IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シリコンアノードバインダー
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20241031BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20241031BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20241031BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20241031BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241031BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241031BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C08F220/56
C08F220/06
C08F226/06
H01M4/139
H01M4/13
H01G11/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529265
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2022082489
(87)【国際公開番号】W WO2023089134
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21306620.2
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビーソ, マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ビズドハ, ヴォイチェフ
(72)【発明者】
【氏名】マウリ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, デービッド ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4J100
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
4J100AJ02Q
4J100AM15P
4J100AQ12R
4J100AQ19R
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA08
4J100FA19
4J100JA43
5E078AA05
5E078AB01
5E078AB02
5E078BA41
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA23
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA22
(57)【要約】
本発明は、非水性電解質充電式電池用のバインダー、充電式電池用の負極スラリー、充電式電池用の負極、及びそれらを含む充電式電池に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイス用の電極の作製に使用するための水性電極形成組成物[組成物(Comp)]であって、
a)下記:
(A)少なくとも1個の窒素原子を有する不飽和複素環基を有するエチレン性不飽和モノマーである、少なくとも1種のモノマー(M)に由来する繰り返し単位であって、前記モノマー(M)が、下式(I):
【化1】
[式中:
は、H又はアルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、好ましくはメチル基であり;
は、H又はアルキル基であり;
同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得;
Aは、
i)単共有結合;及び
ii)スペーサー、例えば-CO-NH-(CH-、-CO-O-(CH-及び-CO-O-(CH-O-CO-
(ここで、nは、1~5の整数であり、典型的には3又は4に等しい)
からなる群から選択される基など
からなる群から選択される結合であり;
X、Y及びZは、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子から選択され;
a、b及びcは、互いに独立して、整数1~2から選択され;
各一点鎖線は、任意選択の二重結合を表す]
を有する、繰り返し単位;
(B)下記:
(B1)少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマー[モノマー(AA)];及び
(B2)式(II):
【化2】
(式中、
は、水素原子又はメチル基を表し、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基、カルボン酸基又はアミド基から選択され得る)
の少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド[モノマー(AM)]
からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位
を含む少なくとも1種のポリマー(P*)と、
b)電極活物質と、
c)水性溶媒と、
d)任意選択的に少なくとも1種の導電性付与添加剤と
を含むことで特徴付けられる、組成物(Comp)。
【請求項2】
更に、少なくとも1種の増粘剤を含む、請求項1に記載の組成物(Comp)。
【請求項3】
前記モノマー(M)は、
- 式(Ia):
【化3】
のビニルイミダゾール(VIm)
- 式(Ib)
【化4】
の2-メチル-1-ビニルイミダゾール
- 式(Ic)
【化5】
の1-ビニル-1,2,4-トリアゾール
- 式(Id)
【化6】
の2-ビニルピラジン
- 式(Ie)
【化7】
の4-ビニルピリジン
- 式(If)
【化8】
の2-ビニルピリジン
- 式(Ig)
【化9】
のヒドロキシル-(メタ)アクリレートイミダゾール誘導体
からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物(Comp)。
【請求項4】
モノマー(AA)は、式(III):
【化10】
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、R、R及びRは、水素原子及びC~C炭化水素基から独立して選択される)
の化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(Comp)。
【請求項5】
式(III)のモノマー(AA)は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン、メチル(メタ)アクリル酸、エチル(メタ)アクリル酸、プロピル(メタ)アクリル酸、イソプロピル(メタ)アクリル酸、n-ブチル(メタ)アクリル酸、2-エチルヘキシル(メタ)アクリル酸、n-ヘキシル(メタ)アクリル酸及びn-オクチル(メタ)アクリル酸からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物(Comp)。
【請求項6】
式(II)の前記(メタ)アクリルアミドモノマー[モノマー(AM)]は、(メタ)アクリルアミド又はN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミドなどのN-置換メタ(アクリル)アミドからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物(Comp)。
【請求項7】
ポリマーP(*)は、
- 0~95%、とりわけ5~50%、好ましくは20~40%のモノマー(AA)に由来する繰り返し単位と、
- 0~90モル%、好ましくは25~90%、より好ましくは50~80%のモノマー(AM)に由来する繰り返し単位と、
- 1~50%、例えば1~30%、とりわけ1~20%、更には2~15%のモノマー(M)に由来する繰り返し単位と
を含み、
ここで、モノマー(AA)及びモノマー(AM)の少なくとも1つは0%の量ではなく、
前述のモル%は全て、前記ポリマー(P)の繰り返し単位の全モルを基準とする
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物(Comp)。
【請求項8】
(A)少なくとも1個の窒素原子を有する不飽和複素環基を有するエチレン性不飽和モノマーである、少なくとも1種のモノマー(M)に由来する繰り返し単位であって、前記モノマー(M)が、下式(I):
【化11】
[式中:
は、H又はアルキル基であり;
は、H又はアルキル基であり;
同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得;
Aは、
i)単共有結合;及び
ii)スペーサー、例えば-CO-NH-(CH-、-CO-O-(CH-及び-CO-O-(CH-O-CO-
(ここで、nは、1~5の整数であり、典型的には3又は4に等しい)
からなる群から選択される基など
からなる群から選択される結合であり;
X、Y及びZは、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子から選択され;
a、b及びcは、互いに独立して、整数1~2から選択され;
各一点鎖線は、任意選択の二重結合を表す]
を有する、繰り返し単位;
(B1)少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマー[モノマー(AA)]に由来する繰り返し単位;及び
(B2)式(II):
【化12】
(式中、
は、水素原子又はメチル基を表し、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基、カルボン酸基又はアミド基から選択され得る)
の少なくとも1種の(メタ)アクリルアミドモノマー[モノマー(AM)]に由来する繰り返し単位
を含むポリマー(P)。
【請求項9】
請求項8に記載のポリマー(P)であって、
- 5~95%、とりわけ5~50%、好ましくは20~40%のモノマー(AA)に由来する繰り返し単位と、
- 25~90%、好ましくは50~80%のモノマー(AM)に由来する繰り返し単位と、
- 0.1~50%、例えば1~30%、とりわけ1~20%、更には2~15%のモノマー(M)に由来する繰り返し単位と
を含み、
前述のモル%は全て、前記ポリマー(P)の繰り返し単位の全モルを基準とする、
ポリマー(P)。
【請求項10】
電極[電極(E)]の作製プロセスであって、前記プロセスが、
(i)少なくとも1つの表面を有する金属基材を提供するステップ;
(ii)請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(Comp)を提供するステップ;
(iii)ステップ(ii)において提供された組成物(Comp)を、ステップ(i)において提供された金属基材の少なくとも1つの表面上へ塗布し、それによって少なくとも1つの表面へ前記組成物(Comp)でコーティングされた金属基材を含む組立体を提供するステップ;
(iv)ステップ(iii)において提供された前記組立体を乾燥させるステップ;
(v)ステップ(iv)において得られた前記乾燥組立体を圧縮ステップに供して本発明の電極(E)を得るステップ
含む、プロセス。
【請求項11】
請求項10に記載のプロセスによって得られる電極[電極(E)]。
【請求項12】
請求項11に記載の少なくとも1つの電極(E)を含む電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年11月22日出願の欧州特許出願第21306620.2号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、非水性電解質充電式電池用のバインダー、充電式電池用の負極スラリー、充電式電池用の負極、及びそれらを含む充電式電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン充電式電池などの、非水性電解質充電式電池は、電子デバイス用の電源として広く使用されている。高容量及び長サイクル寿命特性が望ましいが、現在のリチウムイオン電池は、負極の容量によってそれらの電荷の貯蔵が制限されている。
【0004】
リチウムイオン充電式電池の容量を増やすための方法の例として、ケイ素原子を含む活物質が負極に使用され得る。
【0005】
ケイ素は、約4,200mAh/gの理論容量を有し、したがって、容量の観点から高容量電池の用途にとって重要である。しかしながら、ケイ素の体積は、充電及び放電中に、充電されたときに約4倍だけ膨張するので、体積膨張は、不可逆反応、例えば活物質間の電気的接続の破壊、電流コレクタからの活物質の分離、及び電極による活物質の侵食による固体電解質界面(SEI)の形成、並びにそれらに関連した耐用年数の悪化などを引き起こす。更に、現在のバインダーは、充電サイクルの安定性の低下のために電池寿命が著しく低下する前に限定されたケイ素ローディング(10重量%以下)を受け入れるにすぎない。
【0006】
現在、より高いエネルギー密度貯蔵を可能にするためのケイ素含有アノード用の新規なバインダーの開発に専念する多くの活動が存在する。
【0007】
バインダー、典型的には有機ポリマーは、アノード層全体にわたる活物質間の、及び製造中にアノードがその上へ堆積される電流コレクタとの接触を維持する結合マトリックスとして機能する。
【0008】
シリコンアノードを受け入れるための次世代バインダーを開発するために追求されている多くのアプローチが存在する。
【0009】
ポリアクリル酸、ポリアミック酸、ポリアクリルアミド、及び他の水素結合構造を含む、追求されている複数のポリカルボキシレートバインダー及び誘導体が存在する。
【0010】
Miranda,A.et al. (「A Comprehensive Study of Hydrolyzed Polyacrylamide as a Binder for Silicon Anodes」 Appl.Mater.Interfaces,2019,11,44090-44100)は、良好な接着性、高い強度及び高い電気化学的貯蔵容量を有する複合シリコンアノードの作製における部分加水分解ポリアクリルアミドの使用を開示している。
【0011】
ポリカルボキシレート、特にポリアクリル酸に関しては、水酸化リチウムなどの塩基で中和することによって先ずそれらをリチウム塩に変換することに利点があることがまた十分に立証されている。これは、主に、初期容量を減少させることができる、セル内の遊離酸基によるリチウムイオンの隔離を回避するために行われる。
【0012】
国際公開第2015/163302号パンフレットは、充電及び放電の10サイクル後の容量保持率が、架橋ポリアクリル酸ナトリウムコポリマーの水溶液を使用することによって改善され得ることを開示している。ポリアクリル酸ナトリウムは、水溶性の高強度、高弾性バインダーとして使用されてきた。ポリアクリル酸ナトリウムを使用することによって、ケイ素含有活物質を含む電池の充電及び放電に同伴する体積変化が、抑えられるか又は減少し、サイクル特性が改善され得ると期待される。しかしながら、主成分としてポリアクリル酸ナトリウムを含むコポリマーの水溶液を使用する場合に、負極スラリーのコーティング及び乾燥プロセス中に亀裂が電極に発生するので、ポリアクリル酸ナトリウムを含むコポリマーの水溶液を適用することは実際面で困難であると考えられる。
【0013】
ケイ素に富むアノードの劣化を防ぐための現在の戦略にもかかわらず、それらが有効であるのに限界があるように思われ、この分野で有意義な進歩を達成するために必要な、より高レベルのケイ素に達する明確なブレークスルーは未だ存在しない。分子間の協同効果を利用してバインダー性能を高めるための混合バインダー系の数多くの開示が存在する。
【0014】
米国特許出願公開第2020/0343556号明細書は、(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する単位、及び(メタ)アクリロニトリルモノマーに由来する単位を含む第1のコポリマーと、芳香族ビニル系モノマーに由来する単位、及びカルボン酸部分を含むエチレン性不飽和モノマーに由来する単位を含む第2のコポリマーとのブレンドを含む非水性電解質充電式電池用のバインダーを提供している。前記バインダーは、負極の電極膨張を抑える又は減らすことができ、サイクル特性を向上させる。
【0015】
本出願人は、予想外にも、少なくとも1個の窒素原子を有する不飽和複素環を有する少なくとも1種のモノマーと、カルボン酸基を有するモノマー及びアクリルアミドから選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合によって得られるある種のポリマーが、高いサイクル安定性及び電気化学安定性を示す、電極用の、特にケイ素に富むアノード用のバインダーの調製に使用され得ることを見いだした。
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、電気化学デバイス用の電極の作製に使用するための水性電極形成組成物[組成物(Comp)]であって、
a)下記:
(A)少なくとも1個の窒素原子を有する不飽和複素環基を有するエチレン性不飽和モノマーである、少なくとも1種のモノマー(M)に由来する繰り返し単位であって、前記モノマー(M)が、下式(I):
【化1】
[式中:
は、H又はアルキル基であり、ここで、アルキル基は、好ましくはメチル基であり;
は、H又はアルキル基であり;
同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得;
Aは、
i)単共有結合;及び
ii)スペーサー、例えば-CO-NH-(CH-、-CO-O-(CH-及び-CO-O-(CH-O-CO-
(ここで、nは、1~5の整数であり、典型的には3又は4に等しい)
からなる群から選択される基など
からなる群から選択される結合であり;
X、Y及びZは、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子から選択され;
a、b及びcは、互いに独立して、整数1~2から選択され;
各一点鎖線は、任意選択の二重結合を表す]
を有する、繰り返し単位;
(B)下記:
(B1)少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマー[モノマー(AA)];及び
(B2)式(II):
【化2】
(式中、
は、水素原子又はメチル基を表し、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基、カルボン酸基又はアミド基から選択され得る)
の少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド[モノマー(AM)]
からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する繰り返し単位
を含む少なくとも1種のポリマー(P*)と、
b)電極活物質と、
c)水性溶媒と、
d)任意選択的に、少なくとも1種の導電性付与添加剤と
を含むことで特徴付けられる[組成物(Comp)]である。
【0017】
別の目的において、本発明は、電極[電極(E)]の作製プロセスであって、前記プロセスが、
(i)少なくとも1つの表面を有する金属基材を提供するステップ;
(ii)上で定義されたような組成物(Comp)を提供するステップ;
(iii)ステップ(ii)において提供された組成物(Comp)を、ステップ(i)において提供された金属基材の少なくとも1つの表面上へ塗布し、それによって少なくとも1つの表面上へ前記組成物(Comp)でコーティングされた金属基材を含む組立体を提供するステップ、
(iv)ステップ(iii)において得られた組立体を乾燥させるステップ;
(v)ステップ(iv)において得られた乾燥組立体を圧縮ステップに供して本発明の電極(E)を得るステップ
を含むプロセスを提供する。
【0018】
更なる態様において、本発明は、本発明のプロセスによって得られる電極[電極(E)]に関する。
【0019】
更になお一層の目的において、本発明は、本発明の少なくとも1つの電極(E)を含む電気化学デバイスに関する。
【0020】
本発明の更なる目的は、
(A)少なくとも1個の窒素原子を有する不飽和複素環基を有するエチレン性不飽和モノマーである、少なくとも1種のモノマー(M)に由来する繰り返し単位であって、前記モノマー(M)が下式(I):
【化3】
[式中:
は、H又はアルキル基であり、ここで、アルキル基は、好ましくはメチル基であり;
は、H又はアルキル基であり;
同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得;
Aは、
i)単共有結合;及び
ii)スペーサー、例えば-CO-NH-(CH-、-CO-O-(CH-及び-CO-O-(CH-O-CO-
(ここで、nは、1~5の整数であり、典型的には3又は4に等しい)
からなる群から選択される基など
からなる群から選択される結合であり;
X、Y及びZは、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子から選択され;
a、b及びcは、互いに独立して、整数1~2から選択され;
各一点鎖線は、任意選択の二重結合を表す]
を有する、繰り返し単位;
(B1)少なくとも1種のエチレン性不飽和カルボン酸モノマー[モノマー(AA)]に由来する繰り返し単位;及び
(B2)式(II):
【化4】
(式中、
は、水素原子又はメチル基を表し、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基、カルボン酸基又はアミド基から選択され得る)
の少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド[モノマー(AM)]に由来する繰り返し単位
を含むポリマー(P)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明との関連で、用語「重量パーセント」(重量%)は、成分の重量と混合物の総重量との間の比として計算される、混合物中の特定成分の含有量を示す。液体組成物の総固形分(TSC)に言及される場合、重量パーセント(重量%)は、液体中の全ての不揮発性成分の重量の間の比を示す。
【0022】
用語「電気化学セル」は、本明細書では、正極、負極及び液体電解質を含む電気化学セルであって、単層又は多層セパレータが前記電極の一方の少なくとも1つの表面に接着している電気化学セルを意味することを意図する。
【0023】
電気化学セルの非限定的な例としては、とりわけ、電池、好ましくは二次電池、及び電気二重層キャパシタが挙げられる。
【0024】
本発明の目的のためには、「二次電池」とは、充電式電池を意味することを意図する。二次電池の非限定的な例としては、とりわけ、アルカリ又はアルカリ土類二次電池が挙げられる。
【0025】
当技術分野において公知であるように、電極形成組成物は、固体構成要素が液体中に溶解しているか又は分散している、組成物、典型的には流体組成物であって、金属基材上へ塗布し、その後乾燥させ、こうして、金属基材が電流コレクタとして働く電極を形成することができる組成物である。電極形成組成物は、典型的には、少なくとも電気活物質と少なくともバインダーとを含む。
【0026】
本発明の電極形成組成物[組成物(Comp)]は、バインダーとして機能する、少なくとも1種のポリマー(P)を含む。
【0027】
ポリマー(P*)
ポリマー(P*)は、上で定義されたような少なくとも1種のモノマー(M)と、少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマー[モノマー(AA)]と上で定義されたような少なくとも1種の(メタ)アクリルアミドモノマー[モノマー(AM)]から選択される少なくとも1種のモノマーとの混合物のラジカル共重合によって得ることができる。
【0028】
式(I)のモノマー(M)における「少なくとも1個の窒素原子を有する不飽和複素環基」は、好ましくは、少なくとも1個のNを環中に有する5~6員芳香族環式基、例えば:
【化5】
(式中、*は、結合Aのポイントを表す)
などを含む。
【0029】
結合A及び残基Rは、任意の位置において、炭素原子か又は窒素原子かのどちらかで複素環基に結合し得る。
【0030】
モノマー(M)は、例えば:
- 式(Ia):
【化6】
のビニルイミダゾール(VIm)
- 式(Ib):
【化7】
の2-メチル-1-ビニルイミダゾール
- 式(Ic):
【化8】
の1-ビニル-1,2,4-トリアゾール
- 式(Id):
【化9】
の2-ビニルピラジン
- 式(Ie):
【化10】
の4-ビニルピリジン
- 式(If):
【化11】
の2-ビニルピリジン
- 式(Ig):
【化12】
のヒドロキシル-(メタ)アクリレートイミダゾール誘導体
であり得る。
【0031】
式(I)における二価スペーサー基Aは、典型的には、基-CO-NH-(CH-、-CO-O-(CH又は-CO-O-(CH-O-CO-であり得るが、例えば式(I-X):
【化13】
(式中、R、R及びRは、上で定義された通りである)
の化合物と、
式(I-Y):
【化14】
(式中、Rは上で定義された通りであり、A及びAは、共有結合を形成するために一緒に反応する2つの基である)
の化合物との反応から生じる、任意の他の共有リンカー基が考えられ得る。
【0032】
例えば、Aは、-(CH-NH基であり得、式中、mは、1~4、好ましくは2又は3である。その場合に、Aは、例えばカルボン酸、酸塩化物、酸無水物又はエポキシであり得る。
【0033】
別の変形によれば、Aは、-(CH-OH基であり得、式中、mは、1~4、好ましくは2又は3である。その場合に、Aは、例えばカルボン酸、酸塩化物、酸無水物又はエステルであり得る。
【0034】
ポリマー(P*)は、モノマー(M)、(AA)及び/又は(AM)を共重合させることによって得られるような、すなわちそのような重合によって得られる構造を有するポリマーであるが、ポリマー(P*)は、必ずしもこのプロセスによって得られるわけではない。代替形態として、ポリマー(P*)は、例えば、モノマー(AA)、モノマー(AM)及び式(I-X)の化合物を共重合させ、ポリマー(P0)をもたらす第1のステップ(E1)及び次いで化合物(I-Y)との反応によるポリマー(P0)の後グラフト化の第2のステップ(E2)によって得られ得る。
【0035】
ステップ(E2)において使用される化合物(I-Y)中のAが-(CH-NH基である場合、ステップ(E1)において使用される化合物(I-X)は、有利には、追加のアクリル酸若しくはメタクリル酸、又はそれらのエステル;無水マレイン酸;ビニルベンジルクロリド;グリシジルメタクリレート;及び(ブロックト)イソシアナトエチルメタクリレートから選択され得る。
【0036】
ステップ(E2)において使用される化合物(I-Y)中のAが-(CH-OH基である場合、ステップ(E1)において使用される化合物(I-X)は、有利には、追加のアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸又はそれらのエステルから選択され得る。
【0037】
加えて、ポリマー(P*)のイミダゾール官能基の全て若しくは一部の第四級化は、起こり、モノマーの全て若しくは一部の第四級化から及び/又はポリマーのイミダゾール官能基の全て若しくは一部の後第四級化から生じ得る。
【0038】
少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマー(AA)は、好ましくは、式(III):
【化15】
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、R、R及びRは、水素原子及びC~C炭化水素基から独立して選択される)
の化合物である。
【0039】
より好ましくは、モノマー(AA)は、アクリル酸、メタクリル酸、Sipomer ΒCEA(Solvayによって販売される)、エタクリル酸、クロトン、メチル(メタ)アクリル酸、エチル(メタ)アクリル酸、プロピル(メタ)アクリル酸、イソプロピル(メタ)アクリル酸、n-ブチル(メタ)アクリル酸、2-エチルヘキシル(メタ)アクリル酸、n-ヘキシル(メタ)アクリル酸及びn-オクチル(メタ)アクリル酸からなる群から選択される、上で定義されたような式(III)の化合物である。
【0040】
式(II)のメタ(アクリル)アミドモノマー[モノマー(AM)]は、好ましくは、メタ(アクリル)アミド又はN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミドなどのN-置換メタ(アクリル)アミドからなる群から選択される。
【0041】
少なくとも1種のポリマー(P*)は、更に、モノマー(AA)及び/又はモノマー(AM)の総量が、ポリマー(P*)の繰り返し単位の全モルに対して少なくとも60モル%であるという条件で疎水性モノマー及び両親媒性モノマーからなる群から選択される10モル%未満の1種以上の更なるモノマー(M’)を含み得る。
【0042】
追加のモノマー(M’)が(P*)中に存在するこの実施形態において、前記疎水性及び/又は両親媒性モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー:
- 無水マレイン酸及び(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、例えばモノメチル無水マレイン酸エステル、ジメチル無水マレイン酸エステル、モノエチル無水マレイン酸エステル、ジエチル無水マレイン酸エステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートなど、
- 無水マレイン酸及び(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、例えばモノヒドロキシエチル無水マレイン酸エステル、ジヒドロキシエチル無水マレイン酸エステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど
- 無水マレイン酸から誘導されるエトキシレート及びプロポキシレート、例えば例えばポリ(プロピレンオキシド)-b-ポリ(エチレンオキシド)マレイン酸半エステル又はジエステル アルキル-ポリ(エチレンオキシド)マレイン酸半エステル又はジエステルなど、
- ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸のエトキシル化及び/又はプロポキシル化から誘導されるエトキシレート及び/又はプロポキシレート、例えばポリ(プロピレンオキシド)-b-ポリ(エチレンオキシド)-エチル(メタ)アクリレートなど
- (メタ)アクリル酸及びエステルのエステル(交換)から誘導されるエトキシレート及び/又はプロポキシレート、例えばポリ(プロピレンオキシド)-b-ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート及びアルキル-ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレートなど
- ビニルエステル、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2-(ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、2-(ジ-n-ブチルアミノ)エチルビニルエーテルなど
アリルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテルなど、
- ビニルエステル、例えば酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルなど
アルキル置換アクリルアミド、例えばN-tert-ブチルアクリルアミド又はN-メチル(メタ)アクリルアミドなど
からなる群から選択される。
【0043】
好ましくは、ポリマー(P*)中に存在する追加のモノマー(M’)は、
- モノエチル無水マレイン酸エステル、ジエチル無水マレイン酸エステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート
- モノヒドロキシエチル無水マレイン酸エステル、ジヒドロキシエチル無水マレイン酸エステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート
- ポリ(プロピレンオキシド)-b-ポリ(エチレンオキシド)マレイン酸半エステル
- ポリ(プロピレンオキシド)-b-ポリ(エチレンオキシド)-エチル(メタ)アクリレート
- ポリ(プロピレンオキシド)-b-ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、アルキル-ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート
- 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル
からなる群から選択される。
【0044】
モノマー(M’)のモル単位での割合は、ポリマー(P*)中に存在するモノマー(AA+AM+M+M’)の全モルの10モル%を超えることができない。有利には、モノマー(M’)のモル単位での割合は5モル%未満である。
【0045】
少なくとも1種のポリマー(P)は、更に、1モル%未満の、少なくとも2つのエチレン性不飽和を含む1種以上の更なる架橋性モノマー(XL-M)を含み得る。
【0046】
追加のモノマー(XL-M)がポリマー(P*)中に存在するこの実施形態において、前記架橋性モノマーは、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA)、N,N’-エチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコール(PEG)ジアクリレート、トリアクリレート、ジビニルエーテル、典型的には三官能性ジビニルエーテル、例えばトリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル(TEGDE)、N-ジアリルアミン、N,N-ジアリル-N-アルキルアミン、それらの酸付加塩及びそれらの第四級化生成物(ここで使用されるアルキルは優先的には(C~C)アルキルである);N,N-ジアリル-N-メチルアミンの及びN,N-ジアリル-N,N-ジメチルアンモニウムの化合物、例えばクロリド及びブロミド;又は或いはまたエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DiTMPTTA)、ジビニルベンゼン(DVB)、エトキシル化若しくはプロポキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、プロポキシル化ジ(メタ)アクリレート、ブチロキシル化ジ(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(BDDMA)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート(BGDMA)、並びにそれらの誘導体から選択され得る。
【0047】
モノマー(XL-M)のモル単位での割合は、ゲル形成及び粘度増加を回避するために、ポリマー(P*)中に存在するモノマー(AA+AM+M+M’+XL-M)の全モルの1モル%を超えることができない。有利には、モノマー(M’)のモル単位では割合は0.5モル%未満である。
【0048】
前記実施形態によれば、モノマー(XL-M)を更に含む重合によって得られたポリマー(P*)は、少なくとも部分的に架橋されている。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリマー(P*)中に更なるモノマー(M’)又は(XL-M)は存在せず、それは、ポリマー(P*)が、
(A)上で定義されたような少なくともモノマー(M)、
(B)下記:
(B1)上で定義されたような少なくとも1種の[モノマー(AA)];及び
(B2)上で定義されたような少なくとも1種の[モノマー(AM)]
からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー
から本質的になる、とりわけそれらからなる混合物のラジカル共重合によって得られることを意味する。
【0050】
典型的には、ポリマー(P*)は、フリーラジカル源の存在下で、
- 少なくとも1種のモノマー(M)、
- 少なくとも1種のモノマー(AA)及び/又は
- 少なくとも1種のモノマー(AM)、
- 任意選択的に少なくとも1種のモノマー(M’)及び
- 任意選択的に少なくとも1種のモノマー(XL-M)
の混合物のラジカル共重合によって得られる。
【0051】
任意のフリーラジカル源を使用することができる。スチレンなどの、適切なモノマーを使って、たとえば温度を上げることによって、自然発生的にフリーラジカルを発生させることが特に可能である。好ましくは適切なUV感受性開始剤の存在下に、照射によって、特にUV照射によってフリーラジカルを発生させることが可能である。ラジカル又はレドックス型の開始剤又は開始剤系を使用することが可能である。フリーラジカル源は、水溶性であっても水溶性でなくてもよい。水溶性の開始剤又は少なくとも部分的に水溶性の開始剤を使用することが好ましいかもしれない。
【0052】
一般に、フリーラジカルの量が多ければ多いほど、重合はより容易に開始される(それは促進される)が、得られるコポリマーのモル質量はより低くなる。以下の開始剤:
- 過酸化物、例えば:過酸化水素、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシオクトエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、ラウロイルペルオキシド、t-アミルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムなど、
- アゾ化合物、例えば:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-ブタンニトリル)、4,4’-アゾビス(4-ペンタン酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミド)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオアンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオアンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオアンアミド]又は2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物など、
- 組合せを含むレドックス系、例えば:過酸化水素、アルキルペルオキシド、パーエステル、パーカーボネート、過硫酸塩等の、及び任意の鉄塩、チタン塩、亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシレート又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの、還元糖との混合物など、
- メタ重亜硫酸ナトリウムなどの、アルカリ金属重亜硫酸塩、及び還元糖と組み合わせた、アルカリ金属又はアンモニウム過硫酸塩、過ホウ酸塩又は過塩素酸塩、並びに
- ベンゼンホスホン酸などの、アリールホスフィン酸及び同様な性質の他のもの、並びに還元糖と組み合わせたアルカリ金属過硫酸塩
が特に使用され得る。
【0053】
重合温度は、特に、25℃~95℃であることができる。温度は、フリーラジカル源に依存することができる。それがUV開始剤型の源ではない場合には、50℃~95℃、より好ましくは60℃~80℃で操作することが好ましいであろう。一般に、温度が高ければ高いほど、より容易に重合は開始される(それは促進される)が、得られるコポリマーのモル質量はより低くなる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリマー(P*)は、モノマー(AA)に由来する繰り返し単位、モノマー(AM)に由来する繰り返し単位及びモノマー(M)に由来する繰り返し単位を含むポリマーを得るために、フリーラジカル源の存在下での1つのモノマー(AA)、1つのモノマー(AM)、及び1つのモノマー(M)のラジカル重合によって得られる。
【0055】
この実施形態によるポリマー(P*)は、本明細書では以下、「ポリマー(P)」と言われる。
【0056】
より好ましい実施形態によれば、ポリマー(P)は、アクリル酸、アクリルアミド及び式(Ia)のビニルイミダゾールのラジカル重合によって得られる。
【0057】
ポリマー(P*)はまた、任意の制御ラジカル重合技法によって調製することができる。これらの中で、可逆付加開裂連鎖移動(RAFT)及びザンテートの交換反応を用いた高分子設計(MADIX)を挙げることができる。
【0058】
RAFT又はMADIX制御ラジカル重合剤(本明細書では以下、「RAFT/MADIX剤」と言われる)の使用は、例えば国際公開第98/058974 A号パンフレット(RHODIA CHIMIE)1998年12月30日及び国際公開第98/01478 A号パンフレット(E.I.DUPONT DE NEMOURS AND COMMONWEALTH SCIENTIFIC AND INDUSTRIAL RESEARCH ORGANIZATION)1998年1月15日に開示されている。
【0059】
好ましくは、ポリマー(P*)は、モノマー(AA)、モノマー(AM)及びモノマー(M)の総量を基準として、以下のモル比:
- モノマー(AA):0~95%、とりわけ5~50%、好ましくは20~40%、
- モノマー(AM):0~90%、好ましくは25~90%、より好ましくは60~80%、
- モノマー(M):0.1~50%、例えば1~30%、とりわけ1~20%、更には2~15%
(ここで、モノマー(AA)及びモノマー(AM)の少なくとも1つは、0%の量にはない)
を有する混合物のラジカル共重合によって得られる。
【0060】
結果として、ポリマー(P*)は、好ましくは、
- 0~95%、とりわけ5~50%、好ましくは20~40%のモノマー(AA)に由来する繰り返し単位、
- 0~90%、好ましくは25~90%、より好ましくは50~80%のモノマー(AM)に由来する繰り返し単位、及び
- 1~50%、例えば1~30%、とりわけ1~20%、更には2~15%のモノマー(M)に由来する繰り返し単位
(ここで、モノマー(AA)及びモノマー(AM)の少なくとも1つは、0%の量ではなく、
前述のモル%は全て、ポリマー(P*)の繰り返し単位の全モルを基準とする)
を含む。
【0061】
本発明の好ましい実施形態において、ポリマー(P*)は、
- 5~50%、好ましくは20~40%のモノマー(AA)に由来する繰り返し単位、
- 25~90%、より好ましくは50~80%のモノマー(AM)に由来する繰り返し単位、及び
- 1~50%、例えば1~30%、とりわけ1~20%、更には2~15%のモノマー(M)に由来する繰り返し単位
(前述のモル%は全て、ポリマー(P*)の繰り返し単位の全モルを基準とする)
を含むポリマー(P)である。
【0062】
加えて、本発明によるポリマー(P*)は、好ましくは、少なくとも90kDa、例えば90~5000kDa、好ましくは850kDa~2000kDaの数平均分子量(Mn)を有する。
【0063】
好ましい実施形態によれば、ポリマー(P*)は、約100kDa~10000kDa、好ましくは1000kDa~3000kDaの重量平均分子量を有する統計的な(ランダム)コポリマーであって、モノマー(AA)、モノマー(AM)、及びモノマー(M)の、好ましくは約:
- 20~40%のモノマー(AA)、
- 50~80%のモノマー(AM)、及び
- 2~15%のモノマー(M)
のモル比での混合物のラジカル重合によって得られるコポリマーである。
【0064】
本発明のある実施形態によれば、ポリマー(P*)は、RAFT/MADIX剤を使用する制御ラジカル重合によって得られるブロックコポリマーである。
【0065】
本明細書で用いられるような「ブロックコポリマー」とは、ジブロック、トリブロック、又はマルチブロックであることができる、真ブロックポリマー;線状星形ポリマーとしても知られる、分岐ブロックコポリマー;櫛;及びグラジエントポリマーを含むが、それらに限定されない、任意の制御アーキテクチャコポリマーを意図している。グラジエントポリマーは、潜在的にランダムからブロック様構造の範囲である、その組成がポリマー鎖に沿って徐々に変化する線状ポリマーである。ブロックコポリマーの各ブロックは、それ自体、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ランダムターポリマー、又はグラジエントポリマーであり得る。
【0066】
ポリマー(P*)は、固体若しくは乾燥形態で、又はベクトル化形態で、例えば溶液の若しくはエマルジョンの若しくは懸濁液の形態で、特に水溶液の形態で提供することができる。ベクトル化形態、たとえば水溶液は、3~50重量%、例えば5~30重量%のポリマー(P*)を特に含むことができる。ポリマー(P)を含む水溶液は、特に、ラジカル重合プロセスの終わりに水性相調製によって得られる溶液であることができる。
【0067】
上で定義されたようなポリマー(P)は、新規であり、本発明の更なる目的を表す。
【0068】
ポリマー(P*)がポリマー(P)である、したがってそれが少なくとも1種のモノマー(AA)に由来する繰り返し単位を含む場合、それは、好適には、その中和形態ポリマー(P-N)へ変換され得、こうして中和形態の少なくともα,β-エチレン性不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位を含む。
【0069】
一実施形態において、本発明は、したがって、ポリマー(P-N)を提供し、前記ポリマーは、
(A)少なくとも1個の窒素原子を有する不飽和複素環基を有するエチレン性不飽和モノマーである、少なくとも1種のモノマー(M)に由来する繰り返し単位であって、前記モノマー(M)が、下式(I):
【化16】
[式中、
は、H又はアルキル基、好ましくはメチル基であり;
は、H又はアルキル基であり;
同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得;
Aは、
i)単共有結合;及び
ii)スペーサー、例えば-CO-NH-(CH-、-CO-O-(CH-及び-CO-O-(CH-O-CO-
(ここで、nは、1~5の整数であり、典型的には3又は4に等しい)
からなる群から選択される基など
からなる群から選択される結合であり;
X、Y及びZは、互いに独立して、炭素原子又は窒素原子から選択され;
a、b及びcは、互いに独立して、整数1~2から選択され;
各一点鎖線は、任意選択の二重結合を表す]
を有する、繰り返し単位と;
(B1)中和形態での少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマー[モノマー(AA)]に由来する繰り返し単位と;
(B2)式(II):
【化17】
(式中、
は、水素原子又はメチル基を表し、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から又は1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基から選択され得、同じものであるか又は互いに異なる、R及びRは、水素原子から、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐のアルキル基、カルボン酸基又はアミド基から選択され得る)
の少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド[モノマー(AM)]に由来する繰り返し単位と
を含む。
【0070】
ポリマー(P-N)は、上で定義されたようなポリマー(P)のモノマー(AA)に由来する繰り返し単位の酸基を中和することによって調製することができ、ここで、酸基の中和は、好適な溶媒中で、一価カチオンを含む塩[塩(S)]、好ましくはアルカリ金属塩でか、又はアンモニアでかのどちらかで実施される。
【0071】
塩(S)は、酸基を中和できる任意の塩であることができる。いくつかの実施形態において、塩(S)は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、重炭酸リチウム、及びそれらの組合せからなる群から選択されるリチウム塩、好ましくは炭酸リチウムである。いくつかの実施形態において、リチウム塩は水酸化リチウムを含まない。
【0072】
ポリマー(P)の中和のステップにおいて使用するための溶媒は、塩(S)又はアンモニア及び結果として生じるポリマー(P-N)を溶解できる任意の溶媒であることができる。好ましくは、溶媒は、水、NMP、及び、例えば、メタノール、イソプロパノール、及びエタノールなどの、アルコールなどの、水性溶媒の少なくとも1つから選択される。最も好ましくは、溶媒は水性溶媒である。更により好ましくは、溶媒は水である。
【0073】
好ましくは、溶媒中の塩(S)の含有量は、溶媒及び塩(S)の総重量を基準として、0.5~10重量%、好ましくは1~5重量%の範囲である。
【0074】
塩(S)がリチウム塩であるいくつかの実施形態において、溶媒中のリチウム塩の濃度は、酸基に対して少なくとも0.25当量、0.5当量、0.8当量、1当量、1.5当量、2当量、2.5当量、3当量、4当量のリチウムを提供する。いくつかの実施形態において、溶媒中のリチウム塩の濃度は、酸基に対して最大でも5当量、好ましくは最大でも4当量のリチウムを提供する。
【0075】
前記実施形態によれば、ポリマー(P-N)は、少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマーのリチウム化形態に由来する繰り返し単位を含む。
【0076】
中和後の溶液中のポリマー(P-N)の含有量は、溶媒及びポリマー(P-N)の総重量を基準として、0.5~40重量%、好ましくは2~30重量%、より好ましくは4~20重量%の範囲である。
【0077】
ポリマー(P-N)は、中和後の溶液から固体として単離し、任意選択的に後の使用のために保管することができる。固体高分子(P-N)はまた、水に溶解(又は再溶解)させて以下に記載される電極形成用組成物を調製することができる。しかしながら、好ましくは、中和後のポリマー(P-N)を含む溶液は、以下に記載されるようなバインダー組成物を調製する際に、任意選択的に水で更に希釈して、直接使用することができる水溶液である。
【0078】
好ましい実施形態において、ポリマー(P)のリチウム塩、すなわちポリマー(P-Li)は、約10重量%のポリマー(P)を含有する水溶液を完全に中和するための量のLiOHを添加することによって調製された。結果として生じる溶液は、6.5~9の範囲のpHを有し、およそ10重量%のポリマー(P-Li)を含有した。
【0079】
中和ポリマー溶液は、有利には、中和ポリマーが増加した粘度を示すので、スラリーの処理及び分散能力の点で利点を有する。更に、ポリマー(P-Li)は、7よりも高いpHを有するスラリーで処理される場合に、より良好な性能を通常示すリチウム化シリコン型とより適合するpHを有する。追加の利点は、モノマー(AA)に由来する繰り返し単位の塩化形態が、セル内での遊離酸基によるリチウムイオンの隔離であって、第1のサイクルクーロン効率、したがって初期容量を低下させることができる隔離を回避できることである。
【0080】
電極形成組成物[組成物(Comp)]
電極形成組成物(Comp)に使用され得るポリマー(P*)の量は、様々な要因の影響を受ける。1つのそのような要因は、活物質の表面積及び量、並びに電極形成組成物に添加される任意の導電性付与添加剤の表面積及び量である。これらの要因は、バインダー粒子が導電材料粒子と導電性材料粒子との間にブリッジを提供し、それらを接触させ続けるので重要であると考えられる。
【0081】
本発明の電極形成組成物[組成物(Comp)]は、1種以上の電極活物質を含む。本発明の目的のためには、用語「電極活物質」は、電気化学デバイスの充電段階及び放電段階中にアルカリ若しくはアルカリ土類金属イオンをその構造中に組み入れるか又は挿入する、及びそれから実質的に放出することができる化合物を意味することを意図する。電極活物質は、好ましくは、リチウムイオンを組み入れる又は挿入する、及び放出することができる。
【0082】
本発明の電極形成組成物(Comp)における電極活物質の性質は、前記組成物が負極(アノード)又は正極(カソード)の製造に使用されるかどうかに依存する。
【0083】
リチウムイオン二次電池用の正極を形成する場合に、電極活物質は、式LiMQ(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr及びVなどの遷移金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Qは、O又はSなどのカルコゲンである)の複合金属カルコゲナイドを含み得る。これらの中で、式LiMO(式中、Mは、上で定義されたものと同じものである)のリチウム系複合金属酸化物を使用することが好ましい。それらの好ましい例としては、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1-x(0<x<1)及びスピネル構造化LiMnが挙げられ得る。
【0084】
代替形態として、リチウムイオン二次電池用の正極を形成する場合には更に、電極活物質は、式M(JO1-f(式中、Mは、リチウムであり、それは、M金属の20%未満を表す別のアルカリ金属によって部分的に置換され得、Mは、Fe、Mn、Ni又はそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルでの遷移金属であり、それは、+1~+5の酸化レベルでの及び0を含めて、M金属の35%未満を表す1つ以上の追加の金属によって部分的に置換され得、JOは、任意のオキシアニオンであり、ここで、Jは、P、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシド又はクロリドアニオンであり、fは、一般に0.75~1に含まれる、JOオキシアニオンのモル分率である)のリチウム化又は部分リチウム化遷移金属オキシアニオン系電気活物質を含み得る。
【0085】
上で定義されたようなM(JO1-f電気活物質は、好ましくは、ホスフェート系であり、秩序立った又は修飾されたカンラン石構造を有し得る。
【0086】
より好ましくは、正極を形成する場合の電極活物質は、式Li3-xM’M’’2-y(JO(式中、0≦x≦3であり、0≦y≦2であり、M’及びM’’は、同じか若しくは異なる金属であり、それらの少なくとも1つは、遷移金属であり、JOは、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換されていてもよいPOであり、Jは、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せのいずれかである)を有する。更により好ましくは、電極活物質は、式Li(FeMn1-x)PO(式中、0≦x≦1であり、xは好ましくは1である)のホスフェート系電気活物質(すなわち、式LiFePOのリチウム鉄ホスフェート)である。
【0087】
リチウムイオン二次電池用の負極を形成する場合に、電極活物質は、好ましくは、1種以上の炭素系材料及び/又は1種以上のケイ素系材料を含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、炭素系材料は、天然若しくは人工黒鉛などの、黒鉛、グラフェン、又はカーボンブラックから選択され得る。
これらの材料は、単独で又はそれらの2つ以上の混合物として使用され得る。
【0089】
炭素系材料は、好ましくは黒鉛である。
【0090】
ケイ素系化合物は、クロロシラン、アルコキシシラン、アミノシラン、フルオロアルキルシラン、ケイ素、塩化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素及びリチウム化ケイ素からなる群から選択される1つ以上であり得る。
【0091】
より特に、ケイ素系化合物は、酸化ケイ素又は炭化ケイ素であり得る。
【0092】
電極活物質中に存在する場合、ケイ素系化合物は、電気活性化合物の総重量に対して1~70重量%、好ましくは5~30重量%の範囲の量で含まれる。
【0093】
1種以上の任意選択の導電性付与添加剤が、本発明の組成物から製造される結果として生じる電極の導電性を改善するために添加され得る。電池用の導電剤は、当技術分野において公知である。
【0094】
それらの例としては:カーボンブラック、黒鉛微粉末、カーボンナノチューブ、グラフェン、若しくは繊維などの炭素質材料、又はニッケル若しくはアルミニウムなどの金属の微粉末若しくは繊維が挙げられ得る。任意選択の導電剤は、好ましくは、カーボンブラックである。カーボンブラックは、例えば、ブランド名、Super P(登録商標)又はKetjenblack(登録商標)で入手可能である。
【0095】
存在する場合、導電剤は、上で記載された炭素系材料と異なる。
【0096】
任意選択の導電剤の量は、電極形成組成物中の総固形分の好ましくは0~30重量%である。特に、カソード形成組成物については、任意選択の導電剤は、組成物内の固形分の総量の典型的には0重量%~10重量%、より好ましくは0重量%~5重量%である。
【0097】
ケイ素系電気活性化合物を含まないアノード形成組成物については、任意選択の導電剤は、組成物内の固形分の総量の典型的には0重量%~5重量%、より好ましくは0重量%~2重量%であり、一方、ケイ素系電気活性化合物を含むアノード形成組成物については、より多い量の、典型的には、組成物内の固形分の総量の0.5~30重量%の任意選択の導電剤を導入することが有益であることが分かった。
【0098】
更に、本発明の電極形成組成物は、少なくとも1種の増粘剤を含有することができ;存在するとき、増粘剤(レオロジー調整剤とも称される)の量は、特に限定されず、一般に、組成物(Comp)の総重量に対して、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%の範囲である。増粘剤は、一般に、キャスティングプロセス用の組成物の適切な粘度を提供しながら、本発明の水性組成物からの粉末状電極材料の沈降を防ぐか又は遅くするために添加される。
【0099】
好適な増粘剤の非限定的な例としては、カルボキシル化メチルセルロースのようなカルボキシル化アルキルセルロースなどの有機増粘剤、並びモンモリロナイト及びベントナイトのような天然粘土、ラポナイトのような人造粘土並びにシリカ及びタルクのような他のものなどの無機増粘剤が挙げられる。
【0100】
本発明の組成物(Comp)の総固形分(TSC)は、典型的には、組成物(Comp)の総重量に関して15~70重量%、好ましくは40~60重量%に含まれる。組成物(Comp)の総固形分は、とりわけポリマー(P)、電極活物質及び増粘剤などの任意の固体の、不揮発性の追加の添加剤を含む、それの全ての不揮発性成分の累積であると理解される。
【0101】
水性バインダー溶液が別々に調製され、続いて組成物(Comp)を調製するために電極活物質及び任意選択の導電性材料及び他の添加剤と組み合わせられる場合、安定した溶液を生成するのに十分な量の水が使用される。使用される水の量は、安定した溶液を生成するために必要な最小量から、電極活物質、任意選択の導電性材料、及び他の固体添加剤が添加された後に電極混合物中で所望の総固形分を達成するのに必要な量までの範囲であり得る。
【0102】
電極(E)
本発明の電極形成組成物(Comp)は、電極[電極(E)]の製造プロセスにおいて使用することができ、前記プロセスは、
(i)少なくとも1つの表面を有する金属基材を提供するステップ;
(ii)上で定義されたような電極形成組成物[組成物(Comp)]を提供するステップ;
(iii)ステップ(ii)において提供された組成物(Comp)を、ステップ(i)において提供された金属基材の少なくとも1つの表面上へ塗布し、それによって少なくとも1つの表面へ前記組成物(Comp)でコーティングされた金属基材を含む組立体を提供するステップ;
(iv)ステップ(iii)において提供された組立体を乾燥させるステップ;
(v)ステップ(iv)において得られた乾燥組立体を圧縮ステップに供して本発明の電極(E)を得るステップ
を含む。
【0103】
金属基材は、一般に、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又は銀などの、金属でできた箔、メッシュ又はネットである。
【0104】
本発明のプロセスのステップ(iii)の下で、電極形成組成物(Comp)は、典型的には、キャスティング、印刷及びロールコーティングなどの任意の好適な手順によって金属基材の少なくとも1つの表面上へ塗布される。
【0105】
任意選択的に、ステップ(iii)は、ステップ(ii)において提供された電極形成組成物(Comp)を、ステップ(iv)おいて提供される組立体上へ塗布することによって、典型的には1回以上、繰り返され得る。
【0106】
本発明のプロセスのステップ(iv)の下で、乾燥は、大気圧下か又は真空下かのいずれかで行われ得る。或いはまた、乾燥は、改善雰囲気下で、例えば、典型的にはとりわけ水分が除かれた(0.001v/v%未満の水蒸気含有量)、不活性ガス下で行われ得る。
【0107】
乾燥温度は、本発明の電極(E)からの水性媒体の蒸発による除去を達成するように選択されるであろう。
【0108】
ステップ(v)において、ステップ(iv)において得られた乾燥組立体は、本発明の電極(E)の目標空隙率及び密度を達成するために、カレンダー加工プロセスなどの圧縮ステップに供される。
【0109】
好ましくは、ステップ(iv)で得られた乾燥組立体は、ホットプレスされ、圧縮ステップ中の温度は、25℃~130℃に含まれ、好ましくは約60℃のものである。
【0110】
電極(E)についての好ましい目標密度は、1.4~2g/ccに含まれ、好ましくは少なくとも1.55g/ccである。電極(E)の密度は、電極の構成要素の密度に電極配合物中のそれらの質量比を掛けた積の合計として計算される。
【0111】
更なる態様において、本発明は、本発明のプロセスによって得られる電極[電極(E)]に関する。
【0112】
それ故に、本発明は、
- 少なくとも1つの表面を有する金属基材と、
- 前記金属基材の少なくとも1つの表面上へ直接接着した、
a)少なくとも1種のポリマー(P*)、
b)電極活物質、
c)水性溶媒、及び
d)任意選択的に少なくとも1種の導電性付与添加剤
を含む組成物からなる少なくとも1つの層と
を含む電極(E)に関する。
【0113】
前記金属基材の少なくとも1つの表面上へ直接接着した組成物は、電極の製造プロセス中に、例えばステップ(iv)(乾燥)において及び/又は圧縮ステップ(v)において、水性溶媒が少なくとも部分的に除去されている本発明の電極形成組成物(Comp)に相当する。それ故に、本発明の電極形成組成物(Comp)に関して記載される好ましい実施形態は全て、製造プロセス中に除去される水性媒体を除いて、本発明の電極において、前記金属基材の少なくとも1つの表面上へ直接接着した組成物にも適用できる。
【0114】
本発明の好ましい実施形態において、電極(E)は負極である。より好ましくは、負極はケイ素系電極活物質を含む。
【0115】
更に好ましい実施形態において、本発明は、電極の総重量を基準として、
- 0.5~15重量%、好ましくは0.5~10重量%のポリマー(P*)と、
- 45~95重量%、好ましくは70~90重量%の炭素系材料と、
- 3~50重量%、好ましくは10~50重量%のケイ素系材料%と、
- 0~5重量%、好ましくは0.5~2.5重量%、より好ましくは約1重量%の導電性付与添加剤と
を含む負極に関する。
【0116】
本発明の電極(E)は、電気化学デバイスでの、特に二次電池での使用に特に好適である。
【0117】
本発明の二次電池は、好ましくは、アルカリ又はアルカリ土類二次電池である。
【0118】
本発明の二次電池は、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0119】
本発明による電気化学デバイスは、当業者に公知の標準的な方法によって作製することができる。
【0120】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0121】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0122】
本発明は、これから、以下の実施例に関連して説明され、その目的は、単に例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0123】
原材料
AA:Aldrichから入手可能なアクリル酸;
AM:SNFから入手可能なアクリルアミドモノマー(50%水溶液);
VIm:Aldrichから入手可能なビニルイミダゾールモノマー;
Aldrichから入手可能な4-ビニルピリジン;
移動剤:SolvayからRhodixan A1として入手可能なMADIX型移動剤のエタノール中の新鮮に調製された1重量%溶液;
VWRから入手可能な粉末形態での過硫酸ナトリウム;(10重量%水溶液を重合実験の直前に調製した);
Aldrichから入手可能な粉末形態でのホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム;(10重量%水溶液を重合実験の直前に調製した);
V-50開始剤):Aldrichから粉末形態で入手可能な(2,2’-アゾビス(2-メチル-プロピオンアミジン)二塩酸塩);(10重量%水溶液を重合実験の直前に調製した);
Sigma-Aldrichから入手可能な水酸化リチウム一水和物(純度98%);
信越化学工業株式会社から市販されている酸化ケイ素、KSC-1064、理論容量は約2100mAh/gである;
黒鉛、Imerys S.A.製のACTILION2;
Imerys S.AからSC45として入手可能な、カーボンブラック;
日本製紙からMAC 500LCとして入手可能な、カルボキシメチルセルロース(CMC);
日本ゼオン株式会社からZeon(登録商標)BM-480Bとして入手可能な、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)懸濁液(水中の40重量%);
Solvionic製の、2重量%のVC及び10重量%のF1EC入りのEC/DMC 1/1v/v中のLiPF6 1Mの電解質混合物。
【0124】
ポリマー(P)の一般的な合成手順
合成プロセスは、周囲との熱交換を最小限にするために断熱反応器(魔法瓶様フラスコ)中で行った。
【0125】
反応器に、その中へ小さい還流系が設置された多数の入口を含有する蓋、機械撹拌系、窒素パージライン及び原材料供給ラインを備え付けた。
【0126】
第1のステップにおいて、全てのモノマー、溶媒(水)及び任意選択的に移動剤を、反応器中へ装入し、室温でおおよそ1時間撹拌及び窒素パージ下に保った。次いで、レドックス型開始剤を反応混合物に添加した。熱開始剤も同時に反応混合物中へ添加した。開始剤を、機械撹拌しながら数分間で反応混合物中で均質化し、次いで撹拌及び窒素パージを停止した。
【0127】
室温からおおよそ80~90℃に至るまでの反応混合物温度の上昇が、発熱効果としておおよそ半時間から1時間内に得られた。次いで、反応混合物を更に24時間反応フラスコ中に維持した。
【0128】
特定のポリマー合成例のために使用された試薬の装入を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
ポリマーP-1、P-2、P-3、P-4及びP-5のために使用されたモノマーの対応するモル比を表2に提供する。
【0131】
【表2】
【0132】
流動性の高粘性ゲル様生成物を次いでフラスコから排出し、それらの固形分(安定した質量まで130℃で加熱される1グラムのサンプル)、残留モノマー(HPLC分析)及び分子量分布(SEC MALS分析)を得るために分析した。
【0133】
ポリマーP-1~P-5の特性を表3にまとめる。
【0134】
【表3】
【0135】
分子量の決定
ポリマーの質量分布は、g/mol単位で表される、実値を得るためにSEC MALS分析(SEC:サイズ排除クロマトグラフィー-MALS: 多角度レーザー分散)によって測定した。
【0136】
SEC MALS分析は、2つの検出器:
- 示差屈折計RI-濃度検出器
- MALS検出器(多角度レーザー分散)-質量検出器
を備えたHPLCチェーンで行った。
【0137】
(ポリマー化学種についての)クロマトグラムの各スライスについて、ソフトウェアは、
ポリマーの濃度、RI信号=定数*dn/dc*濃度
スライスの質量Mi
を計算する。
特定のMiデータから、ソフトウェアは、質量分布:Mw、Mn及び多分散指数Ip=Mw/Mn
を計算する。
【0138】
モル質量の計算は、ポリマーの屈折率の増分、dn/dcを必要とする。それは、とりわけ、移動相の性質、実験条件の温度及びレーザーの波長に応じて、一定である。
【0139】
値「dn/dc」は、溶出フラクションの質量回収率に従ってソフトウェアによって計算される:本発明のポリマーについてdn/dcは、95~100重量%質量回収率につながる、0.17mL/gである。モル質量は、log(M)曲線のいかなる調整もなしに、実際のMi点に基づいて計算された。
【0140】
詳細な分析条件は、以下の通りである:
- 分析機器:MALS検出器(Mini Dawn TREOS)及びAgilent Differential Refractometer(RI)付きのSECシステム
- ポンプ:Agilent 1100
- 移動相:1MのNHNO及び100ppmのNaN入りの水
- カラム(メーカー、モデルno.):Shodex OHpak SB 806M HQ(30cmの3つのカラムのガードカラム)
- 温度:35℃
- 流量:1.0mL/分
- 注入量及びサンプル濃度:100μL、0.1%(乾燥ポリマーで表される)
【0141】
Li-ポリマーの水溶液の調製のための一般的な手順
約40gのポリマー水溶液5重量%を、所望の値のpHまでMettler Toledo製の滴定装置T5を用いてLiOH水溶液(水中の4.25重量%のLiOH)で滴定した。バインダー溶液 LiOH溶液及び最終リチウム化バインダー溶液全固形分の正確な量を表4に報告する。
【0142】
【表4】
【0143】
電極形成組成物及び負極の調製
電極形成組成物及び負極を、以下の装置を用いて下で詳述されるように調製した:
機械式ミキサー:自転公転式ミキサー(Speedmixer)及び傾斜羽根車付きDispermat(登録商標)シリーズの高剪断機械的ミキサー;
フィルムコーター/ドクターブレード:電動のElcometer(登録商標)4340/Zehntner ZUA2000;
真空オーブン:真空のBINDER VD 23;及びびロールプレス:精度4インチホットローリングプレス/100℃までカレンダー処理。
【0144】
実施例1-ターポリマーアノード5%バインダー
20.0gの2重量%CMC水溶液、0.40gのカーボンブラック、7.52gの酸化ケイ素、30.08gの黒鉛及び10.127gの脱イオン水を混合することによって水性組成物を調製した。10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌した後、ポリマーP-1の31.873gの5%固形分水溶液を添加した。混合物を10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌することによって均質化し、次いで1時間穏やかに撹拌することによって再度混合した。1時間後に、剪断力を低下させ、スラリーをゆっくりと撹拌することによって再度混合した。
【0145】
このようにして得られたバインダー組成物をドクターブレードで厚さ18.5μmの銅箔上にキャストし、コーティング層を約70分間90℃の温度でのオーブン中で乾燥させることによって負極を得た。乾燥したコーティング層の厚さは約60μmであった。次いで、電極をロールプレスで60℃でホットプレスして1.6g/ccの目標密度を達成した。結果として生じる負極は、以下の組成を有していた:18.8重量%の酸化ケイ素、75.2重量%の黒鉛、4重量%のP-1、1重量%のCMC及び1重量%のカーボンブラック。電極E1をこのようにして得た。
【0146】
実施例2-ターポリマーアノード3%バインダー
22.0gの2重量%CMC水溶液、0.44gのカーボンブラック、8.448gの酸化ケイ素、33.792gの黒鉛及び17.790gの脱イオン水を混合することによって水性組成物を調製した。10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌した後、ポリマーP-1の17.753gの5%固形分水溶液を添加した。混合物を10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌することによって均質化し、次いで1時間穏やかに撹拌することによって再度混合した。1時間後に、剪断力を低下させ、スラリーをゆっくりと撹拌することによって再度混合した。
【0147】
このようにして得られたバインダー組成物をドクターブレードで厚さ18.5μmの銅箔上にキャストし、コーティング層を約70分間90℃の温度でのオーブン中で乾燥させることによって負極を得た。乾燥したコーティング層の厚さは約60μmであった。次いで、電極をロールプレスで60℃でホットプレスして1.6g/ccの目標密度を達成した。結果として生じる負極は、以下の組成を有していた:19.2重量%の酸化ケイ素、76.8重量%の黒鉛、2重量%のP-1、1重量%のCMC及び1重量%のカーボンブラック。電極E2をこのようにして得た。
【0148】
実施例3-ターポリマーアノード3%バインダー
22.0gの2重量%CMC水溶液、0.44gのカーボンブラック、8.448gの酸化ケイ素、33.792gの黒鉛及び17.790gの脱イオン水を混合することによって水性組成物を調製した。10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌した後、ポリマーP-3の17.753gの5%固形分水溶液を添加した。混合物を10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌することによって均質化し、次いで1時間穏やかに撹拌することによって再度混合した。1時間後に、剪断力を低下させ、スラリーをゆっくりと撹拌することによって再度混合した。
【0149】
このようにして得られたバインダー組成物をドクターブレードで厚さ18.5μmの銅箔上にキャストし、コーティング層を約70分間90℃の温度でのオーブン中で乾燥させることによって負極を得た。乾燥したコーティング層の厚さは約60μmであった。次いで、電極をロールプレスで60℃でホットプレスして1.6g/ccの目標密度を達成した。結果として生じる負極は、以下の組成を有していた:19.2重量%の酸化ケイ素、76.8重量%の黒鉛、2重量%のP-3、1重量%のCMC及び1重量%のカーボンブラック。電極E3をこのようにして得た。
【0150】
実施例4-ターポリマーアノード3%バインダー
22.0gの2重量%CMC水溶液、0.44gのカーボンブラック、8.448gの酸化ケイ素、33.792gの黒鉛及び17.790gの脱イオン水を混合することによって水性組成物を調製した。10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌した後、ポリマーP-2の17.753gの5%固形分水溶液を添加した。混合物を10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌することによって均質化し、次いで1時間穏やかに撹拌することによって再度混合した。1時間後に、剪断力を低下させ、スラリーをゆっくりと撹拌することによって再度混合した。
【0151】
このようにして得られたバインダー組成物をドクターブレードで厚さ18.5μmの銅箔上にキャストし、コーティング層を約70分間90℃の温度でのオーブン中で乾燥させることによって負極を得た。乾燥したコーティング層の厚さは約60μmであった。次いで、電極をロールプレスで60℃でホットプレスして1.6g/ccの目標密度を達成した。結果として生じる負極は、以下の組成を有していた:19.2重量%の酸化ケイ素、76.8重量%の黒鉛、2重量%のP-2、1重量%のCMC及び1重量%のカーボンブラック。電極E4をこのようにして得た。
【0152】
実施例5-pH 8.5でリチウム化されたターポリマーアノード5%バインダー
19.0gの2重量%CMC水溶液、0.38gのカーボンブラック、7.14gの酸化ケイ素、28.58gの黒鉛及び10.72gの脱イオン水を混合することによって水性組成物を調製した。10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌した後、34.18gの4.47%固形分ポリマーP-1-Li-1水溶液を添加した。混合物を10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌することによって均質化し、次いで1時間穏やかに撹拌することによって再度混合した。1時間後に、剪断力を低下させ、スラリーをゆっくりと撹拌することによって再度混合した。
【0153】
このようにして得られたバインダー組成物をドクターブレードで厚さ18.5μmの銅箔上にキャストし、コーティング層を約70分間90℃の温度でのオーブン中で乾燥させることによって負極を得た。乾燥したコーティング層の厚さは約60μmであった。次いで、電極をロールプレスで60℃でホットプレスして1.6g/ccの目標密度を達成した。結果として生じる負極は、以下の組成を有していた:18.8重量%の酸化ケイ素、75.2重量%の黒鉛、4重量%のポリマーP-1-Li-1、1重量%のCMC及び1重量%のカーボンブラック。電極E5をこのようにして得た。
【0154】
実施例6-pH 7.5でリチウム化されたターポリマーアノード5%バインダー
19.0gの2重量%CMC水溶液、0.38gのカーボンブラック、7.14gの酸化ケイ素、28.58gの黒鉛及び12.56gの脱イオン水を混合することによって水性組成物を調製した。10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌した後、32.34gの4.48%固形分ポリマーP-1-Li-2水溶液を添加した。混合物を10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌することによって均質化し、次いで1時間穏やかに撹拌することによって再度混合した。1時間後に、剪断力を低下させ、スラリーをゆっくりと撹拌することによって再度混合した。
【0155】
このようにして得られたバインダー組成物をドクターブレードで厚さ18.5μmの銅箔上にキャストし、コーティング層を約70分間90℃の温度でのオーブン中で乾燥させることによって負極を得た。乾燥したコーティング層の厚さは約60μmであった。次いで、電極をロールプレスで60℃でホットプレスして1.6g/ccの目標密度を達成した。結果として生じる負極は、以下の組成を有していた:18.8重量%の酸化ケイ素、75.2重量%の黒鉛、4重量%のポリマーP-1-Li-2、1重量%のCMC、及び1重量%のカーボンブラック。電極E6をこのようにして得た。
【0156】
実施例7-pH 6.5でリチウム化されたターポリマーアノード5%バインダー
19.0gの2重量%CMC水溶液、0.38gのカーボンブラック、7.14gの酸化ケイ素、28.58gの黒鉛及び11.13gの脱イオン水を混合することによって水性組成物を調製した。10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌した後、33.78の4.54%固形分ポリマーP-1-Li-3水溶液を添加した。混合物を10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌することによって均質化し、次いで1時間穏やかに撹拌することによって再度混合した。1時間後に、剪断力を低下させ、スラリーをゆっくりと撹拌することによって再度混合した。
【0157】
このようにして得られたバインダー組成物をドクターブレードで厚さ18.5μmの銅箔上にキャストし、コーティング層を約70分間90℃の温度でのオーブン中で乾燥させることによって負極を得た。乾燥したコーティング層の厚さは約60μmであった。次いで、電極をロールプレスで60℃でホットプレスして1.6g/ccの目標密度を達成した。結果として生じる負極は、以下の組成を有していた:18.8重量%の酸化ケイ素、75.2重量%の黒鉛、4重量%のポリマーP-1-Li-3、1重量%のCMC及び1重量%のカーボンブラック。電極E7をこのようにして得た。
【0158】
比較例CE1:スチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む負極
25.0gの2重量%CMC水溶液、及び0.50gのカーボンブラックを混合することによって水性組成物を調製し;10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌した後、9.60gの酸化ケイ素 38.4gの黒鉛及び23.861gの脱イオン水を添加した。混合物を10分間自転公転式ミキサーで穏やかに撹拌することによって均質化し、次いで1時間穏やかに撹拌することによって再度混合した。
【0159】
約1時間の混合後に、2.639gのSBR懸濁液を組成物に添加し、1時間ゆっくりと撹拌することによって再び混合した。
【0160】
このようにして得られたバインダー組成物をドクターブレードで厚さ18.5μmの銅箔上にキャストし、コーティング層を約70分間90℃の温度でのオーブン中で乾燥させることによって負極を得た。乾燥したコーティング層の厚さは約60μmであった。次いで、電極をロールプレスで60℃でホットプレスして1.6g/ccの目標密度を達成した。結果として生じる負極は、以下の組成を有していた。19.2重量%の酸化ケイ素、76.8重量%の黒鉛、2重量%のSBR、1重量%のCMC及び1重量%のカーボンブラック。電極CE1をこのようにして得た。
【0161】
接着試験
金属支持体上への電極組成物コーティングの接着を評価するために剥離試験を行った。試験は、25℃で300mm/分の速度で動作する、ASTM D903の手順に従って、上記のように作製された電極に関して行った。結果を表5に示す。
【0162】
【表5】
【0163】
電池の製造
Ex1、Ex2、Ex3、Ex4、Ex5、Ex6、Ex7及びCE1に従って作製された負極の小さなディスクを、CUSTOMCELLSから購入した、平衡化NMC正極ディスクと一緒に打ち抜くことによって、Arガス雰囲気下のグローブボックス内でコインセル(CR2032タイプ、直径20mm)を作製した。コインセルの作製に使用された電解質は、Solvionic製の、EC/DMC 1/1v/v中の1MのLiPFと、2重量%のVC及び10重量%のF1ECとの混合物であり;ポリエチレンセパレータ(東燃化学株式会社から市販されている)を入手したまま使用した。
【0164】
容量保持試験
1CのCレートでのフルセルのサイクリング安定性(開放容量を3通り測定し、下表6に示す):
【0165】
【表6】
【0166】
結果は、場合によっては比較例1のポリマーを使用することによって得られた基準組成物のものよりも更にはるかに高い、金属支持体への良好な接着力を同時に示しながら、本発明の電極を含む電池における放電容量保持が、比較例1の電極を使用することによって作製された電池のものよりもはるかに高いことを示す。
【国際調査報告】