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特表2024-541273セリウム-ガドリニウム複合体酸化物
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  • 特表-セリウム-ガドリニウム複合体酸化物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】セリウム-ガドリニウム複合体酸化物
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/241 20200101AFI20241031BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20241031BHJP
   H01B 1/08 20060101ALN20241031BHJP
   H01B 1/06 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C01F17/241
H01M8/12 101
H01B1/08
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526477
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022080574
(87)【国際公開番号】W WO2023078944
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21315237.4
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 栄作
(72)【発明者】
【氏名】岡本 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】大竹 直孝
(72)【発明者】
【氏名】庄水 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ジュルド,カミーユ
【テーマコード(参考)】
4G076
5G301
5H126
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA18
4G076AB07
4G076BA15
4G076BA43
4G076BA46
4G076BC02
4G076BD02
4G076CA02
4G076CA12
4G076CA26
4G076CA27
4G076CA28
4G076CA33
4G076DA04
5G301CA02
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE02
5H126AA06
5H126BB06
5H126GG01
5H126GG12
5H126HH01
5H126HH02
5H126HH06
5H126HH10
5H126JJ01
5H126JJ02
5H126JJ03
5H126JJ04
5H126JJ05
5H126JJ08
5H126JJ09
5H126JJ10
(57)【要約】
本発明は、セリウム及びガドリニウムをベースとする複合体酸化物であって、22~45モル%のGdの割合を有し、この割合は、%で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に対応し、複合体酸化物は、向上した相対密度の向上を示す、複合体酸化物に関する。












































【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム及びガドリニウムをベースとする複合体酸化物であって、ガドリニウムの割合が22.0モル%より大きく、45.0モル%以下の範囲にあり、前記割合は、%で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に対応する、複合体酸化物。
【請求項2】
CeO及びGdからなる複合体酸化物であって、ガドリニウムの割合が22.0モル%より大きく、45.0モル%以下の範囲にあり、前記割合は、%で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に対応する、複合体酸化物。
【請求項3】
前記Gdの割合は、
- 30.0~45.0モル%、又は
- 35.0~45.0モル%、又は
- 37.0~43.0モル%、又は
- 38.0~42.0モル%、又は
- 39.0~41.0モル%、又は
- 39.5~40.5モル%、又は
- 28.0~32.0モル%、又は
- 29.0~31.0モル%、又は
- 29.5~30.5モル%
である、請求項1又は2に記載の複合体酸化物。
【請求項4】
前記複合体酸化物のX線回折ディフラクトグラム(CuKα1,λ=1.5406オングストローム)は、固溶体のパターンを示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項5】
前記複合体酸化物の前記X線ディフラクトグラム(CuKα1,λ=1.5406オングストローム)は、27.0~30.0°の2θでピークPを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項6】
ピークPは、前記ディフラクトグラム上で最も高い強度のものである、請求項5に記載の複合体酸化物。
【請求項7】
空気中において1000℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、少なくとも94.0%、好ましくは少なくとも95.0%の相対密度RD1000℃/5hを示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項8】
空気中において1000℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、最大で98.0%の相対密度RD1000℃/5hを示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項9】
空気中において1000℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、最大で96.0%の相対密度RD1000℃/5hを示す、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項10】
RD1000℃/5hは、94.0%~98.0%である、請求項7~9のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項11】
空気中において950℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、少なくとも80.0%、好ましくは少なくとも88.0%の相対密度RD950℃/5hを示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項12】
空気中において950℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、最大で94.0%の相対密度RD950℃/5hを示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項13】
空気中において950℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、最大で90.0%の相対密度RD950℃/5hを示す、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項14】
空気中において1100℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、少なくとも96.0%、好ましくは少なくとも97.0%の相対密度RD1100℃/5hを示す、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項15】
空気中において1100℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、最大で99.0%の相対密度RD1100℃/5hを示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項16】
空気中において1100℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、最大で98.0%の相対密度RD1100℃/5hを示す、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項17】
空気中において1200℃で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、少なくとも99.0%、好ましくは少なくとも99.5%の相対密度RD1200℃/5hを示す、請求項1~16のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項18】
前記相対密度は、式:%単位でのRD=密度/絶対密度×100によって与えられ、ここで、前記密度は、空気中において試験の温度(950℃、1000℃、1100℃又は1200℃)で5時間にわたって圧縮試料を焼成した後、前記複合体酸化物の前記圧縮試料上で測定され、及び前記絶対密度は、以下の表:
【表1】
に与えられる、請求項7~17のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項19】
前記圧縮試料は、
i)前記複合体酸化物の粉末が計量され、且つ成形金型に導入され、
ii)前記粉末が圧力下で圧縮され、
iii)ステップii)の終了時に得られる前記圧縮試料が前記成形金型から取り出され、
iv)次に、前記圧縮試料が空気中において目標温度で5時間にわたって焼成され、
v)焼成された前記圧縮試料の前記密度が測定され、
vi)次に、前記相対密度が計算される、方法
によって調製される、請求項7~18のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項20】
ステップv)は、
v1)焼成された前記圧縮試料が計量され(g単位での重量)、
v2)前記圧縮試料の体積が測定され(cm単位での体積)、前記圧縮試料が平行六面体の形状であり、及び前記平行六面体の体積が、
体積=長さ(cm)×幅(cm)×高さ(cm)
によって与えられる、方法
を用いて行われる、請求項19に記載の複合体酸化物。
【請求項21】
前記圧縮試料は、少なくとも95MPa、好ましくは少なくとも98MPaの圧力を適用することによって得られる、請求項7~20のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項22】
前記圧縮試料は、15.8kNの強度を適用することによって得られる、請求項7~21のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項23】
前記成形金型は、特に寸法23×7mmを有する平行六面体の形状を有する、請求項19~22のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項24】
200nm以下の直径を有する細孔の範囲において、最大値が、30~100nm、より特に30~70nmの、水銀ポロシメトリーによって決定される細孔直径Dpに対応するピークを示す、請求項1~23のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項25】
Dpにおける前記最大値を有する前記ピークは、
- 80nm未満、又は
- 70nm未満、又は
- 60nm未満、又は
- 50nm未満、又は
- 40nm未満、又は
- 30nm未満、又は
- 20nm未満
の、前記ピークの半値幅を示す、請求項24に記載の複合体酸化物。
【請求項26】
Hg気孔率によって得られるポログラムは、200nm以下の直径を有する細孔の範囲において単一のピークを示す、請求項24又は25に記載の複合体酸化物。
【請求項27】
0.40mL/g未満、より特に0.35mL/g未満、さらにより特に0.30mL/g未満の、Hgポロシメトリーによって決定される、200nm以下の直径を有する前記細孔の細孔体積(Vp<200nm)を示す、請求項1~26のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項28】
0.10mL/gより高い、Hgポロシメトリーによって決定される、200nm以下の直径を有する前記細孔の細孔体積(Vp<200nm)を示す、請求項1~27のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項29】
5~40m/gのBET比表面積を示す、請求項1~28のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項30】
前記BET比表面積は、10~35m/g、又は25~30m/g、又は25~30m/gである、請求項1~29のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項31】
レーザー回折によって得られる、粒子のサイズの体積における分布は、以下の特性:
- 3.0μm未満の直径D1を中心とする集団P1、及び/又は
- 8.0μmより大きい直径D2を中心とする集団P2
を有する少なくとも2つの集団P1及びP2を示し、「直径Dを中心とする集団」という表現は、分布曲線上において、最大値がDに位置するピークが観察されることを意味する、請求項1~30のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項32】
100μm未満の直径の領域において、前記分布は、以下の特性:
- 3.0μm未満の直径D1を中心とする集団P1、及び/又は
- 8.0μmより大きい直径D2を中心とする集団P2
を有する2つの集団P1及びP2を示す、請求項31に記載の複合体酸化物。
【請求項33】
前記分布は、集団P1の前記ピーク付近にショルダー部を含む、請求項31又は32に記載の複合体酸化物。
【請求項34】
D1は、0.1~3.0μmである、請求項31~33のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項35】
D1は、0.1~1.0μmである、請求項31~33のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項36】
D2は、8.0~100.0μmである、請求項31~35のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項37】
D2は、10.0~100.0μmである、請求項31~35のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項38】
D2は、10.0~50.0μmである、請求項31~35のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項39】
それぞれP1及びP2の前記2つのピークの高さH1及びH2の比率H2/H1は、
- 0.1より高いか、又は
- 0.3より高いか、又は
- 1.0より高いか、又は
- 1.5より高い、請求項31~38のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項40】
それぞれP1及びP2の前記2つのピークの前記高さH1及びH2の前記比率H2/H1は、
- 7.0より低いか、又は
- 5.5より低いか、又は
- 1.0より低いか、又は
- 0.8より低いか、又は
- 0.5より低い、請求項31~39のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項41】
レーザー回折によって得られる、粒子のサイズの体積における分布の中央値に対応するD50は、0.1~15.0μmである、請求項1~40のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項42】
レーザー回折によって得られる、粒子のサイズの体積における分布から決定される、粒子の16%がD16未満の直径を有する直径であるD16は、0.1~4.0μmである、請求項1~41のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項43】
レーザー回折によって得られる、粒子のサイズの体積における分布から決定される、粒子の84%がD84未満の直径を有する直径であるD84は、10.0~50.0μmである、請求項1~42のいずれか一項に記載の複合体酸化物。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか一項に記載の複合体酸化物と、焼結助剤とを含む組成物C。
【請求項45】
前記焼結助剤は、Li、Zn、Cu、Co、Fe、Mn、Ni及びそれらの組み合わせからなる群において選択される元素Eである、請求項44に記載の組成物C。
【請求項46】
前記焼結助剤は、酸化物の形態の元素Eである、請求項44又は45に記載の組成物C。
【請求項47】
前記組成物中の前記焼結助剤の割合は、0.1~5.0重量%である、請求項44~46のいずれか一項に記載の組成物C。
【請求項48】
請求項7~42のいずれか一項に記載の特性を示す、請求項44~47のいずれか一項に記載の組成物C。
【請求項49】
SOEC又はSOFCの調製のための、請求項1~43のいずれか一項に記載の複合体酸化物の使用。
【請求項50】
SOEC又はSOFCの調製のための、請求項44~48のいずれか一項に記載の組成物Cの使用。
【請求項51】
請求項1~43のいずれか一項に記載の複合体酸化物を調製するプロセスであって、
a)硝酸セリウム(CeIII)及び硝酸ガドリニウムを含む水溶液Sが炭酸水素アンモニウム(NHHCO)の塩基性水溶液に添加され、それにより沈殿物が形成されるステップ、
b)ステップa)の終了時に得られる前記沈殿物を含有する水性スラリーが50℃~95℃の温度で加熱されるステップ、
c)ステップb)の終了時に前記沈殿物が回収され、且つ水で洗浄されるステップ、
d)ステップc)から回収された固体が空気中において600℃~1000℃の温度で焼成されるステップ、
e)前記焼成された固体が粉砕されるステップ
を含むプロセス。
【請求項52】
モル比r=NHHCO/Ce+Gdは、3.00~3.50、より特に3.10~3.45である、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
少なくとも1つの層(L)によって分離されている1つの多孔質アノード(A)及び1つの多孔質カソード(C)を含むSOFCであって、前記構成要素(A)、(C)又は(L)の少なくとも1つは、請求項1~43のいずれか一項に記載の複合体酸化物から調製されるか若しくはそれを含むか、又は請求項44~48のいずれか一項に記載の組成物Cから調製されるか若しくはそれを含む、SOFC。
【請求項54】
- アノード(A)、
- 請求項1~44のいずれか一項に記載の複合体酸化物及び/又は前記複合体酸化物と異なる、セリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含むか又はそれから調製され、且つ任意選択的に少なくとも1つの他の無機材料をさらに含む層(L)、
- カソード(C)
を含む、請求項53に記載のSOFC。
【請求項55】
少なくとも1つの層(L)によって分離されている1つの多孔質アノード(A)及び1つの多孔質カソード(C)を含むSOECであって、前記構成要素(A)、(C)又は(L)の少なくとも1つは、請求項1~44のいずれか一項に記載の複合体酸化物から調製されるか若しくはそれを含むか、又は請求項44~48のいずれか一項に記載の組成物Cから調製されるか若しくはそれを含む、SOEC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウム-ガドリニウム複合体酸化物、その調製方法及びその使用に関する。本発明は、本発明の複合体酸化物を含有するSOFC又はSOECにも関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(又はSOFC)は、燃料の酸化から直接電気を生じる電気化学変換デバイスである。これは、燃料ガス(通常、水素ベース)の電気化学的酸化によって電気エネルギーを生成するための電気化学デバイスである。このデバイスは、セラミックベースであり、電解質として酸素イオン伝導性の金属酸化物由来のセラミックを使用する。当技術分野で知られているセラミック酸素イオン伝導体(最も典型的にはドープ酸化ジルコニウム又はドープ酸化セリウム)は、500℃(酸化セリウムベースの電解質の場合)又は600℃(酸化ジルコニウムベースのセラミックの場合)を超える温度でのみ技術的に適切なイオン伝導性を示すため、全てのSOFCは、高温で動作する必要がある。
【0003】
電解液は、セルの必須部分であり、SOFCでは主に以下の機能を有する:
- カソード(プラスの空気電極)及びアノード(マイナスの燃料電極)間において移動性酸素イオンの形態で電流を流す機能、
- セル内で内部短絡を引き起こす、電子の形態の電極間の電流の通過を阻止する機能、
- 燃料と空気との混合を防ぐ機能、すなわち相互接続気孔がないように、電解質は、理論密度の少なくとも94%である必要があり、その結果、電解質層は、気体不透過性であり、実質的に欠陥がない。
【0004】
米国特許出願公開第2016/233534号明細書に開示されるように、SOFC分野における最近の開発により、酸素イオン伝導性電解質として、ジルコニアベースの材料よりも本質的に高い酸素イオン伝導性を有する、式Ce0.9Gd0.11.95のセリウム-ガドリニウム複合体が使用されるようになった。
【0005】
欧州特許第1484282B1号明細書は、高い処理温度で高い相対密度が得られるセリウム-ガドリニウム複合体酸化物を開示している。本発明と同じ複合体酸化物の開示はない。
【0006】
米国特許第6,709,628号明細書は、理論的に可能な密度の少なくとも約98%に達するように、750℃~1200℃の温度での焼結ステップを含む、セリウムと、Lu、Yb、Tm、Er、Y、Ho、Dy、Gd、Eu、Sm及びNdからなる群から選択される第1のドーピング元素と、Cu、Co、Fe、Ni及びMnからなる群から選択される第2のドーピング元素とをベースとする焼結酸化物セラミックを製造するプロセスを開示している。第2のドーパントが存在しない場合、密度は、1450℃で90%のみである。Ce0.8Gd0.2Co2-a又はCe0.8Gd0.2CuzO2-aなどの特定の組成が開示されている。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0233535号明細書は、Ce0.9Gd0.11.95又はCe0.9Sm0.11.95などのドープセリア電解質を焼結助剤と組み合わせるステップを含む、金属担持固体酸化物燃料電池(SOFC)のための電解質を形成するプロセスを開示している。図9に見られるように、焼結助剤(例えば、Co又はCuO)を使用しないドープセリア電解質の相対密度は、1100℃での焼成後に94%より低く、これは、より低い温度でさらに低くなることを意味する。
【0008】
米国特許第7,947,212B2号明細書は、2価又は3価のカチオンを使用することによるセリアベースの電解質の高密度化を開示している。いずれのカチオンも用いない場合、相対密度は、94%より低い(図2)。
【0009】
特開2000-007435号公報は、SOFCの調製に使用され得るセリアをベースとする複合体酸化物を開示している。この複合体酸化物は、本発明のプロセスと異なるプロセスによって調製される。さらに、高密度が得られるが、1500℃より高い温度である。
【0010】
Duranらの論文“Sintering and microstructural development of ceria-gadolinia dispersed powders”,J.Mat.Sci.1994,29(7)は、請求項1よりも低いGdの割合を有し、1300℃よりも高い温度で相対密度を示す複合体酸化物セリア-ガドリニアを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電解質の高密度化プロセスには、高温での焼結が必要である。燃料ガスと酸化性ガスとの接触を避けるため、気密性が高く、堅牢な電解質を確実に調製するために高い相対密度に達することも有利である(Journal of The Electrochemical Society 2002,149(7),A797-A803を参照されたい)。
【0012】
当然のことながら、エネルギーを節約するために、最低温度で高い相対密度に達することがより有利である。SOFCの調製に使用される他の成分の酸化などの劣化又は焼結を避けるためにも、最低温度で焼結することが望ましい。
【0013】
最後に、電解液は、高温でガスと接触するため、遭遇する過酷な条件に耐えることも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の複合体酸化物は、任意の焼結剤を添加又は組み込むことなしでも、950℃などの高温で高い相対密度に達し得ることが見出された。これにより、複合体酸化物を含有する燃料電池の無機層の最終的な物理化学的特性に影響を及ぼし得るさらなる元素の導入を回避することが可能となる。
【0015】
したがって、本発明は、任意の焼結剤を添加することなしでも、950℃などの高温で高い相対密度において焼結され得る、SOFCの製造に適切なセリアベースの電解質を調製することを目的とする。
【0016】
本発明は、セリウム及びガドリニウムをベースとする複合体酸化物であって、ガドリニウムの割合が22.0モル%より大きく、45.0モル%以下の範囲にあり、この割合は、%で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に対応する、複合体酸化物に関する。
【0017】
本発明の複合体酸化物は、請求項1~43に開示される。本発明は、請求項44~48に開示される組成物Cにも関する。
【0018】
本発明は、請求項51~52に開示される複合体酸化物を調製するプロセス、請求項49又は50のいずれか一項に開示される複合体酸化物又は組成物Cの使用にも関する。本発明は、請求項53又は54に開示されるSOFCにも関する。本発明は、請求項55に開示されるSOECにも関する。
【0019】
これらの対象の詳細について後述する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例で開示される複合体酸化物の、レーザー回折で得られたサイズの分布である。
図2】実施例で開示される複合体酸化物の、レーザー回折で得られたサイズの分布である。
図3】実施例で開示される複合体酸化物の、Hgポロシメトリーによって得られたポログラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書の残りの部分では、特に断りのない限り、示された値の範囲に上限値及び/又は下限値が含まれることが指摘される。
【0022】
本発明の複合体酸化物は、酸化セリウム及び酸化ガドリニウムをベースとする。これは、ガドリニウムの割合が22.0モル%より大きく、45.0モル%以下の範囲にあるGdの割合によって特徴付けられ、この割合は、%で表されるモル比Gd/(Ce+Gd)に対応する。
【0023】
Ceの割合は、100%に対する補数に対応する。したがって、Ceの割合は、55.0モル%~78.0モル%である。
【0024】
Gdの割合は、より特に30.0モル%~45.0モル%であり得る。その場合、Ceの割合は、55.0モル%~70.0モル%である。
【0025】
Gdの割合は、より特に35.0モル%~45.0モル%であり得る。その場合、Ceの割合は、55.0モル%~65.0モル%である。
【0026】
Gdの割合は、より特に37.0モル%~43.0モル%であり得る。その場合、Ceの割合は、57.0モル%~63.0モル%である。
【0027】
Gdの割合は、より特に38.0モル%~42.0モル%であり得る。その場合、Ceの割合は、58.0モル%~62.0モル%である。
【0028】
Gdの割合は、より特に39.0モル%~41.0モル%であり得る。その場合、Ceの割合は、59.0モル%~61.0モル%である。
【0029】
Gdの割合は、より特に39.5モル%~40.5モル%であり得る。その場合、Ceの割合は、59.5モル%~60.5モル%である。
【0030】
Gdの割合は、より特に28.0モル%~32.0モル%でもあり得る。その場合、Ceの割合は、68.0モル%~72.0モル%である。
【0031】
Gdの割合は、より特に29.0モル%~31.0モル%でもあり得る。その場合、Ceの割合は、69.0モル%~71.0モル%である。
【0032】
Gdの割合は、より特に29.5モル%~30.5モル%でもあり得る。その場合、Ceの割合は、69.5モル%~70.5モル%である。
【0033】
本発明は、特に上記で示された割合に従ってCeO及びGdの2つの酸化物からなる複合体酸化物にも関する。
【0034】
一実施形態によれば、複合体酸化物のX線ディフラクトグラム(CuKα1,λ=1.5406オングストローム)は、固溶体のパターンを示す。別の実施形態によれば、複合体酸化物のX線ディフラクトグラム(CuKα1,λ=1.5406オングストローム)は、27.0~30.0°の2θでピークPを示す。このピークPは、ディフラクトグラム上で最も高い強度のものである。
【0035】
Gdの存在は、ICDDパターン03-065-3181を参照することで、X線ディフラクトグラム上でも検出可能である。Gdの存在を示すディフラクトグラム上のピークは、一般的に、ディフラクトグラム上ではほとんど見えない。
【0036】
本発明の複合体酸化物は、上記の元素(Ce、Gd)を上記の割合で含むが、それは、不純物をさらに含み得る。不純物は、複合体酸化物を調製するプロセスで使用される原料又は出発材料に由来し得る。不純物の合計割合は、複合体酸化物に対して0.20重量%未満、好ましくは0.10重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満である。本明細書に開示されることの全ては、上記の割合のCeO及びGd並びにその合計割合が0.20重量%未満、好ましくは0.10重量%未満、さらに好ましくは0.05重量%未満の不純物からなる複合体酸化物に適用される。
【0037】
本発明の複合体は、以下に示す特定の物理化学的特性を示す。
【0038】
1)相対密度RD
複合体酸化物は、空気中において1000℃で5時間にわたって焼成した後、少なくとも94.0%の相対密度RD1000℃/5hを示し得る。RD1000℃/5hは、好ましくは、少なくとも95.0%であり得る。RD1000℃/5hは、通常、最大で98.0%又は最大で96.0%である。RD1000℃/5hは、94.0%~98.0%、より特に94.0%~96.0%であり得る。
【0039】
複合体酸化物は、空気中において950℃で5時間にわたって焼成した後、少なくとも80.0%の相対密度RD950℃/5hを示し得る。RD950℃/5hは、好ましくは、少なくとも88.0%である。RD950℃/5hは、通常、最大で94.0%又は最大で90.0%である。RD950℃/5hは、80.0%~90.0%、より特に88.0%~90.0%であり得る。
【0040】
複合体酸化物は、空気中において1100℃で5時間にわたって焼成した後、少なくとも96.0%、好ましくは少なくとも97.0%の相対密度RD1100℃/5hを示し得る。RD1100℃/5hは、通常、最大で99.0%又は最大で98.0%である。RD1100℃/5hは、96.0%~99.0%、より特に96.0%~98.0%であり得る。
【0041】
複合体酸化物は、空気中において1200℃で5時間にわたって焼成した後、少なくとも99.0%の相対密度RD1200℃/5hを示し得る。RD1200℃/5hは、好ましくは、少なくとも99.5%である。
【0042】
複合体酸化物は、例えば、以下を示し得る:
- 1000℃で5時間にわたって焼成した後、少なくとも94.0%のRD1000℃/5h、及び
- 950℃で5時間にわたって焼成した後、少なくとも80.0%のRD950℃/5h
【0043】
複合体酸化物の相対密度は、焼結助剤などの任意の他の材料が添加されていない試料で決定される。
【0044】
相対密度RDは、セラミック分野の当業者によく知られている。これは、%で表される、複合体酸化物の絶対密度に対する複合体酸化物の密度に対応する(%単位でのRD=密度/絶対密度×100)。
【0045】
本発明に関連して、複合体酸化物の密度は、空気中において試験の温度(950℃、1000℃、1100℃又は1200℃)において5時間にわたって圧縮試料を焼成した後の複合体酸化物の圧縮試料について測定される。圧縮試料は、成形金型中に導入された粉末形態の複合体酸化物に圧力を適用することによって得られる。好都合には、金型は、平行六面体の形状を有し、なぜなら、この形状は、空気中での焼成後に体積を容易に測定することを可能にするためである。
【0046】
より具体的には、圧縮試料は、以下の方法によって調製され得る:
i)複合体酸化物の粉末が計量され、且つ成形金型に導入され、
ii)粉末が圧力下で圧縮され、
iii)ステップii)の終了時に得られる圧縮試料が成形金型から取り出され、
iv)次に、圧縮試料が空気中において目標温度で5時間にわたって焼成され、
v)焼成された圧縮試料の密度が測定され、
vi)次に、相対密度が計算される。
【0047】
密度は、当業者に既知の任意の実験技術に従って測定される。
【0048】
ステップv)について、特に以下の方法が使用され得る:
v1)焼成された圧縮試料が計量され(g単位での重量)、
v2)圧縮試料の体積が測定され(cm単位での体積)、圧縮試料が平行六面体の形状であり、及び平行六面体の体積が、
体積=長さ(cm)×幅(cm)×高さ(cm)
によって与えられる。平行六面体の長さ、幅、高さは、マイクロメーターで都合よく測定され得る。
【0049】
ステップii)では、圧縮試料を得るために加えられる圧力は、好ましくは、少なくとも95MPa又はさらに少なくとも98MPaである。
【0050】
実施例で示された試験条件を都合よく使用し得る。
【0051】
絶対密度(又は理論密度)は、最初にXRDパターンから複合体酸化物の構造の格子定数を計算し、以下の式に従って絶対密度を計算することによって求められる。
絶対密度(g/cm)=SA/(a×b×c×N)
SAは、単位格子内の全原子のモル質量を表し、a、b及びcは、それぞれ格子定数を表し、Nは、アボガドロ定数を表す。
【0052】
計算に使用される絶対密度を以下の表に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
2)気孔率及び細孔直径Dp(Hg気孔率)
本発明のプロセスにより、細孔径の特定の分布を有する複合体酸化物を得ることが可能となる。複合体酸化物は、200nm以下の直径を有する細孔の範囲において、最大値が30~100nmの細孔直径Dpに対応するピークを示し得る。Dpは、30~70nmでもあり得る。細孔直径は、水銀ポロシメトリーによって得られる。
【0055】
前記ピークは、通常、80nm未満、より特に70nm未満、さらにより特に60nm未満、さらにより特に50nm未満、さらにより特に40nm未満、さらにより特に30nm未満、さらにより特に20nm未満の、ピークの半値幅を示す。
【0056】
200nm以下の直径を有する細孔の細孔体積(Vp<200nm)は、一般に、0.40mL/g未満、より特に0.35mL/g未満、さらに特に0.30mL/g未満である。Vp<200nmは、一般に、少なくとも0.10mL/gである。
【0057】
通常、ポログラムは、200nm以下の直径を有する細孔の範囲で単一のピークを示す。
【0058】
3)BET比表面積
複合体酸化物は、通常、5~40m/gのBET比表面積を示す。BET比表面積は、10~35m/g、又は20~30m/g、又は25~30m/gであり得る。BET比表面積は、当業者に周知である。これは、周知のBrunauer-Emmett-Teller法を用いて窒素吸着によって測定される。BET法は、特に雑誌“The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)”に記載されている。標準ASTM D3663-03の推奨事項に準拠することができる。
【0059】
4)粒径(レーザー回折による)
複合体酸化物は、サイズの(体積における)分布において、レーザー回折分析装置によって決定されるサイズの特定の特性も示し得る。レーザー回折の技術は、当業者に周知である。これにより、レーザービームが分散粒子の試料を通過する際に散乱される光の強度の角度変化を測定することにより、粒径分布を決定することが可能となる。大きい粒子は、レーザービームに対して小さい角度で光を散乱し、小さい粒子は、より高い角度で光を散乱する。
【0060】
D50は、0.1~15.0μmであり得る。D50は、より特に0.2~15μm、さらに1.0~15.0μm又は5.0~15.0μmであり得る。
【0061】
D16は、0.1~4.0μmであり得る。D16は、より特に0.1~1.0μmであり得る。
【0062】
D84は、10.0~50.0μmであり得る。D84は、より特に15.0~50.0μmであり得る。
【0063】
パラメータD16、D84及びD50は、レーザー回折によって求められた体積分布から得られる。D16は、粒子の16%がD16未満の直径を有する、レーザー回折によって得られた分布から決定される直径である。D84は、粒子の84%がD84未満の直径を有する、レーザー回折によって得られた分布から決定される直径である。D50は、粒子の50%がD50未満の直径を有する、レーザー回折によって得られた分布から決定される直径である。D50は、分布の中央値とも表記される。
【0064】
分布は、少なくとも2つの集団を示し得る。より詳細には、分布は、以下の特徴を有する少なくとも2つの集団P1及びP2を示し得る:
- 3.0μm未満の直径D1を中心とする集団P1、及び/又は
- 8.0μmより大きい直径D2を中心とする集団P2。
【0065】
特に100μm未満の直径の領域では、分布は、以下の特徴を有する2つの集団P1及びP2を示し得る:
- 3.0μm未満の直径D1を中心とする集団P1、及び/又は
- 8.0μmより大きい直径D2を中心とする集団P2。
【0066】
「直径Dを中心とする集団」という表現は、分布曲線上において、最大値がDに位置するピークが観察されることを意味する。
【0067】
一実施形態によると、分布は、集団P1のピーク付近にショルダー部を含む。したがって、そのような実施形態では、分布は、3つのピークを示す:集団P1及びP2のピーク並びにショルダー部のピーク。
【0068】
D1は、特に0.1~3.0μm、さらに特に0.1~1.0μmであり得る。
【0069】
D2は、特に8.0~100.0μm、より特に10.0~100.0μm、さらに特に10.0~70.0μm、より特に10.0~50.0μmであり得る。
【0070】
2つの集団P1及びP2は、それぞれP1及びP2の2つのピークの高さH1及びH2の比率H2/H1が以下のようになるものでもあり得る:
- 0.1より高く、より特に0.3より高く、より特に1.0より高く、さらにより特に1.5より高いか、又は
- 7.0より低く、より特に5.5より低く、さらにより特に1.0より低く、さらにより特に0.8より低く、さらにより特に0.5より低い。
【0071】
比率H2/H1は、通常、0.1~7.0、より特に0.1~5.5、さらにより特に0.1~1.0である。H2/H1は、0.1~0.8、又は0.1~0.5、又は0.4~0.5でもあり得る。
【0072】
比率H2/H1は、プロセスの条件、特に溶液Sの濃度及びステップe)の条件に依存する。溶液Sの濃度が高いほど、比率が低くなる。粉砕ステップe)の時間及び/又は強度が高いほど、比率も低下する。
【0073】
複合体酸化物は、通常、粉末の形態である。
【0074】
複合体酸化物を調製するプロセスについて
本発明の複合体酸化物を調製するプロセスは、以下のステップを含む:
a)硝酸セリウム(CeIII)及び硝酸ガドリニウムを含む水溶液Sが炭酸水素アンモニウム(NHHCO)の塩基性水溶液に添加され、それにより沈殿物が形成されるステップ、
b)ステップa)の終了時に得られる沈殿物を含有する水性スラリーが50℃~95℃の温度で加熱されるステップ、
c)ステップb)の終了時に得られる固体が回収され、且つ水で洗浄されるステップ、
d)ステップc)から回収された固体が空気中において600℃~1000℃の温度で焼成されるステップ、
e)焼成された固体が粉砕されるステップ。
【0075】
ステップa)
ステップa)では、2つの水溶液:NHHCOの塩基性水溶液並びに目的とするGdの割合で硝酸セリウム(CeIII)及び硝酸ガドリニウムを含む水溶液Sを使用する。水溶液S中の硝酸セリウムの濃度は、通常、0.15~0.50モル/Lである。水溶液Sは、CeIII、GdIII、NO3-、Hを含む。実施例1又は実施例2に開示される溶液S中の硝酸セリウムの濃度を都合よく使用し得る。
【0076】
溶液Sは、硝酸セリウム及び硝酸ガドリニウムの2つの水溶液を混合し、得られた共硝酸塩溶液を水で希釈することによって得られる。希釈のために使用される水の体積は、共硝酸塩溶液の体積の5倍~10倍であり得る。水の体積/共硝酸塩溶液の体積の比は、実施例1又は2に開示されるとおりであり得る。
【0077】
共硝酸塩溶液を調製するために使用される2つの溶液(硝酸Ce及び硝酸Gd)のそれぞれは、残留酸度を示し得る。残留酸度は、メチルオレンジを指示薬として用いる酸/塩基滴定によって都合よく測定され得る。硝酸セリウム水溶液は、好ましくは、0.1モル/Lより低く、さらに0.07モル/Lより低い残留酸度を示す。実施例で使用される硝酸セリウム水溶液を都合よく使用し得る。硝酸ガドリニウム水溶液は、好ましくは、1.0モル/Lより低い残留酸度を示す。実施例で使用される硝酸セリウム水溶液を都合よく使用し得る。
【0078】
NHHCOの塩基性水溶液は、固体のNHHCOを水に溶解することによって調製される。NHHCOの塩基性水溶液の濃度は、好ましくは、30~100g/Lである。実施例1又は実施例2に開示される濃度を都合よく使用し得る。
【0079】
硝酸セリウム(CeIII)及び硝酸ガドリニウムを含む水溶液Sが炭酸水素アンモニウム(NHHCO)の塩基性水溶液に添加され、それにより沈殿物が形成される(これは、通常、「逆沈殿」として開示される)。塩基性水溶液に添加する水溶液Sの添加流速は、通常、50~200L/hである。典型的には、添加は、20~120分間、より特に20~60分間行われる。実施例の一方で使用される流則及び/又は時間を都合よく使用し得る。
【0080】
ステップa)を行う温度は、10℃~30℃が好都合である。
【0081】
ステップa)で使用される炭酸水素塩の量は、モル比r=NHHCO/(Ce+Gd)が3.00~3.50、より特に3.10~3.45となるようなものである。モル比rは、都合よく実施例1又は2で使用されるモル比のいずれかであり得る。
【0082】
炭酸水素塩は、ステップa)でのみ使用される。
【0083】
ステップb)
ステップb)では、ステップa)の終了時に得られる沈殿物を含有する水性スラリーが50℃~95℃、より特に70℃~95℃の温度で加熱される。実施例1又は2に開示される温度(80℃)を都合よく使用し得る。処理時間は、1時間~4時間であり得る。実施例1又は2に開示される時間(3時間)を都合よく使用し得る。
【0084】
ステップb)中に加熱される水性スラリーは、2つの実施形態に従って得ることができる。第1の(好ましい)実施形態によれば、水性スラリーは、ステップa)の終了時に直接得られる。これは、ステップa)及びステップb)が同じ容器内で都合よく行われ得ることを意味する。
【0085】
第2の実施形態によれば、ステップb)の水性スラリーは、ステップa)の終了時に得られる水性スラリーを水で希釈することによって得られる。
【0086】
ステップc)
ステップc)では、ステップb)の終了時に得られる固体が回収され、且つ水、例えば脱イオン水で洗浄される。固体は、水性媒体から固体を分離するために利用可能な任意の技術によって回収され得る。いずれの種類の濾過も使用され得る。通常、濾液の導電率が5mS/cm未満になるまで洗浄を行う。
【0087】
ステップd)
ステップd)では、ステップc)から回収されたケーキが空気中において600℃~1000℃の温度で焼成される。焼成温度は、好ましくは、750℃~850℃である。ステップd)の時間は、1時間~25時間、より特に1時間~20時間であり得る。特定の条件下では、焼成温度は、795℃であり、焼成時間は、8時間である。実施例1のステップd)の条件を適用し得る。焼成ステップは、セリウム及びガドリニウムの酸化物への転化を得ること及び組成物の結晶化度を高めることを目的とする。
【0088】
ステップe)
ステップd)の終了時に得られる焼成固体が粉砕される。ハンマーミルを使用し得る。焼成固体を乳鉢で粉砕し得る。
【0089】
本発明による複合体酸化物の調製は、(特に請求項1に示す割合の範囲で)実施例1及び2に示した実験内容に従うことができる。
【0090】
複合体酸化物の使用について
本発明の複合体酸化物をSOFCの調製に使用することができる。SOFCでは、燃料と酸素源との反応によって電気が発生する。酸素源(典型的には空気)は、カソードと接触し、カソードでの電子による還元時に酸素イオンを形成する。SOFCが炭化水素燃料及び電子によって動作するとき、酸素イオンは、アノードで燃料と遭遇し、水及び二酸化炭素を形成する。
【0091】
SOFCは、少なくとも1つの電解質層(L)によって分離された2つの多孔質電極(A)及び(C)を含む。これらの3つの構成要素、すなわちアノード、カソード又は少なくとも1つの層のいずれか1つ又は複数の調製において、本発明の複合体酸化物を酸素イオン伝導性材料として使用することができる。ここで、SOFCのこれらの3つの構成要素のそれぞれについて詳細を説明する。したがって、本発明は、少なくとも1つの層(L)によって分離されている1つの多孔質アノード(A)及び1つの多孔質カソード(C)を含むSOFCであって、構成要素(A)、(C)又は(L)の少なくとも1つは、本発明の複合体酸化物から調製されるか又はそれを含む、SOFCにも関する。
【0092】
層(L)の機能は、燃料と酸素源との直接接触を避けるためのバリアとして機能することである。バリアのもう1つの機能は、層を通して酸素イオンを拡散させることである。
【0093】
本発明に関連して、少なくとも1つの成分(A)、(C)又は(L)は、本発明の複合体酸化物から調製されるか又はそれを含む。
【0094】
アノード(A)
本発明は、本発明の複合体酸化物と、任意選択的に少なくとも1つの他の無機材料とを含むか又はそれらから調製されるアノードにも関する。燃料の酸化は、アノードで生じる。アノードに使用される複合体酸化物以外の無機材料は、Y、Sc、Ce及びこれらの3つの元素の2つ以上の組み合わせの群において選択される少なくとも1つの元素がドープされたジルコニア;セリウムとガドリニウムとの混合酸化物;ニッケルなどの金属;チタン酸ランタン;並びにランタンクロマイトからなる群において選択され得る。
【0095】
チタン酸ランタンの例は、例えば、式La0.2Sr0.25Ca0.45TiOである。
【0096】
カソード(C)
本発明は、本発明の複合体酸化物と、任意選択的に少なくとも1つの他の無機材料とを含むか又はそれらから調製されるカソードにも関する。酸素の還元は、カソードで生じる。カソードに使用される複合体酸化物以外の無機材料は、Y、Sc、Ce及びこれらの3つの元素の2つ以上の組み合わせの群において選択される少なくとも1つの元素がドープされたジルコニア;セリウムとガドリニウムとの混合酸化物;セリウムとサマリウムとの混合酸化物;La、Sr、Co及びFe含有ペロブスカイト;並びにLa、Sr、Mn含有ペロブスカイトからなる群において選択され得る。
【0097】
La、Sr、Co及びFe含有ペロブスカイトは、一般に、一般式LaSr1-xCoFe1-y3{プラス又はマイナス}δで表され得、x及びyは、それぞれ0.5~0.9及び0.1~0.9の数である。例えば、х=0.8、y=0.8又はx=0.6及びу=0.2である。このようなペロブスカイトの例は、“Synthesis and Study of LSCF Perovskites for IT SOFC Cathode Application”,ECS Transactions,2009,25(2)(DOI:10.1149/1.3205796)に開示されている。
【0098】
La、Sr、Mn含有ペロブスカイトは、一般式La1-xSrMnOで表され、ここで、xは、0~1.0の数である。
【0099】
電解質層(L)
本発明は、本発明の複合体酸化物と、任意選択的に少なくとも1つの他の無機材料とを含むか又はそれらから調製される層にも関する。複合体酸化物以外の無機材料は、Y、Sc、Ce及びこれらの3つの元素の2つ以上の組み合わせの群において選択される少なくとも1つの元素でドープされたジルコニア又はセリウムとガドリニウムとの混合酸化物からなる群において選択され得る。
【0100】
SOFCの調製には、上記でその全ての詳細を開示した本発明の複合体酸化物を使用し得る。調製は、焼結助剤(下記を参照されたい)の添加及び/又は粉砕ステップなどの機械処理によって変性された本発明の複合体酸化物も含み得る。
【0101】
SOFCの例を以下に示す。SOFCの実施例Ex1は、以下の構成に基づく:
- アノード(A)、
- 本発明の複合体酸化物を含むか又はそれから調製され、且つ任意選択的に少なくとも1つの他の無機材料をさらに含む層(L)、
- カソード(C)。
【0102】
Ex1のSOFCは、(L)と(C)との間に追加の層(L1)も含み得、その機能は、短絡を防止することである。この追加の層(L1)は、典型的には、Y、Sc、Ceの群において選択される少なくとも1つの元素及びこれらの3つの元素の2つ以上の組み合わせがドープされたジルコニアを含む。Ex1のSOFCが追加層(L1)を含む場合、(L1)と(C)との間において、本発明の複合体酸化物及び/又は本発明の複合体酸化物と異なる、セリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含むか又はそれから調製される追加の層(L2)を含み得る。この追加の層(L2)は、ストロンチウムなどのカソード(C)から追加の層(L1)への元素の拡散を防止するために役立つ。
【0103】
Ex1では、アノード(A)及び/又はカソード(C)は、本発明の複合体酸化物及び/又は本発明の複合体酸化物と異なる、セリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含み得る。
【0104】
SOFCの別の実施例Ex2は、以下の構成に基づく:
- アノード(A)、
- 層(L)、
- 本発明の複合体酸化物を含むか又はそれから調製され、且つ任意選択的に少なくとも1つの他の無機材料をさらに含む追加の層(L2)、
- カソード(C)。
【0105】
層(L)は、典型的には、Y、Sc、Ceの群において選択される少なくとも1つの元素及びこれらの3つの元素の2つ以上の組み合わせでドープされたジルコニアを含む。
【0106】
Ex2において、アノード(A)及び/又はカソード(C)は、本発明の複合体及び/又は本発明の複合体酸化物と異なる、セリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含み得るか又はそれから調製され得る。
【0107】
本発明の複合体酸化物は、そこに開示されているセリウム-ガドリニウムを本発明の複合体酸化物で置き換えることにより、以下の文献の1つに開示されているセルの調製に使用され得る:国際公開第02/35628号パンフレット;国際公開第03/075382号パンフレット;国際公開第2004/089848号パンフレット;国際公開第2005/078843号パンフレット;国際公開第2006/079800号パンフレット;国際公開第2006/106334号パンフレット;国際公開第2007/085863号パンフレット;国際公開第2007/110587号パンフレット;国際公開第2008/001119号パンフレット;国際公開第2008/003976号パンフレット;国際公開第2008/015461号パンフレット;国際公開第2008/053213号パンフレット;国際公開第2008/104760号パンフレット;国際公開第2008/132493;US2013/0052562号パンフレット;国際公開第2021/151692号パンフレット;国際公開第2016/124929号パンフレット;国際公開第2015/033104号パンフレット;国際公開第2017/153751号パンフレット;国際公開第2021/096828;米国特許第8,435,694B2号明細書;米国特許第10,749,188B2号明細書;米国特許出願公開第2008/254336号明細書;独国特許第102013007637号明細書;米国特許出願公開第2013/0095408号明細書。本発明の複合体酸化物は、Clement Nicolletの博士論文(“Nouvelles electrodes a oxygene pour SOFC a base de nickelates LnNiO4+δ(Ln=La,Pr)preparees par infiltration”)に開示されるセルの調製にも使用され得る。
【0108】
SOFC及びSOFCの層は、既知の方法で調製される:
- 支持層(電解質又はアノード)のための100μmからmmスケールまでの厚さ(典型的には<800μm及び<300μm)に関するキャスティング法(例えば、テープ又はスリップキャスティング)、
- 薄層(典型的には<50μm)のための印刷法(例えば、スクリーン、インクジェット印刷)、スプレー、ラミネーション、スピンコーティング、
- 印刷法に加え、超薄層L1及びL2(典型的には<5μm)のためのスパッタリング法(例えば、マグネトロン又はガスフロー)、物理蒸着法、原子層蒸着法、パルスレーザー蒸着法、
- 管状セルについて、ディップコーティング又は射出成形が使用され得る。
【0109】
当業者であれば、上記論文に関連する調製法の教示を見出し得る。
【0110】
上記で開示された文献の1つに開示されている方法も使用され得る。
【0111】
本発明の複合体酸化物は、固体酸化物電解槽セル(SOEC)の調製にも使用され得る。SOECは、高温電解(典型的には700~800℃)によるグリーン水素の製造を可能にする。SOECの例は、Renewable and Sustainable Energy Reviews 149巻、2021年10月、111322(“Alternative and innovative solid oxide electrolysis cell materials:A short review”)又はhttps://doi.org/10.1002/fuce.201900245(“Long-Term Behavior of a Solid Oxide Electrolyzer(SOEC)Stack”)によって参照されるPysikらの論文に記載されている。
【0112】
SOECの構成は、SOFCの構成とよく類似し、したがって、SOECは、
- アノード(A)、
- 本発明の複合体酸化物及び/又は本発明の複合体酸化物と異なる、セリウムとガドリニウムとの混合酸化物を含むか又はそれから調製され、且つ任意選択的に少なくとも1つの他の無機材料をさらに含む層(L)、
- カソード(C
を含み得る。
【0113】
しかしながら、アノード(A)及びカソード(C)に関して上記で提供される精度は、SOECがSOFCに比べて逆モードで機能するため、それぞれカソード(C)及びアノード(A)の精度から取られなければならない。明瞭にするために、SOFCについて上記で開示されたことは、以下の精度:アノード(A)⇒カソード(C)及びカソード(C)⇒アノード(A)でSOECについても有効である。例えば、SOECの一例は、以下の構成による:
- カソード(C)、
- 層(L)、
- 本発明の複合体酸化物を含み、且つ任意選択的に少なくとも1つの他の無機材料をさらに含む追加層(L1)、
- アノード(A)。
【0114】
本発明の複合体酸化物は、そこに開示されているセリウム-ガドリニウムを本発明の複合体酸化物で置き換えることにより、以下の文献の1つに開示されているセルの調製に使用され得る:韓国特許第102305294B1号明細書;中国特許第113445061号明細書;欧州特許第3793012号明細書。
【0115】
本発明の複合体酸化物を含む組成物C
本発明に関連して、複合体酸化物は、950℃程度の「低い」温度で既に高い相対密度を示す。しかしながら、その焼結性をさらに改善する目的で焼結助剤を複合体酸化物に添加し得る。したがって、本発明は、本発明の複合体酸化物を含み、且つ少なくとも1つの焼結助剤をさらに含む組成物Cにも関する。
【0116】
焼結助剤は、例えば、Zn、遷移金属元素、希土類元素又はアルカリ金属の群において選択される元素Eであり得る。Eは、特に遷移元素の群から選択される。Eは、例えば、Li、Zn、Cu、Co、Fe、Mn、Ni及びそれらの組み合わせからなる群において選択され得る。元素Eは、酢酸塩又は硝酸塩などの塩の形態で添加され得る。元素Eは、酸化物の形態で組成物中に存在し得る。
【0117】
組成物C中の焼結助剤の割合は、0.1~5.0重量%であり得る。その割合は、0.5重量%より高くてもよい。それは、3.0重量%より低くてもよい。
【0118】
組成物Cは、以下のステップを含む方法によって調製され得る:(i)本発明の複合体酸化物と、元素Eの塩又は元素Eの酸化物の前駆体とを接触させ、(ii)溶液を除去し、(iii)固体を乾燥させ、(iv)任意選択的に空気中で焼成するステップ。ステップ(i)は、水又はアルコールなどの液体媒体中で行われ得る。元素(E)の塩は、例えば、硝酸塩又は酢酸塩である。元素(E)の酸化物の前駆体は、例えば、アセチルアセトネートであり得る。
【0119】
組成物Cは、粉末状であり得る。組成物Cについて、1)~4)に開示された全ての特性が依然として適用可能である。
【0120】
組成物Cは、SOFC又はSOECの調製に使用され得る。本発明の複合体酸化物を、本発明の複合体酸化物と焼結助剤とを含む組成物Cに置き換えた場合でも、SOFC又はSOECについて上記に開示した内容は、全て有効である。
【実施例
【0121】
当業者は、以下に示す実施例を用いて且つそれを考慮して、上記及び特許請求の範囲に開示された本発明を実施するであろう。
【0122】
以下の実施例では、硝酸セリウム(III)及び硝酸ガドリニウムを使用するが、いずれも対応する酸化物を硝酸で直接攻撃することによって得られる。共硝酸溶液の調製に使用される硝酸セリウム水溶液は、0.05モル/Lの残留酸度を示す。共硝酸溶液の調製に使用される硝酸ガドリニウム水溶液は、0.60モル/Lの残留酸度を示す。残留酸度は、酸塩基滴定によって測定された。
【0123】
使用した塩基性溶液は、NHHCO(日産化学)を水に溶解することにより、各実施例の前に調製された。以下の実施例1~3では、撹拌機を備えた200リットルの反応器を使用した。
【0124】
D16、D50及びD84の測定
粒径分布は、レーザー回折分析装置(堀場製作所、LA-920)を用いて求めた。粒子は0.2重量%のヘキサメタホスフェートを含む水に分散している。1.20の屈折率を用いた。
【0125】
BET比表面積
BET比表面積は、吸着種を210℃で30分間脱着した後、MOUNTECH Co,Ltd.,Macsorb HMモデル-1220を用いて測定した。
【0126】
Hg気孔率
気孔率は、オートポアIV9500自動水銀ポロシメーターを用いて、施工業者のガイドラインに従い、210℃で30分間の前処理後に得た。試料サイズは、約0.2gであり、水銀接触角は、130°であり、水銀表面張力は、485dyn/cmであった。
【0127】
X線回折
銅線源(CuKα1,λ=1.5406オングストローム)を備えたX線回折装置Ultima IVを使用した。
【0128】
密度及び相対密度の測定
本発明に関連して、以下の方法が使用され、また使用され得る。
【0129】
【表2】
【0130】
具体的な使用条件は、以下のとおりであった:
- ステップi)において、直方体の寸法:23×7mm、
- 使用する粉末の量:約1g、
- ステップii)では、粉末を一軸加圧下で圧縮し、圧縮試料を得る。
【0131】
プレス時に加えられる強度は、15.8kNである。これは、98MPaの圧力に対応する。
【0132】
実施例1:40%Gd-硝酸セリウム0.18モル/L及び硝酸ガドリニウム0.12モル/L(合計濃度0.3モル/L)を含む複合体酸化物の調製
ステップa):硝酸セリウム(III)の水溶液(約3モル/L)及び硝酸ガドリニウムの水溶液(約2モル/L)を、CeO:GdO1.5=60:40(モル比)に対応する比率で混合し、共硝酸塩溶液を調製した。この共硝酸塩溶液(2.6kgの複合体酸化物に相当)を脱イオン水で希釈し、出発溶液S(硝酸セリウム0.18モル/L及び硝酸ガドリニウム0.12モル/L、合計濃度0.3モル/L)を調製した。
【0133】
出発溶液Sを、25℃で撹拌下、炭酸水素アンモニウム水溶液(48.8g/L)80.0Lに30分間かけて一定流速で添加し、セリウム及びガドリニウムを含む沈殿物を得た。スラリーのpHは5.9である。
【0134】
ステップb):ステップa)の終了時に得られたスラリーを、液面より上にエアフラッシングを備えた反応器中80℃で3時間熱処理した。スラリーを室温まで冷却する。スラリーのpHは7.3である。
【0135】
ステップc):ステップb)の終了時に得られたケーキを濾過し、濾液の導電率が5mS/cm未満になるまで脱イオン水を用いて数回洗浄した。
【0136】
ステップd):ステップc)の終了時に得られた固体を、空気下、炉内で1.6℃/分の速度で800℃に達するまで加熱し、800℃で8時間保持した。その後、オーブン中で自然冷却した。
【0137】
ステップe):焼成した固体をハンマーミルで粉砕し、D84<50μmの粉末を得ることにより、粉末状の複合体酸化物Ce0.6Gd0.42-δを得た。
【0138】
実施例2:40%Gd-硝酸セリウム0.24モル/L及び硝酸ガドリニウム0.16モル/L(合計濃度0.4モル/L)を含む複合体酸化物の調製
ステップa):硝酸セリウム(III)の水溶液(約3モル/L)及び硝酸ガドリニウムの水溶液(約2モル/L)を、CeO:GdO1.5=60:40(モル比)に対応する比率で混合し、混合溶液を調製した。この混合溶液(5.2kgの複合体酸化物に相当)を脱イオン水で希釈し、出発溶液S(硝酸セリウム0.24モル/L及び硝酸ガドリニウム0.16モル/L、合計濃度0.4モル/L)を調製した。
【0139】
出発溶液Sを、25℃で撹拌下、炭酸水素アンモニウム水溶液(72.9g/L)107.0Lに45分間かけて一定流速で添加し、セリウム及びガドリニウムを含む沈殿物スラリーを得た。到達pHは6.0である。
【0140】
ステップb):ステップa)の終了時に得られたスラリーを、液面より上にエアフラッシングを備えた反応器中80℃で3時間熱処理した。スラリーを室温まで冷却する。到達pHは7.4である。
【0141】
ステップc):ステップb)の終了時に得られたスラリーを濾過し、濾液の導電率が5mS/cm未満になるまで脱イオン水を用いて数回洗浄した。
【0142】
ステップd):ステップc)の終了時に得られたケーキを、空気下、炉内で1.6℃/分の速度で800℃に達するまで加熱し、800℃で8時間保持した。その後、オーブン中で自然冷却した。
【0143】
ステップe):焼成した固体をハンマーミルで粉砕し、D84<50μmの粉末を得ることにより、粉末状のCe0.6Gd0.42-δを得た。
【0144】
実施例3:30%Gdを含む複合体酸化物の調製
モル比rを3.32として、実施例1と同じ方法で30%Gdの複合体酸化物を調製した。共硝酸塩溶液:CeO:GdO1.5=70:30(モル比)。
【0145】
比較例1:欧州特許第1484282B1号明細書の実施例1に開示された製法の適応による40%Gd-硝酸セリウム0.18モル/L及び硝酸ガドリニウム0.12モル/L(合計濃度0.3モル/L)を含む複合体酸化物の調製
欧州特許第1484282B1号明細書の実施例1に開示されている製法は、Gdを10%のみ含む複合体酸化物に関するものである。したがって、この製法に従ったが、複合体酸化物の組成に関して変更した(10%のGdの代わりに40%のGd)。
【0146】
硝酸セリウム水溶液(3モル/L)及び硝酸ガドリニウム水溶液(2モル/L)をCeO:GdO1.5=60:40(モル比)の比率で混合し、混合溶液を調製した。この溶液(20gの複合体酸化物に相当)を脱イオン水で希釈し、0.3モル/Lの出発溶液を調製した。
【0147】
調製した75g/Lの炭酸水素アンモニウム水溶液0.4Lを、25℃で撹拌下、出発溶液に添加し、沈殿物を調製した。このスラリーに、炭酸水素アンモニウムの100g/L水溶液20mLをさらに加えた。スラリーのpHは6.5である。このスラリーを、還流冷却器を備えたフラスコ中、大気圧下、100℃で3時間加熱処理した。その後、脱イオン水を用いて濾過及び洗浄を10回繰り返し、濾液の導電率は0.27mS/cmであった。得られた沈殿物を空気中700℃で5時間焼成した後、乳鉢で粉砕し、20gの粉末状のCe0.6Gd0.42-δを得た。
【0148】
得られた粉末の組成は、ICP発光分光光度計(日立ハイテク株式会社、誘導結合プラズマ発光分光分析装置、PS-3500DD)を用いて確認した。
【0149】
実施例1及び2の複合体酸化物は、比較例の複合体酸化物と異なる特性を示す。
【0150】
特に、実施例1及び2の複合体酸化物の相対密度は、950℃及び1000℃でより高いことがわかる。表Iに見られるように、他の特性も異なっている。
【0151】
【表3】
図1
図2
図3
【国際調査報告】