(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】セパレータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/489 20210101AFI20241031BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20241031BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20241031BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20241031BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20241031BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20241031BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M50/491
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/414
H01M50/403 D
H01M50/449
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529214
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 KR2022010879
(87)【国際公開番号】W WO2023096068
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0165977
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519103067
【氏名又は名称】ダブル・スコープコリア カンパニー,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522268535
【氏名又は名称】ダブル-スコープ チュンジュ プラント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】パク チャン デ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン レ
(72)【発明者】
【氏名】リー ボム イ
(72)【発明者】
【氏名】キム キョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ギョン ソク
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC04
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE15
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH02
5H021HH03
(57)【要約】
本発明の一態様は、多孔性支持体と、親水性高分子および溶媒を含む溶液によって前記多孔性支持体の表面に塗布された親水性高分子と、を含み、下記式を満たすセパレータおよびその製造方法を提供する。
<式>
0.015≦(C×D)/(A×B)≦0.65
上記式中、Aは、前記多孔性支持体の厚さ(μm)であり、Bは、前記多孔性支持体の透気度(Gurley、秒/100ml)であり、Cは、前記多孔性支持体の気孔率(体積%)であり、Dは、前記溶液中の前記親水性高分子の含有量(重量%)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性支持体と、
親水性高分子および溶媒を含む溶液によって前記多孔性支持体の表面に塗布された親水性高分子と、を含み、
下記式を満たす、セパレータ。
<式>
0.015≦(C×D)/(A×B)≦0.65
上記式中、
Aは、前記多孔性支持体の厚さ(μm)であり、
Bは、前記多孔性支持体の透気度(Gurley、秒/100ml)であり、
Cは、前記多孔性支持体の気孔率(体積%)であり、
Dは、前記溶液中の前記親水性高分子の含有量(重量%)である。
【請求項2】
前記多孔性支持体の厚さは、1~30μmである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記多孔性支持体の気孔率は、40~70体積%である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記多孔性支持体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレートおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記親水性高分子は、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、グリセロールおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記溶液中の前記親水性高分子の含有量は、0.05~3重量%である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記溶媒は、水、NMP(N-Methyl-2-pyrrolidone)、アセトン、DMF(N,N-dimethylformamide)、DMSO(Dimethyl sulfoxide)、CHP(Cyclohexyl-pyrrolidinone)、N12P(N-dodecyl-pyrrolidone)、ベンジルベンゾアート、N8P(N-Octyl-pyrrolidone)、DMEU(dimethyl-imidazolidinone)、シクロヘキサノン、DMA(dimethylacetamide)、NMF(N-Methyl Formamide)、ブロモベンゼン、クロロホルム、クロロベンゼン、ベンゾニトリル、キノリン、ベンジルエーテル、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、ブタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、THF(tetrahydrofuran)、エチレングリコール、ピリジン、N-ビニルピロリドン、メチルエチルケトン、アルファ-テルピネオール、ギ酸、エチルアセテート、アクリロニトリルおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記セパレータの表面に滴加された電解液の液滴の滴加直後から3分が経過した時点まで縦方向(MD)の長さ変化率は、80%以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記セパレータの表面に滴加された電解液の液滴の滴加直後から3分が経過した時点まで横方向(TD)の長さ変化率は、80%以上である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のセパレータを製造する方法であって、
(a)多孔性支持体を準備する工程と、
(b)親水性高分子および溶媒を含む溶液を製造し、前記溶液を前記多孔性支持体の表面に塗布する工程と、を含む、セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータおよびその製造方法に関し、詳細には、電解液に対する含浸性が改善されたリチウム二次電池用セパレータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットPCなど小型化、軽量化が要求される各種電気製品の電源に広く用いられており、スマートグリッド、電気自動車用中大型バッテリーに至るまでその適用分野が拡大するにつれて、容量が大きく、寿命が長く、安定性が高いリチウム二次電池の開発が要求されている。
【0003】
前記目的を達成するための手段として、正極と負極を分離させて内部短絡(Internal Short)を防止し、充放電過程でリチウムイオンの移動を円滑にする微細気孔が形成されたセパレータ(Separator)、その中でも熱誘導相分離(Thermally Induced Phase Separation)による気孔形成に有利であり、経済的であり、セパレータに必要な物性を満足しやすいポリエチレンなどのポリオレフィンを用いた微細多孔性セパレータに対する研究開発が活発である。
【0004】
従来、広範囲に使用されているポリオレフィン(polyolefin)系のセパレータは、耐熱性と機械的強度が脆弱な問題があり、これを補完するために、セパレータの表面にセラミック粒子を含む耐熱層をコートする技術が提案された。ただし、耐熱層は、セパレータの性能に非常に重要な影響を及ぼす要素である通気性および導電性(抵抗)と関連して相当な技術的課題を残している。すなわち、多孔性基材の表面にセラミック粒子を含む耐熱層を形成する場合、セパレータの耐熱性は向上するが、前記耐熱層に含まれたセラミック粒子が多孔性基材に形成された気孔を閉鎖し、セパレータの通気性が低下し、それにより、正極と負極間のイオン移動通路が大きく減少し、結果的に、二次電池の充電および放電性能が大きく低下する問題がある。また、電池の内部で前記耐熱層が電解液に持続的に露出することにより、セラミック粒子が多孔性基材から部分的、持続的に脱離し、この場合、セパレータの耐熱性も徐々に低下することがある。
【0005】
なお、リチウム二次電池は、電極集電体上にそれぞれ活物質が塗布されている正極と負極の間に多孔性セパレータが介在した電極組立体にリチウム塩を含む非水系電解質が含浸されている構造となっている。
【0006】
リチウム二次電池は、正極および負極を交互に積層し、前記正極および負極の間にセパレータを介在した構造の電極組立体を製造した後、一定のサイズおよび形態の缶(can)またはパウチ(pouch)からなる電池ケースに前記電極組立体を挿入し、最終的に電解液を注入する方式で製造される。この際、電解液は、毛管力(capillary force)により正極、負極およびセパレータの間に入り込む。ただし、素材の特性上、正極、負極およびセパレータは、疎水性であるのに対し、電解液は、親水性であるから、電解液の電極およびセパレータに対する含浸性や濡れ性を改善するためには、相当な時間と厳格な工程条件が要求され、これによって、電解液の含浸性と工程の生産性を均衡的に実現、改善するのに限界がある。
【0007】
このような電解液の含浸性を改善するために、高い温度で電解液を注入したり、加圧または減圧状態で電解液を注入するなどの方法が用いられているが、従来の電極組立体および電解液が熱によって変形し、内部短絡などを起こすなどの問題がある。また、前記工程は、電極組立体を電解液と共に電池ケースに収納した後に行われるので、電極組立体に対する電解液の含浸性が不均一に行われ得、特に、ゼリーロール型電極組立体の場合、巻回中心部と外側部の間に含浸性の不均一が発生し、電池の寿命が短縮される問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、電解液に対する含浸性と工程の生産性を均衡的に実現することができるセパレータおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、多孔性支持体と、親水性高分子および溶媒を含む溶液によって前記多孔性支持体の表面に塗布された親水性高分子と、を含み、下記式を満たすセパレータを提供する。
<式>
0.015≦(C×D)/(A×B)≦0.65
上記式中、Aは、前記多孔性支持体の厚さ(μm)であり、Bは、前記多孔性支持体の透気度(Gurley、秒/100ml)であり、Cは、前記多孔性支持体の気孔率(体積%)であり、Dは、前記溶液中の前記親水性高分子の含有量(重量%)である。
【0010】
一実施形態において、前記多孔性支持体の厚さは、1~30μmであってもよい。
一実施形態において、前記多孔性支持体の気孔率は、40~70体積%であってもよい。
一実施形態において、前記多孔性支持体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレートおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つを含んでもよい。
【0011】
一実施形態において、前記親水性高分子は、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、グリセロールおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよい。
一実施形態において、前記溶液中の前記親水性高分子の含有量は、0.05~3重量%であってもよい。
【0012】
一実施形態において、前記溶媒は、水、NMP(N-Methyl-2-pyrrolidone)、アセトン、DMF(N,N-dimethylformamide)、DMSO(Dimethyl sulfoxide)、CHP(Cyclohexyl-pyrrolidinone)、N12P(N-dodecyl-pyrrolidone)、ベンジルベンゾアート、N8P(N-Octyl-pyrrolidone)、DMEU(dimethyl-imidazolidinone)、シクロヘキサノン、DMA(dimethylacetamide)、NMF(N-Methyl Formamide)、ブロモベンゼン、クロロホルム、クロロベンゼン、ベンゾニトリル、キノリン、ベンジルエーテル、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、ブタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、THF(tetrahydrofuran)、エチレングリコール、ピリジン、N-ビニルピロリドン、メチルエチルケトン、アルファ-テルピネオール、ギ酸、エチルアセテート、アクリロニトリルおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよい。
【0013】
一実施形態において、前記セパレータの表面に滴加された電解液の液滴の滴加直後から3分が経過した時点まで縦方向(MD)の長さ変化率は、80%以上であってもよい。
一実施形態において、前記セパレータの表面に滴加された電解液の液滴の滴加直後から3分が経過した時点まで横方向(TD)の長さ変化率は、80%以上であってもよい。
【0014】
本発明の他の一態様は、前記セパレータの製造方法において、(a)多孔性支持体を準備する工程と、(b)親水性高分子および溶媒を含む溶液を製造し、前記溶液を前記多孔性支持体の表面に塗布する工程と、を含むセパレータの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によるセパレータは、疎水性のポリオレフィン系セパレータに親水性高分子を塗布して親水性を付与し、かつセパレータを構成する多孔性支持体の厚さ、透気度、気孔率および親水性高分子を含む溶液の濃度を既定のレベルの電解液含浸性を最適化して実現する変数として導き出し、組み合わせることによって、前記親水性高分子を塗布するための工程の生産性、前記セパレータの親水性およびそれによる電解液含浸性を均衡的に実現することができる。
【0016】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明を説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実現することができ、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0018】
明細書全体において、任意の部分が他の部分と「連結」されているというとき、これは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を介在し、「間接的に連結」されている場合も含む。また、任意の部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに備えてもよいことを意味する。
【0019】
本発明の一態様によるセパレータは、多孔性支持体と、親水性高分子および溶媒を含む溶液によって前記多孔性支持体の表面に塗布された親水性高分子と、を含んでもよいし、下記式を満たすことができる。
<式>
0.015≦(C×D)/(A×B)≦0.65
上記式中、Aは、前記多孔性支持体の厚さ(μm)であり、Bは、前記多孔性支持体の透気度(Gurley、秒/100ml)であり、Cは、前記多孔性支持体の気孔率(体積%)であり、Dは、前記溶液中の前記親水性高分子の含有量(重量%)である。
【0020】
前記多孔性支持体は、疎水性であるが、前記多孔性支持体に一定量の前記親水性高分子を塗布することによって親水性を付与することができる。この場合、前記多孔性支持体の厚さ(A)、透気度(B)、気孔率(C)と、前記親水性高分子を含む溶液の濃度、すなわち、前記溶液中の前記親水性高分子の含有量(D)を所要の電解液含浸性を最適化して実現する変数として導き出し、組み合わせることによって、前記親水性高分子を塗布するための工程の生産性、前記セパレータの親水性およびそれによる電解液含浸性を均衡的に実現することができる。
【0021】
上記式による(C×D)/(A×B)の値は、0.015~0.65、好ましくは、0.02~0.6、さらに好ましくは、0.02~0.4である。上記式による(C×D)/(A×B)の値が0.015未満であれば、前記多孔性支持体に所要の親水性とそれによる電解液含浸性を付与することができず、0.65を超えると、前記親水性高分子中の一部が前記多孔性支持体の気孔を閉鎖し、抵抗が増加し、電池の電気化学的特性が低下することがある。
【0022】
前記多孔性支持体の厚さは、1~30μm、好ましくは、3~25μm、さらに好ましくは、5~20μmである。前記多孔性支持体の厚さが1μm未満であれば、セパレータの機械的物性と耐熱性が低下することがあり、30μmを超えると、抵抗が増加し、電池の電気化学的特性が低下するだけでなく、前記多孔性支持体に対する親水性高分子の導入に必要な工程の生産性が低下することがある。
【0023】
前記多孔性支持体の透気度(Gurley)は、40秒~300秒/100ml、好ましくは、50秒~200秒/100mlである。前記多孔性支持体の透気度が40秒/100ml未満であれば、セパレータの機械的物性と耐熱性が低下することがあり、300秒/100mlを超えると、抵抗が増加し、電池の電気化学的特性が低下するだけでなく、前記多孔性支持体に対する親水性高分子の導入に必要な工程の生産性が低下することがある。
【0024】
前記多孔性支持体の気孔率は、40~70体積%、好ましくは、45~70体積%、さらに好ましくは、50~60体積%である。一般的に、リチウム二次電池用ポリオレフィン系多孔性セパレータの気孔率は、約30~50体積%、好ましくは、約30~40体積%であるが、前記多孔性支持体の気孔率をそれに比べて増加させることによって、前記親水性高分子が塗布され得る表面および/または内部気孔の面積を広げることができ、前記親水性高分子が塗布された部分の面積が広いほど電解液に対する含浸性をさらに改善することができる。前記多孔性支持体の気孔率が40体積%未満であれば、抵抗が増加し、電池の電気化学的特性が低下するだけでなく、前記多孔性支持体に対する親水性高分子の導入に必要な工程の生産性が低下することがあり、70体積%を超えると、セパレータの機械的物性と耐熱性が低下することがある。
【0025】
前記多孔性支持体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレートおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つを含んでもよいし、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂を含んでもよいし、さらに好ましくは、ポリエチレンを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
前記親水性高分子は、前記溶液を通じて前記多孔性支持体の表面と、その内部および/または外部に形成された気孔の表面に塗布され、前記多孔性支持体に親水性を付与することができる。前記溶液中の前記親水性高分子の含有量は、0.05~3重量%、好ましくは、0.1~2重量%、さらに好ましくは、0.5~2重量%である。前記溶液中の前記親水性高分子の含有量が0.05重量%未満であれば、前記多孔性支持体に所要の親水性とそれによる電解液含浸性を付与することができず、3重量%を超えると、前記親水性高分子中の一部が前記多孔性支持体の気孔を閉鎖し、抵抗が増加し、電池の電気化学的特性が低下することがある。
【0027】
前記親水性高分子は、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、グリセロールおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよく、好ましくは、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコールおよび/またはポリアクリル酸であってもよく、さらに好ましくは、エチレンビニルアルコールであってもよいが、これに限定されるものではない。前記エチレンビニルアルコール中、エチレン単位の含有量は、10~60mol%、好ましくは、20~50mol%、さらに好ましくは、25~40mol%である。
【0028】
前記溶液は、前記親水性高分子を適宜溶解させるための溶媒をさらに含んでもよい。前記溶媒は、水、NMP(N-Methyl-2-pyrrolidone)、アセトン、DMF(N,N-dimethylformamide)、DMSO(Dimethyl sulfoxide)、CHP(Cyclohexyl-pyrrolidinone)、N12P(N-dodecyl-pyrrolidone)、ベンジルベンゾアート、N8P(N-Octyl-pyrrolidone)、DMEU(dimethyl-imidazolidinone)、シクロヘキサノン、DMA(dimethylacetamide)、NMF(N-Methyl Formamide)、ブロモベンゼン、クロロホルム、クロロベンゼン、ベンゾニトリル、キノリン、ベンジルエーテル、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール、ブタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、THF(tetrahydrofuran)、エチレングリコール、ピリジン、N-ビニルピロリドン、メチルエチルケトン、アルファ-テルピネオール、ギ酸、エチルアセテート、アクリロニトリル、フェノールおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよく、好ましくは、DMSOおよび/またはイソプロピルアルコールであってもよく、さらに好ましくは、前記親水性高分子がエチレンビニルアルコールである場合、それに対する選択的、特異的溶解度と前記多孔性支持体に対する含浸性に優れたDMSOであってもよい。前記溶媒中のDMSOの濃度は、実質的に約100%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
前記セパレータの表面に滴加された電解液の液滴の滴加直後から3分が経過した時点まで縦方向(MD)の長さ変化率は、80%以上、好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、95%以上である。前記セパレータの表面に滴加された電解液の液滴の滴加直後の縦方向(MD)の最長長さをMD1、それから3分が経過した時点の縦方向(MD)の最長長さをMD2とすると、前記長さ変化率は、下記の式1によって算出することができる。
<式1>
縦方向(MD)の長さ変化率(%)=(MD2-MD1)/(MD1)×100
【0030】
前記セパレータの表面に滴加された電解液の液滴の滴加直後から3分が経過した時点まで横方向(TD)の長さ変化率は、80%以上、好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、95%以上である。前記セパレータの表面に滴加された電解液の液滴の滴加直後の横方向(TD)の最長長さをTD1、それから3分が経過した時点の横方向(TD)の最長長さをTD2とすると、前記長さ変化率は、下記の式2によって算出することができる。
<式2>
横方向(TD)の長さ変化率(%)=(TD2-TD1)/(TD1)×100
【0031】
前記電解液は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよく、好ましくは、プロピレンカーボネート(PC)であってもよいが、これに限らない。
【0032】
前記電解液がプロピレンカーボネート(PC)の場合、前記縦方向(MD)および横方向(TD)の長さ変化率が80%未満であれば、所要の電解液含浸性を実現できないものと評価することができる。
【0033】
前記電解液の液滴の横方向(TD)の長さ変化率に対する縦方向(MD)の長さ変化率の比は、1.0より大きくてもよい。すなわち、前記電解液の液滴の縦方向(MD)の長さ変化率は、横方向(TD)の長さ変化率より大きくてもよい。また、前記電解液の液滴の横方向(TD)の長さ変化率に対する縦方向(MD)の長さ変化率の比は、1.1以下、好ましくは、1.05以下、さらに好ましくは、1.03以下である。前記電解液の液滴の横方向(TD)の長さ変化率に対する縦方向(MD)の長さ変化率の比が1.1を超えると、セパレータに対する電解液の含浸が方向によって不均一に行われ、電池の電気化学的特性が低下することがある。
【0034】
前記セパレータは、(a)多孔性支持体を準備する工程;および(b)親水性高分子および溶媒を含む溶液を製造し、前記溶液を前記多孔性支持体の表面に塗布する工程;を含む方法によって製造することができる。
【0035】
前記多孔性支持体、前記親水性高分子および前記溶媒の物性、種類、作用効果などについては、前述した通りである。
【0036】
前記(b)工程で、前記親水性高分子および前記溶媒を含む溶液を製造し、前記溶液を前記多孔性支持体の表面に塗布することができる。前記塗布は、ディップ(dip)、スプレー(spray)、ロール(roll)、バー(bar)およびこれらのうち2以上の組み合わせによって行われることができ、好ましくは、ディップ(dip)、すなわち、含浸ないし沈漬によって行われることができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
前記溶液の塗布に所要する時間は、約0.5分~48時間、好ましくは、約0.5~10分、さらに好ましくは、約1~5分の範囲で前記多孔性支持体の厚さ、透気度、気孔率、前記溶液の濃度によって調節することができる。塗布時間が0.5分未満であれば、所要の親水性を付与することができず、48時間を超えると、親水性を付与するための工程の生産性が顕著に低下することがある。
【0038】
なお、前記(b)工程の後に、(c)前記多孔性支持体をエタノール、水、メチレンクロリドのような溶媒で処理して洗浄した後、乾燥する工程をさらに含んでもよい。前記洗浄に使用される溶媒は、好ましくは、セパレータの外観物性と乾燥に必要な時間を考慮してエタノールであってもよいが、これに限定されるものではない。すなわち、前記溶媒がエタノールの場合、後続の乾燥に所要する時間を短縮させることができ、乾燥したセパレータの表面に生成された欠点を最小化し、適切な外観物性を確保することができる。
【0039】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
実施例1-1
厚さが9μm、透気度が50秒/100ml(Gurley)、気孔率が60体積%の多孔性支持体を準備した。ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒にエチレンビニルアルコール(EVOH、Kuraray社、EVAL、PE-32mol%)を投入し、80℃で1時間撹拌し、エチレンビニルアルコールの含有量が0.5重量%の溶液を製造した。
【0040】
前記多孔性支持体を前記溶液に30秒間含浸させた後、シリコンブレードを用いて前記多孔性支持体の両面に残留する過量の溶液を除去した。前記多孔性支持体をエタノールに60秒間含浸させて洗浄した後、60℃に予熱したオーブンに投入し、1分間乾燥して、セパレータを製造した。
【0041】
実施例1-2
前記溶液中のエチレンビニルアルコールの含有量を0.75重量%に変更したことを除いては、前記実施例1-1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0042】
実施例1-3
前記溶液中のエチレンビニルアルコールの含有量を1重量%に変更したことを除いては、前記実施例1-1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0043】
実施例1-4
前記溶液中のエチレンビニルアルコールの含有量を3重量%に変更したことを除いては、前記実施例1-1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0044】
比較例1-1
前記溶液中のエチレンビニルアルコールの含有量を5重量%に変更したことを除いては、前記実施例1-1と同様の方法でセパレータを製造した。
前記実施例および比較例によるセパレータの製造条件を下記表1に示した。
-厚さ(μm):微細厚さ測定器を用いて多孔性支持体の厚さを測定した。
-透気度(Gurley、秒/100ml):旭精工社のガーレー透気度試験機(Densometer)EGO2-5モデルを用いて測定圧力0.025MPaで100mlの空気が多孔性支持体を通過する時間を測定した。
-気孔率(%):ASTM F316-03に基づいて、PMI社のキャピラリーポロメーターを用いて多孔性支持体の気孔率を測定した。
【0045】
【0046】
実験例1
前記実施例および比較例で製造されたセパレータの電解液含浸性を下記のような方法で測定した。電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)溶液を使用し、プロピレンカーボネート溶液2μlをセパレータの表面に滴加した直後、液滴のサイズ(MD1,TD1)と3分経過後に拡散された液滴のサイズ(MD2,TD2)を縦方向(MD)および横方向(TD)に沿って測定し、その結果を下記表2に示した。
【0047】
【0048】
前記表2を参照すると、実施例および比較例がいずれも電解液含浸性が良好であると評価されたが、比較例1-1によるセパレータの場合、含浸、コーティングされた過量のEVOHがセパレータの気孔を閉鎖し、透気度およびイオン伝導度が低下した。
【0049】
実施例2-1
厚さが20μm、透気度が180秒/100ml(Gurley)、気孔率が50体積%の多孔性支持体を準備した。ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒にエチレンビニルアルコール(EVOH、Kuraray社、EVAL、PE-32mol%)を投入し、80℃で1時間撹拌し、エチレンビニルアルコールの含有量が1.5重量%の溶液を製造した。
【0050】
前記多孔性支持体を前記溶液に30秒間含浸させた後、シリコンブレードを用いて前記多孔性支持体の両面に残留する過量の溶液を除去した。前記多孔性支持体をエタノールに60秒間含浸させて洗浄した後、60℃に予熱したオーブンに投入し、1分間乾燥して、セパレータを製造した。
【0051】
実施例2-2
前記溶液中のエチレンビニルアルコールの含有量を2重量%に変更したことを除いては、前記実施例2-1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0052】
実施例2-3
前記多孔性支持体を前記溶液に1分間含浸させたことを除いては、前記実施例2-1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0053】
実施例2-4
前記多孔性支持体を前記溶液に1分間含浸させたことを除いては、前記実施例2-2と同様の方法でセパレータを製造した。
【0054】
比較例2-1
前記溶液中のエチレンビニルアルコールの含有量を1重量%に変更したことを除いては、前記実施例2-1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0055】
比較例2-2
前記多孔性支持体を前記溶液に3分間含浸させたことを除いては、前記比較例2-1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0056】
比較例2-3
前記多孔性支持体を前記溶液に5分間含浸させたことを除いては、前記比較例2-1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0057】
比較例2-4
前記多孔性支持体を前記溶液に10分間含浸させたことを除いては、前記比較例2-1と同様の方法でセパレータを製造した。
前記実施例および比較例によるセパレータの製造条件を下記表3に示した。
【0058】
【0059】
実験例2
前記実施例および比較例で製造されたセパレータの電解液含浸性を実験例1と同様の方法で測定し、その結果を下記表4に示した。
【0060】
【0061】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されることもでき、同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合した形態で実施されることもできる。
【0062】
本発明の範囲は、後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解すべきである。
【国際調査報告】