(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】筋疾患の予防又は治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/35 20060101AFI20241031BHJP
A61P 21/06 20060101ALI20241031BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20241031BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20241031BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20241031BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K36/35
A61P21/06
A61P21/04
A61P21/02
A61P21/00
A61K31/7004
A61K31/198
A23L33/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528463
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2022017671
(87)【国際公開番号】W WO2023085820
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0155705
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524179178
【氏名又は名称】コサ バイオ インコーポレィティッド
【氏名又は名称原語表記】KOSA BIO INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】コン・ヒョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ソンファ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジョンス
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
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4C086AA01
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4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA94
(57)【要約】
本発明は、筋疾患の予防又は治療用医薬組成物に関するものである。具体的には、本発明によるエルダーベリー抽出物、又は単糖類及びアミノ酸結合化合物は、筋細胞の死滅を抑制し、炎症性サイトカインの発現を抑制し、テストステロンの分泌を促進し、筋萎縮マーカー及びミオスタチンの発現を抑制し、筋肉減少症の動物モデルにおいて筋肉を回復させる効果が得られ、筋疾患の治療に有用である。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルダーベリー抽出物を有効成分として含む、筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記抽出物が、水、C
1~C
2の低級アルコール又はその混合物で抽出されるものである、請求項1に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項3】
前記C
1~C
2の低級アルコールが、エタノール、メタノール、又は酒精である、請求項2に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項4】
前記筋疾患は、筋肉減少による疾患である、請求項1に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項5】
前記筋肉減少による疾患は、筋無緊張症(atony)、筋萎縮症(muscular airophy)、筋異栄養症(muscular dystrophy)、筋退化、筋硬直症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、筋無力症、悪液質(cachexia)、又はサルコペニア(sarcopenia)である、請求項4に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項6】
エルダーベリー抽出部を有効成分として含む、筋疾患の予防又は改善用健康機能食品。
【請求項7】
エルダーベリー抽出物を有効成分として含む、筋強化用健康機能食品。
【請求項8】
エルダーベリー抽出物を個体に投与するステップを含む、筋疾患の予防、改善又は治療方法。
【請求項9】
筋疾患の予防、改善又は治療のための薬剤の製造に使用するためのエルダーベリー抽出物の用途。
【請求項10】
単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項11】
前記単糖類は、フルクトース(fructose)である、請求項10に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項12】
前記アミノ酸は、BCAA(branched-chain amino acid)である、請求項10に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項13】
前記BCAAは、ロイシン(leucine)、バリン(valine)、又はイソロイシン(isoleucine)である、請求項12に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項14】
前記単糖類及びアミノ酸結合化合物は、下記[化1]~[化3]で示される化合物である、請求項10に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
[化1]
[化2]
[化3]
【請求項15】
前記筋疾患は、筋肉減少による疾患である、請求項10に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項16】
前記筋肉減少による疾患は、筋無緊張症、筋萎縮症、筋異栄養症、筋退化、筋硬直症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、筋無力症、悪液質、又はサルコペニアである、請求項15に記載の筋疾患の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項17】
単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、筋肉疾患の予防又は改善用健康機能食品。
【請求項18】
単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、筋強化用健康機能食品。
【請求項19】
単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を個体に投与するステップを含む、筋疾患の予防、改善又は治療方法。
【請求項20】
筋疾患の予防、改善又は治療のための薬剤の製造に使用するための単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋疾患の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
筋(muscle)は、人体中で最も構成量の多い組織であり、人体の機能的能力(functional capacity)を維持し、代謝性疾患を予防するために適正な筋肉量を維持する必要がある。筋サイズ(muscle size)は、筋内での同化作用(anabolism)や異化作用(catabolism)を誘導する細胞内信号伝達過程によって調節される。筋タンパク質の分解よりも合成を誘導する信号伝達反応が多く起こる場合、筋タンパク質の合成が増加し、筋肥大(hypertrophy)や筋増殖(hyperplasia)が誘発される。
【0003】
なお、筋は、カルシウムの取り込みを促進させ、骨密度を増加させている。しかし、身体の老化によって構成成分が変わり、その結果、体脂肪及び体タンパク質の再分布が起こる。また、50歳以降には、筋細胞内のタンパク質の合成速度が分解速度より遅くなり、筋肉が急激に低下し始め、筋肉減少による疾患に罹患することがある。
【0004】
筋肉減少によって発生する疾患の一つである筋肉減少症は、体内の筋肉量が、体質量の約13~24%に減少した状態であり、これは、筋肉量だけでなく、タンパク質の含有量、繊維径、筋力生産、及び疲労抵抗(fatigue resistance)の減少を示す。筋肉減少症は、敗血症、癌、腎不全、グルココルチコイド過剰、神経除去、筋肉の未使用、老化など、多様な原因によって発生する。加齢による骨格筋の量及び質の漸進的な減少や不適切な食生活による脂肪と体脂肪成分を含む体重減少などが主な原因である。
【0005】
筋肉減少症は、タンパク質の合成と分解との不均衡から生じる。筋肉減少症を発症すると、運動量が著しく減少して生活の質が落ちてしまい、日常生活の中で怪我をすることもある。さらに、過度な運動によって筋肉の疲労や損傷が生じたり、このような損傷によって痛みや一時的に身体の運動機能喪失が生じたりすることもある。
【0006】
これに関連して、大韓民国特許公開第10-2022-0113912号は、ヒマシ抽出物を有効成分として含む筋疾患の予防、改善又は治療用組成物に関するものであり、ヒマシ抽出物が筋細胞のサイズを増加させて運動の遂行能力を改善することで副作用なしに筋疾患の予防、改善又は治療に使用できることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エルダーベリー抽出物の筋疾患の予防、改善又は治療のための用途を提供することにある。
本発明の他の目的は、エルダーベリー抽出物の筋強化のための用途を提供することにある。
【0008】
本発明のまた他の目的は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の筋疾患の予防、改善又は治療のための用途を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の筋強化のための用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するため、本発明は、エルダーベリー抽出物を有効成分として含む筋疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、エルダーベリー抽出物を有効成分として含む筋疾患の予防又は改善用健康機能食品を提供する。
また、本発明は、エルダーベリー抽出物を有効成分として含む筋強化用健康機能食品を提供する。
【0012】
また、本発明は、エルダーベリー抽出物を個体に投与するステップを含む筋疾患の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、筋疾患の予防、改善又は治療のための薬剤の製造に使用するためのエルダーベリー抽出物の用途を提供する。
【0014】
また、本発明は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む筋疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む筋疾患の予防又は改善用健康機能食品を提供する。
【0016】
また、本発明は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む筋強化用健康機能食品を提供する。
【0017】
また、本発明は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を個体に投与するステップを含む筋疾患の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、筋疾患の予防、改善又は治療のための薬剤の製造に使用するための単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるエルダーベリー抽出物、又は単糖類及びアミノ酸結合化合物は、筋細胞の死滅を抑制し、炎症性サイトカインの発現を抑制し、テストステロンの分泌を促進し、筋萎縮マーカー及びミオスタチンの発現を抑制し、筋肉減少症の動物モデルにおいて筋肉を回復させる効果が得られ、筋疾患の治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態において、筋芽細胞の筋管細胞への分化前(A)及び分化後(B)の形態を顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態において、筋管細胞にデキサメタゾン処理を行う前(A)及び後(B)の形態を顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態において、エルダーベリー熱水抽出物(A)、エルダーベリー50%エタノール抽出物(B)、又はエルダーベリー100%エタノール抽出物(C)による筋細胞死抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態において、FL(A)、FV(B)、又はFI(C)による筋細胞死抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態において、様々な種類のアミノ酸(ロイシン、バリン、アルギニン、チロシン、メチオニン、又はフェニルアラニン)による筋細胞死抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態において、様々な種類のアミノ酸(イソロイシン、トリプトファン、グリシン、リシン、又はトレオニン)による筋細胞死抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図7】本発明の一実施形態において、エルダーベリー熱水抽出物(A)、エルダーベリー50%エタノール抽出物(B)、又はエルダーベリー100%エタノール抽出物(C)によるTNFαの発現抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態において、FL(A)、FV(B)、又はFI(C)によるTNFαの発現抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図9】本発明の一実施形態において、エルダーベリー熱水抽出物(A)又はFL(B)によるテストステロン分泌促進効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図10】本発明の一実施形態において、エルダーベリー熱水抽出物(A)、エルダーベリー50%エタノール抽出物(B)、又はエルダーベリー100%エタノール抽出物(C)によるMuRF-1遺伝子の発現抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図11】本発明の一実施形態において、エルダーベリー熱水抽出物(A)、エルダーベリー50%エタノール抽出物(B)、又はエルダーベリー100%エタノール抽出物(C)によるアトロジン-1遺伝子の発現抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図12】本発明の一実施形態において、エルダーベリー熱水抽出物(A)、エルダーベリー50%エタノール抽出物(B)、又はエルダーベリー100%エタノール抽出物(C)によるミオスタチン遺伝子の発現抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図13】本発明の一実施形態において、FL(A)、FV(B)、又はFI(C)によるMuRF-1遺伝子の発現抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図14】本発明の一実施形態において、FL(A)、FV(V)、又はFI(C)によるアトロジン-1遺伝子の発現抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図15】本発明の一実施形態において、FL(A)、FV(B)、又はFI(C)によるミオスタチン遺伝子の発現抑制効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図16】本発明の一実施形態において、筋肉減少症の動物モデルを用いた動物実験計画を示す模式図である。
【
図17】本発明の一実施形態において、エルダーベリー熱水抽出物(A)又はFL(B)による筋肉減少症の動物モデルの体重変化を確認した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳説する。
本発明は、エルダーベリー抽出物を有効成分として含む筋疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0022】
本明細書中、「エルダーベリー(elderberry)」とは、黒色を帯びた紫色を呈するベリー類の果実であり、通常、秋に実るため、ブラックエルダー(black elder)と呼ばれることもある。また、北米では、エルダーベリー抽出物をサンブコル(sambucol)とも言う。エルダーベリーには、ビタミンA、B、Cとアントシアニンが豊富に含まれていることが知られており、風邪の予防や免疫力強化に効果的であると報告されている。
【0023】
上記エルダーベリー抽出物は、以下のステップを含む製造方法により製造することができる:
1)エルダーベリーに抽出溶媒を加えて抽出物を製造するステップ、
2)ステップ1)の抽出物をろ過するステップ、及び
3)ステップ2)でろ過されたろ過物を減圧濃縮した後、乾燥するステップ。
【0024】
また、上記抽出溶媒としては、水、アルコール、又はその混合物を使用することができる。上記アルコールは、C1~C2の低級アルコールであり、具体的には、上記C1~C2の低級アルコールは、エタノール、メタノール、又は酒精であり得る。上記抽出溶媒は、エルダーベリーの重さの1~100倍、1~70倍、1~50倍、1~30倍、又は1~15倍で添加されてもよい。上記抽出溶媒としてアルコールを使用する場合、上記アルコールは、10~100%、20~100%、30~100%、又は40~100%アルコールであってもよい。
【0025】
上記抽出方法としては、振盪抽出、冷浸抽出、還流抽出、又は超音波抽出が挙げられる。このとき、抽出時間は、1~20時間、2~20時間、1~10時間、2~10時間、1~5時間、2~5時間であり得る。上記抽出は、1回以上繰り返して行ってもよい。
【0026】
なお、上記ステップ3)の減圧濃縮では、真空減圧濃縮装置又は真空回転式蒸発器を使用することができる。また、上記乾燥は、減圧乾燥、真空乾燥、沸騰乾燥、噴霧乾燥、又は凍結乾燥であり、具体的には、凍結乾燥であってもよい。
【0027】
上記筋疾患(muscle disease)は、筋肉減少による疾患であり得る。他の側面において、上記筋疾患は、筋力の漸進的な損失による歩行能力の喪失、呼吸筋力の弱化、心臓機能の弱化などを含む進行性疾患であり得る。また、上記筋疾患は、先天性疾患又は後天性疾患であり得る。一例として、上記筋肉減少による疾患は、筋無緊張症(atony)、筋萎縮症(muscular airophy)、筋異栄養症(muscular dystrophy)、筋退化、筋硬直症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、筋無力症、悪液質(cachexia)、又はサルコペニア(sarcopenia)であり得る。
【0028】
本発明による医薬組成物は、組成物の全重量に対して、有効成分であるエルダーベリー抽出物を10~95重量%含むことができる。また、本発明の医薬組成物は、上記有効成分の他に、さらに同一又は同様な機能を示す有効成分を1種以上含んでもよい。
【0029】
本発明の医薬組成物は、生物学的製剤に通常使用されている担体、希釈剤、賦形剤、又はその混合物を含んでもよい。薬学的に許容可能な担体としては、組成物の生体内への伝達に適したものであれば制限なく使用することができる。具体的には、上記担体としては、Merck Index、13th ed.、Merck&Co.Inc.に記載の化合物、食塩水、滅菌水、点滴液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、又はその混合物が挙げられる。また、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などのような通常の添加剤を添加してもよい。
【0030】
上記組成物を製剤化する場合、通常使用されている充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を添加してもよい。
【0031】
本発明による組成物は、経口製剤又は非経口製剤に製剤化することができる。経口製剤としては、固形製剤及び液状製剤が挙げられる。上記固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、又はトローチ剤が挙げられ、このような固形製剤は、上記組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤を添加して調製することができる。上記賦形剤は、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチン、又はその混合物であり得る。また、上記固形製剤は、潤滑剤を含んでもよく、その例としては、マグネシウムスチレート、タルクなどが挙げられる。また、上記液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、又はシロップ剤が挙げられる。なお、上記液状製剤には、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などのような賦形剤が含まれてもよい。
【0032】
上記非経口製剤としては、注射剤、坐剤、呼吸器吸入用粉末、スプレー用エアゾール剤、パウダー及びクリームなどが挙げられる。上記注射剤は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁注射剤、乳剤などであり得る。なお、非水性溶剤又は懸濁注射剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油や、エチルオレートのように注射可能なエステルなどを使用することができる。
【0033】
また、本発明は、エルダーベリー抽出物を有効成分として含む筋疾患の予防又は改善用健康機能食品を提供する。
本発明による健康機能食品に含まれるエルダーベリー抽出物は、上述のような特徴を有することができる。上記筋疾患は、また、上述のような特徴を有することができる。
【0034】
本発明のエルダーベリー抽出物は、食品にそのまま添加し、又は他の食品又は食品成分と一緒に使用されてもよい。このとき、添加される有効成分の含有量は、目的に応じて決定されるが、一般的には、健康機能食品の全重量に対して、0.01~90重量部であり得る。
【0035】
健康機能食品の形態及び種類は、特に制限されない。具体的には、上記健康機能食品は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、及び丸剤の形態であってもよい。上記健康機能食品は、追加成分として、様々な香味剤、甘味剤、又は天然炭水化物を含んでもよい。上記甘味剤は、天然又は合成甘味剤であり、天然甘味剤としては、例えば、タウマチン、ステビア抽出物などが挙げられる。また、合成甘味剤としては、例えば、サッカリン、アスパルテームなどが挙げられる。また、上記天然炭水化物としては、モノサッカライド、ジサッカライド、ポリサッカライド、オリゴ糖、及び糖アルコールなどが挙げられる。
【0036】
本発明による健康機能食品は、上記のような追加成分の他に、栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクト酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコールなどをさらに含んでもよい。これらの成分は、単独で又は組み合わせて使用することができる。上記添加剤の比率は、本発明の組成物100重量部に対して、0.01~0.1重量部の範囲であり得る。
【0037】
また、本発明は、エルダーベリー抽出物を有効成分として含む筋強化用健康機能食品を提供する。
本発明による健康機能食品に含まれるエルダーベリー抽出物は、上述のような特徴を有することができる。上記健康機能食品は、また、上述のような特徴を有することができる。
【0038】
また、本発明は、エルダーベリー抽出物を個体に投与するステップを含む筋疾患の予防、改善又は治療方法を提供する。
本発明による方法に使用されるエルダーベリー抽出物は、上述のような特徴を有することができる。上記筋疾患は、また、上述のような特徴を有することができる。
【0039】
上記個体は、哺乳動物であり、具体的には、ヒトであり得る。
上記投与方法は、目的の方法によって、経口又は非経口投与であり得る。非経口投与としては、腹腔内、直腸内、皮下、静脈、筋肉内、又は胸部注射の方式が挙げられる。
【0040】
上記投与は、薬学的に有効な量で投与することができる。これは、疾患の種類、重症度、薬物の活性、患者の薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、治療期間、同時に使用される薬物などによって変化する。しかし、望ましい効果を得るため、上記投与に含まれる有効成分の量は、0.0001~1,000mg/kg、具体的には、0.001~500mg/kgであり得る。上記投与は、1日に1回~数回投与してもよい。
【0041】
上記投与は、単独で又は他の治療剤と併用して投与されてもよい。併用投与のときは、投与は、順次又は同時投与してもよい。
また、本発明は、筋疾患の予防、改善又は治療のための薬剤の製造に使用するためのエルダーベリー抽出物の用途を提供する。
【0042】
本発明による薬剤の製造に使用されるエルダーベリー抽出物は、上述のような特徴を有することができる。上記筋疾患は、また、上述のような特徴を有することができる。
また、本発明は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む筋疾患の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0043】
本明細書中、「単糖類(monosaccharide)」とは、炭水化物の最小単位であり、単純糖(simple sugar)とも呼ばれる。上記単糖類は、一般的に無色、水溶性の結晶性固体であって、グルコース(glucose)、フルクトース(fructose)、ガラクトース(galactose)などが挙げられる。本発明の一実施形態において、上記単糖類は、フルクトースであり得る。上記「フルクトース」とは、6つの炭素原子が含まれた単糖類で、ケトン基を有するケトースであり、C6H12O6の化学式で表される。上記フルクトースは、生物の糖代謝においてブドウ糖の分解やグリコーゲン合成の過程における中間体である。
【0044】
また、本明細書中、「アミノ酸(amino acid)」とは、生物を構成するタンパク質の基本構成単位であり、化学的に塩基性であるアミノ基(-NH2)と酸性であるカルボキシ基(-COOH)との両方を含む化合物を意味する。一般的に、タンパク質を酸やペプシン、トリプシンなどのような酵素で加水分解させると、種々のアミノ酸に分解される。このように生成されたアミノ酸は、体内に吸収され、再配列されて身体を構成するタンパク質に合成される。上記アミノ酸は、非必須アミノ酸と必須アミノ酸とに分類される。
【0045】
上記アミノ酸としては、当該技術分野で周知のあらゆるアミノ酸を含み、具体的に、上記アミノ酸は、BCAA(Branched-chain amino acid)であり得る。上記BCAA(Branched-chain amino acid)とは、3つ以上の炭素原子と結合している中心炭素原子である分枝鎖と脂肪族の側鎖を有するアミノ酸を意味する。具体的には、上記BCAAとしては、ロイシン(leucine)、バリン(valine)、又はイソロイシン(isoleucine)がある。
【0046】
本発明による単糖類及びアミノ酸結合化合物は、上述のような特徴を有する単糖類及びアミノ酸を当該技術分野で周知の方法で結合させて得られる化合物である。一例として、上記単糖類及びアミノ酸結合化合物は、フルクトースにBCAAが結合された形態の化合物であり得る。具体的には、上記単糖類及びアミノ酸結合化合物は、フルクトースに、ロイシン、バリン、又はイソロイシンが結合された形態の化合物であり、より具体的には、上記単糖類及びアミノ酸結合化合物は、下記[化1]~[化3]で表される化合物であり得る。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
また、本発明は、上記単糖類及びアミノ酸結合化合物だけでなく、その薬学的に許容可能な塩を含むことができる。
【0051】
ここで、「薬学的に許容可能な塩」とは、純粋な医学的判断の範囲内で過多な毒性、刺激、アレルギー反応などを誘発することなくヒト及び下等動物の組織と接触して使用するのに適した塩を意味する。上記薬学的に許容可能な塩は、当分野で周知であり、例えば、文献(S.M.Berge et al.、J.Pharmaceutical Sciences、66、1、1977)に詳述されている。塩は、本発明の化合物を最終的に分離及び精製する過程で同一の反応系で製造し、又は別途に無機塩基又は有機塩基と反応させて製造することができる。塩基付加塩の形態としては、具体的には、アンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの塩のようなアルカリ塩及びアルカリ土類金属塩、有機塩基との塩、例えば、1次、2次及び3次脂肪族及び芳香族アミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、4種のブチルアミン異性体、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、キヌクリジン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンザチン、N-メチル-D-グルカミン、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、ヒドラバミン塩、及びアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩などが挙げられる。
【0052】
また、本発明は、上記単糖類及びアミノ酸結合化合物の水和物又は溶媒和物、これらの誘導体化合物を含むことができる。上記溶媒和物の中で溶媒としては、特に制限されず、当該技術分野で周知の溶媒であれば制限なく使用することができる。
【0053】
上記筋疾患(muscle disease)は、筋肉減少による疾患であり得る。他の側面において、上記筋疾患は、筋力の漸進的な減少による歩行能力の喪失、呼吸筋力の弱化、心臓機能の弱化などを含む進行性疾患であり得る。また、上記筋疾患は、先天性疾患又は後天性疾患であり得る。一例として、上記筋肉減少による疾患は、筋無緊張症、筋萎縮症、筋異栄養症、筋退化、筋硬直症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、筋無力症、悪液質、又はサルコペニアであり得る。
【0054】
本発明による医薬組成物は、組成物の全重量に対して、有効成分である単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を、10~95重量%含むことができる。また、本発明の医薬組成物は、上記有効成分の他に、さらに同一又は同様な機能を有する有効成分を1種以上含んでもよい。
【0055】
本発明の医薬組成物は、生物学的製剤に通常使用されている担体、希釈剤、賦形剤、又はその混合物を含んでもよい。薬学的に許容可能な担体としては、組成物の生体内への伝達に適したものであれば制限なく使用することができる。具体的には、上記担体としては、Merck Index、13th ed.、Merck&Co.Inc.に記載の化合物、食塩水、滅菌水、点滴液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、又はその混合物が挙げられる。また、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などのような通常の添加剤を添加してもよい。
【0056】
上記組成物を製剤化する場合、通常使用されている充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を添加してもよい。
【0057】
本発明による組成物は、経口製剤又は非経口製剤に製剤化することができる。経口製剤としては、固形製剤及び液状製剤が挙げられる。上記固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、又はトローチ剤が挙げられ、このような固形製剤は、上記組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤を添加して調製することができる。上記賦形剤は、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチン、又はその混合物であり得る。また、上記固形製剤は、潤滑剤を含んでもよく、その例としては、マグネシウムスチレート、タルクなどが挙げられる。また、上記液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、又はシロップ剤が挙げられる。このとき、上記液状製剤には、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などのような賦形剤が含まれてもよい。
【0058】
上記非経口製剤としては、注射剤、坐剤、呼吸器吸入用粉末、スプレー用エアゾール剤、パウダー及びクリームなどが挙げられる。上記注射剤は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁注射剤、乳剤などであり得る。なお、非水性溶剤又は懸濁注射剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油や、エチルオレートのように注射可能なエステルなどを使用することができる。
【0059】
また、本発明は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む筋疾患の予防又は改善用健康機能食品を提供する。
【0060】
本発明による健康機能食品に含まれる単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩は、上述のような特徴を有することができる。上記筋疾患は、また、上述のような特徴を有することができる。
【0061】
本発明による単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩は、食品にそのまま添加し、又は他の食品又は食品成分と一緒に使用されてもよい。このとき、添加される有効成分の含有量は、目的に応じて決定されるが、一般的には、健康機能食品の全重量に対して、0.01~90重量部であり得る。
【0062】
健康機能食品の形態及び種類は、特に制限されない。具体的には、上記健康機能食品は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、液剤、及び丸剤の形態であってもよい。上記健康機能食品は、追加成分として、様々な香味剤、甘味剤、又は天然炭水化物を含んでもよい。上記甘味剤は、天然又は合成甘味剤であり、天然甘味剤としては、例えば、タウマチン、ステビア抽出物などが挙げられる。また、合成甘味剤としては、例えば、サッカリン、アスパルテームなどが挙げられる。また、上記天然炭水化物としては、モノサッカライド、ジサッカライド、ポリサッカライド、オリゴ糖、及び糖アルコールなどが挙げられる。
【0063】
本発明による健康機能食品は、上記のような追加成分の他に、栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクト酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコールなどをさらに含んでもよい。これらの成分は、単独で又は組み合わせて使用することができる。上記添加剤の比率は、本発明の組成物100重量部に対して、0.01~0.1重量部の範囲であり得る。
【0064】
また、本発明は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む筋強化用健康機能食品を提供する。
【0065】
本発明による健康機能食品に含まれる単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩は、上述のような特徴を有することができる。上記健康機能食品は、また、上述のような特徴を有することができる。
【0066】
また、本発明は、単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩を個体に投与するステップを含む筋疾患の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0067】
本発明による方法に使用される単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩は、上述のような特徴を有することができる。上記筋疾患は、また、上述のような特徴を有することができる。
【0068】
上記個体は、哺乳動物であり、具体的には、ヒトであり得る。
上記投与方法は、目的の方法によって、経口又は非経口投与であり得る。非経口投与としては、腹腔内、直腸内、皮下、静脈、筋肉内、又は胸部注射の方式であってもよい。
【0069】
上記投与は、薬学的に有効な量で投与することができる。これは、疾患の種類、重症度、薬物の活性、患者の薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、治療期間、同時に使用される薬物などによって変化する。しかし、望ましい効果を得るため、上記投与に含まれる有効成分の量は、0.0001~1,000mg/kg、具体的には、0.001~500mg/kgであり得る。上記投与は、1日に1回~数回投与してもよい。
【0070】
上記投与は、単独で又は他の治療剤と併用して投与してもよい。併用投与のとき、投与は、順次又は同時投与してもよい。
さらに、本発明は、筋疾患の予防、改善又は治療のための薬剤の製造に使用するための単糖類及びアミノ酸結合化合物、又はその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0071】
本発明による薬剤の製造に使用されるエルダーベリー抽出物は、上記のような特徴を有することができる。上記筋疾患は、また、上述のような特徴を有することができる。
【実施例】
【0072】
以下、後述の実施例に基づいて本発明を詳述する。但し、後述の実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明は、これらによって制限されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載の技術的思想と実質的に同様な構成を有し、同様な作用効果を示すものであれば、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
実施例1.エルダーベリー熱水抽出物の製造
ドライエルダーベリーを用いて、次のような方法で熱水抽出物を製造した。
まず、ドライエルダーベリーに、その重量を基準に10倍の精製水を入れ、80℃で3時間抽出を行い、抽出物を得た。得られた抽出物は、金属検出器を用いてろ過し、濃縮してエルダーベリー濃縮物を得た。上記エルダーベリー濃縮物に、30%マルトデキストリンを混合して凍結乾燥し、エルダーベリー熱水抽出物の粉末を製造した。
【0074】
実施例2.エルダーベリー50%エタノール抽出物の製造
精製水の代わりに50%エタノールを添加し、6時間抽出を行った以外は、上記実施例1と同様にしてエルダーベリー50%エタノール抽出物の粉末を製造した。
【0075】
実施例3.エルダーベリー100%エタノール抽出物の製造
精製水の代わりに100%エタノールを添加し、6時間抽出を行った以外は、上記実施例1と同様にしてエルダーベリー100%エタノール抽出物の粉末を製造した。
【0076】
実施例4.エルダーベリー抽出物の成分分析
上記で製造されたエルダーベリー熱水抽出物を用いて液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を行い、抽出物中のFL(フルクトース-ロイシン(fructose-leucine))を確認した。
具体的には、200mgのエルダーベリー熱水抽出物の粉末を水に溶かした後、メタノールを添加し、60分間以上超音波処理を行い、試料として準備した。なお、0.2mg/lのFLを用いて検量線を作成し、定量範囲を設定した。上述の条件で準備された試料を用いて分析を行い、これを3回繰り返した。得られたピーク面積及び検液RTを用いてエルダーベリー熱水抽出物中のFLの含有量を通常の方法で計算した結果を表1に示す。
【0077】
【0078】
表1に示されるように、試料中のFL含有量は、平均して1.02%であることがわかった。
【0079】
実験例1.筋細胞死の抑制
上記で製造されたエルダーベリー抽出物、並びに単糖類及びアミノ酸が結合した化合物が筋細胞の死滅を抑制するかを、次のような方法で確認した。
【0080】
1-1.筋管細胞の準備
まず、筋芽細胞(myoblast cell)であるC2Cl2細胞株(ATCC、米国)を10%FBS(ウシ胎児血清(fetal bovine serum))及び1%抗生物質-抗真菌剤が含まれたDMEM培地を用いて37℃、5%CO
2の条件で培養した。培養された細胞の培養液を2%HS(馬血清(horse serum))が含まれた培養培地に交換し、72時間さらに培養した。培養された細胞を顕微鏡で観察し、筋芽細胞が筋管細胞に分化したかを確認し、10μMのデキサメタゾン(dexamethasone)処理して24時間反応させた。反応終了後、細胞を再び顕微鏡で観察した。筋管細胞に分化したかを確認した結果を
図1に、デキサメタゾン処理後に顕微鏡で観察した結果を
図2に示す。
【0081】
図1に示されるように、筋芽細胞が筋管細胞に分化されていた。また、
図2に示されるように、デキサメタゾン処理によって筋管細胞の厚さが薄くなることで筋肉減少が生じることが確認された。
【0082】
1-2.エルダーベリー抽出物の筋細胞死の抑制
上記でデキサメタゾン処理が施された細胞株に、12.5、25、50、100μg/mlのエルダーベリー熱水抽出物、又は100、200、300、400μg/mlのエルダーベリー50%エタノール抽出物、又は100、200、300、400μg/mlのエルダーベリー100%エタノール抽出物の処理を行った。24時間後、細胞培養液を除去し、1ウェル当たり5mg/mlのMTT試薬を添加し、細胞を4時間さらに培養した。次に、DMSOを添加して沈殿物を溶解させ、マイクロプレートリーダーで波長570nmでの吸光度を測定した。上記測定値から細胞生存率を通常の方法で計算し、その結果を
図3に示す。
【0083】
図3に示されるように、デキサメタゾンにより減少した細胞生存率が、エルダーベリー抽出物の処理により有意に回復した。
【0084】
1-3.単糖類及びアミノ酸結合化合物の筋細胞死の抑制
エルダーベリー抽出物中に存在することが確認されたFLだけでなく、単糖類であるフルクトースにBCAA(分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid))であるバリン又はイソロイシンが結合されたFV(フルクトース-バリン(fructose-valine))及びFL(フルクトース-イソロイシン(fructose-isoleucine))化合物による筋細胞死の抑制を確認した。実験は、エルダーベリー抽出物の代わりに、FL、FV、又はFIを、2.5、5、10、20μg/mlの濃度で処理した以外は、上記実験例1-2と同様な方法及び条件で行われた。このとき、対照群として、ロイシン、バリン、イソロイシン、トリプトファン、アルギニン、チロシン、グリシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、又はトレオニンを使用した。FL、FV、又はFLで処理したものから細胞生存率を計算した結果を
図4に、アミノ酸で処理したものから細胞生存率を計算した結果を
図5及び6に示す。
【0085】
図4に示されるように、デキサメタゾンにより減少した細胞生存率が、FL、FV、又はFIにより有意に回復した。これに対し、
図5及び6に示されるように、アミノ酸の処理では細胞生存率が回復しなかった。
【0086】
実験例2.炎症性サイトカイン発現抑制
上記で製造されたエルダーベリー抽出物、並びに単糖類及びBCAAが結合された化合物が炎症性サイトカインの発現を抑制するかを、次のような方法で確認した。
【0087】
2-1.エルダーベリー抽出物のTNFα発現抑制
上記実験例1-2と同様にしてエルダーベリー抽出物処理が施された細胞にトリプシン処理して細胞だけを回収した。回収された細胞を3,000rpmで5分間遠心分離して上層液を除去し、RiboEx
TM(GeneAll社製、韓国)及びHybrid-R
TM(GeneAll社製、韓国)を順に処理して全RNAを抽出した。抽出されたRNA濃度は、ナノドロップ(nanodrop)方法を用いて測定し、これを鋳型としてcDNAを合成した。cDNAは、RNA、オリゴ-(dT)プライマー、及び2×HyperScript
TM RT Master Mix(GeneAll社製、韓国)を混合した混合物を用いて合成した。次に、合成されたcDNAを鋳型としてPower SYBR
TM Green PCR Master Mixを用いて通常の条件でリアルタイムPCR(qPCR)を行い、TNFαの発現を確認した。TNFαのmRNAの発現レベルを確認した結果のグラフを
図7に示す。
【0088】
図7に示されるように、デキサメタゾンにより増加したTNFαの発現レベルが、エルダーベリー抽出物の処理により有意に抑制された。
【0089】
2-2.単糖類及びアミノ酸結合化合物のTNFα発現抑制
上記実験例1-3と同様にしてFL、FV、又はFI処理が施された細胞にトリプシン処理して細胞だけを回収し、実験例2-1と同様な条件及び方法でTNFαの発現レベルを確認した結果のグラフを
図8に示す。
【0090】
図8に示されるように、デキサメタゾンにより増加したTNFαの発現レベルが、FL、FV、又はFIの処理により有意に抑制された。
【0091】
従って、上述のような結果から、直接筋消耗を誘発する炎症性サイトカインの発現が、エルダーベリー抽出物、並びに単糖類及びアミノ酸結合化合物により有意に抑制され、これらの成分が炎症性サイトカインによって誘発される筋細胞の死滅を抑制することが分かった。
【0092】
実験例3.男性ホルモン分泌促進
上記で製造されたエルダーベリー抽出物、並びに単糖類及びBCAAが結合された化合物が、男性ホルモンであるテストステロン(testosterone)による筋肉減少を抑制するかを、ELISA分析法で次のように確認した。
【0093】
まず、マウスのライディッヒ細胞(leydig cell)であるTM3細胞株(ATCC、米国)を常法で培養した。培養された細胞株に、500μMの過酸化水素(H
2O
2)を6時間処理し、12.5、25、50、100μg/mlのエルダーベリー熱水抽出物、又は1.25、2.5、5、10μg/mlのFLを添加した。次に、上記細胞培養液を用いて常法でELISAを行い、テストステロンのレベルを確認した結果を
図9に示す。
【0094】
図9に示されるように、過酸化水素により抑制されたテストステロンの濃度がエルダーベリー熱水抽出物又はFLにより有意に回復した。
【0095】
実験例4.筋タンパク質発現抑制
上記で製造されたエルダーベリー抽出物、並びに単糖類及びBCAAが結合された化合物が、筋タンパク質の発現を抑制するかを、qPCR方法で確認した。具体的には、筋タンパク質としては、筋萎縮マーカーであるMuRF-1(muscle RING-finger protein-1)及びアトロジン-1(atrogin-1)、骨格筋量の陰性調節因子であるミオスタチン(myostatin)タンパク質を使用した。
【0096】
4-1.エルダーベリー抽出物の筋タンパク質発現抑制
実験例1-2に記載したように、エルダーベリー熱水抽出物、50%エタノール抽出物、又は100%エタノール抽出物の処理が施された細胞を用いて、上記のようにqPCRを行った。MuRF-1、アトロジン-1、及びミオスタチンのmRNAの発現程度を確認した結果のグラフを
図10~12に示す。
【0097】
図10~12に示されるように、デキサメタゾンにより増加したMuRF-1、アトロジン-1、及びミオスタチンのmRNAの発現レベルが、エルダーベリー抽出物により著しく減少した。
【0098】
4-2.単糖類及びアミノ酸結合化合物の筋タンパク質発現抑制
実験例1-3に記載したように、FL、FV、又はFL処理が施された細胞を用いて上記のようにqPCRを行った。MuRF-1、アトロジン-1、及びミオスタチンのmRNAの発現程度を確認した結果のグラフを
図10~12に示す。
【0099】
図10~12に示されるように、デキサメタゾンにより増加したMuRF-1、アトロジン-1、及びミオスタチンのmRNAの発現レベルが、FL、FV、又はFIにより著しく減少した。
【0100】
従って、上述のような結果から、エルダーベリー抽出物、又は単糖類及びアミノ酸結合化合物が、筋萎縮マーカー及びミオスタチンの発現を抑制することで筋肉減少症の治療効果が得られることが分かった。
【0101】
実験例5.筋肉減少症の動物モデルでの効果確認
上記で製造されたエルダーベリー抽出物、並びに単糖類及びBCAAが結合された化合物の筋肉減少症治療効果を、筋肉減少症の動物モデルを用いて確認した。
【0102】
具体的には、7週齢の雄性C57BL/6マウス(Samtako Bio Korea社製、韓国)を順応させた後、DXA(デュアルエネルギーX線吸光光度法(dual-energy-X-ray absorptionmetry))撮影によって、体重(g)、除脂肪体重(lean body weight、g)、脂肪の重さ(g)、及び体脂肪率(%)を測定した。上記測定値を考慮して、7匹ずつ群分けし、群分けしたマウスに、20mg/kgのデキサメタゾンを1日に1回、腹腔内注射で14日間投与し、筋肉減少症を誘導した(
図13)。また、デキサメタゾンを投与しながら300mg/kgのエルダーベリー熱水抽出物又は0.5mg/kgのFLを、1日に1回、経口投与した。このとき、対照群としては、投与0日目のマウス(正常マウス)を使用した。投与7日目及び14日目に、マウスをDXA撮影して体重、除脂肪体重、脂肪の重さ、及び体脂肪率を測定した結果を
図14、表2及び3に示す。また、投与14日目にマウスを通常の方法で犠牲にして胸腺、脾臓、肝臓、及び筋肉を摘出し、その重さを測定した結果を表4に示す。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
図14、表2及び3に示されるように、デキサメタゾンによりマウスの体重、除脂肪体重、組織面積が有意に減少したが、これは、エルダーベリー熱水抽出物又はFLの投与により回復した。また、各組織の重さもデキサメタゾンにより減少したが、エルダーベリー熱水抽出物又はFLの投与により、正常対照群とほぼ同じ水準まで回復した。
従って、上記のような結果から、エルダーベリー抽出物、又は単糖類及びアミノ酸結合化合物が、筋肉減少症の治療に有効であることが分かった。
【国際調査報告】