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特表2024-541385神経精神疾患の治療及び/又は予防のための薬物の調製における、脳内の鉄含有量を減少させる薬物の応用
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  • 特表-神経精神疾患の治療及び/又は予防のための薬物の調製における、脳内の鉄含有量を減少させる薬物の応用 図1
  • 特表-神経精神疾患の治療及び/又は予防のための薬物の調製における、脳内の鉄含有量を減少させる薬物の応用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】神経精神疾患の治療及び/又は予防のための薬物の調製における、脳内の鉄含有量を減少させる薬物の応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/4418
A61K31/4422
A61P25/00
A61P25/18
A61P43/00 111
A61P25/30
A61P25/36
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529160
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 CN2022095270
(87)【国際公開番号】W WO2023155327
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】202210148209.7
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513210242
【氏名又は名称】蘇州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鎮 学初
(72)【発明者】
【氏名】顔 鵬挙
(72)【発明者】
【氏名】李 寧寧
(72)【発明者】
【氏名】高 樹柳
(72)【発明者】
【氏名】史 智峰
(72)【発明者】
【氏名】高 瑞辰
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA56
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC01
4C076FF04
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF39
4C076FF43
4C076FF52
4C076FF57
4C076FF67
4C084AA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA06
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA181
4C084ZA182
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC391
4C084ZC392
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086HA11
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA06
4C086ZA02
4C086ZA18
4C086ZC20
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明は、脳内の鉄含有量を減少させる薬物の神経精神疾患の治療及び/又は予防のための薬物の調製における応用を提供し、薬物の新たな用途の技術分野に属する。本発明は、鉄含有量を減少させる飲食物/薬物が、投与後、麻薬又は薬物中毒行動の形成を防ぐことができることを提供し、それにより麻薬又は薬物の中毒又は依存に対する予防及び治療を実現する。前記薬物は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤又は鉄キレート剤である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神疾患を予防及び/又は治療する薬物の調製における、脳内の鉄含有量を減少させる薬物の応用。
【請求項2】
前記精神疾患は、麻薬、薬物中毒、又は依存によって引き起こされる精神疾患であることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記麻薬は、モルヒネ又はメタンフェタミンであることを特徴とする請求項2に記載の応用。
【請求項4】
前記薬物は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤系薬物又は鉄キレート剤系薬物であることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項5】
前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤系薬物は、式Iに示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩であり、式Iの構造は、
であることを特徴とする請求項4に記載の応用。
【請求項6】
前記鉄キレート剤系薬物は、式IIに示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩であり、式IIの構造は、
であることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項7】
前記薬学的に許容され得る塩は、無機酸塩、有機酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩のうちの1つ又は複数を含むことを特徴とする請求項6に記載の応用。
【請求項8】
前記精神疾患を予防及び/又は治療する薬物は、薬学的に許容され得る担体を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項9】
前記担体は、崩壊剤、希釈剤、潤滑剤、接着剤、湿潤剤、矯味剤、懸濁剤、界面活性剤及び防腐剤から選択される1種又は複数種であることを特徴とする請求項8に記載の応用。
【請求項10】
前記精神疾患を予防及び/又は治療する薬物の剤型は、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤、丸剤、内服液、乳剤、経口懸濁剤、乾燥エキス剤又は注射剤であることを特徴とする請求項1に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の新たな用途の技術分野に属し、特に、神経精神疾患の治療及び/又は予防のための薬物の調製における、脳内の鉄含有量を減少させる薬物の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
麻薬とは、依存性を引き起こし、中枢神経系を興奮又は抑制を生じさせる結果として、幻覚を引き起こしたり、運動機能、思考、行動、感覚、気分を損ねる可能性のある天然、半合成又は合成の物質を指す。アヘン、モルヒネ、ヘロイン、コカイン、アンフェタミン、メタンフェタミン(ヒロポン)などを含む。麻薬中毒は、麻薬依存、薬物乱用又は物質使用障害とも称され、麻薬を強迫的に求めて使用することを特徴とする慢性再発性脳疾患である。現在、世界では、170以上の国及び地域で麻薬密売、130以上の国及び地域で麻薬消費の問題が起きている。世界で麻薬を使用する人の数は3億人を超え、そのうち薬物中毒患者は3500万を超えている。麻薬に関わる死亡者数は過去十年間に17.5%増加している。我が中国には、2020年末時点で合計180.1万人の麻薬中毒者がおり、2020年には55.49トンの麻薬が押収された。麻薬中毒は既に深刻な社会問題となっており、我々の生活に大きな医療的及び経済的負担を与えている。現在臨床的に麻薬中毒を絶つ薬物は、主にメタドンを代表とするアヘン系薬物及びクロニジンを代表とする非アヘン系薬物である。アヘン系薬物は、症状をより良く制御できるが、それ自身が中毒性を有し、非アヘン系薬物は、中毒性は有しないが、禁断症状が明らかであって副作用が比較的大きい。臨床的に薬物/麻薬(特に新規合成麻薬)依存症に対する特に有効な治療薬物や明確な治療スキームはまだない。従って、臨床的に麻薬中毒を予防し、禁断症状を効果的に制御し、再発を防ぎ、副作用がほとんどない新規薬物を開発することが緊急に必要とされている。
【0003】
バダデュスタット(AKB-6548/Vadadustat)は、新規な経口低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の一種である。複数の臨床研究によって、バダデュスタットは腎性貧血を大幅に改善して、慢性腎臓病患者のエリスロポエチン及びヘモグロビンレベルを向上できることが証明されている。同時に、ヘプシジンの減少及びトランスフェリンの増加により、重篤な副作用なしに、鉄代謝を調節することができるが、麻薬又は薬物の中毒又は依存に対する効果はまだ報告されていない。
【0004】
デフェリプロン(Deferiprone/CP20/3-ヒドロキシ-1,2-ジメチル-4-(1H)-ピリドン)は、鉄キレート剤の一種であり、フェリチン及びヘモジデリン中の鉄イオンを除去することができ、急性鉄中毒及び慢性鉄蓄積による疾患を治療するために使用される。デフェリプロンは主に、既存のキレート剤による治療に抵抗のある、又は受け入れたがらない、過剰な鉄負荷を伴うサラセミア患者を治療するために臨床的に使用される。多くの研究には過剰の鉄を錯体化することで鉄の蓄積によるパーキンソン、老人性痴呆疾患及び鉄含有量過多による酸化ストレス損傷を緩和することができることが報告されているが、麻薬又は薬物の中毒又は依存に対する効果はまだ報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は、脳内の鉄含有量を減少させる薬物の神経精神疾患の治療及び/又は予防のための薬物の調製における応用を提供し、前記脳内の鉄含有量を減少させる薬物は、バダデュスタット及びデフェリプロンから選択されるものであり、麻薬又は薬物中毒を予防及び/又は治療する薬物を提供する方向を示した。本発明の目的は、薬物又は飲食物により脳内の鉄含有量を減少させることで麻薬又は薬物中毒を予防及び治療する戦略を提供することにある。
【0006】
現在臨床的に麻薬中毒を予防・治療する薬物が不足していることを考慮して、本発明は、脳内の鉄含有量を減少させる薬物又は飲食物の薬物又は麻薬中毒又は依存の予防及び治療における新たな応用を提供する。具体的には、本発明は、バダデュスタット、デフェリプロン及び低鉄含有量飲食物の麻薬又は薬物の中毒又は依存を予防及び治療するための薬物の調製における応用を提供する。現在、脳内の鉄含有量を調節することで麻薬又は薬物の中毒又は依存を予防及び治療する関連報告はまだない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
精神疾患を予防及び/又は治療する薬物の調製における、脳内の鉄含有量を減少させる薬物の応用である。前記薬物は脳内の鉄含有量を減少させることで、麻薬又は薬物の中毒又は依存に対して予防及び治療効果がある。
【0008】
本発明の一実施例では、前記精神疾患は、麻薬、薬物中毒、又は依存によって引き起こされる精神疾患である。
【0009】
本発明の一実施例では、前記麻薬は、モルヒネ又はメタンフェタミンである。
【0010】
本発明の一実施例では、前記薬物は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤系薬物又は鉄キレート剤系薬物である。
【0011】
本発明の一実施例では、前記低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤系薬物は、式Iに示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩であり、式Iの構造は、
【0012】
本発明の一実施例では、前記鉄キレート剤系薬物は、式IIに示される化合物又はその薬学的に許容され得る塩であり、式IIの構造は、
【0013】
本発明の一実施例では、前記薬学的に許容され得る塩は、無機酸塩、有機酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩のうちの1つ又は複数を含む。
【0014】
本発明の一実施例では、前記精神疾患を予防及び/又は治療する薬物は、薬学的に許容され得る担体を更に含む。
【0015】
本発明の一実施例では、前記担体は、崩壊剤、希釈剤、潤滑剤、接着剤、湿潤剤、矯味剤、懸濁剤、界面活性剤及び防腐剤から選択される1種又は複数種である。
【0016】
本発明の一実施例では、前記精神疾患を予防及び/又は治療する薬物の剤型は、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、顆粒剤、丸剤、内服液、乳剤、経口懸濁剤、乾燥エキス剤又は注射剤である。
【0017】
本発明の一実施例では、崩壊剤は、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム及びアルギン酸から選択される1種又は複数種である。
【0018】
本発明の一実施例では、前記潤滑剤は、微粉末シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク及び無水シリカゲルから選択される1種又は複数種である。
【0019】
本発明の一実施例では、前記接着剤は、アラビアゴム、ゼラチン、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース及びポリビニルピロリドンから選択される1種又は複数種であり、前記湿潤剤は、ドデシル硫酸ナトリウムから選択されるものであり、前記矯味剤は、アスパルテーム、ステビオサイド、サッカロース、マルチトール及びクエン酸のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0020】
本発明の一実施例では、前記懸濁剤は、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロース及びステアリン酸アルミニウムゲルから選択される1種又は複数種であり、前記界面活性剤はレシチン、ソルビタンモノオレエート及びモノステアリン酸グリセロールから選択される1種又は複数種であり、前記防腐剤は、メチルパラベン及び/又はプロピルパラベンから選択されるものである。
【0021】
本発明は、低鉄含有量飼料でマウスを3~4週間連続で飼育してマウス脳鉄欠乏モデルを確立し、次にマウスにメタンフェタミンを(2mg/kg/日)腹腔内注射し、マウスにメタンフェタミン条件付き場所選好訓練を4日間行って麻薬中毒モデルを構築した。訓練終了後、マウスがメタンフェタミン側に留まった選好スコアを測定したところ、低鉄含有量飼料飼育群のマウスのメタンフェタミン側への選好スコアは通常飼料対照群と比較して大幅に低下することが示された。
【0022】
本発明は、低鉄含有量飼料でマウスを3~4週間連続で飼育してマウス脳鉄欠乏モデルを確立し、次にマウスにモルヒネを(20mg/kg/日)腹腔内注射し、マウスにモルヒネ条件付き場所選好訓練を7日間行って麻薬中毒モデルを構築した。訓練終了後、マウスがモルヒネ側に留まった選好スコアを測定したところ、低鉄含有量飼料飼育群のマウスのモルヒネ側への選好スコアは通常飼料対照群と比較して大幅に低下することが示された。
【0023】
本発明は、マウスにバダデュスタット(10mg/kg/日)を毎日腹腔内注射し、6時間後に、マウスにモルヒネを(20mg/kg/日)腹腔内注射し、マウスにモルヒネ条件付き場所選好訓練を7日間行って麻薬中毒モデルを構築した。訓練終了後、マウスがモルヒネ側に留まった選好スコアを測定したところ、バダデュスタットの投与はマウスのモルヒネ側への選好スコアを大幅に低下させることができることが示された。
【0024】
本発明は、脳内のステレオタキシック・カテーテル埋め込み(背側海馬)によってマウスに13mg/mLのデフェリプロンを1μL与え、6時間後に、マウスにモルヒネを(20mg/kg/日)腹腔内注射し、マウスモルヒネ条件付き場所選好訓練を7日間行って麻薬中毒モデルを構築した。訓練終了後、マウスがモルヒネ側に留まった選好スコアを測定したところ、デフェリプロン投与はマウスのモルヒネ側への選好スコアを大幅に低下させることができることが示された。
【0025】
低鉄含有量飲食物、デフェリプロン及びバダデュスタットはいずれも脳内の鉄含有量を低下させてモルヒネ及びメタンフェタミン誘発の条件付き場所選好スコアを低下させることができる。従って、脳内の鉄含有量を減少させる薬物又は飲食物配合は麻薬又は薬物の中毒又は依存のための予防及び治療において顕著な効果を有する。
【発明の効果】
【0026】
従来技術と比較して、本発明の上記の技術的解決策は以下の利点を有する。
(1)現在臨床的に麻薬中毒を予防・治療する薬物が不足していることを考慮すると、既存のバダデュスタット、デフェリプロンなどの脳内の鉄含有量を減少させる薬物はモルヒネ及びメタンフェタミンの投与後の中毒行動の形成を防ぐことができる(例えば、低鉄含有量飲食物、10mg/kg/日のバダデュスタット及びデフェリプロンはモルヒネ及びメタンフェタミン誘発の条件付き場所選好スコアを大幅に低下させることができる)。
(2)臨床的に新規麻薬又は薬物中毒(例えば、メタンフェタミンなど)又は依存を予防又は治療する薬物はまだなく、既存の脳内の鉄含有量を減少させる薬物(バダデュスタット及びデフェリプロンなど)はメタンフェタミン中毒又は依存に対して効果がある。
(3)臨床的にメタドンを代表とするアヘン系薬物はアヘン系薬物中毒(例えば、モルヒネなど)を治療する際にそれ自身が中毒性を有するため、不適切に使用すると薬物依存につながる可能性があるが、既存の脳内の鉄含有量を減少させる薬物(バダデュスタット及びデフェリプロンなど)は麻薬中毒の治療過程においてそれ自身は中毒性を有しない。
(4)臨床的にクロニジンを代表とする非アヘン類中毒治療薬物は長期間使用すると重篤な副作用が発生してしまう。既存の鉄含有量を減少させる薬物(バダデュスタット及びデフェリプロンなど)は臨床的に耐性が高く、副作用が少なく、合理的な投薬量では重篤な副作用の事例はまだ報告されていない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の内容をより容易且つ明確に理解するために、以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施例によって本発明を更に詳しく説明する。
図1図1は、本発明に係る低鉄含有量飲食物のマウスの脳内の鉄含有量への作用効果を示す図である。
図2図2は、本発明に係るマウスのメタンフェタミン中毒に対する低鉄含有量飲食物の作用効果を示す図である。
図3図3は、本発明に係る低鉄含有量飲食物のマウスモルヒネ中毒への作用効果を示す図である。
図4図4は、本発明に係るバダデュスタットのモルヒネ中毒への作用効果を示す図である。
図5図5は、本発明に係るデフェリプロンのモルヒネ中毒への作用効果を示す図である。 本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下に具体的に説明される各技術的特徴(例えば、実施例)を互いに組み合わせて、新たな又は好適な技術的解決策を構成することができることを理解されたい。紙幅の都合上、ここでは詳細な説明は省略する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、当業者が本発明をより良く理解して実施できるように、図面を参照しながら具体的な実施例によって本発明を更に説明するが、列挙した実施例は本発明を限定するものではない。
【0029】
実施例1 低鉄含有量飲食物のマウス脳内の鉄含有量への調節作用
1 実験材料
本発明で使用したC57BL/6Jマウスは上海斯莱克実験動物有限責任会社から購入し、本発明で使用した低鉄含有量飼料は江蘇協同生物技術有限会社から購入した。
【0030】
2 実験方法
2.1 マウスへの投薬方法
36匹(8週齢、体重22~25g)の雄性C57BL/6JマウスをSPFレベルの動物室で飼育し、1週間適応飼育してからランダムに通常飲食物対照群(3匹)及び低鉄含有量飲食物対照群(3匹)に分けた。低鉄含有量飲食物群のマウスを低鉄含有量飼料で3~4週間継続的に飼育し、通常飲食物群のマウスを通常飼料で飼育した。
【0031】
2.2 マウスの脳内の鉄含有量の測定
上記のマウスを3~4週間飼育した後、マウスの脳組織を採取した。組織サンプルをポリテトラフルオロエチレン硝化内タンクに入れて、硝酸を5mL加えて一夜浸漬する。内蓋を被せて、ステンレスジャケットを締め付け、定温乾燥器に入れて、80℃で2h保持し、120℃で2h保持し、160℃で4h保持し、乾燥器に入れたまま室温まで自然冷却し、開封後は酸性溶液がほぼ乾燥するまで加熱し、硝化液を25mLのメスフラスコに吸い取り、少量の硝酸性溶液(1%)で内タンク及び内蓋を3回洗浄し、洗浄液をメスフラスコに混合して1%の硝酸で目盛りまで定容した。誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)により鉄元素含有量を測定した。
【0032】
3 実験結果
図1に示すように、低鉄含有量飲食物群のマウスは通常飲食物群のマウスと比較して、線条体、海馬、皮質組織中の鉄含有量がいずれも大幅に減少しているが、これは低鉄含有量飲食物が脳内の鉄含有量の減少につながる可能性のあることを示している。
【0033】
実施例2 マウスのメタンフェタミン中毒に対する低鉄含有量飲食物の作用
1 実験材料
本発明で使用したC57BL/6Jマウスは上海斯莱克実験動物有限責任会社から購入し、本発明で使用した低鉄含有量飼料は江蘇協同生物技術有限会社から購入した。
【0034】
2 実験方法
2.1 マウスへの投薬方法
36匹(8週齢、体重22~25g)の雄性C57BL/6JマウスをSPFレベルの動物室で飼育し、1週間適応飼育してからランダムに通常飲食物+生理食塩水対照群(11匹)、通常飲食物+メタンフェタミン群(13匹)、低鉄含有量飲食物+生理食塩水対照群(13匹)、低鉄含有量飲食物+メタンフェタミン群(12匹)に分けた。低鉄含有量飲食物群のマウスを低鉄含有量飼料で3~4週間継続的に飼育し、通常飲食物群のマウスを通常飼料で飼育した。対照群のマウスに生理食塩水を腹腔内注射し、メタンフェタミン群のマウスにメタンフェタミンを(2mg/kg/日)腹腔内注射した。4日間連続で注射した。
【0035】
2.2 マウス条件付き場所選好実験スコア
上海吉量ソフトウェア科技有限会社製の条件付き場所選好ボックス(実験器具)を行動学訓練及び検出器具として使用した。実験器具は、薬剤入りボックス(ブラックボックス)と薬剤なしボックス(ホワイトボックス)の2つのボックス(2つのボックス同士は密閉可能で、連通可能である)に分けた。1日目に、マウスを実験器具内(連通状態)に入れて900秒間自由に活動させてマウスの薬剤入りボックス内での活動時間をベースライン値として記録・分析した。2日目に麻薬中毒訓練を行って、群分け要件に従って投薬してからマウスを薬剤入りボックス内(密閉状態)に拘束して、合計4日間一日当たり60分間訓練した。訓練終了後、6日目にマウスを実験器具内に入れて900秒間自由に活動(連通状態)させてマウスの薬剤入りボックス内での活動時間を記録・分析した。6日目のマウスの薬剤入りボックスでの活動時間から1日目のマウスの薬剤入りボックス内での活動時間(ベースライン)を引いた差を選好スコアとした。
【0036】
3 実験結果
図2に示すように、通常飲食物+生理食塩水の対照群と通常飲食物+メタンフェタミン群の選好スコアには有意差があり、2mg/kg/日のメタンフェタミン中毒モデルの確立に成功したことを示している。通常飲食物+メタンフェタミン群及び低鉄含有量飲食物+メタンフェタミン群の選好スコアには有意差があり、低鉄含有量飲食物による脳内低鉄含有量がメタンフェタミン中毒に対して作用していることを示している。
【0037】
実施例3 マウスのモルヒネ中毒に対する低鉄含有量飲食物の作用
1 実験材料
本発明で使用したC57BL/6Jマウスは上海斯莱克実験動物有限責任会社から購入し、本発明で使用した低鉄含有量飼料は江蘇協同生物技術有限会社から購入した。
【0038】
2 実験方法
2.1 マウスへの投薬方法
36匹(8週齢、体重22~25g)の雄性C57BL/6JマウスをSPFレベルの動物室で飼育し、1週間適応飼育してからランダムに通常飲食物+生理食塩水対照群(10匹)、通常飲食物+モルヒネ群(10匹)、低鉄含有量飲食物+生理食塩水対照群(8匹)、低鉄含有量飲食物+モルヒネ群(9匹)に分けた。低鉄含有量飲食物群のマウスを低鉄含有量飼料で3~4週間継続的に飼育し、通常飲食物群のマウスを通常飼料で飼育した。対照群のマウスに生理食塩水を腹腔内注射し、モルヒネ群のマウスにモルヒネを(20mg/kg/日)腹腔内注射した。7日間連続で注射した。
【0039】
2.2 マウス条件付き場所選好実験スコア
上海吉量ソフトウェア科技有限会社製の条件付き場所選好ボックス(実験器具)を行動学訓練及び検出器具として使用した。実験器具は、薬剤入りボックス(ブラックボックス)と薬剤なしボックス(ホワイトボックス)の2つのボックス(2つのボックス同士は密閉可能で、連通可能である)に分けた。1日目に、マウスを実験器具内(連通状態)に入れて900秒間自由に活動させてマウスの薬剤入りボックス内での活動時間をベースライン値として記録・分析した。2日目に麻薬中毒訓練を行って、群分け要件に従って投薬してからマウスを薬剤入りボックス内(密閉状態)に拘束して、合計7日間一日当たり30分間訓練した。訓練終了後、9日目にマウスを実験器具内に入れて900秒間自由に活動(連通状態)させてマウスの薬剤入りボックス内での活動時間を記録・分析した。9日目のマウスの薬剤入りボックスでの活動時間から1日目のマウスの薬剤入りボックス内での活動時間(ベースライン)を引いた差を選好スコアとした。
【0040】
3 実験結果
図3に示すように、通常飲食物+生理食塩水の対照群と通常飲食物+モルヒネ群の選好スコアには有意差があり、20mg/kg/日のモルヒネ中毒モデルの確立に成功したことを示している。通常飲食物+モルヒネ群及び低鉄含有量飲食物+モルヒネ群の選好スコアには有意差があり、低鉄含有量飲食物による脳内低鉄含有量がモルヒネ中毒に対して作用していることを示している。
【0041】
実施例4 マウスのモルヒネ中毒に対するバダデュスタットの作用
1 実験材料
本発明で使用したC57BL/6Jマウスは上海斯莱克実験動物有限責任会社から購入し、本発明で使用したバダデュスタットはSelleck会社から購入した。
【0042】
2 実験方法
2.1 マウスへの投薬方法
36匹(8週齢、体重22~25g)の雄性C57BL/6JマウスをSPFレベルの動物室で飼育し、1週間適応飼育してからランダムに生理食塩水対照群(10匹)、モルヒネ群(11匹)、バダデュスタット群(10匹)及びモルヒネ+バダデュスタット群(11匹)に分けた。生理食塩水対照群のマウスに生理食塩水を腹腔内注射し、モルヒネ群のマウスにモルヒネを(20mg/kg/日)腹腔内注射し、モルヒネ+バダデュスタット群のマウスにまずバダデュスタット(10mg/kg/日)を腹腔内注射し、6時間後に、モルヒネを(20mg/kg/日)腹腔内注射した。7日間連続で注射した。
【0043】
2.2 マウス条件付き場所選好実験スコア
上海吉量ソフトウェア科技有限会社製の条件付き場所選好ボックス(実験器具)を行動学訓練及び検出器具として使用した。実験器具は、薬剤入りボックス(ブラックボックス)と薬剤なしボックス(ホワイトボックス)の2つのボックス(2つのボックス同士は密閉可能で、連通可能である)に分けた。1日目に、マウスを実験器具内(連通状態)に入れて900秒間自由に活動させてマウスの薬剤入りボックス内での活動時間をベースライン値として記録・分析した。2日目に麻薬中毒訓練を行って、群分け要件に従って投薬してからマウスを薬剤入りボックス内(密閉状態)に拘束して、合計7日間一日当たり30分間訓練した。訓練終了後、9日目にマウスを実験器具内に入れて900秒間自由に活動(連通状態)させてマウスの薬剤入りボックス内での活動時間を記録・分析した。9日目のマウスの薬剤入りボックスでの活動時間から1日目のマウスの薬剤入りボックス内での活動時間(ベースライン)を引いた差を選好スコアとした。
【0044】
3 実験結果
図4に示すように、生理食塩水の対照群とモルヒネ群の選好スコアには有意差があり、20mg/kg/日のモルヒネ中毒モデルの確立に成功したことを示している。モルヒネ群及びモルヒネ+バダデュスタット群の選好スコアには有意差があり、10mg/kg/日のバダデュスタットがモルヒネ中毒に対して作用していることを示している。
【0045】
実施例5 マウスのモルヒネ中毒に対するデフェリプロンの予防作用
1 実験材料
本発明で使用したC57BL/6Jマウスは上海斯莱克実験動物有限責任会社から購入し、本発明で使用したデフェリプロンは米国Sigma-Aldrich会社から購入したものである。
【0046】
2 実験方法
2.1 マウスへの投薬方法
36匹(8週齢、体重22~25g)の雄性C57BL/6JマウスをSPFレベルの動物室で飼育し、1週間適応飼育してからランダムに生理食塩水対照群(8匹)、モルヒネ群(7匹)、デフェリプロン群(9匹)及びモルヒネ+デフェリプロン群(8匹)に分けた。生理食塩水対照群のマウスに生理食塩水を腹腔内注射し、モルヒネ群のマウスにモルヒネを(20mg/kg/日)腹腔内注射し、モルヒネ+デフェリプロン群のマウスにまずデフェリプロンを(13mg/mL、1μL)投与し、6時間後に、モルヒネを(20mg/kg/日)腹腔内注射した。7日間連続で注射した。
【0047】
2.2 マウス条件付き場所選好実験スコア
上海吉量ソフトウェア科技有限会社製の条件付き場所選好ボックス(実験器具)を行動学訓練及び検出器具として使用した。実験器具は、薬剤入りボックス(ブラックボックス)と薬剤なしボックス(ホワイトボックス)の2つのボックス(2つのボックス同士は密閉可能で、連通可能である)に分けた。1日目に、マウスを実験器具内(連通状態)に入れて900秒間自由に活動させてマウスの薬剤入りボックス内での活動時間をベースライン値として記録・分析した。2日目に麻薬中毒訓練を行って、群分け要件に従って投薬してからマウスを薬剤入りボックス内(密閉状態)に拘束して、合計7日間一日当たり30分間訓練した。訓練終了後、9日目にマウスを実験器具内に入れて900秒間自由に活動(連通状態)させてマウスの薬剤入りボックス内での活動時間を記録・分析した。9日目のマウスの薬剤入りボックスでの活動時間から1日目のマウスの薬剤入りボックス内での活動時間(ベースライン)を引いた差を選好スコアとした。
【0048】
3 実験結果
図5に示すように、生理食塩水の対照群とモルヒネ群の選好スコアには有意差があり、20mg/kg/日モルヒネ中毒モデルの確立に成功したことを示している。モルヒネ群及びモルヒネ+デフェリプロン群の選好スコアには有意差があり、デフェリプロンがモルヒネ中毒に対して作用していることを示している。
【0049】
明らかに、上記の実施例は単に明確に説明するために挙げた例であり、実施形態を限定するものではない。当業者であれば、上記の説明を基に更に他の異なる形式の変化又は変動を行うことができる。ここではすべての実施形態を挙げることができず、またその必要もない。そして、そこから派生する明らかな変更又は修正は依然として本発明の保護範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】