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特表2024-541409複相蛍光セラミックス、複相蛍光セラミックスの製造方法及び発光装置
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  • 特表-複相蛍光セラミックス、複相蛍光セラミックスの製造方法及び発光装置 図1
  • 特表-複相蛍光セラミックス、複相蛍光セラミックスの製造方法及び発光装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】複相蛍光セラミックス、複相蛍光セラミックスの製造方法及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/117 20060101AFI20241031BHJP
   C04B 35/44 20060101ALI20241031BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20241031BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20241031BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20241031BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C04B35/117
C04B35/44
C09K11/80
C09K11/00 Z
C09K11/02 Z
C09K11/08 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529373
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 CN2022128875
(87)【国際公開番号】W WO2023231293
(87)【国際公開日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】202210622686.2
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514073097
【氏名又は名称】深▲せん▼市繹立鋭光科技開発有限公司
【氏名又は名称原語表記】YLX INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】6A-1155, Science And Technology Building, Haijing 2nd Road, Pengwan Community, Haishan Street, Yantian District, Shenzhen, Guangdong 518000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】李 乾
(72)【発明者】
【氏名】簡 帥
(72)【発明者】
【氏名】王 艷剛
【テーマコード(参考)】
4H001
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CF02
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA39
4H001YA58
(57)【要約】
【課題】本願は、複相蛍光セラミックス、複相蛍光セラミックスの製造方法及び発光装置を開示し、光学素子の技術分野に関する。
【解決手段】複相蛍光セラミックスは、発光相、マトリックス相及び気孔を含み、発光相は、互いに結着された複数の発光結晶粒を含み、マトリックス相は、互いに結着された複数のマトリックス結晶粒を含み、マトリックス相と発光相は、複相蛍光セラミックスにおいて互いに入り組んで分布し、気孔は、少なくとも一部が発光相内に分布し、少なくとも一部がマトリックス相内に分布し、及び少なくとも一部が発光相とA1マトリックス相との間に分布する。本願の複相蛍光セラミックスは、高い散乱性能を備えることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複相蛍光セラミックスであって、発光相と、マトリックス相と、気孔とを含み、
前記発光相は、互いに結着された複数の発光結晶粒を含み、
前記マトリックス相は、互いに結着された複数のマトリックス結晶粒を含み、前記マトリックス相と前記発光相は、前記複相蛍光セラミックスにおいて互いに入り組んで分布し、
前記気孔は、少なくとも一部が前記発光相内に分布し、少なくとも一部が前記マトリックス相内に分布し、少なくとも一部が前記発光相と前記マトリックス相との間に分布することを特徴とする複相蛍光セラミックス。
【請求項2】
前記気孔の総体積の前記複相蛍光セラミックスの体積に対する体積割合は、5%未満且つ0.1%より多く、及び/又は前記発光相の総体積の前記複相蛍光セラミックスの体積に対する体積割合は、10%~90%であることを特徴とする請求項1に記載の複相蛍光セラミックス。
【請求項3】
前記複相蛍光セラミックスにおいて総数の60%~95%を占める発光結晶粒の粒径は、1μm~10μmであり、及び/又は前記複相蛍光セラミックスにおいて総数の60%~95%を占めるマトリックス結晶粒の粒径は、1μm~10μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複相蛍光セラミックス。
【請求項4】
前記発光相は、前記複相蛍光セラミックスにおいて分散粒子状分布を呈し、前記マトリックス相は、分散している前記発光相の間に分布し、
又は、前記発光相は、前記複相蛍光セラミックスにおいて網状連続分布を呈し、前記マトリックス相は、網状連続分布の前記発光相によって囲まれた網目に分布し、
又は、前記発光相は、前記複相蛍光セラミックスにおいて分散粒子状分布と網状連続分布の混合状態を呈することを特徴とする請求項1又は2に記載の複相蛍光セラミックス。
【請求項5】
前記発光相は、ランタノイドドーピングのガーネット発光相であり、前記マトリックス相は、アルミナマトリックス相であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複相蛍光セラミックス。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の複相蛍光セラミックスを製造するための複相蛍光セラミックスの製造方法であって、
マトリックス相原料粉体、発光相原料粉体及び造孔剤を含むセラミック原料を混合して混合粉体を形成するステップと、
前記混合粉体を成形してグリーン体を形成するステップと、
前記グリーン体を熱処理して前記造孔剤を除去するステップと、
熱処理後の前記グリーン体を焼結して、前記複相蛍光セラミックスを形成するステップと、を含むことを特徴とする複相蛍光セラミックスの製造方法。
【請求項7】
前記造孔剤の質量は、前記マトリックス相原料粉体と前記発光相原料粉体との質量和に対して4%~20%であることを特徴とする請求項6に記載の複相蛍光セラミックスの製造方法。
【請求項8】
前記マトリックス相原料粉体は、第1アルミナ粉体を含み、前記発光相原料粉体は、第2アルミナ粉体、イットリア粉体及びランタノイド酸化物粉体を含み、前記第1アルミナ粉体及び前記第2アルミナ粉体の質量和と前記イットリア粉体との質量比は、1:1~6:1であり、前記ランタノイド酸化物粉体の質量は、前記イットリア粉体の質量に対して0.1%~2%であることを特徴とする請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記グリーン体を熱処理して前記造孔剤を除去するステップは、
前記グリーン体を400℃~1000℃の造孔剤分解温度で0.5h~6h熱処理して、前記造孔剤を分解させることを含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理後の前記グリーン体を焼結して、前記複相蛍光セラミックスを形成するステップの前に、前記製造方法は、
前記造孔剤の分解温度から1000℃~1600℃の予備焼結温度まで昇温し、前記予備焼結温度で前記グリーン体を0.5h~4h予備焼結処理して、セラミックス中間体を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理後の前記グリーン体を焼結して、前記複相蛍光セラミックスを形成するステップは、
前記セラミックス中間体を1400℃~1700℃の焼結温度で0.1h~6h焼結して、複相蛍光セラミックス焼結体を形成することと、
前記複相蛍光セラミックス焼結体を空気雰囲気でアニール処理して、前記複相蛍光セラミックスを形成することと、を含むことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記セラミック原料を混合するステップは、
前記発光相原料粉体を混合してプリ粉体を作成することと、
前記プリ粉体を1000℃~1600℃の前駆体焼結温度で0.5h~4h焼結し、発光相前駆体を形成することと、
前記発光相前駆体、前記マトリックス相原料粉体及び前記造孔剤を混合して、前記混合粉体を形成することと、を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項13】
前記造孔剤は、第1造孔剤及び第2造孔剤を含み、前記セラミック原料を混合するステップは、
前記発光相原料粉体と前記第1造孔剤とを混合してプリ粉体を作成することと、
前記プリ粉体を1000℃~1600℃の前駆体焼結温度で0.5h~4h焼結し、発光相前駆体を形成することと、
前記発光相前駆体、前記マトリックス相原料粉体及び前記第2造孔剤を混合して、前記混合粉体を形成することと、を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項14】
前記造孔剤は、PMMA微小球、PS微小球又は澱粉のうちの1種又は複数種であることを特徴とする請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項15】
発光装置であって、励起光源と、請求項1~5のいずれか1項に記載の複相蛍光セラミックスと、を含むことを特徴とする発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光学素子の技術分野に関し、詳しくは、複相蛍光セラミックス、複相蛍光セラミックスの製造方法及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ蛍光光源は、長寿命、高効率、無汚染などの利点を実現でき、LED光源に比べて、レーザ蛍光光源は、高輝度などの利点を有し、純レーザ光源に比べて、レーザ蛍光光源は、スペックルの問題がなく、且つコストが低い。レーザ蛍光光源の利点により、レーザ蛍光光源は、投影表示及び照明などの分野に広く用いられている。
【0003】
蛍光材料は、レーザ蛍光光源技術のコア部材として、その性能が投影表示及び照明製品の性能に直接的に影響する。従来の蛍光材料は、一般的に蛍光セラミックスを採用するが、従来の蛍光セラミックスの散乱性能を向上させる必要がある。そのため、現在、良好な散乱性能を備える蛍光材料が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、上記課題を解決するために、本願は、複相蛍光セラミックス、複相蛍光セラミックスの製造方法及び発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本願は、複相蛍光セラミックスを提供し、当該複相蛍光セラミックスは、発光相、マトリックス相及び気孔を含み、
発光相は、互いに結着された複数の発光結晶粒を含み、
マトリックス相は、互いに結着された複数のマトリックス結晶粒を含み、マトリックス相と発光相は、複相蛍光セラミックスにおいて互いに入り組んで分布し、
気孔は、少なくとも一部が発光相内に分布し、少なくとも一部がマトリックス相内に分布し、少なくとも一部が発光相とマトリックス相との間に分布する。
【0006】
上記課題を解決するために、本願に採用される別の技術案では、上記の複相蛍光セラミックスを製造するための複相蛍光セラミックスの製造方法を提供し、当該製造方法は、
マトリックス相原料粉体、発光相原料粉体及び造孔剤を含むセラミック原料を混合して混合粉体を形成するステップと、
混合粉体を成形してグリーン体を形成するステップと、
グリーン体を熱処理して造孔剤を除去するステップと、
熱処理後のグリーン体を焼結して、複相蛍光セラミックスを形成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本願に採用される他の技術案では、励起光源と上記の複相蛍光セラミックスと、を含む発光装置を提供する。
【0008】
本発明の有益な効果は、以下の通りである。従来技術における複相蛍光セラミックスに比べて、例えば、市販の蛍光体粉粒と、セラミックス粒子と、造孔剤とを混合して焼結して製造された複相蛍光セラミックスは、その気孔が蛍光体粉粒とセラミックス粒子との間及びセラミックス粒子とセラミックス粒子との間のみにそれぞれ分布するのに対して、本願の複相蛍光セラミックスにおける気孔は、少なくとも一部が発光相内に分布し、少なくとも一部がマトリックス相内に分布し、及び少なくとも一部が発光相とマトリックス相との間に分布しているため、発光相内に分布する気孔により複相蛍光セラミックスの散乱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本願に係る複相蛍光セラミックスの構造模式図である。
図2】本願に係る複相蛍光セラミックスの製造方法の第1実施例のフローチャートである。
図3】本願に係る発光装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
当業者が本願の技術案をよりよく理解するために、以下、図面及び具体的な実施形態を参照して本願をさらに詳細に説明する。明らかに、説明される実施形態は、本願の一部の実施形態に過ぎず、全ての実施形態ではない。本願における実施形態に基づいて、当業者が創造的労働をしない前提で得られた全ての他の実施形態は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0011】
現在、複相蛍光セラミックスは、製造過程において、一般的に、市販の蛍光体粉粒と、セラミックス粒子と、造孔剤とを混合して焼結して製造され、ここで、製造された複相蛍光セラミックスにおける発光相は、即ち、蛍光体粉粒であり、また、蛍光体粉粒は、単一の発光結晶粒、即ち、蛍光体結晶粒からなる略球状の単結晶粒子であるため、製造された複相蛍光セラミックスにおける気孔は、蛍光体粉粒とセラミックス粒子との間及びセラミックス粒子とセラミックス粒子との間のみに分布する。つまり、気孔は、発光相内の発光結晶粒の間に分布することができない。
【0012】
上記課題を改善するために、本願発明者らは、長期の研究開発及び試験により、複相蛍光セラミックスを製造する際に、複相蛍光セラミックスにおける発光相は、予め製造された単結晶のセラミックス粒子を用いずに、in-situ合成法を採用し、複相蛍光セラミックスを製造する過程において、セラミックス原料の間で化学反応を発生して、さらに発光相を生成することで、気孔が発光相内の発光結晶粒の間に形成することを可能にすることを見出し、これに基づいて、以下の実施例を提案する。
【0013】
図1を参照すると、図1は、本願に係る複相蛍光セラミックスの構造模式図である。
【0014】
図1に示すように、複相蛍光セラミックス100は、発光相(図示せず)、マトリックス相(図示せず)及び気孔130を含む。ここで、発光相は、互いに結着された複数の発光結晶粒120を含む。マトリックス相は、互いに結着された複数のマトリックス結晶粒110を含み、マトリックス相と発光相は、複相蛍光セラミックスにおいて互いに入り組んで分布する。気孔130は、少なくとも一部が発光相内に分布し、少なくとも一部がマトリックス相内に分布し、及び少なくとも一部が発光相とマトリックス相との間に分布する。
【0015】
図1に示すように、気孔130は、発光相内の発光結晶粒120の間に分布可能である。
【0016】
図1に示すように、発光相(図1における灰色の領域で示す)及びマトリックス相(図1における白色の領域で示す)は、固相反応により得られたものであるため、発光相及びマトリックス相は、定められた形状を有さず、アモルファスの状態に類似している。ここで、入り組んで分布するとは、発光相の境界とマトリックス相の境界とが互いに交互入り組みを有することを意味してもよい。図1に示すように、発光相の境界とマトリックス相の境界のうちの一方によって、嵌め溝領域が囲まれて形成され、発光相の境界とマトリックス相の境界のうちの他方によって、嵌設領域が囲まれて形成され、嵌設領域は、嵌め溝領域内に位置し、且つ嵌設領域の境界と嵌め溝領域の境界は、互いに結着されている。
【0017】
従来技術における複相蛍光セラミックスに比べて、例えば、市販の蛍光体粉粒と、セラミックス粒子と、造孔剤とを混合して焼結して製造された複相蛍光セラミックスは、その気孔が蛍光体粉粒とセラミックス粒子との間及びセラミックス粒子とセラミックス粒子との間にそれぞれ分布するのに対して、本願の複相蛍光セラミックスにおける気孔130は、少なくとも一部が発光相内に分布し、少なくとも一部がマトリックス相内に分布し、及び少なくとも一部が発光相とマトリックス相との間に分布しているため、発光相内に分布する気孔により複相蛍光セラミックスの散乱性能を向上させることができる。
【0018】
ここで、従来の複相蛍光セラミックスに比べて、本願における複相蛍光セラミックス100は、良好な散乱性能を有するため、蛍光スポットの拡散距離を減少させて光スポットの拡散を抑制し、正面からの出光効率を向上させることができ、これにより高い光取り出し効率を実現することができる。
【0019】
一実施例において、図1に示すように、気孔130は、複相蛍光セラミックスに均一に分布してもよい。発光相内に分布する気孔130を第1気孔132とし、第1気孔132は、複数の発光結晶粒120同士の間に位置してもよく、例えば、複数の発光結晶粒120のうち隣接して互いに結着された発光結晶粒120の間に位置し、マトリックス相内に分布する気孔130を第2気孔131とし、第2気孔131は、複数のマトリックス結晶粒110同士の間に位置してもよく、例えば、複数のマトリックス結晶粒110のうち隣接して互いに結着されたマトリックス結晶粒110の間に位置し、発光相とマトリックス相との間に分布する気孔130を第3気孔133とし、第3気孔133は、隣接して互いに結着された発光結晶粒120とマトリックス結晶粒110との間に位置してもよい。各発光結晶粒120及びマトリックス結晶粒130は、いずれも1つの単結晶粒子と見なすことができる。また、気孔130の一部が発光結晶粒120の内部に分布していてもよく、或いは、マトリックス結晶粒130の内部に分布していてもよい。
【0020】
一実施例において、図1に示すように、気孔130の総体積の複相蛍光セラミックス100の体積に対する体積割合は、5%未満且つ0.1%より大きい(例えば、4%、3%、1%、0.5%)。気孔130の含有量が低すぎると、光に対する散乱効果が弱くなるが、含有量が高すぎると、複相蛍光セラミックス100全体の熱伝導率に不利になる可能性があるため、気孔130の含有量を上記範囲内に維持することにより、複相蛍光セラミックス100が高い熱伝導率を有することを確保した上で、良好な散乱を実現することができる。
【0021】
一実施例において、発光相の総体積の複相蛍光セラミックス100の体積に対する体積割合は、10%~90%(例えば、10%、30%、50%、60%、68%、70%、80%、90%)である。発光相の総体積の複相蛍光セラミックス100の体積に対する体積割合によって、発光相は、複相蛍光セラミックス100において異なる分布状況を呈することができる。
【0022】
ここで、一実施例において(図示せず)、発光相は、複相蛍光セラミックスにおいて分散粒子状分布を呈し、マトリックス相は、分散している発光相の間に分布する。ここで、別の実施例(図示せず)において、発光相は、複相蛍光セラミックスにおいて網状連続分布を呈し、マトリックス相は、網状連続分布の発光相によって囲まれた網目に分布する。又の実施例において(図示せず)、発光相は、複相蛍光セラミックスにおいて分散粒子状分布と網状連続分布の混合状態を呈し、即ち、一部の領域の発光相は、分散粒子状分布を呈し、一部の領域の発光相は、網状連続分布を呈する。当然ながら、他の実施形態において、発光相とマトリックス相は、他の形態の分布を呈してもよい。
【0023】
一実施例において、図1に示すように、複相蛍光セラミックス100における発光結晶粒120の粒径は、1μm~10μm(例えば、1μm、2μm、3μm、5μm、7μm、8μm、9μm、10μm)である。一実施例において、複相蛍光セラミックス100において総数の60%~95%(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%であってもよい)を占める発光結晶粒120の粒径は、1μm~10μm(例えば、1μm、2μm、3μm、5μm、7μm、8μm、9μm、10μm)である。さらに、複相蛍光セラミックス100において総数の60%~95%以上を占める発光結晶粒120の粒径は、2μm~5μm(例えば、2μm、3μm、5μm)である。本願において、発光結晶粒120のサイズは、既存の複相蛍光セラミックスに用いられる蛍光粉のサイズよりも小さいため、発光結晶粒120の発光中心としての数がより多く、分散性もより良好であり、発光色の均一性により有利であり、且つ光スポット拡散に対する制限もより良好である。
【0024】
本願において、発光相の種類については特に限定されず、実際の必要に応じて適切な発光相を選択することができる。一実施例において、発光相は、ガーネット発光相(例えば、YAG発光相、LuAG発光相)である。発光結晶粒120にドーピングされる希土類元素は、例えば、ランタノイドの1種又は複数種であり、例えば、セリウム(化学記号がCeである)及びユウロピウム(化学記号がEuである)のうちの1種又は複数種である。
【0025】
本願において、マトリックス相の種類については特に限定されず、実際の必要に応じて適切なマトリックス相を選択することができる。一実施形態において、マトリックス相は、アルミナマトリックス相、窒化アルミマトリックス相、マグネシアマトリックス相、酸化亜鉛マトリックス相、イットリアマトリックス相、マグネシア-アルミナスピネルマトリックス相、イットリウム-アルミニウムガーネットマトリックス相などのマトリックス相のうちの1種又は複数種である。
【0026】
一実施例において、複相蛍光セラミックス100におけるマトリックス結晶粒110の粒径は、1μm~10μm(例えば、1μm、2μm、3μm、5μm、7μm、8μm、9μm、10μm)である。さらに、一実施例において、複相蛍光セラミックス100において総数の60%~95%(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%であってもよい)を占めるマトリックス結晶粒110の粒径は、1μm~10μm(例えば、2μm、3μm、5μm、7μm、8μm、9μm、10μm)である。さらに、一実施例において、複相蛍光セラミックス100において総数の60%~95%を占めるマトリックス結晶粒110の粒径は、2μm~5μm(例えば、2μm、3μm、5μm)である。本願におけるマトリックス結晶粒110のサイズは、既存の複相蛍光セラミックスに用いられるマトリックス結晶粒のサイズよりも小さいため、本願におけるマトリックス結晶粒110の数がより多く、散乱中心とする数がより多いことに相当し、散乱性能の増加に有利であり、発光色の均一性の改善に有利であり、且つ光スポット拡散に対する制限もより良好である。
【0027】
以下、本願は、上記実施例のいずれか一項の複相蛍光セラミックス100を製造するための複相蛍光セラミックスの製造方法を提供する。
【0028】
図2を参照すると、図2は、本願に係る複相蛍光セラミックスの製造方法の第1実施例のフローチャートである。
【0029】
図2に示すように、本願の複相蛍光セラミックスの製造方法は、以下のステップS110~ステップS140を含んでもよい。
【0030】
ステップS110では、セラミック原料を混合して混合粉体を形成する。
【0031】
ここで、セラミック原料は、マトリックス相原料粉体、発光相原料粉体及び造孔剤を含む。マトリックス相原料粉体及び発光相原料粉体について、前述したマトリックス相及び発光相の種類に応じて選択され、特に限定されない。ステップS110において、全てのマトリックス相原料粉体、発光相原料粉体及び造孔剤を適切な混合手段(例えば、ボールミリングなど)により直接的に混合して混合粉体を形成することができる。
【0032】
他の実施例において、発光相は、ランタノイドドーピングのガーネット発光相であり、マトリックス相は、アルミナマトリックス相である。これに基づいて、マトリックス相原料粉体は、第1アルミナ粉体を含み、発光相原料粉体は、第2アルミナ粉体、イットリア粉体及びランタノイド酸化物粉体を含む。
【0033】
他の実施例において、第1アルミナ粉体及び第2アルミナ粉体の質量和とイットリア粉体との質量比は、1:1~6:1(例えば、1:1、1.5:1、5:3、2:1、2.5:1、6:1)である。さらに、第1アルミナ粉体及び第2アルミナ粉体の質量和とイットリア粉体との質量比は、1.5:1~3:1(例えば、1.5:1、5:3、2.5:1、3:1)である。
【0034】
他の実施例において、ランタノイド酸化物粉体の質量は、イットリア粉体の質量に対して0.1%~2%(例えば、0.1%、0.3%、0.4%、2%)である。さらに、ランタノイド酸化物粉体の質量は、イットリア粉体の質量に対して0.3%~1%(例えば、0.3%、0.4%、1%)である。
【0035】
他の実施例において、造孔剤の質量は、マトリックス相原料粉体及び発光相原料粉体の質量和に対して4%~20%(例えば、4%、8%、10%、20%)である。
【0036】
また、造孔剤の種類は、特に限定されず、例えば、PMMA(polymethyl methacrylate、即ちポリメチルメタクリレート、PMMAと略称する)微小球、PS(Polystyrene、即ちポリスチレン、PSと略称する)微小球又は澱粉のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0037】
ステップS120では、混合粉体を成形してグリーン体を形成する。
【0038】
ステップS120の一例示的な実施形態において、混合粉体を金型に入れ、混合粉体を乾式プレスして、混合粉体を結着させて金型に対応する外形を形成してもよい。理解できるように、グリーン体の形状は、金型の形状の大きさに依存し、必要に応じて対応する調整を行うことができる。当然ながら、必要に応じて、例えば、半乾式プレス成形、プラスチック成形、鋳込成形又は静水圧プレスなどの他の成形方式を採用してもよい。また、成形過程において混合粉体に適当な助剤を加えて成形を補助することができる。
【0039】
ステップS130では、グリーン体を熱処理して造孔剤を除去する。
【0040】
ステップS130において、グリーン体を熱処理して、グリーン体における造孔剤を分解させることができる。他の実施例において、例えば、造孔剤を分解させるように、グリーン体を400℃~1000℃(例えば、400℃、500℃、654℃、700℃、837℃、1000℃)の造孔剤分解温度で0.5h~6h(例えば、0.5h、1h、2.4h、3h、5h、6h)熱処理する。理解できるように、造孔剤分解温度で熱処理する過程において、造孔剤が高温の環境下で揮発し、造孔剤が分解した後にグリーン体における対応する位置に気孔が形成される。また、熱処理を行う過程で同時に脱バインダ処理を行うことができる。
【0041】
ステップS130の一例示的な実施形態において、グリーン体をマッフル炉に置いて熱処理を行ってもよく、当然ながら、他の適切な熱処理設備を用いてもよい。
【0042】
ステップS140では、熱処理後のグリーン体を焼結し、複相蛍光セラミックスを形成する。
【0043】
ステップS140において、熱処理後のグリーン体をさらに焼結して、グリーン体に発光相、マトリックス相及び気孔を含む複相蛍光セラミックスを形成させる。ここで、発光相は、互いに結着された複数の発光結晶粒を含む。マトリックス相は、互いに結着された複数のマトリックス結晶粒を含み、マトリックス相と発光相は、複相蛍光セラミックスにおいて互いに入り組んで分布する。気孔は、少なくとも一部がそれぞれ発光相内に分布し、少なくとも一部がマトリックス相内に分布し、及び少なくとも一部が発光相とマトリックス相との間に分布する。
【0044】
具体的には、ステップ140の焼結過程において、グリーン体における発光相原料粉体は、発光相を生成し、発光相は、互いに結着された複数の発光結晶粒を含み、且つグリーン体におけるマトリックス相原料粉体は、マトリックス相を形成し、マトリックス相は、互いに結着された複数のマトリックス結晶粒を含み、且つグリーン体における気孔は、さらに縮小される。
【0045】
焼結に用いられる装置については、特に限定されず、例えば、真空焼結炉、ホットプレス焼結炉又はSPS(Spark Plasma Sintering、即ち、電気プラズマ焼結、SPSと略称する)焼結炉などであってもよい。
【0046】
他の実施例において、熱処理後のグリーン体を1400℃~1700℃(例えば、1400℃、1450℃、1500℃、1548℃、1630℃、1700℃)の焼結温度で0.1h~6h(例えば、0.1h、0.5h、1h、2h、3.4h、4.6h、5h、6h)焼結して複相蛍光セラミックス焼結体を形成することができる。さらに、複相蛍光セラミックス焼結体を空気雰囲気中でアニール処理して、複相蛍光セラミックスを形成することができる。
【0047】
選択可能的には、上記複相蛍光セラミックスの製造方法の第1実施例に基づいて、さらに複相蛍光セラミックスの製造方法の第2実施例を提案している。
【0048】
ステップS140の前に、造孔剤の分解温度から1000℃~1600℃(例えば、1000℃、1150℃、1200℃、1300℃、1360℃、1430℃、1540℃、1600℃)の予備焼結温度まで昇温し、予備焼結温度でグリーン体を0.5h~4h(例えば、0.5h、0.7h、1h、1.6h、2.5h、3h、3.6h、4.3h、5h、6h)予備焼結処理して、セラミックス中間体を形成するステップをさらに含む。
【0049】
さらに、前述の実施形態に基づいて、ステップS140は、
セラミックス中間体を1400℃~1700℃の焼結温度で0.1h~6h焼結して、複相蛍光セラミックス焼結体を形成し、複相蛍光セラミックス焼結体を空気雰囲気でアニール処理して、複相蛍光セラミックスを形成することを含む。
【0050】
さらに、他の実施例において、セラミックス中間体を焼結する前に、セラミックス中間体に対して外形寸法加工を行うステップをさらに含む。必要な製品外形に応じてセラミックス中間体に対して外形寸法加工を行ってもよい。
【0051】
上記複相蛍光セラミックスの製造方法の第1又は第2実施例に基づいて、さらに複相蛍光セラミックスの製造方法の第3実施例を提案し、ステップS110は、
発光相原料粉体を混合してプリ粉体を作成し、プリ粉体を1000℃~1600℃(例えば、1000℃、1150℃、1200℃、1300℃、1360℃、1430℃、1540℃、1600℃)の前駆体焼結温度で0.5h~4h(例えば、0.5h、0.7h、1h、1.6h、2.5h、3h、3.6h、4.3h、5h、6h)焼結して発光相前駆体を形成し、発光相前駆体、マトリックス相原料粉体と造孔剤とを混合して混合粉体を形成することを含む。
【0052】
具体的には、他の実施例において、発光相原料粉体及び適当な助剤、例えば、第2アルミナ粉体、イットリア粉体、ランタノイド酸化物粉体及びバインダー等を第1ボールミリング混合を行い、混合スラリーを形成する。そして、混合スラリーを噴霧造粒してプリ粉体を形成する。一実施例において、バインダーは、セラミック原料の総重量の0.5%~5%であってもよい。また、焼結後の発光相前駆体は、さらにボールミリング、乾燥、篩通し等の処理を行ってもよい。発光相前駆体、マトリックス相原料粉体と造孔剤との混合は、第2ボールミリング混合であってもよく、これにより混合粉体を形成し、混合粉体に対して、さらに乾燥、篩通し等の処理を行ってもよい。
【0053】
上記複相蛍光セラミックスの製造方法の第1又は第2実施例に基づいて、さらに複相蛍光セラミックスの製造方法の第4実施例を提案し、当該実施例において、造孔剤は、第1造孔剤及び第2造孔剤を含み、ここで、ステップS110は、
発光相原料粉体と第1造孔剤とを混合してプリ粉体を作成し、プリ粉体を1000℃~1600℃(例えば、1000℃、1150℃、1200℃、1300℃、1360℃、1430℃、1540℃、1600℃)の前駆体焼結温度で0.5h~4h(例えば、0.5h、0.7h、1h、1.6h、2.5h、3h、3.6h、4.3h、5h、6h)焼結して発光相前駆体を形成し、発光相前駆体、マトリックス相原料粉体と第2造孔剤とを混合して混合粉体を形成することを含む。
【0054】
具体的には、他の実施例において、発光相原料粉体、第1造孔剤及び適当な助剤、例えば、第2アルミナ粉体、イットリア粉体、ランタノイド系元素酸化物粉体、第1造孔剤及びバインダー等を第1ボールミリング混合を行い、混合スラリーを形成する。そして、混合スラリーを噴霧造粒してプリ粉体を形成する。一実施例において、バインダーは、セラミック原料の総重量に対して0.5%~5%であってもよい。また、焼結後の発光相前駆体は、さらにボールミリング、乾燥、篩通し等の処理を行ってもよい。発光相前駆体、マトリックス相原料粉体及び第2造孔剤の混合は、第2ボールミリング混合であってもよく、これにより混合粉体を形成する。混合粉体は、さらに乾燥、篩通し等の処理を行ってもよい。
【0055】
さらに、一実施例において、第1造孔剤と第2造孔剤との質量比は、0.1~10(例えば、0.1、1、2、3、6、10)であってもよい。
【0056】
以下、具体的な実施例により本発明の複相蛍光セラミックスの製造方法をさらに説明する。
【実施例1】
【0057】
実施例1では、固相反応によりYAG:Ce発光相を得て、PMMA微小球により孔を形成することによって、多孔質構造を備える複相蛍光セラミックスが得られ、その製造フローは、以下の通りである。
【0058】
セラミック原料をボールミリング混合を行う。
【0059】
ここで、セラミック原料は、マトリックス相原料粉体、発光相原料粉体及びPMMA微小球を含み、マトリックス相原料粉体は、第1ナノアルミナ粉体を含み、発光相原料粉体は、第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体及びナノ酸化セリウム粉体を含む。
【0060】
ここで、第1ナノアルミナ粉体及び第2ナノアルミナ粉体の質量和とナノイットリア粉体との質量比は、2.5:1であり、ナノ酸化セリウム粉体の質量は、ナノイットリア粉体の質量に対して0.3%であり、PMMA微小球の質量は、マトリックス相原料粉体及び発光相原料粉体の質量和に対して8%である。第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体及びナノ酸化セリウム粉体を化学量論比でそれぞれ秤量する。
【0061】
グリーン体の製造は、混合粉体を金型に入れ、混合粉体を乾式プレスしてグリーン体を形成させる。
【0062】
グリーン体をマッフル炉に置いて、室温から700℃まで昇温する造孔剤分解温度で4h熱処理し、PMMA微小球を分解させる。
【0063】
マッフル炉によるグリーン体の熱処理温度を造孔剤分解温度から1200℃まで昇温した予備焼結温度で2h保温焼結し、セラミックス中間体を形成する。
【0064】
マッフル炉を真空焼結炉に切り替え、1600℃まで昇温した焼結温度でセラミックス中間体を3h保温焼結し、複相蛍光セラミックス焼結体を形成する。
【0065】
空気雰囲気中で、複相蛍光セラミックス焼結体をアニール処理し、複相蛍光セラミックスを形成する。
【実施例2】
【0066】
実施例2において、マトリックス相原料粉体は、第1ナノアルミナ粉体を含み、発光相原料粉体は、第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体及びナノ酸化セリウム粉体を含み、固相反応によりYAG:Ce発光相を得て、PS微小球により孔を形成することによって、多孔質構造を備える複相蛍光セラミックスが得られる。その製造フローは以下の通りである。
【0067】
混合粉体の製造は、第1ナノアルミナ粉体、第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体、ナノ酸化セリウム粉体及びPS微小球をボールミリング混合を行い、混合粉体を形成する。
【0068】
ここで、第1ナノアルミナ粉体及び第2ナノアルミナ粉体の質量和とナノイットリア粉体との質量比は、2:1であり、ナノ酸化セリウム粉体の質量は、ナノイットリア粉体の質量に対して0.4%であり、PS微小球の質量は、マトリックス相原料粉体及び発光相原料粉体の質量和に対して10%である。第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体及びナノ酸化セリウム粉体を化学量論比でそれぞれ秤量する。
【0069】
グリーン体の製造は、混合粉体を金型に入れ、混合粉体を乾式プレスしてグリーン体を形成させる。
【0070】
グリーン体をマッフル炉に置いて、室温から600℃まで昇温した造孔剤分解温度で4h熱処理し、PS微小球を分解させる。
【0071】
マッフル炉によるグリーン体の熱処理温度を造孔剤分解温度から1300℃まで昇温した予備焼結温度で1h保温焼結し、セラミックス中間体を形成する。
【0072】
セラミックス中間体に対して外形寸法加工を行う。
【0073】
外形寸法加工を行った後のセラミックス中間体を黒鉛金型に置いて、SPS焼結炉により1500℃の焼結温度で30min保温焼結し、複相蛍光セラミックス焼結体を形成する。
【0074】
空気雰囲気中で、複相蛍光セラミックス焼結体をアニール処理し、複相蛍光セラミックスを形成する。
【実施例3】
【0075】
実施例3において、マトリックス相原料粉体は、第1ナノアルミナ粉体を含み、発光相原料粉体は、第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体及びナノ酸化セリウム粉体を含み、固相反応によりYAG:Ce発光相を得て、澱粉により孔を形成することによって、多孔質構造を備える複相蛍光セラミックスが得られる。澱粉は、第1澱粉を含み、その製造フローは、以下の通りである。
【0076】
混合スラリーの製造は、第1ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体、ナノ酸化セリウム粉体及びバインダーを第1ボールミリング混合を行い、混合スラリーを形成する。
【0077】
ここで、第1ナノアルミナ粉体及び第2ナノアルミナ粉体の質量和とナノイットリア粉体との質量比は、1:1であり、ナノ酸化セリウム粉体の質量は、ナノイットリア粉体の質量に対して0.4%であり、第1澱粉の質量は、マトリックス相原料粉体及び発光相原料粉体の質量和に対して12%である。第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体及びナノ酸化セリウム粉体を化学量論比でそれぞれ秤量する。
【0078】
プリ粉体の製造は、噴霧造粒して混合スラリーをプリ粉体に作成する。
【0079】
YAG:Ce前駆体の製造は、プリ粉体を1300℃の前駆体焼結温度で3h保温焼結し、YAG:Ce前駆体を形成する。
【0080】
YAG:Ce前駆体を第3ボールミリングを行う。第3ボールミリング後のYAG:Ce前駆体を篩通し処理を行い、予め設定されたサイズを備えるYAG:Ce前駆体を得る。
【0081】
混合粉体の製造は、篩通し処理後のYAG:Ce前駆体、第2ナノアルミナ粉体及び第1澱粉を第2ボールミリング混合を行い、混合粉体を形成する。
【0082】
混合粉体を乾燥処理する。乾燥処理後の混合粉体を篩通し処理を行う。
【0083】
グリーン体の製造は、篩通し処理後の混合粉体を金型において乾式プレス成形し、グリーン体を形成する。
【0084】
グリーン体をマッフル炉に置いて、室温から650℃まで昇温した造孔剤分解温度で4h熱処理し、澱粉を分解させる。
【0085】
マッフル炉によるグリーン体の熱処理温度を造孔剤分解温度から1400℃まで昇温した予備焼結温度で2h保温焼結し、セラミックス中間体を形成する。
【0086】
マッフル炉を真空焼結炉に切り替え、1600℃まで昇温した焼結温度でセラミックス中間体を4h保温焼結し、複相蛍光セラミックス焼結体を形成する。
【0087】
空気雰囲気中で、複相蛍光セラミックスをアニール処理し、複相蛍光セラミックスを形成する。
【実施例4】
【0088】
実施例4において、マトリックス相原料粉体は、第1ナノアルミナ粉体を含み、発光相原料粉体は、第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体及びナノ酸化セリウム粉体を含み、固相反応によりYAG:Ce発光相を得て、澱粉により孔を形成することによって、多孔質構造を備える複相蛍光セラミックスを得る。ここで、澱粉は、第1澱粉及び第2澱粉を含み、その製造フローは、以下の通りである。
【0089】
混合スラリーの製造は、第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体、ナノ酸化セリウム粉体、バインダー及び第2澱粉を第1ボールミリング混合を行い、混合スラリーを形成する。
【0090】
ここで、第1ナノアルミナ粉体及び第2ナノアルミナ粉体の質量和とナノイットリア粉体との質量比は、5:1であり、ナノ酸化セリウム粉体の質量は、ナノイットリア粉体の質量に対して0.4%であり、第1澱粉及び第2澱粉の質量和は、マトリックス相原料粉体及び発光相原料粉体の質量和に対して20%であり、第1澱粉と第2澱粉との質量比は、1.25である。第2ナノアルミナ粉体、ナノイットリア粉体及びナノ酸化セリウム粉体を化学量論比でそれぞれ秤量する。
【0091】
プリ粉体の製造は、噴霧造粒して混合スラリーをプリ粉体に作成する。
【0092】
YAG:Ce前駆体の製造は、プリ粉体を1300℃の前駆体焼結温度で3h保温焼結し、YAG:Ce前駆体を形成する。
【0093】
YAG:Ce前駆体を第3ボールミリングを行う。第3ボールミリング後のYAG:Ce前駆体を篩通し処理を行い、予め設定されたサイズを備えるYAG:Ce前駆体を得る。
【0094】
混合粉体の製造は、篩通し処理後のYAG:Ce前駆体、第2ナノアルミナ粉体及び第1澱粉を第2ボールミリング混合を行い、混合粉体を形成する。
【0095】
混合粉体を乾燥処理する。乾燥処理後の混合粉体を篩通し処理を行う。
【0096】
グリーン体の製造は、篩通し処理後の混合粉体を金型において乾式プレス成形し、グリーン体を形成する。
【0097】
グリーン体をマッフル炉に置いて、室温から650℃まで昇温した造孔剤分解温度で4h熱処理し、澱粉を分解させる。
【0098】
マッフル炉によるグリーン体の熱処理温度を造孔剤分解温度から1400℃まで昇温した予備焼結温度で2h保温焼結し、セラミックス中間体を形成する。
【0099】
マッフル炉を真空焼結炉に切り替え、1600℃まで昇温した焼結温度でセラミックス中間体を4h保温焼結し、複相蛍光セラミックス焼結体を形成する。
【0100】
空気雰囲気中で、複相蛍光セラミックスをアニール処理し、複相蛍光セラミックスを形成する。
【0101】
図3を参照すると、図3は、本願に係る発光装置の構造模式図である。
【0102】
図3に示すように、発光装置300は、励起光源200及び上記複相蛍光セラミックスの実施例の複相蛍光セラミックス100を含む。レーザ光源200は、複相蛍光セラミックス100を励起して蛍光を発生させるように、励起光を複相蛍光セラミックス100に出力するために用いられる。ここで、発光装置300は、投影装置又は照明装置などを含むことができる。励起光源200は、例えば、LED及び/又はレーザなどの固体光源を含むことができる。
【0103】
以上は、本願の実施形態だけであり、本願の特許範囲を限定するものではなく、本願の明細書及び図面内容を利用して行われた等価構造又は等価フロー変換、又は他の関連する技術分野に直接的又は間接的に適用することは、いずれも同様に本願の特許保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複相蛍光セラミックスであって、発光相と、マトリックス相と、気孔とを含み、
前記発光相は、互いに結着された複数の発光結晶粒を含み、
前記マトリックス相は、互いに結着された複数のマトリックス結晶粒を含み、前記マトリックス相と前記発光相は、前記複相蛍光セラミックスにおいて互いに入り組んで分布し、
前記気孔は、少なくとも一部が前記発光相内に分布し、少なくとも一部が前記マトリックス相内に分布し、少なくとも一部が前記発光相と前記マトリックス相との間に分布することを特徴とする複相蛍光セラミックス。
【請求項2】
前記気孔の総体積の前記複相蛍光セラミックスの体積に対する体積割合は、5%未満且つ0.1%より多く、及び/又は前記発光相の総体積の前記複相蛍光セラミックスの体積に対する体積割合は、10%~90%であることを特徴とする請求項1に記載の複相蛍光セラミックス。
【請求項3】
前記複相蛍光セラミックスにおいて総数の60%~95%を占める発光結晶粒の粒径は、1μm~10μmであり、及び/又は前記複相蛍光セラミックスにおいて総数の60%~95%を占めるマトリックス結晶粒の粒径は、1μm~10μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複相蛍光セラミックス。
【請求項4】
前記発光相は、前記複相蛍光セラミックスにおいて分散粒子状分布を呈し、前記マトリックス相は、分散している前記発光相の間に分布し、
又は、前記発光相は、前記複相蛍光セラミックスにおいて網状連続分布を呈し、前記マトリックス相は、網状連続分布の前記発光相によって囲まれた網目に分布し、
又は、前記発光相は、前記複相蛍光セラミックスにおいて分散粒子状分布と網状連続分布の混合状態を呈することを特徴とする請求項1又は2に記載の複相蛍光セラミックス。
【請求項5】
前記発光相は、ランタノイドドーピングのガーネット発光相であり、前記マトリックス相は、アルミナマトリックス相であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複相蛍光セラミックス。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の複相蛍光セラミックスを製造するための複相蛍光セラミックスの製造方法であって、
マトリックス相原料粉体、発光相原料粉体及び造孔剤を含むセラミック原料を混合して混合粉体を形成するステップと、
前記混合粉体を成形してグリーン体を形成するステップと、
前記グリーン体を熱処理して前記造孔剤を除去するステップと、
熱処理後の前記グリーン体を焼結して、前記複相蛍光セラミックスを形成するステップと、を含むことを特徴とする複相蛍光セラミックスの製造方法。
【請求項7】
前記造孔剤の質量は、前記マトリックス相原料粉体と前記発光相原料粉体との質量和に対して4%~20%であることを特徴とする請求項6に記載の複相蛍光セラミックスの製造方法。
【請求項8】
前記マトリックス相原料粉体は、第1アルミナ粉体を含み、前記発光相原料粉体は、第2アルミナ粉体、イットリア粉体及びランタノイド酸化物粉体を含み、前記第1アルミナ粉体及び前記第2アルミナ粉体の質量和と前記イットリア粉体との質量比は、1:1~6:1であり、前記ランタノイド酸化物粉体の質量は、前記イットリア粉体の質量に対して0.1%~2%であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記グリーン体を熱処理して前記造孔剤を除去するステップは、
前記グリーン体を400℃~1000℃の造孔剤分解温度で0.5h~6h熱処理して、前記造孔剤を分解させることを含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理後の前記グリーン体を焼結して、前記複相蛍光セラミックスを形成するステップの前に、前記製造方法は、
前記造孔剤の分解温度から1000℃~1600℃の予備焼結温度まで昇温し、前記予備焼結温度で前記グリーン体を0.5h~4h予備焼結処理して、セラミックス中間体を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理後の前記グリーン体を焼結して、前記複相蛍光セラミックスを形成するステップは、
前記セラミックス中間体を1400℃~1700℃の焼結温度で0.1h~6h焼結して、複相蛍光セラミックス焼結体を形成することと、
前記複相蛍光セラミックス焼結体を空気雰囲気でアニール処理して、前記複相蛍光セラミックスを形成することと、を含むことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記セラミック原料を混合するステップは、
前記発光相原料粉体を混合してプリ粉体を作成することと、
前記プリ粉体を1000℃~1600℃の前駆体焼結温度で0.5h~4h焼結し、発光相前駆体を形成することと、
前記発光相前駆体、前記マトリックス相原料粉体及び前記造孔剤を混合して、前記混合粉体を形成することと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項13】
前記造孔剤は、第1造孔剤及び第2造孔剤を含み、前記セラミック原料を混合するステップは、
前記発光相原料粉体と前記第1造孔剤とを混合してプリ粉体を作成することと、
前記プリ粉体を1000℃~1600℃の前駆体焼結温度で0.5h~4h焼結し、発光相前駆体を形成することと、
前記発光相前駆体、前記マトリックス相原料粉体及び前記第2造孔剤を混合して、前記混合粉体を形成することと、を含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項14】
前記造孔剤は、PMMA微小球、PS微小球又は澱粉のうちの1種又は複数種であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項15】
発光装置であって、励起光源と、請求項1又は2に記載の複相蛍光セラミックスと、を含むことを特徴とする発光装置。
【国際調査報告】