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特表2024-541384常温で液体又は固体状態である物質を蒸気状態で空気中に分散するためのディフュージング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】常温で液体又は固体状態である物質を蒸気状態で空気中に分散するためのディフュージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20241031BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20241031BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20241031BHJP
   A01K 13/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61L9/12
A01M21/04
A01G7/06
A01K13/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024529149
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2022082258
(87)【国際公開番号】W WO2023089019
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】2112164
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520497874
【氏名又は名称】カエリンプ
【氏名又は名称原語表記】CAELIMP
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】デュフォー サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ジョルダン アルノー
(72)【発明者】
【氏名】リヴィエール フィリップ
【テーマコード(参考)】
2B121
4C180
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121AA19
2B121CA04
2B121CA15
2B121FA06
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA10
4C180AA18
4C180CA06
4C180EB07X
4C180EB21X
4C180EC01
4C180EC02
4C180FF07
4C180GG01
4C180HH05
4C180LL01
4C180LL06
4C180LL11
(57)【要約】
本発明は、常温で液体又は固体状態である物質を蒸気状態で空気中に分散するためのディフュージング装置(10;210;310;410,510)に関するものである。ディフュージング装置は受入部(31)を備える。受入部(31)に、上記物質を入れる貯蔵容器(60)が入れられている。多孔質体(70)が、受入部(31)に配された蒸発面を有する。多孔質体(70)の表面又は内部には、多孔質体(70)内における物質の流れを制御するように加熱部材(100)が配置されている。エアレーションシステムが空気吸入口(98)とファン(120)と空気排出口とを備えている。エアレーションシステムは、ディフュージング装置(10;210;310;410,510)の上方向(U)に向かって蒸発面に吹き付けるように空気吸入口(98)から空気排出口への空気の流れを生成する構成となっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液体又は固体状態である物質を蒸気状態で空気中に分散するためのディフュージング装置(10;210;310;410,510)であって、
受入部(31)と、
前記物質を入れるための貯蔵容器(60)であって、ドレン開口部(61)を有し、当該ドレン開口部(61)の向きが前記ディフュージング装置の下方向(D)になるように前記受入部(31)に入れられる貯蔵容器(60)と、
前記ドレン開口部(61)の出口に配置されて当該ドレン開口部(61)に連通されたディスペンス部材であって、前記受入部(31)内に配された蒸発面を有する多孔質体(70)を含み、前記ディフュージング装置の下方向(D)において前記ドレン開口部(61)を越えて配されたディスペンス部材と、
前記多孔質体(70)内における前記物質の流れを制御するように当該多孔質体(70)の表面又は内部に配置された加熱部材(100)と、
空気吸入口(98)と、少なくとも1つのファン(120)と、少なくとも1つの空気排出口(33;449;569)と、を備えたエアレーションシステムと、
を備えており、
前記エアレーションシステムは、前記ディフュージング装置(10;210;310;410,510)の前記下方向(D)とは逆方向の上方向(U)に向かって前記蒸発面に吹き付けるように、前記空気吸入口(98)から前記少なくとも1つの空気排出口への空気の流れを生成する構成となっており、
前記ディフュージング装置は、前記下方向(D)が重力による加速度を基準として下部に向かう方向であると共に前記上方向(U)が重力による加速度を基準として上部に向かう方向である使用ポジションで使用されるものである
ことを特徴とするディフュージング装置(10;210;310;410,510)。
【請求項2】
前記受入部(31)は、前記エアレーションシステムの前記空気排出口又は前記エアレーションシステムの前記空気排出口のうち1つの空気排出口を形成する開口(33)であって前記ディフュージング装置の前記上方向(U)の向きの開口(33)を介して屋外に放出する、
請求項1記載のディフュージング装置(10;210;310)。
【請求項3】
前記ドレン開口部(61)は前記貯蔵容器(60)の第1端にあり、
前記貯蔵容器(60)は、前記第1端と反対側の第2端に拡幅部(62,63)を有し、
前記拡幅部(62,63)は前記貯蔵容器を保持しやすくするものであり、前記開口(33)から流出する空気の流れを前記ディフュージング装置の周囲に方向転換するように前記ディフュージング装置の前記上方向(U)において前記開口(33)を越えている、
請求項2記載のディフュージング装置(10;210;310)。
【請求項4】
前記ファン(120)は前記ディフュージング装置の前記下方向(D)において前記多孔質体(70)を越えている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項5】
前記空気吸入口(98)は前記ディフュージング装置の前記下方向(D)において前記多孔質体(70)を越えている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項6】
前記エアレーションシステムはさらに空気ガイド部材(130)を備えており、
前記空気ガイド部材(130)は、前記蒸発面を向いている側に少なくとも1つのスルーホール(131)を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項7】
前記加熱部材(100)は電気抵抗(110)を有し、
前記電気抵抗(110)は前記多孔質体(70)の外表面に直接配置され、又は前記多孔質体(70)に形成された開口(75)、好適にはブラインドホールに前記電気抵抗(110)の一部が入れられている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項8】
前記加熱部材(100)は前記空気ガイド部材(130)を貫通する、
請求項6を引用する請求項7記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項9】
さらに電子回路カード(150)を備えており、
前記電気抵抗(110)は前記電子回路カード(150)から電力の供給を受ける、
請求項7又は8記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項10】
前記多孔質体(70)における目標温度に依存して前記加熱部材を制御するように構成された制御装置をさらに備えている、
請求項1から9までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項11】
前記制御装置は前記電子回路カード(150)に搭載されている、
請求項9を引用する請求項10記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項12】
前記制御装置はさらに、前記ファン(120)の動作速度を制御するように構成されている、
請求項10又は11記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項13】
前記物質は、温度に依存して可変の粘度を有する液体物質であり、
前記粘度は、0℃を上回る第1の温度より低いいかなる常温の温度においても前記使用ポジションでは前記物質が前記多孔質体(70)内を流れない粘度であって、前記第1の温度より高い第2の温度では、前記使用ポジションでは前記物質が前記多孔質体(70)内を流れるものである、
請求項1から12までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項14】
前記物質は、ヒト又は動物に使用可能な芳香品、情報化学物質、化粧品、精油、香水、殺菌剤、又は中和剤並びに植物防除用剤及び農業用剤により構成された群から選択された少なくとも1つの化合物である
請求項1から13までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項15】
前記物質は、ヒトに使用可能な芳香品、化粧品、精油、香水、殺菌剤、又は中和剤により構成された群から選択された少なくとも1つの化合物である
請求項14記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項16】
常温で液体又は固体状態であり貯蔵容器に入っている物質を蒸気状態で空気中に分散するための請求項1から15までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410,510)の使用であって、
前記ディフュージング装置を、当該ディフュージング装置の下方向(D)が重力による加速度を基準として下部に向かう方向である前記使用ポジションとする前記ディフュージング装置(10;210;310;410,510)の使用。
【請求項17】
前記ディフュージング装置(10;210;310;410,510)を閉空間内に、又は沈着から遮蔽される場所に配する、
請求項16記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で液体又は固体状態である物質を蒸気状態で空気中に分散するためのディフュージング装置の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば国際公開第2019/243734号から、上記の形式のディフュージング装置が公知となっている。当該装置では、物質を入れる貯蔵容器がディスペンス部材に連通している。ディスペンス部材は、流路に配される出口を構成する複数のマイクロチャネルを備えており、これにより当該出口に、物質が蒸発するゾーンを構成する。ディスペンス部材の表面又は内部に、加熱要素がディスペンス部材内における物質の流れを制御するように配置される。ファンが、蒸発面に吹き付ける空気の流れを生成する。一部の実施形態では、ディスペンス部材は重力による加速度の方向において貯蔵容器の下方に位置し、ファンによって生じた空気の流れが重力による加速度の方向において蒸発面に吹き付けられる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、常温で液体又は固体状態である物質を蒸気状態で空気中に分散するためのディフュージング装置であって、
-受入部と、
-前記物質を入れるための貯蔵容器であって、ドレン開口部を有し、当該ドレン開口部の向きが前記ディフュージング装置の下方向になるように前記受入部に入れられる貯蔵容器と、
-前記ドレン開口部の出口に配置されて当該ドレン開口部に連通されたディスペンス部材であって、蒸発面を有する多孔質体を含み、前記ディフュージング装置の下方向において前記ドレン開口部を越えて配されたディスペンス部材と、
-前記多孔質体内における前記物質の流れを制御するように当該多孔質体の表面又は内部に配置された加熱部材と、
-空気吸入口と、少なくとも1つのファンと、少なくとも1つの空気排出口と、を備えたエアレーションシステムと、
を備えており、
前記エアレーションシステムは、前記ディフュージング装置の前記下方向とは逆方向の上方向に向かって前記蒸発面に吹き付けるように、前記空気吸入口から前記少なくとも1つの空気排出口への空気の流れを生成する構成となっている。
【0004】
上記のディフュージング装置は、前記下方向が重力による加速度を基準として下向きであると共に前記上方向が重力による加速度を基準として上向きである使用ポジションで使用されるものである。上記の使用ポジションでは、重力による加速度は、ドレン開口部から蒸発面への物質の流れ、ひいては下方向に向かう物質の流れの生成に寄与し得る駆動力となる。
【0005】
加熱部材は、単に多孔質体を加熱したりしなかったりすることによって、当該多孔質体内の物質の上記の流れを制御することができる。多孔質体内における物質の流れの上記の制御の背景にある物理的原理は、上記にて述べた国際公開第2019/243734号と、同第2020/254733号に記載されている。
【0006】
上掲の文献において述べられているように、加熱部材により生成された熱は物質の動粘度を低下させ、これにより流体はダルシーの法則に従ってディスペンス部材内部を循環できるようになり、これによりディスペンス部材の表面上に広がることができる。入熱が無いと上記の流れは固定される。というのも、ディスペンス部材内での付着の総和はジュリンの法則に従うからである。換言すると、高温条件ではディスペンス部材内を通流することができるが、常温では、流体とディスペンスユニットの表面との付着力によって流れが止まる。
【0007】
ディスペンス部材内での通流を可能にするためには、目標温度に達するまでディスペンス部材を加熱する必要がある。この目標温度は、物質の流量が、ディスペンス部材が当該目標温度であるときに小滴が形成されてディスペンス部材から剥がれる(以下では、この現象を「ドリッピング(小滴の落下)」という)のを防止するために十分に低くなるように設定することができる。
【0008】
しかし、ディスペンス部材は目標温度において熱平衡に達する前に過渡域になり、この過渡域は約5分~20分持続することがある。本願出願人は、熱平衡状態でドリッピングを防止するように目標温度が設定されていても、この過渡域においてドリッピングが生じ得るとの知見を得た。ここでドリッピングが望ましくない理由は、上記のようにドリッピングした物質はディスペンス部材の箇所において要求されている通りに蒸発せず、ディフュージング装置から脱落すると無駄になってしまうこともあるからである。このことは、ディフュージング装置の使用が短時間であり、例えば1時間から、連続する数時間のオーダである場合に特に望ましくない。というのも、この場合には過渡域の持続時間は、ディフュージング装置の使用持続時間との比較において無視できない程度となるからである。
【0009】
本願出願人は、空気の流れが下方向と逆方向の上方向に向かって蒸発面に吹き付ける(balaye)ようにエアレーションシステムを構成すると、この空気の流れは下方向における多孔質体の下部分の箇所に液体物質が蓄積するのを阻止する傾向があるとの知見を得た。よって、空気の流れの方向のこのように設定することにより、過渡域においてもドリッピングを無くし、あるいは少なくとも制限することができる。
【0010】
本発明の一部の実施形態の背景にある一思想は、ディフュージング装置における貯蔵容器の配置を行いやすくするディスペンス部材及び貯蔵容器の配置を提案することである。
【0011】
よって本発明は、常温で液体又は固体状態である物質を蒸気状態で空気中に分散するためのディフュージング装置を提案するものでもあり、前記ディフュージング装置は、
-前記ディフュージング装置の前記上方向の向き、すなわち例えば、前記ディフュージング装置が前記使用ポジションであるときに上方向の向きとなる開口を介して、屋外に放出する受入部と、
-前記物質を入れるための貯蔵容器であって、ドレン開口部を有し、当該ドレン開口部の向きが前記ディフュージング装置の下方向、すなわち例えば前記使用ポジションにあるときに下方向の向きとなるように前記受入部に入れられる貯蔵容器と、
-前記ドレン開口部の出口に配置されて当該ドレン開口部に連通されたディスペンス部材であって、特に前記使用ポジションにおいて前記受入部内に位置する蒸発面を有する多孔質体を含み、前記ディフュージング装置の下方向において、すなわち例えば前記使用ポジションにあるときに下方向の向きとなる前記ドレン開口部を越えて配されたディスペンス部材と、
-前記多孔質体内における前記物質の流れを制御するように当該多孔質体の表面又は内部に配置された加熱部材と、
-空気吸入口と少なくとも1つのファンとを備えたエアレーションシステムと、
を備えており、
前記エアレーションシステムは、前記蒸発面に吹き付けるように前記空気吸入口から前記開口への空気の流れを生成する構成となっている。
【0012】
このディフュージング装置では、受入部から屋外に放出する上記の開口がエアレーションシステムの空気排出口となる。
【0013】
上記のディフュージング装置においても、加熱部材が上記と同様に単に多孔質体を加熱したりしなかったりすることによって、当該多孔質体内の物質の流れを制御することができる。
【0014】
受入部が、ディフュージング装置の上方向の向き、すなわちディフュージング装置が使用ポジションであるときに上方向の向きとなる開口を介して、屋外に放出する構成により、貯蔵容器をディフュージング装置に嵌めやすくなる。というのも、開口を介して貯蔵容器を受入部に挿入すれば良いからである。
【0015】
かかるディフュージング装置を使用できる1つの具体的用途は、例えば温室又は建物等の閉空間内、又は沈着から遮蔽される場所内で物質を拡散することである。実際、かかる場所では、開口の向きをディフュージング装置の上方向とすること、すなわち例えば、ディフュージング装置が使用ポジションであるときに上方向の向きとすることが問題にならない。というのも、沈着により得られる水は、当該開口を介してディフュージング装置に侵入するおそれが無いからである。
【0016】
また、エアレーションシステムは、蒸発面に吹き付けるように空気吸入口から開口への空気の流れを生成する構成となっているので、ディフュージング装置は、蒸発した物質を含む空気を周辺空気中へ良好に分散させることができる。
【0017】
上記のディフュージング装置においても、空気の流れの方向の設定により、過渡域においてもドリッピングを無くし、あるいは少なくとも制限することができる。
【0018】
一部の実施形態では、上記のディフュージング装置のうち一方又は他方は、下記の構成のうち1つ又は複数を具備することができる。
【0019】
一実施形態では、前記受入部は内部セパレータ壁を備えており、前記貯蔵容器が前記受入部に入れられたとき、前記内部セパレータ壁は前記貯蔵容器の少なくとも一部、好適には全部を包囲し、前記内部セパレータ壁は、空気の流れが当該内部セパレータ壁の周囲を循環するように構成されている。
【0020】
かかる内部セパレータ壁によって、蒸発した物質が受入部内で再凝縮する場合、この再凝縮は貯蔵容器ではなく内部セパレータ壁において生じる傾向となる。
【0021】
一実施形態では前記ディフュージング装置は、上壁と側壁とを有するケーシングを備えており、前記開口は前記上壁に放出する。
【0022】
一実施形態では前記ケーシングは、前記受入部を画定する内壁を備えており、当該内壁は前記上壁から延在する。
【0023】
一実施形態では、前記上壁及び前記側壁は前記ケーシングの上部分に形成されており、
前記上部分は、前記ディフュージング装置の前記下方向において、
-前記貯蔵容器が前記受入部に入れられたとき、前記貯蔵容器の上壁が前記ディフュージング装置の前記下方向において前記上壁を越えるように、すなわち例えば前記上壁より下方に位置する上昇位置と、
-前記貯蔵容器が前記受入部に入れられたとき、前記貯蔵容器の上壁が前記ディフュージング装置の前記上方向において前記上壁を越えるように、すなわち例えば前記貯蔵容器の上壁より上方に位置する下降位置と、
の間で、前記側壁に対して相対的に摺動可能であるように取り付けられている。
【0024】
一実施形態では、前記多孔質体の内側部分の気孔率は、当該内側部分を包囲する前記多孔質体の外側部分の気孔率より低い。
【0025】
一実施形態では、前記多孔質体は芯を備えており、当該芯は木材、繊維製品、セラミック、ポリマー、又は金属粉末若しくは金属合金粉末を焼結することにより得られる多孔質金属から成る。
【0026】
一実施形態では、前記ディスペンス部材は前記貯蔵容器と一体である。
【0027】
このようにして、受入部に単一部品として挿入される取り外し可能なアセンブリの形態で、貯蔵容器とディスペンス部材とを供給することができる。これによりディフュージング装置が一層使用しやすくなる。というのも、上記の取り外し可能なアセンブリは開口を介して受入部に入れれば良くなるからである。しかし、他の配置構成も可能であり、一実施形態では、前記ディスペンス部材又は少なくとも前記多孔質体は前記ディフュージング装置に固定される。他の一実施形態では、前記ディスペンス部材は前記貯蔵容器から取り外し可能である。
【0028】
一実施形態では、前記ドレン開口部は箔によって塞がれ、前記ディフュージング装置はさらに、前記多孔質体と前記箔との間に配置された穿孔具を備えており、前記穿孔具は、前記多孔質体が前記箔の方向に移動したときに当該箔に穿孔するように構成された複数の歯及び/又は針を備える。
【0029】
一実施形態では、前記受入部に上記の取り外し可能なアセンブリが設置される際に前記箔の方向への当該多孔質体の移動が行われるように、前記受入部と前記多孔質体とが互いに合わせて調整されている。
【0030】
一実施形態では、前記ドレン開口部は前記貯蔵容器の第1端にあり、前記貯蔵容器は、前記第1端と反対側の第2端に拡幅部を有し、前記拡幅部は前記貯蔵容器を保持しやすくするものであり、前記開口から流出する空気の流れを前記ディフュージング装置の周囲に方向転換するように前記ディフュージング装置の前記上方向において前記開口を越えている。
【0031】
かかる構成により一層、蒸発した物質を含む空気を周辺空気中へ分散させる傾向となり得る。
【0032】
一実施形態では、前記拡幅部は前記ディフュージング装置の前記下方向において前記ケーシングの前記上壁と揃えられているか又は当該上壁を越えており、すなわち例えば、前記ケーシングの上壁より下方であり、前記拡幅部は、前記開口から流出する空気の流れを前記ディフュージング装置の周囲に向かって方向転換する形状となっている。
【0033】
一実施形態では、前記ケーシングの下端は当該ケーシングの上壁とは反対側であり、当該下端は平面状の表面を有する。かかる構成により、ディフュージング装置を平面状の水平面に置くこと、例えばテーブルの表面に、又はより一般的には家具の表面に置くことが可能となる。
【0034】
空気吸入口は、種々の位置に配置することが可能である。一実施形態では、前記空気吸入口は前記ケーシングの前記側壁に位置する。一実施形態では、前記空気吸入口は前記ディフュージング装置の前記下方向において前記多孔質体を越え、すなわち例えば、前記使用ポジションにおいて前記多孔質体より下方に位置する。とりわけ、前記ケーシングの下端は当該ケーシングの上壁とは反対側である共に、前記ディフュージング装置の前記下方向において前記多孔質体を越え、すなわち例えば、前記使用ポジションにおいて前記多孔質体より下方に位置し、前記空気吸入口は前記下端に位置する。
【0035】
一実施形態では、前記ファンは、前記空気の流れの循環方向において前記空気吸入口より下流かつ前記多孔質体より上流にある。これにより、蒸発面の高さで蒸発した物質は、ファンを通過することがなくなる。
【0036】
前記ファンについては、種々の位置に配置することが可能である。一実施形態では、前記ファンは前記ディフュージング装置の前記下方向において前記多孔質体を越え、すなわち例えば、前記使用ポジションにおいて前記多孔質体より下方に位置する。一実施形態では、前記ファンは前記ケーシングの前記側壁と当該ケーシングの前記内壁との間に配置される。
【0037】
一実施形態では、前記ファンは軸流ファン又は遠心ファンである。
【0038】
一実施形態では、前記エアレーションシステムはさらに空気ガイド部材を備えており、前記空気ガイド部材は前記蒸発面側に少なくとも1つのスルーホールを有する。
【0039】
一実施形態では、前記空気ガイド部材は前記使用ポジションにおいて前記多孔質体の下方に位置する。
【0040】
一実施形態では前記空気ガイド部材は、前記蒸発面側に複数のスルーホールを有する。
【0041】
一実施形態では前記スルーホールは、内径が0.1mm~4mmの円形又は楕円形の断面を有する。
【0042】
一実施形態では、前記加熱部材は電気抵抗を有し、前記電気抵抗は前記多孔質体の外表面に直接配置され、又は前記多孔質体に形成された開口、好適にはブラインドホールに前記電気抵抗の一部が入れられている。
【0043】
一実施形態では、前記加熱部材は前記空気ガイド部材を貫通する。
【0044】
一実施形態では、前記加熱部材及び/又は前記空気ガイド部材は窪み部を有し、前記窪み部は、前記ディフュージング装置の前記下方向において前記多孔質体の下面を越え、すなわち例えば、前記使用ポジションにおいて前記多孔質体の下面より下方に位置し、前記窪み部は前記多孔質体側に、例えば前記多孔質体の下面側に凹部を有する。
【0045】
かかる窪み部により、液体状態の物質のドリッピングが生じた場合に、このドリッピングした物質が窪み部に溜まっていく。
【0046】
一実施形態では、前記ディフュージング装置はさらに電子回路カードを備える。
【0047】
一実施形態では、前記ディフュージング装置はさらに、前記多孔質体における目標温度に依存して前記加熱部材を制御するように構成された制御装置を備える。
【0048】
一実施形態では、前記制御装置は前記電子回路カードに搭載されている。
【0049】
一実施形態では、前記制御装置はさらに、前記ファンの動作速度を制御するように構成されている。
【0050】
一実施形態では、前記物質は自然由来若しくは合成由来の情報化学分子、フェロモン、アロモン又はカイロモン、シノモンから選択された少なくとも1つの化合物を含む。
【0051】
一実施形態では、前記物質は標的種においてポジティブ反応又はネガティブ反応を引き起こす少なくとも1つの性的若しくは非性的なフェロモン、アロモン、シノモン又はカイロモンを含む溶液であり、その結果の振舞いは、クモ綱又は六脚類を含む節足動物における性的混乱、他の何らかの種類の混乱、性的誘引、他の何らかの種類の誘引、あらゆる種類の忌避反応(repulsion)とすることができ、ここで六脚類は特に昆虫を含み、特に害虫を含む。
【0052】
一実施形態では、物質は、標的種においてポジティブ反応又はネガティブ反応を引き起こす少なくとも1つのフェロモン若しくは少なくとも1つの性的フェロモン、アロモン、シノモン又はカイロモンを含む溶液であり、その結果の振舞いは特に、哺乳類及び鳥類における鎮静作用、リラックス作用、多幸感、又は威嚇作用とすることができる。
【0053】
一実施形態では物質は、ミリスチン酸イソプロピル、グリコールジプロピレン、モノメチルグリコールジプロピレン、又はイソパラフィン炭化水素、例えばL又はP又はN又はVイソパラフィン等から選択された溶媒を含む。
【0054】
一実施形態では前記物質は、ヒト又は動物に使用可能な芳香品、情報化学物質、化粧品、精油、香水、殺菌剤、又は中和剤並びに植物防除用剤及び農業用剤により構成された群から選択された少なくとも1つの化合物である。一実施形態では前記物質は、上掲の群から選択された少なくとも1つの化合物を含む溶液である。
【0055】
一実施形態では前記物質は、ヒト又は動物に使用可能な芳香品、情報化学物質、化粧品、精油、香水、殺菌剤、並びに植物防除用剤及び農業用剤により構成された群から選択された少なくとも1つの化合物である。一実施形態では前記物質は、上掲の群から選択された少なくとも1つの化合物を含む溶液である。
【0056】
一実施形態では前記物質は、ヒトに使用可能な芳香品、化粧品、精油、香水、殺菌剤、又は中和剤により構成された群から選択された少なくとも1つの化合物である。一実施形態では前記物質は、上掲の群から選択された少なくとも1つの化合物を含む溶液である。
【0057】
一実施形態では前記物質は、ヒトに使用可能な芳香品、化粧品、精油、香水、殺菌剤により構成された群から選択された少なくとも1つの化合物である。一実施形態では前記物質は、上掲の群から選択された少なくとも1つの化合物を含む溶液である。
【0058】
一実施形態では、動物に使用可能な芳香品は、脂肪酸又はエステル化形態の前記脂肪酸、例えばオレイン酸メチル、パルミチン酸メチル、アゼライン酸ジメチル、及びピメリン酸ジメチル等、の中から選択されたものである。
【0059】
一実施形態では、前記液体状態の物質の粘度は25℃で1cPa・s超、例えば25℃で8cPa・s超等であり、かつ、60℃で1cPa・s未満である。
【0060】
一実施形態では、前記物質の大気圧における沸点は30℃~400℃である。
【0061】
一実施形態では、前記物質は常温において液体状態であり、前記貯蔵容器はさらに、前記液体状態の物質が含浸した内部多孔性保持部材を備える。
【0062】
一実施形態では前記多孔性保持部材は、ウールフェルト等のフェルトとメラミン発泡材とから選択された材料を含む。
【0063】
一実施形態では、前記貯蔵容器に複数の前記多孔性保持部材が配置されて接触している。
【0064】
一実施形態では、前記貯蔵容器は前記ドレン開口部以外の開口を有しておらず、前記貯蔵容器は前記物質の他にさらに、前記貯蔵容器の容積の少なくとも20%を占める気相を含む。
【0065】
前記第1の温度は複数の異なる範囲で固定することができる。前記ディフュージング装置が屋外で使用されるものである場合、前記第1の温度は特に、現地の気候データに依存して設定される。一部の実施形態では、前記第1の温度は例えば1℃~50℃、又は5℃~40℃、又は10℃~35℃、又は15℃~25℃である。
【0066】
前記物質は、温度に依存して可変の粘度を有し、前記粘度は、0℃を上回る第1の温度より低いいかなる常温の温度においても前記使用ポジションでは前記物質が前記多孔質体内を流れない粘度であって、前記第1の温度より高い第2の温度では、前記使用ポジションでは前記物質が前記多孔質体内を流れるものである。
【0067】
一実施形態では、前記物質は常温で液体状態である。例えば、前記物質の大気圧における融点は-70℃~0℃である。
【0068】
一実施形態では、前記物質は常温で固体状態である。例えば、前記物質の大気圧における融点は30℃超、例えば30℃~40℃である。
【0069】
一実施形態では、前記ディフュージング装置は、それぞれ異なる物質を入れるための複数の前記貯蔵容器を備えており、前記各貯蔵容器はそれぞれドレン開口部を有し、当該ドレン開口部の向きが前記ディフュージング装置の下方向、すなわち前記使用ポジションにあるときに下方向の向きとなるように前記受入部に入れられる。かかる複数の貯蔵容器を製造可能な手法は種々存在し、例えば1つの貯蔵器の内部を仕切ることにより、又は複数の別個の貯蔵器を設けることにより製造することができる。
【0070】
本発明はまた、常温で液体又は固体状態であり貯蔵容器に入っている物質を蒸気状態で空気中に分散するための上記のディフュージング装置の使用にも関するものであり、前記ディフュージング装置を、当該ディフュージング装置の下方向が重力による加速度を基準として下部に向かう方向である前記使用ポジションとする。
【0071】
一実施形態では、前記ディフュージング装置を温室又は建物内等の閉空間内に、又は沈着から遮蔽される場所に配する。
【0072】
添付の図面を参照して、本発明の複数の特定の実施形態についての以下の説明を読めば、本発明をより良好に理解できると共に、本発明の他の目的、詳細、特徴及び利点がより明らかとなる。以下の説明の特定の実施形態はあくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】第1の実施態様のディフュージング装置の斜視図である。
図2図1のディフュージング装置の他の斜視図であり、同図では、ディフュージング装置の受入部に取り外し可能なアセンブリが入っている。
図3A】ディフュージング装置の受入部に入れられる取り外し可能なアセンブリの斜視図である。
図3B図3Aの取り外し可能なアセンブリの他の斜視図である。
図4A図3Aの線 IV-IV に沿って切断された図3A及び図3Bの取り外し可能なアセンブリの貯蔵容器の断面図である。
図4B図3A及び図3Bの取り外し可能なアセンブリの貯蔵容器及びディスペンス部材を示す、図4Aと同様の断面図である。
図4C図4Bの細部 IVC を拡大した図であって取り外し可能なアセンブリの一実施態様を示しており、当該細部 IVC の一部は斜視図で示しており、一部は断面図で示している。
図5A図2の線 V-V に沿った断面図である。
図5B図2の線 V-V に沿った他の断面斜視図である。
図5C】ディフュージング装置を使用する可能な一態様を示す、図5Aと同様の断面図である。
図6】第2の実施態様のディフュージング装置の斜視図である。
図7図6の線 VII-VII に沿った断面斜視図である。
図8】第3の実施態様のディフュージング装置の断面図である。
図9】第4の実施態様のディフュージング装置の断面の概略図である。
図10】第5の実施態様のディフュージング装置の断面の概略図である。
図11】ディフュージング装置の一実施態様の加熱部材の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、常温で液体状態である物質を蒸気状態で空気中に分散するための第1の実施態様のディフュージング装置の斜視図である。ディフュージング装置には図中で符号10が付されており、以下では便宜上「装置10」と称する。
【0075】
装置10は固定部分を備えており、この固定部分は全体として20により示されている。
【0076】
最初に固定部分20について説明する。固定部分20はケーシング30と電気プラグ40とを備えている。図5A,5B及び5Cは、図2の線 V-V に沿った装置10の断面図であり、この断面図によって、装置10のケーシング30内部の各構成要素が見えるようになっている。
【0077】
ケーシング30には受入部31が形成されている。受入部31は、後述する取り外し可能なアセンブリ50を入れるものである。ここで、受入部31は角丸四角形の形状の断面を有するが、円形、楕円形、又は多角形の断面とすることも可能である。受入部31は開口33を介してケーシング30の上壁32に放出する。受入部31はケーシング30の内壁35(図5A図5B及び図5C参照)によって画定されており、受入部31は上壁32からケーシング30の内部に向かって延在する。図中の符号39は、ケーシング30の外部側壁を示している。
【0078】
電気プラグ40は任意の適切な態様でケーシング30に固定されている。本例では、電気プラグ40は商用電源電気プラグである。よって、装置10には商用電源から電力を供給することができ、これによって特に、温室又は建物等の閉空間内、又は沈着から遮蔽される場所内で使用することが可能である。しかしながら、他の種類の電気プラグ40も可能であり、特に直流電気プラグ等も可能である。
【0079】
次に、取り外し可能なアセンブリ50について図3A,3B,4A及び4Bを参照して説明する。取り外し可能なアセンブリ50は貯蔵容器60と芯70とを備えている。芯70は、取り外し可能なアセンブリ50を取ることによって当該取り外し可能なアセンブリ50を一体として受入部31に入れることができるように、貯蔵容器60に固定されている。
【0080】
図4Aは、貯蔵容器60単独の断面図である。図4Aを見るとより良く分かるように、貯蔵容器60の下部分59は直円柱部分を有し、この直円柱部分の準線は主軸P-Pであり、母線は角丸四角形の形状となっている。換言すると、貯蔵容器60の下部分59の高さにおける軸P-Pに対して垂直な断面は角丸四角形の形状となっている。この断面は好適には受入部31の断面と同一である。貯蔵容器60の内部容積69は周壁64と上壁66と下壁65とによって画定されている。
【0081】
図4Aを見るとより良く分かるように、下壁65は陥入部65Aを有する。この陥入部65Aの底部の全部又は一部にドレン開口部61が形成されている。ドレン開口部61は、取り外し可能なアセンブリ50が使用ポジションである際に下向きとなり、この使用ポジションは図2図5A図5B及び図5Cに示されている。
【0082】
「下方向」、「下」及び「上」との用語は、使用ポジションにおける重力による加速度を基準とした用語であると解すべきものである。
【0083】
「下方」及び「上方」についても同様に、使用ポジションにおける重力による加速度を基準とした用語であると解すべきものである。
【0084】
装置10に対する「下方向」Dと、その逆方向の「上方向」U(図5A及び図5C参照)の割り当ても、同様に行うことができる。使用ポジションでは、下方向Dは重力による加速度を基準として下向き、上方向Uは重力による加速度を基準として上向きとなり、より正確にいうと、下方向Dは重力による加速度に対して平行であり、その向きは地面に向けられており、上方向Uは下方向Dとは逆方向である。そうすると、「下方向」、「下」及び「下方」との用語は下方向Dと解され、「上」及び「上方」との用語は上方向Uと解される。
【0085】
使用ポジションでは、軸P-Pは重力による加速度に対して平行とすることができ、ひいては下方向Dと上方向Uとに対して平行とすることができる。
【0086】
貯蔵容器60は軸P-Pを基準として円対称とすることができる。
【0087】
一実施形態では貯蔵容器60は、例えばポリプロピレン(PP)等の適切なプラスチック材料を射出成形することにより作製される。貯蔵容器60が空になるときに当該貯蔵容器60に入っている液体物質が流れ続けることができることを保証するため、上壁66及び/又は周壁64に1つ又は複数の通気口(不図示)を形成することができる。これに代えて、貯蔵容器60はドレン開口部61以外の開口を有しておらず、液体物質の他にさらに、貯蔵容器60の容積の少なくとも20%を占める気相を含む。
【0088】
貯蔵容器60の中間部分62は拡幅形状となっている。すなわち貯蔵容器60の中間部分62は、下部分59から離れていくにつれて周壁64が主軸P-Pから拡幅する形状となっている。中間部分62からはさらに末端部分63が延在しており、この末端部分63の高さにおいて周壁64が再び主軸P-Pに対して平行となる。ユーザは末端部分63まわりに指を置いてから指先を中間部分62に置くことにより貯蔵容器60を容易に持つことができるので、中間部分62と末端部分63とによってユーザが貯蔵容器60を持ち上げやすくなることが明らかである。
【0089】
オプションとして、貯蔵容器60の内部容積69の少なくとも一部に、上記の液体物質が含浸されたポリマー発泡材(不図示)を充填することができる。これに代えて、内部容積69に単に液体物質を充填することも可能である。
【0090】
不図示の特定の実施態様では、内部容積69に複数の異なる液体物質を入れることができる。こうするためには、複数の内部部分容積を画定し、各内部容積69がそれぞれ液体物質を収容すると共に当該液体物質に対するドレン開口部61を有するように、内部容積69を分割することができる。不図示の他の実施態様では、取り外し可能なアセンブリ50は複数の貯蔵容器60を備え、これら複数の貯蔵容器60は場合によっては同一であり、各貯蔵容器60がそれぞれ液体物質を収容し、全ての貯蔵容器60が次に説明する芯70に接続することが可能である。この実施態様によって、取り外し可能なアセンブリ50に複数の液体物質を入れることができ、これらの液体物質が装置10から拡散される時点まで混ざり合わないようにすることが可能である。
【0091】
なお、取り外し可能な蓋によって上記の上壁66を提供し、貯蔵容器60の液体物質が空になったときに貯蔵容器60の内部容積69に再充填できるようにすることが可能である。図3A中の符号66Aは、上記のような蓋を取り外しやすくすることができる面取り部を示している。
【0092】
図4Bに貯蔵容器60及び芯70が示されている。
【0093】
芯70はドレン開口部61の出口に配置されており、これにより、液体物質が貯蔵容器60の内部スペース69から芯70まで通過し、ここから、芯70の外壁により形成された蒸発面まで通過できるようになっている。ここで、芯70は本体部72を有し、その断面は貯蔵容器60の下部分59の断面と同一になっている。さらに、芯70の内側には開口75が本体部72の内表面72Aから延在しており、ここでは開口75は軸P-Pに対して平行に延在している。開口75は好適には、図中に示すようにブラインドホールである。
【0094】
芯70は軸P-Pを基準として円対称とすることができる。
【0095】
芯70を貯蔵容器60に取り付けることができる態様は種々存在する。図示の例では、芯70は陥入部65Aに入れられるスピゴット77を備えており、このスピゴット77は例えば陥入部65Aに圧入される。
【0096】
芯70の一部又は全部は、例えば木材、繊維製品、セラミック又はポリマー等の多孔質材料により作製される。可能な多孔質材料の他の一例は、金属粉末又は金属合金粉末を焼結することにより得られる多孔質金属である。かかる多孔質材料は自明となっており、この多孔質材料を得るための技術については、ここでは詳細に説明しない。
【0097】
上記にて既に述べた通り、貯蔵容器60は、取り外し可能なアセンブリ50が使用ポジションにあるときに下向きとなるドレン開口部61を有する。芯70は、貯蔵容器60の内部容積69に入っている液体物質を受け入れ、当該芯70の多孔質によってこの液体物質を含浸するように、ドレン開口部61の出口に配置される。
【0098】
図4C図4Bの細部 IVC の拡大図であり、これにより、取り外し可能なアセンブリ50の特殊な一実施形態における芯70とドレン開口部61との連通構成が示されている。図示の実施形態では、ドレン開口部61は箔65Bによって塞がれている。芯70は中央スピゴット77Aを有する。取り外し可能なアセンブリ50はさらに、芯70とドレン開口部61との間に配された穿孔具140を備えている。穿孔具140は、芯70の中央スピゴット77Aに嵌められる円環状の本体141を備えており、この本体141はオプションとして、芯70における中央スピゴット77Aの周囲に設けられた円環状突起77Bによって中央スピゴット77Aに対して相対的に定位置に固定される。本体141は複数の歯142を備えると共に、当該歯142の間に複数のギャップ143を有する。歯142は箔65Bを穿孔できるように配置されている。箔65Bが歯142によって穿孔されると、この歯142によって形成された孔を液体物質が通って流れ、ギャップ143を通過してスピゴット77を濡らし、次いで芯70の他の残りの部分をキャピラリ現象によって濡らす。歯142による箔65Bの穿孔は特に、芯70をドレン開口部61の方向に移動させることによって実現することができる。受入部31及び芯70の形状は、受入部31に上記の取り外し可能なアセンブリ50が設置される際にドレン開口部61の方向への当該芯70の移動が行われる形状とすることができる。
【0099】
穿孔具140は例えば、適切なポリマーを射出成形することにより作製することができる。これに代えて、穿孔具140を鋳造品等の金属部品又はセラミック部品とすることも同様に可能である。また、穿孔具140は複数の円環弧部分から構成することもでき、互いに固定することも可能であるが、必ずしもこれを要しない。
【0100】
歯142及びギャップ143は好適には、芯70への液体物質の一様な含浸を促進するように、規則的な間隔で離隔する。
【0101】
図4Cに示されている歯142及びギャップ143の幾何学的形態はあくまで一例であり、数多くの他の形態が可能である。また、上記にて説明したのと同様に箔65Bを穿孔するため、歯142と共に又は歯142に代えて中空針又は中実針を穿孔具140に配することも可能である。
【0102】
上記にて説明した、ドレン開口部61を介して芯70と貯蔵容器60の内部容積69とが連通される構成は、あくまで一例であり、数多くの他の連通構成が可能である。特に、貯蔵容器60の内部容積69の少なくとも一部が、液体物質が含浸されたポリマー発泡材である場合、芯70は、上記のポリマー発泡材と接触するまでドレン開口部61内を通過する1つ又は複数のスピゴットを備えることができる。その際には、芯70とドレン開口部61との連通部の密閉を保証するため、1つ又は複数のシール部(不図示)を配置することができる。
【0103】
不図示の他の実施態様では、芯70が貯蔵容器60のドレン開口部61に螺入可能となるようにスピゴット77を形成することができる。この場合、スピゴット77はオプションとして、芯70の螺入時に箔65Bを穿孔するマイクロニードル(不図示)を備えることができる。
【0104】
上記の通り、取り外し可能なアセンブリ50は、ケーシング30に形成された受入部31に入れられるものである。図2図5A図5B及び図5Cには、使用ポジションになっている受入部31内に定位置に入っている取り外し可能なアセンブリ50が示されている。これらの図に示されているように、使用ポジションのときには末端部分63がケーシング30の上壁32より突出する。末端部分63は開口33の上方、すなわち上方向Uにおいても開口33を越えている。これにより貯蔵容器60が持ちやすくなり、取り外し可能なアセンブリ50が交換しやすくなる。図面には示されていないが、末端部分63の外寸は受入部31の開口33における最大寸法と略等しくすることができ、又はそれより大きくすることもできる。上記構成に代えて、末端部分63を上壁32と揃えることができ、又は上壁32より下方に配すること、すなわち下方向Dにおいて上壁32を越えることも可能である。
【0105】
再度図1を参照すると、装置10の上側から見下ろしたときの受入部31の底部が見える。図5A,5B及び5Cの断面図に加熱部材の一部が示されており、加熱部材は全体として符号100により示されているが、加熱部材100はディフュージングケーシング30内に配置されている。加熱部材100はロッド101を備えており、ロッド101の上端に電気抵抗110が設けられている。ロッド101は開口75を貫通することができ、これにより、取り外し可能なアセンブリ50が受入部31内に定位置に設置されたときに電気抵抗110が開口75の壁に接触することができる。電気抵抗110に通電したり通電しなかったりすることにより、国際公開第2019/243734号や同第2020/254733号に記載されている物理的原理に従って芯70内を流れる液体物質の流れを制御することができる。
【0106】
芯70の下面72Aを傾斜面72B(図3B及び図4B参照)によって開口75に接続することにより、開口75にロッド101及び電気抵抗110を挿入しやすくすることができる。
【0107】
これに代えて、芯70は開口75を有する必要はなく、その際には、電気抵抗110は芯70の外表面に直接配置され、例えば下面72Aに直接配置される。
【0108】
加熱部材100は電子回路カード150(図5A図5B及び図5Cに概略的に示されている)を備えることができ、これにより電気抵抗110への電力供給と電気抵抗110の制御が提供される。例えば、芯70の目標温度に依存して電気抵抗110を制御するため、電子回路カード150上にマイクロプロセッサ等の制御装置(不図示)を搭載することができる。この目標温度は、例えばロッド101に支持される温度センサ(不図示)によって測定することができる。ここで電気回路カード150は、下記にて説明する蓋部分85に支持されるが、これに代えて、ケーシング30の様々な箇所に配置することもできる。
【0109】
装置10はさらにエアレーションシステムも備えている。エアレーションシステムは空気吸入口98とファン120とを備えている。空気吸入口98は使用ポジションにおいては、取り外し可能なアセンブリ50の下方に位置する。ファン120は図5A、5B及び5Cの断面図で示されており、使用ポジションにおいては、取り外し可能なアセンブリ50の下方に位置する。かかる構成により、ファン120が空気吸入口98から、芯70の外壁により構成される蒸発面へ空気の流れを送り、その後開口33へ送ることが分かる。図5A中の一点鎖線矢印Fは、空気の流れの向きと方向を示している。かかる構成により、ファン120と電気抵抗110とが動作すると、装置10は、蒸発した物質を含む空気の流れを生成し、この空気の流れはその後、開口33から流出する。換言すると、開口33は装置10のエアレーションシステムの唯一の空気排出口となっている。
【0110】
図5Aをさらに具体的に参照すると、受入部31は、貯蔵容器60の中間部分62に対向するように拡幅部31Aを有することができ、拡幅部31Aの高さにおいて受入部31の壁が湾曲し、当該受入部31の断面を大きくしている。例えば、拡幅部31Aの高さにおける受入部31の壁の曲率は中間部分62の曲率と同一又は略同一とすることができる。拡幅部31A及び中間部分62のこのような曲率は、開口33付近における空気の流れを、矢印Fで示されている通りに方向転換する傾向がある。これは、蒸発した物質を含む空気の周辺空気への分散を向上する傾向を有し得る。
【0111】
空気吸入口98を作製できる態様は種々存在する。図示の例では、ケーシング30の下端は蓋部分85(図2,5A,5B及び5C参照)によって閉じられている。蓋部分85は複数の開口86を有し、これらの開口86は空気吸入口98を構成する。開口86はオプションとして、ケーシング30に形成された対応する開口(不図示)を蓋部分85に沿って延長したものとすることができる。蓋部分85はケーシング30と一体に作製することができ、又はケーシング30に固定することができる。これに代えて、蓋部分85をケーシング30に取り外し可能に固定することもできる。この場合、とりわけケーシング30の下端を空気流又は他の空気吸入口に接続し、この流路内又は空気吸入口内にファン120を配置することができる。
【0112】
本例では、空気ガイド部130(図1図5A図5B及び図5C参照)が受入部31の下端となっており、この空気ガイド部130は、特にファン120及び電気的構成要素にユーザが接触することを防止する底壁である。ここでは、空気ガイド部130は複数のスルーホール131を有し、これらのスルーホール131は、ファン120によって生成された空気の流れを通過させる。空気ガイド部130はさらに中央貫通開口部139も有し、この中央貫通開口部139にロッド101と加熱抵抗110とが通される。ロッド101は空気ガイド部130に固定することができる。
【0113】
ここで、空気ガイド部130は裾拡がりとなっているが、これに代えて平坦にすることもできる。さらに、図面では芯70の下面72Aが空気ガイド部130に接触しそうになっているのが示されているが、下面72Aの高さにおいて液体物質が蒸発できるように、下面72Aと空気ガイド部130との間に例えば数ミリメートルあるいは数センチメートルのオーダのギャップを設けることもできる。
【0114】
空気の流れを芯70の外壁全体に向けて、芯70の外壁における物質の蒸発を促進するため、スルーホール131の数、配置及び相対的な向きを種々の態様に設定することができる。さらに、図では空気ガイド部130に、寸法の小さい(例えば、内径が0.1mm~4mmのオーダ等)円形又は楕円形の断面のスルーホール131が多数設けられている構成が示されているが、スルーホールの寸法や形状を変えることが可能である。例えば不図示の一実施態様では、空気ガイド部130はスルーホール131と共に、又はスルーホール131に代えて、円環状又は円形の貫通開口部を有する。この実施態様では、空気ガイド部130がロッド101を支持することができ、上記の円環状又は円形の貫通開口部をロッド101の下方に配することができる。
【0115】
ファン120について種々の構成を採用することができる。本例では、ファン120は軸流ファンとなっている。ここでは、ファン120はケーシング30における加熱部材100及び空気ガイド部130の下方の内側窪み部129に定位置に保持される。内側窪み部129の底部には、芯70とファン120との間に位置する貫通開口部129Aが設けられており、この貫通開口部129Aを上記の空気の流れが通過する。これに代えて、ファン120を別の仕方でケーシング30内に定位置に保持することができる。さらに、ファン120は代替的に遠心ファンその他の種類のファンとすることもできる。
【0116】
外部からの不所望の粒子によって芯70が汚染されるリスクを抑えるため、空気吸入口98とファン120との間に空気フィルタ(不図示)を配置することができる。
【0117】
図中では空気吸入口98がケーシング30の下端であってファン120の下方に位置する構成が示されており、このファン120自体は芯70の下方に位置するが、ケーシング30における空気吸入口98及びファン120の位置を数多くの他の位置にすることが可能である。
【0118】
とりわけ、空気吸入口98はケーシング30の外部側壁39に配置することができる。この場合、空気吸入口98は場合によっては芯70よりも上壁32より下方に位置し、すなわち下方向Dにおいて芯70を越えるが、このことは必須ではない。ファン120は、図中に示すように芯70より下方に位置することができ、又は、受入部31を画定する内壁35と外部側壁39との間に位置することができる。もちろん後者の場合には、内壁35における芯70側に、空気ガイド部130のスルーホール131と同様のスルーホールを設けることが可能である。この後者の場合、ファン120も場合によっては芯70よりも上壁32より下方に位置し、すなわち下方向Dにおいて芯70を越えるが、このことは必須ではない。
【0119】
ファン120は、上記の制御装置によって制御することができる。
【0120】
貯蔵容器60に入っていた液体物質が全て使用された場合に同一のアセンブリと交換するため、取り外し可能なアセンブリ50を受入部31から取り出せることを条件に、取り外し可能なアセンブリ50を受入部31に定位置で保持できる態様は種々存在する。例えば、取り外し可能なアセンブリ50は受入部31に螺入又はクリッピングすることができる。一実施形態では、芯70が装置10に永遠に留まっている間は、取り外し可能なアセンブリ50は容器60に限定される。他の一実施形態では、芯70は容器60に依存せずに取り外し、置換することができる。
【0121】
ケーシング30には、例えば装置10の動作ステータスを上記の制御装置からの制御入力に依存して示すインジケータライト34を設けることができる。図中に示す例ではこのインジケータライト34は、1つ又は複数のカラー発光ダイオードによって照明される透光性リングの形態をとり、この透光性リングは、ケーシングの上壁32において開口33の周囲に延在する。しかし、インジケータライト34については他にも多数の実施形態が可能である。
【0122】
図5Cに、装置10を使用する可能な一態様が、当該装置10の下端を平面状の水平面Tに置くことを含むことが示されている。表面が「水平」であるとは、重力による加速度に対して垂直である場合である。表面Tはテーブルの表面、又はより一般的には家具の表面とすることができる。装置10の下端を表面Tに置けるようにするために、図に示されているように蓋部85の下面が平面状となっている。
【0123】
実施例
上記のディフュージング装置10の2つの実施例を、芯70の構成を除いて同一に作製した。ディフュージング装置10の2つの実施例の2つの異なる芯70を、以下「システム1」、「システム2」といい、それぞれ以下の特徴を有する:
-システム1:芯70は焼結アルミナ製であり、孔径120nm、均一多孔率40%である。芯70の高さh(図4B参照)は8mmである。
-システム2:芯70は焼結アルミナ製であり、孔径120nm、均一多孔率40%である。芯70の高さh(図4B参照)は25mmである。
【0124】
システム1又はシステム2を用いて3つの実験を行った。以下、これら3つの実験を「実験1」、「実験2」、「実験3」という。
【0125】
これら3つの実験において、「蒸発速度」とも称される拡散速度を測定した。これらの速度は、時間に対する当該システムの相対質量損失を測定する質量分析測定プロトコルにより測定したものであり、この測定では、いかなる質量損失も、蒸発が生じてその後に当該システムからの分子が放出されたことの結果であることを(目視検査によって)考慮しており、液体のいかなる漏れも排除している。
【0126】
下記にて説明する実験で用いた精油あるいは食品香料のうち一部のものは、予めジプロピレングリコール(DPG)で希釈した。これは、大気圧における融点が-39℃、沸点が230℃の物質である。DPGでの希釈は、以下の慣例により重量パーセントで表される:ルバーブ精油25重量%とDPGと(25% huile essentielle de rhubarbe-DPG)の混合物は、ルバーブ精油25重量%とDPGと(25% en masse d’huile essentielle rhubarbe dans du DPG)を含む。よって、かかる混合物を作製する一態様は、25gのルバーブ精油に75gのDPGを添加するという態様になる。
【0127】
<実験1>
実験装置:3つの異なる物質を順次、システム1を用いて拡散した:ルバーブ精油、ユーカリパイン精油、バラ精油、貯蔵容器60に都度、溶媒の添加により希釈されない精油5gを充填した。都度、20℃の周辺温度で、芯70を35℃の温度に維持し、ファン120を動作させて4m/hの空気の一定流を生成して、システム1を動作させた。
【0128】
結果:試験対象の3つの物質は芯70内を流れて蒸発した。その際、再凝縮は観測されず、拡散速度にばらつきがあった。時間に対する重量の損失は線形であった。これは、拡散速度が濃度に依存するパッシブ型ディフューザで観測されたものとは対照的である。嗅覚は極めて強力であった。各物質で測定された拡散速度を、下記の表1にて示す。
【0129】
【表1】
【0130】
<実験2>
実験装置:3つの異なる物質を順次、システム1を用いて拡散した:未希釈のユーカリパイン精油、25重量%のユーカリパイン精油とDPGとの混合物、50重量%のユーカリパイン精油とDPGとの混合物、貯蔵容器60に都度、総重量5gの物質を充填した。
都度、20℃の周辺温度で、芯70を35℃の温度に維持し、ファン120を動作させて4m/hの空気の一定流を生成して、システム1を動作させた。
【0131】
結果:上記の試験対象の物質は芯70内を流れて蒸発した。拡散速度は異なっており、これらを以下の表2に示す。その際、再凝縮は観測されなかった。時間に対する重量の損失は線形であった。これは、拡散速度が濃度に依存するパッシブ型ディフューザで観測されたものとは対照的である。DPGによる希釈が高くなると、嗅覚が弱くなることが定性的に認められた。物質は120mの部屋を15分未満で芳香を充満させたことが定性的に観測された。
【0132】
【表2】
【0133】
<実験3>
実験装置:5つの物質を順次、システム2を用いて拡散した:10重量%のマリンアロマ(海の香り)精油とDPGとの混合物、50重量%のマリンアロマ精油とDPGとの混合物、未希釈のマリンアロマ精油、50重量%のピエスモンテ(洋菓子)食品香料とDPGとの混合物、2重量%のロブスター食料香料とDPGとの混合物、貯蔵容器に都度、総重量15gの物質を充填した。都度、20℃の周辺温度で、芯70を32℃の温度に維持し、ファン120を動作させて4m/hの空気の一定流を生成して、システム2を動作させた。各食品香料で測定した拡散速度を、以下の表3に示す。
【0134】
結果:上記の試験対象の物質は芯70内を流れて蒸発した。拡散速度は異なっており、これらを以下の表3に示す(表3中、略語「e.o.」は精油を意味し、「f.f.」は食品香料を意味する)。時間に対する重量の損失は線形であった。嗅覚の品質は優れたものとなり、時間が経過しても一定であった。
【0135】
【表3】
【0136】
<変形形態>
図1~5Cに示されている装置10の構成はあくまで一例であり、他にも数多くの構成が考え得る。
【0137】
不図示の実施態様では、開口33は装置10のエアレーションシステムの空気排出口のうち1つを構成することができ、ケーシング30に1つ又は複数の追加の空気排出口が形成され、受入部31と流体連通することができる。この場合、エアレーションシステムから、蒸発した物質を含む空気の一部が、開口33に送られるのではなく上記の追加の空気排出口に送られる。
【0138】
第2の実施態様の装置210が図6に斜視図で示されていると共に、図7に断面図で示されている。これらの図において、上記にて図1~5Cを参照して説明した要素と同一の要素には同一の符号を付しており、再度の詳細な説明は省略する。装置210が装置10と相違する点は、ケーシング230が2つの受入部31を有し、その開口33が両方ともケーシング230の上壁232に放出することである。これら2つの受入部31がそれぞれ、取り外し可能なアセンブリ50を受け入れる。よって、2つの受入部31にそれぞれ異なる物質を入れた取り外し可能なアセンブリ50を挿入することにより、2つの異なる物質を拡散するために上記の装置210を使用することができる。もちろん、必要に応じてより多くの受入部31及び取り外し可能なアセンブリ50に同一の装置210を設けることができる。ここで、各受入部31に対してそれぞれファン120が設けられているが、これに代えて、全ての受入部31に対して1つのファン120を設けることも可能である。
【0139】
図6にはまた、装置210への電力供給が直流プラグ240によって行われること、ここではUSB-Cタイプによって行われることが示されており、図7には、装置210が複数のバッテリ241、例えばリチウムイオン型のバッテリ241を備えていることが示されており、これらのバッテリ241はケーシング230内に配置される。このようにして、装置210は商用電源が無くても動作することができる。
【0140】
さらに、装置210には運搬用取っ手290が設けられており、ここでは、ケーシング230の両側に両側の2つのジョイント291によって連結されている。これにより、ユーザが装置210を手で持ちやすくなる。
【0141】
装置210は、装置10と同様に商用電源から給電を受けることができ、及び/又は運搬用取っ手290を備えないことが可能である。
【0142】
図8の断面図に、第3の実施態様の装置310が示されている。同図において、上記にて図1~5Cを参照して説明した要素と同一の要素には同一の符号を付しており、再度の詳細な説明は省略する。
【0143】
装置310が装置10と相違する点は、受入部31が内部セパレータ壁336を備えていることである。内部セパレータ壁336は貯蔵容器60の周壁64と、受入部31を画定する内壁35と、の間にある。
【0144】
芯70、あるいはその本体部72の少なくとも下部分は内部セパレータ壁336によって包囲されていないのに対し、貯蔵容器60の周壁64はその全部が内部セパレータ壁336によって包囲されている。よって、芯70の高さにおける蒸発した物質を含む空気の流れは、周壁64に沿って流れるのではなく内部セパレータ壁336に沿って流れることとなる。従って、蒸発した物質の再凝縮が受入部31において生じた場合、再凝縮は周壁64では生じず、内部セパレータ壁336において生じることとなる。よって、再凝縮した物質を装置310のユーザが偶発的に触るリスクは有意に低減する。
【0145】
代替的に、貯蔵容器60の周壁64の一部のみを内部セパレータ壁336によって包囲することも可能であるが、その際には、蒸発した物質が周壁64において再凝縮することを抑制するため、周壁64のうち内部セパレータ壁336によって包囲されない面を制限することが好適である。
【0146】
内部セパレータ壁336は永続的にケーシング30内に位置する。本例では、内部セパレータ壁336は1つ又は複数のリブ339によって内壁35に接続されており、図8にはそのうちの1つのリブが示されている。
【0147】
上壁32及び内壁35はケーシング30の上部分30Cに形成されている。上部分30Cは、下方向Dにおいて側壁39に対して相対的に摺動可能であるように取り付けられている。より具体的にいうと上部分30Cは、
-貯蔵容器60が受入部31に入れられたとき、貯蔵容器60の上壁66が下方向Dにおいて上壁32を越える上昇位置と、
-貯蔵容器60が受入部31に入れられたとき、上壁66が上方向Uにおいて上壁32を越える下降位置と、
の間で摺動可能であるように取り付けられている。このようにして、上部分30Cが上昇位置(図8に示されている)にある際には装置310のユーザは貯蔵容器60に接近しにくくなるか又は接近不可能となることも可能であり、それに対して上部分30Cを下降位置に向かって摺動すると、ユーザは貯蔵容器60に接近しやすくなる。よって、上部分30Cの構成により装置310の使用をより安全にすることができる。
【0148】
ケーシング30はオプションとしてさらに、上部分30Cを下降位置にロックするための機械的ロック装置、例えばラチェット装置等、及び/又は、上部分30Cを上昇位置に復帰させるための復帰装置、例えばバネ等を備えることもできる。
【0149】
上記の1つ又は複数のリブ339は、内部セパレータ壁336を上部分30Cに固定して内部セパレータ壁336が上部分30Cと共に摺動するように内壁35に固定されることができる。これに代えて、内部セパレータ壁336が上部分30Cと摺動することを要することなく、リブ339を内壁35に形成されたノッチ(不図示)に入れることができ、このノッチは、上部分30Cが上昇位置と下降位置との間で進む距離に相当する分の遊びを有する。
【0150】
上記構成に代えて、上部分30Cは側壁39に対して相対的に摺動することを要しない。
【0151】
取り外し可能なアセンブリ50は、内部セパレータ壁336を介して受入部31内に固定して、ケーシング30に固定することができる。
【0152】
本例では、貯蔵容器60の周壁64は突起68を有し、突起68は、内部セパレータ壁336に形成され当該突起68側を向いている溝に入れられている。突起68及び溝の形状は、突起68と溝とが協働することによって、例えば螺合又はバヨネット型結合によって貯蔵容器60を固定できるようにされている。もちろん、このように螺合又はバヨネット型結合によって固定することは種々の態様で実現することができ、例えば複数の突起と、これに対応する複数の溝とによって実現することができる。内部セパレータ壁336への貯蔵容器60の固定は他の態様で行うことも可能であり、例えばクリッピング又はスナップ固定によって固定することが可能である。
【0153】
よって、いかなる場合においても、貯蔵容器60に既に芯70が接続された状態で貯蔵容器60が内部セパレータ壁336に固定される。換言すると、取り外し可能なアセンブリ50は一体として受入部31に挿入され、この受入部31への取り外し可能なアセンブリ50の挿入作業中に貯蔵容器60が内部セパレータ壁336に固定される。内部セパレータ壁336の下端は、芯70が図8に示されている位置に到達できるようにするための開口を有する。
【0154】
本実施形態では、芯70は、ドレン開口部61より大きい径のフランジ79を備えており、それに対して芯70の本体部72の断面はドレン開口部61の断面に等しいか、又はそれよりごく僅かに小さい。芯70は貯蔵容器60の開口した上端から当該貯蔵容器60に挿入され、その後、貯蔵容器60に物質が充填されて蓋66Lによって閉じられ、この蓋66Lが貯蔵容器60の上壁66となる。さらに、貯蔵容器60において図8に示されている位置に芯70を定位置に保持するため、保持要素(不図示)を設けることもできる。一実施形態では、保持要素はリング又はこれに類する部品の形態をとり、このリング又はこれに類する部品は、芯70に当接して蓋66Lによって貯蔵容器60を閉じるまで、貯蔵容器60の開口した上端から貯蔵容器60に圧入される。他の一実施形態では、保持要素は蓋66Lから芯70に延在するスペーサであり、蓋66Lが貯蔵容器を閉じるとスペーサの一端が芯70に支持される。他の一実施形態では保持要素は、貯蔵容器60の周壁64に形成されて当該貯蔵容器60の内部容積69に向かって突出する突起である襞の形態をとる。貯蔵容器60が蓋66Lによって閉じられる前に、芯70が襞を越えて押し込められる。芯70が襞を通過すると、襞は、逆方向において当該襞を通過した芯70と対向し、これにより芯70を定位置に保持する。芯70とドレン開口部61との連通部の密閉及び/又は蓋66Lの密閉した閉止状態を保証するように、1つ又は複数のシール部(不図示)を配置することができる。
【0155】
上記に代えて、装置310において、以上で説明した芯70と貯蔵容器60との種々の接続を行うことを想定することができる。
【0156】
装置310の動作は装置10及び装置210の動作と同一であるから、再度の詳細な説明は省略する。
【0157】
内部セパレータ壁336は、装置10あるいは装置210に形成することが可能である。また、摺動するか否かにかかわらず、ケーシング30の上部分30Cを装置10あるいは装置210において使用することも可能である。また、フランジ79を用いて芯70と貯蔵容器60とを接続する構成も、装置10あるいは装置210において使用することが可能である。
【0158】
図9の断面図に、第4の実施態様の装置410が概略的に示されている。同図において、上記にて図1~5Cを参照して説明した要素と同一の要素には同一の符号を付しており、再度の詳細な説明は省略する。
【0159】
装置410の固定部分420はフレーム430を備えており、その一部が図9に示されている。フレーム430の中空部分、例えばフレーム430の上端における中空部分に、受入部31が配されている。
【0160】
不図示の一態様では、フレーム430は非常に多数の形態をとることができ、例えば脚部を介して床に設置されるカラムの形態、床に固定されたカラムの形態等をとることができる。
【0161】
本実施形態では、受入部31はフレーム430の上端にあり、受入部31はフレーム430の周壁439と、フレーム430の上壁432と、フレーム430の内壁435,436とによって画定される。内壁435,436が空気ガイド部130を支持し、又は空気ガイド部130と一体で形成されている。不図示の一態様では、周壁439は円形、矩形その他の水平方向断面を有することができる。
【0162】
上壁432は、回動軸432Pによって周壁439に対して相対回動することにより、周壁439により画定された上部開口を開けるように回動して(図9中の432R参照)、取り外し可能なアセンブリ50を受入部31に挿入可能とすることができる。
【0163】
図9において概略的に示されているように、フレーム430は芯70の下方に空気吸入口498を有する。例えば、空気吸入口498はフレーム430の下端に配することができる。ファン120(図9中において破線で概略的に示されている)はここでは、フレーム430内において下方向Dにて空気吸入口498と空気ガイド部130との間に配置されている。これに代えて、空気吸入口498を空気流又は他の空気吸入口に接続し、この流路内又は空気吸入口内にファン120を配置することができる。
【0164】
上方向Uにおいて芯70の上方に、開口449が周壁439の全部又は一部に形成されている。例えば、図示のように開口449は貯蔵容器60側を向いている。
【0165】
動作時には、ファン120が空気吸入口498から、芯の外壁により構成される蒸発面へ空気の流れを送り、その後開口449へ送る。図9中の一点鎖線矢印Fは、空気の流れの向きと方向を示している。かかる構成により、ファン120と電気抵抗110とが動作すると、装置410は、蒸発した物質を含む空気の流れを生成し、この空気は開口449から流出する。換言すると、ここでは開口449は装置410のエアレーションシステムの唯一の空気排出口となっている。
【0166】
不図示の実施態様では、開口449を複数の開口に分割し、各開口がそれぞれ空気排出口を形成することができ、及び/又は、上壁432に1つ若しくは複数の追加の空気排出口を形成することができる。
【0167】
図10の断面図に、第5の実施形態の装置510が概略的に示されている。同図において、上記にて説明した要素と同一の要素には同一の符号を付しており、再度の詳細な説明は省略する。
【0168】
装置510が装置410と相違する点は、エアレーションシステムの空気排出口がフレーム430に対してオフセットしていることである。より具体的には、周壁439に連通開口565が形成されており、この連通開口565が受入部31を出口流路566と連通する。出口流路566は、連通開口565を介して受入部31と空気排出口569との流体連通を確立する。
【0169】
動作時には、ファン120が空気吸入口498から、芯の外壁により構成される蒸発面へ空気の流れを送り、その後連通開口565へ送られた後、出口流路566を介して空気排出口569へ送られる。図10中の一点鎖線矢印Fは、空気の流れの向きと方向を示している。かかる構成により、ファン120と電気抵抗110とが動作すると、装置510は、蒸発した物質を含む空気の流れを生成し、この空気は空気排出口569から流出する。換言すると、空気排出口569は装置510のエアレーションシステムの唯一の空気排出口となっており、当該空気排出口は、取り外し可能なアセンブリ50からある程度の距離に配することができる。かかる構成によって装置510は、取り外し可能なアセンブリ50からある程度の距離において、蒸発した物質を含む空気の流れを拡散することができる。
【0170】
空気排出口569は非常に多くの形態をとることができ、例えばノズル、メッシュ開口部等の形態をとることができる。空気排出口569は任意の向きとすることができ、及び/又は、保護要素が上記の通り出口流路566を介して空気の流れの流出を行えるようにすることを条件に、不図示の保護要素によって空気排出口569を保護することができる。
【0171】
不図示の実施態様では、複数の出口流路566を設け、各出口流路566をそれぞれ、空気排出口569において連通開口565と関連付けることができ、及び/又は、上壁432に1つ若しくは複数の追加の空気排出口を形成することができる。
【0172】
上記の内部セパレータ壁336及び/又は貯蔵容器60に対する芯70の種々の接続部を、装置410又は装置510に採用することが可能である。
【0173】
図11は、一実施態様の空気ガイド部130の概略的な断面図であり、当該実施態様は、ここまで説明した装置の全ての実施態様にて実施することができる。上記にて説明した要素と同一の要素には同一の符号を付しており、再度の詳細な説明は省略する。図11に示されている要素は、説明目的で概略的に示しているに過ぎない。
【0174】
本実施態様では加熱部材100は、例えば当該加熱部材100のロッド101の高さにおいて、下方向Dに芯70の下面72Aの下方に窪み部109を有する。窪み部109は、芯70の下面72A側に凹部を有する。
【0175】
よって、加熱部材100により芯70が加熱されることで芯70の高さにおいて液体状態の物質のドリッピングが生じ、このドリッピングした物質は窪み部109に溜まっていく。このように、物質が装置の例えばファン120等の他の要素に向かってドリッピングすることが防止される。一方、窪み部109が比較的高温であることにより、及び/又は、ファン120により生じる空気の流れの作用により、窪み部109に蓄積した物質が蒸発することができる。このようにして、ドリッピングした物質は蒸発して排出することができる。
【0176】
ロッド101及び/又は空気ガイド部材130は、窪み部109に向かってドリッピングした物質の流れを促進するため、種々の形状とすることができ、例えば下方向に向かって窪み部109の方向に僅かに傾斜した形状とすることができる。一方、ドリッピングした物質がスルーホール131を通過するのを阻止するため、スルーホール131を窪み部109から最小距離に配することができ、例えば窪み部109から3mm以上の距離に配することができる。
【0177】
不図示の実施態様では、窪み部109は加熱部材100に形成されずに空気ガイド部材130に形成され、又は、空気ガイド部材130及び加熱部材100がそれぞれ窪み部109を有する。
【0178】
ここまで、物質が常温において液体状態である実施形態について説明したが、これに代えて、物質は常温において固体状態とされる。例えば、前記物質の大気圧における融点は30℃超、例えば30℃~40℃である。この場合、貯蔵容器60は物質を常温で固体状態で収容する。加熱部材100によって芯70を加熱することにより、ドレン開口部61付近において物質が局所的に融解する。これにより液体となった物質は、その後芯70内を流れ、又は上記のように流れることができる。
【0179】
複数の特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に決して限定されることはなく、ここで記載されている手段と均等である全ての技術及びその組み合わせは、本発明の範囲に属する限りにおいて、本発明はその全てを包含することが明らかである。
【0180】
動詞「備える」又は「有する」及びその活用形を使用している場合、請求項に記載の要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。
【0181】
特許請求の範囲では、括弧書きのいかなる符号も請求項の限定と解すべきものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液体又は固体状態である物質を蒸気状態で空気中に分散するためのディフュージング装置(10;210;310;410,510)であって、
受入部(31)と、
前記物質を入れるための貯蔵容器(60)であって、ドレン開口部(61)を有し、当該ドレン開口部(61)の向きが前記ディフュージング装置の下方向(D)になるように前記受入部(31)に入れられる貯蔵容器(60)と、
前記ドレン開口部(61)の出口に配置されて当該ドレン開口部(61)に連通されたディスペンス部材であって、前記受入部(31)内に配された蒸発面を有する多孔質体(70)を含み、前記ディフュージング装置の下方向(D)において前記ドレン開口部(61)を越えて配されたディスペンス部材と、
前記多孔質体(70)内における前記物質の流れを制御するように当該多孔質体(70)の表面又は内部に配置された加熱部材(100)と、
空気吸入口(98)と、少なくとも1つのファン(120)と、少なくとも1つの空気排出口(33;449;569)と、を備えたエアレーションシステムと、
を備えており、
前記エアレーションシステムは、前記ディフュージング装置(10;210;310;410,510)の前記下方向(D)とは逆方向の上方向(U)に向かって前記蒸発面に吹き付けるように、前記空気吸入口(98)から前記少なくとも1つの空気排出口への空気の流れを生成する構成となっており、
前記ディフュージング装置は、前記下方向(D)が重力による加速度を基準として下部に向かう方向であると共に前記上方向(U)が重力による加速度を基準として上部に向かう方向である使用ポジションで使用されるものであり、
前記物質は、温度に依存して可変の粘度を有する液体物質であり、
前記粘度は、0℃を上回る第1の温度より低いいかなる常温の温度においても前記使用ポジションでは前記物質が前記多孔質体(70)内を流れない粘度であって、前記第1の温度より高い第2の温度では、前記使用ポジションでは前記物質が前記多孔質体(70)内を流れるものである
ことを特徴とするディフュージング装置(10;210;310;410,510)。
【請求項2】
前記受入部(31)は、前記エアレーションシステムの前記空気排出口又は前記エアレーションシステムの前記空気排出口のうち1つの空気排出口を形成する開口(33)であって前記ディフュージング装置の前記上方向(U)の向きの開口(33)を介して屋外に放出する、
請求項1記載のディフュージング装置(10;210;310)。
【請求項3】
前記ドレン開口部(61)は前記貯蔵容器(60)の第1端にあり、
前記貯蔵容器(60)は、前記第1端と反対側の第2端に拡幅部(62,63)を有し、
前記拡幅部(62,63)は前記貯蔵容器を保持しやすくするものであり、前記開口(33)から流出する空気の流れを前記ディフュージング装置の周囲に方向転換するように前記ディフュージング装置の前記上方向(U)において前記開口(33)を越えている、
請求項2記載のディフュージング装置(10;210;310)。
【請求項4】
前記ファン(120)は前記ディフュージング装置の前記下方向(D)において前記多孔質体(70)を越えている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項5】
前記空気吸入口(98)は前記ディフュージング装置の前記下方向(D)において前記多孔質体(70)を越えている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項6】
前記エアレーションシステムはさらに空気ガイド部材(130)を備えており、
前記空気ガイド部材(130)は、前記蒸発面を向いている側に少なくとも1つのスルーホール(131)を有する、
請求項1から5までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項7】
前記加熱部材(100)は電気抵抗(110)を有し、
前記電気抵抗(110)は前記多孔質体(70)の外表面に直接配置され、又は前記多孔質体(70)に形成された開口(75)、好適にはブラインドホールに前記電気抵抗(110)の一部が入れられている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項8】
前記加熱部材(100)は前記空気ガイド部材(130)を貫通する、
請求項6を引用する請求項7記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項9】
さらに電子回路カード(150)を備えており、
前記電気抵抗(110)は前記電子回路カード(150)から電力の供給を受ける、
請求項7又は8記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項10】
前記多孔質体(70)における目標温度に依存して前記加熱部材を制御するように構成された制御装置をさらに備えている、
請求項1から9までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項11】
前記制御装置は前記電子回路カード(150)に搭載されている、
請求項9を引用する請求項10記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項12】
前記制御装置はさらに、前記ファン(120)の動作速度を制御するように構成されている、
請求項10又は11記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項13】
前記物質は、ヒト又は動物に使用可能な芳香品、情報化学物質、化粧品、精油、香水、殺菌剤、又は中和剤並びに植物防除用剤及び農業用剤により構成された群から選択された少なくとも1つの化合物である
請求項1から12までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項14】
前記物質は、ヒトに使用可能な芳香品、化粧品、精油、香水、殺菌剤、又は中和剤により構成された群から選択された少なくとも1つの化合物である
請求項13記載のディフュージング装置(10;210;310;410;510)。
【請求項15】
常温で液体又は固体状態であり貯蔵容器に入っている物質を蒸気状態で空気中に分散するための請求項1から14までのいずれか1項記載のディフュージング装置(10;210;310;410,510)の使用であって、
前記ディフュージング装置を、当該ディフュージング装置の下方向(D)が重力による加速度を基準として下部に向かう方向である前記使用ポジションとする前記ディフュージング装置(10;210;310;410,510)の使用。
【請求項16】
前記ディフュージング装置(10;210;310;410,510)を閉空間内に、又は沈着から遮蔽される場所に配する、
請求項15記載の使用。
【国際調査報告】