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特表2024-541380大型車両の加速及び減速のための車輪スリップベースの制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】大型車両の加速及び減速のための車輪スリップベースの制御
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20241031BHJP
   B60W 40/10 20120101ALI20241031BHJP
   B60T 8/175 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W40/10
B60T8/175
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528595
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2021082046
(87)【国際公開番号】W WO2023088556
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ボーラ,テオドロ
(72)【発明者】
【氏名】レグネルト,ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】サリフ,ラマダン
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241BA16
3D241BB01
3D241BB06
3D241DB05Z
3D241DB27A
3D241DB27B
3D246AA01
3D246AA13
3D246DA01
3D246EA01
3D246GB02
3D246GC16
3D246HA64A
3D246HA94A
3D246HC04
3D246JA03
3D246JA15
3D246JB02
3D246JB32
3D246JB49
3D246LA12Z
(57)【要約】
大型車両(100)による運動を制御する方法であって、車両が、車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて制御されるように構成され、方法は、車両(100)の符号付き加速度(v′(k))を監視することと、少なくとも1つの駆動輪(102)の符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))を監視することと、監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが同じ符号を有する場合、監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少していない間に、車両(100)の監視された加速度(v′(k))の大きさが減少する場合に、少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))の大きさを減少させることと、目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御することとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両(100)による運動を制御する方法であって、前記車両が、前記車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて制御されるように構成され、
前記方法は、
前記車両(100)の符号付き加速度(v′(k))を監視すること(S1)と、
前記少なくとも1つの駆動輪(102)の符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))を監視すること(S2)と、
前記監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが同じ符号を有する場合、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが減少する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))の大きさを減少させること(S3)と、
前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて前記少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御すること(S4)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記車両(100)の符号付き加速度(v′(k))が正の加速度であり、かつ、符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が正の車輪スリップであるときに、車両推進操作に応じて実行され、
前記方法は、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))が低下する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))を減少させること(S311)、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両(100)の符号付き加速度(v′(k))が負の加速度であり、かつ、符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が負の車輪スリップであるときに、車両制動操作に応じて実行され、
前記方法は、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が増加していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))が増加する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))を増加させること(S312)、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記監視された加速度の符号及び現在の縦方向車輪スリップの符号が、基準車両速度方向に対して定義される、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
減少後の前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))が、前記現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))に基づいて決定される(S32)、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
減少後の前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))が、以前の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k))に基づいて決定される(S33)、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが減少しない場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))の大きさを増加させること(S34)、
を含む、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少する間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが増加する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))の大きさを減少させること(S35)、
を含む、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記目標車輪スリップ(λtarget(k+1))が、加速度の変化(Δv′(k))に基づいて決定される(S36)、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記目標車輪スリップ(λtarget(k+1))が、現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ(k))に基づいて決定される(S37)、請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記目標車輪スリップ(λtarget(k+1))が、前記加速度の変化(Δv′(k))と、前記現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ(k))との重み付き組み合わせ(w,w)に基づいて決定される(S38)、請求項9及び請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記目標車輪スリップ(λtarget(k+1))が、ループゲイン係数(k,k)に加えて前記加速度の変化(Δv′(k))及び前記現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ(k))に基づいて決定される(S39)、請求項9~請求項11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記ループゲイン係数(k,k)は、前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが減少するか否かに関らず異なる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記重み付き組み合わせにおける係数(w,w)及び/又は前記ループゲイン係数(k,k)が、走行シナリオに基づいて動的に更新される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が、駆動輪(102)と非駆動輪との間の速度差から特定される、請求項1~請求項14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記加速度(v′(k))が加速度計から取得される、請求項1~請求項15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記加速度(v′(k))が、前記車両(100)の速度から取得される、請求項1~請求項16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記加速度(v′(k))が、前記駆動輪(102)の縦方向加速度である、請求項1~請求項17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが異なる符号を有する場合に緊急ルーチンをトリガすることを含む、請求項1~請求項18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
大型車両(100)による運動を制御する制御ユニット(230,260,270,600)であって、
前記車両が、前記車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて制御されるように構成され、
前記制御ユニットが、処理回路(610)と、前記処理回路(610)に結合されたネットワークインタフェース(620)と、前記処理回路(610)に結合されたメモリ(630)とを、備え、
前記メモリが、機械可読コンピュータプログラム命令を含み、前記機械可読コンピュータプログラム命令が、前記処理回路によって実行されると、前記制御ユニット(230,260,400)に、
前記車両(100)の符号付き加速度(v′(k))を監視することと、
前記少なくとも1つの駆動輪(102)の符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))を監視することと、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが減少する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))の大きさを減少させることと、
前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて前記少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御することと、
を行わせる、制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、大型車両(heavy-duty vehicle)の車両運動管理、すなわち、サービスブレーキ、推進装置、及びパワーステアリングなどの運動支援装置の協調制御(coordinated control)に関する。本発明は、トラック、バス、及び建設機械などの大型車両に適用されることができる。本発明はセミトレーラ車両及びトラックなどの貨物運送車両に関して主に記載されるが、本発明はこの特定のタイプの車両に限定されず、乗用車などの他のタイプの車両に使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
車両は、機械学、空気力学、油圧工学、エレクトロニクス、及びソフトウェアの点で、ますます複雑になりつつある。現代の大型車両は、燃焼エンジン、電気機械、摩擦ブレーキ、回生ブレーキ、ショックアブソーバ、エアベローズ、及びパワーステアリングポンプなどの広範囲の異なる物理的装置を含むことができる。これらの物理的装置は、運動支援装置(MSD:Motion Support Device)として一般に知られている。MSDは、例えば、ある1つの車輪に摩擦ブレーキをかける、すなわち、負のトルクを加えることができ、一方、電気機械によって、車両の別の車輪、おそらくは、もっと言えば、同じ車軸上にある別の車輪が同時に使用されて、正のトルクを発生させるように、個別に制御可能であり得る。
【0003】
最近提案された車両運動及び電源管理(VMPM:vehicle motion and power management)機能は、例えば中央車両制御ユニット(VCU:vehicle control unit)などで実行されるか、又は電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)のネットワークを介して分散されるが、MSDの組み合わせに依存して、車両の安定性、費用効果、及び安全性を維持すると同時に、所望の運動効果を得るように車両を操作する。国際公開第2019/072379号は、大型車両による旋回操作(旋回動作)を補助するためにホイールブレーキを選択的に使用する、そのような一例を開示している。VMPM制御は、有利には、VMPMからMSD制御ユニットに送信される車輪速度要求又は車輪スリップ要求に基づき得、MSD制御ユニットは、要求された車輪スリップ又は車輪速度の値に可能な限り近い車輪挙動を維持することを目的とした、低遅延、高帯域幅制御ループによって様々なMSDを制御する。またVMPM制御は、VMPMからMSD制御ユニットに送信される、より従来のトルクに基づいた要求を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車輪スリップに基づいた制御戦略は通常、タイヤ力と車輪スリップとの間の関係に関する何らかのモデルに依存する。これらのようなモデルの高い正確度を取得することは、通常、困難な課題である。例えば、モデルは、路面特性に依存し得るが、路面特性は、ルートに沿って変動する可能性があり、多くの場合、センサから正確に推論することが困難である。従って、車輪スリップ限界を課すような車輪スリップに基づいた制御では、ある程度平均的なシナリオのモデルを使用する傾向があるが、これはほとんどの場合に最適ではない。改善された車輪スリップに基づいた制御方法及び制御アーキテクチャが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の目的は、改善された車両制御のための方法及び制御ユニットを提供することである。この目的は、車両の少なくとも1つの駆動輪(driven wheel)の車両速度に関連して、目標縦方向車輪スリップ(target longitudinal wheel slip)又は車両速度に基づいて制御されるように構成された大型車両による運動を制御する方法によって少なくとも部分的に達成される。方法は、車両の符号付き加速度(signed acceleration)、及び少なくとも1つの駆動輪の符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(signed current longitudinal wheel slip)、すなわち、正の値と負の値との両方をとり得る加速度値及び車輪スリップ値を監視することを含み、符号規則は車両の基準方向に関連して定義される。監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが同じ符号を有する場合、方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップが減少していない又は増加している間に、車両の監視された加速度の大きさ(magnitude:絶対値)が減少する場合、少なくとも1つの駆動輪の目標縦方向車輪スリップの大きさ(magnitude:絶対値)を減少させることと、目標縦方向車輪スリップに基づいて少なくとも1つの駆動輪の車輪スリップを制御することとを含む。
【0006】
開示される方法は、前進方向及び後進方向(逆方向)に走行する車両の推進(正の加速)及び減速(制動)の両方に適用可能である。方法は、例えば、車両の符号付き加速度が正の加速度であり、かつ、符号付きの現在の縦方向車輪スリップが正の車輪スリップであるときに、(前進方向又は後進方向のどちらかでの)車両推進操作(車両推進オペレーション)に対応して(応じて)実行され得る。方法は、次に、監視された現在の縦方向車輪スリップが減少していない又は増加している間に、車両の監視された加速度が低下する場合に、少なくとも1つの駆動輪の目標縦方向車輪スリップを減少させることを指定(設定)する。
【0007】
目標縦方向車輪スリップの減少は、基本目標スリップ計算に伴う不確実性(例えば、タイヤモデルから計算される)に対処するために、基本目標スリップ計算のセーフティネットとして機能することを意図した介入であり得る。換言すれば、開示された方法は、特定の状況では最適ではない基本スリップ目標を、車両制御により適した値に調整することができる。本開示は、車輪スリップ目標(車輪スリップ目標値)を動的に更新することができる。これにより、例えば、最適ではない基本目標スリップによる車両失速を回避する可能性が高まる。開示された方法では、目標スリップは純粋に測定に基づく場合があり、他の車輪スリップに基づいた制御方法で一般に必要とされる、路面、車両、タイヤ、又は摩擦と相関することが知られている任意の他の環境条件に関する知識を必要とせず、これは利点である。
【0008】
通常、縦方向車輪スリップが増加しているか、又は維持されるのと同時に、加速度が減少するシナリオは望まれていない。これは、縦方向車輪スリップとタイヤ力との関係で、タイヤ力が非線形領域に入ったことを示す場合があるためである。従って、開示された方法は、スリップが一定に保たれているか増加するかいずれかの間に、車両が加速度を失っていることを認識するとすぐに、目標スリップを減少させることによって干渉するアルゴリズムを使用して車輪スリップを制御する。これにより、車両にシンプルで効果的な制御スキームが提供される。例えば、車両が上り坂の砂利道で走行する又は発進する場合、基本目標スリップの設定が高すぎるため、車両は過度にスリップして加速度が失われる可能性がある。監視された現在の縦方向車輪スリップが減少していない間に、車両の監視された加速度が過度の車輪スリップにより低下するため、目標車輪スリップは、砂利道を上がり走行するのにより適した値まで減少する。
【0009】
本明細書で開示した方法はまた、車両の符号付き加速度が負の加速度であり、かつ、符号付きの現在の縦方向車輪スリップが負の車輪スリップであるときに、(前進方向にあるか、又は後進しているときのどちらかでの)車両制動操作(車両制動オペレーション)に対応して(応じて)実行され得る。この場合、方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップが増加していない又は減少する(負の度合いが大きくなる(より負になる))間に、車両の監視された加速度が増加する(負の度合いが小さくなる)場合に、少なくとも1つの駆動輪の目標縦方向車輪スリップを増加させることを指定(設定)する。この車両による挙動により、正の加速中に推進性能(駆動性能)が向上するのと同じように制動性能(ブレーキング性能)が向上する。大型車両を制動することが所望され、加速度の負の度合いが小さくなる(加速度の大きさ(絶対値)が減少する)のと同時に、車輪スリップの負の度合いが大きくなる(車輪スリップの大きさ(絶対値)が増加する)と判断される場合には、制動操作のための目標縦方向車輪スリップは、制動車輪力を向上させるために増加される。これにより、制動中に車輪スリップにタイヤ力をマッピングする誤った逆タイヤモデルに関連する問題が軽減され、制動操作がモデリングエラーに対してより耐性をもつようになり、これは利点である。
【0010】
上述のように、監視された加速度の符号及び現在の縦方向車輪スリップの符号は、基準車両速度方向に対して定義される。従って、車両が前進方向に移動している場合、正の車輪スリップは、前進方向に正の車輪力を提供する車輪スリップであり、一方、負の車輪力は、車両を制動する車輪力である。後進する車両の場合も同じことが当てはまる。つまり、正の車輪スリップは、後進方向に正の車輪力を生成する車輪スリップであり、負の車輪スリップは、後進操作中に車両の速度を低下させる。
【0011】
監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが異なる符号を有する場合には、望ましくない事象が発生した可能性が高く、方法は、これが発生した場合には緊急ルーチンをトリガする(始動させる)ことをオプションで(任意的に)含む。例えば、大型車両は、車輪が後進方向に回転している間に坂を前進方向にスリップしているか、又は大型車両は、車輪が前進方向に回転している間に、坂を後方にスリップしている可能性がある。緊急ルーチンは、例えば、トラクション制御システム、及び緊急停止システム、又は何らかの他の状況回避操作をトリガすることを含むであろう。そのような緊急ルーチンは、本開示の範囲外である。
【0012】
大きさが減少した後の目標縦方向車輪スリップは、以下に詳細に説明するように、例えば現在の縦方向車輪スリップに基づいて、又は以前の目標縦方向車輪スリップに基づいて、異なる方法で決定(設定)され得る。
【0013】
方法はまた、監視された現在の縦方向車輪スリップの大きさが減少していない間に、車両の監視された加速度の大きさが減少しない場合に、少なくとも1つの駆動輪の目標縦方向車輪スリップの大きさを増加させることを含み得る。このメカニズムにより、これが車輪力の能力の増加につながると判断されたときに、許容される車輪スリップの大きさを増加させることが可能であるため、大型車両が困難状況で車輪力を生成する能力が向上し得る。全体として、これにより、現在の動作条件に合わせてその動作を有利に調整できる適応型車両制御システムが提供される。
【0014】
方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップの大きさが減少する間に、車両の監視された加速度の大きさが増加する場合に、少なくとも1つの駆動輪の目標縦方向車輪スリップの大きさを減少させることを更に含み得る。また、大型車両によるこの挙動により、大型車両の車輪力生成能力は向上し得、これは利点である。特徴はまた、大型車両の様々な動作条件に合わせて調整できるより適応型の制御システムも提供する。
【0015】
態様によれば、目標車輪スリップは、車両による加速度の変化に基づいて、及び/又は現在の縦方向車輪スリップの変化に基づいて決定される。目標車輪スリップが加速度及び/又は現在の車輪スリップの変化の大きさ(複数可)に基づいていることは、所望の最適な現在の車輪スリップにより早く達する良い方法であることができる。
【0016】
態様によれば、目標車輪スリップは、加速度の変化と現在の縦方向車輪スリップの変化との重み付き組み合わせ(weighted combination)に基づいて決定される。このようにして、重み付け/正規化係数を選択することで、加速度の変化及び車輪スリップの変化が目標車輪スリップに与える相対的な重要度を調整することができる。これらの係数は、重み付け及び/又は正規化を含むことができ、現在の運送業務、現在の動作環境、及び/又は現在の車両のタイプ又は積載量に依存して設定され得る。
【0017】
態様によれば、目標車輪スリップは、ループゲイン係数(loop gain factor)に加えて(ループゲイン係数と共に)、加速度の変化及び現在の縦方向車輪スリップの変化に基づいて決定される。このようにして、以下でより詳細に説明するように、目標車輪スリップの変化率(変化速度)をより効率的に制御することができる。ループゲイン係数は、監視された現在の縦方向車輪スリップが減少していない間に、車両の監視された加速度が低下するか否かによって異なるように設定されることができる。このようにして、特定の値付近で、目標車輪スリップを安定させることができ、これは、定常状態とは違う状況で、スリップ目標が漸近的に安定することを意味する。
【0018】
態様によれば、ループゲイン係数及び/又は重み付き組み合わせにおける係数は、走行シナリオ(運転シナリオ)に基づいて動的に更新される。車輪スリップの変化と比較した加速度の変化の相対的な重要度は、異なる摩擦を有する様々な地面条件などの異なるシナリオ(状況)に応じて異なる場合がある。同様に、異なるシナリオに応じて変化率(つまり、ループゲイン)を調整することが望ましい場合がある。
【0019】
態様によれば、現在の縦方向車輪スリップは、駆動輪と非駆動輪との間の速度差から特定される。これは、車輪スリップを取得する単純で正確な方法である。
【0020】
態様によれば、加速度は加速度計から取得される。これにより、正確な加速度値を取得する、費用対効果の高い方法が提供される。代わりに、又はそれを組み合わせて、加速度は車両の速度から取得される。当然のことながら、レーダ(radar)又はライダ(lidar)センサなどのセンサを使用して、車両の加速度を正確な方法で特定することもできる。
【0021】
態様によれば、加速度は、駆動輪の縦方向加速度である。このようにして、加速度は、タイヤモデルによって車輪スリップに関連があることができる。
【0022】
本明細書では、上述の利点と関連付けられたコンピュータプログラム、コンピュータ可読媒体、コンピュータプログラム製品、制御ユニット、及び車両も開示される。
【0023】
全般的に、特許請求の範囲において使用される全ての用語は、本明細書において特に明確に規定されない限り、技術分野におけるその通常の意味に従って解釈すべきである。「要素、装置、コンポーネント、手段、ステップなど」への全ての言及は、特に明確に述べられない限り、要素、装置、コンポーネント、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を指すものとしてオープンに解釈すべきである。本明細書で開示した任意の方法のステップは、特に明確に述べられない限り、開示した正確な順番で行う必要はない。本発明の更なる特徴及び本発明に伴う利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討すれば明らかになる。当業者であれば理解するように、本発明の異なる特徴を組み合わせて、本発明の範囲から逸脱することなく、以下で説明するもの以外の実施形態を作成し得る。
【0024】
添付図面を参照して、例として引用した本発明の実施形態のより詳細な説明が以下に続く。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】大型車両の例を示す側面図である。
図2】運動支援装置制御構成の一例を示す。
図3】A~Bは、タイヤ力対車輪スリップの例を示すグラフである。
図4】A~Bは、車輪スリップ制御の規則を概略的に示す。
図5】例示的な車両制御機能アーキテクチャを示す。
図6】制御ユニットを概略的に示す。
図7】例示的なコンピュータプログラム製品を示す。
図8】方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明を、本発明の特定の態様を示す添付図面を参照して、以下でより十分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化してもよく、本明細書で述べる実施形態及び態様に限定されると解釈してはならない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ十分であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように、一例として提供される。同様の番号は、説明の全体を通して同様の構成要素を指す。
【0027】
本明細書に説明され、図面に示される実施形態に、本発明は限定されないことが理解されるべきであり、むしろ、添付の特許請求の範囲内で多くの変更及び修正が行われてもよいことが、当業者には認識されよう。
【0028】
図1を参照すると、トラックの形をした車両100が示されている。車両は、複数の車輪102を備え、車輪102のそれぞれは、それぞれの運動支援装置(MSD)104を備える。図1に示される実施形態は、車輪102のそれぞれにMSDを示しているが、当然ながら、例えば、1対の車輪102が、そのようなMSD104なしで構成されてよい。また、MSDは、例えばディファレンシャル装置を介して、2つ以上の車輪に接続されて配置されてよい。更に、MSD104は、好ましくは、車両の各車輪又は車軸の両方の車輪にトルクを発生させるためのMSDである。MSDは、例えば、車両100の車輪(複数可)に縦方向の車輪力を提供するように構成された電気機械106などの推進装置であってよい。従って、そのような電気機械は、車両100のバッテリ(図示せず)又は他のエネルギ貯蔵システム(複数可)を充電するための回生制動モードで構成されるだけでなく、推進トルクを生成するように適合されてよい。電気機械は、エネルギを蓄えずに制動トルクを生成してもよい。例えば、制動抵抗器などを使用して、制動中に電気機械から余分なエネルギを放散してよい。
【0029】
車両には関連付けられた前進方向があり、車両はその方向に速度vで移動し得る。しかしながら、車両100は、後進時には反対方向に移動することもある。車両の移動方向は、基準移動方向として役立ち得る。この基準方向は、縦方向車輪スリップについて説明するときに以下により詳細に説明する。
【0030】
MSD104の少なくとも1つのサブセットは、MSD104の動作を制御するために配置されたそれぞれのMSD制御システム230に接続される。MSD制御システム230は、好ましくは分散運動支援システム230であるが、集中型の実装も可能である。更に、MSD制御システムの一部の部品は、無線リンクを介して車両からアクセス可能なリモートサーバ120などの、車両から離れた処理回路上で実装されてよいことを理解されたい。また、各MSD制御システム230は、有線、無線のどちらか、又は有線と無線の両方であり得るデータバス通信装置114を介して車両100の車両運動管理(VMM:vehicle motion management)システム又は機能260に接続される。これにより、車両運動管理システム260とMSD制御システム230との間で制御信号を送信することができる。車両運動管理システム260及びMSD制御システム230は、図2及び図5を参照して以下に更に詳細に説明する。
【0031】
一般に、車両100のMSDは、例えば、摩擦ブレーキ、パワーステアリング装置、アクティブサスペンションなどとして実現されてもよい。特に、これらのMSDは、車両によって所望の運動を得るために調整されることが多い。例えば、2つ以上のMSDを一緒に使用して、所望の推進トルク又は制動トルクを生成してよい。
【0032】
当然ながら、本明細書で開示される方法及び制御ユニットは、ドローバー(drawbar)接続を備えたトラック、建設機械、バスなどの他のタイプの大型車両にも有利に適用することができる。車両100は、3つ以上の車両ユニットを含んでもよい。すなわち、台車(ドーリー)車両ユニットを使用して2つ以上のトレーラを牽引してよい。
【0033】
VMM機能260及びMSD制御システム230は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、又は別のプログラマブルデバイスを含み得る。システムは更に、又は代わりに、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ又はプログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイス、又はデジタル信号プロセッサを含み得る。システム(複数可)が、上述のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又はプログラマブルデジタル信号プロセッサなどのプログラマブルデバイスを含む場合、プロセッサは、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードを更に含み得る。様々な車両ユニット処理回路の実装態様は、図6に関連して以下でより詳細に説明する。
【0034】
図2は、例えば大型車両100で使用するための例示的なMSD制御構成を示す。制御アーキテクチャは、一部の機能がより上位の層の交通状況管理(TSM:traffic situation management)機能270に含まれ、他の一部の機能がより下位の機能層に常駐するVMM機能260に含まれる階層化機能アーキテクチャである。図2は、ここでは摩擦ブレーキ220(ディスクブレーキ又はドラムブレーキなど)、推進装置240、及びステアリング装置280を含むいくつかの例示的なMSDによって、車両100上の例示的な車輪210を制御するための機能200を概略的に示す。摩擦ブレーキ220及び推進装置は、車輪トルク生成装置の例であり、1つ以上の運動支援装置制御ユニット230によって制御することができる。制御は、例えば、車輪速度センサ250から得られる測定データと、レーダセンサ、ライダセンサ、ならびにカメラセンサ及び赤外線検出器などの視覚ベースのセンサなどの他の車両状態センサから取得される測定データとに基づく。MSD制御機能230は、1つ以上のアクチュエータを制御するように構成され得る。例えば、MSD制御システム330が車軸上の両方の車輪を制御するように構成されていることは珍しくない。
【0035】
TSM機能270は、10秒程度の計画対象期間(タイムホライズン)で運転操作(運転オペレーション)を計画する。この時間枠(タイムフレーム)は、例えば、車両100がカーブなどを通過するのにかかる時間に対応する。TSM機能によって計画及び実行される車両の操作は、所与の操作で維持される車両の前進方向及び旋回の所望の目標車両速度を記述する加速度プロファイル及び曲率プロファイルに関連付けることができる。TSM機能は、安全かつロバストな方法でTSM機能からの要求を満たす力配分を実行するVMM機能260から所望の加速度プロファイルareq及びステアリング角(又は曲率プロファイルcreq)を継続的に要求する。VMM機能260は、約1秒未満のタイムスケールで動作する。VMM機能260は、以下でより詳細に説明する。
【0036】
例えば車両100の複数の車輪102のうちの1つである車輪210は、縦方向速度成分v及び横方向速度成分vを有する。縦方向車輪力Fと横方向の車輪力Fがあり、車輪には垂直抗力Fも作用する(図2には示されていない)。特に明記しない限り、車輪力は車輪の座標系で定義される。つまり、縦力は車輪の回転面に向けられ、横方向の車輪力は車輪の回転面に垂直に向けられる。車輪の回転速度はw、半径はRである。
【0037】
図3Aは、達成可能なタイヤ力の例300を縦方向車輪スリップの関数として示すグラフである。縦方向車輪スリップλは、SAE J670(SAE Vehicle Dynamics Standards Committee January 24, 2008)に従って、以下のように規定され得、
【数1】
式中、Rはメートル単位の有効車輪半径であり、ωは車輪の角速度であり、vは、車両100の運動方向での車輪の(車輪の座標系における)縦方向速度である。この方向は、車両が前方に移動している場合は、車両の前進方向に、又は車両が後進している場合は、前進方向と反対の後進方向になり得る。車輪スリップλは、-1~1の間に制限され、車輪が路面に対してどの程度スリップしているかを示す符号付き数量である。車輪スリップは、本質的に、車輪と車両との間で測定される速度差である。従って、本明細書で開示した技術は、任意のタイプの車輪スリップ定義と使用するために適応できる。また、車輪スリップ値が、車輪の座標系において路面に対する車輪の速度を所与として車輪速度値と同等であることを理解されたい。VMM260及びオプションでMSD制御システム230はまた、(車輪の基準フレームにおける)vに関する情報を維持する一方、車輪速度センサなどを使用してω(車輪の回転速度)を特定することができる。図1に示すように、車両が前進している場合は、vは前進方向を指し、車両が後進している場合は、vは反対方向を指すことに留意されたい。
【0038】
車輪(又はタイヤ)が車輪力を生成するためには、スリップが発生する必要がある。スリップ値が小さい場合、スリップと生成される力との関係はほぼ線形であり、比例定数はタイヤのスリップ剛性として表されることが多い。タイヤには、縦力F、横力F、及び垂直抗力Fがかかる。垂直抗力Fは、いくつかの重要な車両特性を特定するための鍵である。例えば、垂直抗力は、車輪によって達成可能なタイヤ横力Fを大部分決定する。なぜなら、通常はF≦μFであり、μは道路摩擦条件に関連付けられた摩擦係数であるからである。所与の横スリップに対して利用可能な最大横力は、Hans Pacejkaによる「Tyre and vehicle dynamics」、Elsevier Ltd. 2012、ISBN 978-0-08-097016-5に記載されているように、いわゆるマジックフォーミュラによって表すことができる。
【0039】
縦方向タイヤ力Fxは、車輪スリップが小さいところでは、ほぼ直線的に増加する部分310を示し、それに続いて、車輪スリップがより大きいところでは、より非線形挙動を伴う部分320を示す。達成可能なタイヤ力はμと共に低下し、ピーク値330は走行条件に応じて通常変化することに留意されたい。
【0040】
図3Aはまた、縦方向車輪スリップが比較的小さいところでも急速に減少する取得可能な横方向タイヤ力Fyを示す。また、必要に応じて十分なタイヤ横力をそこで発生させることができるため、車両の動作を線形領域310内に維持することが望ましい。現在の車輪スリップがピーク330を超えすぎる場合、横力を発生させることはほぼ不可能であるため、車両は道路から外れる、又はコーナリング操作を実行できなくなる可能性がある。また、線形領域310では、適用されたブレーキコマンドに応えて取得可能な縦力は予測しやすいため、車両操作を線形領域310内に維持することが望ましい。この領域での動作を確実にするために、例えば+0.1程度の車輪スリップ限界λlim+を所与の車輪に課すことができる。例えば+0.1を超えるなど車輪スリップがより大きい場合、より非線形の領域320が見られる。この領域での車両の制御は困難な場合があるため、回避されることが多い。トラクション制御のためにより大きなスリップ限界が好まれ得るオフロード条件などでのトラクションには関心深くあり得るが、路上運転ではそうではない。
【0041】
車両の車輪にステアリングとオプションでトルクも伝えることができるVMMとMSDとの間のインタフェースは、従来、車輪スリップを考慮せずに、VMMから各MSDへのトルクベースの要求に焦点を当ててきた。ただし、このアプローチには重大な性能上の制限がある。安全を最重視すべき又は過度のスリップ状況が生じた場合、別個の制御ユニット上で動作される関連する安全機能(トラクション制御、アンチロックブレーキなど)は通常、スリップを制御に戻すために、介入してトルクオーバーライドを要求する。このアプローチに関する問題は、アクチュエータの一次制御とアクチュエータのスリップ制御とが、異なる電子制御ユニット(ECU)に割り当てられるため、それらの間の通信に伴う待ち時間によって、スリップ制御性能が著しく制限されることである。更に、実際のスリップ制御を実現するために使用される2つのECUで行われる、関連するアクチュエータとスリップの仮定が一致しない可能性があり、これにより非最適な性能につながり得る。代わりに、VMM260と1つ又は複数のMSDコントローラ230との間のインタフェースで車輪速度又は車輪スリップベースの要求を使用することにより、大きな利点を実現することができ、これによって、難しいアクチュエータ速度制御ループをMSDコントローラに移行し、MSDコントローラは一般的に、VMM機能のサンプル時間と比較してかなり短いサンプル時間で動作する。そのようなアーキテクチャは、トルクベースの制御インタフェースと比較して、はるかに優れた外乱除去を提供できるため、タイヤと道路との接触面で生成された力の予測可能性が向上する。
【0042】
図3Bは、制動中に、つまり車輪210に負の車輪スリップが適用されるときの車輪スリップに応じたタイヤ力の一例350を示す。この曲線は、本質的に例示的な曲線300の逆である。減速タイヤモデルは異なる場合があるが、この曲線は、本明細書で提案される技術を説明する目的に役立つ良い例である。この曲線はまた、より負の車輪スリップで見られる非線形性及び横力の能力の損失を回避するために、車両を制御することが所望される線形領域を示す。
【0043】
ここで図5を参照すると、全体の車両制御システム500は、1つ以上の車両ユニットコンピュータ(VUC:vehicle unit computer)上で実装されてよい。VUCは、上述した階層化機能アーキテクチャに従って編成された車両制御方法を実行するように構成され得る。
【0044】
図3A及び図3Bに示す種類のタイヤモデル300,350は、VMM機能260によって使用されて、ある車輪で所望のタイヤ力を生成することができる。VMMは、所望のタイヤ力に対応するトルクを要求する代わりに、所望のタイヤ力を等価の車輪スリップ(換言すれば、対地速度に対する車輪速度)に変換し、このスリップ又は速度を代わりに要求することができる。主な利点は、MSD制御デバイス230が、例えば、車輪速度センサ250から取得された車両速度νと車輪回転速度ωとを使用して、所望の車輪スリップでの動作を維持することにより、はるかに高い帯域幅で要求されたトルクを伝達できることである。また縦方向車輪スリップは、駆動輪102と非駆動輪との間の速度差から特定することができる。ここで、駆動輪とは、何らかのMSDの影響を受ける車輪であり、非駆動輪とは、いかなるMSDの影響も受けない、すなわち自由回転する車輪である。車両速度νは、全地球測位システム(GPS)受信機などと組み合わせた、レーダ、ライダ、視覚ベースのセンサなどの様々な車両センサから取得することができる。従って、車輪スリップがいくつかの異なる方法で特定されることができ、安全性を高めるために車両がこれらのいくつかを冗長システムで実装し得ることが理解される。
【0045】
TSM機能270は、車両運動要求275を生成し、車両運動要求275は、車両が従うべき所望のステアリング角δ又は同等の曲率creqを含んでよく、所望の車両ユニット加速度areqと他のタイプの車両運動要求も含んでよく、それらは共に、所望の速度プロファイルで所望の経路に沿った車両による所望の運動を記述する。運動要求は、操縦を成功裏に完了するために生成する必要がある必要量の縦力及び横力を特定又は予測するためのベースとして使用できることが理解される。
【0046】
約1秒程度の計画対象期間で動作するVMM機能260は、TSM機能からの加速度プロファイルareq及び曲率プロファイルcreqを、車両100の様々なMSDによって作動される車両運動機能を制御するための制御コマンドに継続的に変換し、MSDは、能力をVMMに報告し、次にそれらは、車両制御の制約として使用される。VMM機能260は、車両の状態又は運動推定510を実行する。すなわち、VMM機能260は、車両100に配置された様々なセンサ(MSDに接続していることが多いが必ずしも接続しているわけではない)を使用して動作を監視することによって、車両コンビネーションの様々なユニットの位置、速度、加速度、及び連結角度を含む車両状態sを継続的に判断する。
【0047】
運動推定510の結果、すなわち、推定された車両状態sは、力生成モジュール520に入力され、力生成モジュール520は、車両100を必要な加速度プロファイルareq及び曲率プロファイルcreqに従って移動させ、所望の車両挙動に従って動作させるように、異なる車両ユニットに必要とされる総力(global force)V=[V,V]を決定する。必要な総力ベクトルVは、MSD調整機能530に入力され、MSD調整機能530は、車輪力を割り当て、ステアリングやサスペンションなどの他のMSDを調整する。MSD調整機能は、i番目の車輪に対するMSD制御割り当てを出力し、これは、トルクT、縦方向の車輪スリップλ、車輪回転速度ω、及び/又は車輪ステアリング角δのいずれかを含み得る。次に、連携されたMSDは共に、車両コンビネーション100による所望の運動を得るために、車両ユニットに対する所望の横力Fy及び縦力Fx、ならびに必要なモーメントMzを提供する。
【0048】
例えば、全地球測位システム、視覚ベースのセンサ、車輪速度センサ、レーダセンサ、ステアリング角センサ、及び/又はライダセンサを使用して車両ユニットの運動を特定し、この車両ユニットの運動を所与の車輪210のローカル座標系に変換することによって(例えば、縦方向及び横方向の速度成分に関して)、車輪基準座標系における車両ユニットの運動を、上記のように、車輪210に関連して配置された車輪速度センサ350から得られるデータと比較することによって、リアルタイムで車輪スリップを正確に推定することが可能になる。図3A及び図3Bに関連して上述したタイヤモデルを使用して、所与の車輪iの所望のタイヤ縦力Fxと、車輪の等価の縦方向車輪スリップλとの間での変換をすることができる。
【0049】
従って、本開示のいくつかの態様によれば、VMM機能260は、力生成及びMSD調整の両方を管理する。すなわち、VMM機能260は、例えば、TSMによって要求される必要な加速度プロファイルに従って車両を加速させる、及び/又は同じくTSMによって要求される車両による特定の曲率運動(曲線運動)を生成する、又は車両を制動するTSM機能270からの要求を満たすために車両ユニットで必要とされる力を決定する。力は、例えば、ヨーモーメントMz、縦力Fx、及び横力Fy、ならびに異なる車輪に加えられる異なるタイプのトルクを含み得る。力は、TSM機能270によって生成された制御入力に応答して、例えば、TSM機能によって期待される車両挙動を生成するために決定される。
【0050】
上述のように、正確なタイヤモデルを取得することは容易でないことが多く、車両制御システムに路面特性などの正確なデータを提供することは困難であることが多い。これにより、車輪スリップ限界が課されている場合、又は速度制御動作モードもしくは車輪スリップ制御動作モード中に特定の車輪スリップがMSDから直接要求される場合の両方で、制御が最適ではない。
【0051】
従って、本開示は、スリップ目標を動的に更新することを提案する。これにより、最適ではない基本目標スリップによる車両のストール(失速)を回避する可能性が高まる。目標スリップは純粋に測定に基づいていることができ、路面、車両、タイヤ、又は摩擦と相関することが知られている任意の他の環境条件に関する知識を必要としない。上述のように、車輪スリップ及び車輪速度が車両速度νによって相互に直接関連しているため、スリップ目標が多くの点で車輪速度目標と同等であることが理解される。
【0052】
図3A及び図3Bに戻り参照すると、それは、線形領域310,360(多くの場合、ある程度の余裕がある)内にあることが望ましく、非線形領域320,370内にあることは望ましくない。縦方向車輪スリップの大きさ(絶対値)が増加している、又は維持されているのと同時に、加速度の大きさ(絶対値)(タイヤ力にほぼ比例)が減少しているシナリオになることが特に望ましくないことがわかった。これは、正確な形状のタイヤモデルの曲線が不明な場合にも当てはまる。このシナリオは、下向き及び右向きに、つまり曲線Fxに沿って図3Aの方向d1に沿って移動し、曲線Fxに沿って図3Bの方向d2に沿って上向き及び左向きに移動することに相当する。従って、開示された方法は、スリップの大きさが一定に保たれているか増加するかいずれかの間に、車両の加速度の大きさが失われていることを認識するとすぐに、目標スリップの大きさを減少させる(スリップを強制的にゼロに近づける)ことによって干渉するアルゴリズムを使用して、車輪スリップを制御する。ある意味、本明細書で開示した方法は、このようにして目標車輪スリップを調整することによって、タイヤ力曲線のピーク位置330,380がどこにあるかを検出しようとする。ある意味では、制御ユニットは、車両が、方向d1又はd2を示す挙動を示していることを検出するとすぐに、制御ユニットは、自由に回転する車輪の状態(縦方向車輪スリップの大きさがゼロ)を目指して車輪スリップを戻す対策を講じる。
【0053】
本明細書で説明した方法は、縦方向車輪スリップの符号が加速度の符号と同じである場合、すなわち、車両が(前進方向又は後進方向に)正の加速度を有し、車輪スリップが加速度と同じ正の符号を有する場合、又は車両が制動中であり(負の加速度)、車輪スリップも負である場合に、主に適用可能である。本明細書で開示した方法は、監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが異なる符号を有する場合に緊急ルーチンをトリガすることを含み得る。これは、例えば、車両が坂を滑り降り、車輪が後進方向に回転している場合に発生するであろう。そのような緊急ルーチンは、本開示の範囲外である。
【0054】
図8のフローチャートを参照すると、本明細書には大型車両100による運動を制御するための方法が開示されており、車両は、車両の少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)に基づいて制御されるように構成される。方法は、車両100の符号付き加速度v′(k)を監視すること(S1)と、少なくとも1つの駆動輪102の符号付きの現在の縦方向車輪スリップλ(k)を監視すること(S2)とを含む。監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが同じ符号を有する場合、方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップλ(k)の大きさが減少していない間に、車両100の監視された加速度v′(k)の大きさが減少する場合に、少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の大きさを減少させること(S3)と、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)に基づいて少なくとも1つの駆動輪102の車輪スリップを制御すること(S4)とを伴い、kは時間インデックスである。
【0055】
車両が、前進方向で又は後進方向で加速されている場合、すなわち、縦方向車輪スリップが、加速度と同じ符号である車両推進中に、方法は、車両100の加速度v′(k)を監視することと、少なくとも1つの駆動輪102の現在の縦方向車輪スリップλ(k)を監視することと、監視された現在の縦方向車輪スリップλ(k)が減少していない間に、車両100の監視された加速度v′(k)が低下する場合に、少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)を減少させること(S311)と、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)に基づいて少なくとも1つの駆動輪102の車輪スリップを制御することとを含む。
【0056】
方法はまた、制動中に実行され得る。すなわち、方法は、車両100の符号付き加速度v′(k)が負の加速度であり、かつ、符号付きの現在の縦方向車輪スリップλ(k)が負の車輪スリップであるときに、(前進又は後進している間の)車両制動操作に対応して実行され得る。方法は次に、監視された現在の縦方向車輪スリップλ(k)が増加していない又は減少している(負の度合いが大きくなる(より負になる))間に、車両100の監視された加速度v′(k)が増加する(負の度合いが小さくなる)場合に、少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)を増加させる(負の度合いを小さくする)こと(S312)を含む。
【0057】
従って、方法は、現在の車輪スリップと現在の加速度との両方が望ましくない方法で変化していることが観察される場合、すなわち、監視された現在の縦方向車輪スリップλ(k)の大きさが維持される、又は増加している間に、車両100の監視された加速度v′(k)の大きさが減少する場合、新しい目標車輪スリップ、すなわち、減少した大きさの目標車輪スリップを設定する。
【0058】
目標車輪スリップは、車輪スリップの制御が車輪スリップ限界の上限を課すことを意味する車輪スリップ限界であることができる。代わりに、目標車輪スリップは、直接の車輪スリップ要求の値、又は車輪速度要求の値であることができる(そして、車両速度に応じて設定されることができる)。いずれの場合も、現在の車輪スリップと現在の加速度との両方が望ましくない方法で変化している場合、目標車輪スリップを減少させることが望ましい。
【0059】
車輪スリップの監視及び制御を車両の単一車輪に適用することができる。代わりに、監視及び制御を複数の車輪に適用することができる。その場合、監視及び制御は駆動輪ごとに個別に行われてもよい。代わりに、又はそれらを組み合わせて、監視及び制御は、複数の車輪に何らかの平均化を利用してもよい。例えば、平均車輪スリップを監視することができ、次に複数の車輪を単一目標車輪スリップに基づいて制御する。
【0060】
図4A及び図4Bは、推進シナリオ(プロット400)及び制動シナリオ(プロット450)における加速度対スリップを示すプロット400,450である。ここで、b(k)は加速度の変化及びスリップの変化を表すベクトルであり、kは時間(単一時刻又はある期間)を表す。更に具体的には以下である(尚、ベクトルb(k)における文字「b」は、本来、以下の数式のように太字で表記されるべきものである)。
【数2】
【0061】
ベクトルb(k)は任意の方向を指す場合がある。原点410が加速度及びスリップのゼロ値を表しておらず、(以前の時刻での)開始点にすぎないことに留意されたい。ベクトルは現在の加速度及びスリップを指す。図4A及び図4Bの特定の例では、ベクトルは原点から始まり、北東(右上)を指す。これは、加速度とスリップとの両方の増加に相当する。開示された方法によれば、車輪スリップλ(k)の大きさが減少していない間、加速度v′(k)の大きさが減少する場合、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の大きさは減少する。これは、図4A 420(正の加速度及び車輪スリップの場合)では南東又は真南を指し、図4B 430(制動シナリオの場合)では北西又は北を指すベクトルb(k)に対応する。
【0062】
加速度v′(k)、及び現在の縦方向車輪スリップλ(k)を経時的に監視することで、経時的な変化を観察することが可能になる。変化Δλ(k)、Δv′(k)を特定することは、現在の値を以前の値と比較することを意味することができる。現在の値及び/又は以前の値は、単一時刻での単一値であってもよく、又は一定期間にわたる何らかの平均値であってもよい。現在の値、以前の値、及び/又は差は、例えばノイズを考慮して、フィルタリングされることができる。
【0063】
道路のカーブでは、対地加速度は、駆動輪の縦方向での縦方向加速度とは若干異なる場合がある。対地加速度は、トラック、車両コンビネーションの一部、又は車両コンビネーションのある平均の伸長方向にあることができる。好ましくは、開示された方法は、タイヤモデルに関連していることができる、駆動輪の縦方向での縦方向加速度を使用する。ただし、代わりに対地加速度を使用しても、車両制御の向上という技術的効果は同じである。更に、多くの場合、異なる加速度の間に著しい差はない。換言すれば、加速度v′(k)は、駆動輪102の縦方向加速度であることが好ましい。複数の車輪が監視されて制御される場合、異なる車輪が異なる方向に回転する可能性があるため、車輪ごとに個別の加速度値が観察される可能性がある。
【0064】
加速度v′(k)は、加速度計から取得されてもよく、ピッチ(傾斜)と車両対地加速度との両方を含むことができる。加速度は、車両100の速度からなど、他の方法でも取得されることができる。いずれかのそのようなデータは、全地球測位システム(GPS)受信機などと組み合わせた、レーダ、ライダ、視覚ベースのセンサなどの様々な車両センサによって取得されることができる。
【0065】
通常、車輪スリップが直接の車輪スリップ要求によって制御される場合、測定された現在の車輪スリップは要求とほぼ正確に同じ値になる。更に、車輪スリップが車輪スリップ限界によって制御される場合、通常、現在値は常に目標値以下になる。従って、車輪スリップがどのように制御されても、通常はλ(k)≦λtarget(k)となる。
【0066】
態様によれば、今後の(次回の)車輪スリップ目標は、現在の測定値か以前の目標値かいずれかに基づいている。換言すれば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)は、現在の縦方向車輪スリップλ(k)に基づいて決定され得る(S32)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の大きさの減少S3は、現在の縦方向車輪スリップλ(k)からの減少、すなわち、λtarget(k+1)=λ(k)-オフセットであってもよい。オフセットを選択することができる方法の様々な例を以下で説明する。現在の縦方向車輪スリップは、ある時刻での単一値、又は一定期間にわたる何らかの平均値であることができる。この値は、例えばノイズを考慮するために、フィルタリングされてもよい。
【0067】
目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)は、以前の目標縦方向車輪スリップλtarget(k)に基づいて決定され得る(S33)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の大きさの減少S3は、以前の目標縦方向車輪スリップλtarget(k)からの減少、すなわち、λtarget(k+1)=λtarget(k)-オフセットであってもよい。オフセットを選択することができる方法の様々な例を以下で説明する。以前の目標車輪スリップは、以前の時刻での以前の値、又は一定期間にわたる何らかの平均値を意味することができる。この値は、例えばノイズを考慮するために、フィルタリングされてもよい。
【0068】
上述のように、逆タイヤモデル300,350の非線形領域320,370に移動することは望ましくない。ただし、車輪スリップを減少させるよりも増加させることが望ましい場合がある。このようにして、曲線のピーク、つまり、何らかの路面条件を所与として可能な最大加速度に達することが可能になってよい。これは、タイヤモデルが不正確である、又は最適ではない場合に特に有利である。換言すれば、方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップλ(k)の大きさが減少していない間に、車両100の監視された加速度v′(k)の大きさが減少しない場合、少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の大きさを増加させること(S34)を含み得る。
【0069】
目標車輪スリップλtarget(k+1)は、加速度の変化Δv′(k)に基づいて決定され得る(S36)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少S3は、現在の縦方向車輪スリップλ(k)から加速度の変化Δv′(k)だけ減少させたもの、すなわち、λtarget(k+1)=λ(k)-Δv′x(k)であってもよい。この変化を取得する様々な方法を上述した。加速度の変化には、正規化及び/又は重み付けの目的で何らかの係数、すなわち、wΔv′(k)を割り当ててよい。好ましくはこの変化を正規化して、単位のない値を取得する。それは、例えば、現在の値v′(k)又は以前の値Δv′(k-1)によって正規化されてよい。係数wは、代わりに、又はそれらを組み合わせて、加速度の変化が新しい目標車輪スリップλtarget(k+1)に与える効果を調整するための重みを含んでよい。
【0070】
目標車輪スリップλtarget(k+1)はまた、現在の縦方向車輪スリップの変化Δλ(k)に基づいて決定され得る(S37)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少S3は、現在の縦方向車輪スリップλ(k)から車輪スリップの変化Δλ(k)だけ減少させたもの、すなわち、λtarget(k+1)=λ(k)-Δλ(k)であってもよい。この変化を取得する様々な方法を上述した。車輪スリップの変化には、正規化及び/又は重み付けの目的で何らかの係数、すなわちwΔλ(k)を割り当ててよい。係数wは、車輪スリップの変化が新たな目標車輪スリップに与える効果を調整するための重みであってよい。
【0071】
目標車輪スリップλtarget(k+1)は、加速度の変化Δv′(k)と、現在の縦方向車輪スリップの変化Δλ(k)との重み付き組み合わせw,wに基づいて更に決定され得る(S38)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少S3は、現在の縦方向車輪スリップλ(k)から、加速度の変化Δv′(k)と、車輪スリップの変化Δλ(k)との両方だけ減少させたもの、すなわち、λtarget(k+1)=λ(k)-|b(k)|であってよく、式中、b(k)=[wΔλ(k),wΔv′(k)]である。このようにして、これら係数w,wを選択して、加速度の変化及び車輪スリップの変化が新たな目標車輪スリップに与える相対的な重要度を調整することができる。前述のように、係数w,wは、重み付け及び/又は正規化を含むことができる。
【0072】
目標車輪スリップλtarget(k+1)は、ループゲイン係数k,kに加えて加速度の変化Δv′(k)及び現在の縦方向車輪スリップの変化Δλ(k)に基づいて決定され得る(S39)。例えば、目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の減少S3は、λtarget(k+1)=λ(k)-k|b(k)|であってもよい。ループゲイン係数はベクトルb(k)の方向によって異なる場合がある。例えば、ループゲイン係数k,kdは、監視された現在の縦方向車輪スリップλ(k)が減少していない間に、車両100の監視された加速度v′(k)が低下するか否かにかかわらず異なってよい。換言すれば、ベクトルb(k)は、南東又は南を指す場合に値kを有し得、ベクトルb(k)は、いずれかの他の方向を指す場合に別の値kを有し得る。
【0073】
当然のことながら、目標車輪スリップを決定するための上記のメカニズムの任意の組み合わせも、場合によっては重み付け方法で使用できる。
【0074】
重み付き組み合わせにおける係数w,w及び/又はループゲイン係数k,kdは、現在の走行シナリオに基づいて動的に更新され得る。車輪スリップの変化と比較した加速度の変化の相対的な重要度は、異なる摩擦を有する様々な地面条件などの異なるシナリオに応じて異なる場合がある。同様に、異なるシナリオに応じて変化率(つまり、ループゲイン)を調整することが望ましい場合がある。
【0075】
開示された方法の例示的な実施形態によれば、推進(駆動)の場合の目標縦方向車輪スリップは次のように決定される。
【数3】
式中、w,wは正規化及び/又は重み付けのための係数であり、kはドロップループゲイン係数であり、kはライズループゲイン係数である。更に、k>>k(例えば、10倍だけ)である。このようにベクトルb(k)の向き及び長さに基づいて目標車輪スリップを決定する。新しい目標車輪スリップは、方向が南東又は南の場合(つまり、現在の車輪スリップが維持されているか、増加しているかいずれかの間に加速度が低下する場合)、|b(k)|に比例して減少し、そうでなければ|b(k)|に比例して増加する。当然のことながら、同じメカニズムを制動シナリオにも適用することができ、簡単な適応である。
【0076】
目標車輪スリップの大きさが減少しているとき、新しい目標は、現在測定されたスリップに基づいて計算されるが、目標車輪スリップの大きさが増加しているときには、以前の目標車輪スリップに基づいて計算される。即時減少及び漸進的ゲインを繰り返すことによって、この方法を繰り返すと、特定の値付近で安定する傾向があり、つまり、定常状態とは違う状況で、スリップ目標が漸近的に安定する。
【0077】
態様によれば、図4Aの例では、目標車輪スリップは、ベクトルb(k)が南/南東を指すときと、それが北西を指すときとの両方で減少する。換言すれば、方法は、監視された現在の縦方向車輪スリップλ(k)の大きさが減少する間に、車両100の監視された加速度v′(k)の大きさが増加する場合に、少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の大きさを減少させること(S35)を含み得る。一部のシナリオでは、この結果、車両はより早くピーク加速度に達する。例示的な実施形態では、推進(駆動)の場合、これは、次のように記述できる。
【数4】
【0078】
図6は、いくつかの機能ユニットに関して、本明細書の説明の実施形態による、制御ユニット230,260,270,600のコンポーネントを概略的に示す。例えば、記憶媒体630の形態のコンピュータプログラム製品に格納されたソフトウェア命令を実行することができる適切な中央処理ユニット(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)などの1つ以上の任意の組み合わせを使用する処理回路610が提供される。処理回路610は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として更に提供されてよい。
【0079】
具体的には、処理回路610は、図8に関連して説明した方法などの動作(オペレーション)のセット又はステップを、制御ユニット230,260,270,600に実行させるように構成される。例えば、記憶媒体630は、動作のセットを格納し得、処理回路610は、記憶媒体630から動作のセットを取得し、制御ユニット230,260,270,600に動作のセットを実行させるように構成され得る。動作のセットは、実行可能な命令のセットとして提供され得る。従って、処理回路610は、それによって、本明細書に開示される方法を実行するように構成される。
【0080】
例えば、記憶媒体630は、また、磁気メモリ、光学メモリ、ソリッドステートメモリ、又は更にリモートに搭載されたメモリのうちの任意の単一のもの又は組み合わせであり得る永続記憶装置を含み得る。
【0081】
制御ユニット230,260,270,600は更に、少なくとも1つの外部装置と通信するためのインタフェース620を含み得る。よって、インタフェース620は、アナログコンポーネント及びデジタルコンポーネントと、適切な数の有線通信用ポート又は無線通信用ポートとを備えた1つ又は複数の送信機及び受信機を含み得る。
【0082】
処理回路610は、例えば、インタフェース620及び記憶媒体630にデータ及び制御信号を送信することによって、インタフェース620からデータ及び報告を受信することによって、ならびにデータ及び命令を記憶媒体630から取り出すことによって、制御ユニット230,260,270,600の通常の動作を制御する。制御ノードの他のコンポーネントならびに関連する機能は、本明細書で提示した考え方を不明瞭にしないように省略する。
【0083】
換言すれば、本明細書には大型車両100による運動を制御するための制御ユニット230,260,270,600が開示されており、車両は、車両の少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)に基づいて制御されるように構成され、制御ユニットは、処理回路610と、処理回路610に結合されたネットワークインタフェース620と、処理回路610に結合されたメモリ630とを含み、メモリは、機械可読コンピュータプログラム命令を含み、機械可読コンピュータプログラム命令は、処理回路によって実行されると、制御ユニット230,260,270,600に、
車両100の符号付き加速度v′(k)を監視することと、
少なくとも1つの駆動輪102の符号付きの現在の縦方向車輪スリップλ(k)を監視することと、
監視された現在の縦方向車輪スリップλ(k)の大きさが減少していない間に、車両100の監視された加速度v′(k)の大きさが減少する場合に、少なくとも1つの駆動輪102の目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)の大きさを減少させることと、
目標縦方向車輪スリップλtarget(k+1)に基づいて少なくとも1つの駆動輪102の車輪スリップを制御することと、を行わせる。
【0084】
図7は、制御ユニット230,260,270,600によって実行可能な動作のセット720を含むコンピュータプログラム製品700を概略的に示す。動作のセット720は、制御ユニット内の記憶媒体630にロードされ得る。動作のセットは、図8に関連して上述した方法に対応し得る。
【0085】
図7の例では、コンピュータプログラム製品700は、CD(コンパクトディスク)又はDVD(デジタルバーサタイルディスク)又はBlu-Ray(登録商標)ディスクなどの光ディスク710として示される。またコンピュータプログラム製品は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、又は電気的に消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)のようなメモリとして、そして更に特に、USB(ユニバーサルシリアルバス)メモリ、又はコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリなどのフラッシュメモリのような外部メモリ内のデバイスの不揮発性記憶媒体としても具現化され得る。従って、コンピュータプログラムが本明細書では、図示された光ディスク上のトラックとして概略的に示されており、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラム製品に適している任意の方法で格納されることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両(100)による運動を制御する方法であって、前記車両が、前記車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて制御されるように構成され、
前記方法は、
前記車両(100)の符号付き加速度(v′(k))を監視すること(S1)と、
前記少なくとも1つの駆動輪(102)の符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))を監視すること(S2)と、
前記監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが同じ符号を有する場合、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが減少する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))の大きさを減少させること(S3)と、
前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて前記少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御すること(S4)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記車両(100)の符号付き加速度(v′(k))が正の加速度であり、かつ、符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が正の車輪スリップであるときに、車両推進操作に応じて実行され、
前記方法は、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))が低下する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))を減少させること(S311)、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両(100)の符号付き加速度(v′(k))が負の加速度であり、かつ、符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が負の車輪スリップであるときに、車両制動操作に応じて実行され、
前記方法は、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が増加していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))が増加する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))を増加させること(S312)、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記監視された加速度の符号及び現在の縦方向車輪スリップの符号が、基準車両速度方向に対して定義される、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
減少後の前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))が、前記現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))に基づいて決定される(S32)、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
減少後の前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))が、以前の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k))に基づいて決定される(S33)、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが減少しない場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))の大きさを増加させること(S34)、
を含む、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少する間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが増加する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))の大きさを減少させること(S35)、
を含む、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))が、加速度の変化(Δv′(k))に基づいて決定される(S36)、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))が、現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ(k))に基づいて決定される(S37)、請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))が
加速度の変化(Δv′ (k))と、
現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ (k))と、
記加速度の変化(Δv′(k))と前記現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ(k))との重み付き組み合わせ(w,wと、
基づいて決定される(S38)、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))が、ループゲイン係数(k,k)に加えて加速度の変化(Δv′(k))及び現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ(k))に基づいて決定される(S39)、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記ループゲイン係数(k,k)は、前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが減少するか否かに関らず異なる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
記ループゲイン係数(k,k)が、走行シナリオに基づいて動的に更新される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))が、駆動輪(102)と非駆動輪との間の速度差から特定される、請求項1~請求項14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記加速度(v′(k))が加速度計から取得される、請求項1~請求項15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記加速度(v′(k))が、前記車両(100)の速度から取得される、請求項1~請求項16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記加速度(v′(k))が、前記駆動輪(102)の縦方向加速度である、請求項1~請求項17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが異なる符号を有する場合に緊急ルーチンをトリガすることを含む、請求項1~請求項18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
大型車両(100)による運動を制御する制御ユニット(230,260,270,600)であって、
前記車両が、前記車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて制御されるように構成され、
前記制御ユニットが、処理回路(610)と、前記処理回路(610)に結合されたネットワークインタフェース(620)と、前記処理回路(610)に結合されたメモリ(630)とを、備え、
前記メモリが、機械可読コンピュータプログラム命令を含み、前記機械可読コンピュータプログラム命令が、前記処理回路によって実行されると、前記制御ユニット(230,260,400)に、
前記車両(100)の符号付き加速度(v′(k))を監視することと、
前記少なくとも1つの駆動輪(102)の符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))を監視することと、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ(k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′(k))の大きさが減少する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))の大きさを減少させることと、
前記目標縦方向車輪スリップ(λtarget(k+1))に基づいて前記少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御することと、
を行わせる、制御ユニット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
図7の例では、コンピュータプログラム製品700は、CD(コンパクトディスク)又はDVD(デジタルバーサタイルディスク)又はBlu-Ray(登録商標)ディスクなどの光ディスク710として示される。またコンピュータプログラム製品は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、又は電気的に消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)のようなメモリとして、そして更に特に、USB(ユニバーサルシリアルバス)メモリ、又はコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリなどのフラッシュメモリのような外部メモリ内のデバイスの不揮発性記憶媒体としても具現化され得る。従って、コンピュータプログラムが本明細書では、図示された光ディスク上のトラックとして概略的に示されており、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラム製品に適している任意の方法で格納されることができる。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
大型車両(100)による運動を制御する方法であって、前記車両が、前記車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))に基づいて制御されるように構成され、
前記方法は、
前記車両(100)の符号付き加速度(v′ (k))を監視すること(S1)と、
前記少なくとも1つの駆動輪(102)の符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))を監視すること(S2)と、
前記監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが同じ符号を有する場合、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′ (k))の大きさが減少する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))の大きさを減少させること(S3)と、
前記目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))に基づいて前記少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御すること(S4)と、
を含む、方法。
[請求項2]
前記車両(100)の符号付き加速度(v′ (k))が正の加速度であり、かつ、符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))が正の車輪スリップであるときに、車両推進操作に応じて実行され、
前記方法は、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))が減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′ (k))が低下する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))を減少させること(S311)、
を含む、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記車両(100)の符号付き加速度(v′ (k))が負の加速度であり、かつ、符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))が負の車輪スリップであるときに、車両制動操作に応じて実行され、
前記方法は、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))が増加していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′ (k))が増加する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))を増加させること(S312)、
を含む、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
前記監視された加速度の符号及び現在の縦方向車輪スリップの符号が、基準車両速度方向に対して定義される、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の方法。
[請求項5]
減少後の前記目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))が、前記現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))に基づいて決定される(S32)、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の方法。
[請求項6]
減少後の前記目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))が、以前の目標縦方向車輪スリップ(λ target (k))に基づいて決定される(S33)、請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の方法。
[請求項7]
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′ (k))の大きさが減少しない場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))の大きさを増加させること(S34)、
を含む、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の方法。
[請求項8]
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))の大きさが減少する間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′ (k))の大きさが増加する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))の大きさを減少させること(S35)、
を含む、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の方法。
[請求項9]
前記目標車輪スリップ(λ target (k+1))が、加速度の変化(Δv′ (k))に基づいて決定される(S36)、請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の方法。
[請求項10]
前記目標車輪スリップ(λ target (k+1))が、現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ (k))に基づいて決定される(S37)、請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の方法。
[請求項11]
前記目標車輪スリップ(λ target (k+1))が、前記加速度の変化(Δv′ (k))と、前記現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ (k))との重み付き組み合わせ(w ,w )に基づいて決定される(S38)、請求項9及び請求項10に記載の方法。
[請求項12]
前記目標車輪スリップ(λ target (k+1))が、ループゲイン係数(k ,k )に加えて前記加速度の変化(Δv′ (k))及び前記現在の縦方向車輪スリップの変化(Δλ (k))に基づいて決定される(S39)、請求項9~請求項11のいずれか1つに記載の方法。
[請求項13]
前記ループゲイン係数(k ,k )は、前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′ (k))の大きさが減少するか否かに関らず異なる、請求項12に記載の方法。
[請求項14]
前記重み付き組み合わせにおける係数(w ,w )及び/又は前記ループゲイン係数(k ,k )が、走行シナリオに基づいて動的に更新される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
[請求項15]
前記現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))が、駆動輪(102)と非駆動輪との間の速度差から特定される、請求項1~請求項14のいずれか1つに記載の方法。
[請求項16]
前記加速度(v′ (k))が加速度計から取得される、請求項1~請求項15のいずれか1つに記載の方法。
[請求項17]
前記加速度(v′ (k))が、前記車両(100)の速度から取得される、請求項1~請求項16のいずれか1つに記載の方法。
[請求項18]
前記加速度(v′ (k))が、前記駆動輪(102)の縦方向加速度である、請求項1~請求項17のいずれか1つに記載の方法。
[請求項19]
前記監視された加速度及び現在の縦方向車輪スリップが異なる符号を有する場合に緊急ルーチンをトリガすることを含む、請求項1~請求項18のいずれか1つに記載の方法。
[請求項20]
大型車両(100)による運動を制御する制御ユニット(230,260,270,600)であって、
前記車両が、前記車両の少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))に基づいて制御されるように構成され、
前記制御ユニットが、処理回路(610)と、前記処理回路(610)に結合されたネットワークインタフェース(620)と、前記処理回路(610)に結合されたメモリ(630)とを、備え、
前記メモリが、機械可読コンピュータプログラム命令を含み、前記機械可読コンピュータプログラム命令が、前記処理回路によって実行されると、前記制御ユニット(230,260,400)に、
前記車両(100)の符号付き加速度(v′ (k))を監視することと、
前記少なくとも1つの駆動輪(102)の符号付きの現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))を監視することと、
前記監視された現在の縦方向車輪スリップ(λ (k))の大きさが減少していない間に、前記車両(100)の前記監視された加速度(v′ (k))の大きさが減少する場合に、前記少なくとも1つの駆動輪(102)の目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))の大きさを減少させることと、
前記目標縦方向車輪スリップ(λ target (k+1))に基づいて前記少なくとも1つの駆動輪(102)の車輪スリップを制御することと、
を行わせる、制御ユニット。
【国際調査報告】