(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ケイ素鋼用の低粘性の環境に優しい絶縁コーティング、ケイ素鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/00 20060101AFI20241031BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C23C22/00 B
C21D8/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529718
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 CN2022133232
(87)【国際公開番号】W WO2023088466
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】202111382667.9
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514216801
【氏名又は名称】バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】リ、デンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ハオ、ユンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、パン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ボ
(72)【発明者】
【氏名】リ、グオバオ
(72)【発明者】
【氏名】シェン、ケジン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジチェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、チュアンリ
【テーマコード(参考)】
4K026
4K033
【Fターム(参考)】
4K026AA03
4K026AA22
4K026BA03
4K026BB05
4K026CA16
4K026CA18
4K026CA23
4K026CA27
4K026CA39
4K026DA02
4K033AA01
4K033RA03
4K033TA03
(57)【要約】
本開示は、以下の成分を含む絶縁コーティングに関する:アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびマンガンの少なくとも1つの水溶性リン酸塩を含む水溶性リン酸塩A1を含む水溶性金属無機塩A;エポキシエマルジョンおよびその硬化剤、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレートおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体の少なくとも1つを含む水分散性有機エマルジョンB;構造強化添加剤C1および耐熱性強化添加剤C2の少なくとも1つを含む添加剤C、ここで該構造強化添加剤C1は無機ナノ粒子物質を含み、および該耐熱性強化添加剤C2は、ホウ酸およびモリブデン、タングステン、バナジウムまたはチタンの水溶性塩の少なくとも1つから選ばれる;補助剤D1および溶媒D2、ここで水分散性有機エマルジョンBに対する水溶性金属無機塩Aの固体含有量比は質量部で(35-85):(15-65)である。さらに、本開示は、さらにケイ素鋼板に関し、そしてその基材の表面には、本開示の絶縁コーティングによって形成されるコーティング層が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
水溶性リン酸塩A1を含む水溶性金属無機塩A、ここで該水溶性リン酸塩A1は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびマンガンの少なくとも1つの水溶性リン酸塩を含む;
エポキシエマルジョンおよびその硬化剤、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレートおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体の少なくとも1つを含む水分散性有機エマルジョンB;
構造強化添加剤C1および耐熱性強化添加剤C2の少なくとも1つを含む添加剤C、ここで該構造強化添加剤C1は無機ナノ粒子を含み、およびここで該耐熱性強化添加剤C2は、ホウ酸およびモリブデン、タングステン、バナジウムまたはチタンの水溶性塩の少なくとも1つから選ばれる;
補助剤D1;および
溶媒D2;
を含み、ここで水分散性有機エマルジョンBに対する水溶性金属無機塩Aの固体含有量比が質量部で(35-85):(15-65)である、絶縁コーティング。
【請求項2】
水分散性有機エマルジョンBに対する水溶性金属無機塩Aの固体含有量比が質量部で(40-75):(25-60)である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項3】
水溶性金属無機塩Aが水溶性ケイ酸塩A2をさらに含む、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項4】
水溶性ケイ酸塩A2が4未満の率を有する、請求項3の絶縁コーティング。
【請求項5】
水溶性ケイ酸塩A2がケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムを含む、請求項4の絶縁コーティング。
【請求項6】
質量百分率を単位として、水溶性リン酸塩A1が、水溶性金属無機塩Aの固体含有量の95%~100%を構成する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項7】
水溶性金属無機塩Aが少なくともアルミニウムの水溶性リン酸塩を含む、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項8】
質量百分率を単位として、アルミニウムの水溶性リン酸塩が、質量百分率を単位として、水溶性リン酸塩A1の固体含有量の70%~100%を構成する、請求項7の絶縁コーティング。
【請求項9】
水分散性有機エマルジョンBが、2 μm以下の平均粒子径D
50、5 μm以下の平均粒子径D
90、および10 μm以下の最大粒子径を有する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項10】
水分散性有機エマルジョンBが、1 μm以下の平均粒子径D
50および3 μm以下の平均粒子径D
90を有する、請求項9の絶縁コーティング。
【請求項11】
エポキシエマルジョンの硬化剤が、ジシアンジアミド、アミノ樹脂、イミダゾールおよびポリイソシアネートの少なくとも1つから選ばれる、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項12】
エポキシエマルジョンの硬化剤が、5 μm以下の平均粒子径D
50および10 μm以下の平均粒子径D
90を有する微粉化ジシアンジアミドである、請求項11の絶縁コーティング。
【請求項13】
水分散性有機エマルジョンBがエポキシエマルジョンおよびその硬化剤を含み、および質量百分率を単位として、エポキシエマルジョンが、エポキシエマルジョンおよびその硬化剤の合計固体含有量の90%~99%、好ましくは95%~98%を構成する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項14】
エポキシエマルジョンが、100 g/eq~2000 g/eq、好ましくは200 g/eq~1000 g/eqの範囲のエポキシ当量;200~4000、好ましくは300~3000の範囲の重量平均分子量Mw;および2~3の範囲の官能性度を有する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項15】
水分散性有機エマルジョンBがエチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、および質量百分率を単位として、エチレン-酢酸ビニル共重合体が、水分散性有機エマルジョンBの固体含有量の0~20%を構成する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項16】
エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が、10質量%~40質量%、好ましくは15質量%~30質量%の範囲である、請求項15の絶縁コーティング。
【請求項17】
ポリウレタンおよびポリアクリレートのそれぞれが、高分子量を有するアニオン性水分散性エマルジョンである、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項18】
水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量に対する添加剤Cの質量が、0.1%~10%、好ましくは0.5%~5%の範囲である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項19】
無機ナノ粒子の凝集体が、50 nm~800 nm、好ましくは80 nm~500 nmの範囲の平均粒子径を有する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項20】
無機ナノ粒子が、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZnO、ZrO
2、Fe
3O
4およびCaCO
3の少なくとも1つから選ばれる金属酸化物である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項21】
無機ナノ粒子が、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZnOまたはそれらの複合酸化物である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項22】
耐熱性強化添加剤C2が、ホウ酸、モリブデン酸アンモニウムおよびタングステン酸ナトリウムの少なくとも1つから選ばれる、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項23】
水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量に対する補助剤D1および溶媒D2の合計質量が、5%~35%の範囲である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項24】
補助剤D1が、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、増粘剤、沈降防止剤およびフラッシュ防錆剤の少なくとも1つから選ばれる、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項25】
溶媒D2が、エチレングリコール、グリセロール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの少なくとも2つを含む、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項26】
絶縁コーティングが、15%~40%の範囲の固体含有量を有する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項27】
基材を含み、ここで該基材が、請求項1~26のいずれか1項の絶縁コーティングから形成されるコーティングをその表面上に有する、ケイ素鋼板。
【請求項28】
コーティングが、0.3 μm~2 μm、好ましくは0.5 μm~1.5 μmの片面乾燥フィルム厚さを有する、請求項27のケイ素鋼板。
【請求項29】
以下の工程を含む、請求項27または28のケイ素鋼板の製造方法:請求項1~26のいずれか1項の絶縁コーティングをケイ素鋼板の基材の表面上に塗布する工程;および150℃~250℃の板焼き付け温度で絶縁コーティングを乾燥してコーティングを形成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、ケイ素鋼板およびその製造方法、特に絶縁コーティング、ケイ素鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
近年、中国は新エネルギー車両の開発を精力的に促進しているので、ますます自動車製造会社および研究者が、新エネルギー車両の分野において研究開発チームに参加している。新エネルギー車両の研究開発の間、新エネルギー車両は通常それらの高機能のモーターに対して高い性能要求を有することが見い出される。従来のモーターに対する性能要求と比較して、新エネルギー車両において用いられるモーターなどの高機能のモーターは、通常高い固定強度、高いコア効率および低い磁気振動ノイズの特性を有するモーターコアを必要とする。
【0003】
先行技術において、自己結合コーティングなどの特別なC-3型コーティングを有するケイ素鋼は、通常上記性能要求を満足する鉄コア(鉄心)を製造するために採用される。例えば、CN201810275197.8、CN201810885096.2、CN202010591227.3、CN200580037004.6、CN 200410017997.8、US 2007/0087201、WO 2004/070080、およびJPH 621274 Aなどの多くの中国および外国特許出願は、このようなC-3型自己結合コーティング製品の組成および適用を開示する。
【0004】
しかし、以下の理由のせいで、このようなC-3型自己結合コーティング製品は、現在あるユーザーまたは機械タイプのためにのみ使用され得、そして広範に適用することができない。
(1)自己結合コーティング製品は、高価格であり、その結果、使用コストが高くなる。
(2)自己結合コーティングの片面フィルム厚さは、通常≧3 μmである。フィルム厚さが厚くなるにつれて、または基材が薄くなるにつれて、鉄コアの積層係数が低くなり、これはモーター効率に影響を与える。
(3)自己結合コーティングの主成分は有機樹脂であり、これは750℃以上の応力緩和焼き鈍し温度および/または400℃以上の温度で行われる青焼きプロセスに耐えることができない。210℃の温度に長期間耐え得るコーティング製品さえ少ない。自己結合コーティング製品は、溶接性に劣っている。
(4)鉄コア上の自己結合コーティングは、最終硬化の間に熱間プレス下で端部ではみ出すという問題を有し得る。
【0005】
従って、上記C-3型自己結合コーティング製品の実際の適用効果は劣っている。
【0006】
今まで、C-5型リン酸塩-ベースの環境に優しい薄層コーティング(フィルム厚さ:0.5 μm~1.5 μm)製品が、新エネルギー車両に代表される高機能のモーターのための主流のコーティングとして依然として広範に使用されている。C-5型リン酸塩-ベースの環境に優しい薄層コーティング製品は、最も広範に使用されかつ最も熟慮して開発されており、そして製造コストが比較的低い。
【0007】
先行技術において、従来のC-5型リン酸塩-ベースの環境に優しい薄層コーティングを有するケイ素鋼板は、絶縁抵抗率(insulativity)(≧5 Ω.cm2/片、ASTM A717、1μmフィルム厚さ)、接着性(グレードA、GB/T 2522)、耐熱性(750℃以上の応力緩和焼き鈍し温度に対する耐性、IEC 60404-12)、溶接性(≧40 cm/分、SEP 1210)を含む優れた基本性能などの優れた性能を有する。
【0008】
しかし、モーターのより高い効率を追求するため、あるユーザーは、ケイ素鋼シートの表面上への接着剤のアレイ接着剤分配を行う専用装置を用い、それにより、2つの隣接するケイ素鋼シートを結合しそして組み合わせ得る。この処理は、ケイ素鋼板の表面上のコーティング材料と接着剤との適合性について高い結合強度の要求を上げるだけでなく、分配装置とプロセスとの適応性および大型大量生産の安定性への挑戦を表し、そして製造コストが高い。
【0009】
従って、先行技術において、C-5型コーティングまたはC-3型自己結合コーティングでコーティングされた従来のケイ素鋼板は、いくらかの欠点および短所を有し、そして当該業界におけるモーターコアに対するさらなる要求を満足することができない。
【0010】
従って、鉄コアの固定強度、磁気振動ノイズおよび効率に対するより高い要求を有する駆動モーターコア産業は、コストが低くかつ製造可能性が高く、そして環境に優しい機能性コーティングを有するケイ素鋼製品の必要性に迫られている。
【0011】
この観点から、当該分野において、ケイ素鋼板の基材上にコーティングされ得、そして基材上にコーティングを形成し得る、ケイ素鋼のための低粘性の新規の環境に優しい絶縁コーティングを得ることが望まれる。従来のC-5型コーティングの特性に加えて、このようなコーティングはまたC-3型自己結合コーティングと同様の積層結合効果を有し(しかし、通常7 N/mm2以上の結合強度、ISO 4587引張せん断法、を要求する、C-3型自己結合コーティングの高い結合強度を必ずしも達成しない)、そして熱処理に耐えることができないというC-3型自己結合コーティングの不利益を有しないことが望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
要約
本開示の1つの目的は、従来のC-5型コーティングの良好な絶縁、接着、耐熱性および溶接性などの基本性能を有するだけでなく、C-3型自己結合コーティングと同様の積層結合効果を有し、そして二次熱/プレス処理後に依然としていくらかの結合特性(例えば、結合強度≧2 N/mm2、ISO 4587引張せん断法)を有するコーティングを形成する絶縁コーティングを提供することである。従って、いくらかの結合力が鉄コアシート間に発生し得、その結果鉄コア構造は全体として強化され、そして鉄コアの低い固定強度、低い固有振動数および高い振動ノイズの問題は効果的に解決され得、そしてより高い効率およびより低い振動ノイズを有するモーターを得ることができる。
【0013】
上記目的を達成するため、第1の局面において、本開示は、以下の成分を含む(好ましくは以下の成分を有効成分として含む)絶縁コーティングを提供する:
水溶性リン酸塩A1を含む水溶性金属無機塩A、ここで該水溶性リン酸塩A1は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびマンガンの少なくとも1つの水溶性リン酸塩を含む;
エポキシエマルジョンおよびその硬化剤、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレートおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体の少なくとも1つを含む水分散性有機エマルジョンB;
構造強化添加剤C1および耐熱性強化添加剤C2の少なくとも1つを含む添加剤C、ここで該構造強化添加剤C1は無機ナノ粒子を含み、およびここで該耐熱性強化添加剤C2は、ホウ酸およびモリブデン、タングステン、バナジウムまたはチタンの水溶性塩の少なくとも1つから選ばれる;
補助剤D1;および
溶媒D2;
ここで水分散性有機エマルジョンBに対する水溶性金属無機塩Aの固体含有量比は質量部で(35-85):(15-65)である。
【0014】
本開示の絶縁コーティングによって形成されるコーティングは、ASTM A976またはDIN EN 10342標準に従ってC-5またはEC-5型コーティングに分類され得る。本開示の絶縁コーティングによって形成されるコーティングは、従来のC-5型コーティングの良好な絶縁、接着、耐熱性および溶接性などの基本性能を有するだけでなく、C-3型自己結合コーティングと同様の積層結合効果を有し(しかし、通常7 N/mm2以上の結合強度、ISO 4587引張せん断法、を要求する、C-3型自己結合コーティングの高い結合強度を必ずしも達成しない)、そして熱処理に耐えることができないというC-3型自己結合コーティングの不利益を有しない。
【0015】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水分散性有機エマルジョンBに対する水溶性金属無機塩Aの固体含有量比は、質量部で(40-75):(25-60)である。
【0016】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水溶性金属無機塩Aは水溶性ケイ酸塩A2をさらに含む。絶縁コーティングによって形成されるコーティングの硬度は、適切な量の水溶性ケイ酸塩A2を本開示の絶縁コーティングに加えることによってある程度まで改善され得る。しかし、水溶性ケイ酸塩A2は過剰に加えられるとは考えられない。なぜなら、過剰の水溶性ケイ酸塩A2が存在する場合、コーティング系の適合性および安定性が乏しいという問題が生じやすいからである。従って、本開示の絶縁コーティングにおいて、質量百分率を単位として、水溶性ケイ酸塩A2は、水溶性金属無機塩Aの固体含有量の0~5%を構成する。
【0017】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水溶性ケイ酸塩A2は4未満の率(modulus)を有する。
【0018】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水溶性ケイ酸塩A2はケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムを含む。
【0019】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、質量百分率を単位として、水溶性リン酸塩A1は、水溶性金属無機塩Aの固体含有量の95%~100%を構成し、そして水溶性ケイ酸塩A2は、水溶性金属無機塩Aの固体含有量の0~5%を構成する。
【0020】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水溶性金属無機塩Aは、少なくともアルミニウムの水溶性リン酸塩を含む。
【0021】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、質量百分率を単位として、アルミニウムの水溶性リン酸塩は、水溶性リン酸塩A1の固体含有量の70%~100%を構成する。
【0022】
好ましくは、亜鉛、マグネシウムおよびマンガンの水溶性リン酸塩は、それぞれリン酸二水素亜鉛、リン酸二水素マグネシウムおよびリン酸二水素マンガンであり、そしてそれらの合計含有量は、水溶性リン酸塩A1の0~30質量%である。
【0023】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水分散性有機エマルジョンBは、2 μm以下の平均粒子径D50、5 μm以下の平均粒子径D90、および10 μm以下の最大粒子径を有する。
【0024】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水分散性有機エマルジョンBは、1 μm以下の平均粒子径D50および3 μm以下の平均粒子径D90を有する。
【0025】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水分散性有機エマルジョンBは、エポキシエマルジョンおよびその硬化剤を含む。エポキシエマルジョンおよびその硬化剤は、本開示の絶縁コーティングによって形成されるコーティングにおける結合に主要な役割を果たし得、そしてそれと同時に、最終コーティングの機械的保護特性、絶縁抵抗率および耐熱性を改善する。
【0026】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、エポキシエマルジョンの硬化剤は、ジシアンジアミド、アミノ樹脂、イミダゾールおよびポリイソシアネートの少なくとも1つから選ばれる。
【0027】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、エポキシエマルジョンの硬化剤は、5 μm以下の平均粒子径D50および10 μm以下の平均粒子径D90を有する微粉化ジシアンジアミドである。
【0028】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水分散性有機エマルジョンBはエポキシエマルジョンおよびその硬化剤を含み、ここで質量百分率を単位として、エポキシエマルジョンは、エポキシエマルジョンおよびその硬化剤の合計の固体含有量の90%~99%を構成する。より好ましくは、質量百分率を単位として、エポキシエマルジョンは、エポキシエマルジョンおよびその硬化剤の合計の固体含有量の95%~98%を構成する。
【0029】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、エポキシエマルジョンは、100 g/eq~2000 g/eq、好ましくは200 g/eq~1000 g/eqの範囲のエポキシ当量;200~4000、好ましくは300~3000の範囲の重量平均分子量Mw;および2~3の範囲の官能性度(degree of functionality)を有する。
【0030】
コーティングの結合性能と耐熱性との間の良好なバランスを得るため、好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水分散性有機エマルジョンBはエチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、ここで質量百分率を単位として、エチレン-酢酸ビニル共重合体は、水分散性有機エマルジョンBの固体含有量の0~20%を構成する。
【0031】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量は、10質量%~40質量%、好ましくは15質量%~30質量%の範囲である。
【0032】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、ポリウレタンおよびポリアクリレートのそれぞれは、高分子量を有するアニオン性水分散性エマルジョンである。
【0033】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量に対する添加剤Cの質量は、0.1%~10%の範囲である。添加剤Cの含有量が上記範囲の下限よりも低い場合、添加剤Cの性能特徴を得ることができない;および添加剤Cの含有量が上記範囲の上限よりも高い場合、コーティングの乏しい安定性を容易に引き起こし、そしてコーティングの積層結合強度が低下する。より良好な効果を得るため、水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量に対する添加剤Cの質量は、より好ましくは0.5%~5%の範囲である。
【0034】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、無機ナノ粒子の凝集体は、50 nm~800 nm、より好ましくは80 nm~500 nmの範囲の平均粒子径を有する。
【0035】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、無機ナノ粒子は、SiO2、Al2O3、TiO2、ZnO、ZrO2、Fe3O4およびCaCO3の少なくとも1つから選ばれる金属酸化物である。
【0036】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、無機ナノ粒子は、SiO2、Al2O3、TiO2、ZnOまたはそれらの複合酸化物である。
【0037】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、耐熱性強化添加剤C2は、ホウ酸、モリブデン酸アンモニウムおよびタングステン酸ナトリウムの少なくとも1つから選ばれる。
【0038】
好ましくは、耐熱性強化添加剤C2は、ホウ酸(H3BO3)または可変原子価金属(モリブデン、タングステン、バナジウムおよびチタンなど)の水溶性塩である。
【0039】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量に対する補助剤D1および溶媒D2の合計質量は、5%~35%の範囲である。
【0040】
好ましくは、高速でロールコーティングされるコーティングの欠点に対するコーティングの制御能力を確保するため、本開示の絶縁コーティングにおいて、補助剤D1は、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、増粘剤、沈降防止剤およびフラッシュ防錆剤の少なくとも1つから選ばれる。
【0041】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングにおいて、溶媒D2は、エチレングリコール、グリセロール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの少なくとも2つを含む。
【0042】
好ましくは、本開示の絶縁コーティングの固体含有量は、15%~40%の範囲である。
【0043】
本開示の絶縁コーティングは、種々のモーターおよび発電機コアのケイ素鋼板の基材の表面上のコーティングに適しており、そして基材上にコーティングを形成し得、そして新エネルギー車両モーター、サーボモーターおよび小さくかつ特別の電気機械などの分野において使用される無方向性ケイ素鋼板をコーティングするのに特に適している。
【0044】
第2の局面において、本開示は基材を含むケイ素鋼板を提供し、ここで該基材は、本開示の絶縁コーティングから形成されるコーティングをその表面上に有する。
【0045】
好ましくは、本開示のケイ素鋼板において、コーティングは、0.3 μm~2 μm、好ましくは0.5 μm~1.5 μmの範囲の片面乾燥フィルム厚さを有する。
【0046】
本開示のケイ素鋼板は、本開示の絶縁コーティングでコーティングされ、その結果、コーティングの層がケイ素鋼板の基材上に形成される。本開示のケイ素鋼板は、駆動モーターの鉄コアを製造するために使用され得、そしてそのコーティングは、二次熱/プレス処理後に依然としていくらかの結合特性(例えば、結合強度は≧2 N/mm2である、ISO 4587引張せん断法)を有する。従って、鉄コアの低い固定強度、低い固有振動数および高い振動ノイズの問題は、効果的に解決され得る。本開示のケイ素鋼板は、新エネルギー車両モーター、サーボモーターおよび電気機械において広範に使用され得、そして良好な普及の見込みおよび適用価値を有する。
【0047】
第3の局面において、本開示は、以下の工程を含むケイ素鋼板の製造方法を提供する:本開示の絶縁コーティングをケイ素鋼板の基材の表面上に塗布する工程;および150℃~250℃の板焼き付け温度で絶縁コーティングを乾燥してコーティングを形成する工程。
【0048】
先行技術と比較して、本開示の絶縁コーティング、ケイ素鋼板およびその製造方法は、以下の利点および有益な効果を有する:
本開示の絶縁コーティングの成分は、最適化設計によって合理的に製造され、ここで水溶性リン酸塩およびフィルム形成エマルジョンは、基礎原料として使用され、そして低い毒性および低い害を有する溶媒が選ばれ、その結果、得られる絶縁コーティングは低揮発性有機化合物(VOC)排出を伴う無害の化学物質であり、そして完全に環境に優しい。
【0049】
本開示の絶縁コーティングは、種々のモーターおよび発電機コアのケイ素鋼板の基材の表面上にコーティングされ得、そして基材上にコーティングを形成し得、そして新エネルギー車両モーター、サーボモーターおよび小さくかつ特別の電気機械などの分野において使用される無方向性ケイ素鋼に特に適している。
【0050】
本開示の絶縁コーティングによって形成されるコーティングは、従来のC-5型コーティングの特性を有するだけでなく、C-3型自己結合コーティングと同様の積層結合効果を有し(しかし、通常7 N/mm2以上の結合強度、ISO 4587引張せん断法、を要求する、C-3型自己結合コーティングの高い結合強度を必ずしも達成しない)、そしてC-3型自己結合コーティングの乏しい耐熱性、乏しい溶接性、低い積層係数および熱間プレスのはみ出しの問題を完全に回避する。
【0051】
本開示のケイ素鋼板は、駆動モーターの鉄コアを製造するために使用され得、そしてそのコーティングは、二次熱/プレス処理後に依然としていくらかの結合特性(例えば、結合強度≧2 N/mm2、ISO 4587引張せん断法)を有する。従って、いくらかの結合力が鉄コアシート間に発生し得、その結果鉄コア構造は全体として強化され、そして鉄コアの低い固定強度、低い固有振動数および高い振動ノイズの問題は効果的に解決され得、そしてより高い効率およびより低い振動ノイズを有するモーターを得ることができる。
【0052】
本開示のケイ素鋼板の製造方法は、環境に優しくそして効率的である。
【0053】
さらに、本開示のコーティングを有するケイ素鋼板は積層され得、せん断および打ち抜きプロセス後に鉄コアを形成する。次いで、磁性鋼が接着剤を有する鉄コアスロットに挿入され得、そして二次加熱/硬化処理に供される。硬化後、磁性鋼の固定および鉄コアの組み立てが完了する。得られた鉄コアは、高い全体的な強度および顕著に改善された固有振動数を有する。
【0054】
上記二次硬化プロセスは、以下の通り行われ得る:鉄コアを1 MPa~5 MPaの圧力荷重および150℃~300℃の鉄コア温度で1分~4 h保持し、好ましくは鉄コアを1 MPa~5 MPaの圧力荷重および150℃~250℃の鉄コア温度で10分~2 h保持する。二次硬化プロセスの目的は接着剤を硬化させることであるが、実際、鉄コア全体もまた、二次加熱プロセス処理に供される。従って、このような熱プロセスを十分に利用して、積層コアのケイ素鋼コーティング上で熱間プレス加工を行い、それによって積層結合効果を生じさせ得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、ケイ素鋼板の製造の間、板焼き付け温度の関数として結合強度および硬化度のプロットを図式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
詳細な説明
特に定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術的または科学的用語は、本開示に属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0057】
本明細書中で使用される用語「および/または」は、1つ以上の記載した事項の任意のおよび全ての可能な組み合わせに言及し、そして含む。
【0058】
本明細書中、「固体含有量」は、本明細書中、エマルジョンまたはコーティング材料の合計量に対する、特定した条件下での乾燥後のエマルジョンまたはコーティング材料の残りの部分の質量百分率に言及する。固体含有量の測定標準はEN ISO 3251であり、そして測定条件は1g/2h/130℃(すなわち、1gのコーティング材料を130℃の温度で2時間保持する)である。
【0059】
本明細書中、「率(modulus)」は、モルの比に言及する。例えば:化学式R2O・n SiO2において、nはR2Oのモルに対するSiO2のモルの比であり、そしてR2O・n SiO2の率と呼ばれる。
【0060】
本明細書中、D50はサンプルの累積粒径分布百分率が50%に達した際に相当する粒子径を表し、そしてD90はサンプルの累積粒径分布百分率が90%に達した際に相当する粒子径を表す。「粒径分布」は、特定の機器および方法を用いることによって反射される粉末サンプル中の粒子の総量における異なる粒子径を有する粒子の百分率に言及する。レーザー回折法は、測定のために用いられ得る。測定標準は、ISO 13320粒径分析-レーザー回折法を参照し得る。用いられ得る測定装置は、例えば、Mastersizer-シリーズレーザー回折粒径分析器である。
【0061】
本明細書中、「エポキシ当量」は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂のグラム数に、g/eqの単位、すなわち[グラム/当量]で言及する。
【0062】
「官能性度」は、エポキシ樹脂分子中に含まれるエポキシ基の数として定義される。本明細書中、「官能性度」は、エポキシ化合物の平均官能性度に言及し、そして1分子中の基の平均数であり、すなわち、エポキシ硬化プロセスの間の重縮合反応に関与するエポキシ官能基の合計当量数である。それは、ゲル浸透クロマトグラフィー(ISO 13885-1標準に従う)および核磁気共鳴分光法によって決定され得る。本明細書中、「官能性度」は、エポキシ樹脂の重量平均分子量Mwとエポキシ当量との商として計算される。
【0063】
本明細書中、重量平均分子量Mwはゲルクロマトグラフィーによって測定される。ゲルクロマトグラフィーの参照標準はISO 13885-1(コーティングおよびワニスのためのバインダー-ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)-パート1:溶出液としてテトラヒドロフラン(THF))である。
【0064】
本明細書中、構造強化添加剤C1は、反応活性を有する無機ナノ粒子に言及し、そしてフィルム形成樹脂の官能基と物理的/化学的架橋点を形成してR-O-Rおよび/またはR-O-C結合(RはSi/Al/Ti/Zr/Znなどの金属元素を表す)を分子鎖に導入し、網目構造を形成し得る。上記特徴を満足する無機ナノ粒子は、気相法、気相堆積法または関連する加水分解および縮合法を用いることによって調製され得るが、それらはゾル型の生成物ではあり得ない。
【0065】
本開示の絶縁コーティングの好適な実施態様において、水溶性金属無機塩Aは少なくともアルミニウムの水溶性リン酸塩を含む。
【0066】
アルミニウムの水溶性リン酸塩は、リン酸(H3PO4)と水酸化アルミニウム(Al(OH)3)とを(2.3-3.5):1のモル比でそれぞれ反応器に加え、70℃~135℃の反応温度で30分~120分間反応を行い、次いで冷却し、濾過し、そして反応物を放出することによって調製され得る。いくつかの好適な実施態様において、アルミニウムの水溶性リン酸塩は、リン酸(H3PO4)と水酸化アルミニウム(Al(OH)3)とを(3.0-3.4):1のモル比でそれぞれ反応器に加え、70℃~135℃の反応温度で60分~90分間反応を行い、次いで冷却し、濾過し、そして反応物を放出することによって調製され得る。
【0067】
本開示の絶縁コーティングにおいて、水分散性有機エマルジョンBは、水溶性樹脂溶液よりもむしろ水分散性有機エマルジョンである。水分散性有機エマルジョンBは、フィルム形成のタイプに従って以下の2つのカテゴリーにさらに分類され得る:
I.その主要なフィルム形成機構が架橋および硬化である、エポキシエマルジョンおよびその硬化剤などの、水分散性有機エマルジョン。
II.その主要なフィルム形成機構が粒子凝集タイプのフィルム形成である、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョンなどの、水分散性有機エマルジョン。それらの中で、ポリウレタンおよびポリアクリレートは、好ましくは高分子量を有するアニオン性水分散性エマルジョンであり、その主要なフィルム形成様式は粒子凝集であり、そして補助的なフィルム形成様式はまた、加熱下での自己架橋および硬化であり得る。それは、硬度、耐引っ掻き性、耐熱性、耐化学性などのコーティングの構造的性能に影響を与え得る。
【0068】
本開示の絶縁コーティングの好適な実施態様において、エポキシエマルジョンおよびその硬化剤、ポリアクリレートエマルジョン、ポリエステル、ポリウレタンエマルジョン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体の少なくとも2つから形成される化合物有機フィルム形成エマルジョンは、水分散性有機エマルジョンBの成分として使用され、その結果、絶縁コーティングによって形成されるコーティングは良好な基本性能を有する。
【0069】
本開示の絶縁コーティングにおいて、溶媒D2は、主として有機樹脂および補助剤D1の水中の溶解性を増加させるために、およびそれと同時に溶液の表面張力を低下させて、焼き付けプロセスの間のコーティングにおける収縮腔、不在領域などの欠点の発生を防止するために使用され、そしてまた消泡効果を有する。
【0070】
本開示の絶縁コーティングの調製について、水溶性金属無機塩A、水分散性有機エマルジョンB、添加剤C、補助剤D1および溶媒D2が加えられそして混合され、次いで適切な量の純水が加えられそして攪拌によって均一に混合され得る。
【0071】
本開示の絶縁コーティングの好適な実施態様において、最終絶縁コーティングは、15%~40%の範囲の固体含有量、10秒~40秒の範囲のTu-4カップ粘度を有し、そしてそれゆえコーティングのフィルム厚さに対する良好な正確な制御および高速ロールコーティング操作性を達成することができる。
【0072】
本開示において、ケイ素鋼板の基材の組成に対する特定の限定はなく、そして先行技術において本開示の技術的効果を達成し得る任意の組成が採用され得る。
【0073】
本開示の絶縁コーティング、ケイ素鋼板およびその製造方法は、添付の図面および実施例を参照して以下にさらに説明および記載されるが、その説明および記載は本開示の技術的解決法に対する不適切な限定を構成しない。
【0074】
実施例1~6および比較例1~2
実施例1~6の絶縁コーティングは、以下の成分を含む:水溶性金属無機塩A、水分散性有機エマルジョンB、添加剤C、補助剤D1および溶媒D2。以下の表1~表8に示す成分および割合に従い、上記水溶性金属無機塩A、水分散性有機エマルジョンB、添加剤C、補助剤D1および溶媒D2を混合および加え、次いで適切な量の純水を加えそして攪拌によって均一に混合し、実施例1~6の絶縁コーティングを得た。
【0075】
特定の設計において、水溶性金属無機塩A、水分散性有機エマルジョンB、添加剤C、補助剤D1および溶媒D2に対する特定の要求は以下の(1)~(4)の通りであることに留意すべきである。
(1)実施例1~6で採用される水溶性金属無機塩Aは、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびマンガンの少なくとも1つの水溶性リン酸塩A1を含まなければならない。
(2)実施例1~6で採用される水分散性有機エマルジョンBは、エポキシエマルジョンおよびその硬化剤、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレートおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体の少なくとも1つを含む。
(3)実施例1~6で採用される添加剤Cは、構造強化添加剤C1および耐熱性強化添加剤C2を含む。構造強化添加剤C1は無機ナノ粒子を含み得る;および耐熱性強化添加剤C2は、ホウ酸およびモリブデン、タングステン、バナジウムまたはチタンの水溶性塩の少なくとも1つから選ばれる。
(4)実施例1~6の一部において、採用される補助剤D1は:消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、増粘剤、沈降防止剤およびフラッシュ防錆剤の少なくとも1つを含む;および採用される溶媒D2は:エチレングリコール、グリセロール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの少なくとも2つを含む。
【0076】
実施例1~6の一部において、水溶性金属無機塩Aが水溶性リン酸塩A1に加えて水溶性ケイ酸塩A2をさらに含むことに留意すべきである。水溶性ケイ酸塩A2は、ケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムを含む。水溶性ケイ酸塩A2は4未満の率を有する。
【0077】
表1は、実施例1~6の絶縁コーティングの具体的な成分を記載する。
【0078】
【0079】
注:上記表1中、Aerodisp(登録商標)W 640 ZX、HDK(登録商標)A3017、Aerosil(登録商標)300、HDK(登録商標)A3017、Aerosil(登録商標)380およびCAB-O-SIL EH-5は無機ナノ粒子であり、そしてSiO2、Al2O3、TiO2、ZnO、ZrO2、Fe3O4およびCaCO3の少なくとも1つを含む。補助剤D1において、加えたBYK-348は湿潤剤および消泡剤として用いられ得、BYK-346はレベリング剤および/または湿潤剤として用いられ得、BYK-025は消泡剤であり、Tego 245は湿潤剤、レベリング剤および消泡剤として用いられ得、ZT-709はフラッシュ防錆剤であり、そしてCellosize QP-100MHは沈降防止剤または増粘剤である。
【0080】
チタンおよびバナジウムの水溶性塩を耐熱性強化添加剤C2として用いる例は上記表1中の実施例1~6には示されていないが、本開示の別の実施態様において、チタンおよびバナジウムの水溶性塩を耐熱性強化添加剤C2として用い得ることは理解されるべきである。
【0081】
上記表1に示すように、アルミニウムを含む水溶性リン酸塩を実施例1~6で採用される水溶性金属無機塩Aに加えた。アルミニウムを含む水溶性リン酸塩を、リン酸(H3PO4)および水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を(2.3-3.5):1のモル比でそれぞれ反応器に加え、70℃~135℃の反応温度で30分~120分間反応を行い、次いで冷却し、濾過し、そして反応物を放出することによって調製した。
【0082】
さらに、上記表1から、実施例1~6で採用される水分散性有機エマルジョンB中のエポキシエマルジョンの硬化剤は微粉化ジシアンジアミドであることが分かり得る。
【0083】
本開示の別の実施態様において、エポキシエマルジョンの硬化剤はアミノ樹脂、イミダゾールまたはポリイソシアネートでもあり得ることが理解されるべきである。
【0084】
表2は、水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量(水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量は100%である。)に対する実施例1~6の絶縁コーティングの各成分の含有量を記載する。
【0085】
【0086】
実施例1~6で採用されるC1の無機ナノ粒子の凝集体の平均粒子径D50を以下の表3に示す。
【0087】
実施例1~6で採用される水分散性有機エマルジョンBの平均粒子径D50およびD90の具体的な数値を以下の表3に記載する。
【0088】
さらに、表1に示すように、実施例1~6において、水分散性有機エマルジョンB中のポリウレタンおよびポリアクリレートは、高分子量を有するアニオン性水分散性エマルジョンである。実施例1~6で採用される水分散性有機エマルジョンB中のエポキシエマルジョン硬化剤は微粉化ジシアンジアミドである。
【0089】
実施例1~6で加えた微粉化ジシアンジアミドの具体的な粒子径を以下の表3に記載する。
【0090】
【0091】
注:上記表3中、D50はサンプルの累積粒径分布百分率が50%に達した際に相当する粒子径を表し、そしてD90はサンプルの累積粒径分布百分率が90%に達した際に相当する粒子径を表す。D50およびD90は、粒径分布を試験するたびの点の値を表す。しかし、試験自体の誤差または変動のせいで、D50およびD90は、1つの数値よりもむしろ数値範囲として表3に記録する。
【0092】
実施例1~6における水分散性有機エマルジョンB中のエポキシエマルジョンのエポキシ当量、重量平均分子量Mwおよび官能性度を以下の表4に記載する。
【0093】
【0094】
実施例1~6において、エポキシエマルジョンおよびその硬化剤の固体含有量に対する水分散性有機エマルジョンB中のエポキシエマルジョンの固体含有量の質量百分率の割合を、以下の表5に記載する。
【0095】
実施例1~6において、水分散性有機エマルジョンBに対する水分散性有機エマルジョンB中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の割合、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの質量百分率の含有量を以下の表5に記載する。
【0096】
【0097】
実施例1~6の中で、実施例4の水分散性有機エマルジョンBのみがエチレン-酢酸ビニル共重合体を含むが、本開示に示されない、エチレン-酢酸ビニル共重合体を加えた多くの例があることに留意すべきである。
【0098】
表6は、実施例1~6の絶縁コーティングにおける、水溶性金属無機塩Aに対する水溶性リン酸塩A1の固体含有量比、水溶性リン酸塩A1に対するアルミニウム塩の固体含有量比(質量百分率で)、水分散性有機エマルジョンBに対する水溶性金属無機塩Aの固体含有量比(質量部で)、水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計固体含有量に対する添加剤Cの比、ならびに水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量に対する補助剤D1および溶媒D2の含有量を記載する。
【0099】
【0100】
上記実施例1~6における絶縁コーティングとは異なり、比較例1~2は市販の一般的なコーティングである。
【0101】
比較例1の比較コーティングは、市販のRemisol EB 5350S型コーティングであり、これは無方向性ケイ素鋼上のC-5型コーティングのための典型的な市販のコーティングである。
【0102】
比較例2の比較コーティングは、市販のRemisol EB 549型コーティングであり、これは無方向性ケイ素鋼上のC-3型自己結合コーティングのための典型的な市販のコーティングである。
【0103】
実施例1~6の絶縁コーティングおよび比較例1~2の比較コーティングのそれぞれを、ケイ素鋼板の基材の2つの表面上に塗布し、次いで乾燥し、そして150℃~250℃の板焼き付け温度で硬化し、異なるコーティングを有する完成ケイ素鋼板を得た。板の片面上のコーティングの乾燥フィルム厚さは、0.3 μm~2 μmの範囲である。
【0104】
実施例1~6および比較例1~2のケイ素鋼板基材は各化学元素の同じ質量百分率含有量を有することに留意すべきである。市販のB30A250グレードの無方向性ケイ素鋼を、実施例1~6および比較例1~2のケイ素鋼板基材として用いた。
【0105】
表7は、B30A250グレードの無方向性ケイ素鋼を実施例1~6の絶縁コーティングおよび比較例1~2の比較コーティングでコーティングすることによって得られる完成ケイ素鋼板のプロセスパラメーターを記載する。
【0106】
【0107】
得られた実施例および比較例コーティングを有する完成ケイ素鋼板をサンプリングしてサンプル鋼板を得、そして種々の試験をサンプル鋼板に対して行った。試験結果を以下の表8に記載する。
【0108】
表8は、実施例1~6および比較例1~2における完成ケイ素鋼板の関連する性能の試験結果を記載する。
【0109】
【0110】
注:評価記号によって表される意味は:◎は優秀を表す;
【0111】
【0112】
は良好を表す;〇は普通を表す;△は不良を表す;×容認不可を表す。
【0113】
表8に示すように、比較例1および比較例2と比較して、実施例1~6の完成ケイ素鋼板の性能は著しく良好である。表8を表1~表7と組み合わせて参照して、実施例1~6において、コーティング中の有機成分の含有量が高くなるほど、ケイ素鋼板上に形成されたコーティングの結合強度、耐腐食性および絶縁抵抗率がより良好になるが、耐焼き鈍し性および溶接性などの耐熱性がより悪くなることが分かる。その一方、架橋硬化フィルム形成エマルジョンおよび粒子凝集フィルム形成エマルジョンの2つ以上のタイプを含む化合物有機フィルム形成エマルジョンを含むコーティング材料によって形成されたコーティングは、より良好な冷間結合欠陥制御および耐引っ掻き性、ならびにより良好な全体的性能を有する。
【0114】
表8に示すように、実施例3~5のコーティングは、無方向性ケイ素鋼のためのC-5型コーティングの性能を有し、そしてまた、C-3型自己結合コーティングに特有の結合性能を有し(すなわち、両方の性能を有ることができ)、そして最良の実施態様である。
【0115】
比較例1は、無方向性ケイ素鋼のためのC-5型コーティングの典型的な市販のコーティングである。このコーティングは、一般的特性は良好であるが、接着特性を全く有しない。比較例2は、無方向性ケイ素鋼のためのC-3型自己結合コーティングの典型的な市販のコーティングである。この自己結合コーティングは、関連する特性は良好であるが、250℃以上の熱処理に全く耐えることができず、そして高いコーティングフィルム厚さを必要とし、高い製造コストをもたらす。
【0116】
さらに、実施例1~6の完成ケイ素鋼板を、コイル状にスリットし、打ち抜き、そして積層して鉄コアを形成した。組立の間、異なるタイプの磁性鋼を用意しておいた鉄コアスロットに挿入し、そして磁性鋼および鉄コアの側壁表面に接着剤を充填した。次いで、二次硬化および加熱処理を行った。硬化後、磁性鋼の固定および鉄コアの組立を完了した。
【0117】
二次硬化プロセスを以下の通り行った:150℃~300℃の鉄コア温度および1 MPa~5 MPaの圧力荷重で1分~4 h加熱する。
【0118】
自己結合コーティングを有する鋼の効果と同様に、得られたケイ素鋼板のコーティングの結合強度が高くなるほど、ケイ素鋼板によって調製された対応する鉄コアの全体の結合力がより強くなる。次に、鉄コアの固定強度、全体の振動数および効率を改善する、およびノイズを効果的に低減するのにより有益である。
【0119】
図1は、ケイ素鋼板の製造の間、板焼き付け温度の関数として結合強度および硬化度のプロットを図式で示す。
【0120】
図1に示すように、適切な板焼き鈍し温度(ピーク金属温度PMT)は150℃~250℃である。温度が高くなるほど、必要とされる焼き鈍し温度は短くなる。
【0121】
図1から、コーティング鋼板の性能に対する焼き鈍し硬化プロセス温度の影響は明らかであることが分かる。板焼き鈍し温度が低くなるほど、コーティングの硬化度は低くなり、積層および形成ならびに熱間プレス硬化後にコーティングした鋼板の結合強度は良好となるが、コーティングの耐引っ掻き性(保護特性)、溶接性、耐腐食性、接着性および冷間結合制御性は悪くなり、そしてコーティングした鋼コイルの連続製造の乏しい安定性の問題さえも生じる。
【0122】
本開示における技術的特徴の組み合わせ方法は、特許請求の範囲に記載された組み合わせ方法や、本開示の具体的な実施態様に記載された組み合わせ方法に限定されないことに留意すべきである。本開示に記録された全ての技術的特徴は、相互に矛盾しない限り、任意の方法で自由に組み合わせたり、統合したりすることができる。
【0123】
また、上記の実施態様は、本開示の特定の例を例示するものにすぎないことに留意されたい。本開示は上記実施態様に限定されるものではない。本開示によって開示された内容から当業者が容易に取得または導き出すことができる同様の変形または変化は、本開示の保護範囲内に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
水溶性リン酸塩A1を含む水溶性金属無機塩A、ここで該水溶性リン酸塩A1は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびマンガンの少なくとも1つの水溶性リン酸塩を含む;
エポキシエマルジョンおよびその硬化剤、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレートおよびエチレン-酢酸ビニル共重合体の少なくとも1つを含む水分散性有機エマルジョンB;
構造強化添加剤C1および耐熱性強化添加剤C2の少なくとも1つを含む添加剤C、ここで該構造強化添加剤C1は無機ナノ粒子を含み、およびここで該耐熱性強化添加剤C2は、ホウ酸およびモリブデン、タングステン、バナジウムまたはチタンの水溶性塩の少なくとも1つから選ばれる;
補助剤D1;および
溶媒D2;
を含み、ここで水分散性有機エマルジョンBに対する水溶性金属無機塩Aの固体含有量比が質量部で(35-85):(15-65)である、絶縁コーティング。
【請求項2】
水分散性有機エマルジョンBに対する水溶性金属無機塩Aの固体含有量比が質量部で(40-75):(25-60)である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項3】
水溶性金属無機塩Aが水溶性ケイ酸塩A2をさらに含む、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項4】
水溶性ケイ酸塩A2が4未満の率を有する、請求項3の絶縁コーティング。
【請求項5】
水溶性ケイ酸塩A2がケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムを含む、請求項4の絶縁コーティング。
【請求項6】
質量百分率を単位として、水溶性リン酸塩A1が、水溶性金属無機塩Aの固体含有量の95%~100%を構成する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項7】
水溶性金属無機塩Aが少なくともアルミニウムの水溶性リン酸塩を含む、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項8】
質量百分率を単位として、アルミニウムの水溶性リン酸塩が、質量百分率を単位として、水溶性リン酸塩A1の固体含有量の70%~100%を構成する、請求項7の絶縁コーティング。
【請求項9】
水分散性有機エマルジョンBが、2 μm以下の平均粒子径D
50、5 μm以下の平均粒子径D
90、および10 μm以下の最大粒子径を有する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項10】
水分散性有機エマルジョンBが、1 μm以下の平均粒子径D
50および3 μm以下の平均粒子径D
90を有する、請求項9の絶縁コーティング。
【請求項11】
エポキシエマルジョンの硬化剤が、ジシアンジアミド、アミノ樹脂、イミダゾールおよびポリイソシアネートの少なくとも1つから選ばれる、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項12】
エポキシエマルジョンの硬化剤が、5 μm以下の平均粒子径D
50および10 μm以下の平均粒子径D
90を有する微粉化ジシアンジアミドである、請求項11の絶縁コーティング。
【請求項13】
水分散性有機エマルジョンBがエポキシエマルジョンおよびその硬化剤を含み、および質量百分率を単位として、エポキシエマルジョンが、エポキシエマルジョンおよびその硬化剤の合計固体含有量の90%~99%、好ましくは95%~98%を構成する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項14】
エポキシエマルジョンが、100 g/eq~2000 g/eq、好ましくは200 g/eq~1000 g/eqの範囲のエポキシ当量;200~4000、好ましくは300~3000の範囲の重量平均分子量Mw;および2~3の範囲の官能性度を有する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項15】
水分散性有機エマルジョンBがエチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、および質量百分率を単位として、エチレン-酢酸ビニル共重合体が、水分散性有機エマルジョンBの固体含有量の0~20%を構成する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項16】
エチレン-酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が、10質量%~40質量%、好ましくは15質量%~30質量%の範囲である、請求項15の絶縁コーティング。
【請求項17】
ポリウレタンおよびポリアクリレートのそれぞれが、高分子量を有するアニオン性水分散性エマルジョンである、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項18】
水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量に対する添加剤Cの質量が、0.1%~10%、好ましくは0.5%~5%の範囲である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項19】
無機ナノ粒子の凝集体が、50 nm~800 nm、好ましくは80 nm~500 nmの範囲の平均粒子径を有する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項20】
無機ナノ粒子が、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZnO、ZrO
2、Fe
3O
4およびCaCO
3の少なくとも1つから選ばれる金属酸化物である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項21】
無機ナノ粒子が、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZnOまたはそれらの複合酸化物である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項22】
耐熱性強化添加剤C2が、ホウ酸、モリブデン酸アンモニウムおよびタングステン酸ナトリウムの少なくとも1つから選ばれる、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項23】
水溶性金属無機塩Aおよび水分散性有機エマルジョンBの合計質量に対する補助剤D1および溶媒D2の合計質量が、5%~35%の範囲である、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項24】
補助剤D1が、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、増粘剤、沈降防止剤およびフラッシュ防錆剤の少なくとも1つから選ばれる、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項25】
溶媒D2が、エチレングリコール、グリセロール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの少なくとも2つを含む、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項26】
絶縁コーティングが、15%~40%の範囲の固体含有量を有する、請求項1の絶縁コーティング。
【請求項27】
基材を含み、ここで該基材が、請求項1~26のいずれか1項の絶縁コーティングから形成されるコーティングをその表面上に有する、ケイ素鋼板。
【請求項28】
コーティングが、0.3 μm~2 μm、好ましくは0.5 μm~1.5 μmの片面乾燥フィルム厚さを有する、請求項27のケイ素鋼板。
【請求項29】
以下の工程を含む
、ケイ素鋼板の製造方法:請求項1~26のいずれか1項の絶縁コーティングをケイ素鋼板の基材の表面上に塗布する工程;および150℃~250℃の板焼き付け温度で絶縁コーティングを乾燥してコーティングを形成する工程。
【請求項30】
コーティングが、0.3 μm~2 μm、好ましくは0.5 μm~1.5 μmの片面乾燥フィルム厚さを有する、請求項29の方法。
【国際調査報告】