(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】皮膚常在菌を利用した植物性発酵オイルの製造方法及びそれを含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/99 20170101AFI20241031BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20241031BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K8/99
A61K8/97
A61Q19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527570
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2022013663
(87)【国際公開番号】W WO2023085578
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0152923
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524174863
【氏名又は名称】コスマックス・エイビー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】COSMAX AB INC.
(71)【出願人】
【識別番号】517039760
【氏名又は名称】コスマックス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】キム,クヮン・ニョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヒュン・タク
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジュ・ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,サ・ラン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ・ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,スギョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ソク・キュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,イェ・リン
(72)【発明者】
【氏名】カン,スン・ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミョン・サム
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA121
4C083AA122
4C083CC02
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、皮膚常在菌として植物性オイルを発酵することにより、脂質性発酵代謝産物を生成させた化粧料組成物及びその製造方法に関するものである。本発明によれば、皮膚常在菌として植物性オイルを発酵することにより、皮膚脂質と類似した脂質性発酵代謝産物を生産することができる。また、これを通じて植物性発酵オイルの皮膚親和力及び皮膚障壁保護効果を最大化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚常在菌として寄託番号KCCM 11843P(韓国微生物保存センター(国外)、2016.6.8)の微生物を培養して種菌培養物を製造する種菌培養段階と、
前記種菌培養物を培養して前培養物を製造する前培養段階と、
植物性オイルを含む培地に前記前培養物を投入して発酵物を製造する本発酵段階と、
を含む、植物性オイルを含む化粧料組成物の製造方法。
【請求項2】
前記種菌培養段階の培地または前記前培養段階の培地が、カゼイン加水分解物、イースト抽出物、グルコース、可溶性澱粉、K
2HPO
4、ピルビン酸ナトリウム、カゼインペプトン及びMgSO
4を含む、請求項1に記載の植物性オイルを含む化粧料組成物の製造方法。
【請求項3】
前記種菌培養段階の培地または前記前培養段階の培地が、カゼイン加水分解物0.1~5g/L、イースト抽出物0.1~10g/L、グルコース0.1~10g/L、可溶性澱粉0.1~5g/L、K
2HPO
4 0.1~5g/L、ピルビン酸ナトリウム0.05~5g/L、カゼインペプトン0.1~5g/L及びMgSO
4 0.01~1g/Lを含む、請求項1に記載の植物性オイルを含む化粧料組成物の製造方法。
【請求項4】
前記本発酵段階の培地が、グリセロール、イースト抽出物、カゼインペプトン、K
2HPO
4、KH
2PO
4、MgSO
4・7H
2O、NaCl、NH
2SO
4、KNO及びFeSO
4を含む、請求項1に記載の植物性オイルを含む化粧料組成物の製造方法。
【請求項5】
前記本発酵段階の培地が、グリセロール0.1~50g/L、イースト抽出物0.1~50g/L、カゼインペプトン0.1~50g/L、K
2HPO
4 0.01~5g/L、KH
2PO
4 0.01~3g/L、MgSO
4・7H
2O 0.005~0.5g/L、NaCl 0.1~10g/L、NH
2SO
4 0.01~5g/L、KNO 0.01~1g/L及びFeSO
4 0.001~0.1g/L及び植物性オイル50~900g/Lを含む、請求項1に記載の植物性オイルを含む化粧料組成物の製造方法。
【請求項6】
前記種菌培養段階が、15~35℃の好気条件で振盪培養する段階を含み、
前記前培養段階が、前記種菌培養物10~500g/Lを投入し、15~35℃、5~20NL/分、10~100rpmの好気条件で培養する段階を含み、
前記前培養段階が、5%培養液を600nmの波長で分光光度計の吸光度が0.2~0.8である時点に培養を終了する、請求項1に記載の植物性発酵オイルを含む化粧料組成物の製造方法。
【請求項7】
前記本発酵段階が、本発酵培地に前記前培養物を1~30重量%投入して15~35℃、100~500NL/分、400~800rpmの好気条件で30~150時間発酵する段階を含む、請求項1に記載の植物性オイルを含む化粧料組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうち何れか一項に記載の方法で製造された、植物性オイルを含む化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚常在菌として植物性オイルを発酵することにより、皮膚に親和力及び吸収力を向上させて、皮膚障壁機能保護効果を示す化粧料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮、真皮、皮下脂肪層からなっている。このうち、表皮は、最外層に存在しながら皮膚の保護膜の役割を果たし、皮膚の免疫機能を担当している。皮膚には、皮膚常在菌が生息しており、この微生物は、表皮の最外郭層と毛嚢の上部(上位層)とで主に見つけられる。皮膚常在菌としては、約1000種余りの微生物が存在し、このうち、好気性微生物は、表皮層の脂質を利用することができる脂肪分解酵素を分泌することができる。
【0003】
皮膚の表皮層は、主に角質形成細胞からなっており、角質細胞の間は、脂質成分からなっており、最外層は、タンパク質で構成されている。表皮の角質層は、約10~20%の水分を含有し、人体の最外郭に存在することにより、体外への水分蒸発を抑制する一方、外部から汚染物質の過剰浸透を遮断する。これらの角質層の表面は、皮脂腺から出た皮脂と汗腺から出た汗とで作られた薄い天然保護膜で取り囲まれて水分の蒸発を予防することができる。このような角質層を構成している細胞には、水溶性成分である高濃度の自然保湿因子(Natural Moisturizing Factor、NMF)が存在し、皮膚の柔軟性及び適切な水分保持の役割を助けるが、例えば、アミノ酸のような物質は水溶性であるだけではなく、効果的に水分と結合して皮膚の水分の乾燥を抑制する。
【0004】
皮膚は、冷房/暖房の人為的な温度調節、環境汚染のような外部環境の変化または生活パターンの変化のような各種の刺激によるストレス、老化などのさまざまな原因によって、角質層が損傷する。また、角質層の水分が減少して皮膚が乾燥し、皮膚の表面が荒くなり、皮膚がつやを失うようになれば、美容的、皮膚健康学的に否定的な影響を受ける。
【0005】
一方、植物性オイルは、皮膚に有益な影響を与える有効物質を多量含有すると知られているが、皮膚に吸収が難しく、オイルが有する重い使用感、特有の匂いなどの特性によって化粧料の使用に制限的である。
【0006】
本発明では、皮膚に有益な常在菌と、植物性オイルと、を活用して皮膚健康を向上させうる組成物及びその製造方法を提供しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、皮膚常在菌として植物性オイルを発酵して皮膚常在菌のオイル発酵代謝産物によって皮膚親和力及び密着度を向上させ、これによる皮膚障壁保護効果を示す化粧料組成物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、皮膚常在菌として寄託番号KCCM 11843P(韓国微生物保存センター(国外)、2016.6.8)の微生物を培養して種菌培養物を製造する種菌培養段階;前記種菌培養物を培養して前培養物を製造する前培養段階;及び植物性オイルを含む培地に前記前培養物を投入して発酵物を製造する本発酵段階;を含む植物性オイルを含む化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0009】
一具現例によれば、前記種菌培養段階の培地または前記前培養段階の培地は、カゼイン加水分解物、イースト抽出物、グルコース、可溶性澱粉、K2HPO4、ピルビン酸ナトリウム、カゼインペプトン及びMgSO4を含みうる。
【0010】
具体例を挙げれば、前記種菌培養段階の培地または前記前培養段階の培地は、カゼイン加水分解物0.1~5g/L、イースト抽出物0.1~10g/L、グルコース0.1~10g/L、可溶性澱粉0.1~5g/L、K2HPO4 0.1~5g/L、ピルビン酸ナトリウム0.05~5g/L、カゼインペプトン0.1~5g/L及びMgSO4 0.01~1g/Lを含みうる。
【0011】
一具現例によれば、前記本発酵段階の培地は、グリセロール、イースト抽出物、カゼインペプトン、K2HPO4、KH2PO4、MgSO4・7H2O、NaCl、NH2SO4、KNO及びFeSO4を含みうる。
【0012】
具体例を挙げれば、前記本発酵段階の培地は、グリセロール0.1~50g/L、イースト抽出物0.1~50g/L、カゼインペプトン0.1~50g/L、K2HPO4 0.01~5g/L、KH2PO4 0.01~3g/L、MgSO4・7H2O 0.005~0.5g/L、NaCl 0.1~10g/L、NH2SO4 0.01~5g/L、KNO 0.01~1g/L及びFeSO4 0.001~0.1g/L及び植物性オイル50~900g/Lを含みうる。
【0013】
一具現例によれば、前記種菌培養段階は、15~35℃の好気条件で振盪培養する段階を含み、前記前培養段階は、前記種菌培養物10~500g/Lを投入し、15~35℃、5~20NL/分、10~100rpmの好気条件で培養する段階を含み、前記前培養段階は、培養液5%希釈液が600nmの波長で分光光度計の吸光度が0.2~0.8である時点に培養を終了することができる。
【0014】
一具現例によれば、前記本発酵段階は、本発酵培地に前記前培養物を1~30重量%投入して15~35℃、100~500NL/分、400~800rpmの好気条件で30~150時間発酵する段階を含みうる。
【0015】
本発明の他の具現例によれば、前記のような方法で製造される植物性オイルを含む化粧料組成物を提供する。
【0016】
その他の本発明による具現例の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0017】
本発明による化粧料組成物は、皮膚常在菌を用いて植物性オイルを発酵して皮膚親和力、密着度、皮膚吸収率を向上させて皮膚障壁を保護するなど皮膚に有益な効果を最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発酵時間によるpH及び生菌数の変化を示すグラフである。
【
図2】実施例3による組成物の肉眼観察写真である。
【
図3】TLC分析結果を示すクロマトグラムである。
【
図5】極性脂質のTLC分析結果を示すクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を例示し、詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0020】
以下、本発明による皮膚常在菌を利用した植物性オイルを含む化粧料組成物及びその製造方法について詳しく説明する。
【0021】
本発明は、皮膚に生息している多様な微生物のうち、皮膚に有益な影響を与えながら共生している皮膚常在菌を用いて植物性オイルと発酵した。発酵して生成される脂質性発酵代謝産物は、皮膚の有効な効果を向上させる組成物を提供する。
【0022】
具体的に、本発明は、皮膚常在菌として寄託番号KCCM 11843P(韓国微生物保存センター(国外)、2016.6.8)の微生物を培養して種菌培養物を製造する種菌培養段階;前記種菌培養物を培養して前培養物を製造する前培養段階;及び植物性オイルを含む培地に前記前培養物を投入して発酵物を製造する本発酵段階;を含む植物性オイルを含む化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0023】
本発明の皮膚常在菌は、エピデルミディスバクテリウムケラチン属(Epidermidibacterium keratini sp.)菌株である。
【0024】
本発明に使われる植物性オイルは、細胞毒性のない植物性オイルであれば、特に制限されるものではない。具体例を挙げれば、植物性オイルは、マカダミアオイル、ヒマワリの種、ブドウの種、キャノーラ、米胚芽、オリーブ、大豆、アルガン、玄米、エゴマ、ゴマ、アーモンド、ピーナッツ、トウモロコシ、紅参、アボカド、マカダミア、ココナッツ、ローズヒップ、ビタミン木の種子、シア木の果実、アブラヤシ、ベルガモットの果実、ツバキの種子、紅花の種子、杏の種子、ケシの種子、月見草の種子、ヒマの種子、緑茶の種子、メドウフォームの種子、亜麻の種子及び麻の種子などの食用可能または人体親和的なオイルのうち1つ以上を含みうるが、前記種類に特に限定されるものではない。
【0025】
一具現例によれば、前記種菌培養段階の培地または前記前培養段階の培地は、カゼイン加水分解物(casein acid hydrolysate)、イースト抽出物(yeast extract)、グルコース(glucose)、可溶性澱粉(soluble starch)、K2HPO4、ピルビン酸ナトリウム(sodium pyruvate)、カゼインペプトン(casein peptone)及びMgSO4を含みうる。
【0026】
具体例を挙げれば、前記種菌培養段階の培地または前記前培養段階の培地は、カゼイン加水分解物0.1~5g/L、例えば、0.1~3g/L、また0.3~1g/L、イースト抽出物0.1~10g/L、例えば、0.1~5g/L、また0.1~3g/L、また0.3~1g/L、グルコース0.1~10g/L、例えば、0.1~5g/L、また0.1~3g/L、また0.1~1g/L、可溶性澱粉0.1~5g/L、例えば、0.1~3g/L、また0.1~1g/L、K2HPO4 0.1~5g/L、例えば、0.1~3g/L、また0.1~1g/L、ピルビン酸ナトリウム0.05~5g/L、例えば、0.05~3g/L、また0.05~1g/L、また0.1~0.5g/L、カゼインペプトン0.1~5g/L、例えば、0.1~3g/L、また0.1~1g/L及びMgSO4 0.01~1g/L、例えば、0.01~0.5g/L、また0.01~0.1g/Lを含みうる。
【0027】
一具現例によれば、前記本発酵段階の培地は、グリセロール、イースト抽出物、カゼインペプトン、K2HPO4、KH2PO4、MgSO4・7H20、NaCl、NH2SO4、KNO及びFeSO4を含みうる。
【0028】
具体例を挙げれば、前記本発酵段階の培地は、グリセロール0.1~50g/L、例えば、1~30g/L、また1~20g/L、また1~10g/L、イースト抽出物0.1~50g/L、例えば、1~30g/L、また1~20g/L、また1~10g/L、カゼインペプトン0.1~50g/L、例えば、0.1~30g/L、また0.1~5g/L、K2HPO4 0.01~5g/L、例えば、0.01~3g/L、また0.01~1g/L、また0.1~1g/L、KH2PO4 0.01~3g/L、例えば、0.01~1g/L、また0.1~1g/L、MgSO4・7H20 0.005~0.5g/L、例えば、0.005~0.1g/L、また0.01~0.05g/L、NaCl 0.1~10g/L、例えば、0.1~5g/L、また0.5~3g/L、NH2SO4 0.01~5g/L、0.01~3g/L、また0.1~1g/L、KNO 0.01~1g/L、例えば、0.05~0.5g/L、また0.05~0.3g/L及びFeSO4 0.001~0.1g/L、例えば、0.001~0.05g/L、また0.005~0.03g/L及び植物性オイル50~900g/L、例えば、100~800g/L、また300~600g/Lを含みうる。
【0029】
一具現例によれば、前記種菌培養段階は、15~35℃、例えば、20~30℃の好気条件で振盪培養する段階を含みうる。
【0030】
一具現例によれば、前記前培養段階は、前培養培地に前記種菌培養物10~500g/L、例えば、50~300g/L、50~200g/L、50~150g/Lを投入し、15~35℃、例えば、15~25℃、5~20NL/分、例えば、10~20NL/分、10~100rpm、例えば、30~80rpmの好気条件で培養する段階を含みうる。
【0031】
また、前記前培養段階は、5%培養液を600nmの波長で分光光度計の吸光度が0.2~0.8、例えば、0.2~0.4時点に培養を終了することができる。
【0032】
一具現例によれば、前記本発酵段階は、本発酵培地に対して前記前培養物を1~30重量%、例えば、2~20重量%、また5~15重量%投入して15~35℃、例えば、15~25℃、例えば、100~500NL/分、例えば、200~400NL/分、また、400~800rpm、例えば、500~700rpmの好気条件で30~150時間、例えば、50~100時間、また60~80時間発酵する段階を含みうる。
【0033】
一具現例によれば、本発酵段階以後に分離及び精製段階をさらに含みうる。例えば、本発酵物を遠心分離してオイル層と水層とを分離した後、オイル層を回収する段階を含みうる。また、残存水分と不純物とを除去するために、MgSO4を添加及び撹拌してフィルターを使用した濾過法を適用することができるが、精製のために適用される方法は、前記記載に制限されるものではない。
【0034】
一具現例によれば、本発明の化粧料組成物は、安定化剤、溶解剤、ビタミン、顔料、香料、補助剤、担体など化粧料組成物に通用する成分を含みうる。
【0035】
また、当業者で通常製造され、皮膚学的に適用が可能な如何なる剤形にも製造可能である。
【0036】
皮膚学的に適用が可能であるということは、適用対象に比較的非毒性であり、無害な有効作用を可能にする組成物であって、皮膚に適用することができる外用剤を含むことができ、前記組成物から起因する副作用が有効成分の効能を低下させず、適用対象に深刻な刺激を誘発せずとも、有効成分の活性及び物性を損傷させないということを意味する。本発明の皮膚学的に適用が可能な化粧料組成物としては、例えば、溶液、懸濁液、乳液、乳濁液、ペースト、ゲル、パック、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤-含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、スプレー及び毛髪化粧料などに剤形化されるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
具体的に、スキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ゲル、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、ファンデーション、エッセンス、アンプル、栄養エッセンス、パック、石鹸、ヘアシャンプー、フットシャンプー、クレンジングフォーム、クレンジングローション、クレンジングクリーム、ボディローション及びボディクレンザーの剤形などに製造可能である。
【0038】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
実施例:皮膚常在菌を利用した植物性発酵オイルを含む化粧料組成物の製造
【0040】
種菌培養
皮膚常在菌として寄託番号KCCM 11843P(韓国微生物保存センター(国外)、2016.6.8)の微生物を種菌培養した。R2A(BD Difco、USA)培地に接種して25℃の好気的な条件で振盪培養を進行して種菌培養物を製造した。具体的に、培地組成は、カゼイン加水分解物0.5g/L、イースト抽出物0.5g/L、グルコース0.5g/L、可溶性澱粉0.5g/L、K2HPO4 0.3g/L、ピルビン酸ナトリウム0.3g/L、カゼインペプトン0.5g/L及びMgSO4 0.05g/Lである。
【0041】
前培養
前記種菌培養培地組成のような培地に種菌培養液100g/Lを投入し、20℃、15NL/分、50rpmの好気的な条件で培養を進行して前培養物を製造した。また、前培養物に対して濁度測定法で本発酵時点を設定した。具体的な方法として、前培養物をサンプリングして0.85% NaCl溶液で5%希釈した後、分光光度計(Spectrophotometer、BioTek、USA)を用いて600nmの波長で吸光度を測定した。吸光度の範囲は、0.2~0.4を基準に前培養終了時点及び本発酵接種時点を設定した。
【0042】
本発酵
本発酵培地は、表1のようにした。表1によるそれぞれの培地温度が20℃である時、前培養物を10重量%接種し、20℃、300NL/分、600rpmの好気的な条件で発酵を進行して発酵物(発酵オイル)を製造した。
【0043】
【0044】
また、実施例1の本発酵時間によるpH及び生菌数の変化を
図1にグラフで示した。
図1のグラフから本発酵を72時間進行することが最も効率的であるということを確認した。
【0045】
分離及び精製
前記発酵物の発酵オイルを収得するために、発酵物を遠心分離してオイル層を分離させた。オイル層を回収して残存する水分及び不純物を除去するために、MgSO4 100g/Lを添加後、撹拌した。2時間撹拌した後、フィルタープレス(filter press)に濾過パッド(CH-ST-150、現代マイクロ、Korea)を用いて濾過した。濾過したオイルは、最終的に除菌濾過(0.2μm filter)して発酵オイルを収得した。
【0046】
実施例3による組成物の肉眼観察写真を
図2に示した。
【0047】
比較例1
発酵していない玄米オイルを使用した。
【0048】
実験例1:TLC分析
シリカゲルTLCプレート(TLC Silica gel 60、Merck;5cm×6.5cm)に試料をクロロホルム(chloroform)に20%希釈して1ul点滴し、ヘキサン(Hexane)、ジエチルエーテル(di-ethyl ether)、アセトン(acetone)(7:3:0.1、v/v)を含む移動相溶媒で終了時点まで展開した。自然乾燥されたプレートにクロロホルム、メタノール(methanol)、アセトン(12:0.5:0.2、v/v)を含む移動相溶媒で終了基点まで2次展開した。自然乾燥されたプレートにエタノールと混合された10%硫酸を噴霧し、乾燥して100℃で5分間加熱してスポット(spot)を視覚化した。比較例1及び実施例1の比較の結果を
図3に示した。
図3に示されたように、比較例1に比べて、実施例1で脂質極性がさらに高いスポット(成分)が発色された。実施例1の場合、オイルの極性を向上させることによって組成物の皮膚吸収率を増加させることができ、脂質成分の皮膚内吸収によって皮膚障壁強化機能を向上する。
【0049】
実験例2:乳化活性の確認
組成物に対する乳化活性を確認するために、実施例3の発酵前及び後を比較した。具体的な方法として、比較例1と実施例3とに精製水を1:2の比率で混合し、60℃に加温した。
【0050】
以後、冷却して乳化状態を観察した結果は、
図4と同じである。
図4の比較例1は、油層と水層とが分離されて層が明らかに区分された。一方、実施例3は、油層と水層とが均一に乳化されるということを確認した。
【0051】
実験例3:脂質性発酵代謝産物のアミノ基(Amino group)の生成確認
実施例3の脂質性発酵代謝産物に対してニンヒドリン反応試験法を用いて、発酵時間別のアミノ基の生成有無を確認した。具体的に、実施例3の培養液を1N HClを処理した後、遠心分離して脂質層を回収した。回収した脂質層は、重曹(炭酸水素ナトリウム)で中和後、クロロホルム-メタノール(2:1、v/v)で抽出して溶媒層を回収して分析に使用する試料を獲得した。収得した試料は、0.1% ニンヒドリン(Ninhydrin)溶液(溶媒:エタノール)と反応させた。混合比率は、試料2:0.1%ニンヒドリン溶液1で混合し、反応条件は、90℃水槽(Water Bath)で10分間加温した。以後、室温で10分間放冷して分光光度計(BioTek、USA)を用いて570nmで吸光度を測定した。
【0052】
【0053】
実施例3を発酵時間別のニンヒドリン反応した結果、72時間帯で最も高い反応性を示した。
【0054】
実験例4:極性脂質のTLC分析
実施例3の発酵代謝産物に対して極性脂質(Pola lipid)を確認するためにTLC分析を行った。具体的に、実施例3の培養液を1N HClを処理した後、遠心分離して脂質層を回収した。回収した脂質層は、重曹(炭酸水素ナトリウム)で中和後、クロロホルム-メタノール(2:1、v/v)で抽出して溶媒層を回収して分析に使用する試料を獲得した。
【0055】
シリカゲルTLCプレート(TLC Silica gel 60、Merck;5cm×6.5cm)に試料をクロロホルムに20%希釈して1ul点滴し、クロロホルム、メタノール、水(Water)(7.5:2.5:0.5、v/v)を含む移動相溶媒で終了時点まで展開した。発色剤は、モリブデンブルースプレー試薬(molybdenum blue spray reagent)(Sigma aldrich)を用いて遮光状態で常温で5分間発色して視覚化した。
【0056】
図5で示すように、極性脂質を発色させるモリブデンブルー(Molybdenum blue)で染色した結果、青色斑点を確認した。このような結果によって、皮膚常在菌と植物性オイルの発酵代謝産物には、極性が高い脂質またはリン脂質(Phospholipid)系が生成されることを確認することができた。
【0057】
前記のように、本発明の植物性発酵オイルを含む組成物は、脂質の極性が高い成分を生成させることによって皮膚吸収力を向上させうる。また、乳化安定性を向上させて皮膚の塗れ性と使用感とを満足させ、化粧料組成物として適している。
【0058】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、前記記載の特定の実施例に本発明の範囲が制限されるものではない。
【0059】
【国際調査報告】