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  • 特表-バッテリーの放電方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バッテリーの放電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02J7/00 302Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530036
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 KR2022020658
(87)【国際公開番号】W WO2023113568
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182179
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】パク、 テ-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 スン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 レ-キャン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、 オク-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ウィ、 ヒョン-ゴン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 クォン-ヤン
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503EA04
5G503EA05
5G503GB03
5G503GB06
(57)【要約】
本発明は、バッテリーと電力変換器を連結して電圧を印加し、バッテリーを放電させる第1放電段階と、上記第1放電段階後、第1放電段階の逆電圧を印加して、バッテリーを放電させる第2放電段階とを含む、バッテリー放電方法に関する。本発明によると、バッテリーの電気エネルギーを回収してリサイクルするだけでなく、バッテリーを正常動作が不可能な完全放電状態にして、後続する解体工程などで電気的に安全な状態を確保することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーと電力変換器を連結して電圧を印加し、バッテリーを放電させる第1放電段階と、
前記第1放電段階後、第1放電段階の逆電圧(Reverse Voltage)を印加して、バッテリーを放電させる第2放電段階と
を含む、バッテリー放電方法。
【請求項2】
前記第1放電段階は、バッテリーのSOC(state of charge)が0になるまで行われる、請求項1に記載のバッテリー放電方法。
【請求項3】
バッテリーのSOC(state of charge)が0になった後、バッテリーの端子電圧が0Vになるまで放電させる段階を含む、請求項1に記載のバッテリー放電方法。
【請求項4】
バッテリーの端子電圧が0Vになるまで放電させる段階において、バッテリーの短絡が発生する、請求項3に記載のバッテリー放電方法。
【請求項5】
前記第1放電段階は、印加される電圧が2.5~4Vであり、電流は0.3C以上である、請求項1に記載のバッテリー放電方法。
【請求項6】
前記第1放電段階において、バッテリーの温度は60℃以下である、請求項1に記載のバッテリー放電方法。
【請求項7】
前記第1放電段階において、電力変換器はエネルギー回生モードで作動する、請求項1に記載のバッテリー放電方法。
【請求項8】
前記第2放電段階において、印加される電圧は0~3Vであり、電流は0.05~1Cである、請求項1に記載のバッテリー放電方法。
【請求項9】
前記第2放電段階は、複数回行われる、請求項1に記載のバッテリー放電方法。
【請求項10】
前記第2放電段階は、短絡抵抗が30~60mΩの時に終了する、請求項1に記載のバッテリー放電方法.
【請求項11】
前記第2放電段階において、電力変換器は放電する多数のバッテリーにエネルギーを独立的に分配する、請求項1に記載のバッテリー放電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー放電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル及び家電機器に使われる小型リチウムイオン電池などのバッテリーに使用する高価の金属を回収する工程は、放電後に破砕及び粉砕、焼成、分離工程を経た上で湿式製錬するという方式を主に使用しているが、一部では放電工程を省略し、乾式溶融後に分離する工程を商業化して使用している。湿式工程における放電方法は、二次電池の完全放電を目的として製造した化学的水溶液に浸して自然放電する方法が最も一般的である。
【0003】
一方、自動車用の二次電池は、自動車駆動の効率のために多数の二次電池を直並列に連結して、単一電池の電圧である4Vより相対的に非常に高い電圧(現在800V水準)を使用するように製作されており、安全のために構造的に頑丈に組み立てられている。
【0004】
かかる自動車用の二次電池組立体は、化学的水溶液に浸して自然放電処理する場合、目的とする金属の回収率を上げるために不要な部品を解体する工程の難易度が増加するため、電気的負荷を用いて二次電池が持っているエネルギーを0水準に放電した後、手作業で解体し、化学的水溶液に浸漬して自然放電するという方法を主に使用している。
【0005】
この時、通常のエネルギー「0」水準の放電を実施した後、ある程度の時間が過ぎると、通常のバッテリーは出力電圧が0Vから2.5V水準に回復して、800V水準の自動車用電池は約500V水準の電圧を維持するようになるため、安全を脅かす可能性があり、依然として手作業が難点として残るようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような実情を鑑みて案出されたもので、バッテリーの電気エネルギーを回収してリサイクルするだけでなく、バッテリーを正常動作が不可能な完全放電状態にして、後続する解体工程などで電気的に安全な状態を確保することができるバッテリー放電方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、バッテリーと電力変換器を連結して電圧を印加し、バッテリーを放電させる第1放電段階と、上記第1放電段階後、第1放電段階の逆電圧を印加して、バッテリーを放電させる第2放電段階とを含む、バッテリー放電方法が提供される。
【0008】
上記第1放電段階は、バッテリーのSOC(state of charge)が0になるまで行われることができる。
【0009】
バッテリーのSOC(state of charge)が0になった後、バッテリーの端子電圧が0Vになるまで放電させる段階を含むことができる。
【0010】
バッテリーの端子電圧が0Vになるまで放電させる段階において、バッテリーの短絡が発生することができる。
【0011】
上記第1放電段階は、印加される電圧が2.5~4Vであり、電流は0.3C以上であることができる。
【0012】
上記第1放電段階において、バッテリーの温度は60℃以下であることができる。
【0013】
上記第1放電段階において、電力変換器はエネルギー回生モードで作動することができる。
【0014】
上記第2放電段階において、印加される電圧は0~3Vであり、電流は0.05~1Cであることができる。
【0015】
上記第2放電段階は、複数回行われることができる。
【0016】
上記第2放電段階は、短絡抵抗が30~60mΩの時に終了することができる。
【0017】
上記第2放電段階において、電力変換器は放電する多数のバッテリーにエネルギーを独立的に分配することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、バッテリーの電気エネルギーを回収してリサイクルするだけでなく、バッテリーを正常動作が不可能な完全放電状態にして、後続する解体工程などで電気的に安全な状態を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】リチウムイオン電池に放電を行った後に放置してから、再び放電を行った場合の電圧の変化を示したグラフである。
図2】本発明の一実施例によるバッテリー放電装置を示したものである。
図3】本発明の一実施例による直流-直流変換器をBuck-Boost電力変換器で構成してバッテリーの放電を行った一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、多様な実施例を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明は、バッテリー放電方法に関する。
【0022】
図1は、リチウムイオン電池に放電を行った後に放置してから、再び放電を行った場合に電圧の変化を示したグラフである。図1を参照して説明すると、一般的にリチウムイオン電池などのバッテリーのSOC(state of charge)値を0以下(2.5V~3V)で0Vまで放電させた後、数分から数十分放置すると、端子電圧が回復する現象を確認することができ、この時、再び放電を行う場合、相当量の初期放電電流が発生することを確認することができる。このことから通常の放電を通じては負極に放電されていないリチウム(Li)が相当量存在するという事実が分かる。本発明者らは、負極に残留するリチウムの存在による問題を解決するために鋭意研究したところ、放電時にバッテリーの電圧が0Vと現われる時点から今までの放電とは反対の電圧、すなわち、逆電圧(Reverse Voltage)を印加すれば、負極の残留リチウムをより速く正極に移動することが可能になり、この状態を一定時間持続すると、内部短絡に発展して電池の端子電圧が回復できない状態となることを発見して本発明を完成した。
【0023】
本発明の一側面によると、バッテリーと電力変換器を連結して電圧を印加し、バッテリーを放電させる第1放電段階と、上記第1放電段階後、第1放電段階の逆電圧を印加して、バッテリーを放電させる第2放電段階とを含む、バッテリー放電方法が提供される。
【0024】
上記第1放電段階は、バッテリーのSOC(state of charge)が0になるまで行われることが好ましい。上記第1放電段階の放電区間において、放電速度はバッテリー規格による定格電流及び許容温度の範囲内で最大値を設定し、速い放電速度を確保することが好ましい。これにより、上記第1放電段階は、印加される電圧が2.5~4Vであり、電流は0.3C以上であることができ、バッテリーの温度は60℃以下であることが好ましい。
【0025】
上記のように、バッテリーのSOC(state of charge)が0になった後、バッテリーの端子電圧が0Vになるまで放電させる段階を含むことができる。具体的に、バッテリーの端子電圧を電力変換器の内部インピーダンスで分けた時の値、すなわち、短絡電流の大きさが電力変換器に使用された電力半導体の運転電流下限に落ちる時の電圧になると、エネルギーを回収する運転モードから短絡運転モードあるいは逆電圧に転換して0Vに接近させることが好ましい。その理由は、電力変換器の効果的な運転範囲が単位電池基準として3V領域で設計されるため、0V辺りにおける運転は非効率的であるだけでなく、放電速度を遅くする要因として作用するためである。特に限定するものではないが、短絡運転モードは、バッテリーの種類によって短絡運転時間と逆電圧運転時間との和が最小となるように調整することができ、1分以下の時間の間に行われることが好ましい。
【0026】
また、第1放電段階において、電力変換器はエネルギー回生モードで作動することが好ましく、これを通じて、バッテリーに残留するエネルギーを回収してリサイクルすることが可能である。
【0027】
上記第1放電段階後、第1放電段階の逆電圧を印加して、バッテリーを放電させる第2放電段階が行われることができる。
【0028】
この時、上記第2放電段階で印加される電圧は0~3Vであり、電流は0.05~1Cであることが好ましく、内部抵抗の変化に反応して動作させることが好ましい。さらに詳しくは、逆電圧印加を通じて電流を速く1C水準に増加させてバッテリーの端子電圧を負の方向に2~3V水準で増加させた後に電流を維持すれば、端子電圧が再び減少する形態を示し、最大電圧を表す変曲点を経た後、逆電圧を減少させて電流量を0水準で維持することが好ましい。
【0029】
上記第2放電段階は、複数回行われることができる。逆電圧印加による運転により、電流量が0になった後、バッテリーの電圧は徐々に0Vに近付くが、2次逆電圧運転を1次逆電圧運転のような方法で繰り返し行い、電圧変動を安定化させることができる。
【0030】
上記第2放電段階は、短絡抵抗が30~60mΩの時まで行われることができる。さらに詳しくは、上記第2放電段階を行うことにより表れる負の電圧最大大きさは次第に減少する傾向を示すが、これは、内部短絡が進行されて短絡抵抗が減少することによるものであり、これにより、逆電圧運転を終了する決定は、第2放電段階の繰り返し運転時に表れる負の最大電圧を逆電流で分けて得る短絡抵抗が30~60mΩの時に終了することができる。
【0031】
第2放電段階における運転時間は、二次電池の種類によって短絡運転持続時間と逆電圧運転時間との和が最小となるように実験を通じて微細調整し、通常1分以内の運転を繰り返すことができる。
【0032】
また、上記第2放電段階における電力変換器は、放電する多数のバッテリーにエネルギーを独立的に分配することが好ましい。
【0033】
一方、図2は、本発明の一実施形態によるバッテリー放電装置を示したもので、本発明の他の側面によると、交流-直流電源装置及び直流-直流電源装置を含む電力変換器と、制御器とを含むバッテリー放電装置が提供される。
【0034】
上記交流-直流電源装置は、工場電源など、共同で使用する直流電源を制御し、下位の直流-直流電源装置がバッテリー放電機能を行う時に得られる電気エネルギーを共同で使用する電源に逆送することができる。逆送する電気エネルギーの総量は、下位の直流-直流電源装置においてそれぞれのバッテリー放電エネルギー総量を合算算定して最大値として定義し、総量を運転可能に交流-直流電源装置の容量を設計することができる。
【0035】
これにより、上記交流-直流電源装置は、直流-直流電源装置が二次電池に逆電圧を印加する時、十分なエネルギーが供給できるように共同で使用する直流電圧を維持する機能を行うことができる。
【0036】
上記直流-直流電源装置は特に限定されず、単極(unipolar)であるBuck-Boost変換器と出力極性が反転可能な機械的スイッチの組み合わせで構成されるか、両極(Bipolar)である単相PWM変換器からなることができる。
【0037】
一方、上記制御器は、バッテリーと電力変換器を連結し電圧を印加して、二次電池を放電させる第1放電段階と、第1放電段階後、第1放電段階と反対の電圧(逆電圧)を印加して、二次電池を放電させる第2放電段階とを含む、二次電池の放電プロセスを制御する役割を果たす。制御器は、電力変換器の放電制御パターンを電気自動車モデルとバッテリーの種類によってデータベースを構築し、運転者が現場または遠隔で選択して運転することができ、データベースは、遠隔でアップデート可能に構成されることができる。
【実施例
【0038】
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明する。以下の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのもので、これにより本発明が限定されるものではない。
【0039】
図3を参照して説明すると、第1放電段階では、S/W1閉鎖(close)、S/W2閉鎖、S/W3閉鎖、S/W4開放(open)、S1は動作しないようにしS2のスイッチング動作で二次電池のエネルギーを交流-直流変換器の直流電源キャパシタに伝送し、交流-直流変換器はバッテリーから直流-直流変換器を通じて伝達されたエネルギーを伝送する。
【0040】
以後、充分に放電してバッテリーの電圧が2.5Vを経て0Vに下降する時、変換器の内部インピーダンスを考慮して短絡放電が可能であると判断される時点でS2 On状態を持続して短絡放電を実施する。この時、S1は動作しない。
【0041】
その後、S/W4閉鎖及びS/W3を開放して逆電圧運転モードに変更し、S2をoffし、S1を用いて逆電圧運転を実施することで、バッテリーの完全放電を行うことができる。
【0042】
以上で本発明の実施例について詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能なことは、当技術分野の通常の知識を有する者には自明であろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】