(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】アルコールフリーの抗微生物性ハンドサニタイザー
(51)【国際特許分類】
A01N 31/08 20060101AFI20241031BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241031BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241031BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241031BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20241031BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241031BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241031BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241031BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241031BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20241031BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241031BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20241031BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241031BHJP
A01N 37/36 20060101ALI20241031BHJP
A01N 63/50 20200101ALI20241031BHJP
A01N 37/02 20060101ALI20241031BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20241031BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A01N31/08
A61K47/12
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/02
A61K45/00
A61P31/18
A61P31/14
A61K9/107
A01P3/00
A01N37/36
A01N63/50
A01N37/02
A01N25/04 101
B01J13/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529813
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 IB2022060540
(87)【国際公開番号】W WO2023089433
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524188424
【氏名又は名称】カウンセル フォー サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヌクナ,ツシェポ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】カロンボ,ミシェル ロンジ
(72)【発明者】
【氏名】セッチェディ,カトレゴ ゼベディウス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4G065
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076DD26
4C076DD37
4C076DD40
4C076DD41
4C076DD47
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE24
4C084AA17
4C084ZB33
4C084ZB35
4G065AB05X
4G065AB11X
4G065BA07
4G065BA12
4G065BB06
4G065CA02
4G065DA02
4G065FA01
4H011AA01
4H011AA03
4H011AA04
4H011BA05
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB19
4H011BC19
4H011DA16
4H011DG05
4H011DH02
4H011DH04
4H011DH18
4H011DH20
(57)【要約】
本発明は、(i)シアノビリン-N(CV-N)、カンナビジオール(CBD)及びパルミチン酸(PA)から選択される1つ又は複数の活性化合物を含むポリマーベースのナノエマルションと、(ii)キサンタンガム、グリセロール、及びクエン酸などの防腐剤を含む水性ゲル様保湿組成物と、を含む、アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを製造するための方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法によって製造されるアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーと、抗微生物剤、特に抗ウイルス剤としてのハンドサニタイザーの使用とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを製造するためのプロセスであって、
(i)A.I. カンナビジオール(CBD)及びパルミチン酸(PA)から選択される少なくとも1つの疎水性活性化合物と、少なくとも1つのコポリマーとを極性非プロトン性溶媒中に共溶解させるステップ;
A.II. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
A.III. 少なくとも1つの親水性ポリマーを含む水性混合物中に前記有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
A.IV. 前記ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
を含むか、或いは
B.V. 少なくとも1つのコポリマーを極性非プロトン性溶媒中に溶解させるステップ;
B.VI. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
B.VII. 少なくとも1つの親水性ポリマーと、シアノビリン-N(CV-N)から選択される少なくとも1つの親水性活性化合物とを含む水性混合物中に前記有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
B.VIII. 前記ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
を含むか、或いは
C.V. CBD、PA又はその両方から選択される少なくとも1つの疎水性活性化合物と、少なくとも1つのコポリマーとを極性非プロトン性溶媒中に共溶解させるステップ;
C.VI. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
C.VII.少なくとも1つの親水性ポリマーと、CV-Nから選択される少なくとも1つの親水性活性化合物とを含む水性混合物中に前記有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
C.VIII. 前記ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
を含む、ポリマーベースのナノエマルションを製造するステップと、
(ii)D.I. グリセロール中に完全に分散されるまで、攪拌によりキサンタンガムを前記グリセロール中に混合させるステップ;及び
D.II. 水と、クエン酸を含む防腐剤とを添加し、攪拌して水性ゲル様保湿組成物を形成するステップ
を含む、前記水性ゲル様保湿組成物を製造するステップと、
(iii) ステップ(i)の前記安定化されたナノエマルションをステップ(ii)の前記水性ゲル様保湿組成物に混合させて、前記アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを形成するステップと
を含むプロセス。
【請求項2】
アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを製造するためのプロセスであって、
(i)A.I. カンナビジオール(CBD)及びパルミチン酸(PA)から選択される少なくとも1つの疎水性活性化合物と、少なくとも1つのコポリマーとを極性非プロトン性溶媒中に共溶解させるステップ;
A.II. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
A.III. 少なくとも1つの親水性ポリマーを含む水性混合物中に前記有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
A.IV. 前記ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
からなるか、或いは
B.V. 少なくとも1つのコポリマーを極性非プロトン性溶媒中に溶解させるステップ;
B.VI. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
B.VII. 少なくとも1つの親水性ポリマーと、シアノビリン-N(CV-N)から選択される少なくとも1つの親水性活性化合物とを含む水性混合物中に前記有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
B.VIII. 前記ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
からなるか、或いは
C.V. CBD及びPAから選択される少なくとも1つの疎水性活性化合物と、少なくとも1つのコポリマーとを極性非プロトン性溶媒中に共溶解させるステップ;
C.VI. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
C.VII. 少なくとも1つの親水性ポリマーと、CV-Nから選択される少なくとも1つの親水性活性化合物とを含む水性混合物中に前記有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
C.VIII. 前記ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
からなる、ポリマーベースのナノエマルションを製造するステップと、
(ii)D.I. グリセロール中に完全に分散されるまで、攪拌によりキサンタンガムを前記グリセロール中に混合させるステップ;及び
D.II. 水と、クエン酸から選択される防腐剤とを添加し、攪拌して水性ゲル様保湿組成物を形成するステップ
からなる、前記水性ゲル様保湿組成物を製造するステップと、
(iii) ステップ(i)の前記安定化されたナノエマルションをステップ(ii)の前記水性ゲル様保湿組成物に混合させて、前記アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを形成するステップと
からなるプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのコポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリε-カプロラクトンからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのコポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記極性非プロトン性溶媒は、エタノール、アセトン、並びにエタノール及びアセトンのブレンドのいずれか1つ又は複数から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記極性非プロトン性溶媒は、アセトン/エタノール(3:1)の共溶液である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記界面活性剤は、10よりも大きい親水性・親油性バランス(HLB)値を有する任意の界面活性剤から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記界面活性剤は、ポリソルベート80である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリエチレングリコール(PEG)のいずれか1つ又は複数からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの親水性ポリマーは、加水分解PVAである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記リン酸緩衝液は、0℃で約7.2~約7.6(この範囲内の任意の可能な部分範囲又はpHを含む)のpHを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスに従って製造されたアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザー。
【請求項13】
(a)CV-N、CBD又はPA;
(b)CV-N及びCBDの両方、又はCBD及びPAの両方、又はCV-N及びPAの両方;及び
(c)CV-N、CBD及びPAの3つ全て
のいずれか1つから選択される活性化合物を含有する、請求項12に記載のハンドサニタイザー。
【請求項14】
抗菌剤、抗ウイルス剤又は抗真菌剤のいずれか1つ又は複数を含む抗微生物剤を使用するための、請求項12又は13に記載のハンドサニタイザー。
【請求項15】
前記ポリマーベースのナノエマルションは、
i. 極性非プロトン性溶媒、少なくとも1つのコポリマー及び界面活性剤で構成される内側ナノエマルションマトリックスと、
ii. 1つ又は複数の親水性ポリマー及び緩衝液を含む外側シェルと、
iii. 前記活性化合物の1つ又は複数と
を含み、前記活性化合物が疎水性である場合、前記活性化合物は前記内側ナノエマルションマトリックス内に含まれ、前記活性化合物が親水性である場合、前記活性化合物は前記外側シェル内に含まれる、請求項12~14のいずれか一項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項16】
前記ポリマーベースのナノエマルションは、
A.a) 極性非プロトン性溶媒、少なくとも1つのコポリマー、界面活性剤、並びにCBD及びPAから選択されるいずれか1つ又は複数の活性化合物からなる内側ナノエマルションマトリックスと、
A.b) 1つ又は複数の親水性ポリマー及び緩衝液からなる外側シェルと
からなるか、或いは
B.c) 極性非プロトン性溶媒、少なくとも1つのコポリマー、及び界面活性剤からなる内側ナノエマルションマトリックスと、
B.a) 1つ又は複数の親水性ポリマー、緩衝液、及びCV-Nから選択される活性化合物からなる外側シェルと
からなるか、或いは
C.a) 極性非プロトン性溶媒、少なくとも1つのコポリマー、界面活性剤、並びにCBD及びPAから選択されるいずれか1つ又は複数の活性化合物からなる内側ナノエマルションマトリックスと、
C.b) 1つ又は複数の親水性ポリマー、緩衝液、及びCV-Nから選択される活性化合物からなる外側シェルと
からなる、請求項12~14のいずれか一項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項17】
前記親水性ポリマーの水性溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリエチレングリコール(PEG)のいずれか1つ又は複数から選択される、請求項12~16のいずれか一項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項18】
前記親水性ポリマーは、加水分解PVAである、請求項17に記載のハンドサニタイザー。
【請求項19】
前記少なくとも1つのコポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリε-カプロラクトンからなる群から選択される、請求項12~18のいずれか一項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項20】
前記コポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)である、請求項19に記載のハンドサニタイザー。
【請求項21】
前記極性非プロトン性溶媒は、エタノール、アセトン及びこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項12~20のいずれか一項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項22】
前記極性非プロトン性溶媒は、アセトン/エタノール(3:1)の共溶液である、請求項21に記載のハンドサニタイザー。
【請求項23】
前記界面活性剤は、10よりも大きい親水性・親油性バランス(HLB)値を有し、ポリソルベート80が含まれる、請求項12~22のいずれか一項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項24】
前記緩衝液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)である、請求項12~23のいずれか一項に記載のハンドサニタイザー。
【請求項25】
請求項12~24のいずれか一項に記載のアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを用いて、手指及び任意選択的に表面を衛生化するための方法。
【請求項26】
請求項12~24のいずれか一項に記載のアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーの使用により、細菌、ウイルス及び真菌を含む微生物を抑制するための方法。
【請求項27】
前記微生物は、HIV-1、又はSARS-CoV-2若しくはMERS-CoVを含むコロナウイルスのいずれか1つ又は複数を含むウイルスである、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
手指を衛生化する方法、及び/又は細菌、ウイルス及び真菌を含む微生物を抑制する方法における、請求項12~24のいずれか一項に記載のアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーの使用。
【請求項29】
前記微生物は、HIV-1、又はSARS-CoV-2若しくはMERS-CoVを含むコロナウイルスのいずれか1つ又は複数を含むウイルスである、請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、(i)シアノビリン-N(CV-N)、カンナビジオール(CBD)及びパルミチン酸(PA)から選択される1つ又は複数の活性化合物を含むポリマーベースのナノエマルションと、(ii)キサンタンガム、グリセロール、及びクエン酸などの防腐剤を含む水性ゲル様保湿組成物と、を含む、アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを製造するための方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法によって製造されるアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーと、抗微生物剤、特に抗ウイルス剤としてのハンドサニタイザーの使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)により引き起こされる感染力の高い致死性の呼吸器疾患である前例のないコロナウイルス感染症-2019(COVID-19)の世界的規模のパンデミックによって、人類は苦しみ続けている。ウイルスは、感染者の体液との直接接触によって、そして主に咳及びくしゃみからのエアロゾル(媒介物)を介して、ヒトからヒトに伝染する。最近の研究では、ウイルスは、種々の表面において最長9日間生存可能であり、外部感染性であり続ける可能性があることがさらに示されている(Jing et al., 2020)。疾患の蔓延を抑えるためにはフェースマスクの着用及び個人の良好な手指衛生の実施が最も重要であり、世界保健機関(WHO)は、これらの両方の緩和を推奨している。また、アルコール系ハンドサニタイザー(ABHS)は活性が急速であり、ウイルスを含む広範囲の抗微生物活性を有するので、WHOはこれらの使用を強く推奨している。
【0003】
しかしながら、最大活性のために必要とされるアルコール含有量が高いことに関連する不利な健康及び安全上の危険について、長い間懸念が提起されている。危険はアルコールの化学的特性に起因するものであり、アルコールは非常に引火性であり、室温(20~22℃)でも容易に蒸発する。主要な懸念は、それらがもたらす火災の危険、そして蒸気が空気と混ざり、ごく近くに発火源が存在する場合に、容易に爆発を引き起こし得ることである。これらの濃度は、換気の悪い環境下での眩暈、並びに目及び皮膚への刺激を引き起こす可能性もある。South African National Fire Protection Association(NFPA)の引火性及び可燃性液体に関する分類によると、アルコールは、第1種の引火性液体(最高クラス)である。潜在的な健康被害の中には、摂取されると生命にかかわる急性アルコール中毒があり、主に子供が影響を受ける。イソプロピルアルコールも使用されており、これは摂取には適していないので、飲料中のアルコール(エチルアルコール)が必ずしもサニタイザー中のアルコールであるとは限らないということは言及に値する。
【0004】
さらに、皮膚の最外層は、皮膚細菌叢(ミクロビオーム)と共に保護バリアを形成する種々の脂質からなる。アルコール系サニタイザーの過剰且つ頻繁な使用により、脂質バリアが溶解及び除去され、皮膚細菌叢も分解される可能性がある。結果として、皮膚は脆弱になり、他の病原体による二次感染を受けやすくなり、そして皮膚が乾燥した状態になる。乾燥及び脱水した皮膚は刺激につながることがあり、かゆみ、鱗屑、落屑又は剥離、ひび割れ、及びグレー/灰色の皮膚色を引き起こす可能性が高い。また、これらのバリアの除去は、痛みを伴う炎症(腫脹)も引き起こし、皮膚が赤くなる可能性があり、アトピー性皮膚炎(湿疹)にかかる可能性が高まる。
【0005】
これらの危険及びその有害な結果の可能性により、手指に安全であり、特にSARS-CoV-2などの容易に伝染可能なウイルスに対して効果的であるアルコールフリーのハンドサニタイザー(AFHS)などのより安全な非アルコール系ハンドサニタイザーの開発における研究が必要とされる。
【0006】
現在まで、個人の多様な衛生習慣に対してAFHS配合物を製造するための種々の方法が開発されている。これらの技術は、多数の医薬品及びパーソナルケア製品、例えば、薬用セッケン、ハンドサニタイザー、デオドラント、歯磨きペースト、エアーフレッシュナー、及び他の化粧品に適用するために、種々の増粘剤、防腐剤、及び香料と共に、活性抗微生物剤として塩化ベンザルコニウム(BAC)又はトリクロサン(TCS)を使用することを伴う。しかしながら、これらの抗微生物剤の安全性、特に現在新たな汚染物質と考えられているTCSの安全性に関する懸念も生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、抗微生物特性、特に抗ウイルス特性を有する効率的に送達可能な天然起源の化合物を含有し、且つ安全であるハンドサニタイザーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明の第1の態様によると、アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを製造するためのプロセスであって、
(i)A.I. カンナビジオール(CBD)及びパルミチン酸(PA)から選択される少なくとも1つの疎水性活性化合物と、少なくとも1つのコポリマーとを極性非プロトン性溶媒中に共溶解(co-dissolving)させるステップ;
A.II. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
A.III. 少なくとも1つの親水性ポリマーを含む水性混合物中に有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
A.IV. ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
を含むか、或いは
B.I. 少なくとも1つのコポリマーを極性非プロトン性溶媒中に溶解させるステップ;
B.II. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
B.III. 少なくとも1つの親水性ポリマーと、シアノビリン-N(CV-N)から選択される少なくとも1つの親水性活性化合物とを含む水性混合物中に有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
B.IV. ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
を含むか、或いは、
C.I. CBD、PA又はその両方から選択される少なくとも1つの疎水性活性化合物と、少なくとも1つのコポリマーとを極性非プロトン性溶媒中に共溶解させるステップ;
C.II. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
C.III. 少なくとも1つの親水性ポリマーと、CV-Nから選択される少なくとも1つの親水性活性化合物とを含む水性混合物中に有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
C.IV. ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
を含む、ポリマーベースのナノエマルションを製造するステップと、
(ii)D.I. グリセロール中に完全に分散されるまで、攪拌によりキサンタンガムをグリセロール中に混合させるステップ;及び
D.II. 水と、クエン酸を含む防腐剤とを添加し、攪拌して水性ゲル様保湿組成物を形成するステップ
を含む、水性ゲル様保湿組成物を製造するステップと、
(iii) ステップ(i)の安定化されたナノエマルションをステップ(ii)の水性ゲル様保湿組成物に混合させて、アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを形成するステップと
を含むプロセスが提供される。
【0009】
本発明の1つの可能性のある実施形態では、アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを製造するためのプロセスは、
(i)A.I. カンナビジオール(CBD)及びパルミチン酸(PA)から選択される少なくとも1つの疎水性活性化合物と、少なくとも1つのコポリマーとを極性非プロトン性溶媒中に共溶解させるステップ;
A.II. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
A.III. 少なくとも1つの親水性ポリマーを含む水性混合物中に有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
A.IV. ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
からなるか、或いは
B.I. 少なくとも1つのコポリマーを極性非プロトン性溶媒中に溶解させるステップ;
B.II. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
B.III. 少なくとも1つの親水性ポリマーと、シアノビリン-N(CV-N)から選択される少なくとも1つの親水性活性化合物とを含む水性混合物中に有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
B.IV. ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
からなるか、或いは
C.I. CBD及びPAから選択される少なくとも1つの疎水性活性化合物と、少なくとも1つのコポリマーとを極性非プロトン性溶媒中に共溶解させるステップ;
C.II. 界面活性剤を添加して有機相を形成するステップ;
C.III. 少なくとも1つの親水性ポリマーと、CV-Nから選択される少なくとも1つの親水性活性化合物とを含む水性混合物中に有機相を分散させて、ナノエマルションを形成するステップ;及び
C.IV. ナノエマルションを攪拌により安定化させるステップ
からなる、ポリマーベースのナノエマルションを製造することと、
(ii)D.I. グリセロール中に完全に分散されるまで、攪拌によりキサンタンガムをグリセロール中に混合させるステップ;及び
D.II. 水と、クエン酸から選択される防腐剤とを添加し、攪拌して水性ゲル様保湿組成物を形成するステップ
からなる、水性ゲル様保湿組成物を製造することと、
(iii) ステップ(i)の安定化されたナノエマルションをステップ(ii)の水性ゲル様保湿組成物に混合させて、アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを形成することと
からなる。
【0010】
少なくとも1つのコポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)若しくはPLGA、又は代替的に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、若しくはポリε-カプロラクトンを含む、任意の同様の生体適合性及び生分解性ポリマーであり得る。好ましくは、コポリマーはPLGAである。
【0011】
極性非プロトン性溶媒は、エタノール又はアセトンのいずれかで構成されてもよいし、或いはエタノール及びアセトンのブレンドであってもよい。好ましくは、極性非プロトン性溶媒は、アセトン/エタノール(3:1)の共溶液(co-solution)である。
【0012】
界面活性剤は、10よりも大きい親水性・親油性バランス(HLB)値を有するあらゆる界面活性剤を含み得る。好ましくは、界面活性剤は、Tween 80(登録商標)としても知られているポリソルベート80である。
【0013】
少なくとも1つの親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリエチレングリコール(PEG)のいずれか1つ又は複数、例えば、PEG4000であり得る。好ましくは、親水性ポリマーは加水分解PVA(hydrolysed PVA)である。
【0014】
リン酸緩衝液(又はPBS)は、0℃において約7.2~約7.6、より好ましくは約7.4のpHを含み得る。
【0015】
本発明の一実施形態では、水性ゲル様保湿組成物は、キサンタンガム-0.0007kg:グリセロール-0.067L:クエン酸-0.005kg:水-1Lの混合物(各量の±5%の変動を含む)を含むか、又はからなることができる。
【0016】
本発明の一実施形態では、CV-Nで機能化されたポリマーベースのナノエマルションは、0.1~1mgのCV-N、5~25mgのPLGA、1~2mLのアセトン/エタノール(3:1)、0.1~0.25mLのポリソルベート80界面活性剤、2~4mLのPBS、及び6~8mLのポリビニルアルコール(1%w/v)の混合物(これらの範囲内の任意の可能な部分範囲又は量を含む)を含むか、又はからなることができる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、CBD及び/又はPAで機能化されたポリマーベースのナノエマルションは、0.5~2mgのCBD及び/又は0.1~1mgのPA、5~25mgのPLGA、1~2mLのアセトン/エタノール(3:1)、0.1~0.25mLのポリソルベート80界面活性剤、2~4mLのPBS、及び6~8mLのポリビニルアルコール(1%w/v)の混合物(これらの範囲内の任意の可能な部分範囲又は量を含む)を含むか、又はからなることができる。
【0018】
さらに、本発明の1つの特定の実施形態では、ポリマーベースのナノエマルションは、約1:99(すなわち、1~10:90~99)の比率で水性ゲル様保湿組成物と混合されて、アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを形成する。
【0019】
本発明の第2の態様によると、本発明の方法に従って製造されたアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーが提供される。
【0020】
例えば、ハンドサニタイザーは、(a)CV-N、CBD若しくはPA;(b)CV-N及びCBDの両方、若しくはCBD及びPAの両方、若しくはCV-N及びPAの両方、又は(c)CV-N、CBD及びPAの3つ全て、のいずれか1つから選択される活性化合物を含有し得る。
【0021】
ハンドサニタイザーは、抗菌剤、抗ウイルス剤又は抗真菌剤のいずれか1つ又は複数を含む抗微生物剤であり得る。
【0022】
ポリマーベースのナノエマルションは、
i. 極性非プロトン性溶媒、少なくとも1つのコポリマー及び界面活性剤で構成される内側ナノエマルションマトリックスと、
ii. 1つ又は複数の親水性ポリマー及び緩衝液を含む外側シェルと、
iii. 活性化合物の1つ又は複数と
を含むことができ、活性化合物が疎水性である場合、活性化合物は、内側ナノエマルションマトリックス内に含まれ、活性化合物が親水性である場合、活性化合物は、外側シェル内に含まれる。
【0023】
ポリマーベースのナノエマルションは、
A.a) 極性非プロトン性溶媒、少なくとも1つのコポリマー、界面活性剤、並びにCBD及びPAから選択されるいずれか1つ又は複数の活性化合物からなる内側ナノエマルションマトリックスと、
A.b) 1つ又は複数の親水性ポリマー及び緩衝液からなる外側シェルと
からなるか、或いは
B.a) 極性非プロトン性溶媒、少なくとも1つのコポリマー、及び界面活性剤からなる内側ナノエマルションマトリックスと、
B.b) 1つ又は複数の親水性ポリマー、緩衝液、及びCV-Nから選択される活性化合物からなる外側シェルと
からなるか、或いは
C.a) 極性非プロトン性溶媒、少なくとも1つのコポリマー、界面活性剤、並びにCBD及びPAから選択されるいずれか1つ又は複数の活性化合物からなる内側ナノエマルションマトリックスと、
C.b) 1つ又は複数の親水性ポリマー、緩衝液、及びCV-Nから選択される活性化合物からなる外側シェルと
からなることができる。
【0024】
外側シェルは、特に、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリエチレングリコール(PEG)のいずれか1つ又は複数、例えば、PEG4000などの親水性ポリマーの水性溶液を含むことができる。好ましくは、親水性ポリマーは加水分解PVAである。
【0025】
少なくとも1つのコポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)若しくはPLGA、又は代替的に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、若しくはポリε-カプロラクトンを含む、任意の同様の生体適合性及び生分解性ポリマーであり得る。好ましくは、コポリマーはPLGAである。
【0026】
極性非プロトン性溶媒は、エタノール又はアセトンのいずれかで構成されてもよいし、或いはエタノール及びアセトンのブレンドであってもよい。好ましくは、極性非プロトン性溶媒は、アセトン/エタノール(3:1)の共溶液である。
【0027】
界面活性剤は、10よりも大きい親水性・親油性バランス(HLB)値を有するあらゆる界面活性剤を含み得る。好ましくは、界面活性剤は、Tween 80(登録商標)としても知られているポリソルベート80である。
【0028】
通常、緩衝液は、リン酸緩衝食塩水(PBS)である。
【0029】
キサンタンガムは、グリセロール中に分散され得る。
【0030】
本発明のさらなる態様によると、本発明に従うアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを用いて、手指及び任意選択的に表面を衛生化するための方法が提供される。
【0031】
本発明のさらなる態様によると、本発明に従うアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを用いて、細菌、ウイルス及び真菌を含む微生物、特にウイルスを抑制するための方法が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様によると、手指を衛生化する方法、及び/又は細菌、ウイルス及び真菌を含む微生物、特にウイルスを抑制する方法における、本発明に従う抗微生物性保湿ハンドサニタイザーの使用が提供される。
【0033】
ウイルスは、HIV-1、又はSARS-CoV-2若しくはMERS-CoVを含むコロナウイルスのいずれか1つ又は複数であり得る。
【0034】
図面の簡単な説明
本発明は、添付図面を参照して、例としてこれからさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】活性化合物CV-N、CBD及びPAのいずれか1つ又は複数を組み込んだ代替のナノエマルション送達系の解決策のグラフィカル表示を示し、ナノエマルション送達系におけるそれらの組み込み部位が含まれる。
【
図2】対照ナノエマルション(すなわち、活性化合物の添加なし)の液滴サイズ及びサイズ分布を示す。
【
図3】水中におけるBSA(A)及びCV-Nナノエマルション(B)のサイズ及び分布を示す。
【
図4】CV-Nナノエマルションで処理されたBSA溶液を示す。
【
図5】CBDナノエマルションのサイズ分布を示す。
【
図6】SARS-CoV-2偽型ウイルスに対するCBDナノエマルションサニタイザーの抗ウイルス活性を示す。
【
図7】PAナノエマルションの液滴サイズ及びサイズ分布を示す。
【
図9】皮膚刺激性の比色計(chromameter)の紅斑結果を示す。
【
図11】ナノエマルションハンドサニタイザーの製造のための概念設計を示す。
【
図12】96ウェルプレートにおける細胞毒性アッセイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、(i)シアノビリン-N(CV-N)、カンナビジオール(CBD)及びパルミチン酸(PA)から選択される1つ又は複数の活性化合物を含むポリマーベースのナノエマルションと、(ii)キサンタンガム、グリセロール、及びクエン酸などの防腐剤を含む、水性ゲル様保湿組成物とを含む、アルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを製造するための方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法によって製造されるアルコールフリーの抗微生物性保湿ハンドサニタイザーと、抗微生物剤、特に抗ウイルス剤としてのハンドサニタイザーの使用とに関する。
【0037】
本発明の以下の説明は本発明を可能にする教示として提供され、本発明の原理を例証するものであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。本発明の有益な結果をなお達成しながら、描写及び記載される実施形態に変化がもたらされ得ることは理解されるであろう。さらに、本発明のいくつかの利益は、他の特徴を利用することなく本発明の特徴のいくつかを選択することによって達成され得ることが理解されるであろう。したがって、当業者は、本発明に対する修正及び適応が可能であり、特定の状況では望ましいこともあり、本発明の一部であることを認識するであろう。
【0038】
本出願人は、アルコール系ハンドサニタイザー(ABHS)の代替として、手指における保湿効果を有するポリマーベースの粘性ナノエマルション系に埋め込まれた安全で天然起源の抗微生物化合物を含む、新規のアルコールフリーのハンドサニタイザー技術を開発した。本技術の活性抗微生物化合物には、
i)広範囲の抗ウイルス活性を有する天然起源のレクチン(タンパク質)である、シアノビリン-N(CV-N)、
ii)大麻植物から抽出される多機能用途及び多数の健康上の利益を有する植物性カンナビノイド分子である、カンナビジオール(CBD)、並びに
iii)強力な抗微生物剤であることが知られている飽和脂肪酸である、パルミチン酸(PA)
のうちのいずれか1つ又は複数が含まれる。
【0039】
したがって、本発明の態様は、
a)CV-N、CBD、及びPAから選択される1つ又は複数の活性化合物を含有する送達系と、
b)防腐剤としてのクエン酸と共に、キサンタンガム及びグリセロールで構成される水性ゲル様保湿組成物と
を含む、アルコールフリーのナノエマルション系抗微生物性保湿ハンドサニタイザーを伴う。
【0040】
本発明のさらなる態様は、アルコールフリーのナノエマルション系抗微生物性保湿ハンドサニタイザーの製造のための製造プロセスに関する。
【0041】
本発明で使用される活性化合物のそれぞれは、ウイルス、病原体及び細菌に対する活性の速度、持続性、及び範囲に関して異なる特徴を示す。したがって、これらの特徴の組合せにより、本発明は、有毒な細菌、ウイルス及び他の病原体に対する改善された多機能の抗微生物活性のための独特の特性を備える。
【0042】
具体的には、活性化合物CV-N、CBD及びPAは、以下に記載されるようなその特徴のために、本発明に含めるために選択されている。
・ CV-N:HIV及びSARS-CoV-2の抑制を含む、エンベロープウイルスに対する広い抗ウイルス活性範囲を提供する。
・ CBD:耐性菌及び他の有害な病原体に対する追加の保護層を提供する。
・ PA:薬物耐性及び有害な病原体に対する皮膚の天然バリア機能を維持及び回復するために必要とされる活性サプリメントとしての役割を果たす。
【0043】
加えて、ポリマーベースのナノエマルション抗微生物剤の送達系と、天然ガムベースのゲル局所剤形とは、抗微生物効率のバランスを提供すると同時に、長期間の使用にわたって使用者の皮膚の状態を改善し、皮膚表面の「湿り度」が長引くことに関連する使用者の手指の不快感を回避するために乾燥時間を最小限にする。
【0044】
レクチンは、主に植物、いくつかの乳製品、及び卵において天然に産生されるタンパク質のクラスターである。その構造組成は炭水化物に富んでおり、細胞生物又は単細胞生物のいずれかにおける糖基に対して高い結合特異性を有し、凝集を引き起こす。これらの特性は、抗微生物活性のために望ましいものであり、Mitchell et al. (2007)は、エンベロープウイルスの糖タンパク質に対する糖親和性が同様であり、ウイルスの崩壊をもたらすことを示した。
【0045】
シアノビリン-N(CV-N)も、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のgp120/gp41融合糖タンパク質などのクラス1融合タンパク質を有するエンベロープウイルスに対してこれらの特性を有することが示されおり、HIVウイルスによる細胞感染を抑制する。CV-Nの広範囲の抗ウイルス活性は、SARS-CoV-2もクラス1融合タンパク質を有するエンベロープウイルスであるため、これによるウイルス感染も抑制する可能性が高い。
【0046】
カンナビジオール(CBD)は、身体に有益な種々の細胞機能を誘発及び調節するその能力によって、その多数の健康上の利益のために指数関数的に魅力が高まっている。最近の研究では、CBDは、グラム陽性細菌に対して強力な抗微生物活性を有することも示されている(Wassmann et al., 2020; Martinenghi et al., 2020)。CBDは、耐性菌に対するヘルパー化合物として、そして他の病原体に対する追加の保護層の役割を果たすように、本出願人によって本発明に含まれている。
【0047】
パルミチン酸(PA)は天然の飽和脂肪酸であり、多数の内因性及び外因性リン脂質の前駆体である。PAは、皮膚脂質バリアを形成するセラミドの前駆体であり、界面活性剤又は乳化剤としてパーソナルケア製品で広く使用されている。PAを含むいくつかの飽和脂肪酸は、広範囲のグラム陽性細菌及び一部の真菌に対する抗菌活性を有することが示されている(Nguyen et al., 2016)。
【0048】
キサンタンガムは、適用時に心地よく冷たい皮膚感触を有する水性ゲルを調製するための良好なゲル化剤として、大きな関心を集めている。キサンタンガムは、低濃度で高粘度の溶液を形成する能力があり、種々の温度及び広いpH範囲で安定であることが示されている。さらに、スキンケア製品中に存在する塩、金属カチオン、界面活性剤、又は生物活性化合物などの全ての成分と適合性である。このような優れた特性により、キサンタンガムは、親水性マトリックス配合物中の懸濁剤又は安定剤、増粘剤、乳化剤、フィルム形成剤、ゲル化剤及び放出制御剤として、経口及び局所配合物、化粧品及び食品において多数の用途を見出している(Abdulsalam et al. 2018、Pawan et al., 2004)。
【0049】
本出願人の技術は、現在のCOVID-19パンデミックを超えてはるかに大きい機会を提示する。安全で効果的なアルコールフリーのハンドサニタイザーを製造するための、迅速で複雑でなく、且つ費用対効果の高いプロセス方法論を提示する。広範囲の活性を有する天然起源の抗微生物活性物質の使用を採用し、ABHSに関連する安全上及び健康上の危険を全くもたらさない。本出願人の技術は、皮膚のミクロフローラと、表皮の皮膚脂質(すなわち、セラミド)及び皮脂腺の皮膚脂質(すなわち、トリグリセリド)のための過剰な前駆体脂質とを維持しながら、繰り返し使用するのに適した皮膚科学的に安全な保湿製品を提供する。さらに、特定恐怖症による個人、又は宗教的信念によるグループ/集団を問わず、反アルコール使用者にとっての代替手段である。
【0050】
以下の例示的な実施例は本発明を可能にする教示として提供され、本発明の原理を例証するものであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。本発明の有益な結果をなお達成しながら、描写及び記載される実施形態に変化がもたらされ得ることは理解されるであろう。さらに、本発明のいくつかの利益は、他の特徴を利用することなく本発明の特徴のいくつかを選択することによって達成され得ることが理解されるであろう。したがって、当業者は、本発明に対する修正及び適応が可能であり、特定の状況では望ましいこともあり、本発明の一部であることを認識するであろう。
【実施例】
【0051】
実施例
1.目標及び目的
本研究の主要な目的は、シアノビリン-N(CV-N)、カンナビジオール(CBD)及びパルミチン酸(PA)のいずれか1つ又は複数を活性化合物として組み込んだ安全で安定した水性送達系を開発することである。
図1は、活性化合物CV-N、CBD及びPAのいずれか1つ又は複数を組み込んだ代替のナノエマルション送達系の解決策のグラフィカル表示を示し、ナノエマルション送達系におけるそれらの組み込み部位が含まれる。例えば、ナノエマルション送達系は、CV-N、CBD、若しくはPAのみ、又はCV-N、CBD及びPAの全て、又はCV-N及びCBDのみ、CBD及びPAのみ、若しくはCV-N及びPAのみを含み得る。次に、安全で安価な潤滑ゲルベースのハンドサニタイザーを製造するために、これらのナノエマルション送達系にキサンタンガム及びグリセロールの粘度ビルダー(viscosity builder)溶液を注入した。
【0052】
1.1.具体的な目的
具体的な目的には、
・ CV-Nを組み込んだナノエマルションの合成
・ CBDを組み込んだナノエマルションの合成
・ PAを組み込んだナノエマルションの合成
・ キサンタンガムゲル溶液の合成
・ ナノエマルションサニタイザーの合成(ナノエマルションのゲル溶液への注入)
・ 物理化学的特徴付け及び安定性研究
・ インビトロでの偽型ウイルスに対するナノエマルションサニタイザーの抗ウイルス活性
・ インビトロの細胞毒性研究
・ 皮膚刺激性パッチテスト
が含まれる。
【0053】
2.材料及び方法
2.1.ナノエマルション合成のための材料
カンナビジオールはTautomer (Pty) Ltdにより供給され、REGENT Pharmaceuticals, UKから購入した。シアノビリン-NはCSIRのNextGen Healthクラスターにより供給され、パルミチン酸は、DB Fine Chemicals, South Africaから購入した。溶媒はSigmaから購入し、エタノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、ジクロロメタン(DCM)及びオレイン酸が含まれる。ポリビニルアルコール(PVA)(87~89加水分解/Mw=13000~23000)、ステアリン酸及びリン酸緩衝食塩水(PBS-pH7.4)試薬も、Sigma Aldrich, South Africaから入手した。
【0054】
2.2.物理化学的分析装置
Malvern ZetasizerナノシリーズZS(DLS)を使用して、流体力学的サイズ、サイズ分布及び安定性を決定した。LasecからのAcsen pHメーターを使用して、エマルションのpHをモニターし、Shimadzu SIL-20AXR/20ACRXR prominence高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)を定性分析に使用した(配合後及び保存期間中に活性物質の完全性を調べるため)。
【0055】
2.3.細胞培養材料
ヒト肺癌細胞A549は、Scholefield研究室(CSIR)から寄贈されたものであった。細胞は、Life Technologies, NY (USA)から入手したL-グルタミン及びピルビン酸ナトリウムを含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。培養培地に10%ウシ胎仔血清(FCS)を補充し、接着細胞を剥離するためにトリプシン-EDTA0.25%溶液を使用した。これらはいずれも、Thermo Fischer Scientific, Johannesburg (South Africa)から購入した。毒性を調査するためにMTT比色細胞増殖アッセイを使用し、これは、Sigma(Roche, Mannheim, Germany)から購入した。
【0056】
2.4.方法
2.4.1.CV-Nナノエマルションの合成
簡単に言うと、CV-Nで機能化されたナノエマルション系は、以下のように調製した:1mLのPBS(pH7.4)溶液中に0.1mgを溶解させることにより、CV-Nストック溶液を調製した。2mLのアセトン/エタノール(3:1)の共溶液中にPLGAを溶解させた後、10~20μl(2滴)のTween 80界面活性剤を添加することにより、有機相(内部相)を調製した。4.5mLのPBSの緩衝溶液(pH7.4)と、13.5mLの加水分解親水性ポリマーのポリビニルアルコール(1%w/vのPVA)とを混合することにより、極性相(連続相)を調製した。CV-Nストック溶液(100μL)を室温(±21℃)で攪拌(400rpm)しながら連続相に添加した。
【0057】
有機相を攪拌しながら連続相に添加することによってナノエマルションを合成し、自然沈殿反応によって、核形成により安定したナノエマルションの自己組織化が生じた。次に、ナノエマルションをドラフト内で2時間攪拌して、溶媒を蒸発させた。上記の正確な合成方法に従って、レクチンを添加しない対照ナノエマルションも調製した。
【0058】
2.4.2.CBDナノエマルションの合成
PLGA及びCBD(それぞれ、10mg)を2mLのアセトン/エタノール(3:1)の共溶液に共溶解させた後、10~20μl(2滴)のTween 80を添加することにより、有機相を調製した。4.5mLのPBS溶液(pH7.4)及び13.5mLのポリビニルアルコール(1%w/vのPVA)を混合することにより、極性相を調製した。ナノエマルションを形成するために、有機相を攪拌しながら連続相に添加した。自然沈殿によって、CBDをカプセル化する安定したナノエマルションが生じ、これをドラフト内で2時間攪拌して、溶媒を蒸発させた。
【0059】
2.4.3.PAナノエマルションの合成
10mgのPLGA及び1mgのPAを2mLのアセトン/エタノール(3:1)の共溶液中に溶解させた後、10~20μl(2滴)のTween 80を添加することにより、有機相を調製した。4.5mLのPBS pH7.4と、親水性ポリマーのポリビニルアルコール(13.5mL)とを混合することにより、連続極性相を調製した。ナノエマルションを形成するために、有機相を攪拌しながら連続相に添加し、自然沈殿によって、PLGA/PAナノ液滴の自己組織化が生じた。次に、この系をドラフト内で2時間攪拌して、溶媒を蒸発させた。
【0060】
2.4.4.キサンタンガム/グリセロール溶液の合成
種々のガムは吸湿性であり、水と直接接触すると水和する傾向があるため、水が浸透できない乾燥粉末のガムボール又は塊の形成につながることが多い。これを克服するために、グリセロールを使用してガム粉末を分散させ、ゲル形成前の水和を最小限にした。したがって、典型的な手順では、0.025gから0.3gまでの様々な量のキサンタンガムを、10mLのグリセロールを含有する250mLの三角フラスコ内に正確に秤量した。混合物を磁気的にゆっくり攪拌して、キサンタンガムの完全な分散を可能にした。このフラスコに、60℃の150mLの脱イオン水を500rpmで激しく攪拌しながら添加して、ゲル形成中の気泡及びガムボールを除去した。ゲルを30分間激しく攪拌し続け、ゲルの最終体積は、155~160mLの範囲であった。調製したゲルの組成は、表1に要約される。
【0061】
【0062】
2.4.5.サニタイザーの合成
最終濃度10%(v/v)のナノエマルションをゲルに注入して、全てのサニタイザーを形成した。各サニタイザーは、1mLのナノエマルションを室温で適度に攪拌しながら9mLのゲル溶液に添加することによって調製した。
【0063】
2.4.6.流体力学的サイズ及びサイズ分布
ナノエマルションの流体力学的サイズ、サイズ分布及び安定性は、Malvern Zetasizer Nano ZSを用いて動的光散乱(DLS)技術によって決定した。DLS機器は、溶液中のサブミクロン粒子のランダム運動(変動)であるブラウン運動を測定して、流体力学的サイズを決定する。
【0064】
簡単に言うと、レーザービームを使用してサンプル溶液が照射され、入射レーザービームが全方向に散乱し、強度が検出器で測定される。サブミクロン粒子の安定性も、DLSによって連続的なサンプル分析を通して経時的に決定することができる。分析用サンプルを脱イオン水中で調製して300~400倍に希釈し、分析のために使い捨てゼータサイザーキュベットを使用した。
【0065】
2.4.7.安定性
エマルションの安定性は、ほとんどの失敗がこの局面で起こるので、考慮及び達成すべき飛び抜けて重要な特性である。これは、ナノエマルションがその不可欠な物理化学的特性(例えば、サイズ及び分布)を長期間維持し、ほとんどの環境変化(すなわち、温度)による影響を受けない能力である。良好な安定性を達成するためには、界面活性剤の特性及び溶媒の熱力学などの重要な考慮すべき事項が最も重要である。
【0066】
エマルションの分解(不安定性)は、相分離(1)、オストワルド熟成(2)、凝集(3)又は転相(4)によるものであり得る。不安定性は沈殿又は沈降によって裸眼で観察することができるが、ゆっくりでより長い時間がかかるものもある。
【0067】
本研究では、両方の系のサイズ及びサイズ分布の連続分析を通して、エマルション及びサニタイザーの安定性を調査した。Malvern Zetasizer Nano Series ZSを使用し、100μLのサンプルを5mLの脱イオン水に添加することにより、サンプルを調製した。
【0068】
2.4.8.インビトロ抑制アッセイ
ナノエマルション送達系に組み込まれたCV-N、CBD、PA及びこれらの組合せの抑制活性は、TZM-bl中和アッセイで試験した。TZM-bl中和アッセイは、細胞の遊離ウイルス粒子感染の抑制を模倣する。簡単に言うと、TZM-bl中和アッセイは、96ウェルプレートにおいて10%ウシ胎児血清(FBS)を含む100μLの成長培地(DMEM)中の抑制剤の希釈系列を調製することにより、デュプリケートで実施した。この後、100 TCID50の偽型ウイルスを50μLの成長培地に添加し、37℃で1時間インキュベートした。次に、37.5μg/mLのDEAE-デキストランを含有する1×105細胞/mLの濃度の100μLのTZM-bl細胞が各ウェルに添加され、37℃で48時間培養される。感染は、ホタルルシフェラーゼの活性を測定することによって評価され得る。
【0069】
力価は、バックグラウンド(ウイルス及び抑制剤の両方を含まないウェル)を差し引いた後、ウイルス対照(抑制剤を含まないウェル)と比較して、相対発光単位(RLU)の50%の減少を引き起こす抑制剤希釈度(ID50)として計算した。ルシフェラーゼアッセイは、製造者の説明書に従ってBright-Gloluciferaseアッセイキット(Promega, USA)を用いて実施され、ルシフェラーゼ活性は、相対ルシフェラーゼ単位(RLU)を用いて表された。
【0070】
2.4.9.インビトロ細胞毒性アッセイ
DMEM/F12ペニシリン(50μg/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)及びネオマイシン(100μg/ml)並びに10%熱失活ウシ胎仔血清(FCS)中で細胞を増殖させ、0.5~5×10
6細胞/mlの集密度で維持した。5%CO
2(g)加湿インキュベーターにおいて細胞を37℃でインキュベートし、週に2~3回継代させた。トリパンブルー排除試験を使用することにより、細胞生存率を決定した。ウェル当たり100μlを使用して細胞を5×10
4細胞/mlの密度で96ウェルプレートに播種し、処理前に48時間インキュベートした。
図12に示されるように、異なる濃度の100μlの種々のマイクロエマルションと共に細胞をインキュベートした。抗生物質を含まない完全培地中に、全ての試験サンプルを希釈した。対照サンプル:カンナビジオール及びパルミチン酸は、培養培地に希釈する前にDMSO中に可溶化させた(最大2%v/v)。シアノビリン-Nは、PBS(pH7.4)中で調製し、DMSOを含まない培養培地中にさらに希釈した。
【0071】
MTTアッセイは、製造者の説明書に従って実施した。要約すると、MTTを用いるこの非放射性の比色アッセイシステムはMosmann, T (1983)によって最初に記載され、その後数年間に数人の他の研究者によって改善された。MTTアッセイは、細胞の生存率、増殖及び細胞毒性の指標として細胞の代謝活性を測定するために使用される。この比色アッセイは、代謝的に活性な細胞により黄色のテトラゾリウム塩(臭化3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム又はMTT)が紫色のホルマザン結晶に還元されることに基づく。生存細胞は、MTTをホルマザンに還元するNAD(P)H依存性オキシドレダクターゼ酵素を含有する。不溶性ホルマザン結晶は可溶化溶液を用いて溶解され、得られた着色溶液は、マルチウェル分光光度計を用いて500~600ナノメートルでの吸光度を測定することによって定量化される。試験化合物を24時間インキュベートした後、PBSpH7.4(100μg/ウェル)中に溶解させたMTTを細胞に添加し、37℃で4時間インキュベートした。変換されなかったMTTを慎重に吸引して除去し、形成されたホルマザン結晶を100μlの可溶化溶液中に溶解させた。650nmの参照フィルターを用いて、吸光度を550nmで読み取った。生存率パーセンテージは、未処理の細胞の吸光度強度の関数として、マイクロエマルションと共にインキュベートした細胞の吸光度強度によって計算した。独立した3回の実験を実施し、各化合物をトリプリケートのウェルで試験した。
【0072】
2.4.10.皮膚刺激性
本研究の目的は、本発明のナノエマルションハンドサニタイザー製品の皮膚刺激性の可能性を決定することであった。本研究は、国際的に認められたGood Clinical Practice Guidelinesに従って実行した。本研究の実施許可は、Sefako Makgatho Health Sciences UniversityのResearch, Ethics and Publications CommitteeのプロジェクトMREC/H/48/2014:CRのプロトコル承認下で保護された。本研究の募集は研究開始の2週間前に始まり、研究要件に従って、約25人のパネリストが募集され、20人の試験パネルで研究を開始した。潜在的なパネリストは、研究の前の週に開催された一連の研究説明会に出席した。パネリストは口頭で説明され、研究説明書、インフォームドコンセント用紙(及び後者のカラーの副本)を受け取った。
【0073】
パネリストは、研究全体を通して特定の時間で定められた予約が与えられた。概要において他に明言されない限り、20人の成人女性ボランティアが使用され、そのうちの5人は敏感肌であった(被験者登録質問表から決定される)。全ての被験者から署名済みの同意書を得た。臨床的な皮膚異常の履歴のある被験者、或いは炎症反応の媒介により試験結果に影響を与え得る薬物を摂取又は使用している被験者を除外した。20人の成人女性ボランティアを使用し、そのうちの5人は敏感肌であった。全ての被験者から署名済みの同意書を得た。
【0074】
簡単に言うと、研究手順は次の通りである;各ボランティアの内側前腕に、ゼロ時間においてランダム化盲検パターンで対照及び製品を適用し、24時間において同じ位置で繰り返した。測定した量の対照又は製品片をそれぞれのチャンバーに入れ、チャンバーを前腕に取り付けた。製品は、閉塞部位についてはScanpore(登録商標)テープ上の特別に設計されたアルミニウムフィンチャンバーを使用し、又は非閉塞部位については改変Hilltopチャンバーを使用して試験した。適用の0、24、48、72及び96時間後にパッチを観察した。最初の2×23時間はパッチ領域をチャンバーで覆い、その後チャンバーを除去した。
【0075】
プロトコルは、正の対照(陽性対照)として1%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)溶液、そして負の対照(陰性対照)として脱イオン水を使用する。測定した量の0.02mlのラウリル硫酸ナトリウム及び脱イオン水を適用した。以下の視覚的な評価システムを使用して、反応を分類した。色の評価は、2つの方法で「二重盲検」式に実施した:目視スコア;0=反応なし、1=わずかな紅斑、2=直接接触領域に限定される強い紅斑、及び3=接触領域を越えて広がる強い紅斑。刺激性レベルは、目視スコアに基づいて、当研究室により以下のように分類される:製品の平均目視スコア+SD>1.5 - 製品は刺激性である。製品の平均目視スコア+SD<=1.5且つ>負の対照 - 製品は低刺激性の可能性がある。製品平均目視スコア+SD<=負の対照 - 製品は非刺激性である。2つ目は、色を赤/緑軸で測定する、a*値を用いるMinolta Cr400比色計を使用した機器スコアによるものである。
【0076】
3.結果及び考察
3.1.ナノエマルション-対照系
3.1.1.物理化学的結果の考察
ナノエマルション系の開発は、急速なナノ沈殿技術による水中油型(O/W)シングルナノエマルションによって成功した。ナノエマルションのサイズ(直径、nm)及び分布に関する物理的特性は、DLS分析によって決定した。
【0077】
図2は、対照ナノエマルション特性のグラフィカル表示を示し、平均液滴サイズは、105.7nmであり、均一なサイズ分布を有した。
【0078】
pH及び物理的特性は、安定性を調べるためのパラメータとして使用した(表3)。対照ナノエマルションの初期pHは5.71(±0.03)であり、室温(±21℃)で貯蔵され、特性は5か月間にわたって変化しなかった。1.8nmのサイズ減少が予想され(≦7%)、溶媒の蒸発の結果であった。
【0079】
【0080】
3.2.シアノビリン-Nサニタイザー
3.2.1.物理化学的結果の考察
CV-Nは、ナノエマルション系の表面液滴上にうまく機能化され、適切な平均サイズは155.4nmであり、サイズ分布は許容可能な範囲を少し下回った(PDI≦0.3)。サイズの増大は、成功の決定の際に観察される第1のパラメータであり、表4の結果は、機能化の成功を示唆する。決定因子としてサイズを使用することを動機づけるために、CV-Nのストック溶液を分析して、サイズの60~70%が25~50nmの間の範囲であった。しかしながら、確認のためには、高解像度透過型電子顕微鏡(TEM)による定性分析が必要とされ、推奨される。安定性は、対照ナノエマルションに使用され、上記で説明された同様の方法によって調査及び決定した。
【0081】
【0082】
これらの結果は、少なくとも17%のより大きいサイズ減少を示し、7%の閾値を超えている。pHは、5か月後に許容可能な範囲内であった。機能化プロセスは、主に、親水性ポリマーによって形成される外側界面活性剤層上への閉塞によって起こる。閉塞プロセスは非化学反応であり、また液滴は、ブラウン運動によって継続的に移動及び衝突する半固体である。液滴の一貫した衝突は、2つの結果をもたらし得る;第1の結果は、液滴表面から一部のCVNが緩み、続いて除去されることであり、及び/又は第2の結果は、液滴が半固体であるためにタンパク質がさらに内部移行される(押し込まれる)ことである。タンパク質のどちらの結果の可能性も、その機能性を劣化させることも、影響を与えることもなく、タンパク質はナノエマルション内で無傷のままであり、意図されたように機能し続け、合成の前後にHPLC分析により完全性を確認した。
【0083】
HPLC分析による確認に加えて、我々の仮説を検証するための研究を設計し、予備的な結果により、観察されたサイズ減少について我々が提唱するメカニズムが支持される。プロジェクト提案書に規定されるように、我々の戦略は、ウイルス表面タンパク質に対する結合親和性の高い送達系を開発することであった。ナノエマルションの合成は、液滴表面への閉塞によってCV-Nを非化学的に機能化(付着)させることを目指し、それを達成した。この研究では、ナノエマルション内の機能化された液滴の表面への結合に対するタンパク質の親和性を調査し、決定パラメータとしてサイズを使用した。
【0084】
タンパク質は、疎水性アミノ酸及び親水性アミノ酸から合成された長鎖ポリペプチドであり、折り畳み配置は、水への溶解度に関与している。非極性(疎水性)アミノ酸はコア(内部)を形成し、極性(親水性)アミノ酸は外側表面を形成し、球形(丸い)3次元形状を有する4次タンパク質が生じる。66.5kDaタンパク質;ウシ血清アルブミン(BSA)の種々の濃度の溶液の使用を採用し、DLSにより分析すると、単一の4次球形構造のサイズ(直径)は約±5nmであり(
図3A)、文献でも結果が確認された。タンパク質のサイズ分布は水中で変化し(5~360nm)、これは、血液中で見られるような緩衝イオンが欠乏しており、したがってタンパク質分子のクラスタリングにより凝集体が形成されるためである。
【0085】
次に、BSA溶液を数滴(1~5滴)のCV-Nナノエマルションで処理し、直ちに分析した。ナノエマルション中の液滴の初期サイズは約141.7nmであり、均一なサイズ分布を有した。これは、上の
図3Bに見られる。処理されたBSA溶液のサイズ及びサイズ分布は急速且つ大幅に改善され、液滴サイズは、少なくとも±8nm増大した。下の
図4は、わずか数秒でサイズの増大及び均一なサイズ分布を示す。さらに、本研究はデュプリケートで実施され、結果は同じであることが分かった。
【0086】
3.2.2.HIV-1偽型ウイルスのインビトロ抑制アッセイ
100 TCID50を用いたTZM-bl中和アッセイにおいて、CV-Nナノエマルションサニタイザーの抗ウイルス活性を実証し、抑制の成功が観察された。表5は、高濃度~低濃度のCV-Nのサニタイザーの抑制プロファイルを示す。
【0087】
興味深いことに、100 TCID50の感染により報告されたCV-NのIC50は、2~31nM(22~340μg)の範囲であり、これは、ウイルスの50%を抑制するために、溶液中に少なくとも22μgのCVNが存在しなければならないことを意味する。ナノエマルションサニタイザー中の我々の初期CV-N濃度は0.5μg/mLであり、その後、サンプル調製物の連続希釈を行い、0.025μg(50μLのサニタイザー)が、ウェルAで使用した全CV-N濃度であった。平均ウイルス対照(VC)を使用して、抑制パーセンテージを計算した。
【0088】
【0089】
3.3.カンナビジオールサニタイザー
3.3.1.物理化学的結果の考察
ナノエマルション中に組み込まれるCBDの様々な濃度を調査し、2、10及び20mgのCBD含有量で3つのナノエマルションを合成した。様々な濃度を有するナノエマルション系の流体力学的サイズ及びサイズ分布は、それぞれ114.7nm、108nm及び158.3nmであった(
図5を参照)。
【0090】
より低濃度(2mg)が中濃度(10mg)よりもわずかに大きいサイズを有することは異常であると思われるが、結果は明らかである。詳しく述べると、同様の分子(疎水性-疎水性)は、好ましくない環境(極性)に導入されると凝集する傾向があり、濃度によってその配置が決定される。より低濃度の配置は、わずかに高い濃度と比較して通常不規則であり、この現象は、臨界ミセル濃度(CMC)の原理によって説明することができる。カプセル化ポリマーマトリックスと比較すると、CBDはより疎水性でより小さい。次にこれは、ポリマーと比較してCBD分子がより速く沈殿することを意味する。結果として、CBDは小さい凝集体を形成することになり、これはポリマーに包囲され、その後、親水性界面活性剤ポリマーがミセルを包む。
【0091】
内部からの構造的支持が欠如している場合、これは不規則な形状の形成をもたらすが、緻密なコアは、その形態学的な完全性を維持することになる。また、同じ濃度のポリマーを使用し、1:1比(ポリマー/薬物)によって、このナノエマルション系のCBDのための理想的な特性が生じた。10mgのポリマーのコアに組み込むことができる最高のCBD濃度は10mgである。
【0092】
またpH及び物理的特性も、安定性を調査するためのパラメータとして使用した(表6)。ナノエマルションの初期pHは6.50(±0.03)であり、室温(±21℃)で貯蔵され、5か月にわたって特性は明らかであった。少なくとも5nmのサイズの増大が観察された(~5%)。しかしながら、改善されたサイズ分布は、良好な安定性を示唆する。
【0093】
【0094】
3.3.2.HIV-1偽型ウイルスのインビトロ抑制アッセイ
TZM-bl中和アッセイにおいてCBDの抗ウイルス活性も実証し、偽型ウイルスの細胞感染の抑制の成功を達成し、これは、表7で観察することができる。
【0095】
以下の表7は、対照(ウイルスなし)を含む初期ウイルス濃度、及びサニタイザーの抑制活性を達成するために使用したCBD濃度を示す。初期CBD濃度(A、B及びC)は、90%を超える抑制(LD90)を示し、LD50は、ウェルDにおいて約3.70μgのCBD濃度で達成された。
【0096】
【0097】
3.3.3.SARS-CoV-2及びMERS-CoV偽型ウイルスの抑制アッセイ
TZM-bl中和アッセイにおいてCBDエマルションの抗ウイルス活性を実証し、SARS-CoV-2及びMERS-CoV偽型ウイルスの両方の抑制の成功が達成された(
図6)。
【0098】
3.4.パルミチン酸サニタイザー
3.4.1.物理化学的結果の考察
以下の
図7に示されるように、パルミチン酸を組み込んだナノエマルション系は開発が成功し、望ましいサイズ及びサイズ分布を有した。
【0099】
pH及び物理的特性も、安定性を調査するためのパラメータとして使用した(表8)。ナノエマルションの初期pHは6.54(±0.03)であり、その後わずかに上昇した。しかしながら、改善されたサイズ分布は、良好な安定性を示唆した。ナノエマルションを室温(±21℃)で貯蔵し、5か月間にわたって特性は明らかであった。少なくとも33nmのサイズ減少が観察され(~21%)、安定性は改善したが、原因を特定するためにはさらなる調査が必要である。
【0100】
【0101】
3.4.2.HIV-1偽型ウイルスのインビトロ抑制アッセイ
TZM-bl中和アッセイを用いてPAサニタイザーの抗ウイルス活性を実証し、偽型ウイルスの細胞感染の抑制の成功が観察された(表9)。
【0102】
【0103】
4.インビトロ生物学的アッセイ
A549細胞における細胞毒性アッセイでは、CV-N及びCBD対照(結果は示されない)による著しい毒性が示され、MTTアッセイを使用して、細胞生存率及び増殖の指標として細胞代謝活性を測定した。
【0104】
最高濃度の対照ナノエマルションは毒性を示さず、平均細胞生存率は85%を超えた。純粋なCBDは著しい毒性を示したが、CBDナノエマルションは毒性を示さず、細胞増殖を大幅に改善した。CV-Nナノエマルションは、より高い濃度でわずかな毒性を示した。しかしながら、ナノエマルションサニタイザーのために使用した最高のCV-N濃度は0.025μgであり、したがってこの毒性研究における最低濃度(1.56μg)と比較してはるかに低く、そのため安全であると考えられる。
【0105】
5.皮膚刺激性
全てのパネリストは、概要において他に明言されない限り、その毎日の来診に参加した。概要に記載されない限り、研究中に有害事象はなかった。有害事象の場合、Sefako Makgatho Health Sciences UniversityのResearch and Ethics Committeeに報告書が提出される。各来診時に上記の方法に従ってデータを収集した。20人のパネリストの前腕掌において製品を試験した。結果のグラフィカル表示は、製品、負の対照(脱イオン水)及び正の対照(1%SLS)のデータを示す。
【0106】
5.1.目視スコア
製品及び対照の最大刺激性(平均目視スコア+目視スコアの1標準偏差によって計算される)は、以下の表に示される。目視スコア+1標準偏差(SD)の刺激性限界は、0~3スケールで1.5である。
【0107】
5.2.比色計
ベースラインと比較した各試験部位の彩度a*値の変化は、以下のように計算される:
デルタa*=(時間tの製品a*-時間0の製品a*)-(時間tの未処置a*-時間0の未処置a*)
【0108】
所与の時点での所与の製品に対する全てのパネリストのデルタa
*値を平均し、添付のグラフにプロットした。比色計a
*値データパターンは、目視の紅斑評価スコアを支持した(
図9に提供される)。
【0109】
【0110】
本研究では、有害事象が観察されないことが確認及び結論された。
図10は、研究結果のグラフィカルな概要を示す。
【0111】
6.製造方法
6.1.サニタイザーの調製段階
本明細書に記載されるナノエマルションハンドサニタイザーの合成プロセスは、ナノエマルション調製の3段階、ゲル化段階、そして最後に融合段階を含む5つの調製段階に分割することができる。ナノエマルションの段階には、内部相の調製(P1)及び連続相の調製(P2)と、その後のナノエマルションの形成(P3)が含まれる。
【0112】
6.2.段階 調製及びコスト計算(1~3)
有機相の調製には、溶媒溶液のための3つの液体ストリーム、ポリマーのための1つの固体ストリーム、及び溶媒和のための反応槽が含まれる。溶媒和反応槽(CBD及び/又はPA)への分岐と、タンパク質反応槽(CV-N)への別の分岐とを有するさらなる分岐固体ストリームが、活性化合物(薬物)のために必要とされる。以下の表11は、1Lの溶媒溶液を製造するために必要とされる原材料の量を示す。
【0113】
【0114】
連続相は、PBS及びPVAの混合物溶液(1:3)で構成される。PBS溶液(表12)及びPVA溶液(表13)の両方について1Lを調製するために必要とされる原材料の推定量は、以下に見られる。
【0115】
【0116】
【0117】
段階3はナノエマルションの形成プロセスであり、内部相を攪拌しながら連続相に添加することを含み、1Lのナノエマルションの合成プロセスのための量は表14に示される。
【0118】
【0119】
6.3.段階4 調製及びコスト計算
ゲル化段階は、水中の、キサンタンガム、グリセロール及びクエン酸で構成される粘性混合物の調製である。
【0120】
【0121】
6.4.段階5 調製及びコスト計算
融合段階は、ナノエマルションが粘性ゲルに添加されてナノエマルションハンドサニタイザーが製造される最終プロセスであり、以下の表16は、1Lのナノエマルションハンドサニタイザーを製造するための全てのストリームを示す。
【0122】
【0123】
【0124】
7.結論
現在最も推奨されている非医薬品戦略の1つは、コロナウイルスによる感染を制御するために70~95%のアルコール性サニタイザーを使用することからなる。アルコール(エチルアルコール、イソプロパノール又はn-プロパノール)の含有量の高いこのような溶液の頻繁な使用は、ヒト、多くの場合、12歳未満の子供に有害な影響を与える。長期間にわたって予想される影響の1つは、感染と闘う皮膚の防御の第一線(すなわち、ミクロビオーム及び脂質層)の枯渇であり、これにより、微生物による攻撃のためのフリーウェイが作られる。
【0125】
アルコール系サニタイザーによりミクロビオームが損傷されると皮膚を通過することができる他の微生物種への曝露を防止しながら、SARS-CoV-2による感染を抑えるために非アルコール性ハンドサニタイザーが必要であることは、重要であると思われる。
【0126】
したがって、本出願人は、シアノビリン-N、カンナビジオール及びパルミチン酸から選択される1つ又は複数の活性物質を組み込んだ両親媒性脂肪酸と共に安全な高分子化合物を含有する、非アルコール性の水性抗微生物ハンドサニタイザーの開発に成功した。これらの活性物質は、個別に又は組み合わせて使用され、偽型SARS-CoV-2ウイルスへの強力な結合が示され、比較的低い濃度でその完全な抑制又は非活性化が得られた。
【0127】
この系は、インビトロ細胞毒性試験に従って安全であることが示される。認可された研究所により、20人のヒト皮膚において小規模の刺激性パッチテストを実行し、非刺激性の結果が得られた。この系は費用対効果が高く、スケールアップが容易である。
【0128】
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