(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】水性グラファイト潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 173/02 20060101AFI20241031BHJP
C10M 135/10 20060101ALI20241031BHJP
C10M 103/02 20060101ALN20241031BHJP
C10N 20/06 20060101ALN20241031BHJP
C10N 40/24 20060101ALN20241031BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20241031BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C10M173/02
C10M135/10
C10M103/02 Z
C10N20:06
C10N40:24
C10N30:00 Z
C10N30:06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527528
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 US2022051496
(87)【国際公開番号】W WO2023107321
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111056456
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ヘマ サーガル ギディ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA04A
4H104BG06C
4H104EA08C
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA26
4H104QA01
(57)【要約】
潤滑剤組成物は、水、グラファイト、増粘剤、およびアルキル化ジフェニルオキシドスルホネート分散剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤組成物であって、
水と、
グラファイトと、
増粘剤と、
アルキル化ジフェニルオキシドスルホネート分散剤と、
を含む、潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記潤滑剤組成物の総重量に基づいて20重量%~60重量%の水を含む、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記潤滑剤組成物の総重量に基づいて10重量%~60重量%のグラファイトを含む、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記グラファイトが、0.5μm~5.0μmのD90粒径を有する、請求項3に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記アルキル化ジフェニルオキシドスルホネート分散剤が、ジスルホネートである、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記潤滑剤組成物の総重量に基づいて0.01重量%~1.0重量%の分散剤を含む、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
前記分散剤が、構造(I):
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、HおよびC
5-C
20アルキルから選択され、さらに、各M
+は、独立して、Li、K、およびNaからなる群から選択される)を有する分子を含む、請求項1~6のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
各M
+がNaであり、R
1がHであり、R
2がC
12-C
16アルキルである、請求項7に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
R
2が、C
12分岐状アルキルである、請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
R
2が、C
16直鎖状アルキルである、請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑剤組成物に関し、より具体的には、水性グラファイト分散液を含む潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
熱間鍛造は、金属ワークピースをダイ内に配置し、圧力下で変形させる工業プロセスである。金属ワークピースを塑性的に変形させるために金属ワークピースに印加されるエネルギーは、熱に変換される。ワークピースの鍛造と熱の発生とを繰り返すと、ダイの温度が上昇する。摩擦を低減し、確実にワークピースをダイから取り外すことができるようにするために、鍛造中にワークピースとダイとの間の界面で潤滑剤を使用する。良好な潤滑は、ワークピースの変形を改善し、ダイキャビティの正確な充填に有利に働き、自由流動運動および高い比圧力を有する点における工具の摩耗を低減し、鍛造力を低減することができる。このような特徴は、鍛造工具において誘起される応力を減少させ、工具とワークピースとが直接接触するのを防ぎ、このことは、より長い工具寿命およびより良好な品質管理に寄与する。
【0003】
近年、熱間鍛造のために選択される潤滑剤は、水系潤滑剤であった。水系潤滑剤は、典型的には、担体としての水と、グラファイトなどの潤滑粒子とを含む。水系潤滑剤は、グラファイトをダイに付着させて、水が蒸発するにつれてダイ上に固体コーティングを形成する。水系潤滑剤は、油系潤滑剤に比べて有利であるが、その理由は、油系潤滑剤は、圧力下でダイ表面から流れ落ち、ワークピース/ダイ界面から絞り出される傾向があるためである。しかし、水系潤滑剤にも欠点がないわけではない。水中のグラファイト分散液は安定ではなく、連続撹拌を必要とし、そうしなければ凝集および沈降が生じる。潤滑剤保持タンク内で凝集および沈降が生じると、ダイに塗布されるグラファイトの量が不正確になり、それによってダイの有効寿命が減少する可能性がある。凝集および沈降はまた、潤滑剤を鍛造ダイに塗布することを意図するパイプおよびスプレーノズルを詰まらせる可能性がある。理想的には、グラファイト分散液は、長期間にわたって沈降に耐える。水系潤滑剤の1つの測定では、潤滑剤が30日後にグラファイトの90%分散を維持することができ、沈降物が分散可能な形態のままであるかどうかを調べる(「沈降試験」)。
【0004】
分散剤を使用して水性のグラファイト分散液の凝集および沈降を減少させる試みがなされてきた。異なる分散剤のグラファイトに対する効力についての理論的説明は一致していない。例えば、米国特許出願公開第20090305052(A1)号(「’052号公報」)には、固形分含有量の高い安定な水性グラファイト分散液が開示されている。’052号公報は、ポリエチレングリコール、高分子電解質、およびリグノスルホン酸の塩などの分散剤を利用することによって、その水性グラファイト分散物中の固形分充填含量をより高くする。’052号公報には、分散剤が、グラファイト粒子の表面に蓄積してその立体的接近を防ぐスペーサーとして作用すると説明されている。’052号公報では、スペーサーとして機能する化合物の能力に影響を及ぼす一般的な分子構造も特徴も定義されていない。
【0005】
‘052号公報とは対照的に、中国特許出願公開第111925697(A)号(「’697号公報」)では、膜を形成するために水に分散させることができるグラフェンおよび水溶性ポリマー分散剤複合材料が提供されている。’697号公報には、分散剤が分散剤とグラフェンとの間のπ-π相互作用に起因して表面不活性グラフェンと水溶性ポリマーとの間の相溶性を改善するので、芳香環構造および親水性基を含有する水溶性ポリマー分散剤を含めることによって、強化された水性グラフェン分散液を得ることができると説明されている。’697号公報では、芳香族構造の配置または量が分散にどのように影響を及ぼすかについて言及されていない。
【0006】
グラファイト分散剤の有効性の背後にある競合する理論、異なる分子部分の分散性能に対する影響が不明確であること、および水性グラフェン分散液に存在する分子間力の複雑さを考慮すると、沈降試験に合格することができる分散剤を見出すことは驚くべきことである。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、沈降試験に合格することができる分散剤を提供する。本出願の発明者は、アルキル化ジフェニルオキシドスルホネート分散剤が沈降試験に合格できることを見出した。アルキル化ジフェニルオキシドスルホネートは、他の分散剤と比較して、酸素原子によって架橋された2つのフェニル基を有するという際立った特徴を有する。理論に束縛されるものではないが、分散剤の骨格としてのフェニル基が近接近すると、分散剤の剛性が増大し、その結果、グラファイトの表面と相互作用/結合する分散剤の能力が、他の分散剤と比較して増強されると考えられる。さらに、2つのスルホネート基を含むことにより、分散液内で生じる静電反発力が増大し、それによって安定性が高まる。
【0008】
本開示は、グラファイトを利用する潤滑剤の形成に特に有用である。
【0009】
本開示の第1の特徴によれば、潤滑剤組成物は、水、グラファイト、増粘剤、およびアルキル化ジフェニルオキシドスルホネート分散剤を含む。
【0010】
本開示の第2の特徴によれば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて20重量%~60重量%の水を含む。
【0011】
本開示の第3の特徴によれば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて10重量%~60重量%のグラファイトを含む。
【0012】
本開示の第4の特徴によれば、グラファイトは、0.5μm~5.0μmのD90粒径を有する。
【0013】
本開示の第5の特徴によれば、アルキル化ジフェニルオキシドスルホネート分散剤は、ジスルホネートである。
【0014】
本開示の第6の特徴によれば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて0.01重量%~1.0重量%の分散剤を含む。
【0015】
本開示の第7の特徴によれば、分散剤は、構造(I)(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、HおよびC5-C20アルキルから選択され、さらに、各M+は、独立して、Li、K、およびNaからなる群から選択される)を有する分子を含む。
【0016】
本開示の第8の特徴によれば、各M+はNaであり、R1はHであり、R2はC12-C16アルキルである。
【0017】
本開示の第9の特徴によれば、構造(I)のR2は、C12分岐状アルキルである。
【0018】
本開示の第10の特徴によれば、構造(I)のR2は、C16直鎖状アルキルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、または列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、および/またはCを含有するものとして説明されている場合、組成物は、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、AおよびBを組み合わせて、AおよびCを組み合わせて、BおよびCを組み合わせて、またはA、B、およびCを組み合わせて、含有することができる。
【0020】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分がポリマー組成物の総重量に占める重量のパーセンテージを示す。
【0022】
本明細書で使用される場合、Chemical Abstract Services登録番号(「CAS#」)は、本文書の優先日の時点でChemical Abstract Serviceによって化学化合物に最後に割り当てられた固有の数字識別子を指す。
【0023】
潤滑剤組成物
本開示は、潤滑剤組成物に関する。潤滑剤組成物は、水、グラファイト、増粘剤、およびアルキル化ジフェニルオキシドスルホネート分散剤を含む。潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて20重量%~60重量%の水を含み得る。例えば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて20重量%以上、または25重量%以上、または30重量%以上、または35重量%以上、または40重量%以上、または45重量%以上、または50重量%以上、または55重量%以上、一方で同時に、60重量%以下、または55重量%以下、または50重量%以下、または45重量%以下、または40重量%以下、または35重量%以下、または30重量%以下、または25重量%以下の水を含む。潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の特徴の特性を変化させるように設計された1つ以上の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
増粘剤
表面への潤滑剤組成物の塗布および保持を支援するために、潤滑剤組成物中に増粘剤を含める。増粘剤は、寒天、アルギン酸ナトリウム、ラムサムガム(rhamsam gum)、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、ニームガム、チャッティガム(gum chatti)、カラナ(caranna)、ガラクトマンナン、トラガカントガム、カラヤガム、グアーガム、ウェランガム、β-グルカン、セルロース、チクルガム、キノガム、ダンマルガム、グルコマンナン、アカシアガム、カシアガム、マスチックガム、トウヒガム、サイリウム種子殻、ジェランガム、キサンタンガム、ジウタンガム、コロハガム、ガッティガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラヤガム、コンニャクガム、ペクチン、およびこれらの組み合わせなどの多糖を含んでいてもよい。追加的にまたは代替的に、増粘剤は、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、ポリ(ビニルピロリジノン)およびコポリマー、ポリオキシプロピレン、ならびにこれらの組み合わせなどの他の粘度調整成分を含んでいてもよい。
【0025】
潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて0.1重量%~5.0重量%の増粘剤を含み得る。例えば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.4重量%以上、または0.6重量%以上、または0.8重量%以上、または1.0重量%以上、または1.5重量%以上、または2.0重量%以上、または2.5重量%以上、または3.0重量%以上、または3.5重量%以上、または4.0重量%以上、または4.5重量%以上、一方で同時に、5.0重量%以下、または4.5重量%以下、または4.0重量%以下、または3.5重量%以下、または3.0重量%以下、または2.5重量%以下、または2.0重量%以下、または1.5重量%以下、または1.0重量%以下、または0.5重量%以下の増粘剤を含み得る。
【0026】
グラファイト
潤滑剤組成物は、グラファイトを含む。グラファイトは、球状、板状、楕円状、および/または不規則な形状を有していてよい。グラファイトの粒子は、0.5マイクロメートル(「μm」)~10μmのD90を有し得る。本明細書で使用される場合、用語「D90」は、グラファイト粒子の90%が指定の値よりも小さな直径または最長長さを有し、粒子の10%が指定の値よりも大きな直径または最長長さを有することを意味する。グラファイトは、0.5μm以上、または1.0μm以上、または1.5μm以上、または2.0μm以上、または2.5μm以上、または3.0μm以上、または3.5μm以上、または4.0μm以上、または4.5μm以上、または5.0μm以上、または5.5μm以上、または6.0μm以上、または6.5μm以上、または7.0μm以上、または7.5μm以上、または8.0μm以上、または8.5μm以上、または9.0μm以上、または9.5μm以上、一方で同時に、10μm以下、または9.5μm以下、または9.0μm以下、または8.5μm以下、または8.0μm以下、または7.5μm以下、または7.0μm以下、または6.5μm以下、または6.0μm以下、または5.5μm以下、または5.0μm以下、または4.5μm以下、または4.0μm以下、または3.5μm以下、または3.0μm以下、または2.5μm以下、または2.0μm以下、または1.5μm以下、または1.0μm以下のD90粒径を有し得る。グラファイトのD90粒径は、Malvern Mastersizer(商標)レーザー回折粒径分析器を使用して求められる。
【0027】
潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて10重量%~60重量%のグラファイトを含む。例えば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて10重量%以上、または15重量%以上、または20重量%以上、または25重量%以上、または30重量%以上、または35重量%以上、または40重量%以上、または45重量%以上、または50重量%以上、または55重量%以上、一方で同時に、60重量%以下、または55重量%以下、または50重量%以下、または45重量%以下、または40重量%以下、または35重量%以下、または30重量%以下、または25重量%以下、または20重量%以下、または15重量%以下のグラファイトを含む。
【0028】
分散剤
潤滑剤組成物は、アルキル化ジフェニルオキシドスルホネート分散剤を含む。潤滑剤組成物は、1つを超える分散剤または1種類を超える分散剤を含んでいてもよい。アルキル化ジフェニルオキシドスルホネート分散剤は、単一のスルホネート基を有していてもよく、または2つのスルホネート基を含んでいてもよい(すなわち、ジスルホネート)。界面活性剤は、構造(I):
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、HおよびC
5-C
20アルキルから選択される)を有し得る。例えば、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、C
5アルキル、またはC
6アルキル、またはC
7アルキル、またはC
8アルキル、またはC
9アルキル、またはC
10アルキル、またはC
11アルキル、またはC
12アルキル、またはC
13アルキル、またはC
14アルキル、またはC
15アルキル、またはC
16アルキル、またはC
17アルキル、またはC
18アルキル、またはC
19アルキル、またはC
20アルキルであってよい。R
1およびR
2は、それぞれ独立して、直鎖または分岐状アルキルであってよい。構造(I)の各M
+は、独立して、Li、K、およびNaからなる群から選択される。分散剤は、全て構造(I)に付着するが、R
1、R
2、およびM
+の選択された選択肢が異なる複数の異なる化合物を含んでいてもよい。
【0029】
潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて0.1重量%~5.0重量%の分散剤を含み得る。例えば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.4重量%以上、または0.6重量%以上、または0.8重量%以上、または1.0重量%以上、または1.5重量%以上、または2.0重量%以上、または2.5重量%以上、または3.0重量%以上、または3.5重量%以上、または4.0重量%以上、または4.5重量%以上、一方で同時に、5.0重量%以下、または4.5重量%以下、または4.0重量%以下、または3.5重量%以下、または3.0重量%以下、または2.5重量%以下、または2.0重量%以下、または1.5重量%以下、または1.0重量%以下、または0.5重量%以下の分散剤を含み得る。
【実施例】
【0030】
材料
以下の材料を、実施例において使用した。
【0031】
グラファイトは、5.0μmのD90を有するグラファイト粒子の粉末であり、Molygraph Lubricants(Mumbai,India)から市販されている。
【0032】
増粘剤は、Loba Chemie Mumbai(India)から市販されているキサンタンガムである。
【0033】
分散剤1は、商品名ANTI-TERRA(登録商標)で販売されているポリカルボン酸のアルキルアンモニウム塩の溶液であり、BYK-Chemie GmbH(Wesel,Germany)から市販されている。
【0034】
分散剤2は、構造(II)、CAS番号9084-06-4を有する97重量%活性粉末であり、The Dow Chemical Company(Midland Michigan)から入手可能である。
【化2】
【0035】
分散剤3は、CAS番号151-21-3を有する純粋なドデシル硫酸ナトリウムであり、Loba Chemie Mumbai(India)から市販されている。
【0036】
分散剤4は、ポリ(フタルアルデヒド)で末端保護されたアクリル酸ホモポリマーであり、2000g/molの重量平均分子量を有し、47~49重量%の固形分含有量を有し、The Dow Chemical Company(Midland Michigan)から入手可能である。
【0037】
分散剤5は、水と45重量%の構造(I)[式中、M+はNaであり、R1はHであり、R2はC12分岐状アルキル(すなわち、テトラプロピレン)である]との水溶液である。分散剤5は、The Dow Chemical Company(Midland Michigan)から入手可能である。
【0038】
分散剤6は、水と35重量%の構造(I)(式中、M+はNaであり、R1はHであり、R2はC16直鎖状アルキルである)との水溶液である。分散剤6は、The Dow Chemical Company(Midland Michigan)から入手可能である。
【0039】
水は蒸留水である。
【0040】
試料の調製
最初に増粘剤、分散剤、水の一部を合わせ、次いで、撹拌機を使用して溶液を1分間混合することによって実施例を調製した。次に、グラファイト粉末を溶液にゆっくりと添加し、ペーストが形成されるまで混合した。次に、グラファイトペーストを残りの水で希釈し、オーバーヘッド撹拌機を使用して混合して、表1に列挙する組成を有する分散液を形成した。次いで、希釈したペーストを100ミリリットル(「mL」)のメスフラスコに添加し、100mLのラインまで満たした。
【0041】
試験方法
沈降試験:沈降試験は、所定の期間後に分散液の何パーセントが分散したままであるかを判定する。100mLのメスフラスコを100mLの印まで実施例で満たし、フラスコを指定の時間静置する。透明または濁った水相と分散しているグラファイト相との間の相分離界面を目視観察することによって、分散したままである実施例の量を測定する。相分離は、特定の期間後にグラファイト分散相と水相との境界が何mLのところにあるかを調べ、最初の100mLで除し、100を乗じることによって決定される。例えば、グラファイト分散相と水相との界面が95mLである場合、分散液の95%が相分離に耐えた。実施例は、720時間(すなわち、30日)後に実施例の90%がグラファイト分散相中に残っている場合、沈降試験に合格したとみなす。
【0042】
結果
以下の表1は、各比較例(「comparative example、CE」)および各本発明の実施例(「inventive example、IE」)の組成を成分の重量パーセントで提供し、表2は、各IEおよびCEの性能データを提供する。表2のデータは、グラファイト分散相中に残っている実施例のパーセントを提供する。項目「nm」は、特定の時間間隔が測定されなかったことを示す。
【表1】
【表2】
【0043】
表1および表2から分かるように、全て720時間後に90%のグラファイト分散を維持しているIE1~IE4によって示されるように、IE1~IE4は、沈降試験に合格する潤滑剤組成物の生成に関してCE1~CE10よりも大幅に優れている。CE1およびCE2は、分散剤が含まれない場合の水性グラファイト分散液から予測することができる安定性のベースラインを示す。CE3~CE10の保持されたグラファイト分散相の割合がCE1およびCE2に比べて低いことによって証明されるように、CE3~CE10は、特定の分散剤を含めると、分散剤を有さない分散液と比べて水中でのグラファイトの安定性を実際に低下させ得ることを実証する。
【0044】
CE1~CE10とは異なり、IE1~IE4はそれぞれ、30日間の試験後に90%以上のグラファイト分散相を維持することができるので、沈降試験に合格する。分散剤を利用する全ての比較例が、分散剤を含まないCE1およびCE2よりも劣る性能を示したので、このような結果は驚くべきことである。上記で説明したように、IE1~IE4で使用した分散剤の骨格としてのフェニル基が近接近すると、分散剤の剛性が増大し、その結果、グラファイトの表面と相互作用/結合する分散剤の能力が、他の分散剤と比較して増強されると考えられる。
【国際調査報告】