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特表2024-541300試料中のナノ粒子のナノ粒子特性を決定するための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】試料中のナノ粒子のナノ粒子特性を決定するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/0227 20240101AFI20241031BHJP
   G01N 21/45 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01N15/0227
G01N21/45 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527092
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021081037
(87)【国際公開番号】W WO2023083433
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500449363
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フェルデルンク デル ヴィッセンシャフテン エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(72)【発明者】
【氏名】ザンドグダー、ヴァヒド
(72)【発明者】
【氏名】ブレッシング、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】カシュカノヴァ、アンナ デー.
(72)【発明者】
【氏名】ゲマインハルト、アンドレ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB09
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF01
2G059FF03
2G059FF04
2G059GG08
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM02
2G059MM10
(57)【要約】
試料1に含まれるナノ粒子2のナノ粒子特性を決定する方法であって、干渉顕微鏡装置110を利用することによって画像の連続フレームを収集するステップであって、試料1はコヒーレント光源装置111からの照明光3で照明され、且つ画像は、非散乱の参照光と重ね合わされた、ナノ粒子2からの散乱光4によって生成され、当該散乱光及び参照光は、ナノ粒子2の断面寸法よりも大きい波長を有する、ステップと、画像の連続フレーム内でナノ粒子2をトラッキングするステップであって、ナノ粒子2各々の少なくとも1つの干渉点拡がり関数(iPSF)特徴が確立され、且つ各フレーム内のナノ粒子位置を含む、ナノ粒子軌跡運動データが各ナノ粒子2について決定される、ステップと、ナノ粒子2について、ナノ粒子の軌跡運動データからナノ粒子サイズdを計算し且つナノ粒子の少なくとも1つのiPSF特徴から干渉ナノ粒子コントラストを計算するステップと、2パラメトリックナノ粒子散布図を作成するステップであって、各ナノ粒子2は、その計算されたナノ粒子サイズd及び計算された干渉ナノ粒子コントラストCに基づくプロット位置を有し、且つすべてのナノ粒子2は、ナノ粒子プロット位置の分布を生成する、ステップと、ナノ粒子特性を提供するためにナノ粒子プロット位置の分布を解析するステップと、を含む方法。さらに、本方法を実行するための試験装置100が説明される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(1)に含まれるナノ粒子(2)のナノ粒子特性を決定する方法であって、
・干渉顕微鏡装置(110)を利用することによって画像の連続フレームを収集するステップであって、前記試料(1)は、コヒーレント光源装置(111)からの照明光(3)で照明され、且つ前記画像は、非散乱の参照光と重ね合わされた、前記ナノ粒子(2)からの散乱光(4)によって生成され、前記散乱光及び前記参照光は、前記ナノ粒子(2)の断面寸法よりも大きい波長を有する、ステップと、
・前記画像の連続フレーム内で前記ナノ粒子(2)をトラッキングするステップであって、前記ナノ粒子(2)各々の少なくとも1つの干渉点拡がり関数(iPSF)特徴が確立され、且つ各フレーム内の前記ナノ粒子位置を含む、ナノ粒子軌跡運動データが各ナノ粒子(2)について決定される、ステップと、
・各ナノ粒子(2)について、前記ナノ粒子の前記軌跡運動データからナノ粒子サイズ(d)を計算するステップと、
・各ナノ粒子(2)について、前記ナノ粒子の前記少なくとも1つのiPSF特徴から干渉ナノ粒子コントラスト(C)を計算するステップと、
・2パラメトリックナノ粒子散布図(200)を作成するステップであって、各ナノ粒子(2)は、その前記計算されたナノ粒子サイズ(d)及び前記計算された干渉ナノ粒子コントラスト(C)に基づくプロット位置を有し、且つすべてのナノ粒子(2)は、ナノ粒子プロット位置の分布を生成する、ステップと、
・前記ナノ粒子特性を提供するために前記ナノ粒子プロット位置の分布を解析するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
・前記プロット位置は、前記ナノ粒子サイズ(d)及び前記ナノ粒子(2)の最大の前記干渉ナノ粒子コントラスト(C)の関数の値、特に前記ナノ粒子(2)の最大の前記干渉ナノ粒子コントラスト(C)の三乗根の値によって決定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解析するステップは、
・前記ナノ粒子(2)の少なくとも1つの平均ナノ粒子サイズ(d)を計算すること、
・前記ナノ粒子(2)のナノ粒子サイズ(d)の少なくとも1つの標準偏差を計算すること、並びに
・一般化ミー理論及び前記一般化ミー理論に含まれる所定のナノ粒子のパラメータを利用することによって、前記ナノ粒子(2)の多層構造の寸法を計算すること
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
・各ナノ粒子(2)について、その前記干渉ナノ粒子コントラスト(C)から散乱断面積(σ)を計算するステップ
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
・前記プロット位置は、前記ナノ粒子(2)の前記ナノ粒子サイズ(d)及び前記散乱断面積(σ)の関数の値、特に前記ナノ粒子(2)の前記散乱断面積(σ)の6乗根の値によって決定される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
・各ナノ粒子(2)について、そのサイズ及び散乱断面積(σ)から、一般化ミー理論を用いて実効屈折率(n)を決定するステップ
を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
・前記プロット位置は、前記ナノ粒子(2)の前記ナノ粒子サイズ(d)及び前記実効屈折率(n)の値によって決定される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記解析するステップは、
・前記ナノ粒子(2)の少なくとも1つの平均屈折率を計算すること、
・前記ナノ粒子(2)の屈折率の少なくとも1つの標準偏差を計算すること、並びに
・一般化ミー理論及び前記一般化ミー理論に含まれる所定のナノ粒子のパラメータを利用することによって、前記ナノ粒子(2)の多層構造の屈折率を計算すること、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記解析するステップは、
・前記ナノ粒子表面上に蓄積された表面層、特に水和層を計算すること、
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
・前記ナノ粒子(2)は、少なくとも2つのナノ粒子群を含み、
・前記ナノ粒子群のうちの1つの群の前記ナノ粒子(2)の前記平均ナノ粒子サイズ(d)、前記ナノ粒子サイズ(d)の標準偏差、前記平均屈折率、前記屈折率の標準偏差、平均ナノ粒子形状及び/又はナノ粒子材料は、前記ナノ粒子群のうちの別の1つの群の前記ナノ粒子(2)の前記平均ナノ粒子サイズ(d)、前記ナノ粒子サイズ(d)の標準偏差、前記平均屈折率、前記屈折率の標準偏差、前記平均ナノ粒子形状及び/又は前記ナノ粒子材料と異なり、且つ
・前記解析するステップは、前記ナノ粒子群を同定することを含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記解析するステップは、
・前記ナノ粒子群の前記平均ナノ粒子サイズ(d)、前記ナノ粒子サイズ(d)の標準偏差、前記平均屈折率、前記屈折率の標準偏差、前記平均ナノ粒子形状及び/又は前記ナノ粒子材料を計算すること
を含む、請求項10及び請求項3又は8に記載の方法。
【請求項12】
前記解析するステップは、
・ナノ粒子サイズ(d)ヒストグラム及び干渉ナノ粒子コントラスト(C)ヒストグラムを作成することと、前記ヒストグラムのうちの少なくとも1つを分解することと、
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
・前記干渉ナノ粒子コントラスト(C)ヒストグラムは、前記ナノ粒子の前記干渉コントラスト(C)の立方根の値に基づいて作成される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記解析するステップは、
・ナノ粒子サイズ(d)ヒストグラム及びナノ粒子散乱断面積(σ)ヒストグラムを作成することと、前記ヒストグラムのうちの少なくとも1つを分解することと、
を含む、請求項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
・前記ナノ粒子散乱断面積(σ)ヒストグラムは、前記ナノ粒子の前記散乱断面積(σ)の6乗根の値に基づいて作成される、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記解析するステップは、
・ナノ粒子サイズ(d)ヒストグラム及び実効屈折率(n)ヒストグラムを作成することと、前記ヒストグラムのうちの少なくとも1つを分解することと、
を含む、請求項6~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記解析するステップは、
・プロット位置の前記分布にパターン認識を適用すること、及び
・プロット位置の前記分布に機械学習ベースのデータ分析を適用すること
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子(2)は、
・5nm~500nmの範囲内の特有の寸法を有するナノ粒子(2)、
・球状ナノ粒子(2)、
・非球形ナノ粒子(2)、
・無機ナノ粒子(2)、
・有機ナノ粒子(2)、
・表面層を有するナノ粒子(2)、及び
・多層構造を有するナノ粒子(2)
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
・前記干渉顕微鏡装置(110)の視野を通して前記試料(1)を流すステップ、
を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
・前記干渉パターンの連続フレームを収集する前記ステップは、少なくとも2つの異なる波長を有する前記照明光を用いて行われ、且つ
・ナノ粒子プロット位置の前記分布を解析する前記ステップは、前記異なる波長で実行される、
多波長測定が実行される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
・前記ナノ粒子特性は、前記ナノ粒子(2)の分光情報を含む、
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
・特に前記ナノ粒子(2)の材料含有量を同定するための、少なくとも1つのスペクトルフィルタが設けられた前記干渉顕微鏡装置(110)を用いて試料蛍光を検出するステップ
を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
・前記照明光が直線偏光されている、
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
・前記画像の連続フレームを収集する前記ステップは、2つの直交偏光で行われる、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
・前記試料(1)中のナノ粒子濃度を推定するステップ、
を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
・前記コヒーレント光源装置は、照明光パルス、特に前記照明光パルスと同期して収集される前記画像の前記フレームを生成するパルス光源装置(111)である、
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
・前記試料(1)の粘弾性特性を決定するために前記軌跡運動データを解析すること、及び
・前記ナノ粒子(2)の幾何学的形状を決定するために前記軌跡運動データを解析すること、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
・前記画像の連続フレームを収集する前記ステップは、前記試料(1)の少なくとも2つの異なる温度で行われる、
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
・前記ナノ粒子(2)からの前記散乱光の部分と前記参照光の部分との間のバランスを制御するステップ、
を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのiPSF特徴は、
・iPSFコントラスト、特に前記iPSFの中心ローブの高さ、
・一体化されたiPSF、特に前記iPSFの全体的な明るさ、並びに
・iPSF形状、特に、前記iPSFの中心ローブ及びサイドローブの形状特徴、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
・前記干渉ナノ粒子コントラスト(C)は、干渉散乱(iSCAT)コントラストである、
請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
試料(1)に含まれるナノ粒子(2)のナノ粒子特性を決定するために構成されている試験装置(100)であって、
・コヒーレント光源装置(111)、撮像光学系(112)、試料容器(113)及び検出器カメラ装置(114)を備える干渉顕微鏡装置(110)であって、前記コヒーレント光源装置(111)は、前記試料容器(113)内の前記試料(1)を照明光で照明するために配置され、且つ前記検出器カメラ装置(114)は、前記ナノ粒子(2)からの散乱光と非散乱の参照光とを重ね合わせることによって生成された画像の連続フレームを収集するために配置され、前記散乱光及び前記参照光は、前記粒子の断面寸法よりも大きい波長を有する、干渉顕微鏡装置と、
・前記ナノ粒子(2)の少なくとも1つの干渉点拡がり関数(iPSF)特徴を確立するため、前記画像の前記連続フレーム内の前記ナノ粒子(2)をトラッキングするため、及び各フレーム内の前記ナノ粒子位置を含む、各ナノ粒子(2)のナノ粒子軌跡運動データを決定するために配置されている解析装置(120)と、
を備え、
・前記解析装置(130)は更に、各ナノ粒子(2)の前記軌跡運動データからナノ粒子サイズ(d)を計算するため、各ナノ粒子(2)の前記少なくとも1つのiPSF特徴から干渉ナノ粒子コントラスト(C)を計算するため、各ナノ粒子(2)がその前記計算されたナノ粒子サイズ(d)及び前記計算された干渉ナノ粒子コントラスト(C)によって決定されたプロット位置を有し且つすべてのナノ粒子(2)がナノ粒子プロット位置の分布を生成する、2パラメトリックナノ粒子散布図(200)を作成するため、並びに前記ナノ粒子特性を提供する目的でナノ粒子プロット位置の前記分布を解析するために配置されている、試験装置。
【請求項33】
請求項1から31のいずれか一項に記載の方法を実行するために構成されている、請求項32に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水溶液のような液体中の生体ナノ粒子、例えば巨大分子を調べるためなど、試料に含まれるナノ粒子のナノ粒子特性を決定するための方法及び試験装置に関する。本発明の用途は、物理的、化学的及び/又は生物学的試料調査の分野で利用可能である。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、本発明の技術的背景、特に液体試料中のナノ粒子の光学的検出に関する技術的背景を例示する以下の先行技術が参照される。
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【0003】
医学、薬学、食品産業、化粧品、農業、並びに大気科学及び環境研究などの広範囲の分野において、サイズ及び屈折率がナノ粒子の2つの重要な数量を構成することが広く知られている。通常、ナノ粒子は、単一の粒径分布を有する単分散分布として、及び/又は複数の粒径分布を有する多分散分布として提供される。電子顕微鏡法(EM)又は光学的方法などの様々な手法が粒径分布を決定するために利用され得る。EMは、直接撮像における優れた解像度を提供するものの、試料調製、低速及びエクスサイチュ測定特性に関する実質的な制限を有する。実際、光学的方法は、固有の回折限界にもかかわらず、高速であり且つ液相中の試料の広範なセットに適用され得るため、ナノ粒子測定手法に優位を占めている。
【0004】
ナノ粒子を調べるための光学的方法の一例として、動的光散乱(DLS)[1]は、拡散粒子の集合体によって散乱された光又は放出された光における時間的相関を利用する。この方法では、粒径は光強度の自己相関関数の統計的解析から抽出される。今日、DLSは、使用が容易であり且つ平均値に対して高い精度を提供するので、粒子サイジングにおいて最もよく使用されている手法である。しかしながら、この方法は、低いサイズ分解能を有し、これにより多分散溶液の分析において限界に直面している。
【0005】
ナノ粒子トラッキング解析(NTA)と呼ばれるより最近のアプローチは、単一粒子の軌跡を記録し且つ解析することによって拡散定数を定量化する[2]~[3]。NTAは、様々な撮像方法を利用することができ、且つ広範な較正を必要としないが、カメラのピクセルサイズ及びフレームレートなどの技術的パラメータ、並びに媒体の温度及び粘度についての豊富な知識が測定結果を改善するために必要とされる。
【0006】
非発光ナノ粒子の検出のための最も古い撮像方法は、暗視野観察法(DFM)である[4]。DFM信号は、粒子の散乱断面積σscaに比例し、これにより、dとして計量し、ここでdは、簡素化するように球状ナノ粒子を考慮した場合の直径と同様に、粒子の断面寸法を表す。現在、主要なNTA機器類の1つ(NanoSight、Malvern Instruments製)は、DFMを使用しており、且つ30nm程度の小さい金ナノ粒子(GNP)及び60nmよりも大きいポリスチレン(PS)粒子について有効とされている([3]、[5])。ホログラフィは、粒子の撮像及びトラッキングにも使用されているが、報告された感度は、約300nmの比較的大きな直径dを有するPS粒子の散乱断面積に対応する([6]~[9])。高度なアルゴリズムの適用にもかかわらず、多分散溶液中の粒子の検出及び識別は、特にGNPのサブ30nm領域及び低屈折率の粒子のサブ100nm領域においていまだ課題である。
【0007】
したがって、ナノテクノロジーの登場から30年以上経過した後、ナノ粒子の特性評価は、多くの用途において、特に高処理量及び非侵襲性が望ましい場合にいまだ課題である。
【0008】
ナノ粒子を調べるために使用されてきた別の公知の光学信号は、単一タンパク質に至るまで([12]、[13])ナノ粒子に対して超高感度を実証した散乱の干渉検出(iSCAT)([10]~[11])によって得られる。従来、iSCAT顕微鏡法は、制限された適用範囲を有し、特に単一粒子の検出をカバーするか又は粒子運動のみを監視していた([14]、[15])。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zhu,X.,Shen,J.&Song,L.Accurate retrieval of bimodal particle size distribution in dynamic light scattering.IEEE Photonic.Tech.L.28,311-314(2016)
【非特許文献2】Malloy,A.&Carr,B.NanoParticle tracking analysis-the haloTM system.Part.Part.Syst.Char.23,197-204(2006)
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、試料に含まれるナノ粒子のナノ粒子特性を決定する改善された方法であって、従来手法の欠点が回避された方法を提供することである。特に、この方法は、試料調製及びインサイチュ測定に関して光学的方法の利点を維持しながら、例えばEM法のように、改善されたサイズ分解能でナノ粒子特性を決定することが可能であることが意図されている。さらに、この方法は、例えばナノ粒子のサイズ、散乱断面積及び屈折率などのナノ粒子に関する広範囲の情報を伝えることが可能であることが意図されている。この方法は、単分散溶液中若しくは多分散溶液中の複数のナノ粒子の調査を容易にすることができ、且つ/又は回折限界未満、例えば100nm未満のサイズを有するナノ粒子の特性を決定することが可能であることが意図されている。更なる態様によれば、ナノ粒子特性は、より高い精度及び/又は速度で、及び/又は測定セットアップの容易な実装で決定されることが意図されている。さらに、本発明の目的は、試料に含まれるナノ粒子のナノ粒子特性を決定するための相応に改善された試験装置であって、従来手法の欠点が回避された、装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、独立請求項の特徴を含む、試料に含まれるナノ粒子のナノ粒子特性を決定するための方法及び/又は試験装置によって解決される。本発明の有利な実施形態及び用途は、従属請求項に定められている。
【0012】
本発明の第1の概括的態様によれば、上記目的は、試料に含まれるナノ粒子のナノ粒子特性を決定する方法であって、干渉顕微鏡装置を利用することによって画像の連続フレームを収集するステップであって、試料は、コヒーレント光源装置からの照明光で照射され、且つ画像は、非散乱の参照光と重ね合わされた、ナノ粒子からの散乱光によって生成され、当該散乱光及び参照光は、粒子の断面寸法よりも大きい波長を有する、ステップを含む、方法によって解決される。
【0013】
さらに、ナノ粒子特性を決定する方法は、画像の連続フレーム中のナノ粒子をトラッキングするステップであって、ナノ粒子各々の少なくとも1つの干渉点拡がり関数(iPSF)特徴が確立され、且つ各フレーム内のナノ粒子位置を含む、各ナノ粒子のナノ粒子軌跡運動データが決定される、ステップを含む。特に、軌跡運動データは、すべてのナノ粒子の関連フレームのナノ粒子位置及び収集時間を含む。各ナノ粒子について、ナノ粒子の軌跡運動データからナノ粒子サイズ(ナノ粒子サイズを表す数量)が計算され、且つナノ粒子の少なくとも1つのiPSF特徴から干渉ナノ粒子コントラストが計算される。有利には、ナノ粒子の運動軌跡データは、ナノ粒子が顕微鏡装置の焦点面内を移動するとき、又はナノ粒子が焦点面から外に移動するとき、iPSFの中心から決定することができる。
【0014】
さらに、ナノ粒子特性を決定する方法は、2パラメトリックナノ粒子散布図を作成するステップであって、各ナノ粒子は、計算されたナノ粒子サイズ及び計算された干渉ナノ粒子コントラストに基づくプロット位置を有し、且つすべてのナノ粒子は、ナノ粒子プロット位置の分布を生成する、ステップと、ナノ粒子特性を提供するためにナノ粒子プロット位置の分布を解析するステップとを含む。ナノ粒子プロット位置の分布を解析することは、ナノ粒子プロット位置から直接、例えば分離可能な下位分布(位置のクラウド)の発生から、及び/又はナノ粒子プロット位置のヒストグラムから、及び/又はナノ粒子プロット位置の数値シミュレーション又は数値シミュレーションに由来するデータ、例えば一定のナノ粒子サイズ及びナノ粒子散乱断面積の等値面のようなデータから、例えば一般化ミー理論のような、パラメータとしてナノ粒子特性を含むモデルを用いて、ナノ粒子特性を推定することを好ましくは含む。
【0015】
本発明の第2の概括的態様によれば、上記の目的は、試料に含まれるナノ粒子のナノ粒子特性を決定するために構成されている試験装置であって、干渉顕微鏡装置、記録装置及び解析装置を備える試験装置によって解決される。干渉顕微鏡装置は、コヒーレント光源装置と、撮像光学系と、試料容器と、検出器カメラ装置とを備え、コヒーレント光源装置は、試料容器内の試料を照明光で照明するために配置され、検出器カメラ装置は、非散乱の参照光と重ね合わされた、ナノ粒子からの散乱光によって生成された画像の連続フレームを収集するために配置され、当該散乱光及び参照光は、粒子の断面寸法よりも大きい波長を有する。
【0016】
解析装置は、ナノ粒子の少なくとも1つの干渉点拡がり関数(iPSF)特徴を確立するため、画像の連続フレーム内のナノ粒子をトラッキングするため、及び各フレーム内のナノ粒子の位置を含む、各ナノ粒子のナノ粒子軌跡運動データを決定するために配置される。
【0017】
解析装置は更に、各ナノ粒子の軌跡運動データからナノ粒子サイズを計算するため、各ナノ粒子の少なくとも1つのiPSF特徴からナノ粒子散乱断面積を計算するため、各ナノ粒子がその計算されたナノ粒子サイズ及び計算された干渉ナノ粒子コントラストによって決定されるプロット位置を有し且つすべてのナノ粒子がナノ粒子プロット位置の分布を生成する、2パラメトリックナノ粒子散布図を作成するため、並びにナノ粒子特性を提供する目的でナノ粒子プロット位置の分布を解析するために、配置される。好ましくは、試験装置又はその実施形態は、本発明の第1の概括的態様又はその実施形態に係る方法を実行するために構成される。
【0018】
「iPSF特徴」という用語は、通常、iPSFの特有の数量を指し、好ましくは、iPSFコントラスト、特にiPSFの中心ローブの高さ、一体化されたiPSF、特にiPSFの全体的な明るさ、及びiPSF形状、特にiPSFの中心ローブ及びサイドローブの形状特徴のうちの少なくとも1つを指す。iPSF特徴は、好ましくは干渉散乱(iSCAT)コントラストのような干渉ナノ粒子コントラストの計算を可能にする。あるいは、干渉ホログラフィによって得られるコントラストのような、別の干渉ナノ粒子コントラストが計算され得る。
【0019】
「干渉ナノ粒子コントラスト」という用語は通常、測定されたiPSF信号が、測定のバックグラウンドレベル、すなわち干渉顕微鏡装置を用いたフレーム収集のバックグラウンドレベルを上回る大きさを示す量を指す。特に、「干渉ナノ粒子コントラスト」は、ナノ粒子の散乱断面積によって決定される量であり得る。コントラストの例は、明るいiPSFピークの中心ローブがバックグラウンドレベルを上回って突出する高さを示す最大のポジティブコントラスト、若しくは暗いピークの中心ローブがバックグラウンドレベルを下回って低下する低さを示す最大のネガティブコントラスト、又は二乗平均平方根(RMS)コントラストである。特に好ましくは、最大干渉ナノ粒子コントラストは、有利には、粒子が照明の焦点面内にあり、且つ焦点面から外への粒子移動に起因するフレームからフレームへとコントラストが変化する影響を回避し得る、瞬間が捕捉されるように計算される。
【0020】
試料は、分散状態にある調査対象のナノ粒子を含む所定量の、例えば水、水溶液、有機液体又はそれらの混合物などの液体である。ナノ粒子と周囲の液体の分子との熱誘起衝突の結果として、ナノ粒子は、例えばブラウン運動に起因して、液体内を移動する。通常、ナノ粒子の運動は、液体内の拡散であり、任意選択的に、例えば電気力及び/又は磁気力及び/又は光学力などの、液体内の他の力と重ね合わされる。
【0021】
ナノ粒子を含む試料の画像の連続フレームを収集するために、試料は、干渉顕微鏡装置を用いて撮像され得る体積内に、例えば、基板上に、又は透明壁によって区切られたチャンバ及び/若しくは流体マイクロシステムの区画構造のような試料容器内に載置された自由液滴内に配置される。画像は、ナノ粒子各々からの散乱光(ナノ粒子によって散乱された照明光)と、非散乱の参照光、例えば参照光源からの光又は液体を区画する表面によって反射された光との重ね合わせを収集することによって生成される。したがって、画像は、撮像された試料によって、特に試料中のナノ粒子によって生成された干渉パターンとして理解され得る。
【0022】
本発明者らは、NTAの測定概念と特に干渉散乱(iSCAT)顕微鏡法との組合せが、液体試料中の複数のナノ粒子を調べる上での実質的な利点をもたらすことを見出した。iSCAT顕微鏡法は、タスクをトラッキングするために既に使用されている([14]、[15])ものの、これらの以前の測定は、粒子運動のみを監視及び特性評価することを対象としていた。従来の手法とは対照的に、本発明は、各ナノ粒子のナノ粒子サイズを計算するためにナノ粒子軌跡運動データを使用する。
【0023】
概して、ナノ粒子は、5nm~500nmの範囲内、特に5nm~150nmの範囲内の直径などの特有の断面寸法を有する粒子を含む。球形又はほとんど球形のナノ粒子の場合、特有の断面寸法は直径である。本発明者らは、ほとんどの実用的な用途において、ナノ粒子の球形という仮定のもとにナノ粒子が解析され得ることを見出した。あるいは、非球形ナノ粒子は、楕円形ナノ粒子又は棒状ナノ粒子の平均直径又は主軸長のような、その別の断面寸法を用いて記述され得る。計算された「ナノ粒子サイズ」は、通常、ナノ粒子の運動、特に拡散を決定するナノ粒子の特有の断面寸法を指す。ナノ粒子の運動を支配する液体中の運動の物理法則、例えば自由拡散に基づいて、ナノ粒子の軌跡データからナノ粒子サイズが計算される。特に、拡散定数は、ナノ粒子軌跡運動データから取得され得、そして、ナノ粒子サイズ及び任意選択の更なるナノ粒子特徴は、ナノ粒子の単分散においてのみならず、ナノ粒子の多分散混合物においても、前例のない精度及び公差で決定され得る。
【0024】
さらに、本発明者らは、ナノ粒子サイズ決定のためのiSCAT顕微鏡法の特別な利点を見出した。暗視野撮像のような従来の撮像方法と比較して、iSCAT顕微鏡法は、より長い経路長をトラッキングすることを可能にする。ナノ粒子軌跡が監視され得るステップ数が多いほど、すなわち、ナノ粒子を含む試料の画像の連続フレームがより数多く収集されるほど、ナノ粒子サイズの決定、特に拡散定数の決定がより正確になる。したがって、iSCAT顕微鏡を介して試料を撮像することによって、精度若しくは速度又はその両方が改善され得る。
【0025】
本発明によれば、干渉ナノ粒子コントラスト、好ましくは、ナノ粒子散乱断面積は、各ナノ粒子について、その検出された少なくとも1つのiPSF特徴に基づいて計算される。本発明の更なる特別な利点として、干渉ナノ粒子コントラスト、好ましくはナノ粒子散乱断面積、及びナノ粒子サイズは、互いに独立して計算される。有利には、単一のiSCATトラッキング測定を用いて、2パラメトリックナノ粒子散布図を作成することによって、改善された解析を可能にする2つのパラメータ、すなわち干渉ナノ粒子コントラスト及びナノ粒子サイズが得られる。本発明者らは、従来の手法で得られたナノ粒子サイズの、重なり合う一次元ヒストグラムの制限が、2パラメトリックナノ粒子散布図から得られたヒストグラムによって克服され得ることを見出した。2パラメトリックナノ粒子散布図は、ナノ粒子の1つ以上の集団(複数可)を同定し、且つ重なり合うヒストグラムさえも解析、特に分解することを可能にする。本発明では、サイズ及びコントラスト分布のヒストグラムは組み合わせ得、したがって、向上した精度及び再現性を有するナノ粒子特徴を提供し、且つ/又は同様の特徴、例えば平均直径を有するナノ粒子分布の解析を可能にする。
【0026】
有利には、iSCAT顕微鏡法と、特にNTAとを組み合わせることによって、本発明者らは、液体環境におけるナノ粒子のサイズ及び任意選択の屈折率などの更なる特徴を高感度且つ正確に決定するための全光学的方法(干渉NTA、iNTA)を見出した。本発明者らは、コロイド状金、ポリスチレン及びシリカ粒子の試料を特性評価し且つその結果を従来の方法の結果と比較することによって本発明の利点を示した。さらに、本発明者らは、例えば、ヒト尿中の細胞外小胞及びリーシュマニア寄生虫由来のエクソソームを含む多成分試料及び多分散体を解読する能力を示した。
【0027】
本発明によれば、画像の収集された複数の異なるフレームは、各粒子の一連のiPSF特徴を提供する。好ましくは、各粒子の干渉ナノ粒子コントラストを計算するステップは、各iPSF特徴から干渉散乱(iSCAT)コントラストを決定することと、各粒子の散乱断面積が特有のiSCATコントラストから計算される、画像の異なるフレームにおける各粒子のiPSF特徴の中で、特有のiSCATコントラスト、特に最大iSCATコントラストを決定することとを含む。有利には、特有のiSCATコントラストを利用することによって、粒子の散乱断面積の計算が促進される。最大のポジティブiSCATコントラストを使用する代わりに、最大のネガティブiSCATコントラストのような別の特有のiSCATコントラストが利用され得る。
【0028】
本発明に従って作成された2パラメトリックナノ粒子散布図は、計算されたナノ粒子サイズ及び計算されたナノ粒子散乱断面積によって決定されている2つの次元(又は軸)で広がるマップである。ナノ粒子散布図は、グラフ表示(例えば、印刷表現又は画面表現)及びデータ表示(例えば、保存されたデータフィールド又は表)のうちの少なくとも1つを含み得る。基本的に、計算されたナノ粒子サイズ及び計算された散乱断面積は、ナノ粒子散布図の次元として直接利用され得る。
【0029】
好ましくは、各ナノ粒子について、散乱断面積は、その干渉ナノ粒子コントラストから計算される。散乱断面積は、既知のサイズ及び屈折率のナノ粒子を用いて行われた較正測定を用いて計算され得る。あるいは、別個に測定され得る十分に決定されたセットアップ依存パラメータの使用によって、散乱断面積を完全に計算することができるであろう。
【0030】
好ましくは、ナノ粒子の計算されたナノ粒子サイズ及び干渉ナノ粒子コントラストの関数、好ましくは散乱断面積が、ナノ粒子散布図の次元として利用される。したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、2パラメトリックナノ粒子散布図における粒子のプロット位置は、ナノ粒子サイズ及び干渉ナノ粒子コントラストの関数の値、特にナノ粒子の散乱断面積、特に干渉ナノ粒子コントラストの三乗根の値、特にナノ粒子の散乱断面積の6乗根の値によって決定される。干渉ナノ粒子コントラストの関数、特に散乱断面積を利用することは、ナノ粒子散布図におけるナノ粒子位置の分解能を上げることに関して利点をもたらす。
【0031】
有利には、決定されるべき複数のナノ粒子特性が入手できる。本発明の更に好ましい実施形態によれば、解析するステップは、ナノ粒子の少なくとも1つの平均ナノ粒子サイズ、ナノ粒子のナノ粒子サイズの少なくとも1つの標準偏差、ナノ粒子の少なくとも1つの平均屈折率、及びナノ粒子の屈折率の少なくとも1つの標準偏差のうちの少なくとも1つを計算することを含む。有利には、目的のほとんどの用途では、これらの特性の各々又はそれらの任意の組合せは、ナノ粒子の十分な特性評価を可能にする。更なる利点として、これらの特性又はそれらの任意の組合せは、ナノ粒子散布図又はそれに由来するヒストグラムから直接導出され得る。
【0032】
更に好ましい実施形態では、ナノ粒子のより複雑な特性が取得され得る。第1の変形形態によれば、ナノ粒子の多層構造の寸法及び/又は屈折率は、一般化ミー理論及び一般化ミー理論に含まれる所定のナノ粒子のパラメータを利用することによって計算され得る。例えば、層の数及び/又はいくつかの層の厚さの屈折率などのパラメータによって、関与する層の寸法及び屈折率を決定するための一般化ミー理論の適用に仮定及び更なる情報が導入される。多層構造を有するナノ粒子は、コアと、コア上の少なくとも1つの層とを有する。有利には、本発明は、コアの直径及び/又は屈折率及び少なくとも1つの層の厚さ及び/又は屈折率の境界を推定する又は少なくとも見出すことを可能にする。ナノ粒子、例えばその材料(複数可)に関する演繹的知識に基づいて、推定値は、改善され得る。一般化ミー理論は、ナノ粒子層の寸法及び屈折率と依存関係にあるナノ粒子散乱断面積を表す、ナノ粒子による電磁散乱の一般式を含む。代替的又は追加的に、懸濁液中で生成された有効表面層、特にナノ粒子表面上に蓄積された水和層が計算され得る。
【0033】
本発明の更なる有利な実施形態によれば、ナノ粒子は、少なくとも2つのナノ粒子群であって、ナノ粒子群のうちの1つの群のナノ粒子の平均ナノ粒子サイズ、ナノ粒子サイズの標準偏差、平均屈折率、屈折率の標準偏差、平均ナノ粒子形状及び/又はナノ粒子材料が、ナノ粒子群のうちのもう1つの群のナノ粒子の平均ナノ粒子サイズ、ナノ粒子サイズの標準偏差、平均屈折率、屈折率の標準偏差、平均ナノ粒子形状及び/又はナノ粒子材料とは異なる、少なくとも2つのナノ粒子群を含む。これらの実施形態では、解析するステップは、ナノ粒子群を同定することを含む。換言すれば、異なるナノ粒子群は、ナノ粒子散布図における分離可能な分布として同定され得る。有利には、ナノ粒子群は、その特性の分布、例えばサイズ分布が重複している場合でも、及び/又は分布の平均特性、例えば平均ナノ粒子サイズのわずかな差しか生じていない場合でも同定され得る。一例として、10nmの平均サイズを有する金ナノ粒子と15nmの平均サイズを有する金ナノ粒子が本発明の方法を用いて確実に分離され得た。
【0034】
特に好ましくは、ナノ粒子群が同定されるのみならず、ナノ粒子群の平均ナノ粒子サイズ、ナノ粒子サイズの標準偏差、平均屈折率、屈折率の標準偏差、平均ナノ粒子形状及び/又はナノ粒子材料が計算される。
【0035】
本発明の更なる有利な実施形態によれば、ナノ粒子サイズヒストグラム及びナノ粒子散乱断面積ヒストグラムが作成され、且つヒストグラムのうちの少なくとも1つが分解される。好ましくは、ナノ粒子散乱断面積ヒストグラムは、ナノ粒子の散乱断面積の6乗根の値に基づいて作成される。代替的又は追加的に、解析するステップは、ナノ粒子サイズヒストグラム及び実効屈折率ヒストグラムを作成することと、ヒストグラムのうちの少なくとも1つを分解することとを含み得る。ヒストグラムを作成することは、調査対象の試料中に生じるナノ粒子サイズの分布の表示、例えばグラフ表示、並びにナノ粒子散乱断面積及び/又は実効屈折率の分布の表示を提供することを含む。ヒストグラムは、ナノ粒子サイズ及びナノ粒子散乱断面積及び/又は実効屈折率の頻度分布を含む。ヒストグラムを分解することは、ガウス混合モデルのようなフィッティングルーチンによってヒストグラムをモデル化することを含む。ヒストグラムは、ナノ粒子混合物の様々な成分を抽出するために、例えばガウス混合モデルを使用して解析され得る。本発明の特別な利点として、2パラメトリックナノ粒子散布図を最初に作成することによってヒストグラムが得られ、次いでそのヒストグラムを分解するので、ヒストグラムを分解することが促進される。
【0036】
本発明の更なる任意選択の特徴によれば、解析するステップが、パターン認識及び機械学習ベースのデータ解析のうちの少なくとも1つをプロット位置の分布に適用するステップを含む場合、ナノ粒子特性を決定する自動化、処理速度及び再現性に関する利点が取得され得る。パターン認識は、例えば、ナノ粒子プロット位置の分布を既知の参照試料からの参照データと比較すること、特有の分布形状及び/又はサイズを認識すること、及び既知の参照試料の特性に基づいてナノ粒子特性を同定することを含み得る。機械学習ベースのデータ解析は、例えば、既知の参照試料からの参照データで訓練されたニューラルネットワークへの2パラメトリックナノ粒子散布図の入力、及びニューラルネットワークの出力に基づくナノ粒子特性を取得することを含み得る。
【0037】
本発明の更なる利点は、調査され得る広範囲の利用可能なナノ粒子から生じる。好ましい例では、ナノ粒子は、球状ナノ粒子、非球状ナノ粒子、無機ナノ粒子、有機ナノ粒子、表面層を有するナノ粒子及び/又は多層構造を有するナノ粒子を含む。
【0038】
本発明の更なる有利な実施形態によれば、干渉顕微鏡装置の視野を通して試料を流すステップが提供され得る。有利には、画像の連続フレームを収集することと、画像の連続フレーム内のナノ粒子をトラッキングすることとは、視野を通って移動する試料を用いて実行され得、したがって測定の増加した処理量を可能とする。好ましくは、軌跡運動データからナノ粒子サイズを計算するための利点が維持されるように、層状試料流が利用される。
【0039】
有利には、画像の連続フレームを収集するステップが少なくとも2つの異なる波長を有する照明光を用いて行われ且つナノ粒子プロット位置の分布を解析するステップが異なる波長で実行される、多波長測定が実行され得る。画像の連続フレームを収集するステップは、少なくとも2つの異なる波長で繰り返され得、又は照明光は、少なくとも2つの異なる波長を含むことができ、画像の連続フレームを収集するステップは、1回行われ、且つ参照光と重ね合わされた散乱光は、スペクトル分離で収集される。これらの変形形態では、少なくとも2つのナノ粒子散布図が連続的又は同時に取得される。ナノ粒子散乱断面積は、散乱光の波長に依存するため、ナノ粒子特性を決定するための追加のパラメータが取得され、したがって測定の精度及び再現性が向上する。
【0040】
本発明の更なる変形形態では、取得されるナノ粒子特性は、ナノ粒子の分光情報を含む。好ましくは、この実施形態は、多波長測定とともに利用される。分光情報は、例えば、ナノ粒子を含む試料又はナノ粒子単独のスペクトル吸収及び/又は透過データを含む。有利には、分光情報は、ナノ粒子の更なる特性評価を提供する。
【0041】
好ましくは、干渉顕微鏡装置を用いて、特にナノ粒子の材料含有量を同定するために試料蛍光が検出され得る。試料蛍光を検出することは、照明光又は追加の励起光で蛍光を励起することと、ナノ粒子の蛍光スペクトル又は特異的蛍光バンドを測定することとを含み得る。有利には、蛍光検出は、ナノ粒子に含まれる少なくとも1つの物質の同定を可能にする。
【0042】
本発明の更なる任意選択の特徴によれば、照明光は、直線偏光される。偏光は、照明光の散乱に影響を及ぼし、そして、ナノ粒子特性を決定するための更に別のパラメータが取得される。特に好ましくは、画像の連続フレームを収集するステップは、2つの直交偏光で行われる。有利には、2つの偏光は、別々に、しかし同時に記録され得る。
【0043】
有利には、本発明の方法は、試料中のナノ粒子濃度、特に体積濃度を推定するステップを含み得る。画像の連続フレーム、特に軌跡運動データは、試料中の検出されたナノ粒子の数を提供し、且つ試料体積は、顕微鏡装置によってカバーされた撮像体積に基づいて推定され得る。ナノ粒子濃度は、検出されたナノ粒子の数及び撮像体積から計算され得る。
【0044】
本発明の更に好ましい特徴によれば、コヒーレント光源装置は、例えば、10fs~1000nsの範囲内のパルス持続時間及び1kHz~1000MHzの範囲内の繰り返し周波数を有する照明光パルスを生成するパルス光源装置である。照明光パルスを利用することは、高い照明強度を提供することに関する利点を有し得る。特に好ましくは、画像の連続フレームは、照明光パルスと同期して収集される。
【0045】
本発明の方法は、試料及び/又はナノ粒子の更なる特性の決定と組み合わせ得る。第1の変形形態によれば、試料の粘弾性特性を決定するために、軌跡運動データが解析される。追加的又は代替的に、第2の変形形態によれば、ナノ粒子の幾何学的形状を決定するために、軌跡運動データが解析される。本発明のこれらの変形形態は、好ましくは、ランダム拡散を超えて粒子運動に影響を及ぼし得る、光場力若しくは誘電力などの外力の印加、及び/又は電位などのポテンシャルの印加によって取得される。iPSF特徴の解析から得られた粒子の軌跡は、粒子とその環境との相互作用及び後者の特性、例えばその粘弾性に関する情報を提供する。
【0046】
有利には、測定の更なるパラメータとして試料温度が利用され得る。好ましくは、画像の連続フレームを収集するステップは、試料の少なくとも2つの異なる温度で行われる。ナノ粒子運動は、試料温度に依存し、そして、画像の連続フレームから複数の軌跡の運動データが取得され得る。
【0047】
本発明の更なる任意選択の特徴によれば、ナノ粒子からの散乱光の部分と参照光の部分との間のバランスを制御するステップが提供される場合、iPSF特徴を収集することの信号対雑音比を改善することに関する利点が得られる。
【0048】
ナノ粒子特性を決定する方法及びその実施形態という文脈内において開示された特徴はまた、ナノ粒子特性を決定するための本発明の装置の好ましい特徴を表し、逆もまた同様である。したがって、上述の態様並びに本発明の好ましい特徴は、特にナノ粒子特性を決定する方法の実施に関して装置にも適用される。上記の本発明の好ましい実施形態、変形形態及び特徴は、所望に応じて互いに組み合わせ可能である。
【0049】
本発明の更なる詳細及び利点は、以下に示す、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の好ましい実施形態に係るナノ粒子特性を決定するための装置の特徴の概略図である。
図2】軌跡運動データの収集の説明図である。
図3A】単分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図3B】単分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図3C】単分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図3D】単分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図4A】多分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図4B】多分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図4C】多分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図4D】多分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図4E】多分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図4F】多分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図4G】多分散粒子試料を調べた実験結果を示す図である。
図5A】多分散及び/又は生体粒子試料を調べた更なる実験結果を示す図である。
図5B】多分散及び/又は生体粒子試料を調べた更なる実験結果を示す図である。
図5C】多分散及び/又は生体粒子試料を調べた更なる実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の好ましい実施形態の特徴は、図1に示すようなナノ粒子特性を決定するための装置及びナノ粒子特性を決定する方法を実行するためのその適用を参照して以下に説明される。本発明の実装態様は、例示的な方法で示された装置の構成に限定されないことに留意されたい。特に、本発明の実施形態は、干渉顕微鏡装置、特にその照明及びカメラ部品、試料容器、並びに蛍光検出及び/又は透過率測定セットアップのような任意選択の更なる構成要素の設計に関して変更され得る。特に、調査中の粒子に関する更なる情報を抽出するために、iNTAは、高感度蛍光測定と組み合わされ得る。本発明の方法は、露光時間及び信号対雑音比を増加させるためのいくつかの手段、例えば、粒子閉じ込め戦略、より短いレーザ波長及びより高いレーザ出力の使用によって更に変更され得る。これらの手段は、広範囲の用途のための迅速、正確且つ非侵襲的な様式における、弱く散乱するナノ粒子の高分解能解析へのアクセスを許容する。さらに、測定は、少なくとも2つの異なる温度及び/又は照明光の少なくとも2つの波長によって繰り返され得、したがってナノ粒子特性を決定する精度を向上する。
【0052】
図1に概略的に示されたナノ粒子特性を決定するための試験装置100は、特にコヒーレント光源装置111と、撮像光学系112と、ナノ粒子2を有する試料1を含む試料容器113と、検出器カメラ装置114とを備える干渉顕微鏡装置110を備える。
【0053】
通常、本発明の実施形態によれば、試験装置100は、共通のコンピュータユニット又は別個のコンピュータユニットによって提供され得る、記録装置120及び解析装置130を更に備える。記録装置120は、検出器カメラ装置114に接続され、且つ検出器カメラ装置114からの画像を記録するために構成されている。解析装置130は、記録された画像内のナノ粒子をトラッキングし、且つナノ粒子経路を解析するために配置される。少なくとも記録装置120、又は記録装置120と解析装置130との両方は、検出器カメラ装置114と結合される。さらに、記録装置120及び解析装置130のうちの少なくとも一方は、例えば様々な照明条件を生み出すために、光源装置111のような、試験装置の他の構成要素と結合され得る。照明条件は、特に、例えば、ナノ粒子からの散乱光の部分と参照光の部分との間のバランス、及び/又は照明波長を制御するためのパワーに関して異なり得る。
【0054】
試験装置100では、画像の連続フレームが収集され、処理され且つ解析される。この目的のために、コヒーレント光源装置111からの照明光3で試料1が照明される。非散乱の参照光と重ね合わされた、ナノ粒子2からの散乱光は、所定の露光時間にわたって収集された画像を提供する。解析装置130を用いて、ナノ粒子2が画像の連続フレーム内でトラッキングされる。解析装置130を用いて、ナノ粒子2の干渉点拡がり関数(iPSF)特徴が確立され、且つナノ粒子軌跡運動データが各ナノ粒子2について決定される。さらに、解析装置130を用いて、ナノ粒子2のナノ粒子サイズ及びナノ粒子散乱断面積が、軌跡運動データから、特にナノ粒子のiPSF特徴から計算される。さらに、2パラメトリックナノ粒子散布図200(例えば、図4Cを参照)が解析装置130を用いて作成され、且つナノ粒子プロット位置の分布が、取得すべきナノ粒子特性を提供するために解析装置130を用いて解析される。
【0055】
より詳細には、コヒーレント光源装置111は、525nmの発光波長を有する照明光3を生成する低コヒーレント光源(レーザダイオード、製造業者:Lasertack社、ドイツ)である。照明光3は、レンズ116を用いて、63倍の油浸対物レンズ(NA 1.46、製造業者Zeiss社、ドイツ)を備える撮像光学系112の後焦点面上に集束される。NDフィルタ115は、照明光パワーを調整するために配置される。NDフィルタ115の直後に位置するλ/2波長板(図1には図示せず)は、偏光依存ビームスプリッタ(PBS)117を透過させる入射照明光3の偏光を合わせるために使用される。λ/4波長板118は、照明光3の偏光を直線から円へと変化させる。
【0056】
試料容器113は、顕微鏡スライド113Aと、カバースリップ113Bと、それらの間のスペーサ(例えばシリコンガスケット)とによって形成されたチャンバを備える。ナノ粒子2を含む試料1(拡大模式図参照)は、試料容器113内に配置される。円偏光された照明光3は、撮像光学系112を用いて試料1内に集束される。撮像光学系112の焦点面は、カバースリップの(例えば、数マイクロメートル)上方に通常載置され、且つ好ましくはアクティブフォーカスロックを用いて安定化される。特に、カバースリップ113Bの上方の焦点面の位置を調整するために、照明光3がカバースリップ113B上に集束され、次いで焦点面をカバースリップ113Bの(例えば、約1μm)上方の位置に位置決めするために、圧電ステージが使用される。焦点位置をロックするために、TIRモードで動作する赤色レーザ(CPS670F)及びPSD自動アライナ(TPA101)と組み合わされた位置検知検出器(PDP90A)が利用される。
【0057】
照明光3は、(参照光を提供する)カバースリップによって部分的に反射され、且つナノ粒子2によって部分的に散乱され、その掌性を反転させる。反射された参照光と重ね合わされた散乱光4は、撮像光学系112を用いて収集される。λ/4波長板118を通過すると、偏光は直線に戻るが、ここで90°回転される。反射参照光と重ね合わされた散乱光4は、PBS 117によって、CMOSカメラチップ(例えば、タイプ:MV1-D1024E-160-CL-12、製造業者PhotonFocus社、スイス)を備える検出器カメラ装置114に向けて反射される。一例として、7×7μmの試料面積に相当する128ピクセル×128ピクセルの視野(FoV)が使用される。記録速度、例えば5000フレーム毎秒(fps)は、カメラの読み出し時間によって通常制限される。例えば1秒間の露光時間にわたって参照光と重ね合わされた散乱光の画像の連続フレームを記録することにより、10nmのナノ粒子2についてさえも100を超える位置特定を有する軌跡が捕捉され得、且つ20nmよりも大きいナノ粒子2については1000を超える位置特定を有する軌跡が捕捉され得る。
【0058】
実用的な測定の一例として、5000fpsのフレームレートに対して、露光時間はtexp=80μsの最大可能値に設定される。画像のフレームの200(又は600)個の1秒長のシーケンスが単分散(又は多分散)試料について記録される。画像のフレームのより多くのシーケンス(2300)が、例えば尿試料(下記参照)のような希釈された試料について記録され得る。単一粒子測定の場合、ビデオ取得ソフトウェア(pyLabLib Camcontrol)に含まれる画像トリガが、FoVの中心を粒子が横切る0.5秒前にフレームの保存を開始するために使用され得る。多分散溶液測定の場合、トリガは使用されず、むしろ画像のフレームのシーケンスが連続的に記録され得る。
【0059】
試料1の画像の収集されたフレームは、解析装置130を用いて処理される。画像のフレームを処理することは、解析装置130を用いて各ナノ粒子2についてナノ粒子軌跡運動データを決定すること、特に、フレームの各々から得られた、各ナノ粒子2のナノ粒子位置及び関連する収集時間のシーケンスを決定することを含む。さらに、以下に概説するように、軌跡運動データからナノ粒子サイズが計算され、且つ解析装置130を用いてナノ粒子のiPSF特徴からナノ粒子散乱断面積が計算される。
【0060】
ナノ粒子サイズ(例えば直径)は、軌跡運動データから決定された拡散定数Dに基づいて計算される。液体中のナノ粒子の拡散定数Dは、ストークス・アインシュタイン(SE)式によって記述される。
【数1】
式中、kBはボルツマン定数であり、T及びηはそれぞれ流体の温度及び粘度であり、dはナノ粒子の(見かけの)直径を意味する[4]。したがって、粒子軌跡(例えば図2Bを参照)の平均二乗変位(MSD)からDを評価することによって、ナノ粒子サイズdが計算される。軌跡点の増加数とともに測定精度が改善されるため、図1の上記セットアップを用いて得られた高速記録が好ましい。特に好ましくは、高速撮像は、低い位置特定誤差を提供するために大きいSNRを維持することと組み合わされる[16]。これは、本発明に従って利用されるiSCAT顕微鏡法が、高い空間精度及び時間分解能でナノ粒子をトラッキングするその能力に起因して決定的な利点を提供する場合である[11]。
【0061】
実際には、ナノ粒子2の希釈懸濁液が試料容器113の閉鎖チャンバに導入される。試料1中に拡散しているナノ粒子2は、検出器カメラ装置114を用いて撮像される。ナノ粒子2の軌跡長は、主にナノ粒子の軸方向拡散によって制限される。拡散定数D及びそれによるdは、個々の軌跡にMSDプロットをフィッティングすることによって抽出される。単分散試料の場合、平均拡散定数D及び位置特定誤差は、軌跡長によって重み付けされた平均MSDプロットをフィッティングすることによって評価され得る。多分散試料の場合、干渉コントラストCの知識が更に活用される。粒子が照明領域を横切るときに干渉コントラストCは軸方向に変調するため、各軌跡からの最大のポジティブコントラストは、好ましくは、後続のデータ解析のために使用される。
【0062】
図2Aは、(試料界面から反射された)平面参照光波と(粒子によって散乱された)球面波との干渉から生じる干渉点拡がり関数(iPSF)の3つの例を示している([11]、[17])。図2Aの左列に示されるiPSFは、カバースリップ113B及び焦点面に対する粒子の位置に応じて定性的に変化する[17]。所与の画像においてiPSFを位置特定するために、例えば、図2Aの右列に示されるように、iPSFを輝点に変換する放射状分散変換(RVT)が適用され得る[18]。軌跡の一例が図2Bに重ねられている。
【0063】
各ナノ粒子について計算されたナノ粒子散乱断面積は、画像のフレームから以下のように導出されるiSCAT強度から得られる。検出器に記録されたiSCAT強度は、以下の式で表され、
【数2】
式中、Iref=|Eref及びIsca=|Escaは、それぞれ参照光及び散乱光の強度を表す。位相θは、撮像系におけるグイ位相、材料依存散乱位相、及びナノ粒子の軸方向位置に起因する進行位相成分から生じ得る2つの場間の相対位相を表す。この式はホログラフィにおける信号と同様である。しかしながら、撮像におけるホログラフィの従来の使用とは対照的に、iSCATの研究は、ナノ粒子からの弱い信号を検出するために干渉法を利用してきた[11]。これを可能にした重要な特徴は、反射モードで通常実装される共通経路配置を使用することである[11]。iSCATコントラストは、以下のように定められる。
【数3】
式中、Ibgは、ナノ粒子画像付近の画像背景の強度である。したがって、Cは|Esca/Eref|に比例する。レイリー粒子では、Escaは分極率αに比例し、結果、C∝α∝V∝dとなる。通常、最大iSCATコントラスト及び散乱断面積は、
【数4】
により関係づけられ、式中、βはセットアップパラメータのみに依存し、且つ演繹的に又は既知のサイズ及び屈折率の粒子を用いた較正を用いて計算され得る。
【0064】
iSCAT信号強度は、干渉コントラスト(C)として表され、且つ粒子の散乱断面積を直接報告する。kが波数であり、kd<<1を有する一様なレイリー粒子の場合、中心iPSFローブのCは、式(2)によって与えられる分極率αに比例する([10]参照)。
【数5】
【0065】
式中、Vは粒子体積を表し、n及びnはそれぞれナノ粒子及びその周囲媒体の屈折率である[19]。1より大きいか又は約1のkdを有する粒子の場合及び多層粒子の場合、一般化ミー理論は、散乱強度を説明する(以下を参照)。本発明者らは、Cに関する情報が、様々な種を解読し且つ多分散体中のそれらの屈折率を決定する際に利用され得ることを見出した。
【0066】
図3は、市販の単分散金ナノ粒子(GNP)を含む試料を用いて得られた実験結果を示す。図3Aは、異なるサイズのGNP試料の遅延時間に対するGNP拡散の平均二乗変位(MSD)を示す。細線は、少なくとも25個の位置特定事象を含む各個々の軌跡から抽出されたMSDを示す。太線A~Hは、自由拡散が確認される、(軌跡長による)加重線形平均を示す。フィッティングから抽出された拡散定数が凡例に列挙されている。
【0067】
図3Bは、製造業者によって提供された公称GNP直径dnomに対する、図3Aのデータから抽出された、様々な直径のGNPの拡散定数Dを示す。破線はT=21℃に対するSE関係式を示し、且つ実線は式(1)のSE関係式へのフィッティングである。データとの一致は満足のいくものであるが(対数スケールに留意)、測定の高精度により、ナノ粒子直径における小さな偏りが明らかとなる。好ましくは、計算されたナノ粒子直径は、例えば水和層の厚さ([20])及び/又は界面活性剤分子から生じる小さな偏差について補正され得る。偏りの補正は、公称直径を有するナノ粒子又は比較試料を用いた実験的試験に基づいて行われ得る。実際、図3Bの実線の曲線は、すべての粒子について半径のI=1.8±0.3nmの増加を考慮すると、理論と実験との間の優れた一致を報告している。
【0068】
SE関係式(1)を更に調べるために、マイクロ加熱ステージ(VAHEAT、Interherence社製)を使用する異なる温度での測定が行われる。図3Bの挿入図における30nmのGNPの場合について例示されるように、実験データ(記号)と式(1)の予測との間の非常に良好な一致が、dnom(破線)を流体力学的直径dH=dnom+2I(実線)で置き換えたときに得られる。
【0069】
図3Cは、SE関係式(1)に従って個々のGNP軌跡から抽出されたナノ粒子直径のヒストグラムを示す。個々の測定値は、それらの軌跡長によって重み付けされた。データに対するガウシアンフィッティングは正規分布を確立し、平均値d mes及び/又は標準偏差σ(mes)を決定することを可能にする([21])。10nm、15nm、20nm及び30nmのGNPのデータは、40mWの照明パワーで記録され、残りは2mWで記録される。図3Cの挿入図は、I及びそのエラーバーを示す。破線は、図3Bのグローバルフィッティングから得られたIの値を示す。
【0070】
図3Dは、本発明のiNTA手法と様々な従来技術の手法との比較を示す。iNTAを既存の最先端の方法と比較するために、DLS(ゼータサイザー ZS90)、NTA(Nanosight NS500)、走査型電子顕微鏡(SEM、日立S-4800)及び透過型電子顕微鏡(TEM、Zeiss EM10)の各機器が、市販のNTAの下限の例示的な試料としての、30nmの公称直径を有するGNPを特性評価するために使用された。DLS測定値の出力は、強度加重分布を表す。結果は、DLS分布及びNTAサイズ分布がSEM測定及びTEM測定のものよりも大きな広がりを有することを明らかに示している。しかしながら、iNTA分布の幅はTEMの幅に等しく、したがって、優れた分解能と光学的測定の利点を兼ね備えている。
【0071】
図4は、従来技術の手法(図4A:DLS、図4B:NTA)又は本発明の手法(図4C図4G:iNTA)を用いて多分散ナノ粒子試料で得られた更なる実験結果を示す。多分散ナノ粒子試料は、15nm、20nm及び30nmのGNPを有する3つのナノ粒子集団の混合物を含む。本発明のiNTA手法により、各ナノ粒子2が、その計算されたナノ粒子サイズ及び計算されたナノ粒子散乱断面積によって決定されるプロット位置を有し且つすべてのナノ粒子2がナノ粒子プロット位置の分布を生み出す、2パラメトリックナノ粒子散布図200が作成される。
【0072】
図4C図4Gにおいて、ナノ粒子散布図200の水平軸及び垂直軸は、測定直径及びiSCATコントラストの三乗根をそれぞれ示す。図4C図4Gの各々において、2Dガウス混合モデルが異なる集団を同定するために使用される。描かれた線は、それぞれの屈折率によるCとdmesとの間の関係を確立し、一方、影付き領域は、屈折率データにおける不確定要素を示す。図4C図4Gにおけるクロスマークは、ナノ粒子プロット位置の各分布の中央値を意味する。
【0073】
図4Aは、15nm、20nm及び30nmのGNPを含有する懸濁液を表す連続的な特徴のない分布を生み出す、DLS測定値(ゼータサイザー ZS90)の強度加重分布を示している。図4Bに示されるように、DFMベースのNTA(Nanosight NS500)もまた、異なる集団を分解しない。
【0074】
図4Cの2パラメトリックナノ粒子散布図200は、iNTAを用いて抽出された個々の軌跡のiSCATコントラストC及び測定されたナノ粒子直径dmesを示している。データの目視検査により、3つのナノ粒子集団に対応する3つのクラスタ201、202及び203が明確に分かる。実際、右側の縦軸にプロットされたiSCATコントラストC値のヒストグラムはまた、それ自体で3つの集団を分解している。完全共分散を有する二次元(2D)ガウス混合モデル(GMM)の適用[22]は、定量的な方法で3つのナノ粒子集団を提供し、且つdmesヒストグラム内の集団を同定している。
【0075】
図4D及び図4Eには、10nm及び15nmのGNPの混合物並びに40nm及び60nmのPS球(PSS)の混合物をそれぞれiNTAが完全に分解する、更なる例が示されているが、このサイズ範囲内の粒子は通常、DFMベースの方法ではアクセス可能ではない[23]。
【0076】
40nmのGNP、100nmのPSS及び100nmのシリカビーズ(SB)の混合物について図4Fに示すように、類似のサイズ又はσscaの粒子が解析される場合、ナノ粒子散布図200のC及びdmesの知識を組み合わせる利点が更に明らかになる。Cもdmesも単独では試料の組成に関する信頼できる情報を提供しないが、2Dナノ粒子散布図200におけるそれらの組合せは、3つの異なる集団(種)の存在についての堅固な証拠を提供する。また、GMM解析の適用は、Cヒストグラム及びdmesヒストグラムを分解することを可能にする。図4C及び図4Dにおける分布のデータクラウドの水平方向の広がりは、短い軌跡又は位置特定誤差から生じる不確実要素に起因するのに対して、図4E及び図4Fにおけるデータの斜めの延長は、試料の真のサイズ分布を表す。
【0077】
更なるナノ粒子特性として、ナノ粒子の屈折率(RI)が取得され得る。特に式(2)に基づいて、iSCATコントラストCの測定値及び測定されたナノ粒子直径dmesは、ナノ粒子のRIへの直接アクセスを提供する。一例として、図4C図4D及び図4Fにおけるデータをフィッティングするために、金(nAU=0.63+2.07i)のRIが使用され、実線が得られる。水平切片は、3つの場合それぞれに対して1.6nm、1.8nm、及び1.5nmに達する、水和シェル2lの別の独立した尺度を与える。この情報は、実験的に測定されたC及びσscaの期待値をセットアップ用の単独の較正パラメータと関連付けるために使用され得る。
【0078】
さらに、図4E及び図4FにおけるPSS及びSBのデータをフィッティングすることは、文献値とよく一致している、nPS=1.62及びnSi=1.45を提供する。PSS及びSBの場合、より大きなナノ粒子のσscaがより高次の多重極からの寄与を含み始めるために、完全なミー理論[19]から計算されたRI曲線は直線から逸脱することに留意されたい。
【0079】
更なる実験的試験として、10nm及び20nmのGNPのより複雑な混合物を、ポリエチレングリコールコーティング(Creative Diagnostics社製;PEGのMW 3,000)の有り無しで調べる。図4Gは、4つの集団201、202、203及び204を明確に識別することによってiNTAの高性能を示している。さらに、測定値は、この場合は約12nmに相当するPEG層の厚さの直接的評価を提供する。これらの結果は、複合ナノ粒子試料及びその周囲の液相との相互作用の更なる高感度且つ定量的な調査への途を拓く。
【0080】
iNTA測定の優れた感度及び分解能は、単分散ナノ粒子及び既知の多分散ナノ粒子を調べることだけでなく、現実的な現場問題の調査をも可能にする。実際、様々な物質及びサイズのナノ粒子が迅速、正確且つ非侵襲的方法で特性評価されるかなりの数の用途がある。本発明者らは、合成的に生成された脂質小胞、並びに様々なタンパク質、核酸又は他の生化学的実体をその内部に含有する及び/又はそれらに結合している細胞外小胞(EV)の解析を用いて本発明を試験した。EVは、細胞間コミュニケーションのためのコンベヤ及び疾患マーカーとして同定されているが、既知の研究は、それらの定量的評価における処理量及び分解能によって部分的に妨げられている[24]。EVは、多くの場合、エクソソーム(セルの内側から生じる、直径30~150nm)及びマイクロベシクル(細胞膜に由来する、直径100~1000nm)としてグループ化され、一方、150nm未満の粒子は小さな細胞外小胞(sEV)と呼ばれることもある。本発明は、以下に記載されるように、合成的に生成されたリポソーム、寄生EV及びヒト尿EVを調査することによって試験された。
【0081】
図5Aは、約200nmより大きい粒子を除外するために濾過された、合成的に生成されたリポソームの試料に対する本発明のiNTA測定の結果を示す。リポソームは、水性内部を取り囲む脂質二重層シェル2Aからなり(図5Aの挿入図を参照)、したがって、シェルの厚さ(tsh)及びRI(nsh)並びに内部のRI(nin)を考慮する一般化ミー理論[18]によってモデル化され得る。
【0082】
図5Aに描かれた線は、これらの値に基づくモデルが実験データ全体に非常によく適合することを確認する。リポソーム内部の変動に対する結果の感度を説明するために、より大きいninであるが同じシェルパラメータについて、破線の曲線が図5Aにプロットされている。iNTAの高いSNRは、均一なナノスフェアの単純なモデルを明確に区別することを可能にすることに留意されたい。
【0083】
更なる例として、潜在的に致死性の熱帯性疾患であるリーシュマニア症を引き起こす寄生EVを調べた。リーシュマニア寄生虫は、大部分がEV内部の小分子RNAと共に伝わる多数の病原性因子を分泌する。リーシュマニア(LEV)によって放出される小胞の定量的特性評価は、感染過程におけるそれらの役割を理解する上で大きな価値があるだろうが、信頼できるデータは欠けている。図5Bは、LEVのiNTAナノ粒子散布図200を提示する。サイズヒストグラムは、DLS及びNTAを使用する公表結果と一致する[25]。しかしながら、iNTAデータは、より定量的な洞察へのアクセスを提供する。シェルモデルと、図5Bにマークされた3点の一定のCの等値面及びdmesの等値面の試験とに基づいて、本発明者らは、ninが、tsh∈(3,8)nm及びnsh∈(1.44,1.54)を有する(1.334,1.38)の狭い間隔に十分に制限されたままであり、様々な脂質シェル厚さ及びシェル内の最大60%のタンパク質含有量を説明していることを見出した。ninの推定値は、異なるサイズの粒子がまばらに詰め込まれており且つほとんどが水でできていることを意味する。
【0084】
細胞外小胞は、通常、異なる細胞起源を有するエクソソーム及びマイクロベシクルの2つのクラスに分類される。それにもかかわらず、図5Bにおける滑らかで限定された2Dナノ粒子分布は、すべてのLEVが同様のコンシステンシーを有することを示している。これを更に解明するために、nsh=1.44、nin=1.363及びtsh=5nmについて得られた例として、描かれた実線が提示されている。曲線はデータ傾向を非常によく再現しているが、純粋なリポソームのデータ(図5Aを参照のこと)と比較してCにおけるより大きな広がりは、寄生虫分泌活性の定量的研究への入り口を提供する、tsh、nsh又はninの検出可能な変動を明らかにする。例えば、nsh=1.44及びtsh=5nm、並びにタンパク質物質の1.6の実効屈折率が仮定される場合、EV内部溶液のタンパク質含有量は、図5Bの点線の曲線で示されるように約10%±3%であると推定される。
【0085】
更なる例として、ヒト尿EVを調べた。尿は、EVを含有することが知られており、且つEVは、疾患マーカーとして役立つ大きな将来性を有すると期待されている。尿はNTA([26]、[27])によって解析され、50~300nmの範囲内の単峰性小胞サイズ分布を与える。しかしながら、図5Cは、iNTAサイズヒストグラムも連続的な広範な分布を提示するものの、その2Dナノ粒子散布図200は、様々な部分集団を明確に分解することを示している。実際、約d=100nmから始まる目下のデータ分布の観察された分岐は、以前は単にマイクロベシクルとしてグループ化されていたEVに新たな光を投げかける。
【0086】
すべての検出されたナノ粒子がEVであるという仮定に基づいて、図5Cにマークされた7つの点について一定のC及びdmesの等値面を計算することは、下部クラウド201が大部分水を含むEVを表すことを示している。しかしながら、斜めのクラウド202上の大小の粒子は、ninのより大きな値を有する。全体を併せて、データは、約3つのクラスの粒子:全EVの50%超を構成するサイズ分布50~150nmを有するsEV又はエクソソーム、サイズ分布100~250nmを有するが高いタンパク質含有量(大きな散乱断面積)を有するマイクロベシクル、並びにサイズ分布80~300nm及び非常に少ない生物学的含有量を有するマイクロベシクルを画定することを可能にする。尿の特有のiNTAプロット200は、EVの構成を定量化するための基礎を提供し、且つ病気によって引き起こされる偏差を探索するための本発明の有利な潜在的能力を示す。
【0087】
有利には、干渉散乱顕微鏡法とナノ粒子トラッキング解析を組み合わせることにより、iNTAは、ナノ粒子混合物のサイズ及び/又は屈折率を決定する際の感度、精度及び分解能の限界を押し広げる。本発明者らは、以前に報告されたよりも弱く散乱するナノ粒子の検出によってのみならず、様々な多分散体中の複雑なナノ粒子種の解読及び例えばコロイド状金ナノ粒子のようなナノ粒子の水和層の測定によっても、iNTAの能力を実証した。さらに、本発明者らは、iNTAの現在の性能が医療診断に新たな光を投げかけることができることを示した。
【0088】
上記の説明、図面、及び特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、その異なる実施形態における本発明の実装のために、個別に、組合せにおいて、又は部分的組合せにおいて、重要であり得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】