(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】フェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20241031BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20241031BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20241031BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241031BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20241031BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20241031BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20241031BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20241031BHJP
H01F 1/28 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 J
H01F27/24 J
H01F27/24 H
H01F27/255
H01F17/04 F
H01F41/02 D
H01F41/00 C
H01F41/04 A
H01F1/26
H01F1/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527416
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2022010822
(87)【国際公開番号】W WO2023085549
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0153967
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517150021
【氏名又は名称】チャン ソン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHANG SUNG CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】302,Cheongam-ro,Naesu-eup Cheongwon-gun Chungcheongbuk-do 28146,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ユ、グァン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、サン ハン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ソン ユン
【テーマコード(参考)】
5E041
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA02
5E041AA04
5E041AA07
5E041AA11
5E041BB03
5E041BD12
5E041CA02
5E041NN14
5E062AA01
5E062FF01
5E062FF02
5E070AA01
5E070BA08
5E070BA11
5E070BB03
5E070DA13
(57)【要約】
磁束密度が局所的に集中することを防止すると共にインダクタンス特性を向上させることができるフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ及びその製造方法に関する。フェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタは、一面が開放され内部にキャビティが形成されたフェライトコアユニットと、巻回したコイルの表面に絶縁素材のプラスチック射出物からなる絶縁インサートが形成され、前記フェライトコアユニットのキャビティに配置されるコイルユニットと、前記フェライトコアユニットのキャビティのうち前記コイルユニットが配置されていない残りの部分に磁性モールディング液が充填されて硬化した磁性体と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が開放され内部にキャビティが形成されたフェライトコアユニットと、
巻回したコイルの表面に絶縁素材のプラスチック射出物からなる絶縁インサートが形成され、前記フェライトコアユニットのキャビティに配置されるコイルユニットと、
前記フェライトコアユニットのキャビティのうち前記コイルユニットが配置されていない残りの部分に磁性モールディング液が充填されて硬化した磁性体と、を含む
ことを特徴とするフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ。
【請求項2】
前記フェライトコアユニットは、複数のフェライトコアに分割され、互いの間で空隙を維持した状態で離隔配置された
請求項1に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ。
【請求項3】
前記複数のフェライトコアは、前記フェライトコアユニットに形成される空隙が前記コイルユニットによって形成される磁路(magnetic path)方向に沿って少なくとも1つ以上形成されるように、前記磁路方向に沿って複数配置された
請求項2に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ。
【請求項4】
前記フェライトコアユニットは、
前記コイルユニットに備えられたコイルが巻回される周方向を取り囲む第1フェライトコアと、
前記コイルユニットに備えられたコイルの両端部を取り囲む一対の第2フェライトコアと、を含み、
前記第1フェライトコアと一対の第2フェライトコアは、互いに離隔配置された
請求項3に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ。
【請求項5】
前記フェライトコアユニットに形成される空隙には、絶縁素材のプラスチック射出物で形成された絶縁フレームが配置された
請求項4に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ。
【請求項6】
前記絶縁フレームは、
前記第1フェライトコアの外周面を取り囲むフレーム本体と、
前記第1フェライトコアと第2フェライトコアとの間の空隙に配置される空隙プレートと、を含む
請求項5に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ。
【請求項7】
前記フェライトコアユニットの比透磁率は、前記磁性体の比透磁率よりも大きい
請求項1に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ。
【請求項8】
前記フェライトコアユニットの比透磁率は200μ以上であり、
前記磁性体の比透磁率は26~60μである
請求項7に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ。
【請求項9】
前記コイルユニットの絶縁インサートは、熱伝導率が2W/m-k以上のプラスチック樹脂で形成される
請求項1に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ。
【請求項10】
(I)磁性モールディング液を用意するステップと、
(II)プラスチック樹脂で表面が絶縁されたコイルユニットを用意するステップと、
(III)前記磁性モールディング液が充填されるキャビティが形成されたフェライトコアユニットを用意するステップと、
(IV)前記フェライトコアユニットのキャビティに前記コイルユニットを配置するステップと、
(V)前記フェライトコアユニットのキャビティに、用意した磁性モールディング液を充填するステップと、
(VI)前記フェライトコアユニットに充填された磁性モールディング液を硬化して、前記フェライトコアユニット及びコイルユニットと一体化される磁性体を形成するステップと、を含む
ことを特徴とするフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項11】
前記(I)ステップにおいて、前記磁性モールディング液の比透磁率は26~60μであり、
前記(III)ステップにおいて、前記フェライトコアユニットの比透磁率は200μ以上である
請求項10に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項12】
前記(I)ステップにおいて、前記磁性モールディング液の密度は5.5~6.5g/ccである
請求項11に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項13】
前記(I)ステップは、
(I-1)ポリマー樹脂と溶媒を攪拌して有機ビヒクルを用意する過程と、
(I-2)磁性粉末を前記有機ビヒクルと混練して磁性モールディング液を用意する過程と、を含む
請求項10に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項14】
前記(I-1)過程において、
前記ポリマー樹脂は、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選択される1種又はそれ以上を含む
請求項13に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項15】
前記(I-2)過程において、
前記磁性粉末は、純鉄、カルボニル鉄、鉄-ケイ素合金(Fe-Si alloy)、鉄-ケイ素-クロム合金(Fe-Si-Cr alloy)、サンダスト(Fe-Si-Al alloy)、パーマロイ(permalloy)、モリブデンパーマロイ(Mo-permalloy)及び非晶質粉末からなる群より選択される1種又はそれ以上を含む
請求項13に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項16】
前記(I-2)過程において、
前記磁性粉末は、平均粒径の異なる2種以上の磁性粉末が混合される
請求項13に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項17】
前記(II)ステップは、
(II-1)巻回したコイルを用意する過程と、
(II-2)用意したコイルがインサートされた金型にプラスチック樹脂を射出してコイルユニットを用意する過程と、を含む
請求項10に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項18】
前記(II-2)過程において、前記プラスチック樹脂は、熱伝導率が2W/m-k以上である
請求項17に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項19】
前記(II-2)過程において、プラスチック樹脂の射出は、少なくとも2回以上区分して行う
請求項17に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項20】
前記(III)ステップは、
(III-1)複数に分割されたフェライトコアを用意する過程と、
(III-2)前記コイルユニットによって形成される磁路(magnetic path)方向に沿って少なくとも1つ以上の空隙が形成されるように、磁路方向に沿って複数に分割されたフェライトコアを離隔配置する過程と、を含む
請求項10に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【請求項21】
前記(III)ステップは、
(III-3)複数に分割されたフェライトコアを離隔した状態で固定させる絶縁フレームを用意する過程と、
(III-4)用意した絶縁フレームに複数に分割されたフェライトコアの間で空隙が維持されるように離隔して取り付ける過程と、を含む
請求項19に記載のフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、磁束密度が局所的に集中することを防止すると共にインダクタンス特性を向上させることができるフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタ(Inductor)は、コンデンサ(Capacitor)と共に電力変換装置に必須に使用される受動素子であり、電流リップルを低減させる役割を果たす。このようなインダクタは、環境対応車、太陽光インバータ、ESS、エアコンインバータなど多様に用いられており、高いインダクタンス特性と低損失、また小型化と軽量化の要求が高まっている。
【0003】
従来の一般的なインダクタの製造方法は、金属粉末を圧縮成形して磁性コアを組み立て、巻回したコイルを挿入して製造する方式であり、このような一般的な製造方式は、粉末磁性コアの形状と大きさの制約により、様々な形状のインダクタを製造するには限界があり、コアの組み立てから完成品の組み立てまでの工程の複雑さがインダクタの製造コストの増加につながっている。
【0004】
そのため最近では、軟磁性モールディング液を硬化して製造するインダクタが研究されており、このような軟磁性モールディング液を用いたインダクタは、従来の粉末磁性コアでは製造が不可能な様々な形状のインダクタを製造できるという利点があり、工程が単純でインダクタの製造コストを大幅に削減することができた。
【0005】
しかしながら、軟磁性モールディング液の透磁率範囲が26~60μであるため、一般的な磁性コアに比べて高いインダクタンス特性を達成できないという限界があった。
【0006】
また、磁性ペーストを注入するためには、鋳型の形状を有する別の容器が必要となり、これはインダクタの体積及びコストの増加につながる。
【0007】
特に、容器の材料として高い耐熱性を有するプラスチック樹脂が適用され、このように耐熱性の高いプラスチック樹脂でコイルを埋め込んだインダクタの場合には、内部の熱がプラスチック樹脂で形成された容器によって外部に放熱されることが難しいという問題があった。
【0008】
上記の背景技術として説明された内容は、本発明に対する背景を理解するためのものであり、この技術分野における通常の知識を有する者に既知の従来技術に該当することを認めるものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、磁束密度が局所的に集中することを防止すると共にインダクタンス特性を向上させることができるフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ及びその製造方法を提供する。
【0010】
特に、本発明は、磁束密度の集中が相対的に低い外側にフェライトコアで製作された容器を構成することで、磁束密度が内側に集中することを防止し、磁性体に比べて比重の小さいフェライトコアで構成された容器状のキャビティの内部に磁性体を形成するための磁性モールディング液を充填してインダクタンス特性を向上させると共に小型化及び軽量化を達成できるフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタ及びその製造方法を提供する。
【0011】
本発明が達成しようとする技術的課題は上述の技術的課題に限定されず、言及されていない他の技術的課題は、本発明の記載からこの技術分野における通常の知識を有する者に明らかに理解される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタは、一面が開放され内部にキャビティが形成されたフェライトコアユニットと、巻回したコイルの表面に絶縁素材のプラスチック射出物からなる絶縁インサートが形成され、前記フェライトコアユニットのキャビティに配置されるコイルユニットと、前記フェライトコアユニットのキャビティのうち前記コイルユニットが配置されていない残りの部分に磁性モールディング液が充填されて硬化した磁性体と、を含む。
【0013】
前記フェライトコアユニットは、複数のフェライトコアに分割され、互いの間で空隙を維持した状態で離隔配置されたことを特徴とする。
【0014】
前記複数のフェライトコアは、前記フェライトコアユニットに形成される空隙が前記コイルユニットによって形成される磁路(magnetic path)方向に沿って少なくとも1つ以上形成されるように、前記磁路方向に沿って複数配置されたことを特徴とする。
【0015】
前記フェライトコアユニットは、前記コイルユニットに備えられたコイルが巻回される周方向を取り囲む第1フェライトコアと、前記コイルユニットに備えられたコイルの両端部を取り囲む一対の第2フェライトコアと、を含み、前記第1フェライトコアと一対の第2フェライトコアとは互いに離隔配置されたことを特徴とする。
【0016】
前記フェライトコアユニットに形成される空隙には、絶縁素材のプラスチック射出物で形成された絶縁フレームが配置されたことを特徴とする。
【0017】
前記絶縁フレームは、前記第1フェライトコアの外周面を取り囲むフレーム本体と、前記第1フェライトコアと第2フェライトコアとの間の空隙に配置される空隙プレートと、を含むことを特徴とする。
【0018】
前記フェライトコアユニットの比透磁率は、前記磁性体の比透磁率よりも大きいことを特徴とする。
【0019】
前記フェライトコアユニットの比透磁率は200μ以上であり、前記磁性体の比透磁率は26~60μであることを特徴とする。
【0020】
前記コイルユニットの絶縁インサートは、熱伝導率が2W/m-k以上のプラスチック樹脂で形成されることを特徴とする。
【0021】
一方、本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法は、(I)磁性モールディング液を用意するステップと、(II)プラスチック樹脂で表面が絶縁されたコイルユニットを用意するステップと、(III)前記磁性モールディング液が充填されるキャビティが形成されたフェライトコアユニットを用意するステップと、(IV)前記フェライトコアユニットのキャビティに前記コイルユニットを配置するステップと、(V)前記フェライトコアユニットのキャビティに、用意した磁性モールディング液を充填するステップと、(VI)フェライトコアユニットに充填された磁性モールディング液を硬化して、前記フェライトコアユニット及びコイルユニットと一体化される磁性体を形成するステップと、を含む。
【0022】
前記(I)ステップにおいて、前記磁性モールディング液の比透磁率は26~60μであり、前記(III)ステップにおいて、前記フェライトコアユニットの比透磁率は200μ以上であることを特徴とする。
【0023】
前記(I)ステップにおいて、前記磁性モールディング液の密度は5.5~6.5g/ccであることを特徴とする。
【0024】
前記(I)ステップは、(I-1)ポリマー樹脂と溶媒を攪拌して有機ビヒクルを用意する過程と、(I-2)磁性粉末を前記有機ビヒクルと混練して磁性モールディング液を用意する過程と、を含む。
【0025】
前記(I-1)過程において、前記ポリマー樹脂は、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選択される1種又はそれ以上を含む。
【0026】
前記(I-2)過程において、前記磁性粉末は、純鉄、カルボニル鉄、鉄-ケイ素合金(Fe-Si alloy)、鉄-ケイ素-クロム合金(Fe-Si-Cr alloy)、サンダスト(Fe-Si-Al alloy)、パーマロイ(permalloy)、モリブデンパーマロイ(Mo-permalloy)及び非晶質粉末からなる群より選択される1種又はそれ以上を含む。
【0027】
前記(I-2)過程において、前記磁性粉末は、平均粒径の異なる2種以上の磁性粉末が混合されてなることを特徴とする。
【0028】
前記(II)ステップは、(II-1)巻回したコイルを用意する過程と、(II-2)用意したコイルがインサートされた金型にプラスチック樹脂を射出してコイルユニットを用意する過程と、を含む。
【0029】
前記(II-2)過程において、前記プラスチック樹脂は、熱伝導率が2W/m-k以上であることを特徴とする。
【0030】
前記(II-2)過程において、プラスチック樹脂の射出は、少なくとも2回以上区分して行うことを特徴とする。
【0031】
前記(III)ステップは、(III-1)複数に分割されたフェライトコアを用意する過程と、(III-2)前記コイルユニットによって形成される磁路(magnetic path)方向に沿って少なくとも1つ以上の空隙が形成されるように、磁路方向に沿って複数に分割されたフェライトコアを離隔配置する過程と、を含む。
【0032】
前記(III)ステップは、(III-3)複数に分割されたフェライトコアを離隔した状態で固定させる絶縁フレームを用意する過程と、(III-4)用意した絶縁フレームに複数に分割されたフェライトコアの間で空隙が維持されるように離隔して取り付ける過程と、をさらに含む。
【発明の効果】
【0033】
本発明の実施形態によれば、以下のような効果を期待することができる。
【0034】
第一、相対的に磁束密度が低いインダクタの外側に、透磁率が高く飽和磁束密度が低いフェライトコアを配置することにより、従来の軟磁性モールディング液のみを硬化して製造したインダクタに比べてインダクタンス特性を向上させることができる。
【0035】
第二、磁性モールディング液を充填するための別の非磁性体容器をフェライトコアに置き換えることで、体積減少効果を期待することができる。
【0036】
第三、金属粉末に比べて比重の小さいフェライトコアを適用することにより、軽量化効果を期待することができる。
【0037】
本発明の実施形態によれば、本発明の効果は上記の効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタを示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタを製造するステップを示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタを製造するステップを示す手順図である。
【
図5】比較例及び実施例に係るインダクタの磁性特性であるインダクタンスを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態をさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる種々の形態に実現されるものであり、単に本実施形態は、本発明の開示を完全にし、通常の知識を有する者が発明の範疇を完全に理解できるように提供されるものである。図面において同一の符号は同一の要素を指す。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタを示す斜視図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタを示す分解斜視図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタを製造するステップを示す斜視図である。
【0041】
図示するように、本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタは大きく、フェライトコアユニット100、コイルユニット200及び磁性体300を含む。
【0042】
フェライトコアユニット100は、一面が開放され内部にキャビティ101が形成され、磁性体300の成形時に容器の役割を果たす手段である。特に、フェライトコアユニット100は、本実施形態において容器の役割を果たすと共に、磁束密度がインダクタの内側領域に局所的に集中することを防止し、インダクタンス特性を向上させる役割を果たす。
【0043】
したがって、フェライトコアユニット100は磁性体に比べて、比重は小さく、比透磁率は大きいことが好ましい。
【0044】
その点から、フェライトコアユニット100を構成するフェライトコア110は、比透磁率が200μ以上のフェライト(Ferrite)を用いて製作されることが好ましい。
【0045】
特に、フェライトコアユニット100は、フェライトコア110の直流重畳特性を向上させるために、フェライトコア110を複数に分割し、互いの間で空隙を維持した状態で離隔配置する。
【0046】
このとき、フェライトコアユニット100に形成される空隙がコイルユニット200によって形成される磁路(magnetic path)方向に沿って少なくとも1つ以上形成されるように分割されたフェライトコア110を磁路方向に沿って複数配置することが好ましい。
【0047】
例えば、
図2に示すように、フェライトコアユニット100は、コイルユニット200に備えられたコイル210が巻回される周方向を取り囲む第1フェライトコア111と、前記コイルユニット200に備えられたコイル210の両端部を取り囲む一対の第2フェライトコア112と、を含む。
【0048】
このとき、第1フェライトコア111と一対の第2フェライトコア112を互いに離隔配置することで、互いの間で空隙102を形成させる。例えば、第1フェライトコア111と一対の第2フェライトコア112が互いに離隔して形成される空隙102を1mmに設定してもよい。もちろん、空隙102の数と大きさは、インダクタで求められるインダクタンスの特性に応じて決定することが好ましい。
【0049】
特に、第1フェライトコア111と一対の第2フェライトコア112の姿勢を維持し、空隙102を安定して形成するために、フェライトコアユニット100に形成される空隙102には絶縁素材のプラスチック射出物で形成された絶縁フレーム120を配置してもよい。
【0050】
このとき、絶縁フレーム120は、第1フェライトコア111の外周面を取り囲むフレーム本体121と、第1フェライトコア111と第2フェライトコア112との間の空隙102に配置される空隙プレート122と、を含む。
【0051】
フレーム本体121は、略「⊂」字状に折り曲げられたプレート形状に形成される。また、フレーム本体121の内周面には一対の空隙プレート122が一体に形成される。
【0052】
このとき、絶縁フレーム120は、プラスチック樹脂を射出して形成することが好ましい。もちろん、絶縁フレーム120は、絶縁性を維持できるものであれば、プラスチック樹脂に限定されるものではない。
【0053】
また、フレーム本体121の外周面には、インダクタを電力変換装置内のボルトに固定させることができる締結部123を形成してもよい。
【0054】
コイルユニット200は、巻回したコイル210の表面に絶縁素材のプラスチック射出物からなる絶縁インサート220が形成されて構成される。
【0055】
このとき、絶縁インサート220は、熱伝導率が2W/m-k以上のプラスチック樹脂で形成されることが好ましい。したがって、インダクタの作動時にコイルから発生する熱を外部に円滑に伝達して放熱させるようにする。
【0056】
また、磁性体300は、フェライトコアユニット100のキャビティ101のうちコイルユニット200が配置されていない残りの部分に磁性モールディング液310が充填された後に硬化して形成される。
【0057】
したがって、磁性体300は、コイルユニット200を構成するコイル210と絶縁インサート220によって離隔された状態が維持される。
【0058】
このとき、磁性体300の比透磁率は、フェライトコアユニット100を構成する第1フェライトコア111及び第2フェライトコア112の比透磁率よりも小さい。例えば、磁性体300の比透磁率は26~60μである。
【0059】
上記のように構成されるフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法について図面を参照して説明する。
【0060】
図3は、本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタを製造するステップを示す斜視図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタを製造するステップを示す手順図である。
【0061】
図示するように、本発明が一実施形態に係るフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造方法は、(I)磁性モールディング液を用意するステップと、(II)プラスチック樹脂で表面が絶縁されたコイルユニットを用意するステップと、(III)前記磁性モールディング液が充填されるキャビティが形成されたフェライトコアユニットを用意するステップと、(IV)前記フェライトコアユニットのキャビティに前記コイルユニットを配置するステップと、(V)前記フェライトコアユニットのキャビティに、用意した磁性モールディング液を充填するステップと、(VI)フェライトコアユニットに充填された磁性モールディング液を硬化して、前記フェライトコアユニット及びコイルユニットと一体化される磁性体を形成するステップと、を含む。
【0062】
上記の各ステップについてさらに具体的に説明する。
【0063】
(I)磁性モールディング液を用意するステップ
磁性モールディング液を用意するステップは、インダクタを製造する場合に、磁束密度の高い内部領域の磁性体300を形成するための磁性モールディング液310を用意するステップである。
磁性モールディング液を用意するステップは、例えば、以下のような詳細な工程を経て行われるが、必ずしもこのような詳細な工程のみを経なければならないというわけではない。
【0064】
(I-1)ポリマー樹脂と溶媒を攪拌して有機ビヒクルを用意する過程
ポリマー樹脂と溶媒を攪拌して有機ビヒクルを製造する。ポリマー樹脂は、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂、及びウレタン樹脂からなる群より選択される1種又はそれ以上のポリマー樹脂であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
ポリマー樹脂は、磁性粉末に対してバインダー(binder)として機能し、このような機能は、磁気コアの形状を維持する構造材の機能、各種有機溶媒に対する耐化学性を提供する機能、有機ビヒクル内の磁性粉末と添加剤が互いに接合及び支持して所望の形状を維持できるようにする機能、及び磁性粉末間の空間を充填して磁気体の絶縁性を高め、磁気コアの比抵抗を高めて磁気体の渦電流損(eddy current loss)を低減する機能を含むが、これらに限定されるものではない。
【0066】
溶媒は、メチルセロソルブ(methyl cellosolve)、エチルセロソルブ(ethyl cellosolve)、ブチルセロソルブ(butylcellosolve)、ブチルセロソルブアセテート(butyl cellosolve acetate)、脂肪族アルコール(alcohol)、テルピネオール(terpineol)、ジヒドロテルピネオール(dihydro-terpineol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、エチルカルビトール(ethylcarbitol)、ブチルカルビトール(butyl carbitol)、ブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)、テキサノール(texanol)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、エチルアセテート(ethyl acetate)及びシクロヘキサノン(cyclohexanone)からなる群より選択される1種以上を含むが、これらに限定されるものではない。ポリマー樹脂と溶媒の組成比において、ポリマー樹脂50~60wt%と溶媒40~50wt%を提案する。ポリマー樹脂が50wt%未満であるか溶媒が50wt%を超えると、ポリマー樹脂のバインディング(binding)機能が低下し、磁性モールディング液の硬化後に部分的に磁性粉末が離脱したり、磁気コアに部分的なクラック(crack)が発生するなど、インダクタの強度に問題が生じる可能性があり、ポリマー樹脂が60wt%を超えるか溶媒が50wt%未満であると、ポリマー樹脂の量が過剰で磁性モールディング液の硬化時にポリマーの膨潤により磁性モールディング液が外に流出する可能性がある。
【0067】
また、有機ビヒクルの成分は、磁性モールディング液の硬化密度に影響を与える可能性があり、有機ビヒクル内で、密度の高い物質の割合が増加すると磁性モールディング液の硬化密度も増加し、密度の低い物質の割合が増加すると磁性モールディング液の硬化密度も減少することになる。
【0068】
有機ビヒクルは、分散剤、安定剤、触媒、及び触媒活性剤からなる群より選択される1種以上の添加剤を含んでもよい。ポリマー樹脂が溶媒内で均一に分布されずに凝集する可能性がある場合は、分散剤を投入してこのような凝集を防止することができ、有機ビヒクルの化学変化又は状態変化を抑制する必要がある場合は、安定剤を投入することができ、ポリマー樹脂及び溶媒の混合が円滑でないない場合は、触媒又は触媒活性剤を用いて反応を促進させることができる。
【0069】
ポリマー樹脂及び溶媒(添加剤を投入する場合は添加剤も含む)を攪拌して有機ビヒクルを製造する作業は、機械的撹拌機を用いて、所定のrpm条件下で所定の時間にわたって行うことができる。攪拌時間において上限はないが、均一な攪拌を確保するための最低限の時間に留意する必要はあり、これはポリマー樹脂の種類、溶媒の種類、ポリマー樹脂、及び溶媒間の組成によって異なるため、各場合に応じて決定しなければならない。攪拌後には、製造された有機ビヒクルを篩を用いて不純物を濾別して脱泡する過程をさらに行ってもよい。脱泡については後で詳しく説明する。
【0070】
(I-2)磁性粉末を有機ビヒクルと混練して磁性モールディング液を用意する過程
磁性粉末を有機ビヒクルと混練して磁性モールディング液を製造する。磁性粉末と有機ビヒクルの混練は、磁性粉末と有機ビヒクルを秤量して混練機に投入し、磁性粉末と有機ビヒクルが均一に混合されるように所定時間にわたって混練する。混練工程の所要時間に上限はないが、均一な混練を確保するための最低限の時間に留意する必要はあり、これは磁性粉末の種類、有機ビヒクルの成分及び組成、磁性粉末及び有機ビヒクル間の組成によって異なるため、各場合に応じて決定しなければならない。
【0071】
磁性粉末は、純鉄、カルボニル鉄、鉄-ケイ素合金(Fe-Si alloy)、鉄-ケイ素-クロム合金(Fe-Si-Cr alloy)、サンダスト(Fe-Si-Al alloy)、パーマロイ(permalloy)、モリブデンパーマロイ(Mo-permalloy)及び非晶質粉末からなる群より選択される1種又はそれ以上を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0072】
磁性粉末の平均粒径として10~150μmを提案する。磁性粉末の平均粒径が150μmを超えると、磁性粉末の充填率が低下して硬化密度が低下したり、磁性モールディング液を注入する際にディスペンサー(dispenser)のノズルが詰まる問題などが発生する可能性がある。磁性粉末の平均粒径が10μm未満の場合、磁気コアの渦電流損(eddy current loss)が問題となる可能性があり、有機ビヒクルが磁性粉末間の空間を十分に充填できなくなるため、磁気コアの強度に問題が生じる可能性がある。
【0073】
磁性粉末は、平均粒径の異なる2種以上の磁性粉末を混合して構成してもよい。この場合、平均粒径の大きい磁性粉末の間に平均粒径の小さい磁性粉末が位置することになり、結果として磁性モールディング液の硬化密度を高めることができる。磁性モールディング液の硬化密度については後述する。平均粒径の異なる2種以上の磁性粉末の混合については、平均粒径が2~5μmの第1磁性粉末、平均粒径が10~20μmの第2磁性粉末、及び平均粒径が50~150μmの第3磁性粉末を混合することを提案する。これによって、平均粒径の大きい磁性粉末の間に平均粒径の小さい磁性粉末が位置することになるためである。
【0074】
磁性モールディング液としては、94~98wt%の磁性粉末と2~6wt%の有機ビヒクルとの組成比からなったものが好ましい。磁性粉末が98wt%を超えるか有機ビヒクルが2wt%未満の場合、磁性粉末の量が過剰で磁性粉末の充填による磁性モールディング液の製造自体が不可能な可能性があり、有機ビヒクルの量が少なすぎるため、ケースに磁性モールディング液を注入する際にレオロジー(rheology)の点で磁性モールディング液の流れ性が低く、磁気コアに部分的なクラック(crack)が発生する可能性があり、ポリマー樹脂のバインディング(binding)機能が低下するため、磁性モールディング液の硬化後に部分的に磁性粉末が離脱し、磁気コアに渦電流損(eddy current loss)が増加する可能性がある。磁性粉末が94wt%未満であるか有機ビヒクルが6wt%を超えると、レオロジー(rheology)の点で有利な点はあるが、有機ビヒクルの量が過剰で磁性粉末の充填量が減少するため、磁気コアの比透磁率が低下し、インダクタンス特性が低下する可能性があり、ポリマー樹脂の量が過剰で、磁性モールディング液の硬化時にポリマーの膨潤により磁性モールディング液がケースのキャビティの外に流出する可能性がある。
【0075】
また、上記の組成比で製造された磁性モールディング液の比透磁率は26μ以上であることが好ましい。磁性モールディング液の比透磁率が26μ未満であるとインダクタンス特性が低下するためである。一方、磁性モールディング液の比透磁率が60μを超えると、磁性モールディング液の製造コストが上昇するという欠点がある。これによって、磁性モールディング液の比透磁率は26~60μ程度であることが好ましい。
【0076】
このように磁性モールディング液の比透磁率の範囲を限定する理由は、本発明インダクタの使用範囲において、低電流領域で高いインダクタンスと、高電流領域でもインダクタンスを維持することが求められるためである。これはすなわち、システムの効率特性と比例関係にあり、上記の組成比で磁性モールディング液を製造するときに発生し得る比透磁率を考慮したものである。
【0077】
磁性モールディング液の性能要件の1つに磁性モールディング液の硬化密度があり、磁性モールディング液の硬化密度は、磁性粉末と有機ビヒクルの組成比に直接関係しており、磁性粉末の密度が有機ビヒクルの密度よりも大きいことを考慮すると、磁性粉末の割合が増加するほど磁性モールディング液の密度が増加し、これは磁性モールディング液の比透磁率が増加することを意味する。逆に、磁性粉末の割合が減少するほど磁性モールディング液の密度は低下し、これは磁性モールディング液の比透磁率が低下することを意味するが、渦電流損(eddy current loss)が低下する点もある。このような比透磁率及び渦電流損(eddy current loss)の点で磁性モールディング液の密度は5.5~6.5g/ccにすることを提案する。これによって、全体的に高い透磁率を確保できると共に、渦電流損(eddy current loss)もある程度低減することができる。
【0078】
次のステップに移る前に、磁性モールディング液の硬化を促進するために、磁性モールディング液に硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加してもよく、硬化剤としては、アミン類の脂肪族アミン、変性脂肪族アミン、芳香族アミン、変性芳香族アミン、酸無水物、ポリアミド、イミダゾール、硬化促進剤としては、ルイス酸、アルコール、フェノール、アルキルフェノール、カルボン酸、第3アミン、イミダゾール類を用いてもよいが、これらに限定されないことは言うまでもない。これらの使用により、磁性モールディング液の硬化時に必要な時間を短縮することができる。
【0079】
また、次のステップに移る前に、磁性モールディング液を脱泡することができる。脱泡は、磁性モールディング液に含まれている気泡を除去することを意味し、このような気泡除去過程を経ることでインダクタンス損失を改善することができる。また、磁性モールディング液中に存在する気泡は、磁気コアの耐衝撃性を低下させるだけでなく、気泡に水分が浸透する場合、磁気コア内部のクラック(crack)を誘導し得るため、磁性モールディング液の脱泡工程は非常に重要であると言える。磁性モールディング液を脱泡する方法において、商業的に購入できる攪拌・脱泡機を用いて磁性モールディング液を自転及び公転させて脱泡できるが、このような方法に限定されるものではない。
【0080】
(II)コイルユニットを用意するステップ
【0081】
(II-1)巻回したコイルを用意する過程
コイル210を円形、楕円又は四角形の形状に巻回して用意する。
このとき、コイル210の形状及び素材は特定の形状及び素材に限定されず、インダクタの形状及びインダクタで求められるインダクタンスの特性に応じて決定することが好ましい。
【0082】
(II-2)コイルユニットを用意する過程
コイルユニットを用意する過程は、追って磁性モールディング液310をフェライトコアユニット100のキャビティに充填する際にコイル210と磁性モールディング液310との間の絶縁を維持できるように用意したコイル210の表面にプラスチック樹脂を射出する過程である。
【0083】
詳しく説明すると、用意したコイル210を金型にインサートし、金型のキャビティにプラスチック樹脂を射出することで、コイル210の表面に絶縁インサート220を形成してコイルユニット200を用意する。
【0084】
このとき、絶縁インサート220の形状を所望の形状に射出するために、射出する過程を2回以上行ってもよい。
【0085】
また、絶縁インサート220を成形するために射出されるプラスチック樹脂は、コイル210の熱が容易に外部に放出されるように、W/m-k以上の熱伝導率を有する放熱プラスチック樹脂を用いることが好ましい。
【0086】
(III)フェライトコアユニットを用意するステップ
磁性モールディング液310が充填されるキャビティ101が形成されたフェライトコアユニット100を用意するステップである。
【0087】
このとき、フェライトコアユニット100は、磁性モールディング液310が充填される容器の役割を果たす。
【0088】
(III-1)フェライトコアを用意する過程
フェライトコア110を複数に分割して用意する。このとき、フェライトコア110は、一般的なインダクタに適用される素材であり、それぞれの特性及び製造方法についての詳細な説明は省略する。
【0089】
ただし、本実施形態で用意されたフェライトコア110は、磁性モールディング液310では達成できない磁気特性を達成するために用意されるものであり、磁性モールディング液310に比べて大きな比透磁率を有することが重要である。例えば、フェライトコア110の比透磁率は200μ以上であることが好ましい。一方、フェライトコア110の比透磁率に対する上限値は特に限定されない。
【0090】
(III-2)複数に分割されたフェライトコアを離隔配置する過程
フェライトコア110は、直流重畳特性を向上させるために、フェライトコア110を複数に分割し、互いの間で空隙102を維持した状態で離隔配置する。
【0091】
このとき、分割されたフェライトコア110は、コイルユニット200によって形成される磁路(magnetic path)方向に沿って少なくとも1つ以上の空隙102が形成されるように、磁路方向に沿って複数に分割された状態で離隔配置することが好ましい。
【0092】
例えば、フェライトコア110は、コイルユニット200に備えられたコイル210が巻回される周方向を取り囲む略「⊂」字状に配置された第1フェライトコア111と、コイルユニット200に備えられたコイル210の両端部を取り囲む平板状の一対の第2フェライトコア112と、を含む。
【0093】
そのため、第1フェライトコア111の両端部に第2フェライトコア112がそれぞれ配置されることで、略直方体の形状を維持する状態で一面が開放され、内部にキャビティ101(cavity)を形成できるようにする。
【0094】
(III-3)絶縁フレームを用意する過程
絶縁フレームを用意する過程は、複数に分割されたフェライトコア110を離隔した状態で固定させる絶縁フレーム120を用意する過程である。
【0095】
このとき、絶縁フレーム120は、第1フェライトコア111の外周面を取り囲むフレーム本体121と、第1フェライトコア111と第2フェライトコア112との間の空隙102に配置される空隙プレート122と、を含む形状に設けられてもよい。
【0096】
(III-4)絶縁フレームにフェライトコアを取り付ける過程
用意した絶縁フレーム120に複数に分割されたフェライトコア110の間で空隙102が維持されるように離隔して取り付ける。
【0097】
このとき、フェライトコア110を取り付けるために、絶縁フレーム120との取付部位にエポキシ又はシリコン系の接着剤を注入してもよい。接着剤をフェライトコア110の接合面に注入する方式として、注射器を用いて注入してもよく、ディスペンサー(dispenser)を用いて注入してもよいが、他の方法を排除することではない。接着剤は、80℃以上の硬化炉で硬化するか、又は常温で放置して自然硬化することが好ましい。
【0098】
(IV)フェライトコアユニットのキャビティにコイルユニットを配置するステップ
フェライトコアユニット100に形成されたキャビティ101に、用意したコイルユニット200を配置するステップであり、コイルユニット200の大部分をフェライトコアユニット100に形成されたキャビティ101に配置し、コイルユニット200を構成するコイル210の両側端部は、他の部品との接続のためにフェライトコアユニット100に形成されたキャビティ101の外部に露出するように配置する。
【0099】
(V)フェライトコアユニットのキャビティに、用意した磁性モールディング液を充填するステップ
磁性モールディング液を充填するステップは、磁性モールディング液310とフェライトコアユニット100とを一体化させるために、フェライトコアユニット100に形成されたキャビティ101に、用意した磁性モールディング液310を充填するステップである。
【0100】
このとき、磁性モールディング液310は、フェライトコアユニット100に形成されたキャビティ101の上部を介してキャビティに注入する。磁性モールディング液310をフェライトコアユニット100のキャビティ101に注入する方式は、ポンプとチューブを用いて注入してもよく、ディスペンサー(dispenser)を用いて注入してもよいが、他の方法を排除することではない。
【0101】
(VI)磁性体を形成するステップ
フェライトコアユニット100に充填された磁性モールディング液310を硬化して、フェライトコアユニット100及びコイルユニット200と一体化される磁性体300を形成するステップである。
【0102】
磁性モールディング液310を硬化する方式は、磁性モールディング液310を真空雰囲気下で硬化する真空硬化が好ましいが、これに限定されない。
【0103】
磁性モールディング液310を真空頃化する場合には、温度及び硬化時間などを適切に設定して磁性モールディング液中の気泡を除去できるという利点がある。
【0104】
一方、上記のような方法によりインダクタが用意されると、インダクタを回路部品に接続するための通電経路を形成するために、コイル端部のエナメル被覆を除去してコイルに通電部を形成する。このとき、被覆は、化学的又は機械的方法により除去することができる。これによって、コイルの端部を溶接、はんだ付け又はボルトなどの接続により回路部品に取り付けるか、又は被覆より線を接続して柔軟に取り付けるように製作することができる。
【0105】
以下、実施例及び比較例により本発明について説明する。
【0106】
[実施例:透磁率35μの磁性モールディング液と透磁率2000μのフェライトコアを用いたコイル埋め込み型インダクタの製造]
インダクタンス特性が1,000μHのコイル埋め込み型インダクタを製造するために、まず比透磁率が35μの磁性モールディング液を用意した。このとき、磁性モールディング液は、エポキシ樹脂、鉄-ケイ素-クロム合金粉末、サンダスト粉末、及びその他の磁性粉末(上述した可能な磁性粉末のうちから選択される1種以上)を混練して用意した。
【0107】
また、巻回数36の9.0mm(幅)×0.5mm(厚さ)の正方形コイル(square coil)を用意し、プラスチック射出物でインサート射出してコイルユニットを用意した。その後、磁路方向に厚さ1mmのギャップを形成するように絶縁フレームを用意した後、比透磁率が2,000μの5つのフェライトコアをそれぞれ用意した絶縁フレームに取り付けた。
【0108】
その後、コイルユニットをフェライトコアユニットのキャビティ内に配置し、磁性モールディング液をキャビティに注入して充填した。次いで、磁性モールディング液が充填されたフェライトコアユニットを真空オーブンに装入し、磁性モールディング液を真空硬化した。
【0109】
その結果、68mm(横)×52mm(縦)×48mm(高さ)のコイル埋め込み型インダクタが製造された。
【0110】
[比較例:比透磁率60μの軟磁性モールディング液で製造されたコイル埋め込み型インダクタ]
インダクタンス特性が900μHのインダクタ(比較例)を製造するために、実施例と同じコイルと巻回数、また同じボリュームを有する大きさのインダクタを、比透磁率60μの磁性モールディング液をプラスチックケース内全体に注入適用することで実施例と同様に製造した。
【0111】
[実験例:インダクタンスの測定]
実施例及び比較例で製造されたコイル埋め込み型インダクタのインダクタンスを精密LCRメーター(Keysight E4980A)を用いて測定し、その結果を
図5に示した。
【0112】
図5から分かるように、比較例と比較して、実施例は低電流時においても高いインダクタンスを確保し、最大負荷電流領域までのほとんどの区間で高いインダクタンスを確保できることが確認された。
【0113】
したがって、フェライトコアユニット内に磁性モールディング液を適用したコイル埋め込み型インダクタを用いると、磁性モールディング液のみを用いたインダクタに比べて高いインダクタンスを有するコイル埋め込み型インダクタを製造できることが確認された。
【0114】
本発明を添付図面と上記の好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明はこれらに限定されず後述する特許請求の範囲によって限定される。したがって、本技術分野の通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲の技術的思想を逸脱しない範囲内で本発明を多様に変形及び修正することができる。
【符号の説明】
【0115】
100:フェライトコアユニット 101:キャビティ
102:空隙 110:フェライトコア
111:第1フェライトコア 112:第2フェライトコア
120:絶縁フレーム 121:フレーム本体
122:空隙プレート 123:締結部
200:コイルユニット 210:コイル
220:絶縁インサート 300:磁性体
310:磁性モールディング液
【国際調査報告】