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特表2024-541427新規なロイコノストック・メセンテロイデス菌株を含む癌または炎症予防または治療用組成物及びそれを用いた癌または炎症の予防または治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】新規なロイコノストック・メセンテロイデス菌株を含む癌または炎症予防または治療用組成物及びそれを用いた癌または炎症の予防または治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20241031BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20241031BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241031BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241031BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20241031BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20241031BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
A61K35/744
A61P1/00
A61P11/00
A61P35/00
A61K45/06
A61P15/00
A23L33/135
A23K10/16
C12N1/20 E
C07K16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529694
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 KR2022018223
(87)【国際公開番号】W WO2023090903
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158921
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440334
【氏名又は名称】シージェイ バイオサイエンス, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ア リム
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ボ ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スンウォン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AA06
2B150AA07
2B150AA10
2B150AB10
2B150AC05
2B150AD04
2B150DD12
2B150DD13
2B150DD21
2B150DD22
2B150DD26
4B018MD86
4B018ME08
4B065AA01X
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA17
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC75
4C087CA09
4C087MA17
4C087MA52
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA60
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA81
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
本出願は、新規なロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)菌株、その培養物またはこれに由来する成分を含む癌または炎症の予防、改善または治療用組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌または乳癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含み、抗癌剤と併用投与される、大腸癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記ロイコノストック・メセンテロイデス菌株は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P)から選択されるいずれか一つ以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、抗癌剤と併用投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗癌剤は、免疫抗癌剤である、請求項2または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記免疫抗癌剤は、抗PD-1(programmed cell death protein 1,)、抗PD-L1(programmed cell death-ligand 1)、CTLA4(Cytotoxic T Lymphocyte associated Antigen 4)、CTLA4/B7-1/B7-2相互作用抑制剤及びCD47/SIRP(Cluster of Differentiation 47/Signal-regulatory protein)相互作用抑制剤、抗Tim3(T-cell immunoglobulin and mucin domain 3)及び抗LAG3(Lymphocyte Activating 3)からなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の投与は、抗癌療法と併用される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗癌療法は、放射線療法(radiotherapy)、ネオアジュバント療法(neoadjuvant therapy)、化学療法(chemotherapy)、標的療法(targeted therapy)及び光線力学的療法(Photodynamic therapy)からなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与及び直腸内投与からなる群から選択されるいずれか一つ以上の投与方法で投与される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
ロイコノストック・メセンテロイデス菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌、乳癌または大腸癌の予防または改善用食品組成物。
【請求項11】
ロイコノストック・メセンテロイデス菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌、乳癌または大腸癌の予防または改善用健康機能食品。
【請求項12】
ロイコノストック・メセンテロイデス菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌、乳癌または大腸癌の予防または改善用飼料組成物。
【請求項13】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌または炎症予防または改善用食品組成物。
【請求項14】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌または炎症予防または改善用健康機能食品。
【請求項15】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌または炎症予防または改善用飼料組成物。
【請求項16】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用食品組成物。
【請求項17】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用健康機能食品。
【請求項18】
ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用飼料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、新規なロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)菌株、その培養物またはこれに由来する成分を含む癌または炎症の予防、改善または治療用組成物、これを含む免疫増強用組成物及びそれを用いた癌または炎症の予防または治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌(cancer)は、遺伝子発現の多様な変化により引き起こされる非正常細胞の成長であり、隣接組織を浸透及び破壊し、遠い位置まで移転し、最終的に死に至る。
癌は、世界的に高い死亡率を示し、西欧社会では心血管疾患に次いで最も一般的な死亡原因である。特に、食生活が西欧化して高脂肪食の摂取が一般化し、環境汚染物質の急激な増加、飲酒量の増加などにより大腸癌、肺癌、乳癌などが持続的に増加する傾向にある。
【0003】
一方、乳酸菌は、ヒト及び動物の口腔、腸、膣、糞便、そしてヨーグルト、チョングクジャン、キムチのような発酵食品などに広く分布してヒトと動物の健康と密接に関連している。乳酸菌は、整腸作用、有害菌抑制、免疫調節、血中コレステロール低下、抗癌など多様な健康増進効果を示すことが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/103138号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、新規なロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)菌株、その培養物またはこれに由来する成分を含む癌または炎症の予防、改善または治療用組成物、これを含む免疫増強用組成物及びそれを用いた癌または炎症の予防または治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌または乳癌の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0007】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leukonostok mecenteroides) CJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0008】
本出願のもう一つの目的は、本出願の薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、癌の予防または治療方法を提供することにある。
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分で含み、抗癌剤と併用投与される、大腸癌の予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0009】
本出願のもう一つの目的は、本出願の薬学的組成物を個体に投与することを含む肺癌、乳癌または大腸癌の予防または治療方法を提供することにある。
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデス菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌、乳癌または大腸癌の予防または改善用食品組成物を提供することにある。
【0010】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデス菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌、乳癌または大腸癌の予防または改善用健康機能食品を提供することにある。
【0011】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデス菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌、乳癌または大腸癌の予防または改善用飼料組成物を提供することにある。
【0012】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌または炎症予防または改善用食品組成物を提供することにある。
【0013】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌または炎症予防または改善用健康機能食品を提供することにある。
【0014】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌または炎症予防または改善用飼料組成物を提供することにある。
【0015】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用薬学的組成物を提供することにある。
【0016】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用食品組成物を提供することにある。
【0017】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用健康機能食品を提供することにある。
【0018】
本出願のもう一つの目的は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用飼料組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0019】
本出願による新規なロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)菌株は抗癌及び抗炎症効果を示し、CD8 T細胞能を強化して免疫強化サイトカインであるIL-6、IL-12p70及びIFNγの分泌を増加させるなど、免疫増強効果を示すところ、癌または炎症の予防または治療、免疫増強用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)CJRS-10671、CJRS-10672菌株の酵素活性を確認した図である。
図2】CJRS-10671、CJRS-10672菌株の溶血性を確認した図である。
図3】CJRS-10671、CJRS-10672菌株の腸付着能を確認した図である。
図4】大食細胞株においてCJRS-10671、CJRS-10672菌株によるIL(interleukin)-6分泌を確認した図である。
図5】ヒトPBMC(peripheral blood mononuclear cell)においてCJRS-10671、CJRS-10672菌株によるIL-12p70分泌を確認した図である。
図6】マウス脾臓細胞、ヒトPBMCにおいてCJRS-10671、CJRS-10672菌株によるCD8 T細胞のIFNγ(Interferon-gamma)分泌能を確認した図である。
図7】CJRS-10671、CJRS-10672菌株による癌細胞の細胞周期停止(Cell cycle arrest)効果を確認した図である。
図8】CJRS-10671、CJRS-10672菌株による癌細胞の細胞周期停止関連因子であるサイクリンB1(cyclin B1)、CDK1(Cyclin Dependent Kinase 1)の発現を確認した図である。
図9】CJRS-10671、CJRS-10672菌株による癌細胞アポトーシスを確認した図である。
図10】マウス肺癌モデル(LLC1)においてCJRS-10671、CJRS-10672投与による腫瘍抑制効果を確認した図である。
図11】マウス肺癌モデル(LLC1)においてCJRS-10671投与によるCD8 T細胞のIFNγ分泌能を確認した図である。
図12】マウス肺癌モデル(LLC1)においてCJRS-10672投与によるCD8 T細胞のIFNγ分泌能を確認した図である。
図13】マウス肺癌モデル(LLC1)においてCJRS-10671、CJRS-10672投与による腫瘍組織内CD8 T細胞のIFNγ分泌能を確認した図である。
図14】マウス肺癌モデル(LLC1)においてCJRS-10671、CJRS-10672投与による免疫抑制細胞であるMDSC(Myeloid-derived suppressor cells)の変化を確認した図である。
図15】マウス肺癌モデル(LLC1)においてCJRS-10671投与による免疫細胞変化(profiling)を確認した図である。
図16】マウス肺癌モデル(LLC1)においてCJRS-10672投与による免疫細胞変化(profiling)を確認した図である。
図17】マウス乳癌モデル(4T1)においてCJRS-10672投与による腫瘍抑制効果を確認した図である。
図18】マウス乳癌モデル(4T1)においてCJRS-10672投与による免疫抑制細胞であるMDSCの変化を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本出願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが、本出願の範囲に属する。また、以下に記載される具体的な記述により本出願のカテゴリが制限されるとは見られない。また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本発明の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができる。また、このような等価物は、本出願に含まれることが意図される。
【0022】
本出願の一態様は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌または乳癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0023】
本出願において用語、「ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)」とは、丸い球状の形をしている乳酸菌を意味して、プロバイオティクスまたはキムチなどの食品を発酵する乳酸菌として知られている。
【0024】
本出願のロイコノストック・メセンテロイデス菌株は、受託番号KCCM13059Pとして寄託されたCJRS-10671または受託番号KCCM13060Pとして寄託されたCJRS-10672から選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0025】
本出願のCJRS-10671菌株は、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)、α-グルコシダーゼ(α-glucosidase)及びβ-グルコシダーゼ(β-glucosidase)の酵素活性が高くてもよく、本出願のCJRS-10672菌株はβ-グルコシダーゼの酵素活性が高くてもよい。
【0026】
また、本出願の菌株は、整腸効果及び免疫増強効果を有する。
本出願による組成物に含まれる本出願の菌株は、生菌体または死菌体として存在することができ、また、乾燥または凍結乾燥された形態で存在することもできる。本出願の培養物には生菌培養物(即ち、生菌を培地で培養した結果物)、前記生菌培養物において生菌を死菌化した培養物、または培養濾液(即ち、前記培養物から死菌体または生菌体が除去された結果物)が含まれてもよい。また、本出願の菌株由来の成分としては、例えば、EV(Extracellular Vesicle)などを含有する、菌体を破砕して得られた細胞質分画物が含まれてもよい。それ以外に、薬学的組成物内に含めるのに適した乳酸菌の形態、製剤化方法及び菌株由来成分の分離方法などは当業者によく知られている。
【0027】
具体的には、本出願の菌株はMRS液体培地に0.1~10%接種し、25~40℃で4時間~72時間培養した菌株であってもよい。
また、本出願の組成物は、抗癌剤と併用投与されてもよい。
【0028】
本出願の他の一態様は、ロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分で含み、抗癌剤と併用投与される、大腸癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0029】
前記菌株、培養物、由来成分については、前記で説明した通りである。
本出願の菌株は、抗癌、抗炎症及び免疫増進効果を示すものであってもよい。
本出願において、癌は、当業界に知られている癌であれば、制限なく含むことができ、例えば、肺癌(例、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫)、中皮腫、膵臓癌(例、膵管癌、膵臓内分泌腫瘍)、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、胃癌(例、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌腫)、十二指腸癌、小腸癌、大腸癌(例、結腸癌、直膓癌、肛門癌、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍)、乳癌(例、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌)、卵巣癌(例、上皮性卵巣癌種、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、睾丸腫瘍、前立腺癌(例、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌)、肝臓癌(例、肝細胞癌、原発性肝臓癌、肝外胆管癌)、甲状腺癌(例、甲状腺髄様癌腫)、腎臓癌(例、腎細胞癌腫、腎盂と尿管の移行上皮癌腫)、子宮癌(例、子宮頚部癌、子宮体癌、子宮肉腫)、脳腫瘍(例、髄芽腫、神経膠腫、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、脳下垂体腺腫)、網膜母細胞腫、皮膚癌(例、基底細胞癌、悪性黒色腫)、肉腫(例、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、軟組織肉腫)、悪性骨腫瘍、膀胱癌、血液癌(例、多発性骨髓腫、白血病、悪性リンパ種、ホジキン病、慢性骨髄増殖性疾患)、原発不明癌などであってもよく、これらに限定されるものではないが、具体的には、肺癌、乳癌または大腸癌であってもよい。
【0030】
本出願の薬学的組成物は、本出願の組成物が目的組織に到達できる限り、任意の一般的な経路を通じて投与することができる。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与を含む多様な投与形式が考慮され得るが、本出願は、このような投与の例示形式に制限されない。好ましくは、前記組成物は、注射剤の形態で投与することができる。また、前記薬学的組成物は、活性成分が標的細胞に移動できる特定の装置により投与することができる。
【0031】
本出願の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。経口投与の場合、薬学的に許容される担体は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素及び香料を含むことができる。注射剤の場合、薬学的に許容される担体は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤及び安定化剤を含むことができる。局所投与用の場合、薬学的に許容される担体は、基剤、賦形剤、潤滑剤及び保存剤を含むことができる。本出願の薬学的組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容される担体と組み合わせて多様な剤形に製造することができる。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、サスペンション、シロップまたはウェハーに剤形化することができる。注射剤の場合には、単位投薬剤形のアンプルまたは多用量容器のような多回投薬の剤形に剤形化することができる。前記組成物は、また、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル及び徐放性製剤に剤形化することができる。
【0032】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱油を含む。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料及び防腐剤をさらに含むことができる。
【0033】
本出願の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与することができる。
本出願において用語、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスクの比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、個体の種類及び重症度、年齢、性別、疾病の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られている要素により決定することができる。本出願の薬学的組成物は、個別治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができる。そして、単一または多重投与することができる。前記要素をすべて考慮し、副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定することができる。本出願の薬学的組成物の好ましい投与量は、抗癌剤の種類だけでなく、治療する癌腫、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び疾患の重症度を含む種々の関連因子により決定することができる。本出願の薬学的組成物を抗癌剤と併用投与する場合、併用投与される抗癌剤の投与用量を減少させることができ、それにより抗癌剤の副作用を減少させ、患者の治療コンプライアンスを上昇させることができる。投与は、一日に一回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。
【0034】
また、本出願の薬学的組成物は、ヒトに適用される医薬品だけでなく、動物医薬品の形態でも使用することができる。ここで、動物とは、家畜及びペットを含む概念である。
本出願において、本出願の薬学的組成物は、抗癌剤と併用投与されてもよい。前記抗癌剤は、例えば、タキサン系抗癌剤、スタチン、アルキル化薬物(Alkylating agents)、白金製剤(Platinum-based drug)、代謝拮抗剤(Antimetabolites)、抗生剤(Antibiotics)、ビンカアルカロイド系(Vinca alkaloids)抗癌剤、標的治療剤、免疫抗癌剤、癌ワクチン(Cancer Vaccine)、細胞治療剤(Cell therapy)、腫瘍溶解性ウイルス(Oncolytic virus)及びそれらの組み合わせであってもよく、これらに限定されるものではないが、具体的には、免疫抗癌剤であってもよい。
【0035】
前記タキサン系抗癌剤は、一例として、パクリタキセル(Paclitaxel)、ドセタキセル(Docetaxel)、ラロタキセル(Larotaxel)及びカバジタキセル(Cabazitaxel)などがあるが、これに制限されない。
【0036】
前記スタチンは、一例として、シンバスタチン(simvastatin)、アトルバスタチン(atorvastatin)、ロバスタチン(lovastatin)、フルバスタチン(fluvastatin)、セリバスタチン(cerivastatin)及びピタバスタチン(pitavastatin)などであってもよいが、これに制限されない。
【0037】
前記アルキル化薬物は、一例として、ナイトロジェンマスタード(Nitrogen mustard)系薬物、エチレンイミン(Ethylenimine)及びメチルメラミン(Methylmelamine)系薬物、メチルヒドラジン(Methylhydrazine)誘導体、アルキルスルホネート(Alkyl Sulfonate)系薬物、ニトロソウレア(Nitrosourea)系薬物及びトリアジン(Triazine)系薬物などであってもよいが、これに制限されない。
【0038】
前記白金製剤は、一例として、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(Carboplatin)及びオキサリプラチン(Oxaliplatin)などであってもよいが、これに制限されない。
【0039】
前記代謝拮抗剤は、一例として、葉酸アンタゴニスト(Folate antagonist)系薬物、プリンアンタゴニスト(Purine antagonist)系薬物及びピリミジンアンタゴニスト(Pyrimidine antagonist)系薬物などであってもよいが、これに制限されない。
【0040】
前記抗生剤は、一例として、エトポシド(Etoposide)、トポテカン(Topotecan)、イリノテカン(Irinotecan)、イダルビシン(Idarubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、ダクチノマイシン(Dactinomycin)、ドキソルビシン(Doxorubicin,Adriamycin)、ダウノルビシン(Daunorubicin)、ブレオマイシン(Bleomycin)、マイトマイシンC(Mitomycin C)及びミトキサントロン(Mitoxantrone)などであってもよいが、これに制限されない。
【0041】
前記ビンカアルカロイド系抗癌剤は、一例として、ビンクリスチン(Vincristine)、ビンブラスチン(Vinblastine)及びビノレルビン(Vinorelbine)などであってもよいが、これに制限されない。
【0042】
前記の標的治療剤は、一例として、EGFR(Epidermal growth factor receptor)標的治療剤、HER2(Human Epidermal growth factor Receptor 2)標的治療剤、CD20(B cell marker)標的治療剤、CD33(Myeloid Cell Surface Antigen)標的治療剤、CD52(cluster of differentiation 52)標的治療剤、CD30(Tumor Necrosis Factor Receptor Superfamily Member 8)標的治療剤、bcr-abl(breakpoint cluster region protein-Tyrosine-protein kinase)/c-Kit(tyrosine kinase receptor)標的治療剤、ALK(anaplastic lymphoma receptor tyrosine kinase)標的治療剤、抗血管新生(Antiangiogenics)標的治療剤、mTOR(Mammalian target of rapamycin)標的治療剤、CDK4/6(Cyclin-dependent kinase 4/6)標的治療剤、PARP(Poly (ADP-ribose) polymerase)標的治療剤、プロテアソーム(Proteasome)阻害剤、チロシンキナーゼ(tyrosine kinase)アンタゴニスト、プロテインキナーゼC(protein kinase C)抑制剤及びファルネシルトランスフェラーゼ(Farnesyl transferase)抑制剤などであってもよいが、これに制限されない。
【0043】
前記免疫抗癌剤は、一例として、抗PD-1(programmed cell death protein 1,)、抗PD-L1(programmed cell death-ligand 1)、CTLA4(Cytotoxic T Lymphocyte associated Antigen 4)、CTLA4/B7-1/B7-2相互作用抑制剤及びCD47/SIRP(Cluster of Differentiation 47/Signal-regulatory protein)相互作用抑制剤、抗Tim3(T-cell immunoglobulin and mucin domain 3)及び抗LAG3(Lymphocyte Activating 3)などであってもよいが、これに制限されない。
【0044】
具体的には、本出願の抗癌剤は、これらに限定されるものではないが、抗PD-1免疫抗癌剤であってもよい。
本出願において、併用投与は、前記薬学的組成物と抗癌剤を同時、順次または逆順で投与することであってもよいが、投与順序は制限されず、両薬理効果が発揮される投与間隔で投与される限り、本出願の範疇に属する。また、前記薬学的組成物と抗癌剤は、個別に製剤化することができ、または一つの製剤に製剤化することもできるが、これに制限されない。
【0045】
本出願において、本出願の薬学的組成物の投与は、抗癌療法と併用することができる。前記抗癌療法は、放射線療法(radiotherapy)、ネオアジュバント療法(neoadjuvant therapy)、化学療法(chemotherapy)、標的療法(targeted therapy)及び光線力学的療法(Photodynamic therapy)などであってもよいが、これに制限されず、当業界に知られている抗癌療法をすべて含むことができる。
【0046】
本出願において、本出願の薬学的組成物は、抗癌効果を示すものであってもよい。前記抗癌効果は、癌細胞アポトーシスまたは腫瘍成長抑制効果を含むものであってもよい(実施例9、実施例10-1)。
【0047】
一例として、本出願の薬学的組成物は、癌細胞の細胞周期を抑制させることにより癌細胞アポトーシスまたは腫瘍成長抑制効果を示し、抗癌効果を示すものであってもよい(実施例8)。
【0048】
他の一例として、本出願の薬学的組成物は、免疫強化サイトカインであるIL(interlukine)-6、IL-12p70及びIFNγ(Interferon-gamma)の分泌を増加させることにより抗炎症または免疫増強効果を示すものであってもよい(実施例7)。
【0049】
本出願のもう一つの様態は、本出願の薬学的組成物を個体に投与することを含む肺癌、乳癌または大腸癌の予防または治療方法を提供する。
前記薬学的組成物及び癌については、前記で説明した通りである。
【0050】
本出願の治療方法は、前記薬学的組成物を薬学的有効量で癌の疑いがある個体内に投与する段階を含む。前記個体は、犬、牛、馬、ウサギ、マウス、ラット、鶏、及びヒトを含む哺乳類の全体を意味するが、本出願の哺乳類は、前記例により限定されるものではない。前記薬学的組成物は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻腔内経路を通じて投与することができる。局部的治療のために、必要であれば、病変内投与を含む適した方法により投与することができる。非経口の注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与が含まれる。好ましい剤形は、静脈注射、皮下注射、皮内注射剤、筋肉注射または点滴注射剤形である。本出願の前記薬学的組成物の好ましい投与量は、個体の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なることがあり、当業者により適切に決定することができる。
【0051】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデス菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌、乳癌または大腸癌の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0052】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデス菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌、乳癌または大腸癌の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0053】
前記菌株、培養物、由来成分及び癌については、前記で説明した通りである。
前記食品組成物は、健康機能食品または食品添加剤の形態であってもよい。
本出願において用語、「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律により人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて製造及び加工した食品を意味(第3条第1号)し、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対し栄養素を調節したり生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ること(同調第2号)を意味する。
【0054】
前記食品組成物は、食品添加物をさらに含んでもよく、「食品添加物」としての適合有無は、特に規定がない限り、食品医薬品安全庁において承認された食品添加物公典の総則及び一般試験法などにより該当品目に関する規格及び基準により判定する。
【0055】
前記「食品添加物公典」に収載された品目として、例えば、ケトン類、グリシン、クエン酸カリウム、ニコチン酸、けい皮酸などの化学的合成品、柿色素、甘草抽出物、結晶セルロース、グアーガムなどの天然添加物、L-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺類添加アルカリ剤、保存料製剤、タール色素製剤などの混合製剤類が挙げられる。
【0056】
本出願の有効成分が含まれた食品としては、パン、餅類、乾果類、キャンディ類、チョコレート類、チューインガム、ジャム類のような菓子類アイスクリーム類、氷果類、アイスクリーム粉末類のようなアイスクリーム製品類;牛乳類、低脂肪牛乳類、乳糖分解牛乳、加工乳類、ヤギ乳、発酵乳類、バターミルク類、濃縮乳類、生クリーム類、バターミルク、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、粉乳類、乳清類のような乳加工品類;食肉加工品、卵加工品、ハンバーガーのような食肉製品類;かまぼこ、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの魚肉加工品のような魚肉製品類;ラーメン類、乾麺類、生麺類、油湯麺類、糊化乾麺類、改良熟麺類、冷凍麺類、パスタ類のような麺類;果実飲料、野菜類飲料、炭酸飲料、豆乳類、ヨーグルトなどの乳酸菌飲料、混合飲料のような飲料;醤油、味噌、コチュジャン、中国味噌、チョングクジャン、混合味噌、酢、ソース類、トマトケチャップ、カレー、ドレッシングのような調味食品;発酵食品;などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
前記以外に本出願の食品組成物は、種々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含むことができる。その他、本出願の食品組成物は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は独立してまたは組み合わせて用いることができる。
【0058】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデス菌株、その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、肺癌、乳癌または大腸癌の予防または改善用飼料組成物を提供する。
【0059】
前記菌株、培養物、由来成分及び癌については、前記で説明した通りである。
前記飼料組成物は、飼料組成物以外に飼料添加剤組成物の形態であってもよい。
前記組成物が飼料添加剤として製造される場合、前記組成物は、20~90%の高濃縮液であるか、粉末または顆粒形態に製造されることができる。前記飼料添加剤は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸やリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸塩、ポリリン酸塩(重合リン酸塩)などのリン酸塩やポリフェノール、カテキン、アルファ-トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤のいずれか一つまたは一つ以上をさらに含むことができる。飼料として製造される場合、前記組成物は、通常の飼料形態に製剤化されてもよく、通常の飼料成分を共に含んでもよい。
【0060】
前記飼料及び飼料添加剤は、穀物、例えば、粉砕または破砕された小麦、燕麦、大麦、とうもろこし及び米;植物性タンパク質飼料、例えば、油菜、豆、及びひまわりを主成分とする飼料;動物性タンパク質飼料、例えば、血粉、肉粉、骨粉及び魚粉;糖分及び乳製品、例えば、各種粉乳及び乳漿粉末からなる乾燥成分などをさらに含むことができ、その他にも栄養補充剤、消化及び吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含むことができる。
【0061】
前記飼料添加剤は、動物に単独で投与したり、食用担体から他の飼料添加剤と組み合わせて投与することもできる。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングとして、またはこれらを動物飼料に直接混合または飼料と別途の経口剤形として容易に動物に投与することができる。前記飼料添加剤を動物飼料と別に投与する場合、当該技術分野においてよく知られた通り、薬剤学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、直ちに放出または徐放性剤形に製造することができる。このような食用担体は、固体または液体、例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、大豆フレーク、ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油及びプロピレングリコールであってもよい。固体担体が使用される場合、飼料添加剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ剤または含糖錠剤または微分散性の形態のトップドレッシングであってもよい。液体担体が使用される場合、飼料添加剤は、ゼラチン軟質カプセル剤、またはシロップ剤や懸濁液、エマルジョン剤、または溶液剤の剤形であってもよい。
【0062】
また、前記飼料及び飼料添加剤は、補助剤、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶液促進剤などを含有することができる。前記飼料添加剤は、針注、噴霧または混合して動物の飼料に添加して利用され得る。
【0063】
本出願の飼料または飼料添加剤は、哺乳類、家禽及び魚類を含む多数の動物食餌に適用することができる。
前記哺乳類として豚、牛、馬、羊、ウサギ、ヤギ、齧歯動物及び実験用齧歯動物であるラット、ハムスター、モルモットだけでなく、ペット(例:犬、猫)などに使用することができ、前記家禽類として鶏、七面鳥、鴨、ガチョウ、キジ、及びウズラなどにも使用でき、前記魚類として鯉、フナ及び鱒などに用いられるが、これに限定されるものではない。
【0064】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデス(Leukonostok mecenteroides) CJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0065】
本出願のもう一つの様態は、本出願の薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、癌の予防または治療方法を提供する。
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌または炎症予防または改善用食品組成物を提供する。
【0066】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌または炎症予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0067】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、癌または炎症予防または改善用飼料組成物を提供する。
【0068】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用薬学的組成物を提供する。
【0069】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用食品組成物を提供する。
【0070】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用健康機能食品を提供する。
【0071】
本出願のもう一つの様態は、本出願のロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671(受託番号KCCM13059P)またはロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10672(受託番号KCCM13060P);その培養物;またはこれに由来する成分を有効成分として含む、免疫増強用飼料組成物を提供する。
【0072】
前記本出願の組成物において、菌株、培養物、由来成分、癌、炎症及び免疫増強などは、前記他の様態で記載した通りである。
以下、本出願を実験例を通じてより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本出願を例示するための好ましい実施様態に過ぎず、したがって、本出願の権利範囲をこれに限定されるものとは意図されない。一方、本明細書に記載されていない技術的な事項は、本出願の技術分野または類似技術分野において熟練した通常の技術者であれば、十分に理解し、容易に実施することができる。また、本明細書の全体にわたって多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体として本明細書に参照として組み込まれ、本出願が属する技術分野の水準及び本出願の内容がより明確に説明される。
【0073】
実施例1:ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)菌株の糖発酵特性の確認
キムチから分離したロイコノストック・メセンテロイデスCJRS-10671、CJRS-10672菌株は、Difco社のMRS液体培地及びAgar培地を使用して培養した。各培地は、プロトコルにより調剤した後、121℃で15分間滅菌して使用した。各菌株は、実験の2日前にstockをMRS液体培地に1%接種して37℃で20時間静置培養した後、さらにMRS液体培地に2%接種(activation)して37℃で20時間静置培養して実験に使用した。
【0074】
前記のように培養したCJRS-10671、CJRS-10672菌株に対し、API 50 CHL kit(Biomerieux,France)を用いて49種の炭水化物に対する糖発酵の特性を確認した。具体的には、2次継代培養した菌株をPBS(phosphate buffered saline)で洗浄した後、API 50 CHL培地にMcFarland standard 2.0を基準として菌株を懸濁してstripに接種した後、37℃で24時間培養した。炭水化物を用いて黄色で現れた場合は陽性反応、紫色で現れた場合は炭水化物を利用できなかった陰性反応と判読した。
【0075】
【表1-1】
【0076】
【表1-2】
【0077】
実施例2:菌株の酵素活性の確認
前記実施例1のCJRS-10671、CJRS-10672菌株の生化学的特性を分析するために、API zym kit(Biomerieux,France)を用いて19種の酵素活性を調査した。
【0078】
その結果、下記表2及び図1で示されるように、CJRS-10671の場合、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)、α-グルコシダーゼ(α-glucosidase)及びβ-グルコシダーゼ(β-glucosidase)の酵素活性が高く、CJRS-10672の場合、β-グルコシダーゼの酵素活性が高いことを確認した。
【0079】
【表2】
【0080】
実施例3:菌株の溶血性の確認
前記実施例1のCJRS-10671、CJRS-10672菌株の溶血性有無を確認するために、5% defibrinated sheep blood(MB cell,Korea)が添加されたblood agarに塗抹して37℃で24時間培養した後、コロニー周辺のclear zoneの形成有無を確認した。
【0081】
その結果、図2で示されるように、コロニー周辺に赤血球が分解されたclear zoneが形成されていないことから見てCJRS-10671、CJRS-10672菌株は溶血性がないことを確認した。
【0082】
実施例4:菌株の抗生剤耐性の確認
前記実施例1のCJRS-10671、CJRS-10672菌株の抗生剤耐性を確認するために、EFSAの抗生剤の耐性評価に関するガイドラインに準じてMIC(Minimum inhibitory concentration)を確認するための抗生剤の耐性評価を進めた。ロイコノストック・メセンテロイデスの場合、ガイドラインには8種の抗生剤に対してcut-off vlauesに関する基準が明示されている。
【0083】
MICの実験結果、CJRS-10671、CJRS-10672菌株は、抗生剤5種に関する基準には符合したが、一部の抗生剤に対してMIC基準を超過してEFSAガイドラインにより抗生剤耐性が内在(intrinsic)耐性または獲得(acquired)耐性であるかに関する遺伝子の分析を進め、その結果を下記表3に示した。EFSAガイドラインによると、内在耐性を有する場合には、他のバクテリアに抗生剤耐性の遺伝子を外部移転する可能性がないため、使用が可能である。ロイコノストック属菌株は、クロラムフェニコール(chloramphenicol)(MICs≧ 4μg/mL)に対する抵抗性を有していると報告されているが、これは、ロイコノストック属自体の内在耐性である可能性が高く、他のバクテリアへの遺伝子の水平伝播(horizontal gene transfer)の可能性が低いことが知られている(AB Flσrez、2005)。
【0084】
【表3】
【0085】
実施例5:菌株の耐酸及び耐胆性の確認
経口製剤は、腸内に安定して到達して効果を示すことが重要であるため、経口製剤としての適合性を確認するために、耐酸及び耐胆性(耐胆汁性)の評価を進めた。具体的には、耐酸性試験は1N HClを用いてpH 3.0に補正したPBS溶液に2次継代培養した菌株を1%接種し、37℃で2時間培養した後、初期生菌数と培養後の生菌数を比較して進めた。
【0086】
耐胆性は、1% oxgall(Difco,USA)が含まれたPBS溶液に活性化させた菌株を1%接種し、37℃で2時間培養した後の生菌数を初期生菌数と比較して測定した。
【0087】
その結果、下記表4に示されるように、CJRS-10671菌株は、初期生菌数100%を基準として95.7%の耐酸性及び136.6%の耐胆性を示し、CJRS-10672菌株は、初期生菌数100%を基準として120.6%の耐酸性及び67.9%の耐胆性を示した。
【0088】
【表4】
【0089】
実施例6:菌株の腸付着能の確認
前記実施例1のCJRS-10671、CJRS-10672菌株の腸内環境に対する安定性及び適合性を判断するために、腸内上皮細胞であるHT-29細胞株(Korean Cell Line Bank,KCLB;Seoul,Korea)を用いて腸付着能を評価した。具体的には、HT-29細胞株は、10% FBS(fetal bovine serum)(Gibco,Carlsbad,CA,USA)及び100U/mLペニシリン(penicillin)と0.1mg/mLストレプトマイシン(streptomycin)を添加したDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s minimal essential medium)培地を用いて37℃、5% COの環境で培養した。80%程度の単層を形成するように、HT-29細胞株を1.0Х10cells/24wellで播種した後、DMEM内に含まれている抗生剤を除去するために、PBSで二回洗浄した。2次継代培養した菌株をPBSで二回洗浄した後、抗生剤無添加DMEM培地に再溶解して2x10CFU/wellの割合で処理した。2時間37℃、5% COで培養した後、付着していない細胞はPBSで三回洗浄して除去し、付着したHT-29及び菌株だけトリプシン-EDTA(ethylene-diamine-tetraacetic acid)を添加して剥がした後、MRS agarを用いて生菌数を測定した。腸内付着の程度は、100個のHT-29細胞株当たり付着している菌株CFU数で表現し、対照群としてビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(B.lactis) ATCC type菌株を用いた。
【0090】
その結果、CJRS-10671菌株の場合、217±21 bacteria/100cells程度の腸付着能を示し、対照群の菌株と同等以上の腸付着能を示すことを確認した(図3)。
【0091】
実施例7:菌株による免疫強化サイトカイン分泌の確認
7-1.大食細胞株におけるIL(interleukin)-6分泌の確認
前記実施例1のCJRS-10671、CJRS-10672により免疫細胞において免疫強化サイトカインとして知られたIL-6分泌が誘導されるかを測定した。免疫細胞としてマウス大食細胞株(Raw 264.7)、ヒト単球(THP-1)を用いた。実験開始一週間前にRaw 264.7細胞株は10% FBSと1% Antibiotic-antimycoticが含まれたDMEM培地に継代培養及び維持し、実験1日前6x10cells/wellで平らな96ウェルプレートに播種した。THP-1細胞株は、10% FBSと1%ペニシリン-ストレプトマイシン(PS)及び2-メルカプトエタノール(2-ME) 0.05mMが含まれたRPMI培地に継代培養及び維持し、実験2日前8x10cells/wellで平らな96ウェルプレートに播種した後、PMA(Phorbol 12-myristate 13-acetate) 25ng/mlを処理してヒト単球をヒト大食細胞で2日間分化させた。その後、CJRS-10671、CJRS-10672と共培養時の培地は、抗生剤が除外された10% FBSを含む培地を用い、CJRS-10671、CJRS-10672は、培養後、Novocyte装備を用いて総菌数を測定及び計算した後、免疫細胞と1:10の割合で処理した。24時間共培養した後、培養したプレートを遠心分離して細胞を沈めた後、上層液のみを得てサイトカインの分泌を確認した。BD BiosciencesのBD Cytometric Bead Array(CBA) Mouse/Human Flex Setを用いて分析試料を準備し、BD Lyric(フローサイトメトリー)でreading、FCAPプログラムで結果を分析した。
【0092】
その結果、CJRS-10671、CJRS-10672は、マウスまたはヒト由来の大食細胞と共培養時にIL-6分泌を増加させることを確認した(図4)。
7-2.ヒトPBMC(peripheral blood mononuclear cell)におけるIL-12p70分泌の確認
CJRS-10671、CJRS-10672によりヒトPBMCで免疫強化サイトカインとして知られたIL-12p70分泌が誘導されるかを測定した。ヒトPBMCは、96ウェルプレートに2x10cells/wellで播種した。その後、CJRS-10671、CJRS-10672と共培養時の培地は、抗生剤が除外された10% FBSを含む培地を用い、CJRS-10671、CJRS-10672は、培養後、Novocyte装備を用いて総菌数を測定及び計算した後、免疫細胞と1:10の割合で処理した。24時間培養後、上層液を得て確認した結果、CJRS-10671、CJRS-10672はヒトPBMCと共培養時にIL-12p70分泌を増加させることを確認した(図5)。
【0093】
7-3.マウス脾臓細胞(splenocyte)、ヒトPBMCにおけるCD8 T細胞のIFNγ(Interferon-gamma)分泌の確認
細胞毒性T細胞であるCD8 T細胞のIFNγの分泌能は、抗癌効能に大きい影響を与えることが知られている。CJRS-10671、CJRS-10672菌株による細胞毒性T細胞のIFNγの分泌能を確認するために、マウス脾臓細胞とヒトPBMCを用いてCD8IFNγを確認した。
【0094】
具体的には、マウス脾臓細胞を分離するために、コラゲナーゼIV(collagenase IV)が含まれたHBSS(Hanks Balanced Salt Solution)を注射器でマウス脾臓組織の内側に刺し入れて細胞を外側に流れ出るようにした。これを数回繰り返した後、形態が残っている組織を注射器を用いて細切し、37℃で25分間インキュベーションした。0.5M EDTAを添加した37℃で5分間さらにインキュベーションした。パスツールピペットを用いて細胞を混ぜた後、セルストレーナーでろ過した。1500rpmで3分間遠心分離した後1x RBC溶解バッファーを用いて赤血球を除去し、脾臓細胞を新培地に懸濁して実験に使用した。
【0095】
ヒトPBMCは、stemcell technologies社から購入し、受領した後、実験に用いるまで窒素タンクに保管した。実験当日、窒素タンクからstockを取り出して恒温水槽に入れて溶かした。10% FBSが添加されたRPMI1640培地を入れて1500rpmで5分間遠心分離した後、PBMCを新培地に懸濁して実験に使用した。
【0096】
マウス脾臓細胞においてIFNγの分泌能を確認するためには、T細胞の刺激源が必要であるため、菌株との共培養1日前に抗CD3抗体0.1μg/mlをPBSで希釈して0.1μg/mlの濃度で平らな96ウェルプレートにウェル当たり100μlのボリュームでコーティングした。共培養当日、コーティングされたプレートは、PBSで2回洗浄して準備し、マウス脾臓細胞は、プロトコルにより分離した後、精製された抗CD28抗体1μg/mlを含めてコーティングされた96ウェルプレートに5x10cells/wellで播種した。そしてCJRS-10671、CJRS-10672菌株を脾臓細胞と1:10の割合で抗生剤のない培養培地を用いて共培養した。共培養の3日後、ブレフェルジンA(brefeldin A)を添加してgolgi stop 3-4時間進めた後、BD transcription factor buffer setと蛍光抗体を用いて確認するマーカーを染色して分析試料を準備した。分析試料は、BD Lyric(フローサイトメトリー)及びFlowjoプログラムを用いて分析した後、結果を確認した。
【0097】
ヒトPBMCは2x10cells/wellで播種した後、共培養は、前記実施例7-2と同様の方法で行った。
その結果、CJRS-10671、CJRS-10672がマウス脾臓細胞、ヒトPBMCでCD8 T細胞のIFNγ分泌能を増加させることを確認した(図6)。
【0098】
実施例8:菌株による癌細胞の細胞周期調節能の確認
8-1.癌細胞の細胞周期停止(Cell cycle arrest)効果の確認
前記実施例1のCJRS-10671、CJRS-10672菌株による癌細胞株の細胞周期調節能力を確認した。癌細胞株として肺癌細胞株LLC1(Lewis lung carcinoma,LL/2,LLC1)、大腸癌細胞株MC38(Murine Carcinoma-38)細胞を用いた。実験開始一週間前にLLC1、MC38細胞株はFBS 10%とAnti-anti 1%が含まれたDMEM培地で培養及び維持した。6ウェルプレートにLLC1、MC38細胞株をそれぞれ2.4x10cells/well、1.2x10cells/wellで播種した。細胞周期をG0/G1に同期化させるために、24時間後、1xPBSで2回洗浄した後、0.5% FBSが含まれており、抗生剤がない培養培地で交換した。CJRS-10671、CJRS-10672菌株を癌細胞株:菌株比率が1:10、1:100、1:1000になるように添加した。24時間共培養した後、トリプシン-EDTAを用いて細胞を剥がして1xPBSで洗浄した後、細胞のみを残した状態で氷冷75% EtOH 5mlを入れて-20℃で一晩中保管した。その後、Ki67とPI蛍光染色し、BD Lyric(フローサイトメトリー)及びFlowjoプログラムを用いて細胞周期の結果を分析した。CJRS-10671、CJRS-10672菌株を処理していない群(菌株無処理群)を対照群とした。
【0099】
その結果、菌株無処理群に比べて菌株を処理した群で細胞周期停止(Cell cycle arrest)効果が示され、主にCJRS-10671によりG2/M周期で停止効果が発生することを確認した(図7)。
【0100】
8-2.癌細胞の細胞周期停止関連因子であるサイクリンB1(cyclin B1)、CDK1(Cyclin Dependent Kinase 1)の発現の確認
CJRS-10671、CJRS-10672菌株による癌細胞株のG2/M細胞周期調節関連因子であるサイクリンB1とCDK1発現の変化を確認した。前記実施例8-1と同様の方法でLLC1をCJRS-10671、CJRS-10672菌株と24時間共培養した後、トリゾール(trizol)を用いて細胞からRNAを抽出した。これからcDNAを合成してQunatStudio 5(real time PCR機械)を用いてPCRを行って相対発現量を測定した。CJRS-10671、CJRS-10672菌株を処理していない群(菌株無処理群)を対照群とした。
【0101】
その結果、G2/M停止に関連したサイクリンB1とCDK1が減少することを確認し、主にLLC1で菌株無処理群に比べて菌株を処理した群でサイクリンB1とCDK1の相対発現量が減少することを確認した(図8)。
【0102】
実施例9:菌株による癌細胞アポトーシスの確認
前記実施例1のCJRS-10671、CJRS-10672菌株による癌細胞株の生存率の変化を確認するために、LLC1、MC38細胞をそれぞれ6ウェルプレートに2.4x10cells/well、1.2x10cells/wellで播種した。24時間後、0.5% FBSが含まれた培地で交換させた後、24時間serum starvationさせた。CJRS-10671、CJRS-10672を癌細胞株:菌株比率が1:10、1:100、1:1000になるように処理し、24時間共培養した後、トリプシン-EDTAを用いて細胞を剥がして1x PBSで洗浄した後、死細胞と生細胞を区分するために、Fixable Viability Stain 510抗体で蛍光染色し、BD Lyric(フローサイトメトリー)及びFlowjoプログラムを用いて細胞生存の結果を分析した。全細胞を100%として計算し、生細胞と死細胞の比率を図面に示した。
【0103】
その結果、菌株無処理群に比べて菌株を処理した群で細胞生存率が減少することを確認した(図9)。
実施例10:菌株によるマウス肺癌(LLC1)モデルにおける抗癌効果の確認
10-1.腫瘍抑制効果
肺癌動物モデルを構築するために、c57BL/6マウスにLLC1細胞株4x10cells/mouseを皮下注射した。腫瘍細胞注入後、腫瘍サイズが約30-50mmに到達した時、マウスを次のような群に分けた:陰性対照群(腫瘍細胞注入後、無処理)、CJRS-10671またはCJRS-10672試料を処理した群、免疫チェックポイント抑制剤である抗PD-1を処理した群(陽性対照群)及びCJRS-10671またはCJRS-10672試料と抗PD-1を併用処理した群。CJRS-10671またはCJRS-10672試料は、1匹当たり10CFUになるように100μl PBSに希釈して10日間合計10回投与し、抗PD-1(10mg/kg、BioXCell)は、2日に1回ずつ腹腔投与した。1週間に3回腫瘍の大きさをキャリパーで測定し、投与終了翌日、マウスを犠牲にして腫瘍重量の測定及び血液と臓器を得て分析した。
【0104】
その結果、CJRS-10671は単独投与でも抗PD-1単独投与群に比べて腫瘍の大きさが減少し、抗PD-1と併用投与時に腫瘍抑制効果が優れていることを確認した。CJRS-10672は、単独投与時の効果は微々たるものであるが、抗PD-1と併用投与時に有意に腫瘍抑制効果が優れることを確認した(図10)。
【0105】
10-2.CD8 T細胞のIFNγ分泌能の確認
前記実施例10-1の試験を終了した後、各群の脾臓組織から脾臓細胞を分離した後、10cells/wellで丸底96ウェルプレートに播種した。脾臓細胞をすべての免疫細胞を刺激させるPMA/Ionomycinで3-4時間刺激後、表面マーカー染色と細胞内サイトカイン染色(Intracellular Cytokine Staining;ICS)を行った後、FACSを通じてCD8 T細胞が分泌するIFNγの量を確認した。さらにCD8 T細胞能を確認するために、同一に分離した脾臓細胞をT細胞を刺激させるCD3/CD28(抗CD3抗体2μg/ml、抗CD28抗体2μg/ml)で1日間刺激した後、表面マーカー染色とICSを行った後、FACSを通じてCD8 T細胞が分泌するIFNγの量を確認した。
【0106】
その結果、CJRS-10671と抗PD-1併用投与群においてすべての免疫細胞の刺激時に有意にCD8 T細胞が分泌するIFNγの量が増加することを確認し、T細胞の刺激時にもCD8 T細胞からIFNγ分泌が増加する傾向を確認した(図11)。また、CJRS-10672抗PD-1併用投与群においてすべての免疫細胞の刺激時には、抗PD-1単独投与群に比べてCD8 T細胞が分泌するIFNγの量が類似の数値を示したが、T細胞の刺激時にCD8 T細胞からIFNγ分泌が有意に増加することを確認した(図12)。
【0107】
10-3.癌組織内CD8 T細胞のIFNγ分泌能の確認
前記実施例10-1の試験を終了した後、各群の腫瘍組織から腫瘍浸潤リンパ球(Tumor-infiltration lymphocytes;TILs)を分離した後、T細胞を刺激させるCD3/CD28(抗CD3抗体2μg/ml、抗CD28抗体2μg/ml)で1日間刺激後、表面マーカー染色とICSを行った後、FACSを通じてCD8 T細胞が分泌するIFNγの量を確認した。
【0108】
その結果、CJRS-10671と抗PD-1併用投与群及びCJRS-10672と抗PD-1併用投与群はいずれもT細胞の刺激時にCD8 T細胞が分泌するIFNγの量が増加した(図13)。
【0109】
10-4.免疫抑制細胞における変化の確認
前記実施例10-1の試験を終了した後、各群の脾臓細胞と腫瘍細胞で免疫抑制細胞として知られたMDSC(Myeloid-derived suppressor cells)の変化をCD11bGr-1マーカーで蛍光染色してFACSを通じて確認した。
【0110】
その結果、陰性対照群で脾臓細胞におけるMDSCは増加したが、CJRS-10671と抗PD-1併用投与群及びCJRS-10672と抗PD-1併用投与群でMDSCが減少した。また、腫瘍において同じマーカーで確認した時にも、陰性対照群と比較してCJRS-10671と抗PD-1併用投与群及びCJRS-10672と抗PD-1併用投与群において有意にMDSCが減少することを確認した(図14)。
【0111】
10-5.免疫細胞における変化の確認(profiling)
前記実施例10-1の試験を終了した後、各群の脾臓組織から脾臓細胞を分離した後、蛍光抗体を用いて表面マーカー染色を行って免疫細胞と免疫抑制細胞の変化を確認した。各免疫細胞の蛍光マーカーは、次のように用いた:M1(CD11bF4/80CD86)、M2(CD11bF4/80CD206)、DC(IA-IECD11bCD11c)、B細胞(CD3B220)、NK細胞(CD3NK1.1)、NKT細胞(CD3NK1.1)、Treg(CD4CD25Foxp3)。分析試料は、BD Lyric(フローサイトメトリー)及びFlowjoプログラムで分析し、結果は、%と#で確認した。
【0112】
その結果、CJRS-10671、CJRS-10672単独投与群または抗PD-1併用投与群の場合、M1、DC、NKT細胞の%及び#が他の細胞に比べて増加する様相を示した(図15、16)。
【0113】
実施例11.菌株によるマウス乳癌(4T1)モデルにおける抗癌効果の確認
乳癌動物モデルを構築するために、BALB/cマウスに4T1細胞株3x10cells/mouseを皮下注射した。腫瘍細胞注入後、腫瘍サイズが約30-50mmに到達時、マウスを次のような群に分けた:陰性対照群(腫瘍細胞注入後、無処理)、CJRS-10672試料を処理した群、免疫チェックポイント抑制剤である抗PD-1を処理した群(陽性対照群)及びCJRS-10672試料と抗PD-1を併用処理した群。CJRS-10672試料は、1匹当たり10CFUになるように100μlのPBSで希釈して10日間合計10回投与し、抗PD-1(10mg/kg,BioXCell)は、2日に1回ずつ腹腔投与した。1週間に3回腫瘍の大きさをキャリパーで測定し、投与終了翌日、マウスを犠牲にして腫瘍重量の測定及び血液と臓器を得て分析した。
【0114】
また、得られた脾臓由来細胞中、免疫抑制細胞であるMDSCの数を前記実施例10-4と同様の方法で確認した。
その結果、CJRS-10672は、陰性対照群または抗PD-1を処理した群に比べて乳癌の大きさを減少させることを確認し、特に、CJRS-10672と抗PD-1併用投与群において腫瘍の大きさや重量が少なくなった個体を確認した(図17)。
【0115】
また、CJRS-10672と抗PD-1併用投与群において脾臓細胞内における免疫抑制細胞であるMDSCの数が有意に減少した(図18)。
前記CJRS-10671、CJRS-10672菌株は、それぞれブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean CultureCenter of Microorganisms,KCCM)に2021年10月19日付で寄託して寄託番号KCCM13059P、KCCM13060Pの付与を受けた。
【0116】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】