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▶ バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ポリオレフィンフィラメント
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20241031BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20241031BHJP
   D01F 6/46 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/20
D01F6/46 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529274
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2022084370
(87)【国際公開番号】W WO2023104697
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21213669.1
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】マルキーニ,ロベルタ
(72)【発明者】
【氏名】ペルドミ,ジャニ
(72)【発明者】
【氏名】ムサッキ,ギャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】ディ ピエトロ,ファビオ
【テーマコード(参考)】
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4J002BB111
4J002BB121
4J002BB172
4J002GC00
4J002GK00
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB57
4L035BB79
4L035DD14
4L035FF01
4L035LA02
(57)【要約】
【解決手段】 本開示は、破断伸びEBが80%以上であり、比SR/EB(SRは延伸倍率)が45以下である延伸ポリオレフィンフィラメントを開示する。本開示の延伸ポリオレフィンフィラメントは、ポリオレフィン組成物(I)を含み、前記ポリオレフィン組成物(I)は、A)プロピレンポリマー40~78重量%と、B)以下の特徴を有するブテン-1ポリマー22~60重量%と、を含む。1)曲げ弾性率値は100~800MPaであること、2)比MI10/MIは20~40であること、3)0℃におけるキシレン可溶画分の含有量が15重量%以下であること。A)とB)の量は、A)+B)の総重量である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断伸びEBが80%以上、好ましくは90%以上、特に80%~130%、または90%~130%であり、比SR/EB(SRは延伸倍率である)が45以下、好ましくは40以下であり、下限はすべての場合において好ましくは15、より好ましくは23、最も好ましくは25である、延伸ポリオレフィンフィラメントであって、前記延伸ポリオレフィンフィラメントは、ポリオレフィン組成物(I)を含み、前記ポリオレフィン組成物(I)は、
A)プロピレンポリマー40~78重量%、好ましくは45~75重量%と、
B)以下の特徴を有するブテン-1ポリマー22~60重量%、好ましくは25~55重量%と、を含み、
1)曲げ弾性率値は100~800MPa、より好ましくは250~600MPa、最も好ましくは300~600MPaであること、
2)比MI10/MIは20~40、好ましくは25~35であり、MI10は190℃、荷重10kgでのメルトフローインデックスMIであり、MIは190℃、荷重2.16kgでのメルトフローインデックスMIであり、いずれもISO 1133-1:2011に準拠して測定されること、
3)B)の全重量を基準として0℃におけるキシレン可溶画分の含有量は15重量%以下、好ましくは15重量%以下であり、下限はすべての場合において好ましくは0.5重量%であること、
A)とB)の量は、A)+B)の合計重量を指し、破断伸びは、クランプ距離250mm、かつ適用伸び速度が250mm/minのダイナモメータを用いて、製造後7日後に1本のフィラメント上で測定され、また、曲げ弾性率は、成形後10日後に、規格ISO 178:2010に準拠して測定される、延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項2】
少なくとも800デンのタイターを有する、請求項1に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項3】
モノフィラメントである、請求項1又は2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項4】
前記SRは3.5:1~4.5:1である、請求項1又は2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項5】
クランプ距離250mm、適用伸び速度250mm/minのダイナモメータを用いて、製造後7日後に、1本のフィラメント上で測定された、下記特徴をさらに有する、請求項1又は2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
-靭性は1.9以上、好ましくは1.95以上、特に1.9~3、または1.95~3であること、および/または
-破断時の荷重は2.5~5kgであること
【請求項6】
前記ブテン-1ポリマーB)は、コモノマー含有量、特に共重合エチレン含有量が0.5モル%~10モル%、好ましくは0.7モル%~9モル%であるブテン-1ホモポリマーおよびブテン-1コポリマー、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項7】
前記ブテン-1ポリマーB)は、4以上、好ましくは5以上の分子量分布Mw/Mnを有し、上限はすべての場合において好ましくは10であり、Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均モル質量であり、Mnはゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される数平均モル質量である、請求項1または2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項8】
前記ブテン-1ポリマーB)は、以下の追加の特徴の1つまたは複数を有する、請求項1または2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
-走査速度10℃/minで第2加熱操作においてDSC(示差走査熱量測定)によって測定された融点TmIIは、125℃以下、好ましくは120℃以下であり、下限はすべての場合において好ましくは75℃であること
g)X線結晶化度は25~65%であること
-135℃でテトラヒドロナフタレン(THN)中にて測定された極限粘度(I.V.)は5dl/g以下、好ましくは3dl/g以下であり、下限はすべての場合において好ましくは0.4dl/gであること
ii)Mwは、100000g/モル以上、特に100000~650000g/モルであること
-走査速度10℃/minのDSCによって測定された融点Tmlは、95℃~135℃であること
-密度は885~925kg/m、好ましくは900~920kg/m、特に912~920kg/mであること
【請求項9】
前記プロピレンポリマーA)は、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、及びそれらの混合物から選択され、25℃におけるキシレン不溶画分の量は85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特にプロピレンホモポリマーの場合は95重量%以上であり、上限は、好ましくは全ホモポリマーについて99%、全コポリマーについて96%である、請求項1又は2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項10】
前記請求項のいずれか1項に記載の延伸ポリオレフィンフィラメントを含む製品。
【請求項11】
ネット、ロープ又はブラシなどの形態である、請求項10に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリオレフィンフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
「フィラメント」という用語は、一般に織物およびカーペット用途の繊維を区別するために使用される。
【0003】
したがって、本発明のフィラメントは、少なくとも500デニール(以下「デン」と呼ぶ)のタイターを特徴とすることが好ましい。
【0004】
このフィラメントの典型的な用途は、農業および建築産業におけるネット、ジオテキスタイル、および保護ネット用のロープおよび糸である。
【0005】
国際公開第2012049132号によれば、良好な機械的特性を有するフィラメント、モノテープまたは延伸テープは、プロピレンポリマーおよび95重量%までのブテン-1ポリマーを含む組成物から得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、多くの完成品では、靱性と伸びのバランスを向上させることが望ましい。
ポリプロピレンと特定のブテン-1ポリマーとを配合したポリオレフィン組成物を用いてフィラメントを製造することで、そのような目的を達成できることがわかった。
【0007】
したがって、本開示は、破断伸びEBが80%以上、好ましくは90%以上、特に80%~130%、または90%~130%であり、比SR/EB(SRは延伸倍率)が45以下、好ましくは40以下であり、下限は、すべての場合において好ましくは15、より好ましくは23、最も好ましくは25である、延伸ポリオレフィンフィラメントであって、延伸ポリオレフィンフィラメントは、ポリオレフィン組成物(以下、「ポリオレフィン組成物(I)」と呼ばれる)を含み、前記ポリオレフィン組成物(I)は、
A) プロピレンポリマー40~78重量%、好ましくは45~75重量%と、
B) 以下の特徴を有するブテン-1ポリマー22~60重量%、好ましくは25~55重量%と、を含み、
1) 曲げ弾性率値は100~800MPa、より好ましくは250~600MPa、最も好ましくは300~600MPaであること、
2) 比MI10/MIは20~40、好ましくは25~35であり、MI10は190℃、荷重10kgでのメルトフローインデックスMIであり、MIは190℃、荷重2.16kgでのメルトフローインデックスMIであり、いずれもISO 1133-1:2011に準拠して測定されること、
3) B)の全重量を基準として0℃におけるキシレン可溶画分の含有量は、15重量%以下、好ましくは10重量%以下であり、好ましい下限は、すべての場合において0.5重量%であること、
A)とB)の量は、A)+B)の合計重量を指し、破断伸びは、クランプ距離250mm、かつ適用伸び速度が250mm/minのダイナモメータを用いて、製造後7日後に1本のフィラメント上で測定され、また、曲げ弾性率は、成形後10日後に、規格ISO 178:2010に準拠して測定される。
【0008】
靭性と伸びのバランスにより、本発明のフィラメントは、ネット、ロープ、ブラシの製造に特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリオレフィンフィラメントは、クランプ距離250mm、適用伸び速度250mm/minのダイナモメータを用いて、製造後7日後に1本のフィラメント上で測定される、以下の付加の特徴を有することが好ましい。
- 靭性は1.9以上、より好ましくは1.95以上、特に1.9~3、または1.95~3であること、および/または
- 破断時の荷重は2.5~5kgであること。
【0010】
本明細書で使用される場合、「プロピレンポリマー」という表現は、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、特にランダムコポリマー、およびそれらの混合物から選択されるポリマーを含む。
【0011】
同様に、本明細書で使用される場合、「ブテン-1ポリマー」という表現は、ブテン-1ホモポリマー、ブテン-1コポリマー、及びそれらの混合物から選択されるポリマーを含む。
【0012】
本発明のポリオレフィン組成物において、A)は1つまたは複数のプロピレンコポリマーからなる、またはそれを含む場合、そのようなコポリマーは、好ましくはエチレンおよびCH2=CHRアルファオレフィンから選択される1つまたは複数のコモノマーを含んでもよく、ここで、RはC-Cアルキルラジカル、特にブテン-1、ペンテン-1、4-メチル-ペンテン-1、ヘキセン-1およびオクテン-1である。
【0013】
エチレン、ブテン-1およびヘキセン-1が好ましい。
【0014】
B)が1つ以上のブテン-1コポリマーからなる、またはそれを含む場合、そのようなコポリマーは、好ましくはエチレン、プロピレンおよびCH=CHRアルファ-オレフィンから選択される1つ以上のコモノマーを含んでもよく、RはC-Cアルキルラジカル、特にペンテン-1、4-メチル-ペンテン-1、ヘキセン-1およびオクテン-1である。
エチレン、プロピレンおよびヘキセン-1が好ましい。
上記の定義から、用語「コポリマー」には、2種類以上のコモノマーを含むポリマーが含まれることが明らかである。
【0015】
一実施形態では、プロピレンポリマー成分A)は、以下の追加の特徴のうちの少なくとも1つを有してもよい:
【0016】
- ココモノマーの含有量(A)がコポリマーの場合、0.5~15重量%、より好ましくは1~12重量%、特にコモノマーがエチレンまたはヘキセン-1の場合0.5~6重量%であること、
【0017】
- MILは、0.1~400g/10分、特に0.5~150g/10分、または0.5~100g/10分であり、MILは、ISO 1133-2:2011に準拠して測定された、230℃、荷重2.16kgでのメルトフローインデックスであること、
【0018】
- 25℃におけるキシレンにおける不溶画分の量は85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特にプロピレンホモポリマーの場合は95重量%以上であり、上限は、好ましくは、すべてのホモポリマーについて99%、すべてのコポリマーについて96%であること。
【0019】
- 曲げ弾性率は200MPaより高く、より好ましくは400MPaより高く、上限はすべての場合において好ましくは2000MPaであること。
【0020】
前記プロピレンホモポリマーおよびプロピレンコポリマーは両方とも当技術分野で知られており、市販されている。
【0021】
市販のプロピレンのホモポリマーおよびコポリマーの例は、LyondellBasell Industriesによって商標Moplenで販売されているポリマー製品である。
【0022】
これらは、重合プロセスでチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセンベースの触媒系を使用することによって製造できる。
【0023】
通常、チーグラー・ナッタ触媒は、元素周期表の1、2または13族の有機金属化合物と、元素周期表(新しい表記)の4~10族の遷移金属化合物との反応生成物を含む。特に、遷移金属化合物は、Ti、V、Zr、Cr、Hfの化合物の中から選択することができ、MgCl上に担持されることが好ましい。
【0024】
特に好ましい触媒は、元素周期表の1、2または13族の前記有機金属化合物と、MgCl上に担持されたTi化合物および電子供与体化合物を含む固体触媒成分との反応生成物を含む。
【0025】
好ましい有機金属化合物はアルミニウムアルキル化合物である。
【0026】
したがって、好ましいチーグラー・ナッタ触媒は、以下の反応生成物を含むものである:
1) Ti化合物、好ましくはハロゲン化Ti化合物、特にTiClと、MgCl上に担持された電子供与体(内部電子供与体)とを含む固体触媒成分;
2) アルミニウムアルキル化合物(助触媒)、および任意に、
3) 電子供与化合物(外部電子供与体)。
【0027】
固体触媒成分(1)は、電子供与体として、一般にエーテル、ケトン、ラクトン、N、Pおよび/またはS原子を含む化合物、ならびにモノおよびジカルボン酸エステルの中から選択される化合物を含む。
【0028】
上記特性を有する触媒は、特許文献によく知られている。特に有利なのは、米国特許第4,399,054号及び欧州特許第45977号に記載された触媒である。
【0029】
前記内部電子供与化合物の中でも、特に好適なのは、フタル酸エステル、好ましくはフタル酸ジイソブチル、コハク酸エステルである。
【0030】
他の内部電子供与体は、公開された欧州特許出願EP-A-361 493および728769に示されているように、1,3-ジエーテルが特に適している。
【0031】
共触媒(2)としては、Al-トリエチル、Al-トリイソブチルおよびAl-トリ-n-ブチルなどのトリアルキルアルミニウム化合物を使用することが好ましい。
【0032】
外部電子供与体として用いることができる電子供与体化合物(3)は、芳香族酸エステル(アルキル安息香酸塩等)、複素環化合物(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン及び2,6-ジイソプロピルピペリジン等)、特に少なくとも1つのSi-OR結合を含むケイ素化合物(Rは炭化水素ラジカル)を含む。
【0033】
ケイ素化合物としては、(tert-ブチル)Si(OCH、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH、(フェニル)Si(OCH、および(シクロペンチル)Si(OCHが有用である。
【0034】
上記1,3ジエーテルは、外部電子供与体としても好適である。内部電子供与体が前記1,3-ジエーテルのいずれかである場合、外部電子供与体を省略することができる。
【0035】
触媒を少量のオレフィン(予備重合)に予め接触させ、炭化水素溶媒中で懸濁液中に保持し、室内から60℃の温度で重合させることにより、触媒の重量の0.5~3倍の重合量を生成することができる。
【0036】
この操作は液体モノマー中で行うこともでき、この場合、触媒の重量の最大1000倍の量のポリマーが生成される。
【0037】
メタロセン系の触媒系の好ましい例は、米国特許第20060020096号および国際公開第98040419号に開示されている。
【0038】
上記の触媒とともに使用される重合条件も一般的によく知られている。
【0039】
前記重合は、一段階で行うこともできるし、異なる重合条件で二段階以上に分けて行うこともできる。
【0040】
それは、液相(例えば、希釈剤として液体プロピレンを使用)、気相、または液-気相で発生する可能性がある
【0041】
連鎖移動剤(例えば、水素またはZnEt)などの当該技術分野で知られている従来の分子量調節剤を使用することができる。
【0042】
重合温度は40~120℃が好ましい。より好ましくは50~80℃である。
【0043】
重合圧力は、大気以上であってもよい。
【0044】
液体プロピレン中で重合する場合、使用する動作温度における液体プロピレンの蒸気圧と競合する圧力であり、触媒混合物を供給するために使用する少量の不活性希釈剤の蒸気圧、任意のモノマーの過圧、および分子量調整剤として使用する水素によって修正されてもよい。
【0045】
特に、プロピレンポリマーA)は、欧州特許出願第782587号に示されているように、少なくとも2つの相互接続された重合ゾーンを含む気相重合反応器内で実施される重合プロセスによって製造することができる。
【0046】
詳細には、この方法は、触媒系の存在下でプロピレンおよび任意のコモノマーが供給され、生成されたポリマーがそこから排出される第1および第2の相互接続された重合ゾーンで行われる。前記プロセスにおいて、成長するポリマー粒子は、高速流動化条件下で前記重合ゾーンの1つ(ライザー)を通って上向きに流れ、前記ライザーを出て別の(第2)重合ゾーン(ダウンカマー)に入り、そこを通って高密度の形態で下方に流れ、重力の作用により、前記ダウンカマーを離れ、ライザーに再導入され、こうしてライザーとダウンカマーとの間にポリマーの循環が確立される。
【0047】
ダウンカマーでは、固体の密度が高い値に達し、ポリマーのかさ密度に近づく。したがって、流れの方向に沿って圧力の正の増加が得られるため、特別な機械的手段の助けを借りずにポリマーをライザーに再導入することが可能になる。このようにして、「ループ」循環が確立され、これは、2つの重合ゾーン間の圧力のバランスと、システムに導入される水頭損失によって決まる。
【0048】
一般に、ライザー内の高速流動化の条件は、関連するモノマーを含むガス混合物を前記ライザーに供給することによって確立される。ガス混合物の供給は、必要に応じてガス分配手段を使用することにより、前記ライザーへのポリマーの再導入点よりも下で行われることが好ましい。ライザーへの輸送ガスの速度は、動作条件下での輸送速度よりも高く、好ましくは2~15m/sである。
【0049】
一般に、ライザーから出たポリマーとガス混合物は固体/ガス分離ゾーンに搬送される。固体/気体の分離は、従来の分離手段を使用して行うことができる。分離ゾーンから、ポリマーはダウンコマーに入る。分離ゾーンを出たガス状混合物は圧縮され、冷却され、必要に応じてメイクアップモノマーおよび/または分子量調節剤を添加してライザーに移送される。移送は、ガス状混合物の再循環ラインを用いて行うことができる。
【0050】
2つの重合ゾーン間のポリマー循環の制御は、機械バルブなどの固体の流れを制御するのに適した手段を使用して、ダウンコマーから出るポリマーの量を計量することによって行うことができる。
【0051】
このプロセスは、0.5~10MPa、好ましくは1.5~6MPaの操作圧力下で実施することができる。
【0052】
任意に、重合ゾーン内には、窒素や脂肪族炭化水素等の不活性ガスを、不活性ガスの分圧の和が、ガスの全圧力の5~80%であることが好ましい量で保持することができる。
【0053】
触媒は、ライザーの任意の点でライザーまで供給される。しかしながら、ダウンカマーの任意の点で供給することもできる。触媒はどのような物理的状態であってもよいため、固体または液体の状態の触媒を使用できる。
【0054】
ブテン-1ポリマー成分B)は、実施例に示すように、当業者が知られており、市販されている。
【0055】
前記ブテン-1ポリマー成分B)は、好ましくは高度にアイソタクティックな線状ポリマーである。
【0056】
特に、特に、ブテン-1ポリマー成分B)は、150.91MHzで動作する13C-NMRでmmmmペンタッド/総ペンタッドとして、または0℃におけるキシレン不溶物の重量による量として測定されると、90~99%、より好ましくは93~99%、最も好ましくは95~99%のアイソタクティシティーを有する。
【0057】
ブテン-1ポリマー成分B)は、MI値が0.05~50g/10分であることが好ましく、0.1~10g/10分であることがより好ましい。
【0058】
ブテン-1ポリマー成分B)のMI10値は、1~100g/10分が好ましく、2~50g/10分がより好ましい。
【0059】
一実施形態では、ブテン-1ポリマー成分B)は、ホモポリマーであってもよい。
【0060】
さらなる一実施形態では、ブテン-1ポリマーB)は、0.5~10モル%、好ましくは0.7~9モル%のコモノマー含有量、特に共重合エチレン含有量を有するコポリマーであってもよい。
【0061】
さらなる一実施形態では、ブテン-1ポリマー成分B)は、以下を含むブテン-1ポリマー組成物であってよく、前記ブテン-1ポリマー組成物は、
B1)ブテン-1ホモポリマー、またはブテン-1とエチレン、プロピレン、先に定義されたCH=CHRオレフィンおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーであって、共重合コモノマー含有量が2モル%以下であるものと、
B2)3~25モル%の共重合コモノマー含有量を有する、ブテン-1と、エチレン、プロピレン、先に定義したCH=CHRオレフィンおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーと、を含み、
前記組成物は、B1)+B2)の合計として、0.5~18モル%、好ましくは0.7~15モル%の総共重合コモノマー含有量を有する。
【0062】
B1)およびB2)の相対量は、B1)の10重量%~50重量%、特に15重量%~45重量%、および90重量%~50重量%、特に85重量%~55重量%の範囲であってよい。前記量はB1)+B2)の合計を指す。
【0063】
一実施形態では、ブテン-1ポリマー成分B)は、以下の追加の特徴のうちの少なくとも1つを有してもよい。
-Mwは、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定された重量平均モル質量、Mnは、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定された数平均モル質量であり、分子量分布Mw/Mnは4以上、好ましくは5以上であり、上限は好ましくは10であること、
-10℃/minの走査速度で第2加熱操作においてDSC(示差走査熱量計)によって測定された融点TmIIは、125℃以下、好ましくは120℃以下であり、下限はすべての場合において好ましくは75℃であること、
-X線結晶化度は25~65%であること。
【0064】
任意に、ブテン-1ポリマー成分B)は、以下のさらなる追加の特徴の少なくとも1つを有してもよい。
-135℃でテトラヒドロナフタレン(THN)にて測定された極限粘度(I.V.)は、5dl/g以下、好ましくは3dl/g以下であり、下限はすべての場合において好ましくは0.4dl/gであること、
-Mwは、100000g/モル以上、特に100000~650000g/モルであること、
-走査速度10℃/minのDSCによって測定された融点TmIは95℃~135℃であること、
-密度は、885~925kg/m、好ましくは900~920kg/m、特に912~920kg/mであること。
【0065】
上記ブテン-1ポリマー成分B)は、公知のプロセスおよび重合触媒を用いて得ることができる。
【0066】
例えば、ブテン-1ポリマー成分B)を製造するためには、助触媒としてTiCl系ジーグラーナッタ触媒及びハロゲン化アルミニウム等のアルミニウム誘導体、並びに、上記MgClに担持された触媒系を用いることができる。
【0067】
上記担持触媒系を用いる場合、内部電子供与化合物の他の例としては、グルタレート3,3-ジメチルジエチルまたはジイソブチルが挙げられる。
【0068】
外部電子供与体化合物の好ましい例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルドリメトキシシランおよびテキシルトリメトキシシランである。テキシルトリメトキシシランの使用が特に好ましい。
【0069】
あるいは、ブテン-1ポリマー成分B)は、以下と接触させることによって得られるメタロセン触媒系の存在下でモノマーを重合させることによって得ることができる。
- 立体剛体メタロセン化合物、
-アルモキサン、またはアルキルメタロセンカチオンを形成できる化合物、および、任意に
- 有機アルミニウム化合物。
【0070】
重合プロセスは、任意に不活性炭化水素溶媒の存在下で液相で操作することによって前記触媒を用いて、または流動床もしくは機械的に撹拌された気相反応器を使用して気相で行うことができる。
【0071】
炭化水素溶媒は、芳香族(トルエンなど)または脂肪族(プロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、シクロヘキサンおよび2,2,4-トリメチルペンタン、イソドデカンなど)のいずれかであってもよい。
【0072】
好ましくは、重合プロセスは、液体ブテン-1を重合媒体として使用することによって行われる。
【0073】
重合温度は、20℃~150℃、特に50℃~90℃の間、例えば65℃~82℃であってもよい。
【0074】
分子量を制御するために、分子量調整剤、特に水素を重合環境に供給する。
【0075】
4以上のMw/Mn値、および以前に定義されたMI10/MI比の値は、一般に広い分子量分布(MWD)になると考えられる。
【0076】
広い分子量を持つブテン-1ポリマーは、いくつかの方法で入手できる。方法の1つは、ブテン-1を(共)重合するときに、本質的に広いMWDポリマーを生成できる触媒を使用することにある。別の可能な方法は、従来の混合装置を使用して、十分に異なる分子量を有するブテン-1ポリマーを機械的にブレンドする方法である。
【0077】
異なる分子量を有する前記ブテン-1ポリマーが、異なる反応条件、例えば、各反応器に供給される分子量調節剤の濃度を有する2つ以上の反応器内で連続して製造される、多段階重合プロセスに従って操作することも可能である。
【0078】
また、各反応器に異なるモノマー量を供給することも可能である。
【0079】
特に、本ブテン-1ポリマー成分B)が上記2つの成分B1)及びB2)を含有する場合、重合プロセスは、直列に接続された2つ以上の反応器で行われ、成分B1)及びB2)をその後の段階で別々に製造し、第1段階を除き、各段階で作動し、形成されたポリマー及び前段で使用された触媒の存在下で行うことができる。
【0080】
触媒は第1反応器のみに添加することも、複数の反応器に添加することもできる。
【0081】
上記のポリマー成分は、重合時に直接高いMI値を得ることができる。高いMI値は、その後の化学処理 (化学ビスブレーキング)によっても得られる。
【0082】
ポリマーの化学的ビスブレーキングは、過酸化物などのフリーラジカル開始剤の存在下で行われる。
【0083】
ポリマービスブレーキングプロセスにおいて最も好都合に使用される過酸化物は、好ましくは150℃~250℃の範囲の分解温度を有する。上記過酸化物としては、例えば、ジトルトブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンなどが市販されている。
【0084】
ビスブレーキングプロセスに必要な過酸化物の量は、好ましくはポリマーの0.001~0.5重量%、より好ましくは0.001~0.2%の範囲である。
【0085】
ポリオレフィン組成物(I)は、各成分を溶融混合することにより得られるが、混合装置中での混合温度は、通常180~310℃、好ましくは190~280℃、より好ましくは200~250℃である。
【0086】
全ての公知の装置及び技術は、この目的に用いることができる。
【0087】
これに関連して有用な溶融混合装置は、特に押出機または混練機であり、二軸押出機が特に好ましい。混合装置内で成分を室温で予備混合し、そのようにして得られた混合物をフィラメントの製造に使用する装置に直接供給することも可能である。
【0088】
ポリオレフィン組成物(I)の調製中に、主成分A)およびB)および他の任意成分に加えて、当該技術分野で一般に使用される添加剤、例えば安定剤(熱、光、紫外線に対する)、可塑剤、酸防止剤、帯電防止剤、撥水剤、顔料も導入されてもいい。
【0089】
本発明のフィラメントは、フィラメント又は繊維の全重量に対して、ポリオレフィン組成物(I)を70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、特にポリオレフィン組成物(I)を90重量%又は95重量%以上含み、上限はすべての場合において100重量%である。
【0090】
本発明のフィラメントは、典型的には、丸みを帯びた(円形、楕円形、レンチキュラー、または多ローバルのようにさらに複雑な)断面、または長方形のように角度の断面によって特徴づけられる。
【0091】
断面が丸みを帯びたフィラメントを「モノフィラメント」とも呼び、断面が角度、特に矩形のフィラメントを「テープ」とも呼ぶ。したがって、本発明の「フィラメント」の定義は、前記モノフィラメント及びテープを含む。
【0092】
テープの厚さは0.03~1mm、幅は2~20mmであることが好ましい。
【0093】
上記のように、フィラメントは、500den以上のタイターで特徴的であることが好ましい。
【0094】
フィラメントのタイターは、特に好ましくは800デン以上、特に1000または1300以上であり、上限は、モノフィラメントは7000デン、テープは25000デンであることが好ましい。
前述のように、フィラメントは延伸されている。特に、延伸倍率が3.5:1~4.5:1であることが好ましい。
【0095】
前記フィラメントはすべて、様々な完成品の製造のために束またはリールの形態で使用することができる。
【0096】
本発明のポリオレフィンフィラメントまたは繊維は、関連技術分野で周知のプロセスおよび装置を用いて製造することができる。
【0097】
一般的に、ポリオレフィンフィラメントの製造方法は次のステップを含む。
(a)ポリオレフィン組成物(I)及びその他のポリマー成分を存在した場合に溶融させる。
(b)フィラメントを紡糸するか、前駆体フィルムまたはテープを押し出す。
(c)事前に延伸が行われていない場合には、フィラメントもしくは前駆体フィルムもしくはテープを延伸すること、および/または前駆体フィルムもしくはテープを切断し、そのようにして得られたフィラメントを延伸する。
【0098】
溶融ステップ(a)および紡糸または押出ステップ(b)は、一般に、適切な紡糸または押出ヘッドを備えた単軸または二軸押出機を使用することにより、連続して連続的に実施される。したがって、前述の溶融混合ステップも同じ紡糸装置または押出装置内で実施することができる。
【0099】
紡糸ヘッドは、フィラメント(モノフィラメントまたはテープ)の横断面と同じ形状の複数の穴を備えている。
【0100】
フィルム押出ヘッドは一般に、フィルムの製造に一般的に使用される平坦または環状のダイである。
【0101】
ステップ(b)で前駆体フィルムまたはテープを得た場合、ステップ(c)で所望のサイズのテープに切断して加工する。前駆体フィルムまたはテープに延伸処理を行うと、最終フィラメントに延伸処理を行う必要がなくなる。
【0102】
通常、溶融ステップ(a)及び紡糸押出ステップ(b)は、溶融混合ステップで予め定めた温度、すなわち180~310℃、好ましくは190~280℃、より好ましくは200~250℃で行われる。
【0103】
典型的な紡糸条件は次のとおりである。
-押出機ヘッド内の温度は200~300℃である。
-一次ウェブ(未伸長)の巻き取り速度は1~50m/minである。
【0104】
フィルムの押出条件は、次のとおりである。
-押出機ヘッド内の温度は200~300℃である。
-出力値は20~1000kg/時間(産業プラントの場合)である。
【0105】
ステップ(b)で得られたフィラメント又は前駆体フィルムは、通常、例えば1つ以上のチルロールを用いて冷却するか、5~40℃の温度で水に浸漬することにより冷却する。
【0106】
延伸処理を行うために、フィラメント(モノフィラメントまたはテープ)または前駆体テープを予め40℃~120℃~140℃の温度で加熱する。加熱は、例えば熱風オーブン、沸騰水浴、加熱ロールを使用することによって、または照射もしくは他の既知の手段によって達成することができる。
【0107】
延伸は、異なる回転速度を有する一連のローラーを通して前駆体テープまたはフィラメントを送り出すことによって達成することができる。このように達成される延伸倍率の好ましい範囲は、予め規定された範囲である。
【0108】
延伸倍率は、延伸ユニットのローラーの高速速度と引き取りユニットのローラーの速度(一次速度)の比である。前述したように、テイクオフユニットでは、低速で移動するテープまたはフィラメントは、より高速な速度を加えて延伸する前に加熱される。
このように、このような比の値、例えば3.5:1に対して3.5、4.5:1に対して4.5を破断伸びで除算することにより、SR/EB値が得られる。
【実施例
【0109】
本明細書で提供される様々な実施形態、組成物および方法の実施例および利点は、以下の実施形態で開示される。これらの実施例は単に例示的なものであり、いかなる方法であっても、添付の特許請求の範囲を限定することを意図しているものではない。
【0110】
以下の分析方法は、ポリマー組成物とフィラメントの特性を評価するために使用される。
【0111】
密度
【0112】
ISO 1183-1:2012に準拠して23℃で測定された。
【0113】
メルトフローインデックス
【0114】
ISO 1133-12012-03に準拠して、190℃、所定の荷重で測定された。
【0115】
極限粘度(IV)
【0116】
サンプルを135℃でテトラヒドロナフタレンに溶解し、次いで毛細管粘度計に注入した。粘度計管(ウベローデ型)は円筒形のガラスジャケットで囲まれている。これにより、循環サーモスタット付き液体による温度制御が可能となる。メニスカスの下方への通過時間を、光電子デバイスによって計る。
【0117】
上部ランプの前方のメニスカスは、水晶発振器を有するカウンタを起動することで実現される。メニスカスが下部ランプを通過するとカウンタが停止され、流出時間が記録され、これが、ハギンズの方程式(Huggins,M.L.,J.Am.Chem.Soc.,1942,64,2716)を通じて極限粘度の値に変換されるが、しかしながら、同じ実験条件(同じ粘度計及び同じ温度)で純溶媒の流動時間が既知であることを条件とする。単一ポリマー溶液を用いて[η]を測定した。
【0118】
分子量分布測定
【0119】
モル質量分布およびそこから導き出される平均Mn、Mw、MzおよびMw/Mnの決定は、PolymerChar社のGPC-IR装置を使用して実行された。この装置は、4つのPLgel Olexis混合床(Polymer Laboratories)からなるカラムセットおよびIR5赤外線検出器(PolymerChar)を備えた。カラムの寸法は300×7.5mm、粒子サイズは13μmであった。移動相の流速は1.0mL/minに維持した。すべての測定は150℃で実行された。溶液濃度は2.0mg/mL(150℃)で、分解を防ぐために0.3g/Lの2,6-ジテルブチル-p-クレゾールを添加した。GPC計算では、PolymerCharが提供する12個のポリスチレン(PS)標準サンプル(ピーク分子量は266~1220000の範囲)を使用してユニバーサル検量線が得られた。3次多項式フィットを使用して実験データを補間し、関連する検量線を取得した。データの取得と処理は、Empower 3(Waters)を使用して行われた。Mark-Houwink関係を使用して、分子量分布と関連する平均分子量を決定した:K値は、PSとポリブテン(PB)についてそれぞれKPS=1.21×10-4dL/gおよびKPB=1.78×10-4dL/gであり、一方、PSについてはマーク・ハウウィンク指数αは0.706、PBについてはマーク・ハウウィンク指数αは0.725は使用された。
【0120】
ブテン/エチレンコポリマーの場合、データ評価に関する限り、各サンプルについて、組成は分子量の全範囲で一定であると仮定し、Mark-Houwink関係のK値は、以下に報告するように線形結合を使用して計算された。
【数1】
【0121】
ここで、KEBはコポリマーの定数である。KPE(4.06×10-4,dL/g)およびKPB(1.78×10-4dL/g)はポリエチレン(PE)およびPBの定数である。xとxはエチレンとブテンの重量相対量であり、x+x=1となる。マーク・ハウウィンク指数α=0.725は、すべてのブテン/エチレンコポリマーに対して、その組成とは独立して使用された。最終処理データ処理は、分子量当量の点で1000までの画分を含むようにすべてのサンプルに対して修正された。GCを介して1000未満の画分を検討した。
【0122】
コモノマー含有量
【0123】
プロピレンポリマーA)
【0124】
プロピレンコポリマーの場合、フーリエ変換赤外線分光器(FTIR)を使用してサンプルと空気バックグラウンドのIRスペクトルを収集することにより、コモノマー含有量を赤外線分光法によって決定した。機器のデータ収集パラメータは以下のとおりであり、
-パージ時間:最低30秒。
-収集時間:最低3分。
-アポダイゼーション:Happ-Genzel。
-分解能:2cm-1
【0125】
サンプル製造
【0126】
油圧プレスを使用して、約1gのサンプルを2枚のアルミニウム箔の間に押し付けることにより、厚いシートを得た。均一性の問題があれば、最低2回のプレス操作を行うことを提案する。このシートからごく一部を切り出してフィルムを成形した。推奨されるフィルムの厚さの範囲は0.02~0.05cm(8~20ミル)である。
【0127】
プレス温度は180±10℃(356℃)、約10kg/cm(142.2PSI)の圧力は約1分間であった。次に圧力を解除し、サンプルをプレス機から取り出し、室温まで冷却した。
【0128】
ポリマーのプレスフィルムのスペクトルを吸光度対波数(cm-1)で記録した。次の測定値を使用して、エチレンとブテン-1の含有量を計算した。
-膜厚の分光正規化に使用された、4482~3950cm-1の組み合わせ吸収バンドの面積(At)。
-エチレンが存在する場合、アイソタクティック非添加物ポリプロピレンのスペクトルを適切に連続して2回分光学的に減算した後の750~700cm-1の吸収バンドの面積(AC2)、そして、ブテン-1が存在する場合、800~690cm-1の範囲のブテン-1-プロピレンランダムコポリマーの参照スペクトル。
-ブテン-1が存在する場合、アイソタクティック非添加物ポリプロピレンのスペクトルを2回連続して適切に分光減算した後の769cm-1(最大値)の吸収バンドの高さ(DC4)、そして、エチレンが存在する場合、800~690cm-1の範囲のエチレン-プロピレンランダムコポリマーの参照スペクトル。
【0129】
エチレンとブテン-1の含有量を計算するには、既知量のエチレンとブテン-1のサンプルを使用して得られるエチレンとブテン-1の校正直線が必要とされる。
【0130】
ブテン-1ポリマーB)
【0131】
ブテン-1ポリマーのコモノマー含有量はFT-IRを介して測定された。
【0132】
ポリマーのプレスフィルムのスペクトルを吸光度対波数(cm -1 )で記録した。次の測定値を使用して、エチレン含有量を計算した。
a)膜厚の分光正規化に使用される、4482~3950cm-1の結合吸収バンドの面積(A)、
b)ポリマーサンプルのスペクトルと、メチレン基(CHロッキング)の配列BEEおよびBEB(B:1、ブテン単位、E:エチレン単位)による吸収バンド間のデジタル減算の減算係数(FCRC2)振動)
c)CPBスペクトルを差し引いた後の残りの帯域の面積(AC2,block)。それはメチレン基の配列EEE(CHロッキング振動)に由来する。
【0133】
装置
【0134】
フーリエ変換赤外分光計(FTIR)が使用され、上記で報告された分光測定を行うことができる。
【0135】
200℃まで加熱可能なプラテンを備えた油圧プレス(Carverまたは同等品)を使用した。
【0136】
方法
【0137】
(BEB+BEE)シーケンスの較正
【0138】
%(BEB+BEE)wt対FCRC2/Aをプロットすることで、較正直線を得る。傾きGと切片Iは、線形回帰により計算される。
【0139】
EEEシーケンスの較正
【0140】
%(EEE)wt対AC2,block/Aをプロットすることで、較正直線を得る。傾きGと切片Iは、線形回帰により計算される。
【0141】
サンプルの製造
【0142】
油圧プレスを使用して、約1.5gのサンプルを2枚のアルミニウム箔の間に押し付けることにより、厚いシートを得た。均一性の問題があれば、最低2回のプレス操作を行うことを提案する。このシートからごく一部を切り出して膜を成形した。推奨膜厚は、0.1~0.3mmである。
【0143】
プレス温度は、140(10℃である。
【0144】
結晶相の変化は時間の経過とともに起こるため、成形後すぐにサンプルフィルムのIRスペクトルを収集することが提案されている。
【0145】
手順
【0146】
機器のデータ収集パラメータは以下のとおりであり、
パージ時間:最低30秒。
収集時間:最低3分。
アポダイゼーション:Happ-Genzel。
分解能:2cm-1
空気バックグラウンドに対するサンプルのIRスペクトルを収集した。
【0147】
計算
エチレン単位のBEE+BEBシーケンスの重量濃度を計算した。
【数2】

上述した減算後の残存面積(AC2,ブロック)は、残存バンドの肩部間のベースラインを用いて計算された。
エチレン単位のEEEシーケンスの重量濃度を計算した。
【数3】

エチレンの総量の重量パーセントを計算した。
【0148】
【数4】
【0149】
X線結晶化度の決定
【0150】
X線結晶化度は、固定スリットを有するCu-Kα1放射線を使用し、回折角2θ=5°と2θ=35°との間のスペクトルを6秒ごとに0.1°のステップサイズで収集することができる粉末X線回折分析装置(XDPD)を用いて測定された。
【0151】
サンプルは、押圧成形により製造され、厚さが約1.5~2.5mm、直径が2.5~4.0cmであるディスケットであった。ディスケットを室温(23℃)で96時間老化させた。
【0152】
この製造後、試験片をXDPDサンプルホルダーに挿入した。6秒の計数時間を用いて回折角2θ=5°~2θ=35°から0.1°のステップサイズでサンプルのXRPDスペクトルを収集し、終了時に最終スペクトルを収集するようにXRPD装置を調整した。
【0153】
カウント/秒・2θで表されるスペクトルプロファイルとベースラインとの間の総面積としてTaを、カウント/秒・2θで表される総非晶質面積としてAaを定義すると、Caはカウント/秒・2θで表される総結晶面積である。
スペクトルまたは回折パターンは次の手順で分析された。
1)スペクトル全体のために適切な線形ベースラインを定義し、スペクトル輪郭とベースラインとの間の総面積(Ta)を計算し、
2)相モデルに基づいて無定形領域を結晶領域から分離する適切な無定形プロファイルをスペクトル全体に沿って定義し、
3)無定形輪郭とベースラインとの間の面積である無定形面積(Aa)を計算し、
4)スペクトル輪郭と無定形輪郭との間の面積として、結晶面積(Ca)、例えばCa=Ta-Aaを計算し、
5)次式によりサンプルの結晶化度(%Cr)を計算し、
【数5】
【0154】
25℃におけるキシレン可溶画分と不溶画分(XS-25℃)
【0155】
2.5gのポリマーを135℃で撹拌しながら250mlのキシレンに溶解した。20分後、溶液を撹拌しながら25℃まで冷却し、次いで30分間静置した。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を真空下、80℃で一定重量に達するまで乾燥させた。したがって、室温(25℃)で可溶なポリマー(キシレン可溶物-XS)と不溶なポリマーの重量パーセントを計算した。
【0156】
室温(25℃)でキシレンに不溶なポリマーの重量パーセントは、ポリマーのアイソタクティック指数とみなされる。この値は、定義によりプロピレンポリマーのアイソタクティック指数を構成する、沸騰n-ヘプタンによる抽出によって決定されるアイソタクティック指数に実質的に対応する。
【0157】
0℃におけるキシレン可溶画分と不溶画分(XS-0℃)
【0158】
2.5gのポリマーサンプルを135℃で撹拌しながら250mlのキシレンに溶解した。30分後、溶液を撹拌しながら100℃まで冷却し、次いで水および氷浴に入れて0℃まで冷却した。次いで、溶液を水および氷浴中で1時間放置した。沈殿物を濾紙で濾過した。ろ過中、フラスコ内温をできるだけ0℃に近づけるために、フラスコを氷水浴中に放置した。濾過中、フラスコ内温度をできるだけ0℃に近づけるために、フラスコを氷水浴中に放置した。溶液のアリコートを窒素流中で蒸発させ、残留物を真空下、80℃で一定重量に達するまで乾燥させた。両残留物の重量差は3%未満でなければならない。それ以外の場合は、テストを繰り返す必要がある。したがって、残留物の平均重量からポリマー可溶物の重量パーセント(0℃でのキシレン可溶物=XS 0℃)を計算する。0℃でのo-キシレン中の不溶画分(0℃でのキシレン不溶物=XI%0℃)は以下のとおりである。
【数6】
【0159】
示差走査熱量測定(DSC)によるブテン-1ポリマーB)の融解温度と結晶化温度
【0160】
示差走査熱量測定(DSC)データは、アルミニウムパンに密封された秤量サンプル(5~10mg)を使用して、PerkinElmerDSC-7機器で取得された。
【0161】
ポリブテン-1結晶形Iの融解温度(Tml)を決定するには、サンプルを10℃/minに相当する走査速度で200℃まで加熱し、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minの冷却速度で20℃まで冷却した。その後、サンプルを室温で10日間保管した。10日後、サンプルをDSCに供し、-20℃に冷却し、次いで10℃/minに相当する走査速度で200℃まで加熱した。この加熱操作では、サーモグラムの最高温度ピークが融解温度(Tml)として使用された。
【0162】
ポリブテン-1結晶形II(TmII)の融解温度と結晶化温度Tを決定するには、サンプルを10℃/minに相当する走査速度で200℃まで加熱し、200℃で5分間保持してすべての微結晶を完全に溶融させ、サンプルの熱履歴をキャンセルした。続いて、10℃/min相当の走査速度で-20℃まで冷却することで、ピーク温度を結晶化温度(T)として、面積を結晶化エンタルピーとして取得した。-20℃で5分間放置した後、サンプルを10℃/minに相当する走査速度で200℃まで再度加熱した。この第2加熱操作では、ピーク温度をポリブテン-1結晶形II(TmII)の融解温度として、面積を融解エンタルピー(ΔHfII)として取得した。
【0163】
鎖構造のNMR解析
【0164】
13C NMRスペクトルは、120℃、フーリエ変換モードで150.91MHzで動作する、凍結プローブを備えたBruker AV-600分光計で取得した。
【0165】
Tβδ炭素のピーク(C. J. Carman, R. A. Harrington and C. E. Wilkes, Macromolecules, 10, , 536 (1977)による命名法)を37.24ppmで内部標準として使用した。サンプルを1,1,2,2-テトラクロロエタンd2に120℃で8%wt/v濃度で溶解した。各スペクトルは、H-13Cカップリングを除去するために、90°パルス、パルス間の15秒の遅延、およびCPDを使用して取得された。9000Hzのスペクトルウィンドウを使用して、約512の過渡現象が32,000のデータポイントに保存された。
【0166】
Kakugo[M. Kakugo, Y. Naito, K. MizunumaとT. Miyatake,<高分子>、16、、1160(1982)]とRandall[J. C. Randall,<高分子化学及び物理Macromol.Chem Phys.)、C30,211(1989)]に基づいて、以下の各項を用いてスペクトルに値を付与し、三元分布と組成を評価する。
BBB=100(Tββ)/S=I5
BBE=100Tβδ/S=I4
EBE=100Pδδ/S=I14
BEB=100Sββ/S=I13
BEE=100Sαδ/S=I7
EEE=100(0.25Sγδ+0.5Sδδ)/S=0.25I9+0.5I10
【表1】
【0167】
一次近似として、mmmmは2B2炭素を使用して次のように計算された。
【表2】
【0168】
【数7】
【0169】
フィラメントの靭性、破断伸び、破断荷重
【0170】
デニール単位のタイターは、織物の繊維やフィラメントのサイズを測定するために一般的に使用され、9000mのフィラメントまたはテープの重量(グラム単位)として定義される。実験室スケールでは、実際のタイター値(デニア内)は、フィラメントまたはテープの100mの重量に90倍を乗じて決定される。
【0171】
靭性、破断伸びおよび破断点荷重は、製造から7日後に、LLOYDRX-Plusなどの動力計を使用し、クランプ距離250mm、適用伸び速度250mm/minの単一フィラメントで測定される。
ロードセルは破断時の荷重(グラムまたはキログラム)を提供し、破断時の伸び(%)は次のように計算される。
(破断時のクランプ距離-初期クランプ距離/初期クランプ距離)*100。
【0172】
靭性(破断時)は、破断時荷重(グラム)を力価(デニール)で割ることによって得られる。
【0173】
曲げ弾性率
【0174】
規格ISO 178:2010に準拠して、成形後10日後に測定した。
【0175】
実施例1と実施例2、および比較例1
【0176】
ポリオレフィン組成物(I)を製造するには、以下の材料を用いた。
【0177】
プロピレンポリマーA)
【0178】
下記表1に記載の特性を有するプロピレンホモポリマー。
【0179】
LyondellBasellが販売する商標MoplenHP556Eで市場で入手できる。
【0180】
ブテン-1ポリマーB)
【0181】
液体モノマー重合においてジーグラー-ナッタ触媒により製造したブテン-1ホモポリマーは、下記表1に記載の特性を有する。
LyondellBasellが販売する商標ToppylPB 0110Mで市場で入手できる。
表I
【表3】
【0182】
ポリオレフィン組成物(I)の製造及びフィラメント紡糸
【0183】
通常の安定化添加剤組成物を含む成分A)およびB)をドラムブレンダーで15分間乾式混合し、次に円形断面のフィラメントに紡糸した。
【0184】
使用された装置は、直径25mm、長さ27L/Dの押出機Leonard+ギアポンプであった。ダイは円形の10孔で、直径1.2mmであった。
【0185】
主なプロセス条件は次のとおりである。
温度プロファイル:-シリンダ180-185-190-195℃;
-ポンプ200℃;
-アダプタ205℃;
-ヘッドダイ210℃;
溶融温度:212+/-3℃;
使用した出力:約4kg/h
冷却水浴:21+/-1℃;
延伸オーブンセット:106+/-2℃(熱風);
アニーリングオーブンセット:106+/-2℃(熱風);
アニーリング係数:平均-5.0%(遅い)。
【0186】
得られたフィラメントの特性を、表IIに全ての実施例について記載している。
表II
【表4】
表II続き
【表5】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破断伸びEBが80%以上であり、比SR/EB(SRは延伸倍率である)が45以下であり、下限は15である延伸ポリオレフィンフィラメントであって、前記延伸ポリオレフィンフィラメントは、ポリオレフィン組成物(I)を含み、前記ポリオレフィン組成物(I)は、
A)プロピレンポリマー40~78重量%と、
B)以下の特徴を有するブテン-1ポリマー22~60重量%都を含み、
1)曲げ弾性率値は100~800MPaであること、
2)比MI10/MIは20~40であり、MI10は190℃、荷重10kgでのメルトフローインデックスMIであり、MIは190℃、荷重2.16kgでのメルトフローインデックスMIであり、いずれもISO 1133-1:2011に準拠して測定されること。
3)B)の全重量を基準として0℃におけるキシレン可溶画分の含有量は15重量%以下であり、下限は、0.5重量%である。
A)とB)の量は、A)+B)の合計重量を指し、破断伸びは、クランプ距離250mm、かつ適用伸び速度が250mm/minのダイナモメータを用いて、製造後7日後に1本のフィラメント上で測定され、また、曲げ弾性率は、成形後10日後に、規格ISO 178:2010に準拠して測定される、延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項2】
少なくとも800デンのタイターを有する、請求項1に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項3】
モノフィラメントである、請求項1又は2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項4】
前記SRは3.5:1~4.5:1である、請求項1又は2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項5】
クランプ距離250mm、適用伸び速度250mm/minのダイナモメータを用いて、製造後7日後に、1本のフィラメント上で測定された、下記特徴をさらに有する、請求項1又は2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
-靭性は1.9以上であること、および/または
-破断時の荷重は2.5~5kgであること。
【請求項6】
前記ブテン-1ポリマーB)は、コモノマー含有量が0.5モル%~10モル%であるブテン-1ホモポリマーおよびブテン-1コポリマー、並びにそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項7】
前記ブテン-1ポリマーB)は、4以上の分子量分布Mw/Mnを有し、上限は10であり、Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均モル質量であり、Mnはゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される数平均モル質量である、請求項1または2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項8】
前記ブテン-1ポリマーB)は、以下の追加の特徴の1つまたは複数を有する、請求項1または2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
-走査速度10°C/minで第2加熱操作においてDSC(示差走査熱量測定)によって測定された融点TmIIは、125℃以下、下限は75℃であること
- X線結晶化度は25~65%であること
-135℃でテトラヒドロナフタレン(THN)中にて測定された極限粘度(I.V.)は5dl/g以下であり、下限は0.4dl/gであること
-Mwは100,000g/mol以上であること
-走査速度10°C/minのDSCによって測定された融点Tmlは、95℃~135℃であること
-密度は885~925kg/mであること
【請求項9】
前記プロピレンポリマーA)は、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、及びそれらの混合物から選択され、25℃におけるキシレン不溶画分の量は85重量%以上であり、上限は、全ホモポリマーについて99%、全コポリマーについて96%である、請求項1又は2に記載の延伸ポリオレフィンフィラメント。
【請求項10】
前記請求項のいずれか1項に記載の延伸ポリオレフィンフィラメントを含む製品。
【請求項11】
ネット、ロープ又はブラシなどの形態である、請求項10に記載の製品。

【国際調査報告】