(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シリル化有機変性化合物
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20241031BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20241031BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20241031BHJP
C08G 18/71 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C07F7/18 W CSP
C08G18/32 046
C08G18/38 093
C08G18/71 080
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529925
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 US2022050200
(87)【国際公開番号】W WO2023096809
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】デャオ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】プカン,モンジット
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ニール
【テーマコード(参考)】
4H049
4J034
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP02
4H049VP03
4H049VQ21
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS21
4H049VU34
4H049VW01
4H049VW02
4J034BA06
4J034CA15
4J034CA16
4J034CB01
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC32
4J034CC34
4J034CC52
4J034CD04
4J034CD05
4J034CD15
4J034DA03
4J034HA01
4J034HA04
4J034HA07
4J034HA13
4J034HB16
4J034HC03
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034RA05
(57)【要約】
式(A)を有する少なくとも1つの部分:
【化27】
式中、下付文字aは1または2であり、Dのそれぞれは独立してNHまたはOであり、X、YおよびZのそれぞれは独立して未置換または置換されたCまたはNであり、X、YおよびZの間の点線はXおよびYまたはYおよびZのいずれかの間の任意選択的な2重結合を示し、但しX、YまたはZのいずれかが置換されたN原子である場合、かかる置換されたN原子は2重結合には関与せず;そしてQのそれぞれは独立してOまたはSである、および
式(B)を有する少なくとも2つの部分:
【化28】
を含む、シリル化有機変性化合物が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル化有機変性化合物であって:
式(A)を有する少なくとも1つの部分を含み:
【化15】
式中、下付文字aは1または2であり、Dのそれぞれは独立してNHまたはOであり、X、YおよびZのそれぞれは独立して未置換または置換されたCまたはNであり、X、YおよびZの間の点線はXおよびYまたはYおよびZのいずれかの間の任意選択的な2重結合を示し、但しX、YまたはZのいずれかが置換されたN原子である場合、かかる置換されたN原子は2重結合には関与せず;そしてQのそれぞれは独立してOまたはSであり;また、
式(B)を有する少なくとも2つの部分を含み:
【化16】
式中、下付文字bは約1から3の整数であり、そしてR
1のそれぞれは独立して、1から約12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、2から約12の炭素原子とヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、3から約12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、3から約6の炭素原子とヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル基、5から約18の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から約12の炭素原子を含むアルケニル基、約6の炭素原子を含むアリール基、約7から約12の炭素原子を含むアラルキル基、少なくとも1つの酸素原子を含み構造:
-R
3-(OCH
2CH
2)
c(OCH
2CH(CH
3))
dOR
4
を有し、ここで下付文字cおよびdはそれぞれ独立して0、または1から約20であるアルキル基からなる群より選択される1価の基であり、そして
2つのR
1基から形成される2価の基は共有結合を介して相互に結合され、但し(i)2つのR
1基が相互に結合される場合、bは2または3であり、そして(ii)c+dの和は1から約20であり;また、
R
2のそれぞれは独立して1から約12の炭素原子を含む直鎖アルキル基、4から約12の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、約5または6の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から約12の炭素原子を含むアルケニル基、約6の炭素原子を含むアリール基、および7から約12の炭素原子を含むアラルキル基からなる群より選択される1価の基であり;
R
3は1から約10の炭素原子を含む直鎖アルキレン基、3から約10の炭素原子を含む分岐鎖アルキレン基、および5から約10の炭素原子を含むシクロアルキレン基からなる群より選択される2価の基であり;そして
R
4は1から約18の炭素原子を含む直鎖アルキル基、4から約18の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から約18の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から約18の炭素原子を含むアルケニル基、6から約18の炭素原子を含むアリール基、7から約18の炭素原子を含むアラルキル基、および水素からなる群より選択される1価の基であり、またはR
4は1から約10の炭素原子を含むアルキレン基、5から約10の炭素原子を含むシクロアルキレン基、およびフェニレン基からなる群より選択される2価の基である。
【請求項2】
一般式(I)を有し:
【化17】
式中、AおよびBは上記で定義した通りであり;そして、Lのそれぞれは独立して直鎖、分岐鎖、または環状構造を有し300までの炭素原子を含む2価の連結基であり、そしてその中に、アルキル基、アルケン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、尿素基、ウレイド基、カーボネート基、イミド基、アミド基、フェニル基、フェニレンエーテル基、エポキシ基、セルロース基、シリコーン基、ヒドロキシル基、アミン基、スルホン基、硫黄基、ハロゲン基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される基を含んでおり、そして下付文字nは1から1,00の整数である、請求項1のシリル化有機変性化合物。
【請求項3】
シリル化有機変性化合物は、1から約20の炭素原子のアルキレン基、5から約50の炭素原子のシクロアルキレン基、5から約50の炭素原子のアリーレン基、およびウレイド基からなる群より選択された1つまたはより多くの基を含む2価の直鎖、分岐鎖または環状構造であるL部分をさらに含む、先行する請求項のいずれか1つのシリル化有機変性化合物。
【請求項4】
式:
【化18】
を有し、式中Lは1から約20の炭素原子の2価の直鎖または分岐鎖アルキレン基であり、そしてR
1は1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基である、先行する請求項のいずれか1つのシリル化有機変性化合物。
【請求項5】
式:
【化19】
を有し、式中Rのそれぞれは独立して1から約20の炭素原子の2価の直鎖または分岐鎖アルキレン基であり、R
Arは5から約50の炭素原子の2価のアリーレン基または2価のシクロアルキレン基であり、そしてR
1のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基である、先行する請求項のいずれか1つのシリル化有機変性化合物。
【請求項6】
式:
【化20】
を有し、式中R
1およびR
5のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基であり、そして下付文字nは1から約1,000の整数である、先行する請求項のいずれか1つのシリル化有機変性化合物。
【請求項7】
式:
【化21】
を有し、式中R
1およびR
5のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基であり、そして任意選択的に、式中1つまたはより多くのR
5部分はHであり、また下付文字nは1から約1,000である、請求項1から5のいずれか1つのシリル化有機変性化合物。
【請求項8】
一般式(II)を有し:
【化22】
式中、AおよびBは上記で定義した通りであり;Lのそれぞれは独立して直鎖、分岐鎖、または環状構造を有し300までの炭素原子を含む2価の連結基であり、そしてその中に、アルキル基、アルケン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、尿素基、ウレイド基、カーボネート基、イミド基、アミド基、フェニル基、フェニレンエーテル基、エポキシ基、セルロース基、シリコーン基、ヒドロキシル基、アミン基、スルホン基、硫黄基、ハロゲン基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの基を含んでおり;下付文字nは1から約1,000の整数であり;下付文字mは2から約1,000の整数であり;また、Cは約10,000までの炭素原子を有する未置換または置換された直鎖、分岐鎖、または環状の有機基であり、下付文字nは1から約1,000であり;下付文字mは2から約1,000である、請求項1または3のシリル化有機変性化合物。
【請求項9】
Lのそれぞれは1から約20の炭素原子のアルキレン基、5から約50の炭素原子のシクロアルキレン基、5から約50の炭素原子のアリーレン基、およびウレイド基からなる群より選択される1つまたはより多くの基を含む2価の直鎖、分岐鎖または環状構造であり;そしてCは6から約30の炭素原子の3価の有機基である、請求項8のシリル化有機変性化合物。
【請求項10】
式:
【化23】
を有し、式中R
1のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基であり、そしてLのそれぞれは独立して1から約8の炭素原子の直鎖、分岐鎖または環状アルキレン基である、請求項8または請求項9のシリル化有機変性化合物。
【請求項11】
一般式(III)を有し:
【化24】
式中、A部分およびB部分は上記で定義した通りであり;Lのそれぞれは独立して直鎖、分岐鎖、または環状構造を有し300までの炭素原子を含む2価の連結基であり、そしてその中に、アルキル基、アルケン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、尿素基、ウレイド基、カーボネート基、イミド基、アミド基、フェニル基、フェニレンエーテル基、エポキシ基、セルロース基、シリコーン基、ヒドロキシル基、アミン基、スルホン基、硫黄基、ハロゲン基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの基を含んでいる、請求項1または3のシリル化有機変性化合物。
【請求項12】
式中Lのそれぞれが、1から約8の炭素原子のアルキレン基、5から約18の炭素原子のシクロアルキレン基、5から約18の炭素原子のアリーレン基、およびウレイド基からなる群より選択される1つまたはより多くの基を含む2価の直鎖または分岐鎖構造である、請求項11のシリル化有機変性化合物。
【請求項13】
式:
【化25】
を有し、式中R
1のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基であり、そしてLのそれぞれは独立して1から約60の炭素原子の直鎖または分岐鎖アルキレン基である、請求項1、3、11または12のシリル化有機変性化合物。
【請求項14】
先行する請求項のいずれか1つのシリル化有機変性化合物を作成するためのプロセスであって:
イソシアネート有機シランを2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンまたは2,4,5-トリアミノ-6-ヒドロキシピリミジンの少なくとも1つと反応させることを含む、プロセス。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか1つのシリル化有機変性化合物を作成するためのプロセスであって:
ジイソシアネート分子を2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンまたは2,4,5-トリアミノ-6-ヒドロキシピリミジンの少なくとも1つと反応させ、ここでジイソシアネート分子はモル過剰に添加され、そして得られた生成物をアミン官能化シランと反応させてシリル化有機変性化合物を生成することを含む、プロセス。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか1つのシリル化有機変性化合物を作成するためのプロセスであって:
イソホロンジイソシアネートと2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンと反応させることを含み、ここで2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンはモル過剰量で添加され、そして得られた生成物をイソシアネート有機シランと反応させてシリル化有機変性化合物を生成する、プロセス。
【請求項17】
イソシアネート有機シランは一般式:
【化26】
を有し、式中Lは直鎖、分岐鎖、または環状構造を有する2価の連結基であり、そしてその中に、アルキル基、アルケン基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、尿素基、ウレイド基、カーボネート基、イミド基、アミド基、フェニル基、フェニレンエーテル基、エポキシ基、セルロース基、シリコーン基、ヒドロキシル基、アミン基、スルホン基、硫黄基、ハロゲン基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される基を含んでおり、そしてR
1のそれぞれは独立して1から約8の炭素原子の直鎖アルキル基である、請求項14または請求項16のいずれか1つのプロセス。
【請求項18】
イソシアネート有機シランと2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンを大体モル等量の量で反応させることをさらに含み、そして得られた生成物がトリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネートと大体モル比で約3:1で反応されてシリル化有機変性化合物が生成される、請求項14のプロセス。
【請求項19】
イソシアネート有機シランを2,4,5-トリアミノ-6-ヒドロキシピリミジンと約2.8:1から約3.2:1のモル比で反応させることをさらに含む、請求項14または請求項16のいずれか1つのプロセス。
【請求項20】
請求項1から13のいずれか1つのシリル化有機変性化合物、およびポリイミド、無色ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびこれらの混合物からなる群より選択される樹脂を含む、樹脂組成物。
【請求項21】
請求項1のシリル化有機変性化合物を含む可撓性の銅クラッドラミネートまたは可撓性ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリル化有機変性化合物に関する。本発明はまた、シリル化有機変性化合物の合成プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を他の材料と共に使用する用途においては、製品の品質、性能、および長期信頼性を決定するについて、界面結合が非常に重要である。有機ポリマー/樹脂は通常、金属、ガラス、およびセラミックのような無機材料とは、それらの化学的性質の相違に起因して、界面結合が弱い。
【0003】
従来から、シリル化有機変性化合物が、有機樹脂と無機基材の間の界面接着性を増大させるために使用されている。シランカップリング剤のシリル部分は無機基材上のヒドロキシル基と結合し、またシランカップリング剤の有機官能基は有機樹脂と結合する。
【0004】
しかしながら多くの用途において、既存のシリル化有機変性化合物は、可撓性の銅クラッドラミネートにおけるような、工業的な条件に所望とされる十分な界面結合を提供するものではない。
【0005】
かくして、工業的な用途について所望とされる、十分な界面結合をもたらすシリル化有機変性化合物に対するニーズが存在している。
【発明の概要】
【0006】
本願の発明者らは驚くべきことに、種々の基材の間の界面結合を改善させるシリル化有機変性化合物を見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明のシリル化有機変性化合物は、無機基材部分とシリル部分との間に結合をもたらすのみならず、水素結合官能基、すなわち本願で定義する部分(A)と、多くの異なる有機樹脂および基材との間に、「配位された」水素結合をもたらすと考えられる。本願で説明するシリル化有機変性化合物は、樹脂と基材の間の界面結合を改善させる。
【0007】
本願において提供されるのはシリル化有機変性化合物であり、これは:
式(A)を有する少なくとも1つの部分を含み:
【化1】
式中、下付文字aは1または2であり、Dのそれぞれは独立してNHまたはOであり、X、YおよびZのそれぞれは独立して未置換または置換されたCまたはNであり、X、YおよびZの間の点線はXおよびYまたはYおよびZのいずれかの間の任意選択的な2重結合を示し、但しX、YまたはZのいずれかが置換されたN原子である場合、かかる置換されたN原子は2重結合には関与せず;そしてQのそれぞれは独立してOまたはSであり;また、
式(B)を有する少なくとも2つの部分を含み:
【化2】
式中、下付文字bは1から3の整数、好ましくは2または3であり、そしてR
1のそれぞれは独立して、1から約12の炭素原子、好ましくは1から約8の炭素原子、より好ましくは1から約4の炭素原子を含む直鎖アルキル基、2から約12の炭素原子とヒドロキシル基、好ましくは2から約10の炭素原子とヒドロキシル基、そしてより好ましくは2から約6の炭素原子とヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、4から約12の炭素原子、好ましくは4から約8の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、4から約6の炭素原子とヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル基、5から約18の炭素原子、好ましくは6から約12の炭素原子、より好ましくは6から約10の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から約12の炭素原子、好ましくは2から約8の炭素原子を含むアルケニル基、約6の炭素原子を含むアリール基、7から約12の炭素原子を含むアラルキル基、少なくとも1つの酸素原子を含み構造:
-R
3-(OCH
2CH
2)
c(OCH
2CH(CH
3))
dOR
4
を有し、ここで下付文字cおよびdはそれぞれ独立して0、または1から約20であるアルキル基からなる群より選択される1価の基であり、そして
2つのR
1基から形成される2価の基は共有結合を介して相互に結合され、但し(i)2つのR
1基が相互に結合される場合、bは2または3であり、そして(ii)c+dの和は1から約20であり;また、
R
2のそれぞれは独立して1から約12の炭素原子、好ましくは1から約8の炭素原子、より好ましくは1から約4の炭素原子を含む直鎖アルキル基、4から約12の炭素原子、好ましくは4から約8の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、約5または6の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から約12の炭素原子、好ましくは2から約8の炭素原子を含むアルケニル基、約6の炭素原子を含むアリール基、および7から約12の炭素原子を含むアラルキル基からなる群より選択される1価の基であり;
R
3は1から約10の炭素原子、好ましくは1から約6の炭素原子、より好ましくは1から約4の炭素原子を含む直鎖アルキレン基、4から約10の炭素原子、好ましくは4から約8の炭素原子を含む分岐鎖アルキレン基、および5から約10の炭素原子を含むシクロアルキレン基からなる群より選択される2価の基であり;そして
R
4は1から約18の炭素原子、好ましくは1から約12の炭素原子、より好ましくは1から約8の炭素原子、そして最も好ましくは1から約4の炭素原子を含む直鎖アルキル基、4から約18の炭素原子、好ましくは4から約12の炭素原子、より好ましくは4から約8の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から約18の炭素原子、より好ましくは6から約12の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から約18の炭素原子、より好ましくは2から約12の炭素原子、より好ましくは2から約8の炭素原子を含むアルケニル基、約6から約18の炭素原子、好ましくは約6から約12の炭素原子を含むアリール基、7から約18の炭素原子、より好ましくは7から約12の炭素原子を含むアラルキル基、および水素からなる群より選択される1価の基であり、またはR
4は1から約10の炭素原子、好ましくは1から約8の炭素原子、そしてより好ましくは1から約6の炭素原子を含むアルキレン基、5から約10の炭素原子を含むシクロアルキレン基、およびフェニレン基からなる群より選択される2価の基である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】は、実施例1の反応の進行のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析であり;
【
図2】は、実施例2の反応の進行のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析であり;
【
図3】は、実施例3の最初の工程の反応の進行のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析であり;そして
【
図4】は、実施例3の2番目の工程の反応の進行のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願の明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は以下に示すように理解される。
【0010】
単数形「ある」、「1つの」および「その」は複数形を含んでおり、また特定の数値に対する参照は、文脈において特に断りがない限り、少なくともその特定の数値を含んでいる。
【0011】
本願において提示されるあらゆるすべての例示、または例示的な用語(例えば「のような」)の使用は、単に本発明をよりわかりやすく説明することを意図したものであり、特に断りがない限り本発明の範囲に対して制限を課するものではない。
【0012】
「含む」、「包含する」、「含有する」、「特徴とする」という用語、およびこれらの文法的に等価な表現は、包括的または非限定的な用語であって、付加的な記載されていない構成要素または方法的過程を排除するものではなく、またより限定的な用語である「からなる」および「から本質的になる」を含むものであることが理解される。
【0013】
本明細書におけるいかなる用語も、特許請求の範囲に記載されていない構成要素が本発明の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されてはならない。
【0014】
さらに、構成的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして本明細書に明示的または黙示的に開示され、および/または請求項において記載されたすべての化合物、材料または物質は、その群の個々の構成因子およびそれらのすべての組み合わせを含むことが理解される。
【0015】
実施例以外において、または特に断りがない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載された材料の量、反応条件、時間の長さ、物質の定量化された特性およびその他を表現するすべての数値は、表現中に用語「約」が使用されているか否かを問わず、すべての場合において用語「約」によって修飾されているものとして理解される。
【0016】
本願における1つの実施形態においては、本願で記載した任意の数値範囲はその範囲内のすべての部分範囲、およびそうした範囲または部分範囲の種々の端点の任意の組み合わせを、それらが実施例または本明細書の他の部分で記載されているか否かを問わず含むことが理解される。
【0017】
本願においてはまた、任意の特定の属または種によって記載され、または本明細書の実施例の欄において詳述された本願発明の成分のいずれのものも、1つの実施形態においては、その成分に関して本明細書の他の部分に記載された範囲の任意の端点についてそれぞれ代替的な定義を規定するために使用することができ、したがって1つの非限定的な実施形態においては、そうした他の部分に記載された範囲の端点を置き換えることができることが理解される。
【0018】
本開示にしたがって1つまたはより多くの他の物質、構成要素、または成分と最初に接触される直前の時点において存在し、現場で形成され、ブレンドされ、または混合される物質、構成要素、または成分に対する言及が行われる。反応生成物、得られる混合物またはその他として特定される物質、構成要素または成分は、本開示にしたがい常識と関連技術分野の当業者(例えば化学技術者)の通常の知識を適用して行われた接触、現場形成、ブレンド、または混合操作の過程の間における化学反応または変性を通じて、独自性、特性、または特徴を獲得してよい。化学反応物質または出発材料の化学生成物または最終物質への変性は連続的に展開する過程であり、それが生ずる速度とは無関係である。したがって、そうした変性過程が進行するにつれて、出発物質と最終物質の混合物が存在してよく、さらには熱力学的寿命に応じて、当業者に知られた現在の分析技術により検出が容易または困難な中間種が存在してよい。
【0019】
本願の明細書または特許請求の範囲において化学名または化学式によって参照される反応物質および成分は、単数形または複数形のいずれで参照される場合でも、化学名または化学種によって参照される別の物質(例えば別の反応物質または溶媒)と接触するよりも前に存在しているものとして識別されてよい。得られる混合物、溶液、または反応媒体において生ずる予備的および/または遷移的な化学変化、変性、または反応が存在する場合には、中間種、マスターバッチその他として識別され、反応生成物または最終物質の有用性とは別個の有用性を有していてよい。特定された反応物質および/または成分を本開示にしたがって要求される条件の下で一緒に合わせることから、他の後続の変化、変性、または反応がもたらされてよい。こうした他の後続の変化、変性、または反応においては、一緒に合わせられる反応物質、成分または構成要素が、反応生成物または最終物質を特定または指定してよい。
【0020】
本願において「シリル化有機変性化合物」という表現は、「シランカップリング剤」と同義に使用される。記述されるシリル化有機変性化合物は、無機基材上のヒドロキシ基および樹脂の反応性部分の両者と相互作用し、および/または反応することができ、例えば有機樹脂の有機基(単数または複数)と反応性の材料であると理解される。理論に束縛されることを望むものではないが、式(A)として定義された部分は、基材と「配位された」水素結合を形成する。加えて、本願で記述するシリル化有機変性化合物の式(B)の-OR1部分はそれぞれ、水と反応することによってシラノール基を生成する部分であり、そしてこのシラノール基は無機材料、例えば金属またはガラスといった無機基材と脱水縮合されて、式:≡Si-OM(M:無機材料)の化学結合を形成する。
【0021】
本願で使用される表現「樹脂」は、硬化したポリマー材料を含むだけでなく、ポリマー前駆体材料、例えばポリイミド前駆体を含むことができる。本願の樹脂は、有機樹脂および無機樹脂の両者を含んでいる。
【0022】
本願で使用される表現「複素環基」は、一方が炭素、他方がヘテロ原子、例えばN、O、およびSである少なくとも2つの元素の原子環であると理解される。
【0023】
本願で使用される表現「相互作用する」は、シリル化有機変性化合物の有機部分または水素原子が基材と化学的に反応する能力を指している。
【0024】
本願の実施形態において、上述したA部分およびB部分を含むシリル化有機変性化合物は、下付文字a=1であり、線状構造を有し、一般式(I)を含む:
【化3】
式中、AおよびBは上記で定義した通りであり;そして、Lのそれぞれは独立して直鎖、分岐鎖、または環状構造を有し300までの炭素原子を含む2価の連結基であり、そしてその中にアルキル基、好ましくは20までの炭素原子、より好ましくは1から8の炭素原子、そして最も好ましくは1から4の炭素原子の直鎖または分岐鎖アルキル基、2から20の炭素原子、好ましくは2から8の炭素原子、より好ましくは2から4の炭素原子のアルケニレン基、アルキレン基、好ましくは1から20の炭素原子、より好ましくは1から8の炭素原子、そして最も好ましくは1から4の炭素原子の直鎖または分岐鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、好ましくは5から約50の炭素原子、より好ましくは5から18の炭素原子、そしてさらにより好ましくは約6から約12の炭素原子のシクロアルキレン基、非限定的な例として例えばシクロペンチレン基およびシクロヘキシレン基、アリーレン基、好ましくは5から約50の炭素原子、より好ましくは約5から約12の炭素原子、そしてさらにより好ましくは約6から約10の炭素原子のアリーレン基、非限定的な例として例えばフェニレン基、エーテル基、好ましくは1から20の炭素原子のエーテル基、より好ましくは1から4の炭素原子のエーテル基、エステル基、好ましくは1から20の炭素原子、より好ましくは1から4の炭素原子のエステル基、ウレタン基、好ましくは2から20の炭素原子、より好ましくは2から6の炭素原子のウレタン基、それぞれが20までの炭素原子の尿素基、ウレイド基、カーボネート基、イミド基、アミド基、フェニル基、フェニレンエーテル基、エポキシ基、およびセルロース基、並びにシリコーン基、ヒドロキシル基、アミン基、スルホン基、硫黄基、ハロゲン基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される基を含んでおり、そして下付文字nは1から1,000、好ましくは1から500、より好ましくは1から100の整数である。
【0025】
1つの実施形態において、式(I)のシリル化有機変性化合物は式中のLのそれぞれが1から約20の炭素原子のアルキレン基、5から約18の炭素原子のシクロアルキレン基、5から約18の炭素原子のアリーレン基、およびウレイド基からなる群より選択された1つまたはより多くの基を含む2価の直鎖または分岐鎖構造である。
【0026】
1つの実施形態において、一般式(I)のシリル化有機変性化合物は式:
【化4】
を有し、式中Lは1から約20の炭素原子、より好ましくは1から約4の炭素原子の2価の直鎖または分岐鎖アルキレン基であり、そしてR
1は1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0027】
別の実施形態において、一般式(I)のシリル化有機変性化合物は式:
【化5】
を有し、式中Rのそれぞれは独立して1から約20の炭素原子、より好ましくは1から約4の炭素原子の2価の直鎖または分岐鎖アルキレン基であり、R
Arは5から約50の炭素原子、より好ましくは6から約10の炭素原子の2価のアリーレン基であり、そしてR
1のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0028】
別の実施形態において、一般式(I)のシリル化有機変性化合物は式:
【化6】
を有し、式中R
1およびR
5のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基であり、そして下付文字nは1から約1,000、好ましくは1から約500、そしてより好ましくは1から約250の整数である。
【0029】
さらに別の実施形態において、一般式(I)のシリル化有機変性化合物は式:
【化7】
を有し、式中R
1およびR
5のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基であり、そして任意選択的に、式中1つまたはより多くのR
5部分はHであり、また下付文字nは1から約1,000、好ましくは1から約500、そしてより好ましくは1から約250の整数である。
【0030】
本願の実施形態において、上述したA部分およびB部分を含むシリル化有機変性化合物は下付文字a=1であり、そして分岐鎖構造を有し、また一般式(II)を含み:
【化8】
式中、AおよびBは上記で定義した通りであり;Lのそれぞれは独立して直鎖、分岐鎖、または環状構造を有し300までの炭素原子を含む2価の連結基であり、そしてその中に式(I)について上記に記載した基を含み;また、Cは約10,000までの炭素原子、好ましくは約18までの炭素原子、より好ましくは約12までの炭素原子を有する未置換または置換された直鎖、分岐鎖、または環状の有機基であり、ここで直鎖の有機基についての下端点は1炭素原子であり、分岐鎖の有機基についての下端点は4炭素原子であり、そして環状の有機基についての下端点は約5または6炭素原子である。
【0031】
1つの実施形態において、式(II)のシリル化有機変性化合物は式中のLのそれぞれが1から約20の炭素原子、好ましくは1から約8の炭素原子、そしてより好ましくは1から4の炭素原子のアルキレン基、5から約50の炭素原子、好ましくは5から18の炭素原子、そしてより好ましくは約6から約12の炭素原子のシクロアルキレン基、5から約50の炭素原子、好ましくは約5から約18の炭素原子、より好ましくは約6から約12の炭素原子のアリーレン基、およびウレイド基からなる群より選択される1つまたはより多くの基を含む2価の直鎖または分岐鎖構造であり;またCは3価の有機部分、好ましくは3から約30の炭素原子、好ましくは3から約12の炭素原子の3価のアルキル基、アリール基、好ましくは約6から約12の炭素原子のアリール基、アラルキル基、好ましくは6から約30の炭素原子、より好ましくは約7から約20の炭素原子のアラルキル基、約6から約30の炭素原子、好ましくは約7から約20の炭素原子のアルカリール基である。
【0032】
1つの実施形態において、式(II)のシリル化有機変性化合物は式:
【化9】
を有し、式中R
1のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基であり、そしてLのそれぞれは独立して1から約20の炭素原子の直鎖、分岐鎖または環状アルキレン基である。
【0033】
本願の実施形態において、上記したA部分およびB部分を含むシリル化有機変性化合物は式中の下付文字a=2であり、一般式(III)を含み:
【化10】
式中AおよびBは定義した通りであり;そしてLのそれぞれは独立して300までの炭素原子を含む直鎖、分岐鎖または環状構造を有する2価の連結基であり、そして式(I)および(II)について上述した基を含んでいる。
【0034】
実施形態において、式(II)のシリル化有機変性化合物は式中Lのそれぞれが、1から約8の炭素原子のアルキレン基、5から約18の炭素原子のシクロアルキレン基、5から約18の炭素原子のアリーレン基、およびウレイド基からなる群より選択される1つまたはより多くの基を含む2価の直鎖または分岐鎖構造である。
【0035】
1つの特定の実施形態において、式(III)のシリル化有機変性化合物は式:
【化11】
【0036】
を有し、式中R1のそれぞれは独立して1から約4の炭素原子の直鎖アルキル基であり、そしてLのそれぞれは独立して1から約60の炭素原子の直鎖または分岐鎖アルキレン基である。上述したA部分およびB部分を含むシリル化有機変性化合物は任意のプロセスによって作成することができるが、しかし好ましい非限定的な実施形態においては、このプロセスはイソシアネート有機シランを2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンおよび2,4,5-トリアミノ-6-ヒドロキシピリミジンの少なくとも1つと反応させることを含んでいる。
【0037】
イソシアネート有機シランは任意の既知のおよび/または商業的に入手可能なイソシアネート有機シランであることができ、そして好ましくは、イソシアネート有機シランは一般式を有し:
【化12】
式中Lは直鎖または分岐鎖構造を有する2価の連結基であり、そして式(I)-(III)について上述した基をその中に含み、好ましくは式中Lは1から約20の炭素原子、好ましくは約3の炭素原子の直鎖アルキレン基であり、または代替的には式中Lは、2価のウレイド部分、および2価のアリーレンまたはシクロアルキレン部分に関連して上記した2価のアルキレン部分を含む有機基であり、そしていずれの場合にも、R
1のそれぞれは独立して1から約8の炭素原子の直鎖アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0038】
ある実施形態において、上記したプロセスはイソシアネート有機シランをモル過剰にして、好ましくはイソシアネート有機シランと2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンが約1.8:1から約2.2:1のモル比、より好ましくは約2:1のモル比において実施することができ、式(I)のシリル化有機変性化合物が生成される。より特定的には、プロセスがイソシアネート有機シランを2,4,5-トリアミノ-6-ヒドロキシピリミジンと約2.8:1から約3.2:1のモル比で、好ましくは約2.9:1から約3.1:1、より好ましくは3:1のモル比で反応させることを含む場合、得られる生成物は式(III)である。
【0039】
代替的な実施形態において本願のシリル化有機変性化合物は、ジイソシアネート分子を2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンまたは2,4,5-トリアミノ-6-ヒドロキシピリミジンの少なくとも1つと反応させることを含むプロセスによって作成することができ、そこにおいてジイソシアネート分子はモル過剰で添加され、そして得られた生成物はアミン官能化シランと反応されてシリル化有機変性化合物が生成される。
【0040】
任意のジイソシアネート分子を使用してよいが、好ましくはジイソシアネートは、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネートおよびその異性体、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1-メチル-フェニル-2,4-フェニルジイソシアネート、4,4'-ジフェニル-メタンジイソシアネート、2,4'-ジフェニル-メタンジイソシアネート、4,4''-ビフェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、および3,3'-ジメチル-ジフェニル-プロパン-4,4'-ジイソシアネートといったジイソシアネートからなる非限定的な群から選択される。
【0041】
任意のアミン官能化シランを使用してよいが、好ましくはアミン官能化シランは一般式(AS)を有し:
【化13】
式中R
1およびR
2は本願で定義した通りであり、R
6は1から約12の炭素原子、好ましくは約2から約8の炭素原子、より好ましくは約3から約6の炭素原子の直鎖、分岐鎖、または環状の2価の部分であり、そしてR
7はR
2またはHである。
【0042】
式(AS)のアミノシランの幾つかの適切な非限定的な例は、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、N-メチル-4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、アミノイソプロポキシエチルトリメトキシシラン、アミノイソプロポキシプロピルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリエトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルジエトキシメチルシラン、N-メチル-4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびアミノイソプロポキシエチルトリエトキシシランである。
【0043】
本願に記載するプロセスの別の実施形態においては、イソシアネート有機シランと2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンが大体モル等量の量、例えば約0.8:1から約1.2:1のモル比、好ましくは約1:1のモル比で反応され、そして得られた生成物は次いで、トリイソシアネート、例えばトリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネートと上述したように約3:1のモル比で反応されて、シリル化有機変性化合物、例えば本願に記載した式(II)の化合物が生成される。
【0044】
プロセスの別の実施形態においては、イソホロンジイソシアネートと2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンが大体モル等量の量で、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンを僅かに多くして反応され、そして得られた生成物は次いでイソシアネート有機シランと反応され、そして最終生成物は式:
【化14】
【0045】
を有するシリル化有機変性化合物であり、式中R1およびR5は上記に定義した通りである。代替的には、このプロセスはまた2,4,5-トリアミノ-6-ヒドロキシピリミジンを用いて実施することができる。幾つかの実施形態において、本願に記載したシリル化有機変性化合物は可撓性の銅クラッドラミネートに使用することができる。
【0046】
本願の実施形態において、シリル化有機変性化合物は樹脂組成物中に、樹脂の選択に基づいて、および/または樹脂組成物の用途に基づいて、種々の量で存在することができ、そして当業者によって決定される。しかしながらある実施形態において、シリル化有機変性化合物の量は樹脂100質量部に対して約0.01から約40質量部、そしてより好ましくは樹脂100質量部に対して約0.5から約10質量部であることができる。本願の別の実施形態において、樹脂組成物は本願に記載した1つまたはより多くのシリル化有機変性化合物、すなわち2つまたはより多くのシリル化有機変性化合物の混合物を含むことができる。
【0047】
本願に記載の樹脂は、以下に列挙する任意のポリマーまたはポリマー前駆体であることができ、それらは本願に記載するシリル化有機変性化合物と化学反応することのできる部分を含んでいる。
【0048】
本願の実施形態において、樹脂は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0049】
1つの実施形態において、樹脂はポリイミド、ポリエーテルイミド、およびこれらの混合物からなる群より選択され、そして最も好ましくはポリイミド、例えば従来のポリイミド、または無色のポリイミドである。
【0050】
樹脂組成物に用いられる樹脂の量は、具体的なポリマーおよび樹脂組成物の意図する用途に依存しており、当業者によって決定されることができる。しかしながら、非限定的な実施形態において、樹脂の量は約10重量%から約99.99重量%であることができ、または別の実施形態においては約15重量%から約99.99重量%、好ましくは約50重量%から99重量%、より好ましくは約80重量%から約99重量%、そして最も好ましくは約90重量%から約99重量%であることができ、これらの重量%は樹脂組成物の合計重量に基づいている。
【0051】
別の非限定的な実施形態において、樹脂はポリイミドであり、そして本願の樹脂組成物は、ジアミンモノマーをジ無水物モノマーとNMP溶媒中で一晩反応させて作成したポリイミド前駆体溶液を、シリル化有機変性化合物と混合し、数時間(通常は2から12時間)撹拌することによって作成される。しかしながら、このプロセスは樹脂としてポリイミドに限定されたものではなく、当業者に理解されるように、本願に記載した任意の樹脂に対応するようにプロセスは適宜修正することができる。ある実施形態において、本願に記載の樹脂組成物は、シリル化有機変性化合物と本願に記載した樹脂を接触させること、例えば混合することによって作成することができる。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、シリル化有機変性化合物の上述した組成成分および樹脂に加えて、任意の他の添加剤を含んでいてよいが、但しそれらは本発明の有利な効果を損なうことのない量的範囲内で使用され、またそうした量的範囲が当業者によって理解されるという条件である。例えば組成物は、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、UV吸収剤、上述した有機樹脂以外の任意の他のポリマー化合物、硬化剤、硬化促進剤、無機充填剤、溶媒、抗酸化剤、顔料、染料およびその他の任意の1つまたはより多くを含んでいてよい。
【0053】
本願に記載する樹脂組成物は、そこから物品を作成するために用いることができ、例えばそこで物品は、樹脂フィルム、銅箔を備えた樹脂フィルム、ラミネート、例えば可撓性の銅クラッドラミネート、プリプレグ、プリント回路板、および可撓性電子デバイスからなる群より選択される。ある実施形態において、ラミネートは、プラスチックフィルム、シリコンウエハー、セラミック、有機材料、金属、例えば銅箔、およびガラスからなる群より選択される基材を含む。ある実施形態において、ラミネートは可撓性の銅クラッドラミネートである。可撓性電子デバイスは、可撓性ディスプレイであることができ、それは部分的にまたは全体的に、折りたたみ式または巻き取り式のスマートフォンを作成するために使用される。
【0054】
別の実施形態においては、本発明の樹脂組成物からフィルム状に作成された、樹脂フィルムが提供される。本発明の樹脂フィルムは、当業者に知られているようにして樹脂組成物をフィルムへと処理することによって得られる。
【0055】
本発明の樹脂フィルムは、樹脂組成物から得られる樹脂フィルム上に保護フィルムを積層したものであってよい。本発明の樹脂フィルムを製造するための方法の1つの非限定的な例において、シリル化有機変性化合物および樹脂、並びに他の成分は混合されて樹脂組成物の溶液が調製され、この樹脂組成物の溶液はリバースロールコーターまたはコンマコーターを用いて、所望の厚さとなるように保護フィルム上に塗布される。樹脂組成物の溶液が塗布された保護フィルムはインラインドライヤーを通過されて、約80から約160℃で約2から約20分間にわたって有機溶媒が除去されて乾燥され、その後ロールラミネーターを使用して別個の保護フィルムと圧縮およびラミネートされて、樹脂フィルムが形成されたラミネートフィルムを得ることができる。
【0056】
本発明の樹脂組成物がフィルム形状へと形成される場合、厚さに対する制約はないが、しかし厚さは好ましくは約2mmまたはそれ未満、より好ましくは約50μmまたはより厚く約1,200μmまたはそれ未満であり、そしてさらに好ましくは約80から約850μmである。
【0057】
保護フィルムは、樹脂組成物で作成された樹脂フィルムの形状を損傷することなしに剥離可能であり、ウエハー用の保護フィルムおよび剥離フィルムとして機能するものであれば特に制限されるものではないが、通常は、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、およびポリエステルフィルムのような、離型処理されたプラスチックフィルムが使用される。さらにまた、剥離力は好ましくは約50から約300mN/分である。保護フィルムの厚さは好ましくは約25から約150μm、そしてより好ましくは約38から約125μmである。
【0058】
本発明のラミネートは、基材上に本発明の樹脂フィルムの硬化生成物を有する。ある実施形態において、本発明のラミネートを製造するための非限定的な方法は、基材上に樹脂フィルムを接合して基材を成形する工程と、樹脂フィルムを基材上で加熱および硬化させる工程とを有する方法である。別の非限定的な実施形態において、ラミネートはポリイミドの金属クラッドラミネートであり、ポリイミドの誘電層と、例えば銅箔である少なくとも1つの導電層を含んでいる。これらの層は接着剤を用いて、または用いずに接合される。
【0059】
ポリイミドの銅クラッドラミネートは、本願の1つの実施形態において可撓性銅クラッドラミネート(FCCL)であることができる。
【0060】
また本願において提供されるのは、ラミネート、好ましくは銅クラッドラミネート、より好ましくは可撓性銅クラッドラミネートを製造するためのプロセスである。最初に、シリル化有機変性化合物および樹脂、例えばポリイミド前駆体、並びに他の任意選択的な成分が混合されて樹脂組成物が調製され、この樹脂組成物溶液は銅箔基材上に塗布される。次いで、樹脂組成物は金属基材上に流延され、バッチ式または連続式に高温で焼成されて樹脂が硬化され、銅クラッドラミネートが得られる。一般に、焼成は約200℃から約450℃の温度で行われる。銅箔は、箔の表面粗さが樹脂の透明度に対して最小限の影響を有する(表面の地形に起因する最小限の光散乱)ように選択される。通常、選択される銅箔は約0.7μmまたはそれ未満の表面粗さを有し、そうした銅箔は「平滑な銅箔」と称される。
【0061】
別の実施形態においては、本願に記載した樹脂組成物を含む可撓性ディスプレイを製造するためのプロセスが提供される。ある実施形態においてこの方法は、ガラス基材上に樹脂組成物を塗布し、そして樹脂組成物を硬化してガラス基材上に樹脂層を形成することを含んでいる。可撓性ディスプレイを含んでいてよい本開示の実施形態による電子デバイスの例には、スマートフォン、タブレットパーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、ビデオ電話、電子ブックリーダー、デスクトップPC、ラップトップコンピュータ、ネットブックコンピュータ、ワークステーション、サーバー、携帯情報端末(PDA)、携帯マルチメディアプレーヤー(PMP)、MP3プレーヤー、モバイル医療機器、カメラ、またはウェアラブルデバイスの少なくとも1つが含まれる。
実施例:
【0062】
本願のシリル化有機変性化合物は、以下の表1に列挙された列Xにある任意の成分を、列Yにある任意の成分と反応させることによって作成される。
【表1】
【0063】
上記の成分XおよびYの反応生成物は次いで、トリ-イソシアネートトリフェニルメタン、ジ-イソシアネートトリフェニルメタン、およびモノ-イソシアネートトリフェニルメタン、並びに1,3,5-トリイソシアネートベンゼンのような化合物と反応させることができる。
実験例:
【0064】
実施例1:
50.4gの2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンと、164gのイソシアネートプロピルトリメトキシシラン、モル比で1:2、および300mlのDMFが、撹拌下に1Lの反応器に導入された。この混合物を窒素で10分間にわたって完全にパージした。次いで混合物を120℃に加熱して保持し、反応を完了させた。反応の進行は、2270cm
-1付近のイソシアネートのピーク強度を測定することにより、FTIRでモニターした。FTIRの結果(
図1)が示すように、イソシアネートのピークは2時間後に消失し、反応が完了したことが示された。DMF溶媒を除去した後、得られた物質は茶色がかった固体として現れた。
【0065】
実施例2:
50.4gの2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンと、197.6gのイソシアネートプロピルトリエトキシシラン、モル比で1:2、および300mlのDMFが、撹拌下に1Lの反応器に導入された。この混合物を窒素で10分間にわたって完全にパージした。次いで混合物を120℃に加熱して保持し、反応を完了させた。反応の進行は、2270cm
-1付近のイソシアネートのピーク強度を測定することにより、FTIRでモニターした。FTIRの結果(
図2)が示すように、イソシアネートのピークは5時間後に消失し、反応が完了したことが示された。DMF溶媒を除去した後、得られた物質は茶色がかった高粘度の液体として現れ、粘度は30℃において剪断速度0.04/sで測定してほぼ1×10
8mPa・sであった。
【0066】
実施例3:
工程1:7.56gの2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジンと、11.1gのイソホロンジイソシアネート、モル比で6:5、および100mlのDMFが、撹拌下に1Lの反応器に導入された。この混合物を120℃に加熱して保持し、反応を完了させた。反応の進行は、2270cm
-1付近のイソシアネートのピーク強度を測定することにより、FTIRでモニターした。FTIRの結果(
図3)が示すように、イソシアネートのピークは2時間後に120℃で消失し、工程1の反応が完了したことが示された。
【0067】
工程2:4.1gのイソシアネートプロピルトリメトキシシランが、窒素下に工程1の反応溶液中に添加された。次いで反応が120℃において、完了に達するまで行われた。反応の進行は、2270cm
-1付近のイソシアネートのピーク強度を測定することにより、FTIRでモニターした。FTIRの結果(
図4)が示すように、イソシアネートのピークは3時間後に消失し、工程2の反応が完了したことが示された。
【0068】
DMF溶媒を除去した後、得られた物質は黄色がかった固体として現れた。
【0069】
本発明を所定の実施形態に関連して記載してきたが、本発明の範囲から逸脱することなしに、種々の変更を行ってよく、本発明の要素に対して均等物を置き換えてよいことが、当業者には理解される。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなしに、特定の状況または材料に適合するために、本発明の教示に対して多くの修正を行ってよい。したがって本発明は、本発明のプロセスを実行するために考慮されたベストモードとして開示された特定の実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲内に包含されるすべての実施形態を含むものであることが意図されている。
【国際調査報告】