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特表2024-541315中枢性低換気に関連する状態を治療するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】中枢性低換気に関連する状態を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20241031BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/433 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P25/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/433
A61K31/137
A61K31/5375
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527312
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022049483
(87)【国際公開番号】W WO2023086433
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/278,324
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/305,305
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520282649
【氏名又は名称】アプニメッド,インコーポレイテッド(デラウェア)
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】タラント-モンテムッロ,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,デービッド,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ファーカス,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ローレンス,ジー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZC201
4C084ZC411
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086BC85
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA32
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZC20
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA09
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA43
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)を含む医薬組成物、ならびに中枢性低換気に関連する状態を治療する方法が本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢性低換気に関連する状態の治療を必要とする被験体に、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)の有効量を投与する工程を含む、中枢性低換気に関連する状態を有する被験体を治療する方法。
【請求項2】
NRIがノルエピネフリン選択的再取り込み阻害剤(NSRI)である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
NSRIが、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エディボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミンおよびビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
NRIが、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジンおよびベンラファキシンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害剤(NNRI)である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
NRIがレボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
CAIが、アセタゾラミド、ジクロロフェンアミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ゾニサミド、エトクスゾラミド、トピラマート、スルチアムおよびそれらの任意の組合せまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される、請求項1~6いずれか記載の方法。
【請求項8】
CAIがアセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
NRI、例えばアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩が約20~約200mgの用量で投与される、請求項1~8いずれか記載の方法。
【請求項10】
NRI、例えばアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩が約25~約100mgの用量で投与される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
CAI、例えばアセタゾラミドが約150mg~約750mgの用量で投与される、請求項1~10いずれか記載の方法。
【請求項12】
カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、例えばアセタゾラミドが約500mgの用量で投与される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量が、1日当たり2回の別々の投与において投与される、請求項9または10記載の方法。
【請求項14】
アセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩の用量が、1日当たり2回の別々の投与において投与される、請求項11または12記載の方法。
【請求項15】
NRIが、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩であり、25~100mgの用量で投与され、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量が、1日当たり2回の別々の投与において投与され;CAIが、アセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩であり、250~750mgの用量で投与され、アセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩の用量が、1日当たり2回の別々の投与において投与される、請求項1~8いずれか記載の方法。
【請求項16】
NRIおよびCAIが別々の組成物として投与される、請求項1~15いずれか記載の方法。
【請求項17】
NRIおよびCAIが単一組成物中で投与される、請求項1~15いずれか記載の方法。
【請求項18】
別々の組成物または単一組成物が経口投与形態である、請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
経口投与形態が、シロップ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤またはパッチである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
中枢性低換気に関連する状態が肥満低換気症候群(OHS)または肥満関連睡眠低換気(ORSH)である、請求項1~19いずれか記載の方法。
【請求項21】
中枢性低換気に関連する状態が肥満低換気症候群(OHS)である、請求項1~20いずれか記載の方法。
【請求項22】
中枢性低換気に関連する状態が肥満関連睡眠低換気(ORSH)である、請求項1~20いずれか記載の方法。
【請求項23】
中枢性低換気に関連する状態を有する被験体の治療における使用のための、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)および(iii)薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項24】
NRIがノルエピネフリン選択的再取り込み阻害剤(NSRI)である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
NSRIが、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エディボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミンおよびビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される、請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
NRIが、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジンおよびベンラファキシンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害剤(NNRI)である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項27】
NRIがレボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項28】
NRIがアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項29】
CAIが、アセタゾラミド、ジクロロフェンアミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ゾニサミド、エトクスゾラミド、トピラマート、スルチアムまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項30】
CAIがアセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項29記載の医薬組成物。
【請求項31】
NRI、例えばアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩が約20~約200mgの量で存在する、請求項23~30いずれか記載の医薬組成物。
【請求項32】
NRI、例えばアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩が約25~約100mgの量で存在する、請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
CAI、例えばアセタゾラミドが約150mg~約750mgの量で存在する、請求項23~32いずれか記載の医薬組成物。
【請求項34】
CAI、例えばアセタゾラミドが約500mgの量で存在する、請求項33記載の医薬組成物。
【請求項35】
CAI、例えばアセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩が約250mgの用量で投与される、請求項33記載の医薬組成物。
【請求項36】
NRIおよびCAIが別々の組成物中に製剤化される、請求項23~35いずれか記載の医薬組成物。
【請求項37】
NRIおよびCAIが単一組成物中に製剤化される、請求項23~35いずれか記載の医薬組成物。
【請求項38】
別々の組成物または単一組成物が経口投与形態である、請求項36または37記載の医薬組成物。
【請求項39】
経口投与形態が、シロップ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤またはパッチである、請求項38記載の医薬組成物。
【請求項40】
中枢性低換気に関連する状態が肥満低換気症候群(OHS)または肥満関連睡眠低換気(ORSH)である、請求項23~39いずれか記載の医薬組成物。
【請求項41】
中枢性低換気に関連する状態が肥満低換気症候群(OHS)である、請求項40記載の医薬組成物。
【請求項42】
中枢性低換気に関連する状態が肥満関連睡眠低換気(ORSH)である、請求項40記載の医薬組成物。
【請求項43】
毎日投与される、請求項23~42いずれか記載の医薬組成物。
【請求項44】
毎日2回投与される、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項45】
中枢性低換気に関連する状態を有する被験体の治療における使用のための、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)およびカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)。
【請求項46】
中枢性低換気に関連する状態を有する被験体の治療における使用のための、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)の治療組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての他所参照
本願は、2021年11月11日に出願された米国仮出願第63/278,324号および2022年2月1日に出願された同63/305,305号に対する優先権およびその利益を主張し、それらのそれぞれの全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤を含む医薬組成物、ならびに中枢性低換気に関連する状態を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
背景
肥満低換気症候群(OHS)は、患者が迅速にまたは十分に深く呼吸できず、低酸素レベルおよび高い血液CO2レベルを生じる、肥満に関連する状態である。治療されないOHSは、重大な病的状態に関連する。
【発明の概要】
【0004】
概要
本発明の一局面は、中枢性低換気に関連する状態を有する被験体を治療する方法を提供し、該方法は、該治療を必要とする被験体に、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)の有効量を投与する工程を含む。
【0005】
本発明のこの局面の態様は、以下の任意の特徴の1つ以上を含み得る。いくつかの態様において、NRIはノルエピネフリン選択的再取り込み阻害剤(NSRI)である。いくつかの態様において、NSRIは、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エディボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミンおよびビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される。いくつかの態様において、NRIは、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジンおよびベンラファキシンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害剤(NNRI)である。いくつかの態様において、NRIはレボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIはアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、CAIは、アセタゾラミド、ジクロロフェンアミド(dichlorophenamide)、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド(methazolamide)、ゾニサミド、エトクスゾラミド(ethoxzolamide)、トピラマート、スルチアムおよびそれらの任意の組合せ、例えばその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される。いくつかの態様において、CAIはアセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRI、例えばアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、約20~約200mgの用量で投与される。いくつかの態様において、NRI、例えばアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、約25~約100mgの用量で投与される。いくつかの態様において、CAI、例えばアセタゾラミドは、約150mg~約750mgの用量で投与される。いくつかの態様において、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、例えばアセタゾラミドは、約500mgの用量で投与される。いくつかの態様において、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、例えばアセタゾラミドは、約250mgの用量で投与される。いくつかの態様において、用量は1日用量であり、すなわち1日に1回投与される。いくつかの態様において、用量は1日2回の用量であり、すなわち1日に2回の投与で投与される(例えば朝に1回および就寝前に1回)。いくつかの態様において、NRIおよびCAIは、別々の組成物として投与される。いくつかの態様において、NRIおよびCAIは、単一組成物中で投与される。いくつかの態様において、別々の組成物または単一組成物は、経口投与形態である。いくつかの態様において、経口投与形態は、シロップ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤またはパッチである。いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する状態は、肥満低換気症候群(OHS)または肥満関連睡眠低換気(ORSH)である。いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する状態は肥満低換気症候群(OHS)である。いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する状態は肥満関連睡眠低換気(ORSH)である。
【0006】
本発明の別の局面は、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)および(iii)薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明のこの局面の態様は、以下の任意の特徴の1つ以上を含み得る。いくつかの態様において、NRIはノルエピネフリン選択的再取り込み阻害剤(NSRI)である。いくつかの態様において、NSRIは、アメダリン、アトモキセチン、CP-39,332、ダレダリン、エディボキセチン、エスレボキセチン、ロルタラミン、ニソキセチン、レボキセチン、タロプラム、タルスプラム、タンダミンおよびビロキサジンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される。いくつかの態様において、NRIは、アミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン、タペンタドール、テニロキサジンおよびベンラファキシンまたはその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択されるノルエピネフリン非選択的再取り込み阻害剤(NNRI)である。いくつかの態様において、NRIはレボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIはアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、CAIは、アセタゾラミド、ジクロロフェンアミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ゾニサミド、エトクスゾラミド、トピラマート、スルチアムおよびそれらの任意の組合せ、例えばその薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される。いくつかの態様において、CAIはアセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRI、例えばアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、約20~約200mgの量で存在する。いくつかの態様において、NRI、例えばアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩は、約25~約100mgの量で存在する。いくつかの態様において、CAI、例えばアセタゾラミドは、約150mg~約750mgの量で存在する。いくつかの態様において、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、例えばアセタゾラミドは、約500mgの量で存在する。いくつかの態様において、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、例えばアセタゾラミドは、約250mgの量で存在する。いくつかの態様において、NRIおよびCAIは、別々の組成物として製剤化される。いくつかの態様において、NRIおよびCAIは、単一組成物中に製剤化される。いくつかの態様において、別々の組成物または単一組成物は経口投与形態である。いくつかの態様において、経口投与形態は、シロップ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、カプセル剤またはパッチである。いくつかの態様において、医薬組成物は、中枢性低換気に関連する状態を有する被験体の治療における使用のためのものである。いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する状態は、肥満低換気症候群(OHS)または肥満関連睡眠低換気(ORSH)である。いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する状態は肥満低換気症候群(OHS)である。いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する状態は肥満関連睡眠低換気(ORSH)である。いくつかの態様において、医薬組成物は毎日投与される。いくつかの態様において、医薬組成物は毎日2回投与される。
【0008】
中枢性低換気に関連する状態を有する被験体の治療における使用のためのノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)およびカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)も、本発明において提供される。
【0009】
中枢性低換気に関連する状態を有する被験体の治療における使用のための(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)の治療組合せが、本発明においてさらに提供される。
【0010】
そうではないと定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。方法および材料は本発明における使用のために本明細書において記載され、当該技術分野で公知の他の適切な方法および材料も使用され得る。材料、方法および実施例は例示のみのものであり、限定されることを意図しない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリーおよび他の参照文献は、それらの全体において参照により援用される。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が支配的である。
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明からおよび特許請求の範囲から明白である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
肥満被験体は、わずかな呼吸筋肉の弱さおよび低下した呼吸コンプライアンスに加えて、増加した人工呼吸器の需要および上昇した呼吸の作業を有する。肥満個体は一般的に、増加した換気の必要性を補償するために、通常の体重の患者と比較して、増加した中枢性呼吸駆動を有する。これにも関わらず、睡眠病院において評価された肥満被験体(BMI > 30kg/m2)の20%で、OSAは、肥満-低換気症候群(OHS)を定義する昼行性炭酸ガス過剰(PaCO2 > 45mm Hg)を伴う(1)。
【0013】
孤立性(isolated)OSAと比較して、OHSは、全身性の炎症、内皮機能不全およびインスリン抵抗に関連する心臓血管および代謝性疾患のために、増加した罹患率および死亡率を特徴とし、診断はしばしば、急性の呼吸不全の後のみになされる(2)。しかしながら、OHSはたいてい、患者が急性代償不全のために集中治療室への入院を必要とするまで診断されないままおよび治療されないままである(2、3)。
【0014】
ガス変化に対する換気応答性の欠如および上気道閉塞を補償するための不十分な能力は、OHSの病態生理学的関係である。肥満関連呼吸負荷とガス変化に対する換気応答性のバランスが日中に維持され得る場合、それは睡眠中に喪失され得、孤立性夜間低換気が最初に決定される。そのため、低換気は、睡眠関連生理学的適応の結果として、睡眠中に最もかつ第1に顕著であり、睡眠時無呼吸に関係があってもなくてもよい。実際に、孤立性睡眠低換気(経皮的二酸化炭素圧、PtcCO2が覚醒仰向け値と比較して、10分より長い睡眠の間に10mmHgよりも大きく増加する場合、PtcCO2>55mmHgまたは>50mmHgとして定義される)は、神経筋および胸壁の疾患において観察されるものと同様に、覚醒炭酸ガス過剰なくOHSへと進行することが最近述べられている(4)。この状態は肥満関連睡眠低換気(ORSH)と称され、現在では肥満を有する患者における低換気の初期段階であるとみなされる(5、6)。最近の証拠は、グレードIII肥満を有する患者の約20%がORSHを提示することを示し(7、8)、そのため該疾患の大規模な過小評価が支持される。
【0015】
OHSについての利用可能な治療選択肢は、今日まで陽空気圧(PAP)により、上気道閉塞などの潜在的な病態生理学的状態に対処することのみである。しかしながら、低い許容およびPAPに対する結果的な低減したコンプライアンスを伴って治療の厳守はしばしば非常に困難であり、OHSの治療不足状態を生じる。
【0016】
アセタゾラミドは、カルボニックアンヒドラーゼを阻害し、HCO3排出を増加し、代謝アシドーシスを引き起こし、そのために換気を刺激する利尿薬である。設備の増大に取り組むことで(addressing the plant gain)、アセタゾラミドは、緩やかな換気刺激物として働いて呼吸を安定化し、そのために浅い呼吸、その後のORSH患者の典型的な過換気を低減する。アセタゾラミドは、OHSを有する患者において肺胞換気を向上することが示されている(9、10)。しかしながら、アセタゾラミド単独は、肥満低換気に対する病原性の寄与因子の全てに影響を及ぼさない。
【0017】
OHSまたはORSHの薬理学的治療は今日まで承認されていない。
【0018】
治療方法
本明細書に記載される方法は、中枢性低換気に関連する状態の治療のための方法を含む。いくつかの態様において、該状態は肥満低換気症候群(OHS)または肥満関連睡眠低換気(ORSH)である。
【0019】
一般的に、該方法は、(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤の有効量を、かかる治療を必要とするかまたは必要とすると決定された被験体に投与する工程を含む。ある態様において、該方法は、(i)アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩および(ii)アセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩の有効量を、かかる治療を必要とするかまたは必要とすると決定された被験体に投与する工程を含む。
【0020】
いくつかの態様において、該方法はさらに、(iii)催眠薬の治療有効量を投与する工程を含む。ある態様において、該方法は、(i)アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩、(ii)アセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩および(iii)トラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩の有効量を、かかる治療を必要とするかまたは必要とすると決定された被験体に投与する工程を含む。
【0021】
いくつかの態様において、該方法はさらに、(iii)抗ムスカリン剤の治療有効量を投与する工程を含む。ある態様において、該方法は、(i)アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩、(ii)アセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩および(iii)オキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩の有効量を、かかる治療を必要とするかまたは必要とすると決定された被験体に投与する工程を含む。ある態様において、該方法は、(i)アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩、(ii)アセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩および(iii)(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩の有効量を、かかる治療を必要とするかまたは必要とすると決定された被験体に投与する工程を含む。
【0022】
この文脈で使用する場合、「治療する」ことは、中枢性低換気に関連する障害の少なくとも1つの症状を改善することを意味する。いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する障害は肥満低換気症候群(OHS)である。しばしば、OHSは、日中に眠気、エネルギーの欠如、息切れ、頭痛および憂鬱を生じる。夜間に、OHSは、睡眠中に大声および頻繁ないびきおよび/または呼吸の停止を生じる。OHS患者はまた、下肢のむくみを伴う右心臓不全を有し得る。そのため、治療は、いびき、無呼吸、呼吸停止、息切れ、頭痛およびOHSに関連する他の症状の低減を生じ得る。
【0023】
いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する障害は肥満関連睡眠低換気(ORSH)である。ORSHは、神経筋および胸壁疾患において観察されるものと同様に、覚醒炭酸ガス過剰なく、OHSへと進行する孤立性睡眠低換気(経皮二酸化炭素圧、PtcCO2が10分より長い睡眠の間に、覚醒仰向け値と比較して、10mmHgよりも大きく増加する場合にPtcCO2>55mmHgまたは>50mmHgと定義される)を有する状態として記載され得る。
【0024】
一般的に、化合物の「有効量」は、例えば中枢性低換気に関連する状態を治療するため、例えば肥満低換気症候群(OHS)または肥満関連睡眠低換気(ORSH)を治療するための所望の生物学的応答を引き起こすのに十分な量をいう。
【0025】
「低換気症候群」を有する患者は一般的に、覚醒時に緩やかな炭酸ガス過剰または増加した血清重炭酸塩レベルを有し、これは睡眠時にしばしば悪化する。低換気症候群としては、限定されることなく肥満低換気症候群(OHS)が挙げられる。
【0026】
「低換気」は、例えば通常の上限を少なくとも10mm Hg超えて上昇した、動脈二酸化炭素(pCO2)の上昇したレベルとして定義される。低換気症候群の治療は一般的に、覚醒pCO2を訂正することまたは向上することを目指す。
【0027】
1以上の投与、適用または用量において有効量が投与され得る。該組成物は、1日に1回以上から1週間に1回以上;例えば1日おきに1回投与され得る。いくつかの態様において、組成物は毎日投与される。当業者は、限定されないが、疾患もしくは障害の重症度、以前の治療、被験体の一般的な健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含む特定の要因が、被験体を効果的に治療するために必要な用量およびタイミングに影響し得ることを理解する。さらに、本明細書に記載される治療化合物の治療有効量を用いた被験体の治療は、単一の治療または一連の治療を含み得る。
【0028】
本明細書で使用する場合、そうではないと特定されない限り、化合物の「治療有効量」は、疾患、障害もしくは状態の治療における治療的利益を提供するため、または該疾患、障害もしくは状態に関連する1つ以上の症状を遅延もしくは最小化するために十分な量である。化合物の治療有効量は、疾患、障害または状態の治療における治療的利益を提供する治療剤単独または他の治療と組み合わせた治療剤の量を意味する。用語「治療有効量」は、全体的な治療を向上する、疾患もしくは状態の症状もしくは原因を低減もしくは回避する、または別の治療剤の治療的効力を高める量を包含し得る。いくつかの態様において、治療有効量は、覚醒pCO2レベルを標準化または向上する量を包含する。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「被験体」および「患者」は交換可能に使用される。用語「被験体」および「患者」は、動物(例えばニワトリ、ウズラもしくはシチメンチョウなどの鳥または哺乳動物)、具体的に非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ラット、ネコ、イヌおよびマウス)および霊長類(例えばサル、チンパンジーおよびヒト)などの「哺乳動物」、ならびにより具体的にヒトをいう。一態様において、被験体は、農場動物(例えばウマ、ウシ、ブタまたはヒツジ)またはペット(例えばイヌ、ネコ、モルモットまたはウサギ)などの非ヒト動物である。好ましい態様において、被験体はヒトである。
【0030】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容され得る」は、連邦政府もしくは州政府の規制機関または米国以外の国の対応する機関により承認されるかまたは承認可能であること、あるいは米国薬局方または動物およびより具体的にはヒトにおける使用のための他の一般的に認識される薬局方に列挙されることを意味する。
【0031】
「薬学的に許容され得る塩」としては、「薬学的に許容され得る酸付加塩」および「薬学的に許容され得る塩基付加塩」が挙げられる。「薬学的に許容され得る酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性を保持し、生物学的にまたはそれ以外で望ましくないものではない(not biologically or otherwise undesirable)、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等および有機酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等により形成されるこれらの塩をいう。
【0032】
「薬学的に許容され得る塩基付加塩」としては、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩等に由来するものが挙げられる。例示的な塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩である。薬学的に許容され得る無毒性有機塩基由来の塩としては、限定されないが、第1級、第2級および第3級アミン、置換されるアミン、例えば天然に存在する置換されるアミン、環式アミン、ならびに塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミンの樹脂等の塩が挙げられる。例示的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。(例えば、参照により本明細書に援用されるS. M. Berge, et al., 「Pharmaceutical Salts」、J. Pharm. Sci., 1977;66:1-19参照。)
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「単位剤型」は、化合物が被験体に投与される形態をいうように定義される。具体的に、単位剤型は、例えば丸薬、カプセル剤または錠剤であり得る。いくつかの態様において、単位剤型はカプセル剤である。
【0034】
本明細書で使用する場合、「固形剤型」は、固形の医薬用量(1つまたは複数)、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、サシェ、再構成性散剤、乾燥粉末吸入器および咀嚼可能物を意味する。
【0035】
本明細書に開示される化合物について、単一立体化学異性体、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、シス/トランス立体配座異性体、および回転異性体、ならびにそれらのラセミおよび非ラセミ混合物は、本発明の範囲内にある。そうではないと示されない限り、本明細書に開示される化合物の全ての互変異性形態は、本発明の範囲内にある。
【0036】
アトモキセチンは、化学名(-)-N-メチル-3-フェニル-3-(o-トルイルオキシ)-プロピルアミンを有する薬学物質およびその薬学的塩の一般名である。アトモキセチンは、X線回折により決定される場合、R(-)-異性体である。いくつかの態様において、アトモキセチンはアトモキセチン塩酸塩であり得る。
【0037】
アセタゾラミドは、化学名N-(5-スルファモイル-1,3,4-チアジアゾル-2-イル)アセトアミドを有する薬学物質およびその薬学的塩の一般名である。アセタゾラミドは、ジェネリック医薬として入手可能であり、商品名Diamox、Dacarbおよび他のもので販売される。
【0038】
いくつかの態様において、該方法は、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の約20mg~約200mgの用量(または別のNRIの用量同等物)を投与する工程を含む。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約25mg~約100mgである。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約40mg~約80mgである。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約20mg~約50mgである。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約50mg~約100mgである。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約25mgである。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約40mgである。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約50mgである。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約80mgである。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は約100mgである。いくつかの態様において、該用量は日用量であり、すなわち1日1回投与される。いくつかの態様において、該用量は毎日2回の用量であり、すなわち1日に2回の別々の投与、例えば朝に1回および就寝時に1回で投与される。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は、約25mgの日用量である。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は、約50mgの日用量である。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は、約100mgの日用量である。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は、2回の別々の投与において投与される25mgの合計日用量である。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は、2回の別々の投与において投与される約50mgの合計日用量である。いくつかの態様において、アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩の用量は、2回の別々の投与において投与される約100mgの合計日用量である。いくつかの態様において、2回の別々の投与は、朝の投与および就寝時の投与である。いくつかの態様において、2回の別々の投与は、朝の投与および夕方の投与である。
【0039】
いくつかの態様において、該方法は、約50mg~約1000mgの用量のアセタゾラミド(または別のCAIのその用量同等物)、約100mg~約800mgのアセタゾラミド、約150mg~約750mgのアセタゾラミド、約250mg~約750mg、約500mg~約750mgのアセタゾラミドまたは約450mg~約650mgのアセタゾラミドを投与する工程を含む。いくつかの態様において、アセタゾラミドの用量は約250mgである。いくつかの態様において、アセタゾラミドの用量は約500mgである。いくつかの態様において、該用量は日用量であり、すなわち1日に1回投与される。いくつかの態様において、該用量は毎日2回の用量であり、すなわち1日に2回の別々の投与、例えば朝に1回および就寝時に1回で投与される。いくつかの態様において、アセタゾラミドの用量は、約250mgの日用量である。いくつかの態様において、アセタゾラミドの用量は、約500mgの日用量である。いくつかの態様において、アセタゾラミドの用量は、2回の別々の投与において投与される約250mgの合計日用量である。いくつかの態様において、アセタゾラミドの用量は2回の別々の投与において投与される約500mgの合計日用量である。いくつかの態様において、2回の別々の投与は朝の投与および就寝時の投与である。いくつかの態様において、2回の別々の投与は朝の投与および夕方の投与である。
【0040】
いくつかの態様において、NRIおよびCAIは、抗ムスカリン療法の非存在下で投与される。いくつかの態様において、NRIおよびCAIは、他の活性剤の非存在下で投与される。
【0041】
医薬組成物
有効成分として(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)を含む医薬組成物も本発明において提供される。有効成分は単一組成物中または別々の組成物中にあり得る。ある態様において、医薬組成物は、有効成分として(i)アトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩および(ii)アセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩を含む。いくつかの態様において、医薬組成物は、抗ムスカリン剤を含まない。いくつかの態様において、NRIおよびCAIは、医薬組成物中の唯一の有効成分である。
【0042】
例示的なノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)としては、選択的NRI、例えばアメダリン(UK-3540-1)、アトモキセチン(Strattera)、CP-39,332、ダレダリン(UK-3557-15)、エディボキセチン(LY-2216684)、エスレボキセチン、ロルタラミン(LM-1404)、ニソキセチン(LY-94,939)、レボキセチン(Edronax、Vestra)、タロプラム(Lu 3-010)、タルスプラム(Lu 5-005)、タンダミン(AY-23,946)、ビロキサジン(Vivalan);ならびに非選択的NRI、例えばアミトリプチリン、アモキサピン、ブプロピオン、シクラジンドール、デシプラミン、デスベンラファキシン、デキスメチルフェニデート、ジエチルプロピオン、ドキセピン、デュロキセチン、イミプラミン、レボミルナシプラン、マニファキシン(GW-320,659)、マプロチリン、メチルフェニデート、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノルトリプチリン、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、プロトリプチリン、ラダファキシン(GW-353,162)、タペンタドール(Nucynta)、テニロキサジン(Lucelan、Metatone)およびベンラファキシン;ならびにその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0043】
いくつかの態様において、NRIはアトモキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。いくつかの態様において、NRIはレボキセチンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0044】
例示的なカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)としては、アセタゾラミド、ジクロロフェンアミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ゾニサミド、エトクスゾラミド、トピラマート、スルチアムおよびそれらの任意の組合せ、例えばその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0045】
いくつかの態様において、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤はアセタゾラミドまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0046】
医薬組成物は典型的に、薬学的に許容され得る担体を含む。本明細書で使用する場合、語「薬学的に許容され得る担体」としては、薬学的投与と適合性である食塩水、溶媒、分散媒体、希釈剤、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤等が挙げられる。
【0047】
補助的な活性化合物、例えばムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)、例えばオキシブチニンもしくはその薬学的に許容され得る塩または催眠薬も、組成物に一体化され得る。いくつかの態様において、医薬組成物はさらに、ムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)を含む。例示的なムスカリン受容体アンタゴニスト(MRA)としては、M2受容体上で活性を有するアトロピン、プロパンテリン、ベタネコール、ソリフェナシン、ダリフェナシン(darifenacin)、トルテロジン、フェソテロジン、トロスピウムおよびオキシブチニンならびにその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。他の例示的な抗ムスカリンとしては、アニソトロピン(anisotropine)、ベンズトロピン、ビペリデン、クリジニウム、シクリミン(cycrimine)、ジサイクロミン、ジフェマニル、ジフェニドール、エトプロパジン、グリコピロラート、ヘキソサイクリウム、イソプロパミド、メペンゾラート、メチキセン(methixe ne)、メトスコポラミン、オキシフェンサイクリミン、オキシフェノニウム、プロサイクリジン(procyclidine)、スコポラミン、トリジヘクセチルおよびトリヘキシフェニジルならびにその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0048】
いくつかの態様において、ムスカリン受容体アンタゴニストは、オキシブチニンもしくは(R)-オキシブチニンまたはその薬学的に許容され得る塩である。本明細書で使用する場合、(R)-オキシブチニンは、オキシブチニンの他の立体異性体を実質的に含まない(R)-オキシブチニン立体異性体をいう。
【0049】
いくつかの態様において、医薬組成物はさらに催眠薬を含む。例示的な催眠薬としては、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン、トラゾドン、ザレプロン、ベンゾジアゼピン、ガバペンチン、チアガビン(tiagabine)およびザイレム(xyrem)またはその薬学的に許容され得る塩が挙げられる。いくつかの態様において、催眠薬はトラゾドンまたはその薬学的に許容され得る塩である。
【0050】
医薬組成物は典型的に、その意図される投与経路に適合性であるように製剤化される。投与経路の例としては、全身経口、経皮投与および非経口投与が挙げられる。
【0051】
薬学的に許容され得る担体を使用する適切な医薬組成物を製剤化する方法は、当該技術分野で公知であり、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., 2005;およびシリーズの書籍Drugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs (Dekker, NY)参照。例えば、経口組成物は一般的に、不活性希釈剤または可食性担体を含む。経口治療的投与の目的で、活性化合物(1つまたは複数)は、賦形剤と一体化され得、丸薬、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセルの形態で使用され得る。経口組成物はまた、流体担体を使用して調製され得る。いくつかの態様において、本発明の組成物は単位剤型であり得る。いくつかの態様において、本発明の組成物は、固形剤型、例えば錠剤またはカプセル剤であり得る。
【0052】
薬学的に適合性の結合剤および/またはアジュバント材料が、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分または同様の性質を有する化合物:微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲルもしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterotes)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ調味料などの矯味矯臭剤のいずれかを含み得る。
【0053】
本明細書に記載される化合物の全身投与は、例えば皮膚に適用されるパッチ、ゲルまたはローションを使用して、経皮手段によってもなされ得る。経皮投与について、上皮障壁の浸透に適した浸透剤が製剤中に使用され得る。かかる浸透剤は一般的に当該技術分野で公知である。例えば、経皮投与について、活性化合物は、当該技術分野で一般的に公知なように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリームに製剤化され得る。ゲルおよび/またはローションは、個々のサシェ中でまたは毎日適用される定量ポンプを介して提供され得;例えばCohn et al., Ther Adv Urol. 2016, Apr; 8(2): 83-90参照。
【0054】
一態様において、治療化合物は、身体からの迅速な排除に対して治療化合物を保護する担体、例えば埋没物および微小封入送達系などの制御放出製剤を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性で生体適合性のポリマーが使用され得る。かかる製剤は、標準的な技術を使用して調製され得るか、または例えばAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手し得る。薬学的に許容され得る担体としてリポソーム懸濁物も使用され得る。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されるような当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0055】
該医薬組成物は、本明細書に記載される方法における投与または使用のための指示書と共に、容器、パックまたはディスペンサー中に含まれ得る。
【0056】
該医薬組成物は、本明細書に記載される方法における投与または使用のための指示書と共に、容器、パックまたはディスペンサーに含まれ得る。
【0057】
いくつかの態様において、医薬組成物は、中枢性低換気に関連する状態の治療における使用のためのものである。いくつかの態様において、該状態は肥満低換気症候群(OHS)である。いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する状態は肥満関連睡眠低換気(ORSH)である。いくつかの態様において、該状態は肥満関連睡眠低換気(ORSH)である。
【0058】
組合せ
中枢性低換気に関連する状態を有する被験体の治療における使用のためのノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)およびカルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)も本発明において提供される。中枢性低換気に関連する状態を有する被験体の治療における使用のための(i)ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)および(ii)カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤(CAI)の治療的組合せが本発明においてさらに提供される。いくつかの態様において、該状態は肥満低換気症候群(OHS)である。いくつかの態様において、中枢性低換気に関連する状態は肥満関連睡眠低換気(ORSH)である。
【実施例
【0059】
実施例
本発明は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定しない以下の実施例においてさらに記載される。
【0060】
実施例1. 肥満低換気症候群のための薬学的治療
導入
肥満被験体は、わずかな呼吸筋肉の弱さおよび低下した呼吸コンプライアンスに加えて、増加した人工呼吸器の需要および上昇した呼吸の作業を有する。そのため、ボディマス指数(BMI)に比例して増加する閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の増加した有病率に加えて、肥満個体は一般的に、増加した換気の必要性を補償するために、通常の体重の患者と比較して、増加した中枢性呼吸駆動も有する。これにも関わらず、睡眠病院において評価された肥満被験体(BMI > 30kg/m2)の20%で、OSAは、肥満-低換気症候群(OHS)を定義する昼行性炭酸ガス過剰(PaCO2 > 45mm Hg)を伴う(1)。
【0061】
孤立性OSAと比較して、OHSは、全身性の炎症、内皮機能不全およびインスリン抵抗に関連する心臓血管および代謝性疾患のために、増加した罹患率および死亡率を特徴とし、診断はしばしば、急性の呼吸不全の後のみになされる(2)。しかしながら、OHSはたいてい、患者が急性代償不全のために集中治療室への入院を必要とするまで診断されないままおよび治療されないままである(2、3)。そのため、より早期のOHS病期の時節に適した同定および管理は、患者の予後を向上し得る。
【0062】
ガス変化に対する換気応答性の欠如および上気道閉塞を補償するための不十分な能力は、OHSの病態生理学的関係である。肥満関連呼吸負荷とガス変化に対する換気応答性のバランスが日中に維持され得る場合、それは睡眠中に喪失され得、孤立性夜間低換気が最初に決定される。そのため、低換気は、睡眠関連生理学的適応の結果として、睡眠中に最もかつ主に顕著であり、睡眠時無呼吸に関係があってもなくてもよい。実際に、孤立性睡眠低換気(覚醒仰向け値と比較して、10分より長い睡眠の間に10mmHgよりも大きくPtcCO2が増加する場合、PtcCO2 >55mmHgまたは>50mmHgの経皮的二酸化炭素圧として定義される)は、神経筋および胸壁の疾患において観察されるものと同様に、覚醒炭酸ガス過剰なくOHSへと進行することが最近述べられている(4)。この状態は肥満関連睡眠低換気(ORSH)と称され、現在では肥満を有する患者における低換気の初期段階であるとみなされる(5、6)。最近の証拠は、グレードIII肥満を有する患者の約20%がORSHを提示することを示し(7、8)、そのため該疾患の大規模な過小評価が支持される。
【0063】
OHSについての利用可能な治療選択肢は、今日まで陽空気圧(PAP)により、上気道閉塞などの潜在的な病態生理学的状態に対処することのみである。しかしながら、PAPに対する低い許容および結果的な低減したコンプライアンスを伴って治療の厳守はしばしば非常に困難であり、OHSの治療不足状態を生じる。
【0064】
アセタゾラミドは、カルボニックアンヒドラーゼを阻害し、HCO3排出を増加し、代謝アシドーシスを引き起こし、そのために換気を刺激する利尿薬である。設備の増大に取り組むことで、アセタゾラミドは、緩やかな換気刺激物として働いて呼吸を安定化し、そのために浅い呼吸その後にORSH患者の典型的な過換気を低減する。以前に、アセタゾラミドは、OHSを有する患者において肺胞換気を向上することが示されている(9、10)。しかしながら、アセタゾラミド単独は、肥満低換気に対する病原性の寄与因子の全てに影響を及ぼさない。本発明者らは、アセタゾラミドと組み合わせてアトモキセチンを調べることを決定した。アトモキセチンは、睡眠の際に上気道筋肉を再活性化して虚脱(collapsibility)を低減するノルアドレナリン作用性薬物である(11)。
【0065】
本発明者らの目的は、肥満低換気を有する成人においてアトモキセチンとアセタゾラミドの組合せの有効性を試験することである。
【0066】
試験設計
これは、ORSHを有する成人におけるアトモキセチンとアセタゾラミドの組合せの無作為化された二重盲検のプラセボ対照交差単一中心有効性試験である。
【0067】
12名の参加者を等しく無作為化して、アトモキセチン80mgおよびアセタゾラミド500mgの組合せまたは適合したプラセボを受けさせる。試験処置の投与は就寝の直前に行う。
【0068】
ORSH(OHSの早期段階)を有する12名の被験体のうち、本発明者らは、そのうちの少なくとも2名が昼行性炭酸ガス過剰(進行したOHS)も提示すると推定する。
【0069】
試験参加者は、PtcCO2モニタリングによる1晩の入院患者PSG試験を含み得る適格性スクリーニングを経験する。朝に、血液ガス分析も行う。
【0070】
1週間後、投与の最後の夜に、参加者は、入院患者PSGのために試験場所に戻る。参加者は、7~10日の洗い流しを有し、他のアームの試験に切り替える。5日後、投与の最後の夜に、参加者は、入院患者PSGのために試験場所に戻る。
【0071】
主要な有効性エンドポイントは、スクリーニング/ベースラインから試験処置を用いた治療の最後の夜までの平均夜間PtCO2である。
【0072】
第2の結果は、無呼吸/寡呼吸指数(AHI)および夜間飽和(低酸素負荷および平均SpO2)を含む。
【0073】
含む基準
18~70歳の男性または女性参加者
前PSG訪問時にBMI > 35kg/m2、包括的
覚醒仰向け値と比較して、10分より長い睡眠の間にPtcCO2が10mmHgより大きく増加する場合にPtcCO2>55mmHgまたは>50mmHgと定義される夜低換気
登録前≧1年の場合にOSAについての以前の外科的治療は認められる。
【0074】
除く基準
ナルコレプシーの病歴。
臨床的に有意な脳顔面頭蓋の奇形。
臨床的に有意な心臓または肺の疾患(心不全、COPD、ILD)疾患または制御のために3つより多くの医薬を必要とする高血圧。
精神障害の診断および統計マニュアル-V(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-V)(DSM-V)または国際疾患分類(International Classification of Disease)、第10版基準による統合失調症、統合失調感情障害または双極性障害の病歴。
スクリーニング前の1年以内の自殺の試みもしくは自殺的観念作用の病歴、または現在の自殺的観念作用。
スクリーニング訪問前の12カ月以内のDSM-Vで定義される乱用の薬物または物質使用障害についての陽性のスクリーニング。
過去30日の医学的処置を必要とする有意な疾病または感染。
臨床的に有意な認知機能障害。
治療されない狭隅角緑内障。
妊娠または授乳している女性。
酸素療法の病歴
処置の開始の14日以内、または処置と同時の強力なシトクロムP450 3A4 (CYP3A4)阻害剤もしくはモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)もしくはリネゾリドでの治療。
中枢的無呼吸指数 > 5/時間
【0075】
介入
以下のような2つの処置群がある:
【表1】
【0076】
参考文献
【表2-1】
【表2-2】
【0077】
実施例2. 肥満低換気症候群におけるアトモキセチンとアセタゾラミドの固定用量組合せ 対 プラセボの交差、二重盲検第2相試験
これは、PtcCO2モニタリングを用いたPSGにより記録されるOHSを有する成人におけるアトモキセチン100mg+アセタゾラミド500mg(Ato/Actz)の組合せの無作為化された二重盲検のプラセボ対照交差試験である。用量は徐々に増加される:7日間のアトモキセチン50mgおよびアセタゾラミド500mgの投与に、さらに7日間のアトモキセチン100mg+アセタゾラミド500mgの投与を続け、より良い処置許容を可能にする。約15名の参加者を無作為化して、Ato/Actzの組合せまたは適合したプラセボを受けさせる。14日の処置および3~14日の洗い流し期間の後、患者は、14日間の代替的な処置を受ける。代替的に、参加者は、30日以上の処置期間を経験し得る。
【0078】
試験参加者は、登録適格性を確認するために、任意の試験特異的手順の実行前にスクリーニング訪問を経験する。そうでなければ全ての登録基準を満たす参加者は、PtcCO2モニタリングによる1晩の入院患者PSGを経験する。以前の6カ月に利用可能でなかった場合に動脈血液ガス試験を行う。適格であり、試験に登録される参加者について、スクリーニングPSGの夜は、PtcCO2ならびに他のPSG有効性および安全性のエンドポイントについてのベースライン基準として働く。参加者はまた、PSGの夜の全ての夜について家で夜間に着用されるパルスオキシメトリーデバイスを受ける。調査生成物投与の最後の夜に、参加者は、PtcCO2による第2の入院患者PSG(訪問1)およびPSG後の翌朝の血液ガス試験のために戻る。洗い流し期間の後、参加者は、他のアームの試験と交差して(訪問2)、家で毎夜、パルスオキシメーターを着用し続ける。処置の14日(または代替的に30日以上)の後、参加者は、PtcCO2による入院患者PSG(訪問3)およびPSGの翌朝に動脈血液ガス試験を経験する。
【0079】
主要な結果は動脈PaCO2である。
【0080】
介入
以下のように2つの処置群がある:
【表3】
【0081】
以下の通り、全体の持続時間は9週までである:28日まで、スクリーニングおよびベースラインPSGを行う;14日間の無作為化された家での試験処置;PtcCO2モニタリングによる実験室PSGの夜;3~16日の洗い流し(計画のために必要な場合は16日まで);14日の他の処置アームへの交差;およびPtcCO2モニタリングによる最後の実験室PSGの夜。代替的に、14日処置期間に代わって30日(またはそれ以上)の処置期間を使用し得る。
【0082】
含む規準
1. 参加者は、試験の性質を理解できなければならず、任意の質問に答える機会を有さなければならない。参加者は、この試験に参加することに自発的に同意し、スクリーニング訪問手順のいずれかを実行する前に、倫理委員会に承認されたインフォームドコンセントに署名する。
2. 18~75歳の男性または女性の参加者
3. 前PSG訪問時にBMI > 35kg/m2、包括的
4. 覚醒仰向け値と比較して、10分より長い睡眠の間にPtcCO2が10mmHgより大きく増加する場合に、平均PtcCO2 >55mmHgまたは>50mmHgと定義される夜間低換気の存在
5. 登録前≧1年の場合にOSAについての以前の外科的処置は許可される。
6. OHSについて既知であり、処置を有する参加者は、CPAPまたは下顎前方移動装置または体位療法不寛容または乏しいコンプライアンス(コンプライアンスは、夜の70%の間に毎晩4時間のCPAPまたは他の処置の使用として定義される;参加者が自己報告)を報告する場合に、スクリーニング/ベースラインPSGについて適格である;夜の少なくとも70%の間に夜間の少なくとも4時間CPAPを使用していた参加者は、CPAPまたは他の処置がこの試験についてのスクリーニング/ベースラインPSGの前に2週間使用されない場合にのみ、この試験のさらなるスクリーニングおよびベースラインPSGについて適格である。
【0083】
除く基準
1. ナルコレプシーの病歴。
2. 臨床的に有意な脳顔面頭蓋の奇形。
3. 臨床的に有意な呼吸器(COPD、ILD)または心臓(心不全、心房細動、確立された重度の末梢動脈疾患)の疾患または制御のために3つより多くの医薬を必要とする高血圧。
4. 精神障害の診断および統計マニュアル-V(DSM-V)または国際疾患分類、第10版基準による統合失調症、統合失調感情障害または双極性障害の病歴。
5. スクリーニング前の1年以内の自殺の試みもしくは自殺的観念作用の病歴、または現在の自殺的観念作用。
6. スクリーニング訪問前の12カ月以内にDSM-Vで定義される乱用の薬物または物質使用障害についての陽性のスクリーニング。
7. 過去30日の医学的処置を必要とする有意な疾病または感染。
8. 臨床的に有意な認知機能障害または重大な神経学的障害、例えば癲癇/痙攣
9. 治療されない狭隅角緑内障。
10. 妊娠または授乳している女性。
11. 酸素療法の病歴
12. 処置の開始の14日以内、または処置と同時の強力なシトクロムP450 3A4 (CYP3A4)阻害剤もしくはモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)もしくはリネゾリドでの治療。
13. 褐色細胞腫の病歴
14. 過去15日の不安定なグルコース制御を有する糖尿病の病歴
15. アセタゾラミドの相互作用の可能性のための500mg/日より多くのアスピリンおよび非常に高い用量のアスピリン(アセチルサリチル酸、サリチル酸塩薬物)の慢性的な使用
16. スルホンアミド-例えばヒドロクロロチアジド、フロセミド、スルファサラジン、セレコキシブ、スマトリプタンおよびゾニサミドに対するアレルギー。
17. 副腎皮質不全の病歴
18. 低ナトリウムもしくはカリウムの病歴または昨年の血液検査での低ナトリウムもしくはカリウムの証拠(入手可能な場合)
19. 高クロール血症性アシドーシスの病歴
20. 調査者の意見において、参加者に対して合理的でない危険性を提示するかまたは試験への参加を妨害するもしくは試験の解釈を混乱させる任意の状態。
21. 任意の理由について、調査者により、Ato/Acz処置を受けるための不適切な候補あるいは投与スケジュールもしくは試験評価を理解もしくは満足できないかまたは理解もしくは満足しない可能性があるとみなされる参加者。
22. OSAの処置のための経口または経鼻デバイスの使用の経歴は、試験開始前に少なくとも2週間、試験への参加の際にデバイスが使用されない限りは、登録され得る。
23. OSAの処置のための参加者の睡眠の姿勢に影響を及ぼす、例えば仰向けの睡眠の姿勢を妨げるデバイスの使用の経歴は、試験への参加の間にデバイスが使用されない限りは登録され得る。
24. 投与前の30日または5半減期以内のいずれか長い方の別の調査剤の使用。
25. 以下に示される、認められない同時医薬のリスト由来の医薬の使用。
【0084】
アトモキセチン禁忌
アトモキセチンは、狭隅角緑内障の、MAOIと同時の患者およびアトモキセチンまたはその賦形剤のいずれかに対して過敏な患者において禁忌を示される。アトモキセチンはまた、現在の褐色細胞腫、状態が臨床的に重要な血圧(15~20mmHg)または心拍数(20bpm)の増加を悪化させると予想される重度の心臓もしくは血管障害またはその病歴を有する患者において禁忌を示される。
【0085】
アセタゾラミド禁忌
アセタゾラミドは、顕著な肝臓疾患または機能不全;低下したナトリウムおよび/またはカリウムレベル;副腎皮質不全;肝硬変;高クロール血症性アシドーシス;重度な腎臓疾患もしくは機能不全を有する患者において禁忌を示される。
【0086】
同時療法
以下の医薬を用いた同時療法は認められない:
・モノアミン濃度に影響を及ぼすMAOIまたは他の薬物(例えばラサギリン)[MAOIはレボキセチンとの使用について禁忌を示される]
・セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤(例えばデュロキセチン、ベンラファキシン、ミルタザピン)
・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(例えばレボキセチン)
・リチウム
・三環系抗うつ薬(例えばデシプラミン、イミプラミン)
・強力なCYP2D6阻害剤(例えばフルオキセチン、パロキセチン、キニジン、テルビナフィン)および他の強力な阻害剤シトクロムP450(ケトコナゾール)
・電解質変化を決定する薬物(サイアザイド利尿薬)
・ベンゾジアゼピン
・オピオイド
・臨床的に有意な心臓QT-間隔延長効果を有する薬物(モキシフロキサシン、メタドン、メフロキン(mefloquine)、
・痙攣閾値を低下することが知られる薬物(例えばクロロキン、フェノチアジン、ブチロフェノン、メフロキン、ブプロピオン、トラマドール)
・アンフェタミン
・抗痙攣薬
・モダフィニルまたはアルモダフィニル
・3回/週より多く使用する場合はβ2アゴニスト(例えばアルブテロール)
・抗精神病薬
・プソイドエフェドリン、フェニルエフリン、オキシメタゾリン
・パーキンソン、アルツハイマー(メマンチン)、ハンチントン、筋萎縮性側索硬化症についてのほとんどの薬物または他の神経変性性疾患についての薬物
・アセタゾラミドの相互作用の可能性のための500mg/日より多くのアスピリンまたはサリチル酸塩および非常に高い用量のアスピリン(アセチルサリチル酸、サリチル酸塩薬)の慢性的な使用
・リン酸ナトリウム:利尿薬は、リン酸ナトリウムの腎毒性効果を高め得る。具体的に、急性リン酸塩腎症のリスクが高められ得る。
【0087】
用量および頻度が登録前の3カ月間および試験の経過の間に安定である場合、必ずしも限定されないが、以下の薬物および薬物のクラスを含む中枢神経系(CNS)、呼吸または筋肉活性に対して実質的な影響を有さない医薬は、調査者の意見に従って一般的に認められる:
・抗高血圧薬(アンギオテンシン変換酵素/アンギオテンシンII受容体遮断薬阻害剤、カルシウムチャンネル遮断薬、スピロノラクトン、ヒドロクロロチアジド等)
・スタチン
・α1アンタゴニスト(例えばタムスロシン)
・非ベンゾジアゼピン「Z薬」(ゾルピデム、ザレプロン、エスゾピクロン)以外の鎮静薬の慢性的な使用
・筋弛緩薬
・制吐薬
・プロトンポンプ阻害剤およびヒスタミンh2受容体遮断薬
・市販の(OTC)制酸薬
・非鎮静抗ヒスタミン薬(例えばセチリジン、ロラタジン)
・エスゾピクロン、ゾルピデムまたはザレプロンの慢性的な使用
・メラトニン
・非ステロイド性抗炎症薬およびアセトアミノフェン
・緩化薬
・勃起障害薬
・吸入コルチコステロイド(例えばフルチカゾン)
・抗糖尿病薬
・眼性低血圧薬および他の眼病薬(例えばチモロール)
・ホルモン療法(例えばエストロゲン置換または抗エストロゲン)およびホルモン避妊薬
・甲状腺医薬
・抗凝固薬
・OTC局所薬(例えば局所疼痛緩和薬)
・骨粗鬆症薬
【0088】
結果
以下の結果を検討する。
【0089】
主要な結果:Ato/Actz 対 プラセボでの平均夜間経皮CO2圧(PtcCO2)の変化
【0090】
二次的な結果
・Ato/Actz 対 プラセボでの夜間低換気を有さない参加者の割合
・Ato/Actz 対 プラセボでのAHIの変化
【0091】
予備的な結果
・酸素飽和(SaO2) <90%を有する合計時間の変化
・平均SaO2の変化
・最小SaO2の変化
・AHI4%および低酸素負荷の変化
・動脈血液ガス分析での覚醒時のPaCO2の変化。
・ESSおよびSAQLIの変化
・PSGの間の心電図(EKG)により評価される心拍数変動性の変化
・OSA重症度の患者の包括的な印象(PGI-S)の変化
・精神運動覚醒検査(PVT)の変化
【0092】
結果の測定
重症度の参加者の包括的な印象(PGI-S)は、特定の状態の重症度を評定するために使用され得る包括的な指数である(すなわちそれは単一状態尺度である)。該尺度は、疾患重症度の参加者の印象を評価するように設計された1項目の質問票からなる。該尺度は、参加者の健康状態において最も重要であると参加者が判断する要因に基づいて参加者に応答させるので、参加者についての臨床的な関連性を有すると考えられる。
【0093】
精神運動覚醒検査(PVT)は、被験体が視覚的刺激に応答する速度を測定する持続された注意、反応時間計測タスクである。
【0094】
他の態様
本発明は、その詳細な説明と共に記載されるが、前述の記載は例示を意図し、添付の特許請求の範囲の範囲により定義される本発明の範囲を限定しないことが理解される。他の局面、利点および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【国際調査報告】