画像を示し、胸腔及び軟組織は明瞭な画像を示し、全身の骨は明確な画像を示し、四肢の関節は明瞭な画像を示すことが分かる。図2は、時間が経過するにつれて、胸腔及び軟組織の画像が徐々に薄くなり、両腎臓の画像が徐々に薄くなり、徐々に膀胱へ移行し、膀胱の画像が徐々に濃くなり、尿が排出されるにつれて膀胱の画像が徐々に消えることを示す。したがって、68Ga-DOTA-イバンドロン酸は、軟組織によって速やかに排除され、骨取込性が高く、泌尿器系により排泄され、比較的長時間骨に留まる造影剤である。転移性骨癌患者に適用すれば、良好な造影結果が得られる。
【0069】
実験例6
ニュージーランドウサギにおける、実施例6の方法に従って調製された177Lu-DOTA-イバンドロン酸の様々な時点での造影を調査し、以下のように特定した。
【0070】
約2Kgのニュージーランドウサギを1匹用意し、新たに調製した177Lu-DOTA-イバンドロン酸約2.0mci/0.2mlを耳静脈より注入し、注入の1日後、3日後、5日後及び7日後にそれぞれPET全身造影を行った(図2)。
【0071】
実験例7
ニュージーランドウサギにおける、実施例7の方法に従って調製された225Ac-DOTA-イバンドロン酸の様々な時点での造影を調査し、以下のように特定した。
【0072】
約2Kgのニュージーランドウサギを1匹用意し、上記の最適な標識条件下で新たに調製した225Ac-DOTA-イバンドロン酸約0.01mci/2mlを耳静脈より注入し、注入の1日後、3日後及び5日後にそれぞれPET全身造影を行った(図3)。
【0073】
実験例8
この実験例では、担癌マウス(PC-3、H1975、MDA-MB-231骨転移モデル)に対する本開示の177Lu-DOTA-イバンドロン酸の治療効果を調査した。本実験例で用いた177Lu-DOTA-イバンドロン酸は、実施例6の方法に従って調製した。
【0074】
(1)担癌マウスモデルの確立:SPF雄ヌードマウス24匹及びSPF雌ヌードマウス12匹を用意し、イソフルランで麻酔した。その後、左膝関節周囲の皮膚を消毒し、左後肢を屈曲させた。インスリン針(29G針)を脛骨の関節窩の凹点から垂直に脛骨に挿入し、ゆっくり回転させ、髄腔内に挿入して、PC-3(雄12匹)、H1975(雄12匹)及びMDA-MB-231(雌12匹)の細胞培養物25μl(およそ2×10)を注入した。次いで、消毒を行い、穴を滅菌骨ワックスで密封した。再加温のために、動物を37℃のホットプレート上に置いた。蘇生後、ケージに戻し、飼育を継続した。
【0075】
(2)担癌マウスモデルの試験:接種4週間後、ヌードマウス36匹をそれぞれMicro-CTを用いて走査した。ヌードマウスはそれぞれ、様々な程度の骨破壊を有し、様々な程度の軟組織腫脹を伴うことが観察され、骨転移モデルの確立に成功したことが示された。
【0076】
(3)異なる処置及びグループ分けの方法:モデル化に成功した担癌マウス36匹を無作為に4つの群に分けた。これらのうち、2つの群は、各群3匹の動物について、低放射能及び高放射能(100μCi、500μCi)を有する177Lu-DOTA-イバンドロン酸を尾静脈内にそれぞれ注入した。ブランク対照群の動物には、生理食塩水を注入し、各群3匹の少量群と大量群(10μl、50μl)とに分けられた。
【0077】
(4)治療効果の検出及び結果:自由運動疼痛行動スコアリングを、0日目、7日目、14日目、21日目、28日目及び35日目に行い、担癌マウスにおける骨疼痛軽減の主な指標として使用した。対応する時点で、担癌マウスを透明で滑らかな平底プラスチック箱に入れた。担癌マウスは箱の中で自由に動くことができ、30分間の順化後に観察された。疼痛行動スコアリングは以下の基準に従って実施した。スコア0、運動は正常、モデル側と対照側の後肢の運動は同じであった。スコア1、モデル側の後肢にわずかな跛行があった。スコア2、モデル側後肢の跛行の程度がスコア1とスコア3との間であった。スコア3、モデル側の後肢に重度な跛行があった。スコア4、モデル側の後肢は全く動けず、地面に触れることができなかった。結果を以下の表7に示した。
【表7】
【0078】
表7から、0日目を基準線として、高活性177Lu-DOTA-イバンドロン酸(500μCi)の投与により治療した5週間後の生存担癌マウスの自由運動疼痛行動スコアの平均減少数は、全群の中で最も大きく、生存数は相対的に最多であり、異なる活性の177Lu-DOTA-イバンドロン酸の投与により治療した5週間後の生存担癌マウスの自由運動疼痛行動スコアの平均減少数は、対応する対照群の平均減少数よりも高いことが分かる。
【0079】
上記の結果は、担癌マウスを高活性177Lu-DOTA-イバンドロン酸(500μCi)の投与により治療した場合、骨痛が最も大きく軽減され、投与5週間以内の生存率が相対的に最も高く、異なる177Lu-DOTA-イバンドロン酸の投与の治療有効性は、対応する対照群の治療有効性よりも高く、悪性腫瘍骨転移の治療における177Lu-DOTA-イバンドロン酸の実現可能性及び有効性を示す。
【0080】
上記の実施例1~9及び実験例1~8に基づいて、68Ga/177Lu/225Ac/64Cu/221At-DOTA-イバンドロン酸は、反応時間が短く、標識収率が高い簡易な標識方法によって提供され、高い水溶性、室温での良好なインビトロ安定性、高い血漿タンパク質結合率を有し、マウスにおけるインビボ分布及びニュージーランドウサギにおける造影の両方において長期の高い骨取込性を示し、本出願で発明された調製物が優れた性能を有する骨造影剤及び転移性骨腫瘍の治療のための放射性薬物であることを示す。
【0081】
上述の例は、本開示の例の一部にすぎず、全てではない。本開示の実施例の詳細な説明は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、むしろ本開示の選択された実施例を表すことを意図している。本開示の実施例に基づいて、進歩的な努力をすることなく当業者によって得られる他の全ての実施例は、本開示によって保護されることが求められる範囲内に入る。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】