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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】モジュール式大容量電流リード
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/81 20230101AFI20241031BHJP
【FI】
H10N60/81 ZAA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526746
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 US2022049517
(87)【国際公開番号】W WO2023086453
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/278,850
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】521259219
【氏名又は名称】コモンウェルス・フュージョン・システムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】フライ,ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】ジューコフスキー,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】イーロフ,アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA02
4M114CC03
4M114DA35
4M114DA38
4M114DB02
(57)【要約】
大容量電流リード(10)は、インジウム接合部を使用して電気的に結合される構成要素を備える。電流リードは、室温部(100)と、真空低温槽内の部分(200)とを備える熱交換器を具備する。室温部は、過熱と過冷却との両方に対して温度管理されている。熱交換器の極低温部分(200)は、インジウム接合部を使用して、冷却剤沸騰チャンバ(300)に電気的に接続される。沸騰チャンバ(300)は、インジウム接合部を使用して電気的に結合され得るか、または蝋づけされ得る蓋および底部を備える。沸騰チャンバ(300)は、インジウム接合部を使用して底部に電気的に結合され得るか、または蝋づけされ得る、真空蓋によって取り囲まれる。底部は、超電導電磁石などのデバイスに電流を流すための高温超電導体(HTS)テープを備える、超電導体モジュール(400)に電気的に結合される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本または複数の室温電源線に電気的に接続するための室温部分を備える少なくとも1つの導電性構造体と、1つまたは複数の冷却剤排出ポートとを具備する熱交換器と、
1つまたは複数の冷却剤取入れポートと、前記熱交換器の前記少なくとも1つの導電性構造体に電気的に接続された少なくとも1つの導電性構造体とを備える沸騰チャンバであって、前記沸騰チャンバの前記少なくとも1つの導電性構造体と、前記熱交換器の前記少なくとも1つの導電性構造体との間の電気接続部が、インジウム電気接合部を備える、沸騰チャンバと、
前記沸騰チャンバの前記少なくとも1つの導電性構造体に電気的に接続された少なくとも1つの導電性構造体を備える超電導体モジュールであって、前記超電導体モジュールの前記少なくとも1つの導電性構造体が、高温超電導体(HTS)を備える、超電導体モジュールと
を具備する、電流リード。
【請求項2】
前記沸騰チャンバの前記少なくとも1つの導電性構造体と、前記熱交換器の前記少なくとも1つの導電性構造体との間の前記電気接続部が、前記沸騰チャンバの前記少なくとも1つの導電性構造体および前記熱交換器の前記少なくとも1つの導電性構造体にガルバニック的に接続された、機械的に圧縮されるインジウムを備える、請求項1に記載の電流リード。
【請求項3】
前記沸騰チャンバを前記熱交換器に取り付け、前記インジウムの電気接合部の機械的圧縮を可能にする複数のボルトを備える、請求項2に記載の電流リード。
【請求項4】
前記沸騰チャンバの前記少なくとも1つの導電性構造体が銅を含み、前記熱交換器の前記少なくとも1つの導電性構造体が銅を含む、請求項1に記載の電流リード。
【請求項5】
前記熱交換器の前記少なくとも1つの導電性構造体が、前記室温部分内へ延出し、前記1本または複数の室温電源線にガルバニック的に接続される銅要素を備える、請求項1に記載の電流リード。
【請求項6】
前記超電導体モジュールが、金属管または金属プレートを備え、前記管またはプレートが、その壁に1本または複数の流路を備え、前記HTSが、前記1本または複数の流路内に配置される、請求項1に記載の電流リード。
【請求項7】
前記熱交換器が、前記熱交換器の前記少なくとも1つの導電性構造体の周囲に配置された真空シェルを備える、請求項1に記載の電流リード。
【請求項8】
前記熱交換器の前記少なくとも1つの導電性構造体が、前記1つまたは複数の冷却剤取入れポートに結合されたチャンバを備える、請求項1に記載の電流リード。
【請求項9】
前記沸騰チャンバが、複数のフィンを備える、請求項8に記載の電流リード。
【請求項10】
前記熱交換器の前記少なくとも1つの導電性構造体が、1本または複数のガス流路を備え、前記熱交換器の前記チャンバが、前記1本または複数のガス流路に結合される、請求項8に記載の電流リード。
【請求項11】
請求項1に記載の電流リードと、前記1つまたは複数の冷却剤取入れポートに結合された液体窒素の供給源とを備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
リードは、電子機器において、電力の伝送を含む様々な目的に使用される、金属でできた電気接続部である。常電導磁石(resistive magnet)、たとえば室温で動作可能な銅または銅化合物のコイルでできた電磁石では、リードは、かなり単純でよく知られている。しかし、超電導磁石の電流リードは、室温(たとえば約293K、すなわち20°C)に設置された、ACからDCへの整流器などの電源から、極低温(たとえば80K、-193°C以下)で動作する超電導ワイヤまたはケーブルへ、大量の電力を伝達する必要がある。高温超電導体(HTS:high-temperature superconductor)は、大気の液体窒素を沸騰させることにより生成される、77K(-196°C)付近の温度で動作できるが、高磁場HTS磁石は常に、20K(-253°C)などのさらに低い温度で動作し、高磁場HTS磁石の性能は、実質的により優れている。電流リードは、したがって、磁石の充電中と動作中との両方で、室温における外部電力と極低温における磁気コイルとの間で、物理的および電気的に接続するが、熱的分離を実現する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
開示される実施形態は、迅速で非破壊的な分解およびモジュールでの試験、保守、ならびに構成要素の交換を可能にしながらも、電気接続および真空封止を実現する構成部分で組み立てられているという意味で、モジュール式である、大容量電流リードを提供する。具体的には、インジウムワイヤが、電流リードの特定の極低温構成要素を接続するために使用される。インジウムワイヤの電気および熱接合部、ならびに真空シールは、信頼性が高く、極低温に優しく、完全に修理可能である。対照的に、蝋づけなどの、部品を接合する従来技術の方法は、実質上恒久的であり、修復不可能である。開示される実施形態は、したがって、真空シールにおける漏れの存在など、不適切に蝋づけで組み立てられた場合に起こる可能性のある、コストおよびスケジュール上のリスクを軽減する。さらに、開示される実施形態は、リードの室温に対する加熱と冷却との両方が可能な、電源端子での温度調節を実現することができる。
【0003】
電流リードは、一実施形態によれば、室温部分、熱交換器、沸騰チャンバ、および超電導体モジュールを備えることができる。室温部分は、1本または複数の室温電源線に物理的および電気的に結合するよう構成され得る。電流を流すことと、ガス状冷却剤を同時に通過させることとの両方を実現する、2つの目的に用いられる熱交換器は、1本または複数の室温電源線に電気的に接続された少なくとも1つの導電性構造体と、1つまたは複数の冷却剤排出ポートとを備えることができる。沸騰チャンバは、1つまたは複数の冷却剤取入れポートと、熱交換器の少なくとも1つの導電性構造体に電気的に接続された少なくとも1つの導電性構造体とを備えることができる。沸騰チャンバの少なくとも1つの導電性構造体と、熱交換器の少なくとも1つの導電性構造体との間の電気接続部は、インジウム電気接合部を備えることができる。また、超電導体モジュールは、沸騰チャンバの少なくとも1つの導電性構造体に電気的に接続された少なくとも1つの導電性構造体を備えることができる。超電導体モジュールの少なくとも1つの導電性構造体は、高温超電導体(HTS)を備えることができる。
【0004】
沸騰チャンバの少なくとも1つの導電性構造体と、熱交換器の少なくとも1つの導電性構造体との間の電気接続部は、沸騰チャンバの少なくとも1つの導電性構造体および熱交換器の少なくとも1つの導電性構造体にガルバニック的に接続された(galvanically connected)、機械的に圧縮されるインジウムを備えることができる。
【0005】
電流リードは、沸騰チャンバを熱交換器に取り付け、インジウムの電気接合部の機械的圧縮を可能にする複数のボルトを備えることができる。
【0006】
沸騰チャンバの少なくとも1つの導電性構造体は銅を含むことができ、熱交換器の少なくとも1つの導電性構造体は銅を含むことができる。
【0007】
熱交換器の少なくとも1つの導電性構造体は、室温部分内へ延出し、1本または複数の室温電源線にガルバニック的に接続される銅要素を備えることができる。
【0008】
超電導体モジュールは、金属管または金属プレートを備えることができ、管またはプレートは、その壁に1本または複数の流路を備え、HTSは、1本または複数の流路内に配置される。
【0009】
熱交換器は、熱交換器の少なくとも1つの導電性構造体の周囲に配置された真空シェルを備えることができる。
【0010】
熱交換器の少なくとも1つの導電性構造体は、1つまたは複数の冷却剤取入れポートに結合されたチャンバを備えることができる。
【0011】
沸騰チャンバは、複数のフィンを備えることができる。
【0012】
熱交換器の少なくとも1つの導電性構造体は、1本または複数のガス流路を備え、熱交換器のチャンバは、1本または複数のガス流路に結合され得る。
【0013】
別の実施形態は、上記で説明された電流リードと、1つまたは複数の冷却剤取入れポートに結合された液体窒素の供給源とを備える、システムを具備する。
【0014】
本明細書で開示されている概念、技法、および構造は、他のやり方で具現化され得ること、したがって、開示されている実施形態の上記の概要は、包括的または限定的ではなく例示的なものであることを、意味することを理解されたい。特に、上記で具体的に記載されていない他の実施形態を形成するために、本明細書で説明されている様々な実施形態の個々の要素が組み合わされてもよい。また、単一の実施形態の文脈で説明されている様々な要素が、別々に、または任意の好適な部分的組合せで、他の実施形態で提供されてもよい。さらに、本明細書で具体的には説明されていない他の実施形態もまた、下記に記載の特許請求の範囲内にあり得る。
【0015】
開示されている実施形態を作り、使用するやり方および工程は、図面を参照することにより、理解され得、図面において、同様の構成要素には同様の番号が与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本明細書で開示されている概念、技法、および構造に従った、モジュール式の大容量電流リードを概略的に示す図である。
図2】一実施形態による、室温端子部(RTTP:room-temperature terminal portion)および熱交換器(HEX:heat exchanger)本体の別の部分を、概略的に示す図である。
図3】RTTPの熱動作を、概略的に示す図である。
図4】組み立てられた構成のRTTPを、概略的に示す図である。
図5A】HEXのRTTPおよび主体を備える、HEXの全体を示す図である。
図5B】冷却剤用溝とHEX本体を構成する導体との関係をより明確に例示するための、線A-Aに沿ったHEX本体の断面図である。
図5C】冷却剤ガスが、平行な溝を通って辿る経路を示す図である。
図6A】HEXが、一実施形態に従って、沸騰チャンバ(BC:boiling chamber)にどのように機械的に結合されているかを概略的に示す図である。
図6B】BC蓋真空シールを、より詳細に示す図である。
図6C】BC底部真空シールを、より詳細に示す図である。
図7】沸騰チャンバおよび真空蓋のモジュール式組立体を概略的に示す図である。
図8】HEX本体の、沸騰チャンバへの結合を概略的に示す図である。
図9A】極低温冷却剤が沸騰チャンバにどのように取り込まれるかを、概略的に示す図である。
図9B】極低温冷却剤のレベルがどのように測定され得るかを、概略的に示す図である。
図10A】ガス状冷却剤(たとえばガス状窒素)が、沸騰空洞からどのように出るかを、概略的に示す図である。
図10B】ガス状冷却剤が、真空蓋空洞からどのように出るかを、概略的に示す図である。
図11】組み立てられた熱交換器および沸騰チャンバを、概略的に示す図である。
図12A】真空蓋および沸騰チャンバ近傍の、締付け金具をより詳細に、概略的に示す図である。
図12B】下側の冷却剤レベル管ポートの構成を、概略的に示す図である。
図13】組み立てられた熱交換器と液体冷却剤を有する沸騰チャンバとの切断図を、概略的に示す図である。
図14A】一実施形態による、超電導体モジュールの複数の電気コネクタ(「ペタル」)のうちの1つを概略的に示す図である。
図14B】ペタルの上側銅部分および接続プレートの、蝋づけされる接続プレートの端部近傍の拡大図である。
図15】高温超電導体(HTS)テープをペタルに組み付けるやり方の、側面図である。
図16A】6つのペタルを備える超電導体モジュールの、側面図である。
図16B図16Aの超電導体モジュールの、底面斜視図である。
図17】一実施形態による、組み立てられた熱交換器/沸騰チャンバ/超電導体モジュールを通る電流の流れを、概略的に示す図である。
図18A】6つのペタルを備える超電導体モジュールの下部を、概略的に示す図である。
図18B】締付け固定具および超電導ケーブルが装備された、図18Aの超電導体モジュールの下部を概略的に示す図である。
図19】真空蓋および沸騰チャンバ蓋が、沸騰チャンバ底部に蝋づけされている、本明細書に開示されている概念、技法、および構造の一代替実施形態を概略的に示す図である。
図20A】本明細書で開示されている概念、技法、および構造の一実施形態に従った、「被覆された成形体(jacketed former)」である超電導体モジュールの断面を概略的に示す図である。
図20B図20Aの実施形態による成形体を、概略的に示す図である。
図20C図20Aおよび図20Bの実施形態による、成形体を取り囲む被覆物を、概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用されるように、材料の「臨界温度」は、材料が電気的伝導から電気的超伝導へ相の変化を起こす温度を意味する。臨界温度は、外部磁場の存在または内部輸送電流などの非材料条件によって変わる可能性がある。この用語は、本明細書で材料の臨界温度が言及される場合、所与の条件下でその材料に対して期せずしてあてはまるあらゆる臨界温度を指す。
【0018】
「室温」とは、人間の継続的な生活および仕事にとって快適な、周囲環境温度を指す。「室温」は、特に指定されていない場合、15°Cから30°Cの範囲の温度と解釈される。
【0019】
「高温超電導体」または「HTS」とは、自己磁場がゼロで30Kを超える臨界温度を持つ材料を指す。
【0020】
超電導磁石の電流リードは、上記で説明されたように、室温での電源から極低温で動作する超電導ワイヤまたはケーブルへ、大量の電力を伝達する。かかる電流リードは、したがって、室温での電源から極低温構成要素を熱的に分離しながら、電源と磁石の極低温構成要素との間の、物理的および電気的接続を可能にする。
【0021】
既存の電流リード設計、特に大電流を供給する電流リード設計には、2つの主な問題がある。第1に、HTS材料を含む典型的なリードの部品は通常、単一のユニットとして作製される。これは、銅、鋼、およびHTS材料がすべて、通常はんだづけおよび蝋づけによって一体に接合され、1つの大きなものになることを意味する。かかる構造体のHTS材料は、典型的には、従来の導電体に加えて、HTS材料を含む平坦な構造体であるHTSテープとして提供される。HTS部品が所望の電流を流すことができることを確認するためには、HTS部品全体を暖端の臨界温度未満に冷却するのに十分で、電流のすべてと、超電導体の品質が劣化しないことを保証するために必要となるあらゆるマージンとがそれを通過するのに十分な大きさの設備が必要となる。これは、特に大電流のHTS部品用の、非常に大規模な設備を必要とする。
【0022】
HTS部品の形状は、HTSの臨界電流と、電流を流すときに生成される磁場との関係により、典型的には円筒形であることに、留意することが重要である。要するに、磁力線が、超電導テープの平坦な面と平行に進むとき、HTSテープの臨界電流は最も大きくなる。こうした平坦なテープを、円筒の外径上に下向きに配置することにより、やはり円形で、したがってテープの面に平行な磁力線が得られ、これが、HTSテープの臨界電流を増やし、HTSにかかるコストを最小限に抑える。
【0023】
第2に、電流リードを構造的かつ電気的に連続させるばかりでなく、真空気密にするために、電流リードは、典型的には一体に蝋づけされる、(たとえば、常電導部品と超電導HTS部品との両方を備える)大きい組立体から形成される。真空蝋づけは、同種金属、または銅およびステンレス鋼などの異種金属を一体に接合することができ、蝋づけ工程が成功すると、非常に強力な構造的かつ電気的接着を生み出す。蝋づけ工程では、2種の材料が一緒に恒久的に接着するという、望ましくない結果が生じる場合があり得る。しかし、この場合、再度試みるためには材料が切り離される必要があり得、これは常に実行可能であるとは限らない。さらに、蝋づけは(はんだ付けと同様に)、接合表面で不完全であるため、通常は、2つの表面間の接合品質を調査するために、超音波など、何らかの非破壊検査を行うことが賢明である。シールとして機能する蝋づけされた連結面は、完全に連続していることが望ましく、さもなければ、電流リード内の冷却剤が周囲の真空空間に引き込まれ、電流リードの断熱特性が低下する可能性がある。蝋づけは、検査および修理が物理的に不可能な場合があるため、組立体全体を無駄にするリスクがある。
【0024】
別の一般的な接合方法に、高エネルギー電子を使って異種金属を一緒に溶解できる、電子ビーム溶接がある。この工程は、高度に専門化されており、大規模な試験を必要とし、大電流リードに必要な能力および規模を有する企業は、世界で数社しかない。
【0025】
ここで、一実施形態の物理的構造が、図を参照しながら説明される。この特定の実施形態は、本明細書で開示されている全般的な概念、技法、および構造を具体的に例示するため、詳細に説明されているが、この開示は、その教示から逸脱することなく、様々に具現化され得ることを理解されたい。したがって、この特定の実施形態の広がる議論は、限定的なものと見なされるべきではない。
【0026】
図1は、本明細書で開示されている概念、技法、および構造に従った、モジュール式の大容量電流リード10を概略的に示している。いくつかの実施形態によれば、「大容量」ケーブルは、1000アンペア(1kA)、10,000アンペア(10kA)、またはそれ以上を超える電流を伝導するケーブルを含むことができる。電流リード10は、室温端子部(RTTP)100および極低温被冷却体200を備える熱交換器(HEX)と、極低温冷却剤用の沸騰チャンバ(BC)300と、高温超電導体(HTS)を備える超電導体モジュール400とを具備する。様々な実施形態において、RTTP100は、約0.4メートルの高さであってもよく、HEX本体200は、約1メートルの高さであってもよく、沸騰チャンバ300は、約0.3メートルの高さであってもよく、超電導体モジュール400は、約1メートルの高さであってもよい。これらの測定値は、単に例示的なものであり、限定的なものと見なされるべきではないことを理解されたい。これらの構成要素が、次に、より詳細に説明される。
【0027】
図2は、一実施形態による、RTTP100およびHEX本体200の一部を概略的に示している。RTTP100は、電流リードを、1本または複数の室温電源線に電気的に接続するための電気伝送面110を備える、露出した導体102を具備する。RTTP100は、露出した導体102を冷却することにより、露出した導体の温度を調節するための、特には、(結露または凍結による)熱不足を防止し、また(抵抗性電力損失による)過熱を防止するための、冷却剤流路120も備える。室温の冷却剤は、温度調整された液水、または他の何らかの便利な冷却剤であってもよい。RTTP100はまた、1つまたは複数の極低温冷却剤排出ポート130も備える。RTTP100はまた、真空チャンバ低温槽への電流リード10の装着を可能にする、装着面140を備える。この装着面140の下方の電流リードは真空に曝されるので、HEX本体200は真空シェルで覆われ、真空シェルの一部210が図示されている。
【0028】
図3は、RTTP100の熱動作を概略的に示している。RTTP100は、上記で言及されたように、1つまたは複数の排出ポート130を備える。図3に示されているように、これらの排出ポート130は、電流リードの他の構成要素を冷却するために使用された極低温冷却剤を、流出させることを可能にする。極低温冷却剤は、例示的には液体窒素(LN2:liquid nitrogen)であるが、異なる実施形態では、別の冷却剤であってもよい。2つの冷却剤排気モードが図示されている。第1のモードでは、冷却剤が周囲環境へ直接発散される(たとえばLN2を、1気圧で、LN2の沸点77.3Kで大気中へ排気する)。第2のモードでは、沸騰冷却剤は、1つまたは複数の排出ポート130に結合された減圧ポンプ150を通して、ポンプ移送される(たとえばLN2を、約200hPa(150Torr)および65Kで)。下記で論じられるように、超電導体モジュール400が、超電導体モジュールの臨界温度に近すぎる場合、沸騰チャンバ300内の圧力を下げることが、LN2の温度を低下させる。
【0029】
図4は、組み立てられた構成のRTTP100を概略的に示している。プレートが、露出した導体102を通る冷却剤流路120を覆っている。プレートは、冷却剤流路120に結合された冷却剤流入口122および冷却剤排出口124を備える。露出した導体102の電気伝達面110は、プレートを介して、1つまたは複数の室温電源線160に物理的および電気的に接続されている。これらの供給線160は、ACからDCへの整流器などの外部電源に接続される。露出した導体102は、Oリングシール170または他の好適な封止機構によって、HEX本体200内の冷却剤通路から分離されている。
【0030】
図5Aは、熱交換器のRTTP100および本体200を備える熱交換器(HEX)の全体を示している。HEXは、銅などの、単一の連続した導電体でできている。HEXは、したがって、一方の端部から他方の端部まで、電気的に結合されている。真空シェル210は、図5Aには示されていない。HEX本体200は、複数の平行な冷却剤用溝220を備える。
【0031】
図5Bは、冷却剤用溝220とHEX本体を構成する導体との関係をより明確に例示するために、線A-Aに沿ったHEX本体200の断面図を示している。冷却剤用溝220は、すり割鋸または同様の工作機械を使用して作製され得る。HEX本体200はまた、HEX本体200に沿った相異なる場所にある冷却剤用溝220間の、冷却剤の特性(圧力および温度など)を均一にするための穴を備え、そのうちの1つは穴230である。図5Cは、冷却剤ガス222(たとえば、極低温窒素)が、平行な溝220を通ってHEX本体200の底部から上部まで辿る経路を示している。HEX本体200の上部は、HEXのRTTP100であり、一方、HEX本体の底部は、次に説明されるように、沸騰チャンバに熱的および電気的に結合されている。
【0032】
図6Aは、HEX100、200が、一実施形態に従って、沸騰チャンバにどのように機械的に結合されているかを概略的に示している。沸騰チャンバ(BC)は、BC蓋310およびBC底部320を備える。BC蓋310およびBC底部320は、銅、または真鍮などの他の導電性材料でできていてもよい。HEX本体200は、真空蓋240を介してBC蓋310に結合されている。真空蓋240は、極低温冷却剤を低温槽の真空から分離する、BC蓋真空シール312によってBC蓋310に封止される。BC蓋真空シール312は、実施形態によれば、インジウム電気接合部を備えることができる。BC蓋310は、同様に、極低温冷却剤を低温槽の真空から分離する、BC底部真空シール322によってBC底部320に封止される。さらに、BC底部真空シール322は、実施形態によれば、BC蓋310をBC底部320に電気的に接続し、インジウム電気接合部を備えることができる。
【0033】
図6Bは、BC蓋真空シール312をより詳細に示している。BC蓋真空シール312は、真空蓋240とBC蓋310との間に形成される。BC蓋真空シール312は、実施形態によれば、インジウムワイヤ314を備えることができる。インジウムワイヤ314は、直径が約0.762ミリメートル(0.030インチ)であり得るが、この寸法は単に例示的なものであり、限定的なものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0034】
図6Cは、BC底部真空シール322を、より詳細に示している。BC底部真空シール322は、BC蓋310とBC底部320との間に形成される。BC底部真空シール322は、実施形態によれば、電気接合部を提供する、インジウムワイヤ324a、324bを備えることができる。インジウムワイヤ324a、324bは、直径が約1.575ミリメートル(0.062インチ)であり得るが、この寸法は単に例示的なものであり、限定的なものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0035】
図7は、沸騰チャンバおよび真空蓋のモジュール式組立体を概略的に示している。真空蓋240は、BC蓋真空シール312によってBC蓋310に封止され、これは、インジウムシールの使用を含むことができる。BC蓋310は、真空封止され、BC底部真空シール322を介してBC底部320に電気的に結合されるが、これも、インジウムシールの使用を含むことができる。インジウムは可鍛性金属なので、このやり方で構成要素を互いに封止することには、試験、保守、および修理、または他の予見可能な目的のための、後の電流リードの非破壊的分解を可能にするという利点がある。BC底部320は、液体冷却剤を沸騰させるための核生成部位(nucleation site)として機能する、1つまたは複数のBCフィン328を備える。
【0036】
図8は、HEX本体200の、沸騰チャンバ300への結合を概略的に示している。HEX本体200は、1つまたは複数の内部BC蓋締付け金具によって、組み立てられた沸騰チャンバ300に機械的に結合され、これはボルトを使用して実施されてもよい。HEX本体200は、インジウムワイヤを使用して、それぞれの合わせ面316に沿って沸騰チャンバ300に電気的に結合されている。また、電気接合部としてインジウムを使用することが、後の電流リードの分解、特には、最小限の機械的ストレスでの、沸騰チャンバ300からのHEX本体200の分離を可能にする。真空蓋240も図示されており、真空蓋は、たとえば溶接または蝋づけであり得る、接合部250などの機械的接合部で、真空シェル210に封止される。とりわけ、BC蓋310がBC底部320に接合された後、ガス状冷却剤(たとえばガス状窒素、GN2:gaseous nitrogen)がその中で保持される、BC空洞326が形成される。核生成フィン328の近傍で形成された排出ガスは、図10Aおよび図10Bと共により詳細に説明されるように、BC空洞326を通って真空蓋空洞244内へ移動し、そこから、図5Cと共に説明されたように、HEX本体200に沿って上方に移動する。
【0037】
図9Aは、極低温冷却剤が、沸騰チャンバにどのように取り込まれるかを概略的に示している。熱交換器を覆う真空シェル210の下部、沸騰チャンバ(BC)用真空蓋240、BC蓋310、およびBC底部320が図示されている。極低温冷却剤供給導管330および真空蓋冷却剤取入れポート242も図示されている。真空蓋240は、沸騰チャンバの一部と解釈されてもよく、1つまたは複数の冷却剤取入れポート242を備えることができる。液体窒素(LN2)などの極低温冷却剤は、冷却剤供給導管330を通って流れ、冷却剤取入れポート242を使用して真空蓋に入る。極低温冷却剤は、冷却剤取入れポートから、BC空洞326(この図には示されていない)に入り、沸騰される。
【0038】
図9Bは、極低温冷却剤のレベルがどのように測定され得るかを概略的に示している。図9Aと共に説明された構造体は、冷却剤レベル管ポート344を介して、沸騰チャンバ300の外部にある冷却剤レベル管340に結合されている。液体冷却剤(たとえば、LN2)は、目視管と同じように、この垂直冷却剤レベル管340を満たす。冷却剤レベルセンサ342は、冷却剤レベルを測定する。この実施形態の冷却剤レベルセンサ342は、レベル管340の内部にある静電容量センサであるが、他の種類のセンサが使用されてもよい。
【0039】
図10Aは、ガス状冷却剤(たとえばGN2)が、沸騰チャンバからどのように出るかを概略的に示している。BC蓋310およびBC底部320が図示されており、BC蓋とBC底部との間に、沸騰空洞326(図示せず)が形成されている。熱交換器(HEX)底部200の下部も図示されている。BC蓋310には、アイテム318で示された、BC蓋冷却剤排出穴が設けられている。液体冷却剤が沸騰空洞326内で沸騰されると、冷却剤は、示されているように、これらの冷却剤排出穴を通って真空蓋空洞244内に流出する(空洞244の上部を形成する真空蓋240は、この図には示されていないが、図10Bでは示されている)。
【0040】
図10Bは、ガス状冷却剤が真空蓋空洞からどのように出るかを概略的に示している。図10Aに示されたように、沸騰チャンバから流出したガス状冷却剤は、それ自体の圧力下で、熱交換器(HEX)本体200の溝に押し込まれる。これらの溝は、図5Aおよび図5Bに示されている。これらの溝内にガス状冷却剤を保持する真空シェル210は、図10Bには示されていない。
【0041】
図11は、組み立てられた熱交換器(HEX)および沸騰チャンバを、概略的に示している。参考までに、周囲環境および低温槽の真空環境が図示されている。真空シェル210も図示されており、真空シェルは、真空蓋240の上部に溶接され、HEXの極低温部分を取り囲み、冷却剤が低温槽の真空および室温ガスから分離された状態を保つ。真空蓋240と、BC蓋310と、BC底部320との間のインジウムシールを一定の圧縮状態に保つ、圧縮要素350(例示的には、ねじが切られたロッドおよび締付け金具)も図示されている。
【0042】
図12Aは、真空蓋および沸騰チャンバ近傍にある、締付け金具をより詳細に、概略的に示している。真空蓋240、真空蓋冷却剤ポート242、BC蓋310、BC底部320、冷却剤レベル管ポート344、および圧縮要素350が図示されている。
【0043】
図12Bは、下側の冷却剤レベル管ポート344の構成を概略的に示している。ポート344は、貫通接続部360およびポート用インジウムワイヤ362を備える。貫通接続部360は、インジウムワイヤ362を圧縮するために、内部でナットによって固く締められ得る。インジウムワイヤ362は、直径が約0.762ミリメートル(0.030インチ)であり得るが、この寸法は単に例示的なものであり、限定的なものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0044】
図13は、組み立てられた熱交換器(HEX)と液体冷却剤を有する沸騰チャンバとの切断図を、概略的に示している。HEX本体200の下部は、インジウム接合部を使用してBC蓋310に電気的に接続され、上記で説明されように、内部BC蓋締付け金具によって圧縮される(図示せず)。液体冷却剤(たとえばLN2)370が、沸騰チャンバ内に図示されている。液体冷却剤370のレベルは、冷却剤供給導管330に接続された冷却剤充填弁を開閉することによって調節され得る。BC底部320は、沸騰作用の表面積を増やし、核生成部位として機能するように、BC底部の表面に機械加工された、同心円状のBCフィン328を備える。BCフィン328自体は、高さが約70mm、低部における幅が約8mmであり得るが、これらの寸法は単に例示的なものであり、限定的なものと見なされるべきではないことを理解されたい。いくつかの実施形態におけるBCフィン328は、円錐形ではなく、沸騰作用により生じるガス状冷却剤の泡を遮断するための「段差」を備えた、積み重ねられた円筒の形状を有する。しかし、沸騰作用に寄与する任意の形状であるフィンが、様々な実施形態で使用され得ることを理解されたい。
【0045】
図14Aは、一実施形態による、超電導体モジュール400の複数の電気コネクタ(「ペタル」)のうちの1つを概略的に示している。ペタルは、上側銅部分410、下側銅部分420、および接続プレート430を備える。例示する目的で、銅が使用されているが、他の伝導性金属が使用されてもよい。複数のペタルのそれぞれの上側銅部分410は、たとえば締め付けることによって、沸騰チャンバ(BC)底部320の下側に機械的に結合される。本明細書に開示されている概念、技法、および構造によれば、上側銅部分410のBC底部320への電気的結合は、インジウムワイヤ接合部を使用することができ、これは、試験、保守、および修理のために容易に分解できる機能を維持しながら、効率的な動作を促進する。接続プレート430は、接続プレートの表面に、確実にはんだを付着させるために、ニッケルめっきを施したステンレス鋼でできていてもよい。接続プレート430は、各端部440で、上側銅部分410および下側銅部分420にそれぞれ蝋づけされている。下側銅部分420は、給電されるデバイスの超電導部分、たとえば、核融合炉内のトロイダル電磁石に電力を伝達するために、超電導ケーブルに接続される。
【0046】
図14Bは、上側銅部分410および接続プレート430の、蝋づけされる接続プレートの端部440近傍の、拡大図を示している。上側銅部分410は、複数の浅い溝412を備え、接続プレート430は、複数の整列した浅い溝432を備える。様々な実施形態によれば、高温超電導体(HTS)テープまたはケーブルが、これらの溝412、432内に敷設され、次いで(たとえばはんだづけによって)所定の位置で安定化される。HTSテープは、上側銅部分410でBC底部320から受け取った電流を、電気抵抗値なしで下側銅部分420へ伝達する。下側銅部分420はまた、この目的のために、嵌め込まれたHTSテープ(図示せず)の浅い溝を備える。
【0047】
図15は、HTSテープをペタルに組み付けるやり方の側面図を示している。上側銅部分410、下側銅部分420、および接続プレート430が図示されている。例示的に、4枚のHTSテープが、各溝に、HTSテープのそれぞれの超電導面が銅に対向するように(すなわち、溝内へ「下向きに」)配置されている。HTSは、各端部で、図示のように「階段状」になっており、各テープの超電導面が、両方の銅部分に対して露出している。この実施形態では、階段状の構造が使用されているが、他の積層構造も使用され得る。HTSテープを各溝内に敷いた後、はんだが溝内に配置される。次いで、すべての構成要素を一緒にはんだづけするために、組立体全体が真空バッグに包まれ、加熱される。はんだづけされると、銅部分410、420の電流は、HTSテープに流入し、電気抵抗値ゼロかつ非常に低い熱伝導率で接続プレート430に進み、反対側から出ることができる。
【0048】
図16Aは、6つのペタルを備える超電導体モジュール400の側面図である。図16Bは、図16Aの超電導体モジュール400の底面斜視図である。ペタルは、インジウムワイヤを使用した、ペタルのBC底部320の下側への電気的接続、および締付け金具を使用した、ペタルの機械的接続の前に、性能を確認するために、液体冷却剤(たとえば、LN2)中で電気試験され得ることに留意されたい。この実施形態では、6つのペタルが使用されているが、原理的には、任意の数が使用され得る。
【0049】
図17は、一実施形態による、組み立てられたHEX200/BC300/超電導体モジュール400を通る電流の流れを、概略的に示している。ねじ付きロッドは、上記で言及されたように、様々な構成要素間のインジウムシールを、一定の圧縮状態に保つ。ボルトは、BC底部320を、超電導体モジュール400の上側銅部分410に、機械的に結合された状態に保つ。
【0050】
図18Aは、6つのペタルを備える超電導体モジュール400の下部を、概略的に示している。1つのペタルの下側銅部分420および接続プレート430が、特定されている。ブラケット450も図示されており、ブラケットの機能については、図18Bと共に論じられる。
【0051】
図18Bは、締付け固定具460および超電導ケーブル470が装備された、図18Aの超電導体モジュール400の下部を概略的に示している。締付け固定具460は、ブラケット450を締め付けて、それぞれの下側銅部分420を超電導ケーブル470に電気的に接続するために使用される、インジウムワイヤを圧縮する。締付け固定具460は、図示のように、ボルトで固定されてもよく、またはさもなければ、ブラケット450に対して締め付けられてもよい。超電導ケーブル470は、組立ておよび分解を容易にするために、銀めっきされ、インジウムワイヤで包まれていてもよい。
【0052】
図19は、本明細書に開示されている概念、技法、および構造の一代替実施形態を概略的に示しており、真空蓋および沸騰チャンバ(BC)蓋が、BC底部に蝋づけされている。HEX本体200’、真空シェル210’、真空蓋240’、真空蓋空洞244’、BC蓋310’、BC底部320’、大きいBC蓋冷却剤排出穴318’、BC空洞326’、BCフィン328’、冷却剤レベル管ポート344’、およびポート貫通接続部360’が図示されている。HEX本体200’とBC蓋310’との間の、インジウム電気接合部380’も図示されている。上記で説明された実施形態と同様に、真空シェル210’のすべての機械的接合部(たとえば角)が、溶接される。しかし、上記で言及されたように、真空蓋250’およびBC蓋310’は、BC底部320’に蝋づけされる。したがって、疲労寿命および高電圧絶縁材の適合性が設計上の懸念である場合、インジウムは、真空シールとして使用されない。しかし、インジウムは、本明細書で開示されている概念、技術、および構造に従って、電気接合部として使用され続けている。
【0053】
図20Aは、本明細書で開示されている概念、技法、および構造の一実施形態に従った、「被覆された成形体」である超電導体モジュール400’の断面を概略的に示している。超電導体モジュール400’は、上側銅部分410a、下側銅部分420a、およびステンレス鋼接続プレート430aを備える、内部成形体を具備する。超電導体モジュール400’はまた、上側銅部分410b、下側銅部分420b、およびステンレス鋼接続プレート430bを備える、外部被覆物を具備する。上側銅部分410a、410bはそれぞれ、銅の単一片であってもよく、環の周囲に十分な電気接続性を実現する。同様に、下側銅部分420a、420bはそれぞれ、銅の単一片であってもよく、接続プレート430a、430bはそれぞれ、ステンレス鋼の単一片であってもよい。上部構造体の間隙は、構造的および電気的安定性を生み出すために、はんだで充填され得る。
【0054】
図20Bは、図20Aの実施形態による成形体を、概略的に示している。上側銅部分410a、下側銅部分420a、およびステンレス鋼接続プレート430aが図示されている。成形体の一方の端部から他方の端部まで延在する、溝422aも図示されている。これらの溝422aは、図14Bおよび図15に示された溝と同じやり方で使用され、高温超電導体(HTS)テープを敷く場所を提供し、これにより、成形体の端部間に、抵抗値ゼロの電気的結合を提供することができる。
【0055】
図20Cは、図20Aおよび図20Bの実施形態による、成形体を取り囲む被覆物を概略的に示している。上側銅部分410b、下側銅部分420b、およびステンレス鋼接続プレート430cが図示されている。被覆された成形体の組立ては、単に被覆物を成形体の上部にわたって摺動させ、次いで、上記で説明されたように、はんだづけすることによって実現され得るので有利である。
【0056】
次に、様々な実施形態の動作および使用法が説明される。
【0057】
開示された概念、技術、および構造による電流リードは、概ね、以下の特性を有する必要がある。電流リードは、極低温回路への熱負荷を最小限に抑えながら、所望の電流を流す必要がある。過熱は、損傷を引き起こす可能性があり、過冷却は、電子機器に損傷を与える結露/凍結を引き起こす可能性があるので、電流リードは、熱安定性を維持する必要がある。電流リードは、常に超電導の状態を維持するように、超電導体モジュール内に十分なパラメータマージンを持つ必要がある。さらなる有用な特徴は、動作および制御の簡潔さ、製造工程における、迅速で信頼性の高い構築、モジュール式構成要素を最大動作電流まで試験するための機能を含む。
【0058】
電流を流すための、電流リードのほとんどまたはすべての伝導性部品が、上記で説明されたように、インジウムワイヤで接合される。これは、導電率が高く、かつ熱伝導率が高いインジウムによって、確実に、連結領域をほぼ完全にカバーする。さらに、この結果、部品間の接続抵抗値が低くなり、これは、熱安定性を確保するのに役立つ。インジウムは、真空シールの作製にも、また蝋づけの代替手段としても使用され得る。この方法は、信頼性が高く、簡単に修復でき、かつ迅速に反復でき、その結果、製造に成功する。
【0059】
沸騰チャンバ(BC)は、LN2を沸騰させるために、非常に大きな表面積を有し、超電導体モジュールの上側の暖端を熱的に安定に保ち、超電導体モジュールが確実に、常に超電導状態を維持するよう作用する。動作および制御は、この場合、電気的に制御される比例積分微分(PID:proportional-integral-derivative)ループによって行われてもよく、充填弁が、LN2のレベルを設定値に制御する。リードは、次いで、自己調節し、LN2のレベルに応じた任意の電流で動作でき、BC内で生成される蒸気の量に比例して充填されることになる。内部にGN2が流れる熱交換器(HEX)はさらに、利用可能な冷却剤が存在するよりも多くの通電加熱も有しないように、熱交換器の長さおよび面積が調整されている。HEX部品はまた、BC内の沸騰圧力および温度を可能な限り低く保つために、流れるGN2の圧力降下が少なくなるよう設計されている。
【0060】
超電導体モジュールは、図14A図14B図15図16A、および図16Bに示され、また上記で説明されたように、ペタルと呼ばれる部品または楔の形で作製され得る。ペタルは電気的に平行なので、各ペタルは、総電流の一部分を流すだけで済み、これにより、組立体全体を一度に試験するよりも、各ペタルを試験する方が、はるかに簡単になる。これはまた、1つのペタルの性能が低下した場合に、超電導体モジュールの残りを交換することなく、性能が低下したペタル自体が交換され得るので、超電導体モジュールに対するリスクを軽減する。ペタルの数は、超電導体モジュールに沿った磁場の強度を計算し、その結果得られる、高温超電導体(HTS)テープの各片の臨界電流を計算し、次いで、必要なHTSの総量を判定することにより、判定され得る。概ね、ペタルがより多いほど、一層均一な(かつテープ面に平行な)磁場を生じさせ、HTSテープの使用量およびコストを減らす一方、設計においてペタルがより少ないほど、一層多くのHTSを必要とする。したがって、ペタルの数は、図に示されたように正確に6つである必要はなく、いくつかの状況特有の設計パラメータの関数であることを理解されたい。
【0061】
代替的に、超電導体モジュールは、上記の図20Aおよび図20Bに示されたように、被覆物に取り囲まれた単一の成形体として作製されてもよい。
【0062】
電流リードの性能への最大のリスクは、実質上不可逆的な工程である蝋づけによる製造リスク、抵抗値の高い連結面に起因する過熱、または超電導体モジュール400の暖端での超電導性の喪失(クエンチング)、およびBC内の冷却剤を使い果たし、過熱を引き起こすことを含む。
【0063】
次に、追加の実施形態、および上記の実施形態の変形形態が説明される。
【0064】
熱交換器(HEX)の室温端子部(RTTP)は、銅の上に広がる2つの水熱交換器ループによって温度制御される。このループは、RTTPで測定される、特定の設定値まで水を加熱または冷却できるシステムに接続されている。温度制御は、様々な動作シナリオにわたって、リードが、電流リードおよび電流リードが装着されている低温槽で、柔らかいOリングシールおよび計器に問題を引き起こす可能性のある、結露または水の凍結を起こさないことを保証する。上端の温度は、電流ゼロのときは加熱がほとんどないため、冷却される傾向にある一方で、最大動作電流のときは、適切に設計されたリードは加熱または冷却がほぼ不要のはずなので、当然のことながら、電流によって変化する。
【0065】
あるいは、いくつかの設計は、電流ゼロのときに電流リードが過度に冷却されない状態を保つために、上端でヒータだけを使用することがあり得る。ただし、かかる設計では、動作電流の影響を受けてRTTPが過熱する場合に、RTTPを冷却する方法がない。結露を防ぐために、湿気が、周囲の部屋から取り除かれてもよく、またはRTTPの周囲に、窒素雰囲気が作り出されてもよい。これらの手法は両方とも、ここで使用される水冷通路よりも注意深い監視を必要とする。
【0066】
柔らかいインジウム接合部は、真空シールと、伝導性金属部品間の電気接続部および熱接続部との両方を作製するために使用される。こうしたシールは修理可能であり、適切に設計されていれば、正常に動作する可能性が高い。しかし、部品間を接続させるのに使用され得る、鉛などの他の軟金属もある。標準的なポリマーOリングは、こうした極低温では使用され得ないため、標準的な手法は、蝋づけすることである。これは、合わせ面に修復不可能な小さい漏れまたは欠陥が生じるリスクをもたらす。
【0067】
沸騰チャンバは、沸騰チャンバの温度を、沸騰しているLN2の温度にできるだけ近い状態に保つために、非常に大きい表面積を持つよう設計されている。これは、超電導体モジュールの暖端が、確実に、超電導体の臨界温度を超えた状態で保持されるようにする。たとえば、超電導体モジュールの上限温度は、あらゆる動作状態にわたって約1Kしか変わり得ず、超電導性の損失が生じる前に、超電導体モジュールの上限温度には、2~3Kの組込みマージンがあり得る。図に示されているもの以外の物理的構成でも、大きい表面積を実現させることが可能である。LN2を完全に省いてGN2だけを使用することは、顕熱が比較的小さいため、熱の観点からはあまり効果的ではなく、実施するにはリスクがより高くなる。以前の電流リードの中には、極低温冷却システムによって温度が設定されたヘリウムだけを使用するものもある。こうしたシステムは通常、ヘリウムの特性のせいで、ガス状ヘリウムしか使用しない。
【0068】
沸騰チャンバ内の冷却剤のレベルは、側面から離れて側面に平行なレベル管で測定される。この管内のレベルは、静電容量式センサで測定される。これは最初に、電気的絶縁のために、レベルセンサが低温槽に接地され得るように行われ、一方電流リードは、電流リードの電源を通じて接地を共有する。次に、レベルセンサを側面から離して配置することにより、管内のLN2は、沸騰を最小限に抑えられ、レベルの読取り値をより一貫したものにするはずである。代替実施形態では、レベルスティックが、沸騰チャンバ内に直に配置されてもよいが、激しい沸騰が、測定およびその結果生じる充填弁の制御に、望ましくない振動を引き起こす可能性がある。
【0069】
このシステムは制御されているので、「能動的な」システムと見なされ得る。施設内で多数の電流リードが動作するように設計されている場合、LN2を、各リードに「受動的に」流し込むことが可能である。単に1つの大きなLN2の供給部があり、レベルおよび充填が能動的に制御される場合、そのレベルは、リードを共通の供給貯蔵槽へ一緒に単に接続して、リードのすべてで共有される。フロートおよび光学システムなど、他のレベル測定方法も利用可能である。
【0070】
電流リードは垂直に設計されているため、排出するGN2は、暖まると自然に上昇してリードから出る。ただし、CLは同様に、水平にも構築され得、沸騰作用が、同様のやり方でGN2をHEXに向かって押し出すか、または排出部にある真空ポンプが、ガスの循環を補助することができる。
【0071】
説明されている電流リードは、沸騰チャンバ内部の圧力を下げ、LN2の沸騰温度を下げる機能を持っている。この機能は、何らかの理由で超電導体モジュールの上部が予想より高温になり、大気圧で、最大77.3KでLN2が沸騰することにより、適切に制御され得ない場合の、バックアップとして使用され得る。チャンバを-173hPa(-130Torr)まで吸い出すことにより、LN2の沸騰温度は、約65Kまで下げることができ、超電導体モジュールの上端に、かなりの温度マージンを確保する。
【0072】
本明細書で使用されている表現および用語は、説明することを目的としており、限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。したがって、当業者は、この開示が基づく概念が、開示されている主題の複数の目的を実行するための他の構造、方法、およびシステムの設計の基礎として、容易に利用され得ることを理解されよう。
【0073】
前述の詳細な説明において、実施形態の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で、1つまたは複数の個々の実施形態にまとめられている。この開示方法は、特許請求の範囲が、そこに明示的に列挙されているものよりも多くの特徴を必要とするという意図を、反映していると解釈されるべきではない。むしろ、発明の態様が、各開示されている実施形態のすべての特徴よりも少ない。
【0074】
開示されている主題は、前述の例示的な実施形態において説明され、例示されてきたが、本開示は、例として行われたに過ぎず、開示されている主題の実施態様の詳細において、多くの変更が、開示されている主題の精神および範囲から逸脱することなく、行われ得ることを理解されたい。
【0075】
本明細書で使用されるように、「including」は、無制限に含むことを意味する。本明細書で使用されるように、「a」および「an」という用語は、名詞を修飾する場合、その名詞が1つだけ存在することを示唆するものではない。本明細書で使用されるように、「or」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、および/または、を意味する。たとえば、Aが真、Bが真、またはAとBとの両方が真の場合、AまたはBは真である。本明細書で使用されるように、「for example」、「for instance」、「e.g.」、および「such as」は、排他的な例ではない、非限定的な例を指す。「consists」という単語(およびその変形)には、「comprises」もしくは「includes」という単語(またはその変形)と同じ意味が与えられるべきである。
【0076】
保護が求められている概念、システム、デバイス、構造、および技法の様々な実施形態が、関係する図面を参照して本明細書で説明されている。本明細書で説明されている概念、システム、デバイス、構造、および技法の範囲から逸脱することなく、代替実施形態が考案され得る。以下の説明および図面において、要素間に、様々な接続および位置関係(たとえば、より上に、より下に、隣接して、など)が示されていることに留意されたい。これらの接続および/または位置関係は、別段の指定がない限り、直接的または間接的であり得、説明されている概念、システム、デバイス、構造、および技法は、この点において、限定することは意図されていない。したがって、エンティティの結合は、直接的な結合または間接的な結合のいずれを指すこともでき、エンティティ間の位置関係は、直接的な位置関係または間接的な位置関係であり得る。
【0077】
間接的な位置関係の一例として、本明細書における、層「B」の上に層「A」を形成することへの言及は、層「A」および層「B」の関連する特性および機能が中間層によって実質的に変更されない限り、1つまたは複数の中間層(たとえば、層「C」)が、層「A」と層「B」との間にある状況を含む。以下の定義および略語が、仕様の解釈に使用されるべきである。本明細書で使用されるように、用語「comprises」、「comprising」、「includes」、「including」、「has」、「having」、「contains」、もしくは「containing」、または他のこれらの変形形態は、非排他的包含をカバーすることが意図されている。たとえば、要素のリストを含む組成物、混合物、工程、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されるものではなく、かかる組成物、混合物、工程、方法、物品、または装置に、明示的に列挙されていないまたは本来備わった、他の要素を含むことができる。
【0078】
さらに、「exemplary」という用語は、本明細書では、例、実例、または例示として機能することを意味するように使用される。「exemplary」であると本明細書で説明されているどの実施形態または設計も、必ずしも他の実施形態または設計よりも好ましい、または有利であると解釈されるべきではない。「one or more」および「one or more」という用語は、1以上の任意の整数、すなわち、1、2、3、4などを含むものと理解されたい。「a plurality」という用語は、2以上の任意の整数、すなわち、2、3、4、5などを含むものと理解されたい。「connection」という用語は、間接的な「connection」および直接的な「connection」を含むことができる。
【0079】
本明細書における「one embodiment」、「an embodiment」、「an example embodiment」などへの言及は、説明されている実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含むことができるが、すべての実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含むことができることを示している。さらに、かかる句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が一実施形態に関連して説明される場合、他の実施形態に関連するかかる特徴、構造、または特性に影響を与えることは、明示的に説明されているかどうかに関わらず、当業者の知識の範囲内であることが提示されている。
【0080】
これ以降の説明の目的において、用語「upper」、「lower」、「right」、「left」、「vertical」、「horizontal」、「top」、「bottom」、およびこれらの派生語は、図面の図で方向づけされているように、説明されている構造および方法に関係するものとする。「overlying」、「atop」、「on top」、「positioned on」、または「positioned atop」という用語は、第1の構造体などの第1の要素が、第2の構造体などの第2の要素上に存在することを意味する。ただし、インタフェース構造体などの介在する要素が、第1の要素と第2の要素との間に存在する可能性がある。「direct contact」という用語は、第1の構造体などの第1の要素および第2の構造体などの第2の要素が、いかなる中間要素もなしに接続されることを意味する。
【0081】
明細書における、要素を修飾する「first」、「second」、「third」などの序数詞の使用は、それ自体が、1つの要素が別の要素を越えるどんなプライオリティ、優先順位、もしくは順序、または方法の行為が実行される時間的順序を含意するものではなく、要素を区別するために、単に、ある名前を持つ1つの要素を、同じ名前を持つ(しかし、序数詞を使用するようになされた)別の要素から区別するための、ラベルとして使用される。
【0082】
「approximately」および「about」という用語は、いくつかの実施形態では、目標値の±20%以内、いくつかの実施形態では目標値の±10%以内、いくつかの実施形態では目標値の±5%以内、さらに、いくつかの実施形態では、目標値の±2%以内を意味するために使用され得る。「approximately」および「about」という用語は、目標値を含むことができる。「substantially equal」という用語は、いくつかの実施形態では、互いの±20%以内、いくつかの実施形態では、互いの±10%以内、いくつかの実施形態では、互いの±5%以内、さらに、いくつかの実施形態では、互いの±2%以内の値を指すために使用され得る。
【0083】
「substantially」という用語は、いくつかの実施形態では、比較基準の±20%以内、いくつかの実施形態では、±10%以内、いくつかの実施形態では、±5%以内、さらに、いくつかの実施形態では、±2%以内の値を指すために使用され得る。たとえば、第2の方向に対して「substantially」に直交する第1の方向は、いくつかの実施形態では、第2の方向と90°をなす角度の±20%以内、いくつかの実施形態では、第2の方向と90°をなす角度の±10%以内、いくつかの実施形態では、第2の方向と90°をなす角度の±5%以内、さらに、いくつかの実施形態では、第2の方向と90度をなす角度の±2%以内である、第1の方向を指すことができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15
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図16B
図17
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図18B
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図20B
図20C
【国際調査報告】