(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】積層造形のためのデータを符号化する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20241031BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20241031BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241031BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20241031BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y50/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529846
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 IL2022051270
(87)【国際公開番号】W WO2023095148
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビタン、イド
(72)【発明者】
【氏名】クライン、ベン
(72)【発明者】
【氏名】クライン、ネイサン イェフーダ
(72)【発明者】
【氏名】セメル、シャウル
(72)【発明者】
【氏名】スウィッサ、イーライ
(72)【発明者】
【氏名】メラー、ヨセフ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL32
4F213WL85
(57)【要約】
積層造形のためのデータを符号化する方法は、少なくとも平面セグメント選択制御(502)、パターン形成制御(506)及び材料選択制御(508)を有するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)(500)を表示することを含む。本方法は、平面セグメント選択制御(502)によって選択された特定の平面セグメントに対応する位置の三次元物体(512)の断面(510)をGUI(500)に表示することをも含む。入れ子になった輪郭を有する平面パターンは断面上に表示され、各輪郭は、パターン形成制御(506)によって受信された入力に従って形成され、材料選択制御(508)によって受信された入力に従って少なくとも1つの構築材料に関連付けられる。平面パターンを記述するデータ構造は、コンピュータのストレージに保存される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形のためのデータを符号化する方法であって、
少なくとも平面セグメント選択制御、パターン形成制御、及び材料選択制御を有するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示し、
前記平面セグメント選択制御によって選択された特定の平面セグメントに対応する位置の三次元物体の断面を前記GUIに表示し、
入れ子になった輪郭を有する平面パターンを前記表示された断面上に表示し、各輪郭は、前記パターン形成制御によって受信された入力に従って形成されるとともに、前記材料選択制御によって受信された入力に従って少なくとも1つの構築材料に関連付けられ、
前記平面パターンを記述するデータ構造を、コンピュータのストレージに保存すること
を含む、方法。
【請求項2】
さらなる三次元物体の画像を前記GUIにロードし、前記データ構造を前記コンピュータのストレージからロードし、及び前記平面パターンを前記さらなる三次元物体の断面上に表示することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
問合せ信号を積層造形システムに送信し、これに応答して、前記システムにロードされた構築材料の種類に係る信号を受信し、前記構築材料の種類の中からしか選択できないように前記材料選択制御を構成することを含む、請求項1及び請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記GUIが背景構築材料選択制御を含み、前記方法が、
前記背景構築材料選択制御から、背景構築材料の選択又は構築材料の背景組合せの選択に関連する入力を受信し、
前記背景構築材料選択制御からの前記入力に応じて、前記材料選択制御によって入力が受け取られなかった前記三次元物体の全ての領域を1以上の構築材料に関連付けること
を含む、請求項1~請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記平面パターンが、前記断面の周縁に沿った最も外側の輪郭を含み、前記パターン形成制御が、前記最も外側の輪郭について予め定義された閾値未満の幅を定義することを許可しないように構成される、請求項1~請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記平面パターンが、前記断面の周縁に沿った最も外側の輪郭を含み、前記材料選択制御が、前記最も外側の輪郭について少なくとも1つの構築材料の選択を許可しないように構成される、請求項1~請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記パターン形成制御は、各輪郭について、輪郭パラメータを前記入力として受信するように構成され、前記パラメータは、前記断面の周縁からの前記輪郭の距離及び前記輪郭の幅、又は前記断面の前記周縁からの前記輪郭の外側及び内側境界の距離を含む、請求項1~請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記輪郭パラメータの少なくとも1つは、前記輪郭に沿って固定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記輪郭パラメータの少なくとも1つについて、前記パターン形成制御は、前記輪郭に沿って前記輪郭パラメータを段階的に変化させるための輪郭変化規則を受信するように構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記輪郭変化規則は、前記積層造形に固有のデカルト座標系又は極座標系に従って前記断面にわたって定義される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記輪郭変化規則は、前記断面に特有の軸に従って定義される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記材料選択制御は、各輪郭について、(i)前記輪郭に関連付けられる複数の構築材料、及び(ii)前記複数の構築材料の相対量、に係る入力を受信するように構成される、請求項1~請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記材料選択制御は、さらに(iii)前記複数の構築材料間の分配規則を受信するように構成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分配規則が前記輪郭に沿って固定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記材料選択制御は、前記輪郭の1以上の軸に沿って前記分配規則を調整するための調整規則を受信するように構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記材料選択制御からの前記入力を記述するデータ構造を、前記平面パターンの前記データ構造とは独立して、前記コンピュータのストレージに保存することを含む、請求項12~請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記平面パターンの単一の輪郭を記述するデータ構造を、前記平面パターンのデータ構造とは独立して、前記コンピュータのストレージに保存することを含む、請求項1~請求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記GUIは、エッジブレンディング制御を含み、前記方法は、2つの隣接する輪郭の構築材料のグラフィカル表現が隣接する輪郭間の界面で段階的に変化するように前記2つの隣接する輪郭を表示することを含み、前記平面パターンを記述する前記データ構造が、前記グラフィカル表現の前記変化に対応する前記隣接する輪郭の前記構築材料の量における段階的変化を記述する、請求項1~請求項17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記GUIは、輪郭繰り返し制御を含み、前記方法は、前記輪郭繰り返し制御の起動時に、前記平面パターンの他の輪郭内に入れ子になっている少なくとも1つのさらなる輪郭を表示することを含み、前記少なくとも1つのさらなる輪郭は、サイズが小さいことを除いて、前記他の輪郭の複製物である、請求項1~請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記パターン形成制御は、輪郭間の重なりを許容するように構成され、前記GUIは、輪郭階層制御を含み、前記方法は、前記輪郭階層制御によって受信された入力に基づいて、重なり合う輪郭間のそれぞれの重なりが前記重なり合う輪郭の1つに関連付けられるように前記データ構造を構築することを含む、請求項1~請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記平面セグメント選択制御が、複数の平面セグメントに係る入力を受信するように構成され、前記平面パターンを記述する前記データ構造が、異なる平面パターンを、前記複数の平面セグメントの各平面セグメントに関連付けるデータを含む、請求項1~請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記GUIは、プロパティ表示領域を含み、前記方法は、前記入れ子になった輪郭の少なくとも1つの輪郭のプロパティを予測すること、及び前記予測されたプロパティを前記プロパティ表示領域に表示することを含む、請求項1~請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
積層造形の方法であって、
請求項1~請求項22のいずれかに記載の方法を実行し、
三次元物体の形状を定義するコンピュータオブジェクトデータを受信し、
前記データ構造を前記コンピュータのストレージからロードし、
前記コンピュータオブジェクトデータを、各々が複数のボクセルにわたって定義される複数のスライスにスライシングし、各スライスの各ボクセルに対して、前記データ構造によって記述されるとともに前記ボクセルを含む平面パターンに従って構築材料を割り当て、
前記複数のスライスを、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の層を積層造形するための積層造形システムのコントローラに送信すること
を含む方法。
【請求項24】
前記平面セグメントは前記スライスに対して平行であり、前記方法は、前記平面パターンに従って全ての前記スライスをパターニングすることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
プログラム命令が保存されたコンピュータ読み取り可能な媒体を含み、当該命令は、データプロセッサによって読み取られると、前記データプロセッサに請求項1~請求項21のいずれかに記載の方法を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
【請求項26】
積層造形の方法であって、
三次元物体の形状を定義するコンピュータオブジェクトデータを受信し、
コンピュータのストレージから複数のデータ構造及び前記データ構造間の階層をロードし、前記データ構造は異なる平面パターンを記述し、その各々が、前記物体全体の異なる位置の範囲に関連付けられ、前記範囲の少なくとも2つが部分的に重なり合い、
前記コンピュータオブジェクトデータを、各々が複数のボクセルにわたって定義される複数のスライスにスライシングし、各スライスの各前記ボクセルに対して、前記ボクセルを含む前記データ構造の特定のデータ構造によって記述される平面パターンに従って構築材料を割り当て、前記割り当てることが、前記重なりの中の各ボクセルに対して、前記階層に従って前記複数のデータ構造から前記特定のデータ構造を選択することを含み、
前記複数のスライスを、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の層を積層造形するための積層造形システムのコントローラに送信すること
を含む方法。
【請求項27】
積層造形のためのデータを符号化するシステムであって、
表示装置、コンピュータ及びコンピュータのストレージを含み、
前記コンピュータが、プロセッサを含み、前記プロセッサは、少なくとも平面セグメント選択制御、パターン形成制御、及び材料選択制御を有するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を前記表示装置に表示し、前記平面セグメント選択制御を介して、特定の平面セグメントの選択に係る入力を受信し、前記特定の平面セグメントに対応する位置の三次元物体の断面を前記GUIに表示し、前記パターン形成制御を介して、入れ子になった輪郭の形状に関する入力、及び、前記材料選択制御を介して、前記輪郭に関連付けられた構築材料に関する入力を受信し、前記入れ子になった輪郭を有する平面パターンを前記表示された断面上に表示し、前記平面パターンを記述するデータ構造を生成して、前記コンピュータのストレージに保存するように構成される、
システム。
【請求項28】
三次元物体の積層造形のためのデータを鉛直方向に対して直角をなす複数の層に符号化する方法であって、
コンピュータのストレージから、前記三次元物体を記述するコンピュータオブジェクトデータをロードし、
コンピュータのストレージから、ゼロでない角度を前記複数の層となす面上に定義された平面パターンを記述するデータ構造をロードし、前記平面パターンは複数の入れ子になった輪郭を有し、
前記コンピュータオブジェクトデータを、各々が複数のボクセルにわたって定義される複数のスライスにスライシングし、前記複数の層の1つを記述し、
各スライスの各ボクセルについて、前記データ構造によって記述されるとともに前記ボクセルを含む平面パターンに従って構築材料を割り当てること
を含む方法。
【請求項29】
前記三次元物体の断面の画像をグラフィカルユーザインタフェースにロードし、前記平面パターンを前記断面に重ね合わせることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
積層造形の方法であって、
請求項28及び請求項29のいずれかに記載の方法を実行し、
前記複数のスライスを、前記層の積層造形のために積層造形システムのコントローラに送信すること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月29日に出願された米国仮特許出願第63/283,636号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、積層造形(additive manufacturing(AM))に関し、より詳細には、しかし排他的ではなく、積層造形のためのデータを符号化する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
積層造形(AM)は、一般的には、三次元(3D)の物体を、その物体のコンピュータモデルを用いて製造するプロセスである。このようなプロセスは、様々な分野(例えば設計に関連する分野)において、視覚化、デモンストレーション、機械的な試作品製作に加えてラピッドマニュファクチャリング(rapid manufacturing:RM)を目的として、使用されている。任意のAMシステムの基本的な操作は、三次元のコンピュータモデルを薄い断面にスライシングすること、その結果を二次元の位置データに変換すること、データを制御装置に供給し、制御装置が層状に三次元構造物を製造することからなる。
【0004】
AMの一種に、三次元インクジェットプリントプロセスがある。このプロセスでは、構築材料がノズルのセットを有する吐出ヘッドから供給(吐出)され、支持構造上に層を堆積させる。構築材料に応じて、続いて適切な装置を用いて層を硬化又は固化してもよい。
【0005】
様々な三次元インクジェットプリント技術が存在し、例えば、米国特許第6,259,962号、同第6,569,373号、同第6,658,314号、同第6,850,334号、同第7,183,335号、同第7,209,797号、同第7,225,045号、同第7,300,619号、同第7,479,510号、同第7,500,846号、同第7,962,237号及び国際公開第WO2019/021295号に開示されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、国際公開第WO2019/021295号は、硬質の身体組織の特性を特徴とする物体を製造する技術を開示する。異なる材料配合物を含むボクセル要素がインタレースする位置に吐出され、テクスチャ領域を形成する。テクスチャ領域が硬化すると、特定の機械的特性を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、積層造形のためにデータを符号化する方法が提供される。本方法は、少なくとも平面セグメント選択制御(コントロール)、パターン形成制御、及び材料選択制御を有するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示することを含む。本方法は、前記平面セグメント選択制御によって選択された特定の平面セグメントに対応する位置の三次元物体の断面を前記GUIに表示することをも含む。本方法は、入れ子になった(ネスト状の)輪郭を有する平面パターンを前記表示された断面上に表示することであって、各輪郭は、前記パターン形成制御によって受信された入力に従って形成されるとともに、前記材料選択制御によって受信された入力に従って少なくとも1つの構築材料に関連付けられることをさらに含む。本方法は、平面パターンを記述するデータ構造をコンピュータのストレージ(記憶部)に保存することをさらに含む。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、さらなる三次元物体の画像を前記GUIにロードすること、前記データ構造を前記コンピュータのストレージからロードすること、及び前記平面パターンを前記さらなる三次元物体の断面上に表示すること、を含む。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、問合せ信号を積層造形システムに送信し、それに応答して前記システムにロードされた構築材料の種類に係る信号を受信し、前記構築材料の種類の中からしか選択できないように前記材料選択制御を構成すること、を含む。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記GUIが背景構築材料選択制御を含み、前記方法が、前記背景構築材料選択制御から、背景構築材料の選択又は構築材料の背景組合せの選択に関連する入力を受信し、前記背景構築材料選択制御からの前記入力に応じて、前記材料選択制御によって入力が受け取られなかった前記三次元物体の全ての領域を、1以上の構築材料に関連付けることを含む。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記平面パターンが、前記断面の周縁に沿った最も外側の輪郭を含み、前記パターン形成制御が、前記最も外側の輪郭について予め定義された閾値未満の幅を定義することを許可しないように構成される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記平面パターンが、前記断面の周縁に沿った最も外側の輪郭を含み、前記材料選択制御が、前記最も外側の輪郭について少なくとも1つの構築材料の選択を許可しないように構成される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記パターン形成制御は、各輪郭について、輪郭パラメータを前記入力として受信するように構成され、前記パラメータは、前記断面の周縁からの前記輪郭の距離及び前記輪郭の幅、又は前記断面の前記周縁からの前記輪郭の外側及び内側境界の距離を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記輪郭パラメータの少なくとも1つは、前記輪郭に沿って固定される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記輪郭パラメータの少なくとも1つについて、前記パターン形成制御は、前記輪郭に沿って前記輪郭パラメータを段階的に変化させるための輪郭変化規則を受信するように構成される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記輪郭変化規則は、前記積層造形に固有のデカルト座標系又は極座標系に従って前記断面にわたって定義される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、輪郭変化規則は、断面に特有の1以上の軸に従って定義される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記材料選択制御は、各輪郭について、(i)前記輪郭に関連付けられる複数の構築材料、及び(ii)前記複数の構築材料の相対量、に係る入力を受信するように構成される。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記材料選択制御は、(iii)前記複数の構築材料間の分配規則をも受信するように構成される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記分配規則は前記輪郭に沿って固定される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記材料選択制御は、前記輪郭の1以上の軸に沿って前記分配規則を調整するための調整規則を受信するように構成される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、前記材料選択制御からの前記入力を記述するデータ構造を、前記平面パターンの前記データ構造とは独立して、前記コンピュータのストレージに保存することを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、前記平面パターンの単一の輪郭を記述するデータ構造を、前記平面パターンのデータ構造とは独立して、前記コンピュータのストレージに保存することを含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記GUIは、エッジブレンディング制御を含み、前記方法は、2つの隣接する輪郭の構築材料のグラフィカル表現が隣接する輪郭間の界面で段階的に変化するように前記2つの隣接する輪郭を表示することを含み、前記平面パターンを記述する前記データ構造が、前記グラフィカル表現の前記変化に対応する前記隣接する輪郭の前記構築材料の量における段階的変化を記述する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記GUIは、輪郭繰り返し制御を含み、前記方法は、前記輪郭繰り返し制御の起動時に、前記平面パターンの他の輪郭内に入れ子になっている少なくとも1つのさらなる輪郭を表示することを含み、前記少なくとも1つのさらなる輪郭は、サイズが小さいことを除いて、前記他の輪郭の複製物である。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記パターン形成制御は、輪郭間の重なりを許容するように構成され、前記GUIは、輪郭階層制御を含み、前記方法は、前記輪郭階層制御によって受信された入力に基づいて、重なり合う輪郭間のそれぞれの重なりが前記重なり合う輪郭の1つに関連付けられるように前記データ構造を構築することを含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記平面セグメント選択制御が、複数の平面セグメントに係る入力を受信するように構成され、前記平面パターンを記述する前記データ構造が、異なる平面パターンを、前記複数の平面セグメントの各平面セグメントに関連付けるデータを含む。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記GUIは、プロパティ表示領域を含み、前記方法は、前記入れ子になった輪郭の少なくとも1つの輪郭のプロパティを予測すること、及び前記予測されたプロパティを前記プロパティ表示領域に表示することを含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、積層造形の方法が提供される。本方法は、上記の、及び任意選択的にかつ好ましくは以下にさらに詳述する方法を実行し、三次元物体の形状を定義するコンピュータオブジェクトデータを受信し、前記データ構造を前記コンピュータのストレージからロードすることを含む。本方法は、前記コンピュータオブジェクトデータを、各々が複数のボクセルにわたって定義される複数のスライスにスライシングし、各スライスの各ボクセルについて、前記データ構造によって記述されるとともに前記ボクセルを含む平面パターンに従って構築材料を割り当てることをも含む。本方法は、前記複数のスライスを、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の層を積層造形するための積層造形システムのコントローラに送信することをも含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記平面セグメントは前記スライスに対して平行であり、前記方法は、前記平面パターンに従って全ての前記スライスをパターニングすることを含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、コンピュータソフトウェア製品が提供され、当該コンピュータソフトウェア製品はプログラム命令が保存されたコンピュータ読み取り可能な媒体を含み、当該命令は、データプロセッサによって読み取られると、前記データプロセッサに上述したように、及び任意選択的にかつ好ましくは以下にさらに詳述するように前記方法を実行させる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、積層造形の方法が提供される。本方法は、三次元物体の形状を定義するコンピュータオブジェクトデータを受信し、コンピュータのストレージから複数のデータ構造及び前記データ構造間の階層をロードすることを含む。前記データ構造は異なる平面パターンを記述し、その各々が、前記物体全体の異なる位置の範囲に関連付けられ、前記範囲の少なくとも2つが部分的に重なり合う。本方法は、前記コンピュータオブジェクトデータを、各々が複数のボクセルにわたって定義される複数のスライスにスライシングし、各スライスの各前記ボクセルに対して、前記ボクセルを含む前記データ構造の特定のデータ構造によって記述される平面パターンに従って構築材料を割り当て、前記複数のスライスを、前記複数のスライスにそれぞれ対応する複数の層を積層造形するための積層造形システムのコントローラに送信することをも含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記割り当てる操作が、前記重なりの中の各ボクセルに対して、前記階層に従って前記複数のデータ構造から前記特定のデータ構造を選択することを含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、積層造形のためにデータを符号化するシステムが提供される。このシステムは、表示装置、コンピュータ及びコンピュータのストレージを含む。前記コンピュータは、前記表示装置に、少なくとも平面セグメント選択制御、パターン形成制御、及び材料選択制御を有するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示するように構成されたプロセッサを含む。前記プロセッサは、前記平面セグメント選択制御を介して、特定の平面セグメントの選択に係る入力を受信するようにも構成される。前記プロセッサは、前記特定の平面セグメントに対応する位置の三次元物体の断面を前記GUIに表示するようにも構成される。前記プロセッサは、前記パターン形成制御を介して、入れ子になった輪郭の形状に関する入力を、及び、前記材料選択制御を介して、前記輪郭に関連付けられた構築材料に関する入力を受信するようにも構成される。前記プロセッサは、前記入れ子になった輪郭を有する平面パターンを前記表示された断面上に表示し、前記平面パターンを記述するデータ構造を生成し、前記コンピュータのストレージに保存するようにも構成される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、三次元物体の積層造形のために、鉛直方向に対して直角に層状にデータを符号化する方法が提供される。本方法は、コンピュータのストレージから、前記三次元物体を記述するコンピュータオブジェクトデータをロードすることを含む。本方法は、コンピュータのストレージから、ゼロでない角度を前記層となす面上に定義された平面パターンを記述するデータ構造をロードし、前記平面パターンは複数の入れ子になった輪郭を有することをも含む。本方法は、前記コンピュータオブジェクトデータを、各々が複数のボクセルにわたって定義される複数のスライスにスライシングし、前記層の1つを記述すること、及び各スライスの各ボクセルについて、前記データ構造によって記述されるとともに前記ボクセルを含む平面パターンに従って構築材料を割り当てることをも含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、前記三次元物体の断面の画像をグラフィカルユーザインタフェースにロードすること、及び前記平面パターンを前記断面に重ね合わせることを含む。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、積層造形の方法が提供される。本方法は、上述したように、及び任意選択的にかつ好ましくは以下にさらに詳述するように前記方法を実行し、前記複数のスライスを、前記層の積層造形のために積層造形システムのコントローラに送信することを含む。
【0036】
別途定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様又は等価の方法及び材料が本発明の実施形態の実行又は試験において使用され得るが、例示的な方法及び/又は材料が以下に記載される。矛盾が生じた場合、定義を含め、本特許明細書が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は例示に過ぎず、必ずしも限定することは意図されていない。
【0037】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実施は、選択されたタスクを、手動で、自動的に、又はそれらの組合せで実行すること又は完了することを含み得る。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の機器及び装置に従って、いくつかの選択されたタスクは、オペレーティングシステムを用いて、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、若しくはファームウェアによって、又はこれらの組合せによって実装され得る。
【0038】
例えば、本発明の実施形態に従って選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装され得る。ソフトウェアとして、本発明の実施形態に係る選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを用いてコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装され得る。本発明の例示的実施形態において、本明細書に記載される方法及び/又はシステムの例示的実施形態に係る1以上のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令及び/又はデータを保存するための揮発性メモリ、及び/又は、命令及び/又はデータを保存するための、例えば磁気ハードディスク及び/又はリムーバブルメディアなどの不揮発性記憶装置を含む。任意選択的に、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ、及び/又は、キーボード又はマウスなどのユーザ入力デバイスも任意選択的に提供される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態が、添付の図面を参照して、あくまで一例として、本明細書に記載される。ここで特に図面を詳細に参照すると、示されている詳細は一例であり、本発明の実施形態の例示的考察を目的としたものであることが強調される。この点に関して、図面とともになされる説明により、本発明の実施形態がどのように実施され得るかが当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態に係る積層造形システムの概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態に係る積層造形システムの概略図である。
【
図1C】本発明のいくつかの実施形態に係る積層造形システムの概略図である。
【
図1D】本発明のいくつかの実施形態に係る積層造形システムの概略図である。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態に係るプリントヘッドの概略図である。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態に係るプリントヘッドの概略図である。
【
図2C】本発明のいくつかの実施形態に係るプリントヘッドの概略図である。
【
図3A】本発明のいくつかの実施形態に係る座標変換を示す概略図である。
【
図3B】本発明のいくつかの実施形態に係る座標変換を示す概略図である。
【
図4A】本発明のいくつかの実施形態に係るグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の概略図である。
【
図4B】本発明のいくつかの実施形態に係るグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の概略図である。
【
図4C】本発明のいくつかの実施形態に係るグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の概略図である。
【
図4D】本発明のいくつかの実施形態に係るグラフィカルユーザインタフェース(GUI)の概略図である。
【
図5A】本発明のいくつかの実施形態に係る、ノイズ関数によって生成される分布の概略図である。
【
図5B】本発明のいくつかの実施形態に係る、ノイズ関数によって生成される分布の概略図である。
【
図5C】本発明のいくつかの実施形態に係る、ノイズ関数によって生成される分布の概略図である。
【
図5D】本発明のいくつかの実施形態に係る、ノイズ関数によって生成される分布の概略図である。
【
図6A】本発明のいくつかの実施形態に係る、輪郭シーケンスを定義する技術を説明する概略図である。
【
図6B】本発明のいくつかの実施形態に係る、輪郭シーケンスを定義する技術を説明する概略図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態に係る、積層造形のためのデータを符号化するのに適した方法のフローチャート図である。
【
図8】本発明のいくつかの実施形態に係る、積層造形に適した方法のフローチャート図である。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態に係る、平面パターンを符号化するためのエンドユーザプロトコルを例示するフローチャート図である。
【
図10A】本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのシェルのアセンブリとして定義される物体の概略図である。
【
図10B】本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのシェルのアセンブリとして定義される物体の概略図である。
【
図10C】本発明のいくつかの実施形態に係る、2つのシェルのアセンブリとして定義される物体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、積層造形に関し、より詳細には、しかし排他的ではなく、積層造形のためのデータを符号化する方法及びシステムに関する。
【0042】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用において、以下の説明に記載される、及び/又は図面及び/又は実施例に例示される構成要素及び/又は方法の構造及び配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行されることが可能である。
【0043】
本実施形態の方法及びシステムは、コンピュータオブジェクトデータに基づいて、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することにより、層状に三次元物体を製造する。層の形成は、任意選択的に、かつ好ましくはプリントにより、より好ましくはインクジェットプリントによる。コンピュータオブジェクトデータは、限定するものではないが、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、積層造形ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットを含む、任意の既知のフォーマットのデータであり得る。
【0044】
用語「物体(オブジェクト)」は、本明細書において使用される場合、三次元物体全体又はその一部を指す。本実施形態は、いくつかのタイプの物体の部分を想定している。最も単純な場合、物体の「部分」とは外側部分であり、この場合、物体の外側表面で囲まれた三次元空間の体積Vは、物体の当該部分の外側表面で囲まれた体積V1と、当該部分を除いた物体の外側表面で囲まれた体積V2の和となる。外側部分の一例は、外壁又はカバー又は物体の外側表面に連なる構造体である。物体の部分は物体の内側部分であってもよく、この場合、外側表面の物体によって囲まれる三次元空間の体積Vは、当該部分を除いた物体の外側表面によって囲まれる体積V2に等しい。言い換えれば、内側部分とは、物体の外側表面に囲まれた三次元空間の中に完全に埋め込まれた構造体である。第3のタイプの部分は、部分的に内側で、部分的に外側の部分である。この場合、物体の当該部分の外側表面で囲まれる体積V1と、当該部分を除く物体の外側表面で囲まれる体積V2との和は、物体の外側表面で囲まれる三次元空間の体積Vよりも大きい。
【0045】
コンピュータオブジェクトデータは、物体を全体として記述することができ、又は、データは、物体の複数の部分のそれぞれについて、個別の幾何学的定義を抽出できるような方法で構築され得る。コンピュータオブジェクトデータがその部分の個別の幾何学的定義を抽出することができる物体の部分を、本明細書では「シェル」と呼ぶ。よって、コンピュータオブジェクトデータは、物体をシェルの集合体として定義するように構築され得、各シェルは物体の内側、外側、又は部分的に外側であり部分的に内側である部分である。2つのシェルの組立体として定義される物体の代表例が
図10Aに示され、2つの個別のシェルが
図10Bと
図10Cに示される。
【0046】
各層は、二次元の表面を走査(スキャン)してパターニングするAM装置によって形成され得る。走査しながら、装置は、二次元の層又は表面上の複数の目標位置に行き、各目標位置又は目標位置群について、その目標位置又は目標位置群が構築材料配合物(building material formulation)によって占有されるべきか否か、及びどの種類の構築材料配合物がそこに供給されるべきかを決定する。決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、AMは三次元プリント、より好ましくは三次元インクジェットプリントを含む。これらの実施形態において、構築材料は1以上のノズルアレイを有するプリントヘッドから吐出され、構築材料を支持構造上に層状に堆積させる。このように、AM装置は、占有されるべき目標位置に構築材料を供給し、他の目標位置は空けておく。装置は典型的には複数のノズルアレイを含み、その各々は異なる構築材料を供給するように構成され得る。これは、典型的には、相互に分離された複数の流体チャネルをプリントヘッドに設けることによって達成され、各チャネルは別々の入口から異なる構築材料を受容し、異なるノズルアレイに搬送する。
【0048】
このように、異なる目標位置が、異なる構築材料配合物によって占有され得る。構築材料配合物の種類は、2つの主要なカテゴリー、即ち、モデリング材料配合物とサポート材料配合物とに分類され得る。サポート材料配合物は、製造プロセス及び/又は例えば中空若しくは多孔質物体を提供するなどの他の目的の間に、物体若しくは物体の部分を支持するためのサポートマトリクス又はサポート構造として機能する。サポート構造は、例えば、さらなる支持強度のために、モデリング材料配合物要素をさらに含み得る。
【0049】
モデリング材料配合物は、一般的には、積層造形に使用するために配合され、それ自体で、すなわち、何らかの他の物質と混合され又は組み合わされることを要さず、三次元物体を形成することが可能な組成物である。
【0050】
最終的な三次元物体は、モデリング材料配合物又はモデリング材料配合物の組合せ又はモデリング材料配合物とサポート材料配合物の組合せ、又はそれらの改質物(例えば、硬化後)で作成される。これらの操作の全ては、固体自由形状製造の当業者には周知である。
【0051】
本発明のいくつかの例示的実施形態において、物体は、2つ以上の異なるモデリング材料配合物を供給することによって製造され、各材料配合物は、AM装置の(同一又は異なるプリントヘッドに属する)異なるノズルアレイからのものである。いくつかの実施形態において、異なるモデリング材料配合物を吐出する2つ以上のこのようなノズルアレイは、共にAM装置の同じプリントヘッドに配置される。いくつかの実施形態において、異なるモデリング材料配合物を吐出するノズルのアレイは、別々のプリントヘッドに配置され、例えば、第1のモデリング材料配合物を吐出する第1のノズルアレイは第1のプリントヘッドに配置され、第2のモデリング材料配合物を吐出する第2のノズルアレイは第2のプリントヘッドに配置される。
【0052】
いくつかの実施形態において、モデリング材料配合物を吐出するノズルアレイと、サポート材料配合物を吐出するノズルアレイは、共に同じプリントヘッドに配置される。いくつかの実施形態において、モデリング材料配合物を吐出するノズルアレイと、サポート材料配合物を吐出するノズルアレイは、別々のプリントヘッドに配置される。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態に係る物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ非限定的な例が
図1Aに示される。システム110は、複数のプリントヘッドを含む吐出ユニット16を有する積層造形装置114を含む。各ヘッドは、以下で説明する
図2A~
図2Cに示されるように、典型的にはオリフィスプレート121に取り付けられるノズル122の1以上のアレイを好ましくは含み、これを通じて液体構築材料配合物124が吐出される。
【0054】
必須ではないが好ましくは、装置114は三次元プリント装置であり、この場合、プリントヘッドは好ましくはインクジェットプリントヘッドであり、構築材料配合物はインクジェット技術により吐出される。これは必ずしも当てはまらなくてもよく、それは、用途によっては、積層造形装置は三次元インクジェットプリント技術を採用する必要がない場合がある故である。本発明の様々な例示的実施形態に従って想定される積層造形装置の代表例として、限定するものではないが、熱溶解積層(fused deposition modeling)装置及び溶融材料配合物堆積装置が挙げられる。
【0055】
各プリントヘッドは、温度制御ユニット(例えば、温度センサ及び/又は加熱装置)及び材料配合物レベルセンサを任意選択的に含み得る、1以上の構築材料配合物リザーバを介して、任意選択的に、かつ好ましくは供給される。構築材料配合物を吐出するために、例えば圧電式インクジェットプリント技術のように、電圧信号がプリントヘッドに印加され、プリントヘッドノズルを介して材料配合物の液滴を選択的に堆積させる。別の例として、サーマルインクジェットプリントヘッドが挙げられる。これらのタイプのヘッドには、構築材料配合物と熱的に接触し、電圧信号により起動されると構築材料配合物を加熱し、その中に気泡を形成する、ヒータ要素が存在する。気泡は構築材料配合物中に圧力を生じ、構築材料配合物の液滴をノズルから吐出させる。圧電及びサーマルプリントヘッドは、固体自由形状製造の当業者には既知である。どのタイプのインクジェットプリントヘッドでも、ヘッドの吐出速度はノズルの数、ノズルのタイプ、及び印加される電圧信号速度(周波数)によって決まる。
【0056】
任意選択的に、吐出ノズル又はノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半分がサポート材料配合物を吐出するように指定され、吐出ノズルの半分がモデリング材料配合物を吐出するように指定され、すなわち、モデリング材料配合物を吐出するノズルの数がサポート材料配合物を吐出するノズルの数と同じであるように選択される。
図1Aの代表例では、4つのプリントヘッド16a、16b、16c、16dが例示されている。ヘッド16a、16b、16c及び16dのそれぞれがノズルアレイを有する。この例では、ヘッド16a及び16bがモデリング材料配合物(複数可)用に、ヘッド16c及び16dがサポート材料配合物用に指定され得る。このように、ヘッド16aは1つのモデリング材料配合物を吐出することができ、ヘッド16bは別のモデリング材料配合物を吐出することができ、ヘッド16c及び16dはともにサポート材料配合物を吐出することができる。代替実施形態において、ヘッド16c及び16dは、例えば、サポート材料配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドにおいて組み合わされてもよい。さらなる代替実施形態において、プリントヘッドのいずれか1以上が、1つより多い材料配合物を堆積させるための1つより多いノズルアレイ、例えば、2つの異なるモデリング材料配合物、又はモデリング材料配合物及びサポート材料配合物を堆積させるための2つのノズルアレイを有することができ、各配合物は、異なるアレイ又は異なる数のノズルを経る。
【0057】
但し、本発明の範囲を限定することは意図されないこと、及びモデリング材料配合物プリントヘッド(モデリングヘッド)の数とサポート材料配合物プリントヘッド(サポートヘッド)の数が異なってもよいことを理解されたい。一般的には、モデリング材料配合物を吐出するノズルアレイの数、サポート材料配合物を吐出するノズルアレイの数、及び各アレイにおけるノズルの数は、例えばサポート材料配合物の最大吐出速度とモデリング材料配合物の最大吐出速度との間の所定の比aを与えるように選択される。所定の比aの値は、各形成された層において、モデリング材料配合物の高さがサポート材料配合物の高さと等しくなることを確実にするように好ましくは選択される。aの典型的な値は、約0.6~約1.5である。
【0058】
本明細書を通して使用される場合、用語「約」は、±10%を指す。
【0059】
例えば、a=1のとき、全てのノズルアレイが作動する場合、サポート材料配合物の全体の吐出速度は、モデリング材料配合物の全体の吐出速度と概ね等しい。
【0060】
装置114は、例えば、p個のノズルのm個のアレイをそれぞれ有するM個のモデリングヘッドと、q個のノズルのs個のアレイをそれぞれ有するS個のサポートヘッドとを、M×m×p=S×s×qとなるように含み得る。M×mのモデリングアレイとS×sのサポートアレイはそれぞれ別個の物理単位として製造され得、アレイ群から組み立て、分解され得る。この実施形態において、各々のこのようなアレイは、自身の温度制御ユニット及び材料配合物レベルセンサを任意選択的にかつ好ましくは含み、その操作について個別に制御された電圧を受ける。
【0061】
装置114は、堆積された材料配合物を硬化させ得る光、熱などを放出するように構成された任意の装置を含み得る、固化装置324をさらに含み得る。例えば、固化装置324は、使用されるモデリング材料配合物に応じて、例えば、紫外線若しくは可視光線若しくは赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子線源であり得る、1以上の放射線源を含み得る。本発明のいくつかの実施形態において、固化装置324は、モデリング材料配合物を硬化又は固化させるよう機能する。
【0062】
固化装置324に加えて、装置114は、溶媒蒸発のためのさらなる放射線源328を任意選択的にかつ好ましくは含む。放射線源328は、任意選択的にかつ好ましくは赤外線を発生する。本発明の様々な例示的実施形態において、固化装置324は紫外線を発生する放射線源を含み、放射線源328は赤外線を発生する。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態において、装置114は、1以上のファンなどの冷却システム134を含む。
【0064】
プリントヘッド(複数可)及び放射線源は、作業面として機能するトレイ360上で往復運動するように好ましくは操作可能なフレーム又はブロック128に好ましくは取り付けられる。本発明のいくつかの実施形態において、放射線源は、プリントヘッドの後に続いて、プリントヘッドによって吐出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化又は固化させるように、ブロックに装着される。トレイ360は、水平に位置決めされる。一般的な慣例に従って、X-Y-Zデカルト座標系はX-Y平面がトレイ360と平行になるように選択される。トレイ360は、好ましくは、鉛直に(Z方向に沿って)、典型的には下方に移動するように構成される。本発明の様々な例示的実施形態において、装置114は、1以上の平坦化(leveling)装置32、例えばローラ326をさらに含む。平坦化装置326は、その上に連続する層を形成する前に、新たに形成された層の直線化し、平坦化し及び/又は厚さを確立するよう機能する。平坦化装置32は、好ましくは、平坦化の際に発生した余分な材料配合物を回収するための廃棄物回収装置136を含む。廃棄物回収装置136は、材料配合物を廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジに送達する、任意の機構を含み得る。
【0065】
使用の際、ユニット16のプリントヘッドは、本明細書においてX方向と呼ばれる走査方向に移動し、トレイ360上を通過する過程で、所定の構成で構築材料配合物を選択的に吐出する。構築材料配合物は、典型的に、1以上の種類のサポート材料配合物と1以上の種類のモデリング材料配合物を含む。ユニット16のプリントヘッドの通過に続いて、放射線源126によるモデリング材料配合物(複数可)の硬化が行われる。ヘッドの逆方向の通過において、堆積されたばかりの層の出発点に戻り、構築材料配合物のさらなる吐出が、所定の構成に従って行われてもよい。プリントヘッドの順方向及び/又は逆方向の通過において、このようにして形成された層は、好ましくはプリントヘッドの順方向及び/又は逆方向の移動における経路を辿る、平坦化装置32によって平坦化されてもよい。プリントヘッドがX方向に沿って出発点に戻ると、プリントヘッドは、本明細書においてY方向と呼ばれるインデックス方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復移動によって同じ層の構築を継続してもよい。あるいは、プリントヘッドは、順方向の移動と逆方向の移動の間、又は1回より多くの順方向-逆方向の移動の後に、Y方向に移動してもよい。プリントヘッドによって行われ単一の層を完成させる一連の走査は、本明細書において単一走査サイクルと呼ばれる。
【0066】
層が完成すると、トレイ360は、続いてプリントされる層の所望の厚さに従って、所定のZレベルまでZ方向に降下される。この手順が繰り返され、三次元物体112を層状に形成する。
【0067】
別の実施形態において、トレイ360は、層内で、ユニット16のプリントヘッドの順方向の通過と逆方向の通過との間でZ方向に変位され得る。このようなZ変位は、平坦化装置を一方向において表面と接触させ、他方向での接触を防止するために行われる。
【0068】
本実施形態は、1以上の液体材料容器又はカートリッジ430を含み、液体材料(複数可)をプリントヘッドに供給する液体材料配合物供給システム330の使用を想定している。供給システム330は、システム110などのAMシステムで使用され得、この場合、各容器内の液体材料は構築材料である。
【0069】
コントローラ20は、製造装置114と、任意選択的にかつ好ましくは供給システム330をも制御する。コントローラ20は、典型的には、制御操作を実行するように構成された電子回路を含む。コントローラ20は、コンピュータオブジェクトデータ(例えば標準テッセレーション言語(Standard Tessellation Language:STL)フォーマットなどの形式でコンピュータ読み取り可能な媒体上に表示されたCAD構成)に基づいて、製造命令に係るデジタルデータを送信するコンピュータ24と好ましくは通信する。典型的に、コントローラ20は、各プリントヘッド又は各ノズルアレイに印加される電圧、及び、各プリントヘッド又は各ノズルアレイ内の構築材料配合物の温度を制御する。
【0070】
製造データがコントローラ20にロードされると、コントローラ20はユーザの介入なしに動作し得る。いくつかの実施形態において、コントローラ20は、例えば、コンピュータ24を用いて、又はコントローラ20と通信するユーザインタフェース116を用いて、オペレータからのさらなる入力を受信する。ユーザインタフェース116は、これらに限定されないが、キーボード、タッチスクリーンなど、当分野で既知の任意のタイプのものであり得る。例えば、コントローラ20は、これらに限定されないが、色、特性歪み及び/又は転移温度、粘度、電気的特性、磁気的特性など、1以上の構築材料配合物のタイプ及び/又は属性を、さらなる入力として受信し得る。他の属性及び属性グループも想定される。
【0071】
【0072】
本実施形態において、システム10は、トレイ12と、それぞれ1以上の分離されたノズルを有する、1以上のノズルアレイをそれぞれ有する複数のインクジェットプリントヘッド16と、を含む。三次元プリントに使用される材料は、上記で詳述したように、1以上の液体材料容器又はカートリッジ430を備えた構築材料供給システム330によってヘッド16に供給される。トレイ12は円盤状であってもよく、又は環状であってもよい。鉛直軸を中心に回転され得るものであれば、非円形の形状も想定される。
【0073】
トレイ12及びヘッド16は、例えば、トレイ12とヘッド16の間の相対的な回転運動を可能とするように任意選択的にかつ好ましくは取り付けられる。これは、(i)トレイ12を、ヘッド16に対して鉛直軸14を中心に回転するように構成すること、(ii)ヘッド16を、トレイ12に対して鉛直軸14を中心に回転するように構成すること、又は(iii)トレイ12及びヘッド16の両方を、鉛直軸14を中心に異なる回転速度(例えば、反対方向の回転)で回転するように構成することにより達成され得る。システム10のいくつかの実施形態を、トレイがヘッド16に対して鉛直軸14を中心に回転するように構成された回転トレイである構成(i)に特に重点的に以下に説明するが、本出願は、システム10の構成(ii)及び(iii)も想定していることを理解されたい。本明細書で説明されるシステム10の実施形態のいずれか1つは、構成(ii)及び(iii)のいずれかに適用できるように調整され得、当業者には、本明細書で説明される詳細を与えられれば、このような調整を行う方法が分かるであろう。
【0074】
以下の説明において、トレイ12と平行であり、軸14から外側を向く方向を半径方向rと称し、トレイ12と平行であり、半径方向rに垂直な方向を、本明細書において方位角方向φと称し、トレイ12に垂直な方向を、本明細書において鉛直方向zと称する。
【0075】
システム10における半径方向rはシステム110におけるインデックス方向yを規定し、方位角方向φはシステム110における走査方向xを規定する。従って、本明細書において、半径方向は互換的にインデックス方向と呼ばれ、方位角方向は互換的に走査方向と呼ばれる。
【0076】
用語「半径方向位置」は、本明細書において使用される場合、軸14から特定の距離にあるトレイ12上又はその上方の位置を指す。この用語がプリントヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、その半径が軸14からの特定の距離でありその中心が軸14にある円である、点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0077】
用語「方位角位置」は、本明細書において使用される場合、所定の基準点に対する特定の方位角におけるトレイ12上又はその上方の位置を指す。このように、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角をなす直線である、点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0078】
用語「鉛直位置」は、本明細書において使用される場合、特定の点で鉛直軸14と交差する平面上の位置を指す。
【0079】
トレイ12は、三次元プリントのための構築プラットフォームとして機能する。1又は物体がプリントされる作業領域は、必須ではないが、典型的にはトレイ12の総面積よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態において、作業領域は環状である。作業領域は26で示されている。本発明のいくつかの実施形態において、トレイ12は、物体の形成中、同じ方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態において、トレイは、物体の形成の際に、少なくとも1回(例えば、振動方式で)回転方向を反転する。トレイ12は、任意選択的にかつ好ましくは取り外し可能である。トレイ12の取り外しは、システム10のメンテナンスのため、又は、所望により新たな物体をプリントする前にトレイを交換するためであり得る。本発明のいくつかの実施形態において、システム10は、1以上の異なる交換トレイ(例えば、交換トレイのキット)を備え、2つ以上のトレイは、異なるタイプの物体(例えば、異なる重量)、異なる動作モード(例えば、異なる回転速度)などについて指定される。トレイ12の交換は、所望により手動で、又は自動で行われ得る。自動交換が採用される場合、システム10は、トレイ12をヘッド16下方の位置から取り外し、交換用トレイ(不図示)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を含む。
図1Bの代表的な例示では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引くように構成された可動アーム40を備えたドライブ38として図示されているが、他のタイプのトレイ交換装置も想定される。
【0080】
プリントヘッド16の例示的実施形態を
図2A~
図2Cに示す。これらの実施形態は、限定するものではないが、システム110及びシステム10を含む、上述のAMシステムのいずれにも採用され得る。
【0081】
図2A及び
図2Bは、1つ(
図2A)及び2つ(
図2B)のノズルアレイ22を有するプリントヘッド16を示す。アレイ内のノズルは、好ましくは線状に、直線に沿って配列されている。プリントヘッド16に液体材料が供給され、プリントシステムのコントローラによって印加される電圧信号に応答して、ノズルアレイ22を介して液体材料を吐出する。ヘッド16には、構築材料配合物である液体材料が供給される。
【0082】
特定のプリントヘッドが2つ以上の線状ノズルアレイを有する実施形態において、ノズルアレイは、任意選択的にかつ好ましくは互いに平行であり得る。プリントヘッドが2つ以上のノズルアレイを有する場合(例えば、
図2B)、ヘッドの全てのアレイに同じ構築材料配合物が供給され得、又は同じヘッドの少なくとも2つのアレイに異なる構築材料配合物が供給され得る。
【0083】
システム110と同様のシステムが採用される場合、全てのプリントヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、走査方向に沿ったそれらの位置が互いにずれた(オフセットした)状態でインデックス方向に沿って配向される。
【0084】
システム10と同様のシステムが採用される場合、全てのプリントヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、それらの方位角位置が互いにずれた状態で、半径方向に(半径方向と平行に)配向される。このように、これらの実施形態では、異なるプリントヘッドのノズルアレイは互いに平行ではなく、むしろ互いに角度をなしており、この角度はそれぞれのヘッド間の方位角のずれに概ね等しい。例えば、1つのヘッドが半径方向に配向され方位角位置φ1に位置付けられ、別のヘッドが半径方向に配向され方位角位置φ2に位置付けられ得る。この例において、2つのヘッド間の方位角のずれはφ1-φ2であり、2つのヘッドの線状ノズルアレイ間の角度もφ1-φ2である。
【0085】
いくつかの実施形態において、2つ以上のプリントヘッドが組み立てられてプリントヘッドのブロックをなしてもよく、この場合、ブロックのプリントヘッドは典型的に互いに平行である。いくつかのインクジェットプリントヘッド16a、16b、16cを含むブロックを
図2Cに示す。
【0086】
いくつかの実施形態において、システム10は、トレイ12が安定化構造30とヘッド16との間にあるように、ヘッド16の下方に位置決めされた安定化構造30を含む。安定化構造30は、インクジェットプリントヘッド16が作動している間に発生し得るトレイ12の振動を防止又は低減するよう機能し得る。プリントヘッド16が軸14を中心に回転する構成では、安定化構造30は、安定化構造30が常にヘッド16の直下にあるように(トレイ12がヘッド16とトレイ12の間にあるように)安定化構造30も好ましくは回転する。
【0087】
トレイ12及び/又はプリントヘッド16は、トレイ12とプリントヘッド16との間の鉛直距離を変化させるように、鉛直軸14と平行に、鉛直方向zに沿って移動するように任意選択的にかつ好ましくは構成される。鉛直方向に沿ってトレイ12を移動させることによって鉛直距離を変化させる構成では、安定化構造30も好ましくはトレイ12とともに鉛直方向に移動する。トレイ12の鉛直位置は固定されたままで、鉛直距離がヘッド16によって鉛直方向に沿って変化する構成では、安定化構造30も固定された鉛直位置に維持される。
【0088】
鉛直方向の動きは、鉛直ドライブ28によって確立され得る。層が完成すると、トレイ12とヘッド16との間の鉛直距離は、次いでプリントされる層の所望の厚さに応じて、所定の鉛直ステップだけ増加されることができる(例えば、トレイ12がヘッド16に対して下げられる)。この手順が繰り返され、層状に三次元物体を形成する。
【0089】
インクジェットプリントヘッド16の操作、及び任意選択的にかつ好ましくはシステム10の1以上の他の構成要素、例えばトレイ12の動きも、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路及び回路によって読み取り可能な不揮発性メモリ媒体を有し得、メモリ媒体は、以下にさらに詳述するように、回路によって読み取られたときに制御操作を回路に実行させるプログラム命令を保存する。
【0090】
コントローラ20は、例えば標準テッセレーション言語(Standard Tessellation Language:STL)又はステレオリソグラフィ輪郭(StereoLithography Contour:SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(Virtual Reality Modeling Language:VRML)、積層造形ファイル(Additive Manufacturing File:AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(Drawing Exchange Format:DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(Polygon File Format:PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットの形態で、コンピュータオブジェクトデータに基づいて製造命令に係るデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することもできる。オブジェクトデータフォーマットは、典型的にはデカルト座標系に従って構築される。これらの場合、コンピュータ24は、コンピュータオブジェクトデータにおける各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を好ましくは実行する。コンピュータ24は、任意選択的にかつ好ましくは、変換された座標系に関して製造命令を送信する。あるいは、コンピュータ24は、コンピュータオブジェクトデータによって提供される元の座標系に関して製造命令を送信してもよく、この場合、座標の変換は、コントローラ20の回路によって実行される。
【0091】
座標の変換は、回転トレイ上での三次元プリントを可能とする。プリントヘッドを備えた静止トレイを備えた非回転システムでは、典型的には、直線に沿って静止トレイの上方を往復移動する。このようなシステムでは、ヘッドの吐出速度が均一であれば、プリント解像度はトレイ上のどの位置でも同じである。システム10では、非回転システムとは異なり、ヘッドポイントの全てのノズルがトレイ12上の同じ距離を同時にカバーするわけではない。任意選択的にかつ好ましくは、異なる半径方向位置において等量の余分な材料配合物を確保するように、座標の変換が実行される。本発明のいくつかの実施形態に係る座標変換の代表例が
図3A~
図3Bに提供され、物体の3つのスライス(各スライスは、物体の異なる層の製造命令に対応する)を示し、
図3Aは、デカルト座標系におけるスライスを示し、
図3Bは、それぞれのスライスに座標変換手順を適用した後の同じスライスを示す。
【0092】
典型的には、コントローラ20は、製造命令に基づいて、及び以下に説明するように記憶されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成要素に印加される電圧を制御する。
【0093】
全般的には、コントローラ20は、トレイ12の回転中に構築材料配合物の液滴を層状に吐出し、例えば、トレイ12上に三次元物体をプリントするようにプリントヘッド16を制御する。
【0094】
システム10は、1以上の放射線源18を任意選択的にかつ好ましくは備え、放射線源18は、使用されるモデリング材料配合物に応じて、例えば、紫外線若しくは可視光線もしく赤外線ランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子線源であり得る。放射線源としては、限定するものではないが、発光ダイオード(LED)、デジタルライトプロセッシング(DLP)システム、抵抗ランプを含む、任意の種類の放射線放出装置が挙げられ得る。放射線源18は、モデリング材料配合物を硬化又は固化させるよう機能する。本発明の様々な例示的実施形態において、放射線源18の動作は、放射線源18を作動及び停止させることができ、放射線源18によって発生される放射線の量も任意選択的に制御することができる、コントローラ20によって制御される。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態において、システム10は、ローラ326又はブレードとして製造され得る、1以上の平坦化装置32をさらに含む。平坦化装置32は、その上に連続層を形成する前に、新たに形成された層を平坦化するよう機能する。いくつかの実施形態において、平坦化装置32は、その対称軸34がトレイ12の表面に対して傾斜し、その表面がトレイの表面と平行になるように位置決めされた円錐ローラの形状を有する。この実施形態は、システム10の側面図(
図1C)に示されている。
【0096】
円錐ローラは、円錐又は円錐台の形状を有し得る。
【0097】
円錐ローラの開き角度は、好ましくは、その軸34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸14との間の距離との間に一定の比が存在するように選択される。ローラが回転する間、ローラの表面上の任意の点pは、点pの鉛直下方の点におけるトレイの直線速度に比例する(例えば、同じ)直線速度を有するため、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に水平にすることを可能とする。いくつかの実施形態において、ローラは、高さh、軸14から最も近い距離における半径R1、及び軸14から最も遠い距離における半径R2を有する円錐台形状を有し、パラメータh、R1及びR2は、関係R1/R2=(R-h)/hを満たし、Rは、軸14からのローラの最も遠い距離である(例えば、Rは、トレイ12の半径とすることができる)。
【0098】
平坦化装置32の動作は、任意選択的にかつ好ましくはコントローラ20によって制御され、コントローラ20は、平坦化装置32を作動及び停止させてもよく、鉛直方向(軸14と平行)及び/又は半径方向(トレイ12と平行であり、軸14に向かう又は軸14から離れる方向)に沿って、その位置を任意選択的に制御してもよい。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態において、プリントヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復移動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さが、トレイ12上の作業領域26の半径方向に沿った幅よりも短い場合に有用である。半径方向に沿ったヘッド16の動きは、任意選択的にかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0100】
いくつかの実施形態は、(同じ又は異なるプリントヘッドに属する)異なるノズルアレイから異なる材料配合物を吐出することによる物体の製造を想定している。これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料配合物から材料配合物を選択し、選択された材料配合物とそれらの特性の所望の組合せを定義する能力を提供する。本実施形態によれば、層による各材料配合物の堆積の空間位置は、異なる材料配合物による異なる三次元空間位置の占有を実施するため、又は2つ以上の異なる材料配合物による実質的に同じ三次元位置又は隣接する三次元位置の占有を実施して、層内の材料配合物の堆積後の空間的組合せ(post deposition spatial combination)を可能とし、それによってそれぞれの位置又は複数の位置で複合材料配合物を形成するために規定される。
【0101】
モデリング材料配合物の任意の堆積後の組合せ又は混合が想定される。例えば、ある特定の材料配合物は吐出されると、その元の特性を保持し得る。しかし、別のモデリング材料配合物や、同一又は近傍の位置に吐出される他の吐出された材料配合物と同時に吐出されると、吐出された材料配合物とは異なる特性又は複数の特性を有する複合材料配合物が形成され得る。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態において、システムは、層の少なくとも1つのためのデジタル材料配合物を吐出する。
【0103】
語句「デジタル材料配合物」は、本明細書及び当分野において使用される場合、異なる材料配合物のピクセル又はボクセルがある領域上で相互にインタレースされるように、ピクセルレベル又はボクセルレベルでの2つ以上の材料配合物の組合せを記述する。このようなデジタル材料配合物は、材料配合物のタイプの選択及び/又は2つ以上の材料配合物の比率及び相対的な空間分布によって影響される新しい特性を示し得る。
【0104】
本明細書において使用される場合、層の「ボクセル」は、層を記述するビットマップの単一ピクセルに対応する層内の物理的な三次元の基本体積を指す。ボクセルのサイズは、構築材料がそれぞれのピクセルに対応する位置に吐出され、平坦化され、固化されると、構築材料によって形成される領域のサイズに概ね等しい。
【0105】
このように、本実施形態は、広範な材料配合物の組合せの堆積、及び、物体の異なる部分において、物体の各部分を特徴付けるのに望ましい特性に応じた材料配合物の複数の異なる組合せからなってもよい物体の製造を可能とする。
【0106】
本実施形態に適したAMシステムの原理及び動作に関するさらなる詳細は、米国特許第9,031,680号に見出され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
従来のAMシステムでは、例えば、例えばCADソフトウェアなどの適切なソフトウェアによって、製造される物体の外形をオペレータが選択することができる。ソフトウェアは典型的には、物体の表面を定義するグラフィック要素(例えば、ポリゴンのメッシュ、非一様有理Bスプラインなど)の形式でコンピュータオブジェクトデータを生成する。グラフィック要素は、「スライサー」として知られるソフトウェアを使用するコンピュータによって処理され、スライサーは、グラフィック要素を、物体の内部形状を定義するとともに、各々が3D物体の層を記述する複数のボクセルを含む複数のスライスとして配置される、ボクセルのグリッドに変換する。いくつかの既知のAMシステムは、物体内部にある程度の制御を提供する。例えば上掲の国際公開第WO2019/021295号では、骨の形状を模した物体は、骨腫瘍、軟骨、神経、脊髄などを模した任意選択の領域を含み得る。
【0108】
本発明者らは、このようなシステムは、物体内部になんらの制御も提供しないシステムに比して有利であるものの、その制御は、AMシステムの製造業者によって予め準備された、可能な内部設計のクローズドリストに基づくものであることから、部分的なものに過ぎず、よって、エンドユーザに、物体の内部構造の完全な制御を提供しないことを見出した。
【0109】
既存のAMシステムの改良の模索において、本発明者らは、エンドユーザに、製造される物体の内部構造に関するより良い制御を提供することが有利であり、特に、エンドユーザに、スライサーソフトウェアによって生成される個々のスライスの構造に対する、改良された制御を提供することが有利であることを見出した。
【0110】
このように、本実施形態は、エンドユーザが1以上の個々のスライスに対してパターン、例えば自由形状パターンを設計し、ゆえに、製造される個々の層の構造を制御することを可能とする設計ツールを提供する。特定のスライスの設計されたパターンを記述する設計データは、任意選択的にかつ好ましくはデータ構造として配置され、次いで、各々が1以上の特定のスライスの設計されたパターン又は設計されたパターンの集まりを記述する、典型的には1以上のコンピュータファイルの形態で、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存される。
【0111】
スライサーソフトウェアは、好ましくは記憶媒体にアクセスし、データ構造を使用して、データ構造内のパターン又は複数のパターンに基づいてスライスに関するAM命令を生成する。具体的には、スライサーソフトウェアは、各スライスの各ボクセルに対して、データ構造によって記述されるとともにそれぞれのボクセルを含むパターンに従って構築材料を割り当てる。各スライスに対するAM命令は、コンピュータ(例えば、コンピュータ24)から、AM命令に従って層を製造するためにAMシステムに制御信号を送信するコントローラ(例えば、コントローラ20)に送信され、これにより、エンドユーザの設計に従って構築された層を提供する。これは、エンドユーザに物体の内部設計を一括して選択することを要求する代わりに、AMシステムが、ユーザが設計した個々の層を製造する点で、従来のAMシステムよりも有利である。
【0112】
本実施形態の設計ツールは、コンピュータ、例えばコンピュータ24によって、表示装置、例えばコンピュータ24の表示装置25、又はユーザインタフェース116に表示されるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を使用する。GUIは、AMシステムのエンドユーザとコンピュータの間に使いやすいインタフェースを提供する。GUIは複数のコンピュータ生成オブジェクトを含み、これらは「GUI制御(コントロール)」又はさらに省略された用語で「制御(コントロール)」と呼ばれる。本実施形態に適したGUI制御の代表例として、限定するものではないが、スライダ、ドロップダウンメニュー、コンボボックス、テキストボックスなどが挙げられる。
【0113】
GUI制御は、コンピュータに信号を伝達するデバイスによって、ユーザが行う物理的な操作に反応する。このようなデバイスは、コンピュータのマウス、タッチスクリーン、キーボードなどであり得、任意選択的にマイクを含むことができ、この場合、コンピュータは音声起動ソフトウェアを実行するように構成されてもよい。GUIは、非インタラクティブなテキストやグラフィックなどの追加情報を任意選択的にかつ好ましくは表示し得る。
【0114】
操作のあいだ、エンドユーザは、コンピュータのプロセッサによって実行される操作を開始するために、制御を選択し、起動することができる。GUIは、例えばGUIとプロセッサとの間で信号を通信するように構成されたI/O回路によって、起動信号をプロセッサに送信する。起動信号は、それぞれの制御の起動時、又は後の時点(例えば、別の制御の起動時)のいずれかにおいてプロセッサに送信され得る。制御は、任意選択的にかつ好ましくは、プロセッサがこれらの制御の起動に応答して実行する操作を表示するような方法でラベル付けされるグラフィカル要素としてGUIに表現される。制御は、予め定義されたレイアウトに配置されてもよく、あるいは他のGUI制御によってエンドユーザが行う特定のアクションに応答して動的に作成され及び/又は削除されてもよい。例として、ユーザは、別の制御を開閉し、制御を展開し、画像を表示し、及び/又は、GUIレイアウト(しばしばGUIスクリーンと呼ばれる)間の切り替えを行うボタンを選択してもよい。
【0115】
本実施形態のGUIは、GUI制御によって、エンドユーザから、1以上の個々のスライスに対してパターン、例えば自由形状パターンに係る入力を受信する。GUI制御の1以上の起動に応答して、コンピュータのI/O回路は、この入力に関連する信号をGUIからプロセッサに伝達し、プロセッサは、これらの信号を、設計されたパターンを記述するデジタル設計データに変換する。プロセッサは、設計データをデータ構造として配置し、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存する。
【0116】
本実施形態に適したGUI500の代表例を
図4A~
図4Dに示す。GUI500は、平面セグメント選択制御502及びパターン設計領域504を含む。平面セグメント選択制御502は、以下にさらに詳述するように、エンドユーザによって平面パターンが設計される特定の平面セグメントをエンドユーザが選択することを可能とする。平面セグメント選択制御502は、
図4A~
図4Dに示されるように、スライダ制御の形態であり得、又は、これに限定されないが、所望により、テキストボックスやドロップダウンメニューなどの他の形態であり得る。これらのタイプのGUI制御の組合せも想定される。このように、制御502は、単一のGUI制御であってもよく、又は2つ以上のGUI制御のセットを含んでもよい。
【0117】
本発明の様々な例示的実施形態において、選択制御502は、エンドユーザが、例えばドロップダウンメニュー502aによって、方向を選択することをも可能とし、選択された平面セグメントは、選択された方向に対して垂直(直角)である。限定するものと捉えられるべきではないが、
図4A~
図4Dの概略図において、選択された方向はz方向であり、これにより、選択された平面セグメントはz方向に直角である(例えば、AMシステムによって最終的に形成される層と平行である)。但しこれは必ず当てはまらなくともよく、それは、用途によっては、選択された平面セグメントがz方向に直角であることが望まれない場合もある故である。例えば、エンドユーザは、例えばメニュー502aを用いて、y方向又はx方向を選択し得る。また、制御502が、AMシステムの3つのネイティブ直交方向のうちの1つではない方向、例えば、(例えばシステム110などのデカルトAMシステムにおいて)x方向、y方向及びz方向のうち少なくとも1つ、又は、(例えばシステム10などの回転AMシステムにおいて)r方向、φ方向及びz方向のうち少なくとも1つに直交しない方向を選択することを可能とする実施形態も想定される。
【0118】
また、GUI500が、それぞれが、エンドユーザが平面セグメントについて異なる方向を選択し、その結果物体内の複数の平行でない平面にわたって平面パターンを定義することを可能とする、複数の画面(不図示)を含む実施形態も想定される。複数の画面は、そこに表示される様々な制御の点で互いに同じであってもよい。複数の画面は、同時に(例えば、並べて)又は連続的に表示されてもよく、その場合、GUI500は、エンドユーザがどの画面を表示するかをGUI500に命令できるようにするための画面選択501を含んでもよい。
【0119】
平面セグメント選択制御502は、エンドユーザがセグメントのシリアル番号(
図4A~
図4Dではシリアル番号2000が例示されている)を特定するか、又は選択された方向に沿った平面セグメントの位置を特定することを可能とし得る。
【0120】
選択された平面セグメントに対応する鉛直位置における三次元物体512の断面510は、好ましくは、制御502の状態の任意の変化’に応答して、GUI500の視覚化領域514に表示される。GUI500は、断面510が取得されるとともに視覚化領域514に表示される平面をユーザが選択することを可能とする断面表示制御503を含み得る。制御503は、任意選択的にかつ好ましくは、異なる断面が、互いに平行又は非平行であり得る異なる平面で取得される物体のいくつかの断面図を表示するように構成され得る。物体の異なる断面図は、同じ視覚化領域514に、並べて表示された異なる視覚化領域514に、又はGUI500の異なる画面に表示され得る。制御503は、視覚化のため断面図を組み合わせることもできる。
【0121】
限定するものと捉えられるべきではないが、
図4A~
図4Dに示す例示的な図において、物体512は人間の心臓の合成画像である。特定の平面セグメント(例えば、
図4A~
図4Dに示されるような、セグメントNo.2000)について設計された平面パターンは、三次元物体の他の平面においても採用され得る。例えば、特定の設計された平面パターンは、平面セグメントのスタックに、又は三次元物体512の全ての平面セグメントに採用され得る。制御502を用いて平面セグメントの選択を変更することにより、エンドユーザは、物体512の他の平面セグメントで採用されたものと同じパターンのビューを提供されることができる。
【0122】
図4A~
図4Dは、パターンが単一の物体について設計された実施形態を示しているが、これは必ず当てはまらなくともよく、それは、いくつかの実施形態において、複数の物体又は物体の複数のシェルについてパターンを設計することが望まれることがある故である。これらの実施形態は、構造が同じ及び/又は異なる複数の物体をプリントする場合、又は複数のシェルの集合体として定義される物体をプリントする場合に特に有用である。複数の物体についてパターンを設計すること、又は物体の2つ以上のシェルについて別々にパターンを設計することが望まれる場合、複数の物体又は同じ物体の複数のシェルの形状が、場合によっては、ロードされ、視覚化領域514に表示される。視覚化領域514が異なる物体を表示する場合、AMシステムは、最終的に、AMシステムのトレイ上で横方向にずれた位置にこれらの物体を製造する。視覚化領域514が同じ物体の異なるシェルを表示する場合、AMシステムは、アセンブリ内のシェルの相対位置に基づいて、コンピュータオブジェクトデータに定義されているように、AMシステムのトレイ上に物体を最終的に製造する。
【0123】
パターン設計領域504は、パターン形成制御506、及び材料選択制御508を含み、制御506及び508の各々は、以下にさらに詳述するように、単一のGUI制御又は2つ以上のGUI制御のセットであり得る。平面パターンは、典型的には、入れ子になった輪郭の1以上のセットとして定義され、パターン形成制御506は、エンドユーザが、輪郭リスト制御516によって、入れ子になった(ネスト状の)輪郭の数を定義することを可能とし、また、輪郭の形状及びサイズ制御518によって、各輪郭の幾何学的特性を定義することを可能とする。本発明のいくつかの実施形態において、パターン形成制御506は、ユーザが、輪郭テクスチャ制御519によって輪郭に適用されるテクスチャを選択又は定義することをも可能とする。輪郭テクスチャ制御519は、エンドユーザが、物体の最も外側の面にある輪郭、及び/又は物体の最も外側の面に対して内部にある輪郭を含む、入れ子になった輪郭のいずれかについて、パターンを選択することを可能とし得る。入れ子になった制御を含む設計された平面パターンは、断面510の上に重畳して表示される。平面パターンの輪郭のうちの1つの代表例を600で示す。典型的には、輪郭リスト制御516は輪郭追加起動ボタン516aを含む。ボタン516aが作動すると、輪郭リスト制御516における輪郭リストの輪郭が1つ増える。
【0124】
輪郭リスト制御516で輪郭が選択されると、輪郭の形状及びサイズ制御518を用いて、それぞれの輪郭の形状及びサイズが設定され得る。エンドユーザは、例えばテキストボックス制御520を用いて、それぞれの輪郭について人間が読める(human-readable)名前を選択することもできる。
【0125】
輪郭(例えば、輪郭600)の形状やサイズは、複数の方法で提供され得る。いくつかの実施形態において、輪郭は、それぞれの平面セグメントの幾何学的特徴に対して測定された1以上の輪郭形状パラメータに基づいて画定される。
図4A~
図4Dに示される実施形態において、これらは限定するものと捉えられるべきではないが、制御518は、エンドユーザが、物体512の境界からの輪郭の外側及び内側境界までの距離d
1、d
2をそれぞれ入力することを可能とする、1対のテキストボックス又はスピンボタンを含む。これら2つの距離パラメータは、輪郭の形状(それぞれの平面セグメントの鉛直位置における断面510の周縁の形状による)、輪郭の外側境界のサイズ(ユーザが選択した距離d
1による)、及び平面セグメントの面内で測定される輪郭の幅(ユーザが選択した2つの距離d
1、d
2の間の差による)を設定する。
【0126】
輪郭の形状やサイズを定義する他の輪郭形状パラメータも想定される。例えば、距離d1、d2を用いて輪郭を定義する代わりに、輪郭は、(輪郭の外側境界と物体512の境界との間の)距離d1と輪郭の幅とによって定義され得る。さらに、エンドユーザが、平面セグメントの境界の形状とは無関係に、自由形状の物体として輪郭を定義することが可能となる実施形態が想定される。例えば、GUI500は、GUIオプションボタン522を含み得、それによりボタン522の起動時にエンドユーザは断面510に自由形状の輪郭を描くことができる。
【0127】
それぞれの平面セグメントの幾何学的特徴に対して測定された1以上のパラメータに基づいて輪郭を定義することの利点は、輪郭の形状及びサイズを、同じ物体の他の平面セグメント又は異なる物体の1以上の平面セグメントに自動的に適合させることが容易になることである。輪郭を自由形状として定義することの利点は、平面セグメントをパターン化する可能性の数が増えることである。
【0128】
輪郭テクスチャ制御519は、エンドユーザが利用可能なテクスチャのリストから適用されるテクスチャを選択することを可能とするドロップダウンメニューの形態であり得る。輪郭テクスチャ制御519は、エンドユーザがコンピュータファイルとして保存された画像を輪郭に適用されるテクスチャとして使用することを可能とする、ファイル選択ダイアログ(不図示)を代替的に又は追加的に起動し得る。
【0129】
材料選択制御508は、エンドユーザが、AMシステムによって輪郭が形成される構築材料(モデリング及び/又はサポート)を選択することを可能とする。このように、設計データを含むデータ構造がスライサーソフトウェアによって読み込まれると、スライサーソフトウェアは、エンドユーザが制御508を用いて選択した材料(複数可)に基づいて、平面セグメントのそれぞれの輪郭に属する各ボクセルに材料を割り当てる。制御508は、予め定義された材料のリストから材料を選択することを可能とする1以上のドロップダウンメニューの形態であり得る。好ましくは、GUI500は材料情報領域524を含み、材料情報領域524はシステムに現在ロードされている構築材料の種類を表示する。これは、AMシステムに(例えば、コントローラ20に)問合せ信号(interrogating signal)を送信し、AMシステムに現在ロードされている構築材料のタイプに関連する信号を応答的に受信することによって達成し得る。典型的には、問合せ信号は、GUI500のロード直後にコンピュータにより自動的に送信される。好ましくは、材料選択制御508は、現在システムにロードされている構築材料の種類の中からしか選択できないように構成される。例えば、AMシステムに現在ロードされていない材料は、制御508のドロップダウンメニューでグレーアウトされ得る。AMシステムに現在ロードされている材料が、硬化後に室温で液体状態を維持する材料又は非硬化性材料を含む場合、制御508は、エンドユーザがこの種類の材料も選択できるようにすることができる。
【0130】
材料情報領域524は、任意選択的にかつ好ましくは、設計された平面パターンに既に使用されている材料に関する表示も表示し得る。
【0131】
GUI500は、本発明のいくつかの実施形態において、ボクセルのいくつかが構築材料によって占有されていない疎な(diluted)パターンを含むデジタル設計データを生成するように構成され得る。これは、材料選択制御508によってなされ得る。これらの実施形態において、制御508は、ユーザが、設計パターンが疎となるオプションを選択することを可能とする。例えば、制御508で選択可能な材料の1つは空気であってもよく、これにより、特定のパターンが、構築材料によって占有されたボクセルと空のボクセルの両方を含むデジタル混合体として設計され得る。
【0132】
材料選択制御508は、任意選択的にかつ好ましくは、輪郭のいずれに対しても1以上の構築材料の選択を可能とするように構成される。例えば、材料選択制御508は、材料追加起動ボタン508aを含み得、ボタン516aの起動時に、制御508内のドロップダウンメニューの数が1増加し、それぞれの輪郭について別の材料を選択できるようにする。
図4Bは、材料追加起動ボタン508aが2回起動された結果、2つの材料選択ドロップダウンメニューが追加された場合を示している。
【0133】
特定の輪郭に対して単一の材料が選択された場合、スライサーソフトウェアは選択された材料を(制御518によって幾何学的に定義された)輪郭に属する全てのボクセルに割り当てる。
図4Aは、輪郭600が単一の構築材料を用いて形成されるように定義されている場合を表している。
【0134】
図4Bは、輪郭600が1つより多い構築材料を用いて形成されるように定義されている場合を表している。特定の輪郭に対して複数の材料が選択された場合、選択された各材料に対して、スライサーソフトウェアはそれぞれの材料を、当該輪郭に属するボクセルの少なくとも1つに割り当てる。動作において、AMシステムは、材料のこの割り当てに基づいて、それぞれの輪郭を形成するためデジタル材料配合物を吐出する。本発明のいくつかの実施形態において、材料選択制御508は、輪郭のデジタル材料を形成する構築材料の相対量を受信するようにも構成される。これは、例えば、(
図4Bに示されるような)GUIスライダ制御及び/又はGUIテキストボックスの形態の相対量選択制御526によって達成され得る。制御526は、2つ以上の材料選択ドロップダウンメニューが表示されている場合(例えば、
図4B参照)にのみ任意選択的にかつ好ましくは表示される。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態において、材料選択制御508は、2つ以上の構築材料が輪郭に割り当てられている場合に、材料が輪郭のボクセル間で分配(分布)される規則をエンドユーザが選択又は定義できるようにするための材料分配規則制御528を含む。制御528は、任意選択的にかつ好ましくは、2つ以上の材料選択ドロップダウンメニューが表示されている場合(例えば、
図4B参照)にのみ表示される。材料分配規則制御528は、ドロップダウンメニューの形態であり得、選択された規則について予想される分配の図を表示するグラフィック領域をも含み得る。
【0136】
エンドユーザが材料分配規則を選択する規則のリストは、任意選択的にかつ好ましくは、複数の所定の関数を含み、各関数は、スライサーソフトウェアによって採用されると、輪郭内のボクセルの位置を記述する入力パラメータを受信し、出力値を提供し、この出力値は、スライサーソフトウェアによって、それぞれのボクセルのための材料を確率的に選択するために使用される。制御526が採用される実施形態において、制御526によって選択された相対量は、選択された機能のさらなる入力パラメータとして使用される。リスト中の関数は、例えば、限定はされないが、シンプレックスノイズ関数、オープンシンプレックスノイズ関数、ウォーリー(Worley)ノイズ関数、パーリン(Perlin)ノイズ関数、球散乱(sphere scattered)ノイズ関数、ウェーブレットノイズ関数、値ノイズ関数、複合ノイズ関数(例えば、関数の関数の形の関数合成)などのノイズ関数であり得る。パーリンノイズ関数、球散乱ノイズ関数、ジャイロイド(gyroid)ノイズ関数、ランダムノイズ関数によって生成される分布の代表例をそれぞれ
図5A~
図5Dに示す。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態において、材料分配規則制御528は、ユーザが、所定の規則を使用するのではなく、規則又は規則の一部を定義することを可能とし得る。例えば、制御528は、ユーザが、ユーザの定義による関数若しくはユーザの定義による関数合成を入力すること、又は、採用される場合には、制御528によって例えば前述のドロップダウンメニューに表示される所定の関数のうちの1つを修正すること、を可能とするように構成され得る。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態において、材料選択制御508は、エンドユーザが、物体512内で、分配規則(例えば、ノイズ関数)が適用される方向θを選択することを可能とするための分配規則回転制御530を含み得る。ギリシャ文字θは、空間における一般的な方向を象徴しており、面内方向であってもよく、この場合、分配規則は平面セグメントと平行なベクトルに沿って適用され、又は面外方向であってもよく、この場合、分配規則は平面セグメントに垂直な成分を少なくとも持つベクトルに沿って適用される。本発明のいくつかの実施形態において、材料選択制御508は、エンドユーザが、選択された分配規則によって生成される基本単位セルのサイズに対するスケールsを選択することを可能とするための分配規則スケーリング制御532を含み得る。好ましくは、制御528のグラフィック領域はスケールsの選択に応答し、よって制御532の変化が制御528のグラフィック領域に示される基本単位セルの変化として示される。
【0139】
エンドユーザは、任意選択的にかつ好ましくは、(制御528を用いて選択された)固定された分配規則を輪郭全体に適用するか、又は輪郭の異なるセグメントに沿って分配規則を変化させるかを選択してもよい。これらの実施形態において、材料選択制御508は、エンドユーザがそれぞれの輪郭に沿って分配規則を調整するための調整規則を入力できるようにするための分配調整制御534を含む。典型的には、制御534は、任意選択的にかつ好ましくは、エンドユーザが分配調整作動ボタン534bを作動させた後にのみ表示される(例えば、
図4C参照)。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態において、分配規則の調整は、制御528を用いて選択された分配規則に基づいて行われる。限定するものと捉えられるべきではないが、
図4Cに示される実施形態において、制御534は、輪郭全体に対する相対量を定義する代わりに、輪郭の異なるセグメント(この例では、セグメント1とセグメント2の2つのセグメント)に対して異なる相対量を定義する点を除き、制御526(構築材料の相対量を選択できるようにする)と同様である。制御534は、各セグメントについて、出発点及び終点、又は、等価的に、終点とセグメントの長さを定義することができる。あるいは、制御534は、各セグメントについて1つの終点のみを定義することができ、コンピュータは、次のセグメントについて定義された終点に基づいて、各セグメントの他の終点を決定することができる。
【0141】
制御534は、セグメント追加起動ボタン534aを含むことができ、ボタン534aの起動時に制御534のセグメント数が1セグメント増加し、それぞれの輪郭の別のセグメントの相対量を選択することを可能とする。好ましくは、制御526を用いて定義された相対量は、制御534を用いて定義されたセグメントに含まれない輪郭の任意の部分に使用されるデフォルトの相対量を規定する。
【0142】
図4Cを参照すると、本発明のいくつかの実施形態において、GUI500のパターン設計領域504は、エンドユーザが、隣接する輪郭の界面における構築材料の量の段階的な変化を定義することを可能とするエッジブレンディング制御536をさらに含む。好ましくは、GUI500の視覚化領域514は、それぞれの2つの隣接する輪郭を、これらの輪郭の構築材料のグラフィカル表現が、それらの間の界面で段階的に変化するように表示する。
図4Cは、輪郭600と隣接する輪郭601及び602との間の段階的な変化の代表例を概略的に示す。エッジブレンディング制御536は、GUIスライダ及び/又はテキストボックスの形態であり得、エンドユーザが、段階的変化が採用される輪郭600、601及び602のそれぞれの部分を定義することを可能とする。本発明の例示的実施形態において、制御536は、隣接する輪郭間の界面、すなわち界面600/601及び界面600/602から測定される、輪郭601及び602の各々への輪郭600の段階的変化の浸透距離を定義するために使用され得る。例えば、
図4Cに示す例において、輪郭600の段階的変化は、輪郭602の幅に5距離単位(例えば5mm)進入するが、輪郭601には進入しない(ゼロ進入距離)。
【0143】
エンドユーザは、任意選択的にかつ好ましくは、輪郭全体に沿って輪郭の形状を定義する輪郭形状パラメータについて同じ値を維持するか、これらのパラメータの1以上を輪郭の異なるセグメントに沿って変化させるかを選択することもできる。このような選択は、形状変化起動ボタン538bによることができ、ボタン538bが起動されると、エンドユーザは、輪郭の異なるセグメントに沿ってこれらのパラメータの1以上を変化させることが可能となり、ボタン538bが起動されない場合、輪郭形状パラメータの同じ値が輪郭全体に沿って維持される。
【0144】
図4Dは、ボタン538bの起動後のGUI500を示す。ボタン538bの起動時に、GUI500は、例えばパターン設計領域504内に、輪郭形状変化制御538を表示し、輪郭形状変化制御538は、エンドユーザに、輪郭の長さに沿って輪郭の局所形状を変化させるための輪郭形状変化規則を入力することを可能とする。輪郭形状変化制御538は、輪郭の異なるセグメント(この例では、2つのセグメント)について輪郭の異なる幅を定義するためのテキストボックス又はスピンボタンのセットを含み得る。制御538は、輪郭セグメント追加ボタン538aを含むことができ、ボタン538aの起動時に、制御538においてセグメントの数が1セグメント増加し、それぞれの輪郭の別のセグメントの幅の選択が可能となる。制御538は、各セグメントについて、出発点及び終点、又は、等価的に、終点とセグメントの長さを定義することができる。あるいは、制御538は、各セグメントについて1つの終点のみを定義することができ、コンピュータは、次のセグメントについて定義された終点に基づいて、各セグメントの他の終点を決定することができる。好ましくは、制御518を用いて定義された幅は、制御538を用いて定義されたセグメントに含まれない輪郭の任意の部分に使用されるデフォルトの幅を規定する。
【0145】
制御538と534のいずれについても、輪郭のセグメントは複数の方法で定義され得る。本発明のいくつかの実施形態において、セグメントは、物体の製造に使用される、AMシステムに固有の(native)座標系を用いて定義される。このように、システム10が採用される場合には、前述の極座標系(r,φ)が使用され、システム110が採用される場合には、前述のデカルト座標系(x,y)が使用される。あるいは、輪郭セグメントは、物体512の断面510に特有の軸に従って定義され得る。例えば、断面510は、互いに必ずしも直交せず、AMシステムの固有の方向のいずれにも必ずしも平行でない2つの軸ξ及びηにわたって定義された二次元座標系によって表され得る。典型的に、必須ではないが、軸ξは、断面510の最長径に沿って定義される。軸ηは、断面510の最短径に沿って、又は軸ξに垂直に定義され得る。輪郭セグメントが断面510に特有の軸に従って定義される実施形態の代表例が
図6A及び
図6Bに示される。
【0146】
図6Aは、断面510が2軸ξ及びηにわたって定義された二次元座標系によって表される実施形態における断面510を示す。示されているのは、いくつかの入れ子になった輪郭600、602、604、606を含むパターンであり、輪郭600の幅はその長さに沿って変化し、ξ
0で示される点からξ
4で示される点までξ軸に沿って広がっている。軸ξ上に、3つの追加位置ξ
1、ξ
2、ξ
3がマークされ、輪郭600に沿って、ξ
0≦ξ<ξ
1を満たすξ座標によって特徴付けられる第1のセグメント、ξ
1≦ξ<ξ
2を満たすξ座標によって特徴付けられる第2のセグメント、ξ
2≦ξ<ξ
3を満たすξ座標によって特徴付けられる第3のセグメント、及びξ
3≦ξ≦ξ
4を満たすξ座標によって特徴付けられる第4のセグメント、の4つのセグメントを定義する。輪郭600について、制御518が幅w
0を定義し、制御538がξ=ξ
1における幅w
1を定義し、ξ=ξ
2における幅w
2を定義し、ξ=ξ
3における幅w
3を定義するものとする。この場合、輪郭600の幅は、ξ=ξ
0又はξ=ξ
4である輪郭600に沿った全ての点についてw
0であり、ξ=ξ
iである輪郭600に沿った全ての点についてw
iであり、このときi=1、2又は3である。輪郭600に沿った他の全ての点については、幅はそれぞれのセグメントの端点の幅値の間で段階的に(例えば、直線的に)変化する。
【0147】
図6Bは、別の輪郭608が追加された後の
図6Aの断面510を示し、分配調整制御534が輪郭608に対して起動されている。輪郭608は、
図6Bにおいてξ
0で示される点から、
図6Bにおいてξ
3で示される点まで、ξ軸に沿って広がっている。軸ξ上に、2つの追加位置ξ
1及びξ
2がマークされ、輪郭608に沿って、ξ
0≦ξ<ξ
1を満たすξ座標によって特徴付けられる第1のセグメント、ξ
1≦ξ<ξ
2を満たすξ座標によって特徴付けられる第2のセグメント、及びξ
3≦ξ<ξ
4を満たすξ座標によって特徴付けられる第3のセグメント、の3つのセグメントを定義する。簡潔にするため、輪郭608について、2つの異なる材料、材料A及び材料Bが、制御508によって選択され、相対量選択制御526が、材料Aの相対量と材料Bの相対量の比がR
0であるように、2つの材料の相対量を選択したものとする。さらに、輪郭608について、制御534が、材料Aの相対量と材料Bの相対量の比がξ=ξ
1においてR
1、ξ=ξ
2においてR
2であるように、材料Aと材料Bの相対量を定義するとする。この場合、材料Aの相対量と材料Bの相対量の比は、ξ=ξ
0又はξ=ξ
3である輪郭608に沿った全ての点についてR
0であり、ξ=ξ
iである輪郭608に沿った全ての点についてR
iであり、ここでi=1又は2である。輪郭608に沿った他の全ての点については、材料Aの相対量と材料Bの相対量の比は、それぞれのセグメントの端点における比の値の間で段階的に(例えば、直線的に)変化する。
【0148】
図6A及び6Bは特定の軸ξに沿った幅の変化を示しているが、幅は任意の数の軸に沿って変化させることができる。このように、ξ軸に関する上記の説明は、η軸、並びにξ軸及びη軸の両方に垂直な軸の少なくとも一方についても繰り返すことができ、同じ輪郭が異なる位置で異なる幅を有し得る。例えば、幅はX、Y、Z軸のうち少なくとも2軸に沿って非一様であり得る。
【0149】
再び
図4A~
図4Dを参照すると、GUI500は、任意選択的にかつ好ましくは、それぞれの定義された輪郭の1以上の予想される特性の予測を提供する、1以上の特性プレディクタ制御550を含み得る。例えば、プレディクタ(予測器)550として、限定はされないが、(例えば、ショアA硬度として表される)輪郭の硬度を予測する硬度プレディクタなどの機械的特性プレディクタなどが挙げられる。特性プレディクタ550は、表示領域552と、例えばオプションボタンなどの制御セレクタ(選択器)554を含み得る。セレクタ554が起動されると、コンピュータはそれぞれの特性を予測し、その結果が領域552に表示される。コンピュータは、選択された構築材料、及び選択されたノイズ関数及び修正に従ったそれらの予想される分布に基づいて、予測を計算することができる。このような予測は、材料と材料分布の複数の組合せのそれぞれについて項目を有するルックアップテーブルによってなされ得る。また、選択された材料、ノイズ関数、及び任意選択的に修正を入力において受信し、予測された特性を出力において提供する、訓練された機械学習手順によって行われる予測も想定される。
【0150】
本発明の様々な例示的実施形態において、制御516aを起動することによってエンドユーザにより作成された任意の輪郭に加えて、輪郭リスト制御516は、「外側輪郭」及び「背景」と呼ばれる2つのデフォルト輪郭を含む。背景輪郭は、好ましくは、他の輪郭のいずれにも属さない物体516の各ボクセルについて、構築材料又は複数の構築材料を定義するよう機能する。典型的に、エンドユーザが背景輪郭を選択すると、幾何学的特性の定義を可能とする制御(例えば、制御518、536、538)はグレーアウトされるので、エンドユーザは、制御508、及び任意選択的に制御526、528、534をも用いて、他の輪郭のいずれにも属さない三次元物体512の全領域に割り当てられる材料を定義することのみが可能である。
【0151】
外側輪郭は、好ましくは、断面510の周縁で開始する輪郭を規定するよう機能する。典型的には、エンドユーザが外側輪郭を選択すると、外側境界d1の定義を可能とする制御はd1=0に設定され、非インタラクティブ(例えば、グレーアウト)となり、輪郭の外側境界が断面510の周縁と一致することが確実とされる。さらに、外側輪郭に関する許容幅は、物体512の最も外側のシェルの必要な厚さに関する所定の制約に基づいて上方から制限される。このように、例えば、エンドユーザは、所定の閾値より小さいd2の値を入力することを防止され得る。さらに、外側輪郭については、物体512の外側表面の要求される機械的特性に関する所定の制約又は一連の制約に基づいて、制御508にリストされた材料の一部が許可されない(例えば、グレーアウトされる)。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態において、GUI500は、エンドユーザが、全ての輪郭を含むパターン全体を記述するデータ構造とは別に、特定の輪郭の構成(例えば、形状、サイズ、輪郭に対する1以上の構築材料の関連付け)をコンピュータのストレージに保存することを可能とするための制御540を含む。これらの実施形態の利点は、ユーザが個々の輪郭の個人ライブラリを構築することを可能とすることである。同様に、そして独立して、GUI500は、本発明のいくつかの実施形態において、エンドユーザが、全ての輪郭を含むパターン全体を記述するデータ構造とは別に、特定の材料の組合せ(例えば、材料のリスト、比率、分配規則)をコンピュータのストレージに保存することを可能とするための制御542を含み得る。これらの実施形態の利点は、ユーザがデジタル材料定義の個人ライブラリを構築できることである。
【0153】
本発明のいくつかの実施形態において、GUI500は輪郭繰り返し制御544を含む。制御544は、GUIオプションボタンの形態であってよく、起動されると、エンドユーザによって定義された最も内側の輪郭から始まり、既に定義された輪郭が同じ順序で入れ子式に繰り返される、輪郭の入れ子になったシーケンスを生成する。好ましくは、この繰り返しは、断面510が輪郭で完全に埋まるまで継続する。
【0154】
本実施形態は、パターン形成制御506を用いて定義された輪郭の間に1以上の重なりがある状況をも想定している。これらの実施形態において、パターンを記述するデータ構造は、重なり合う輪郭間のそれぞれの重なりが、重なり合う輪郭間の階層に基づいて、重なり合う輪郭の1つに関連付けられるように構築される。階層は、例えば輪郭階層制御546によってエンドユーザにより定義され得る。制御546は、階層スコアを数値(例えば、整数)として提供するスピンボタンの形態であってよく、2つの輪郭間の重なりは、2つの輪郭のうちより高い階層スコアを有する方の重なっている輪郭に関連付けられる。制御546は、いずれの2つの輪郭も同じ階層スコアを割り当てられないように構成され得る。
【0155】
次に
図7を参照するが、
図7は、本発明の様々な例示的実施形態に係る、積層造形のためのデータを符号化するのに適した方法のフローチャート図である。別途定義されない限り、以下に説明される動作は、多くの組合せ又は実行順序で、同時に又は連続して実行され得ることを理解されたい。特に、フローチャート図の順序付けは限定するものとみなされるべきではない。例えば、以下の説明又はフローチャート図に特定の順序で示される2つ以上の動作は、異なる順序(例えば、逆の順序)で、又は実質的に同時に実行され得る。さらに、以下に説明されるいくつかの動作は任意選択的なものであり、実行されなくてもよい。
【0156】
方法は700で開始し、任意選択的にかつ好ましくは701に続き、上記で詳述したようにAMシステムに充填された構築材料の種類が取得される。方法は702に進み、上記で詳述されたGUI500が表示装置上に表示され、703に進み、上記で詳述したようにGUI500の視覚化領域514に三次元物体の断面が表示される。物体は、必ずしもAMによって製造されることを意図したものでなくともよい。これは、異なる物体の平面セグメントを定義するために、同じパターンが自動的に適応され得る故である。方法は704に進み、上記で詳述したように、表示された断面が、入れ子になった輪郭を有する平面パターンで占有される。方法は705に進み、平面パターンを記述するデータ構造が構築され、コンピュータのストレージに保存される。
【0157】
データ構造はGUI500の制御から取得される全ての情報を含み、AMシステムのスライサーソフトウェアが読み取り可能な形式で構築されている。データ構造は幾何学的情報及び材料情報を含み、任意選択的にかつ好ましくはメタデータ(例えば、作成者、作成時間など)をも含んでよい。幾何学的情報は、データ構造に記述されたパターンの各々を形成する全ての輪郭(及び、存在する場合には、全ての輪郭セグメント)の三次元座標の形式をとる。材料情報は、各輪郭(及び、存在する場合には、各輪郭セグメント)を構築材料又は構築材料の組合せと関連付け、及び、存在する場合には、材料分配関連付け規則と関連付ける。
【0158】
方法は706で終了する。
【0159】
図8は、本発明の様々な例示的実施形態に係る、層状の三次元物体の積層造形に適した方法のフローチャート図である。方法は710で開始し、711に進み、三次元物体のコンピュータオブジェクトデータがコンピュータにロードされる。方法は712に進み、1以上の平面パターンを記述するデータ構造(例えば、方法700を実行することによって準備されたデータ構造)がコンピュータにロードされる。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態において、方法は、712において、複数のデータ構造及びデータ構造間の階層を受信する。階層は、データ構造自体において符号化されることができ、又は外部ソースからロードされ得る。階層は、数値の階層スコアの形式であってよく、より高いスコアは階層スケール上のより高い位置に対応し、より低い階層スコアが割り当てられたデータ構造よりも優先されるデータ構造に対応する。データ構造の各々は、物体全体の異なる位置の範囲(同じ方向に沿って、又は異なる方向に沿って)に関連付けられる。但し、場合によっては、2つ以上の範囲が部分的に重なり、2つのデータ構造が同じボクセル又はボクセル群を含む平面パターンを記述する。
【0161】
713で、コンピュータオブジェクトデータは、コンピュータで実行されるスライサーソフトウェアによってスライシングされ、各々が複数のボクセルに定義され、製造される物体の層の1つを記述する、複数のスライスを記述するスライスデータを提供する。スライシング動作713は、好ましくは、各スライスの各ボクセルに対し、それぞれのデータ構造によって記述されるとともにそれぞれのボクセルを含む平面パターンに従って構築材料を割り当てる。典型的には、スライシング動作713は、まず、データ構造内の幾何学的情報を使用して、それぞれのボクセルがどの輪郭又は輪郭セグメントに属するかを決定し、次に、材料情報を使用して、ボクセルに、決定された輪郭又は輪郭セグメントに関連付けられた構築材料を割り当てる。
【0162】
データ構造のうちの2つが同じボクセルを含む平面パターンを含む場合、方法は、このようなボクセルの各々について、階層に従ってデータ構造のうちの1つを好ましくは選択し、次いで、選択されたデータ構造内の材料情報に基づいて、そのボクセルに構築材料を割り当てる。
【0163】
714において、スライスデータは、複数のスライスにそれぞれ対応する複数の層の積層造形のためにAMシステムのコントローラに送信される。
【0164】
方法は715で終了する。
【0165】
本明細書において使用される場合、用語「約」は±10%を指す。
【0166】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」及びそれらの活用形は、「含むがこれに限定されない」を意味する。
【0167】
用語「からなる(consisting of)」は、「を含み、これに限定される」を意味する。
【0168】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、組成物、方法又は構造が、さらなる成分、工程及び/又は部分を含んでいてもよいが、当該さらなる成分、工程及び/又は部分が、権利請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0169】
本明細書において使用される場合、単数形(「a」、「an」及び「the」)は、文脈が明確に特段の定めをしていない限り、複数形の参照を含む。例えば、用語「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」は、その混合物を含む複数の化合物を含んでもよい。
【0170】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態が範囲形式で提示されていることがある。範囲形式での説明は、あくまで便宜上及び簡潔性のためもので、本発明の範囲に対する非柔軟な限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記述は、全ての可能な部分範囲に加え、当該範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲に加え、当該範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは範囲の広さに関係なく当てはまる。
【0171】
本明細書において数値範囲が示される場合は常に、示される範囲内の任意の引用数値(小数又は整数)を含むことが意図される。第1の指示数字と第2の指示数字「の間の範囲である(ranging/ranges between)」及び第1の指示数字「から(to)」第2の指示数字「までの範囲である(ranging/ranges from)」という語句は、本明細書において互換的に使用され、第1及び第2の指示数字、並びにその間の全ての小数及び整数を含むことが意図されている。
【0172】
明確さのために別個の実施形態の文脈で説明された本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明された本発明の様々な特徴は、別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで、又は本発明の任意の他の説明された実施形態で適切に提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能である場合を除き、それらの実施形態に必須の特徴とみなされるべきではない。
【0173】
上記で説明され、以下の特許請求の範囲のセクションで権利請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けがなされる。
【実施例】
【0174】
ここで、以下の実施例が参照されるが、実施例は、上記の説明とともに、本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示すものである。
【0175】
例示的なプロトコル
図9は、平面パターンを符号化するためのエンドユーザプロトコルを例示するフローチャート図である。プロトコルは、背景材料と外側輪郭の定義から開始する。プロトコルは、さらなる輪郭が所望されるか否かが判断される決定まで続く。否である場合、プロトコルは輪郭のシーケンスとその階層を定義し、次いでパターンデータをデータ構造としてコンピュータのストレージ媒体に保存する。さらなる輪郭が所望される場合、プロトコルは輪郭の位置と幅を定義し、材料(ノイズ関数及び相対量を含む)を輪郭に関連付け、所望によりエッジブレンディングをも定義する。特定の輪郭について定義された材料は、平面パターン全体を記述するデータ構造とは別に保存され得る。同様に、定義された輪郭は、平面パターン全体を記述するデータ構造とは別に保存され得る。
【0176】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替、変更及び変形が当業者にとって明らかであることは明白である。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内にある、全てのこのような代替、変更及び変形を包含することが意図される。
【0177】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が、参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれることを出願人(ら)は意図する。さらに、本出願におけるいずれの参考文献の引用又は特定も、このような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されてはならない。セクションの見出しが使用される場合、それらは必ずしも限定的であるものと解釈されるべきではない。さらに、本出願のいずれの優先権書類も、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】