IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北京藍晶微生物科技有限公司の特許一覧

特表2024-541371ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/625 20220101AFI20241031BHJP
【FI】
C12P7/625 ZBP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528548
(86)(22)【出願日】2023-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 CN2023093510
(87)【国際公開番号】W WO2023236718
(87)【国際公開日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】202210635146.8
(32)【優先日】2022-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521480950
【氏名又は名称】上海藍晶微生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Bluepha Microbiology Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Building 1, No.351 Yuexiu Road, Hongkou District, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】汪東升
(72)【発明者】
【氏名】馬文彦
(72)【発明者】
【氏名】呉雅▲クン▼
(72)【発明者】
【氏名】張進城
(72)【発明者】
【氏名】王杰鵬
(72)【発明者】
【氏名】孫強
(72)【発明者】
【氏名】曹▲ユー▼
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AD83
4B064CA01
4B064CC30
4B064CE02
4B064CE03
4B064DA16
4B064DA20
(57)【要約】
本発明は、バイオエンジニアリングの技術分野に関するものであり、具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法に関するものである。本発明が提供するポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を乱流状態に到達させて維持することにより、ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させるステップを含む。本発明の製造方法によれば、粒子径50μm以上のポリヒドロキシアルカノエート凝集体を製造でき、かつ製造したポリヒドロキシアルカノエート凝集体は、比較的に高い純度および収率を有する。また、当該方法は、工程条件が温和でありながら、ステップが簡単で、廃水の処理も簡単であり、コストが低く、装置に対する要求も低く、大規模の工業生産を実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を乱流状態に到達させて維持することで、ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させるステップを含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項2】
前記乱流状態は、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のレイノルズ数が、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液が配置されている装置において乱流に到達する臨界レイノルズ数を超えたときの状態であり、
好ましくは、前記装置は反応器であり、前記乱流状態は、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のレイノルズ数が1000を超えたときの状態であり、
あるいは、前記装置はパイプであり、前記乱流状態は、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のレイノルズ数が4000を超えたときの状態である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液において、ポリヒドロキシアルカノエート粒子の窒素含有量は7000ppm未満であり、懸濁液上清の窒素含有量は3000ppm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液は、ポリヒドロキシアルカノエートの生物学的発酵液を原料として、細胞破砕、固液分離を経て、ポリヒドロキシアルカノエートの沈殿物を収集し、さらに水で懸濁させることによって得られたものであり、
好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液において、ポリヒドロキシアルカノエートの含有量は20g/L以上である
ことを特徴とする請求項3に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項5】
乱流状態を維持する過程において、同時にポリヒドロキシアルカノエート懸濁液の温度を20℃以上に維持することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項6】
前記方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液における不純物を酵素で除去するステップをさらに含み、
好ましくは、前記酵素は、タンパク質分解酵素、脂質類分解酵素、細胞壁分解酵素、DNA分解酵素から選ばれる1種または複数種である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項7】
前記方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液における不純物を界面活性剤で除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項8】
前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液における不純物を除去するステップとポリヒドロキシアルカノエートの凝集を同じ反応系において行うことを特徴とする請求項6または7に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項9】
ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させる反応系に、有機溶媒を含まないことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法によって製造されたポリヒドロキシアルカノエート凝集体であって、
好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径は5μm以上であり、
より好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径は50μm以上である
ことを特徴とする、前記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2022年06月06日に提出された、発明の名称が「ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法」である中国特許出願第202210635146.8号の優先権を主張し、当該出願のすべての内容を引用により、本願に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明はバイオエンジニアリングの技術分野に関するものであり、具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoates、「PHA」と略す)は、炭素源が過剰でありながら、その他の栄養が制限されている条件下で微生物が合成する粒子状貯蔵物質であり、生体高分子ポリエステル化合物の一種である。PHAは、一般的な熱可塑性プラスチックの特性を有するが、従来の石油化学工業プラスチックと違って、良好な生体適合性、分解性、圧電性および光学活性を備えるため、工業、農業、医療保健、食品等の分野において幅広く応用される見込みがある。現在、分解性農業用マルチフィルム分野、分解性プラスチック用品および医療分野において、PHAはもっとも優れる生分解性材料として、すでに巨大な可能性を示している。
【0004】
一般的に、微生物によって生産されるPHAは、封入体として微生物の細胞中に蓄積されるため、細胞内部のPHA粒子を分離して回収する必要がある。PHA粒子は、プラスチックの製造に適用される場合、良好な加工性能を有することが求められるため、できる限り無機塩又は細胞溶解物等の不純物による影響を減らすために、PHA粒子の純度に対する要求も高い。
【0005】
しかし、微生物の細胞内成分はかなり複雑であるため、PHAの抽出はかなり難しいものである。PHAの発展における長い過程において、研究者らは、その抽出方法について多くの検討を行ってきた。既存の抽出プロセスには、有機溶媒抽出法、機械的破砕法、次亜塩素酸ナトリウム-界面活性剤法、酵素法等が含まれる。そのうち、有機溶媒抽出法のデメリットは、溶媒の回収が困難であり、生産環境も危険で、実験室での抽出のみに適することにある。機械的破砕法は、主に超音波破砕または高圧均質破砕を含み、エネルギー消費が大きく、生産規模の拡大が難しい。次亜塩素酸ナトリウム-界面活性剤法のデメリットは、次亜塩素酸ナトリウムの刺激性が強く、作業環境が劣悪であり、PHAの分子量に対するダメージが厳重で、界面活性剤を含む廃水の処理が難しいことにある。酵素法のデメリットは、複数種の高価な酵素類が必要とされ、コストが非常に高いことにある。上記方法に存在する様々な課題のため、PHAの工業生産が妨げられている。
【0006】
PHAを含む微生物細胞を破砕してPHA懸濁液を得、PHA懸濁液からPHA粒子を回収する場合、PHA粒子が小さすぎるため、ろ過または遠心分離によってPHA粒子を得ることができないという課題が存在する。従来技術として、分離しやすいようにPHA粒子の粒子径を大きくする方法がいくつか開示されているが、いずれも異なるデメリットがあり、具体的には、以下の通りである。
【0007】
公開番号がEP1609868B1である特許文献では、微生物細胞から高純度のポリヒドロキシアルカノエートを収集する方法が開示されており、当該方法は、PHAを含む微生物細胞の水性懸濁液において、物理的破砕処理と低温でのアルカリ添加を行うことで、効果的に細胞を破壊してPHAを回収した後、酵素および/または界面活性剤を用いてPHAを処理し、次いで、親水性溶媒によってPHA粒子を洗浄して脱脂を行い、除臭および脱色をした後、加熱および攪拌により、PHA粒子を凝集させ、その後、吸引ろ過および乾燥を行うことを含む。当該方法は、反応条件が温和でありながら収率も高いが、大量の有機溶媒を利用してPHA粒子を洗浄する必要があるため、下流の廃水処理が困難であり、かつ防爆作業場と防爆装置を必要とし、工業生産が困難である。
【0008】
公開番号がEP2357247B1である特許文献では、ポリ-3-ヒドロキシアルカノエートの製造方法が開示されており、当該方法は、PHAを含む微生物細胞の水性懸濁液において、物理的破砕処理と低温でのアルカリ添加を行うことで、効果的に細胞を破壊してPHAを回収した後、酵素および/または界面活性剤を用いてPHAを処理し、次いで、大量の水でPHA粒子を洗浄し、ポリ-3-ヒドロキシアルカノエートを含む水性懸濁液における有機窒素の含有量を、ポリ-3-ヒドロキシアルカン酸の単位重量あたり1500ppm未満に調整し、加熱および攪拌によりPHA粒子を凝集させ、その後、吸引ろ過および乾燥を行うことを含む。当該方法は、反応条件が温和でありながら収率も高いが、大量の水を用いて、遠心によって粒子を洗浄する必要があるため、製造過程において大量の廃水が発生し、下流の廃水処理の難易度が高い。
【0009】
公開番号がEP3027761B1である特許文献では、細胞培養物からポリヒドロキシアルカノエートを回収して精製する方法が開示されており、細胞培養物からPHAを回収して精製する方法は、細胞培養物を酸化して、細胞を物理的に破砕することで、PHA懸濁液を得ること、PHA懸濁液をpHが8以上となるようにアルカリ化して希釈させた後、タンジェンシャルフローろ過を行うこと、PHA懸濁液を漂白して希釈させ、再度タンジェンシャルフローろ過を行った後、乾燥させて最終製品を得ることを含む。当該方法は、有機溶媒を使用せずに連続的に実施することができ、そして、分子量を低減させることなく、純粋な物質としてPHAを得ることができるが、PHA粒子が小さいため、タンジェンシャルフローろ過の際に装置が詰りやすく、凝集剤として、酸化カルシウム、硫酸アルミニウム、リン酸およびその混合物を添加することにより、PHA粒子を凝集させ、PHA粒子の粒子径を大きくする必要がある。凝集剤によって得られる粒子の強度は必ずしも高いものではなく、そして金属塩及び残った細胞破片によってPHA重合体が汚染されることがあるため、最終製品となるPHAの純度が低下し、下流での材料加工が難しい。
【0010】
公開番号がUS9683076B2である特許文献では、PHA懸濁液を噴霧乾燥することによりPHA粒子を得ることができるが、噴霧乾燥はエネルギー消費が大きく、かつ懸濁液に残った無機塩および細胞分解物がPHA粒子に混合されるため、最終製品となるPHAの純度が低下し、下流での材料加工が難しい。
【0011】
前記のように、従来技術によって開示された方法は、大量な有機溶媒または水を使用してPHA粒子を洗浄する必要があったり、最終製品の純度を下げるために凝集剤を使用する必要があったり、工程が複雑で、生産コストが高い等の課題が存在する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法及び当該方法によって製造されたポリヒドロキシアルカノエート凝集体を提供することを目的とする。
【0013】
従来技術によって開示された、ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させることで、その粒子径を大きくする方法に存在する、ポリヒドロキシアルカノエート粒子を凝集させるために大量な有機溶媒または水を使用する必要があり、エネルギー消費が高く、工程が複雑である等の課題を解決するために、本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートの凝集過程について大量な検討を行った。本発明は、研究開発の過程において、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液が乱流状態にあることが、ポリヒドロキシアルカノエート粒子の凝集を促進する重要な要素であることを意外にも見出した。具体的には、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液におけるポリヒドロキシアルカノエート粒子に対して洗浄を行わなかった場合、低回転速度で攪拌しても、ひいては、渦状態に達してもポリヒドロキシアルカノエートの凝集を実現しにくいが、乱流状態に達すると、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液におけるポリヒドロキシアルカノエートは、急速に自発的に凝集し始め、粒子径も明らかに大きくなり、比較的に短い期間内に大きな粒子径を有するポリヒドロキシアルカノエート凝集体を得ることができる。従来技術によって開示された凝集方法も、攪拌について言及しているが、その凝集工程および結果から見れば、これらの方法で使用された攪拌によって、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液が乱流状態に達したことはなく、そして、今まで、ポリヒドロキシアルカノエート凝集に対する乱流状態の重要性を発見した従来技術はなかった。
【0014】
上記の知見に基づいて、本発明は以下の実施態様を提供する。
【0015】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法を提供し、前記方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を乱流状態に到達させて維持することで、ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させるステップを含む。
【0016】
上記の乱流状態は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のレイノルズ数が、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液が配置されている装置において乱流に到達する臨界レイノルズ数を超えたときの状態である。
【0017】
上記の乱流状態は、反応器において行われてもよく、パイプにおいて行われてもよいものである。
【0018】
反応器を例として、反応器におけるレイノルズ数の計算式は以下の通りである。
【0019】
【数1】
式中、Dは、タービン直径(m)であり、Nは、攪拌機の回転速度(r/s)であり、ρは、原料液の密度(kg/m)であり、μは、原料液の粘度(N.s/m)である。
【0020】
また、パイプにおいて乱流を行う場合、レイノルズ数の計算式は、Re=ρvd/μである。
【0021】
式中、vは、流体の流速(m/s)であり、ρは、原料液の密度(kg/m)であり、μは、原料液の粘度(N.s/m)であり、dは、代表長さである。
【0022】
好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液が配置されている装置が反応器である場合、乱流状態は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のレイノルズ数が1000を超えたときの懸濁液の状態である。
【0023】
また、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液が配置されている装置がパイプである場合、乱流状態は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のレイノルズ数が4000を超えたときの懸濁液の状態である。
【0024】
本発明のいくつかの実施態様において、ポリヒドロキシアルカノエートの凝集は、反応器において行われ、前記乱流状態のレイノルズ数は、1000を超え、好ましくは1200を超え、より好ましくは4000を超える。
【0025】
反応器について、本発明では特に制限されず、原料液を乱流状態とすることができる任意の装置であってもよい。
【0026】
本発明のいくつかの実施態様において、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を継続的に攪拌することで、懸濁液を乱流状態に到達させて維持する。
【0027】
ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液について、それにおけるポリヒドロキシアルカノエート粒子の窒素含有量が7000ppm未満(単位質量あたりのポリヒドロキシアルカノエートに対し)であり、懸濁液上清の窒素含有量が3000ppm未満(単位質量あたりの懸濁液上清に対し)であることが好ましい。
【0028】
上記のポリヒドロキシアルカノエート粒子および懸濁液上清の窒素含有量の測定方法は以下の通りである。ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を、10000rpmで5min遠心し、その上清を懸濁液上清とし、沈殿物を水で2回洗浄して乾燥させた後、ポリヒドロキシアルカノエート粒子を得、懸濁液上清およびポリヒドロキシアルカノエート粒子の窒素含有量をそれぞれ測定する。
【0029】
ポリヒドロキシアルカノエート粒子、懸濁液上清の窒素含有量が上記目標値を超えると、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の生成が明らかに抑制され、ひいては、凝集体が形成されず、あるいは最終製品の不純物含有量が高すぎるものとなり、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の純度が下がる。
【0030】
上記のポリヒドロキシアルカノエート懸濁液は、ポリヒドロキシアルカノエートの生物学的発酵液を原料として、細胞破砕、固液分離を経て、ポリヒドロキシアルカノエートの沈殿物を収集し、さらに水で懸濁させることによって得られたものである。
【0031】
上記の生物学的発酵液は、発酵によってポリヒドロキシアルカノエートを生成できる任意の生体を発酵培養して製造された、発酵に使用される生体を含有する発酵液である。
【0032】
生体は、細胞内にポリヒドロキシアルカノエートを蓄積できる生体であれば、いずれを使用してもよく、特に限定されない。好ましくは微生物であり、例えば、エロモナス属(Aeromonas)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、アゾトバクター属(Azotobacter)、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、ハロバクテリウム属(Halobacterium)、ノカルジア属(Nocardia)、ロドスピリルム属(Rhodospirillum)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ラルストニア属(Ralstonia)、ズーグレア属(Zoogloea)等の微生物が挙げられる。
【0033】
具体的には、エロモナス属として、例えば、エロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)等が挙げられ、アルカリゲネス属として、例えば、アルカリゲネス・リポリティカ(Alcaligenes lipolytica)、アルカリゲネス・レータス(Alcaligenes latus)等が挙げられ、ラルストニア属(Ralstonia)として、例えば、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)等が挙げられる。
【0034】
上記のポリヒドロキシアルカノエート懸濁液の製造過程において、細胞破砕の方法は、特に限定されず、細胞内にあるポリヒドロキシアルカノエートを放出できる方法であれば、いずれを使用してもよく、例えば、化学的方法、機械的方法、生物学的方法等を利用できる。
【0035】
本発明に係る凝集体の製造方法は、懸濁液の製造工程に対する要求が比較的に簡単であり、発酵液をアルカリ性となるように調節した後、機械的方法により細胞を破砕する方法で細胞内にあるポリヒドロキシアルカノエート粒子を放出させる手法を採用してもよい。
【0036】
本発明のいくつかの実施態様においては、発酵液のpHをアルカリ性(好ましくは10.5~11.5)となるように調節した後、1~3h放置し、さらに機械的方法により細胞を破砕する。
【0037】
固液分離の方法も、特に限定されず、ポリヒドロキシアルカノエートとポリヒドロキシアルカノエートでない物質とを分離できる方法であれば、いずれを使用してもよく、例えば、遠心方式、ろ過方式等を利用できる。そのうち、ポリヒドロキシアルカノエートでない物質には、細胞破片、タンパク質、核酸等の不純物が含まれるが、これらに限られるものではない。
【0038】
本発明では、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液におけるポリヒドロキシアルカノエートの濃度は特に限定されないが、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の生産量を高めようとすれば、比較的に濃度が高いポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を用いることは好ましい。
【0039】
本発明のいくつかの実施態様において、好ましくは、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液におけるポリヒドロキシアルカノエートの含有量は20g/L以上であり、より好ましくは50g/L以上である。
【0040】
本発明は、従来技術によって開示されたポリヒドロキシアルカノエートを凝集する方法と違って、凝集に用いられるポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のpHは特に制限されず、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液は酸性であってもよく、中性であってもよく、またはアルカリ性であってもよい。
【0041】
発酵液をアルカリ性となるように調節してから細胞を破砕して細胞内にあるポリヒドロキシアルカノエート粒子を放出させ、固液分離によりポリヒドロキシアルカノエートの沈殿物を収集し、水で懸濁させる方法を採用してポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を製造すると、再水和後の懸濁液のpHを調節する必要がなく、そのときの懸濁液のpHは8.5~10.5であり、当該懸濁液を直接ポリヒドロキシアルカノエートの凝集に使用することができる。ポリヒドロキシアルカノエートの凝集過程において、保持温度が20℃以上であることが、凝集の促進に有利である。
【0042】
好ましくは、乱流状態を維持する過程において、同時にポリヒドロキシアルカノエート懸濁液の温度を20℃以上に維持する。
【0043】
本発明のいくつかの実施態様においては、乱流状態を維持する過程において、同時にポリヒドロキシアルカノエート懸濁液の温度を30℃以上に維持する。
【0044】
本発明のいくつかの実施態様においては、乱流状態を維持する過程において、同時にポリヒドロキシアルカノエート懸濁液の温度を40℃以上に維持する。
【0045】
好ましくは、乱流状態を維持する過程において、同時にポリヒドロキシアルカノエート懸濁液の温度を20~70℃に維持し、20~40℃に維持することがより好ましい。
【0046】
上記の凝集体の製造方法において、乱流状態を維持する時間は、得ようとする凝集体の粒子径に応じて決定してもよく、所望のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径が大きいほど、必要な維持時間が長くなる。凝集過程において、凝集体の粒子径をモニタリングすることで、所望の粒子径に達した時に、凝集体を収集する。粒子径に対するモニタリングは、目視検査またはオンラインリアルタイム測定等の方式で行うことができる。
【0047】
ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径は、特に限定されず、工業上の分離に適した粒子径であればいずれであってもよく、より良好に工業上の固液分離に適するために、一般的に、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは50μm以上である。固液分離に適したポリヒドロキシアルカノエート凝集体を得るために、適切な粒子径を有するポリヒドロキシアルカノエート凝集体が得られるまで凝集させてから、固液分離によりポリヒドロキシアルカノエート凝集体を収集する。
【0048】
固液分離の方法は、特に制限されず、遠心、ろ過等の方法を含むが、これらに限られるものではない。
【0049】
一般的に、上記の凝集体の製造方法においては、0.1~3時間内にポリヒドロキシアルカノエート粒子の凝集が発生し、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径も明らかに大きくなる。乱流状態を維持する時間は40~180minであることが好ましい。
【0050】
本発明の方法によれば、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の平均粒子径が10μm以上、50μm以上、さらには、100μm以上である凝集体が得られる。粒子径の上限は、特に限定されないが、平均直径が5000μm以下であることが好ましく、3000μm以下であることがより好ましい。
【0051】
本発明のいくつかの実施態様において、前記凝集体の製造方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を原料として、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を攪拌することでポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を乱流状態に到達させて維持するとともに、温度を20℃以上に維持し、粒子径が大きくなったポリヒドロキシアルカノエート凝集体を得ることを含む。
【0052】
さらに、より良好に懸濁液における不純物を除去し、凝集体の形成を促進するために、前記凝集体の製造方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液における不純物を酵素で除去するステップをさらに含む。
【0053】
前記酵素は、ポリヒドロキシアルカノエート粒子の表面に付着したペプチドグリカン、脂質類、多糖類、核酸類などの不純物に対する処理に用いられるものであり、タンパク質分解酵素、脂質類分解酵素、細胞壁分解酵素、DNA分解酵素のうちの1種または複数種を含むが、これらに限られるものではない。具体的に使用する場合、上記酵素は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。酵素の供給源は、特に制限されないが、市販の酵素製剤または市販の洗浄用酵素洗浄剤等であってもよい。
【0054】
前記酵素の添加量は、酵素の種類及び活性に依存するものであり、特に限定されないが、コストを下げるために、酵素活性が10万~200万U/mLであり、酵素の添加量が0.001mL/L~10mL/L(ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液に対し)であるものを採用することが好ましい。
【0055】
凝集系に酵素を加え、不純物を除去する処理を行う場合、温度およびpHは、用いられる酵素の至適温度および至適pHに応じて調整でき、例えば、温度を20~70℃、pHを5~10に制御する。酵素の至適温度および至適pHは、当業者にとって公知常識に属するため、本発明ではその記述を割愛する。
【0056】
さらに好ましくは、凝集体の最終製品の品質(おもに製品の純度を指す)を保障し、下流の材料加工により適したものにするために、酵素を加えるとともに、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液における不純物を界面活性剤で除去し、PHA粒子の表面に付着した不純物をさらに除去することもできる。
【0057】
上記の界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、およびノニオン界面活性剤から選ばれる1種または複数種であり、アニオン界面活性剤であることが好ましい。
【0058】
界面活性剤の添加量は、特に限定されないが、好ましい添加量は1g/L~20g/L(ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液に対し)である。
【0059】
本発明のいくつかの実施態様において、前記界面活性剤はSDSであり、SDSの使用量は5~20g/Lであることが好ましい。
【0060】
本発明のいくつかの実施態様において、前記界面活性剤はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであり、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの使用量は2~10g/Lであることが好ましい。
【0061】
本発明の凝集体の製造方法は、従来技術によって開示された、酵素および/または界面活性剤で不純物を除去し、ポリヒドロキシアルカノエートを洗浄、分離した後、ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させる方法と違って、凝集と不純物の除去(酵素および/または界面活性剤による不純物の除去)を同じ反応系において行うことを実現でき、製造プロセスが大幅に簡略化されるとともに、廃液の発生も低減される。
【0062】
好ましくは、前記凝集体の製造方法において、上記のポリヒドロキシアルカノエート懸濁液における不純物を除去するステップとポリヒドロキシアルカノエートの凝集とを同じ反応系において行う。
【0063】
従来技術によって開示されたほとんどの方法は、有機溶媒を用いてポリヒドロキシアルカノエート粒子を洗浄してから凝集反応を行うもの、または、有機溶媒を含有する系において凝集反応を行うものである。これに対し、本発明に係る凝集体の製造方法は、有機溶媒を使用せずに洗浄を行うことと、有機溶媒を含有しない系において、ポリヒドロキシアルカノエートの凝集を効果的に行うことを実現できるものである。
【0064】
好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエートの凝集系には、有機溶媒が含まれていない。
【0065】
本発明のいくつかの実施態様において、前記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を原料として、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を攪拌することで、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を乱流状態に到達させ、酵素を加え、乱流状態を維持するとともに、温度を20℃以上に維持し、粒子径が大きくなったポリヒドロキシアルカノエート凝集体を得、目的とする粒子径に達した時に、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体を収集することを含む。
【0066】
本発明のいくつかの実施態様において、前記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を原料として、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を攪拌することで、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を乱流状態に到達させ、酵素および界面活性剤を加え、乱流状態を維持するとともに、温度を20℃以上に維持し、粒子径が大きくなったポリヒドロキシアルカノエト凝集体を得、目的とする粒子径に達した時に、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体を収集することを含む。
【0067】
ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の収集は、固液分離によって行うことができる。ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径が大きくなることにつれ、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の固液分離の難易度が明らかに低下し、工業生産上、装置費用を下げることができる。従って、固液分離の方法および装置は、特に限定されず、ろ過(プレートフレームフィルター、バスケットバッグフィルター等)または遠心(水平ねじ遠心分離機等)等の方法を利用してもよい。
【0068】
さらに、より徹底的にポリヒドロキシアルカノエート凝集体における不純物を除去するために、収集されたポリヒドロキシアルカノエート凝集体を洗浄してから固液分離を行い、洗浄されたポリヒドロキシアルカノエート凝集体を収集することが好ましい。
【0069】
本発明のいくつかの実施態様において、水で収集されたポリヒドロキシアルカノエート凝集体を洗浄した後、固液分離によりポリヒドロキシアルカノエート凝集体を収集する。
【0070】
上記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体に対して乾燥を行うことで、乾燥された凝集体を製造することができ、乾燥法は特に限定されず、常温換気乾燥、加熱換気乾燥等であってもよい。
【0071】
さらに、本発明は、上記のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法によって製造されたポリヒドロキシアルカノエート凝集体を提供する。
【0072】
前記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径は、5μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。
【0073】
本発明のいくつかの実施態様において、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径は、50~100μmである。
【0074】
本発明のいくつかの実施態様において、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径は、100~300μmである。
【0075】
本発明では、前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、各種のポリヒドロキシアルカノエート製品であってもよく、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)等を含むが、これらに限られるものではない。
【0076】
本発明の有益な效果は、少なくとも以下の通りである。本発明が提供するポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法によれば、工業固液分離装置に適するように、粒子径50μm以上のポリヒドロキシアルカノエート凝集体を製造でき、かつ製造したポリヒドロキシアルカノエート凝集体は、比較的に高い純度および収率を有する。また、当該方法は、工程条件が温和でありながら、ステップが簡単で、廃水の処理も簡単であり、コストが低く、装置に対する要求も低く、大規模の工業生産を実現することができる。
【0077】
具体的には、本発明に係る方法は、従来のポリヒドロキシアルカノエートの粒子径を大きくする方法と比べ、少なくとも以下のメリットを有する。
【0078】
1.本発明が提供するポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法は、製造過程においていずれの有機溶媒も使用せず、生産環境が簡単かつ安全であり、そして、製造したポリヒドロキシアルカノエート凝集体に有機溶媒が残留することはない。
【0079】
2.本発明が提供するポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法は、製造過程において無機塩を使用せず、また凝集剤を使用する必要もなく、効果的に製造上の試薬によるコストを低減できる。
【0080】
3.本発明が提供するポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法は、比較的に低い温度条件下でもポリヒドロキシアルカノエートの効率的な凝集を実現でき、高温での作業に依存せず、効果的にエネルギー消費を下げることができ、かつ抽出装置も簡単であり、コストを節約できる。
【0081】
4.本発明が提供するポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法は、ポリヒドロキシアルカノエート粒子を洗浄してから凝集を行う必要がなく、酵素分解による不純物の除去過程を凝集過程と同じ反応系において行うことができ、また、酵素分解によって不純物を除去してから凝集を行う必要がなく、製造工程を効果的に簡略化することができ、廃水の量も低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0083】
以下の実施例において、PHAの純度の測定方法は以下の通りである。
【0084】
乾燥後の被験試料30mgを取り、そこにエステル化液2mLおよびクロロホルム2mLを加え、100℃で4h加熱する。反応が終了した後、試料を室温まで冷却してから、脱イオン水1mLを加え、ボルテックスで振盪し、さらに、30~60min放置して分離させる。上層は水相であり、下層は有機相である。下層の有機相を1mL取り、島津製作所のガスクロマトグラフでガスクロマトグラフィー(GC)測定を行い、PHAの純度を算出する。ここで、エステル化液を調製する方法は、下記のとおりである。安息香酸0.5gを量り取って、メタノール485mLが入った試薬瓶に加え、濃硫酸15mLを取り、ゆっくりとメタノールが入った試薬瓶に注入して、均一に混合させ、エステル化液の調製を完成させる。
【0085】
窒素含有量を測定する方法は以下の通りである。GB/T-32019-2013における4.3の方法に準拠して、ケルダール窒素分析装置を用いて窒素含有量を測定する。
【0086】
PHA凝集体の粒子径を測定する方法は以下の通りである。LINKOPTIK INSTRUMENTS CO.,LTDのLT2100レーザ粒度分布測定装置を用いて粒子径を測定する。
【0087】
以下の実施例において使用されるPHA懸濁液の製造方法は、以下の通りである。PHA生産菌株を利用して発酵させた後、PHAを80%~85%含み、バイオマスが200~220g/Lである発酵液を得る。発酵液のpHを11に調節した後、2h維持し、機械的方法によって細胞を破砕する。カップ型遠心機(cup centrifuge)を用いて、10000rpmで5min遠心させた後、上清を捨て、水を加えて元の体積となるように再溶解させ、PHA懸濁液を得る。ここで、PHA含有量は163g/Lであり、PHA粒子の窒素含有量は6530ppmであり、上清における窒素含有量は2459ppmである。
【0088】
実施例1
本実施例は、PHA凝集体の製造方法を提供し、当該方法のステップは以下の通りである。PHA懸濁液を攪拌反応器に注ぎ、600r/minで攪拌し始め、40℃まで昇温させ、最終濃度8g/LのSDSおよび最終濃度1mL/Lの中性プロテアーゼを加え、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA凝集体の粒子径を測定した。
【0089】
ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は4944であり、十分な乱流状態に達した。
【0090】
上記方法において、精製段階におけるPHA粒子凝集時の粒子径変化状況は表1が示すとおりである。
【0091】
【表1】
【0092】
PHA凝集体の粒子径が100μm以上に増加した時点で、ブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行い、得られたろ過ケーキを再水和して、水で2回洗浄した後、ろ過し、送風式オーブンを用いて80℃で乾燥させた。測定したところ、PHAの純度は99.1%であり、収率は98.5%であった。
【0093】
実施例2
本実施例は、PHA凝集体の製造方法を提供し、当該方法のステップは以下の通りである。PHA懸濁液を攪拌反応器に注ぎ、150r/minで攪拌し始め、40℃まで昇温させ、最終濃度8g/LのSDSおよび最終濃度1mL/Lの中性プロテアーゼを加え、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA凝集体の粒子径を測定した。
【0094】
ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は1236であり、乱流状態に達した。
【0095】
上記方法において、精製段階におけるPHA粒子凝集時の粒子径変化情况は表2が示すとおりである。
【0096】
【表2】
【0097】
PHA凝集体の粒子径が100μm以上に増加した時点で、ブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行い、得られたろ過ケーキを再水和して、水で2回洗浄した後、ろ過し、送風式オーブンを用いて80℃で乾燥させた。測定したところ、PHAの純度は99.2%であり、収率は98.4%であった。
【0098】
実施例3
本実施例は、PHA凝集体の製造方法を提供し、当該方法のステップは以下の通りである。PHA懸濁液を攪拌反応器に注ぎ、150r/minで攪拌し始め、40℃まで昇温させ、最終濃度8g/LのSDSおよび最終濃度1mL/Lのパパインを加え、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA凝集体の粒子径を測定した。
【0099】
ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は1236であり、乱流状態に達した。
【0100】
上記方法において、精製段階におけるPHA粒子凝集時の粒子径変化情况は表3が示すとおりである。
【0101】
【表3】
【0102】
PHA凝集体の粒子径が100μm以上に増加した時点で、ブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行い、得られたろ過ケーキを再水和して、水で2回洗浄した後、ろ過し、送風式オーブンを用いて80℃で乾燥させた。測定したところ、PHAの純度は98.4%であり、収率は98.3%であった。
【0103】
実施例4
本実施例は、PHA凝集体の製造方法を提供し、当該方法のステップは以下の通りである。PHA懸濁液を攪拌反応器に注ぎ、150r/minで攪拌し始め、40℃まで昇温させ、最終濃度10g/LのSDSおよび最終濃度0.5mL/Lのパパインを加え、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA凝集体の粒子径を測定した。
【0104】
ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は1236であり、乱流状態に達した。
【0105】
上記方法において、精製段階におけるPHA粒子凝集時の粒子径変化情况は表4が示すとおりである。
【0106】
【表4】
【0107】
PHA凝集体の粒子径が100μm以上に増加した時点で、ブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行い、得られたろ過ケーキを再水和して、水で2回洗浄した後、ろ過し、送風式オーブンを用いて80℃で乾燥させた。測定したところ、PHAの純度は98.7%であり、収率は98.4%であった。
【0108】
実施例5
本実施例は、PHA凝集体の製造方法を提供し、当該方法のステップは以下の通りである。PHA懸濁液を反応器に注ぎ、150r/minで攪拌し始め、40℃まで昇温させ、最終濃度4g/Lのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび最終濃度0.8mL/Lの中性プロテアーゼを加え、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA凝集体の粒子径を測定した。
【0109】
ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は1236であり、乱流状態に達した。
【0110】
上記方法において、精製段階におけるPHA粒子凝集時の粒子径変化情况は表5が示すとおりである。
【0111】
【表5】
【0112】
PHA凝集体の粒子径が100μm以上に増加した時点で、ブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行い、得られたろ過ケーキを再水和して、水で2回洗浄した後、ろ過し、送風式オーブンを用いて80℃で乾燥させた。測定したところ、PHAの純度は98.6%であり、収率は98.5%であった。
【0113】
実施例6
本実施例は、PHA凝集体の製造方法を提供し、当該方法のステップは以下の通りである。PHA懸濁液を反応器に注ぎ、150r/minで攪拌し始め、20℃の温度で、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA凝集体の粒子径を測定した。
【0114】
ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は1236であり、乱流状態に達した。
【0115】
上記方法において、精製段階におけるPHA粒子凝集時の粒子径変化情况は表6が示すとおりである。
【0116】
【表6】
【0117】
PHA凝集体の粒子径が50μm以上に増加した時点で、ブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行い、得られたろ過ケーキを再水和して、水で2回洗浄した後、ろ過し、送風式オーブンを用いて80℃で乾燥させた。測定したところ、PHAの純度は94.6%であり、収率は87.3%であった。
【0118】
実施例7
本実施例は、PHA凝集体の製造方法を提供し、当該方法のステップは以下の通りである。PHA懸濁液を攪拌反応器に注ぎ、600r/minで攪拌し始め、40℃まで昇温させ、最終濃度1mL/Lの中性プロテアーゼを加え、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA凝集体の粒子径を測定した。
【0119】
ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は4944であり、十分な乱流状態に達した。
【0120】
上記方法において、精製段階におけるPHA粒子凝集時の粒子径変化情况は表7が示すとおりである。
【0121】
【表7】
【0122】
PHA凝集体の粒子径が100μm以上に増加した時点で、ブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行い、得られたろ過ケーキを再水和して、水で2回洗浄した後、ろ過し、送風式オーブンを用いて80℃で乾燥させた。測定したところ、PHAの純度は97.1%であり、収率は98.3%であった。
【0123】
実施例8
本実施例は、PHA凝集体の製造方法を提供し、当該方法のステップは以下の通りである。実施例1で使用したPHA懸濁液に2倍体積の水を加えて希釈することで、懸濁液におけるPHAの含有量を約50g/Lとし、攪拌反応器に注ぎ、600r/minで攪拌し始め、40℃まで昇温させ、最終濃度8g/LのSDSおよび最終濃度1mL/Lの中性プロテアーゼを加え、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA凝集体の粒子径を測定した。
【0124】
ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は4944であり、十分な乱流状態に達した。
【0125】
上記方法において、精製段階におけるPHA粒子凝集時の粒子径変化情况は表8が示すとおりである。
【0126】
【表8】
【0127】
PHA凝集体の粒子径が50μm以上に増加した時点で、ブフナー漏斗を用いて吸引ろ過を行い、得られたろ過ケーキを再水和して、水で2回洗浄した後、ろ過し、送風式オーブンを用いて80℃で乾燥させた。測定したところ、PHAの純度は99.1%であり、収率は97.4%であった。
【0128】
比較例1
PHA懸濁液(PHA懸濁液は実施例1と同じものである)を攪拌反応器に注ぎ、100r/minで攪拌し始め、40℃まで昇温させ、最終濃度8g/LのSDSおよび最終濃度1mL/Lの中性プロテアーゼを加え、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA凝集体の粒子径を測定した。
【0129】
ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は824であり、乱流状態に達していなかった。
【0130】
精製段階におけるPHA粒子の粒子径変化情况は表9が示すとおりである。その結果、精製を3h以上維持したにもかかわらず、PHAの粒子径は顕著に増加しなかった。
【0131】
【表9】
【0132】
比較例2
PHA懸濁液(PHA懸濁液は実施例1と同じものである)を攪拌反応器に注ぎ、100r/minで攪拌し始め、20℃の温度で、精製反応を開始させた。この期間において、粒子径が大きくならなくなるまで、10minごとにPHA粒子の粒子径を測定した。ここで、タービン直径は6cmであり、原料液の粘度は0.0075N.s/mであり、原料液の密度は1030kg/mである。レイノルズ数の計算式によれば、攪拌開始後の反応器における原料液のレイノルズ数は824であり、乱流状態に達していなかった。
【0133】
精製段階におけるPHA粒子の粒子径変化状況は表10が示すとおりである。その結果、3h以上精製したにもかかわらず、PHA粒子の粒子径は増加しなかった。
【0134】
【表10】
【0135】
上記では、一般的な説明及び具体的な実施態様を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明を基にいくつかの修正または改進を行ってもよいことは、当業者にとって自明である。よって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で行われたこれらの修正または改進はいずれも本発明の保護範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法を提供する。本発明が提供するポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を乱流状態に到達させて維持することにより、ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させるステップを含む。本発明の製造方法によれば、粒子径50μm以上のポリヒドロキシアルカノエート凝集体を製造でき、かつ製造したポリヒドロキシアルカノエート凝集体は比較的に高い純度および収率を有する。また、当該方法は、工程条件が温和でありながら、ステップが簡単で、廃水の処理も簡単であり、コストが低く、装置に対する要求も低く、大規模の工業生産を実現することができ、比較的に良好な経済的価値および応用展望を有する。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液を乱流状態に到達させて維持することで、ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させるステップを含むことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項2】
前記乱流状態は、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のレイノルズ数が、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液が配置されている装置において乱流に到達する臨界レイノルズ数を超えたときの状態であり、
好ましくは、前記装置は反応器であり、前記乱流状態は、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のレイノルズ数が1000を超えたときの状態であり、
あるいは、前記装置はパイプであり、前記乱流状態は、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液のレイノルズ数が4000を超えたときの状態である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液において、ポリヒドロキシアルカノエート粒子の窒素含有量は7000ppm未満であり、懸濁液上清の窒素含有量は3000ppm未満であることを特徴とする請求項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液は、ポリヒドロキシアルカノエートの生物学的発酵液を原料として、細胞破砕、固液分離を経て、ポリヒドロキシアルカノエートの沈殿物を収集し、さらに水で懸濁させることによって得られたものであり、
好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液において、ポリヒドロキシアルカノエートの含有量は20g/L以上である
ことを特徴とする請求項3に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項5】
乱流状態を維持する過程において、同時にポリヒドロキシアルカノエート懸濁液の温度を20℃以上に維持することを特徴とする請求項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項6】
前記方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液における不純物を酵素で除去するステップをさらに含み、
好ましくは、前記酵素は、タンパク質分解酵素、脂質類分解酵素、細胞壁分解酵素、DNA分解酵素から選ばれる1種または複数種である
ことを特徴とする請求項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項7】
前記方法は、ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液における不純物を界面活性剤で除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項8】
前記ポリヒドロキシアルカノエート懸濁液における不純物を除去するステップとポリヒドロキシアルカノエートの凝集を同じ反応系において行うことを特徴とする請求項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項9】
ポリヒドロキシアルカノエートを凝集させる反応系に、有機溶媒を含まないことを特徴とする請求項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヒドロキシアルカノエート凝集体の製造方法によって製造されたポリヒドロキシアルカノエート凝集体であって、
好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径は5μm以上であり、
より好ましくは、前記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体の粒子径は50μm以上である
ことを特徴とする、前記ポリヒドロキシアルカノエート凝集体。
【国際調査報告】