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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】発泡物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CFF
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528574
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 CN2022129238
(87)【国際公開番号】W WO2023083069
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/130635
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チェンユー イェ
(72)【発明者】
【氏名】カトリン サルヴィチェク
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ベイユアン チュー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ゲアハルト ハーゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ウルス ヴェルツ-ビアマン
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA71B
4F074AA76B
4F074AA78
4F074AA98
4F074BA32
4F074BA86
4F074CA29
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA15
4F074DA38
4F074DA59
(57)【要約】
本開示は、発泡物品およびその製造方法に関する。該発泡物品は、ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンを提供する工程と、ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングしてブレンドを形成する工程と、ブレンドを成形してプリフォームを形成する工程と、プリフォームを発泡させて発泡物品を得る工程とを含む方法によって製造される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡物品であって、前記発泡物品は、
ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンを提供する工程と、
前記ポリエーテルブロックアミドおよび前記熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングしてブレンドを形成する工程と、
前記ブレンドを成形してプリフォームを形成する工程と、
前記プリフォームを発泡させて発泡物品を得る工程と
を含む方法によって製造され、前記熱可塑性ポリウレタンは、前記ブレンド中の重量パーセンテージが、22重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは18重量%未満である、発泡物品。
【請求項2】
前記発泡物品が、平均直径40μm~400μmのマイクロセル構造を有する、請求項1記載の発泡物品。
【請求項3】
前記マイクロセル構造が、厚さ1μm~20μmの壁を有する、請求項2記載の発泡物品。
【請求項4】
前記発泡物品が、0.12g/cm未満の密度、好ましくは0.1g/cm未満の密度、より好ましくは0.09g/cm未満の密度を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の発泡物品。
【請求項5】
前記ブレンドが、相容化剤またはコンパウンディング助剤を実質的に含まない、請求項1から4までのいずれか1項記載の発泡物品。
【請求項6】
前記発泡物品が、衣料品、履物、保護具、ストラップおよびそれらの構成要素からなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の発泡物品。
【請求項7】
前記発泡物品が、靴底である、請求項6記載の発泡物品。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の発泡物品の製造方法であって、前記方法は、
ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンを提供する工程と、
前記ポリエーテルブロックアミドおよび前記熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングしてブレンドを形成する工程と、
前記ブレンドを成形してプリフォームを形成する工程と、
前記プリフォームを発泡させる工程と、
発泡物品を得る工程と
を含み、前記熱可塑性ポリウレタンは、前記ブレンド中の重量パーセンテージが、22重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは18重量%未満である、方法。
【請求項9】
前記ポリエーテルブロックアミドおよび前記熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングする工程を、二軸押出機を使用して行う、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ブレンドを発泡させる工程が、前記プリフォームを超臨界ガスに浸漬することを含む、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記超臨界ガスが、超臨界窒素、超臨界二酸化炭素およびそれらの混合物から選択される1つ以上である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記プリフォームを発泡させる工程を、前記ブレンドの溶融温度よりも低い温度下で行う、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記プリフォームを発泡させる工程を、20℃~300℃、好ましくは60℃~250℃、より好ましくは80℃~200℃の温度下で行う、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記プリフォームを発泡させる工程を、20バール~500バール、好ましくは60バール~400バール、より好ましくは100バール~400バールの圧力下で行う、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記ブレンドを発泡させる工程を、オートクレーブ中で行う、請求項8から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡物品およびその製造方法に関する。
【0002】
背景
高分子軟質発泡体は、重量を減少させ、十分な柔軟性を提供するために、スポーツシューズの靴底集成体に広く適用されている。従来、プラスチック軟質発泡体は、化学発泡剤による化学反応によって生成されていたが、この化学発泡剤は、通常、危険物質であり、かつ/または好ましくない臭気を引き起こす。近年では、発泡剤としての超臨界状態ガスの使用がスポーツシューズの靴底製造に導入されている。この技術では、超臨界状態ガス、例えばN、COが物理的発泡剤として作用する。さらに、架橋剤を必要としないいくつかの先進的な超臨界状態ガス発泡技術によって熱可塑性発泡樹脂が製造されており、これにより、製造が環境に優しいものとなるだけでなく、熱可塑性発泡体の再生が可能であるため経済的にもなる。
【0003】
このような技術は、靴底用の軟質発泡体を製造するために様々な熱可塑性エラストマー、例えばポリエーテルブロックアミド(PEBA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、エチレン酢酸ビニル(EVA)に適用されてきた。上記のエラストマーから製造された発泡体のうち、PEBA発泡体およびTPU発泡体が際立った性能を示す。PEBA発泡体は、非常に低密度であり、高硬度で、かつ反発弾性に優れているため、ランニングシューズの靴底の候補となる。しかし、PEBA発泡体の引裂強度は満足できるものではない。PEBA発泡体に比べ、TPU発泡体は、高密度、低硬度、低反発弾性を示す。しかし、TPU発泡体の引裂強度は良好であることが多い。PEBA発泡体とTPU発泡体との双方からの望ましい性能の組み合わせが期待されている。
【0004】
高品質であるためには、均一に分散した安定したマイクロセル構造が必要であるが、PEBAとTPUの相容性が不十分であることから、こうした構造を両者のブレンドにより達成することは困難である。発泡後に、PEBAとTPUとの相分離が発生/悪化する。このブレンドにより、PEBA-TPUブレンド発泡体に望ましくない性能をもたらす積層構造が生じることが観察された。PEBAとTPUとの相容性は、ブレンド系に相容性補助剤を導入することで改善できるが、一般にこのような添加剤は、発泡体の色、硬度および/または密度を変化させるおそれがある。
【0005】
中国特許第108250734号明細書には、TPUとブロックポリエーテルアミドエラストマー精製物との混合物が記載されている。使用されたエラストマーPABAXの種類は不明である。得られた発泡体の密度は、0.176g/m以上である。
【0006】
欧州特許出願公開第3640287号明細書には、発泡体を製造するための、アミノ制御ポリエーテルブロックアミドとアクリレートとの混合物が記載されている。
【0007】
本開示の概要
本開示の1つの目的は、均一に混合されたポリエーテルブロックアミド熱可塑性ポリウレタンブレンドから製造された発泡物品であって、高い機械的硬度、低密度および良好な反発弾性を含む所望の性能を維持し得る発泡物品を提供することである。
【0008】
このような目的は、発泡物品であって、ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンを提供する工程と、ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディング(溶融混錬)してブレンドを形成する工程と、ブレンドを成形してプリフォームを形成する工程と、プリフォームを発泡させて発泡物品を得る工程とを含む方法によって製造される、発泡物品によって達成される。
【0009】
以下では、「コンパウンディング」という用語は、均一なブレンドを形成するために溶融状態で各成分を混合することを意味する。この定義によれば、ドライブレンディング、すなわち固相(通常はペレットの形態)の各成分を混合することは、コンパウンディングではない。
【0010】
本発明によれば、熱可塑性ポリウレタンは、ブレンド中の重量パーセンテージが、22重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは18重量%未満である。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、発泡物品は、平均直径40μm~400μmのマイクロセル構造を有する。直径は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって測定される。いくつかの実施形態によれば、マイクロセル構造は、厚さ1μm~20μmの壁を有する。厚さは、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって測定される。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、発泡物品は、0.12g/cm未満の密度、好ましくは0.1g/cm未満の密度、より好ましくは0.09g/cm未満の密度を有する。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、ブレンドは、相容化剤またはコンパウンディング助剤を実質的に含まない。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、発泡物品は、衣料品、履物、保護具、ストラップおよびそれらの構成要素からなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、発泡物品は、靴底である。
【0016】
本開示の別の観点は、発泡物品の製造方法であって、ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンを提供する工程と、ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングしてブレンドを形成する工程と、ブレンドを成形してプリフォームを形成する工程と、プリフォームを発泡させて発泡物品を得る工程とを含む方法を提供することである。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングする工程を、二軸押出機を使用して行う。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、ブレンドを発泡させる工程は、プリフォームを超臨界ガスに浸漬することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、超臨界ガスは、超臨界窒素、超臨界二酸化炭素およびそれらの混合物から選択される1つ以上である。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、ブレンドを発泡させる工程を、ブレンドの溶融温度よりも低い温度下で行う。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、超臨界ガスは、20℃~300℃、好ましくは60℃~250℃、より好ましくは80℃~200℃の温度下にある。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、超臨界ガスは、20バール~500バール、好ましくは60バール~400バール、より好ましくは100バール~400バールの圧力下にある。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、ブレンドを発泡させる工程を、オートクレーブ中で行う。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】コンパウンディングされたPEBA-TPU組成物から製造された発泡物品の写真を示す図である。
図2】ドライブレンドされたPEBA-TPU組成物から製造された発泡物品の2つの異なる方向の写真を示す図である。
図3】ドライブレンドされたPEBA-TPU組成物から製造された発泡物品の2つの異なる方向の写真を示す図である。
図4図1に示す発泡物品の走査型電子顕微鏡画像を示す図である。
図5図2および図3に示す発泡物品の走査型電子顕微鏡画像を示す図である。
図6図1に示す発泡物品の走査型電子顕微鏡画像を示す図である。
図7図2および図3に示す発泡物品の走査型電子顕微鏡画像を示す図である。
【0025】
詳細な説明
ポリエーテルブロックアミド(PEBA)は、(オリゴ)ポリアミド、特に酸制御ポリアミドと、アルコール末端またはアミノ末端ポリエーテルとの重縮合によって得られるブロックコポリマーである。酸制御ポリアミドは、カルボン酸末端基を過剰に有する。当業者は、ポリアミドブロックをハードブロックと呼び、ポリエーテルブロックをソフトブロックと呼ぶ。その製造は、原理的に知られている。独国特許出願公開第2712987号明細書(米国特許第4207410号明細書)には、10~12個の炭素原子を含むラクタム、ジカルボン酸およびポリエーテルジオールから構成されるこのタイプのポリアミドエラストマーが記載されている。この文献により得られる生成物は、低温でも持続的な柔軟性および延性が顕著であるが、中程度の層厚の成形品ではすでに混濁ないし不透明であり、室温で長期保存すると、カビのような外観を有する表面付着物ゆえに目立つ。6~20個の炭素原子を含むジアミン、脂肪族または芳香族ジカルボン酸およびポリエーテルジオールから構成される同様の構造のポリアミドエラストマーが、欧州特許第0095893号明細書から知られている。特徴的な特性は、耐熱変形性および柔軟性の向上である。この文献からは、成形品の透明性や付着物形成に関するデータは得られない。
【0026】
ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングしてブレンドを形成する。コンパウンディング方法では、強せん断力のミキサーを使用することができる。好ましいミキサーには、二軸押出機がある。
【0027】
コンパウンディング後、ポリマーブレンドを成形に供し、次いでプリフォームを形成する。プリフォームは、任意の成形方法またはプロセスで形成することができる。好ましいのは、圧縮成形、押出成形、共押出成形、ブロー成形、3Dブロー成形、共押出ブロー成形、共押出3Dブロー成形、共押出吸引ブロー成形、射出成形、ステレオリソグラフィ、デジタル光加工、連続液体界面製造、溶融フィラメント製造、シートラミネーション、選択的レーザー溶融などを含むプロセスである。より好ましいのは、押出成形および射出成形である。
【0028】
プリフォームを発泡プロセスに供して発泡物品を得る。
【0029】
好ましくは、ブレンドを発泡させる工程は、プリフォームを超臨界ガスに浸漬することを含む。既知の超臨界ガスには、超臨界窒素、超臨界二酸化炭素またはそれらの混合物が含まれる。
【0030】
プリフォームの発泡は、ブレンドが溶融または軟化しないように、ブレンドの溶融温度よりも低い温度下で行うことが好ましく、それによりプリフォームの形状が維持される。いくつかの実施形態では、発泡を、20℃~300℃、好ましくは60℃~250℃、より好ましくは80℃~200℃の温度下で行う。
【0031】
発泡プロセスを、加圧雰囲気下で行う。発泡を、20バール~500バール、好ましくは60バール~400バール、より好ましくは100バール~400バールの圧力下で行う。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、発泡プロセスを行うためにオートクレーブを使用する。「オートクレーブ」という用語は、周囲圧力に対して上昇した圧力下で加熱を行うことができる任意の装置を指す。その意味で、オートクレーブには、従来のオートクレーブ、高圧反応器、発泡成形型などが含まれ得る。
【0033】
[発泡体および発泡物品]
コンパウンディングされたPEBA-TPU組成物を発泡プロセスに供することができ、このプロセスでは、発泡剤、好ましくは物理発泡剤が組成物を発泡させる。発泡プロセスの最後に、発泡物品が形成される。発泡物品は、内部に分布した複数のマイクロセルを有することができ、これにより、発泡物品の密度は、未発泡組成物の密度に比べて非常に低くなる。発泡物品はまた、高い圧縮永久ひずみ率、良好なボール反発弾性、高いアスカーC硬さ値など、様々な用途で望まれる多数の機械的特性を発現することができる。圧縮永久ひずみ率は、40%未満となり得る。ボール反発弾性は、70%超となり得る。発泡物品は、約30~70、好ましくは約35~55のアスカーC硬さ値を有することができる。
【0034】
発泡物品は、衣料品、履物、保護具、ストラップおよびそれらの構成要素の形態で数多く使用することができる。特に好ましくは、発泡物品は、靴底とすることができる。
【0035】
[PEBA]
本明細書で使用されるPEBAは、好ましくは、6~14個の炭素原子を有する少なくとも1つのラクタムまたはα,ω-アミノカルボン酸から構成されるサブユニット1と、エーテル酸素1個当たり少なくとも2個の炭素原子および少なくとも2つの第一級アミノ基を有するか、またはエーテル酸素1個当たり少なくとも2個の炭素原子および鎖末端の少なくとも2個のヒドロキシ基を有する少なくとも1つのアミノ末端またはヒドロキシ末端ポリエーテルから構成されるサブユニット2とをベースとする。
【0036】
PEBAは当該技術分野で知られており、反応性末端を有するポリアミドブロックと反応性末端を有するポリエーテルブロックとの重縮合から生じる。ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックからPEBAを得ることが好ましい。サブユニット1は、ジカルボン酸、好ましくは直鎖脂肪族ジカルボン酸の存在下での、1つ以上のα,ω-アミノカルボン酸または1つ以上のラクタムの縮合から生じ得る。ジカルボン酸は、4~36個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を含むことができる。ジカルボン酸の例としては、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、さらには二量化脂肪酸を挙げることができる。PEBAおよびその製造方法は、例えば米国特許出願公開第2006/0189784号明細書に記載されている。
【0037】
成形用組成物のPEBAは、製造済みのものを使用することも、市場から入手することもできる。商業的には、ポリアミド部分としてのサブユニット1またはポリエーテル部分としてのサブユニット2が異なるPEBAを、例えばEvonik Resource Efficiency GmbHおよびArkema S.A.から購入することができる。
【0038】
[熱可塑性ポリウレタン]
本明細書で使用される熱可塑性ポリウレタンは、脂肪族または芳香族ポリイソシアネート、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリカーボネート結合をベースとするポリオール、および場合によっては短鎖ジオール(「鎖延長剤」と称される)から製造される種々のポリウレタンであってよい。
【0039】
熱可塑性ポリウレタンの脂肪族ポリイソシアネートは、任意の脂肪族ポリイソシアネートであってよい。例示的な脂肪族ポリイソシアネートとしては、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネートは、芳香環に少なくとも2つのイソシアネート基が結合したポリイソシアネートであってよい。例示的な芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジ(フェニルイソシアネート)(MDI)、およびナフタレンジイソシアネートの異性体が挙げられる。
【0040】
ポリエーテルポリオールは、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのジオールと反応させることによって製造することができる。例示的なポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラヒドロフラン)ジオールが挙げられる。ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸と過剰のジオールとの縮合、ジオールとポリエステル、例えばポリラクチドとの反応、またはジオールによるラクトンの開環によって製造することができる。例示的なポリエステルジオールとしては、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)ジオール、ポリラクチドジオール、およびポリカプロラクトンジオールが挙げられる。ポリカーボネートポリオールは、脂肪族カーボネートと1つ以上のジオールとの反応によって製造することができる。例示的なポリカーボネートジオールとしては、ポリ(プロピレンカーボネート)ジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、またはポリ(ポリテトラヒドロフランカーボネート)ジオールが挙げられる。
【0041】
熱可塑性ポリウレタンは、様々な製造業者、例えばBASF SE、Lubrizol、およびCovestro AGから商業的に購入することができる。
【0042】
以下、本開示を実施例および比較例により説明する。
【実施例
【0043】
参照例、実施例および比較例では、以下の材料を使用した:
Evonik Operations GmbHのVestamid(登録商標)E40-S3は、PA12セグメントおよびポリエーテルセグメントを含む低密度ポリエーテルブロックアミド(PEBA)ブロックポリマーである。Vestamid(登録商標)E40-S3のショアD硬さは40である。
【0044】
Evonik Operations GmbHのVestamid(登録商標)E55-S3は、PA12セグメントおよびポリエーテルセグメントを含む低密度ポリエーテルブロックアミド(PEBA)ブロックポリマーである。Vestamid(登録商標)E55-S3のショアD硬さは55である。
【0045】
BASF Polyurethanes GmbHのElastollan(登録商標)1180Aは、メチレンジフェニルジイソシアネート、数平均分子量(Mn)約1,000g/molのポリ(テトラヒドロフラン)、平均Mn約2,000g/molのポリ(テトラヒドロフラン)、およびブタンジオールをベースとする熱可塑性ポリウレタンである。Elastollan(登録商標)1180AのショアA硬さは80である。
【0046】
BASF Polyurethanes GmbHのElastollan(登録商標)1195 Aは、ポリエーテルをベースとする熱可塑性ポリウレタンである。Elastollan(登録商標)1195 AのショアA硬さは96である。
【0047】
Covestro GmbHのDesmopan(登録商標)DP 3695 AUは、C4エステルをベースとする熱可塑性ポリウレタンである。Desmopan(登録商標)DP 3695 AUのショアA硬さは95である。
【0048】
引張弾性率、降伏時引張応力、および破断時引張応力を、ISO 527に準拠して、Zwick Z020材料試験システムにより、温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%で、170mm×10mm×4mmのISO、タイプ1Aの引張試験片について測定した。
【0049】
ノッチ付き衝撃強さを、ISO 179/1eA(シャルピー)に準拠して、CEAST Resil Impactor 6967.000で、温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%で、両端を切断した80mm×10mm×4mmのISO 527、タイプ1Aの引張試験片について測定した。
【0050】
硬さ(ショアD)を、ISO 868に準拠してTime GroupショアD硬さ計TH210により、温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%で、170mm×10mm×4mmのISO 527、タイプ1Aの引張試験片について測定した。
【0051】
発泡物品の硬さ(アスカーC)を、JIS K 7312に準拠して、アスカーデュロメータタイプCにより測定した。
【0052】
ASTM D 3574に準拠して、発泡体試料を圧縮装置に入れて圧縮し、この試料の元の厚さの50%までたわませた。その後、この発泡体試料を50℃で22時間緩和させた。元の厚さおよび最終厚さをノギスで測定した。厚さの差を元の厚さで割って、圧縮永久ひずみ率を算出した。
【0053】
ボール反発弾性を、ASTM D 3574に準拠して、ボール反発弾性試験機を用いて、所与の高さから発泡体上に鋼球を垂直に落下させ、反発高さを測定することにより求めた。
【0054】
[本発明による例I1~I3]
17kgのPEBAおよび3kgのTPUをCoperion ZSK- 26cm共回転二軸押出機で混合し、排出し、ペレット化して、コンパウンディングされたPEBA-TPUペレットを得た。温度を220℃に設定し、スクリュー回転速度を毎分250回転(RPM)に設定した。コンパウンディングを、20kg/hの処理量で実施した。
【0055】
コンパウンディングされたペレット状のPEBA-TPU組成物を、射出成形機Engel VC 650/200(溶融温度220℃、金型温度35℃)で加工して、さらに発泡させるための靴底プリフォームを製造した。射出圧力および保持圧力は、それぞれ400バールおよび600バールであった。
【0056】
[比較例C1]
17kgのVestamid(登録商標)E40-S3および3kgのElastollan(登録商標)1180Aを、室温下でドラムフープミキサーを用いてドライブレンドした。ドライブレンドされたペレット状のPEBA-TPU組成物を、射出成形機Engel VC 650/200(溶融温度220℃、金型温度35℃)で加工して、さらに発泡させるための靴底プリフォームを製造した。射出圧力および保持圧力は、それぞれ400バールおよび600バールであった。
【0057】
[比較例C2]
15kgのVestamid(登録商標)E40-S3(PEBA)および5kgのElastollan(登録商標)1180A(TPU)をCoperion ZSK- 26cm共回転二軸押出機で混合し、排出し、ペレット化して、コンパウンディングされたPEBA-TPUペレットを得た。温度を220℃に設定し、スクリュー回転速度を毎分250回転(RPM)に設定した。コンパウンディングを、20kg/hの処理量で実施した。
【0058】
コンパウンディングされたペレット状のPEBA-TPU組成物を、射出成形機Engel VC 650/200(溶融温度220℃、金型温度35℃)で加工して、さらに発泡させるための靴底プリフォームを製造した。射出圧力および保持圧力は、それぞれ400バールおよび600バールであった。
【0059】
[比較例C3およびC4]
3kgのVestamid(登録商標)E55-S3(PEBA)および17kgのTPUをCoperion ZSK- 26cm共回転二軸押出機で混合し、排出し、ペレット化して、コンパウンディングされたPEBA-TPUペレットを得た。温度を220℃に設定し、スクリュー回転速度を毎分250回転(RPM)に設定した。コンパウンディングを、20kg/hの処理量で実施した。
【0060】
コンパウンディングされたペレット状のPEBA-TPU組成物を、射出成形機Engel VC 650/200(溶融温度220℃、金型温度35℃)で加工して、さらに発泡させるための靴底プリフォームを製造した。射出圧力および保持圧力は、それぞれ400バールおよび600バールであった。
【0061】
コンパウンディングされたPEBA-TPUペレットおよびドライブレンドされたPEBA-TPUペレットの機械的試験結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
次に、本発明による例および比較例で製造したプリフォームを、オートクレーブ内で超臨界COに浸漬した。オートクレーブ内の温度を140℃に設定した。オートクレーブ内の圧力を、初期段階で300バールに設定した。プリフォームにCO分子を浸み込ませ、その結果、プリフォームの重量が増加した。その後、オートクレーブおよびそのエンクロージャーを数時間にわたって冷却および減圧した。温度は最終的に室温(20℃)まで低下し、圧力は周囲圧力(約1バール)まで低下した。靴底の試験片は、体積が何倍にも膨張した。
【0064】
コンパウンディングされたPEBA-TPU組成物から、上記の超臨界発泡プロセス後に7つの発泡靴底(I1F~I3FおよびC1F~C4F)を製造した。発泡靴底I1F~I3Fは、I1Fについて図1に示すように、ほぼ元の外観を保持した均一な膨張形状を示した。発泡試験片の表面は滑らかできれいであり、視認可能な亀裂はなかった。ドライブレンドされた組成物からは、ポリマー成分の不均一な分散のためもあって、発泡靴底は満足に製造されなかった。ドライブレンドされた組成物から製造された試験片は、コンパウンディングによって製造された試験片とは対照的に、C1Fについて図2および図3に示すように、発泡プロセス後に異なる寸法に沿って異なって膨張し、これにより形状の制御が困難となった。発泡した部分は、中央部で著しくより膨張し、両端部ではさほど膨張しなかった。一方向では、試験片の中央部に明らかな膨らみが存在する。試験片の一方の表面にも、かなりしわ状のテクスチャがあり、分散した黄変を伴っていた。不均一な膨張およびいびつな表面により、ドライブレンドされた組成物は、高い表面品質および良好な形状制御を必要とする分野での実用には不向きであった。この不均一性は、発泡プロセス前のブレンド内でのポリマー成分の分散にむらがあることの結果である可能性がある。
【0065】
走査型電子顕微鏡法(SEM)により、図4から図7に示すように、発泡後に試料内部に多くのマイクロセルが形成されたことが明らかになった。コンパウンディングされたPEBA-TPU組成物から製造された試験片I1Fについては、マイクロセルの形状および直径はほぼ同様であった。それぞれ図4および図6に示すように、500μmの解像度および20μmの解像度の下では、PEBA相とTPU相との分離は認められなかった。ドライブレンドされたPEBA-TPU組成物から製造された試験片C1Fについては、それぞれ図5および図7に示すように、500μmおよび20μmの解像度の下で層間分離が観察された。マイクロレイヤー間には、様々な寸法の小さな隙間が生じていた。ドライブレンディングは通常、ポリマー成分の混合不良を引き起こすため、PEBA分子鎖とTPU分子鎖との間には、体積の異なる多数の空隙やスペースが存在することになる。超臨界ガスに浸漬すると、ガス分子は試験片内部のこれらの空隙やスペースに入り込む。こうして、最終的に様々な寸法の隙間が形成された。マイクロセル構造のSEM画像は、ドライブレンドされた組成物から製造された試験片のPEBA相とTPU相との非相容性を明確に示している。
【0066】
コンパウンディングされたPEBA-TPU組成物から製造された発泡体の機械的試験結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
本発明によるコンパウンディングされた組成物I1F~I3Fから製造された発泡体は、0.12g/cm未満の低密度を達成すると同時に、70%を超える高いボール反発弾性および30%を超える圧縮永久ひずみ率を維持することができる。対照的に、コンパウンディングされた組成物C2F~C4Fは、密度が0.12g/cmを超え、ボール反発弾性が70%未満である。結果として、本発明の目的を達成するためには、熱可塑性ポリウレタンにおいて、ブレンド中の重量パーセンテージは22重量%未満である。
【0069】
様々な態様および実施形態が可能である。本明細書に記載されているのは、それらの態様および実施形態の一部である。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの態様および実施形態が例示に過ぎず、本開示の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡物品であって、前記発泡物品は、
ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンを提供する工程と、
前記ポリエーテルブロックアミドおよび前記熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングしてブレンドを形成する工程と、
前記ブレンドを成形してプリフォームを形成する工程と、
前記プリフォームを発泡させて発泡物品を得る工程と
を含む方法によって製造され、前記熱可塑性ポリウレタンは、前記ブレンド中の重量パーセンテージが、22重量%未満である、発泡物品。
【請求項2】
前記発泡物品が、平均直径40μm~400μmのマイクロセル構造を有する、請求項1記載の発泡物品。
【請求項3】
前記マイクロセル構造が、厚さ1μm~20μmの壁を有する、請求項2記載の発泡物品。
【請求項4】
前記発泡物品が、0.12g/cm未満の密度を有する、請求項1または2記載の発泡物品。
【請求項5】
前記ブレンドが、相容化剤またはコンパウンディング助剤を実質的に含まない、請求項1または2記載の発泡物品。
【請求項6】
前記発泡物品が、衣料品、履物、保護具、ストラップおよびそれらの構成要素からなる群から選択される、請求項1または2記載の発泡物品。
【請求項7】
前記発泡物品が、靴底である、請求項6記載の発泡物品。
【請求項8】
請求項1または2記載の発泡物品の製造方法であって、前記方法は、
ポリエーテルブロックアミドおよび熱可塑性ポリウレタンを提供する工程と、
前記ポリエーテルブロックアミドおよび前記熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングしてブレンドを形成する工程と、
前記ブレンドを成形してプリフォームを形成する工程と、
前記プリフォームを発泡させる工程と、
発泡物品を得る工程と
を含み、前記熱可塑性ポリウレタンは、前記ブレンド中の重量パーセンテージが、22重量%未満である、方法。
【請求項9】
前記ポリエーテルブロックアミドおよび前記熱可塑性ポリウレタンをコンパウンディングする工程を、二軸押出機を使用して行う、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ブレンドを発泡させる工程が、前記プリフォームを超臨界ガスに浸漬することを含む、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記超臨界ガスが、超臨界窒素、超臨界二酸化炭素およびそれらの混合物から選択される1つ以上である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記プリフォームを発泡させる工程を、前記ブレンドの溶融温度よりも低い温度下で行う、請求項記載の方法。
【請求項13】
前記プリフォームを発泡させる工程を、20℃~300℃の温度下で行う、請求項記載の方法。
【請求項14】
前記プリフォームを発泡させる工程を、20バール~500バールの圧力下で行う、請求項記載の方法。
【請求項15】
前記プリフォームを発泡させる工程を、オートクレーブ中で行う、請求項記載の方法。
【国際調査報告】