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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】植物タンパク質多糖フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241031BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20241031BHJP
   C08L 89/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CFG
C08L3/02
C08L89/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526691
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2022080878
(87)【国際公開番号】W WO2023079115
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】21386068.7
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523085142
【氏名又は名称】ザンプラ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ユゴー・トマ・バルー
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギオス・ゴツィス
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ロドリゲス・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ポリー・ヘレナ・ルース・キーン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・アレキサンダー・エイケン
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル・パトリック・サマーヴィル-ロバーツ
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA08
4F071AA70
4F071AC05
4F071AC09
4F071AD01
4F071AE04
4F071AE09
4F071AE17
4F071AF16
4F071AF21
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH04
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J002AB013
4J002AB04W
4J002AD03X
4J002AE054
4J002EC056
4J002EF038
4J002FD013
4J002FD026
4J002FD097
4J002GG02
(57)【要約】
本発明は、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して50wt%以上の植物タンパク質及び多糖の組合せを含むフィルムであって、多糖の植物タンパク質に対する質量比が、0.1:1~2:1の範囲であり、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、フィルムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して50wt%以上の植物タンパク質及び多糖の組合せを含むフィルムであって、多糖の植物タンパク質に対する質量比が、0.1:1~2:1の範囲であり、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、フィルム。
【請求項2】
多糖を含む第1の層と、
植物タンパク質を含む第2の層であって、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、第2の層と
を含み、
第2の層が、第1の層の第1の表面と接触している、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
第1の層が植物タンパク質を更に含み、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
第2の層が多糖を更に含む、請求項2又は請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
多糖の植物タンパク質に対する質量比が、0.15:1~1.5:1、より好ましくは0.2:1~1.3:1、更により好ましくは0.5:1~1.2:1の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
フィルムが、20μm~120μmの間の厚さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
植物タンパク質が、ダイズタンパク質、エンドウ豆タンパク質、コメタンパク質、ジャガイモタンパク質、ナタネタンパク質、及び/又はヒマワリタンパク質から選択され、好ましくは、エンドウ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、ナタネタンパク質、ヒマワリタンパク質、及び/又はコメタンパク質から選択され、好ましくは、植物タンパク質がエンドウ豆タンパク質である、請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、2.0~40wt%の植物タンパク質を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
多糖が、プルラン、コムギデンプン、ジャガイモデンプン、エンドウ豆デンプン、ワキシージャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、ワキシートウモロコシデンプン、高アミローストウモロコシデンプン、タピオカデンプン、キャッサバデンプン、ライムギデンプン、モロコシデンプン、ヒヨコマメデンプン、ダイズデンプン、加工デンプン、又はそれらの混合物から選択され、好ましくは、デンプンがジャガイモデンプンである、請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、30~70wt%の多糖を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、8~20wt%の水を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
可塑剤を更に含み、好ましくは、可塑剤が、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、クエン酸トリエチル、脂肪酸、グルコース、マンノース、フルクトース、スクロース、尿素、レシチン、ワックス、アミノ酸及び有機酸、又はそれらの混合物から選択され、より好ましくは、可塑剤がグリセロールである、請求項1から11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、5~30wt%の可塑剤を含む、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
顔料又は染料を更に含み、好ましくは、顔料又は染料が、食品着色剤、好ましくは、植物源由来の食品着色剤、より好ましくは、カロテイノイド、クロロフィリン、アントシアニン及びベタニンから選択される食品着色剤から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
構造強化剤を更に含み、好ましくは、構造強化剤が、微結晶セルロース、柑橘類果実のパルプから抽出されたセルロース繊維を含むミクロフィブリル化セルロース、発酵からの微細繊維状セルロースを含むセルロース系材料、デンプン微結晶、クレイ、又はそれらの混合物から選択され、好ましくは、柑橘類パルプからのミクロフィブリル化セルロースである、請求項1から14のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項16】
55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、0.5~5wt%の前記構造強化剤を含む、請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
疎水性薬剤を更に含み、好ましくは、疎水性薬剤が植物ベースの油又は植物ベースの脂肪酸である、請求項1から16のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項18】
55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、最大5.0wt%の疎水性薬剤を含む、請求項17に記載のフィルム。
【請求項19】
前処理に使用される有機酸が、酢酸、α-ヒドロキシ酸、及びβ-ヒドロキシ酸から選択される、請求項1から18のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項20】
第2の層中の植物タンパク質が、少なくとも40%の分子間β-シート、少なくとも50%の分子間β-シート、少なくとも60%の分子間β-シート、少なくとも70%の分子間β-シート、少なくとも80%の分子間β-シート、又は少なくとも90%の分子間β-シートを有するタンパク質2次構造を有する、請求項2から19のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項21】
請求項1に記載のフィルムを調製するための方法であって、
(i)任意選択により超音波処理を用いて、水中で多糖を混合して、多糖混合物を形成する工程と、
(ii)任意選択により超音波処理を用いて、植物タンパク質を水及び有機酸に溶解させて、タンパク質溶液を形成する工程と、
(iii)多糖混合物及びタンパク質溶液を混合して、フィルム形成組成物を形成する工程と、
(iv)フィルム形成組成物をフィルムに形成する工程と
を含む、方法。
【請求項22】
請求項2に記載のフィルムを調製するための方法であって、
(i)任意選択により超音波処理を用いて、水中で多糖を混合して、多糖混合物を形成する工程と、
(ii)多糖混合物をある表面で第1の層に形成する工程と、
(iii)任意選択により超音波処理を用いて、植物タンパク質を水及び有機酸に溶解させて、タンパク質溶液を形成する工程と、
(iv)タンパク質溶液を第1の層の第1の表面で第2の層に形成する工程と
を含む、方法。
【請求項23】
請求項1から20のいずれか一項に記載のフィルムでコーティング又は封入された製品、好ましくは食品。
【請求項24】
食器洗い機用タブレットである、請求項23に記載の製品。
【請求項25】
製品、好ましくはホームケア又はパーソナルケア製品をコーティング又は封入する方法であって、
(i)製品を、請求項1から20のいずれか一項に記載のフィルムに包装する工程と、
(ii)製品の周りにフィルムを封止する工程と
を含む、方法。
【請求項26】
工程(ii)の継続時間が、2秒未満、より好ましくは1秒未満、より好ましくは0.5秒未満であり、工程(ii)が、60℃~160℃、好ましくは80℃~140℃、より好ましくは100℃~120℃の温度で行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
製品、好ましくはホームケア又はパーソナルケア製品をコーティング又は封入するための、請求項1から20のいずれか一項に記載のフィルムの使用。
【請求項28】
請求項1から20のいずれか一項に記載のフィルムでコーティング又は封入された製品を放出する方法であって、
(i)好ましくはかき混ぜながら、コーティング又は封入された製品を水に入れる工程と、
(ii)好ましくは界面活性剤の存在下で、フィルムを分散させ、それによって、製品を放出する工程と
を含む、方法。
【請求項29】
製品が、調理プロセス又は洗浄プロセス中に放出される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
多糖の植物タンパク質に対する質量比が0.1:1~2:1の範囲であり、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、フィルム形成組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物タンパク質及び多糖を含むフィルム、並びにフィルムを調製するための方法に関する。本発明はまた、フィルムの使用、及び製品をコーティング又は封入することを含む、フィルムに関する方法に関する。本発明はまた、フィルム形成組成物、及びそれから得られたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの日常活動の環境に対する影響を低減し、これらの活動に関与する再生不可能な資源の量を低減するというますます危急の必要性が存在する。この一例は、従来のプラスチック、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン(例えば、食品の包装に使用される可食フィルム)を置き換える生物分解性包装の使用を増加させることである。多糖及びタンパク質を含むバイオポリマーは、それらが再生可能資源であり、多くの場合、非常に良好な生分解性特性を有することに起因して、とりわけ有用な材料である。動物由来のバイオポリマーではなく植物由来バイオポリマーを使用する傾向が増加している。植物由来のバイオポリマーは、典型的には、製造するのに必要な全資源が動物由来のバイオポリマーよりもより少なく、動物由来の材料と同じ倫理的問題は有さない。しかしながら、植物ベースのバイオポリマーは、多くの場合、多くの動物由来バイオポリマーと比較してより顕著な、著しく異なる加工に関する課題を有し、特有の解決策を必要とする。加えて、ある特定の植物材料、例えばグルテンは、人々の健康上の問題及びアレルギー反応を引き起こしうる。
【0003】
これに関して、水溶性及び水分散性フィルムを含む植物由来のバイオポリマーから作製された包装材料の開発が特に注目されている。伝統的には、デンプン等の多糖が、多くの場合、低コストであり、入手しやすいことに起因して、この目的のために使用されてきた。しかしながら、多糖フィルム、とりわけデンプンフィルムの機械特性は、典型的には、周囲の湿度及び温度条件に大きく依存する。これにより、製造の規模拡大はより複雑になり、消費者向け製品を包装するのに使用される場合、使用ウィンドウが狭くなる。更に、デンプンフィルムは、典型的には、低い引張り強さ及び/又は不十分な伸びを有する傾向があり、これは、それらが脆い、又は容易に壊れる若しくは破れる可能性があり、それによって包装フィルムとしてのその有用性が制限されることを意味する。典型的な包装機器、例えば、縦型充填封止(Vertical-Form-Fill-Seal)サシェ作製機に使用されるフィルムは、装置による引張りに耐えるのに十分頑強である必要がある。引っ張られたときに過度の伸びを有するフィルムは、伸びにより芯出し及び割出しが非常に困難となるため、典型的な包装装置における取り扱いが困難である。典型的には、デンプンは、例えば架橋によって化学的に加工されて、引張り強さ等の機械特性を改善することができるが、これは、多くの場合、望ましくない結果、例えば、水への溶解度及び/又は分散度の低下、生分解性の低下、再利用不可能な合成化学物質の使用、並びに複雑さ及びコストの増加を有する。
【0004】
デンプンベースのフィルムに関する特定の問題は、レトログラデーションに起因してデンプンが低温に感受性であることである。食品の包装は、包装食品が冷蔵庫で保存されるときに、多くの場合、低温及び高湿度に供されうる。これは、食品包装に必要とされうるすべての条件に耐えるのに十分頑強な、大量のデンプンを含有する市販のフィルムを開発することが可能でなかったことを意味する。しかしながら、デンプンが低コストであり入手しやすいことは、デンプンがそのようなフィルムに組み込むのになお望ましい材料であることを意味する。「デンプンベースの」又は「多糖ベースの」という用語は、>5wt%等の顕著なレベルのデンプン又は多糖を含有する材料を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】CN114034595A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、包装フィルムとして使用するのに十分に頑強で適切な機械特性を有する多糖ベースの、とりわけデンプンベースの水溶性/水分散性フィルムを開発する必要性が存在する。それらは、製造プロセスにおいて取り扱い、例えば、熱封止によって包装に形成することが可能であり、低温を含むある範囲の温度にわたる輸送及び保存に耐えることができる必要がある。そのようなフィルムは、合成化学加工された材料を必要とせず、ほとんど又は完全に植物由来のバイオポリマーをベースとし、高い生分解性を有し、安全で経済的に製造できるべきである。食品包装の好ましい特徴は、食用であり、そのため廃棄物を更に最小限にし、消費者の利便性を増加させることである。
【0007】
また、そのようなフィルムは、湿潤環境における保存、特に包装ホームケア及びパーソナルケア製品での使用に好適である必要性があり、このとき、これは浴室及びキッチンで保存される可能性が高い。PVOH等の現在の合成ポリマーは、湿潤条件で粘着性になることがあり、これにより、個々に包装されたタブレット又はサシェが互いに貼り付いて、それらは使用できなくなる。多糖ベースのフィルム、とりわけデンプンベースのフィルムはまた、環境湿度に高度に感受性であり、やはり粘着性になり、最終的に崩壊して、それらはそのような製品用途に使用できなくなりうる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様から鑑みると、本発明は、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して50wt%以上の、多糖及び植物タンパク質の組合せを含むフィルムであって、多糖の植物タンパク質に対する質量比が、0.1:1~2:1の範囲であり、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、フィルムを提供する。フィルムへの植物タンパク質の組込みは、多糖材料の限定された引張り強さ等の欠点を軽減する一方、高い生分解性、再生可能原材料のより効率的な使用及び倫理的問題の回避等の利点は維持しうる。植物タンパク質は、典型的には、非極性アミノ酸のレベルがより高く、結果として溶解度がより低いことに起因して、動物タンパク質よりも加工するのが困難である。「そのままの」植物タンパク質からフィルムを形成する単純な試みは成功しないだろう。タンパク質を多糖に成功裡に組み込むことを可能にするためには、タンパク質をアンフォールディングするための植物タンパク質の適切な前処理が必要である。動物由来のタンパク質の処理は、典型的には、植物タンパク質の処理に妥当でないか又は適用可能ではなく、異なる植物タンパク質は、異なる物理又は化学特性を有しうる。例えば、コーンゼインは脆いフィルムを作ることが公知である。
【0009】
アルカリ処理された植物タンパク質を組み込むフィルムが、当技術分野で公知である。典型的には、植物タンパク質スラリーは、植物タンパク質を可溶化するために高いpH及び温度で処理される。可溶化タンパク質溶液は、次いで、典型的には、可塑剤等の他の材料とブレンドされ、平坦表面にキャストされ、乾燥されて、フィルムが形成する。しかしながら、タンパク質へのアルカリ誘導変化の性質に起因して、処理されたタンパク質は水分により感受性であり、それほど頑強ではない。この手法によって作製された植物タンパク質フィルムは、典型的には、とりわけより高湿度において、より低い引張り強さ及びより高い伸びを有する。これにより、それらは包装装置における使用にそれほど適さなくなる。加えて、アルカリ処理は、典型的には、より高湿度においてより不十分な保存安定性を有する植物タンパク質フィルムをもたらす。これにより、アルカリ処理されたタンパク質は、多糖ベースのフィルムに関連する欠点を軽減する材料として適さないものになる。
【0010】
植物タンパク質はまた、低タンパク質濃度において塩溶液によって可溶化されうる。しかしながら、低タンパク質含有量溶液の使用によって植物タンパク質を組み込むフィルムを形成することは、そのようなフィルムを形成するために大量の水を蒸発させる必要があることに起因して、単純に経済的に実行可能ではない。
【0011】
加熱及びせん断と組み合わせた有機酸による植物タンパク質の処理は、多糖ベースのフィルムへの組込みに適した処理された植物タンパク質をもたらし、そのため多糖に関連する欠点を軽減しうる。理論に縛られることを望むことなく、植物タンパク質が有機酸ベースの溶媒系に添加され、加熱及び/又は超音波処理等の物理刺激に供される場合、植物タンパク質は、部分的にアンフォールディングされ、最初はタンパク質の未処理構造内に埋め込まれていた疎水性アミノ酸が露出すると考えられる。いったん部分的にアンフォールディングされると、共溶媒はアンフォールディングしたタンパク質分子と相互作用することができる。例えば、有機酸は、アミノ酸残基をプロトン化するより強い経路を有し、疎水性相互作用を安定化するアニオン塩架橋の形成を可能にする。また、高温で加熱した際、タンパク質間の非共有結合による分子間接触が破壊される。
【0012】
更に、タンパク質溶液をゾルゲル温度未満に冷却した際、タンパク質間の非共有結合による分子間接触が可能となり、したがって、相互接続したタンパク質凝集体のネットワークへの植物タンパク質分子の自己組織化が促進されると考えられる。これは、有機酸処理された植物タンパク質は、典型的には、アルカリ処理された植物タンパク質よりも水分に感受性ではないが、なおフィルムを形成することができることを意味する。有機酸処理の更なる利益は、例えば、塩溶液の使用と比較して、典型的には、より高いタンパク質濃度を使用できることである。これにより、製造は簡略化され、植物タンパク質が多糖ベースのフィルムに組み込まれる場合に蒸発させる必要のある溶媒の量を低減することによって製造コストが減少する。
【0013】
したがって、多糖フィルムに関連する欠点は、有機酸処理された植物タンパク質の組込みによってより良好に軽減されうる。
【0014】
有機酸を含む溶媒系は、そのような材料の取り扱いに関連する安全性の問題に起因して、氷酢酸等の高度に濃縮された有機酸を含まないことが非常に好ましい。より低濃度が適している。
【0015】
好ましくは、本発明の第1の態様のフィルムは、
多糖を含む第1の層と、
植物タンパク質を含む第2の層であって、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、第2の層と
を含み、
第2の層は、第1の層の第1の表面と接触している。
【0016】
更なる態様から鑑みると、本発明は、本明細書の上に記載される通りのフィルムを調製するための方法であって、
(i)任意選択により超音波処理を用いて、水中で多糖を混合して、多糖混合物を形成する工程と、
(ii)任意選択により超音波処理を用いて、植物タンパク質を水及び有機酸に溶解させて、タンパク質溶液を形成する工程と、
(iii)多糖混合物及びタンパク質溶液を混合して、フィルム形成組成物を形成する工程と、
(iv)フィルム形成組成物を、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して50wt%以上の植物タンパク質及び多糖の組合せを含むフィルムに形成する工程であって、多糖の植物タンパク質に対する質量比が、0.1:1~2:1の範囲である、工程と
を含む、方法を提供する。
【0017】
更なる態様から鑑みると、本発明は、本明細書の上に記載される通りのフィルムを調製するための方法であって、
(i)任意選択により超音波処理を用いて、水中で多糖を混合して、多糖混合物を形成する工程と、
(ii)多糖混合物をある表面で第1の層に形成する工程と、
(iii)任意選択により超音波処理を用いて、植物タンパク質を水及び有機酸に溶解させて、タンパク質溶液を形成する工程と、
(iv)タンパク質溶液を第1の層の第1の表面で第2の層に形成する工程であって、その結果、フィルムが、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して50wt%以上の多糖及び植物タンパク質の組合せを含み、多糖の植物タンパク質に対する質量比が0.1:1~2:1の範囲となる、工程と
を含む、方法を提供する。
【0018】
更なる態様から鑑みると、本発明は、本明細書の上に記載される通りのフィルムによってコーティング又は封入された製品、好ましくはホームケア又はパーソナルケア製品、最も好ましくは食器洗い機用タブレットを提供する。
【0019】
更なる態様から鑑みると、本発明は、製品、好ましくは食品をコーティング又は封入する方法であって、
(i)製品を本明細書の上に記載される通りのフィルムに包装する工程と、
(ii)製品の周りにフィルムを封止する工程と
を含む、方法を提供する。
【0020】
更なる態様から鑑みると、本発明は、製品、好ましくは食品をコーティング又は封入するための、本明細書の上に記載される通りのフィルムの使用を提供する。
【0021】
本明細書の上に記載される通りのフィルムでコーティング又は封入された製品を放出する方法は、
(i)好ましくはかき混ぜながら、コーティング又は封入された製品を水に入れる工程と、
(ii)好ましくは界面活性剤の存在下で、フィルムを分散させ、それによって、製品を放出する工程と
を含む。
【0022】
更なる態様から鑑みると、本発明は、植物タンパク質及び多糖を含むフィルム形成組成物であって、多糖に対する植物タンパク質の質量比が0.1:1~2:1の範囲であり、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、フィルム形成組成物を提供する。
【0023】
更なる態様から鑑みると、本発明は、本明細書の上に記載される通りのフィルム形成組成物から得られたフィルムを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、頑強で水に分散性であるフィルムを記載する。したがって、本発明のフィルムは、製造プロセス、並びにその後の輸送及び保存に耐える強度を有するが、次いで、水と接触した際には分散して、例えば、包装されている製品を放出することができるため、包装材料として有用である。したがって、本発明は、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して50wt%以上の植物タンパク質及び多糖の組合せを含むフィルムであって、多糖の植物タンパク質に対する質量比が、0.1:1~2:1の範囲であり、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、フィルムを提供する。
【0025】
本発明のフィルムにおいて、多糖の植物タンパク質に対する質量比は0.1:1~2:1の範囲である。
【0026】
本発明の好ましいフィルムにおいて、多糖の植物タンパク質に対する質量比は0.15:1~1.5:1、より好ましくは0.2:1~1.3:1、更により好ましくは0.5:1~1.2:1の範囲である。これらの質量比範囲の低レベルの植物タンパク質と多糖との組合せは、フィルムが水に分散する能力に負の影響を与えることなく、フィルムの強度を増加させることが見出された。
【0027】
フィルムの所与の試料中の総タンパク質含有量を決定するために、含有された可溶性窒素含有分率は、Kjeldahl法に従って定量的に測定でき、次いで、総タンパク質含有量は、乾燥生成物の質量パーセンテージとして表される窒素含有量に6.25の因子を掛けることによって得ることができる。この方法は、当業者に周知である。
【0028】
フィルムの所与の試料中の総デンプン含有量は、標準的な方法であるAOAC法996.11又はAOAC法2014.10によって決定でき、これらは、α-アミラーゼ及びアミログルコシダーゼの組み合わせた作用を用いて、デンプンをグルコースに加水分解し、続いて、グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ試薬によりグルコースを決定する。
【0029】
フィルムの所与の試料中のプルランの含有量を決定するための方法は、CN114034595Aに記載される基本方法に変更を加えたものに従い、以下の工程を含む:
【0030】
工程1:プルラン含有フィルム試料の分散
フィルムの試料3gを、高速でオーバーヘッド撹拌機を用いて20分間かき混ぜることによって40℃で100mlのDI水に分散させて、フィルム試料を小画分に分け、プルランを溶解する。
【0031】
工程2:不溶性画分の遠心分離及び分離
分散させたフィルム試料の固液分離を、1000g超で10分間遠心分離することによって実施し、上清液を収集する。
【0032】
工程3:アルコール沈殿
3倍体積の>95%純度エタノールを上清液に添加してプルランを沈殿させる。十分にかき混ぜ、30分間静置する。固体沈殿物を、1000gで5分間遠心分離することによって収集する。
【0033】
工程4:沈殿物の乾燥
工程3からの沈殿物を収集し、80℃で試料が一定質量になるまで乾燥する。最終の一定質量が、元の試料3g中に存在するプルランの量である。
【0034】
本発明の好ましいフィルムは、単層フィルムである。そのようなフィルムの一例が、図1aにグラフ表示されている。
【0035】
本発明の別の好ましいフィルムは、多層フィルムである。したがって、本発明の好ましいフィルムは、
多糖を含む第1の層と、
植物タンパク質を含む第2の層であって、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、第2の層と
を含み、
第2の層は第1の層の第1の表面と接触しており、フィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して50wt%以上の植物タンパク質及び多糖の組合せを含み、
多糖の植物タンパク質に対する質量比は、0.1:1~2:1の範囲である。
【0036】
そのような多層フィルムの一例が、図1bにグラフ表示されており、図中、層(1)は第1の層であり、層(2)は第2の層である。
【0037】
本発明の好ましいフィルムにおいて、第1の層は植物タンパク質を更に含み、植物タンパク質は有機酸で前処理されている。
【0038】
本発明の好ましいフィルムにおいて、第2の層は多糖を更に含む。
【0039】
本発明の好ましいフィルムにおいて、第1の層は植物タンパク質を更に含み、植物タンパク質は有機酸で前処理されており、第2の層は多糖を更に含む。当業者であれば理解する通り、第1及び第2の層の各々内の多糖の植物タンパク質に対する質量比は、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、第1及び第2の層の各々内の多糖の植物タンパク質に対する質量比は、異なっている。より好ましくは、第1の層内の多糖の植物タンパク質に対する質量比は、第2の層内の多糖の植物タンパク質に対する質量比を超えている。
【0040】
本発明の好ましいフィルムにおいて、第1の層は、本明細書の22頁に記載される通りに決定して、55℃~85℃の範囲の融解開始温度を有する。
【0041】
当業者であれば理解する通り、更なる層が本発明のフィルムに添加されてもよい。
【0042】
本発明のフィルムは植物タンパク質を含む。本発明の好ましいフィルムにおいて、植物タンパク質は、ダイズタンパク質、エンドウ豆タンパク質、コメタンパク質、ジャガイモタンパク質、コムギタンパク質、ナタネタンパク質、ヒマワリタンパク質、及び/又はモロコシタンパク質から選択され、好ましくは、エンドウ豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、ナタネタンパク質、ヒマワリタンパク質、及び/又はコメタンパク質から選択され、より好ましくはエンドウ豆タンパク質である。
【0043】
本発明の好ましいフィルムにおいて、植物タンパク質は、マメ科(Fabaceae family)からのタンパク質、好ましくは、エンドウ豆タンパク質である。
【0044】
本発明の好ましいフィルムは、ダイズタンパク質、及び/又はコムギタンパク質、及び/又はモロコシタンパク質を含まない。
【0045】
本発明の好ましいフィルムにおいて、植物タンパク質源は、植物タンパク質単離物、好ましくはエンドウ豆タンパク質単離物である。
【0046】
本発明の好ましいフィルムにおいて、植物タンパク質源は、植物タンパク質濃縮物である。
【0047】
本発明の好ましいフィルムにおいて、植物タンパク質源は、植物細粉、好ましくはエンドウ豆細粉である。
【0048】
本発明の好ましいフィルムにおいて、植物タンパク質源は、廃棄物流、例えば、農業又は食品産業からの廃棄物流から得られる。
【0049】
本発明の好ましいフィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して2.0~40wt%、好ましくは、2.5~35wt%、より好ましくは3.0~30wt%の植物タンパク質を含む。
【0050】
有機酸は酸性の特性を有する有機化合物、好ましくはカルボン酸である。本発明の好ましいフィルムにおいて、植物タンパク質の前処理に使用される有機酸は、酢酸、α-ヒドロキシ酸、又はβ-ヒドロキシ酸から選択される。より好ましくは、有機酸は、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、グリコール酸、グルコン酸、酒石酸、β-ヒドロキシプロピオン酸、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシβ-メチル酪酸、2-ヒドロキシ安息香酸、及びカルニチン、又はそれらの混合物から選択され、好ましくは酢酸である。
【0051】
本発明の好ましいフィルムにおいて、植物タンパク質の前処理に使用される有機酸は、揮発性有機酸(すなわち、120℃未満の沸点を有するもの)、好ましくは酢酸である。この理由は、揮発性有機酸が、キャスティング又は乾燥工程中にフィルム形成組成物から容易に除去できることで、最終フィルムが、もしあるとしてもわずかしか残留有機酸を含有しないからである。
【0052】
本発明のフィルムは、特性の有用な組合せを示し、これは、それらが頑強であるが、なお水に分散性であることを意味する。理論に縛られることを望むことなく、本発明のフィルムの強度の増加は、有機酸による植物タンパク質の前処理に帰することができると考えられる。これは、植物タンパク質が高温で有機酸の存在下でアンフォールディングすることで、存在する多糖との、例えば、水素結合を介した相互作用に、より利用しやすくなるためであると考えられる。これらのタンパク質-多糖相互作用の増加は、従来の多糖ベースのフィルムの脆性の原因である多糖のレトログラデーションのレベルを低減する。
【0053】
有機酸による植物タンパク質の前処理の結果、少なくとも40%の分子間β-シート、少なくとも50%の分子間β-シート、少なくとも60%の分子間β-シート、少なくとも70%の分子間β-シート、少なくとも80%の分子間β-シート、又は少なくとも90%の分子間β-シートを有するタンパク質2次構造を有する植物タンパク質となる。
【0054】
疑義を避けるために、有機酸による植物タンパク質の前処理は、植物タンパク質と多糖を混合する前に行われる。
【0055】
好ましくは、有機酸による植物タンパク質の前処理は、有機酸水溶液の使用を含む。より好ましくは、有機酸水溶液は、少なくとも5%(v/v)、好ましくは少なくとも10%(v/v)、より好ましくは少なくとも15%(v/v)、より好ましくは少なくとも20%(v/v)、より好ましくは少なくとも25%(v/v)、より好ましくは少なくとも30%(v/v)、より好ましくは少なくとも40%(v/v)、更により好ましくは少なくとも50%(v/v)の濃度を有する。或いは、有機酸水溶液は、90%(v/v)以下、好ましくは80%(v/v)以下、より好ましくは70%(v/v)以下の濃度を有する。濃酸溶液は、大規模に取り扱うには危険である。
【0056】
多糖は炭水化物ポリマーである。多糖又はポリ炭水化物は、食品中に最も豊富に見出される炭水化物である。それらは、グリコシド結合によって一緒に結合した単糖単位で構成された長鎖高分子炭水化物である。この炭水化物は、アミラーゼ酵素を触媒として使用して水と反応(加水分解)することができ、これにより、構成糖(単糖又はオリゴ糖)が生成する。それらの構造は、直鎖状から高度に分岐状にわたる。直鎖状多糖の一例はプルランである。デンプンは直鎖状であるアミロース、及び/又は分岐状であるアミロペクチンから本質的になり、天然形態では、典型的には、半結晶粒状物の形態である。デンプン源としては、これらに限定されないが、植物の果実、種、及び根茎又は塊茎が挙げられる。
【0057】
一部のデンプンは、ワキシーデンプンとして分類される。ワキシーデンプンは、アミロペクチンから本質的になり、認識可能な量のアミロースを含まない。典型的なワキシーデンプンとしては、ワキシートウモロコシデンプン、ワキシーコメデンプン、ワキシージャガイモデンプン、及びワキシーコムギデンプンが挙げられる。
【0058】
或いは、一部のデンプンは、高アミロースデンプンとして分類される。
【0059】
加工デンプンは、天然デンプンの特性を変化させるように、それを物理的に、酵素により、又は化学的に処理することによって調製される。デンプンは、例えば、酵素によって、熱処理、酸化、又は様々な化学物質との反応によって、加工されうる。
【0060】
本発明のフィルムにおいて、デンプンは、天然デンプン若しくは加工デンプン、又はそれらの混合物でありうる。
【0061】
本発明の好ましいフィルムにおいて、デンプンは、コムギデンプン、ジャガイモデンプン、エンドウ豆デンプン、ワキシージャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、ワキシートウモロコシデンプン、高アミローストウモロコシデンプン、タピオカデンプン、キャッサバデンプン、ライムギデンプン、モロコシデンプン、ヒヨコマメデンプン、ダイズデンプン、又はそれらの混合物から選択され、好ましくはジャガイモデンプンである。
【0062】
本発明の別の好ましいフィルムにおいて、デンプンは、酸処理デンプン、デキストリン、アルカリ加工デンプン、漂白デンプン、酸化デンプン、酵素処理デンプン、マルトデキストリン、シクロデキストリンリン酸一デンプン、リン酸二デンプン、アセチル化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム若しくはカチオン性デンプン、又はそれらの混合物から選択され、好ましくは、酸処理デンプンである。
【0063】
本発明の好ましいフィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して30~70wt%、好ましくは40~65wt%、より好ましくは45~60wt%の多糖を含む。
【0064】
本発明の好ましいフィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して55wt%以上、好ましくは60wt%以上の植物タンパク質及び多糖の組合せを含む。
【0065】
本発明の好ましいフィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、75wt%以下、好ましくは72wt%以下、より好ましくは70wt%以下の植物タンパク質及び多糖の組合せを含む。
【0066】
本発明の好ましいフィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して50~75wt%、好ましくは55%~72wt%、より好ましくは60~70wt%の植物タンパク質及び多糖の組合せを含む。
【0067】
本発明の好ましいフィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して10~20wt%、好ましくは10~15wt%の水を含む。
【0068】
本発明の好ましいフィルムは可塑剤を更に含む。可塑剤は、フィルム可撓性を改善するのに有用である。好ましくは、可塑剤は、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、クエン酸トリエチル、脂肪酸、グルコース、マンノース、フルクトース、スクロース、尿素、レシチン、ワックス、アミノ酸及び有機酸(例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、グルコン酸又は酒石酸)、又はそれらの混合物から選択され、好ましくはグリセロールである。
【0069】
当業者であれば理解する通り、有機酸は、植物タンパク質の前処理に使用され、次いで、残留して、得られたフィルムにおいて可塑剤として続いて機能しうる。
【0070】
フィルムが食品の包装を目的とする場合、可塑剤はヒトの消費に適したものでなくてはならない。上記で言及した好ましい可塑剤は、すべてヒトの消費に適している(すなわち、それらは、食品グレードの材料である)。
【0071】
本発明の好ましいフィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して5~25wt%、好ましくは10~20wt%、より好ましくは13~19wt%の可塑剤を含む。
【0072】
本発明の好ましいフィルムは、顔料又は染料を更に含む。好ましくは、顔料又は染料は、アゾ、キノフタロン、トリフェニルメタン、キサンテン若しくはインジゴイド染料;酸化鉄若しくは水酸化鉄;二酸化チタン;又は天然染料、及びそれらの混合物から選択される。例としては、パテントブルーV、アシッドブリリアントグリーンBS、レッド2G、アゾルビン、ポンソー4R、アマランス、D+Cレッド33、D+Cレッド22、D+Cレッド26、D+Cレッド28、D+Cイエロー10、イエロー2G、FD+Cイエロー5、FD+Cイエロー6、FD+Cレッド3、FD+Cレッド40、FD+Cブルー1、FD+Cブルー2、FD+Cグリーン3、ブリリアントブラックBN、カーボンブラック、酸化鉄ブラック、酸化鉄レッド、酸化鉄イエロー、二酸化チタン、リボフラビン、カロテン、アントシアニン、ターメリック、コチニール抽出物、クロロフィリン、カンタキサンチン、カラメル、ベタイン及びCandurin(登録商標)真珠光沢顔料が挙げられる。より好ましくは、顔料又は染料は、食品着色剤、好ましくは、植物源由来の食品着色剤、より好ましくは、カロテイノイド、クロロフィリン、アントシアニン及びベタニンから選択される食品着色剤である。
【0073】
本発明の好ましいフィルムは、構造強化剤を更に含む。構造強化剤の使用により、フィルムの強度を改善するのを補助することができる。好ましくは、構造強化剤は、微結晶セルロース、柑橘類果実のパルプから抽出されたセルロース繊維を含むミクロフィブリル化セルロース、発酵からの微細繊維状セルロースを含むセルロース系材料、デンプン微結晶、クレイ、又はそれらの混合物から選択され、好ましくは、柑橘類パルプからのミクロフィブリル化セルロースである。
【0074】
本発明の好ましいフィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、0.5~5wt%、好ましくは0.6~2.5wt%の前記構造強化剤を含む。
【0075】
本発明の好ましいフィルムは、疎水性薬剤を更に含む。好ましくは、疎水性薬剤は、好ましくは、植物油、ナタネ油、キャノーラ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、コーン油、及び香味付き油、又はそれらの混合物から選択される植物ベースの油、好ましくは、不揮発性の植物ベースの油であり、好ましくは植物油である。香味付き油の例としては、タイム油、バジル油、オリーブ油、ラー油、ローズマリー油、ガーリック油、柑橘類油、又はラベンダー油が挙げられる。
【0076】
或いは、疎水性薬剤は、飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸である植物ベースの脂肪酸、又はそれらの混合物である。好ましくは、植物ベースの脂肪酸は不揮発性である。好ましい飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸が挙げられる。好ましい不飽和脂肪酸としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、及びリノール酸が挙げられる。
【0077】
理論に縛られることを望むことなく、本発明のフィルム中の疎水性薬剤、例えば、植物ベースの油又は植物ベースの脂肪酸の存在は、フィルムの表面完全性を改善すると考えられる。これは、フィルムの調製中に、疎水性薬剤がキャスト組成物の上面に移動し、それによって、その上での皮膜の早期形成が阻害されるためであると考えられ、これは、蒸気をより容易に逃がすことができること、及びいったん乾燥すると、形成され、フィルム内に内包される気泡がより少ないことを意味する。
【0078】
本発明のフィルムにおける疎水性薬剤としての風味付き油の使用は、例えば、フィルムが食品を包装するために使用される場合、フィルム自体が風味送達手段として作用しうるという追加の利点を提供する。
【0079】
本発明の好ましいフィルムは、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、0.3~2.5wt%、好ましくは0.6~2.0wt%、より好ましくは0.7~1.5wt%の疎水性薬剤を含む。
【0080】
本発明の好ましいフィルムは、ヒト又は動物消費に適している、すなわち、フィルムは可食フィルムである。より好ましくは、本発明のフィルムは、動物源由来の成分を含有せず、それらは菜食主義者/絶対菜食主義者による消費に適したものとなる。
【0081】
本発明の好ましいフィルムは消化できる。
【0082】
本明細書で使用される場合、可食とは、消化でき、それ自体にいくらかの栄養上の利益を提供するフィルムを指す。これは、安全に食べられるが、それ自体栄養を提供しないフィルムとは対照的である。これらの後者のフィルムの一例は、医薬産業で広く使用されるHPMC、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから作製されたフィルム、又はセルロースベースの他のフィルムである。可食フィルムの特徴は、それらが本質的に非常に迅速に生物分解性であることである。デンプンは、多くの場合、その架橋能を改善するように化学的に修飾される。そのような手法は、デンプンの物理特性を改善するのに非常に効果的でありうるが、これは、非常に多くの場合、その消化性及び可食材料としての使用を減少させる。したがって、これらのフィルムにおいて使用されるデンプンは、加水分解以外の事前の化学的加工に供されていないことが好ましい。
【0083】
本発明の好ましいフィルムは、キトサンを含有しない。
【0084】
本発明のフィルムは、水への高分散性を有する。これは、本発明のフィルムを、製品の最終使用中に廃棄物を生じない製品用の包装材料として使用できることを意味する。例えば、本発明のフィルムを、洗剤を包装するために使用することで、洗浄プロセス中にフィルムが水中で分散して洗剤を放出しうる。或いは、本発明のフィルムを、食品を包装するために使用することで、調理プロセス中にフィルムが水中で分散して食品を放出しうる。したがって、本発明の好ましいフィルムにおいて、0.2gのフィルムをかき混ぜながら水中で3分間沸騰させ、次いで、2mmメッシュ篩に通して注いだ場合、0.15g以下、好ましくは0.1g以下、より好ましくは0.05g以下の残留物が篩で収集される。有利には、残留物は完全生物分解性であり、これは、フィルムが環境に対して負の影響を有さないことを意味する。
【0085】
本発明の好ましいフィルムにおいて、25℃で脱イオン水10g中フィルム1gの濃度のフィルムの分散体のpHは、5超、好ましくは5.5超、より好ましくは6超である。これは、フィルムが食品を包装するために使用される場合、フィルムがいったん分散すると、酸味又は他の負の風味を食品に付与しないという利点を有する。
【0086】
本発明の好ましいフィルムにおいて、脱イオン水50g中フィルム1gの濃度のフィルムの分散体の粘度は、25℃及び10s-1で100cps未満、好ましくは25℃及び10s-1で90cps未満、より好ましくは25℃及び10s-1で80cps未満である。これは、フィルムがいったん分散すると、製品の粘度に負の影響を及ぼさない、例えば、包装製品が飲料である場合、分散したフィルムは、飲料を不当に濃厚にせず、消費者の負の経験を引き起こさないという利点を有する。
【0087】
本発明の好ましいフィルムにおいて、フィルムは、76%相対湿度及び5℃でASTM D882-18によって測定して、0.15~5MPa、好ましくは0.17~3.5MPaの引張り強さを有する。
【0088】
本発明の好ましいフィルムにおいて、フィルムは、76%相対湿度及び5℃でASTM D882-18によって測定して、10~150%、好ましくは15~120%の破断歪みを有する。
【0089】
本発明の好ましいフィルムにおいて、第2の層中の植物タンパク質は、第2の層が不活性表面、例えばガラス表面で調製された場合、FTIRによって測定して、少なくとも40%の分子間β-シート含有量、少なくとも50%の分子間β-シート含有量、少なくとも60%の分子間β-シート含有量、少なくとも70%の分子間β-シート含有量、少なくとも80%の分子間β-シート含有量、又は少なくとも90%の分子間β-シート含有量を有する2次構造を有する。
【0090】
第2の層中の植物タンパク質の2次構造を調べるために、フーリエ変換型赤外(FTIR)分析を実施した。FTIR分光データを、ダイヤモンド減衰全反射(ATR)素子でFTIR VERTEX 70分光計(Bruker社)を使用して収集した。
【0091】
植物タンパク質を含む第2の層は、ダイヤモンドATRセルと直接接触する必要がある。データは、バックグラウンド差し引きにより4cm-1解像度で128スキャンを使用して収集した。タンパク質の構造分析について、スペクトルは2次及び7点ウィンドウSavitzky-Golayフィルターで平滑化し、正規化した。アミドIバンド(1600~1700cm-1)の2次微分を、平滑化データから計算して、デコンボリューションし、2次及び4次構造寄与を定量した。本発明の好ましいフィルムにおいて、ISO-14851に従って測定して、28日後のフィルムのO2消費に対する生分解パーセンテージは、70~100%、より好ましくは80~100%、更により好ましくは85~100%である。
【0092】
本発明の好ましいフィルムにおいて、ASTM D6691に従って測定して、28日後のフィルムのCO2生成に対する生分解パーセンテージは、85~100%、より好ましくは90~100%、更により好ましくは95~100%である。
【0093】
本発明の好ましいフィルムにおいて、フィルムを55%相対湿度及び20℃で少なくとも1時間調整し、次いで120℃の温度で3~5barの間の圧力を1秒の時間適用して封止した後、フィルムは、55%相対湿度及び20℃でASTM F88/F88M-15によって測定して、少なくとも40N/m、好ましくは少なくとも60N/m、より好ましくは少なくとも80N/m、更により好ましくは少なくとも100N/m、最も好ましくは少なくとも120N/mの熱封止強度を有する。
【0094】
本発明はまた、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して、50wt%以上の植物タンパク質及び多糖の組合せを含むフィルムであって、植物タンパク質が、有機酸で前処理されており、多糖の植物タンパク質に対する質量比が、0.1:1~2:1の範囲であり、フィルムが、76%相対湿度及び5℃でASTM D882-18によって測定して0.15~5MPaの引張り強さ並びに/又は76%相対湿度及び5℃でASTM D882-18によって測定して10~150%の破断歪みを有する。
【0095】
フィルムの好ましい特徴は上記の通りである。
【0096】
本発明はまた、本明細書の上に記載される通りのフィルムを調製するための方法であって、
(i)任意選択により超音波処理を用いて、水中で多糖を混合して、多糖混合物を形成する工程と、
(ii)任意選択により超音波処理を用いて、植物タンパク質を水及び有機酸に溶解又は分散させて、タンパク質溶液を形成する工程と、
(iii)多糖混合物及びタンパク質溶液を混合して、フィルム形成組成物を形成する工程と、
(iv)フィルム形成組成物を、相対湿度55%及び22℃でフィルムの総質量に対して50wt%以上の、多糖及び植物タンパク質の組合せを含むフィルムに形成する工程であって、多糖の植物タンパク質に対する質量比が、0.1:1~2:1の範囲である、工程と
を含む、方法を提供する。
【0097】
工程(i)において、超音波処理は、適用された音エネルギーに起因して溶液を本質的に加熱する。
【0098】
本発明の好ましい方法において、混合する工程(i)は、70~100℃、好ましくは85~95℃の範囲の温度で行われる。
【0099】
本発明の好ましい方法において、溶解させる工程(ii)は、70~100℃、好ましくは85~95℃の範囲の温度で行われる。
【0100】
本発明の好ましい方法において、有機酸は工程(ii)と(iii)との間で除去される。
【0101】
本発明の好ましい方法において、混合する工程(iii)は、70~100℃、好ましくは85~95℃の範囲の温度で行われる。
【0102】
本発明の好ましい方法において、混合する工程(iii)は、70~100℃、好ましくは85~95℃の範囲の温度で行われる。
【0103】
本発明の好ましい方法において、工程(i)、(ii)又は(iii)は、超音波処理(sonication)及び/又は超音波処理(ultrasound treatment)を更に含む。
【0104】
本発明の好ましい方法において、工程(iv)は、フィルム形成組成物を表面上にキャストすることを含む。好ましくは、表面は、多糖を含む事前に形成された層又は植物タンパク質を含む事前に形成された層である。或いは、表面は、ガラスプレート、又は例えばPETキャリアフィルムのような他の裏打ち材である。或いは、表面は、移動ベルト、好ましくは鋼製移動ベルトである。
【0105】
本発明の好ましい方法において、工程(iv)において、フィルム形成組成物は、50~95℃、より好ましくは50~85℃の範囲の温度である。
【0106】
本発明の好ましい方法において、表面は加熱される。好ましくは、表面は、50~130℃、より好ましくは55~100℃の範囲の温度に加熱される。
【0107】
本発明の好ましい方法において、工程(iv)は、フィルムをオーブン中、好ましくは70~150℃の範囲の温度で加熱することを更に含む。
【0108】
本発明の別の好ましい方法において、工程(iv)は、フィルム形成組成物をオリフィスを通して押出して、フィルムを形成することを含む。
【0109】
本発明の好ましい方法は、エージング工程を更に含む。好ましくは、前記エージング工程は、フィルムを10~35℃の間の温度に1週間の期間供することを含む。
【0110】
本発明の好ましい方法において、工程(i)~(iv)は、多層フィルムを生成するために繰り返される。したがって、工程(i)~(iv)を実施して第1の層を生成することができ、次いで、工程(i)~(iv)を繰り返して、第1の層の第1の表面に第2の層を生成することができる。
【0111】
本発明はまた、本明細書の上に記載される通りのフィルムを調製するための方法であって、
(i)任意選択により超音波処理を用いて、水中で多糖を混合して、多糖混合物を形成する工程と、
(ii)多糖混合物をある表面で第1の層に形成する工程と、
(iii)任意選択により超音波処理を用いて、植物タンパク質を水及び有機酸に溶解させて、タンパク質溶液を形成する工程と、
(iv)タンパク質溶液を第1の層の第1の表面で第2の層に形成する工程であって、その結果、フィルムが、55%相対湿度及び22℃でフィルムの総質量に対して50wt%以上の植物タンパク質及び多糖の組合せを含み、多糖の植物タンパク質に対する質量比が0.1:1~2:1の範囲となる、工程と
を含む、方法を提供する。
【0112】
工程(i)において、超音波処理は、適用された音エネルギーに起因して溶液を本質的に加熱する。
【0113】
本発明の好ましい方法において、混合する工程(i)は、70~100℃、好ましくは85~95℃の範囲の温度で行われる。
【0114】
本発明の好ましい方法において、工程(i)は、超音波処理(sonication)及び/又は超音波処理(ultrasound treatment)を更に含む。
【0115】
本発明の好ましい方法において、工程(ii)は、多糖混合物を表面上にキャストすることを含む。好ましくは、表面は、多糖を含む事前に形成された層又は植物タンパク質を含む事前に形成された層である。或いは、表面は、ガラスプレート、又は例えばPETキャリアフィルムのような他の裏打ち材である。或いは、表面は、移動ベルト、好ましくは鋼製移動ベルトである。
【0116】
本発明の好ましい方法において、工程(ii)において、多糖混合物は、50~95℃、好ましくは50~85℃の範囲の温度である。
【0117】
本発明の好ましい方法において、表面は加熱される。好ましくは、表面は、50~130℃、より好ましくは55~100℃の範囲の温度に加熱される。
【0118】
本発明の好ましい方法において、溶解させる工程(ii)は、70~100℃、好ましくは85~95℃の範囲の温度で行われる。
【0119】
本発明の好ましい方法において、工程(iii)は、超音波処理(sonication)及び/又は超音波処理(ultrasound treatment)を更に含む。
【0120】
本発明の好ましい方法において、有機酸は工程(iii)と(iv)との間で除去される。
【0121】
本発明の好ましい方法において、工程(iv)は、タンパク質溶液を第1の層の第1の表面上にキャストすることを含む。好ましくは、第1の層の第1の表面は、50~95℃、より好ましくは55~85℃の範囲の温度に加熱される。
【0122】
本発明の好ましい方法において、工程(iv)において、タンパク質溶液は、50~100℃、好ましくは55~90℃の範囲の温度である。
【0123】
本発明はまた、本明細書の上に記載される通りのフィルムによりコーティング又は封入された製品、好ましくは、食品を提供する。
【0124】
好ましくは、製品は、食品、医薬製品、清浄製品、農業用製品(例えば、動物食餌)若しくは医薬品、化学製品、又は美容製品である。
【0125】
好ましくは、製品は、固体製品、粉末製品、又は50%未満の水分活性を有する液体製品である。
【0126】
材料の水分活性は、材料の%平衡相対湿度を100で割ったものである。試料の%平衡相対湿度は、湿度プローブの使用によって測定される。好適な装置は、2016/03/31以降の日付の取り扱い説明書に従って操作されるProcess Sensing Technologies社製のRotronics HC2-AWユニットを含む。ユニットは、操作説明書に指定される通り、塩溶液を使用する手順に従って、使用の1年以内に較正されているべきである。被験試料は、試料カップに入れ、試験ユニットに入れる。次いで、湿度セルを試料カップに置いて、試料カップ中、試料を封止する。次いで、試験試料中の遊離水を試料上部のヘッドスペースの空気と平衡にし、ヘッドスペースの最終湿度レベルを、HC2ユニットによって測定し、試験温度における%平衡相対湿度(eRH)として報告する。次いで、%eRHを100で割って、試料の水活性を得る。温度に依存した変動を回避するために、測定は20℃~25℃の間の温度で実施するべきである。
【0127】
好ましくは、製品は、スープ若しくは香味付け調製物(例えば、固形スープの素)、個人用洗剤(例えば、固形石けん、ボディウォッシュ、ボディスクラブ又はシャンプー)、洗濯洗剤タブレット、又は食器洗い機用洗剤タブレットから選択される固体製品である。より好ましくは、製品は固形スープの素である。或いは、製品は、洗濯洗剤タブレット又は食器洗い機用洗剤タブレットである。
【0128】
好ましくは、製品は、粉末食品、粉末飲料、粉乳、粉末スープ、粉末ホットチョコレート、粉末コーヒー、スープフレーク、及び粉末シャンプーから選択される粉末製品である。より好ましくは、製品は粉末飲料である。
【0129】
好ましくは、製品は、油又はヘアケア製品である非水性液体製品である。より好ましくは、製品は調理用油である。
【0130】
本発明はまた、製品、好ましくは食品をコーティング又は封入する方法であって、
(i)製品を本明細書の上に記載される通りのフィルムに包装する工程と、
(ii)製品の周りにフィルムを封止する工程と
を含む、方法を提供する。
【0131】
好ましい製品は、上に記載される通りである。
【0132】
好ましくは、工程(ii)は、熱封止することを含む。
【0133】
当業者であれば理解する通り、封止する工程は、多糖を含むフィルムのセクション同士の接触を必要とする。例えば、多糖及び植物タンパク質を含む複合フィルムは、多糖及び植物タンパク質を含む別の複合フィルムに対して、又はそれ自体に封止されうる。しかしながら、フィルムが、例えば多糖層及び植物タンパク質層を含む多層フィルムである場合、多糖層を、多糖を含む別のフィルム、又はそれ自体に封止する必要がある。この理由は、多糖が、植物タンパク質と比較してはるかに低温で融解(又はゼラチン化)しうるからである。多糖層中に存在する残留水もまた、多糖の融解(又はゼラチン化)温度を低下させるのを補助する。
【0134】
本発明の好ましい方法において、工程(ii)の継続時間は、2秒未満、より好ましくは1秒未満、最も好ましくは0.5秒未満である。
【0135】
本発明の別の好ましい方法において、工程(ii)は、160℃未満、より好ましくは140℃未満、最も好ましくは120℃未満の温度で行われる。
【0136】
本発明はまた、製品、好ましくは食品をコーティング又は封入するための、本明細書の上に記載される通りのフィルムの使用を提供する。
【0137】
好ましい製品は、上に記載される通りである。
【0138】
本発明はまた、本明細書の上に記載される通りの方法によって調製されたサシェを提供する。
【0139】
本発明の好ましいサシェは、高湿度環境に維持されたときに他のサシェに貼り付かない。
【0140】
本発明はまた、本明細書の上に記載される通りのフィルムでコーティング又は封入された製品を放出する方法であって、
(i)コーティング又は封入された製品を水に入れる工程と、
(ii)フィルムを分散させ、それによって、製品を放出する工程と
を含む、方法を提供する。
【0141】
好ましい製品は、上に記載される通りである。
【0142】
或いは、製品は、調理プロセス中に放出される。
【0143】
好ましくは、製品は、洗浄プロセス中に放出される。
【0144】
本発明の好ましい方法において、工程(ii)は、機械によるかき混ぜ、例えば撹拌又は振とうを更に含む。
【0145】
本発明はまた、植物タンパク質及び多糖を含むフィルム形成組成物であって、多糖の植物タンパク質に対する質量比が0.1:1~2:1の範囲であり、植物タンパク質が有機酸で前処理されている、フィルム形成組成物を提供する。
【0146】
好ましい特徴は、本発明のフィルムに関連して上に記載されている通りである。
【0147】
本発明はまた、本明細書の上に記載される通りのフィルム形成組成物から得られたフィルムを提供する。
【0148】
好ましい特徴は上に記載される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0149】
図1a】本発明の単層フィルムのグラフ表示である。
図1b】本発明の多層フィルムのグラフ表示である。
図2a】食器洗い機を開始する前のフィルムE7のインタクトな包装タブレットを示す図である
図2b】サイクルに入れて5分に対応する図である。
図2c】サイクルに入れて10分に対応する図である。
図2d】サイクルに入れて15分に対応する図である。
図2e】サイクルの終了時に対応する図である。
図3】フィルムE7に包装された食器洗い機用タブレットを示し、Aはt=0におけるタブレットのスタックであり、Bは、t=0における融合試験を示し、Cは70%RHで48時間後のタブレットのスタックであり、Dは、70%RHで48時間後の融合試験を示す図である。
図4】PVOHで包装された食器洗い機用タブレットを示し、Aはt=0におけるタブレットのスタックであり、Bは、t=0における融合試験を示し、Cは70%RHで48時間後のタブレットのスタックであり、Dは、70%RHで48時間後の融合試験を示す図である。
【実施例
【0150】
材料
エンドウ豆タンパク質単離物(PPI)(80wt%タンパク質、4wt%炭水化物)(ProEarth P16109)は、Cambridge Commodities Ltd.社から購入した。
タピオカデンプン(Alpha Instant)、ジャガイモデンプン(事前にゲル化された)、トウモロコシデンプン、及びコメデンプンは、BakeRite社から購入した。
トウモロコシアミロペクチン(コーン由来のデンプン)及びマルトデキストリンは、Sigma-Aldrich Co.社から購入した。
ワキシートウモロコシデンプン(Ultratex)は、Special Ingredients Ltd.社から購入した。
食品グレードのグリセロール(APC Pure)及びジャガイモデンプン(熱可溶性)は、APC社から購入した。
植物(ナタネ)油は、Tesco Ltd社、UKから購入した。
乳酸(食品グレード、≧80%)は、Cambridge Commodities Ltd.社から購入した。
酢酸(氷、食品グレード)は、Fisher Scientific社から購入した。
プルランは、Rongsheng Biotechnology Co. Ltd.社から購入した。
【0151】
以下の実施例において、「室温」へのすべての参照は、およそ20℃の温度をいう。
【0152】
測定方法
水への分散試験
フィルム片0.2gを、600mlの沸騰水に3分間入れ、750rpmのオーバーヘッド撹拌機を、フィルムに触れないように中心を外して配置した。水中に破片が存在するか不在かについて観察した。この時間の後、混合物を2mmメッシュ篩に通した。存在する場合、篩で収集された残留物の外見を観察し、記録した。フィルムの断片を、ピンセットを使用してメッシュから慎重に取り出し、質量を測定した。
【0153】
フィルム引張り強さ及び/又は%伸び試験
フィルムを、100Nロードセルを備えたTinius Olsen 5ST引張試験機を使用して、ASTM D882-18薄プラスチックシートの引張り特性に従って試験した。
【0154】
被験フィルムを、8.0cm×1.0cmのストリップに切り出した。フィルム厚さを、マイクロメーター(RDM Test Equipment社製DML 3701P6)によって6点(試験しているストリップの各側3点)で測定し、結果の平均を取って、平均断面厚さを決定した。次いで、ストリップを、試験前に、ストリップが確実に平衡に達しているように、76%RH/5℃で湿度チャンバー内にフィルムを露出して少なくとも24時間静置することによって、5℃で76%相対湿度(RH)に調整した。一般に利用可能なデバイス、例えば、Fisherbrand(商標)Traceable(商標)温度計/時計/湿度モニターを使用して、条件を測定した。そのような条件は、典型的には、家庭用冷蔵庫である。或いは、ストリップは、同じ方法を使用して、22℃で55%相対湿度に調整した。そのような条件は、典型的には、室温包装及び保存施設において遭遇する湿度である。
【0155】
フィルムを試験するために、ストリップを湿度チャンバーから取り出し、5ST試験ヘッドの平行クランプによって、クランプ間のギャップ5cmで固定した。次いで、ロードセルに取り付けた上側クランプを、50mm/分の定速で上向きに移動させて、破断するまでフィルムを延伸し、ロードセルに加えられた力を記録した。フィルムの状態変化を最小にするために、この手順は、フィルム試料を湿度チャンバーから取り出して1分以内に行った。引張り強さは、破断時の力を調整及び試験前のフィルムの平均断面積で割ったものである。%破断歪みは、(破断時のフィルムの長さ-初期フィルムの長さ)/初期フィルムの長さ)×100として計算される。
【0156】
(実施例1)
フィルムの調製
単層フィルム(E5)及び多層フィルム(E6~E14)を、下記に記載される手順に従って調製した。5つの比較フィルム(C1~C5)もまた、下記に記載される手順に従って調製した。
【0157】
タンパク質単層フィルムC1の調製
(i)タンパク質混合物の調製
脱イオン水150mlを、オーバーヘッド撹拌機を使用して、600mlビーカー中室温でエンドウ豆タンパク質単離物37.5gと混合して、均質なペーストを形成した。次いで、酢酸350mlをグリセロール10.89gと共に撹拌しながら添加した。次いで、TS113プローブを備えたBandelin Sonopuls HD4200を使用して、懸濁液を37分30秒間超音波処理(高強度超音波)した。超音波処理機は、1秒のオン及び0.2秒のオフのサイクルで50%の振幅に設定した。懸濁液を確実に均質にするために超音波処理全体を通して断続的に撹拌した。
【0158】
(ii)フィルム形成
混合物25mlを、残留する大きな塊を除去するために茶こしを通して50ml Falconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去し、Falconチューブを80℃で5分間超音波浴に入れることによって混合物を更に脱気した。混合物を取り出し、55℃に冷却し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注いだ。液体を、ナイフブレードを使用してプレート上に均一に拡げて、500ミクロンのタンパク質混合物の湿フィルムを得た。次いで、ガラスプレートをオーブン中80℃で1時間乾燥させた。
【0159】
ジャガイモデンプン単層フィルムC2の調製
(i)デンプン混合物の調製
ジャガイモデンプン50.0gを、オーバーヘッド撹拌することによって600mlビーカー中、室温で500mlの脱イオン水に分散させた。次いで、グリセロール21.43gを添加し、懸濁液を撹拌した。次いで、TS113プローブを備えたBandelin Sonopuls HD4200を使用して、1秒のオン、0.2秒のオフのサイクルで95%の振幅で懸濁液を50分間超音波処理(高強度超音波)した。懸濁液を確実に均質にするために超音波処理全体を通して撹拌した。次いで、溶液を80℃で30分間超音波浴に入れて、泡を除去した。
【0160】
(ii)フィルム形成
溶液25mlを、残留する大きな塊を除去するために茶こしを通して50ml Falconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去し、Falconチューブを80℃で5分間超音波浴に入れることによって溶液を更に脱気した。混合物を取り出し、55℃に冷却し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注いだ。液体を、ナイフブレードを使用して均一に拡げて、500ミクロン厚さのタンパク質混合物の湿フィルムを得た。次いで、プレートを80℃で1時間オーブンに入れて、乾燥フィルムを形成した。
【0161】
タピオカデンプン単層フィルムC3の調製
(i)タピオカデンプン混合物の調製
タピオカデンプン(STT)50.0gを、オーバーヘッド撹拌することによって600mlビーカー中、室温で500mlの脱イオン水に分散させた。次いで、グリセロール21.43gを添加し、懸濁液を撹拌した。次いで、Bandelin超音波処理器を使用して、1秒のオン、0.2秒のオフのサイクルで95%の振幅で懸濁液を50分間超音波処理した。次いで、溶液を80℃で30分間超音波浴に入れて、泡を除去した。
【0162】
(ii)フィルム形成
溶液25mlを50ml Falconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去することによって溶液を更に脱気した後、55℃に冷却し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注いだ。液体を、ナイフブレードを使用して均一に拡げて、500ミクロン厚さのタンパク質混合物の湿フィルムを得た。次いで、プレートを80℃で1時間オーブンに入れて、乾燥フィルムを形成した。
【0163】
ジャガイモデンプン及びプルラン単層フィルムC4の調製
(i)ジャガイモデンプン及びプルラン混合物の調製
ジャガイモデンプン37.5g及びプルラン37.5gを、600mlビーカー中、オーバーヘッド撹拌することによって、500mlの新たに沸騰させた脱イオン水に分散させた。ホットプレートを使用して、溶液を80℃超に維持した。次いで、グリセロール18.75gを添加し、混合物を更に2分間撹拌した。
【0164】
(ii)フィルム形成
次いで、混合物を、FlackTek Speedmixerを使用して、真空下で脱気した。混合物を取り出し、55℃に冷却し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に25ml注いだ。液体を、ナイフブレードを使用して均一に拡げて、300ミクロン厚さのタンパク質混合物の湿フィルムを得た。次いで、プレートを80℃で1時間オーブンに入れて、乾燥フィルムを形成した。
【0165】
タンパク質-デンプン単層フィルムC5の調製(有機酸処理工程を含まない)
(i)デンプン混合物の調製
可溶性ジャガイモデンプン11.25gを250mlフラスコ中、撹拌することによって、75gの室温の脱イオン水に分散させた。次いで、グリセロール5.625g及び植物油0.23gを添加し、懸濁液を撹拌した。次いで、TS113プローブによりBandelin Sonopuls HD4200を使用して、懸濁液を7分30秒間超音波処理(高強度超音波)した。超音波処理機は、1秒のオン及び0.2秒のオフのサイクルで95%振幅の振幅に設定した。懸濁液を確実に均質にするために超音波処理全体を通して撹拌した。更なる加熱はなかったが、超音波処理のエネルギーにより、超音波期間の終了時までに混合物の温度は80℃超に上昇した。次いで、混合物を、80℃で30分間加熱超音波水浴に入れて、取り込まれた気泡を逃がした。
【0166】
(ii)PPI混合物の調製
エンドウ豆タンパク質単離物(PPI)7.5gを、オーバーヘッド撹拌機を使用して、250mlトールビーカー中100gの水に添加して、均質なペーストを形成した。次いで、TS113プローブを備えたBandelin Sonopuls HD4200を使用して、PPI混合物を7分30秒間超音波処理(高強度超音波)した。超音波処理機は、1秒のオン及び0.2秒のオフのサイクルで50%の振幅に設定した。懸濁液を確実に均質にするために超音波処理全体を通して断続的に撹拌した。
【0167】
(iii)タンパク質-デンプン混合物の調製
工程(ii)からのPPI混合物150ml及び乳酸0.54gを、工程(i)からのデンプン混合物に添加した。合わせた混合物を、Bandelin Sonopuls HD4200を使用して、1秒のオン、0.2秒のオフのサイクルで50%の振幅で3分間超音波処理した。次いで、合わせた混合物を、80℃で5分間超音波浴に入れて、気泡の除去を補助した。
【0168】
(iv)フィルム形成
工程(iii)からの合わせた混合物25mLを、残留する大きな塊を除去するために茶こしを通して50ml Falconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去し、Falconチューブを80℃で5分間超音波浴に入れることによって混合物を更に脱気した。混合物を取り出し、55℃に冷却し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注いだ。液体を、ナイフエッジを備えたRK Kコントロールコーターモデル101を使用して、プレート上に均一に拡げて、1000ミクロンの均一な厚さのフィルムを得た。次いで、ガラスプレートを80℃で1時間オーブンに入れた。この時間の後、フィルムは、試験準備済みのMylar表面から剥離することができた。
【0169】
タンパク質-デンプン単層フィルムE5の調製
(i)デンプン混合物の調製
可溶性ジャガイモデンプン22.50gを250mlフラスコ中、撹拌することによって、150gの室温の脱イオン水に分散させた。次いで、グリセロール5.625g及び植物油0.23gを添加し、懸濁液を撹拌した。次いで、TS113プローブを備えたBandelin Sonopuls HD4200を使用して、懸濁液を14分15秒間超音波処理(高強度超音波)した。超音波処理機は、1秒のオン及び0.2秒のオフのサイクルで95%の振幅に設定した。懸濁液を確実に均質にするために超音波処理全体を通して撹拌した。超音波処理後、乳酸0.54gを、撹拌しながら添加した。更なる加熱はなかったが、超音波処理のエネルギーにより、超音波期間の終了時までに混合物の温度は80℃超に上昇した。次いで、混合物を、80℃で30分間加熱超音波水浴に入れて、取り込まれた気泡を逃がした。
【0170】
(ii)PPI混合物の調製
水30gを、250mlトールビーカー中、オーバーヘッド撹拌機を使用してエンドウ豆タンパク質単離物7.5gと混合して、均質なペーストを形成した。次いで、酢酸70mlをグリセロール1.876gと共に撹拌しながら添加した。次いで、TS113プローブを備えたBandelin Sonopuls HD4200を使用して、懸濁液を7分30秒間超音波処理(高強度超音波)した。超音波処理機は、1秒のオン及び0.2秒のオフのサイクルで50%の振幅に設定した。懸濁液を確実に均質にするために超音波処理全体を通して断続的に撹拌した。
【0171】
(iii)タンパク質-デンプン混合物の調製
工程(ii)からのPPI混合物150ml及び乳酸0.54gを、工程(i)からの全デンプン混合物に添加して、合わせた混合物を形成した。合わせた混合物を、Bandelin Sonopuls HD4200を使用して、1秒のオン、0.2秒のオフのサイクルで50%の振幅で3分間超音波処理した。次いで、合わせた混合物を、80℃で5分間超音波浴に入れて、気泡の除去を補助した。
【0172】
(iv)フィルム形成
工程(iii)からの合わせた混合物25mLを、残留する大きな塊を除去するために茶こしを通して50mlのFalconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去し、Falconチューブを80℃で5分間超音波浴に入れることによって混合物を更に脱気した。混合物を取り出し、55℃に冷却し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注いだ。液体を、ナイフエッジを備えたRK Kコントロールコーターモデル101を使用して、プレート上に均一に拡げて、1000ミクロンの均一な厚さのフィルムを得た。次いで、ガラスプレートを80℃で1時間オーブンに入れた。この時間の後、フィルムは、試験準備済みのMylar表面から剥離することができた。
【0173】
ジャガイモデンプン-タンパク質単層フィルムE6の調製
(i)デンプン混合物の調製
脱イオン水500mlを、600mlビーカー中、室温でオーバーヘッド撹拌機を使用してジャガイモデンプン50gと混合した。次いで、グリセロール21.43gを添加し、懸濁液を撹拌した。次いで、デンプン単層フィルムC2の調製の工程(i)に記載した手順に従って、懸濁液を超音波処理(高強度超音波)し、加工した。
【0174】
(ii)フィルム形成 - デンプン層
工程(i)で生成した混合物5mlを50mlFalconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去し、Falconチューブを80℃で5分間超音波浴に入れることによって混合物を更に脱気した後、取り出し、55℃に冷却した。液体を、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注ぎ、ナイフブレードを使用してプレート上に均一に拡げて、100ミクロンのタンパク質混合物の湿フィルムを得た。次いで、ガラスプレートを80℃で30分間オーブンに入れて、乾燥フィルム層を形成した。
【0175】
(iii)タンパク質混合物の調製
水150gを、600mlビーカー中、オーバーヘッド撹拌機を使用して室温でエンドウ豆タンパク質単離物(PPI)37.5gと混合して、均質なペーストを形成した。次いで、酢酸350ml及びグリセロール10.89gを撹拌しながら添加した。次いで、タンパク質単層フィルムC1の調製の工程(i)に記載した手順に従って、混合物を超音波処理(高強度超音波)し、加工した。
【0176】
(iv)フィルム形成 - タンパク質層
工程(iii)で生成した混合物25mlを50ml Falconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去し、Falconチューブを80℃で1分間超音波浴に入れた後、55℃に冷却することによって混合物を更に脱気し、次いで、ナイフブレードを使用して、工程(ii)で調製した乾燥フィルムの露出面(すなわち、ガラスプレートと接触していない表面)に拡げて、およそ500ミクロン厚さのPPI混合物の湿フィルムを得た。次いで、プレートを80℃で30分間オーブンに入れて、多層フィルムを形成した。
【0177】
ジャガイモデンプン-タンパク質多層フィルムE7の調製
(i)デンプン混合物の調製
デンプン混合物を、フィルムE6の調製の工程(i)の手順に従って調製した。
【0178】
(ii)フィルム形成 - デンプン層
工程(i)からの混合物の15mLを、ガラスプレートのMylar表面に300ミクロンの湿フィルム厚さを適用したことを除いて、フィルムE6の調製の工程(ii)に従ってフィルムにキャストした。フィルムを80℃で30分間静置して乾燥させた。
【0179】
(iii)タンパク質混合物の調製
PPI混合物を、フィルムE6の調製の工程(iii)の手順に従って調製した。
【0180】
(iv)フィルム形成 - タンパク質層
工程(iii)からの混合物25mlを、フィルムE6の調製の工程(iv)に従って、工程(ii)で調製した乾燥フィルムの露出面に拡げた。
【0181】
ジャガイモデンプン-タンパク質多層フィルムE8の調製
(i)デンプン混合物の調製
デンプン混合物を、フィルムE6の調製の工程(i)の手順に従って調製した。
【0182】
(ii)フィルム形成 - デンプン層
工程(i)からの混合物5mLを、フィルムE6の調製の工程(ii)に従ってフィルムにキャストした。
【0183】
(iii)タンパク質混合物の調製
PPI混合物を、フィルムE6の調製の工程(iii)の手順に従って調製した。
【0184】
(iv)フィルム形成 - タンパク質層
工程(iii)からの混合物45mlを、900ミクロンの湿フィルム厚さを適用したことを除いて、フィルムE6の調製の工程(iv)に従って、工程(ii)で調製した乾燥フィルムの露出面に拡げた。フィルムを80℃で60分間静置して乾燥させた。
【0185】
ジャガイモデンプン-タンパク質多層フィルムE9の調製
(i)デンプン混合物の調製
デンプン混合物を、フィルムE6の調製の工程(i)の手順に従って調製した。
【0186】
(ii)フィルム形成 - デンプン層
工程(i)からの混合物の25mLを、ガラスプレートのMylar表面に500ミクロンの湿フィルム厚さを適用したことを除いて、フィルムE6の調製の工程(ii)に従ってフィルムにキャストした。フィルムを80℃で60分間静置して乾燥させた。
【0187】
(iii)タンパク質混合物の調製
PPI混合物を、フィルムE6の調製の工程(iii)の手順に従って調製した。
【0188】
(iv)フィルム形成 - タンパク質層
工程(iii)からの混合物25mlを、フィルムE6の調製の工程(iv)に従って、工程(ii)で調製した乾燥フィルムの露出面に拡げた。
【0189】
ジャガイモデンプン/プルラン-タンパク質多層フィルムE10の調製
(i)デンプン/プルラン混合物の調製
ジャガイモデンプン37.5g及びプルラン37.5gを、600mlビーカー中、オーバーヘッド撹拌することによって、500mlの新たに沸騰させた脱イオン水に分散させた。ホットプレートを使用して、溶液を80℃超に維持した。次いで、グリセロール18.75gを添加し、混合物を更に2分間撹拌した。
【0190】
(ii)フィルム形成 - デンプン/プルラン層
工程(i)からの混合物25mLを、FlackTek Speedmixerを使用して真空下で脱気し、55℃に冷却し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注いだ。液体を、ナイフブレードを使用してプレート上に均一に拡げて、300ミクロンのデンプン/プルラン混合物の湿フィルムを得た。フィルムを80℃で30分間静置して乾燥させた。
【0191】
(iii)タンパク質混合物の調製
PPI混合物を、フィルムE6の調製の工程(iii)の手順に従って調製した。
【0192】
(iv)フィルム形成 - タンパク質層
工程(iii)からの混合物25mlを、フィルムE6の調製の工程(iv)に従って、工程(ii)で調製した乾燥フィルムの露出面に拡げた。
【0193】
タピオカデンプン-タンパク質多層フィルムE11の調製
(i)デンプン混合物の調製
25.0gのタピオカデンプンを、オーバーヘッド撹拌することによって400mlビーカー中、室温で200mlの脱イオン水に分散させた。次いで、グリセロール6.25gを添加し、懸濁液を撹拌した。次いで、TS113プローブを備えたBandelin Sonopuls HD4200を使用して、1秒のオン、0.2秒のオフのサイクルで95%の振幅で懸濁液を25分間超音波処理(高強度超音波)した。懸濁液を確実に均質にするために超音波処理全体を通して撹拌した。次いで、溶液を80℃で30分間超音波浴に入れて、泡を除去した。
【0194】
(ii)フィルム形成
溶液12.5mlを50ml Falconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去し、Falconチューブを80℃で5分間超音波浴に入れることによって溶液を更に脱気した。混合物を取り出し、55℃に冷却し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注いだ。液体を、ナイフブレードを使用して均一に拡げて、200ミクロン厚さのタンパク質混合物の湿フィルムを得た。次いで、プレートを80℃で30時間オーブンに入れて、乾燥フィルムを形成した。
【0195】
(iii)タンパク質混合物の調製
水60mlを、400mlビーカー中、オーバーヘッド撹拌機を使用して室温でエンドウ豆タンパク質単離物(PPI)16gと混合して、均質なペーストを形成した。次いで、酢酸140ml及びグリセロール6.86gを撹拌しながら添加した。次いで、TS113プローブを備えたBandelin Sonopuls HD4200を使用して、懸濁液を15分間超音波処理(高強度超音波)した。超音波処理機は、1秒のオン及び0.2秒のオフのサイクルで50%の振幅に設定した。懸濁液を確実に均質にするために超音波処理全体を通して断続的に撹拌した。
【0196】
(iv)フィルム形成 - タンパク質層
工程(iii)で生成した混合物20mlを50ml Falconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去し、Falconチューブを80℃で1分間超音波浴に入れた後、55℃に冷却することによって混合物を更に脱気し、次いで、ナイフブレードを使用して、工程(ii)で調製した乾燥フィルムの露出面(すなわち、ガラスプレートと接触していない表面)に拡げて、およそ400ミクロン厚さのPPI混合物の湿フィルムを得た。次いで、プレートを80℃で30分間オーブンに入れて、多層フィルムを形成した。
【0197】
タピオカデンプン/タンパク質単層フィルムE12の調製
E11の工程(i)で生成した混合物50mlを、室温でオーバーヘッド撹拌機を使用して、250mlビーカー中、E11の工程(iii)で生成した混合物100mlに添加して、均質な混合物を形成した。混合物を80℃で5分間超音波浴に入れて、泡を除去した。混合物30mlを50ml Falconチューブに注いだ。混合物を取り出し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注ぎ、ナイフブレードを使用してプレート上に均一に拡げて、600ミクロンのタンパク質-デンプンブレンドの湿フィルムを得た。次いで、ガラスプレートを80℃で1時間オーブンに入れて、乾燥フィルムを形成した。
【0198】
デンプン-タンパク質多層フィルムE13の調製
(i)デンプン混合物の調製
室温の脱イオン水2000mlを、Klarsteinフードプロセッサー(Grand Prix Chef Edition)中、グリセロール85.7gと混合した。次いで、ジャガイモデンプン200gを添加し、プログラム:温度85℃、速度4、45分を開始した。次いで、バッチを、脱気のために、1/4hp 3cfm一段真空ポンプと接続したVEVOR真空チャンバーに移動させた。材料を容器に注ぎ、次いで容器を封止し、スラリーが気泡を含まなくなるまで真空ポンプを5~10分間操作した。
【0199】
(ii)フィルム形成 - デンプン層
デンプン層のキャストは、圧力ベッセル、流体ポンプ、スロットダイユニット、供給ローラー、張力制御を可能にする一連のローラー及びロードセルを横切るウェブ、およそ2メートル長の乾燥オーブン、並びに巻取ローラーを備える標準のロールツーロール機を使用して行った。このキャストに使用した裏打ち材は、標準の72μm PETロールであった。(i)で調製したデンプン混合物を圧力ベッセルに注ぎ、次いで、きつく閉じて漏れないことを確実にした。次いで、ベッセルを1~2barに加圧し、デンプン混合物をプログレッシブキャビティポンプによりポンプ輸送してスロットダイに供給した。装置は、以下のパラメーターに設定した:
オーブン温度:100~140℃
ライン速度:0.4~1m/分
スロットダイ幅:300mm
流体ポンプ流量:50~120ml/分
裏打ち材からのスロットダイ距離:0.2~0.4mm
スロットリップ間のシム距離:150~200μm
【0200】
湿厚さは、300~550μmの間で様々であり、パラメーターを調節することによっておよそ350μmに調整した。次いで、オーブン乾燥から出したフィルム及び得られたロールを、収集ワインダーから移動させ、第2のフィルムをその上部にキャストできるように供給ロールとして配置した。
【0201】
(iii)タンパク質混合物の調製
水740gを、1000mlトールビーカー中、オーバーヘッド撹拌機を使用してエンドウ豆タンパク質単離物(PPI)94.4gと混合して、均質なスラリーを形成した。次いで、酢酸60g及びグリセロール23.6gを撹拌しながら添加した。混合物を、10分毎に振とうしながら、90℃の水浴に20~30分間入れた。この工程の後、スラリーをHielscher 1kW超音波処理器(ブースターを備える)に移し、合計200kJのエネルギーを、約30分毎に振とうしながら適用した。超音波処理は、目標エネルギーに達するのにおよそ30分を要した。プロセスを3回繰り返して、合計2400mlの生成物を生成し、次いでこれを、Synergy社製のFlacktek Speedmixerを3~5分、2000rpm;50mBarの設定で使用して脱気した。
【0202】
(iv)フィルム形成 - タンパク質層
工程(ii)に記載した通りのコーティング装置を、この層に使用したが、裏打ち材は、既にデンプンの第1の層がコーティングされていた。工程(iii)で調整したタンパク質混合物を圧力ベッセルに注ぎ、コーターを以下のパラメーターに設定した:
オーブン温度:100~130℃
ライン速度:0.7~1m/分
スロットダイ幅:300mm
流体ポンプ流量:40~120ml/分
裏打ち材からのスロットダイ距離:0.2~0.25mm
スロットリップ間のシム距離:150~200μm
【0203】
オーブン乾燥から出した多層フィルムは、最小限の泡及び/又は欠陥を示した。2層は各々、およそ30μmの厚さを有した。
【0204】
デンプン-タンパク質多層フィルムE14の調製
(i)デンプン混合物の調製
デンプン混合物を、フィルムE13の調製の工程(i)に記載した手順に従って調製した。
【0205】
(ii)フィルム形成 - デンプン層
工程(i)に記載したバッチ2000mlを、フィルムE13の調製の工程(ii)に記載した手順に従ってフィルムのロールにキャストした。
【0206】
(iii)タンパク質混合物の調製
脱イオン水1200gを測定し、大きな3Lステンレス鋼ベッセルに注いだ。ベッセルを95℃に設定した水溶に入れ、インペラブレードを備えたオーバーヘッド撹拌機を使用して900rpmで水を混合した。エンドウ豆タンパク質単離物320gを混合物に添加し、均質な混合物が形成されるまで3分間撹拌したままにした。酢酸800gを測定し、混合物に注ぎ、これを、700rpmで40分間撹拌した。混合物の温度を測定して、85℃に達していることを確認し、必要であれば、撹拌を少なくとも10分間継続して、混合物が確実に85℃に達するようにした。その後、混合物を、Silverson高せん断ホモジナイザーを7000rpmで3分間使用して、せん断した。
【0207】
次いで、新たにせん断混合したスラリーをプラスチック製の平坦容器又は大きなペトリ皿に、およそ10mmの高さに注いだ。次いで、容器を封止し、冷蔵庫で16~28時間保存した。
【0208】
保存後、形成したゲルを1cm×1cm四方に切り出し、スパチュラを使用して、ゲルキューブを75μmフィルターバッグに移した。次いで、6lの逆浸透水を含有するバケツ中、ゲルキューブを有するバッグを懸濁した。1時間30分後、3lの水を除去し、3lの新しい逆浸透水に交換した。バッグ及びゲルキューブは水中に残し、90~150分間、20分毎に旋回させた。pHを測定し、2.9未満であった場合、次いで、pHが2.9超の値に達するまで先の2工程を繰り返した。
【0209】
次いで、フィルターバッグを水から引き上げ、激しくしぼって、過剰の水を可能な限り除去した。次いで、スラリーを1l容器に移し、Ultra-Turraxミキサーを使用して、ゲルマッシュを、5分毎に振とうしながら15000rpmで15分間せん断した。次いで、グリセロール21.71gを混合物に添加した後、更に5分間、15000rpmでUltra-Turrax混合した。次いで、容器を氷浴に入れ、混合物を、0.25kJ/mlに達するまで、Hielschler超音波処理器で超音波処理した。スラリーを212μmメッシュに通してろ過し、プラスチックバケツに保存した。
【0210】
(iv)フィルム形成 - タンパク質層
工程(iii)で調製した混合物2000mlをフィルムE13の工程(iv)に記載したコーターの加圧ベッセルに注いだ。装置の設定に以下のパラメーターを使用した:
オーブン温度:100~115℃
ライン速度:0.5~0.9m/分
スロットダイ幅:300mm
流体ポンプ流量:50~90ml/分
裏打ち材からのスロットダイ距離:0.15~0.2mm
スロットリップ間のシム距離:150~200μm
【0211】
オーブン乾燥から出した多層フィルムは、最小限の泡及び/又は欠陥を示した。2層は各々、およそ30μmの厚さを有した。
【0212】
調製したフィルムの各々の組成をTable 1(表1)に示す。
【0213】
【表1A】
【0214】
【表1B】
【0215】
【表1C】
【0216】
(実施例2)
多糖単層の融解開始温度及び封止強度の決定
(i)多糖単層の調製
多糖10.0gを、オーバーヘッド撹拌することによって250mlフラスコ中、室温で100mlの脱イオン水に分散させた。次いで、グリセロール4.29gを添加し、懸濁液を撹拌した。次いで、Bandelin超音波処理器を使用して、1秒のオン、0.2秒のオフのサイクルで95%の振幅で懸濁液を10分間超音波処理した。次いで、溶液を80℃で1分間超音波浴に入れて、泡を除去した。
【0217】
溶液20mlを50ml Falconチューブに注いだ。次いで、ピペットで大きな泡を除去することによって溶液を更に脱気した後、55℃に冷却し、Mylar表面を有する平坦ガラスプレート上に注いだ。液体を、ナイフブレードを使用して均一に拡げて、およそ400ミクロン厚さの湿フィルムを得た。次いで、プレートを80℃で50分間オーブンに入れて、フィルムの層を乾燥させた。
【0218】
(ii)示差走査熱量計(DSC)による融解開始温度の測定
工程(i)で生成されたフィルムを55%相対湿度及び20℃で終夜調整した。融解開始温度は、水分レベルを含む全フィルム組成物の関数である。小試験試料(10~20mg)を各フィルムから切り出し、正確に秤量した。各試料を40μLアルミニウムパン(#51119870、Mettler Toledo社から購入)に入れ、Mettler Toledo社製DSC822eを使用して、窒素雰囲気中、10℃/分の加熱速度で25℃から160℃に加熱した。封止前に、50μm直径針を使用してパンの蓋に穴を開けた。空のパンを参照として使用した。正規化された熱流を記録し、温度の関数としてプロットした。
【0219】
試料の融解開始温度は、温度上昇に伴う試料への熱流の速度増加を示すDSC曲線の第1の変曲点として定義される。試料が融解し始めるにつれて、試料への熱流が増加し、したがって、グラフの勾配変化及び変曲点が生じる。
【0220】
グラフの変曲点は、正規化された熱流プロットをオペレーターが目視評価して決定することができる。しかしながら、この分析は、今では典型的にはソフトウェア分析ツールを使用して行われる。そのような分析ツールは、典型的には、装置操作システムの一部として含まれる。好適なソフトウェアとしては、Mettler-Toledo社によって供給されているSTARe評価ソフトウェアを挙げることができる。
【0221】
上記で得られた正規化されたDSCプロットからのデータを、STARe評価ソフトウェアバージョン16.30を使用して分析して、融解開始温度を決定した。結果を下記のTable 1(表2)に示す。デンプン混合物の熱特性は、熱処理前のデンプン中のアミロース対アミロペクチンの相対比、及び他の成分の性質の複雑な組合せである。
【0222】
【表2】
【0223】
(iii)封止強度の決定
工程(i)で生成したいくつかの層の試験試料を調製し、封止強度測定に供した。25mm幅の試験試料を、ASTM F88/F88M-15に示される寸法に切り出し、55%RH及び20℃で終夜調整した。次いで、試験ストリップ試料を、RDMヒートシーラーを使用して封止して、フィンシールを得た。封止試験片を、Tinnius Olsen引張試験機において技術A(不支持)を使用して試験した。100℃の封止温度及び1秒の滞留時間を用いた。結果を下記のTable 2(表3)に示す。
【0224】
【表3】
【0225】
上記で実証した通り、材料の融解開始温度は、強封止を形成する能力に逆に関連する。例えば、STTベースの層は、低開始温度を有し、強封止を形成する。BPSベースの層は、わずかにより高い開始温度を有し、強い封止も形成する。しかしながら、CSSベースの層は、はるかに高い開始温度を有し、結果として、はるかに低い封止強度を有する封止を形成する。
【0226】
本発明の多層フィルムの多糖含有層のより低い開始温度は、多数の理由で有利である。より強い封止強度を実現できることが実証されただけでなく、より低い開始温度は、内部多糖含有層の効果的な封止をもたらすために本発明の多層フィルムの外側アルギネート含有層により低温を適用する必要があることも意味する。これは、フィルム分解(例えば、燃焼の結果として)が回避され、また、封止を形成するために必要な滞留時間がより短く、封止プロセスがより産業的に実行可能なものとなることを意味する。
【0227】
(実施例3)
フィルム引張り強さ及び伸びの測定
長さ80mm及び幅10mmの長方形試験試料を切り出し(これは、ASTM D882に記載される仕様の範囲内である)、55%RH及び22℃で終夜調整した。試験試料を、平坦グリップインサート、50mmの初期グリップ間隔、及び50mm/分の試験速度(1mm/mm・分の歪み速度)を用いてTinnius Olsen引張試験機を使用して試験した。
【0228】
試験片の切断には最大限の注意を払って、早期破断を引き起こす切り込み及び裂け目を防止し、確実に一定の試料品質となるようにした。
【0229】
結果を下記のTable 3(表4)に示す。引張り強さはMPaで、破断伸びは%で報告した。
【0230】
【表4】
【0231】
タンパク質単層フィルム(C1)は、予想通り、多糖単層フィルム(C2、C3、C4)よりも高い引張り強さを有した。
【0232】
ジャガイモデンプン単層フィルム(C2)は、非常に低い引張り強さを有し、フィルムとしての産業適用に適さなかった。しかしながら、ジャガイモデンプン及び有機酸処理タンパク質の混合物から作製された単層フィルム(E5)は、良好な引張り強さ及び%破断歪みを有し、頑強で容易に取り扱うことができるフィルムをもたらした。
【0233】
タンパク質を酸で処理していない同等の単層フィルム(C5)は、乾燥時にフィルムが割れ、実行可能なフィルムが生成せず、引張り強さ又は伸びについて試験できなかった。
【0234】
タピオカデンプン単層フィルム(C3)は、非常に低い引張り強さを有し、フィルムとしての産業適用に適さなかった。しかしながら、単層フィルム(E12)として低レベルのタピオカデンプンをタンパク質とブレンドすることで、タンパク質引張り強さ及び伸びが低下するが、これは、取り扱い、サシェに作製するためになお許容されるレベルであった。等価な多層フィルム(E11)は、引張り強さ又は伸びの低下が単層フィルムよりも少なかった。
【0235】
様々な比で様々な多糖(ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、プルラン)を有する多層は、すべて、良好な引張り強さ及び伸びを有した(E6、E7、E8、E9、E10、E11)。
【0236】
有機酸のレベルが低い多層フィルム(E13及びE14)は、非常に良好な引張り強さを有するフィルムをもたらした。
【0237】
(実施例4)
封止強度の測定
25mm幅の試験試料を、ASTM F88/F88M-15に示される寸法に切り出し、55%相対湿度及び20℃で終夜調整した。次いで、試験ストリップ試料を、RDMヒートシーラーを使用して封止して、フィンシールを得た。封止試験片を、Tinnius Olsen引張試験機において技術A(不支持)を使用して試験した。120℃の封止温度、及び1秒の滞留時間、及び3~5barの間の圧力を用いた。封止圧力は、封止強度に対して無視できる影響しか有さないことが周知である。結果を下記のTable 4(表5)に示す。各試験片に破断まで応力をかけた際に遭遇した最大力をニュートン/メートル(N/m)として報告する。
【0238】
【表5】
【0239】
予想通り、タンパク質単層フィルムC1は、熱封止しなかった。
【0240】
多糖単層フィルムC2、C3及びC4は、非常に高い熱封止強度を有した。
【0241】
タピオカデンプン及びタンパク質単層フィルムのブレンド(E12)は、タピオカは、タピオカデンプン単層フィルム(C3)と比較してより低い封止強度を有するが、これは、産業プロセスにおいてサシェを形成するのになお許容される。多層(E11)として調製した同じ組成物は、タピオカデンプン単層(C3)の高封止強度を維持するため、好ましい。
【0242】
デンプン-プルラン:タンパク質多層(E10)は、デンプン-プルラン単層(C4)の優れた高封止強度を維持する。
【0243】
ジャガイモデンプン:タンパク質多層は、デンプンのレベルが非常に低い場合(E6、E7、E8、E9)でさえ、許容される封止を有する。
【0244】
タンパク質/デンプン多層E6(67μmのフィルム厚さを有し、55%相対湿度及び20℃の温度で調整し、保存した)を、異なる封止温度で、1秒の滞留時間及び5barの圧力での更なる封止強度試験にかけた。平均及び最大封止強度の結果を、下記のTable 5(表6)に示す。
【0245】
【表6】
【0246】
このフィルム組成物の場合、理想的な熱封止温度は130℃であり、このとき、平均及び最大封止強度は最大に達した。より低温では、デンプンをゼラチン化し、良好な封止を形成するのに加熱が不十分であった。高温では、材料が分解し始め、封止強度が低下した。
【0247】
(実施例5)
食器洗い機用タブレットサシェの分散
多層フィルムE7を使用して、フィルムの長さに沿って、端部をRS PROヒートシーラーをパワー2で用いて熱封止することによって、サシェを生成した。封止サシェは、事前にPVOHで包装された、Reckitt Benckiser社製の市販の食器洗い機用Finish(登録商標)タブレットを含有した。サシェは、容易に取り扱い、その完全性を維持することができた。
【0248】
フィルムの分散及び製品の溶解を、Bosch「シリーズ2」食器洗い機を使用して、実際の生活条件で試験し、市販のPVOH包装タブレットと比較した。選択したサイクルは、45℃で45分間洗浄するEco 45であり、食器洗い機のサイクルを5分毎に一時停止して、サシェの状態を評価し、タブレットの溶解を評価した。Table 6(表7)は、本発明のフィルムがサイクルの最初の10分間でどのように分散したかを示し、それは、15分後に完全に分散し、サイクルの終了時にはフィルムの痕跡はなかった。これは、やや速く最初に溶解する対照PVOHフィルムと比較して好都合である。図2は、食器洗い機のサイクル中の、本発明のフィルムで包装したタブレットの溶解を示す。図2aは、食器洗い機を開始する前のインタクトな包装及びタブレットを示す。図2bは、サイクルに入れて5分に対応し、図2cはサイクルに入れて10分に対応し、図2dはサイクルに入れて15分に対応し、図2dはサイクルの終了時に対応し、このときタブレットもフィルムの残存していない。
【0249】
【表7】
【0250】
この試験は、本発明のフィルムが、消費者が安全に取り扱うことができ、食器洗い機において水と接触すると洗剤を放出することができるサシェに作製されたことを実証する。
【0251】
(実施例6)
高湿度条件におけるタンパク質多層の融合抵抗
E7の多層フィルムを使用して、フィルムの長さに沿って、端部をRS PROヒートシーラーをパワー2で用いて熱封止することによって、サシェを生成した。封止サシェは、事前にPVOHで包装された、Reckitt Benckiser社製の市販の食器洗い機用Finish(登録商標)タブレットを含有した。サシェは、容易に取り扱い、その完全性を維持することができた。
【0252】
PVOHで包装された既存の食器洗い機タブレット製品に対する顧客からの最も一般的な種類の意見の1つは、包装タブレットが一緒に貼り付き、互いに融合し、それらを分離するのが困難となり、多くの場合、それらを使用できなくなることである。これは、PVOHが水への溶解速度が速い、つまり、環境における高湿度によりフィルムが粘着性になりうることに起因する。食器洗い機用タブレットを封入する本発明の多層で作製されたサシェの融合への抵抗性を試験するために、試料を、食器洗い機用洗剤製品が通常保存される、家庭の浴室又はキッチンのようなエリアで一般に見出される高湿度条件である70%相対湿度及び20℃で保存した。本発明のフィルムに包装されたタブレットを5個スタックして、PVOHに包装された市販のタブレットの同様のスタックと並べて保存した。高湿度への48時間の曝露後、試料を、互いからの分離のしやすさについて評価した。これは、重ねた山の1番上のタブレットを取り、単一のタブレットを取ることができたかを観察することによって行った。図3に見られる通り、本発明のフィルムに包装された試料はそのスタックから1番上のタブレットを個々に取るのに何ら問題も抵抗も示さなかった一方、図4では、PVOH包装試料は融合し、互いに貼り付き、意図せず上の3つのタブレットが一緒に取られた。
【符号の説明】
【0253】
1 第1の層
2 第2の層
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3
図4
【国際調査報告】