(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20241031BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/04 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529802
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 IB2022061270
(87)【国際公開番号】W WO2023089592
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】102021000029513
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベルナスコーニ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】マガグニン,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】カペリ,ローラ マリア テレサ
(72)【発明者】
【氏名】バックス,カルメン
【テーマコード(参考)】
2G046
2G060
【Fターム(参考)】
2G046AA18
2G046AA24
2G046BA01
2G046BB02
2G046EA02
2G046FE11
2G046FE28
2G046FE31
2G046FE39
2G046FE44
2G046FE48
2G060AA01
2G060AE19
2G060AF07
2G060AG03
2G060AG10
2G060BA01
2G060BB09
2G060JA01
2G060KA01
(57)【要約】
絶縁基板(2)と、絶縁基板(2)上に堆積され少なくとも2つの導電性電極(31)を画定する導電線(3)のパターンと、当該絶縁基板(2)上にかつ両方の導電性電極(31)の各々の少なくとも一部上に堆積された少なくとも1つの機能層(4)とを備え、当該機能層(4)は、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化スズおよびそれらの組み合わせから選択される半導体金属酸化物を備え、少なくとも1つの機能層(4)は、当該半導体金属酸化物の前駆体を備えるインクのインクジェット印刷により得られる、ガスセンサが記載される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを検出するように構成されたガスセンサ(1)であって、
絶縁基板(2)と;
前記絶縁基板(2)上に堆積され、少なくとも2つの導電性電極(31)を画定する導電線(3)のパターンと;
前記絶縁基板(2)上、かつ前記少なくとも2つの導電性電極(31)の各々の少なくとも一部の上に堆積された少なくとも1つの機能層(4)であって、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化スズ、およびそれらの組み合わせから選択された半導体金属酸化物を備える、機能層(4)と
を備え、
前記少なくとも1つの機能層(4)は、
ゾル-ゲルの前駆体またはナノ粒子分散形状の前記半導体金属酸化物の前駆体を備えるインクによるインクジェット印刷と、その後、
アニーリングによる、熱処理と
を備えるプロセスによって得られ、
前記プロセスは、
i)前記前駆体がナノ粒子分散である場合、前記アニーリングが以下の:
10℃/分の第1の温度上昇ランプを介して、室温から200℃まで加熱すると想定する、第1のステップと、
60分間、200℃の一定温度にする、第2のステップと、
炉内において75℃まで徐冷した後、大気中で室温まで戻す最終ステップと
を備えるか、または、
ii)前記前駆体がゾル-ゲルである場合、前記アニーリングが、以下の:
10℃/分の第1の温度上昇ランプを介して、室温から200℃まで加熱すると想定する、第1のステップと、
15分間、200℃の一定温度にする、中間ステップと、
10℃/分の第2の温度上昇ランプを介して、200℃から400℃まで加熱する、第2のステップと、
60分間、400℃の一定温度にする、さらなる中間ステップと、
炉内において75℃まで徐冷した後、大気中で室温まで戻す、最終ステップと
を備える、
ガスセンサ(1)。
【請求項2】
ガスセンサ(1)であって、
前記プロセスが以下の:
a)前記ゾル-ゲルの前駆体または前記ナノ粒子分散の前駆体を調製するステップと、
b)前記ナノ粒子分散または前記ゾル-ゲルの前駆体(複数可)を前記絶縁基板(2)上にかつ前記導電性電極(31)の少なくとも一部の上にインクジェット印刷によって堆積するステップであって、前記ステップは、得ようとする機能層(4)の数と同数回行われる、前記堆積するステップと、
c)前記ステップb)の前記材料をアニーリングするステップと
を備える、請求項1に記載のガスセンサ(1)。
【請求項3】
前記ステップa)において、
前記酸化亜鉛および/または二酸化スズの前記ゾル-ゲル前駆体は、C2-C5アルコールおよびC2-C4アルキレングリコールの混合物中において、10~30重量%、好ましくは20重量%の範囲量で亜鉛および/またはスズの塩溶液を含み、前記前駆体は、以下の:
a-1-1)前記塩を前記C2-C4-アルキレングリコールに溶かすステップと、
a-1-2)前記C2-C5アルコールを、a-1-1)で得られた前記溶液に加えるステップと、
a-1-3)前記ステップa-1-2)の前記混合物を30分間超音波分解するステップと、
a-1-4)前記ステップa-1-3)で形成された残留物を除去するステップと
を備えるプロセスによって調製される、請求項2に記載のガスセンサ(1)。
【請求項4】
前記塩溶液中の塩が、塩化亜鉛および/または塩化スズならびに/または酢酸亜鉛および/または酢酸スズであり、前記塩溶液中の溶媒が、エチレングリコールとエタノールの混合物である、請求項3に記載のガスセンサ(1)。
【請求項5】
前記ステップa)において、
A)前記溶液の総量に基づき30~70重量%の範囲の、好ましくは50重量%の濃度のC2-C5チタンアルコキシドと、
B)前記溶液の総量に基づき3~6重量%、好ましくは4.3重量%の乳酸と、
C)C2-C4アルコールと水の混合物とを備える溶液で構成される二酸化スズのゾル-ゲル前駆体が調製され、前記前駆体は、以下のステップ:
a-2-1)前記C2-C5チタンアルコキシドとC2-C4アルコールを混合して、第1の溶液を形成するステップと、
a-2-2)攪拌下前記溶液を水に注ぎ、5分間攪拌し、乳酸を加えるステップと、
a-2-3)24時間80℃で攪拌するステップと
を備えるプロセスによって得られる、請求項2に記載のガスセンサ(1)。
【請求項6】
前記アルコキシドがチタンイソプロポキシドおよびtert-ブトキシドであり、前記アルコールがイソプロパノールである、請求項5に記載のガスセンサ(1)。
【請求項7】
前記ゾル-ゲルの前駆体が、好ましくは鉄イオン、銅イオンまたはニッケルイオンから選択される遷移金属イオンを含み、前記遷移金属イオンは、塩化物、硝酸、酢酸、または硫酸から選択される塩形態であり、前記遷移金属イオンは、1~4g/lの範囲、好ましくは2g/lの濃度で前記ゾル-ゲルの前駆体に加えられる、請求項1~6のいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項8】
前記ステップa)において、前記ナノ粒子分散が、水と多価アルコールまたはそのC1-C4モノアルキルエーテルを備える混合物に、好ましくは1~100nmの範囲の直径を有する酸化亜鉛および/または二酸化スズおよび/または二酸化チタンナノ粒子を分散させることによって調製される、請求項2に記載のガスセンサ(1)。
【請求項9】
前記多価アルコールが、エチレングリコールであり、または、そのC1-C4モノアルキルエーテルが、エチレングリコールモノメチルエーテルである、請求項8に記載のガスセンサ(1)。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、前記分散の総量に基づき2~4%の範囲、好ましくは3重量%の量で含まれ、前記混合物は、前記分散の総量に基づき0.5~1.5%の範囲の、好ましくは1重量%の量の界面活性剤を備える、請求項8または請求項9に記載のガスセンサ(1)。
【請求項11】
前記界面活性剤が、アニオン性または中性有機界面活性剤であり、好ましくは、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールから選択される、請求項10に記載のガスセンサ(1)。
【請求項12】
前記半導体金属酸化物が、アニーリングの前記ステップc)の前に、貴金属または遷移金属ナノ粒子で官能化される、請求項1~11のいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項13】
前記ガス検出が、前記絶縁基板(2)上に堆積された貴金属でつくられ、かつ、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化スズ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される半導体酸化物を備える少なくとも機能層(4)がインクジェット印刷によりその上に堆積されている前記導電性電極(31)を通して行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のガスセンサ(1)を備える電子鼻。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを検出して、環境中に分散される化学種を特定するように構成されたガスセンサに関する。本発明は、特定の環境中の単一または複合臭を認識するための電子鼻を実現して、例えば、製油所などの産業環境における危険ガスの存在を検出、またはより一般には空気品質評価における汚染物質を検出するのに有用に用いられる。
【背景技術】
【0002】
様々な動作原理に基づくガスセンサが背景技術で知られている。中でも、例えば、電気化学、光学、触媒、または化学抵抗ガスセンサが知られている。後者は、特に、2つの電極間に架橋された少なくとも部分的に導電的な活性層の存在を想定する。そうした活性層は、特定の物質と接触するとその電気特性を変更し、抵抗の変化がもたらされ、それは一般に減少する。活性層を実現するのに用いられる材料は、例えば、ZnO、SnO2、TiO2およびCuOなどの半導体金属酸化物のようないくつかのカテゴリに属する。
【0003】
活性層は、スクリーン印刷、スパッタリングまたはドロップキャスティングなどの技術を用いてセラミック基板上に膜状に堆積される。
【0004】
特許文献CN103675028 Aは、絶縁基板上に堆積された活性層を備える、そうした原理に基づくガスセンサを記載する。絶縁基板は、インクジェット印刷されている。金、銀、白金などで作られている加熱電極および導電性電極が、そうした基板上に堆積される。活性物質は、カーボンナノチューブで官能化された酸化ニッケル膜で得られ、導電性電極を互いに電気的に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
既知の技術の問題
不利なことに、上記文献で用いられる半導体は、特に安定かつ精密なガスセンサを実現するのに適していない。実際、そうした物質から得られるセンサは、ガスが非常に少量ではあるがとにかく臨界量存在する場合、検出限界を示す。
【0007】
不利なことに、活性層を実現するのに一般に用いられる前述の堆積技術は、非常に複雑かつ高額である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この文脈において、本発明が基づく技術的課題は、既知の技術の前述の欠点を克服するガスセンサを提供することである。
【0009】
特に、所定のガスに対してより良い感度および良好な選択性を示すガスセンサを利用可能とすることが、本発明の目的である。
【0010】
本発明のさらなる目的は、その価値が経時的に信頼できる電子鼻を提供するために、経時的に安定であることを立証しその感度を維持するガスセンサを利用可能とすることである。
【0011】
本発明の目的はまた、簡単にかつ安価に生産されるガスセンサを利用可能とすることでもある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
技術的課題および指定された目的は、
-絶縁基板と;
-絶縁基板上に堆積され少なくとも2つの電極を画定する導電線のパターンとを備えるガスセンサによって本質的に達成される。
【0013】
絶縁基板上にかつ両方の電極の各々の少なくとも一部上に堆積された少なくとも1つの機能層は、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化スズおよびそれらの組み合わせから選択される半導体金属酸化物を備える。
【0014】
この/これらの層(複数可)は、ゾル-ゲルまたはナノ粒子分散形状の半導体金属酸化物前駆体を備えるインクをインクジェット印刷することと、その後の、アニーリングによる熱処理とを備えるプロセスによって得られる。
【0015】
特定の加熱動作条件に加えて、このアニール処置は、特に、両方のタイプに冷却方法が共通し、これは部分的に炉でそして部分的に大気中で行われる徐冷却であることを特徴とする。
【0016】
アニール処理は、以下のステップを含む。
i)前駆体がナノ粒子分散である場合、当該アニーリングは以下のステップ、
-10℃/分の第1の温度上昇ランプで、室温から200℃に加熱すると想定する第1のステップと、
-60分の期間中、200℃の一定温度での第2のステップと、
-炉で75℃まで徐冷し、その後、試料は、室温に達するまで大気中に置かれたままとする最終ステップとを含む。
ii)前駆体がゾル-ゲルである場合、当該アニーリングは以下のステップ、
-10℃/分の第1の温度上昇ランプで、室温から200℃に加熱すると想定する第1のステップと、
-200℃で、15分の期間中、一定温度における中間ステップと、
-10℃/分の第2の温度上昇ランプで200℃から400℃に加熱する第2のステップと、
-60分の期間中、400℃の一定温度におけるさらなる中間ステップと、
-炉で75℃に、その後、大気中で室温に徐冷する最終ステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による可能なガスセンサ構造を示す概略図である。
【
図2c】異なる濃度のn-ブタノール、ジメチルジスルフィドおよびトリメチルアミンそれぞれと接触させたときの、本発明によるセンサガスの実施形態における、所定の時間範囲で抵抗がどのように変化するかを示すグラフである。
【
図3c】増量するn-ブタノールにさらされたときの、本発明によるガスセンサの様々な実施形態におけるR/R
0パターンを示すグラフである。
【
図4】ゾル-ゲル前駆体を通して得られる、本発明によるガスセンサを対象としたアニール処理における最終冷却ステップでの経時的な温度パターンを示すグラフである。
【
図5】ナノ粒子分散を通して得られる、本発明によるガスセンサを対象としたアニール処理における第1の加熱ステップでのそして一定温度の第2のステップでの経時的な温度パターンを示すグラフである。
【
図6】ゾル-ゲル前駆体を通して得られる、本発明によるガスセンサを対象とするアニール処理における、第1の加熱ステップ、続いて一定温度におけるステップ、第2の加熱ステップ、および一定温度におけるさらなるステップでの経時的な温度パターンを示すグラフである。
【
図7】相対圧力P/P
0(P
0は759,339mmHgの飽和圧力を表す)の関数としてのセンサの脱着等温線を示すグラフである。小さな正方形マーカで識別される一番下の曲線は、機能層がインクジェット印刷により堆積されたZnOである本発明によるセンサにおける脱着等温線を表し、小さな円形マーカで識別される真ん中の曲線は、市販センサFigaro TGS2600における脱着等温線を表し、小さな正方形マーカで識別される一番上の曲線は、活性物質なしのアルミナ基板(Al
2O
3)における脱着等温線を表す。
【
図8b】それぞれ100,000xおよび400,000xの倍率で、走査電子顕微鏡法(SEM)を通して得られた、市販センサFigaro TGS2600の微細構造の図である。
【
図9b】それぞれ100,000xおよび500,000xの倍率で、走査電子顕微鏡法(SEM)を通して得られた、機能層がインクジェット印刷により堆積されたZnOである、本発明によるセンサの微細構造の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的において、「備える」および「含む」という言葉は、そうした言葉の後に具体的にリスト化されるものに加えてさらなる構成要素が存在することを除外するものではないが、「で構成され」および「から成る」という言葉は、そうした言葉の後に具体的にリスト化されたものに加えてさらなる構成要素が存在することを除外する。
【0019】
本発明の主題は、参照番号1で下文に指定されるガスセンサである。
【0020】
本発明によるガスセンサ1は、ガスを検出するように構成され、電子鼻を実現するのに特に有用である。したがって、以下に記載されるガスセンサを備える電子鼻も本発明の範囲に含まれる。
【0021】
本発明によるガスセンサ1は、例えば
図1に示されるように、既知のガスセンサ構造に相当する構造を有する。
【0022】
ガスセンサ1は、絶縁基板2を備える。絶縁基板2は、第1の表面21および対向する第2の表面22を備える。
【0023】
好ましくは、絶縁基板2は、無機材料により提供される。さらに好ましくは、絶縁基板2は、高温を維持可能な不活性物質により提供される。したがって、絶縁基板2は、セラミック材料でつくられることが好ましい。例えば、絶縁基板2は、アルミナでつくられる。
【0024】
ガスセンサ1は、絶縁基板2上に堆積された導電線3のパターンを備える。そうした導電線3は、特に、第1の表面21上に堆積される。
【0025】
好ましくは、導電線3は、対称的な配置を有する。
【0026】
特に、導電線3は、少なくとも2つの導電性電極31を画定する。そうした導電性電極31は、金、白金、パラジウムなどといった貴金属でつくられる。導電性電極31は、絶縁基板2のストリップにより互いから離間される。
【0027】
導電線3はまた、抵抗として機能し、熱場を提供するために構成された加熱電極32も画定する。したがって、ガスセンサ1は、そうした加熱電極32を備える。好ましくは、加熱電極32も、金、白金、パラジウムなどといった貴金属でつくられる。加熱電極32は、例えば、コイル配置を有する。
【0028】
導電性電極31は、加熱電極32によって少なくとも部分的に囲まれる。
【0029】
ガスセンサ1は、さらに、少なくとも1つの機能層4を備える。機能層4または活性層は、絶縁基板2上にかつ両方の導電性電極31の各々の少なくとも一部上に堆積される。特に、機能層4は、導電性電極31間に架橋され、両方の導電性電極31を電気的に接続するように配置される。より詳細には、導電性電極31は、機能層4が導電性電極31上に配置される場所において、機能層4と絶縁基板2の間に介在される。そうでない場合、機能層4は、絶縁基板2の第1の表面21に接触する。
【0030】
機能層4は、半導体である金属酸化物を備える。本発明によれば、半導体金属酸化物は、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化スズおよびそれらの組み合わせから選択される。特に、ガスセンサ1は、1つの機能層4または互いと重ねられる1つ以上の機能層4を備え得る。ガスセンサ1が1つの機能層4を備える場合、これは、モノマテリアルまたは混合層であり得る。ガスセンサ1が代わりに互いと重ねられる1つ以上の機能層4を備える場合、これらは、同じものであってもよくまたは互いと異なるものであってもよい。
【0031】
少なくとも1つの機能層4は、特に、半導体金属酸化物前駆体を備えるインクのインクジェット印刷により得られる。好ましくは、インクは、そうした前駆体で構成される。
【0032】
ガスセンサ1において、ガス検出は、半導体金属酸化物を備える機能層4がその上にインクジェット印刷により堆積されている、絶縁基板2上に堆積された貴金属でつくられた導電性電極31を用いて、電流が2つの導電性電極31間を流れたときの抵抗の変化を検出することによって行われる。
【0033】
より詳細には、本発明によれば、インクに含まれる前駆体は、ナノ粒子分散またはゾル-ゲル前駆体である。
【0034】
そうした前駆体は、互いに代替可能であり、したがって、本発明の第1の実施形態は、機能層4の金属酸化物/金属酸化物(複数)をゾル-ゲル前駆体から得ることを想定する。
【0035】
本発明の第2の実施形態は、代わりに、ナノ粒子分散から金属酸化物/金属酸化物(複数)を得ることを想定する。
【0036】
これらの2つの前駆体は、異なる利点を提供する。例えば、ゾル-ゲル前駆体の場合、機能層4の結晶性のかつ最終特性の制御がより良く、印刷適性が良好で、可能なドーピングがより簡単である。他方、ナノ粒子の場合、金属酸化物で堆積された層が、より高い純度で特徴付けられ、熱処理に必要とされる温度がより低い。
【0037】
好ましくは、本発明によるガスセンサを得るプロセスは、ゾル-ゲル前駆体またはナノ粒子分散を調製する第1の段階a)を備える。
【0038】
さらに好ましくは、プロセスはまた、ナノ粒子分散またはゾル-ゲル前駆体(複数可)を絶縁基板2上にかつ導電性電極31の少なくとも一部上にインクジェット印刷することによって堆積するステップb)も含む。そうした段階b)は、得ようとする機能層4の数の回数繰り返され得る。
【0039】
次いで、プロセスは、本発明によるアニール熱処理を想定する。
【0040】
第1の実施形態によれば、好ましくは、酸化亜鉛および/または二酸化スズのゾル-ゲル前駆体は、以下に記載されるステップを備えるプロセスにより、C2-C5アルコールとC2-C4アルキレングリコールの混合物において、10~30重量%の範囲の、好ましくは20%の量の亜鉛および/またはスズ塩溶液から調製される。
【0041】
第1のステップは、当該C2-C4アルキレングリコールに塩を溶かすことa-1-1)を備える。次いで、第2のステップは、a-1-1)で得られた溶液にC2-C5アルコールを加えることa-1-2)を想定する。
【0042】
下文で、プロセスは、a-1-2)からの混合物を、10~50分の範囲の期間中、好ましくは30分間、超音波分解するステップa-1-3)を想定する。
【0043】
次のステップは、段階a-1-3)において形成された残留物を除去することa-1-4)を含む。そうしたステップは、紙フィルタによるろ過によって行われることが好ましい。
【0044】
そうしたステップによって得られる最終溶液は、均一かつ透明である。そうした溶液は、均質な金属酸化物膜、すなわち機能層4を堆積させるために、インクジェット印刷用インクとして用いられ得るゾル-ゲル前駆体を表す。
【0045】
特に、塩は、亜鉛および/または塩化スズであることが好ましい。または、塩は、酢酸亜鉛および/または酢酸スズであることがさらに好ましい。これらの酢酸は、無水または水和物であり得る。
【0046】
本発明によれば、異なる塩化物または酢酸も一緒に混ぜられ、混合溶液を提供することが想定される。
【0047】
好ましくは、溶媒は、エチレングリコールとエタノールの混合物である。
【0048】
したがって、C2-C4-アルキレングリコールはエチレングリコールであり、C2-C5アルコールはエタノールである。
【0049】
さらに好ましくは、C2-C4-アルキレングリコールは、溶液の最終重量に基づき30重量%の量で存在する。さらに好ましくは、C2-C5アルコールは、溶液の最終重量に基づき50重量%の量で存在する。
【0050】
任意選択的に、ステップa-1-1)とステップa-1-2)の間に、混合物が高温で攪拌されるステップが想定される。好ましくは、そうしたステップは、20~40分の範囲、好ましくは30分の期間中、120~160℃の範囲の温度で、好ましくは140℃で混合物を攪拌することを想定する。
【0051】
さらに第1の実施形態によれば、二酸化チタンのゾル-ゲル前駆体は、溶液の総重量に基づき30~70重量%の範囲の濃度でA)C2-C5チタンアルコキシドを含む溶液から調製されるのが好ましい。好ましくは、チタンアルコキシドの濃度は、溶液の総重量に基づき50重量%である。
【0052】
任意選択的に、溶液は、溶液の総重量に基づき3~6重量%の乳酸B)も含む。好ましくは、溶液は、溶液の総重量に基づき4.3重量%の乳酸を備える。
【0053】
溶液は、さらに、C)C2-C4アルコールと水の混合物を備える。
【0054】
好ましくは、アルコキシドは、チタンイソプロポキシドとtert-ブトキシドである。さらに好ましくは、アルコールはイソプロパノールである。さらに好ましくは、水は脱塩水である。
【0055】
好ましくは、そうした二酸化チタン前駆体溶液は、以下のステップを含むプロセスで得られる。
【0056】
第1のステップによれば、第1の溶液を形成するために、C2-C5チタンアルコキシドをC2-C4アルコールと混合することa-2-1)が想定される。
【0057】
プロセスは、次いで、溶液を水に注ぎ攪拌し、数分間攪拌する第2のステップa-2-2)を備える。特に、水は、C2-C5チタンアルコキシドの重量の2~3倍の範囲の量で含まれる。
【0058】
好ましくは、水は、C2-C5チタンアルコキシドの重量の2.5倍の量存在する。そうしたステップは、溶液が、3~6分の範囲、好ましくは4分または5分の期間中、攪拌されることを想定する。特に、溶液は、透明になるまで、攪拌され続けられる。任意選択的に、乳酸が加えられる。
【0059】
第3のステップによれば、60~100℃の範囲の温度、好ましくは80℃で24時間攪拌することa-2-3)が想定される。
【0060】
または、二酸化チタンゾル-ゲル前駆体は、いわゆる「逆ミセル」手法を通して得ることが可能な溶液から調製される。そうした溶液は、加えてチタンアルコキシドを含むが、キシレンなどの異なる溶媒の使用を想定する。さらに、キシレンは、好ましくは、界面活性剤、好ましくは非イオン界面活性剤と混合される。例えば、非イオン界面活性剤は、トリオン-Xである。そうした溶液はまた脱イオン水を備える。
【0061】
好ましくは、そうした二酸化チタン前駆体溶液は、以下のステップを含むプロセスで得られる。
【0062】
第1のステップによれば、第1の溶液を形成するために、キシレンと界面活性剤を混合攪拌することa-3-1)が想定される。
【0063】
プロセスは、次いで、a-3-1)で形成された溶液に脱イオン水を加え数分攪拌する第2のステップa-3-2)を含む。
【0064】
a-3-2)で形成された溶液に、チタンアルコキシドが滴加されるステップa-3-3)が続く。
【0065】
さらに、ゾル-ゲル前駆体を想定する第1の実施形態によれば、ゾル-ゲル前駆体は、好ましくは鉄イオン、銅イオンまたはニッケルイオンから選択される遷移金属イオンを含む。遷移金属イオンは、好ましくは、塩化物、硝酸、酢酸、または硫酸から選択される塩形態で加えられる。具体的には、遷移金属イオンは、1~4g/lの範囲の濃度でゾル-ゲル前駆体に加えられる。好ましくは、溶液中の遷移金属イオンの濃度は2g/lである。そうした遷移金属イオンは、前駆体を堆積するステップb)の前に、溶液に加えられる。
【0066】
有利には、溶液をドープし、最終ドープ酸化物を得ることが可能であり、その電気的特徴は、ドープされていない同じ酸化物に対してより良好である。
【0067】
第2の実施形態によれば、好ましくは段階a)において、ナノ粒子分散は、酸化亜鉛および/または二酸化スズおよび/または二酸化チタンナノ粒子を、水と多価アルコールまたはそのC1-C4モノアルキルエーテルを含む混合物に分散させることによって調製される。
【0068】
好ましくは、ナノ粒子は、1~100nmの範囲の直径を有する。
【0069】
さらに好ましくは、多価アルコールはエチレングリコールである。または、そのC1-C4モノアルキルエーテルはトリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0070】
好ましくは、多価アルコールまたはそのC1-C4モノアルキルエーテルと水の混合物は、10~30重量%の、より好ましくは20%の多価アルコールまたはそのC1-C4モノアルキルエーテルを備える。
【0071】
好ましい実施形態によれば、ナノ粒子は、分散の総重量に基づき2~4重量%の範囲の量で含まれる。
【0072】
好ましくは、ナノ粒子は、分散の総重量に基づき3重量%の量で含まれる。
【0073】
混合物は、さらに、界面活性剤を備える。好ましくは、そうした界面活性剤は、分散の総重量に基づき0.5~1.5%の範囲の、好ましくは1重量%の量で存在する。
【0074】
さらに好ましくは、界面活性剤は、アニオン性または中性有機界面活性剤であり、好ましくは、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールから選択される。
【0075】
前駆体、すなわちインクを調製するステップa)に続いて、機能層4を表す均質な膜を実現するようにゾル-ゲル溶液またはナノ粒子分散をインクジェット印刷によって堆積するステップb)を行うためインクをインクジェット印刷セットアップにおいて装填する。
【0076】
印刷のために、圧電型またはサーマルプリントヘッドの使用を想定することができる。
【0077】
任意選択的に、印刷に先立って、絶縁基板2に、コロナ処理などの、その湿潤性を改良することを意図する処理を行うことができる。
【0078】
さらに好ましくは、インクジェット印刷により前駆体を堆積するステップb)の間、絶縁基板2は、40℃~80℃の範囲の、好ましくは60℃の温度で加熱され続けられ得る。
【0079】
上述の段階およびステップにしたがって調製された前駆体は、経時的に良好な安定性を示し、高い印刷品質につながる。
【0080】
金属酸化物膜の堆積後、方法は、熱処理を行うステップ、すなわち、本発明によるアニーリングの段階c)を含む。
【0081】
図5~6は、2つの異なる金属酸化物前駆体を用いる個々の加熱段階を表し、
図4は、ゾル-ゲル前駆体を通して得られる機能層4に対するアニーリングの段階c)における冷却曲線を表す。
【0082】
実施形態によれば、半導体金属酸化物は、貴金属または遷移金属ナノ粒子で、表面官能化されている。そうした表面官能化は、所与の基板へのガスセンサ1の選択性を改良するためにかつ/またはその安定性を改良するために行われる。
【0083】
したがって、方法は次いで、任意選択的に、アニーリングの処理c)の前かつ堆積ステップb)の後で、官能化する段階d)を備える。そうした段階は、機能層4がそれで官能化されることが意図される貴金属または遷移金属のナノ粒子を含む溶液にガスセンサ1を含浸させて行われる。または、官能化する段階d)は、絶縁基板2上に堆積された機能層4上に金属ナノ粒子を堆積させて行われる。そうしたナノ粒子は、スパッタリングまたは蒸発などの様々な方法によって堆積され得る。
【0084】
本発明によって実現されたガスセンサ1は、低いガス濃度でも良好な感度を示す。
図2a~2cは、機能層4がn-ブタノール、ジメチルジスルフィド、およびトリメチルアミンなどのガスそれぞれと接触させられる、本発明によるガスセンサ1で、様々なガス濃度において所定の時間範囲で抵抗がどのように変化するかを示す。この具体的な場合において、機能層4は、下文に記載される実施例7によるゾル-ゲル前駆体を通して得られる3つのTiO
2層を有する。
【0085】
実用例
(実施例1)
活性層がZnOであるガスセンサが、120mlのエチレングリコールに溶かされた0.4モルの酢酸亜鉛二水和物からのゾル-ゲル前駆体から得られた。そうした混合物は、140℃で30分間攪拌された。その後、混合物は室温で冷却され、冷却が完了すると、280mlのエタノールが加えられた。次いで、溶液は、30分間超音波分解され、紙フィルタでろ過された。400mlの溶液、すなわち前駆体インクの溶液が全体で得られた。そうした前駆体が、Dimatix materials printer DMP-2850(Fujifilmによる)の10plカートリッジに充填された。
【0086】
プリンタは、特に、加熱され得る、基板用の支持体を備える。そうした支持体は、その上に基板が配置される前に、60℃に達するまで加熱された。基板もまた、4分間、前もってコロナ処理された。用いられる基板は、2つの白金電極を含む白金導電線を備えるアルミナで作られる。
【0087】
前駆体は、活性層を形成するために、基板の表面上に0.5mmx0.7mmで堆積された。この場合、単一の金属酸化物層が形成された。
【0088】
印刷後、炉における熱処理が以下:200℃に達するまでの10℃/分での第1の加熱ランプ、15分間一定温度200℃でのステップ、400℃に達するまでの10℃/分での第2の加熱ランプ、60分間一定温度400℃でのさらなるステップ、ならびに75℃に達するまで炉内での徐冷および室温に達するまで大気中でのそれに続く冷却、のように行われた。
【0089】
実施例1の変形:上記の手順であるが、3つまたは6つの金属酸化物層の堆積を含む。
【0090】
(実施例2)
溶液調製に対して実施例1と同様。2g/lの塩化銅二水和物が最終溶液に加えられ、前駆体インクを得た。
【0091】
印刷、基板および熱処理は、実施例1と同様である。
【0092】
(実施例3)
溶液は、実施例2と同様に調製された。印刷および基板は、実施例1と同様である。堆積されている機能層の数は6である。堆積後、それによって実現された活性部分は、エタノール中の0.05M PdCl2溶液に浸された。熱処理が、このステップ後、実施例1に記載されたのと同様に行われた。
【0093】
(実施例4)
活性層がSnO2であるガスセンサが、120mlのエチレングリコールに溶かされた90.25g(すなわち、0.4モル)の酢酸スズ(II)二水和物からのゾル-ゲル前駆体から得られた。そうした混合物は、140℃で30分間攪拌された。その後、混合物は室温で冷却され、冷却が完了すると、280mlのエタノールが加えられた。次いで、溶液は、30分間超音波分解され、紙フィルタでろ過された。400mlの溶液、すなわち前駆体インクの溶液が全体で得られた。そうした前駆体が、Dimatix materials printer DMP-2850(Fujifilmによる)の10plカートリッジに充填された。
【0094】
プリンタは、特に、加熱され得る、基板用の支持体を備える。
【0095】
そうした支持体は、その上に基板が配置される前、60℃に達するまで加熱された。
【0096】
基板もまた、4分間、前もってコロナ処理された。用いられる基板は、2つの白金電極を含む白金導電線を備えるアルミナで作られる。
【0097】
前駆体は、活性層を形成するために、基板の表面上に0.5mmx0.7mmで堆積された。
【0098】
印刷後、炉における熱処理が以下:200℃に達するまでの10℃/分での第1の加熱ランプ、15分間一定温度200℃でのステップ、400℃に達するまでの10℃/分での第2の加熱ランプ、60分間一定温度400℃でのさらなるステップ、ならびに75℃に達するまで炉内での徐冷および室温に達するまで大気中でのそれに続く冷却、のように行われた。
【0099】
(実施例5)
活性層が混合層ZnO/SnO2であるガスセンサ。混合前駆体は、30mlのエチレングリコールに11.28g(すなわち、0.05モル)の塩化スズ二水和物で溶かされた3.66g(すなわち、0.017モル)の酢酸亜鉛二水和物からのゾル-ゲル前駆体から得られた。そうした混合物は、140℃で30分間攪拌された。その後、混合物は室温で冷却され、冷却が完了すると、70mlのエタノールが加えられた。次いで、溶液は、30分間超音波分解され、紙フィルタでろ過された。60mlの溶液、すなわち前駆体インクが全体で得られた。
【0100】
印刷および基板、加えて熱処理は、実施例1と同様である。
【0101】
(実施例6)
活性層が混合層ZnOであるガスセンサが、ナノ粒子懸濁前駆体から得られた。ナノ粒子懸濁液は、3重量%のZnOのナノ粒子および1重量%のポリアクリル酸ナトリウム塩が加えられた、水中の20重量%のエチレングリコールの混合物から調製された。懸濁液は、30分間攪拌され、その後、15分間超音波分解された。かくして得られた懸濁液は、印刷された。印刷および基板は、前の実施例のそれらと同様である。堆積されている活性物質層は1つか2つである。
【0102】
印刷後、炉における熱処理が以下:200℃に達するまでの10℃/分での第1の加熱ランプ、60分間一定温度200℃でのステップ、ならびに75℃に達するまで炉内での徐冷および室温に達するまで大気中でのそれに続く冷却、のように行われた。
【0103】
(実施例7)
活性層がTiO2であるガスセンサが、5.1mlのキシレンと2.5mlのトリトン-Xの混合物からのゾル-ゲル前駆体から攪拌で得られた。その後、その混合物に、60μlの水が加えられた。そうした混合物は、透明になるまで数分間攪拌された。その後、1mlのチタンイソプロポキシドが混合物に加えられ、黄色溶液を形成した。そうした溶液は、前駆体インクを表し、それはDimatix materials printer DMP-2850(Fujifilmによる)の10plカートリッジに充填された。
【0104】
基板および印刷は、前の実施例と同様であった。活性層の堆積後行われる熱処理は、実施例1~5と同様である。
【0105】
図3a~3cは、増量するn-ブタノールにさらされたときの、本発明によるガスセンサのいくつかの実施例に対するR/R
0パターンを表すグラフを示す。
【0106】
収集されたデータ
下文で、効率が経時的にどのように変化するかを表す表が、本発明によって実現されるいくつかのガスセンサに対してかつ2つの市販センサに対して、ドリフト時間とともに報告される。
【0107】
以下の表で言及されるセンサは全て酸化亜鉛ベースのものであることを指摘すべきである。
【0108】
2つの市販センサを作るために、金属Zn薄膜が、2mm平方のアルミナとシリコン基板上にRFマグネトロンスパッタリング(13.56MHz)を通して堆積された。Zn薄膜の厚さは600nmであった。Zn薄膜は、室温で、2つの電極系において陽極酸化された。対向電極として白金シートが用いられた。陽極酸化は、エタノールを含むシュウ酸二水和物(C2H2O4・2H2O)の2M濃縮電解液で行われた。印加電圧は、30Vであり、陽極酸化時間は20分であった。調製された試料は、シュウ酸亜鉛二水和物(ZnC2O4・2H2O)であった。次に、試料は、5時間、50%O2と50%Arの雰囲気中で、400℃において管状炉でアニール処理された1。
【0109】
本発明にしたがって実現されるガスセンサにおいて10か月後でも効率は不変であることに留意すべきである。反対に、市販センサは、数か月後に顕著な効率損失にさらされている。
【表1】
【表2】
【0110】
センサ特性
脱着等温線
図7のグラフに表された脱着等温線を比較すると、本発明によるセンサは市販センサ(小さな円形マーカの真ん中のグラフ)に対して顕著により大量(
図7を参照、小さな正方形マーカの一番下の曲線)の物質(大部分は水分)を脱着可能であることが明らかであり、かくして、本発明によるセンサのより高い空隙率を示す。アルミナ基板(本発明によるセンサのための基板として用いられる-小さな正方形マーカの一番上の図)に実行された測定は、制御テストとして行われた。
【0111】
顕微分析(SEM)
類似のそして完全に比較可能な倍率レベルによって特徴づけられる
図8a~8bと9a~9bを比較すると、本発明によるセンサは、SEM顕微鏡で解像されないくらいに小さなナノメートルサイズの細孔によって特徴づけられることが明らかである。そうしたナノメートルの空隙率はまた、分析されている試料において均一であることも明らかになる。反対に、市販センサは、顕著により大きく寸法的により非均一である孔によって特徴づけられるように見える。
【0112】
画像比較により、本発明によるセンサは、より高くかつ寸法的により細かい空隙率によって特徴づけられることが示される。この観察は完全に、脱着等温線(
図7)で得られる先に論じた結果を確認する。
【国際調査報告】