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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】冷却インサートを有する遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 7/06 20060101AFI20241031BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20241031BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F04D7/06 F
F04D29/08 C
F04D29/58 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529224
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2022081058
(87)【国際公開番号】W WO2023083777
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021129695.1
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディート ゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】KSB SE & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】ブートマン,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】エンス,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】フローバ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】コーバー,フロリアン
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AA12
3H130AA22
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA33F
3H130BA53F
3H130DC11X
3H130EA06F
3H130EA07F
3H130EC13F
3H130EC14F
3H130ED01F
3H130ED04F
(57)【要約】
本発明は、シャフトシール用の機構(1)を有する遠心ポンプに関する。機構(1)は、チャンバ(4)における潤滑膜用のシール間隙(5)を形成する回転要素(2)と固定要素(3)とを有する。遠心ポンプは、第1の領域(7)および第2の領域(8)を有する冷却インサート(6)を備える。第1の領域(7)が回転要素(2)を少なくとも部分的に囲み、第2の領域(8)がチャンバ(4)の境界を少なくとも部分的に画定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ(4)において潤滑膜用のシール間隙(5)を形成する回転要素(2)と固定要素(3)とを有するシャフトシール機構(1)を備えた遠心ポンプであって、
前記遠心ポンプが、第1の領域(7)および第2の領域(8)を有する冷却インサート(6)を備え、前記第1の領域(7)が前記回転要素(2)を少なくとも部分的に囲み、前記第2の領域(8)が前記チャンバ(4)の境界を少なくとも部分的に画定することを特徴とする、遠心ポンプ。
【請求項2】
前記第1の領域(7)が冷却チャネル(9)を有することを特徴とする、請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項3】
前記冷却インサート(6)が一体型に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の遠心ポンプ。
【請求項4】
前記冷却チャネル(9)が冷却スパイラル(18)として構成されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の遠心ポンプ。
【請求項5】
前記冷却チャネル(9)内にガイド輪郭(10)が配置されていることを特徴とする、請求項2から5の何れか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項6】
前記第1の領域(7)に接続チャネル(11)が配置されていることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項7】
前記第1の領域(7)に排液チャネル(12)が配置されていることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項8】
前記第2の領域(8)に、冷却媒体の供給用の供給コネクタ(13)および放出用の出口コネクタ(14)が配置されていることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項9】
前記第2の領域(8)に、前記シール間隙(5)のまわりの領域を冷却するために2次冷却システムが配置されており、前記2次冷却システムが供給ポート(16)および出口ポート(15)を有することを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項10】
前記2次冷却システムが直接冷却システムとして構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の遠心ポンプ。
【請求項11】
前記2次冷却システムが間接冷却システムとして構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の遠心ポンプ。
【請求項12】
前記冷却インサート(6)が生成的に製造されることを特徴とする、請求項1から11の何れか一項に記載の遠心ポンプ。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の冷却インサート(6)を製造するための方法であって、前記冷却インサート(6)が構成材料上への放射ビームの選択的作用によって製造されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
高温の流体を搬送するための遠心ポンプのシャフトシール機構(1)を冷却するための、請求項1から12の何れか一項に記載の冷却インサート(6)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトシール機構を有する遠心ポンプに関し、シャフトシール機構は、チャンバ内に潤滑膜用のシール間隙を形成する回転要素および固定要素を有する。
【背景技術】
【0002】
シャフトシールは、静止したポンプハウジングからの、回転するポンプシャフトの流路において、漏れ損または外部から来る空気を特定の量まで減少させ、シール面のいかなる摩耗も可能な限り小さくするように、遠心ポンプを密封するシールである。
【0003】
軸方向の面シールはシャフトシールの特別な設計であり、通常はシャフト軸に対して垂直なシール間隙を有する。このタイプのシャフトシールは、軸方向または流体力学の面シールとしても知られている。他のシールシステムと比較して、そのような軸方向の面シールは、占める空間がより少なく、維持するのがより簡単である。軸方向の面シールは、低圧と高圧の両方および低い周速度と高い周速度の両方においてシールに適することが判明している。
【0004】
動作中に、シール面は、液圧力および/または機械的力によって共に押され、互いにスライドする。軸方向の面シールの回転要素と固定要素の2つの超精細加工された摺動面の間には、通常は潤滑剤の流体膜でシール間隙が形成される。軸方向の面シール内の軽微な漏れは、通常、大気に逃げる。
【0005】
特許文献1(DE19928141A1)が説明しているシール機構では、シャフトが遠心ポンプのハウジングを通る。この機構は、回転要素と固定要素とを有する、軸方向の面シール付きのシャフトスリーブを備え、回転要素と固定要素との間には潤滑剤被膜用のシール間隙が配置されている。
【0006】
いくつかの応用分野では、温水または熱伝達媒体を搬送するために遠心ポンプが使用される。したがって、温度は、ポンプハウジングとシャフトシールとの間に配置された熱排出用の特別なハウジング機構によって、少なくとも、たとえばシャフトシールのために軸方向の面シールが使用され得る程度まで、放散されなければならない。
【0007】
温水や熱伝達媒体の配送では熱負荷が大きく、通常は化学的負荷も大きいので、そのような遠心ポンプは、ハウジング、羽根車、分割リングなどの、媒体や圧力を受ける構成要素は、これらの高負荷に適するように、材料を入念に選択する必要がある。熱放散用のスペーサ部品として働く熱排出用のハウジング機構は、特に重要である。
【0008】
たとえばシャフトシールなどの熱の影響を受けやすい構成要素は、通常はスパイラルハウジングおよびハウジングカバーを備える高温のポンプハウジングから、距離をおいて維持される。これは、ポンプハウジングからシャフトシールチャンバへの熱の流れを可能な限り小さく保つためである。そのようなポンプ内のシャフトシールは、しばしば軸方向の面シールを備える。
【0009】
特許文献2(EP1134424B1)が開示している、高温の流体を受け取るための組立体、詳細には高温の流体を搬送するための遠心ポンプでは、シャフトが、少なくとも1つの軸方向の面シールが配置されたシールチャンバを貫通し、組立体とシールチャンバとの間に、流体伝導性の接続部があって、組立体から抽出された流体が、軸方向の面シールを冷却し、かつフラッシングする。軸方向の面シールは、長いスペーサによって過度の熱から保護されている。
【0010】
特許文献3(DE102017209803A1)が説明している、高温の媒体を搬送するための遠心ポンプでは、ポンプハウジングの中に配置された少なくとも1つの羽根車が、シャフトを介して駆動装置に接続され、熱排出用のハウジング機構がポンプハウジングに隣接しており、シャフトには、少なくとも1つの軸方向の面シール機構および少なくとも1つの軸受けが備わっている。軸方向の面シール機構は、熱を遮断する空間によって高温媒体から分離されている。
【0011】
しかしながら、長いスペーサを伴う大きな空間は、多くの場合構造的な不都合に関連するか、または単に利用可能な設置空間がないために不可能である。その上、特に高温の流体が搬送されるときには、間隔をあけるだけでシャフトまたは軸方向の面シールを適切に冷却できるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】DE19928141A1
【特許文献2】EP1134424B1
【特許文献3】DE102017209803A10013
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、高温の流体を搬送するのに適切なシャフトシール機構を有する遠心ポンプを提供することである。遠心ポンプは、可能な限り簡潔に構成されるべきである。詳細には、シャフトシール機構は、遠心ポンプに使用されるとき、高信頼度、低リーク率、および長い耐用年数によって区別されなければならない。シャフトシール機構を有する遠心ポンプは、簡単な設置を保証するとともに、保守作業のために容易にアクセスできるべきである。その上、シャフトシール機構を有する遠心ポンプは最小限の製造コストによって区別されるべきである。
【0014】
この目的は、本発明により、シャフトシール機構を有する遠心ポンプによって達成される。好ましい変形形態は、補助の主請求項、従属請求項、明細書、および図面に示されている。
【0015】
本発明によれば、遠心ポンプは、第1の領域および第2の領域を有する冷却インサートを備える。第1の領域は、回転要素を少なくとも部分的に囲み、第2の領域は、チャンバの境界を少なくとも部分的に画定する。
【0016】
シャフトシール機構が軸方向の面シールの形態に構成されるとき、回転要素はシャフト保護スリーブを備え得る。シャフトスリーブは、シャフトに対して回転方向に固定して接続され、シャフトを摩耗から保護し得る。
【0017】
固定要素は、好ましくは、ハウジングに対して直接的または間接的に接続された、固定した逆リングとして構成される。本発明の特に好ましい変形形態では、固定要素はL字形のリングインサートとして構成される。好ましくは、軸方向の面シールの固定要素は冷却インサートに固定される。
【0018】
理想的には、冷却インサートは、設置が簡単な、ポンプハウジングの圧力カバーとシャフト流路との間の空間を埋めるインサートとして構成される。有利には、冷却インサートはポンプハウジングの圧力カバーに固定される。
【0019】
冷却インサートは、好適には、冷却液を流し得るボリュームを備え、熱吸収領域、冷却液の流れの誘導、および冷却液を流し得るボリュームは、熱放散に関して最適化される。
【0020】
冷却インサートは、シャフトシール機構の回転要素と固定要素のためのチャンバを形成する。詳細には、第2の領域は、チャンバの境界を少なくとも部分的に画定するので、冷却インサートの第2の領域は、チャンバを形成する。境界は、好適には、冷却インサートの第2の領域の内部壁によって画成される。
【0021】
理想的には、チャンバは、シールチャンバまたは軸方向面シールチャンバとして構成される。
【0022】
冷却インサートの第1の領域は、回転要素を少なくとも部分的に囲む。本発明の特に好ましい変形形態では、冷却インサートは、回転要素をほぼ全面的に囲む。
【0023】
代替変形形態では、冷却インサートが、詳細には冷却インサートの第1の領域が、回転要素を全面的に囲む。
【0024】
好ましくは、冷却インサートの第1の領域は冷却チャネルを有する。シャフトシール機構が損傷することのないように、高温の流体によって放出される熱を十分に放散するために、外部から搬送された冷却媒体が、この冷却チャネルを通って流れることができる。このようにして、シャフトシール機構の信頼性が保証され、長い耐用年数が確保される。
【0025】
本発明の特に好ましい変形形態では、冷却チャネルは、冷却スパイラルとして構成される。ここの冷却媒体は、好ましくは乱流となり、同時に、最適に形成された伝熱面積を有するシャフトシール機構のまわりに流れる。
【0026】
本発明の特に有利な変形形態では、冷却チャネルは螺旋構造として形成される。螺旋構造は、螺旋状にねじられたスパイラルである。冷却チャネルの形状は、乱流の形成を促進し、それによって冷却媒体の熱放散が最適に構成され得る。
【0027】
理想的には、冷却チャネルの中に、乱流を生成するためのガイド輪郭または幾何学的形状が配置されてよい。これは、特に、冷却媒体の乱流の形成または改善を保証し、それによって回転要素の熱がより良く放散され得る。乱流を増加または形成するためのガイド輪郭は、便宜的にチャンバに配置されてよい。本発明の特に好ましい変形形態では、ガイド輪郭は、渦を誘起するエッジを有するウェブとして構成され得る。
【0028】
好ましくは、供給および戻りチャネルとして構成され得る接続チャネルが、冷却インサートの第1の領域に配置される。これは、利用可能な設置空間において冷却チャネルを可能な限り大きく形成することができるように、幾何学的に適合され得る。
【0029】
好ましくは、供給および戻りチャネルは、たとえば、外側で少し広いが平坦な矩形チャネルに、冷却インサートの出口コネクタの方向に通じる。このために、理想的には、螺旋状の冷却チャネルの終端が、丸みを帯びた偏向によって戻りチャネルに変化する。
【0030】
遠心ポンプの保守または廃止のために、冷却チャネルの第1の領域に排液チャネルが配置される。排液チャネルは、好ましくは冷却インサートの最下部における非常に小さいチャネルであり、これを通って冷却インサートから冷却媒体が完全に排出され得る。理想的には、排液チャネルは、冷却媒体の制御不良での望まれない漏れを防止するために、プラグで閉鎖される小さいコネクタに通じる。有利には、冷却インサートの最高部に排出口を有し、これによって完全な排液が保証される。
【0031】
理想的には、冷却インサートの第2の領域に供給コネクタおよび出口コネクタが配置され、これを通って冷却媒体が供給や放出が行われる。本発明の好ましい変形形態では、コネクタは、冷却液ラインの接続部用の雌ねじを有する。コネクタは、代わりに溶接継手の端部として設計される場合もある。
【0032】
加えて、軸方向の面シールから摩擦熱を放散するために、特に冷却インサートの第2の領域に2次冷却システムが配置される。2次冷却システムは、好ましくは供給ポートおよび出口ポートを有する。
【0033】
本発明の特に好ましい変形形態では、供給コネクタと出口コネクタも、供給ポートと出口ポートも、互いに反対側に配置されてよく、それぞれ互いに90度オフセットされる。コネクタとポートは、ここで、互いに90度オフセットして配置される。
【0034】
本発明の代替変形形態では、ポートは、ねじ継手にしっかりとねじ留めするための雌ねじを有する。これらのポートは、代わりに溶接継手の端部として設計されることもある。
【0035】
本発明の非常に有利な変形形態では、2次冷却システムは直接冷却システムとして構成される。ここで、冷却媒体は、供給ポートを通って、軸方向の面シールのシール間隙のまわりの冷却インサートの第2の領域によって形成されたチャンバへと直接流れる。冷却媒体は、摩擦から生じる熱を吸収することができ、出口ポートを通ってチャンバから流出する。
【0036】
代わりに、軸方向の面シールのまわりのチャンバには、プロセス媒体が、シャフト保護スリーブと冷却インサートの第1の領域との間の空隙を通って充填されてよい。プロセス媒体は、摩擦から生じる熱を吸収することができ、出口ポートを通ってチャンバから流出する。摩擦によって加熱されたプロセス媒体は、たとえば外部冷却器の中を流れて戻される。循環するプロセス媒体は、供給ポートを通って、軸方向の面シールのシール間隙のまわりの冷却インサートの第2の領域によって形成されたチャンバへと直接流れる。
【0037】
本発明の代替変形形態では、2次冷却システムは間接冷却システムとして構成される。冷却インサートの第2の領域によって形成されたチャンバに、冷却スパイラルまたは冷却スペースが含まれる。冷却媒体は、供給ポートを通って冷却スパイラルに流れ、シール間隙のまわりに生じるかまたは存在する熱を吸収し、出口ポートを通してチャンバから熱を放出する。
【0038】
有利には、冷却インサートは一体型(一部材)として構成される。したがって、冷却チャネルを有する第1の領域および2次冷却システムを有する第2の領域と、コネクタおよびポートは、非常にコンパクトである。一体型の設計により、特に簡単かつ迅速な設置および製造が可能になり、保守のために特に好都合であることも判明した。
【0039】
以前は、上述した機能を有する冷却インサートは知られていなかった。理想的には、冷却インサートは生成的に製造される。生成的製造または付加的製造(積層造形)を通じて、冷却インサートは、熱放散の目的に適合した複合形状に形成される。
【0040】
本発明によれば、冷却チャネルの複合形状を有する冷却インサートを製造する方法において、冷却インサートは、放射ビームを構造材料に選択的に作用させることによって製造される。
【0041】
本発明によれば、冷却インサートは付加的製造される。冷却チャネルを複雑かつ多様に設計し、しかも使用する材料は極端に少なく、非常に迅速に製造することができるのは、この特定の製造技術のみである。特に、乱流を生成するためのガイド輪郭が一体化された冷却チャネルの螺旋構造は、付加製造技術を使用してのみ製造できる。
【0042】
付加的に製造される冷却インサートは、付加製造プロセスを用いて製造される。「付加製造プロセス」という用語は、材料が層ごとに与えられて3次元チャネルが製造されるすべての製造プロセスを含む。積層造形は、コンピュータ制御の下で、1つまたは複数の液体材料または固体材料から所定の寸法および形状に生成される。造形中に、物理的または化学的硬化、または融解プロセスが実行される。3Dプリント用の一般的な材料には、プラスチック、合成樹脂、セラミックス、金属、炭素、およびグラファイト材料がある。
【0043】
冷却インサートを形成するためには、特に選択的レーザ溶融およびクラッディング(ビルドアップ溶接とも呼ばれる)が使用される。
【0044】
選択的レーザ溶解では、冷却インサートは、まず基板に対して構成材料の層を堆積する方法を使用して、冷却スパイラルの形態の冷却チャネルを伴って製造される。好ましくは、冷却インサートを製造するための構成材料は金属粉末粒子を含む。本発明の変形形態では、鉄含有粉末粒子および/またはコバルト含有粉末粒子が使用される。これらは、クロム、モリブデン、またはニッケルなどの添加剤を含有し得る。金属の構成材料は、基板に対して、粉末状の薄い層として堆積される。次いで、粉末状材料は、所望のポイントにおいて、放射ビームによって局所的に完全に溶融され、硬化した後に、固体材料層が形成される。次いで、基板は層厚さの分だけ引き下げられ、さらなる粉末が与えられる。このサイクルは、すべての層が形成されて完成した冷却インサートが生成されるまで、繰り返される。
【0045】
放射ビームは、たとえば個別の粉末層から冷却インサートを生成するレーザビームでよい。レーザビームを誘導するためのデータは、3D CADボディに基づいてソフトウェアによって製造される。選択的レーザ溶融の代替として、電子ビーム(EBN)が使用されてもよい。
【0046】
ビルドアップ溶接またはクラッディングでは、最初の部分を溶接でコーティングする方法を使用して、冷却インサートが製造される。ビルドアップ溶接では、ワイヤまたは粉末の形態の溶接添加材を使用して、冷却チャネルの特に繊細で最適化された形状を可能にするボリュームを生成する。
【0047】
螺旋状の冷却スパイラルを有する冷却インサートの種々の特性は、放射ビームを変化させて生成される。局所的な熱の印加を目標とした制御によって、構成中でも材料の特性が変化される。したがって、化学的に均質な材料の異なる材料状態のゾーンおよび構造と、それ故に異なる特性とが、冷却インサートの1つの領域に生成され得る。
【0048】
本発明の変形形態では、冷却インサートは種々の構成材料から製造され得る。構成材料は、好ましくは金属粉末粒子を含む。
【0049】
冷却インサートを付加的に構成することにより、特に冷却チャネルの薄壁と、可能な限り大きい熱伝達領域を最適に形成するために冷却チャネルの断面を変化させることによる利用可能な設置空間の最適な使用とが可能になる。
【0050】
理想的には、冷却インサートは、高温の流体、特に温水と熱伝達媒体とを搬送するのに役立つシャフトシール機構を冷却するために使用される。
【0051】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面の参照を伴う例示的な実施形態の説明および図面自体から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】冷却インサートを有する遠心ポンプの断面の実例を示す図である。
図2】冷却インサートの斜視図である。
図3】冷却インサートの部分的な断面の斜視図である。
図4】冷却インサートの垂直断面図である。
図5】冷却チャネルの水平断面図である。
図6】冷却チャネルのウェットボリュームの実例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、冷却インサート6を有する遠心ポンプの断面の実例を示す。圧送される非常に高温の流体は、吸引口または吸引コネクタ30を通りポンプハウジング31内へ流れる。流体にエネルギーを与える遠心羽根車33は、ポンプシャフト34に対して回転方向に固定されている。流体は、概略的に示された高圧コネクタ32を通って遠心ポンプを出る。
【0054】
ポンプハウジング31の圧力カバー28が遠心羽根車33を囲み、レースウェイおよび分割リング35が、遠心羽根車33およびポンプハウジング31またはハウジングカバー28におけるギャップ損失を最小限に抑える。
【0055】
ポンプシャフト34と圧力カバー28との間に冷却インサート6が配置されており、冷却インサート6の第1の領域7がシャフトシール機構1の回転要素2を少なくとも部分的に囲む。第2の領域8は、固定要素3を少なくとも部分的に囲む。
【0056】
この実施形態において、簡素化された形で示されている回転要素2は、少なくともシャフトスリーブおよびスライドリングを備える。スライドリングは、シャフトスリーブに接続されており、回転軸Aを中心にシャフト34とともに回転する。しかし、シャフト保護スリーブが個別の構成要素として存在し、そこに回転シールユニットが取り付けられてもよい。
【0057】
固定要素3は、簡素化された形で示され、少なくとも1つのカウンタリングを備える。
【0058】
第1の回転スライドリングは、静止カウンタリングと協働する。2つのスライドリングのうち1つも、軸方向に変位可能であり、例えば、ばねデバイスによって他のスライドリングの方向に予張力をかけられている。
【0059】
冷却インサート6の第2の領域8は、回転要素2と固定要素3との間のシール間隙5の周囲に、軸方向面シールチャンバとも称されるチャンバ4を形成する。この実施形態では、固定要素3は、冷却インサート6上に配置され、固定手段36によって固定される。
【0060】
この実施形態の変形形態では、軸方向の面シールとして、熱水フィールドにおいて使用する炭化ケイ素ベースの単動部品のシャフトシールが使用される。
【0061】
この実施形態の変形形態では、循環する処理媒体は、供給ポート16からチャンバ4に入って流れ、出口ポート15から出る。延長部品37は、ねじ接続によってポート15および16にねじ留めされている。ポート15および16の位置および貫流は、支配的な条件に適合され得る。この実施形態の延長部品37はスペーサ38から突出しているので、外部冷却回路への接続は簡単である。この外部冷却システムは、軸方向の面シールから摩擦熱を放散することができる。スペーサ38は、ポンプシャフト34のローラ軸受け39を備える。
【0062】
冷却インサート6の第1の領域7には、回転要素2からの熱を放散する冷却チャネル9が配置されており、中間の空隙にポンプシャフト34および処理媒体があり、高温の伝達流体からの熱負荷によって、シャフトシール機構1に熱応力がかかる。
【0063】
図2は、冷却インサート6の斜視図を示す。圧力カバー28上にストッパ29がある。本発明のこの実施形態の変形形態では、圧力カバー28に固定するために、4本のねじが孔40を通って挿入される。ストッパ29は、それぞれが約45度オフセットして配置された8つの斜ブレース43で強化されている。
【0064】
冷却インサート6の第2の領域8には、供給コネクタ13、出口コネクタ14、供給ポート16、および出口ポート15が設けられ、それぞれが互いに90度オフセットして配置されている。コネクタ13および14、ならびにポート15および16は、延長部品37およびパイプラインねじ継手を緊密に取り付けるための補強肩部すなわちリブ41と雌ねじとを有する。
【0065】
雌ねじを有する4つのねじ受け42が、互いに90度オフセットして配置されており、冷却インサート6の第2の領域8の端部と同じ高さにある。この実施形態の変形形態では、シャフトシール機構1の固定要素3は、ねじ受け42にねじで固定される。
【0066】
図3は、冷却インサート6の部分的な断面の斜視図を示す。図4は冷却インサート6を通る垂直断面を示し、図5は冷却インサート6を通る水平断面を示す。第1の領域7は、シャフトに対して回転方向に固定して接続された回転要素2(図3-5には示されていない)を少なくとも部分的に囲む。熱を放散するために、冷却媒体が冷却チャネル9を通って流れる。
【0067】
冷却媒体は、供給コネクタ13を通って、第2の領域8において冷却チャネル9に供給される。冷却チャネル9はねじ状に構成され、図示では6回転(回転数は設置空間により変化し得る)を有し、そのため、冷却チャネル9は、冷却媒体が回転要素2のまわりを流れてから戻りチャネル11に通じる。次に、戻りチャネル11は、傾斜したエルボ44を通って出口コネクタ14に通じる。供給ポート16が戻りのために使用され、戻りポート15が供給のために使用される場合、または、出口コネクタ14が冷却媒体を冷却チャネル9に供給するために使用され、供給コネクタ13が冷却媒体を放出するために使用される場合には、貫流方向が変更され得る。
【0068】
シール間隙5(図示せず)の2次冷却システムは、直接冷却システムとして構成される。2次冷却システムの循環処理媒体は、供給ポート16を通ってチャンバ4に流入し、出口ポート15を通ってチャンバ4を出る。供給ポート16と出口ポート15は反対側に配置され、したがって、冷却インサート6の第2の領域8において互いに180度オフセットされている。シールチャンバ4の出口ポート15の領域における肉盛エッジ46は、流れの偏向に良い影響を及ぼす。
【0069】
冷却インサート6は、生成的(付加的)に製造されるので一体型に形成され、特に複雑な構成を有し、冷却チャネル9のルーティングが、熱放散の目的に理想的に適合される。
【0070】
冷却チャネル9は、特に大きな熱伝達領域に通じる湾曲した三角形の断面を有する。冷却チャネル9の個々の周回は、特に薄いウェブ26によって互いに分離されており、ウェブ26はゴシックアーチの断面形状を有し、有利には熱伝導性材料から作製される。冷却チャネル9内に配置されたガイド輪郭10は、冷却媒体の流れの乱れに寄与する。それによって、冷却インサート6の熱放散能力が大幅に向上する。この変形形態のガイド輪郭10はウェブとして構成され、これは、冷却チャネル9の外部壁から流れチャンバの中に突出し、しかも、渦を誘起するエッジを有する。
【0071】
冷却インサート6の第1の領域7の円筒状部分は、遠心ポンプの圧力カバー28のシールとして働く肩部27を有する。この肩部は、シールの取付けを可能にするために、ハウジングカバー28にも使用され得る。
【0072】
図4に示されるように、冷却インサート6の最下部には、排液コネクタ24に通じる排液チャネル12が走る。排液チャネル12は、排液コネクタ24の方向に傾斜し得る。
【0073】
冷却インサート6の第2の領域8は、シャフトシール機構1の回転要素2および固定要素3のまわりにチャンバ4を形成する。第2の領域8は、冷却インサート6の第2の領域8に挿入される固定要素3を受け入れるために、様々な面取り部および凹部45を有する。これらは、流体を充填されるチャンバを拡大し、チャンバ4における処理媒体の流れを導くように働く。
【0074】
第2の領域8における冷却インサート6は、シャフトシール機構1のシール間隙52(図1に示されている)に生じる摩擦熱を放散することができるように、2次冷却システム用の供給ポート16および出口ポート15を有する。示された本発明の実施形態の変形形態では、2次冷却システムは直接冷却システムとして構成されており、そのため、外部で冷却されて循環する処理媒体が、供給ポート16を通ってシール間隙5のまわりのチャンバ4を充填し、これを通って流れる。有利な2次冷却システムは、シャフトシール機構の高信頼度と長い運用寿命とを同時に保証する。ポート15からの流体出口を改善するために、この領域8に肉盛エッジ46が配置され得る。
【0075】
図6は、冷却チャネル9や冷却インサート6の残りの要素なしで、冷却チャネル9のウェットボリュームの斜視図を示す。冷却媒体は、供給コネクタ13(図示せず)を通って供給チャネル17に流入する。供給チャネル17は、当初は円形の断面を有し、エルボ19の後は遷移部分20に移行する。遷移部分20は三角形の断面を有し、断面積は、遷移部分20が冷却チャネル9に通じるまで連続的に増大する。
【0076】
冷却チャネル9は、螺旋構造の形の冷却スパイラル18として形成される。冷却スパイラル18は、螺旋状のねじれたスパイラルとして構成され、シャフトシール機構1の回転要素2のまわりに円筒状に接続する。
【0077】
冷却スパイラル18の終端において、冷却チャネル9は、ほぼ矩形の戻り部21に連通しており、その遷移が90度のエルボ22によって形成される。冷却スパイラル18は、戻り部21を挿入された開口を有し、したがって、全体として円筒状の形状を有する。安定化のために、戻り部21には角形状の膨出部23が形成されている。戻り部21は、冷却スパイラル18の円筒状部分の終端において戻りチャネル11に連通し、戻りチャネル11は出口コネクタ14(図示せず)へと遷移する。
【0078】
排液チャネル12は、冷却チャネル9の最下部から始まり、冷却チャネル9より大幅に小さい円形の断面を有する。排液チャネル12は、プラグ25で閉鎖され得る排液コネクタ24(不図示)に連通する。遠心ポンプの保守または廃止のために、冷却媒体は、排液チャネル12によって冷却インサート6から完全に排出され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ(4)において潤滑膜用のシール間隙(5)を形成する回転要素(2)と固定要素(3)とを有するシャフトシール機構(1)を備えた遠心ポンプであって、
前記遠心ポンプが、第1の領域(7)および第2の領域(8)を有する冷却インサート(6)を備え、前記第1の領域(7)が前記回転要素(2)を少なくとも部分的に囲み、前記第2の領域(8)が前記チャンバ(4)の境界を少なくとも部分的に画定することを特徴とする、遠心ポンプ。
【請求項2】
前記第1の領域(7)が冷却チャネル(9)を有することを特徴とする、請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項3】
前記冷却インサート(6)が一体型に形成されていることを特徴とする、請求項に記載の遠心ポンプ。
【請求項4】
前記冷却チャネル(9)が冷却スパイラル(18)として構成されていることを特徴とする、請求項に記載の遠心ポンプ。
【請求項5】
前記冷却チャネル(9)内にガイド輪郭(10)が配置されていることを特徴とする、請求項に記載の遠心ポンプ。
【請求項6】
前記第1の領域(7)に接続チャネル(11)が配置されていることを特徴とする、請求項に記載の遠心ポンプ。
【請求項7】
前記第1の領域(7)に排液チャネル(12)が配置されていることを特徴とする、請求項に記載の遠心ポンプ。
【請求項8】
前記第2の領域(8)に、冷却媒体の供給用の供給コネクタ(13)および放出用の出口コネクタ(14)が配置されていることを特徴とする、請求項に記載の遠心ポンプ。
【請求項9】
前記第2の領域(8)に、前記シール間隙(5)のまわりの領域を冷却するために2次冷却システムが配置されており、前記2次冷却システムが供給ポート(16)および出口ポート(15)を有することを特徴とする、請求項に記載の遠心ポンプ。
【請求項10】
前記2次冷却システムが直接冷却システムとして構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の遠心ポンプ。
【請求項11】
前記2次冷却システムが間接冷却システムとして構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の遠心ポンプ。
【請求項12】
前記冷却インサート(6)が生成的に製造されることを特徴とする、請求項に記載の遠心ポンプ。
【請求項13】
請求項1から12の何れか一項に記載の冷却インサート(6)を製造するための方法であって、前記冷却インサート(6)が構成材料上への放射ビームの選択的作用によって製造されることを特徴とする、方法。
【請求項14】
高温の流体を搬送するための遠心ポンプのシャフトシール機構(1)を冷却するための、請求項1から12の何れか一項に記載の冷却インサート(6)の使用。
【国際調査報告】